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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124950
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032951
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】武正 力也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安井 龍生
(72)【発明者】
【氏名】栗山 智行
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA21
2H033BA25
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】定着ベルト301の内周面に潤滑剤を塗布しつつ装置の小型化を図り易い構成を提供する。
【解決手段】潤滑剤塗布ローラ308は、定着ベルト301の内側に配置され、定着ベルト301を張架する。潤滑剤塗布ローラ308は、付勢バネ309により定着ベルト301に向けて付勢されたテンションローラを兼ねる。潤滑剤塗布ローラ308は、潤滑剤が含浸されたオイル含浸層308bを有し、オイル含浸層308bは、定着ベルト301の内周面に接触する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に担持されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着装置であって、
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材の外周面に当接して回転する回転体と、
前記ベルト部材の内側に前記回転体と前記ベルト部材を介して配置され、前記ベルト部材と前記回転体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成するためのニップ部形成部材と、
前記ベルト部材の内側に配置され、前記ベルト部材を張架する張架ローラと、
前記張架ローラを前記ベルト部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記張架ローラは、潤滑剤が含浸された潤滑剤含浸層を有し、前記潤滑剤含浸層は前記ベルト部材の内周面に接触することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記張架ローラは、第1張架ローラであり、
前記ベルト部材の内側に配置され、前記ベルト部材を張架する第2張架ローラを更に備え、
前記第1張架ローラは、その回転軸線が前記第2張架ローラの回転軸線方向と平行な方向に対して傾動可能に配置され、傾動することで前記第2張架ローラの回転軸線方向に関する前記ベルト部材の位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2張架ローラは、内部に加熱部を有し、前記加熱部により前記第2張架ローラが加熱されることで前記ベルト部材を加熱する加熱ローラであることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記張架ローラは、回転軸部と、前記回転軸部の周囲に配置された前記潤滑剤含浸層と、前記張架ローラの回転軸線方向に関して前記潤滑剤含浸層から外れた位置で、且つ、前記ベルト部材の内周面と対向する位置に配置され、前記潤滑剤含浸層の外径よりも小さい外径を有するローラ部と、を有し、
前記ローラ部及び前記潤滑剤含浸層は、前記ベルト部材の内周面と接触することを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ローラ部は、前記張架ローラの回転軸線方向に関して前記潤滑剤含浸層の両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記張架ローラを前記ベルト部材に当接させていない状態における前記潤滑剤含浸層の外径と、前記ローラ部の外径と差は、0.1mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ニップ部形成部材は、前記ベルト部材の内側に非回転に配置されたパッド部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記潤滑剤含浸層は、不織布で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項9】
前記潤滑剤含浸層は、多孔質材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記張架ローラは芯金部を有し、前記ローラ部は前記芯金部に対して回転可能であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に担持されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置は、記録材に担持されたトナー像を記録材に定着させる定着装置を有する。定着装置としては、無端状のベルト部材と回転体とにより形成されるニップ部において記録材上のトナー像を加熱しながら搬送する構成が従来から知られている。このようなベルト部材を有する定着装置では、従来、ベルト部材の耐久構成上のためにベルト部材の内周面に潤滑剤を塗布するための潤滑剤塗布部材を設けていた(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-217270号公報
【特許文献2】特開2011-123296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来構成では、ベルト部材を張架する張架ローラとは別に潤滑剤塗布部材を設けているため、ベルト部材の内部に配置する部材が多くなり、装置の小型化を図りにくかった。
【0005】
本発明は、ベルト部材の内周面に潤滑剤を塗布しつつ装置の小型化を図り易い構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着装置であって、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の外周面に当接して回転する回転体と、前記ベルト部材の内側に前記回転体と前記ベルト部材を介して配置され、前記ベルト部材と前記回転体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成するためのニップ部形成部材と、前記ベルト部材の内側に配置され、前記ベルト部材を張架する張架ローラと、前記張架ローラを前記ベルト部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記張架ローラは、潤滑剤が含浸された潤滑剤含浸層を有し、前記潤滑剤含浸層は前記ベルト部材の内周面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベルト部材の内周面に潤滑剤を塗布しつつ装置の小型化を図り易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
図2】第1の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
図3】第1の実施形態に係る潤滑剤塗布ローラの概略構成断面図。
図4】第2の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
図5】(a)第2の実施形態に係る潤滑剤塗布ローラの概略構成断面図、(b)(a)のD-D断面図。
図6】(a)第2の実施形態に係る潤滑剤塗布ローラ近傍の斜視図、(b)潤滑剤塗布ローラが傾動する様子を説明する模式図。
図7】第2の実施形態に係る定着ベルトの端面位置を検知する構成を示す斜視図。
図8】(a)比較例における定着ベルトの長手方向の位置と潤滑剤供給量との関係を示すグラフ、(b)実施例における定着ベルトの長手方向の位置と潤滑剤供給量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1ないし図3を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0010】
[画像形成装置]
画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられた4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを後述する中間転写ベルト204の回転方向に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置1は、画像形成装置本体3に接続された画像読取部(原稿読取装置)2又は画像形成装置本体3に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0011】
画像形成装置1は、画像読取部2と画像形成装置本体3とを備える。画像読取部2は、原稿台ガラス21上に置かれた原稿を読み取るもので、光源22から照射された光が原稿で反射し、レンズなどの光学系部材23を介してCCDセンサ24に結像される。このような光学系ユニットは矢印の方向に走査することにより、原稿をライン毎の電気信号データ列に変換する。CCDセンサ24により得られた画像信号は、画像形成装置本体3に送られ、制御部30で後述する各画像形成部に合わせた画像処理がなされる。また、制御部30は画像信号としてプリントサーバなどの外部のホスト機器からの外部入力も受ける。
【0012】
画像形成装置本体3は、複数の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを備え、各画像形成部では、上述の画像信号に基づいて画像形成が行われる。即ち、画像信号は制御部30によりPWM(パルス幅変調制御)されたレーザービームに変換される。露光装置としてのポリゴンスキャナ31は、画像信号に応じたレーザービームを走査する。そして、各画像形成部Pa~Pdの像担持体としての感光ドラム200a~200dにレーザービームが照射される。
【0013】
なお、Paはイエロー色(Y)の画像形成部、Pbはマゼンタ色(M)の画像形成部、Pcはシアン色(C)の画像形成部、Pdはブラック色(Bk)の画像形成部で、それぞれ対応する色の画像を形成する。画像形成部Pa~Pdは略同一なので、以下にYの画像形成部Paの詳細を説明して、他の画像形成部の説明は省略する。画像形成部Paにおいて、感光ドラム200aは、次述するように、画像信号に基づいて表面にトナー画像が形成される。
【0014】
1次帯電器としての帯電ローラ201aは、感光ドラム200aの表面を所定の電位に帯電させて静電潜像形成の準備を施す。ポリゴンスキャナ31からのレーザービームによって、所定の電位に帯電された感光ドラム200aの表面に静電潜像が形成される。現像器202aは、感光ドラム200a上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。1次転写ローラ203aは、中間転写ベルト204の背面から放電を行いトナーと逆極性の一次転写バイアスを印加し、感光ドラム200a上のトナー像を中間転写ベルト204上へ転写する。転写後の感光ドラム200aは、クリーナー207aでその表面を清掃される。
【0015】
また、中間転写ベルト204上のトナー像は次の画像形成部に搬送され、Y、M、C、Bkの順に、順次それぞれの画像形成部にて形成された各色のトナー像が転写され、4色の画像がその表面に形成される。そして、中間転写ベルト204の回転方向最下流にあるBkの画像形成部Pdを通過したトナー像は、2次転写ローラ対205、206で構成される2次転写部に搬送される。そして、2次転写部おいて、中間転写ベルト204上のトナー画像と逆極性の2次転写電界が印加されることにより、記録材に2次転写される。
【0016】
記録材は、カセット9に収容されており、カセット9から給送された記録材は、例えば1対のレジストレーションローラで構成されるレジ部208に搬送され、レジ部208で待機する。その後、レジ部208は、中間転写ベルト204上のトナー像と用紙の位置を合わせるためにタイミングが制御され、記録材を2次転写部に搬送する。
【0017】
2次転写部でトナー像が転写された記録材は、定着装置8に搬送され、定着装置8において、加熱、加圧されることで、記録材に担持されたトナー像が記録材に定着される。定着装置8を通過した記録材は、排出トレイ7に排出される。なお、記録材の両面に画像形成を行う場合には、記録材の第一面(表面)へのトナー像の転写及び定着が終了すると、反転搬送部10を経て記録材の表裏を逆転し、記録材の第二面(裏面)へのトナー像の転写及び定着を行い、排出トレイ7上に積載される。
【0018】
なお、制御部30は、上述のように画像形成装置1全体の制御を行う。また、制御部30は、画像形成装置1が有する操作部4からの入力に基づいて、各種設定などが可能である。このような制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0019】
[定着装置]
次に、図2を用いて本実施形態のおける定着装置8の構成について説明する。図2は、定着装置8の概略構成を模式的に示した断面図である。本実施形態では、無端状のベルトを用いたベルト加熱方式の定着装置を採用している。図2において、X方向は記録材Pの搬送方向、Y方向は記録材Pの搬送方向に交差する(本実施形態では直交する)幅方向、Z方向は後述する加圧ローラ305の加圧方向を示す。これらは互いに直交している。また、幅方向(Y方向)の片側は、画像形成装置1の手前側であり、例えば、操作部4が配置されて、ユーザが操作する側である。一方、幅方向の他側は、画像形成装置1の奥側となる。
【0020】
定着装置8は、無端状で回転可能なベルト部材としての定着ベルト301を有する加熱ユニット300と、定着ベルト301に当接し、定着ベルト301と共にニップ部Nを形成する回転体としての加圧ローラ305を有する。
【0021】
加熱ユニット300は、上述の定着ベルト301と、ニップ部形成部材及びパッド部材としての定着パッド303、張架ローラ及び第1張架ローラとしての潤滑剤塗布ローラ308、第2張架ローラとしての加熱ローラ307を有する。加圧ローラ305は、定着ベルト301の外周面に当接して回転し、定着ベルト301に駆動力を付与する駆動回転体でもある。
【0022】
定着部材及び回転体としての定着ベルト301は、熱伝導性や耐熱性等を有しており、薄肉の円筒形状である。本実施形態においては、基層、基層の外周に弾性層、その外周に離型層を形成した3層構造としている。そして、基層は厚さ80μmで材質はポリイミド樹脂(PI)を、弾性層は厚さ300μmでシリコーンゴムを、離型層は厚さ30μmでフッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。このような定着ベルト301は、定着パッド303、加熱ローラ307、潤滑剤塗布ローラ308によって張架される。
【0023】
定着パッド303は、定着ベルト301の内側に、定着ベルト301を挟んで加圧ローラ305と対向するように非回転に配置される。定着パッド303は、定着ベルト301と加圧ローラ305との間で記録材を挟持搬送するニップ部Nを形成する。本実施形態では、定着パッド303は、定着ベルト301の幅方向(定着ベルト301の回転方向と交差する長手方向、加熱ローラ307の回転軸線方向)に沿って長い、略板状の部材である。定着パッド303が定着ベルト301を挟んで加圧ローラ305に押圧されることで、ニップ部Nが形成される。定着パッド303の材質は、LCP(液晶ポリマー)樹脂を用いている。
【0024】
定着パッド303は、定着ベルト301の内側に配置された支持部材としてのステイ302により支持されている。即ち、ステイ302は、定着パッド303の加圧ローラ305と反対側に配置され、定着パッド303を支持する。このようなステイ302は、定着ベルト301の長手方向に沿って長い剛性を有する補強部材であり、定着パッド303に当接して、定着パッド303をバックアップする。即ち、ステイ302は、定着パッド303が加圧ローラ305から押圧された際に、定着パッド303に強度を持たせてニップ部Nにおける加圧力を確保するものである。
【0025】
定着パッド303と定着ベルト301の間には、不図示の摺動部材を介在させている。また、定着ベルト301の内周面には、予め潤滑剤を塗布しており、定着ベルト301は、摺動部材に覆われた定着パッド303に対して滑らかに摺動するようになっている。潤滑材としては、オイルを用いている。このオイルは、耐熱性などの観点からシリコーンオイルが好適である。また、オイルは、使用条件に応じて種々の粘度のものが使用されるが、粘度が高すぎるものは塗布時の流動性が劣るため、通常30,000cSt以下のものが好ましい。かかるオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
加熱ローラ307は、定着ベルト301の内側に配置され、定着パッド303及び潤滑剤塗布ローラ308と共に定着ベルト301を張架する。加熱ローラ307は、アルミニウムやステンレスなどの金属により円筒状に形成され、その内部に定着ベルト301を加熱するための加熱部としてのハロゲンヒータ306が配設されている。そして、加熱ローラ307は、ハロゲンヒータ306により所定の温度まで加熱される。
【0027】
本実施形態では、加熱ローラ307は、例えば厚み1mmのステンレス製のパイプにより形成されている。また、ハロゲンヒータ306は、1本でも良いし、複数本設けられていても良い。なお、加熱部は、ハロゲンヒータに限らず、例えばカーボンヒータなど加熱ローラ307を加熱可能な他のヒータであっても良い。定着ベルト301は、ハロゲンヒータ306により加熱された加熱ローラ307によって加熱され、不図示のサーミスタによる温度検知に基づき、記録材の種類に応じた所定の目標温度に制御される。
【0028】
潤滑剤塗布ローラ308は、後述するように、潤滑剤が含浸されたものであり、定着ベルト301の内側に配置され、定着パッド303及び加熱ローラ307と共に定着ベルト301を張架して、定着ベルト301に従動回転する。また、本実施形態の場合、潤滑剤塗布ローラ308は、加熱ユニット300のフレーム320によって支持された付勢部材としての付勢バネ309によって付勢されており、定着ベルト301に所定の張力を与えるテンションローラでもある。
【0029】
加圧ローラ305は、定着ベルト301の外周面に当接して回転し、定着ベルト301に駆動力を付与する。本実施形態では、加圧ローラ305は、軸の外周に弾性層を、その外周に離型性層を形成したローラである。また、軸は直径72mmのステンレスを、弾性層は厚さ8mmの導電シリコーンゴムを、離型性層は厚さ100μmでフッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)をそれぞれ用いている。加圧ローラ305は、定着装置8の定着フレーム(不図示)によって回転自在に支持されており、片端部にはギアが固定され、ギアを介して加圧ローラ駆動源としてのモータM1に接続されて、回転駆動される。
【0030】
このように構成される定着装置8では、定着ベルト301と加圧ローラ305との間に形成されるニップ部Nにおいて、トナー像を担持した記録材Pを挟持搬送しながらトナー像を加熱する。そして、記録材Pにトナー像を定着させる。よって、定着装置8は、熱や圧力を加える機能と、記録材Pを搬送する機能の両立が必要である。加圧ローラ305は、不図示の駆動源により定着ベルト301を介して定着パッド303に対して加圧される。本実施形態では、画像形成時のニップ部Nにおける加圧力(NF)は1600Nであり、ニップ部NのX方向(搬送方向)の長さは24.5mm、Y方向(幅方向)の長さは326mmとなるよう設定した。
【0031】
また、ニップ部Nの記録材Pの搬送方向下流には、ニップ部Nを通過した記録材Pを定着装置8の外に排出するための排出ユニット350が配されている。排出ユニット350には、分離板401と、排出ローラ対400aと、下分離ガイド400bが配置されている。分離板401は、ニップ部Nの記録材の搬送方向下流側、且つ、ニップ部Nよりも鉛直方向上方に配置され、先端が定着ベルト301のニップ部Nの近傍付近に近接対向している。そして、ニップ部Nを通過した後の記録材Pを定着ベルト301から剥離する。
【0032】
下分離ガイド400bは、ニップ部Nの記録材の搬送方向下流側、且つ、ニップ部Nよりも鉛直方向下方に配置され、先端が加圧ローラ305のニップ部Nの近傍付近に近接対向している。そして、下分離ガイド400bは、記録材Pが加圧ローラ305に張り付いた場合に、この記録材Pを加圧ローラ305から剥離する。また、下分離ガイド400bは、ニップ部Nから排出された記録材Pの下面を支持して、この記録材Pを排出ローラ40aに案内する。排出ローラ対400aは、ニップ部Nから排出された記録材Pを定着装置8の外に排出する。本実施形態では、排出ローラ対400aは、ニップ部Nから約40mm搬送方向下流側に配置されている。
【0033】
また、定着装置8のニップ部Nの搬送方向上流には、記録材Pをニップ部Nに案内するためのガイド部94、及び、ニップ部Nの直前で記録材Pを検知するための検知センサ95が配置されている。制御部30(図1)は、検知センサ95により、記録材Pがニップ部Nに進入するタイミングを検知している。
【0034】
[潤滑剤塗布ローラ]
次に、潤滑剤塗布ローラ308について、図3を用いて説明する。図3は、潤滑剤塗布ローラ(オイル塗布テンションローラ)308を長手方向に切断した概略断面図である。潤滑剤塗布ローラ308は、回転軸部としての芯金部308aと、芯金部308aの周囲に配置された潤滑剤含浸層としてのオイル含浸層308bとを有する。芯金部308aは、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などを材料とするローラ軸部である。
【0035】
オイル含浸層308bは、潤滑剤が含浸された層であり、潤滑剤塗布ローラ308の芯金部308aの周囲に設けられており、定着ベルト301の内周面に接触する。上述した定着ベルト301の内周面に予め塗布している潤滑剤(本実施形態においては、シリコーンオイル)と同一のものを含浸させた不織布を、芯金部308aに対して巻回して形成している。但し、オイル含浸層308bとしてはこれに限られるものではない。オイル含浸層308bは、例えば、スポンジ、多孔質セラミックス体などの有機質または無機質の多孔質材料、布、ポリエステル繊維などの有機質または無機質の繊維の織布などでも問題はない。
【0036】
本実施形態の場合、潤滑剤塗布ローラ308は、芯金部308aは、後述する軸受310に支持された軸部308a1と、軸部308a1の長手方向(回転軸線方向)中央寄りに設けられた本体部308a2とで構成されている。本体部308a2は、軸部308a1と一体に形成されていても良いし、別体の円筒部材を軸部308a1に固定したものであっても良い。オイル含浸層308bは、例えば、シリコーンオイルを含侵した不織布を本体部308a2に複数回巻き付けたものである。
【0037】
また、潤滑剤塗布ローラ308は、上述したようにテンションローラであり、定着ベルト301の内周面に配置されている。そして、芯金部308aの長手方向(回転軸線方向)両端部がそれぞれ軸受310により回転自在に支持されている。付勢バネ309は、両端部の軸受310を介して潤滑剤塗布ローラ308を定着ベルト301に向けて付勢している。本実施形態では、付勢バネ309により潤滑剤塗布ローラ308を定着ベルト301に対して60N以上100N以下程度で付勢して、定着ベルト301にテンションを付与している。
【0038】
潤滑剤塗布ローラ308は、定着ベルト301に対して、図2に示すように、オイル塗布領域Tにて一定の巻き付け角度を有して接触している。本実施形態では、巻きつけ角度を100°程度、定着ベルト301と潤滑剤塗布ローラ308の接触長さを15mm程度確保している。
【0039】
ここで、定着ベルト301にテンションを付与するテンションローラとは別に、例えば、テンションが張られたベルトの平面部の内面から潤滑剤塗布部材を当接させると、潤滑剤塗布部材をベルトの内部に配置するためのスペースを確保する必要があり、装置の小型化を図りにくい。
【0040】
これに対して本実施形態の構成によれば、潤滑剤塗布ローラ308がテンションローラと潤滑剤塗布部材を兼ねているため、ベルト内部の省スペース化を図ることができる。更に、潤滑剤塗布ローラ308のオイル含浸層308bが十分な付勢力と接触面積でもって定着ベルト301の内周面に当接するため、安定した潤滑剤塗布を実現することができる。この結果、定着ベルト301の内周面に潤滑剤を塗布しつつ装置の小型化を図り易くできる。
【0041】
[ローラ部]
また、本実施形態では、潤滑剤塗布ローラ308は、図3に示すように、外周面が円筒面であるローラ部311を有する。ローラ部311は、潤滑剤塗布ローラ308の回転軸線方向に関してオイル含浸層308bから外れた位置で、且つ、定着ベルト301の内周面と対向する位置に配置され、オイル含浸層308bの外径よりも小さい外径を有する。そして、ローラ部311及びオイル含浸層308bは、定着ベルト301の内周面に接触する。本実施形態におけるローラ部311は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などを材料とする円筒状形状である。また、ローラ部311は、潤滑剤塗布ローラ308の回転軸線方向に関してオイル含浸層308bの両側にそれぞれ配置されている。
【0042】
具体的には、ローラ部311は、潤滑剤塗布ローラ308の支持部材である芯金部308aとは別体で、芯金部308aに嵌合支持されている。また、ローラ部311は、潤滑剤塗布ローラ308の回転軸線方向に関してオイル含浸層308bの両側にそれぞれ配置されている。また、ローラ部311は、潤滑剤塗布ローラ308の回転軸線方向に関して、軸受310とオイル含浸層308bの間に配置されている。本実施形態では、ローラ部311は、オイル含浸層308bの端部に接触するように配置されている。
【0043】
ローラ部311の外径は、潤滑剤塗布ローラ308が付勢バネ309により付勢されて定着ベルト301の内周面に接触し、オイル含浸層308bが弾性変形している多状態で、オイル含浸層308bの外径よりも小さい。なお、潤滑剤塗布ローラ308が定着ベルト301に接触していない自由状態のオイル含浸層308bの外径よりも、ローラ部311の外径は小さい。
【0044】
また、潤滑剤塗布ローラ308を定着ベルト301に当接させていない状態におけるオイル含浸層308bの外径と、ローラ部311の外径と差は、0.1mm以上1.0mm以下としている。なお、本実施形態では、ローラ部311はアルミニウム、鉄、ステンレス鋼などとしたが、その材質を限定するものではない。また、ローラ部311は芯金部308aと別部材としたが、ローラ部311と芯金部308aとは一体であってもよい。定着ベルト301の回転に対して従動して回転できる構成であれば、ローラ部311と芯金部308aとは別体であろうが一体であろうがどちらでもよい。
【0045】
なお、ローラ部311と芯金部308aとが別体の場合、ローラ部311を芯金部308aから取り外すことができる。定着装置8を使用し続けるとオイルは枯渇する。そのためオイル含浸層308bは高頻度で交換しなければならない。ローラ部311を芯金部308aから取り外すことができる構成の場合、オイル含浸層308bを容易に交換できるためローラ部311と芯金部308aとが別体のほうが好ましい。ローラ部311と芯金部308aとが別体の場合、芯金部308aに対してローラ部311は回転可能な構成となる。
【0046】
このように潤滑剤塗布ローラ308がローラ部311を有することで、オイル含浸層308bとローラ部311の外径の差分だけオイル含浸層308bが、付勢バネ309により潤滑剤塗布ローラ308が付勢される付勢力によって変形し、オイル含浸層308bからオイルが定着ベルト301に染み出すことによって潤滑剤が塗布される。
【0047】
このような本実施形態の場合、省スペース化の実現のために、潤滑剤塗布ローラ308がテンションローラと潤滑剤塗布部材を兼ねる構成であったとしても、定着ベルト301のテンションにより潤滑剤塗布ローラ308が付勢されたことによるオイル含浸層308bの変形量を端部に設けたローラ部311の外径までに規制することができる。このため、潤滑剤塗布ローラ308にかかるテンションが高くても、オイル含浸層308bからの潤滑剤の染み出しを抑制することができ、長期に渡って、潤滑剤塗布ローラ308による潤滑剤の塗布を行える。
【0048】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、図4ないし図8を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、潤滑剤塗布ローラ308がテンションローラである場合について説明した。これに対して本実施形態では、潤滑剤塗布ローラ308Aが、テンションローラに加えてステアリングローラを兼ねる構成としている。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成については同一の符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0049】
本実施形態の定着装置8Aにおける潤滑剤塗布ローラ308Aは、その回転軸線が加熱ローラ307の回転軸線方向(幅方向、長手方向)と平行な方向に対して傾動可能に配置されている。そして、潤滑剤塗布ローラ308Aが傾動することで、加熱ローラ307の回転軸線方向に関する定着ベルト301の位置(寄り位置)を制御する。即ち、潤滑剤塗布ローラ308Aは、潤滑剤塗布ローラ308Aの回転軸線方向(長手方向)中央或いは片端部に回動中心を有し、この回動中心を中心として揺動することで、加熱ローラ307の長手方向に対して傾動する。これにより、定着ベルト301の長手方向の一方側と他方側とでテンション差を発生させ、定着ベルト301を長手方向に移動させる。
【0050】
定着ベルト301は、張架するローラの外径精度や各ローラ間のアライメント精度などによって、回転中に何れかの端部に寄ってしまう。このため、ステアリングローラを兼ねる潤滑剤塗布ローラ308Aによりこのような寄りを制御している。なお、潤滑剤塗布ローラ308Aは、モータなどの駆動源により揺動させても良いし、自動調心により揺動する構成であっても良い。
【0051】
本実施形態の潤滑剤塗布ローラ308Aについて、より詳しく説明する。図4に示すように、潤滑剤塗布ローラ308Aは、定着ベルト301の内部に配置されている。潤滑剤塗布ローラ308Aは、定着ベルト301を張架するとともに、ステアリング部321により支持される。ステアリング部321は、回動軸322を支点として加熱ユニット300Aのフレーム320に対して回動することで、潤滑剤塗布ローラ308Aは定着ベルト301への当接角度を変化可能に支持されている。
【0052】
また、潤滑剤塗布ローラ308Aの両端部は、ステアリング部321に支持された付勢バネ309Aによって、定着ベルト301に対して片側50Nで付勢されており、定着ベルト301に所定の張力を与えるテンションローラの役割も持っている。即ち、本実施形態の潤滑剤塗布ローラ308Aは、ステリングローラとテンションローラの両方の機能を有する。
【0053】
図5(a)、(b)に、潤滑剤塗布ローラ308Aの断面図を示す。図5(a)は、潤滑剤塗布ローラ308Aを回転軸線方向に直交するに切断した断面図で、図5(b)は、潤滑剤塗布ローラ308Aを回転軸線方向に沿った方向に切断した断面図である。潤滑剤塗布ローラ308Aは、回転軸部としての円筒部材308cと、円筒部材308cの周囲に配置された潤滑剤含浸層としてのオイル含浸層308dとを有する。
【0054】
本実施形態の場合、潤滑剤塗布ローラ308Aは、回転支持軸308eの周囲に軸受310aを介して支持されている。例えば、円筒部材308cは、例えば、外径20mm、厚み1mmのステンレス製パイプである。また、オイル含浸層308dは、例えば、シリコーンオイルを含侵した厚さ100μmの不織布を円筒部材308cに複数回巻き付けたものである。オイル含浸層308dは、例えば、シリコーンオイルを4g含浸している。
【0055】
また、図5(b)に示すように、潤滑剤塗布ローラ308Aの長手方向(回転軸線方向)両端部がそれぞれ軸受310aにより回転自在に支持されている。即ち、回転支持軸308eの長手方向両端部には軸受310aが配置され、円筒部材308cが両端部の軸受310aを介して回転支持軸308eにより回転可能に支持されている。このため、潤滑剤塗布ローラ308Aは、回転支持軸308eに軸受310aを介して支持された状態で、定着ベルト301に対して従動回転する。
【0056】
[ステアリング動作]
潤滑剤塗布ローラ308Aのステアリング動作について、図6(a)、(b)を用いて説明する。図6(a)は、定着ベルト301を張架した潤滑剤塗布ローラ308Aの近傍の斜視図、図6(b)bは、潤滑剤塗布ローラ308Aが傾動する様子を定着ベルト301と共に示す模式図である。
【0057】
潤滑剤塗布ローラ308Aは、上述したように加熱ユニット300Aのフレーム320に対してステアリング部321を介して回動可能に支持されている。ステアリング部321は、回転支持軸308eを介して潤滑剤塗布ローラ308Aを支持するステアリング本体部323と、ステアリング本体部323の端部に設けられたステアリング軸324と、ステアリングアーム325とを有する。ステアリングアーム325は、モータM2により駆動され、ステアリング軸324を、図6(a)、(b)の矢印Aの向きに揺動させる。これにより、ステアリング軸324を介してステアリング本体部323が回動軸322(図4)を中心に回動し、潤滑剤塗布ローラ308Aが定着ベルト301に対して角度を変えることが可能になっている。
【0058】
このように潤滑剤塗布ローラ308Aの角度が変わることで、これに張架された定着ベルト301は、幅方向(長手方向)Wに沿って移動する。図6(a)、(b)の矢印A+方向に潤滑剤塗布ローラ308Aが傾動した場合は、定着ベルト301を定着装置8Aの前側である図6(a)、(b)の矢印W-方向に移動させる(ベルト前寄り制御)。一方、図6(a)、(b)の矢印A-方向に潤滑剤塗布ローラ308Aが傾動した場合は、定着ベルト301を定着装置8Aの奥側である図6(a)、(b)の矢印W+方向に移動させる(ベルト奥寄り制御)。この動作を繰り返すことで、定着ベルト301は、幅方向Wについて所定の領域内を往復運動する。定着ベルト301の幅方向Wの位置、即ち、寄り位置は、次述する寄り位置検知部330により検知される。
【0059】
[定着ベルトの寄り位置検知]
次に、寄り位置検知部330について図7を用いて説明する。寄り位置検知部330は、ベルト位置検知アーム331、ベルト位置検知フラグ332、付勢部333、センサ部340を有する。ベルト位置検知アーム331は、回動中心穴331aを回動軸334に嵌合した状態で回転自在に保持され、ベルト位置検知アーム331に連動して揺動するフラグ部材としてのベルト位置検知フラグ332が設けられている。ベルト位置検知フラグ332は、ベルト位置検知フラグ332の回動軸上に設けられた付勢部333によって図7の矢印C+方向に回動するように付勢されている。これによって、ベルト位置検知アーム331は、図7の矢印B+の向きに回転するよう付勢されている。ベルト位置検知アーム331に設けられた検知部331bは、この付勢力により定着ベルト301の幅方向Wにおける移動を阻害しない程度の軽圧で、定着ベルト301の端面に接触している。本実施形態では、この圧を1gf程度としている。
【0060】
ベルト位置検知フラグ332は、回動中心穴332aを有しており、回動軸335に嵌合した状態で回転自在に保持されている。また、ベルト位置検知フラグ332は、自身に形成された長丸穴332bと、ベルト位置検知アーム331に形成された軸331cとを介して、ベルト位置検知アーム331に連動して揺動する。
【0061】
センサ部340は、複数の光学式センサ341を有する。ベルト位置検知フラグ332は、遮光部332cを有しており、光学式センサ341は、遮光部332cの近傍に複数設けられている。ベルト位置検知フラグ332の姿勢角度が変化して、遮光部332cが移動すると、光学式センサ341のそれぞれが返す信号のオンオフも変化するようになっており、その信号の組み合わせによって、定着ベルト301の位置を検知することが可能となっている。上述したステアリングアーム325のモータM2の制御と、ベルト位置検知フラグ3332を用いた寄り位置検知部330とを組み合わせることで、定着ベルト301の寄り制御を行っている。
【0062】
[潤滑剤塗布ローラをステリングローラとした効果]
次に、潤滑剤塗布ローラ308Aをステリングローラとした本実施形態の効果について、図8(a)、(b)を用いて説明する。ここでは、比較例を、定着ベルト301の寄り制御を行うステリングローラとは別に、潤滑剤塗布ローラを定着ベルト301の内周面に当接させる構成としている。一方、実施例を、上述のように、潤滑剤塗布ローラ308Aをステリングローラとした構成としている。比較例と実施例のその他の構成は同じとしている。
【0063】
図8(a)は、比較例における定着ベルト301の長手方向の位置と潤滑剤供給量との関係を示すグラフであり、図8(b)は、実施例における定着ベルト301の長手方向の位置と潤滑剤供給量との関係を示すグラフである。図8(a)、(b)の横軸は定着ベルト301の長手方向位置、縦軸は潤滑剤供給量を示している。
【0064】
比較例では、潤滑剤塗布ローラの定着ベルト301への加圧力が、装置の前側と奥側で差がある場合(例えば、潤滑剤塗布ローラの加圧力 前側:55N、奥側:45Nとした場合)、常に前側の方が定着ベルト301に対する当接圧が大きくなる。このために、図8(a)に示すように、前側の潤滑剤の供給量は奥側に対して常に多い状態になり、定着ベルト301の内周面の長手方向で潤滑剤の供給量にムラが生じる。
【0065】
一方、本実施例の構成では、潤滑剤塗布ローラ308Aの定着ベルト301への加圧力が装置の前側と奥側で差がある場合(例として、潤滑剤塗布ローラ308Aの加圧力 前側:55N、奥側:45Nとした場合)においても、定着ベルト301の寄り制御を行うため、定着ベルト301の内周面の長手方向で潤滑剤の供給量にムラが生じることを抑制できる。
【0066】
即ち、寄り制御により潤滑剤塗布ローラ308Aが揺動し、潤滑剤塗布ローラ308Aの定着ベルト301に対する姿勢角度が変化する。このため、図6(a)、(b)のように、定着ベルト301を前側に寄り制御するために矢印A+方向に潤滑剤塗布ローラ308Aが傾動した場合は、定着ベルト301の前側の当接圧の方が大きくなり、前側の潤滑剤供給量の方が多くなる(図8(b)の実線)。一方、定着ベルト301を奥側に寄り制御するために矢印A-方向に潤滑剤塗布ローラ308Aが傾動した場合は、定着ベルト301の奥側の当接圧の方が大きくなり、奥側の潤滑剤供給量の方が多くなる(図8(b)の破線)。これにより、定着ベルト301の内周面の前側と奥側の潤滑剤供給量の差を軽減することが可能となる。
【0067】
また、潤滑剤塗布ローラ308Aを用いて定着ベルト301の寄り制御を行うことで、定着ベルト301の内周面への潤滑剤供給と、定着ベルト301の寄り制御を省スペースで対応することが可能となる。よって、本実施形態の構成によれば、定着ベルト301の内周面への安定した潤滑剤供給及び寄り制御を可能にするとともに、定着ベルト301の小型化と長寿命化の両立を可能となる。
【0068】
更に、本実施形態の構成によれば、潤滑剤塗布ローラ308Aがステリングローラ、テンションローラ及び潤滑剤塗布部材を兼ねているため、ベルト内部の省スペース化を図ることができる。また、潤滑剤塗布ローラ308Aのオイル含浸層308dが十分な付勢力と接触面積でもって定着ベルト301の内周面に当接するため、安定した潤滑剤塗布を実現することができる。この結果、定着ベルト301の内周面に潤滑剤を塗布しつつ装置の小型化を図り易くできる。
【0069】
なお、本実施形態の場合も、第1の実施形態と同様に、潤滑剤塗布ローラ308Aの回転軸線方向に関してオイル含浸層308dから外れた位置で、且つ、定着ベルト301の内周面と対向する位置に配置され、オイル含浸層308dの外径よりも小さい外径を有するローラ部を設けても良い。
【0070】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、加熱ローラに定着ベルトを加熱するための加熱部としてのハロゲンヒータを設けた構成について説明した。但し、加熱部は、加熱ローラに設けずに、他の張架部材に設けても良い。また、パッド部材に設けても良い。例えば、パッド部材の定着ベルト側にセラミックヒータなどの板状の発熱部材を設けても良い。また、定着ベルトを電磁誘導(IH)により加熱する構成としても良い。また、上述の各実施形態において、ローラの内部に配置した加熱部の代わりに、別の加熱部材を外部からベルト又はローラに当接させて加熱する外部加熱方式を採用しても良い。
【0071】
また、上述の各実施形態では、駆動回転体として加圧ローラを用いた構成について説明した。但し、駆動回転体は、複数の張架ローラにより張架され、何れかの張架ローラにより駆動される無端状のベルトであっても良い。また、上述の各実施形態では、ニップ部を形成するために、駆動回転体としての加圧ローラをベルトに対して加圧しているが、ベルトを駆動回転体に加圧する構成であっても良い。更に、上述の各実施形態では、ニップ部形成部材として定着パッドを用いた構成について説明したが、ニップ部形成部材はローラであっても良い。
【符号の説明】
【0072】
8、8A・・・定着装置
301・・・定着ベルト(ベルト部材)
303・・・定着パッド(ニップ部形成部材)
305・・・加圧ローラ(回転体)
306・・・ハロゲンヒータ(加熱部)
307・・・加熱ローラ(第2張架ローラ)
308、308A・・・潤滑剤塗布ローラ(張架ローラ、第1張架ローラ)
308a・・・芯金部(回転軸部)
308b・・・オイル含浸層(潤滑剤含浸層)
308c・・・円筒部材(回転軸部)
308d・・・オイル含浸層(潤滑剤含浸層)
309、309A・・・付勢バネ(付勢部材)
311・・・ローラ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8