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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124923
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20240906BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 29/47 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L21/205
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
H01L29/86 301P
H01L29/91 A
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032914
(22)【出願日】2023-03-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、「革新的な省CO2実現のための部材(GaN)や素材(CNF)の社会実装・普及展開加速化事業(カーボンニュートラル実現に向けたGaNによる高効率ICT装置の開発と実証)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦史
【テーマコード(参考)】
4M104
5F045
5F102
5F152
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB05
4M104BB17
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD34
4M104DD68
4M104EE06
4M104EE17
4M104GG03
5F045AA04
5F045AB14
5F045AB17
5F045AB18
5F045AC08
5F045AC12
5F045AC15
5F045AF02
5F045AF04
5F045CA07
5F045CB02
5F045DP03
5F045EK07
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GD04
5F102GD10
5F102GJ04
5F102GK04
5F102GL04
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GT01
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC19
5F152LL05
5F152LM09
5F152NN09
5F152NN27
5F152NN30
5F152NQ09
(57)【要約】
【課題】GaN基板に高品質の窒化物半導体層を形成する。
【解決手段】N極性面10bとそれとは反対側のGa極性面10aとを有するGaN基板10の、N極性面10b側に、非晶質のAlGa1-xN(0<x≦1)を含む非晶質層60が形成される。N極性面10b側に非晶質層60が形成されたGaN基板10の、Ga極性面10a側に、窒化物半導体層20が形成される。例えば、窒化物半導体層20は、GaN基板10を非晶質層60側から加熱するMOCVD装置200を用いて成長される。その際、GaN基板10は、非晶質層60により、N極性面10b側のN脱離及びそれに起因したGaドロップレットの発生による融解が抑えられる。これにより、Ga極性面10a側における窒化物半導体層20の成長面内温度分布の均一性悪化が抑えられ、それに起因した窒化物半導体層20の品質低下が抑えられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N極性面と、前記N極性面とは反対側のGa極性面とを有するGaN基板の、前記N極性面側に、非晶質のAlGa1-xN(0<x≦1)を含む非晶質層を形成する工程と、
前記N極性面側に前記非晶質層が形成された前記GaN基板の、前記Ga極性面側に、窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記窒化物半導体層を形成する工程は、有機金属化学気相成長法を用いて、前記Ga極性面側に、前記窒化物半導体層を形成する工程を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記窒化物半導体層を形成する工程は、少なくとも水素及びアンモニアを含む雰囲気中、前記GaN基板の前記Ga極性面側の温度を950℃以上にする工程を含む、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記窒化物半導体層を形成する工程は、
前記GaN基板を、有機金属化学気相成長装置に、前記N極性面側に形成された前記非晶質層が前記有機金属化学気相成長装置の熱源側となるように配置する工程と、
前記熱源によって前記非晶質層側から加熱される前記GaN基板の、前記Ga極性面側に、前記窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記非晶質層を形成する工程は、有機金属化学気相成長法、スパッタ法及び原子層堆積法のうちのいずれかの方法を用いて、前記GaN基板の前記N極性面側に前記非晶質層を形成する工程を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記窒化物半導体層を形成する工程は、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に、第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の、前記GaN基板側とは反対の面側に、前記第1窒化物半導体層とはバンドギャップが異なる第2窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記窒化物半導体層を形成する工程後に、前記窒化物半導体層と接続される電極を形成する工程を更に含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記窒化物半導体層を形成する工程後に、前記N極性面側に前記非晶質層が形成された前記GaN基板を、前記非晶質層側から研磨し、前記非晶質層と前記GaN基板の一部とを除去する工程を更に含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
N極性面と、前記N極性面とは反対側のGa極性面とを有するGaN基板と、
前記GaN基板の前記N極性面側に設けられ、非晶質のAlGa1-xN(0<x≦1)を含む非晶質層と、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に設けられる窒化物半導体層と、
を含む、基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)等のIII族窒化物半導体からなる基板の、III族極性面側に、アモルファス又は多結晶のAlN(窒化アルミニウム)等からなる高耐熱性の保護層を設け、N(窒素)極性面側に、GaN等の半導体層をエピタキシャル成長させる技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、サファイア基板等の基板の、裏面側に、多結晶又はアモルファスのIII族窒化物半導体からなり基板とは線膨張係数が異なる層を形成し、表面側に、単結晶のIII族窒化物半導体からなり基板とは線膨張係数が異なる層を形成する技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-63007号公報
【特許文献2】国際公開第2017/216997号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化物半導体を用いる半導体装置の製造では、所定の基板上に、GaN等の窒化物半導体層が成長される。例えば、GaN基板のGa(ガリウム)極性面側に、GaN等の窒化物半導体層を成長する方法が知られている。この方法では、比較的転位が少ないGaN基板を用いることで、そのGa極性面側に成長される窒化物半導体層に導入される転位数を抑え、高品質な窒化物半導体層を得ることが期待されている。
【0006】
しかし、窒化物半導体層の成長では、GaN基板上への成長時の雰囲気や温度等の条件、及び、成長時のGaN基板の配置等に起因して、GaN基板の、窒化物半導体層が成長されるGa極性面側とは反対のN極性面側に、融解が発生することがある。GaN基板の融解は、窒化物半導体層の成長面内における温度分布の均一性を悪化させ、成長される窒化物半導体層の結晶構造や組成等の品質を低下させる恐れがある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、GaN基板に高品質の窒化物半導体層を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、N極性面と、前記N極性面とは反対側のGa極性面とを有するGaN基板の、前記N極性面側に、非晶質のAlGa1-xN(0<x≦1)を含む非晶質層を形成する工程と、前記N極性面側に前記非晶質層が形成された前記GaN基板の、前記Ga極性面側に、窒化物半導体層を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、GaN基板に高品質の窒化物半導体層を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】基板上に成長される窒化物半導体層の例について説明する図である。
図2】半導体装置の例について説明する図である。
図3】GaN基板上への窒化物半導体層の成長プロセスの一例について説明する図である。
図4】第1実施形態に係る基板の一例について説明する図である。
図5】第1実施形態に係る基板への窒化物半導体層の成長プロセスの一例について説明する図である。
図6】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
図7】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
図8】第3実施形態に係るHEMTを備えた半導体装置の構成例について説明する図である。
図9】第3実施形態に係るダイオードを備えた半導体装置の構成例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
窒化物半導体を用いた半導体装置は、高い飽和電子速度やワイドバンドギャップ等の特徴を利用し、高耐圧且つ高出力のデバイスとしての開発が行われている。窒化物半導体を用いた半導体装置としては、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor;FET)、例えば、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)についての報告が数多くなされている。HEMTの1つとして、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)をバリア層として用い、GaNをチャネル層として用いたHEMTが知られている。このようなHEMTでは、AlGaNの自発分極、及び、GaNとの格子定数差に起因したひずみによってAlGaNに発生するピエゾ分極により、GaNに二次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas;2DEG)が生成され、高出力デバイスが実現される。
【0012】
GaNやAlGaN等の窒化物半導体層は、例えば、所定の基板上に、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)法を用いたエピタキシャル成長(以下では単に「成長」とも言う)により形成される。例えば、GaNやAlGaN等の窒化物半導体層を成長するための基板としてGaN基板を用いることで、その上に成長される窒化物半導体層を高品質化し、半導体装置を高性能化することが提案されている。
【0013】
ここで、図1は基板上に成長される窒化物半導体層の例について説明する図である。図1(A)には、基板及びその上に成長される窒化物半導体層の第1例の要部断面図を模式的に示している。図1(B)には、基板及びその上に成長される窒化物半導体層の第2例の要部断面図を模式的に示している。
【0014】
GaN等の窒化物半導体層を成長するための基板には、SiC(シリコンカーバイド)基板、Si(シリコン)基板、サファイア基板等、成長する窒化物半導体層とは異種材料の基板を用いることができる。例えば、図1(A)に示すように、基板としてSiC基板10Aが用いられ、その一方の面10Aa側に、MOCVD法を用いて、窒化物半導体層としてGaN層20aが成長される。この場合、SiC基板10Aとその上に成長されるGaN層20aとの間、即ち、ヘテロ接合界面には、比較的格子不整合が発生し易い。そのため、成長されるGaN層20aには、SiC基板10Aとの格子不整合に起因した転位110aが形成され易い。
【0015】
一例として、SiC基板10A上に成長されるGaN層20aには、密度が1×10個/cm程度といった比較的多くの転位110aが発生する。SiC基板10A上のGaN層20aには、平面サイズが100μm×100μmの領域に、10000個程度の転位110aが形成される計算になる。
【0016】
これに対し、例えば、図1(B)に示すように、GaN層20aを、それと同種材料の基板、即ち、GaN基板10上に成長する技術が知られている。近年、GaN基板10には、それ自体の転位110の密度が十分に低いものを準備することができるようになっている。GaN基板10は、N極性面10b((000-1)面)と、それとは反対側のGa極性面10a((0001)面)とを有する。例えば、GaN層20aは、転位110の密度が低い状態で準備されるGaN基板10の、そのGa極性面10a側に、MOCVD法を用いて成長される。GaN層20aは、同種材料の基板であるGaN基板10のGa極性面10aに格子整合して成長される。そのため、GaN層20aに格子欠陥等が発生することが抑えられ、良好な結晶構造を有するGaN層20aが成長される。この時、成長されるGaN層20aには、GaN基板10の転位110を反映した転位110bが形成される。転位110の密度が低いGaN基板10のGa極性面10a上には、転位110bの密度が低いGaN層20aが成長される。
【0017】
一例として、GaN基板10のGa極性面10a上に成長されるGaN層20aの転位110bの密度は、1×10個/cm程度に抑えられる。GaN基板10上のGaN層20aに形成される転位110bは、平面サイズが100μm×100μmの領域に10個程度といったレベルに抑えられる計算になる。これは、上記SiC基板10A上のGaN層20aに形成される転位110aの密度に比べて、極めて低いレベルであると言うことができる。
【0018】
このように、窒化物半導体層を成長するための基板としてGaN基板を用いると、転位密度が低く、GaN基板と格子整合し、良好な結晶構造を有する、高品質の窒化物半導体層を成長することが可能になる。
【0019】
所定の基板上に成長された窒化物半導体層が用いられ、HEMT等の半導体装置が製造される。
図2は半導体装置の例について説明する図である。図2(A)には、基板上に成長された窒化物半導体層を用いた半導体装置の第1例の要部断面図を模式的に示している。図2(B)には、基板上に成長された窒化物半導体層を用いた半導体装置の第2例の要部断面図を模式的に示している。
【0020】
図2(A)に示す半導体装置100A及び図2(B)に示す半導体装置100はそれぞれ、窒化物半導体層20を用いたHEMTの一例である。半導体装置100Aは、SiC基板10Aの面10Aa上に窒化物半導体層20が設けられた構成を有する。半導体装置100は、GaN基板10のGa極性面10a上に窒化物半導体層20が設けられた構成を有する。半導体装置100A及び半導体装置100の各々の窒化物半導体層20上には、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50が設けられる。
【0021】
半導体装置100A及び半導体装置100において、窒化物半導体層20は、チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23が順に積層された構造を有する。窒化物半導体層20のチャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23は、半導体装置100AではSiC基板10A上に、また半導体装置100ではGaN基板10上に、それぞれMOCVD法を用いて順に成長される。チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23には、それぞれ所定の窒化物半導体が用いられる。チャネル層21には、例えば、GaNが用いられる。スペーサ層22には、例えば、AlNが用いられる。バリア層23には、例えば、InAlGaN(窒化インジウムアルミニウムガリウム)、AlGaN、AlN等が用いられる。バリア層23及びスペーサ層22には、チャネル層21に用いられる窒化物半導体よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体が用いられる。バリア層23及びスペーサ層22の自発分極、及び、チャネル層21との格子定数差に起因したひずみによってバリア層23及びスペーサ層22に発生するピエゾ分極により、チャネル層21に2DEG101が生成される。
【0022】
半導体装置100A及び半導体装置100において、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50には、それぞれ所定の金属が用いられる。例えば、ゲート電極30には、Ni(ニッケル)、Au(金)等が用いられる。ソース電極40及びドレイン電極50には、Ta(タンタル)、Al(アルミニウム)等が用いられる。例えば、ゲート電極30は、窒化物半導体層20上に、ショットキー電極として機能するように設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、窒化物半導体層20上に、オーミック電極として機能するように設けられる。
【0023】
半導体装置100A及び半導体装置100の動作時には、それぞれ、ソース電極40とドレイン電極50との間に所定の電圧が印加されると共に、ゲート電極30に所定の電圧が印加される。ゲート電極30に印加される電圧による電界効果により、ソース電極40とドレイン電極50との間の、ゲート電極30直下のチャネル層21を通過する電荷量が制御され、半導体装置100A及び半導体装置100の出力が制御される。
【0024】
図2(A)に示す半導体装置100Aでは、SiC基板10Aの面10Aa上に窒化物半導体層20が成長される。このように窒化物半導体層20が、それとは異種材料であるSiC基板10A上に成長される場合には、上記図1(A)について述べたのと同様のことが起こる。即ち、窒化物半導体層20のチャネル層21は、その成長下地となるSiC基板10Aとの格子不整合に起因して、比較的高転位密度となる。半導体装置100Aでは、チャネル層21が比較的高転位密度となることで、チャネル層21内での転位による電子散乱が起こり易くなり、電子移動度(図2(A)に太矢印AR0で模式的に図示)が比較的低くなり得る。
【0025】
これに対し、図2(B)に示す半導体装置100では、GaN基板10のGa極性面10a上に窒化物半導体層20が成長される。このように窒化物半導体層20が、それと同種材料であるGaN基板10上に成長される場合には、上記図1(B)について述べたのと同様のことが起こる。即ち、GaN基板10は、比較的低転位密度である。GaN基板10上に成長される窒化物半導体層20のチャネル層21は、GaN基板10に格子整合する。成長されるチャネル層21には、GaN基板10の転位を反映した転位が形成される。低転位密度のGaN基板10上には、低転位密度でチャネル層21が成長される。半導体装置100では、チャネル層21が低転位密度となることで、チャネル層21内での転位による電子散乱が抑えられ、電子移動度(図2(B)に太矢印AR1で模式的に図示)が比較的高くなる。
【0026】
以上述べたように、窒化物半導体層20を成長するための基板としてGaN基板10を用いることで、高品質の窒化物半導体層20を成長することが可能になる。そして、このように成長される高品質の窒化物半導体層20を用いることで、高性能の半導体装置100を実現することが可能になる。
【0027】
しかし、窒化物半導体層20を成長するための基板としてGaN基板10を用いる場合、窒化物半導体層20の成長プロセスにおいて、窒化物半導体層20の品質低下を招き得る現象が発生することがある。この点について、次の図3を参照して説明する。
【0028】
図3はGaN基板上への窒化物半導体層の成長プロセスの一例について説明する図である。図3(A)には、GaN基板配置工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図3(B)には、窒化物半導体層成長工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図3(C)には、窒化物半導体層成長工程後のGaN基板の一例の要部平面図を模式的に示している。
【0029】
GaN基板10への窒化物半導体層20の成長には、例えば、図3(A)及び図3(B)に示すようなMOCVD装置200が用いられる。MOCVD装置200は、チャンバ210、サセプタ220及びヒータ230を備える。サセプタ220は、GaN基板10が配置される凹部221を有する。サセプタ220は、凹部221に配置されるGaN基板10を保持する機能を有してよい。ヒータ230は、サセプタ220の、GaN基板10が配置される凹部221側とは反対側に設けられる。ヒータ230は、サセプタ220及びそれに配置されるGaN基板10を加熱するための熱源として機能する。サセプタ220及びヒータ230は、窒化物半導体層20の原料ガス及びキャリアガスが導入可能なチャンバ210内に配置される。
【0030】
GaN基板10への窒化物半導体層20の成長では、まず、図3(A)に示すように、MOCVD装置200のサセプタ220の凹部221に、GaN基板10が配置される。GaN基板10は、そのN極性面10bが、サセプタ220の凹部221の底221aに面し、サセプタ220を介してヒータ230と対向するように、配置される。よって、GaN基板10のGa極性面10aは、サセプタ220の凹部221の底221a及びヒータ230の側とは反対側に面するようになる。
【0031】
サセプタ220へのGaN基板10の配置後、図3(B)に示すように、ヒータ230を用いたGaN基板10の加熱(図3(B)に太矢印AR2で図示)が行われる。その際は、ヒータ230によってサセプタ220が加熱され、加熱されたサセプタ220によってGaN基板10が加熱される。GaN基板10は、主として、N極性面10b側から加熱される。
【0032】
ヒータ230を用いて加熱されるGaN基板10が収容されるチャンバ210内には、図3(B)に示すように、窒化物半導体層20の原料ガス及びキャリアガスが導入される。窒化物半導体層20の原料ガスには、N源であるNH(アンモニア)、及び、III族元素原料が含まれる。III族元素原料として、Ga源にはトリメチルガリウム(Tri-Methyl-Gallium;TMGa)が用いられる。Al源にはトリメチルアルミニウム(Tri-Methyl-Aluminum;TMAl)が用いられる。In(インジウム)源にはトリメチルインジウム(Tri-Methyl-Indium;TMIn)が用いられる。また、キャリアガスには、H(水素)及びN(窒素)のうちの少なくとも一方、好ましくはH又はHを含むガスが用いられる。
【0033】
窒化物半導体層20の、成長する窒化物半導体(例えば、上記チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23等)の種類に応じて、III族元素原料であるTMGa、TMAl、TMInの各々の供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。成長時のチャンバ210内の圧力は、1kPa程度から100kPa程度の範囲に設定される。GaN基板10の、窒化物半導体層20の成長面の温度は、600℃程度から1500℃程度の範囲、好ましくは950℃以上の範囲に設定される。
【0034】
図3(A)及び図3(B)に示すような成長プロセスにより、GaN基板10のGa極性面10a上に窒化物半導体層20が成長される。
窒化物半導体層20の上記成長プロセスにおいて、GaN基板10は、MOCVD装置200のヒータ230(それによって加熱されるサセプタ220)によってN極性面10b側から加熱される。N極性面10b側から加熱されるGaN基板10のGa極性面10a側が窒化物半導体層20の成長温度まで昇温され、Ga極性面10a側に窒化物半導体層20が成長される。この時、GaN基板10は、窒化物半導体層20が成長されるGa極性面10a側に比べて、ヒータ230によって加熱されるN極性面10b側の方が高温になる。
【0035】
また、窒化物半導体層20の上記成長プロセスにおいて、MOCVD装置200のチャンバ210内は、キャリアガスに用いられるHや、N源のNH及びIII族元素原料の分解によって生成されるH(水素)等、水素成分が含まれる水素含有雰囲気となり得る。MOCVD法を用いた窒化物半導体層20の成長は、少なくとも水素及びNHを含む水素含有雰囲気中で行われ得るとも言える。GaN基板10は、高温の水素含有雰囲気中では、GaNの構成元素の1つであるNが脱離し易くなるという性質を有する。
【0036】
このため、GaN基板10では、ヒータ230によって加熱され、窒化物半導体層20が成長されるGa極性面10a側に比べて高温になるN極性面10b側において、Nが脱離し易くなる。GaN基板10のN極性面10b側においてNが脱離すると、GaNのもう1つの構成元素であるGaのドロップレットが発生し、GaN基板10のN極性面10b側が融解してしまうという現象が発生する。例えば、図3(C)に示すように、GaN基板10のN極性面10b側に、融解部11が形成される。尚、融解部11の形状や大きさは、図3(C)に示すようなものには限定されない。
【0037】
窒化物半導体層20の成長時に、GaN基板10のN極性面10b側が融解し、融解部11が形成されると、液体状態の融解部11と、融解していない固体状態の非融解部12との間で、熱伝導性に差が生じる。そのため、ヒータ230によってN極性面10b側から加熱されるGaN基板10内の温度分布が乱れ、窒化物半導体層20が成長されるGa極性面10a側における成長面内温度分布の均一性が悪化することが起こり得る。その結果、GaN基板10のGa極性面10a側に成長される窒化物半導体層20内に、異なる成長温度で成長される部位が生じ、結晶構造や組成等の品質に差がある部位が生じ得る。
【0038】
窒化物半導体層20内に、このような品質に差がある部位が生じると、窒化物半導体層20を用いて製造される半導体装置100等の性能や品質の低下を招く恐れがある。例えば、1つの窒化物半導体層20(ウェハ状態)から製造される複数の半導体装置100等の中に、性能や品質に差があるものが生じ、仕様を満たさないものが生じてくる恐れがある。これは、半導体装置100等の歩留まりの低下を招く。
【0039】
また、GaN基板10に形成される融解部11の位置は、MOCVD装置200による成長の度に変化し得る。そのため、窒化物半導体層20内の、品質に差がある部位の位置も変化し得る。その結果、高品質の窒化物半導体層20を再現性良く成長すること、更には、窒化物半導体層20を用いて高性能及び高品質の半導体装置100等を再現性良く且つ歩留まり良く製造することができないことが起こり得る。
【0040】
窒化物半導体層20の成長では、その成長温度が一定温度未満であると、C(炭素)等の不純物濃度が高くなる傾向があることが知られている。C等の不純物濃度が高くなることを抑えるためには、窒化物半導体層20の成長温度を比較的高温に設定すること、例えば、成長面の温度を950℃以上といった高温に設定することが好ましい。しかし、窒化物半導体層20の成長温度を高温にするためには、窒化物半導体層20を成長するGaN基板10のGa極性面10a側を高温にすることを要する。GaN基板10のGa極性面10a側を高温にするためには、ヒータ230で加熱されるN極性面10b側を更に高温にすることを要する。従って、GaN基板10のN極性面10b側におけるN脱離及びそれに起因したGaドロップレットの発生による融解が更に発生し易くなる。
【0041】
窒化物半導体層20の成長温度を高温にするほど、GaN基板10のGa極性面10a側における成長面内温度分布の均一性の悪化及びそれに起因した窒化物半導体層20の品質の低下が起こり易くなる。窒化物半導体層20の品質の低下により、窒化物半導体層20の品質再現性の低下、及び、窒化物半導体層20を用いて製造される半導体装置100等の再現性及び歩留まりの低下が起こり易くなる。
【0042】
以上のような点に鑑み、ここでは以下に実施の形態として示すような構成を採用し、GaN基板10に高品質の窒化物半導体層20を形成する。
[第1実施形態]
図4は第1実施形態に係る基板の一例について説明する図である。図4(A)には、GaN基板の一例の要部断面図を模式的に示している。図4(B)には、GaN基板とそれに設けられた非晶質層とを含む基板の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0043】
図4(A)に示すように、GaN基板10は、N極性面10b((000-1)面)と、N極性面10bとは反対側のGa極性面10a((0001)面)とを有する。GaN基板10には、例えば、GaN自立基板が用いられる。GaN基板10のN極性面10bは、後述のようなMOCVD法を用いた窒化物半導体層20の成長において、加熱される側の面である。GaN基板10のGa極性面10aは、後述のようなMOCVD法を用いた窒化物半導体層20の成長において、窒化物半導体層20が成長される側の面である。図4(B)に示す基板1は、このようなGaN基板10のN極性面10b側に、非晶質層60が設けられた構成を有する。
【0044】
非晶質層60は、結晶性を有しないアモルファスの層である。非晶質層60には、非晶質のAlN、又は、非晶質のAlGaNが用いられる。即ち、非晶質層60には、一般式AlGa1-xN(0<x≦1)で表される非晶質の窒化物半導体が用いられる。非晶質層60は、例えば、MOCVD法を用いて、GaN基板10のN極性面10b側に形成される。非晶質層60の形成には、MOCVD法のほか、スパッタ法又は原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法を用いることもできる。
【0045】
非晶質層60は、GaN基板10のN極性面10b側が加熱され、Ga極性面10a側に窒化物半導体層20が成長される際、その加熱されるN極性面10b側を覆い、N極性面10b側を保護する。図4(B)に示すような基板1、即ち、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60が設けられた基板1が用いられることで、Ga極性面10a側には、高品質の窒化物半導体層20が成長されるようになる。
【0046】
ここで、基板1を用いた窒化物半導体層20の成長について説明する。
図5は第1実施形態に係る基板への窒化物半導体層の成長プロセスの一例について説明する図である。図5(A)には、基板配置工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図5(B)には、窒化物半導体層成長工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図5(C)には、窒化物半導体層成長工程後の基板の一例の要部平面図を模式的に示している。
【0047】
基板1への窒化物半導体層20の成長には、例えば、図5(A)及び図5(B)に示すようなチャンバ210、サセプタ220及びヒータ230を備えるMOCVD装置200が用いられる。サセプタ220は、基板1が配置される凹部221を有する。サセプタ220は、凹部221に配置される基板1を保持する機能を有してよい。ヒータ230は、サセプタ220の、基板1が配置される凹部221側とは反対側に設けられる。ヒータ230は、サセプタ220及びそれに配置される基板1を加熱するための熱源として機能する。サセプタ220及びヒータ230は、窒化物半導体層20の原料ガス及びキャリアガスが導入可能なチャンバ210内に配置される。
【0048】
基板1への窒化物半導体層20の成長では、まず、図5(A)に示すように、MOCVD装置200のサセプタ220の凹部221に、基板1が配置される。基板1は、そのGaN基板10のN極性面10b側に設けられた非晶質層60が、サセプタ220の凹部221の底221aに面し、サセプタ220を介してヒータ230と対向するように、配置される。よって、基板1は、そのGaN基板10のGa極性面10aが、サセプタ220の凹部221の底221a及びヒータ230の側とは反対側に面するようになる。
【0049】
サセプタ220への基板1の配置後、図5(B)に示すように、ヒータ230を用いた基板1の加熱(図5(B)に太矢印AR3で図示)が行われる。その際は、ヒータ230によってサセプタ220が加熱され、加熱されたサセプタ220によって基板1が加熱される。基板1は、主として、GaN基板10のN極性面10b側に設けられた非晶質層60の側から加熱される。
【0050】
ヒータ230を用いて加熱される基板1が収容されるチャンバ210内には、図5(B)に示すように、窒化物半導体層20の原料ガス及びキャリアガスが導入される。窒化物半導体層20の原料ガスには、N源であるNH、及び、III族元素原料であるTMGa、TMAl及びTMInのうちの少なくとも1種が含まれる。キャリアガスには、H及びNのうちの少なくとも一方、好ましくはH又はHを含むガスが用いられる。成長する窒化物半導体層20の種類に応じて、III族元素原料であるTMGa、TMAl、TMInの各々の供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。成長時のチャンバ210内の圧力は、1kPa程度から100kPa程度の範囲に設定される。GaN基板10の、窒化物半導体層20の成長面の温度は、600℃程度から1500℃程度の範囲、好ましくは950℃以上の範囲に設定される。
【0051】
図5(A)及び図5(B)に示すような成長プロセスにより、基板1の、GaN基板10のGa極性面10a上に、窒化物半導体層20が成長され、形成される。
窒化物半導体層20の上記成長プロセスにおいて、基板1は、MOCVD装置200のヒータ230(それによって加熱されるサセプタ220)によって非晶質層60側から加熱される。非晶質層60側から加熱される基板1の、GaN基板10のGa極性面10a側が、窒化物半導体層20の成長温度まで昇温され、Ga極性面10a側に窒化物半導体層20が成長される。この時、基板1は、窒化物半導体層20が成長されるGaN基板10のGa極性面10a側に比べて、ヒータ230によって加熱される非晶質層60側の方が高温になる。また、窒化物半導体層20の上記成長プロセスにおいて、MOCVD装置200のチャンバ210内は、キャリアガスに用いられるHや、N源のNH及びIII族元素原料の分解によって生成されるH等、水素成分が含まれる水素含有雰囲気となり得る。MOCVD法を用いた窒化物半導体層20の成長は、少なくとも水素及びNHを含む水素含有雰囲気中で行われ得るとも言える。
【0052】
基板1の非晶質層60には、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが用いられる。このような材料が用いられる非晶質層60は、GaN基板10のGa極性面10a側に成長される窒化物半導体層20の成長温度が比較的高温とされるような水素含有雰囲気中でも、比較的安定である。例えば、Ga極性面10a側に成長される窒化物半導体層20の成長面の温度が、窒化物半導体層20へのC等の不純物混入が抑えられる、950℃以上といった高温とされるような水素含有雰囲気中であっても、比較的安定である。そのため、窒化物半導体層20が成長される際、GaN基板10が950℃以上といった高温の水素含有雰囲気に曝されても、比較的安定な非晶質層60で覆われるそのN極性面10b側のN脱離及びそれに起因したGaドロップレットの発生による融解が抑えられる。図5(C)に示すように、N極性面10b側を非晶質層60で覆ってGa極性面10a側に窒化物半導体層20を成長したGaN基板10の、そのN極性面10b側及び非晶質層60には、融解の発生は認められない。
【0053】
非晶質層60及びN極性面10bの側から加熱されるGaN基板10の融解が抑えられることで、融解部と非融解部との形成によりGaN基板10内に熱伝導性に差がある部位が生じることが抑えられ、GaN基板10内の温度分布が乱れることが抑えられる。これにより、窒化物半導体層20が成長されるGa極性面10a側における成長面内温度分布の均一性の悪化が抑えられる。よって、当該成長面内温度分布の均一性の悪化に起因した、窒化物半導体層20の結晶構造や組成等の品質の低下が抑えられる。
【0054】
また、非晶質層60に用いられる非晶質AlN又は非晶質AlGaNは、GaNとの熱膨張係数差が比較的小さい。そのため、窒化物半導体層20の成長プロセスにおいてGaN基板10が昇降温される場合でも、非晶質層60との熱膨張係数差に起因してGaN基板10に反りが発生することが抑えられる。これにより、GaN基板10及びその上に成長される窒化物半導体層20に内部応力が発生することが抑えられ、内部応力に起因してGaN基板10及びその上の窒化物半導体層20にクラックが発生することが抑えられる。更に、成長後の窒化物半導体層20上にフォトリソグラフィ技術を用いてパターンを形成する場合にも、GaN基板10及びその上の窒化物半導体層20の反りに起因した焦点ずれによってパターンの形成不良が発生することが抑えられる。
【0055】
上記のような基板1、即ち、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60が設けられた基板1を用いることで、GaN基板10のGa極性面10a側に高品質の窒化物半導体層20を形成することが可能になる。
【0056】
[第2実施形態]
ここでは、第2実施形態として、基板1及びそれを用いた窒化物半導体層20の形成、並びに、窒化物半導体層20を用いたHEMTの形成を含む、半導体装置の製造方法の一例を、図6及び図7を参照して説明する。
【0057】
図6及び図7は第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。図6(A)には、非晶質層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図6(B)には、窒化物半導体層成長工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図6(C)には、窒化物半導体層成長工程後の基板の一例の要部断面図を模式的に示している。図7(A)には、電極形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図7(B)には、基板研磨工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図7(C)には、個片化工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0058】
まず、図6(A)に示すように、GaN基板10に非晶質層60が形成される。図6(A)には一例として、MOCVD法を用いた非晶質層60の形成を示している。GaN基板10は、N極性面10b((000-1)面)と、N極性面10bとは反対側のGa極性面10a((0001)面)とを有する。GaN基板10には、例えば、GaN自立基板が用いられる。
【0059】
MOCVD法を用いた非晶質層60の形成では、GaN基板10がMOCVD装置200のサセプタ220に配置される。非晶質層60の形成の際、GaN基板10は、そのGa極性面10aが、サセプタ220の凹部221の底221aに面し、サセプタ220を介してヒータ230と対向するように、配置される。よって、GaN基板10のN極性面10bは、サセプタ220の凹部221の底221a及びヒータ230の側とは反対側に面するようになる。
【0060】
サセプタ220へのGaN基板10の配置後、ヒータ230を用いたGaN基板10の加熱(図6(A)に太矢印AR4で図示)が行われる。その際は、ヒータ230によってサセプタ220が加熱され、加熱されたサセプタ220によってGaN基板10が加熱される。非晶質層60の形成の際、GaN基板10は、主として、Ga極性面10a側から加熱される。
【0061】
ヒータ230を用いてGa極性面10a側から加熱されるGaN基板10のN極性面10b側に、非晶質層60が形成される。非晶質層60として、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが形成される。非晶質層60の形成の際、ヒータ230を用いて加熱されるGaN基板10が収容されるチャンバ210内には、図6(A)に示すように、非晶質層60の原料ガス及びキャリアガスが導入される。非晶質層60の原料ガスには、N源であるNH、及び、III族元素原料が含まれる。非晶質層60として非晶質AlNを形成する場合には、III族元素原料として、TMAlが用いられる。非晶質層60として非晶質AlGaNを形成する場合には、III族元素原料として、TMAl及びTMGaが用いられる。キャリアガスには、H又はNが用いられる。
【0062】
チャンバ210内の圧力は、1kPa程度から100kPa程度の範囲に設定される。GaN基板10の、非晶質層60の形成面の温度は、非晶質層60に用いられる窒化物半導体のAlN又はAlGaNが結晶化されずに形成されるような範囲に設定される。例えば、非晶質層60に用いられるAlN又はAlGaNは、GaN基板10の非晶質層60の形成面が500℃超となるような条件で形成されると、結晶化されて形成され易くなる。AlN又はAlGaNが結晶化されてGaN基板10のN極性面10bに形成されると、GaN基板10に反りが発生し易くなる。GaN基板10の反りは、GaN基板10及びその上に成長される窒化物半導体層20のクラックの発生や、成長後の窒化物半導体層20上に形成されるパターンの形成不良等を招き得る。従って、GaN基板10の、非晶質層60の形成面の温度は、500℃以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0063】
非晶質層60の厚さは、例えば、200nm程度に設定される。但し、非晶質層60の厚さは、後述する窒化物半導体層20の成長時にGaN基板10の融解を抑えることができれば、各種厚さに設定することが可能である。尚、非晶質層60が薄過ぎると、窒化物半導体層20の成長時にGaN基板10の融解を抑えることができなくなる可能性があることに留意する。また、非晶質層60が厚過ぎると、窒化物半導体層20の成長時にヒータ230から非晶質層60を介してGaN基板10へ十分に熱が伝わり難くなる可能性があることに留意する。
【0064】
図6(A)に示すような工程により、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60が形成される。これにより、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60が設けられた基板1が形成される。
【0065】
尚、ここでは、MOCVD法を用いて非晶質層60を形成する例を示したが、非晶質層60は、MOCVD法のほか、スパッタ法又はALD法を用いて形成することもできる。例えば、スパッタ法が用いられ、非晶質層60として、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが形成される。例えば、ALD法が用いられ、非晶質層60として、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが形成される。
【0066】
非晶質層60の形成後、図6(B)に示すように、GaN基板10に窒化物半導体層20が成長され、形成される。窒化物半導体層20は、MOCVD法を用いて成長される。
MOCVD法を用いた窒化物半導体層20の成長では、GaN基板10に非晶質層60が設けられた基板1が、MOCVD装置200のサセプタ220に配置される。基板1は、その非晶質層60が、サセプタ220の凹部221の底221aに面し、サセプタ220を介してヒータ230と対向するように、配置される。よって、基板1は、そのGaN基板10のGa極性面10aが、サセプタ220の凹部221の底221a及びヒータ230の側とは反対側に面するようになる。
【0067】
サセプタ220への基板1の配置後、ヒータ230を用いた基板1の加熱(図6(B)に太矢印AR5で図示)が行われる。その際は、ヒータ230によってサセプタ220が加熱され、加熱されたサセプタ220によって基板1が加熱される。基板1は、主として、GaN基板10のN極性面10b側に設けられた非晶質層60の側から加熱される。
【0068】
ヒータ230を用いて加熱される基板1が収容されるチャンバ210内には、図6(B)に示すように、窒化物半導体層20の原料ガス及びキャリアガスが導入される。窒化物半導体層20の原料ガスには、N源であるNH、及び、III族元素原料であるTMGa、TMAl及びTMInのうちの少なくとも1種が含まれる。キャリアガスには、H及びNのうちの少なくとも一方、好ましくはH又はHを含むガスが用いられる。成長する窒化物半導体層20の種類に応じて、III族元素原料であるTMGa、TMAl、TMInの各々の供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。成長時のチャンバ210内の圧力は、1kPa程度から100kPa程度の範囲に設定される。GaN基板10の、窒化物半導体層20の成長面の温度は、600℃程度から1500℃程度の範囲、好ましくは950℃以上の範囲に設定される。
【0069】
この例では、窒化物半導体層20として、HEMTを実現するためのチャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23が成長される。GaN基板10のGa極性面10a上に、MOCVD法を用いて、チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23が順に成長される。即ち、GaN基板10のGa極性面10a側に、チャネル層21が成長される。そのチャネル層21の、GaN基板10側とは反対の面側に、スペーサ層22が成長される。そのスペーサ層22の、チャネル層21及びGaN基板10の側とは反対の面側に、バリア層23が成長される。
【0070】
チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23には、それぞれ所定の窒化物半導体が用いられる。チャネル層21には、例えば、GaNが用いられる。スペーサ層22には、例えば、AlNが用いられる。バリア層23には、例えば、InAlGaN、AlGaN、AlN等が用いられる。バリア層23及びスペーサ層22には、チャネル層21に用いられる窒化物半導体よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体が用いられる。バリア層23及びスペーサ層22の自発分極、及び、チャネル層21との格子定数差に起因したひずみによってバリア層23及びスペーサ層22に発生するピエゾ分極により、チャネル層21に2DEG101が生成される。
【0071】
尚、窒化物半導体層20のうち、チャネル層21を「第1窒化物半導体層」とも言い、チャネル層21とはバンドギャップが異なるスペーサ層22若しくはバリア層23又はそれらの両方を「第2窒化物半導体層」とも言う。
【0072】
図6(B)に示すような成長プロセスにより、基板1の、GaN基板10のGa極性面10a上に、チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23を含む窒化物半導体層20が成長される。
【0073】
窒化物半導体層20の上記成長プロセスにおいて、基板1は、MOCVD装置200のヒータ230(それによって加熱されるサセプタ220)によって非晶質層60側から加熱される。非晶質層60側から加熱される基板1の、GaN基板10のGa極性面10a側が、窒化物半導体層20のチャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23の各層の成長温度まで昇温され、Ga極性面10a側に当該各層が成長される。この時、基板1は、窒化物半導体層20が成長されるGaN基板10のGa極性面10a側に比べて、ヒータ230によって加熱される非晶質層60側の方が高温になる。また、窒化物半導体層20の上記成長プロセスにおいて、MOCVD装置200のチャンバ210内は、キャリアガスに用いられるHや、N源のNH及びIII族元素原料の分解によって生成されるH等、水素成分が含まれる水素含有雰囲気となり得る。MOCVD法を用いた窒化物半導体層20の成長は、少なくとも水素及びNHを含む水素含有雰囲気中で行われ得るとも言える。
【0074】
基板1では、GaN基板10のN極性面10b側に、窒化物半導体層20の成長温度が比較的高温とされるような水素含有雰囲気中でも比較的安定な、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが用いられた非晶質層60が設けられる。GaN基板10は、N極性面10b側に設けられた非晶質層60の側から加熱され、Ga極性面10a側に窒化物半導体層20のチャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23の各層が順に成長される。そのため、GaN基板10は、C等の不純物混入が抑えられる950℃以上といった高温の水素含有雰囲気に曝されても、比較的安定な非晶質層60で覆われるそのN極性面10b側のN脱離及びそれに起因したGaドロップレットの発生による融解が抑えられる。よって、融解部と非融解部との形成によりGaN基板10内に熱伝導性に差がある部位が生じることが抑えられ、GaN基板10内の温度分布が乱れることが抑えられる。これにより、窒化物半導体層20のチャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23の各層が順に成長される際の、Ga極性面10a側における成長面内温度分布の均一性の悪化、それに起因した窒化物半導体層20の結晶構造や組成等の品質の低下が抑えられる。
【0075】
また、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが用いられた非晶質層60は、GaN基板10との熱膨張係数差が比較的小さい。そのため、窒化物半導体層20の成長プロセスにおいてGaN基板10が昇降温される場合でも、GaN基板10に反りが発生することが抑えられる。これにより、GaN基板10及びその上に成長される窒化物半導体層20の内部応力の発生が抑えられ、内部応力に起因したクラックの発生が抑えられる。
【0076】
窒化物半導体層20が成長された基板1は、MOCVD装置200から搬出される。図6(B)に示すような成長プロセスにより、図6(C)に示すような基板1a、即ち、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60が設けられ、Ga極性面10a側に窒化物半導体層20が設けられた基板1aが形成される。
【0077】
基板1aの形成後、基板1aに素子間分離領域(図示せず)が形成される。その後、図7(A)に示すように、基板1a上にゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。例えば、基板1a上に、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ソース電極40用及びドレイン電極50用の金属、例えば、TaとAlとの積層体が形成される。そして、熱処理によって金属のオーミックコンタクトが確立される。これにより、オーミック電極として機能するソース電極40及びドレイン電極50が形成される。更に、基板1a上に、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ゲート電極30用の金属、例えば、NiとAuとの積層体が形成される。これにより、ショットキー電極として機能するゲート電極30が形成される。このようにして、基板1aの窒化物半導体層20に接続されるゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の各電極が形成される。
【0078】
尚、ソース電極40用及びドレイン電極50用の金属の形成によってオーミックコンタクトが確立される場合には、当該金属の形成後の熱処理を省略することもできる。また、ゲート電極30用の金属の形成後には熱処理を行うこともできる。
【0079】
基板1aにおいて、非晶質AlN又は非晶質AlGaNが用いられた非晶質層60は、GaN基板10との熱膨張係数差が比較的小さい。そのため、GaN基板10が昇降温される場合でも、GaN基板10に反りが発生することが抑えられる。従って、図7(A)に示すように基板1a上にゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50を形成する際、フォトリソグラフィ技術を用いてパターンを形成するような場合にも、焦点ずれによってパターンの形成不良が発生することが抑えられる。これにより、基板1a上の所定の領域に、精度良く、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。
【0080】
尚、ソース電極40及びドレイン電極50は、基板1aに設けられたリセスに形成されてもよい。ソース電極40及びドレイン電極50は、基板1aに設けられたリセスに形成されたn型GaN等のコンタクト層(再成長層)の上に形成されてもよい。また、ゲート電極30の形成前には、基板1a上に、SiN(窒化シリコン)等のパッシベーション膜が形成されてもよい。この場合は、当該パッシベーション膜に基板1aに通じる開口部が形成され、その開口部の位置に、ゲート電極30が形成される。また、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50は、それぞれ複数のフィンガーを備える櫛歯形状とされてもよい。また、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の形成後には、それらに接続される配線、それらを覆う層間絶縁膜等が形成されてもよい。
【0081】
基板1a上へのゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の形成後、図7(B)に示すように、その基板1aの、非晶質層60及びそれが設けられたGaN基板10のN極性面10b側の一部が除去される。例えば、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50等が形成された基板1aが、非晶質層60側から研磨(「バックグラインド」とも言う)され、非晶質層60及びGaN基板10の一部が除去される。これにより、基板1aが薄化される。基板1aのGaN基板10には、Ga極性面10aとは反対側に、バックグラインドされた面10cが形成される。
【0082】
基板1aのバックグラインド後、図7(C)に示すように、基板1aの所定の位置でダイシングが行われる。これにより、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50等が形成された基板1aが個片化され、個々の半導体装置100aが得られる。
【0083】
図6(A)から図6(C)及び図7(A)から図7(C)に示すような工程により、HEMTを備える半導体装置100aが製造される。
尚、半導体装置100aの製造において、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の形成は、基板1aのバックグラインド(図7(B))後に行うこともできる。また、基板1aのバックグラインド(図7(B))後、それによって露出されたGaN基板10の面10c側に、金属層、半導体層、ダイヤモンド層等、導電性又は熱伝導性を有する別の層を形成することもできる。また、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の形成(図7(A))後、基板1aのバックグラインド(図7(B))を行わず、ダイシングによる個片化(図7(C))を行うこともできる。この場合、半導体装置100aは、GaN基板10に設けられた非晶質層60が残存した形態となる。また、ダイシングによる個片化(図7(C))が行われた半導体装置100a等のほか、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の形成(図7(A))が行われた基板1aであって、ダイシングによる個片化が行われる前の基板1aを、「半導体装置」と称してもよい。
【0084】
以上のように、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60が設けられた基板1が用いられることで、GaN基板10のGa極性面10a側に、チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23を含む高品質の窒化物半導体層20が成長され、形成される。更に、非晶質層60が設けられたGaN基板10にそのような高品質の窒化物半導体層20が形成された基板1aが実現される。更にまた、そのような高品質の窒化物半導体層20が形成された基板1aにより、窒化物半導体層20を用いた高性能及び高品質の半導体装置100a等が実現される。
【0085】
[第3実施形態]
上記第2実施形態では、金属半導体接合FET(MEtal Semiconductor Field Effect Transistor)の一例として、ショットキーゲート構造を有するHEMTを備えた半導体装置100aの製造を例にした。上記のようなGaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を設けた基板1を用いることで、各種形態の半導体装置を製造することができる。例えば、非晶質層60を設けた基板1上に、HEMTを実現するための各種窒化物半導体層及び電極等を形成し、HEMTを備えた各種半導体装置を得ることができる。或いは、非晶質層60を設けた基板1上に、ダイオードを実現するための各種窒化物半導体層及び電極等を形成し、ダイオードを備えた各種半導体装置を得ることもできる。ここでは、第3実施形態として、非晶質層60を設けた基板1を用いて得ることができる各種半導体装置のうちのいくつかの構成例を、図8及び図9を参照して説明する。
【0086】
図8は第3実施形態に係るHEMTを備えた半導体装置の構成例について説明する図である。図8(A)には、HEMTを備えた半導体装置の第1例の要部断面図を模式的に示している。図8(B)には、HEMTを備えた半導体装置の第2例の要部断面図を模式的に示している。
【0087】
図8(A)には、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型ゲート構造を有するHEMTを備えた半導体装置100bを示している。半導体装置100bは、上記半導体装置100と同様に、GaN基板10と、そのGa極性面10a上に成長された窒化物半導体層20とを含む。GaN基板10のGa極性面10a上に、窒化物半導体層20として、チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23が順に成長される。窒化物半導体層20上に、窒化物半導体層20と接続されるゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50の各電極が設けられる。半導体装置100bにおいて、ゲート電極30は、窒化物半導体層20上に、酸化膜、窒化膜、酸窒化膜等が用いられたゲート絶縁膜70を介して、設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、窒化物半導体層20上に、オーミック電極として機能するように設けられる。上記第2実施形態の例に従い、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を設けた基板1を用い、この図8(A)に示すようなHEMTを備えた半導体装置100bを得ることもできる。
【0088】
図8(B)に示す半導体装置100cは、窒化物半導体層20上に、窒化物半導体が用いられたキャップ層71を介して、ゲート電極30が設けられた構成を有する点で、上記半導体装置100bと相違する。キャップ層71は、ゲート電極30直下に限らず、ソース電極40とドレイン電極50との間のバリア層23上を覆うように設けられてもよい。キャップ層71には、例えば、ドープ(p型若しくはn型)又はノンドープのGaN等の窒化物半導体を用いることができる。キャップ層71には、ゲート電極30直下におけるチャネル層21の2DEG101の濃度を変調する機能を持たせてもよい。上記第2実施形態の例に従い、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を設けた基板1を用い、この図8(B)に示すようなHEMTを備えた半導体装置100cを得ることもできる。
【0089】
また、図9は第3実施形態に係るダイオードを備えた半導体装置の構成例について説明する図である。図9(A)には、ダイオードを備えた半導体装置の第1例の要部断面図を模式的に示している。図9(B)には、ダイオードを備えた半導体装置の第2例の要部断面図を模式的に示している。
【0090】
図9(A)に示す半導体装置100dは、ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode;SBD)の一例である。半導体装置100dは、GaN基板10と、そのGa極性面10a上に成長された窒化物半導体層20とを含む。GaN基板10のGa極性面10a上に、窒化物半導体層20として、チャネル層21、スペーサ層22及びバリア層23が順に成長される。窒化物半導体層20上に、窒化物半導体層20に接続されるカソード電極80及びアノード電極81の各電極が形成される。カソード電極80は、窒化物半導体層20上に、オーミック電極として機能するように設けられる。アノード電極81は、窒化物半導体層20上に、ショットキー電極として機能するように設けられる。上記第2実施形態の例に従い、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を設けた基板1を用い、この図9(A)に示すようなSBDを備えた半導体装置100dを得ることもできる。
【0091】
図9(B)に示す半導体装置100eは、pn接合ダイオードの一例である。半導体装置100eは、GaN基板10と、そのGa極性面10a上に成長された窒化物半導体層20bとを含む。窒化物半導体層20bには、互いに導電型が異なる窒化物半導体が用いられた第1層24及び第2層25が含まれる。一例として、第1層24にn型窒化物半導体が用いられ、第2層25にp型窒化物半導体が用いられる。第1層24及び第2層25はそれぞれ、1種の窒化物半導体の単層構造であってもよいし、1種又は2種以上の窒化物半導体の積層構造であってもよい。GaN基板10のGa極性面10a上に、窒化物半導体層20bとして、第1層24及び第2層25が順に成長される。即ち、GaN基板10のGa極性面10a側に、第1層24が成長される。その第1層24の、GaN基板10側とは反対の面側に、第2層25が成長される。
【0092】
第2層25は、一部が除去される。第2層25が除去されることで露出する第1層24の一部上と、第1層24上に残存する第2層25上とに、それぞれ電極が設けられる。例えば、第1層24がn型窒化物半導体であり、第2層25がp型窒化物半導体であれば、第1層24上にカソード電極80が設けられ、第2層25上にアノード電極81が設けられる。例えば、第1層24及び第2層25を含む窒化物半導体層20b上には、窒化物半導体層20bと接続されるこのようなカソード電極80及びアノード電極81の各電極が形成される。上記第2実施形態の例に従い、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を設けた基板1を用い、この図9(B)に示すようなpn接合ダイオードを備えた半導体装置100eを得ることもできる。
【0093】
尚、窒化物半導体層20bのうち、第1層24を「第1窒化物半導体層」とも言い、第1層24とは導電型が異なる第2層25を「第2窒化物半導体層」とも言う。
GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を設けた基板1は、上記半導体装置100a、100b、100c、100d、100eに限らず、各種半導体装置の製造に用いることが可能である。
【0094】
以上の説明では、GaN基板10のN極性面10b側に非晶質層60を形成し、Ga極性面10a側に窒化物半導体層20等を形成する例を示した。このほか、上記の例に従い、GaN基板10のGa極性面10a側に非晶質層60を形成し、N極性面10b側に窒化物半導体層20等を形成することも可能である。
【0095】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) N極性面と、前記N極性面とは反対側のGa極性面とを有するGaN基板の、前記N極性面側に、非晶質のAlGa1-xN(0<x≦1)を含む非晶質層を形成する工程と、
前記N極性面側に前記非晶質層が形成された前記GaN基板の、前記Ga極性面側に、窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【0096】
(付記2) 前記窒化物半導体層を形成する工程は、有機金属化学気相成長法を用いて、前記Ga極性面側に、前記窒化物半導体層を形成する工程を含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0097】
(付記3) 前記窒化物半導体層を形成する工程は、少なくとも水素及びアンモニアを含む雰囲気中、前記GaN基板の前記Ga極性面側の温度を950℃以上にする工程を含む、付記2に記載の半導体装置の製造方法。
【0098】
(付記4) 前記窒化物半導体層を形成する工程は、
前記GaN基板を、有機金属化学気相成長装置に、前記N極性面側に形成された前記非晶質層が前記有機金属化学気相成長装置の熱源側となるように配置する工程と、
前記熱源によって前記非晶質層側から加熱される前記GaN基板の、前記Ga極性面側に、前記窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0099】
(付記5) 前記非晶質層を形成する工程は、有機金属化学気相成長法、スパッタ法及び原子層堆積法のうちのいずれかの方法を用いて、前記GaN基板の前記N極性面側に前記非晶質層を形成する工程を含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0100】
(付記6) 前記窒化物半導体層を形成する工程は、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に、第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の、前記GaN基板側とは反対の面側に、前記第1窒化物半導体層とはバンドギャップが異なる第2窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0101】
(付記7) 前記窒化物半導体層を形成する工程は、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に、第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の、前記GaN基板側とは反対の面側に、前記第1窒化物半導体層とは導電型が異なる第2窒化物半導体層を形成する工程と、
を含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0102】
(付記8) 前記窒化物半導体層を形成する工程後に、前記窒化物半導体層と接続される電極を形成する工程を更に含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記電極を形成する工程は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程を含む、付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0103】
(付記10) 前記電極を形成する工程は、カソード電極及びアノード電極を形成する工程を含む、付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11) 前記窒化物半導体層を形成する工程後に、前記N極性面側に前記非晶質層が形成された前記GaN基板を、前記非晶質層側から研磨し、前記非晶質層と前記GaN基板の一部とを除去する工程を更に含む、付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0104】
(付記12) N極性面と、前記N極性面とは反対側のGa極性面とを有するGaN基板と、
前記GaN基板の前記N極性面側に設けられ、非晶質のAlGa1-xN(0<x≦1)を含む非晶質層と、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に設けられる窒化物半導体層と、
を含む、基板。
【0105】
(付記13) 前記窒化物半導体層は、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に設けられる第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層の、前記GaN基板側とは反対の面側に設けられ、前記第1窒化物半導体層とはバンドギャップが異なる第2窒化物半導体層と、
を含む、付記12に記載の基板。
【0106】
(付記14) 前記窒化物半導体層は、
前記GaN基板の前記Ga極性面側に設けられる第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層の、前記GaN基板側とは反対の面側に設けられ、前記第1窒化物半導体層とは導電型が異なる第2窒化物半導体層と、
を含む、付記12に記載の基板。
【0107】
(付記15) 前記窒化物半導体層と接続される電極を更に含む、付記12に記載の基板。
【符号の説明】
【0108】
1、1a 基板
10 GaN基板
10a Ga極性面
10b N極性面
10c、10Aa 面
10A SiC基板
11 融解部
12 非融解部
20、20b 窒化物半導体層
20a GaN層
21 チャネル層
22 スペーサ層
23 バリア層
24 第1層
25 第2層
30 ゲート電極
40 ソース電極
50 ドレイン電極
60 非晶質層
70 ゲート絶縁膜
71 キャップ層
80 カソード電極
81 アノード電極
100、100a、100b、100c、100d、100e、100A 半導体装置
101 2DEG
110、110a、110b 転位
200 MOCVD装置
210 チャンバ
220 サセプタ
221 凹部
221a 底
230 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9