(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124938
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】昆虫飼育方法、水分量測定方法及び昆虫飼育システム
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032933
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 弘道
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトフォード ロン
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎一
(57)【要約】
【課題】飼育昆虫にエサをよく食べさせて大きく育てることができ、かつ作業性を向上させることができる昆虫飼育方法を提供する。
【解決手段】昆虫飼育方法は、飼育昆虫2とエサとを入れた飼育容器1内の水分量の監視及び制御を行う。上記エサを投入後の飼育容器1内の水分量を測定し、飼育容器1内に水分を加えて飼育容器1内の水分量を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育昆虫とエサとを入れた飼育容器内の水分量の監視及び制御を行い、
前記エサを投入後の前記飼育容器内の前記水分量を測定し、前記飼育容器内に水分を加えて前記飼育容器内の前記水分量を制御する、
昆虫飼育方法。
【請求項2】
前記エサの成形物を前記エサとして給餌する、
請求項1に記載の昆虫飼育方法。
【請求項3】
前記エサを投入する際に、前記飼育昆虫の量から前記エサに必要な原料の量と水分の量とを算出し、前記エサとして給餌する、
請求項1に記載の昆虫飼育方法。
【請求項4】
前記エサを投入後の前記飼育容器内の前記水分量を測定し、測定した前記水分量が所定の水分量に満たない場合、前記飼育容器内に水分を加えて前記飼育容器内の前記水分量を制御する、
請求項1に記載の昆虫飼育方法。
【請求項5】
飼育時と収穫時とで、異なる量となるように前記飼育容器内の前記水分量で管理する、
請求項1に記載の昆虫飼育方法。
【請求項6】
投入したエサ、飼育昆虫及び飼育容器の重量から、蒸発した水分の重量を算出することにより、前記飼育容器内の水分量を推定する、
水分量測定方法。
【請求項7】
飼育昆虫とエサとを入れた飼育容器内の水分量の監視及び制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、前記エサを投入後の前記飼育容器内の前記水分量を測定し、前記飼育容器内に水分を加えて前記飼育容器内の前記水分量を制御する、
昆虫飼育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昆虫飼育方法、水分量測定方法及び昆虫飼育システムに関し、詳しくは、飼育容器内の監視及び制御を行う昆虫飼育方法、水分量測定方法、並びに昆虫飼育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食料や飼料、ペットフード等の分野において、今後も価格の高騰が予測される魚粉に代え、新たなタンパク源として、幼虫を中心とした昆虫を用いることが注目されており、昆虫を飼育する方法が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ハエを繁殖させるための、孵卵室と、幼虫室と、蛹化室と、放出ボックスと、繁殖室と、を含むモジュール式システム、及びハエを繁殖させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来の方法では、飼育昆虫を大きく育てるために必要な条件等が、明確にはわかっていなかった。また、飼育昆虫の収穫の際に、投入したエサ及び飼育昆虫の排泄物の混合物であるフラス等から、飼育昆虫を分離するのに手間がかかり、収穫時の作業性が低いという不都合もあった。
【0006】
本開示の課題は、飼育昆虫にエサをよく食べさせて大きく育てることができ、かつ収穫時の作業性を向上させることができる昆虫飼育方法、水分量測定方法及び昆虫飼育システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る昆虫飼育方法は、飼育昆虫とエサとを入れた飼育容器内の水分量の監視及び制御を行う。前記エサを投入後の前記飼育容器内の前記水分量を測定し、前記飼育容器内に水分を加えて前記飼育容器内の前記水分量を制御する。
【0008】
本開示の一態様に係る水分量測定方法は、投入したエサ、飼育昆虫及び飼育容器の重量から、蒸発した水分の重量を算出することにより、前記飼育容器内の水分量を推定する。
【0009】
本開示の一態様に係る昆虫飼育システムは、飼育昆虫とエサとを入れた飼育容器内の水分量の監視及び制御を行う制御部を備える。前記制御部は、前記エサを投入後の前記飼育容器内の前記水分量を測定し、前記飼育容器内に水分を加えて前記飼育容器内の前記水分量を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、飼育昆虫にエサをよく食べさせて大きく育てることができ、かつ収穫時の作業性を向上させることができる昆虫飼育方法、水分量測定方法及び昆虫飼育システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の昆虫飼育方法を説明するフローチャートである。
【
図2】
図2は、本開示の昆虫飼育方法で用いられる飼育容器を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の昆虫飼育方法で用いられるエサの成形物を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
本開示の一態様に係る昆虫飼育方法(以下、昆虫飼育方法(X)ともいう)は、飼育昆虫2とエサとを入れた飼育容器1内の水分量(以下、水分量(a)ともいう)の監視及び制御を行い、エサを投入後の飼育容器1内の水分量(a)を測定し、飼育容器1内に水分を加えて飼育容器1内の水分量(a)を制御する。
【0013】
発明者らは、昆虫飼育において、飼育容器1内の水分量(a)が重要であり、この水分量(a)を監視すると共に、水分量(a)を特定範囲内となるように制御することで、飼育昆虫2にとって最適な飼育環境とすることができ、それにより、飼育昆虫2にエサをよく食べさせることができ、大きく育てることができることを見出し、かつ収穫時の水分量(a)を適切な範囲内となるように制御することで、飼育昆虫2とフラス3との分離が容易になることを見出し、本開示を完成させた。
【0014】
昆虫飼育方法(X)によれば、最適な水分量(a)のエサ及び飼育環境により、飼育昆虫2にエサをよく食べさせて大きく育てることができる。また、昆虫飼育方法(X)によれば、収穫時において、適切な範囲の水分量(a)で管理することにより、収穫時の作業性を向上させることができる。
【0015】
本開示の水分量測定方法(以下、水分量測定方法(Y)ともいう)は、投入したエサ、飼育昆虫2及び飼育容器1の重量から、蒸発した水分の重量を算出することにより、飼育容器1内の水分量(a)を推定する。
【0016】
飼育容器内1は水分量に勾配があり、場所によって異なるため、水分計等の測定器で測定する場合には、飼育容器1内を撹拌して均一化する、又は飼育容器1内の複数の地点の測定データを取得することが必要であるなど、手間がかかるものである。しかし、水分量測定方法(Y)によれば、飼育容器1全体の重量の変化から換算することにより、飼育容器1内の水分量(a)を推定することができ、水分量(a)を簡便に把握することができる。
【0017】
本開示の昆虫飼育システム(以下、昆虫飼育システム(Z)ともいう)は、飼育昆虫2とエサとを入れた飼育容器1内の水分量(a)の監視及び制御を行う制御部(以下、制御部(p)ともいう)を備える。制御部(p)は、エサを投入後の飼育容器内1の水分量(a)を測定して、飼育容器1内に水分を加えて飼育容器1内の水分量(a)を制御する。
【0018】
昆虫飼育システム(Z)によれば、最適な水分量(a)のエサ及び飼育環境により、飼育昆虫2にエサをよく食べさせて大きく育てることができ、かつ収穫時の作業性を向上させることができる。
【0019】
2.詳細
<昆虫飼育方法>
昆虫飼育方法(X)では、飼育昆虫2とエサとを入れた飼育容器1内の水分量(a)の監視及び制御を行う。
【0020】
昆虫飼育方法(X)において、エサを投入後の飼育容器1内の水分量(a)を測定すること、及びこの飼育容器1内の水分量(a)の測定値に基づいて、飼育容器1内に水分を加えて、飼育容器1内の水分量(a)を制御することが重要である。これにより、最適な水分量(a)のエサ及び飼育環境とすることができ、エサを食べさせて大きく育てることが可能になる。
【0021】
図1は、昆虫飼育方法(X)の一例を説明するフローチャートである。
図1のフローチャートにおける(i)~(vii)の各ステップについて、以下説明する。
【0022】
飼育容器1内の水分量(a)とは、例えば飼育容器1内に含まれる飼育昆虫2と、エサ及び排泄物の混合物であるフラス3とからなる内容物全体に対する水分の重量割合(重量%)を意味する。
【0023】
昆虫飼育方法(X)では、まず、(i)飼育昆虫量の決定において、飼育容器1に最初に投入する飼育昆虫2の量(重量)を決め、この重量の飼育昆虫2を飼育容器1に投入する。
【0024】
次に、(ii)エサの原料量・水分量の設定で、(i)で投入した飼育昆虫2の重量から、必要となるエサの重量を求め、このエサにおける水分以外の部分であるエサ原料の重量と、エサに含まれる水分の重量とを算出し、(iv)エサの飼育容器への投入において、投入するエサ原料の重量及び水分の重量を設定する。
【0025】
次いで、(iii)エサの作成(原料及び水分の配合)で、(ii)で設定した量のエサ原料及び水分を配合し、エサを作成する。
【0026】
次に、(iv)エサの飼育容器への投入で、(iii)で作成したエサを、飼育容器1に投入する。
【0027】
次いで、(v)飼育容器内の水分量の測定では、飼育容器1内の水分量(a)を測定する。この測定には、後述する水分量測定方法(Y)を用いることが好ましい。
【0028】
(v)の後、モード判断において、飼育昆虫2の成長の度合いに基づいて、飼育継続モード又は収穫モードを選択する。飼育昆虫2が所望の大きさにまで成長していない場合は、飼育継続モードを選択し、飼育昆虫2が所望の大きさにまで成長している場合は、収穫モードに移行する。
【0029】
飼育継続モードを選択した場合、次に、(ii)エサの原料量・水分量の設定において、(v)飼育容器内の水分量の測定による水分量(a)の情報を考慮し、(vi)エサの飼育容器への投入の後において、飼育容器1内の水分量(a)が所定の範囲になるように、必要なエサ原料の量及び水分の量を算出し、設定する。
【0030】
飼育容器1内の水分量(a)は、飼育容器1内における内容物全体に対して、60重量%以上80重量%以下に制御することが好ましい。この場合、飼育環境をより良くすることにより、飼育昆虫2にエサをより食べさせて、飼育昆虫2をより大きく育てることができる。水分量(a)は、65重量%以上75重量%以下に制御することがより好ましい。
【0031】
(v)で測定した飼育容器1内の水分量(a)の値が、所定の水分量(a)に満たない場合、(vi)エサの飼育容器への投入の後において、所定の水分量(a)になるように、(ii)において、必要な水分の量を設定する。この水分の量の設定は、飼育容器1内に投入されるエサの水分含有率を大きくする、飼育容器1内に投入されるエサに水を添加する、エサとは別に飼育容器1内に水を加えること等により行われる。
【0032】
(ii)の後、さらに、(iii)~(v)を行った後、モード判断を行う。モード判断で、飼育継続モードを選択した場合は、(ii)~(v)を再度繰り返す。
【0033】
モード判断において、収穫モードに移行した場合、(vi)飼育容器内の乾燥において、飼育容器1内の内容物を乾燥させる操作を行い、飼育容器1内の水分量(a)を低下させる。この乾燥は、例えば自然乾燥、ファン、ヒーター、除湿器、エアコン等により行われる。
【0034】
昆虫飼育方法(X)においては、飼育時と収穫時とで、異なる量となるように飼育容器1内の水分量(a)で管理することが好ましい。すなわち、飼育継続モードと収穫モードとでは、異なる水分量(a)で管理することが好ましい。また、収穫時では、飼育時よりも少ない水分量(a)で管理することがより好ましい。収穫モードにおいて、飼育継続モードと同じ水分量(a)のままであると、飼育昆虫2の表面に粘度のあるフラス3がこびりつきやすく、飼育昆虫2とフラス3とを分離するのに手間がかかる。しかし、収穫モードにおいて、飼育継続モードよりも少ない水分量(a)で管理することにより、粘度の低いフラス3となるため、分離の手間が少なくなり、収穫時の作業性をより向上させることができる。
【0035】
収穫モードでは、飼育容器1内の水分量(a)を、例えば、5重量%以上60重量%以下の範囲、好ましくは、20重量%以上40重量%以下の範囲で管理することが好ましい。
【0036】
次に、(vii)飼育容器内の水分量の測定で、飼育容器1内の水分量(a)を測定する。この水分量(a)の測定も、後述する水分量測定方法(Y)により行うことが好ましい。
【0037】
(vii)で測定した飼育容器1内の水分量(a)の測定値が、所定の範囲内となっていない場合、(vi)飼育容器内の乾燥において、乾燥操作を継続する。飼育容器1内の水分量(a)の測定値が、所定の範囲内となっている場合は、乾燥操作を終了し、一定時間の経過後に、飼育昆虫2の収穫を行い、昆虫飼育を終了する。
【0038】
(水分量測定方法)
昆虫飼育方法(X)では、飼育容器1内の水分量(a)を、例えば以下に示す水分量測定方法(Y)を用いることにより、測定することができる。
【0039】
水分量測定方法(Y)では、投入したエサ、飼育昆虫2及び飼育容器1の重量から、蒸発した水分の重量を算出することにより、飼育容器1内の水分量(a)を推定する。すなわち、飼育容器1内に加えた物の全蓄積重量と、実際に測定された飼育容器1内の内容物の全重量との差は、水分が蒸発したものであると仮定して、飼育容器1内の水分量(a)を推定する。
【0040】
具体的には、(iv)で飼育容器1に投入されるエサについて、エサ原料の重量、及びエサに含まれる水分の量を、配合するエサの水分含有率等に基づいて、算出することにより把握しておく。この情報に基づいて、それまでの全ての(vi)で飼育容器1に投入されたエサ原料の蓄積重量を把握しておく。
【0041】
次に、(v)において、飼育容器1全体の重量を測定し、下記式(1)により、飼育容器1内の水分量(a)を算出する。
飼育容器1内の水分量(a)
=飼育容器1全体の重量-空の飼育容器1の重量-投入したエサ原料の累積重量
・・・(1)
【0042】
このように、水分量測定方法(Y)によれば、飼育容器1内の内容物を撹拌することや、飼育容器1内の複数の地点におけるデータを取得すること等の手間がかかることがなく、飼育容器1内の水分量(a)を簡便に測定することができる。
【0043】
収穫モードにおける(vii)飼育容器内の水分量の測定も、(v)飼育容器内の水分量の測定と同様にして、行うことができる。
【0044】
以上のようにして、昆虫飼育方法(X)では、飼育容器1内の水分量(a)の監視及び制御を行い、エサを投入後の飼育容器1内の水分量(a)を測定し、飼育容器1に水分を加えて飼育容器1内の水分量(a)を制御する。
【0045】
また、昆虫飼育方法(X)では、(i)~(v)により、エサを投入する際に、飼育昆虫2の量から、エサに必要な原料の量と水分の量とを算出し、エサとして給餌することができる。また、昆虫飼育方法(X)では、エサを投入後の飼育容器1内の水分量(a)を測定し、測定した水分量(a)が所定の水分量に満たない場合、飼育容器1内に水分を加えて飼育容器1内の水分量(a)を制御することができる。
【0046】
図2は、昆虫飼育中における飼育容器1を示す図である。飼育容器1には、飼育昆虫2と、投入したエサと飼育昆虫2の排泄物との混合物であるフラス3とが入っている。
【0047】
飼育容器1は、例えば樹脂製である。この樹脂は透明であることが好ましい。飼育容器1は、例えば長辺0.1m以上2m以下、短辺0.05m以上1.5m以下、高さ0.1m以上1m以下の直方体である。飼育容器1は、通常、上面を有していない。
【0048】
飼育昆虫2としては、例えば、イエバエ、センチニクバエ、ミカンバエ、アメリカミズアブ、ヨーロッパイエコオロギ、フタホシコウロギ、カマドコオロギ、コメノゴミムシダマシ、チャイロゴミムシダマシ、ツヤケシオオゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、バッファロービートル、カイコ等の成虫、幼虫等が挙げられる。
【0049】
(iv)において給餌されるエサとしては、例えばおから(水分含有率5~10重量%)、生野菜(水分含有率70~90重量%)等が挙げられる。
【0050】
給餌されるエサは、粉末状、ペースト状等であってもよいが、昆虫飼育方法(X)においては、エサの成形物4をエサとして給餌することが好ましい。
図3は、エサを球状に成形した成形物4を複数個、フラス3の上に、並べて給餌することを示している。給餌するエサを成形物4とすることにより、水分の蒸発をより抑制することができ、水分量(a)をより維持しやすくなる。「成形物」とは、エサ自身の形状とは異なる任意の形状になるようにしたものをいう。成形物4の形状としては、例えば球形状、立方体形状、直方体形状等が挙げられる。給餌する成形物4の数は、例えば2個以上50個以下であり、4個以上30個以下であることが好ましい。給餌は、これら複数の成形物4を、フラス3上に、互いに重ならないように置くことにより行うことが好ましい。
【0051】
成形物4の最大寸法は、例えば飼育容器1の短辺の長さの1/10以上1/2以下であり、1/8以上1/4以下であることが好ましい。「最大寸法」とは、成形物4の表面の任意の2点間の距離のうち、最大であるものを意味する。
【0052】
成形物4の最大寸法としては、例えば1cm以上15cm以下であり、2cm以上10cm以下であることが好ましい。
【0053】
<昆虫飼育システム>
昆虫飼育システム(Z)は、飼育昆虫2とエサとを入れた飼育容器1内の水分量(a)の監視及び制御を行う制御部(p)を備えている。制御部(p)は、エサ投入後の飼育容器1内の水分量(a)を測定し、飼育容器1内に水分を加えて飼育容器1内の水分量(a)を制御する。
【0054】
昆虫飼育システム(Z)においては、制御部(p)が、飼育容器1内の水分量(a)の監視及び制御を行う。また、制御部(p)が、上述の昆虫飼育方法(X)における(i)~(vii)の各ステップを行うことにより、エサを投入後の飼育容器1内の水分量(a)を測定し、飼育容器1内に水分を加えて飼育容器1内の水分量(a)を制御する。
【0055】
昆虫飼育システム(Z)によれば、最適な水分量(a)のエサ及び飼育環境により、飼育昆虫2にエサをよく食べさせて大きく育てることができ、かつ収穫時の作業性を向上させることができる。
【0056】
3.態様
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0057】
第1の態様に係る昆虫飼育方法は、飼育昆虫(2)とエサとを入れた飼育容器(1)内の水分量の監視及び制御を行う。エサを投入後の飼育容器(1)内の水分量を測定し、飼育容器(1)内に水分を加えて飼育容器(1)内の水分量を制御する。
【0058】
第1の態様によれば、最適な水分量のエサ及び飼育環境で、エサをよく食べさせて大きく育てることができ、収穫時にはある程度乾燥させることによって、作業性が向上する。
【0059】
第2の態様に係る昆虫飼育方法では、第1の態様において、エサの成形物(4)をエサとして給餌する。
【0060】
第2の態様によれば、エサからの水分の蒸発をより抑制することができ、飼育容器(1)内の水分量をより維持しやすくなる。
【0061】
第3の態様に係る昆虫飼育方法では、第1又は第2の態様において、エサを投入する際に、飼育昆虫(2)の量からエサに必要な原料の量と水分の量とを算出し、エサとして給餌する。
【0062】
第3の態様によれば、飼育昆虫(2)の量からエサの原材料を算出するので、過剰にエサを投入することなく、加えて、最適な水分量に制御することによって、効率良く収穫量を確保できる。
【0063】
第4の態様に係る昆虫飼育方法では、第1から第3のいずれか一の態様において、エサを投入後の飼育容器(1)内の水分量を測定し、測定した水分量が所定の水分量に満たない場合、飼育容器(1)内に水分を加えて飼育容器(1)内の水分量を制御する。
【0064】
第4の態様によれば、初期の水分量のままであると、水の蒸発により最適な水分量にはならないため、飼育容器(1)内の水分量を監視することにより、最適な水分量を維持でき、収穫量を多くすることができる。
【0065】
第5の態様に係る昆虫飼育方法では、第1から第4のいずれか一の態様において、飼育時と収穫時とで、異なる量となるように飼育容器(1)内の水分量で管理する。
【0066】
第5の態様によれば、収穫時に、飼育時と同じ水分量のままであると、飼育昆虫(2)の表面に粘度が高い排泄物、エサの残渣等のフラス(3)がこびりつきやすく、分離するのに手間がかかるが、飼育容器(1)内を乾燥して水分量を少なくすることにより、フラス(3)の粘度を低くすることができ、分離の手間を少なくて済むようにすることができる。
【0067】
第6の態様に係る水分量測定方法は、投入したエサ、飼育昆虫(2)及び飼育容器(1)の重量から、蒸発した水分の重量を算出することにより、飼育容器(1)内の水分量を推定する。
【0068】
第6の態様によれば、飼育容器(1)内には水分量の勾配があることがあるため、水分計等の測定器で測定した水分量であると、飼育容器(1)内を撹拌して均一化したり、飼育容器(1)内の複数の地点の測定データから推定するなどの手間がかかるが、飼育容器(1)全体の重量換算から水分量を測定することで、すぐに水分量を把握することができる。
【0069】
第7の態様に係る昆虫飼育システムは、飼育昆虫(2)とエサとを入れた飼育容器(1)内の水分量の監視及び制御を行う制御部を備える。制御部は、エサを投入後の飼育容器(1)内の水分量を測定し、飼育容器(1)内に水分を加えて飼育容器(1)内の水分量を制御する。
【0070】
第7の態様によれば、最適な水分量のエサ及び飼育環境により、飼育昆虫(2)にエサをよく食べさせて大きく育てることができ、かつ収穫時の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 飼育容器
2 飼育昆虫
3 フラス(エサ及び排泄物の混合物)
4 エサの成形物