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特開2024-124918多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法、及び、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124918
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法、及び、化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240906BHJP
   C07C 43/29 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C07F5/02 F CSP
C07C43/29 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032902
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 香樹
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB84
4H006AB92
4H006BM30
4H006BM73
4H006BP60
4H006GN03
4H006GP06
4H048AA02
4H048AC90
4H048VA22
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】副生成物が少なく、精製が容易であり、収率の高いカップリング反応により合成可能な合成中間体を用いる、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】具体的には、下記に示すように多環式芳香環上にハロゲン原子を有する合成中間体から、ホウ素含有多環式芳香族化合物を得る製造方法である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、
化合物(A)をR-Mと反応させる工程(i)、
さらにB(Zと反応させる工程(ii)、および、
さらにN(Rを混合して化合物(B)を得る工程(iii)、
をこの順序で含む、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
は、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。
前記N-RのRは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表し、また、前記N-RのRは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。
は、アルカリ金属を表す。)
【請求項2】
下記式(2)で表される、Mを用いた化合物(C)と化合物(D)とのカップリング反応により化合物(A)を得る工程を、前記工程(i)よりも前に含む、請求項1に記載の製造方法。
【化2】

(式(2)中、
Ar~Ar、R、n1、X、およびYは、前記式(1)におけるAr~Ar、R、n1、X、およびYと同義である。
は、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。XがCl、Br、またはIである場合、Xと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。ここで、XがCl、Br、またはIである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子、あるいは、B(ORである 。また、XがB(ORである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
前記B(ORのRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。また、分子内に含まれる2つのRは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
は遷移金属触媒を表す。)
【請求項3】
前記式(1)において、R~Rが有していてもよい置換基が、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、および6-フェニル-1-ヘキシル基よりなる群から選択される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(2)において、Mが長周期型周期表第8族~第11族元素を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(2)において、前記カップリング反応の反応温度が50℃~120℃である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(1)において、化合物(B)が下記B1~B120から選択される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】
【請求項7】
下記一般式(3)で表される、化合物(A)。
【化13】

(一般式(3)中、
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。
前記N-RのRは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表し、また、前記N-RのRは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法に関する。具体的には、多環式芳香環上にハロゲン原子を有する合成中間体から、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る製造方法に関する。さらに本発明は、カップリング反応により、多環式芳香環上にハロゲン原子を有する合成中間体を得る工程を含む、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を用いたものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子(OLED)の開発が盛んに行われている。有機電界発光素子は、通常、陽極と陰極の間に、電荷注入層、電荷輸送層、有機発光層、電子輸送層などを有し、これらの各層に適した材料が開発されつつある。有機発光層に用いられる発光材料は、赤、緑、青のそれぞれの発光色について開発が進んでいる。
【0003】
有機電界発光素子の発光材料としては、一般的な蛍光材料、貴金属錯体、および熱遅延蛍光材料が挙げられる。中でも、貴金属錯体、および熱遅延蛍光材料は、原理的に励起子の全てを発光に利用することができるものであり、これらを用いた有機電界発光素子の発光効率が徐々に更新されている。しかしながら、電荷遷移状態の影響により、貴金属錯体、および熱遅延蛍光材料の色純度は不十分である。そのため、近年では、色純度が高く、高効率な多重共鳴型蛍光材料の研究開発が精力的に行われている。
多重共鳴型蛍光材料は、ホウ素、リンなどの電子吸引性の原子と、酸素、窒素、硫黄などの電子供与性の原子が、芳香環上の隣接した位置に配列された縮環構造を有することが特徴であり、これまでに様々な分子構造が提案されてきた。このような多重共鳴型蛍光材料の一種として、ホウ素と、酸素、窒素、硫黄などの電子供与性の元素、および、ナフチル基などの多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物が着目されており、その工業的に有利な製造方法が求められている。
【0004】
特許文献1には、下記式により示される、有機アルカリ化合物により2つのヘテロ原子の間のハロゲン原子をオルトメタル化した後、ハロゲン化ホウ素により前記メタルとホウ素を交換し、さらにブレンステッド塩基を用いて連続的な芳香族求電子置換反応を促進させることによりホウ素含有多環式芳香族化合物を得る反応が開示されている。
【0005】
【化1】
【0006】
特許文献2には、下記式により示される、ナフチル基とフェノキシ基の間に塩素原子を有する合成中間体から、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る反応が開示されている。この方法において、前記合成中間体を得るための、1,4-ジブロモ-2,5-ジクロロ-3,6-ヨードベンゼンと1-ヨードナフタレンのカップリング反応の製造工程で、副生成物が非常に多く生じ、精製が困難であることから、収率が低減するという欠点がある。また、特許文献2に記載の多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物は、合成報告例が乏しく、安定した製造を実現するためには、新たな製造方法の開発が必要である。
【0007】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際出願第2015/102118号
【特許文献2】中国特許出願公開第114213441号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法に関する。具体的には、多環式芳香環上にハロゲン原子を有する合成中間体から、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る製造方法である。さらに本発明は、カップリング反応による、多環式芳香環上にハロゲン原子を有する合成中間体を得る工程を含む、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法である。
【0010】
本発明は、副生成物が少なく、精製が容易であり、収率の高いカップリング反応により合成可能な新規合成中間体を用いる、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の新たな製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該新規合成中間体として使用可能な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、多環式芳香環上にハロゲン原子が導入された新規合成中間体から、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る製造方法により、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、次のとおりである。
【0013】
本発明の態様1は、
下記式(1)で表される、
化合物(A)をR-Mと反応させる工程(i)、
さらにB(Zと反応させる工程(ii)、および、
さらにN(Rを混合して化合物(B)を得る工程(iii)、
をこの順序で含む、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法である。
【0014】
【化3】
【0015】
(式(1)中、
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
は、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。
前記N-RのRは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表し、また、前記N-RのRは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。
は、アルカリ金属を表す。)
【0016】
本発明の態様2は、態様1の製造方法において、
下記式(2)で表される、Mを用いた化合物(C)と化合物(D)とのカップリング反応により化合物(A)を得る工程を、前記工程(i)よりも前に含む、製造方法である。
【0017】
【化4】
【0018】
(式(2)中、
Ar~Ar、R、n1、X、およびYは、前記式(1)におけるAr~Ar、R、n1、X、およびYと同義である。
は、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。XがCl、Br、またはIである場合、Xと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。ここで、XがCl、Br、またはIである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子、あるいは、B(ORである 。また、XがB(ORである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
前記B(ORのRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。また、分子内に含まれる2つのRは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
は遷移金属触媒を表す。)
【0019】
本発明の態様3は、態様1又は2の製造方法において、
前記式(1)において、R~Rが有していてもよい置換基が、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、および6-フェニル-1-ヘキシル基よりなる群から選択される、製造方法である。
【0020】
本発明の態様4は、態様2の製造方法において、
前記式(2)において、Mが長周期型周期表第8族~第11族元素を含む、製造方法である。
【0021】
本発明の態様5は、態様2の製造方法において、
前記式(2)において、前記カップリング反応の反応温度が50℃~120℃である、製造方法である。
【0022】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれか1つの製造方法において、
前記式(1)において、化合物(B)が下記B1~B120から選択される、製造方法である。
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
【化13】
【0032】
【化14】
【0033】
本発明の態様7は、
下記一般式(3)で表される、化合物(A)である。
【0034】
【化15】
【0035】
(一般式(3)中、
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。
前記N-RのRは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表し、また、前記N-RのRは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。)
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、カップリング反応により高い収率で合成可能な新規合成中間体を用いる、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の新たな製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、当該新規合成中間体として使用可能な化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0038】
本発明による、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法は、下記式(1)で表される、化合物(A)をR-Mと反応させる工程(i)、さらにB(Zと反応させる工程(ii)、および、さらにN(Rを混合して化合物(B)を得る工程(iii)、をこの順序で含む。
【0039】
【化16】
【0040】
(式(1)中、
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
は、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。
前記N-RのRは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表し、また、前記N-RのRは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。
は、アルカリ金属を表す。)
【0041】
即ち、本発明は、ナフチル基とフェノキシ基の間にハロゲン原子を有する合成中間体から、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る反応に代えて、ナフチル基にハロゲン原子を有する新規合成中間体から、対応する多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を製造する工程を含む。
【0042】
本発明は、従来の多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る製造工程に含まれる、1,4-ジブロモ-2,5-ジクロロ-3,6-ヨードベンゼンと1-ヨードナフタレンのカップリング反応のように、高温の反応条件が必要であることに起因する、大量の副生成物の精製により精製が困難となる問題が生じない。このため、本発明の製造方法によって、目的とする多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を高い総収率で得ることができる。さらに本発明は、多環式芳香環上にハロゲン原子を有する新規合成中間体を用いる新たな製造方法を提供するものであり、目的とする多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の安定製造に寄与することができる。
【0043】
また、本発明による多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法は、下記式(2)で表される、Mを用いた化合物(C)と化合物(D)とのカップリング反応により化合物(A)を得る工程を、工程(i)よりも前に含むことができる。
【0044】
【化17】
【0045】
(式(2)中、
Ar~Ar、R、n1、X、およびYは、前記式(1)におけるAr~Ar、R、n1、X、およびYと同義である。
は、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。XがCl、Br、またはIである場合、Xと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。ここで、XがCl、Br、またはIである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子、あるいは、B(ORである 。また、XがB(ORである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
前記B(ORのRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。また、分子内に含まれる2つのRは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
は遷移金属触媒を表す。)
【0046】
以下に、本発明の一実施形態である製造方法を詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)である第一の実施形態であるが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
【0047】
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1以上有していてもよいことを意味するものとする。
【0048】
[定義]
<芳香族炭化水素基>
芳香族炭化水素基とは、後述の説明の対象となる化合物の構造の中での結合状態に応じて、芳香族炭化水素環構造の1価、2価、または3価以上の構造を指す。
芳香族炭化水素環の構造において、通常、炭素数は制限されるものではないが、好ましくは炭素数6以上、60以下であり、炭素数の上限としてより好ましくは炭素数48以下、さらに好ましくは炭素数30以下である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5個の環を含む縮合環基、または、これらから選択される基が複数個連結した構造が挙げられる。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合は、通常、2~10個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。
【0049】
芳香族炭化水素環構造として好ましくは、ベンゼン環、ビフェニル環すなわちベンゼン環が2個連結した構造、ターフェニル環すなわちベンゼン環が3個連結した構造、クォーターフェニレン環すなわちベンゼン環が4個連結した構造、ナフタレン環、フルオレン環である。
【0050】
<芳香族複素環基>
芳香族複素環基とは、後述の説明の対象となる化合物の構造の中での結合状態に応じて、芳香族複素環構造の1価、2価、または3価以上の構造を指す。
芳香族複素環の構造において、通常、炭素数は制限されるものではないが、好ましくは、炭素数3以上、50以下であり、炭素数の上限としてより好ましくは炭素数45以下、さらに好ましくは炭素数30以下である。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4個の環を含む縮合環基、または、これらが複数個連結した基が挙げられる。芳香族複素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。芳香族複素環が複数個連結される場合は、通常、2~10個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。
【0051】
芳香族複素環構造として好ましくは、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
【0052】
<置換基>
特に断りの無い場合、置換基とは任意の基であるが、好ましくは、下記置換基群Wから選択される基である。また、有していてもよい置換基が置換基群Wから選択される、または、有していてもよい置換基が置換基群Wから選択されることが好ましい、と記されている場合、好ましい置換基も下記置換基群Wに記されているとおりである。
【0053】
<置換基群W
置換基群Wは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、および芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は、直鎖、分岐、および環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【0054】
置換基群Wとして、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
炭素数が1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である、直鎖、分岐、または環状のアルキル基。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、または環状のアルケニル基。具体例としては、ビニル基等が挙げられる。
炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、または分岐のアルキニル基。具体例としては、エチニル基等が挙げられる。
【0055】
炭素数が1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、または環状のアルコキシ基。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
炭素数が4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である、アリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基。具体例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、アルコキシカルボニル基。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0056】
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基。具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
炭素数が10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基。具体例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等が挙げられる。
炭素数が7以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基。具体例としては、フェニルメチルアミノ基が挙げられる。
【0057】
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアシル基。具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基が挙げられる。
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子。好ましくはフッ素原子である。
炭素数が1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基。具体例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0058】
炭素数が1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
炭素数が4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基。具体的には、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基。具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0059】
炭素数が2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基。具体例としては、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等が挙げられる。
炭素数が通常7以上、好ましくは9以上であり、通常30以下、好ましくは18以下、より好ましくは10以下であるアラルキル基。具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル-2-イル基、2-フェニルブチル-2-イル基、3-フェニルペンチル-3-イル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-ブチル基、5-フェニル-1-ペンチル基、6-フェニル-1-ヘキシル基、7-フェニル-1-ヘプチル基、8-フェニル-1-オクチル基等が挙げられる。
炭素数が6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、複数のフェニル基が連結した基、等が挙げられる。
炭素が3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。具体例としては、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0060】
上記置換基は、直鎖、分岐、または環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
上記置換基が隣接する場合、隣接した置換基同士が結合して環を形成してもよい。好ましい環の大きさは、4員環、5員環、6員環であり、具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0061】
上記の置換基群Wの中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。
また、上記置換基群Wの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基群Wと同じのものが挙げられる。好ましくは、更なる置換基を有しないか、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルコキシ基、またはフェニル基、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、またはフェニル基である。
【0062】
上記の置換基群Wの中でも、より好ましくは、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、および6-フェニル-1-ヘキシル基である。
例えば、式(1)において、R~Rが有していてもよい置換基が、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、および6-フェニル-1-ヘキシル基よりなる群から選択されることがより好ましい。式(2)における、R~Rが有していてもよい置換基のより好ましい態様も同様である。
【0063】
<連結基>
連結基は特に限定はされないが、好ましくは、アルキレン基、2価の酸素原子、または置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基である。
連結基として選択され得るアルキレン基としては、通常、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6のアルキレン基が挙げられる。
連結基として選択され得る2価の芳香族炭化水素基としては、通常、炭素数6以上であり、通常、炭素数36以下、好ましくは30以下、より好ましくは24以下の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素環の構造としてはベンゼン環が好ましく、有してもよい置換基は、前述の置換基群Wから選択することが出来る。
【0064】
<化合物(A)>
式(1)で示される反応における化合物(A)は、多環式芳香環上にハロゲン原子が導入された、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の合成中間体と表現することもできる。本発明は、下記一般式(3)で表される化合物(A)にも関する。
【0065】
【化18】
【0066】
(一般式(3)中、
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。
前記N-RのRは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表し、また、前記N-RのRは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。)
【0067】
(Ar~Ar
Ar~Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。好ましくは、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素、または、置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環を表す。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、またはペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常60以下、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下の環が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有するベンゼン環が特に好ましい。
芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、またはキナゾリノン環等の、炭素数が通常3以上、通常50以下、好ましくは45以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは12以下の環が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有する複素環が特に好ましい。
【0068】
(R
は、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3から50までの芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい炭素数3から50までの芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0069】
ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、またはIが挙げられる。ハロゲン原子として、好ましくはF、またはClであり、より好ましくはFである。
アルキル基としては、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が1以上、12以下、好ましくは8以下であるアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0070】
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、またはペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常60以下、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下の基が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有するベンゼン環が特に好ましい。
芳香族複素環基としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、またはキナゾリノン環等の、炭素数が通常3以上、通常50以下、好ましくは45以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは12以下の基が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有する複素環が特に好ましい。
【0071】
これらの基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基は前述のとおりであり、具体的には、置換基群Wから選択することが出来る。好ましい置換基は、前記置換基群Wの好ましい置換基である。
【0072】
(n1)
n1は、それぞれ独立に、0以上、Ar~Arが取りうる最大の水素原子の数以下の整数である。n1は、それぞれ独立に、好ましくは0~4の整数であり、より好ましくは0~2の整数である。
【0073】
(X
は、それぞれ独立に、Cl、Br、またはIを表す。Xは、それぞれ独立に、好ましくはBr、またはIであり、より好ましくはBrである。
【0074】
(Y
は、それぞれ独立に、O、N-R、S、またはSeを表す。Yは、それぞれ独立に、好ましくはO、N-R、Sであり、より好ましくはOである。
【0075】
(R
は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。好ましくは、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3から50までの芳香族複素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい炭素数3から50までの芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接、あるいは、連結基を介して複数個結合した1価の基を表す。また、Rは、直接、または、連結基を介して、前記Arと結合していてもよい。
【0076】
アルキル基としては、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0077】
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、またはペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常60以下、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下の基が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有するベンゼン環が特に好ましい。
【0078】
芳香族複素環基としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、またはキナゾリノン環等の、炭素数が通常3以上、通常50以下、好ましくは45以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは12以下の基が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有する複素環が特に好ましい。
【0079】
これらの基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基は前述のとおりであり、具体的には、置換基群Wから選択することが出来る。好ましい置換基は、前記置換基群Wの好ましい置換基である。
【0080】
<化合物(B)>
式(1)で示される反応における化合物(B)に記載のAr~Ar、R、R、n1、およびYは、化合物(A)におけるAr~Ar、R、R、n1、およびYと同義であり、好ましい態様もまた同様である。
【0081】
(好ましい態様)
化合物(B)は、下記B1~B120から選択されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0082】
【化19】
【0083】
【化20】
【0084】
【化21】
【0085】
【化22】
【0086】
【化23】
【0087】
【化24】
【0088】
【化25】
【0089】
【化26】
【0090】
【化27】
【0091】
【化28】
【0092】
<化合物(C)>
式(2)で示される反応における化合物(C)に記載のAr、Ar、R、n1、およびXは、前記式(1)におけるAr、Ar、R、n1、およびXと同義であり、好ましい態様もまた同様である。
【0093】
(X
は、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。XがCl、Br、またはIである場合、Xと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。また、XがCl、Br、またはIである場合、XはBr、またはIが好ましく、Brがより好ましい。
【0094】
(R
は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基を表す。また、分子内に含まれる2つのRは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
アルキル基としては、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0095】
<化合物(D)>
式(2)で示される反応における化合物(D)に記載のAr、R、R、R、n1、およびYは、前記式(1)におけるAr、R、R、R、n1、およびYと同義であり、好ましい態様もまた同様である。
【0096】
(X
は、それぞれ独立に、Cl、Br、I、またはB(ORを表す。ここで、XがCl、Br、またはIである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子、あるいは、B(ORである 。また、XがB(ORである場合、XはXと同一、または、Xよりも分子量が大きいハロゲン原子である。
【0097】
<R
式(1)で示される反応におけるRは、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。好ましくは、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基を表す。
【0098】
アルキル基としては、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が通常6以上、通常12以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である芳香族炭化水素基が挙げられる。具体例として、ベンゼン環等が挙げられる。
【0099】
<R
式(1)で示される反応におけるRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基を表す。2つのRが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0100】
アルキル基としては、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が通常6以上、通常12以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である芳香族炭化水素基が挙げられる。具体例として、ベンゼン環等が挙げられる。
【0101】
<Z
式(1)で示される反応におけるZは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。好ましくは、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または置換基を有していてもよい炭素数6~60のアリールオキシ基を表す。
【0102】
ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、またはIが挙げられる。ハロゲン原子として、好ましくはBr、またはIであり、より好ましくはBrである。
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、または環状のアルキルオキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、1-プロピルオキシ基、2-プロピルオキシ基、1-ブチルオキシ基、2-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、またはシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常6以上、通常60以下、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下の基が挙げられる。具体例としては、フェノキシ基等が挙げられる。
【0103】
<M
式(1)で示される反応におけるMは、アルカリ金属を表す。
アルカリ金属としては、Li、Na、またはKが挙げられる。アルカリ金属として、好ましくはLi、またはNaであり、より好ましくはLiである。
【0104】
<M
式(2)で示される反応におけるMは、遷移金属触媒を表す(以下、「遷移金属触媒M」ともいう。)。遷移金属触媒Mは、遷移金属単体又は、遷移金属と配位子とが結合してなる触媒である。
【0105】
遷移金属触媒Mは、遷移金属として、長周期型周期表第8族~第11族元素を含むことが好ましく、長周期型周期表第10、11族元素を含むことがより好ましく、ニッケル、パラジウム、または銅を含むことがさらに好ましく、パラジウムを含むことが特に好ましい。遷移金属触媒Mは、これらの遷移金属の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
これらの遷移金属は、一般的には、ニッケルアセチルアセトン錯体、酢酸パラジウム、ジベンジリデンアセトンパラジウム等の金属錯体と後述のホスフィンを有する配位子とを溶媒中で混合して、反応活性な触媒を形成させて反応に用いる。従って、本発明で用いる遷移金属触媒Mは、長周期型周期表第8族~第11族元素とリン原子とを含むことが好ましい。
【0106】
配位子は、孤立電子対を持つ金属と配位結合し、錯体を形成する基を有する化合物であり、好ましくは、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、より好ましくは、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィンが用いられる。
これらのホスフィン配位子は置換基を有していても良く、単結合、酸素原子、窒素原子、鉄原子、アルキル基等により2量化していてもよい。
【0107】
トリアリールホスフィンの例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(オルトトリル)ホスフィン等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンの例としては、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン等が挙げられる。
【0108】
ジアルキルアリールホスフィンの例としては、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(RuPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(BrettPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル(MePhos)等が挙げられる。
アルキルジアリールホスフィンの例としてはビス(ジフェニルホスフィノ)メタン等が挙げられる。
【0109】
これらの配位子は、遷移金属錯体に対して、1~100モル当量、より好ましくは1~10モル当量用いる事が、反応収率や反応速度の観点から好ましい。
これらの配位子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0110】
また、遷移金属触媒としては、1種を単独で用いてもよく、遷移金属や配位子の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
遷移金属触媒の使用量は特に制限はないが、化合物(C)に対して、遷移金属触媒に含まれる遷移金属1つ当たりの量が0.1~30モル%程度となるように用いることが、反応活性と反応終了後の後処理の簡便さの観点から好ましい。
【0111】
<塩基性化合物>
式(2)で示される反応では、反応活性を高めるために、反応系に塩基性化合物を存在させてもよい。
【0112】
塩基性化合物としては、プロトンを受容する又は塩基対を与える化学種であって、溶媒に溶解又は懸濁させて使用できるものであればよく、特に限定されない。
塩基性化合物の好ましい例としては、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三カリウム等の弱酸とアルカリ金属やアルカリ土類金属との塩、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、グアニジン等の有機アミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、水酸化トリメチルスルホニウム等のアルキルスルホニウム塩、水酸化ジフェニルヨードニウム等のアルキル(アリール)ヨードニウム塩、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
塩基性化合物を用いる場合、その使用量は、化合物(C)に対して好ましくは2~10モル当量、より好ましくは3~6モル当量程度とすることが、塩基性化合物を用いることによる反応活性の向上効果と、反応収率、反応時間の観点から好ましい。
【0114】
<溶媒>
式(1)で示される反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。
溶媒としては、化合物(A)を溶解させ、式(1)に記載の、R-M、B(Z、およびN(Rにより著しく分解されるようなものでなければよく、特に限定されない。
【0115】
溶媒としては、好ましくは、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられる。
これらのうち、反応条件における安定性が高いことから、特に好ましくは芳香族系溶媒である。
炭化水素系溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
芳香族系溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。
【0116】
溶媒は、反応系を過大とすることなく、均一な反応系を形成できる程度に使用することが好ましく、化合物(A)の重量に対して0.01~1000倍量が好ましく、1~500倍量がより好ましい。
式(2)で示される反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。
溶媒としては、化合物(C)、および化合物(D)を溶解させ、前述の塩基性化合物により著しく分解されるようなものであれば特に限定されない。
【0117】
溶媒としては、好ましくは、水、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、ハロゲン系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
これらのうち、反応条件における安定性が高いことから、特に好ましくは、水、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、アミン系溶媒、スルホキシド系溶媒である。
炭化水素系溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
【0118】
芳香族系溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
アルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。
エーテル系溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
アミド系溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0119】
ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミン系溶媒の例としては、トリエチルアミン、N,N-ジエチルアニリン等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0120】
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の混合溶媒とする場合は、相溶性のある溶媒であっても、相溶性の無い溶媒でもよい。
溶媒は、反応系を過大とすることなく、均一な反応系を形成できる程度に使用することが好ましく、化合物(C)の重量に対して0.01~1000倍量が好ましく、1~500倍量がより好ましい。
【0121】
なお、塩基性化合物を効率よく反応させるために、溶媒に対する任意の比率で界面活性剤を反応系に添加してもよく、界面活性剤自体を溶媒として用いてもよい。
【0122】
[多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法]
本発明の多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法は、式(1)で示される、化合物(A)から化合物(B)を得る反応工程を含む。また、本発明の多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法は、式(2)で示される化合物(C)と化合物(D)のカップリング反応により、前記化合物(A)を得る工程を含むことが好ましい。
【0123】
本発明の製造方法により製造される多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物は、式(1)で示される、化合物(A)から化合物(B)を得る工程を含んで製造されるものであれば特に制限がない。
【0124】
本発明の製造方法により製造される多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物としては、例えば、化合物(B)を挙げることができる。
本発明の製造方法により製造される多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物が化合物(B)である場合には、一様態として、式(1)で示される、化合物(A)から化合物(B)を得る工程を含むことにより、目的とする多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を製造することができる。
【0125】
<式(1)で示される反応>
式(1)で示される反応は、下記のとおり表される。
【0126】
【化29】
【0127】
本発明は、上記式(1)で表される、化合物(A)をR-Mと反応させる工程(i)、さらにB(Zと反応させる工程(ii)、および、さらにN(Rを混合して化合物(B)を得る工程(iii)、をこの順序で含む、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法にも関する。なお、置換基の定義や好ましい態様等は、上述したとおりである。
【0128】
式(1)で示される反応は、好ましくは、化合物(A)の2つのハロゲン原子(X)を有機アルカリ化合物(R-M)によりオルトメタル化した後(工程(i))、ホウ素化合物(B(Z)により前記メタルとホウ素を交換し(工程(ii))、さらにブレンステッド塩基(N(R)を混合して連続的な芳香族求電子置換反応を促進させることにより、化合物(B)を得る(工程(iii))反応である。
【0129】
式(1)で示される反応に用いる各化合物を混合する手順の例としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下に、化合物(A)、溶媒を混合した後、有機アルカリ化合物(R-M)、ホウ素化合物(B(Z)、ブレンステッド塩基(N(R)の順に混合して反応させる手順等が挙げられる。
ここで、不活性ガス雰囲気下とするのは、酸素や湿気に弱い場合の多い、有機アルカリ化合物(R-M)、およびホウ素化合物(B(Z)の失活を抑制するためである。
【0130】
式(1)で示される、有機アルカリ化合物(R-M)により化合物(A)をオルトメタル化する工程の反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、-100℃~100℃が好ましく、-78℃から60℃がより好ましく、0℃から30℃がさらに好ましい。
【0131】
式(1)で示される、ホウ素化合物(B(Z)により前記メタルとホウ素を交換する工程の反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、-100℃~100℃が好ましく、-78℃から60℃がより好ましく、0℃から30℃がさらに好ましい。
【0132】
式(1)で示される、ブレンステッド塩基(N(R)を混合して連続的な芳香族求電子置換反応を促進させ、化合物(B)を得る工程の反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0℃~200℃が好ましく、100℃から2000℃がより好ましく、140℃から180℃がさらに好ましい。
反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5時間~7日間が好ましく、より好ましくは0.5時間~48時間、さらに好ましくは1時間~24時間である。
【0133】
式(1)で示される反応の生成物である化合物(B)は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0134】
本発明による製造方法は、一態様として、式(1)で表される反応の生成物である化合物(B)を、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物として得る方法である。
また、本発明による製造方法は、別の一態様として、式(1)で表される反応の生成物である化合物(B)をさらに修飾する工程を経て、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物を得る方法である。化合物(B)をさらに修飾する工程としては、例えば、化合物(B)の置換基Rを別の置換基に変換する工程、化合物(B)の置換基Rどうしを結合させて環構造を形成する工程、等を挙げることができる。
【0135】
<式(1)で示される反応の例>
式(1)で示される反応の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0136】
【化30】
【0137】
【化31】
【0138】
【化32】
【0139】
<式(2)で示される反応>
式(2)で示される反応は、下記のとおり表される。
【0140】
【化33】
【0141】
本発明は、式(2)で表される、Mを用いた化合物(C)と化合物(D)とのカップリング反応により化合物(A)を得る工程を、上記工程(i)よりも前に含む、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法にも関する。なお、置換基の定義や好ましい態様等は、上述したとおりである。
【0142】
式(2)で示される反応は、好ましくは、化合物(C)と化合物(D)とのカップリング反応である。式(2)で示される反応の手順としては特に制限されず、例えば、遷移金属触媒もしくは遷移金属と配位子であるM、必要に応じて用いられる塩基性化合物、溶媒、化合物(C)、及び化合物(D)を混合して反応させる手順等が挙げられる。
【0143】
式(2)で示される反応に用いる各化合物を混合する手順の例としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下に、化合物(C)、化合物(D)、溶媒を混合した後、塩基性化合物を添加した混合溶液に、別の容器に遷移金属錯体、配位子、溶媒を添加して得られる遷移金属触媒溶液を添加して反応させる手順等が挙げられる。
ここで、不活性ガス雰囲気とするのは、遷移金属触媒が酸素に弱い場合が多く、触媒の失活を抑制するためである。
【0144】
式(2)で示されるカップリング反応における反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で0℃~200℃が好ましく、50℃~120℃がより好ましく、70℃~110℃がさらに好ましい。
反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5時間~7日間が好ましく、より好ましくは0.5時間~48時間、さらに好ましくは1時間~24時間である。
【0145】
化合物(C)と化合物(D)の混合モル比(化合物(C)/化合物(D))は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、2~50が好ましく、2~20がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
【0146】
式(2)で示される反応の生成物である化合物(A)は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0147】
<式(2)で示される反応の例>
式(2)で示される反応の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0148】
【化34】
【実施例0149】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。
【0150】
[実施例1]
<化合物B-17の合成>
【0151】
【化35】
【0152】
窒素気流下、化合物A-17(1.4g,1.78mmol)のメシチレン(50mL)溶液に、0℃でn-ブチルリチウム(1.6M)(3.7mL,5.89mmol)を滴下し、0℃で40分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.76mL,8.03mmol)を添加した。添加後、反応溶液を室温に昇温し、1時間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.1mL,35.7mmol)を加えた。添加後、反応溶液を170℃に昇温し、12時間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、メタノール(20mL)を添加した。反応溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた粗精製物をジクロロメタンに再溶解し、メタノールを加えて生じる沈殿物を濾過で回収、真空乾燥することで、化合物B-17(130mg,収率11.3%)を赤色固体として得た。
【0153】
[実施例2]
<中間体1の合成>
【0154】
【化36】
【0155】
窒素気流下、1,4-ジブロモ-2,5-ジフルオロベンゼン(5.0g,18.4mmol)と4-tert-ブチルフェノール(6.9g,46.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)溶液に、室温で炭酸カリウム(7.6g,55.2mmol)を加え、その後、反応溶液を180℃に加熱し、6時間撹拌した。反応後、室温まで空冷した反応溶液を水(200mL)に注ぎ込み、沈殿物を濾過で回収、水で洗浄した。回収した沈殿物をジクロロメタンで再溶解し、メタノールを加えて生じた沈殿物を濾過で回収、真空乾燥することで、中間体1(7.6g,収率77.6%)を無色固体として得た。
【0156】
<化合物C-17の合成>
【0157】
【化37】
【0158】
窒素気流下、中間体1(10.0g,18.8mmol)、ビス(ピナコラート)ジボラン(11.9g,47.0mmol)、Pd(dppf)Cl(687mg,0.94mmol)、および、酢酸カリウム(9.2g,93.9mmol)の1,4-ジオキサン(100mL)溶液を還流し、8時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで空冷し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物C-17(7.7g,収率64.6%)を無色固体として得た。
【0159】
<化合物A-17の合成>
【0160】
【化38】
【0161】
窒素気流下、化合物C-17(7.6g,12.1mmol)と1,8-ジブロモナフタレン(10.4g,36.4mmol)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液に、20分間窒素バブリングをした炭酸カリウム水溶液(1.8M)(67mL,121mmol)とPd(PPh(0.7g,0.61mmol)を添加した。反応溶液を還流し、8時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで空冷し、析出した沈殿物を濾過で回収した。濾液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。濾過、抽出で得られた固体を合わせてジクロロメタンで洗浄することで、化合物A-17(7.6g,収率79.8%)を淡黄色固体として得た。
【0162】
[実施例3]
<化合物B-11の合成>
【0163】
【化39】
【0164】
窒素気流下、化合物A-11(2.5g,2.02mmol)のメシチレン(50mL)溶液に、0℃でn-ブチルリチウム(1.6M)(4.2mL,6.67mmol)を滴下し、0℃で40分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.86mL,9.09mmol)を添加した。添加後、反応溶液を室温に昇温し、1時間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.9mL,40.4mmol)を加えた。添加後、反応溶液を170℃に昇温し、12時間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、メタノール(20mL)を添加した。反応溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた粗精製物をジクロロメタンに再溶解し、メタノールを加えて生じる沈殿物を濾過で回収、真空乾燥することで、化合物B-11(35mg,収率1.58%)を赤色固体として得た。
【0165】
[実施例4]
<中間体2の合成>
【0166】
【化40】
【0167】
窒素気流下、1,4-ジブロモ-2,5-ジフルオロベンゼン(1.2g,4.41mmol)と9,9-ジヘキシルフルオレン-2-オール(3.9g,11.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(25mL)溶液に、室温で炭酸カリウム(1.8g,13.2mmol)を加え、その後、反応溶液を180℃に加熱し、6時間撹拌した。反応後、室温まで空冷した反応溶液を水(200mL)に注ぎ込み、沈殿物を濾過で回収、水で洗浄した。回収した沈殿物をジクロロメタンで再溶解し、メタノールを加えて生じた沈殿物を濾過で回収、真空乾燥することで、中間体2(3.2g,収率78.7%)を無色固体として得た。
【0168】
<化合物C-11の合成>
【0169】
【化41】
【0170】
窒素気流下、中間体2(5.9g,6.32mmol)、ビス(ピナコラート)ジボラン(4.0g,15.8mmol)、Pd(dppf)Cl(231mg,0.32mmol)、および、酢酸カリウム(3.1g,31.6mmol)の1,4-ジオキサン(50mL)溶液を還流し、8時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで空冷し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物C-11(3.3g,収率50.8%)を無色固体として得た。
【0171】
<化合物A-11の合成>
【0172】
【化42】
【0173】
窒素気流下、化合物C-11(3.2g,3.12mmol)と5,6-ジブロモ-1,2-ジヒドロアセナフタレン(3.1g,9.35mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、20分間窒素バブリングをした炭酸カリウム水溶液(1.8M)(33mL,59.4mmol)とPd(PPh(0.18g,0.15mmol)を添加した。反応溶液を還流し、8時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで空冷し、析出した沈殿物を濾過で回収した。濾液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。濾過、抽出で得られた固体を合わせてジクロロメタンで洗浄することで、化合物A-11(2.6g,収率67.4%)を無色固体として得た。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明による、副生成物が少なく、精製が容易であり、収率の高いカップリング反応により合成可能な多環式芳香環上にハロゲンを有する合成中間体を用いる、多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の新たな製造方法は、工業的に有利な多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物の製造方法として利用することができる。また、得られた多環式芳香環の縮環構造を有するホウ素含有多環式芳香族化合物は、例えば、多重共鳴型蛍光材料として利用することができる。