IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-二次電池の製造方法 図1
  • 特開-二次電池の製造方法 図2
  • 特開-二次電池の製造方法 図3
  • 特開-二次電池の製造方法 図4
  • 特開-二次電池の製造方法 図5
  • 特開-二次電池の製造方法 図6
  • 特開-二次電池の製造方法 図7
  • 特開-二次電池の製造方法 図8
  • 特開-二次電池の製造方法 図9
  • 特開-二次電池の製造方法 図10
  • 特開-二次電池の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124928
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240906BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240906BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240906BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20240906BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240906BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240906BHJP
   H01G 13/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/449
H01G11/06
H01G11/84
H01G11/52
H01G13/02 301Z
H01G13/02 301D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032920
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄
(72)【発明者】
【氏名】早 惇一
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078AB13
5E078CA02
5E078LA07
5E082AB09
5H021CC04
5H021CC09
5H021CC17
5H021HH00
5H021HH03
5H021HH10
5H028AA05
5H028BB08
5H028CC08
5H028CC13
5H028HH00
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ07
5H029HJ00
5H029HJ03
(57)【要約】
【課題】生産性が向上した二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】ここに開示される製造方法は、第1セパレータ32と第2セパレータ34とを、巻芯210に保持させる工程(S1)と、第1セパレータ32と第2セパレータ34とを巻芯210に巻き付ける工程(S2)と、巻芯210を停止させた状態で、第1セパレータ32の内周側に負極20が配置されるように負極20の捲回始端20sを配置し、第1セパレータ32の外周側の面と第2セパレータ34との間に正極10の捲回始端10sを配置する工程(S3)と、正極10と負極20とを巻芯210に巻き付ける工程(S4)と、を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1セパレータと、帯状の正極と、帯状の第2セパレータと、帯状の負極とが積層され、捲回されてなる捲回電極体を備えた二次電池の製造方法であって、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとを、巻芯に保持させる保持工程と、
前記保持工程の後、前記巻芯を第1回転速度で回転させ、前記第1セパレータと前記第2セパレータとを前記巻芯に巻き付ける第1巻き付け工程と、
前記第1巻き付け工程の後、前記巻芯を前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させた状態、あるいは停止させた状態で、前記第1セパレータの内周側に前記負極が配置されるように、前記負極の捲回始端を配置し、かつ、前記第1セパレータの外周側の面と前記第2セパレータとの間に前記正極の捲回始端を配置する配置工程と、
前記配置工程の後、前記正極と前記負極とを、前記第1回転速度よりも早い第3回転速度で、前記巻芯に巻き付ける第2巻き付け工程と、
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの少なくとも一方が、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の表面に設けられた機能層と、を備える、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記捲回電極体を捲回軸方向から見たとき、捲回始端領域では、前記第1セパレータおよび前記第2セパレータが、Z字形状をなしている、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1セパレータの捲回始端と、前記第2セパレータの捲回始端とが、揃っている、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1セパレータの捲回終端と、前記第2セパレータの捲回終端とが、揃っている、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
捲回方向において、前記正極の捲回始端と前記負極の捲回始端との間隔が、20mm以下である、
請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状の第1セパレータと、帯状の正極と、帯状の第2セパレータと、帯状の負極とが積層され、捲回軸の周りに捲回されてなる捲回電極体を備えた二次電池が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-127948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
捲回電極体は、例えば次のようなステップを含んで作製される。すなわち、まず、図10Aに示すように、巻芯を有する巻き取り装置を用意する。そして、帯状の正極と帯状の負極と2枚の帯状のセパレータとを、それぞれリール状に巻いて、巻き取り装置にセットする。巻芯は、例えば吸着機構を有し、巻芯に支持されたセパレータを固定(例えば吸着固定)可能なように構成されている。また、巻芯は、回転機構を有し、所定の回転方向(ここでは反時計回り、図10Aの矢印の方向)に所定の回転速度で回転可能に構成されている。図11には、各ステップにおける巻芯210の回転速度を模式的に示している。
【0005】
次に、図10Aに示すように、2枚の帯状のセパレータの始端部を、それぞれ巻芯に吸着固定する(保持工程)。そして、図10A図11に示すように、この状態で巻芯を回転させ、2枚のセパレータを所定の長さで巻芯に巻き付ける(ステップSa;セパレータ初期巻き工程)。次に、図10Bに示すように、巻芯210の回転を一旦停止して、2枚のセパレータの間に帯状の負極の始端部を配置する(ステップSb;負極配置工程)。そして、図10C図11に示すように、この状態で巻芯を回転させ、2枚のセパレータと帯状の負極とを所定の長さで巻芯に巻き付ける(ステップSc;負極初期巻き工程)。次に、図10Dに示すように、再び巻芯210の回転を一旦停止して、2枚のセパレータの間に帯状の正極の始端部を配置する(ステップSd;正極配置工程)。そして、図10E図11に示すように、負極で正極を巻き込むように帯状の正極と帯状の負極を供給しながら巻芯を回転させることにより、正極と負極とセパレータとを捲回し巻芯に巻き付ける(ステップSe;本巻き工程)。以上のように、筒状の捲回体(筒状体)が成形される。
【0006】
このように従来の方法では、図11に示すように、負極を配置する際(ステップSb)と正極を配置する際(ステップSd)の計2回、それぞれ巻芯210の回転を停止するようにし、これによって、例えばセパレータと電極(負極および/または正極)の表面が強く擦れることや、電極の積層ずれ(位置ずれ)を防止するようにしていた。しかし、この方法では、筒状体の巻き取りのタクトタイムが長くなり、ひいては二次電池の生産性が低下することが課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生産性が向上した二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、帯状の第1セパレータと、帯状の正極と、帯状の第2セパレータと、帯状の負極とが積層され、捲回されてなる捲回電極体を備えた二次電池の製造方法が提供される。この製造方法は、上記第1セパレータと上記第2セパレータとを、巻芯に保持させる保持工程と、上記保持工程の後、上記巻芯を第1回転速度で回転させ、上記第1セパレータと上記第2セパレータとを上記巻芯に巻き付ける第1巻き付け工程と、上記第1巻き付け工程の後、上記巻芯を上記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させた状態、あるいは停止させた状態で、上記第1セパレータの内周側に上記負極が配置されるように、上記負極の捲回始端を配置し、かつ、上記第1セパレータの外周側の面と上記第2セパレータとの間に上記正極の捲回始端を配置する配置工程と、上記配置工程の後、上記正極と上記負極とを、上記第1回転速度よりも早い第3回転速度で、上記巻芯に巻き付ける第2巻き付け工程と、を含む。
【0009】
ここに開示される製造方法では、配置工程において、第1セパレータの内周側に負極を配置し、かつ第1セパレータの外周側の面と第2セパレータとの間に正極を配置し、正極で負極を巻き込むようにしている。これにより、正極と負極とを略同時に巻芯に巻き付けることが可能となる。その結果、巻芯の回転を低速ないし停止させる回数を、2回から1回に減らすことができる。したがって、ここに開示される技術によれば、巻き取りのタクトタイムを短縮でき、積層ずれ等が抑制された信頼性の高い捲回電極体を効率的に製造できる。ひいては、二次電池の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
図5図5は、封口板に取り付けられた複数の捲回電極体を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、捲回電極体の模式的な断面図である。
図7図7は、捲回電極体の構成を示す模式図である。
図8図8A図8Eは、一実施形態に係る捲回工程の説明図であり、図8Aは、保持工程の説明図であり、図8Bは、第1巻き付け工程の説明図であり、図8Cは、配置工程の説明図であり、図8Dは、第2巻き付け工程の説明図である。
図9図9は、一実施形態に係る巻芯の回転速度を模式的に示すグラフである。
図10図10A図10Eは、従来技術に係る捲回工程の説明図であり、図10Aはセパレータ初期巻き工程を、図10Bは負極配置工程を、図10Cは負極初期巻き工程を、図10Dは正極配置工程を、図10Eは本巻き工程を、それぞれ表している。
図11図11は、従来技術に係る巻芯の回転速度を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここで開示される技術の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に「Aより大きい」および「Bより小さい」の意を包含するものとする。
【0012】
なお、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の蓄電池と、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0013】
<1.二次電池の構造>
まず、ここで開示される製造方法によって製造される二次電池100について説明する。図1は、二次電池100の斜視図である。図2は、図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。図4は、図1中のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。なお、以下の説明において、符号Xは、「奥行方向」を示し、符号Yは、奥行方向と直交する「幅方向」を示し、符号Zは、奥行方向および幅方向と直交する「高さ方向」を示す。また、奥行方向Xにおける符号Fは「前」を示し、符号Rrは「後」を示す。幅方向Yにおける符号Lは「左」を示し、符号Rは「右」を示す。高さ方向Zにおける符号Uは「上」を示し、符号Dは「下」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、ここに開示される二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0014】
図2に示すように、二次電池100は、捲回電極体40と、捲回電極体40を収容する電池ケース50と、正極端子60と、負極端子65と、を備えている。図示は省略するが、二次電池100は、さらに電解液を備えている。二次電池100は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることが好ましい。二次電池100は、ここに開示される捲回電極体40を備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。
【0015】
電池ケース50は、捲回電極体40および電解液を収容する筐体である。図1に示すように、電池ケース50は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース50には、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。電池ケース50は、金属製であるとよい。電池ケース50の材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。図1図2に示すように、電池ケース50は、外装体52と封口板54とを備えている。電池ケース50は、外装体52と封口板54とを含む角形電池であることが好ましい。
【0016】
外装体52は、図2に示すように、上面に開口52hを有する扁平な有底角型の容器である。図1に示すように、外装体52は、平面視で略矩形状の底壁52aと、底壁52aの長辺から高さ方向Zの上方に延び、相互に対向する一対の長側壁52bと、底壁52aの短辺から高さ方向Zの上方に延び、相互に対向する一対の短側壁52cと、を備えている。底壁52aは、開口52hと対向している。短側壁52cの面積は、長側壁52bよりも小さい。
【0017】
封口板54は、図2に示すように、外装体52の開口52hを塞ぐ板状部材である。封口板54は、平面視で略矩形状である。封口板54の周縁は、外装体52の開口52hに接合(例えば溶接接合)されている。これによって、電池ケース50は気密に封止(密閉)されている。封口板54には、注液孔55と、ガス排出弁57と、2つの端子挿通孔58,59と、が設けられている。注液孔55は、外装体52に封口板54を組み付けた後、電池ケース50の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔55は、電解液の注液後に封止部材56で封止されている。ガス排出弁57は、電池ケース50内の圧力が所定値以上になった際に破断(開口)し、当該ガスを外部に排出するように設計された薄肉部である。
【0018】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒(有機溶媒)と支持塩(電解質塩)とを含む非水電解液である。電解液は非水電解液であることが好ましい。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が挙げられる。支持塩の一例として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0019】
正極端子60は、封口板54の幅方向Yの一方側の端部(図1図2の左端部)に取り付けられている。負極端子65は、封口板54の幅方向Yの他方側の端部(図1図2の右端部)に取り付けられている。図2に示すように、正極端子60および負極端子65は、端子挿通孔58,59を挿通して封口板54の内部から外部へと延びている。封口板54の端子挿通孔58,59には、それぞれ樹脂製のガスケット90が装着されている。これによって、端子挿通孔58,59に挿通された正極端子60および負極端子65が封口板54と絶縁されている。
【0020】
正極端子60は、図1図2に示すように、封口板54の外側の面において、板状の正極外部導電部材62と接続されている。負極端子65は、板状の負極外部導電部材67と接続されている。正極外部導電部材62および負極外部導電部材67は、それぞれ樹脂製の外部絶縁部材92によって封口板54と絶縁されている。正極外部導電部材62および負極外部導電部材67は、外部接続部材(バスバー等)を介して、他の電池や外部機器と接続される。
【0021】
図2に示すように、正極端子60の下端部60cは、外装体52の内部で正極集電部材70と接続されている。正極端子60は、正極集電部材70を介して捲回電極体40の正極10(図7参照)と接続されている。負極端子65の下端部65cは、外装体52の内部で負極集電部材75と接続されている。負極端子65は、負極集電部材75を介して捲回電極体40の負極20(図7参照)と接続されている。
【0022】
図5は、封口板54に取り付けられた複数の捲回電極体40を模式的に示す斜視図である。図3図5に示すように、本実施形態の二次電池100では、1つの電池ケース50内に複数個(具体的には3個)の捲回電極体40が奥行方向Xに並んで収容されている。二次電池100が複数の捲回電極体40を有する場合、捲回電極体40のタクトタイムが長びくことで、二次電池100の生産性に及ぼす影響が大きくなる。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。ただし、1つの電池ケース50内に配置される捲回電極体40の数は特に限定されず、2つ以上(複数)であってもよいし、1つであってもよい。複数の捲回電極体40は、ここでは絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ98(図3参照)に覆われた状態で外装体52の内部に収容されている。これによって、捲回電極体40と外装体52との直接接触が防止されている。
【0023】
図3に示すように、捲回電極体40は、外形が扁平形状である。捲回電極体40は、本実施形態のように外形が扁平形状であることが好ましい。扁平形状の捲回電極体40は、外表面が湾曲した一対の湾曲部(R部)40rと、一対の湾曲部40rを連結する外表面が平坦な平坦部40fと、を有している。図2図5図7からわかるように、複数の捲回電極体40は、それぞれ捲回軸WL(図7参照)が二次電池100の幅方向Yと平行になる向きで、電池ケース50の内部に配置されている。一対の湾曲部40rは、外装体52の底壁52aおよび封口板54と対向している。一対の平坦部40fは、外装体52の一対の長側壁52bと対向している。
【0024】
図2図4に示すように、捲回電極体40の幅方向Yにおける一方の端部(左端部)には正極タブ群42が設けられ、他方の端部(右端部)には負極タブ群44が設けられている。正極タブ群42には、正極集電部材70が付設されている。正極タブ群42は、正極集電部材70を介して正極端子60と接続されている。負極タブ群44には、負極集電部材75が付設されている。負極タブ群44には、負極集電部材75を介して負極端子65と接続されている。二次電池100は、捲回電極体40の左右に正極タブ群42と負極タブ群44とが位置する、所謂、横タブ構造である。ただし、他の実施形態において、二次電池100は、捲回電極体40の上下に正極タブ群42と負極タブ群44とが位置する、所謂、上タブ構造であってもよい。
【0025】
図6は、捲回電極体40の捲回軸方向と直交する断面を表す模式的な断面図である。図7は、捲回電極体40の構成を示す模式図である。なお、図6における符号Xは、捲回電極体40の厚み方向でもある。また、図7における符号MDは、「機械方向(machine direction)」を意味し、捲回電極体40およびセパレータ32,34の長手方向(すなわち、捲回方向)を示している。
【0026】
捲回電極体40は、図7に示すように、帯状の第1セパレータ32と、帯状の正極10と、帯状の第2セパレータ34と、帯状の負極20とが積層され、捲回されて構成されている。このような捲回電極体40は、例えば後述する製造方法に記載するように、帯状の正極10と帯状の負極20と2枚の帯状のセパレータ32,34とを、捲回軸WLを中心として長手方向MDに捲回することによって形成し得る。
【0027】
図6に示すように、捲回電極体40の捲回始端領域(捲回中心領域)において、セパレータ32,34は、正極10ないし負極20よりも先に捲回されている。すなわち、捲回電極体40の始端部(捲回軸WLの近傍)は、セパレータ32,34で構成されている。捲回電極体40の始端部には、正極10も負極20も配置されていない。第1セパレータ32の捲回始端32sおよび第2セパレータ34の捲回始端34sは、ここでは平坦部40fに位置している。第1セパレータ32の捲回始端32sと第2セパレータ34の捲回始端34sとは、位置が揃っていることが好ましい。
【0028】
なお、以下の説明では、セパレータ32,34の捲回始端32s、34sから1つ目の屈曲点を第1屈曲点P1とし、2つ目の屈曲点を第2屈曲点P2とし、3つ目の屈曲点を第3屈曲点P3とし、4つ目の屈曲点を第4屈曲点P4とする。第1屈曲点P1と第3屈曲点P3は、高さ方向Zの一方側(図6の上側)に配置され、積層されて(重なって)いる。第2屈曲点P2と第4屈曲点P4は、高さ方向Zの他方側(図6の下側)に配置され、積層されて(重なって)いる。
【0029】
セパレータ32,34は、第1屈曲点P1で折り返された後、第2屈曲点P2で逆側に折り返され、襞状に折り畳まれている。捲回始端領域において、セパレータ32,34は、Z字形状をなしている。これにより、後述する製造方法の第1巻き付け工程(ステップS2)において、セパレータ32,34の初期巻きの長さが比較的短くても、セパレータ32,34に適度なテンションをかけることができ、コストダウンが図れる。また、後述する製造方法の配置工程(ステップS3)において、正極10で負極20を巻き込むような巻取方式を好適に採用できる。さらに、第2屈曲点P2の近傍に空隙Gを確保することができ、捲回電極体40の中心領域(特には幅方向Yの中央部)における電解液の含浸性を向上できる。ひいては、電池特性(例えばハイレートサイクル特性)を向上できる。
【0030】
負極20の捲回始端20sは、正極10の捲回始端10sよりも捲回始端側に配置されている。負極20の捲回始端20sは、ここでは第1屈曲点P1と第2屈曲点P2との間の平坦部40fに位置している。負極20の捲回始端20sは、第2屈曲点P2よりも第1屈曲点P1の近くに配置されている。負極20の捲回始端20sは、第2屈曲点P2よりも捲回始端側で、第1セパレータ32に包まれている。詳しくは、第1屈曲点P1で折り返された第1セパレータ32の外周側の面と第2屈曲点P2で折り返された第1セパレータ32の内周側の面との間に挟まれている。負極20は、セパレータ32,34がZ字形状をなしているために、第4屈曲点P4を超えたあたりから、第1セパレータ32の内周側の面と第2セパレータ34の外周側の面との間に挟まれている。
【0031】
正極10の捲回始端10sは、負極20の捲回始端20sよりも捲回終端側(捲回方向に進行した位置)に配置されている。正極10の捲回始端10sは、ここでは第3屈曲点P3との第4屈曲点P4との間の平坦部40fに位置している。正極10の捲回始端10sは、第2屈曲点P2よりも第1屈曲点P1(および第3屈曲点P3)の近くに配置されている。正極10の捲回始端10sは、第3屈曲点P3よりも捲回終端側で、第3屈曲点P3で折り返された第1セパレータ32の外周側の面と第2セパレータ34の内周側の面との間に挟まれている。正極10の外周側には、第2セパレータ34が捲回されている。第2セパレータ34の外周側には、負極20が捲回されている。
【0032】
捲回電極体40の厚み方向(図6の方向X)において、負極20の始端部は、最初の屈曲点(ここでは第3屈曲点P3)よりも捲回始端側の領域が、正極10の始端部と重なることが好ましい。このように、面圧の差異が生じやすい平坦部40fと湾曲部40rとの境界部分で正極10の始端部と負極20の捲回始端20sとを重ねあわせることで、平坦部40fに大きな段差(凹部)が生じることを抑制できる。これにより、製造過程あるいは二次電池100の使用時に、平坦部40fに圧力が加わったときにも、面圧の差異が生じにくくなる。したがって、電流分布が生じにくくなり、充放電の反応ムラを抑制できる。その結果、Li析出の発生を抑制できる。ひいては、正極10と負極20との微短絡を防止できる。
【0033】
捲回方向(長手方向MD)において、正極10の捲回始端10sと負極20の捲回始端20sとの間隔Dsは、20mm以下であることが好ましい。これにより、例えば平坦部40fに大きな段差(凹部)が生じることを抑制でき、上述の理由から、Li析出の発生を抑制できる。ひいては、正極10と負極20との微短絡を防止できる。間隔Dsは、電荷担体の受入性の観点から、概ね10mm以上が好ましく、13mm以上がより好ましい。間隔Dsは、Li析出耐性を向上する観点から、17mm以下がより好ましい。
【0034】
正極10の捲回終端10eは、負極20の捲回終端20eよりも捲回始端側に配置されている。正極10の捲回終端10eは、ここでは平坦部40fに位置している。負極20の捲回終端20eは、正極10の捲回終端10eよりも捲回終端側(捲回方向に進行した位置)に配置されている。負極20の捲回終端20eは、ここでは平坦部40fに位置している。負極20の捲回終端20eは、2枚のセパレータ32,34により、外周側から覆われている。
【0035】
捲回電極体40では、電荷担体の受入性の観点から、正極10の対向面に必ず負極20が位置していることが好ましい。言い換えれば、負極20の捲回始端20sは、正極10の捲回始端10sよりも捲回始端側に配置され、かつ、負極20の捲回終端20eは、正極10の捲回終端10eよりも捲回終端側に配置されていることが好ましい。これにより、正極の負極未対向部から引き抜かれたLiが負極対向部に集中することを防止できる。したがって、Li析出の発生を抑制できる。ひいては、正極10と負極20との微短絡を防止できる。
【0036】
第1セパレータ32の捲回終端32eおよび第2セパレータ34の捲回終端34eは、正極10の捲回終端10eおよび負極20の捲回終端20eよりも捲回終端側(捲回方向に進行した位置)に配置されている。第1セパレータ32の捲回終端32eおよび第2セパレータ34の捲回終端34eは、ここでは平坦部40fに位置している。第2セパレータ34の捲回終端部(最外周部分)は、捲回電極体40の外周面を形成している。第1セパレータ32の捲回終端32eおよび第2セパレータ34の捲回終端34eには、巻き緩みが生じないように、巻止めテープ48が貼り付けられている。
【0037】
第1セパレータ32の捲回終端32eと第2セパレータ34の捲回終端34eとは、位置が揃っていることが好ましい。これにより、巻止めテープ48の幅を小さくできるので、引き出す時に撚れたり、貼り付ける際にシワが発生したりすることを抑えられる。その結果、例えば平坦部40fに局所的に厚みが大きな部分(凸部)が生じることを抑制でき、上述の理由から、Li析出の発生を抑制できる。ひいては、正極10と負極20との微短絡を防止できる。また、高価な巻止めテープ48の使用量を低減して、コストダウンを図ることができる。
【0038】
捲回電極体40の捲回数は、目的とする二次電池100の性能や製造効率等を考慮して適宜調節することが好ましい。捲回数は、20回以上が好ましく、25回以上がより好ましい。捲回数が多いと、捲回電極体40のタクトタイムが二次電池100の生産性に大きな影響を及ぼす。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。以下、捲回電極体40の具体的な構成について説明する。
【0039】
正極10は従来と同様でよく、特に制限はない。正極10は、図7に示すように、帯状の部材である。正極10は、帯状の正極芯体12と、正極芯体12の少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層14および保護層16と、を備えている。正極10は、正極芯体12と正極活物質層14とを備えることが好ましい。正極活物質層14は、高容量化の観点から、正極芯体12の両面に形成されていることが好ましい。保護層16は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極芯体12には、所定の導電性を有した金属箔を好ましく使用できる。正極芯体12は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等から構成されていることが好ましい。
【0040】
正極10では、幅方向TDの一方の端辺から外側(図7の左側)に向かって正極タブ12tが突出している。正極タブ12tは、長手方向MDにおいて、所定の間隔を空けて複数設けられている。正極タブ12tは、正極活物質層14が形成されておらず、正極芯体12が露出した部分(集電体露出部)である。図4図7に示すように、複数の正極タブ12tは、二次電池100の長辺方向Yの一方の端部(図4図7の左端部)で積層され、正極タブ群42を構成している。
【0041】
正極活物質層14は、図7に示すように、正極芯体12の長手方向MDに沿って、帯状に設けられている。正極活物質層14は、ここでは、図6の正極10の捲回始端10sから捲回終端10eに至るまで、正極芯体12の両面に形成されている。正極活物質層14は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質層14は、正極活物質とバインダと導電材とを含むことが好ましい。正極活物質層14の幅W1(図7参照)は、概ね100~400mm、例えば200~350mmであってもよい。
【0042】
正極活物質は、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる粒子状の材料である。正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含むことが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物の一好適例として、一般式LiMO(Mは、Li以外の1種または2種以上の遷移金属元素である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。上記Mとしては、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、Niを含むリチウム遷移金属複合酸化物が特に好ましい。
【0043】
正極バインダとしては、従来正極バインダとして使用される樹脂バインダを用いることができる。具体例として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイドが挙げられる。正極バインダはPVdFから構成されていてもよい。正極活物質層14は、正極活物質と正極バインダの他に、例えば、導電材、分散剤等の任意の成分を含んでもよい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。
【0044】
保護層16は、正極活物質層14よりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。保護層16は、正極10の正極タブ12t側の端辺に隣接した領域に設けられている。保護層16は、正極10の長手方向MDに沿って帯状に形成されている。保護層16を備えることによって、セパレータ32,34が破損した際に正極芯体12と負極活物質層24とが直接接触して内部短絡することを防止できる。保護層16は、例えば、アルミナ等の絶縁性のセラミック粒子を含むこと好ましい。保護層16は、セラミック粒子を正極芯体12の表面に定着させるためのバインダを含有していてもよい。ただし、保護層は必須の構成要素ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0045】
負極20は従来と同様でよく、特に制限はない。負極20は、図7に示すように、帯状の部材である。負極20は、帯状の負極芯体22と、負極芯体22の少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24とを備えている。負極20は、負極芯体22と負極活物質層24とを備えることが好ましい。負極活物質層24は、高容量化の観点から、負極芯体22の両面に形成されていることが好ましい。負極20を構成する各部材には、一般的な二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極芯体22には、所定の導電性を有した金属箔を好ましく使用できる。負極芯体22は、例えば、銅や銅合金等から構成されていることが好ましい。
【0046】
負極20では、幅方向TDの一方の端辺から外側(図7の右側)に向かって負極タブ22tが突出している。負極タブ22tは、長手方向MDにおいて、所定の間隔を空けて複数設けられている。負極タブ22tは、負極活物質層24が形成されておらず、負極芯体22が露出した部分(集電体露出部)である。図4図7に示すように、複数の負極タブ22tは、二次電池100の長辺方向Yの一方の端部(図4図7の右端部)で積層され、負極タブ群44を構成している。
【0047】
負極活物質層24は、図7に示すように、負極芯体22の長手方向MDに沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24は、ここでは、図6の負極20の捲回始端20sから捲回終端20eに至るまで、負極芯体22の両面に形成されている。負極活物質層24は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質層24は、負極活物質とバインダとを含むことが好ましい。負極活物質層24の幅W2(図7参照)は、電荷担体の受入性の観点から、正極活物質層14の幅W1と同じかそれよりも長いことが好ましい。負極活物質層24の幅W2は、正極活物質層14の幅W1との関係において、200mm以上が好ましく、250mm以上がより好ましい。負極活物質層24は、ここでは幅方向TDの両端で正極活物質層14を覆っている。
【0048】
負極活物質は、上述した正極活物質との関係において電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる粒子状の材料である。負極活物質は、黒鉛を含むことが好ましい。ただし、負極活物質は、黒鉛以外を含んでいてもよい。黒鉛以外の負極活物質の具体例として、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等の炭素材料や、シリコン系材料等が挙げられる。
【0049】
負極バインダとしては、従来負極バインダとして使用される樹脂バインダを用いることができる。具体例として、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース類、ポリアクリル酸(PAA)等のアクリル系樹脂が挙げられる。負極バインダは、SBRとCMCから構成されていてもよい。負極活物質層24は、負極活物質と負極バインダの他に、例えば、導電材等の任意の成分を含んでもよい。導電材としては、正極活物質層14に含まれうる任意成分として例示したような炭素材料を使用し得る。
【0050】
正極10および/または負極20の表面には、機能層が設けられていてもよい。機能層は、正極10および/または負極20に所望の機能(例えば、耐熱性、接着性、強度等の向上)を付与する層である。機能層の好適例として、耐熱層や接着層が挙げられる。例えば正極10および/または負極20の表面に、無機フィラーとバインダとを含む耐熱層を設けることで、金属異物が混入した際にも内部短絡の発生を抑制し、二次電池100の安全性を向上できる。また、ここに開示される製造方法によれば、機能層の剥離を抑制しつつ、効率的に捲回電極体40を製造できる。
【0051】
第1セパレータ32および第2セパレータ34は、図7に示すように、それぞれ帯状の部材である。セパレータ32,34は、正極10と負極20との間にそれぞれ配置されている。セパレータ32,34は、それぞれ、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータ32,34を正極10と負極20との間に介在させることによって、正極10と負極20との接触を防止すると共に、正極10と負極20との間に電荷担体(例えばリチウムイオン)を移動させることができる。セパレータ32,34の幅W3(図7参照)は、負極活物質層24の幅W2と同じかそれよりも長いことが好ましい。セパレータ32,34は、ここでは幅方向TDの両端で負極活物質層24を覆っている。正極活物質層14の幅W1と、負極活物質層24の幅W2と、セパレータ32,34の幅W3とは、W1<W2<W3の関係を満たしている。
【0052】
セパレータ32,34は、同一の構成であってもよいし異なる構成であってもよい。セパレータ32,34の少なくとも一方は、セパレータ基材と、1つまたは複数の機能層と、を備えることが好ましい。機能層は、セパレータ基材の少なくとも一方の表面、言い換えれば、正極10と対向する側の表面および/または負極20と対向する側の表面に形成されている。機能層は、セパレータ基材の一方の表面のみに設けられていてもよいし、両方の表面にそれぞれ設けられていてもよい。
【0053】
セパレータ基材は、従来公知の電池のセパレータに用いられるものを特に制限なく使用できる。セパレータ基材は、多孔質のシート状部材であることが好ましい。セパレータ基材は、単層構造であってもよく、2層以上、例えば3層構造であってもよい。セパレータ基材は、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。これによって、セパレータ32,34の柔軟性を充分に確保し、捲回電極体40を作製容易しやすくなる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることが更に好ましい。
【0054】
機能層は、セパレータ基材に所望の機能(例えば、耐熱性、接着性、強度等の向上)を付与する層である。機能層の好適例として、耐熱層や接着層が挙げられる。機能層は、セパレータ基材よりも表面の凹凸が大きく脆い層でありうるが、ここに開示される製造方法によれば、機能層の剥離を抑制しつつ、効率的に捲回電極体40を製造できる。好適な一実施形態において、セパレータ32,34は、それぞれ、セパレータ基材の一方の表面に形成された耐熱層と、セパレータ基材の他方の表面に形成された接着層とを備えている。ただし、他の実施形態において、例えばセパレータ基材の一方の表面に耐熱層と接着層とがこの順に積層されていてもよいし、耐熱層を備えていなくてもよいし、接着層を備えていなくてもよい。
【0055】
耐熱層は、無機フィラーとバインダとを含んでいる。耐熱層を備えることで、セパレータ32,34の熱収縮を抑制し、二次電池100の安全性の向上に貢献できる。無機フィラーとしては、アルミナ、ジルコニア、ベーマイト、水酸化アルミニウム、シリカ、チタニア等のセラミック粒子が好ましく、セパレータ32,34の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。無機フィラーは、耐熱層の中で最も高い質量割合を占めていてもよい。耐熱層バインダとしては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。耐熱層の表面粗さRaは、典型的にはセパレータ基材の表面粗さRaよりも大きく、例えば0.2~1.0μmm程度でありうる。
【0056】
耐熱層は、正極10と対向することが好ましい。耐熱層は、正極10(典型的には正極活物質層14)と当接することが好ましい。これによって、高温時にセパレータ32,34が熱収縮することを好適に抑制すると共に、例えば二次電池100の初期充電時や過充電時等に、捲回電極体40の内部で発生したガスをスムーズに捲回電極体40の外部に排出できる。
【0057】
接着層は、例えば最も高い質量割合で、接着層バインダを含んでいる。接着層は、さらに他の材料(例えば無機フィラー等)を含んでいてもよい。接着層バインダとしては、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。なかでも、高い柔軟性を有することから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。接着層バインダは耐熱層バインダと同じであってもよく、異なっていてもよい。接着層は、負極20と対向することが好ましい。接着層は、負極20(典型的には負極活物質層24)と当接することが好ましい。その場合、接着層は、例えば後述する製造方法のプレス成形工程によって、負極20と接着されている。これによって、積層ずれを抑制できる。また、プレス成形後に捲回電極体40の平坦部40fの厚みが増加することが抑えられ、スプリングバックの発生を抑制できる。
【0058】
<2.二次電池の製造方法>
上記のような二次電池100は、正極10と負極20とをセパレータ32,34を用いて、扁平形状の捲回電極体40を作製する電極体作製工程を含む製造方法によって製造することができる。それ以外の製造プロセスは従来同様であってよい。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。例えば、電極体作製工程の後には、捲回電極体40と電解液とを電池ケース50内に収容する工程や電池ケース50を封止する工程等を含んでもよい。本実施形態において、電極体作製工程は、(1)捲回工程と、(2)プレス成形工程と、をこの順に含んでいる。捲回工程あるいはプレス成形工程の後には、(3)乾燥工程をさらに含んでもよい。以下、図8A図8Eを参照しつつ、詳しく説明する。
【0059】
(1)捲回工程は、帯状の正極10と帯状の負極20と帯状のセパレータ32,34とを備えた筒状の捲回体(筒状体)を作製する工程である。本工程では、巻き取り装置が用いられる。巻き取り装置には、帯状の正極10と、帯状の負極20と、帯状の第1セパレータ32と、帯状の第2セパレータ34とが、それぞれリール状に巻かれてセットされる。巻き取り装置は、例えば図8Aに示すような巻き取りユニット200を備えている。帯状の正極10と、帯状の負極20と、帯状の第1セパレータ32と、帯状の第2セパレータ34とは、図示しない搬送経路(例えば複数のローラ)に沿って巻き取りユニット200まで搬送される。搬送経路には、緩みを取り除くためのダンサロール機構や、テンションを調整するためのテンションナー等が適宜に配置されている。巻き取りユニット200は、図8Aに示すように、巻芯210と、巻芯210を回転させる回転機構(図示せず)と、を有する。
【0060】
巻芯210は、ここでは外形が略円筒形状であり、図8Aに示すように側面が略円形状である。ただし、他の実施形態において、巻芯210は、側面が扁平な形状であってもよい。その場合、後述の(2)プレス成形工程は省略してもよい。特に限定されないが、巻芯210の直径は、例えば50~100mm程度であり、一例では80mmである。巻芯210は、半円形状に分割された第1部分211と第2部分212とを有している。第1部分211と第2部分212との間には、巻芯210の軸心を通過するように、スリット213が形成されている。スリット213の長さは、巻芯210の直径と同じである。スリット213の幅は、セパレータ32,34が挿通可能に形成されている。巻芯210は、ここではスリット213内のセパレータ32,34を静電チャックによって吸着固定するように構成されている。静電チャックは、図示しない制御装置によってON/OFFの切り替えが可能に構成されている。
【0061】
巻芯210はさらに、巻芯210に支持された部材(例えばセパレータ32,34)を巻芯210に吸着させる吸着機構を有している。図示は省略するが、本実施形態では、巻芯210の側面(具体的には、第1部分211および第2部分212の円弧の部分)に、複数の吸着孔が形成されている。吸着機構は、例えば吸引ファンを備え、吸着孔を通じて巻芯210上の空気を吸引することで、巻芯210に支持された部材を巻芯210に吸着保持するように構成されている。吸着機構は、図示しない制御装置によってON/OFFの切り替えが可能に構成されている。
【0062】
回転機構は、図示しない制御装置に連結され、軸心を中心として巻芯210を所定の回転方向(ここでは反時計回り、図8Bの矢印の方向)に所定の回転速度で回転させるように構成されている。回転機構は、例えば回転モータであり、回転機構は、図示しない制御装置によってON/OFFの切り替えと、回転速度の制御が可能に構成されている。
【0063】
本実施形態において、捲回工程は、保持工程(ステップS1)と、第1巻き付け工程(ステップS2)と、配置工程(ステップS3)と、第2巻き付け工程(ステップS4)と、をこの順で含んでいる。図8Aは、保持工程の説明図であり、図8Bは、第1巻き付け工程の説明図であり、図8Cは、配置工程の説明図であり、図8Dは、第2巻き付け工程の説明図である。
【0064】
保持工程(ステップS1)では、図8Aに示すように、第1セパレータ32と第2セパレータ34とを、巻芯210に保持させる。本実施形態では、まず、第1セパレータ32の捲回始端32sと第2セパレータ34の捲回始端34sとを揃えて、第1セパレータ32の始端部と第2セパレータ34の始端部とを巻芯210のスリット213に通す。すなわち、巻芯210の第1部分211と第2部分212とでセパレータ32,34を挟み込む。なお、ここでは、第1セパレータ32を内側(巻芯210側)に、第2セパレータを外側(第1セパレータ32の上)に配置している。またこのとき、第1セパレータ32の始端部と第2セパレータ34の始端部とは、スリット213を通過し、所定の長さでスリット213からはみ出させている。スリット213内のセパレータ32,34は、静電チャックによって巻芯210に吸着固定される。
【0065】
そして、スリット213からはみ出した部分は、巻芯210の回転方向とは逆向き(ここでは時計回り)に屈曲させて、巻芯210の第2部分212に沿って湾曲させる。これにより、セパレータ32,34の始端部に第1屈曲点P1と第2屈曲点P2とが形成され、Z字形状に折り曲げられる。本実施形態では、図8Aに示すように、第1セパレータ32の始端部と第2セパレータ34の始端部とが、第2部分212の円弧の約半分を覆っている。巻芯210に巻き付けられたセパレータ32,34は、吸着機構によって巻芯210に吸着固定される。このようにして、セパレータ32,34を、巻芯210に保持させる。
【0066】
第1巻き付け工程(ステップS2)では、図8B図9に示すように、帯状の第1セパレータ32と帯状の第2セパレータ34とを供給しながら巻芯210を第1回転速度V1で所定の回転方向(ここでは反時計回り、図8Bの矢印の方向)に回転させる。これにより、第1セパレータ32と第2セパレータ34とを、所定の長さで巻芯210に巻き付ける。本工程は、従来の「セパレータ初期巻き工程」に相当する工程でありうる。特に限定されるものではないが、第1回転速度V1(本工程(図9のグラフ中)の最も速い回転速度)は、例えば150~1500rpmとすることが好ましい。
【0067】
配置工程(ステップS3)では、図8Cに示すように、まず、巻芯210を、制御装置によって停止させた状態(すなわち、V2=0の状態)、あるいは第1回転速度V1よりも遅い第2回転速度V2で回転させた状態とする。巻芯210の回転速度を第1巻き付け工程よりも減速することで、正極10と負極20との積層ずれ(位置ずれ)を抑制でき、信頼性の高い捲回電極体40を作製できる。また、正極10および/または負極20を挿入する際に、例えばセパレータ32,34の表面と、正極10および/または負極20の表面と、が強く擦れて、例えば機能層の一部が脱落するような事態を未然防止できる。好適な一態様では、巻芯210を停止させた状態(V2=0)とすることがより好ましい。特に限定されるものではないが、巻芯210を回転させた状態とする場合は、第2回転速度V2(本工程における最も速い回転速度)は、例えば20rpm以下の低速とすることが好ましい。第2回転速度V2は、例えば1~10rpm、さらには1~5rpmとすることができる。
【0068】
そして、巻芯210の回転速度が低下(好ましくは巻芯210が停止)したタイミングで、帯状の正極10と帯状の負極20とを略同時に挿入する。言い換えれば、巻芯210の1回の回転速度の低下ないし停止で、正極10と負極20とを巻き始める。具体的には、第1セパレータ32の内周面(巻芯210側の面)側に負極20が配置されるように、負極20の捲回始端20sを配置する。かつ、第1セパレータ32の外周面(巻芯210とは反対側の面)と第2セパレータ34との間に、正極10の捲回始端10sを配置する。このように、第1セパレータ32の内周側に負極20を配置し、第1セパレータ32の外周側の面と第2セパレータ34の内周側の面との間に正極10を挟み込むようにして、正極10で負極20を巻き込むような巻取方式にすることで、負極20が正極10よりも内周側に位置することになる。これにより、正極10と負極20とを略同時に巻芯210に巻き付けることが可能となる。
【0069】
またこのとき、図8Cに示すように、負極20の捲回始端20sの差し込み位置と正極10の捲回始端10sの差し込み位置とをずらすことにより、正極10の捲回始端10sと負極20の捲回始端20sとの捲回方向の間隔Dsを調整できる。
【0070】
なお、本明細書において「略同時」とは、例えば人為的あるいは機械的な誤差等による若干のズレをも許容する用語である。具体的には、正極10の配置と負極20の配置とが同時(0.05sec以内)の場合と、0.05~0.3sec程度の若干のズレが生じる場合とを、包含する用語である。
【0071】
第2巻き付け工程(ステップS4)では、図8D図9に示すように、帯状の正極10と帯状の負極20を供給しながら、第1回転速度V1よりも早い第3回転速度V3で巻芯210を回転させる。これにより、正極10と負極20とを、巻芯210に巻き付ける。本工程は、従来の「本巻き工程」に相当する工程でありうる。特に限定されるものではないが、第3回転速度V3(本工程(図9のグラフ中)の最も速い回転速度)は、第1回転速度V1および第2回転速度V2よりも速いことが好ましい。第3回転速度V3は、例えば500~1500rpmとすることが好ましい。
【0072】
このようにして、正極10と負極20とを巻芯210に所定の捲回数の分、巻き付けたら、カッター等を用いて正極10の捲回終端10eと負極20の捲回終端20eとセパレータ32,34の捲回終端32e,34eとをそれぞれ切断する。このとき、負極20の捲回終端20eは、正極10の捲回終端10eよりも捲回終端側に位置し、さらにセパレータ32,34の捲回終端32e,34eは、負極20の捲回終端20eよりも捲回終端側に位置するように調整することが好ましい。また、第1セパレータ32の捲回終端32eと第2セパレータ34の捲回終端34eとは、位置を揃えることが好ましい。そして、第1セパレータ32の捲回終端32eおよび第2セパレータ34の捲回終端34eに、巻止めテープ48(図6参照)を貼り付ける。このようにして、筒状体を作製する。
【0073】
以上のように、ここに開示される製造方法では、(1)捲回工程において、巻芯210の回転を低速ないし停止させる回数を、従来の2回から1回に減らすことができる。言い換えれば、正極10を配置するタイミングと負極20を配置するタイミングとの間に、巻芯210の回転速度を加速して減速させるような工程を含まない。そのため、例えば、従来の負極初期巻き工程を省略できる。これにより、捲回工程のタクトタイムを短縮でき、積層ずれ等が抑制された信頼性の高い捲回電極体40を効率的に製造できる。ひいては、二次電池100の生産性を向上できる。
【0074】
(2)プレス成形工程では、上記のようにして作製した筒状体をプレス成形することによって、図6等に示すような扁平形状に成形する。プレス成形の条件(例えば圧力や保持時間等)は、例えば捲回電極体40の捲回数やセパレータの性状(機能層の有無や構成)等に応じて、適宜調節することができる設計事項である。プレス成形は、常温で行ってもよく、加熱しながら(高温で)行ってもよい。プレス成形により、捲回電極体40の幅方向Yにおける一方の端部には、正極タブ12tが積層された正極タブ群42が形成され、他方の端部には、負極タブ22tが積層された負極タブ群44が形成される。そして、捲回電極体40の幅方向Yの中央部には、幅W1の長さで、正極活物質層14と負極活物質層24とが対向した反応部が形成される。以上のようにして、正極10と負極20とセパレータ32,34とを備えた捲回電極体40を作製する。
【0075】
なお、本実施形態では、セパレータ32,34が負極20と対向する側の面に接着層を備えている。そのため、プレス成形により、セパレータ32,34の接着層が負極20と接着される。具体的には、プレス成形において筒状体を押し潰すと、平坦部40fに位置する正極10、負極20およびセパレータ32,34の各々に、大きな圧力が加わる。これにより、負極活物質層24の表面に合わせて接着層が押圧変形され、セパレータ32,34と負極20とが接着(圧着)される。
【0076】
(3)乾燥工程では、捲回電極体40に含まれる水分を除去する。乾燥方法としては、例えば、通風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥等の従来公知の方法を適宜採用することができる。加熱乾燥を採用する場合には、セパレータ32,34の熱収縮(特にはセパレータ基材の熱収縮)を抑える観点から、加熱温度を120℃以下とすることが好ましい。
【0077】
<3.二次電池の用途>
二次電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0079】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の第1セパレータと、帯状の正極と、帯状の第2セパレータと、帯状の負極とが積層され、捲回されてなる捲回電極体を備えた二次電池の製造方法であって、上記第1セパレータと上記第2セパレータとを、巻芯に保持させる保持工程と、上記保持工程の後、上記巻芯を第1回転速度で回転させ、上記第1セパレータと上記第2セパレータとを上記巻芯に巻き付ける第1巻き付け工程と、上記第1巻き付け工程の後、上記巻芯を上記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させた状態、あるいは停止させた状態で、上記第1セパレータの内周側に上記負極が配置されるように、上記負極の捲回始端を配置し、かつ、上記第1セパレータの外周側の面と上記第2セパレータとの間に上記正極の捲回始端を配置する配置工程と、上記配置工程の後、上記正極と上記負極とを、上記第1回転速度よりも早い第3回転速度で、上記巻芯に巻き付ける第2巻き付け工程と、を含む、二次電池の製造方法。
項2:上記第1セパレータおよび上記第2セパレータの少なくとも一方が、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の表面に設けられた機能層と、を備える、項1に記載の製造方法。
項3:上記捲回電極体を捲回軸方向から見たとき、捲回始端領域では、上記第1セパレータおよび上記第2セパレータがZ字形状をなしている、項1または2に記載の製造方法。
項4:上記第1セパレータの捲回始端と、上記第2セパレータの捲回始端とが、揃っている、項1から3のいずれか1つに記載の製造方法。
項5:上記第1セパレータの捲回終端と、上記第2セパレータの捲回終端とが、揃っている、項1から4のいずれか1つに記載の製造方法。
項6:捲回方向において、上記正極の捲回始端と上記負極の捲回始端との間隔が、20mm以下である、項1から5のいずれか1つに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0080】
10 正極
20 負極
32、34 セパレータ
40 捲回電極体
50 電池ケース
100 二次電池
200 巻き取りユニット
210 巻芯
211 第1部分
212 第2部分
213 スリット
P1 第1屈曲点
P2 第2屈曲点
P3 第3屈曲点
P4 第4屈曲点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11