IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特開2024-124992視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム
<>
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図1
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図2
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図3
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図4
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図5
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図6
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図7
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図8
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図9
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図10
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図11
  • 特開-視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124992
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/37 20060101AFI20240906BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240906BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240906BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20240906BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240906BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G09G5/37 200
G02B27/02 Z
G09G5/00 550C
G09G5/00 510H
G09G5/02 B
G09G5/00 510B
G09G5/00 510Z
H04N5/74 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033029
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】舌野 勇亮
(72)【発明者】
【氏名】南 俊二
(72)【発明者】
【氏名】大坪 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】勝田 寛志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】野仲 一世
【テーマコード(参考)】
2H199
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA07
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA69
2H199CA92
2H199CA94
5C058BA35
5C058EA54
5C182AA04
5C182AA06
5C182AA31
5C182AB35
5C182AC03
5C182BA01
5C182BA03
5C182BA14
5C182BC22
5C182BC25
5C182BC26
5C182CA33
5C182CB03
5C182DA44
5C182DA69
(57)【要約】
【課題】視認対象を直感的に把握しやすくすることが可能な視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】視覚支援装置1は、ユーザに装着されて使用される。撮影ユニット3は、ユーザの視界を撮影する。画像補正部113は、撮影ユニット3の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成する。投影ユニット7は、画像補正部113により生成された補正画像をユーザの網膜上に投影する。画像補正部113は、撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、補正画像のシャープネスを撮影画像のシャープネスよりも強調する。或いは、画像補正部113は、撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、補正画像の彩度を撮影画像の彩度よりも強調する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置であって、
前記ユーザの視界を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正手段と、
前記画像補正手段により生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影手段と、
を備え、
前記画像補正手段は、前記撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、前記補正画像のシャープネスを前記撮影画像のシャープネスよりも強調する、
ことを特徴とする視覚支援装置。
【請求項2】
前記投影手段は、
前記被写体が前記人工物に該当する場合、前記補正画像を前記ユーザの前記網膜上に投影し、
前記被写体が前記人工物に該当しない場合、前記撮影画像を前記ユーザの前記網膜上に投影する、
ことを特徴とする請求項1に記載の視覚支援装置。
【請求項3】
前記視覚支援装置の動作モードを切り替えるモード切替手段、を更に備え、
前記画像補正手段は、前記動作モードが視覚支援モードであり、且つ、前記被写体が前記人工物に該当する場合、前記補正画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の視覚支援装置。
【請求項4】
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置であって、
前記ユーザの視界を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正手段と、
前記画像補正手段により生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影手段と、
を備え、
前記画像補正手段は、前記撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、前記補正画像の彩度を前記撮影画像の彩度よりも強調する、
ことを特徴とする視覚支援装置。
【請求項5】
前記投影手段は、
前記被写体が前記自然物に該当する場合、前記補正画像を前記ユーザの前記網膜上に投影し、
前記被写体が前記自然物に該当しない場合、前記撮影画像を前記ユーザの前記網膜上に投影する、
ことを特徴とする請求項4に記載の視覚支援装置。
【請求項6】
前記視覚支援装置の動作モードを切り替えるモード切替手段、を更に備え、
前記画像補正手段は、前記動作モードが視覚支援モードであり、且つ、前記被写体が前記自然物に該当する場合、前記補正画像を生成する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の視覚支援装置。
【請求項7】
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置による視覚支援方法であって、
前記ユーザの視界を撮影して得られた撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、
前記撮影画像取得ステップで取得された前記撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正ステップと、
前記画像補正ステップで生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影ステップと、
を含み、
前記画像補正ステップでは、前記撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、前記補正画像のシャープネスを前記撮影画像のシャープネスよりも強調する、
ことを特徴とする視覚支援方法。
【請求項8】
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置による視覚支援方法であって、
前記ユーザの視界を撮影して得られた撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、
前記撮影画像取得ステップで取得された前記撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正ステップと、
前記画像補正ステップで生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影ステップと、
を含み、
前記画像補正ステップでは、前記撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、前記補正画像の彩度を前記撮影画像の彩度よりも強調する、
ことを特徴とする視覚支援方法。
【請求項9】
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置のコンピュータを、
前記ユーザの視界を撮影して得られた撮影画像を取得する撮影画像取得手段、
前記撮影画像取得手段により取得された前記撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正手段、
前記画像補正手段により生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影制御手段、
として機能させ、
前記画像補正手段は、前記撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、前記補正画像のシャープネスを前記撮影画像のシャープネスよりも強調する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置のコンピュータを、
前記ユーザの視界を撮影して得られた撮影画像を取得する撮影画像取得手段、
前記撮影画像取得手段により取得された前記撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正手段、
前記画像補正手段により生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影制御手段、
として機能させ、
前記画像補正手段は、前記撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、前記補正画像の彩度を前記撮影画像の彩度よりも強調する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
視覚を支援する技術が知られている。例えば、特許文献1は、網膜投影方式により網膜に画像を投影することでユーザに画像を視認させる画像表示装置を開示している。網膜投影方式は、瞳孔に光を通して網膜に画像を直接的に投影するマクスウェル視を利用する。そのため、網膜投影方式は、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)を使用した仮想スクリーン投影方式に比べて、フリーフォーカスのメリットを有する。これにより、前眼部異常等のロービジョンのユーザにとっても画像を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-159559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような視覚を支援する技術において、ユーザが視線を向けている対象がどのような種類の対象であるかを直感的に把握しやすくすることが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、視認対象を直感的に把握しやすくすることが可能な視覚支援装置、視覚支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る視覚支援装置は、
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置であって、
前記ユーザの視界を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正手段と、
前記画像補正手段により生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影手段と、
を備え、
前記画像補正手段は、前記撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、前記補正画像のシャープネスを前記撮影画像のシャープネスよりも強調する、
ことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る視覚支援装置は、
ユーザに装着されて使用される視覚支援装置であって、
前記ユーザの視界を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成する画像補正手段と、
前記画像補正手段により生成された前記補正画像を前記ユーザの網膜上に投影する投影手段と、
を備え、
前記画像補正手段は、前記撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、前記補正画像の彩度を前記撮影画像の彩度よりも強調する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視認対象を直感的に把握しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る視覚支援装置を正面から見た図である。
図2】実施形態1に係る視覚支援装置を上方から見た図である。
図3】実施形態1に係る視覚支援装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図4】実施形態1における撮影画像の第1の例を示す図である。
図5】実施形態1における撮影画像の第2の例を示す図である。
図6】実施形態1における補正画像の例を示す図である。
図7】実施形態1における動作モードと被写体の種類に応じた画像補正の内容を示す図である。
図8】実施形態1に係る表示装置におけるレーザ光の光路を示す模式図である。
図9】実施形態1に係る視覚支援装置により実行される視覚支援処理の流れを示すフローチャートである。
図10】実施形態2における補正画像の例を示す図である。
図11】実施形態2における動作モードと被写体の種類に応じた画像補正の内容を示す図である。
図12】実施形態2に係る視覚支援装置により実行される視覚支援処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0011】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る視覚支援装置1の概略を示す。視覚支援装置1は、ユーザUが視認対象を直感的に把握することができるように、ユーザUの視覚を支援する装置である。一例として、視覚支援装置1は、弱視者や高齢者等のようなロービジョン者の視覚を支援するために使用される。
【0012】
ここで、ロービジョンは、疾病や加齢等により視覚機能が低下した状態を意味する。ロービジョン者は、例えば視力低下、視野欠損、羞明、夜盲等の症状を有しており、視認対象を認識するのが困難になり、生活に支障をきたすことが多い。視覚支援装置1は、このようなロービジョン者が視認対象を直感的に認識できるようにするために使用される。
【0013】
視覚支援装置1は、一例として眼鏡の形状をしており、ユーザUに装着されて使用される装着型の装置である。視覚支援装置1は、撮影手段の一例である撮影ユニット3と、投影手段の一例である投影ユニット7と、を備える。
【0014】
撮影ユニット3は、いわゆるカメラであって、撮影を行うユニットである。投影ユニット7は、ユーザUの眼球EY1内の網膜に画像を投影する網膜投影方式のユニットである。網膜投影方式は、瞳孔に光を通して網膜に画像を直接的に投影するマクスウェル視を利用する。そのため、網膜投影方式は、フリーフォーカスのメリットを有し、ロービジョン者に対する視覚支援方法の1つとして考えられている。例えば、ユーザUの視界の画像を撮影ユニット3により撮影された画像をユーザUの網膜上に投影することで、ユーザUは、ロービジョン者であっても、外界を認識することができる。
【0015】
ユーザUは、視覚支援装置1を、頭部に装着して使用する。一例として、視覚支援装置1がユーザUに装着された際、投影ユニット7は、眼鏡のフレームの一方側である第1の眼球EY1の側に配置され、撮影ユニット3は、眼鏡のフレームの他方側である第2の眼球EY2の側に配置される。
【0016】
なお、図1では、ユーザUの頭部の輪郭を破線で示しており、理解を容易にするため、2つの眼球EY1,EY2以外の頭部のパーツを省略している。また、図1では、ユーザUから見て前方向が+Y方向であり、ユーザUから見て右方向が+X方向であり、ユーザUから見て上方向が+Z方向であるとして説明する。以降の図でも同様である。
【0017】
図2に、視覚支援装置1を、ユーザUの上方から見た様子を示す。理解を容易にするため、図2では、ユーザUの2つの眼球EY1,EY2以外のパーツは省略している。
【0018】
撮影ユニット3は、ユーザUの視界を撮影する。これにより、撮影ユニット3は、ユーザUの視線方向に存在するユーザUの視認対象を被写体として撮影する。撮影ユニット3は、ユーザUの視認対象を被写体として撮影できるように、その光軸がユーザUの前方に向けられている。
【0019】
ここで、視認対象は、ユーザUにより視認される対象であればどのようなものであっても良いが、一例として、自然の景色、動植物、建造物、絵画、美術品、書き物、工作品等が挙げられる。視覚支援装置1は、ユーザUが屋外で景色、動植物、建造物等を見ている状況、美術館で絵画、美術品等を鑑賞している状況、机上で書き物、工作等の作業をしている状況等において使用される。
【0020】
撮影ユニット3は、図示を省略するが、被写体から発せられる可視光線を集光するレンズと、レンズを通った可視光線を受光するイメージセンサと、を備える。イメージセンサは、レンズによる集光位置に配置されており、可視光線による撮影画像を生成する。
【0021】
イメージセンサは、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のような撮像素子と、A/D(Analog/Digital)変換器等のような読み出し回路と、を備える。イメージセンサに入射した可視光線は、画像素子により光電変換され、読み出し回路によりデジタル信号として読み出されて、制御ユニット5に出力される。
【0022】
なお、撮影ユニット3は、手動又は自動で回転することにより光軸の方向を変更可能であっても良い。例えば、撮影ユニット3は、眼鏡に対して回転可能に取り付けられており、Z方向(鉛直方向)に延びる回転軸を軸として左右方向に回転しても良いし、X方向に延びる回転軸を軸として上下方向に回転しても良い。これにより、被写体がユーザUの近くに存在する場合でも遠くに存在する場合でも、被写体を視野の中心に収めることができるようになる。
【0023】
視覚支援装置1は、撮影ユニット3及び投影ユニット7に加えて、制御ユニット5を備える。制御ユニット5は、視覚支援装置1の動作を制御するユニットである。制御ユニット5は、一例として、ユーザUの衣類のポケット等に入れられて用いられる。図3に示すように、制御ユニット5は、制御部110と、記憶部120と、モード切替スイッチ140と、通信部150と、レーザモジュール170と、レーザドライバ180と、を備える。
【0024】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、マイクロプロセッサ等を備えており、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部110において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、制御ユニット5全体の動作を制御する。なお、制御部110は、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の画像処理用のプロセッサを備えていても良い。
【0025】
記憶部120は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部120は、制御部110によって実行されるプログラム及びデータ、及び、制御部110によって生成されるデータを記憶する。
【0026】
モード切替スイッチ140は、視覚支援装置1の動作モードを切り替えるためのスイッチである。視覚支援装置1は、動作モードとして、「視覚支援モード」と「通常モード」とを有する。視覚支援モードは、特にロービジョン者が視認対象を直感的に把握できるように、撮影ユニット3により撮影された撮影画像を補正するモードである。これに対して、通常モードは、視覚支援モードでの補正を行わないモードである。ユーザは、モード切替スイッチ140を指で操作することで、手軽に視覚支援装置1の動作モードを切り替えることができる。モード切替スイッチ140は、モード切替手段の一例である。
【0027】
通信部150は、制御ユニット5の外部の機器と通信するための通信インタフェースを備える。例えば、通信部150は、有線又は無線の通信媒体を介して撮影ユニット3と通信し、撮影ユニット3により撮影された撮影画像を取得する。また、通信部150は、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)等の周知の通信規格に則って、視覚支援装置1の外部の機器と通信することもできる。
【0028】
レーザモジュール170は、レーザ光源を備えており、投影ユニット7においてユーザUの眼球EY1に入射されるレーザ光を出射する。より詳細には、レーザモジュール170は、レーザ光源として、R(赤色)レーザ光源、G(緑色)レーザ光源、及びB(青色)レーザ光源を備える。Rレーザ光源、Gレーザ光源及びBレーザ光源は、レーザドライバ180から送信された画像信号に応じてそれぞれ強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ光源は、例えば、半導体レーザ(レーザダイオード)、固体レーザ等である。
【0029】
各レーザ光源から出射されたレーザ光は、いずれも図示を省略するが、ダイクロイックミラー等の光学系により合波され、コリメートレンズ等の光学系により平行光化され、集光レンズ等の光学系により集光されて、複合ケーブル9へ出射される。
【0030】
レーザドライバ180は、投影制御部114から受信した画像信号に基づいて、レーザモジュール170を駆動する。具体的に説明すると、レーザドライバ180は、投影制御部114から受信した画像信号に対応する画素値で、Rレーザ光源、Gレーザ光源及びBレーザ光源のそれぞれを発光させる。これにより、レーザドライバ180は、受信した画像信号に対応する色のレーザ光をレーザモジュール170から出射させる。
【0031】
複合ケーブル9は、レーザモジュール170から出射されたレーザ光を伝送し、投影ユニット7に出射するケーブルである。複合ケーブル9は、制御ユニット5及び投影ユニット7と光学的に接続される。複合ケーブル9により伝送されたレーザ光は、図示しないコリメートレンズによって平行光化され、投影ユニット7の走査部30に出射される。また、複合ケーブル9は、投影制御部114から走査部30に送信される制御信号を伝送する。
【0032】
次に、制御部110の機能的な構成について説明する。図3に示すように、制御部110は、機能的に、撮影画像取得手段の一例である撮影画像取得部111と、被写体判定手段の一例である被写体判定部112と、画像補正手段の一例である画像補正部113と、投影制御手段の一例である投影制御部114と、を備える。制御部110において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
【0033】
撮影画像取得部111は、撮影ユニット3によりユーザUの視界を撮影して得られた撮影画像を取得する。具体的に説明すると、撮影画像取得部111は、通信部150を介して撮影ユニット3を制御し、撮影ユニット3に撮影を行わせる。撮影画像取得部111は、これにより得られた撮影画像を撮影ユニット3から取得する。
【0034】
一例として、ユーザUが視認対象として建物である被写体OB1を見ている場合、撮影画像取得部111は、図4に示す撮影画像P1を取得する。別の例として、ユーザUが視認対象として植物である被写体OB2を見ている場合、撮影画像取得部111は、図5に示す撮影画像P2を取得する。
【0035】
図3に戻って、被写体判定部112は、撮影画像取得部111により取得された撮影画像での被写体の種類を判定する。実施形態1において、被写体判定部112は、被写体が人工物に該当するか否かを判定する。
【0036】
ここで、人工物とは、人為的に製造された物体を意味する。人工物として、例えば、建物、家具、機械類、絵画、美術品、書き物、工作物等が挙げられる。これに対して、非人工物は、人工物以外の物体である。非人工物として、例えば、動植物、人間、自然の地形、海、空等が挙げられる。
【0037】
具体的には、図4に示した撮影画像P1に撮影された被写体OB1は、建物であるため、人工物に該当する。そのため、被写体判定部112は、被写体OB1が人工物に該当すると判定する。これに対して、図5に示した撮影画像P2に撮影された被写体OB2は、植物であるため、非人工物に該当する。そのため、被写体判定部112は、被写体OB2が人工物に該当しない、すなわち非人工物に該当すると判定する。
【0038】
被写体判定部112は、撮影ユニット3により撮影された被写体が人工物であるか否かを判定するため、撮影ユニット3により撮影された撮影画像に、人工物に特有の特徴が含まれているか否かを判定する。人工物に特有の特徴は、例えば、長く直線的な線分、規則的なパターン等のような、人工物に典型的に見られる特徴である。
【0039】
より詳細には、被写体判定部112は、第1に、適宜のエッジ検出手法を用いて、撮影ユニット3の撮影により得られた撮影画像からエッジを検出する。例えば、被写体判定部112は、撮影画像をグレースケール画像に変換し、グレースケール画像において、画素間で画素値が所定値以上に変化している箇所をエッジとして検出する。
【0040】
第2に、被写体判定部112は、検出されたエッジの特徴が、人工物のエッジに特有の特徴に合致するか否かを判定する。例えば、被写体判定部112は、検出されたエッジの特徴が、(1)所定長以上に長い直線的なエッジである、(2)同じ又は類似するパターンの他のエッジが存在する、等の特徴に合致する場合に、そのエッジが人工物のエッジに該当すると判定する。
【0041】
第3に、被写体判定部112は、撮影画像のうちの、人工物のエッジに該当すると判定されたエッジが集中して存在する領域を、人工物が存在する領域であると判定する。具体的に説明すると、被写体判定部112は、撮影画像を複数の小領域に区分しておき、小領域毎に、人工物のエッジに該当すると判定されたエッジが所定本数以上存在するか否かを判定する。そして、被写体判定部112は、人工物のエッジに該当すると判定されたエッジが所定本数以上存在する少なくとも1つの小領域を、人工物が存在する領域であると判定する。
【0042】
被写体判定部112は、このような各小領域に人工物が存在するか否かの判定結果に基づいて、撮影画像での被写体が人工物に該当するか否かを判定する。例えば、撮影画像内の少なくとも1つの小領域に人工物が存在すると判定した場合、被写体判定部112は、被写体が人工物に該当すると判定しても良い。或いは、撮影画像における中心付近の所定数の小領域(例えば、撮影ユニット3によりオートフォーカスされた領域)に人工物が存在すると判定した場合に、被写体判定部112は、被写体が人工物に該当すると判定しても良い。
【0043】
被写体判定部112は、このような被写体の種類を判定する判定処理を、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モードである場合に行う。なお、上記の判定手法は一例であって、被写体判定部112は、撮影ユニット3により撮影された被写体の種類を判定するための判定手法として、公知の手法を含む適宜の手法を用いることができる。
【0044】
図3に戻って、画像補正部113は、撮影ユニット3により撮影された撮影画像を、被写体判定部112により判定された被写体の種類に基づいて補正する。これにより、画像補正部113は、撮影画像を補正した補正画像を生成する。具体的には、画像補正部113は、被写体が人工物に該当する場合、補正画像のシャープネスを撮影画像のシャープネスよりも強調する。
【0045】
ここで、シャープネスとは、画像の鮮明さを表す尺度である。シャープネスを強調する、すなわちシャープネスの強度を高めると、画像内のエッジが強調されてシャープに見えるようになり、シャープネスを弱めると、画像内のエッジがぼやけて見えるようになる。一般的に人工物は多くのシャープなエッジを有する傾向があるため、シャープネスを強調すると、画像内の人工物は強調されて見えやすくなる。
【0046】
例えば、撮影ユニット3により図4に示した撮影画像P1が撮影された場合、被写体判定部112は、撮影画像P1に撮影された被写体OB1が人工物に該当すると判定する。この場合、画像補正部113は、撮影画像P1を補正することにより、図6に示す補正画像Q1を生成する。
【0047】
具体的に説明すると、画像補正部113は、撮影画像P1内における被写体OB1の領域のシャープネスを強調することで、補正画像Q1を生成する。言い換えると、画像補正部113は、補正画像Q1における被写体OB1の領域のシャープネスを、撮影画像P1における被写体OB1の領域のシャープネスよりも強調する。これにより、補正画像Q1における被写体OB1の各エッジは、撮影画像P1に撮影された被写体OB1の各エッジよりも強調される。その結果、補正画像Q1における被写体OB1の人工物らしさが強調される。
【0048】
画像補正部113によりシャープネスを強調する度合いは、工場出荷時のプリセット値を用いても良いし、ユーザUにより自由に設定されても良い。
【0049】
一方で、撮影ユニット3により図5に示した撮影画像P2が撮影された場合、被写体判定部112は、撮影画像P2に撮影された被写体OB2が人工物に該当しない、すなわち非人工物に該当すると判定する。この場合、画像補正部113は、撮影画像P2に対してシャープネスの補正を加えない。言い換えると、画像補正部113は、被写体が人工物に該当するときには、被写体が非人工物に該当するときよりも、補正画像におけるシャープネスに対する補正強度を大きくする。
【0050】
より詳細には、画像補正部113は、図7に示すように、視覚支援装置1の動作モードと被写体の種類に応じて撮影画像を補正する。具体的に説明すると、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モードである場合であって、且つ、被写体が人工物に該当する場合、画像補正部113は、撮影画像のシャープネスを強調することで補正画像を生成する。
【0051】
これに対して、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モードである場合であって、且つ、被写体が非人工物に該当する場合、画像補正部113は、撮影画像のシャープネスを基準値のまま変更しない。また、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モード以外のモードである通常モードである場合、被写体が人工物と非人工物とのどちらに該当しても、画像補正部113は、撮影画像のシャープネスを基準値のまま変更しない。これらの場合、画像補正部113は、撮影画像を補正しないため、補正画像を生成しない。
【0052】
図3に戻って、投影制御部114は、投影ユニット7における画像の投影を制御する。投影制御部114は、レーザモジュール170におけるレーザ光の出射と、投影ユニット7の走査部30におけるレーザ光の走査と、を制御する。これにより、投影制御部114は、投影ユニット7において、撮影ユニット3により撮影された撮影画像、又は、画像補正部113により生成された補正画像を、ユーザUの網膜上に投影させる。
【0053】
具体的に説明すると、投影制御部114は、撮影ユニット3により撮影された撮影画像、又は、画像補正部113により生成された補正画像のデータを、画像信号に変換する。そして、投影制御部114は、レーザドライバ180を通して画像信号をレーザモジュール170に供給する。
【0054】
より詳細には、投影制御部114は、撮影画像又は補正画像の各画素の画素値(RGB値)を1画素ずつ順に読み出し、読み出した画素値に対応する画像信号を生成する。そして、投影制御部114は、生成した画像信号を、1画素ずつ順にレーザドライバ180に送信する。レーザドライバ180は、投影制御部114から送信された画像信号に基づいて強度変調されたレーザ光をレーザモジュール170から出射させ、複合ケーブル9を通して投影ユニット7に出力させる。
【0055】
投影ユニット7は、ユーザUの眼球EY1にレーザ光を入射させて、眼球EY1内の網膜上に画像を投影するユニットである。投影ユニット7は、レーザモジュール170から出射されたレーザ光を走査する走査部30と、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EY1に導く導光部60と、を備える。
【0056】
走査部30は、眼鏡のフレームの側部に配置される。導光部60は、眼球EY1の真正面に位置するように、眼鏡のレンズ部分であって、一例としてレンズの内側に配置される。投影ユニット7は、制御ユニット5から出射されたレーザ光を走査部30により走査し、導光部60を通して眼球EY1に対して正面から入射させる。
【0057】
より詳細に、図8を参照して、投影ユニット7におけるレーザ光の光路について説明する。図8に示すように、投影ユニット7において、走査部30は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー31と、反射ミラー32と、を備える。
【0058】
走査部30において、MEMSミラー31は、レーザモジュール170から出射されたレーザ光を走査する。具体的に説明すると、MEMSミラー31は、レーザモジュール170から出射されたレーザ光を受光し、レーザ光を反射ミラー32に向けて反射する。MEMSミラー31は、反射面の角度を変化させることで、反射するレーザ光を2次元の範囲に走査させる。
【0059】
より詳細には、MEMSミラー31は、MEMS加工により形成されたミラーである。MEMSミラー31では、ミラー周辺に配置されたコイルに電流を流すことにより発生するローレンツ力により、ミラーの傾きを変更することができる。これにより、MEMSミラー31は、ミラー面に入射したレーザ光の光路を変更し、2次元の範囲に走査する。
【0060】
投影制御部114は、投影対象となる画像である撮影画像又は補正画像における各座標の画素の画素値に対応するレーザ光が、網膜RE上の同じ座標に対応する位置に投射されるように、レーザモジュール170が各画素の画素値に対応するレーザ光を出射するタイミングと、そのタイミングにおいてMEMSミラー31がレーザ光を走査する方向と、を制御する。MEMSミラー31により走査されたレーザ光は、反射ミラー32に入射し、図8において斜線が付された範囲の光路を通って、ユーザUの眼球EY1内の網膜RE上に投射される。
【0061】
反射ミラー32は、レーザ光の光路におけるMEMSミラー31の後段に配置されている。反射ミラー32は、凹状の鏡面を備え、MEMSミラー31により走査されたレーザ光を反射及び集光する。反射ミラー32により反射されたレーザ光は、導光部60に入射され、眼球EY1内の瞳孔PU付近で集束して、網膜RE上に投射される。
【0062】
導光部60は、レーザ光の光路における反射ミラー32の後段に配置されている。導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EY1に導くことにより、眼球EY1内の網膜REに撮影画像又は補正画像を投影する。導光部60は、レーザ光を通すことが可能な、アクリル等の適宜の光学材料により形成されている。導光部60は、導光リフレクタとも呼ばれる。
【0063】
MEMSミラー31により走査されたレーザ光は、反射ミラー32により反射された後、導光部60内において複数回反射しながら、-X方向に進行する。これにより、レーザ光は、導光部60内においてユーザUの瞳孔PUから眼球EY1内に入射可能な位置まで導かれ、瞳孔PUから眼球EY1内に入射する。
【0064】
眼球EY1内に入射したレーザ光は、水晶体の中心付近で集束して網膜REに投射される。これにより、網膜REに画像が結像され、ユーザUは結像された画像である撮影画像又は補正画像を視認することができる。このようにして、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EY1内に導き、網膜REに画像を投影する。
【0065】
このように、投影ユニット7は、撮影ユニット3により撮影された被写体の撮影画像、又は、撮影画像から生成された補正画像を、ユーザUの眼球EY1内の網膜RE上に表示する。これにより、ユーザUは、自身の視点を中心として撮影された被写体の画像を視認することができる。
【0066】
次に、図9を参照して、実施形態1に係る視覚支援装置1において実行される視覚支援処理の流れを説明する。図9に示す視覚支援処理は、視覚支援方法の一例である。
【0067】
図9に示す視覚支援処理は、視覚支援装置1がユーザUに装着された状態において、適宜のタイミングで繰り返し実行される。一例として、視覚支援装置1がユーザUの頭部に装着された状態において、ユーザUが頭部を動かして様々な被写体に視線を向ける毎に、撮影ユニット3のオートフォーカスが実行される。このようなオートフォーカスが実行されたタイミングで、図9に示す視覚支援処理は実行される。
【0068】
視覚支援処理を開始すると、制御ユニット5において、制御部110は、撮影画像取得部111として機能し、撮影画像を取得する(ステップS11)。制御部110は、撮影ユニット3によりユーザUの視認対象を被写体とする撮影を行う。これにより、制御部110は、例えば図4に示した撮影画像P1、図5に示した撮影画像P2等を撮影ユニット3から取得する。ステップS11は、撮影画像取得ステップの一例である。
【0069】
撮影画像を取得すると、制御部110は、視覚支援装置1の現在の動作モードを判定する(ステップS12)。動作モードは、ユーザUがモード切替スイッチ140を操作することにより切り替えられる。制御部110は、現在の動作モードが視覚支援モードであるか、通常モードであるかを判定する。
【0070】
現在の動作モードが視覚支援モードであると判定した場合(ステップS12;視覚支援モード)、制御部110は、被写体判定部112として機能し、被写体の種類を判定する(ステップS13)。具体的に説明すると、制御部110は、予め定められた判定手法を用いて、撮影画像での被写体が人工物に該当するか否かを判定する。
【0071】
被写体が人工物に該当すると判定した場合(ステップS13;人工物)、制御部110は、画像補正部113として機能し、撮影画像におけるシャープネスを強調することで、補正画像を生成する(ステップS14)。例えば、制御部110は、撮影画像P1に撮影された建物のシャープネスを強調することにより、図6に示した補正画像Q1を生成する。ステップS14は、画像補正ステップの一例である。
【0072】
補正画像を生成すると、制御部110は、投影制御部114として機能し、生成された補正画像をユーザUの網膜RE上に投影する(ステップS15)。具体的に説明すると、制御部110は、補正画像に基づくレーザ光をレーザモジュール170から出射させる。そして、制御部110は、投影ユニット7において、レーザ光をユーザUの眼球EY1内に投射することで、補正画像を眼球EY1内の網膜RE上に投影する。ステップS15は、投影ステップの一例である。
【0073】
一方で、ステップS12で現在の動作モードが通常モードであると判定した場合(ステップS12;通常モード)、及び、ステップS13で被写体が非人工物に該当すると判定した場合(ステップS13;非人工物)、制御部110は、ステップS14における補正処理を実行しない。
【0074】
この場合、制御部110は、投影制御部114として機能し、ステップS11で取得された撮影画像をユーザUの網膜RE上に投影する(ステップS16)。具体的に説明すると、制御部110は、撮影画像に基づくレーザ光をレーザモジュール170から出射させる。そして、制御部110は、投影ユニット7において、レーザ光をユーザUの眼球EY1内に投射することで、撮影画像を眼球EY1内の網膜RE上に投影する。ステップS16は、投影ステップの一例である。
【0075】
以上説明したように、実施形態1に係る視覚支援装置1は、撮影ユニット3の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成し、生成された補正画像をユーザUの網膜RE上に投影する。その際、視覚支援装置1は、撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、補正画像のシャープネスを撮影画像のシャープネスよりも強調する。これにより、視覚支援装置1は、ユーザUが視認対象を直感的に把握しやすくすることができる。
【0076】
特に、ユーザUがロービジョン者である場合、視認対象を高い解像度で認識することよりも、視認対象の特徴を粗くでも良いから認識できることの方が重要になることが多い。実施形態1に係る視覚支援装置1は、被写体が人工物に該当する場合にシャープネスを強調することで、人工物の特徴をより際立たせることができる。その結果、ユーザUは、ロービジョン者であっても、視界内に存在する人工物の位置や形状等を容易に把握することができる。
【0077】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成及び機能については、適宜説明を省略する。
【0078】
実施形態1では、被写体判定部112は、被写体の種類が人工物であるか否かを判定した。また、画像補正部113は、被写体が人工物に該当する場合、補正画像のシャープネスを、撮影画像のシャープネスよりも強調した。これに対して、実施形態2では、被写体判定部112は、被写体の種類が自然物であるか否かを判定する。そして、画像補正部113は、被写体が自然物に該当する場合、補正画像における被写体の彩度を、撮影画像における被写体の彩度よりも強調する。
【0079】
ここで、自然物とは、人為的ではなく、自然に生成された物体を意味する。自然物として、例えば、動植物、人間、自然の地形、海、空等が挙げられる。これに対して、非自然物は、自然物以外の物体である。非自然物として、例えば、建物、家具、機械類、絵画、美術品、書き物、工作物等が挙げられる。
【0080】
具体的には、図4に示した撮影画像P1に撮影された被写体OB1は、建物であるため、非自然物に該当する。そのため、被写体判定部112は、被写体OB1を自然物に該当しない、すなわち非自然物であると判定する。これに対して、図5に示した撮影画像P2に撮影された被写体OB2は、植物であるため、自然物に該当する。そのため、被写体判定部112は、被写体OB2を自然物に該当すると判定する。
【0081】
被写体判定部112は、撮影ユニット3により撮影された被写体が自然物であるか否かを判定するため、撮影ユニット3により撮影された撮影画像に、自然物に特有の特徴が含まれているか否かを判定する。自然物に特有の特徴は、自然物に典型的に見られる特徴であって、例えば、曲線的な線分、不規則で連続的な形状等の特徴である。
【0082】
一例として、被写体判定部112は、実施形態1と同様の判定手法で被写体が人工物に該当するか否かを判定し、人工物でないと判定された被写体を、自然物に該当すると判定しても良い。そして、被写体判定部112は、人工物であると判定された被写体を、自然物に該当しない、すなわち非自然物に該当すると判定しても良い。
【0083】
或いは、被写体判定部112は、実施形態1とは異なる判定手法で、被写体が自然物に該当するか否かを判定しても良い。具体的に説明すると、被写体判定部112は、第1に、適宜のエッジ検出手法を用いて、撮影ユニット3の撮影により得られた撮影画像から、物体の輪郭や境界線等に相当するエッジを検出する。第2に、被写体判定部112は、検出されたエッジの特徴が、自然物のエッジに特有の特徴に合致するか否かを判定する。
【0084】
第3に、被写体判定部112は、撮影画像のうちの、自然物のエッジに該当すると判定されたエッジが集中して存在する領域を、自然物が存在する領域であると判定する。具体的に説明すると、被写体判定部112は、撮影画像を複数の小領域に区分しておき、小領域毎に、自然物のエッジに該当すると判定されたエッジが所定本数以上存在するか否かを判定する。そして、被写体判定部112は、自然物のエッジに該当すると判定されたエッジが所定本数以上存在する少なくとも1つの小領域を、自然物が存在する領域であると判定する。
【0085】
被写体判定部112は、このような各小領域に自然物が存在するか否かの判定結果に基づいて、撮影画像での被写体が自然物に該当するか否かを判定する。例えば、撮影画像内の少なくとも1つの小領域に自然物が存在すると判定した場合、被写体判定部112は、被写体が自然物に該当すると判定しても良い。或いは、撮影画像における中心付近の所定数の小領域(例えば、撮影ユニット3によりオートフォーカスされた領域)に自然物が存在すると判定した場合に、被写体判定部112は、被写体が自然物に該当すると判定しても良い。
【0086】
被写体判定部112は、このような被写体の種類を判定する判定処理を、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モードである場合に行う。なお、上記の判定手法は一例であって、被写体判定部112は、撮影ユニット3により撮影された被写体の種類を判定するための判定手法として、適宜の手法を用いることができる。
【0087】
画像補正部113は、撮影ユニット3により撮影された撮影画像を、被写体判定部112により判定された被写体の種類に基づいて補正する。これにより、画像補正部113は、撮影画像を補正した補正画像を生成する。具体的には、画像補正部113は、被写体が自然物に該当する場合、補正画像の彩度を撮影画像の彩度よりも強調する。
【0088】
ここで、彩度とは、色の鮮やかさを表す尺度である。彩度を強調する、すなわち彩度を高めると、画像の鮮やかさが強まり、彩度を低めると、画像の鮮やかさが弱まる。一般的に自然物は多くの色を有する傾向があるため、彩度を強調すると、画像内の自然物は強調されて見えやすくなる。
【0089】
例えば、撮影ユニット3により図5に示した撮影画像P2が撮影された場合、被写体判定部112は、撮影画像P2に撮影された被写体OB2が自然物に該当すると判定する。この場合、画像補正部113は、撮影画像P2を補正することにより、図10に示す補正画像Q2を生成する。
【0090】
具体的に説明すると、画像補正部113は、撮影画像P2内における被写体OB2の領域の彩度を強調することで、補正画像Q2を生成する。言い換えると、画像補正部113は、補正画像Q2における被写体OB2の領域の彩度を、撮影画像P2における被写体OB2の領域の彩度よりも強調する。これにより、補正画像Q2における被写体OB2の色の鮮やかさは、撮影画像P2に撮影された被写体OB2の色の鮮やかさよりも強調される。その結果、補正画像Q2における被写体OB2の自然物らしさが強調される。
【0091】
画像補正部113により彩度を強調する度合いは、工場出荷時のプリセット値を用いても良いし、ユーザUにより自由に設定されても良い。
【0092】
一方で、撮影ユニット3により図4に示した撮影画像P1が撮影された場合、被写体判定部112は、撮影画像P1に撮影された被写体OB1が自然物に該当しない、すなわち非自然物に該当すると判定する。この場合、画像補正部113は、撮影画像P1に対して彩度の補正を加えない。言い換えると、画像補正部113は、被写体が自然物に該当するときには、被写体が非自然物に該当するときよりも、補正画像における彩度に対する補正強度を大きくする。
【0093】
より詳細には、画像補正部113は、図11に示すように、視覚支援装置1の動作モードと被写体の種類とに応じて撮影画像を補正する。具体的に説明すると、画像補正部113は、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モードである場合であって、且つ、被写体が自然物に該当する場合、画像補正部113は、撮影画像の彩度を強調することで補正画像を生成する。
【0094】
これに対して、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モードである場合であって、且つ、被写体が非自然物に該当する場合、画像補正部113は、撮影画像の彩度を基準値のまま変更しない。また、視覚支援装置1の動作モードが視覚支援モード以外のモードである通常モードである場合、被写体が自然物と非自然物とのどちらに該当しても、画像補正部113は、撮影画像の彩度を基準値のまま変更しない。これらの場合、画像補正部113は、撮影画像を補正しないため、補正画像を生成しない。
【0095】
次に、図12を参照して、実施形態2に係る視覚支援装置1において実行される視覚支援処理の流れを説明する。図12に示す視覚支援処理は、視覚支援方法の一例である。
【0096】
図12に示す視覚支援処理は、視覚支援装置1がユーザUに装着された状態において、適宜のタイミングで繰り返し実行される。一例として、視覚支援装置1がユーザUの頭部に装着された状態において、ユーザUが頭部を動かして様々な被写体に視線を向ける毎に、撮影ユニット3のオートフォーカスが実行される。このようなオートフォーカスが実行されたタイミングで、図12に示す視覚支援処理は実行される。
【0097】
視覚支援処理を開始すると、制御ユニット5において、制御部110は、撮影画像取得部111として機能し、撮影画像を取得する(ステップS21)。制御部110は、撮影ユニット3によりユーザUの視認対象を被写体とする撮影を行う。これにより、制御部110は、例えば図4に示した撮影画像P1、図5に示した撮影画像P2等を撮影ユニット3から取得する。ステップS21は、撮影画像取得ステップの一例である。
【0098】
撮影を行うと、制御部110は、視覚支援装置1の現在の動作モードを判定する(ステップS22)。動作モードは、ユーザUがモード切替スイッチ140を操作することにより切り替えられる。制御部110は、現在の動作モードが視覚支援モードであるか、通常モードであるかを判定する。
【0099】
現在の動作モードが視覚支援モードであると判定した場合(ステップS22;視覚支援モード)、制御部110は、被写体判定部112として機能し、被写体の種類を判定する(ステップS23)。具体的に説明すると、制御部110は、予め定められた判定手法を用いて、撮影画像での被写体が自然物に該当するか否かを判定する。
【0100】
被写体が自然物に該当すると判定した場合(ステップS23;自然物)、制御部110は、画像補正部113として機能し、撮影画像における彩度を強調することで、補正画像を生成する(ステップS24)。例えば、制御部110は、撮影画像P2に撮影された植物の彩度を強調することにより、図10に示した補正画像Q2を生成する。ステップS24は、画像補正ステップの一例である。
【0101】
補正画像を生成すると、制御部110は、投影制御部114として機能し、生成された補正画像をユーザUの網膜RE上に投影する(ステップS25)。具体的に説明すると、制御部110は、補正画像に基づくレーザ光をレーザモジュール170から出射させる。そして、制御部110は、投影ユニット7において、レーザ光をユーザUの眼球EY1内に投射することで、補正画像を眼球EY1内の網膜RE上に投影する。ステップS25は、投影ステップの一例である。
【0102】
一方で、ステップS22で現在の動作モードが通常モードであると判定した場合(ステップS22;通常モード)、及び、ステップS23で被写体が非自然物に該当すると判定した場合(ステップS23;非自然物)、制御部110は、ステップS24における補正処理を実行しない。
【0103】
この場合、制御部110は、投影制御部114として機能し、ステップS21で取得された撮影画像をユーザUの網膜RE上に投影する(ステップS26)。具体的に説明すると、制御部110は、撮影画像に基づくレーザ光をレーザモジュール170から出射させる。そして、制御部110は、投影ユニット7において、レーザ光をユーザUの眼球EY1内に投射することで、撮影画像を眼球EY1内の網膜RE上に投影する。ステップS26は、投影ステップの一例である。
【0104】
以上説明したように、実施形態2に係る視覚支援装置1は、撮影ユニット3の撮影により取得された撮影画像を補正することにより補正画像を生成し、生成された補正画像をユーザUの網膜RE上に投影する。その際、視覚支援装置1は、撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、補正画像の彩度を撮影画像の彩度よりも強調する。これにより、視覚支援装置1は、ユーザUが視認対象を直感的に把握しやすくすることができる。
【0105】
特に、ユーザUがロービジョン者である場合、視認対象を高い解像度で認識することよりも、視認対象の特徴を粗くでも良いから認識できることの方が重要になることが多い。実施形態2に係る視覚支援装置1は、被写体が自然物に該当する場合に彩度を強調することで、自然物の特徴をより際立たせることができる。その結果、ユーザUは、ロービジョン者であっても、視界内に存在する自然物の色彩や質感等を容易に把握することができる。
【0106】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0107】
例えば、上記実施形態1では、画像補正部113は、撮影画像での被写体が人工物に該当しない場合、撮影画像に補正を加えなかった。しかしながら、画像補正部113は、被写体が人工物に該当しない場合、撮影画像に何らかの補正を加えて補正画像を生成しても良い。例えば、画像補正部113は、被写体が人工物に該当しない場合、補正画像の彩度を撮影画像の彩度よりも強調しても良い。この場合、実施形態2で説明した彩度を強調する構成を適用することができる。
【0108】
また、上記実施形態2では、画像補正部113は、撮影画像での被写体が自然物に該当しない場合、撮影画像に補正を加えなかった。しかしながら、画像補正部113は、被写体が自然物に該当しない場合、撮影画像に何らかの補正を加えて補正画像を生成しても良い。例えば、画像補正部113は、被写体が自然物に該当しない場合、補正画像のシャープネスを撮影画像のシャープネスよりも強調しても良い。この場合、実施形態1で説明したシャープネスを強調する構成を適用することができる。
【0109】
このように、実施形態1で説明したシャープネスを強調する構成と実施形態2で説明した彩度を強調する構成とは、適宜組み合わせることが可能である。
【0110】
上記実施形態1では、画像補正部113は、撮影画像での被写体が人工物に該当する場合、補正画像における被写体の領域のシャープネスを、撮影画像における被写体の領域のシャープネスよりも強調した。しかしながら、画像補正部113は、被写体の領域のみに限らず、補正画像における被写体以外の領域に補正を加えても良い。例えば、画像補正部113は、補正画像における被写体以外の領域のシャープネスを、被写体の領域と同様に強調しても良い。或いは、画像補正部113は、補正画像における被写体以外の領域のシャープネス以外の補正(例えば彩度等の補正)を加えても良い。
【0111】
上記実施形態2では、画像補正部113は、撮影画像での被写体が自然物に該当する場合、補正画像における被写体の領域の彩度を、撮影画像における被写体の領域の彩度よりも強調した。しかしながら、画像補正部113は、被写体の領域のみに限らず、補正画像における被写体以外の領域に補正を加えても良い。例えば、画像補正部113は、補正画像における被写体以外の領域の彩度を、被写体の領域と同様に強調しても良い。或いは、画像補正部113は、補正画像における被写体以外の領域の彩度以外の補正(例えばシャープネス等の補正)を加えても良い。
【0112】
上記実施形態では、視覚支援装置1は、眼鏡の形状をしていた。しかしながら、視覚支援装置1は、眼鏡の形状であることに限らず、例えば、ヘルメット状、帽子状、ゴーグル状等をしていても良い。
【0113】
上記実施形態では、投影ユニット7は、第1の眼球EY1の側に配置され、撮影ユニット3は、第2の眼球EY2の側に配置されていた。しかしながら、撮影ユニット3は、ユーザUの視認対象を撮影できる位置であれば、第2の眼球EY1の側に配置されることに限らず、第1の眼球EY1の側に配置されても良いし、ユーザUの額、頭上等の位置に配置されても良い。
【0114】
上記実施形態では、投影ユニット7は、第1の眼球EY1内の網膜RE上に撮影画像又は補正画像を投影した。しかしながら、投影ユニット7は、第2の眼球EY2内の網膜RE上に撮影画像又は補正画像を投影しても良いし、2つの眼球EY1,EY2の両方の網膜RE上に撮影画像又は補正画像を投影しても良い。
【0115】
上記実施形態では、制御部110において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、撮影画像取得部111、被写体判定部112、画像補正部113及び投影制御部114の各部として機能した。しかしながら、本発明において、制御部110は、CPUの代わりに、例えばASIC、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、撮影画像取得部111、被写体判定部112、画像補正部113及び投影制御部114の各部として機能しても良い。
【0116】
また、撮影画像取得部111、被写体判定部112、画像補正部113及び投影制御部114の機能の少なくとも一部は、制御ユニット5に備えられることに限らない。例えば、撮影画像取得部111、被写体判定部112、画像補正部113及び投影制御部114の機能の少なくとも一部は、撮影ユニット3又は投影ユニット7に備えられていても良い。或いは、視覚支援装置1の外部の装置が、撮影画像取得部111、被写体判定部112、画像補正部113及び投影制御部114の機能の少なくとも一部を備えていても良い。外部の装置は、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ等のような、インターネット等の通信ネットワークを介して視覚支援装置1と通信可能な情報処理装置である。
【0117】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた視覚支援装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る視覚支援装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した視覚支援装置1の制御部110における各機能を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る視覚支援装置として機能させることができる。
【0118】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0119】
以上、本発明の好ましい実施形態等について説明したが、本発明は上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0120】
1…視覚支援装置、3…撮影ユニット、5…制御ユニット、7…投影ユニット、9…複合ケーブル、30…走査部、31…MEMSミラー、32…反射ミラー、60…導光部、110…制御部、111…撮影画像取得部、112…被写体判定部、113…画像補正部、114…投影制御部、120…記憶部、140…モード切替スイッチ、150…通信部、170…レーザモジュール、180…レーザドライバ、EY1,EY2…眼球、OB1,OB2…被写体、P1,P2…撮影画像、Q1,Q2…補正画像、PU…瞳孔、RE…網膜、U…ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12