(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124969
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20240906BHJP
H04W 4/10 20090101ALI20240906BHJP
H04W 48/18 20090101ALI20240906BHJP
【FI】
H04W48/16 132
H04W4/10
H04W48/18 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032993
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 優樹
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE41
(57)【要約】
【課題】業務用無線機のシステムやPoCのシステムからなる複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末と接続し、複数の通信端末から音声信号の送信先を効率良く制御し良好な送信とする技術を提供する。
【解決手段】中継品質取得部370は、第1基地局装置と第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、第2基地局装置と第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得する。評価値算出部376は、第1中継品質情報および第2中継品質情報と記憶部に記憶された評価係数とに基づいて第1評価値および第2評価値を算出する。選択部378は、第1評価値と第2評価値を用いて、第1通信端末と第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局装置との間で第1無線通信方式により通信する第1通信端末、および第2基地局装置との間で第2無線通信方式により通信する第2通信端末のそれぞれと通信する通信装置であって、
前記第1通信端末および前記第2通信端末と通信する通信部と、
前記第1基地局装置と前記第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、前記第2基地局装置と前記第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得する中継品質取得部と、
前記第1中継品質情報と前記第2中継品質情報とに関する評価係数を記憶する記憶部と、
前記第1中継品質情報および前記第2中継品質情報と前記記憶部に記憶された評価係数とに基づいて第1評価値および第2評価値を算出する評価値算出部と、
前記第1評価値と前記第2評価値を用いて、前記第1通信端末と前記第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択する選択部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
第1基地局装置との間で第1無線通信方式により通信する第1通信端末および第2基地局装置との間で第2無線通信方式により通信する第2通信端末のそれぞれと通信する通信装置であって、
前記第1通信端末および前記第2通信端末と第3無線通信方式により通信する通信部と、
前記第1通信端末と前記通信部との間の通信状態を第1接続品質情報として取得するとともに、前記第2通信端末と前記通信部との間の通信状態を第2接続品質情報として取得する接続品質取得部と、
前記第1基地局装置と前記第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、前記第2基地局装置と前記第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得する中継品質取得部と、
前記第1中継品質情報と前記第2中継品質情報とに関する評価係数を記憶する記憶部と、
前記第1接続品質情報および前記第1中継品質情報と、前記第2接続品質情報および前記第2中継品質情報と、前記記憶部に記憶された評価係数とに基づいて、第1評価値と第2評価値とを算出する評価値算出部と、
前記第1評価値と前記第2評価値を用いて、前記第1通信端末と前記第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択する選択部と、
を備える通信装置。
【請求項3】
更に、無線通信方式に関する重みづけ係数を前記記憶部に記憶しており、
前記評価値算出部で、前記第1評価値と前記第2評価値とを算出する際に、前記記憶部に記憶された前記重みづけ係数も用いる
請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1通信端末に関する第1状態情報と前記第2通信端末に関する第2状態情報とを取得する状態情報取得部をさらに備え、
前記選択部は、前記第1評価値と前記第2評価値との差に基づいて優先端末を選択しており、前記差が所定値以下の場合、前記第1状態情報と前記第2状態情報とに基づいて、前記第1通信端末と前記第2通信端末のうちの1つを前記優先端末として選択する請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項5】
第1基地局装置との間で第1無線通信方式により通信する第1通信端末および第2基地局装置との間で第2無線通信方式により通信する第2通信端末のそれぞれと通信する通信方法であって、
前記第1基地局装置と前記第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、前記第2基地局装置と前記第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得するステップと、
前記第1中継品質情報と前記第2中継品質情報とに関する評価係数が記憶部に記憶されており、
前記第1中継品質情報および前記第2中継品質情報と前記記憶部に記憶された評価係数とに基づいて第1評価値および第2評価値を算出するステップと、
前記第1評価値と前記第2評価値を用いて、前記第1通信端末と前記第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択するステップと、
を含む通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に複数の無線通信システムを使用する通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PTT(Push to Talk)機能は、半二重無線機のような使い勝手をユーザに提供する機能である。ユーザは電話番号などを入力することなく通話ボタンを押すだけで、他の複数のユーザに発呼し、発話することができる。他のユーザは、応答ボタンを押さなくてもそのユーザの携帯電話機から発話内容が音声出力される。携帯電話機におけるPTT機能は、業務用無線機のPTT機能と区別してPoC(Push-to-Talk over Cellular)機能とも呼ばれる。一方、携帯電話機と業務用無線機の両方の機能を備えたハイブリッド端末が考えられる。ハイブリッド機では、LTE等の携帯電話機の通信ネットワークにおけるPoC機能と、業務用無線機の通信ネットワークにおけるPTT機能の双方が目的によって使い分けられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、業務用無線機とPoC端末の機能を備えるハイブリッド端末では、製品が想定する仕様に準じた通信方式や通信対象となるサーバに接続されることを前提としてハイブリッド端末が構成されるため、持ち寄った業務用無線機のシステムとPoCのシステムとを活用して一体的なシステムとして運用しようとした場合、仕様の違いからハイブリッド端末をうまく活用できないことがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、業務用無線機のシステムやPoCのシステムからなる複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末と接続し、複数の通信端末から音声信号の送信先を効率良く制御し良好な送信とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信装置は、第1基地局装置との間で第1無線通信方式により通信する第1通信端末、および第2基地局装置との間で第2無線通信方式により通信する第2通信端末のそれぞれと通信する通信装置であって、第1通信端末および第2通信端末と通信する通信部と、第1基地局装置と第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、第2基地局装置と第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得する中継品質取得部と、第1中継品質情報と第2中継品質情報とに関する評価係数を記憶する記憶部と、第1中継品質情報および第2中継品質情報と記憶部に記憶された評価係数とに基づいて第1評価値および第2評価値を算出する評価値算出部と、第1評価値と第2評価値を用いて、第1通信端末と第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択する選択部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もまた、通信装置である。この装置は、第1基地局装置との間で第1無線通信方式により通信する第1通信端末および第2基地局装置との間で第2無線通信方式により通信する第2通信端末のそれぞれと通信する通信装置であって、第1通信端末および第2通信端末と第3無線通信方式により通信する通信部と、第1通信端末と通信部との間の通信状態を第1接続品質情報として取得するとともに、第2通信端末と通信部との間の通信状態を第2接続品質情報として取得する接続品質取得部と、第1基地局装置と第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、第2基地局装置と第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得する中継品質取得部と、第1中継品質情報と第2中継品質情報とに関する評価係数を記憶する記憶部と、第1接続品質情報および第1中継品質情報と、第2接続品質情報および第2中継品質情報と、記憶部に記憶された評価係数とに基づいて、第1評価値と第2評価値とを算出する評価値算出部と、第1評価値と第2評価値を用いて、第1通信端末と第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択する選択部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、通信方法である。この方法は、第1基地局装置との間で第1無線通信方式により通信する第1通信端末および第2基地局装置との間で第2無線通信方式により通信する第2通信端末のそれぞれと通信する通信方法であって、第1基地局装置と第1通信端末との間の通信状態を第1中継品質情報として取得するとともに、第2基地局装置と第2通信端末との間の通信状態を第2中継品質情報として取得するステップと、第1中継品質情報と第2中継品質情報とに関する評価係数が記憶部に記憶されており、第1中継品質情報および第2中継品質情報と記憶部に記憶された評価係数とに基づいて第1評価値および第2評価値を算出するステップと、第1評価値と第2評価値を用いて、第1通信端末と第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択するステップと、を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、業務用無線機のシステムやPoCのシステムからなる複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末と接続し、複数の通信端末から音声信号の送信先を効率良く制御し良好な送信ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例に係る第1無線通信システムと第2無線通信システムを含む構成を示す図である。
【
図3】
図2の記憶部に記憶されるデータベースのデータ構造を示す図である。
【
図4】
図2の記憶部に記憶されるパラメータテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図6】
図5の制御部による優先端末の決定手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図5の制御部による中継品質の導出手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図5の制御部による接続品質の導出手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図2の記憶部に記憶されるパラメータテーブルの別のデータ構造を示す図である。
【
図10】
図5の制御部による評価値の導出手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図2の通信装置による送信手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図2の通信装置による受信処理の概要を示す図である。
【
図13】
図2の通信装置による別の受信処理の概要を示す図である。
【
図15】
図14の読み出しプロセスの手順を示すフローチャートである。
【
図16】
図14の再生プロセスの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本実施例は、複数種類の無線通信方式のそれぞれに対応した通信端末に接続される通信装置に関する。通信装置は、スピーカ、マイク、PTTボタンを備え、接続された複数の通信端末を介して通話可能な装置である。複数の通信端末のうちの1つは、PoCアプリケーションを動作させるスマートフォンである。また、複数の通信端末のうちの別の1つは、PTTボタンを備えた業務用無線機である。以下、業務用無線機を無線機とも呼ぶ。通信装置は、各通信端末との間の通信接続状態と各通信端末と基地局装置との間の通信状態を確認しながら、PTTボタンが押された際に最適な通信端末を選択して音声信号を送信したり、複数の通信端末から受信する音声信号を選択的に再生したりする。ここで、通信状態は通信の品質のことである。以下では、(1)システムの概要、(2)優先端末の決定処理、(3)送信処理、(4)受信処理の順に説明する。
【0013】
(1)システムの概要
図1は、第1無線通信システム100と第2無線通信システム200を含む構成を示す。第1無線通信システム100は、第1基地局装置110、第1通信端末120、第1通信端末122、第1サーバ130を含み、第2無線通信システム200は、第2基地局装置210、第2通信端末220、第2通信端末222、第2サーバ230を含む。第1無線通信システム100に含まれる第1基地局装置110の数、第1サーバ130の数は「1」に限定されず、第1無線通信システム100に含まれる第1通信端末(第1通信端末120、第1通信端末122)の数は「2」に限定されない。第2無線通信システム200に含まれる第2基地局装置210の数、第2サーバ230の数は「1」に限定されず、第2無線通信システム200に含まれる第2通信端末(第2通信端末220、第2通信端末222)の数は「2」に限定されない。
【0014】
第1無線通信システム100は、例えば、業務用無線システムであり、業務用無線の無線通信方式により、第1基地局装置110と第1通信端末120(第1通信端末122)との間の通信を実行する。第1サーバ130は、第1無線通信システム100において使用されるサーバである。第2無線通信システム200は、例えば、LTE(Long Term Evolution)等の携帯電話システムのデータ通信機能を使用するPoCシステムであり、携帯電話の無線通信方式により、第2基地局装置210と第2通信端末220(第2通信端末222)との間の通信を実行する。第2通信端末220(第2通信端末222)はPoCアプリケーションを実行する。第2サーバ230は、第2無線通信システム200において使用されるサーバである。第1無線通信システム100における無線通信方式を第1無線通信方式と呼ぶ場合、第2無線通信システム200における無線通信方式は第2無線通信方式と呼ばれる。第1無線通信方式と第2無線通信方式は互いに異なる。
【0015】
ゲートウエイ10は、第1サーバ130と第2サーバ230とに接続され、第1無線通信システム100と第2無線通信システム200との間でプロトコル変換を実行する。例えば、ゲートウエイ10は、第1無線通信システム100のプロトコルにしたがった音声信号を第1サーバ130から受信すると、第2無線通信システム200のプロトコルに当該音声信号を変換し、変換した音声信号を第2サーバ230に送信する。また、ゲートウエイ10は、第2無線通信システム200のプロトコルにしたがった音声信号を第2サーバ230から受信すると、第1無線通信システム100のプロトコルに当該音声信号を変換し、変換した音声信号を第1サーバ130に送信する。このようなゲートウエイ10によって、第1無線通信システム100と第2無線通信システム200とにおいて同一内容の音声信号が伝送される。
【0016】
通信装置300は、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信システムにより、第1通信端末120(第1通信端末122)、第2通信端末220(第2通信端末222)と通信可能である。近距離無線通信システムにおける無線通信方式は第3無線通信方式とも呼ばれる。第3無線通信方式は、第1無線通信方式および第2無線通信方式とは異なる。ユーザは、通信装置300を使用して、第1通信端末120を介して第1無線通信システム100により音声通信を実行したり、第2通信端末220を介して第2無線通信システム200により音声通信を実行したりする。
【0017】
図2は、通信装置300の構成を示す。通信装置300は、通信部310、記憶部320、PTTボタン330、マイク340、スピーカ350、制御部360を含む。通信部310は、通信モジュール312と総称される第1通信モジュール312a、第2通信モジュール312b、第N通信モジュール312nを含む。
【0018】
複数の通信モジュール312のそれぞれは、近距離無線通信システムに対応し、第3無線通信方式により、
図1の第1通信端末120(第1通信端末122)、第2通信端末220(第2通信端末222)等と通信を実行する。例えば、第1通信モジュール312aは第1通信端末120と通信し、第2通信モジュール312bは第2通信端末220と通信する。第1通信モジュール312aは、第1通信端末120とペアリングすることによって、第1通信端末120に接続される。また、第2通信モジュール312bは、第2通信端末220とペアリングすることによって第2通信端末220に接続され、第2通信端末220のアプリケーションと通信する。第1通信モジュール312aは、第1通信端末120との接続と通信を定期的に試み、その結果の接続通信状態を記憶部320に記憶する。第2通信モジュール312b等も同様の処理を実行する。これらの通信モジュール312の動作は360により制御される。
【0019】
図3は、記憶部320に記憶されるデータベースのデータ構造を示す。RSM-IDは、各通信モジュール312を識別するための識別情報である。「接続FLAG」は、通信モジュール312が通信端末と第3無線通信方式により接続されたか否かを示す情報である。接続された場合に接続FLAGはOKを示し、接続されなかった場合に接続FLAGはNGを示す。「電波強度」(ICn)は、通信モジュール312が通信端末と第3無線通信方式により接続された場合の強度を示し、例えば、「XdBm」のように示される。
【0020】
「通信FLAG」は、通信モジュール312が通信端末に接続できた場合に、通信端末で動作するプログラムと通信できるか否かを示す情報である。通信できた場合に通信FLAGはOKを示し、通信できなかった場合に通信FLAGはNGを示す。「システム接続状態」は、通信端末で動作するプログラムが通信に使用する通信システムに接続されている否かを示す情報である。接続されている場合にシステム接続状態はシステム接続中を示し、接続されていない場合にシステム接続状態はシステム未接続を示す。「システムタイプ」は、通信端末が利用する通信システムのタイプに関する情報である。システムタイプは、例えば、PoC、LMRのように示される。「品質情報」(IQn)は、通信端末と基地局装置との間の品質を示す。「バッテリ残量」は各通信端末のバッテリの残量を示す。バッテリ残量は、例えば「Y%」、「残りZ時間」のように示される。「音質情報」は、通信システムの音質レベルを示す。音質情報は、例えば、「LOW」、「MID」、「HIGH」のように示される。「通信FLAG」、「システム接続状態」、「システムタイプ」、「品質情報」(IQn)、「音質情報」は、通信装置300から通信端末に提供を要求することによって、通信端末から提供される。
図2に戻る。
【0021】
PTTボタン330はユーザが押下げ可能な釦である。通信装置300を使用するユーザによって操作されるインターフェースである。PTTボタン330は、受けつけた操作を制御部360に出力する。PTTボタン330が押し下げられている場合に、いずれかの通信モジュール312は音声信号を送信可能である。一方、PTTボタン330が押し下げられていない場合に、各通信モジュール312は音声信号を受信可能である。
【0022】
マイク340は、ユーザがPTTボタン330を押し下げている場合に、ユーザにより発生された音声を取得する。マイク340は、取得した音声を電気信号に変換し、変換した音声(以下、「音声信号」という)を制御部360に出力する。制御部360は、ユーザがPTTボタンを押し下げていない場合に、いずれかの通信モジュール312から音声信号を受けつけ、音声信号を音声に変換してから音声を出力する。この音声信号は、いずれかの通信モジュール312が他の通信端末から受信した信号に含まれた音声信号である。制御部360は通信装置300の動作を制御する。
【0023】
(2)優先端末の決定処理
以下では、説明を明瞭にするために、第1通信モジュール312aが第1通信端末120と通信可能であり、第2通信モジュール312bが第2通信端末220と通信可能である状況を想定する。具体的に説明すると、第1通信モジュール312aと第2通信モジュール312bのいずれかは、通信端末に音声信号を送信したり、第1通信モジュール312aと第2通信モジュール312bのいずれかは通信端末からの音声信号を受信したりする。複数の通信端末のうち、音声信号の送受信のために優先的に使用すべき通信端末は「優先端末」と呼ばれる。また、複数の通信端末のうち、優先端末以外の通信端末は「非優先端末」と呼ばれる。優先端末は、第1通信端末120側の通信状態と第2通信端末220側の通信状態とを比較し、通信する際に優先的に使用する通信状態がより良い通信端末である。通信状態は、後述する接続品質や中継品質から求められる評価値により評価し、優先端末を決定する。このような通信状態の評価値により、随時、優先端末を決定しつつ、音声信号の送信や受信を行う。音声信号を送信する場合は、随時決定される優先端末に対して音声信号の送信を行う。これにより、通信状態が良くより確実に音声信号を届けられる可能性が高い通信端末が選択され、より確実に音声信号を通信相手に届けられるようにしている。音声信号を受信する場合は、随時決定される優先端末から到来する音声信号を優先的に再生するよう制御する。これにより、通信状態が良くより確実に送信された可能性の高い通信端末が選択され、より確実で品質の良い音声信号を再生できるようにしている。ここでは、複数の通信端末から1つの通信端末を優先端末として決定するための処理を説明する。
【0024】
図4は、記憶部320に記憶されるパラメータテーブルのデータ構造を示す。通信系統番号(Tn)は、無線通信システムまたは無線通信方式を識別するための番号を示す。例えば、第1無線通信方式がT1であり、第2無線通信方式がT2である。重みづけ係数R(Tn)は、複数の無線通信方式において、どの無線通信方式の通信端末を優先するかを係数として表現する。重みづけ係数R(Tn)の値が大きいほど優先される。
【0025】
「接続品質最小値」ICmin(Tn)は、使用に必要なICnの品質であり、これ以下では通信不可能であることを示す。「接続品質最大値」ICmax(Tn)は、使用に十分なICnの品質であり、これ以上あっても通信状況は変わらず良好であることを示す。「中継品質最小値」IQmin(Tn)は、使用に必要なIQnの品質であり、これ以下では通信不可能であることを示す。「中継品質最大値」IQmax(Tn)は、使用に十分なIQnの品質であり、これ以上あっても通信状況は変わらず良好であることを示す。これらの値は利用環境やユーザのポリシーによって予め定められる。
【0026】
図5は、制御部360の構成を示す。制御部360は、中継品質取得部370、接続品質取得部372、状態情報取得部374、評価値算出部376、選択部378を含む。
図6は、制御部360による優先端末の決定手順を示すフローチャートである。制御部360は、中継品質を導出する(S10)。制御部360は、接続品質を導出する(S12)。制御部360は、評価値を導出する(S14)。制御部360は、各評価値の比較により優先端末を決定する(S16)。以下では、(2-1)中継品質の導出、(2-2)接続品質の導出、(2-3)評価値の導出、(2-4)優先端末の決定の順に説明する。
【0027】
(2-1)中継品質の導出
中継品質取得部370は、品質情報IQnを記憶部320から取得するとともに、IQmin(Tn)、IQmax(Tn)も記憶部320から取得する。中継品質取得部370は、これらをもとに中継品質Qnを次のように計算する。
Qn=(IQn-IQmin(Tn))/(IQmax(Tn)-IQmin(Tn))
ここで、Qn≦0であればQn=0であり、1≦Qnであれば、Qn=1である。
【0028】
このような中継品質取得部370の処理は次のように示される。
図7は、制御部360による中継品質の導出手順を示すフローチャートである。中継品質取得部370は、データベースよりIQnを取得し(S50)、パラメータテーブルよりIQmin(Tn)、IQmax(Tn)を取得する(S52)。中継品質取得部370は、Qn=(IQn-IQmin(Tn))/(IQmax(Tn)-IQmin(Tn))を計算する(S54)。中継品質取得部370は、Qn≦0であれば(S56のY)、Qn=0とする(S58)。中継品質取得部370は、Qn≦0でなければ(S56のN)、ステップ58をスキップする。中継品質取得部370は、1≦Qnであれば(S60のY)、Qn=1とする(S62)。中継品質取得部370は、1≦Qnでなければ(S60のN)、ステップ62をスキップする。
図5に戻る。
【0029】
例えば、品質情報が電波強度である場合、IQmin(Tn)=95dBm、IQmax(Tn)=125dBmとする。これより、Qn=(IQn-95)/(125-95)と示される。IQnが95dBm以下であれば、Qnが0以下となるので、Qnは0とされる。また、IQnが125dBm以上であれば、Qnが1以上となるので、Qnは1とされる。
【0030】
例えば、第2通信端末220において電波強度をアンテナアイコンの本数0~4本で表示している場合、これらをIQ=1~4とする。また、IQmin=1(アンテナアイコン1本以下は通信できないと判断)、IQmax=3(アンテナアイコン3本以上であれば状況にかかわらず良好に通信できる)とする。これより、Qn=(IQ-1)/(3-1)と示される。アンテナアイコン1本以下であれば、Qnが0以下となるので、Qnは0とされる。また、アンテナアイコン3本以上であれば、Qnが1以上となるので、Qnは1とされる。このように中継品質取得部370は、第1基地局装置110と第1通信端末120との間の通信状態を第1中継品質情報Q1として取得するとともに、第2基地局装置210と第2通信端末220との間の通信状態を第2中継品質情報Q2として取得する。
【0031】
(2-2)接続品質の導出
接続品質取得部372は、品質情報ICnを記憶部320から取得するとともに、ICmin(Tn)、ICmax(Tn)も記憶部320から取得する。接続品質取得部372は、これらをもとに接続品質Cnを次のように計算する。
Cn=(ICn-ICmin(Tn))/(ICmax(Tn)-ICmin(Tn))
ここで、Cn≦0であればCn=0であり、1≦CnであればCn=1である。
【0032】
このような接続品質取得部372の処理は次のように示される。
図8は、制御部360による接続品質の導出手順を示すフローチャートである。接続品質取得部372は、データベースよりICnを取得し(S100)、パラメータテーブルよりICmin(Tn)、ICmax(Tn)を取得する(S102)。接続品質取得部372は、Cn=(ICn-ICmin(Tn))/(ICmax(Tn)-ICmin(Tn))を計算する(S104)。接続品質取得部372は、Cn≦0であれば(S106のY)、Cn=0とする(S108)。接続品質取得部372は、Cn≦0でなければ(S106のN)、ステップ108をスキップする。接続品質取得部372は、1≦Cnであれば(S110のY)、Cn=1とする(S112)。接続品質取得部372は、1≦Cnでなければ(S110のN)、ステップ112をスキップする。
図5に戻る。
【0033】
このように接続品質取得部372は、第1通信端末120と第1通信モジュール312aとの間の通信状態を第1接続品質情報C1として取得するとともに、第2通信端末220と第2通信モジュール312bとの間の通信状態を第2接続品質情報C2として取得する。
【0034】
(2-3)評価値の導出
図9は、記憶部320に記憶されるパラメータテーブルの別のデータ構造を示す図である。
図4に示したパラメータテーブルでは重みづけ係数R(Tn)が記憶されているが、
図9に示したパラメータテーブルでは、これに加えて、接続、中継それぞれの重要度を表す接続重みづけ係数RC(Tn)、中継重みづけ係数RQ(Tn)も記憶される。特に、中継重みづけ係数RQ(Tn)は、第1中継品質情報Q1と第2中継品質情報Q2とを同等の比較対象として比較可能にするための変換係数として、第1無線通信方式に対する第1評価係数RQ(T1)と、第2無線通信方式に対する第2評価係数RQ(T2)とも呼ばれる。ここで、例えば、第1通信端末側が業務用無線機で中継品質の品質情報がdBmを単位とする電波強度、第2通信端末側がスマートフォンで中継品質の品質情報が電波強度をアンテナアイコンの本数で表されている場合であっても、中継重みづけ係数RQ(Tn)を導入することにより、同列のものとして評価し、比較することができるようになる。別の構成として、例えば、第1通信端末側が業務用無線機で中継品質の品質情報がdBmを単位とする電波強度、第2通信端末側がスマートフォンで中継品質の品質情報がdBmを単位とするが第1通信端末側とは数値の取り得る範囲が異なる電波強度で表されている場合であっても、中継重みづけ係数RQ(Tn)を導入することにより、同列のものとして評価し、比較することができるようになる。更に別の構成として、例えば、第1通信端末側が業務用無線機で中継品質の品質情報が電波強度をアンテナアイコンの本数、第2通信端末側がスマートフォンで中継品質の品質情報が電波強度を第1通信端末側とは異なるアンテナアイコンの本数で表されている場合であっても、中継重みづけ係数RQ(Tn)を導入することにより、同列のものとして評価し、比較することができるようになる。また、接続重みづけ係数RC(Tn)は、第1通信端末側の第1接続品質情報C1と第2通信端末側の第2接続品質情報C2とを比較可能にするための変換係数として、第1通信端末側の第3評価係数RC(T1)と、第2通信端末側の第4評価係数RC(T2)とも呼ばれる。ここで、例えば、第1通信端末側が業務用無線機で接続品質の品質情報がdBmを単位とする電波強度、第2通信端末側がスマートフォンで接続品質の品質情報が電波強度をアンテナアイコンの本数で表されている場合であっても、接続重みづけ係数RC(Tn)を導入することにより、同列のものとして評価し、比較することができるようになる。また、別の構成として、例えば、第1通信端末側が業務用無線機で接続品質の品質情報がdBmを単位とする電波強度、第2通信端末側がスマートフォンで接続品質の品質情報がdBmを単位とするが第1通信端末側とは数値レンジが異なる電波強度で表されている場合であっても、接続重みづけ係数RC(Tn)を導入することにより、同列のものとして評価し、比較することができるようになる。更に別の構成として、例えば、第1通信端末側が業務用無線機で接続品質の品質情報が電波強度をアンテナアイコンの本数、第2通信端末側がスマートフォンで接続品質の品質情報が電波強度を第1通信端末側とは異なるアンテナアイコンの本数で表されている場合であっても、接続重みづけ係数RC(Tn)を導入することにより、同列のものとして評価し、比較することができるようになる。更に、重みづけ係数R(Tn)は、第1通信端末側の第5評価係数R(T1)と、第2通信端末側の第6評価係数R(T2)とも呼ばれる。この第1評価係数から第6評価係数は、第1通信端末と第2通信端末との品質情報の違いや端末間の重要度の違いを同列に扱うための評価係数であるともいえる。
図5に戻る。
【0035】
評価値算出部376は、評価値Vnを次のように計算する。
Vn=R(Tn)×{RC(Tn)×Cn+RQ(Tn)×Qn}
ここで、QnとCnのいずれかが0である場合、通信できないのでVn=0とされる。更に、接続品質Cnを利用せずに、中継品質Qnのみ利用して評価を行う場合には、RC(Tn)=0としてVnを算出するか、Cnの乗算処理を省略してVnを算出するとよい。更に、R(Tn)、RC(Tn)およびRQ(Tn)において、比較対象の片方を基準として正規化されるように重みづけ係数として算出されたものが記憶されている場合は、基準となる対象の重みづけ係数は1となるため乗算処理を省略してもよい。例えば、第1無線通信方式がT1、第2無線通信方式がT2であり、T1側を基準として正規化されるように重みづけ係数が算出されたものが記憶されている場合は、R(T1)/R(T1)=1、RC(T1)/RC(T1)=1、RQ(T1)/RQ(T1)=1となることから、V1=C1+Q1とすることで、乗算処理を省略して処理を簡単にしてもよい。また、T2側の係数は、R(T2)/R(T1)、RC(T2)/RC(T1)、RQ(T2)/RQ(T1)をあらかじめ算出して記憶しておき、評価値Vnの計算に利用することで処理を簡単にしてもよい。更に、R(Tn)において、重みづけを行わない場合、つまりR(Tn)=1の場合には、Vn=RC(Tn)×Cn+RQ(Tn)×QnとしてR(Tn)の乗算処理を省略して処理を簡単にしてもよい。
【0036】
このような評価値算出部376の処理は次のように示される。
図10は、制御部360による評価値の導出手順を示すフローチャートである。Cn=0でなく(S150のN)、Qn=0でない場合(S152のN)、評価値算出部376は、Vn=R(Tn)×{RC(Tn)×Cn+RQ(Tn)×Qn}を計算する(S154)。Cn=0である場合(S150のY)、またはQn=0である場合(S152のY)、評価値算出部376は、Vn=0とする(S156)。
図5に戻る。このように評価値算出部376は、第1接続品質情報C1と第1中継品質情報Q1と第1評価係数とをもとに第1評価値V1を算出するとともに、第2接続品質情報C2と第2中継品質情報Q2と第2評価係数とをもとに第2評価値V2を算出する。
【0037】
処理を簡単にするために、評価値算出部376は、次のように評価値Vnを計算してもよい。
Vn=R(Tn)×Qn×Cn
ここで、接続品質Cnを利用せずに、中継品質Qnのみ利用して評価を行う場合には、Cn=1としてVnを算出するか、Cnの乗算処理を省略してVnを算出するとよい。また、R(Tn)において、比較対象の片方を基準として正規化されるように重みづけ係数として算出されたものが記憶されている場合は、基準となる対象の重みづけ係数は1となるため乗算処理を省略してもよい。例えば、第1無線通信方式がT1、第2無線通信方式がT2であり、T1側を基準として正規化されるように重みづけ係数が算出されたものが記憶されている場合は、R(T1)/R(T1)=1となることから、V1=Q1×C1とすることで、R(T1)の乗算処理を省略して処理を簡単にしてもよい。また、T2側の係数は、R(T2)/R(T1)をあらかじめ算出して記憶しておき、評価値Vnの計算に利用することで処理を簡単にしてもよい。更に、R(Tn)において、重みづけを行わない場合、つまりR(Tn)=1の場合には、Vn=Qn×CnとしてR(Tn)の乗算処理を省略して処理を簡単にしてもよい。
【0038】
また、評価値算出部376は、次のように評価値Vnを計算してもよい。本実施例では、通信装置300と第3無線通信方式で通信接続して第1通信端末および第2通信端末から得られる品質情報が同じ表現形式である場合、例えば、品質情報が電波強度で電波強度の単位がdBmで、電波強度の取り得る範囲も同じである場合には、評価式VnであるVn=R(Tn)×{RC(Tn)×Cn+RQ(Tn)×Qn}において、第1通信端末側をT1、第2通信端末側をT2とすると、RC(T1)とRC(T2)は、ともに1であればよい。また本実施例において、R(Tn)による重みづけを行わない場合、つまりR(Tn)=1の場合には、評価式Vnは、Vn=Cn+RQ(Tn)×Qnと変形できる。第1通信端末側をT1、第2通信端末側をT2とすると以下となる。
V1=C1+RQ(T1)×Q1
V2=C2+RQ(T2)×Q2
上記のRQ(T1)とRQ(T2)を、記憶部320に記憶されるパラメータテーブルとして記憶しておき、評価値算出部376は評価値Vnを計算する際に利用するとよい。
【0039】
上述のように変形した評価式VnであるVn=Cn+RQ(Tn)×Qnは、例えば、T1側を基準として正規化されるように係数が算出されたものが記憶されている場合は、RQ(T1)/RQ(T1)=1となることから、V1=C1+Q1と変形できる。このように変形することでRQ(T1)の乗算処理を省略して処理を簡単にしてもよい。また、V2=C2+RQ(T2)/RQ(T1)×Q2と変形し、T2側の係数は、RQ(T2)/RQ(T1)をあらかじめ算出して記憶しておき、評価値Vnの計算に利用することで処理を簡単にしてもよい。つまり、記憶部320に記憶されるパラメータテーブルには、少なくとも1つのRQ(T2)/RQ(T1)の計算結果を評価係数として記憶し、評価値Vnを計算する際に利用すればよい。
【0040】
更に、V1=C1+Q1、
V2=C2+RQ(T2)/RQ(T1)×Q2
において、接続品質Cnを利用せずに、中継品質Qnのみ利用して評価を行う場合には、Cn=0としてVnを算出するとよい。T2側の係数は、RQ(T2)/RQ(T1)をあらかじめ算出して記憶しておき、評価値Vnの計算に利用することで処理を簡単にしてもよい。つまり、記憶部320に記憶されるパラメータテーブルには、少なくとも1つのRQ(T2)/RQ(T1)の計算結果を評価係数として記憶し、評価値Vnを計算する際に利用すればよい。
【0041】
(2-4)優先端末の決定
選択部378は、複数の評価値を比較して、評価値の大きい方の通信端末を優先端末として選択する。具体的に説明すると、選択部378は、第1評価値V1と第2評価値V2とを比較し、第1評価値V1が第2評価値V2よりも大きい場合に、第1通信端末120を優先端末として選択する。一方、選択部378は、第2評価値V2が第1評価値V1よりも大きい場合に、第2通信端末220を優先端末として選択する。第1評価値V1と第2評価値V2とが同一、もしくは第1評価値V1と第2評価値V2との差の大きさが所定値以下である場合、第1通信端末120を選択するか、第2通信端末220を選択するかが予め定められてもよい。
【0042】
複数の評価値、例えば第1評価値V1と第2評価値V2が同一、もしくは第1評価値V1と第2評価値V2との差の大きさが所定値以下である場合、次の処理が実行されてもよい。状態情報取得部374は、記憶部320のデータベースから各通信端末の状態情報を取得する。例えば、状態情報取得部374は、第1通信端末120の状態情報(以下、「第1状態情報」という)と第2通信端末220の状態情報(以下、「第2状態情報」という)を取得する。通信端末の状態情報は、例えば、バッテリ残量、音質情報を含む。状態情報には、省電力モード情報、予測使用可能時間、通信種別、通信遅延時間、通信パケットロス率、の中から少なくとも1つが含まれてもよい。
【0043】
選択部378は、第1評価値V1と第2評価値V2とが同一、もしくは第1評価値V1と第2評価値V2との差の大きさが所定値以下であり、第1通信端末120と第2通信端末220のうちの1つを選択できないと判定された場合、第1状態情報と第2状態情報とをもとに、第1通信端末120と第2通信端末220のうちの1つを選択する。選択部378は、バッテリ残量の多い方の通信端末を選択したり、音質レベルの高い方の通信端末を選択したりする。
【0044】
(3)送信処理
通信装置300のPTTボタン330がユーザにより押し下げられると、制御部360は、通信モジュール312に接続され、かつ基地局装置と通信可能な通信端末が存在するかを確認する。1つだけの通信端末が存在する場合、制御部360は、当該通信端末に接続された通信モジュール312の使用を決定する。例えば、制御部360は、第1通信端末120だけが存在する場合に第1通信モジュール312aの使用を決定し、第2通信端末220だけが存在する場合に第2通信モジュール312bの使用を決定する。
【0045】
複数の通信端末、例えば第1通信端末120と第2通信端末220とが存在する場合、制御部360は、既に決定した優先端末を選択する。例えば、制御部360は、第1通信端末120が優先端末である場合に第1通信端末120を選択し、第2通信端末220が優先端末である場合に第2通信端末220を選択する。
【0046】
制御部360は、通信端末を選択すると、マイク340からの音声信号を受けつける。制御部360は、音声信号をアナログ信号からデジタル信号に変換することによって、デジタル信号の音声信号(以下、これもまた「音声信号」という)を生成する。制御部360は、選択した通信端末と接続される通信モジュール312に音声信号を出力する。通信モジュール312は、音声信号を通信端末に送信する。
【0047】
ここで、通信モジュール312が優先端末に接続できない場合、または優先端末が基地局装置と通信できない場合、制御部360は、優先端末ではない通信端末を選択する。その際、制御部360は、選択した通信端末に接続される通信モジュール312に音声信号を出力する。以上の説明に加えて、制御部360は、音声信号にヘッダ情報を付加してもよい。ヘッダ情報には、送信用に選択された通信端末を含む無線通信システムの通信システムIDが付加される。
【0048】
図11は、通信装置300による送信手順を示すフローチャートである。PTTボタン330は操作待ちをする(S200)。PTTボタン330が押し下げられる(S202)。制御部360は、通信モジュール312に接続され、かつ通信可能な通信端末の候補を作成する(S204)。候補数が「0」である場合(S206のY)、制御部360は、送信不可能と判定し、エラー音をスピーカ350から出力させて(S208)、ステップ200に戻る。
【0049】
候補数が「0」でなく(S206のN)、「1」でない場合(S210のN)、制御部360は、優先度の高い通信端末を選択してから(S212)、選択した通信端末を使って音声信号を送信(S214)して、ステップ200に戻る。候補数が「1」である場合(S210のY)、制御部360は、1つの候補を通信端末に選択してから(S216)、選択した通信端末を使って音声信号を送信(S214)して、ステップ200に戻る。
【0050】
(4)受信処理
通信装置300における複数の通信モジュール312のそれぞれは、通信端末からの音声信号を受信する。制御部360は、各通信モジュール312において受信された音声信号の全てを再生せず、複数の音声信号のうちのいずれかを選択して再生する。
【0051】
図12は、通信装置300による受信処理の概要を示す。横軸が時間を示す。また、上段に優先端末との通信を示し、下段に優先端末ではない通信端末(以下、「非優先端末」という)との通信を示す。ここでは、非優先端末からの音声信号よりも優先端末からの音声信号を先に受信する場合を想定する。通信装置300の通信部310は、優先端末からの音声信号と非優先端末からの音声信号とを受信していない状態において、優先端末からの音声信号の受信を開始し、非優先端末からの音声信号の受信を開始しない。制御部360は、優先端末からの音声信号が有音声状態である場合、優先端末からの音声信号を再生するよう制御する。再生された音声はスピーカ350から出力される。優先端末からの音声信号を再生している間に、通信部310が非優先端末からの音声信号の受信を開始しても、制御部360は、非優先端末からの音声信号を再生しない。
【0052】
図13は、通信装置300による別の受信処理の概要を示す。横軸が時間を示す。また、上段に非優先端末との通信を示し、下段に優先端末との通信を示す。ここでは、優先端末からの音声信号よりも非優先端末からの音声信号を先に受信する場合を想定する。通信装置300の通信部310は、優先端末からの音声信号と非優先端末からの音声信号とを受信していない状態において、非優先端末からの音声信号の受信を開始し、優先端末からの音声信号の受信を開始しない。
【0053】
制御部360は、優先端末からの音声信号の受信を待機する所定期間(以下、「待機時間」ともいう)Tを予め設定する。制御部360は、非通信端末からの音声信号が無音状態から有音声状態となってから待機時間T内に優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態とならなかった場合、非優先端末からの音声信号を再生するよう制御する。つまり、非優先端末からの音声信号は待機時間T遅延して再生される。一方、制御部360は、非優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態となってから待機時間T内に優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態となった場合、優先端末からの音声信号を再生するよう制御する。そのため、非優先端末からの音声信号は再生されない。
【0054】
図14は、制御部360の別の構成を示す。制御部360は、読み出しプロセス400と総称される第1読み出しプロセス400a、第2読み出しプロセス400b、状態FLAG402と総称される第1状態FLAG402a、第2状態FLAG402b、音声信号404と総称される第1音声信号404a、第2音声信号404b、再生プロセス406を含む。
【0055】
第1読み出しプロセス400aは、第1通信モジュール312aに接続され、第1通信モジュール312aの状態を確認し、確認した状態を第1状態FLAG402aとして設定する。また、第1読み出しプロセス400aは、第1通信モジュール312aから第1音声信号404aを読み出す。第2読み出しプロセス400bは、第2通信モジュール312bに接続され、第2通信モジュール312bの状態を確認し、確認した状態を第2状態FLAG402bとして設定する。また、第2読み出しプロセス400bは、第2通信モジュール312bから第2音声信号404bを読み出す。再生プロセス406は、第1状態FLAG402aと第2状態FLAG402bを確認し、それに応じて第1音声信号404aと第2音声信号404bのいずれかを再生する。通信モジュール312に応じた一覧の処理単位は「ノード」とも呼ばれる。
【0056】
図15は、読み出しプロセス400の手順を示すフローチャートである。このプロセスはノード毎に実行される。読み出しプロセス400は、状態FLAG402を「受信待ち」にセットする(S250)。読み出しプロセス400は、通信モジュール312の状態を取得する(S252)。音声信号404がなければ(S254のN)、ステップ252に戻る。音声信号404があれば(S254のY)、読み出しプロセス400は、状態FLAG402を「受信中」にセットする(S256)。読み出しプロセス400は、音声信号404を受信し(S258)、音声信号404をバッファメモリに保存する(S260)。バッファメモリは例えばFIFO(First In, First Out)メモリなどで実現される。また、バッファメモリは、記憶部320に含まれてもよい。読み出しプロセス400は、通信モジュール312の状態を取得する(S262)。音声信号404があれば(S264のY)、ステップ258に戻る。音声信号404がなければ(S264のN)、読み出しプロセス400は、状態FLAG402を「受信待ち」にセット(S266)し、ステップ252に戻る。ここでは、音声信号404の有無で状態FLAG402をセットしたり、処理を変更したりしているが、コマンドによって通信端末が受信中か否かを取得し、それをもって状態FLAG402のセットおよび動作の変更がなされてもよい。
【0057】
図16は、再生プロセス406の手順を示すフローチャートである。再生プロセス406は全ノードの状態を取得する(S300)。全ての状態FLAG402が「受信待ち」であれば(S302のY)、ステップ300に戻る。全ての状態FLAG402が「受信待ち」でない場合(S302のN)、再生プロセス406は受信開始時刻を現在時刻とする(S304)。再生プロセス406は全ノードの状態を取得する(S306)。
【0058】
優先端末に対応したノード(以下、「優先ノード」という)の状態FLAG402が「受信中」であれば(S308のY)、再生プロセス406は、優先ノードを再生対象のノード(以下、「再生対象ノード」という)とする(S310)。一方、優先ノードの状態FLAG402が「受信中」でなければ(S308のN)、再生プロセス406は、tを現在時刻-受信開始時刻とする(S312)。t>Tでなければ(S314のN)、ステップ306に戻る。t>Tであれば(S314のY)、受信開始時刻からT時間経過したノードを再生対象ノードとする(S316)。
【0059】
再生プロセス406は、再生対象ノードのバッファメモリから音声信号404を読み出し(S318)、読み出した音声信号404を再生する(S320)。再生対象ノードのバッファメモリに残り音声信号404があれば(S322のY)、ステップ318に戻る。再生対象ノードのバッファメモリに残り音声信号404がない場合(S322のN)、再生プロセス406は全ノードの状態を取得する(S324)。全ての状態FLAG402が「受信待ち」でなければ(S326のN)、ステップ324に戻る。全ての状態FLAG402が「受信待ち」であれば(S326のY)、ステップ300に戻る。
【0060】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0061】
本実施例によれば、第1無線通信方式を使用する第1通信端末に対する第1接続品質情報と第1中継品質情報と第1評価係数から第1評価値を算出し、第2無線通信方式を使用する第2通信端末に対する第2接続品質情報と第2中継品質情報と第2評価係数から第2評価値を算出するので、第1評価値と第2評価値とを比較できる。また、第1評価値と第2評価値とを比較するので、第1通信端末と第2通信端末のうちの1つを優先端末として選択できる。また、第1通信端末と第2通信端末のうちの1つが優先端末として選択されるので、複数の通信端末が使用可能であっても優先端末を使用できる。また、複数の通信端末が使用可能であっても優先端末が使用されるので、複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末を一体的に利用できる。また、優先端末を送信に使用するので、複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末を一体的に利用できる。
【0062】
また、優先端末からの音声信号が有音声状態である場合、優先端末からの音声信号を再生するよう制御するので、複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末を一体的に利用できる。また、非優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態となってから所定期間内に優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態となった場合、優先端末からの音声信号を再生するよう制御するので、複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末を一体的に利用できる。また、非優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態となってから所定期間内に優先端末からの音声信号が無音状態から有音声状態とならなかった場合、非優先端末からの音声信号を再生するよう制御するので、複数の無線通信システムで運用されている複数の通信端末を一体的に利用できる。
【0063】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。実施例では、音声信号について説明したが、これに限定されずデータ信号などの情報信号であってもよい。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0064】
本実施例における評価値算出部376は、接続品質情報と中継品質情報とをもとに評価値を算出している。しかしながらこれに限らず例えば、評価値算出部376は、中継品質情報をもとに評価値を算出してもよい。例えば、中継品質情報と中継重みづけ係数とを乗算することによって評価値が算出される。本変形例によれば、評価値の算出を簡易にできる。
【符号の説明】
【0065】
10 ゲートウエイ、 100 第1無線通信システム、 110 第1基地局装置、 120,122 第1通信端末、 130 第1サーバ、 200 第2無線通信システム、 210 第2基地局装置、 220,222 第2通信端末、 230 第2サーバ、 300 通信装置、 310 通信部、 312 通信モジュール、 320 記憶部、 330 PTTボタン、 340 マイク、 350 スピーカ、 360 制御部、 370 中継品質取得部、 372 接続品質取得部、 374 状態情報取得部、 376 評価値算出部、 378 選択部、 400 読み出しプロセス、 402 状態FLAG、 404 音声信号、 406 再生プロセス。