(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124967
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】遷移金属化合物、当該遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒、および当該オレフィン重合用触媒を用いてなるオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 17/00 20060101AFI20240906BHJP
C07F 7/00 20060101ALI20240906BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240906BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C07F17/00
C07F7/00 A CSP
C08F10/00 510
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032990
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 要
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽一
(72)【発明者】
【氏名】村田 進
【テーマコード(参考)】
4H049
4H050
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN06
4H049VP01
4H049VQ07
4H049VQ08
4H049VQ12
4H049VR22
4H049VR32
4H049VS12
4H049VU33
4H049VV16
4H049VW01
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD07
4J128AD08
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EC01
4J128FA09
4J128GA04
4J128GA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、より高分子量のオレフィン系重合体が得られ得る重合触媒遷移金属化合物を開発することにある。
【解決手段】例えば、下式A-1で表される遷移金属化合物が示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される遷移金属化合物[A]。
【化1】
〔式(1)において、
Mは、周期表第4族遷移金属原子を示し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、または共役ジエン系誘導体基を示し、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよく、
nは遷移金属化合物[A]が電気的に中性となるように選択される1~4の整数を示し、
Qは、周期表第14族原子であり、
R
1~R
13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基またはケイ素含有基を示し、R
5~R
12のうち隣接した置換基は互いに連結して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよく、
Lは炭素数1~10の直鎖の炭素鎖を有する二価の炭化水素基であり、
Dは下記式(2)で示される基である。〕
【化2】
〔式(2)において、
R
14は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基を示し、
R
15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか一方は水素原子ではない。〕
【請求項2】
R15のいずれか一方は炭化水素基である請求項1に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項3】
R15は炭化水素基である請求項1に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項4】
R15は炭素数1~10の炭化水素基である請求項1に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項5】
R15はメチル基である請求項4に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項6】
Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子である請求項1に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項7】
Qは炭素原子またはケイ素原子である請求項1に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項8】
R1~R13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基、炭素数1~20の窒素含有基または炭素数1~20の硫黄含有基である請求項1に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項9】
R6とR11が、炭素数1~20の炭化水素基、あるいは、R6がR7と環を形成、R10とR11が環を形成する請求項8に記載の遷移金属化合物[A]。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン系重合用触媒[X]。
【請求項11】
オレフィン系重合用触媒[X]が、さらに、
[B][B-1]有機金属化合物、
[B-2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[B-3]遷移金属化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む請求項10に記載のオレフィン系重合用触媒[X]。
【請求項12】
請求項10に記載のオレフィン系重合用触媒[X]の存在下でオレフィンを重合させる工程を含むオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記オレフィンを重合させる工程が、エチレンを単独重合させる工程またはエチレンと炭素数3以上20以下のα-オレフィンとを共重合させる工程である請求項12に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物、当該遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒、および当該オレフィン重合用触媒を用いてなるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系重合体は、炭素と水素からなる環境にやさしいクリーンな材料であり、加工成形性や物性に優れている。この特性から、自動車、電気機器部品、食品包装、飲料・化粧品・医療容器、土木、農業資材等幅広い分野に用いられてきた。近年、省エネルギー化および環境への負荷低減が重要視され、多くの物品に対して更なる軽量化の要求が高まってきている。
【0003】
オレフィン系重合体は、主にチーグラー型、メタロセン型、またはポストメタロセン型重合触媒を用いて製造されており、メタロセン型重合触媒としても種々提案されている(特許文献1、2)。
しかしながら従来のメタロセン化合物を使用したエチレン重合には、得られる樹脂の分子量を高めるという観点から、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-188318号公報
【特許文献2】特開2018-141098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より高分子量のオレフィン系重合体が得られ得る重合触媒遷移金属化合物を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の項[1]~[13]に係る。
[1]
下記一般式(1)で表される遷移金属化合物[A]。
【0007】
【0008】
〔式(1)において、
Mは、周期表第4族遷移金属原子を示し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、または共役ジエン系誘導体基を示し、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよく、
nは遷移金属化合物[A]が電気的に中性となるように選択される1~4の整数を示し、
Qは、周期表第14族原子であり、
R1~R13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基またはケイ素含有基を示し、R5~R12のうち隣接した置換基は互いに連結して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよく、
Lは炭素数1~10の直鎖の炭素鎖を有する二価の炭化水素基であり、
Dは下記式(2)で示される基である。〕
【0009】
【0010】
〔式(2)において、
R14は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基を示し、
R15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか一方は水素原子ではない。)
[2]
R15のいずれか一方は炭化水素基である項[1]に記載の遷移金属化合物[A]。
[3]
R15は炭化水素基である項[1]または[2]に記載の遷移金属化合物[A]。
[4]
R15は炭素数1~10の炭化水素基である項[1]~[3]のいずれかに記載の遷移金属化合物[A]。
[5]
R15はメチル基である項[4]に記載の遷移金属化合物[A]。
[6]
Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子である項[1]~[5]のいずれかに記載の遷移金属化合物[A]。
[7]
Qは炭素原子またはケイ素原子である項[1]~[6]のいずれかに記載の遷移金属化合物[A]。
[8]
R1~R13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基、炭素数1~20の窒素含有基または炭素数1~20の硫黄含有基である項[1]~[7]のいずれかに記載の遷移金属化合物[A]。
[9]
R6とR11が、炭素数1~20の炭化水素基、あるいは、R6がR7と環を形成、R10とR11が環を形成する項[8]に記載の遷移金属化合物[A]。
[10]
項[1]~[9]のいずれか一項に記載の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン系重合用触媒[X]。
[11]
オレフィン系重合用触媒[X]が、さらに、
[B][B-1]有機金属化合物、
[B-2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[B-3]遷移金属化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む項[10]に記載のオレフィン系重合用触媒[X]。
[12]
項[10]または[11]に記載のオレフィン系重合用触媒[X]の存在下でオレフィンを重合させる工程を含むオレフィン系重合体の製造方法。
[13]
前記オレフィンを重合させる工程が、エチレンを単独重合させる工程またはエチレンと炭素数3以上20以下のα-オレフィンとを共重合させる工程である項[12]に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、分子量の高いオレフィン重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<遷移金属化合物(A)>
本発明の遷移金属化合物(A)は、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物[A]である。
【0013】
【0014】
〔式(1)において、
Mは、周期表第4族遷移金属原子を示し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、または共役ジエン系誘導体基を示し、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよく、
nは遷移金属化合物(A)が電気的に中性となるように選択される1~4の整数を示し、
Qは、周期表第14族原子であり、
R1~R13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基またはケイ素含有基を示し、R5~R12のうち隣接した置換基は互いに連結して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよく、
Lは炭素数1~10の直鎖の炭素鎖を有する二価の炭化水素基であり、
Dは下記式(2)で示される基である。〕
【0015】
【0016】
〔式(2)において、
R14は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基を示し、
R15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか一方は水素原子ではない。〕
【0017】
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(2)において、R15のいずれか一方は炭化水素基である。
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(2)において、R15は炭化水素基である。
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(2)において、R15は炭素数1~10の炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0018】
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(1)において、Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(1)において、Qは炭素原子またはケイ素原子であり、さらに好ましくは炭素原子である。
【0019】
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(1)において、Lは炭素数1~10の直鎖の炭素鎖を有する二価の炭化水素基で、より好ましくは炭素数1~8の直鎖の炭素鎖を有する二価の炭化水素基で、さらに好ましくは炭素数1~5の直鎖の炭素鎖を有する二価の炭化水素基である。
本発明の遷移金属化合物(A)は、好ましくは、上記式(1)において、R1~R13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基、炭素数1~20の窒素含有基または炭素数1~20の硫黄含有基である。
【0020】
R1からR12における炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。
【0021】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0022】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0023】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0024】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0025】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0026】
R1からR12におけるヘテロ原子含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フリル基などの酸素原子含有炭化水素基;N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基等のアミノ基、ピリジル基などの窒素原子含有炭化水素基;チエニル基などの硫黄原子含有炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは2~18、より好ましくは2~15である。ただし、ヘテロ原子含有炭化水素基からはケイ素含有基を除く。
【0027】
R1からR12におけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式-SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1~15のアルキル基またはフェニル基である。)で表される基が挙げられる。
R1からR12までの置換基のうち、R6とR7、R10とR11は互いに結合して環を形成していてもよい。上記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0028】
本発明において、R6とR7、R10とR11が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環;ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0029】
R5、R8、R9およびR12は、好ましくは水素原子である。
R6、R7、R10およびR11は、好ましくは水素原子、炭化水素基、酸素原子含有炭化水素基または窒素原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基である。R6とR7が互いに結合して環を形成し、かつR10とR11が互いに結合して環を形成していてもよい。
本発明の遷移金属化合物(A)は、さらに好ましくは、R6とR11が、炭素数1~20の炭化水素基、あるいは、R6がR7と環を形成、R10とR11が環を形成する。
【0030】
<オレフィン重合用触媒>
遷移金属化合物(A)を用いて前記のオレフィンの重合を行う際に、遷移金属化合物(A)と組み合わせて、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。以下、これら各成分について説明する。
【0031】
〔(B-1)有機金属化合物〕
本発明で用いられる有機金属化合物(B-1)として、具体的には下記の一般式(B-1a)~(B-1c)で表される周期表第1、2、12、13族の少なくとも1種の元素を含む化合物が挙げられる:
Ra
pAl(ОRb)qHrYs ・・・(B-1a)
(一般式(B-1a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
で表される有機アルミニウム化合物;
M3AlRc
4 ・・・(B-1b)
(一般式(B-1b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
で表される周期表第1族のアルカリ金属とアルミニウムとの錯アルキル化物;
RdReM4 ・・・(B-1c)
(一般式(B-1c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期表第2族のアルカリ土類金属または第12族の金属とのジアルキル化合物。
【0032】
前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる:
Ra
pAl(ОRb)3-p ・・・(B-1a-1)
(式(B-1a-1)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物;
Ra
pAlY3-p ・・・(B-1a-2)
(式(B-1a-2)中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物;
Ra
pAlH3-p ・・・(B-1a-3)
(式(B-1a-3)中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物;
Ra
pAl(ОRb)qYs ・・・(B-1a-4)
(式(B-1a-4)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0033】
一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
Ra
2.5Al(ОRb)0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0034】
また(B-1a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として、たとえば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
【0035】
前記一般式(B-1b)に属する化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを挙げることができる。
前記一般式(B-1c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0036】
またその他にも、有機金属化合物(B-1)としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0037】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを、前記有機金属化合物(B-1)として使用することもできる。
【0038】
有機金属化合物(B-1)のなかでは、触媒活性の点から有機アルミニウム化合物が好ましい。
上記のような有機金属化合物(B-1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0039】
〔(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物〕
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0040】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0041】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0042】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0043】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は、1種単独で、または混合して用いることができる。
【0044】
本発明に係る有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式(B-2a)または(B-2b)で表される構造のアルミノキサン、および下記一般式(B-2c)で表される繰り返し単位と下記一般式(B-2d)で表される繰り返し単位とを構造として有するアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
【0045】
【0046】
一般式中、Rcは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10、好ましくは1~4の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基などの炭化水素基を例示することができる。これら例示したもののうちで、メチル基、エチル基、イソブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましく、前記一般式(B-2a)、(B-2b)および(B-2c)中、Rcの一部が塩素、臭素などのハロゲン原子で置換され、かつハロゲン含有率が40重量%以下であってもよい。
【0047】
前記一般式(B-2a)および(B-2b)中、rは2~500の整数を示し、好ましくは6~300、特に好ましくは10~100の範囲にある。
前記一般式(B-2c)および(B-2d)中、s、tはそれぞれ1以上の整数を示す。
【0048】
前記一般式(B-2c)で表される繰り返し単位と前記一般式(B-2d)で表される繰り返し単位とを有するアルミノキサンは、ベンゼンの凝固点降下法により測定した分子量が200~2000の範囲内にあることが好ましい。
【0049】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
【0050】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式(B-2e)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0051】
【0052】
一般式(B-2e)中、R15は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示し、4つのR16は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。
【0053】
前記一般式(B-2e)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(B-2f)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
【0054】
R15-B(ОH)2 ・・・(B-2f)
一般式(B-2f)中、R15は前記一般式(B-2e)におけるR15と同じ基を示す。
前記一般式(B-2f)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0055】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0056】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0057】
遷移金属化合物(A)に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0058】
〔(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物〕
本発明で用いられる、遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0059】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどである。
【0060】
前記イオン化イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(B-3a)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【0062】
一般式(B-3a)中、R17はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R18~R21は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0063】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0064】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0065】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0066】
R17としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0067】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0068】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0069】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0070】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0071】
さらにイオン化イオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(B-3b)または(B-3c)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0072】
【化8】
式(B-3b)中、Etはエチル基を示す。
【0073】
【化9】
式(B-3c)中、Etはエチル基を示す。
【0074】
イオン化イオン性化合物(化合物(B-3))の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0075】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、たとえば4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0076】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族のアルカリ金属または2族のアルカリ土類金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、およびトリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0077】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0078】
上記のようなイオン化イオン性化合物(遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3))は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)(以下、「成分(A)」と略記する場合がある。)と、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)、およびイオン化イオン性化合物(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)(以下、「成分(B)」と略記する場合がある。)とともに、必要に応じて下記の担体(C)を含んでもよい。
【0079】
〔(C)担体〕
本発明で用いられる担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。担体(C)に上記遷移金属化合物(A)および化合物(B)を担持させることで、良好なモルフォロジーのポリマーが得られる。
【0080】
前記無機化合物としては、多孔質酸化物、固体状アルミノキサン化合物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
前記多孔質酸化物として、具体的にはSiО2、Al2О3、MgО、ZrО、TiО2、B2О3、CaО、ZnО、BaО、ThО2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用することができ、さらに、例えば天然または合成ゼオライト、SiО2-MgО、SiО2-Al2О3、SiО2-TiО2、SiО2-V2О5、SiО2-Cr2О3、SiО2-TiО2-MgОなどを使用することができる。これらのうち多孔質酸化物としては、SiО2および/またはAl2О3を主成分とするものが好ましい。
【0081】
なお、上記多孔質酸化物は、少量のNa2CО3、K2CО3、CaCО3、MgCО3、Na2SО4、Al2(SО4)3、BaSО4、KNО3、Mg(NО3)2、Al(NО3)3、Na2О、K2О、Li2Оなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0082】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる多孔質酸化物は、粒径が10~300μm、好ましくは20~200μmであって、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3~3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような多孔質酸化物は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して使用される。
【0083】
前記固体状アルミノキサン化合物としては、前記(B-2a)~(B-2d)で示したアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
本発明で用いられる前記固体状アルミノキサンは、従来公知のオレフィン重合触媒用担体と異なり、シリカやアルミナなどの無機固体成分やポリエチレン、ポリスチレンなどの有機系ポリマー成分を含まず、アルキルアルミニウム化合物を主たる成分として固体化したものを示す。本発明中で用いる「固体状」の意味は、アルミノキサン成分(B-2)が用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、例えば後述のように成分(A)と成分(B)とを接触させてオレフィン重合用固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエンなどの不活性炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において成分(B)が固体状態であることを表す。また、例えば後述のように成分(B)を用いて調製されるオレフィン重合用固体触媒成分を用いて懸濁重合を行う場合にヘキサンやヘプタン、トルエンなどの炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において触媒成分中に含まれる成分(B)が固体状態であることも必要な要件である。溶媒の代わりに液化モノマー中で重合を行うバルク重合や、モノマーガス中で重合を行う気相重合でも同様である。
【0084】
上記の環境下において成分(B)が固体状態であるかどうかは、目視による確認が最も簡便な方法であるが、例えば重合時などは目視による確認が困難である場合が多い。その場合は、例えば重合後に得られた重合体パウダーの性状や反応器への付着状態などから判断することが可能である。逆に、重合体パウダーの性状が良好で、反応器への付着が少なければ、重合環境下において成分(B)の一部が多少溶出したとしても本発明の趣旨を逸脱することはない。重合体パウダーの性状を判断する指標としては、嵩密度、粒子形状、表面形状、不定形ポリマーの存在度合いなどが挙げられるが、定量性の観点からポリマー嵩密度が好ましい。本発明における嵩密度は通常0.01~0.9であり、好ましくは0.05~0.6、より好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
【0085】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンは、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンに対し溶解する割合が、通常0~40モル%、好ましくは0~20モル%、特に好ましくは0~10モル%の範囲を満足する。
【0086】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンのn-ヘキサンに対する溶解割合は、25℃に保持された50mlのn-ヘキサンに固体状アルミノキサン担体2gを加えた後2時間の撹拌を行ない、次いでG-4グラス製フィルターを用いて溶液部を分離して、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求めた。従って、溶解割合は用いたアルミノキサン2gに相当するアルミニウム原子の量に対する前記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定する。
【0087】
本発明に係る固体状アルミノキサンとしては、公知の固体状アルミノキサンを際限なく用いることができる。公知の製造方法として例えば、特公平7-42301号公報、特開平6-220126号公報、特開平6-220128号公報、特開平11-140113号公報、特開平11-310607号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、WО201055652号公報などが挙げられる。
【0088】
本発明に係る固体状アルミノキサンの平均粒子径は、一般に0.01~50000μm、好ましくは1~1000μm、特に好ましくは1~200μmの範囲にある。
固体状アルミノキサンの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粒子を観察し、100個以上の粒子の粒径を測定し、重量平均化することにより求められる。固体状アルミノキサンの粒径は、ピタゴラス法最大長を粒子像より測定した。即ち、水平方向、垂直方向それぞれに、粒子像を2本の平行線ではさんだ長さを測り、下式をもって計算で求められる。
粒径=((水平方向長さ)2+(垂直方向長さ)2)0.5
【0089】
固体状アルミノキサンの重量平均粒子径は、上記で求めた粒径を用いて下式により求められる。
平均粒径=Σnd4/Σnd3(ここでn;粒子個数、d;粒径)
【0090】
本発明に好ましく用いられる固体状アルミノキサンは、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~800m2/gであり、細孔容積が0.1~2.5cm3/gであることが望ましい。
【0091】
前記無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0092】
前記粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、上記イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0093】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0094】
さらに、粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、
イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsО4)2・H2О、α-Zr(HPО4)2、α-Zr(KPО4)2・3H2О、α-Ti(HPО4)2、α-Ti(HAsО4)2・H2О、α-Sn(HPО4)2・H2О、γ-Zr(HPО4)2、γ-Ti(HPО4)2、γ-Ti(NH4PО4)2・H2Оなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0095】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上であることが好ましく、0.3~5cc/gであることが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~30000Åの範囲について測定される。
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0096】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0097】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(ОR)4、Zr(ОR)4、PО(ОR)3、B(ОR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13О4(ОH)24]7+、[Zr4(ОH)14]2+、[Fe3О(ОCОCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(ОR)4、Al(ОR)3、Ge(ОR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基などを示す)などを加水分解して得た重合物、SiО2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物なども挙げられる。
【0098】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0099】
前述のように担体(C)は無機または有機の化合物であるが、有機化合物としては、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0100】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、上記化合物(B)、必要に応じて担体(C)と共に、必要に応じてさらに下記の特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0101】
〔(D)有機化合物成分〕
本発明において有機化合物成分(D)は、必要に応じて、本発明のオレフィン重合用触媒の重合性能および生成ポリマーの物性(たとえば生成ポリマーの分子量)を向上(分子量であれば、高分子量化)させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0102】
前記アルコール類および前記フェノール性化合物としては、通常、R22-ОHで表されるものが使用され、ここで、R22は炭素原子数1~50の炭化水素基(フェノール類の場合、炭素原子数は6~50)または炭素原子数1~50(フェノール類の場合、炭素原子数は6~50)のハロゲン化炭化水素基を示す。
【0103】
アルコール類としては、R22がハロゲン化炭化水素基のものが好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’-位が炭素数1~20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0104】
上記カルボン酸としては、通常、R23-CООHで表されるものが使用される。R23は炭素原子数1~50の炭化水素基または炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に、炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0105】
上記リン化合物としては、P-О-H結合を有するリン酸類、P-ОR、P=О結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
上記スルホン酸塩としては、下記一般式(D-a)で表されるものが挙げられる。
【0106】
【0107】
一般式(D-a)中、M5は周期表第1~14族の原子であり、R24は水素、炭素原子数1~20の炭化水素基または炭素原子数1~20のハロゲン化炭化水素基であり、Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~20の炭化水素基または炭素原子数が1~20のハロゲン化炭化水素基であり、tは1~7の整数であり、uは1~7の整数であり、また、t-u≧1である。
【0108】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合する工程を含むことによりオレフィン重合体を得る。なお、前述のように、本明細書においてオレフィンとは、重合性二重結合を有するあらゆる化合物を指す。
【0109】
重合における、本発明の触媒を構成する各成分の使用法、重合器への添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(1)遷移金属化合物(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)遷移金属化合物(A)および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した触媒成分、化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
(6)遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持した触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
(7)化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
(8)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)を担体(C)に担持した成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(9)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物(B)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)を任意の順序重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
(10)遷移金属化合物(A)、化合物(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(11)化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(12)化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(13)遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(14)遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)、有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(15)遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)と接触させられる化合物(B)と、有機化合物成分(D)と接触させられる化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
(16)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(17)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(18)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を重合器に添加する方法。
(19)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)および有機化合物成分(D)と接触させられる化合物(B)と、単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
(20)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒を重合器に添加方法。
(21)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0110】
上記の担体(C)に遷移金属化合物(A)が担持された固体触媒成分、担体(C)に遷移金属化合物(A)および化合物(B)が担持された固体触媒成分には、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0111】
本発明では、(共)重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、また(共)重合に供するオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0112】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、遷移金属化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-3モルになるような量で用いられる。
【0113】
有機金属化合物(B-1)は、有機金属化合物(B-1)と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が通常0.01~100000、好ましくは0.05~50000となるような量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)中のアルミニウム原子と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10~500000、好ましくは20~100000となるような量で用いられる。遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(イオン化イオン性化合物)(B-3)は、イオン化イオン性化合物(B-3)と、遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1~50、好ましくは1~30、より好ましくは1~20となるような量で用いられる。
【0114】
有機化合物成分(D)は、有機金属化合物(B-1)とのモル比〔(D)/(B-1)〕が、通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)とのモル比〔(D)/(B-2)〕が、通常0.001~2、好ましくは0.005~1となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、イオン化イオン性化合物(B-3)とのモル比〔(D)/(B-3)〕が、通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。
【0115】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧~100kg/cm2-G、好ましくは常圧~50kg/cm2-Gの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0116】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する化合物(B)の量により調節することもできる。
【0117】
上記の水素は連鎖移動剤であり、分子量を低くする成分である。これをオレフィン重合反応に併用しても、重合活性への影響が少ない傾向がある。本願の遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、分子量の高い成分を製造し易い性質を示すことから、分子量調節の自由度が高いと言うメリットを有すると言える。
【0118】
このような本発明のオレフィン重合用触媒により重合することができるオレフィンとしては、重合性二重結合を有すれば特に限定されないが、炭素原子数が2~30、好ましくは2~20、より好ましくは2~10の直鎖状または分岐状のα-オレフィン、たとえば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン;
炭素原子数が3~30、好ましくは3~20、より好ましくは3~10の環状オレフィン、たとえば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0119】
本発明のオレフィン重合用触媒は、エチレンの単独重合、またはエチレンと炭素数3~20のオレフィン、好ましくは炭素数3~10の直鎖状または分岐状のα-オレフィンとの共重合、プロピレンの単独重合や、プロピレンとエチレンや炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれるオレフィンとの共重合に用いることがより好ましい。α-オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
エチレンと炭素数3~20、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合の場合、α-オレフィン(以下、オレフィンAとも称す)としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。これらのα-オレフィンは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。これら中でも、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0121】
α-オレフィンとしてエチレンを用い、かつ上記オレフィンAを用いる場合、エチレンと上記オレフィンAとの使用量比は、エチレン:上記オレフィンA(モル比)で、通常1:10~5000:1、好ましくは1:5~1000:1である。
【0122】
プロピレンと、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれるオレフィン(オレフィンB)との使用量比は、プロピレン:上記オレフィンB(モル比)で、通常1:10~5000:1、好ましくは1:5~1000:1である。オレフィンBの好ましい例としては、プロピレンを除いたオレフィンAと同様である。
【0123】
本発明のオレフィン重合用触媒は、極性基(たとえば、カルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)を有する鎖状の公知の不飽和炭化水素を(共)重合させてもよい。
また本発明のオレフィン重合用触媒は、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエンなどを(共)重合させてもよい。
【0124】
前記ジエンまたは前記ポリエンとしては、炭素原子数が4~30、好ましくは4~20であり二個以上の二重結合を有する環状又は鎖状の化合物が挙げられる。具体的には、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;
7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン;
さらに芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;
および3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
本発明に係るオレフィン系重合用触媒を用いた重合方法では、高分子量の重合体が得ることが可能となる。
【実施例0125】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0126】
[実施例1]
<遷移金属化合物[A-1]の合成>
充分に乾燥、窒素置換した300 mLの反応器に1-ブロム‐3‐メチル-2-ブテン 4.93 g(33.1 mmol)とベンゾイル酢酸エチル5.81 g(30.2 mmol)、脱水アセトン 75 mLを加えて0 ℃に冷却し、炭酸カリウム5.01 g(36.3 mmol)を加え60 ℃で6時間攪拌後、濾過して溶媒を留去し淡黄色液体を得た。充分に乾燥させ窒素置換した300 mLの反応器に得られた淡黄色液体を加え、エタノール30 mLと2 Mの水酸化ナトリウム水溶液60 mLを加えて80 ℃で4時間攪拌した。塩酸を加え中和後、ヘキサンで可溶分を3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除去し、濾液を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより5-メチル-1-フェニルヘキセノンを得た。(収率:72%)
【0127】
1H NMR(400 MHz, CDCl3, δ in ppm) 7.97 - 7.95 (2H, m), 7.57 - 7.53 (1H, m), 7.48 - 7.44 (2H, m), 5.19 - 5.16 (1H, m), 3.01 - 2.98 (2H, m), 2.42 (2H, dd, J = 14.8Hz, 7.6Hz), 1.69 (3H, s), 1.64 (3H, s).v
【0128】
充分に乾燥、窒素置換した100 mLの反応器に塩化マグネシウム2.50 g (26.3 mmol)、テトラヒドロフラン10 mL、シクロペンタジエニルナトリウム10.5 mL(テトラヒドロフラン溶液 2.0 M, 21 mmol)を加え室温で1時間攪拌した。この反応溶液に5-メチル-1-フェニルヘキセノンのテトラヒドロフラン8 mL希釈溶液をゆっくりと滴下し50 ℃で2時間攪拌して塩酸を加えた。ヘキサンで可溶分を3回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除去し、濾液を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ―により目的物(以下、化合物(a-1)という)を得た。(収率:46%)
【0129】
【0130】
1H NMR(400 MHz, CDCl3, δ in ppm) 7.41 - 7.34 (5H, m), 6.64 - 6.10 (4H, m), 5.11 - 5.07 (1H, m), 2.95 - 2.91 (2H, m) 2.10(2H, dd, J = 15.2Hz,7.6Hz) 1.64 (3H, s), 1.49 (3H, s).
【0131】
充分に乾燥、窒素置換した300 mLの反応器に、2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン1.11 g(3.99 mmol)、メチルtert-ブチルエーテル20 mLを加え、攪拌し0 ℃に冷却した。n-ブチルリチウム溶液 2.7 mL(ヘキサン溶液、1.6 M、4.24 mmol)をゆっくりと滴下し、室温で一晩攪拌した。この溶液を0 ℃に冷却し、化合物(a-1) 916 mg(3.88 mmol)のメチルtert-ブチルエーテル7 mL希釈溶液をゆっくりと滴下した。室温で4時間攪拌させて塩化ナトリウム飽和水溶液を加えて酢酸エチルで2回、飽和食塩で1回可溶分を抽出した後、ヘキサンで抽出を3回行った後、飽和食塩水で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除去し、濾液を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ―により精製した後、アセトンによるデカンテーションにより目的物(以下、化合物(a-1L)という)を得た。(収率:49%)
【0132】
【0133】
1H NMR(400 MHz, CDCl3, δ in ppm) 7.48 - 7.04 (11H, m), 6.21 - 5.98 (3H, m), 5.11 - 5.07 (1H, m), 4.80 (1H, s), 2.95- 2.75 (2H, m), 2.39 - 2.29 (2H, m), 1.74 - 1.58 (5H, m) 1.39 (3H, s), 1.25 (9H, s), 1.19 (9H, s).
【0134】
充分に乾燥、窒素置換した100 mLの反応器に化合物(a-1L) 464mg(901 μmol)、トルエン 10 mLとテトラヒドロフラン 0.15 mL(1.85 mmol)を加え、この溶液へn-ブチルリチウム溶液1.2 mL(ヘキサン溶液、1.6 M、1.9 mmol)を室温下加えた後、40 ℃で4時間攪拌し0 ℃に冷却した。四塩化ジルコニウム 215 mg(923 μmol) を加えて室温で一晩攪拌した。真空下で溶媒を留去した後、得られた固体にジクロロメタンを加え懸濁液を調製し、不溶物をガラスフィルター上のセライトで除去した。次に0.45 μmと0.2 μmのフィルターで不溶物を除去した。真空下で溶媒を留去し、塩化メチレンとヘキサンを加えて一晩常温で静置した。グラスフィルターで濾過し、濾物を真空乾燥することにより下記式(A)で示される橙色粉末状の化合物(以下、遷移金属化合物[A-1]という。)を0.19 g(収率32%)得た。
【0135】
【0136】
1H NMR(400 MHz, CDCl3, δ in ppm) 8.06 - 7.41 (11H, m), 6.41- 5.55 (4H, m), 5.23 - 5.19 (1H, m,), 3.15 - 2.65 (2H, m,), 2.26 - 2.23 (2H, m,) 1.69 (3H, s) 1.45 (3H, s), 1.36 (9H, s), 0.98 (9H, s).
【0137】
[実施例2]
<遷移金属化合物[A-2]の合成>
充分に乾燥、窒素置換した300 mLの反応器に、オクタメチルフルオレン1.75 g(4.52 mmol)、メチルtert-ブチルエーテル30 mLを加え、攪拌し0 ℃に冷却した。n-ブチルリチウム溶液 3.0 mL(ヘキサン溶液、1.6 M、4.80 mmol)をゆっくりと滴下し、室温で一晩攪拌した。この溶液を0 ℃に冷却し、化合物(a-1) 1.08 g(4.57 mmol)のメチルtert-ブチルエーテル2 mL希釈溶液をゆっくりと滴下した。室温で4時間攪拌させて塩化ナトリウム飽和水溶液を加えてヘキサンで可溶分を3回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除去し、濾液を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ―により目的物(以下、化合物(a-2L)という)を得た。(収率:38%)
【0138】
【0139】
1H NMR(400 MHz, CDCl3, δ in ppm) 7.47 - 6.88 (9H, m), 6.40 - 5.97 (3H, m), 5.06 - 4.74 (2H, m), 2.95- 2.74 (2H, m), 2.29 - 2.09 (2H, m), 1.67 - 0.99 (40H, m).
【0140】
充分に乾燥、窒素置換した100 mLの反応器に化合物(a-2L)619 mg(993 μmol)、トルエン10 mLとテトラヒドロフラン0.16 mL(2.04 mmol)を加え、この溶液へn-ブチルリチウム溶液1.3 mL(ヘキサン溶液、1.6 M、1.9 mmol)を室温下加えた後、40 ℃で4時間攪拌し0 ℃に冷却した。四塩化ジルコニウム 241 mg(1.04 mmol)を加えて室温で一晩攪拌した。真空下で溶媒を留去した後、得られた固体にジクロロメタンを加え懸濁液を調製し、不溶物をガラスフィルター上のセライトで除去した。次に0.45 μmと0.2 μmのフィルターで不溶物を除去した。真空下で溶媒を留去し、ヘキサンを加えて冷蔵庫で一晩静置した。濾液を乾固して真空乾燥することにより下記式[A-2]で示される赤橙色粉末状の遷移金属化合物(以下、遷移金属化合物[A-2])という。)を0.08 g(収率<10%)得た。
【0141】
【0142】
[比較例1]
<遷移金属化合物(Y-1)の合成>
下記で表される化合物(以下、化合物(Y-1)という)は、J. Mol. Catal. A: Chem. 2001, 165, 23.記載の方法、および特許第5119160号公報記載の方法によって合成した。
【0143】
【0144】
以下の実施例および比較例において、得られたオレフィン重合体の各性状は以下のようにして測定あるいは評価した。
〔MFR〕
オレフィン系重合体のMFRは、テスター産業製TP-406型MFR計を用いASTM D1238-89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
【0145】
〔極限粘度[η]〕
オレフィン系重合体の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。
【0146】
すなわち重合パウダーまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈」を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0147】
[実施例3]
<固体状アルミノキサン(S)の調製>
固体状アルミノキサンの調製は、国際公開2010/055652パンフレットに記載の方法(予備実験1および実施例5)に準じて実施した。ただし、トリメチルアルミニウムの発火等の安全性に配慮して、当該文献に開示されている条件の約1/6倍の濃度で実施した。
【0148】
具体的には、攪拌装置を有するガラス製反応器に0.5mol/Lに調整したトリエチルアルミニウムのトルエン溶液100mLを装入した。この溶液を15℃になるまで冷却し、これに安息香酸2.18gを溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、トリメチルアルミニウムと安息香酸の酸素原子のモル比は、1.40であった。反応液を70℃で4時間加熱し、その後60℃で6時間加熱した後、一度室温まで冷却した。次いで100℃で8時間加熱し、固体状アルミノキサンを析出させた。溶液を30℃以下まで冷却した後、洗浄のためにn-ヘキサン100mLを攪拌下に添加した。30分間静置した後、上澄み液150mLを除去し、さらにn-ヘキサン150mLを攪拌下に添加した。15分間静置した後、上澄み液150mLを除去し、さらにn-ヘキサン150mLを攪拌下に添加した。最後に15分間静置した後、上澄み液180mLを除去し、n-ヘキサンを総量が42mLになるように添加した。得られた固体状アルミノキサンのヘキサンスラリーの一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:14.2g/L、Al濃度:0.202mol/Lであった。また、得られた固体状アルミノキサンを走査型電子顕微鏡により粒子を観察したところ平均粒子径は6.8μm、比表面積は18.1m2/mmol―Alであった。
【0149】
<オレフィン重合用触媒(X-1)の調製>
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した30 mLガラス容器に脱水トルエン22.78 mLを装入し、上記で調製した固体状アルミノキサン(S)のヘキサンスラリーを1.27 mL(Al原子換算で1.71 mmol)装入した。次いで、上記実施例1で得た下記[A-1]で表される遷移金属化合物のトルエン溶液0.85 mL(Zr原子換算で0.0085 mmol)を滴下装入し、室温で2時間反応させた。1時間以上静置した後、上澄み液を20 mL除去し、ヘキサンを20 mL加えた。この操作をさらに3回実施しオレフィン重合用触媒(X-1)を得た。
【0150】
【0151】
<エチレン重合>
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500 mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。ここに、トリイソブチルアルミニウムのn-デカン溶液(Al=1.0 mol/L)0.25 mmol、オレフィン重合用触媒[X-1]を固体成分換算で10.0 mg装入した後、水素濃度1.25 vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75℃に昇温し、0.65 MPaGとなるようにエチレン・水素混合ガスを連続的に供給し、60分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80 ℃で10時間真空乾燥することで、エチレン重合体11.2 gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表1に示す。
【0152】
[実施例4]
<オレフィン重合用触媒(X-2)の調製>
遷移金属化合物[A-1]の代わりに上記実施例2で得た下記で表される遷移金属化合物[A-2]を実施例3と同様の方法にてオレフィン重合用触媒[X-2]を得た。
【0153】
【0154】
<エチレン重合>
オレフィン重合用触媒[X-1]の代わりにオレフィン重合用触媒[X-2]を固体成分換算で10.0 mg装入したこと以外は実施例3と同様の方法にて重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80 ℃で10時間真空乾燥することで、エチレン重合体5.3 gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表1に示す。
【0155】
[比較例2]
<オレフィン重合用触媒(Z-1)の調製>
遷移金属化合物[A-1]の代わりに比較例1で得た下記で表される遷移金属化合物(Y-1)をZr原子換算で0.0085 mmol使用すること以外は実施例3と同様の方法にてオレフィン重合用触媒(Z-1)を得た。
【0156】
【0157】
<エチレン重合>
オレフィン重合用触媒(X-1)の代わりにオレフィン重合用触媒(Z-1)を固体成分換算で8.0mg装入したこと以外は実施例3と同様の方法にて重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン重合体90.2gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表1に示す。
【0158】
[実施例5]
<オレフィン重合体(エチレン重合体)の製造>
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500 mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。ここに、トリイソブチルアルミニウムのn-デカン溶液(Al=1.0 mol/L)0.25 mmol、脱水1‐ヘキセン3mL、オレフィン重合用触媒[X-1]を固体成分換算で10.0 mg装入した後、水素濃度0.10 vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75 ℃に昇温し、0.65MPaGとなるようにエチレン・水素混合ガスを連続的に供給し、60分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80 ℃で10時間真空乾燥することで、エチレン重合体4.2gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表2に示す。
【0159】
[実施例6]
オレフィン重合用触媒[X-1]の代わりにオレフィン重合用触媒[X-2]を固体成分換算で10.0 mg装入したこと以外は実施例5と同様の方法にて重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80 ℃で10時間真空乾燥することで、エチレン重合体3.7gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表2に示す。
【0160】
[比較例3]
オレフィン重合用触媒[X-1]の代わりにオレフィン重合用触媒[Z-1]を固体成分換算で3.0 mg装入したこと以外は実施例5と同様の方法にて重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80 ℃で10時間真空乾燥することで、エチレン重合体25.5 gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表2に示す。
【0161】
【0162】