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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124927
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】止水板収納構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240906BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032919
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 大樹
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 止水板を設置箇所の近くに目立つように収納設置する。
【解決手段】 止水板収納構造であって、建具または建具の周辺の起立面に、横幅方向へわたって突出する受部材30を設け、横幅方向を上下に向けた止水板20が、受部材30に載置されるようにして立て掛けられ、この止水板20が受部材30よりも上方側で露出されるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具または建具の周辺の起立面に、横幅方向へわたって突出する受部材を設け、横幅方向を上下に向けた止水板が、前記受部材に載置されるようにして立て掛けられ、この止水板が前記受部材よりも上方側で露出されるようにしたことを特徴とする止水板収納構造。
【請求項2】
前記起立面が、前記建具を構成する戸体の表面であることを特徴とする請求項1記載の止水板収納構造。
【請求項3】
前記戸体が、親扉と子扉により開口部を開閉可能な親子扉であって、
前記起立面が、前記子扉の表面であることを特徴とする請求項2記載の止水板収納構造。
【請求項4】
前記起立面には、立て掛けられる止水板に対し、前記受部材よりも上方側で係合する上側係合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水板収納構造。
【請求項5】
前記上側係合部は、操作されることで、前記止水板を離脱不能にした係合状態から、前記止水板を離脱可能にした被係合状態になることを特徴とする請求項4記載の止水板収納構造。
【請求項6】
前記上側係合部は、前記受部材に載置される止水板に対し上方から嵌り合うように係合することを特徴とする請求項4記載の止水板収納構造。
【請求項7】
前記上側係合部は、前記受部材に載置される止水板に対し側方から嵌り合うように係合することを特徴とする請求項4記載の止水板収納構造。
【請求項8】
前記上側係合部は、上下方向の位置を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項6記載の止水板収納構造。
【請求項9】
前記上側係合部は、左右方向の位置を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載の止水板収納構造。
【請求項10】
前記受部材が、前記起立面における下端寄りの初期位置と、同起立面における前記初期位置よりも上方側であって前記止水板の止水高さ方向の全高よりも高い再装着位置との少なくとも2か所に対し、着脱可能であることを特徴とする請求項2記載の止水板収納構造。
【請求項11】
前記受部材の上面には、載置される止水板を受けるように弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水板収納構造。
【請求項12】
前記起立面における前記受部材よりも上方側には、立て掛けられる前記止水板の裏面を受けて弾性変形する緩衝部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水板収納構造。
【請求項13】
前記止水板を収納した状態において、前記止水板に設けられた手掛部を外部に露出するようにしたことを特徴とする請求項1~12何れか1項記載の止水板収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板を収納するための止水板収納構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水が、開き戸により開閉される開口部に侵入すると、浸水による甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態が想定される場合に、前記開口部の下端側のドア枠間に止水板を嵌め込み、この止水板により水の浸入を阻むようにした従来技術が知られている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-218794号公報
【特許文献2】特開2017-14865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、通常時は、止水板を、設置場所から離れた倉庫の内部に保管しておき、災害時にこの止水板を探し出して運び出す必要がある。
このため、止水板を探し出す作業や、止水板を搬出する作業等に手間取る可能性がある。また、使用後の止水板を倉庫に収納する際の作業にも手間取るおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
建具または建具の周辺の起立面に、横幅方向へわたって突出する受部材を設け、横幅方向を上下に向けた止水板が、前記受部材に載置されるようにして立て掛けられ、この止水板が前記受部材よりも上方側で露出されるようにしたことを特徴とする止水板収納構造。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、止水板を設置箇所の近くに目立つように収納設置することができ、搬出搬入等の作業も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る止水板収納構造の一例を示す正面図である。
図2】同止水板収納構造の要部縦断面図である。
図3】同止水板収納構造の要部縦断面図であり、(a)は止水板が立て掛けられる前の状態を示し、(b)は止水板が立て掛けられた状態を示し、(c)は立て掛けられた止水板を上側係合部によって係止した状態を示す。
図4】上側係合部及び緩衝部の一例を起立面に装着している様子を示す要部縦断面図である。
図5】受部材の一例を示す斜視図である。
図6】受部材が装着されていない状態において、子扉の下部側を示す拡大正面図である。
図7】受部材を起立面に装着している様子を(a)(b)に順次に示す縦断面図である。
図8】受部材を初期位置よりも上方側に再装着している様子を示す縦断面図である。
図9】建具の開口部に止水板を装着した状態を屋内側から視た正面図である。
図10】本発明に係る止水板収納構造の他例を示す正面図である。
図11】同止水板収納構造の他例の要部縦断面図である。
図12】同止水板収納構造の他例において、受部材を初期位置よりも上方側に再装着している様子を示す縦断面図である。
図13】上側係合部及び緩衝部の他例を起立面に装着している様子を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明において、「幅方向」又は「横幅方向」とは、開口部を閉鎖するように設置した止水板の止水高さ方向に対し直交する方向であって、且つ止水板厚さ方向でない方向を意味する。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る止水板収納構造の一例を示す。
この止水板収納構造Aは、建具10を構成する戸体12の起立面(図示例によれば、子扉12bの屋内側の表面)に、止水板20を受けるための受部材30と、立て掛けられる止水板20に対し受部材30よりも上方側で係合する上側係合部40と、受部材30よりも上方側で止水板20の裏面を受ける緩衝部50とを具備している。
【0010】
建具10は、下方側不動面P(例えば、床面やくつずり等)の上方で略矩形状の開口部を囲む枠体11と、この枠体11内で前記開口部を開閉する戸体12とを具備している。
【0011】
枠体11は、上枠11a、左右の縦枠11b,11b及び下枠11cにより中央を開口した矩形枠状に形成される。
【0012】
戸体12は、枠体11内の開口部を左右の親扉12aと子扉12bによって開閉するようにした親子扉である。
親扉12aと子扉12bは、それぞれ、左右の縦枠11b,11bにヒンジ等を介して回転自在に支持される。
子扉12bは、通常時は閉鎖状態に保持され、必要に応じて解放されて前記開口部の開口幅を拡げる。この子扉12bの表面板は、後述する受部材30のマグネット32が磁着するように磁性材料から形成される。
【0013】
子扉12bの表面の下端側には、後述する受部材30を掛止するための被係脱支持具12c(例えば、頭部を有するねじやリベット等)と、この被係脱支持具12cの基端側を支持するようにして横幅方向へ連続する支持板12dと、この支持板12dの下側に隣接する弾性板12eとが設けられる(図7参照)。
【0014】
被係脱支持具12cは、横幅方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)設けられる。各被係脱支持具12cは、その頭部を後述する受部材30の掛止孔31d1の大径部分に挿通し、その上側の小径部分に掛止する(図5参照)。
【0015】
支持板12dは、横幅方向へ連続する長尺板状の部材であり、子扉12bの表面に一体的に固定される(図6及び図7参照)。
この支持板12dは、非磁性材からなり、受部材30のマグネット32に対し磁気吸着することなく接する。
【0016】
弾性板12eは、支持板12dの下縁に沿って横幅方向へわたるゴム板であり、その厚みが支持板12dよりも若干大きい。この弾性板12eは、図6に示す一例によれば、横幅方向に間隔を置いて複数(図示例によれば3つ)設けられる。なお、この弾性板12eの他例としては、単数の長尺状のゴム板であってもよい。
【0017】
止水板20は、長尺な矩形板状の本体板部21と、この本体板部を横長に配設した姿勢(図9参照)で上端部の左右両側に設けられた手掛部22,22と、本体板部21の左右端側及び下端側で左右の縦枠11b,11b及び下枠11cとの間に挟まれ圧接される水密材23(図3参照)と,左右の縦枠11b,11b及び下枠11cと戸体12との間に挟み込まれるフランジ部24とを一体的に具備している。
【0018】
受部材30は、子扉12b(起立面)の下端側で横幅方向へわたって手前方向(図示例によれば屋内側)へ突出するように形成される。この受部材30には、横幅方向を上下に向けた止水板20が載置される。
この受部材3に載置された止水板20は、受部材30よりも上側の部分を外部に露出するとともに、背面を後述する緩衝部50に当接するようにして子扉12bに立て掛けられる。
【0019】
より詳細に説明すれば、この受部材30は、図5に示すように、横幅方向へわたって上方を開口した略凹状の受部本体31と、この受部本体31の背面に固定された板状のマグネット32とを一体的に具備する。
【0020】
受部本体31は、横幅方向へわたる矩形板状の底壁部31aと、この底壁部31aの手前側端部から立ち上がる手前側立ち上がり片31bと、底壁部31aの左右の側端部からそれぞれ立ち上がる側端側立ち上がり片31cと、底壁部31aの背部側端部から立ち上がる背部側立ち上がり片31dとを一体に有する略凹状に形成される。
【0021】
受部本体31内の底壁部31aの上面には、板状の弾性部材33(例えば、ゴム板等)が敷設される。この弾性部材33は、載置される止水板20から受ける衝撃を緩和するとともに、止水板20の滑り止めとしても機能する。
【0022】
また、背部側立ち上がり片31dは、手前側立ち上がり片31bよりも大きく立ち上がっており、その中央寄りに横長板状のマグネット32を固定するとともに、マグネット32の両側に掛止孔31d1を有する。
【0023】
掛止孔31d1は、下側の大形部分の上側に小径部分を連設した略ひょうたん状の貫通孔である。この掛止孔31d1は、被係脱支持具12cの頭部分を前記大形部分に挿通し前記小径部分に掛止する。
すなわち、受部材30は、掛止孔31d1及び被係脱支持具12c等を介することで、子扉12bの表面(起立面)に着脱可能である(図7参照)。
【0024】
マグネット32は、受部材30の背面に沿う長尺帯状に形成され、左右の掛止孔31d1,31d1の間で、背部側立ち上がり片31dに固定される(図5参照)。
【0025】
上記構成によれば、受部材30は、子扉12bの表面(起立面)における下端寄りの初期位置に、掛止孔31d1及び被係脱支持具12cにより着脱可能である(図7(b)参照)。
さらに、受部材30は、子扉12bの表面(起立面)の前記初期位置よりも上方側であって止水板20の止水高さ方向の全高H(図9参照)よりも高い再装着位置に対しても、マグネット32により着脱可能である(図8参照)。
【0026】
上側係合部40は、止水板20が受部材30に載置され子扉12bに立て掛けられた状態において、手動操作されることで、止水板20を離脱不能にした係合状態と、止水板20を離脱可能にした被係合状態との二つの状態に変容する(図3(a)~(c)参照)。
【0027】
詳細に説明すれば、上側係合部40は、子扉12bの上部側において、横幅方向に間隔を置いて複数(図示例によれば、二つ)設けられる。
各上側係合部40は、子扉12bから突出して突端側を下方へ曲げた縦断面略横向きL字状に構成され、受部材30に載置された止水板20の上端側に被さるようにして上方側から嵌り合う(図3(c)参照)。
【0028】
各上側係合部40は、子扉12bの表面(起立面)に固定されて手前に突出する基部41と、基部41の突端面に枢支され回動する係脱部材42とを具備する。
【0029】
基部41は、図示例によれば、板金板材を縦断面ハット状に曲げ形成してなり、ねじ止め、リベット止め、溶接等の固定手段によって、子扉12bの表面に固定される(図4参照)。
例えば、図4に示す好ましい一例によれば、子扉12bには、上下方向及び横幅方向に間隔を置いた複数の止め孔12b1が設けられる。基部41は、これらのうちの選択された止め孔12b1に止着具41aを挿通するようにして子扉12bに止着される。
したがって、止水板20の大きさや長さ等に応じて、基部41の上下方向及び左右方向の位置を容易に変更することが可能である。
【0030】
係脱部材42は、基部41に支持された横幅方向の軸によって、止水板20に干渉しないように手前に突出した被係合位置(図3(a)参照)と、突端側を下方へ向けて止水板20を離脱不能にする係合位置(図3(c)参照)との間で回動可能である。
係脱部材42は、図示しない周知の係脱機構により前記係合位置にて回動不能に係止されており、所定の手動操作により、被係合位置側へ回動可能になる。
前記手動操作は、例えば、係脱部材42を横幅方向へスライドする操作とすればよい。
【0031】
緩衝部50は、受部材30よりも上方側において、上下方向及び横幅方向に間隔を置いて複数(図1の一例によれば、四つ)設けられる。
各緩衝部50は、ゴム等の弾性材料から突端側を縮径した略円錐台状に形成され、ねじやリベット等の止着具によって子扉12bの表面に固定される(図4参照)。
各緩衝部50は、受部材30に載置され子扉12bに立て掛けられる止水板20の裏面を受けて弾性的に収縮し、緩衝部50から子扉12bに伝わる衝撃を緩和する。
例えば、図4に示す好ましい一例によれば、子扉12bには、上下方向及び横幅方向に間隔を置いた複数の止め孔12b2が設けられる。緩衝部50は、これらのうちの選択された止め孔12b2に挿通される止着具51により、子扉12bに止着される。
したがって、止水板20の大きさや長さ等に応じて、緩衝部50の上下方向及び左右方向の位置を容易に変更することが可能である。
【0032】
また、緩衝部50は、受部材30と上側係合部40の間に対する止水板20の出入り方向(図2によれば左右方向)の位置を調整するためにもある。
すなわち、受部材30の出入り方向の位置が手前寄り(図2の左寄り)すぎる場合、止水板20が係脱部材42に干渉してしまうおそれがある。また、受部材30の出入り方向の位置が奥寄り(図2の右寄り)すぎる場合には、係脱部材42と止水板20の手前面との間の隙間が大きくなり止水板20が前後方向へがたついてしまうおそれがある。緩衝部50はこのようなこと防いで、止水板20の出入り方向(前後方向)の位置を好適にする。
【0033】
<止水板収納構造Aの作用効果>
次に、上記構成の止水板収納構造Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
止水板20を収納する際は、図2に示すように、止水板20の下端側が受部材30の内側に挿入され、止水板20内の底壁部31aに載置される。
受部材30に載置された止水板20は、背面を緩衝部50に当接させるようにして、子扉12bに立て掛けられ、その上端側が、上側係合部40,40によって係止される。
【0034】
この立て掛け状態において、止水板20は、受部材30、上側係合部40及び緩衝部50との接触により、がたつきの少ない状態で安定的に保持される。また、手掛部22を含む受部材30よりも上側の部分を露出しているため、視認され易い。したがって、止水板20を設置箇所の近くに目立つように収納することができる。
【0035】
次に、増水時等に止水板20を外して、この止水板20によって建具10の開口部を塞ぐ手順を説明する。
【0036】
先ず、手動操作により上側係合部40と止水板20の係合状態を解除し、止水板20を手前斜め上方へ引き上げ、子扉12bから分離する。この際は、外部に露出した手掛部22,22を掴むようにして止水板20を持ち上げることができ、その作業性が良好である。
【0037】
次に、初期位置にある受部材30を外す。すなわち、受部材30を上方に持ち上げるようにして、受部材30の掛止孔31d1を被係脱支持具12cから外す。なお、受部材30背面のマグネット32は、非磁性体である支持板12dには磁気吸着していないため、この外し作業を容易に行うことがきる(図8参照)。
【0038】
そして、外した受部材30は、マグネット32によって、止水板20の止水高さよりも高い再装着位置で、磁性体である子扉12bの表面に磁気吸着される(図8参照)。
【0039】
この後、止水板20は、図9に示すように、再装着された受部材30の下方側において、左右端側及び下端側のフランジ部24がそれぞれ左右の縦枠11b,11b及び下枠11cに嵌め合わせられ、左右端側及び下端側の水密材23がそれぞれ左右の縦枠11b,11b及び下枠11cに圧接される。そして、フランジ部24は、左右の縦枠11b,11b及び下枠11cと子扉12bの屋内側面との間に挟まれるように位置する。
このようにして、止水板20は、建具10の開口部の下部側を略水密に塞いで、水の侵入を阻む。
【0040】
よって、上記構成の止水板収納構造Aによれば、止水板20を設置箇所の近くに目立つように収納設置することができ、搬出搬入等の作業も容易である。
そして、止水板20の搬出から躯体開口部への設置までの作業時間の短縮を図ることができる。
また、止水板収納構造Aは、止水板20を起立面に立て掛けるのを簡素な構造により補助するものであり、この止水板収納構造Aによれば、止水板20の収納、搬出搬入等の作業をより手軽に行うことができる。
【0041】
特に、上述した好ましい一例によれば、止水板20を、比較的開閉回数の少ない子扉12b側に設けているため、装着された止水板20により建具10としての機能が損なわれるようなことを軽減することができる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態である止水板収納構造Bについて説明する(図10図12参照)。
なお、止水板収納構造Bは、上記止水板収納構造Aについて一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、同様に機能する部分は同一の符号を付けて重複説明を省略する。
【0043】
止水板収納構造Bは、建具10’を構成する戸体12’の起立面(図示例によれば、子扉12bの表面)に、止水板60を受けるための受部材70と、立て掛けられる止水板60に対し受部材70よりも上方側で係合する上側係合部40’と、受部材60よりも上方側で止水板60の裏面を受けて弾性変形する緩衝部80とを具備している。
【0044】
建具10’は、上記建具10において、戸体12を戸体12’に置換したものである。戸体12’は、上記戸体12において、子扉12bを子扉12b’に置換したものである。
【0045】
子扉12b’の下部側には、複数の被係脱支持具12fが設けられる。
詳細に説明すれば、被係脱支持具12fは、子扉12b’の表面(起立面)における下端寄りの初期位置と、同表面における前記初期位置よりも上方側であって止水板60の止水高さ方向の全高よりも高い再装着位置とのそれぞれにおいて、左右一対となるように設けられる。
一対の被係脱支持具12f,12fは、左右方向に所定の間隔を置いて、子扉12b’表面に固定され、後述する受部材70を係脱可能に支持する。
【0046】
各被係脱支持具12fは、上下方向へ長尺な略四角柱状の部材であり、その表面に、受部材70を係脱可能に掛止するための縦長孔状の被掛止部を有する。前記被掛止部は、受部材70の係脱部72aを係脱可能な縦長の孔であり、受部材70の上下位置を微調整できるように、上下方向に複数設けられる。
【0047】
止水板60は、長尺な矩形板状の本体板部61と、この本体板部61の止水高さ方向の端部に設けられた複数の手掛部62,62と、本体板部21の左右端側及び下端側で左右の縦枠11b,11b及び下枠11cとの間に挟まれ圧接される水密材63と、本体板部61を建具10’の縦枠11b,11b間に装着するための止水板装着具64及び幅方向位置決め具65とを一体的に具備している。
この止水板60には、例えば特許文献2に記載のものを適用することが可能である。
【0048】
受部材70は、横幅方向の上下に向けた止水板60の下端が挿入され載置される受部本体71と、この受部本体71を左右両端側にそれぞれ固定された係脱支持具72とを具備して一体的に構成される。
【0049】
受部本体71は、単数又は複数の金属板を曲げ加工することで、横幅方向へわたって上方を開口した略凹状に形成される。
この受部本体71は、上側係合部40’との干渉を避けるように、横幅方向の全長が、本体板部61の止水高さ方向の寸法よりも短く、本体板部61の止水高さ方向の中央寄りで本体板部61の下端を受ける(図10参照)。
【0050】
係脱支持具72は、受部本体71の下面に溶接等の固定手段により固定される。この係脱支持具72の背面側(奥側)には、被係脱支持具12fの前記被掛止部に係脱可能な略フック状の係脱部72aが設けられる。
【0051】
上側係合部40’は、受部材70に載置される止水板60に対し左右側方からそれぞれ嵌り合って係合するように複数(図示例によれば二つ)配設される。
各上側係合部40’は、上述した上側係合部40を横に90°回転させて用いたものであり、その基部41が子扉12b’の表面に固定される。この上側係合部40’は、上記上側係合部40の場合(図4参照)と同様に、複数の止め孔12b1の選択により、上下左右に位置変更可能である。
【0052】
緩衝部80は、横幅方向へわたって連続する長尺状の部材であり、硬質材料からなる長尺状の基部81と、この基部81に対し手前側から嵌り合った弾性部82とから一体的に構成される(図12参照)。
【0053】
上記構成の上側係合部40’及び緩衝部80は、上述した上側係合部40及び緩衝部50と略同様に、子扉12b’表面に形成される複数の止め孔の選択により、上下方向及び左右方向に位置変更が可能である。
【0054】
基部81は、例えば金属製板材等により縦断面略ハット状に構成され、子扉12b’の表面に固定される。
弾性部82は、基部81に対し手前側から嵌り合う縦断面凹状に形成される。
【0055】
<止水板収納構造Bの作用効果>
次に、上記構成の止水板収納構造Bについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する
止水板60を収納する際は、図11に示すように、止水板60の下端側が受部材70内の底部に載置される。
そして、受部材70は、背面を緩衝部80に当接させるようにして、子扉12b’に立て掛けられ、その上部における両端側が、上側係合部40’,40’によって係止される。
【0056】
この立て掛け状態において、止水板60は、受部材70、上側係合部40’及び緩衝部80との接触により、がたつきの少ない状態で安定的に保持される。すなわち、緩衝部80が、上述した緩衝部50と略同様にして、立て掛け状態の止水板60の出入り方向(前後方向)の位置を好適にする。
また、この立て掛け状態では、手掛部62を含む受部材70よりも上側の部分を露出しているため、視認され易い。このため、止水板60を設置箇所の近くに目立つように収納することができる。
【0057】
次に、増水時等に止水板60を外して、この止水板60によって建具10’の開口部を塞ぐ手順を説明する。
【0058】
先ず、手動操作により上側係合部40’と止水板60の係合状態を解除し、止水板60を手前斜め上方へ引き上げ、子扉12b’から分離する。
【0059】
次に、初期位置にある受部材70を外す。すなわち、受部材70を上方に持ち上げるようにして、下側の初期位置にある被係脱支持具12fから外す(図12参照)。
そして、外した受部材70は、上側の再装着位置にある被係脱支持具12fに掛止される。
【0060】
この後、止水板60は、左右の縦枠11b,11b間に、止水板装着具64及び幅方向位置決め具65を嵌め合わせるとともに、縦枠11b,11bの手前面及び下枠11cに水密材63を圧接させて、枠体11内の開口の下側部分を略水密に閉鎖する。
【0061】
よって、上記構成の止水板収納構造Bによれば、止水板60を設置箇所の近くに目立つように収納設置することができ、搬出搬入等の作業も容易である。
そして、止水板60の搬出から躯体開口部への設置までの作業時間の短縮を図ることができる。
【0062】
なお、上記構成の止水板60は、例えば、自動ドアの開口部や、地下道の開口部等、上記建具10’以外の開口部であっても、両側の柱や壁面等に止水板装着具64及び幅方向位置決め具65を係合させて、容易に装着することができる。
【0063】
<その他の変形例>
上記実施形態によれば、上側係合部40(又は40’)及び緩衝部50(80)を、複数の止め孔の選択により、上下方向及び左右方向に位置変更可能にしたが、他の手段としては、図13に示すように、上側係合部40(又は40’)と緩衝部50(80)の背面側にそれぞれマグネット43,53を設け、上側係合部40(又は40’)及び緩衝部50(80)をそれぞれ子扉12b(又は12b’)の任意に位置に磁気吸着させるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態によれば、係脱部材42を回動して止水板20(又は止水板60)に係脱したが、図示例以外の他例としては、係脱部材をスライドして止水板20(又は止水板60)に係脱する構成とすることも可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、特に好ましい一例として、戸体12(又は12’)の表面を起立面に、止水板収納構造A(又はB)を構成したが、図示例以外の他例としては、戸体12(又は12’)以外の建具10(又は10’)周辺の起立面(例えば、壁面等)に、受部材30(又は70)、上側係合部40(又は40’)及び緩衝部50(又は80)等を設けて、上記同様の止水板収納構造を構成することが可能である。
【0066】
また、上記実施の形態では、止水板20(又は60)に対する上方側又は側方側に上側係合部40(又は40’)を設けたが、他例としては、止水板20(又は60)に対する上方側と側方側の両方に、上側係合部40(又は40’)を設けることも可能である。
【0067】
また、上側係合部40(又は40’)の上下方向及び左右方向の位置を変える手段は、上記以外の他例としては、上側係合部40(又は40’)をガイドレールに沿って移動可能に支持した構成や、上側係合部40(又は40’)を回転操作可能なネジ軸に螺合させて移動可能にした構成等とすることも可能である。
【0068】
また、上記実施の形態によれば、止水板収納構造A(又はB)を構成する起立面を、開き戸を構成する戸体12の表面としたが、他例としては、前記起立面を、引き戸を構成する戸体の表面とすることも可能である。
【0069】
また、上記止水板収納構造Bによれば、被係脱支持具12fを上記初期位置と上記再装着位置との二か所に設けたが、図示例以外の他例としては、被係脱支持具12fを、前記二か所を含む三以上のか所に設けてもよい。
【0070】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0071】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
建具または建具の周辺の起立面に、横幅方向へわたって突出する受部材を設け、
横幅方向を上下に向けた止水板が、前記受部材に載置されるようにして立て掛けられ、この止水板が前記受部材よりも上方側で露出されるようにしたことを特徴とする止水板収納構造(図1図3図10図11等参照)。
【0072】
(2)
前記起立面が、前記建具を構成する戸体の表面であることを特徴とする(1)に記載の止水板収納構造(図1図3図10図11等参照)。
【0073】
(3)
前記戸体が、親扉と子扉により開口部を開閉可能な親子扉であって、前記起立面が、前記子扉の表面であることを特徴とする(2)に記載の止水板収納構造。
(4)
前記起立面には、立て掛けられる止水板に対し、前記受部材よりも上方側で係合する上側係合部が設けられていることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の止水板収納構造(図1図4図10図11及び図13等参照)。
(5)
前記上側係合部は、操作されることで、前記止水板を離脱不能にした係合状態から、前記止水板を離脱可能にした被係合状態になることを特徴とする(4)に記載の止水板収納構造(図3参照)。
(6)
前記上側係合部は、前記受部材に載置される止水板に対し上方から嵌り合うように係合することを特徴とする(4)または(5)に記載の止水板収納構造。
(7)
前記上側係合部は、前記受部材に載置される止水板に対し側方から嵌り合うように係合することを特徴とする(4)または(5)に記載の止水板収納構造(10~図11等参照)。
(8)
前記上側係合部は、上下方向の位置を変更可能に設けられていることを特徴とする(4)~(7)のいずれかに記載の止水板収納構造(図4及び図13参照)。
(9)
前記上側係合部は、左右方向の位置を変更可能に設けられていることを特徴とする(4)~(8)のいずれかに記載の止水板収納構造。
(10)
前記受部材が、前記起立面における下端寄りの初期位置と、同起立面における前記初期位置よりも上方側であって前記止水板の止水高さ方向の全高よりも高い再装着位置との少なくとも2か所に対し、着脱可能であることを特徴とする(1)~(9)いずれかに記載の止水板収納構造(図8及び図12参照)。
(11)
前記受部材の上面には、載置される止水板を受けるように弾性部材が設けられていることを特徴とする(1)~(10)いずれかに記載の止水板収納構造(図5及び図7図8参照)。
(12)
前記起立面における前記受部材よりも上方側には、立て掛けられる前記止水板の裏面を受けて弾性変形する緩衝部が設けられていることを特徴とする(1)~(11)いずれかに記載の止水板収納構造(図1図4図10図12参照)。
(13)
前記止水板を収納した状態において、前記止水板に設けられた手掛部を外部に露出するようにしたことを特徴とする(1)~(12)いずれかに記載の止水板収納構造(図1及び図10参照)。
【符号の説明】
【0074】
10,10’:建具
12c,12f:被係脱支持具
22,62:手掛部
40,40’:上側係合部
41:基部
42:係脱部材
20,60:止水板
30,70:受部材
50,80:緩衝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13