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特開2024-124964異物除去方法、基板処理システム、および物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124964
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】異物除去方法、基板処理システム、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032985
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】宅原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】東 尚史
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋介
(72)【発明者】
【氏名】伊福 俊博
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】 大きな異物が基板上に付着していたとしても、異物除去ができる手法を提供することを目的とする。
【解決手段】 基板に対して第1の異物除去処理を行った後に、第1の異物除去処理とは異なる第2の異物除去処理を行うか、あるいは基板に対して第1の異物除去処理を行わずに第2の異物除去処理を行う異物除去工程、を行う異物除去方法であって、前記第2の異物除去処理は、前記基板上の硬化性組成物に、部材を接触させる接触工程と、前記基板上の硬化性組成物と前記部材とを接触させた状態で硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記硬化性組成物が硬化した後に、前記基板から前記硬化性組成物とともに前記部材を分離させる分離工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の異物除去方法であって、
前記基板に対して第1の異物除去処理を行った後に、前記第1の異物除去処理とは異なる第2の異物除去処理を行うか、あるいは前記基板に対して前記第1の異物除去処理を行わずに前記第2の異物除去処理を行う異物除去工程、を有し、
前記第2の異物除去処理は、
前記基板上の硬化性組成物に、部材を接触させる接触工程と、
前記基板上の硬化性組成物と前記部材とを接触させた状態で硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化性組成物が硬化した後に、前記基板から前記硬化性組成物とともに前記部材を分離させる分離工程と、を有することを特徴とする異物除去方法。
【請求項2】
基板の情報を取得する取得工程と、
前記取得された情報に基づいて第1の異物除去処理を行うかを判断する判断工程と、をさらに有し、
前記異物除去工程は、前記判断工程で前記第1の異物除去処理を行うと判断された場合には、前記基板に対して前記第1の異物除去処理を行った後に、前記第1の異物除去処理とは異なる第2の異物除去処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の異物除去方法。
【請求項3】
前記取得工程は基板上の異物情報を取得し、
前記判断工程は、前記取得された異物情報に基づいて、前記第1の異物除去処理を行うかを判断することを特徴とする請求項2に記載の異物除去方法。
【請求項4】
前記判断工程は、前記取得された異物情報に基づいて所定サイズ以上の異物が存在すると判断された場合に、第1の異物除去処理が必ようであると判断することを特徴とする請求項3に記載の異物除去方法。
【請求項5】
前記基板上には密着層が設けられており、前記硬化性組成物は前記密着層の上に塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の異物除去方法。
【請求項6】
前記密着層は、有機材料層であることを特徴とする請求項5に記載の異物除去方法。
【請求項7】
前記第1の異物除去処理は、流体力を利用した洗浄方法、静電気力を利用した洗浄方法、粘着力を利用した洗浄方法の、少なくとも1つの洗浄方法を含むことを特徴とする請求項1に記載の異物除去方法。
【請求項8】
第1の異物除去処理を行う第1の異物除去装置と、
前記第1の異物除去処理とは異なる、基板上の硬化性組成物に部材を接触させた状態で前記硬化性組成物を硬化させて、前記硬化性組成物とともに前記部材を前記基板から分離することで当該基板上の異物を除去する第2の異物除去処理を行う第2の異物除去装置と、
前記第1の異物除去装置と前記第2の異物除去処理とを制御する制御部と、を有する基板処理システムであって、
前記制御部は、前記基板に対して前記第1の異物除去装置で前記第1の異物除去処理を行った後に、前記第2の異物除去装置で前記第2の異物除去処理を行うか、あるいは前記基板に対して前記第1の異物除去装置で前記第1の異物除去処理を行わずに前記第2の異物除去装置で第2の異物除去処理を行うように制御する
ことを特徴とする基板処理システム。
【請求項9】
前記制御部は、これから処理する基板の情報に基づいて前記第1の異物除去処理を行うかを判断し、前記第1の異物除去処理を行うと判断した場合には、前記基板に対して前記第1の異物除去装置で前記第1の異物除去処理を行った後に、前記第2の異物除去装置で前記第2の異物除去処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の異物除去方法で異物が除去された基板を設ける工程と、
前記基板を加工する工程と、を含み、
前記加工された基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去方法、基板処理システム、および物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができるインプリント技術が注目されている。インプリント技術は、基板上に未硬化のインプリント材を供給(塗布)し、かかるインプリント材とモールド(型)とを接触させて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応するインプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工技術である。
【0003】
インプリント技術において、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上のショット領域に供給されたインプリント材とモールドとを接触させた状態で光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する方法である。
【0004】
このようなインプリント技術では、基板上に異物が付着している状態で型と基板上のインプリント材を接触させると、所望の形状の構造物を形成することができないばかりか型や基板を破損してしまう可能性がある。そのため、基板上に付着した異物を除去してからインプリント処理を行う必要がある。
【0005】
特許文献1には、基板の凹凸パターン面上にある異物に対して、パターン面全体を覆うように樹脂を塗布し、次に平坦化部材を樹脂に押し付け、その状態で樹脂を硬化させる。その後、基板から異物を含んだ樹脂を剥離させる方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、モールドのパターン上に異物が在った際に、パーティクル除去膜が構成され、さらに、その上にインプリント材が塗布された基板に、モールドを押し付けてから、光を照射してインプリント材を硬化させる。その後、モールドを基板から引き離すことで、モールド上に在った異物を、基板のインプリント材に取り込むという、モールド上の異物を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5982996号公報
【特許文献2】特許第5121549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は特許文献1及び2に記載のような異物除去方法を、基板上の異物除去に適用することを検討している。しかしながら比較的大きな異物が基板上に付着している場合、上述の異物除去方法では除去処理の際に、基板上に設けた材料層や、異物除去処理に用いる型が異物によって破損してしまう可能性がある。異物を包含する樹脂を厚くすることで型を破損することなく大きな異物を除去することもできるが、樹脂の硬化収縮により大きな応力が生じ、基板上に材料層が既に設けられているような場合には、当該材料層を破損してしまうことも懸念される。
【0009】
上記課題を鑑み本発明は、大きな異物が基板上に付着していたとしても、異物除去ができる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を鑑み、本発明の異物除去方法は、前記基板に対して前記第1の異物除去処理を行った後に、第1の異物除去処理とは異なる第2の異物除去処理を行うか、あるいは前記基板に対して前記第1の異物除去処理を行わずに前記第2の異物除去処理を行う異物除去工程、を有し、前記第2の異物除去処理は、前記基板上の硬化性組成物に、部材を接触させる接触工程と、前記基板上の硬化性組成物と前記部材とを接触させた状態で硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記硬化性組成物が硬化した後に、前記基板から前記硬化性組成物とともに前記部材を分離させる分離工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大きな異物が基板上に付着していたとしても、異物除去ができる有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基板処理システムの全体構成を示す概略図である。
図2】異物除去装置の構成を示す概略図である。
図3】異物除去処理の流れを説明するフローチャートである。
図4】異物除去処理の流れを説明するフローチャートである。
図5】異物除去処理を実行した際の様子を説明する概略図である。
図6】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
本実施形態の各図では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。
【0015】
<第1の実施形態>
本実施形態ではインプリント装置14でインプリント処理を行う基板に対して、基板上の異物を除去する異物除去装置を備えた基板処理システム100を例に以下説明を行う。
【0016】
図1(a)は、基板処理システム100の構成を示す概略図である。基板処理システム100には、異物除去を行う洗浄装置11(第1の異物除去装置)とインプリント方式の異物除去装置10(第2の異物除去装置)とインプリント装置14と基板搬送部13とこれらを制御する制御部17とが設けられている。図2は、異物除去装置10の構成を示す概略図である。
【0017】
以下の説明では図1(a)のようにインプリント装置14を備えた基板処理システム100について説明する。しかし、図1(b)のように基板処理システム100は洗浄装置11および異物除去装置10とで構成し、インプリント装置14以外の処理装置に用いられる基板を洗浄する場合に本発明の構成を適用してもよい。具体的には半導体デバイスなどの物品の製造工程で用いることができ、物品に不具合が発生するのを防止するために基板上に付着した異物を除去する異物除去処理を行うために用いることができる。また基板処理システム100の各装置は図1の例では基板汚染の観点からインライン化してあるが、スタンドアロンでも構わない。
【0018】
基板搬送部13は、基板処理システム100の洗浄装置11と異物除去装置10とインプリント装置14との間で基板を移動するために用いられる。制御部17は、基板処理システム100の各部を制御する。制御部17は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータやメモリ、または、これらの全部若しくは一部の組み合わせによって構成されうる。
【0019】
洗浄装置11(第1の異物除去装置)は、半導体基板の洗浄方法として一般的に用いられている基板上の異物を物理的に除去する洗浄を用いることができる。例えば、流体力を利用した洗浄、静電気力を利用した洗浄、粘着力を利用した洗浄の少なくとも1つを用いることができる。より具体的には、メガソニック洗浄や二流体洗浄、静電気を除去して異物を除去する洗浄、粘着テープを用いた洗浄、粘着ローラーを用いた洗浄などがあるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では二流体洗浄を用いた洗浄装置11を用いて説明する。このような物理的に異物を除去する洗浄手法は、基板上の小さな異物を除去することは困難だが比較的大きな異物を除去するのに適している。
【0020】
インプリント装置14は、基板上に未硬化のインプリント材を供給(塗布)し、かかるインプリント材とモールド(型)とを接触させて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応するインプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工装置である。
【0021】
図2はインプリント方式の異物除去装置10(第2の異物除去装置)を示す概略図である。異物除去装置10で行われる異物除去処理は、以下の工程を含みうる。
(a)基板上に硬化性組成物などの樹脂層を塗布する塗布工程。
(b)基板上に供給された樹脂層とテンプレートとを接触させる押印工程。
(c)樹脂層に硬化用のエネルギを与えることにより樹脂層を硬化させる硬化工程。
(d)基板から、硬化した樹脂層をテンプレートとともに引き離す分離工程。
【0022】
異物除去処理により、基板上の異物は硬化した樹脂層に内包され、樹脂層とともに基板から除去される。異物除去材として用いられる樹脂層は、硬化用のエネルギが与えられることにより硬化する硬化組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギとしては、例えば、熱や電磁波が用いることができる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いることができる。以下、硬化反応を起こす光を樹脂層に照射することを露光と呼ぶ。
【0023】
本実施形態では硬化性組成物として、光の照射により硬化する光硬化成組成物を用いて説明を行う。光硬化性樹脂には、複数の重合性化合物と、所定の波長に反応して重合因子(ラジカル)を発生する光重合開始剤が少なくとも配合されている。その他の添加剤として増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分などを適宜配合されている。重合性化合物とは、光重合開始剤から発生した重合因子(ラジカル等)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。このような重合性化合物として、例えばラジカル重合性化合物が挙げられ、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物、すなわち(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。硬化性組成物には、その他に、非重合性化合物、または溶剤を含有させることができる。非重合成化合物としては、増感剤、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、消泡剤などを含有させることができる。異物除去に用いる硬化性組成物は、インプリント処理で用いるインプリント材と同じ種類の材料を用いても良いし、異なる種類の材料を用いても良い。
【0024】
図2に示す異物除去装置10は、基板1を保持する基板保持部23と、テンプレート7(部材、型とも称する)を保持するテンプレート保持部24を移動する駆動部25と、硬化部26と、制御部27と、塗布部29とを備えている。
【0025】
基板1は、例えば、パターンが形成された半導体ウエハやMEMSウエハ、パワー半導体ウエハ、ディスプレイ用ガラス基板やバイオ素子などデバイス製造に使用される基板を用いることができ、母材の上に複数の層を有している。母材としては例えば、半導体、ガラス、セラミックス、金属、樹脂等を用いることができる。基板1の表面には、必要に応じて、インプリント材と基板1との密着性を向上させるために密着層が設けておくことが好ましい。密着層は、塗布膜厚が制御できる方法であればよく、インクジェットによる塗布、ディスペンサ塗布、スピン塗布、スクリーンやグラビア、オフセット印刷などの各種印刷方法、ディッピング塗布等を用いることができる。本実施形態では、密着層として塗布型有機材料層(SOC層)をスピン塗布した例を用いて説明する。
【0026】
また基板1上には、複数のショット領域(インプリント領域)が設定されてもよい。
【0027】
異物除去に用いるテンプレート7は、例えば、基板1と同等の例えば円形の外形形状で、石英など紫外線を透過させることが可能な材料で構成されうる。テンプレート7表面は、パターンのない平坦な面を用いることができる。
【0028】
基板保持部23は、基板1を保持可能なように構成され、基板搬送部13などにより搬入された基板1を、例えば、真空吸着力または静電力などによって保持する。
【0029】
テンプレート保持部24は、テンプレート7を保持可能なように構成され、基板搬送部13などにより搬入されたテンプレート7を、例えば、真空吸着力または静電力などによって保持する。
【0030】
駆動部25は、テンプレート保持部24をZ方向に移動させることができるように構成され、例えばリニアモーター、エアシリンダなどのアクチュエータを含んでいる。駆動部25で基板1とテンプレート7との間の距離を制御することで、基板1とテンプレート7とを接触させたり離したりすることができる。さらに、駆動部25はθX軸、θY軸に駆動でき、基板1とテンプレート7の平行度を調整するために用いることもできる。
【0031】
硬化部26は、樹脂層の硬化用のエネルギ(例えば、紫外線等の光)を供給あるいは照射することによって光硬化性樹脂からなる樹脂層を硬化させる。具体的には、硬化部26は、基板1上の樹脂層6とテンプレート7とが接触した状態で、テンプレート7を介して光照射(露光)する。これにより、異物を内包した樹脂層の硬化物が形成される。硬化部26は、例えば、樹脂層を硬化させる光(紫外線などの露光光)を射出する光源を有する。また、硬化部26は、光源から射出された光を異物除去処理において適切な光に調整するための光学素子を含んでいてもよい。
【0032】
制御部27は異物除去装置10の各部を制御して、異物除去処理を行う。制御部27は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータやメモリ、または、これらの全部若しくは一部の組み合わせによって構成されうる。なお、制御部27を異物除去装置10に設けずとも、基板処理システム100の制御部17がその制御を行ってもよい。
【0033】
塗布部29は、基板1に樹脂層6を塗布可能なように構成されている。塗布部29は、インクジェット法、ディスペンサ法、スピンコート法、オフセット印刷などの各種印刷方法、ディッピング塗布等などから適宜選択される方法で樹脂材料を塗布することができる。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る洗浄装置11(第1の異物除去装置)と異物除去装置10(第2の異物除去装置)を用いた異物除去処理の流れを説明するフローチャートである。図4は、図3のS104の詳細な流れを説明するフローチャートである。図3および図4における各工程は、制御部27(もしくは制御部17)によって各部を制御することによって実行される。図3のフローチャートでは外部の基板保管庫(不図示)から基板処理システム100に基板1が搬入された後の状態から説明する。
【0035】
工程S101では、制御部17は、不図示の搬送装置を制御して外部の基板保管庫から搬入された基板1上の異物情報を取得する。異物情報は基板処理システム100外の検査装置で検査された結果や、基板処理システム100内に設けた検査手段により検査した結果を用いることができ、基板ごとに検査された異物の位置や異物のサイズなどの情報である。
【0036】
工程S102では、制御部17は、S101で取得された異物情報に基づいて、所定サイズ以上の大きな異物が存在するか判断する。大きな異物が存在する場合には、その状態のまま第2の異物除去装置で異物除去処理を行ってしまうとテンプレート7が破損する可能性があるため、大きな異物除去に適した洗浄装置11での洗浄を行うためにS103に進む。一方大きな異物が無い場合には、洗浄装置11での洗浄を行う必要がないため処理時間短縮のためにS104へと進む。具体的には異物の粒子径が500nm以上となるとテンプレート7が破損する可能性があるため、500nm以上のサイズの異物が基板1上にあると判断された場合には、S103へと進む。図5(a)は、基板1の密着層2上にサイズが小さい異物3と、異物除去装置10では除去することが困難なサイズが大きな異物4が混在している例を示している。ただし、仮に1μmのサイズの異物が基板上にあってもテンプレートが破壊されないことが分かっている場合には、1μm以上のサイズの異物が基板1上にあると判断された場合にも、S103へと進んでもよい。
【0037】
工程S103では、制御部17は、基板1に対して洗浄装置11が異物除去処理を行うように制御する。図5(b)は、基板1の密着層2上の異物4が除去された状態を示している。
【0038】
次に、工程S104の詳細について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
工程S201では、制御部27(制御部17)は、塗布部29を制御して基板1上(密着層2上)に異物除去材として用いられる樹脂層6を塗布する。図5(c)は、樹脂層6が塗布された後の基板1の様子を示している。樹脂層6の厚さとしては、500nmの粒子径の異物も除去できるように、500nmの厚さとした。また樹脂層6の厚さは基板1上の密着層2が硬化時の収縮力で破損することのない厚みであることが必要であり、1μm以下であることが好ましい。
【0040】
工程S202では、制御部27は駆動部25を制御して、テンプレート7を基板1上の樹脂層6に押し付ける。具体的には基板1とテンプレート7との間のZ方向の距離が徐々に小さくなるように、駆動部25を制御してテンプレート7を保持するテンプレート保持部24のZ軸の位置を下げていく。
【0041】
工程S203(充填工程)では、基板1とテンプレート7の間に樹脂層6が行き渡るまで待機する時間である。待機時間Taは、樹脂層6の膜厚や、基板1の表面形状などによって変わりうるので、ユーザーが設定できるようになっている。待機時間Taを必要以上に長く設けると、異物除去処理にかかる時間が長くなるため隅々にいきわたる適当な時間であることが必要である。なお、本実施形態においては樹脂層6を基板1とテンプレート7との間の隅々まで行き渡らせることを充填と呼ぶ。
【0042】
工程S204(硬化工程)では、制御部27は、待機時間Taが経過後に硬化部26を制御して樹脂層6に硬化用のエネルギを与えて、硬化させる。図5(d)は、硬化工程における基板1とテンプレート7と樹脂層6を示している。図中の矢印8は硬化エネルギを表している。硬化部26はテンプレート7のZ方向上方に位置しているため、テンプレート7の上方から硬化用エネルギが与えられる。硬化用エネルギは紫外線を含む光であり、テンプレート7は石英ガラスのような紫外線を透過する材料で構成されているので、硬化用エネルギは樹脂層6に到達する。
【0043】
工程S205(分離工程)では、制御部27は、基板1とテンプレート7を離す方向に駆動部25を駆動制御する。図5(e)は、分離工程における基板1とテンプレート7と樹脂層6を示している。テンプレート7を基板1から引き離すと、硬化した樹脂層6は、テンプレート7側に付着し、基板1には残存しない。基板1とテンプレート7のどちらに樹脂層6が付着するかは、樹脂層6とそれぞれの密着力や接触面積に依存する。したがって、樹脂層6は、テンプレート7との密着力が大きい材料を選定する。また、テンプレート7と樹脂層6との間には、テンプレート7と樹脂層6との密着力を向上させるために、別の層を設けても良い。基板1の密着層2上にあった異物3は、硬化した樹脂層6に内包されているので、樹脂層6とともにテンプレート7側に移り、基板1上から除去される。
【0044】
以上が洗浄装置11と異物除去装置10とを用いて異物除去処理方法である。異物除去処理に用いられたテンプレート7は押印ごとに別のテンプレートに変更してもよいし、同じテンプレートを繰り返し使用しても良い。また、押印に使用したテンプレートを洗浄し再利用してもよい。テンプレートの洗浄には一般的な半導体の洗浄法を用いることができる。
【0045】
比較的大きな異物は、洗浄装置11を用いずとも異物除去装置10で塗布する樹脂層6の量などを調整することで除去できる可能性もある。しかし樹脂の膜厚が厚くなると硬化収縮により応力も大きくなるため、密着層として用いられる塗布型有機材料層(SOC層)などは破損してしまうことが懸念される。
【0046】
そのため本発明のように大きな異物除去に適した洗浄装置11と、小さな異物除去に適した異物除去装置10とを併用することにより、密着層を破損することなく、確実に小さな異物も除去することができる。
【0047】
〈物品の製造について〉
以上のような方法により異物除去された基板は、インプリント装置14などを用いて硬化物のパターン等の構造物をさらに形成することができ、これらの構造物は、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。
【0048】
物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0049】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0050】
次に、図6を用いて、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。まず図6(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0051】
図6(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図6(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0052】
図6(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0053】
図6(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図6(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0054】
そして物品の製造方法には、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程も含まれる。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利であるといえる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0056】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、少なくとも以下の構成を含む。
【0057】
(項目1)
基板上の異物除去方法であって、
前記基板に対して第1の異物除去処理を行った後に、前記第1の異物除去処理とは異なる第2の異物除去処理を行うか、あるいは前記基板に対して前記第1の異物除去処理を行わずに前記第2の異物除去処理を行う異物除去工程、を有し、
前記第2の異物除去処理は、
前記基板上の硬化性組成物に、部材を接触させる接触工程と、
前記基板上の硬化性組成物と前記部材とを接触させた状態で硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化性組成物が硬化した後に、前記基板から前記硬化性組成物とともに前記部材を分離させる分離工程と、を有することを特徴とする異物除去方法。
【0058】
(項目2)
基板の情報を取得する取得工程と、
前記取得された情報に基づいて第1の異物除去処理を行うかを判断する判断工程と、をさらに有し、
前記異物除去工程は、前記判断工程で前記第1の異物除去処理を行うと判断された場合には、前記基板に対して前記第1の異物除去処理を行った後に、前記第1の異物除去処理とは異なる第2の異物除去処理を行うことを特徴とする項目1に記載の異物除去方法。
【0059】
(項目3)
前記取得工程は基板上の異物情報を取得し、
前記判断工程は、前記取得された異物情報に基づいて、前記第1の異物除去処理を行うかを判断することを特徴とする項目2に記載の異物除去方法。
【0060】
(項目4)
前記判断工程は、前記取得された異物情報に基づいて所定サイズ以上の異物が存在すると判断された場合に、第1の異物除去処理が必ようであると判断することを特徴とする項目3に記載の異物除去方法。
【0061】
(項目5)
前記基板上には密着層が設けられており、前記硬化性組成物は前記密着層の上に塗布されていることを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項に記載の異物除去方法。
【0062】
(項目6)
前記密着層は、有機材料層であることを特徴とする項目5に記載の異物除去方法。
【0063】
(項目7)
前記第1の異物除去処理は、流体力を利用した洗浄方法、静電気力を利用した洗浄方法、粘着力を利用した洗浄方法の、少なくとも1つの洗浄方法を含むことを特徴とする項目1乃至6のいずれか1項に記載の異物除去方法。
【0064】
(項目8)
第1の異物除去処理を行う第1の異物除去装置と、
前記第1の異物除去処理とは異なる、基板上の硬化性組成物に部材を接触させた状態で前記硬化性組成物を硬化させて、前記硬化性組成物とともに前記部材を前記基板から分離することで当該基板上の異物を除去する第2の異物除去処理を行う第2の異物除去装置と、
前記第1の異物除去装置と前記第2の異物除去処理とを制御する制御部と、を有する基板処理システムであって、
前記制御部は、前記基板に対して前記第1の異物除去装置で前記第1の異物除去処理を行った後に、前記第2の異物除去装置で前記第2の異物除去処理を行うか、あるいは前記基板に対して前記第1の異物除去装置で前記第1の異物除去処理を行わずに前記第2の異物除去装置で第2の異物除去処理を行うように制御する
ことを特徴とする基板処理システム。
【0065】
(項目9)
前記制御部は、これから処理する基板の情報に基づいて前記第1の異物除去処理を行うかを判断し、前記第1の異物除去処理を行うと判断した場合には、前記基板に対して前記第1の異物除去装置で前記第1の異物除去処理を行った後に、前記第2の異物除去装置で前記第2の異物除去処理を行うことを特徴とする項目8に記載の基板処理システム。
【0066】
(項目10)
項目1乃至7のいずれか1項に記載の異物除去方法で異物が除去された基板を設ける工程と、
前記基板を加工する工程と、を含み、
前記加工された基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6