(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124913
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240906BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032894
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 理俊
(57)【要約】
【課題】炭化珪素の半導体基板で構成される半導体装置の短絡耐量を向上させる技術を提供する。
【解決手段】炭化珪素の半導体基板10は、p型領域13pとn型領域13nが半導体基板の面内方向のうち一方向に沿って交互に繰り返し配置されているスーパージャンクション構造13を有している。p型領域の幅を第1値とし、n型領域の幅を第2値とし、半導体基板のうち上方にターミナルが存在する範囲をターミナル存在範囲62とし、半導体基板のうち上方にターミナルが存在しない範囲をターミナル非存在範囲64とすると、ターミナル非存在範囲に設けられたスーパージャンクション構造の第1値を第2値で除した第1値/第2値は、ターミナル存在範囲に設けられたスーパージャンクション第1値を第2値で除した第1値/第2値よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素の半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一方の主面に設けられている電極(24)と、
前記電極上の一部に設けられているターミナル(40)と、を備えており、
前記半導体基板は、p型領域(13p)とn型領域(13n)が前記半導体基板の面内方向のうち一方向に沿って交互に繰り返し配置されているスーパージャンクション構造(13)を有しており、
前記一方向に沿って測定される前記p型領域の幅を第1値とし、
前記一方向に沿って測定される前記n型領域の幅を第2値とし、
前記半導体基板のうち上方に前記ターミナルが存在する範囲をターミナル存在範囲(62)とし、
前記半導体基板のうち上方に前記ターミナルが存在しない範囲をターミナル非存在範囲(64)とすると、
前記ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値を前記第2値で除した前記第1値/前記第2値は、前記ターミナル存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値を前記第2値で除した前記第1値/前記第2値よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記ターミナル存在範囲の前記p型領域の前記第1値は、前記ターミナル非存在範囲の前記p型領域の前記第1値よりも小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ターミナル存在範囲の前記n型領域の前記第2値は、前記ターミナル非存在範囲の前記n型領域の前記第2値よりも大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ターミナル非存在範囲は、第1ターミナル非存在範囲(66)と、前記第1ターミナル非存在範囲よりも前記ターミナル存在範囲から遠い第2ターミナル非存在範囲(68)と、を有しており、
前記第2ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値/前記第2値は、前記第1ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値/前記第2値よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【0002】
半導体装置は、スイッチング素子が形成されている半導体基板と、半導体基板の上面に設けられている電極と、電極上に設けられているターミナルと、を備えている。ターミナルは、金属製のブロックであり、スイッチング素子が動作したときに発生する熱を放熱するために設けられている。このような半導体装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
ところで、この種の半導体装置の半導体基板には、スイッチング素子の高耐圧化と低オン抵抗化を両立するためにスーパージャンクション構造が形成されることがある。スーパージャンクション構造は、半導体基板の面内方向のうち一方向に沿ってp型領域とn型領域が交互に繰り返し配置された構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板の上面に設けられた電極のレイアウトによっては、電極上の一部にのみターミナルが配置されることがある。この場合、上方にターミナルが存在しない範囲の半導体基板では、ターミナルまでの距離が遠いことから、スイッチング素子を流れる電流に起因したジュール熱によって温度が上昇しやすい。
【0006】
本発明者らの検討によると、炭化珪素(SiC)の半導体基板で構成される半導体装置の短絡耐量は、比較的融点の低い電極の破壊によって決まることが分かってきた。このため、上方にターミナルが存在しない範囲の半導体基板における発熱が半導体装置の短絡耐量を律速させる原因の1つとなり得ることが分かってきた。本明細書は、炭化珪素の半導体基板で構成される半導体装置の短絡耐量を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する半導体装置は、炭化珪素の半導体基板(10)と、前記半導体基板の一方の主面に設けられている電極(24)と、前記電極上の一部に設けられているターミナル(40)と、を備えていてもよい。前記半導体基板は、p型領域(13p)とn型領域(13n)が前記半導体基板の面内方向のうち一方向に沿って交互に繰り返し配置されているスーパージャンクション構造(13)を有していてもよい。前記一方向に沿って測定される前記p型領域の幅を第1値とし、前記一方向に沿って測定される前記n型領域の幅を第2値とし、前記半導体基板のうち上方に前記ターミナルが存在する範囲をターミナル存在範囲(62)とし、前記半導体基板のうち上方に前記ターミナルが存在しない範囲をターミナル非存在範囲(64)とすると、前記ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値を前記第2値で除した前記第1値/前記第2値は、前記ターミナル存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値を前記第2値で除した前記第1値/前記第2値よりも大きくてもよい。
【0008】
上記半導体装置では、前記ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の発熱部位が、前記ターミナル存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の発熱部位よりも前記半導体基板の深部側に移動する。このため、負荷短絡によって大電流が流れたとしても、前記ターミナル非存在範囲において前記電極と前記発熱部位の間の距離が確保されるので、前記ターミナル非存在範囲における前記電極の破壊が抑制される。この結果、上記半導体装置は、高い短絡耐量を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】半導体装置の断面図を模式的に示す図である。
【
図2】半導体基板の上面のソース電極、ソースパッド及びターミナルのレイアウトを説明するための平面図である。
【
図3】半導体基板に形成されているスイッチング素子の要部斜視図を模式的に示す図である。
【
図4】スイッチング素子が備えるスーパージャンクション構造の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本明細書が開示する技術が適用された半導体装置について説明する。以下の図面では、図示明瞭化を目的として、繰り返し形成されている構成要素についてはその一部のみに符号を付すことがある。
【0011】
図1に示すように、半導体装置100は、スイッチング素子が形成されている半導体基板10を備えている。半導体基板10の材料は、炭化珪素(SiC)である。ここで、以下では、半導体基板10の面内方向のうち一方向をx方向とし、半導体基板10の面内方向のうちx方向に直交する方向をy方向とし、半導体基板10に垂直な方向をz方向として説明する。
【0012】
半導体基板10の下面にはドレイン電極22が設けられており、半導体基板10の上面にはソース電極24(又は、ソースパッドともいう)とゲートパッド26が設けられている。ドレイン電極22、ソース電極24及びゲートパッド26は、例えばアルミニウムで構成されている。ドレイン電極22は、半導体基板10の下面の全域を覆っている。ソース電極24とゲートパッド26の各々は、半導体基板10の上面の一部を覆っている。ソース電極24とゲートパッド26のレイアウトについては後述する。
【0013】
半導体装置100はさらに、ターミナル40と、上側放熱板42と、下側放熱板44と、ボンディングワイヤ46と、ゲート端子48と、を備えている。
【0014】
ターミナル40は、金属製のブロック(例えば、銅ブロック)である。ターミナル40の下面は、図示しないはんだ層を介してソース電極24に接合されている。ターミナル40の上面は、図示しないはんだ層を介して上側放熱板42に接合されている。このように、ターミナル40は、ソース電極24と上側放熱板42の間に設けられており、ソース電極24と上側放熱板42を熱的に接続する。上側放熱板42は、金属板である。上側放熱板42は、半導体基板10から伝熱された熱を放熱するとともに、ソース電極24に接続された電極板としても機能する。
【0015】
下側放熱板44は、図示しないはんだ層を介してドレイン電極22に接合されている。下側放熱板44は、金属板である。下側放熱板44は、半導体基板10から伝熱された熱を放熱するとともに、ドレイン電極22に接続された電極板としても機能する。
【0016】
ゲートパッド26は、ボンディングワイヤ46を介してゲート端子48に電気的に接続されている。ゲート端子48には、半導体基板10内に形成されたスイッチング素子を制御するためのゲート信号が入力される。
【0017】
半導体基板10とターミナル40と放熱板42、44とボンディングワイヤ46とゲート端子48の一部は、絶縁樹脂50によって覆われている。このように構成された半導体装置100は、例えばインバータを構成するパワーモジュールとして用いられてもよい。
【0018】
図2に示されるように、半導体基板10の上面にはソース電極24とゲートパッド26が設けられている。ソース電極24は、ゲートパッド26の形成範囲を除いて半導体基板10の上面の大部分を被覆するように設けられている。ゲートパッド26は、平面視したときに略矩形状であり、半導体基板10の一側面に隣接して配置されている。このように、ゲートパッド26は、平面視したときに凹形状のソース電極24の凹部に収まるように設けられている。なお、このようなソース電極24とゲートパッド26のレイアウトは一例であり、他の様々なレイアウトを採用することができる。また、半導体基板10の上面には、ソース電極24とゲートパッド26の他に、半導体基板10内に形成されたセンサに対して信号を入出力するためのパッドが設けられていてもよい。
【0019】
ターミナル40は、平面視したときに略矩形状であり、ソース電極24上の一部に設けられている。ターミナル40は、ゲートパッド26の両側に位置するソース電極24上には設けられていない。このため、半導体基板10は、その上方にターミナル40が存在するターミナル存在範囲62と、その上方にターミナル40が存在しないターミナル非存在範囲64と、を有している。また、ターミナル非存在範囲64は、第1ターミナル非存在範囲66と、第1ターミナル非存在範囲66よりもターミナル存在範囲から遠い第2ターミナル非存在範囲68と、を有している。
【0020】
図3に、半導体基板10内に形成されたスイッチング素子1の単位セルを示す。スイッチング素子1は、MOSFETと称される種類のパワーデバイスである。なお、スイッチング素子1は、IGBTと称される種類のパワーデバイスであってもよい。
【0021】
図3に示されるように、半導体基板10は、n
+型のドレイン領域11と、n
-型の下側ドリフト領域12と、スーパージャンクション構造13(以下、「SJ構造13」という)と、n型の上側ドリフト領域14と、p型のディープp領域15と、p型のボディ領域16と、n
+型のソース領域17と、p
+型のコンタクト領域18と、を備えている。また、半導体基板10の上層部にはトレンチゲート30が形成されている。
【0022】
ドレイン領域11は、高濃度のn型不純物を含有するn型領域である。ドレイン領域11は、半導体基板10の下面に露出する位置に配置されている。ドレイン領域11は、ドレイン電極22にオーミック接触している。
【0023】
下側ドリフト領域12は、ドレイン領域11上に設けられており、ドレイン領域11よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。
【0024】
SJ構造13は、下側ドリフト領域12上に設けられており、p型不純物を含有する複数のp型領域13pとn型不純物を含有する複数のn型領域13nを有している。p型領域13pとn型領域13nの各々は、概ね平板状の形態を有しており、この例ではxz平面に平行に延びている。p型領域13pとn型領域13nはまた、半導体基板10の面内方向のうち一方向(この例ではy方向であり、以下、「繰り返し方向」という)に沿って交互に繰り返し配置されて構成されている。なお、複数のn型領域13nの各々は、p型領域13pの底面を覆うように深く形成されてもよい。
【0025】
図4に、スーパージャンクション構造13の要部拡大断面図を示す。スーパージャンクション構造13の繰り返し方向(即ち、y方向)において、p型領域13pの幅がWpであり、n型領域13nの幅がWnである。p型領域13pの幅Wp及びp型不純物濃度ならびにn型領域13nの幅Wn及びn型不純物濃度は、スイッチング素子1の高耐圧化と低オン抵抗化が両立するように、チャージバランスが大きく崩れないように設計される。
【0026】
図3に戻る。上側ドリフト領域14は、SJ構造13上に設けられており、n型不純物を含有するn型領域である。上側ドリフト領域14のn型不純物の濃度は、下側ドリフト領域12と同一であってもよく、下側ドリフト領域12よりも濃くてもよい。上側ドリフト領域14は、トレンチゲート30の側面の下部分及び底面に接している。
【0027】
ディープp領域15は、上側ドリフト領域14を貫通して延びており、p型不純物を含有するp型領域である。ディープp領域15は、上端がボディ領域16に接しており、下端がSJ構造13に接している。ディープp領域15は、半導体基板10を平面視したときに、SJ構造13のp型領域13pに対して非平行(この例では直交する方向であり、y方向)に延びており、SJ構造13の複数のp型領域13pの各々に接している。これにより、SJ構造13のp型領域13pは、ディープp領域15を介してボディ領域16に電気的に接続されている。また、ディープp領域15は、トレンチゲート30と交差するように延びており、トレンチゲート30の底面の一部に接している。このように、ディープp領域15は、SJ構造13のp型領域13pをボディ領域16に電気的に接続する役割とトレンチゲート30の底面の電界を緩和する役割を担っている。なお、上側ドリフト領域14とディープp領域15は、この例ではx方向に繰り返し配置された構造を有している。しかしながら、ディープp領域15は上記した理由で形成される領域であり、上側ドリフト領域14とディープp領域15の繰り返し構造はSJ構造13とは異なる領域である。上側ドリフト領域14とディープp領域15は、SJ構造13を構成するn型領域13nとp型領域13pとは異なる幅及び濃度によって構成されている。
【0028】
ボディ領域16は、上側ドリフト領域14及びディープp領域15上に設けられており、p型不純物を含有するp型領域である。ボディ領域16は、トレンチゲート30の側面に接しており、上側ドリフト領域14とソース領域17を隔てている。
【0029】
ソース領域17は、ボディ領域16上であって半導体基板10の上面に露出する位置に設けられており、高濃度のn型不純物を含有するn型領域である。ソース領域17は、トレンチゲート30の側面のうちの上側部分に接している。ソース領域17は、ソース電極24にオーミック接触している。
【0030】
コンタクト領域18は、ボディ領域16上であって半導体基板10の上面に露出する位置に設けられており、ボディ領域16よりもp型不純物を高濃度に含有するp型領域である。コンタクト領域18は、ソース電極24にオーミック接触している。
【0031】
トレンチゲート30は、半導体基板10の上面からソース領域17及びボディ領域16を超えて上側ドリフト領域14及びディープp領域15に達するまで延びている。トレンチゲート30は、半導体基板10の面内方向のうち一方向(この例ではx方向)に沿って延びている。トレンチゲート30は、ゲート電極32とゲート絶縁膜34を有している。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜34によって上側ドリフト領域14とボディ領域16とソース領域17から絶縁されており、層間絶縁膜によってソース電極24から絶縁されている。なお、トレンチゲート30の底面に接するようにp型不純物を含む電界緩和領域が設けられていてもよい。
【0032】
なお、上記のスイッチング素子1の構造は一例である。本明細書が開示する技術は、スーパージャンクション構造13を備える様々な種類のスイッチング素子に適用可能である。
【0033】
次に、スイッチング素子1の動作について説明する。ドレイン電極22がソース電極24よりも高電位となるような電圧がドレイン・ソース間に印加されている状態で、ゲート電極32にゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、ゲート絶縁膜34に隣接する範囲のボディ領域16にチャネルが形成される。ソース領域17から供給される電子は、このチャネルを介して上側ドリフト領域14に流入する。上側ドリフト領域14に流入した電子は、SJ構造13のn型領域13n及び下側ドリフト領域12を介してドレイン領域11に流れる。これにより、ドレイン電極22とソース電極24の間が導通し、スイッチング素子1がオンとなる。一方、ゲート電極32にゲート閾値電圧未満の電圧が印加されると、チャネルが消失し、スイッチング素子1がオフとなる。このように、スイッチング素子1は、ゲート電極32に印加する電圧に応じてドレイン電極22とソース電極24の間を流れる電流を制御するように動作することができる。
【0034】
半導体装置100が接続する負荷が短絡すると、スイッチング素子1が形成された半導体基板10に大電流が流れ、ジュール熱によって半導体基板10が発熱する。半導体基板10で発生した熱は、ターミナル40を介して放熱される。しかしながら、
図2に示すように、半導体基板10のうち上方にターミナル40が存在しないターミナル非存在範囲64では、ターミナル40までの距離が遠いことから、温度が上昇しやすい。
【0035】
炭化珪素(SiC)の半導体基板10で構成される半導体装置100の短絡耐量は、比較的融点の低いソース電極24の破壊によって決まる。ターミナル非存在範囲64の半導体基板10における発熱は、その位置にあるソース電極24を破壊し、半導体装置100の短絡耐量を律速させ得る。
【0036】
スイッチング素子1に大電流が流れたときの発熱部位(ホットスポット)は、スーパージャンクション構造13のn型領域13nである。SJ構造13のp型領域13pの幅Wpをn型領域13nの幅Wnで除したWp/Wnが大きくなると、発熱部位がn型領域13nの中で深い側に移動する。
【0037】
スイッチング素子1では、ターミナル非存在範囲64に設けられたスーパージャンクション構造13のWp/Wnが、ターミナル存在範囲62に設けられたスーパージャンクション構造13のWp/Wnよりも大きい。例えば、ターミナル存在範囲62及びターミナル非存在範囲64の各々のn型領域13nの幅Wnが一定であり、ターミナル存在範囲62のp型領域13pの幅Wpがターミナル非存在範囲64のp型領域13pの幅Wpよりも小さくてもよい。又は、ターミナル存在範囲62及びターミナル非存在範囲64の各々のp型領域13pの幅Wpが一定であり、ターミナル存在範囲62のn型領域13nの幅Wnがターミナル非存在範囲64のn型領域13nの幅Wnよりも大きくてもよい。又は、ターミナル存在範囲62のp型領域13pの幅Wpがターミナル非存在範囲64のp型領域13pの幅Wpよりも小さく、ターミナル存在範囲62のn型領域13nの幅Wnがターミナル非存在範囲64のn型領域13nの幅Wnよりも大きくてもよい。
【0038】
このように、ターミナル非存在範囲64に設けられたスーパージャンクション構造13のWp/Wnが相対的に大きく構成されているので、ターミナル非存在範囲64の発熱部位が相対的に深い側に移動する。このため、負荷短絡によって大電流が流れたとしても、ターミナル非存在範囲64においてソース電極24と発熱部位の間の距離が確保されるので、ターミナル非存在範囲64におけるソース電極24の破壊が抑制される。この結果、半導体装置100は、高い短絡耐量を有することができる。
【0039】
図2に示すように、ターミナル非存在範囲64はさらに、第1ターミナル非存在範囲66と、第1ターミナル非存在範囲66よりもターミナル存在範囲62から遠い第2ターミナル非存在範囲68と、を有している。スイッチング素子1ではさらに、第2ターミナル非存在範囲68に設けられたスーパージャンクション構造13のWp/Wnが、第1ターミナル非存在範囲66に設けられたスーパージャンクション構造13のWp/Wnよりも大きい。
【0040】
上記したように、SJ構造13を構成するp型領域13pの幅Wp及びp型不純物濃度ならびにn型領域13nの幅Wn及びn型不純物濃度は、スイッチング素子1の高耐圧化と低オン抵抗化が両立するように、チャージバランスが大きく崩れないように設計される。ターミナル存在範囲62のSJ構造13は、このような設計値に基づいて形成されている。一方、ターミナル非存在範囲64のSJ構造13は、短絡耐量を改善するために、ターミナル存在範囲62のSJ構造13よりもチャージバランスが崩れている。このため、ターミナル非存在範囲64のSJ構造13では、高耐圧化と低オン抵抗化の両立が犠牲になり得る。半導体装置100では、ターミナル非存在範囲64の中でもターミナル40からの距離に応じてスーパージャンクション構造13のWp/Wnを調整することにより、高耐圧化と低オン抵抗化の両立を維持しながら、高い短絡耐量を有することができる。
【0041】
なお、第1ターミナル非存在範囲66及び第2ターミナル非存在範囲68の各々において、Wp/Wnが一定であってもよいし、ターミナル40からの距離に応じて変化してもよい。即ち、ターミナル非存在範囲64では、ターミナル40からの距離に応じて、スーパージャンクション構造13のWp/Wnが連続的に変化してもよいし、多段的に変化してもよい。
【0042】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0043】
(特徴1)
炭化珪素の半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一方の主面に設けられている電極(24)と、
前記電極上の一部に設けられているターミナル(40)と、を備えており、
前記半導体基板は、p型領域(13p)とn型領域(13n)が前記半導体基板の面内方向のうち一方向に沿って交互に繰り返し配置されているスーパージャンクション構造(13)を有しており、
前記一方向に沿って測定される前記p型領域の幅を第1値とし、
前記一方向に沿って測定される前記n型領域の幅を第2値とし、
前記半導体基板のうち上方に前記ターミナルが存在する範囲をターミナル存在範囲(62)とし、
前記半導体基板のうち上方に前記ターミナルが存在しない範囲をターミナル非存在範囲(64)とすると、
前記ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値を前記第2値で除した前記第1値/前記第2値は、前記ターミナル存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値を前記第2値で除した前記第1値/前記第2値よりも大きい、半導体装置。
【0044】
(特徴2)
前記ターミナル存在範囲の前記p型領域の前記第1値は、前記ターミナル非存在範囲の前記p型領域の前記第1値よりも小さい、特徴1に記載の半導体装置。
【0045】
(特徴3)
前記ターミナル存在範囲の前記n型領域の前記第2値は、前記ターミナル非存在範囲の前記n型領域の前記第2値よりも大きい、特徴1に記載の半導体装置。
【0046】
(特徴4)
前記ターミナル非存在範囲は、第1ターミナル非存在範囲(66)と、前記第1ターミナル非存在範囲よりも前記ターミナル存在範囲から遠い第2ターミナル非存在範囲(68)と、を有しており、
前記第2ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値/前記第2値は、前記第1ターミナル非存在範囲に設けられた前記スーパージャンクション構造の前記第1値/前記第2値よりも大きい、特徴1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0047】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
1:スイッチング素子、 10:半導体基板、 11:ドレイン領域、 12:下側ドリフト領域、 13:スーパージャンクション構造、 13n:n型領域、 13p:p型領域、 14:上側ドリフト領域、 15:ディープp領域、 16:ボディ領域、 17:ソース領域、 18:コンタクト領域、 22:ドレイン電極、 24:ソース電極、 26:ゲートパッド、 30:トレンチゲート、 32:ゲート電極、 34:ゲート絶縁膜、 40:ターミナル、 42:上側放熱板、 44:下側放熱板、 46:ボンディングワイヤ、 48:ゲート端子、 50:絶縁樹脂、 62:ターミナル存在範囲、 64:ターミナル非存在範囲、 66:第1ターミナル非存在範囲、 68:第2ターミナル非存在範囲、 100:半導体装置