(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124988
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】状態判定装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240906BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20240906BHJP
【FI】
A61B5/16 110
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033024
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】開発 巳智子
(72)【発明者】
【氏名】大下 裕一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理沙
(72)【発明者】
【氏名】村田 正幸
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ06
4C038PS01
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】対象者の状態の判定の精度を向上させる。
【解決手段】本開示の一実施形態である状態判定装置は、対象者の状態を判定する、制御部を備えた状態判定装置であって、前記制御部は、センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出し、モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力し、複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択し、前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の状態を判定する、制御部を備えた状態判定装置であって、
前記制御部は、
センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出し、
モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力し、
複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択し、
前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定する、
状態判定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
いずれの状態も前記確信度が閾値よりも低い特徴量を判定に用いない、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記確信度に応じて前記各状態の特徴量に重み付けをして、前記対象者の状態を判定する、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記対象者の前記各状態による差が閾値よりも小さい特徴量を判定に用いない、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項5】
前記モデルは、前記各状態のラベルが付与された特徴量を教師データとして機械学習することによって生成される、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項6】
前記モデルは、ベイジアンアトラクタモデルである、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項7】
前記抽出された特徴量は、同一の検知装置に備えられた異なるセンサーが測定したセンサーデータから抽出された特徴量である、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項8】
前記抽出された特徴量は、異なる検知装置に備えられたセンサーが測定したセンサーデータから抽出された特徴量である、請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項9】
対象者の状態を判定する、状態判定装置の制御部が実行する方法であって、
センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出するステップと、
モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力するステップと、
複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択するステップと、
前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
対象者の状態を判定する、状態判定装置の制御部に、
センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出することと、
モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力することと、
複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択することと、
前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状態判定装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のセンサーが測定した対象者に関するデータを用いて、当該対象者の状態を判定することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Schmidt, Philip, et al. "Introducing wesad, a multimodal dataset for wearable stress and affect detection." Proceedings of the 20th ACM international conference on multimodal interaction. 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサーが測定したデータがノイズを含んでいたり、測定時の状況によっては正常に判定できなかったり、対象者に関するデータがその対象者の判定に適した類の情報ではなかったり、と当該対象者の状態を正確に判定することができないことがある。
【0005】
本開示では、対象者の状態の判定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様による状態判定装置は、
対象者の状態を判定する、制御部を備えた状態判定装置であって、
前記制御部は、
センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出し、
モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力し、
複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択し、
前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定する。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、 有用な特徴量を用いて、対象者の状態を判定することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、
いずれの状態も前記確信度が閾値よりも低い特徴量を判定に用いない。
【0009】
本開示の第2の態様によれば、状況に応じた有用な特徴量を用いることができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1の態様に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、
前記確信度に応じて前記各状態の特徴量に重み付けをして、前記対象者の状態を判定する。
【0011】
本開示の第3の態様によれば、状況に応じた有用な特徴量を用いることができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかに記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、
前記対象者の前記各状態による差が閾値よりも小さい特徴量を判定に用いない。
【0013】
本開示の第4の態様によれば、個々人に応じた有用な特徴量を用いることができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の状態判定装置であって、
前記モデルは、前記各状態のラベルが付与された特徴量を教師データとして機械学習することによって生成される。
【0015】
本開示の第5の態様によれば、種々の状態を判定することができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の状態判定装置であって、
前記モデルは、ベイジアンアトラクタモデルである、請求項1に記載の状態判定装置。
【0017】
本開示の第6の態様によれば、人間の脳の認知の過程に基づくモデルを用いることができ、センサーデータがノイズを含んでいたとしても正確に状態を判定することができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれかに記載の状態判定装置であって、
前記抽出された特徴量は、同一の検知装置に備えられた異なるセンサーが測定したセンサーデータから抽出された特徴量である。
【0019】
本開示の第7の態様によれば、検知装置が複数のセンサーを備える場合に、有用なセンサーを用いることができる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれかに記載の状態判定装置であって、
前記抽出された特徴量は、異なる検知装置に備えられたセンサーが測定したセンサーデータから抽出された特徴量である。
【0021】
本開示の第8の態様によれば、複数の検知装置が測定する場合に、有用な検知装置を用いることができる。
【0022】
本開示の第9の態様による方法は、
対象者の状態を判定する、状態判定装置の制御部が実行する方法であって、
センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出するステップと、
モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力するステップと、
複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択するステップと、
前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定するステップと、
を含む。
【0023】
本開示の第10の態様によるプログラムは、
対象者の状態を判定する、状態判定装置の制御部に、
センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出することと、
モデルに、前記特徴量を入力して、前記対象者が各状態である確信度を出力することと、
複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択することと、
前記選択した特徴量を用いて前記対象者の状態を判定することと、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る状態判定装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る制御部の機能構成を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るセンサーデータと特徴量と各状態の確信度について説明するための図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る状態判定処理のフローチャートである。
【
図6】本開示の一実施形態に係る学習処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本開示の実施の形態を説明する。
【0026】
<用語の説明>
・本明細書において、「状態」は、対象者の心身の状態(例えば、精神的、心理的な状態、身体の状態等)を含む。例えば、「状態」は、ストレスの状態である。状態は、2つ(例えば、"ストレスが有る"と"ストレスが無い"の2つ)に分類されてもよいし、3つ以上(例えば、ストレスの度合い:1、ストレスの度合い:2、ストレスの度合い:3、・・・)に分類されてもよい。なお、本明細書では、主にストレスの状態の判定について説明するが、本開示を任意の状態の判定に適用することができる。
・本明細書において、「センサー」は、対象者に関するデータ(例えば、対象者の生体情報、対象者の行動を示す情報)を測定する。例えば、「センサー」は、体温、皮膚電気活動(Electro Dermal Activity)、心拍等を測定する。以下、センサーが測定した対象者に関するデータをセンサーデータともいう。
・本明細書において、「特徴量」は、センサーデータから抽出される特徴量である。例えば、「特徴量」は、一定の時間内に測定されたセンサーデータの平均値、中央値等であるが、これらに限定されず、最頻値、最大値、最小値、標準偏差、分散等のセンサーデータから導出される任意の値であってよい。なお、特徴量は、センサーデータの生データ(センサーデータのまま)であってもよい。
【0027】
<全体の構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。
【0028】
[実施例1]
状態判定システム1は、端末(状態判定装置)11と、検知装置20と、を含む。実施例1では、端末11が、対象者30の状態を判定する。
【0029】
<<端末(状態判定装置)>>
端末(状態判定装置)11は、検知装置20が測定した対象者30に関するデータ(詳細には、検知装置20が備えるセンサーが測定したセンサーデータ)の特徴量を用いて、対象者30の状態を判定する。端末11は、任意のネットワーク(無線または有線)またはケーブルを介して、検知装置20とデータを送受信することができる。端末11は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等のコンピュータである。
【0030】
<<検知装置>>
検知装置20は、対象者30に関するデータ(例えば、対象者30の生体情報、対象者30の行動を示す情報)を測定する。検知装置20は、1つまたは複数のセンサーを備える。例えば、検知装置20は、スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスである。なお、
図1では、1つの検知装置20が対象者30に関するデータを測定しているが、複数の検知装置20が対象者30に関するデータを測定してもよい。
【0031】
[実施例2]
状態判定システム1は、端末11と、サーバ(状態判定装置)12と、検知装置20と、を含む。実施例2では、サーバ12が、対象者30の状態を判定する。
【0032】
<<端末>>
端末11は、検知装置20が測定した対象者30に関するデータ(詳細には、検知装置20が備えるセンサーが測定したセンサーデータ)を検知装置20から受信して、当該受信した対象者30に関するデータをサーバ12へ送信する。端末11は、任意のネットワーク(無線または有線)またはケーブルを介して、検知装置20とデータを送受信することができる。端末11は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等のコンピュータである。
【0033】
<<サーバ(状態判定装置)>>
サーバ(状態判定装置)12は、対象者30の状態を判定する。詳細には、サーバ12は、対象者30に関するデータ(つまり、検知装置20が備えるセンサーが測定したセンサーデータ)を端末11から受信して、当該受信した対象者30に関するデータの特徴量を用いて対象者30の状態を判定して、判定結果を端末11へ送信する。サーバ12は、任意のネットワーク(無線または有線)を介して、端末11とデータを送受信することができる。サーバ12は、1つまたは複数のコンピュータから構成される。
【0034】
<<検知装置>>
検知装置20は、対象者30に関するデータ(例えば、対象者30の生体情報、対象者30の行動を示す情報)を測定する。検知装置20は、1つまたは複数のセンサーを備える。例えば、検知装置20は、スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスである。なお、
図1では、1つの検知装置20が対象者30に関するデータを測定しているが、複数の検知装置20が対象者30に関するデータを測定してもよい。
【0035】
[他の実施例]
なお、上記の実施例1および実施例2では、状態判定装置が検知装置20とは別の装置であったが、状態判定装置と検知装置20を1つの装置で実装してもよい(つまり、検知装置20が状態判定装置を備える)。
【0036】
なお、対象者30の状態を判定する処理は、端末11とサーバ12と検知装置20との2つ以上で分散されて実行されてもよい。
【0037】
<ハードウェア構成>
図2は、本開示の一実施形態に係る状態判定装置(端末11、サーバ12、検知装置20)のハードウェア構成を示す図である。状態判定装置(端末11、サーバ12、検知装置20)は、制御部1001と、主記憶部1002と、補助記憶部1003と、入力部1004と、出力部1005と、インタフェース部1006と、を備えることができる。なお、検知装置20は、1つまたは複数のセンサーを備える。以下、それぞれについて説明する。
【0038】
制御部1001は、補助記憶部1003にインストールされている各種プログラムを実行するプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)など)である。
【0039】
主記憶部1002は、不揮発性メモリ(ROM(Read Only Memory))および揮発性メモリ(RAM(Random Access Memory))を含む。ROMは、補助記憶部1003にインストールされている各種プログラムを制御部1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する。RAMは、補助記憶部1003にインストールされている各種プログラムが制御部1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する。
【0040】
補助記憶部1003は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0041】
入力部1004は、状態判定装置(端末11、サーバ12、検知装置20)の操作者が状態判定装置(端末11、サーバ12、検知装置20)に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0042】
出力部1005は、状態判定装置(端末11、サーバ12、検知装置20)の内部状態等を出力する出力デバイスである。
【0043】
インタフェース部1006は、ネットワークに接続し、他の装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0044】
<機能構成>
図3は、本開示の一実施形態に係る制御部1001の機能構成を示す図である。制御部1001は、センサーデータ取得部101と、特徴量抽出部102と、推論部103と、モデル記憶部104と、特徴量選択部105と、状態判定部106と、判定結果提示部107と、学習部108と、を備えることができる。制御部1001は、プログラムを実行することによって、センサーデータ取得部101、特徴量抽出部102、推論部103、特徴量選択部105、状態判定部106、判定結果提示部107、学習部108、として機能することができる。
【0045】
センサーデータ取得部101は、検知装置20が備えるセンサーが測定したセンサーデータ(つまり、対象者30に関するデータ)を取得する。
【0046】
特徴量抽出部102は、センサーデータ取得部101が取得したセンサーデータ(つまり、対象者30に関するデータ)から、特徴量を抽出する。
【0047】
推論部103は、モデル記憶部104に記憶されているモデルに、特徴量抽出部102が抽出した特徴量を入力して、対象者30が各状態である確信度を出力する。
【0048】
モデル記憶部104には、学習部108が機械学習した、特徴量が入力されると各状態の確信度が出力されるモデルが記憶されている。
【0049】
特徴量選択部105は、特徴量抽出部102が抽出した複数の特徴量のうち、対象者30の状態の判定に用いる特徴量を選択する。
【0050】
例えば、特徴量選択部105は、いずれの状態も推論部103が出力した確信度が閾値よりも低い特徴量を判定に用いない。例えば、特徴量選択部105は、推論部103が出力した確信度に応じて各状態(つまり、当該確信度であった状態)の特徴量に重み付けをして、対象者30の状態を判定する。
【0051】
例えば、特徴量選択部105は、対象者30の各状態による差が閾値よりも小さい特徴量を判定に用いない。
【0052】
状態判定部106は、特徴量選択部105が選択した特徴量を用いて、対象者30の状態を判定する。
【0053】
判定結果提示部107は、状態判定部106が判定した結果を提示する。
【0054】
学習部108は、各状態のラベルが付与された特徴量を教師データとして機械学習することによって、特徴量が入力されると各状態の確信度が出力されるモデルを生成する。
【0055】
図4は、本開示の一実施形態に係るセンサーデータと特徴量と各状態の確信度について説明するための図である。
【0056】
上述したように、1つまたは複数の検知装置(
図4の例では、検知装置A、検知装置B、検知装置Cとする)は、対象者30に関するデータ(センサーデータ)を測定する。詳細には、検知装置20が備える1つまたは複数のセンサー21(
図4の例では、検知装置Aがセンサーa、センサーbを備え、検知装置Bがセンサーcを備え、検知装置Cがセンサーdを備えるとする)は、対象者30に関するデータ(センサーデータ)を測定する。
【0057】
各センサーデータから、1つまたは複数の特徴量が抽出される。
図4の例では、センサーaが測定したセンサーデータから特徴量a1と特徴量a2が抽出され、センサーbが測定したセンサーデータから特徴量b1が抽出され、センサーcが測定したセンサーデータから特徴量c1と特徴量c2が抽出され、センサーdが測定したセンサーデータから特徴量d1が抽出されている。
【0058】
各特徴量がモデルに入力されると、各状態の確信度が出力される。
図4の例では、特徴量a1、特徴量a2、特徴量b1、特徴量c1、特徴量c2、特徴量d1の各々がモデルに入力されると、各状態(例えば、"ストレスが有る"と"ストレスが無い"の2つ)の確信度が出力される。
【0059】
例えば、いずれの状態の確信度(つまり、"ストレスが有る"の確信度と"ストレスが無い"の確信度の両方)も閾値(
図4の例では、0.3とする)よりも低い特徴量を判定に用いない(
図4の例では、特徴量a2、特徴量c2、特徴量d1を用いない)ようにすることができる。
【0060】
例えば、確信度に応じて各状態(つまり、当該確信度であった状態)の特徴量に重み付けをして、対象者30の状態を判定する(例えば、
図4の例では、特徴量a1("ストレスが有る"の確信度が0.8である)に、特徴量b1("ストレスが有る"の確信度が0.7である)と特徴量c1("ストレスが有る"の確信度が0.7である)よりも重みを付ける)ようにすることができる。
【0061】
なお、
図4にも示されているように、特徴量は、同一の検知装置20に備えられた異なるセンサー21が測定したセンサーデータの特徴量を含んでもよいし、異なる検知装置20に備えられたセンサー21が測定したセンサーデータの特徴量を含んでもよいし、同一のセンサー21が測定したセンサーデータの異なる特徴量を含んでもよい。
【0062】
以下、[特徴量の抽出]、[確信度の出力]、[特徴量の選択]の詳細を説明する。
【0063】
[特徴量の抽出]
状態判定装置の制御部1001は、下記のいずれかの方法で特徴量を抽出することができる。
・状態判定装置の制御部1001は、予め定めた特徴量を抽出する。
・状態判定装置の制御部1001は、機械学習のモデルを用いて特徴量を抽出する(つまり、モデルに、センサーデータが入力されると、特徴量が抽出されて、各状態の確信度が出力される)。
【0064】
[確信度の出力]
状態判定装置の制御部1001は、モデルに、特徴量を入力して各状態の確信度を出力する。状態の確信度は、当該状態であることの確かさを示す。例えば、状態判定装置の制御部1001は、下記のモデルを用いて、特徴量から各状態の確信度を推論することができる。
【0065】
モデルは、検知装置20が備えるセンサー21が測定したセンサーデータから抽出された特徴量が入力されると、各状態(例えば、ストレスが有る、および、ストレスが無い)の確信度が出力される。例えば、モデルは、ベイジアンアトラクタモデル(Bayesian Attractor Model)である。ベイジアンアトラクタモデルは、ノイズを含む観測値を用いて状態を認知する脳の過程をモデル化したものである。ベイジアンアトラクタモデルでは、現在の認知状態が、予め定められた選択肢(アトラクタともいう)のうちのいずれに該当するかを判断する。
【0066】
ベイジアンアトラクタモデルでは、各認知状態(例えば、ストレスが有る、および、ストレスが無い)を確率変数として扱い、観測値(センサーデータから抽出された特徴量)が得られるたびにベイズ推定により各認知状態(例えば、ストレスが有る、および、ストレスが無い)を更新する。この更新を繰り返すことで、各時刻に得られる観測値(センサーデータから抽出された特徴量)にノイズが含まれていたとしても、ノイズの影響を受けないようにすることができる。
【0067】
詳細にベイジアンアトラクタモデルについて説明する。
・時刻tにおける観測値(センサーデータから抽出された特徴量):xt
・時刻tにおける認知状態:zt
とする。ztは、xtが得られるたびに以下の非線形の生成モデル(下記の(1)および(2))により更新される。
【0068】
【0069】
【0070】
・f(z)は、ホップフィールドのダイナミクスを表す。
・wtとvtは、ガウシアンノイズ変数であり、動的不確実性とセンサー不確実性をパラメータとする。
・M=[μ1,・・・,μs]およびμiは、状態φiに対応する観測値である。S個の選択肢(アトラクタ)と、各アトラクタに対応するμi個の観測値を定義する。
・σは多次元シグモイド関数である。
【0071】
このような生成モデルにより、時刻tにおける認知状態P(zt=φi|x0:t)(x0:t=x1,・・・,xt)を獲得する。なお、P(zt=φi|x0:t)を確信度と呼ぶ。
【0072】
[特徴量の選択]
状態判定装置の制御部1001は、対象者30の状態の判定に用いる特徴量を選択することができる。以下、<<確信度に基づく特徴量の選択>>と<<対象者に適した特徴量の選択>>を説明する。なお、<<確信度に基づく特徴量の選択>>と<<対象者に適した特徴量の選択>>のいずれかを用いて特徴量を選択してもよいし、両方を用いて特徴量を選択してもよい。
【0073】
<<確信度に基づく特徴量の選択>>
例えば、状態判定装置の制御部1001は、いずれの状態も上述の確信度(P(zt=φi|x0:t))が閾値よりも低い特徴量を判定に用いない。例えば、状態判定装置の制御部1001は、上述の確信度(P(zt=φi|x0:t))に応じて各状態(つまり、当該確信度であった状態)の特徴量に重み付けをして、対象者30の状態を判定する。
【0074】
<<対象者に適した特徴量の選択>>
例えば、状態判定装置の制御部1001は、対象者30の各状態による差が閾値よりも小さい特徴量(例えば、ストレスが有るときの特徴量の値とストレスが無いときの特徴量の値との差が閾値よりも小さい当該特徴量)を判定に用いない。
【0075】
詳細には、対象者30の各状態の典型的な特徴量の値(例えば、各状態のラベル(例えば、ストレスが有る、および、ストレスが無い)に対応する特徴量の平均値、中央値等)を算出する。そして、各状態の典型的な特徴量の値の間の距離(例えば、ユークリッド距離)が閾値よりも小さい場合には、当該特徴量を状態の判定に用いない。なお、対象者30の特徴量の値が蓄積されたときに、各状態の典型的な特徴量の値の間の距離が閾値を超えるか否か(つまり、当該特徴量を判定に用いるか否か)を判断し直してもよい。
【0076】
<方法>
図5は、本開示の一実施形態に係る状態判定処理のフローチャートである。
【0077】
ステップ1(S1)において、状態判定装置の制御部1001は、検知装置20が備えるセンサーが測定したセンサーデータを取得する。
【0078】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、スマートウォッチ等の検知装置20が備えるセンサーが測定したセンサーデータ(例えば、体温、皮膚電気活動、心拍等の値)を取得する。
【0079】
ステップ2(S2)において、状態判定装置の制御部1001は、S1で取得したセンサーデータから、特徴量を抽出する。
【0080】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、センサーデータ(例えば、体温、皮膚電気活動、心拍等の値)の特徴量(例えば、平均値、中央値等)を抽出する。
【0081】
ステップ3(S3)において、状態判定装置の制御部1001は、モデルに、S2で抽出した特徴量を入力して、対象者30が各状態である確信度を出力する。
【0082】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、ベイジアンアトラクタモデル等のモデルに、特徴量(例えば、平均値、中央値等)を入力して、対象者30が各状態である確信度(例えば、対象者30がストレスが有る状態である確信度、および、対象者30がストレスが無い状態である確信度)を出力する。
【0083】
ステップ4(S4)において、状態判定装置の制御部1001は、S2で抽出した複数の特徴量のうち、対象者30の状態の判定に用いる特徴量を選択する。
【0084】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、いずれの状態もS3で出力した確信度が閾値よりも低い特徴量を判定に用いない。例えば、状態判定装置の制御部1001は、S3で出力した確信度に応じて各状態(つまり、当該確信度であった状態)の特徴量に重み付けをして、対象者30の状態を判定する。
【0085】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、対象者30の各状態による差が閾値よりも小さい特徴量を判定に用いない。
【0086】
ステップ5(S5)において、状態判定装置の制御部1001は、S4で選択した特徴量を用いて、対象者30の状態を判定する。
【0087】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、S3で出力した確信度が閾値以上である特徴量を用いて、対象者30がストレスが有る状態であるか、対象者30がストレスが無い状態であるか、対象者30のストレスの度合い等を判定する。例えば、状態判定装置の制御部1001は、S3で出力した確信度に応じて各状態(つまり、当該確信度であった状態)の特徴量に重み付けをして、対象者30がストレスが有る状態であるか、対象者30がストレスが無い状態であるか、対象者30のストレスの度合い等を判定する。
【0088】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、対象者30の各状態による差が閾値以上である特徴量を用いて、対象者30がストレスが有る状態であるか、対象者30がストレスが無い状態であるか、対象者30のストレスの度合い等を判定する。
【0089】
ステップ6(S6)において、状態判定装置の制御部1001は、S5で判定した結果を提示する。
【0090】
例えば、状態判定装置の制御部1001は、対象者30がストレスが有る状態であるか、対象者30がストレスが無い状態であるか、対象者30のストレスの度合い等を端末11等に表示する。
【0091】
図6は、本開示の一実施形態に係る学習処理のフローチャートである。
【0092】
ステップ11(S11)において、状態判定装置の制御部1001は、 教師データを取得する。詳細には、状態判定装置の制御部1001は、各状態のラベル(例えば、ストレスが有るのラベル、または、ストレスが無いのラベル)が付与された特徴量を教師データとして取得する。
【0093】
ステップ12(S12)において、状態判定装置の制御部1001は、機械学習によりモデルを生成する。詳細には、状態判定装置の制御部1001は、S11で取得した教師データを用いて機械学習することによって、特徴量が入力されると各状態の確信度が出力されるモデルを生成する。
【0094】
以上、本開示の実施形態によれば、対象者30の状態を判定する、制御部1001を備えた状態判定装置(なお、状態判定装置は、端末11、サーバ12、検知装置20のいずれか1つでまたは2つ以上で実装してよい)であって、制御部1001は、1つまたは複数の検知装置20が備える1つまたは複数のセンサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出し、モデルに、当該特徴量を入力して、対象者30が各状態である確信度を出力し、複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択し、選択した特徴量を用いて対象者30の状態を判定する、状態判定装置を提供することができる。
【0095】
これにより、センサーデータがノイズを含んでいたとしても正確に状態を判定することができ、さらに、状態を判定するときの状況において有用な特徴量、および、状態を判定される対象者30にとって有用な特徴量を用いて当該対象者30の状態を判定することができる。そのため、個々人の状況ごとの教師データを用いて機械学習してモデルを生成する必要がない。
【0096】
好ましくは、状態判定装置の制御部1001は、いずれの状態も確信度が閾値よりも低い特徴量を判定に用いない。これにより、状態を判定するときの状況において有用ではない特徴量を除き、状況に応じた有用な特徴量を用いることができる。
【0097】
好ましくは、状態判定装置の制御部1001は、確信度に応じて各状態の特徴量に重み付けをして、対象者30の状態を判定する。これにより、状態を判定するときの状況において有用ではない特徴量の関与を抑え、状況に応じた有用な特徴量を用いることができる。
【0098】
好ましくは、状態判定装置の制御部1001は、対象者30の各状態による差が閾値よりも小さい特徴量を判定に用いない。これにより、状態を判定される対象者30にとって有用な特徴量を用いることができる。
【0099】
好ましくは、モデルは、各状態のラベルが付与された特徴量を教師データとして機械学習することによって生成される。これにより、種々の状態を判定することができる。
【0100】
好ましくは、モデルは、ベイジアンアトラクタモデルである。これにより、人間の脳の認知の過程に基づくモデルを用いることができ、センサーデータがノイズを含んでいたとしても正確に状態を判定することができる。
【0101】
好ましくは、抽出された特徴量は、同一の検知装置に備えられた異なるセンサーが測定したセンサーデータから抽出された特徴量である。これにより、検知装置20が複数のセンサー21を備える場合に、有用なセンサーのみを用いることができる。
【0102】
好ましくは、抽出された特徴量は、異なる検知装置に備えられたセンサーが測定したセンサーデータから抽出された特徴量である。これにより、複数の検知装置20が対象者30に関するデータを測定する場合に、有用な検知装置20のみを用いることができる。
【0103】
本開示の実施形態によれば、対象者30の状態を判定する、状態判定装置(なお、状態判定装置は、端末11、サーバ12、検知装置20のいずれか1つでまたは2つ以上で実装してよい)の制御部1001が実行する方法であって、センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出するステップと、モデルに、当該特徴量を入力して、対象者30が各状態である確信度を出力するステップと、複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択するステップと、選択した特徴量を用いて対象者30の状態を判定するステップと、を含む方法を提供することができる。
【0104】
本開示の実施形態によれば、対象者30の状態を判定する、状態判定装置(なお、状態判定装置は、端末11、サーバ12、検知装置20のいずれか1つでまたは2つ以上で実装してよい)の制御部1001に、センサーが測定したセンサーデータから、特徴量を抽出することと、モデルに、当該特徴量を入力して、対象者30が各状態である確信度を出力することと、複数の特徴量のうち判定に用いる特徴量を選択することと、選択した特徴量を用いて対象者30の状態を判定することと、を実行させるプログラムを提供することができる。
【0105】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0106】
1 状態判定システム
11 端末
12 サーバ
20 検知装置
21 センサー
30 対象者
101 センサーデータ取得部
102 特徴量抽出部
103 推論部
104 モデル記憶部
105 特徴量選択部
106 状態判定部
107 判定結果提示部
108 学習部
1001 制御部
1002 主記憶部
1003 補助記憶部
1004 入力部
1005 出力部
1006 インタフェース部