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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124940
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】昆虫飼育システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032935
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 弘道
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトフォード ロン
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎一
(57)【要約】
【課題】昆虫飼育における作業を簡略化することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することができる昆虫飼育システムを提供する。
【解決手段】昆虫飼育システムは、所望でない領域に誤って産卵することを抑制する誤産卵抑制部と、幼虫の飼育容器からの脱走を抑制する脱走抑制部と、幼虫を分離容器に誘導する幼虫誘導部と、の少なくとも1つを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望でない領域に誤って産卵することを抑制する誤産卵抑制部と、
幼虫の飼育容器からの脱走を抑制する脱走抑制部と、
幼虫を分離容器に誘導する幼虫誘導部と、
の少なくとも1つを備える昆虫飼育システム。
【請求項2】
前記誤産卵抑制部は、飼育ゲージ内の物同士が接触する箇所において、90°以下の角ができないように構成されている、
請求項1に記載の昆虫飼育システム。
【請求項3】
前記脱走抑制部は、前記飼育容器の縁部に設置されており、前記飼育容器外に出ようとする前記幼虫の進路を変更させて脱走を抑制する返し構造部位を有する、
請求項1に記載の昆虫飼育システム。
【請求項4】
前記返し構造部位において、前記幼虫が歩行する部材の厚みが10mm以下であるか、又は前記部材の先端が鋭角である、
請求項3に記載の昆虫飼育システム。
【請求項5】
前記幼虫誘導部は、光源を備え、
前記光源は、前記光源の照射光の先に、前記幼虫、エサ残渣及び排泄物の混合物と、前記幼虫が通り抜けることができる幼虫通過部材と、移動した前記幼虫が入る分離容器とがこの順に設置された状態で、前記混合物に光を照射する、
請求項4に記載の昆虫飼育システム。
【請求項6】
前記混合物が設置される場所において、前記混合物の前記光源から最も遠い箇所における前記照射光の照度が80lx以上である、
請求項5に記載の昆虫飼育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昆虫飼育システムに関し、詳しくは、幼虫等の飼育に好適に用いることができる昆虫飼育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食料や飼料、ペットフードの分野において、今後も価格の高騰が予測される魚粉等に代え、新たなタンパク源として、幼虫を用いることが注目されており、幼虫を飼育する方法が検討されている。
【0003】
幼虫の飼育に関して、幼虫の回収の効率を上げることは難しいことが知られており、この点に対して、検討が行われている。
【0004】
特許文献1には、培地を堆積する底面と、前記培地を囲む側壁面と、天面と、を有する幼虫飼育用容器を有し、前記幼虫飼育用容器は、前記底面が地面に対して斜めになるように配置され、前記側壁面は斜めに持ち上がった部分に開口部が設けられている、ことを特徴とする幼虫の回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-59490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、幼虫が蛹に変態する時の離散習性を利用して、幼虫の回収の効率化を図るものである。しかし、幼虫の飼育においては、幼虫の回収以外にも、様々な点について、作業の簡略化や、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することが求められている。
【0007】
本開示の課題は、昆虫飼育における作業を簡略化することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することができる昆虫飼育システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る昆虫飼育システムは、所望でない領域に誤って産卵することを抑制する誤産卵抑制部と、幼虫の飼育容器からの脱走を抑制する脱走抑制部と、幼虫を分離容器に誘導する幼虫誘導部と、の少なくとも1つを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、昆虫飼育における作業を簡略化することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することができる昆虫飼育システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の昆虫飼育システムで用いられる飼育ゲージを示す概略の断面斜視図である。
図2図2は、同上の飼育ゲージ内の産卵容器を示す概略の斜視図である。
図3図3は、本開示の昆虫飼育システムで用いられる飼育容器を示す概略の断面斜視図である。
図4図4A図4Fは、同上の飼育容器に設置される返し構造部位の例を示す概略の断面図である。
図5図5A図5Cは、同上の飼育容器に設置される返し構造部位の例を示す概略の断面図である。
図6図6A図6Cは、本開示の昆虫飼育システムによる幼虫の収穫の例を説明する概略図である。
図7図7A及び図7Bは、同上の幼虫の収穫の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.概要
本開示の一態様に係る昆虫飼育システム(以下、昆虫飼育システム(X)ともいう)は、所望でない領域に誤って産卵することを抑制する誤産卵抑制部(以下、誤産卵抑制部(i)ともいう)と、幼虫の飼育容器からの脱走を抑制する脱走抑制部(以下、脱走抑制部(ii)ともいう)と、幼虫を分離容器に誘導する幼虫誘導部(以下、幼虫誘導部(iii)ともいう)と、の少なくとも1つを備える。
【0012】
発明者らは、昆虫養殖について検討を進める中で、昆虫の様々な行動特性に着目し、これらに基づいて昆虫飼育システムを構築することにより、誤産卵対応、脱走対応、収穫作業等について簡略化が可能であることを見出し、本開示を完成させた。
【0013】
昆虫飼育システム(X)によれば、昆虫飼育における誤産卵対応、脱走対応及び収穫作業を簡略化することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することができる。
【0014】
2.詳細
<昆虫飼育システム>
昆虫飼育システム(X)は、誤産卵抑制部(i)と、脱走抑制部(ii)と、幼虫誘導部(iii)と、の少なくとも1つを備えている。
【0015】
昆虫飼育システム(X)は、誤産卵抑制部(i)と脱走抑制部(ii)と幼虫誘導部(iii)とのうちの2つ以上を備えていることが好ましく、3つの全てを備えていることがより好ましい。昆虫飼育システム(X)は、(i)~(iii)以外に、その他の部を備えていてもよい。
【0016】
昆虫飼育システム(X)で飼育される昆虫としては、例えば、イエバエ、センチニクバエ、ミカンバエ、アメリカミズアブ、ヨーロッパイエコオロギ、フタホシコウロギ、カマドコオロギ、コメノゴミムシダマシ、チャイロゴミムシダマシ、ツヤケシオオゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、バッファロービートル、カイコ等が挙げられる。
【0017】
以下、誤産卵抑制部(i)、脱走抑制部(ii)、幼虫誘導部(iii)の順に説明する。
【0018】
[誤産卵抑制部]
誤産卵抑制部(i)は、成虫が、所望でない領域に誤って産卵すること、すなわち、誤産卵を抑制する。「誤産卵」とは、飼育ゲージ1において、産卵場所として設定した産卵容器2等以外の場所に産卵することを意味する。
【0019】
誤産卵抑制部(i)によれば、誤産卵を抑制することができ、誤産卵の回収作業を簡略化し、かつ卵のロスを削減することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することができる。
【0020】
誤産卵抑制部(i)は、例えば飼育ゲージ1内の物同士が接触する箇所において、90°以下の角ができないように構成されている。
【0021】
図1の断面斜視図が示すように、昆虫飼育システム(X)で用いられる飼育ゲージ1内には、例えば遮光部材1bの下などの比較的薄暗い場所に、産卵させる場所として、産卵容器2等が設置されている。産卵容器2の形状及び材質は、特に限定されない。
【0022】
発明者らは、飼育ゲージ1内の構造物や配置物などの物同士が接触する箇所において、90°以下の角があると、その箇所において誤産卵が起こり易いことを見出した。
【0023】
飼育ゲージ1内の構造物や配置物等の物同士が接触する箇所において、90°以下の角ができないように構成されていることにより、誤産卵を抑制することができる。言い換えると、飼育ゲージ1内の物同士が接触する箇所における角を全て90°超の鈍角とすることにより、誤産卵を抑制することができる。
【0024】
産卵容器2を飼育ゲージ1の底面1a上に設置する場合、例えば産卵容器2は、図2に示すような形状の土台を有するものとし、かつ産卵容器2の土台における曲面2aと、飼育ゲージ1の底面1aとの間のなす角θ1が90°超の鈍角とすることが好ましい。θ1は100°以上であることが好ましく、110°以上であることがより好ましく、120°以上であることがさらに好ましい。
【0025】
ここで、2つの面がなす角θ1とは、両方が平面である場合、それぞれの面の法線ベクトルのなす角度を意味する。また、一方が曲面である場合、両方の面が交差する線におけるこの曲面の接面を想定して、平面と接面との間の角度を意味する。2つの面の間が湾曲化されている(Rがついている)場合は、この湾曲化がない(Rがついていない)ものと仮定した場合の2つの平面がなす角度を意味する。
【0026】
2つの面がなす角θ1は、湾曲化されていること、すなわちRがついていることが好ましい。この場合、誤産卵を誘発しやすい角張った箇所がより少なくなるため、誤産卵をより抑制することができる。
【0027】
このように、昆虫飼育システム(X)によれば、誤産卵抑制部(i)により、飼育ゲージ1内の物同士が接触する箇所における角度を所定の範囲とすること等により、誤産卵を抑制することができる。
【0028】
[脱走抑制部]
脱走抑制部(ii)は、幼虫の飼育容器5からの脱走を抑制する。
【0029】
脱走抑制部(ii)によれば、飼育容器5外に脱走した幼虫を回収する作業を簡略化し、かつ幼虫のロスを削減することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現することができる。
【0030】
脱走抑制部(ii)は、例えば飼育容器5の縁部5aに設置されており、飼育容器5外に出ようとする幼虫7の進路を変更させて脱走を抑制する返し構造部位6を有する。
【0031】
図3は、幼虫の飼育に用いられる飼育容器5の一例を示す断面斜視図である(飼育容器5は、上方のみが開いている)。飼育容器5には、幼虫7と、エサ残渣及び幼虫7の排泄物の混合物(フラス)8とが入っている。
【0032】
飼育容器5は、通常、プラスチック製であり、透明プラスチックよりも透過率が少し低い半透過プラスチック製であることが好ましい。
【0033】
幼虫7は、飼育容器5内の飼育環境の悪化、水分過多、光等の条件によって、飼育容器5の内側面を登って、飼育容器5の縁部5aから飼育容器5外へ脱走することがある。しかし、発明者らは、脱走抑制部(ii)により、飼育容器5の縁部5aに返し構造部位6を設置すること等によって、幼虫7の脱走を抑制することができることを見出した。
【0034】
返し構造部位6は、飼育容器5の縁部5aに設置されている。返し構造部位6は、垂直断面において、例えば飼育容器5の縁部5aから水平方向の成分を有して延出し、かつ返し構造部位6の飼育容器5の縁部5aとは反対側の先端が、垂直方向下向きの成分を有して延びている構造を有している。このような構造によって、飼育容器5外へ出ようとする幼虫7の進路を変更させることにより、脱走を抑制することができる。返し構造部位6の先端の向く方向は、水平方向に対して下向きに、例えば30°以上であり、45°以上であることが好ましく、70°以上であることがより好ましく、90°、すなわち鉛直下向き方向であることがさらに好ましい。
【0035】
返し構造部位6の材質としては、例えばプラスチック、金属、ガラス等が挙げられる。
【0036】
返し構造部位6は、飼育容器5の縁部5aに固着又は一体化されていてもよく、脱着可能になっていてもよい。
【0037】
返し構造部位6の垂直方向の断面の具体例を、図4A図4Fに示す。
【0038】
返し構造部位6において、幼虫7が歩行する部材の厚み、すなわち図5Aにおけるd1は10mm以下であることが好ましい。この場合、幼虫7が部材上を歩行しづらくなり、かつ反対側の面に移動しづらくなるため、幼虫7の脱走をより抑制することができる。d1は、5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
また、返し構造部位6の先端の断面形状が、図5Bのような三角形状、図5Cのような台形形状などの鋭角であることも好ましい。この場合も、幼虫7の脱走をより抑制することができる。
【0040】
このように、昆虫飼育システム(X)によれば、脱走抑制部(ii)が、飼育容器5の縁部5aに設置される返し構造部位6を有すること等により、幼虫7の脱走を抑制することができる。
【0041】
[幼虫誘導部]
幼虫誘導部(iii)は、幼虫21を分離容器12に誘導する。
【0042】
幼虫誘導部(iii)によれば、従来、乾燥工程を経てから、ふるい器を用いて行っていた幼虫と混合物(フラス)との分離による収穫作業を、幼虫21を分離容器12に誘導することによって、簡略化することができ、作業工数削減を実現することができる。
【0043】
幼虫誘導部(iii)は、例えば、光源11を備え、光源11は、光源11の照射光の先に、幼虫21、エサ残渣及び排泄物の混合物(フラス)22と、幼虫21が通り抜けることができる幼虫通過部材14と、移動した幼虫21が入る分離容器12とがこの順に設置された状態で、混合物22に光を照射する。
【0044】
図6A図6Cを用いて、幼虫誘導部(iii)による幼虫21の収穫作業について説明する。まず、図6Aに示すように、光源11と、光源11の照射光の方向に、分離容器12とを設置する。光源11としては、例えば白色LED等が挙げられる。また、分離容器12の上に、幼虫通過部材14を設置する。分離容器12内には、遮光部材12aが設けられており、遮光部材12aの下方が幼虫回収領域13となる。
【0045】
幼虫通過部材14は、幼虫21が通り抜けることができるものであればよく、例えばメッシュ部材や、複数の貫通孔を有する部材等を用いることができる。幼虫通過部材14が有する孔の大きさ(直径)としては、例えば1mm以上5mm以下であり、2mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0046】
次に、図6Aに示すように、前述の飼育容器5から、幼虫21とエサ残渣及び排泄物の混合物22とを、光源11と分離容器12との間にある幼虫通過部材14の上に移動させる。
【0047】
次いで、この状態で、光源11から照射光を照射する。これにより、図6Bに示されるように、幼虫21は、負の光走性により、幼虫通過部材14を通過して、分離容器12内に移動し、水分を多く含み幼虫通過部材14を通り抜けにくい混合物22と分離される。このようにして、幼虫21と混合物22とを簡便に分離することができる。この分離の際に、幼虫通過部材14を上下左右に振動させてもよい。このようにすることで、幼虫21と混合物22との分離をより加速することができる。
【0048】
さらに、図6Cに示されるように、幼虫21は、負の走光性により、分離容器12内におけるより薄暗い幼虫回収領域13に移動する。この移動の際に、幼虫21に付着している混合物22が取れるので、幼虫21と混合物22とをさらに分離することができ、かつ幼虫21を一か所に集めることができるので、収穫作業をより簡略化することができる。
【0049】
幼虫回収領域13における分離容器12の底面での照射光照度は、10lx以下であることが好ましい。このように、幼虫回収領域13での照度を低くすることにより、幼虫21の幼虫回収領域13への移動をより加速することができ、幼虫21の収穫作業をより簡略化することができる。この照射光強度は、5lx以下であることがより好ましく、1lx以下であることがより好ましい。
【0050】
また、図7Aに示すように、分離容器12について、幼虫回収領域13が上りの坂道の先に配置される構造としてもよい。これによって、幼虫21の習性により、幼虫21の幼虫回収領域13への移動をより加速することができ、幼虫21の収穫作業をより簡略化することができる。
【0051】
また、図7Bに示すように、分離容器12内に、水15を入れておいてもよい。この場合、分離容器12に入った幼虫21が水15によって洗浄されるため、幼虫21と混合物22とをより分離することができ、幼虫21の収穫作業をより簡略化することができる。水15は、静水でもよいが、流水を用いることが好ましい。
【0052】
このように、昆虫飼育システム(X)によれば、幼虫誘導部(iii)により、光の照射と、幼虫通過部材とを用いること等によって、幼虫21の収穫作業をより簡略化することができる。
【0053】
3.態様
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0054】
第1の態様に係る昆虫飼育システムは、所望でない領域に誤って産卵することを抑制する誤産卵抑制部と、幼虫(7)の飼育容器(5)からの脱走を抑制する脱走抑制部と、幼虫(21)を分離容器(12)に誘導する幼虫誘導部と、の少なくとも1つを備える。
【0055】
第1の態様によれば、昆虫養殖において、誤産卵対応、脱走対応及び収穫作業を簡略化することができ、作業工数削減及び生産ロス削減を実現させることができる。
【0056】
第2の態様に係る昆虫飼育システムでは、第1の態様において、誤産卵抑制部は、飼育ゲージ(1)内の物同士が接触する箇所において、90°以下の角ができないように構成されている。
【0057】
第2の態様によれば、誤産卵をより抑制することができ、誤産卵回収作業の削減及び卵のロスを削減することができる。
【0058】
第3の態様に係る昆虫飼育システムでは、第1又は第2の態様において、脱走抑制部は、飼育容器(5)の縁部に設置されており、飼育容器(5)外に出ようとする幼虫(7)の進路を変更させて脱走を抑制する返し構造部位(6)を有する。
【0059】
第3の態様によれば、脱走抑制機構により、飼育容器(5)外に脱走した飼育幼虫を回収する作業の削減、及び飼育幼虫ロスを削減することができる。
【0060】
第4の態様に係る昆虫飼育システムでは、第3の態様において、返し構造部位(6)において、幼虫(7)が歩行する部材の厚みが10mm以下であるか、又は上記部材の先端が鋭角である。
【0061】
第4の態様によれば、返し構造部位(6)の厚みを薄くすることで、幼虫(7)が歩行面の反対側の面へ移動することができず、より脱走を抑制することができる。
【0062】
第5の態様に係る昆虫飼育システムでは、第4の態様において、幼虫誘導部は、光源(11)を備え、光源(11)は、光源(11)の照射光の先に、幼虫(21)、エサ残渣及び排泄物の混合物(22)と、幼虫(21)が通り抜けることができる幼虫通過部材(14)と、移動した幼虫(21)が入る分離容器(12)とをこの順に設置された状態で、混合物(22)に光を照射する。
【0063】
第5の態様によれば、従来は混合物を、乾燥工程を経てから、ふるい器等を使って作業しながら飼育幼虫を分離していた工程が、光による幼虫(21)の誘導で、ウェット状態の混合物(22)でも分離することが可能となり、また多孔性部材の穴を混合物(22)の一部をまとった幼虫(21)が通り抜け、大半の混合物(22)は多孔性部材を通らないので、幼虫(21)と混合物(22)との分離がより効率よくでき、作業工数をより削減することができる。
【0064】
第6の態様に係る昆虫飼育システムでは、第5の態様において、混合物(22)が設置される場所において、混合物(22)の光源(11)から最も遠い箇所における照射光の照度が80lx以上である。
【0065】
第6の態様によれば、一定以上の照度とすることで、効果的に幼虫(21)を移動させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 飼育ゲージ
2 産卵容器
5 飼育容器
6 返し構造部位
7 幼虫
11 光源
12 分離容器
14 幼虫通過部材
21 幼虫
22 混合物(エサ残渣及び排泄物の混合物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7