(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124920
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/86 20060101AFI20240906BHJP
B65G 47/80 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B65G47/86 G
B65G47/80 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032907
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】592129774
【氏名又は名称】株式会社FDKエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 祐一郎
【テーマコード(参考)】
3F072
【Fターム(参考)】
3F072AA28
3F072GE05
3F072KC07
3F072KC16
(57)【要約】
【課題】安定してワークの受渡しを行うことができる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置100では、3つのカムを用い、搬送ヘッド26の経路と位置を可変させ、受渡しを行う位置で相手側装置に同期させる機構を採用している。すなわち、径方向カム30及び角度決定カム40によって搬送ヘッド26(リンク)の径方向の位置と角度とを規制し、回転テーブル10の回転角度に応じて搬送ヘッド26の位置を決定している。この機構によれば、相手側装置との同期中にワークWの受渡しが可能となり、受渡時間を延ばすことによって、高速搬送と安定化とを実現することができる。また、搬送ヘッド26は、上下方向カム50によって個別に上下駆動を行うことができ、径方向と角度だけではなく、上下方向の動作も可能になっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続回転しながらワークの受渡しを行う搬送装置であって、
回転軸を中心として回転可能な回転部と、
前記ワークを搬送する搬送部を有し、前記回転部の回転に応じて回転可能な搬送ユニットと、
前記回転部の回転に応じて前記搬送部を径方向に移動させる第1カムと、
前記第1カムとは別のカムであって、前記回転部の回転に応じて前記搬送部を回転方向に移動させる第2カムと、
を備える搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記回転部の回転に応じて前記搬送部を上下方向に移動させる第3カムを備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記搬送ユニットは、径方向に移動可能な第1アームと、前記第1アーム及び前記搬送部に接続され、径方向及び回転方向に移動可能な第2アームと、を備え、
前記第1カムは、前記第1アーム、前記第2アーム及び前記搬送部を径方向に移動させ、
前記第2カムは、前記第2アーム及び前記搬送部を回転方向に移動させることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記第1カムと前記第2カムとは、種類が異なるカムであることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記第1カムは、前記ワークの受渡し位置において径方向の内側に向かって前記搬送部を移動させることにより、前記ワークの受渡しを行う相手側装置の前記ワークの搬送経路上に前記搬送部を移動させることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記第2カムは、前記搬送部が前記ワークの受渡し位置に近づいていく際には、前記搬送部を前記受渡し位置に向かう方向に移動させ、前記搬送部が前記受渡し位置から離れていく際には、前記搬送部を前記受渡し位置に向かう方向に移動させる特定動作を前記搬送部に行わせることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送装置において、
前記第2カムは、前記ワークの受け側では、前記搬送部に前記特定動作を所定回数行わせ、前記ワークの渡し側では、前記搬送部に前記特定動作を前記所定回数とは異なる規定回数行わせることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記第3カムは、複数配置されており、前記第3カムの各カム同士で、前記搬送部を上下方向に移動させるタイミングを異ならせていることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記搬送部は、前記第1カム及び前記第2カムにより、直線状の軌跡及び内側に凹んだ円弧状の軌跡のうち少なくとも一方の軌跡を一部に有する円形の軌跡を通過することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続回転しながらワークの受渡しを行う搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、磁力を用いた物品処理装置を開示している。特許文献1の技術では、2組のカムを用いてホルダを吸着保持する保持部材を揺動させ、ホルダの受渡しを行いやすいようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、相手側装置のワークの搬送経路が複雑である場合には、安定してワークの受渡しを行うことができない。
【0005】
そこで、本発明は、安定してワークの受渡しを行うことができる搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明は、以下の解決手段に示す各発明特定事項を少なくとも1つ含む発明とすることができる。さらに、以下の解決手段に示す各発明特定事項には、発明特定事項を限定する要素を追加して下位概念化することができ、発明特定事項を限定する要素を削除して上位概念化することもできる。
【0007】
解決手段の搬送装置は、例えば、連続回転しながらワークの受渡しを行う搬送装置であって、回転軸を中心として回転可能な回転部と、前記ワークを搬送する搬送部を有し、前記回転部の回転に応じて回転可能な搬送ユニットと、前記回転部の回転に応じて前記搬送部を径方向に移動させる第1カムと、前記第1カムとは別のカムであって、前記回転部の回転に応じて前記搬送部を回転方向に移動させる第2カムと、を備える搬送装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定してワークの受渡しを行うことができる搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】搬送装置100、第1相手側装置200及び第2相手側装置300を示す図である。
【
図3】径方向カム30及び角度決定カム40を示す図である。
【
図7】搬送ヘッド26がワークを受ける際の動作を示す図である。
【
図8】搬送ヘッド26がワークを渡す際の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
〔全体構成〕
図1は、搬送装置100、第1相手側装置200及び第2相手側装置300を示す図である。
搬送装置100は、連続回転しながらワークWの受渡しを行う搬送装置である。搬送装置100は、第1相手側装置200からワークWを受取り、ワークWを円弧状の経路で搬送し、第2相手側装置300にワークWを渡す。ワークWは、例えば、矩形の紙である。搬送装置100は、円周方向に並べて配置された12個の搬送ユニット20を備えており、1つの搬送ユニット20が1つのワークWを搬送する。搬送装置100は、1分で600個程度のワークWを搬送する。
【0011】
〔第1相手側装置〕
第1相手側装置200は、搬送装置100に対してワークWを渡す装置である。第1相手側装置200は、図示しない紙ロールと、図示しない切断機構と、2つの紙送りロール210と、を備えており、2箇所でワークWの受渡しを行う。
【0012】
紙ロールから繰り出された紙は、切断機構によりワークWの大きさに切断され、一方の紙送りロール210と他方の紙送りロール210とに、順番に送られる。紙送りロール210は、縦回転可能であり、紙送りロール210の側面には図示しない吸着孔が形成されている。紙送りロール210は、吸着孔から空気を吸引することでワークWを吸着しながらワークWを搬送する。紙送りロール210は、紙送りロール210の頂上(頂点)付近で搬送ユニット20(搬送ヘッド)にワークWを渡す。
【0013】
〔第2相手側装置〕
第2相手側装置300は、搬送装置100からワークWを受け取る装置である。第2相手側装置300は、回転ユニット310と、回転ユニット310の外縁付近に配置された複数の搬送部320と、を備えており、1箇所でワークWの受渡しを行う。
【0014】
回転ユニット310は、時計回りに回転可能であり、搬送部320の上面には図示しない吸着孔が形成されている。搬送部320は、吸着孔から空気を吸引することでワークWを吸着しながらワークWを搬送する。搬送部320は、回転ユニット310の左端側付近で搬送ユニット20(搬送ヘッド)からワークWを受け取る。なお、回転ユニット310によって搬送されたワークWは、その他の装置に渡したり、図示しない回収部で回収したりすることができる。
【0015】
〔搬送装置〕
図2は、搬送装置100を示す図である。なお、
図2は、搬送装置100の一部を抜き出した断面図であり、搬送ユニット20については、1個のみ図示している。
搬送装置100は、回転テーブル10(回転部)と、搬送ユニット20と、径方向カム30(第1カム)と、角度決定カム40(第2カム、アーム角度決定カム)と、上下方向カム50(第3カム)と、を備えている。
【0016】
回転テーブル10は、回転中心C(回転軸)を中心として反時計回りに回転可能なテーブルである。回転テーブル10は、図示しない駆動源及び駆動機構によって回転する。
搬送ユニット20は、回転テーブル10の回転に応じて回転可能なユニット(ツール)である。また、搬送ユニット20は、ベース部材21と、第1アーム22と、第2アーム23と、搬送ヘッド26(搬送部)と、を備えている。
【0017】
ベース部材21は、搬送ユニット20の土台となる部材であり、回転テーブル10に固定され、回転テーブル10の回転に応じて搬送ユニット20を回転させる。
第1アーム22は、ベース部材21に接続されており、所定のスライド機構によって径方向に移動可能な部材である。スライド機構は、搬送ヘッド26を径方向に移動可能とする。
【0018】
第2アーム23は、第1アーム22及び搬送ヘッド26に接続されており、径方向及び回転方向に移動可能な部材である。第2アーム23は、第1アーム22に接続されているため、第1アーム22が径方向に移動すると、第1アーム22とともに径方向に移動する。
【0019】
また、第2アーム23は、回転機構24によって回転方向に移動する。回転機構24は、第2アーム23の径方向の内側に配置され、筒状の部材及びこれに挿入された円柱状の軸部材(搬送ヘッド26の回転軸)等により構成されている。回転機構24は、搬送ヘッド26を回転方向に移動可能とする(搬送ヘッド26の先端部分を首振り可能とする)。
さらに、第2アーム23の径方向の外側には、昇降機構25(例えば、リニアモーションガイド)が配置されている。昇降機構25は、レール及びレールに沿って昇降する部材等により構成されている。昇降機構25は、搬送ヘッド26を昇降可能とする。
【0020】
搬送ヘッド26は、昇降機構25の外側に取り付けられており、ワークWを搬送する装置である。搬送ヘッド26の下面には、図示しない吸着孔が形成されている。搬送ヘッド26は、吸着孔から空気を吸引することでワークWを吸着しながらワークWを搬送することができる。
【0021】
〔3つのカム〕
径方向カム30は、回転テーブル10の回転に応じて搬送ヘッド26を径方向に移動させるカムである。すなわち、径方向カム30は、回転テーブル10の径方向でみて、搬送ヘッド26を外側に移動させたり、内側に移動させたりする。径方向カム30は、ベース部材21のスライド機構を利用して搬送ヘッド26を径方向に移動させる。また、径方向カム30は、第1アーム22、第2アーム23及び搬送ヘッド26を径方向に移動させる。
【0022】
角度決定カム40は、径方向カム30とは別のカムであって、回転テーブル10の回転に応じて搬送ヘッド26を回転方向に移動させるカム(搬送ヘッド26の首振りの角度を決定するカム)である。すなわち、角度決定カム40は、回転テーブル10の回転方向でみて、搬送ヘッド26を前方に移動させたり(搬送ヘッド26の回転軸を上からみて左方向に首振り(揺動)させたり)、後方に移動させたりする(搬送ヘッド26の回転軸を上からみて右方向に首振り(揺動)させたりする)。角度決定カム40は、回転機構24を利用して搬送ヘッド26を回転方向に移動させる。また、角度決定カム40は、第2アーム23及び搬送ヘッド26を回転方向に移動させる。なお、角度決定カム40は、第1アーム22を移動させることはない。
【0023】
上下方向カム50は、径方向カム30及び角度決定カム40とは別のカムであって、回転テーブル10の回転に応じて搬送ヘッド26を上下方向に移動させる(昇降させる)カムである。すなわち、上下方向カム50は、回転テーブル10の径方向と直交する上下方向でみて、搬送ヘッド26を上方に移動させたり、下方に移動させたりする。上下方向カム50は、昇降機構25を利用して搬送ヘッド26を上下方向に移動させる。なお、上下方向カム50は、第1アーム22及び第2アーム23を移動させることはない。上下方向カム50は、ワークWの受渡し位置の直前で搬送ヘッド26を下降させ、ワークWの受渡し位置の直後で搬送ヘッド26を上昇させることが好ましい。
【0024】
径方向カム30と角度決定カム40とは、種類が異なるカムである。具体的には、径方向カム30は、溝カムであり、角度決定カム40は、共役板カムである。
【0025】
〔カムの詳細〕
図3は、径方向カム30及び角度決定カム40を示す図である。
図3(A)は径方向カム30を示しており、
図3(B)は角度決定カム40を示している。
図3(A)に示すように、径方向カム30は、溝カムとなっており、径方向カムフォロア31と、径方向カム本体32と、を備えている。径方向カムフォロア31は、搬送ユニット20(回転機構24の内側)に設けられる部材である(
図2参照)。径方向カム本体32は、径方向カム30のベースとなる板状の部材であり、径方向カムフォロア31と係合するカム溝33を有する。径方向カムフォロア31は、カム溝33に沿って移動することによりベース部材21(
図2参照)のスライド機構を動作させる。
【0026】
図3(B)に示すように、角度決定カム40は、2つのカムを重ね合わせた共役板カムとなっており、第1角度決定カム41と、第2角度決定カム45と、を備えている。
第1角度決定カム41は、第1角度決定カムフォロア42と、第1角度決定カム本体43と、を備えている。
第1角度決定カムフォロア42は、搬送ユニット20(第2アーム23の下部)に設けられる部材である(
図2参照)。第1角度決定カム本体43は、第1角度決定カム41のベースとなる板状の部材であり、第1角度決定カムフォロア42と係合する第1係合面44を有する。第1角度決定カムフォロア42は、第1係合面44に沿って移動することにより回転機構24(
図2参照)を動作させる。
【0027】
第2角度決定カム45は、第2角度決定カムフォロア46と、第2角度決定カム本体47と、を備えている。
第2角度決定カムフォロア46は、搬送ユニット20(第2アーム23の下部であって、第1角度決定カムフォロア42よりも下側かつ奥側の位置)に設けられる部材である(
図2参照)。第2角度決定カム本体47は、第2角度決定カム45のベースとなる板状の部材であり、第2角度決定カムフォロア46と係合する第2係合面48を有する。第2角度決定カムフォロア46は、第2係合面48に沿って移動することにより回転機構24(
図2参照)を動作させる。
【0028】
図4は、上下方向カム50を示す図である。
図4(A)は上下方向カム50の平面図を示しており、
図4(B)は上下方向カム50の正面図を示しており、
図4(C)は上下方向カム50の左側面図及び右側面図を示している。
図4(A)に示すように、上下方向カム50は、平面視略円形状(
図6の軌跡Tに沿った形状)となっている。
図4(B)に示すように、上下方向カム50は、第1上下方向カム51と、第2上下方向カム55と、を備えている。
【0029】
図4(C)に示すように、第1上下方向カム51は、第1上下方向カムフォロア52と、第1上下方向カム本体53と、を備えている。
第1上下方向カムフォロア52は、搬送ユニット20(昇降機構25の下部)に設けられる部材である(
図2参照)。第1上下方向カムフォロア52は、奇数番目(1番目、3番目、5番目等)の搬送ユニット20に取り付けられる。
第1上下方向カム本体53は、第1上下方向カム51のベースとなる部材であり、第1上下方向カムフォロア52と係合する第1カム溝54を有する。第1上下方向カムフォロア52は、第1カム溝54に沿って移動することにより搬送ユニット20の昇降機構25(
図2参照)を動作させる。
【0030】
図4(C)に示すように、第2上下方向カム55は、第2上下方向カムフォロア56と、第2上下方向カム本体57と、を備えている。
第2上下方向カムフォロア56は、搬送ユニット20(昇降機構25の下部)に設けられる部材である(
図2では不図示)。第2上下方向カムフォロア56は、偶数番目(2番目、4番目、6番目等)の搬送ユニット20に取り付けられる。
第2上下方向カム本体57は、第2上下方向カム55のベースとなる部材であり、第2上下方向カムフォロア56と係合する第2カム溝58を有する。第2上下方向カムフォロア56は、第2カム溝58に沿って移動することにより搬送ユニット20の昇降機構(
図2では不図示)を動作させる。
【0031】
図4(C)に示すように、上下方向カム50は、第1上下方向カム51及び第2上下方向カム55の2つのカムで構成されており、第1上下方向カム51と第2上下方向カム55とでは、搬送ヘッド26を上下方向に移動させるタイミングを異ならせている。具体的には、受け側では、第1カム溝54及び第2カム溝58の溝形状を異ならせており、渡し側では、第1カム溝54及び第2カム溝58の溝形状を異ならせていない。以下、この点について説明する。
【0032】
〔受け側(第1相手側装置側)〕
図4(C)の左側に示すように、第1カム溝54は、第1相手側装置の搬送経路上の始点S1から終点E1において、搬送経路上の序盤部分Xでは水平な溝となっており、中盤部分Yでは水平な溝となっており、終盤部分Zでは下側に凹んだ溝となっている。
このため、第1カム溝54と係合する第1上下方向カムフォロア52によって昇降する搬送ヘッド26は、終盤部分Zにおいて下降し(下降した場所に位置し)、それ以外の箇所では上昇する(上昇した場所に位置する)。
【0033】
図4(C)の左側に示すように、第2カム溝58は、第1相手側装置の搬送経路上の始点S1から終点E1において、搬送経路上の序盤部分Xでは下側に凹んだ溝となっており、中盤部分Yでは水平な溝となっており、終盤部分Zでは水平な溝となっている。
このため、第2カム溝58と係合する第2上下方向カムフォロア56によって昇降する搬送ヘッド26は、序盤部分Xにおいて下降し(下降した場所に位置し)、それ以外の箇所では上昇する(上昇した場所に位置する)。
【0034】
このように、受け側では、溝形状が異なる2つのカムを採用しているため、2箇所同時受けが可能となっている。すなわち、最初に第1相手側装置の搬送経路に進入する搬送ヘッド26を1番目の搬送ヘッド26とすると、1番目の搬送ヘッド26と2番目の搬送ヘッド26とが同時に下降し、1番目と2番目の搬送ヘッド26が吸着によりワークWを同時に受け取って、同時に上昇する。次に、3番目の搬送ヘッド26と4番目の搬送ヘッド26とが同時に下降し、3番目と4番目の搬送ヘッド26が吸着によりワークWを同時に受け取って、同時に上昇する。そして、このような動作を繰り返し行うことにより、搬送装置100は、ワークWを2個ずつ同時に受け取ることができる。
【0035】
受け側でワークWを2個ずつ同時に受け取る理由は、第1相手側装置200の機構に合わせているためである。すなわち、第1相手側装置200は、連続的に紙を送り出し、切断機構で紙を切断しているため、紙をそのまま搬送経路上に送り出すと、紙同士が近すぎた位置に配置されることになる。このため、第1相手側装置200では、敢えて別の2箇所に紙が送り出されるような構成を採用している。そして、搬送装置100は、このような第1相手側装置200の機構に合わせるために、受け側でワークWを2個ずつ同時に受け取っている。なお、渡し側では、ワークWを2個ずつ同時に渡す理由がないので、1個ずつワークWを渡している。
【0036】
〔渡し側(第2相手側装置側)〕
一方、
図4(C)の右側に示すように、第1カム溝54及び第2カム溝58は、第2相手側装置の搬送経路上の始点S2から終点E2において、全体的に下側に凹んだ溝となっている。このため、第1カム溝54と係合する第1上下方向カムフォロア52によって昇降する搬送ヘッド26も、第2カム溝58と係合する第2上下方向カムフォロア56によって昇降する搬送ヘッド26も、始点S2から終点E2において下降し(下降した場所に位置し)、それ以外の箇所では上昇する(上昇した場所に位置する)。
【0037】
このように、渡し側では、同一の構成のカムを採用しているため、1箇所での渡しが可能となっている。すなわち、最初に第2相手側装置の搬送経路に進入する搬送ヘッド26を1番目の搬送ヘッド26とすると、1番目の搬送ヘッド26は、第2相手側装置の搬送経路に進入する直前に下降し、吸着を解除してワークWを渡し、第2相手側装置の搬送経路を通過した直後に上昇する。2番目の搬送ヘッド26も1番目の搬送ヘッド26と同様に、第2相手側装置の搬送経路に進入する直前に下降し、吸着を解除してワークWを渡し、第2相手側装置の搬送経路を通過した直後に上昇する。そして、このような動作を繰り返し行うことにより、搬送装置100は、ワークWを1個ずつ渡すことができる。
【0038】
〔各カムの形状〕
図5は、各カムの形状を示す図である。
図5(A)では、径方向カム30のカム溝33を太線で示している。
カム溝33は、回転テーブルの回転中心Cを中心として、円周状に形成されている。カム溝33の詳細は、以下の通りである。
(1)矢印A1から矢印A2まで:カム溝33は円弧状に形成されている。
(2)矢印A2から矢印A3まで:カム溝33は内側に凹んだり外側に膨らんだりししながら、おおむね直線状(内側に少し凹んだ形状)に形成されている。この部分は、搬送ヘッド26の首振りによる径方向の動きを吸収するために蛇行した溝にしている。
(3)矢印A3から矢印A4まで:カム溝33は円弧状に形成されている。
(4)矢印A4から矢印A1まで:カム溝33は内側に凹んだ円弧状に形成されている。
【0039】
径方向カム30の機能を大まかに説明すると、カム溝33は、図中上側と図中下側とでは、搬送ヘッド26を円弧状の軌道上で移動させる役割を果たしており、図中左側(受け側)と図中右側(渡し側)とでは、その円弧よりも内側の軌道上を移動させる役割を果たしている。
【0040】
図5(B)では、第1角度決定カム41(角度決定カム40)の第1係合面44を太線で示している。
第1係合面44は、回転テーブルの回転中心Cを中心として、円周状に形成されている。第1係合面44の詳細は、以下の通りである。
(1)矢印B1から矢印B2まで:第1係合面44は円弧状に形成されている。
(2)矢印B2から矢印B3まで:第1係合面44は内側に凹むように形成されている。
(3)矢印B3から矢印B4まで:第1係合面44は内側に凹むように形成されている。
(4)矢印B4から矢印B5まで:第1係合面44は内側に凹むように形成されている。
(5)矢印B5から矢印B6まで:第1係合面44は外側への膨みが減少するように形成されている。
(6)矢印B6から矢印B7まで:第1係合面44は円弧状に形成されている。
(7)矢印B7から矢印B8まで:第1係合面44は外側への膨らみが減少するように形成されている。
(8)矢印B8から矢印B9まで:第1係合面44は内側に凹むように形成されている。
(9)矢印B9から矢印B1まで:第1係合面44は外側への膨みが減少するように形成されている。
【0041】
図5(C)では、第2角度決定カム45(角度決定カム40)の第2係合面48を太線で示している。
第2係合面48は、回転テーブルの回転中心Cを中心として、円周状に形成されている。第2係合面48の詳細は、以下の通りである。
(1)矢印C1から矢印C2まで:第2係合面48は円弧状に形成されている。
(2)矢印C2から矢印C3まで:第2係合面48は外側に膨らむように形成されている。
(3)矢印C3から矢印C4まで:第2係合面48は内側に凹むように形成されている。
(4)矢印C4から矢印C5まで:第2係合面48は内側に凹むように形成されている。
(5)矢印C5から矢印C6まで:第2係合面48は内側に凹むように形成されている。
(6)矢印C6から矢印C7まで:第2係合面48は円弧状に形成されている。
(7)矢印C7から矢印C8まで:第2係合面48は外側に膨らむように形成されている。
(8)矢印C8から矢印C9まで:第2係合面48は内側に凹むように形成されている。
(9)矢印C9から矢印C1まで:第2係合面48は外側への膨らみが減少するように形成されている。
【0042】
角度決定カム40(第1角度決定カム41及び第2角度決定カム45)の機能を大まかに説明すると、第1係合面44及び第2係合面48は、図中上側と図中下側とでは、搬送ヘッド26を首振りさせない役割を果たしており、図中左側(受け側)では、搬送ヘッド26を2回首振りさせる役割を果たしており、図中右側(渡し側)では、搬送ヘッド26を1回首振りさせる役割を果たしている。
なお、
図5(B)の第1係合面44の形状は、回転テーブルの回転中心Cを通る水平な線を基準として反転させると、
図5(C)の第2係合面48の形状と一致するようになっている。
【0043】
〔搬送ヘッドの軌跡〕
図6は、搬送ヘッド26の軌跡を示す図である。
搬送ヘッド26は、径方向カム30及び角度決定カム40により、直線状の軌跡及び内側に凹んだ円弧状の軌跡を有する円形の軌跡Tを通過する。より詳細には、搬送ヘッド26の先端の下面に配置された吸着孔(点線の丸の部分)が、軌跡Tを通過する。軌跡Tは、軌跡T1と、軌跡T2と、軌跡T3と、軌跡T4と、を含んでいる。
【0044】
軌跡T1は、第1相手側装置の搬送経路上の始点S1から第1相手側装置の搬送経路上の終点E1までの間に形成された直線状の軌跡である。
軌跡T2は、第1相手側装置の搬送経路上の終点E1から第2相手側装置の搬送経路上の始点S2までの間に形成された円弧状の軌跡である。
軌跡T3は、第2相手側装置の搬送経路上の始点S2から第2相手側装置の搬送経路上の終点E2までの間に形成された内側に凹んだ円弧状の軌跡である。
軌跡T4は、第2相手側装置の搬送経路上の終点E2から第1相手側装置の搬送経路上の始点S1までの間に形成された円弧状の軌跡である。
【0045】
〔受け側の搬送ヘッドの動作〕
図7は、搬送ヘッド26がワークを受ける際の動作を示す図である。
図7(A)に示すように、搬送ヘッド26は、第1相手側装置の搬送経路上の始点S1に向かって反時計回りに移動している。このとき、搬送ヘッド26は、径方向にも回転方向にも移動しておらず、放射方向を向いた状態になっている。
【0046】
図7(B)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の前方に向かって移動する。
【0047】
図7(C)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第1相手側装置の搬送経路上の始点S1に到達している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の前方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の内側に向かって移動する。
【0048】
図7(D)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第1相手側装置の搬送経路上を移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の内側に向かって移動する。
【0049】
図7(E)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第1相手側装置の搬送経路上を移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の内側に向かって移動する。これにより、搬送ヘッド26は、放射方向を向いた状態になる。
【0050】
図7(F)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第1相手側装置の搬送経路上を移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の外側に向かって移動する。
【0051】
図7(G)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第1相手側装置の搬送経路上の終点E1に到達している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の外側に向かって移動する。
【0052】
図7(H)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、終点E1から離れる方向に移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の前方に向かって移動する。
【0053】
図7(I)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動している。このとき、搬送ヘッド26は、径方向にも回転方向にも移動しておらず、放射方向を向いた状態になっている。
【0054】
〔渡し側の搬送ヘッドの動作〕
図8は、搬送ヘッド26がワークを渡す際の動作を示す図である。
図8(A)に示すように、搬送ヘッド26は、第2相手側装置の搬送経路上の始点S2に向かって反時計回りに移動している。このとき、搬送ヘッド26は、径方向にも回転方向にも移動しておらず、放射方向を向いた状態になっている。
【0055】
図8(B)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の前方に向かって移動する。
【0056】
図8(C)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第2相手側装置の搬送経路上の始点S2に到達している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の前方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の内側に向かって移動する。
【0057】
図8(D)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第2相手側装置の搬送経路上を移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の内側に向かって移動する。
【0058】
図8(E)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第2相手側装置の搬送経路上を移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の内側に向かって移動する。これにより、搬送ヘッド26は、放射方向を向いた状態になる。
【0059】
図8(F)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第2相手側装置の搬送経路上を移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の外側に向かって移動する。
【0060】
図8(G)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、第2相手側装置の搬送経路上の終点E2に到達している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の後方に向かって移動する。また、搬送ヘッド26は、径方向カム30によって、径方向の外側に向かって移動する。
【0061】
図8(H)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動しており、終点E2から離れる方向に移動している。このとき、搬送ヘッド26は、角度決定カム40によって、回転方向の前方に向かって移動する。
【0062】
図8(I)に示すように、搬送ヘッド26は、反時計回りに移動している。このとき、搬送ヘッド26は、径方向にも回転方向にも移動しておらず、放射方向を向いた状態になっている。
【0063】
このように、径方向カム30は、ワークWの受け位置において径方向の内側に向かって搬送ヘッド26を移動させることにより、第1相手側装置200のワークWの搬送経路上(直線状の経路上)に搬送ヘッド26を移動させる(
図7参照)。
【0064】
また、径方向カム30は、ワークWの渡し位置において径方向の内側に向かって搬送ヘッド26を移動させることにより、第2相手側装置300のワークWの搬送経路上(内側に凹んだ円弧状の軌跡上)に搬送ヘッド26を移動させる(
図8参照)。
【0065】
さらに、
図7及び
図8に示すように、角度決定カム40は、搬送ヘッド26がワークWの受渡し位置(例えば、始点S1、終点E1、始点S2と終点E2との中間点M、又は、その付近)に近づいていく際には、搬送ヘッド26を受渡し位置に向かう方向に移動させ、搬送ヘッド26がワークWの受渡し位置から離れていく際には、搬送ヘッド26を受渡し位置に向かう方向に移動させる特定動作を搬送ヘッド26に行わせる。特定動作は、搬送ヘッド26自体が移動を継続していても、搬送ヘッド26の先端付近を受渡し位置に留まらせようとする動作である。
【0066】
そして、角度決定カム40は、ワークWの受け側では、搬送ヘッド26に特定動作を2回(所定回数)行わせ、ワークWの渡し側では、搬送ヘッド26に特定動作を1回(所定回数とは異なる規定回数)行わせる。この理由は、ワークWの受け側では2箇所同時受け取りを行い、ワークWの渡し側では1箇所で渡すからである。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)本実施形態によれば、搬送ヘッド26を径方向に移動させる径方向カム30と、搬送ヘッド26を回転方向に移動させる角度決定カム40と、を備えているため、搬送ヘッド26が通る軌跡を前後左右で細かく調整することができ、相手側装置のワークWの搬送経路が複雑な場合であっても、安定してワークWの受渡しを行うことができる。また、径方向カム30と角度決定カム40とは、別のカムとなっているため、径方向に移動させる機能と回転方向に移動させる機能とを分離させることができ、両機能が複合しているカムよりも仕様変更が容易である。
【0068】
(2)本実施形態によれば、搬送ヘッド26を上下方向に移動させる上下方向カム50を備えているため、ワークWを受渡す際にだけ、搬送ヘッド26を相手側装置に接近させることができ、ワークWの搬送を安定させることができる。特に、ワークWが紙のような薄い部材である場合には、薄い部材の横からではなく上から搬送ヘッド26を接近させることにより、薄い部材のめくれ上がりを回避することができる。
【0069】
(3)本実施形態によれば、第1アーム22や第2アーム23を利用して搬送ヘッド26を径方向に移動させたり回転方向に移動させたりすることができるので、少ない部品点数で搬送ヘッド26の位置決めを行うことができる。
【0070】
(4)本実施形態によれば、径方向カム30は溝カムであり、角度決定カム40は共役板カムであるため、各カムの用途に適したカムを採用することができる。特に、共役板カムは、溝カムよりも搬送ヘッド26の首振りの角度(揺動角度)を大きく確保することができるため、角度決定カム40に最適である。また、角度決定カム40は、溝カムでもよいが、その場合には、カム溝の横に所定の厚み(肉厚)が必要になるため、角度決定カム40に対してこのような厚みを必要としない共役板カムを採用することで搬送装置100の小型化を図ることができる。
【0071】
(5)本実施形態によれば、径方向カム30は、ワークWの受渡し位置において径方向の内側に向かって搬送ヘッド26を移動させることにより、ワークWの受渡しを行う相手側装置のワークWの搬送経路上に搬送ヘッド26を移動させるため、搬送ヘッド26を径方向に動かすだけの簡単な機構で相手側装置の複雑な搬送経路に沿わせることができる。
【0072】
(6)本実施形態によれば、角度決定カム40は、搬送ヘッド26がワークWの受渡し位置に近づいていく際には、搬送ヘッド26を受渡し位置に向かう方向に移動させ、搬送ヘッド26が受渡し位置から離れていく際には、搬送ヘッド26を受渡し位置に向かう方向に移動させる特定動作を搬送ヘッド26に行わせるため、この特定動作によって搬送ヘッド26を受渡し位置になるべく長く滞在させることができる。すなわち、本実施形態によれば、搬送ヘッド26の角度を変更し続けて、搬送ヘッド26(特に先端部分)を受渡し位置になるべく長く滞在させるようにするため、ワークWの受渡しをより一層安定させることができる。
【0073】
(7)本実施形態によれば、ワークWの受け側では、搬送ヘッド26に特定動作を2回(所定回数)行わせ、ワークWの渡し側では、搬送ヘッド26に特定動作を1回(所定回数とは異なる規定回数)行わせるため、種類が異なる2種類の相手側装置の機構に即した受渡しを行うことができる(2箇所同時受け取りと、1箇所渡しを実現することができる)。
【0074】
(8)本実施形態によれば、第1上下方向カム51と第2上下方向カム55とでは、搬送ヘッド26を上下方向に移動させるタイミングを異ならせているため、搬送ヘッド26を個別に上下させることができ、上下方向も含めた複雑な受渡しにも柔軟に対応することができる。
【0075】
(9)本実施形態によれば、搬送ヘッド26は、径方向カム30及び角度決定カム40により、直線状の軌跡T1及び内側に凹んだ円弧状の軌跡T3を有する円形の軌跡Tを通過するため、直線状の軌跡T1により縦回転する紙送りロール210に対応したり、凹んだ円弧状の軌跡T3により横回転する回転ユニット310に対応したりすることができる。
【0076】
(10)連続回転のテーブル同士の受渡しは点での受渡しとなるため、受渡しは瞬時に行う必要があり、搬送が不安定になる要因となる。また、受渡時間を長くするためには、インデックステーブル等の間欠動作や速度を可変させて受渡しを行う機構も考えられるが、軌跡が円対円の場合には受渡時間を長くすればその分搬送時間が短くなってしまう(受渡時間と搬送時間とを加算したトータルの作業時間が一定の時間である場合には、受渡時間が長くなれば搬送時間は短くなる)。
【0077】
そこで、本実施形態の搬送装置100では、3つのカムを用い、搬送ヘッド26の経路と位置を可変させ、受渡しを行う位置で相手側装置に同期させる機構を採用している。すなわち、径方向カム30及び角度決定カム40によって搬送ヘッド26(リンク)の径方向の位置と角度とを規制し、回転テーブル10の回転角度に応じて搬送ヘッド26の位置を決定している。この機構によれば、相手側装置との同期中にワークWの受渡しが可能となり、受渡時間を延ばすことによって、高速搬送と安定化とを実現することができる。また、搬送ヘッド26は、上下方向カム50によって個別に上下駆動を行うことができ、径方向と角度だけではなく、上下方向の動作も可能になっている。
【0078】
本実施形態の搬送装置100は、搬送ユニット20が円軌跡上しか移動せず、点でしか受渡しができない問題を解決している。点でしか受渡しができない場合、以下の問題がある。
(a)連続回転の場合は、回転テーブルに逃がしを入れざるを得ない(ワーク保持は不安定となる)。すなわち、回転テーブルにおいて、搬送ユニット同士が接触しないような空間を設定する必要がある。
(b)間欠動作の場合は、駆動機構が複雑化する問題がある。また、受渡時間を長くすればその分搬送時間が短くなる問題がある。
【0079】
(c)ピッチ変更を行う場合は、ピッチ変更機構が追加で必要となり機械の大型化につながる。
(d)軌跡を追従させながら、搬送ユニットや搬送ヘッドの上下を行うことができない。
(e)搬送ユニットや搬送ヘッドの上下の動きを複数作りたい場合(例えば、奇数ポスト(奇数番目の搬送ユニット)と偶数ポスト(偶数番目の搬送ユニット)とで異なる2箇所同時取出しを行い、所定の1箇所で渡す場合等)には対応することができない。
【0080】
このような問題点に対して、本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(a)3つのカムを組み合わせ、搬送ヘッド26の平面軌跡及び速度を任意(ただし設計要件の満たす限り)に変更できるようにし、相手側装置の機構や搬送経路(例えば、直線や凹んだ円等)に合わせて搬送ヘッド26を追従できる構成としている。これにより、ワークWを搬送しながらの受渡しが可能となり、搬送時間及び受渡時間を長く確保することで搬送の安定化を実現することができる。
【0081】
(b)搬送ヘッド26の速度は、径方向カム30及び角度決定カム40によって変更可能(搬送ヘッド26自体の速度は変化しないが首振りによって搬送ヘッド26の先端の速度が変更可能)であるから、ピッチ変更機構としても使用ができ、従来のようなピッチ変更機構及び受渡機構が不要となる。すなわち、従来の機構である場合、テーブルの系が1対1又は1対n等の切りの良い数字でないと、受渡しを行うことができない。これに対して、本実施形態の搬送装置100では、受け側の相手側装置が小さい軌跡の紙送りロール210であり、搬送装置100がそれよりも大きい軌跡となっているが、受渡しを行う範囲では、2つの装置を同期させてワークWの受渡しを行うため、ワークWの隙間を調整したり取り出しのタイミングを合わせたりするピッチ変更機構等が不要となる。
【0082】
(c)本実施形態の搬送装置100では、上下方向カム50は、溝が2系統あるため(第1カム溝54及び第2カム溝58を備えるため)、奇数ポストと偶数ポストで搬送ヘッド26の動きを分け、2箇所同時取出しと1箇所での連続受渡しを可能にしている。
(d)従来方式に比べ、ワークWを搬送しながらの受渡しが可能となり、ワークWの搬送が安定化する。また、従来では別途必要であったピッチ変更機構(ピッチ変更工程)及びそれらへの受渡機構が不要となる。このため、従来方式と比べて機構が減り、機械の小型化とコストダウンに寄与することができる。
【0083】
〔変形形態〕
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
(1)ワークは紙の例でしたが、その他の物体(樹脂や木材、金属等)であってもよい。
(2)上述した実施形態では、径方向カム30が溝カムであり、角度決定カム40が共役板カムの例で説明したが、これとは逆に、径方向カム30が共役板カムであり、角度決定カム40が溝カムであってもよい。また、径方向カム30及び角度決定カム40の両方が溝カムであってもよく、径方向カム30及び角度決定カム40の両方が共役板カムであってもよい。
(3)特定動作の回数は、上述した例に限定されるものではなく、搬送装置や相手側装置の機構に合わせて適宜変更することができる。また、特定動作は、実行しなくてもよい。
【0084】
(4)上下方向カム50は、設けなくてもよい。また、上下方向カム50の溝は1系統(1個)であってもよく、3系統以上(3個以上)であってもよい。また、搬送ヘッド26を上下に動かす機構は、上下方向カム50ではなく、その他の昇降機構を用いて上下させてもよい。
(5)搬送装置100に配置する搬送ユニット20の数は、11個以下であってもよく、13個以上であってもよい。
(6)搬送ヘッド26を下降させるタイミングは、搬送ヘッド26が相手側装置の搬送経路に入る前であってもよく入った後であってもよい。搬送ヘッド26を上昇させるタイミングは、搬送ヘッド26が相手側装置の搬送経路から出る前であってもよく出た後であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 回転テーブル
20 搬送ユニット
21 ベース部材
22 第1アーム
23 第2アーム
24 回転機構
25 昇降機構
26 搬送ヘッド
30 径方向カム
40 角度決定カム
50 上下方向カム
100 搬送装置
200 第1相手側装置
300 第2相手側装置
W ワーク