(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124996
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 61/20 20060101AFI20240906BHJP
B01D 65/08 20060101ALI20240906BHJP
B01D 61/10 20060101ALI20240906BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20240906BHJP
B01D 61/22 20060101ALI20240906BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240906BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240906BHJP
【FI】
B01D61/20
B01D65/08
B01D61/10
B01D61/12
B01D61/22
B01D61/58
C02F1/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033037
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】上口 純司
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006JA51Z
4D006JA53Z
4D006JA70Z
4D006KA01
4D006KA33
4D006KA53
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4D006KA55
4D006KA56
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4D006KB04
4D006KB22
4D006KB23
4D006KB30
4D006KC03
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4D006KC16
4D006KD11
4D006KD15
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4D006KD30
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE15P
4D006KE16P
4D006KE19P
4D006KE30P
4D006KE30Q
4D006LA08
4D006PA01
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】水処理システムの処理コストをより低減する。
【解決手段】制御装置は、取得部と、決定部と、を備えることを特徴とする。取得部は、MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置のMF膜又はUF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得する。決定部は、水質情報に応じて、膜ろ過装置のMF膜又はUF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得する取得部と、
前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する決定部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記次亜塩素酸ナトリウムを注入することで形成されるクロラミン濃度に応じて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記水質情報を入力とするAIモデルを用いて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記水質情報は、前記供給水の水温、pH値、ORP(Oxidation-Reduction Potential)値、アンモニア性窒素含有量、窒素化合物含有量、濁度、紫外線吸光度、電気伝導率、及び、TOC(Total Organic Carbon)値の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記MF膜又は前記UF膜、及び、前記MF膜又は前記UF膜を透過した膜ろ過透過水が供給される前記NF膜又は前記RO膜の少なくとも一方の洗浄タイミングに応じて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記洗浄タイミングに関する情報を入力とするAIモデルを用いて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記MF膜又は前記UF膜を透過した膜ろ過透過水、及び、前記膜ろ過透過水が供給される前記NF膜又は前記RO膜を用いて分離された逆浸透膜濃縮水の少なくとも一方の水質に関する第2水質情報を取得し、
前記決定部は、前記第2水質情報に応じて、前記次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第2水質情報は、前記膜ろ過透過水及び前記逆浸透膜濃縮水の少なくとも一方の水温、pH値、ORP値、TOC値、微生物含有量の少なくとも1つを含む、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記膜ろ過透過水及び前記逆浸透膜濃縮水の少なくとも一方に含まれる微生物の量が少なくなるように、前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記MF膜又は前記UF膜、及び、前記MF膜又は前記UF膜を透過した膜ろ過透過水が供給される前記NF膜又は前記RO膜の少なくとも一方の透過性に応じて、前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記取得部は、前記透過性として、前記MF膜又は前記UF膜への前記供給水の圧力に関する第1圧力情報、前記MF膜又は前記UF膜の膜間差圧に関する第2圧力情報、前記NF膜又は前記RO膜へ供給される前記膜ろ過透過水の圧力に関する第3圧力情報、前記膜ろ過透過水の圧力と前記NF膜又は前記RO膜を用いて分離された逆浸透膜濃縮水の圧力との差分に関する第4圧力情報、及び、前記NF膜又は前記RO膜の膜間差圧に関する第5圧力情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記決定部は、前記第2圧力情報、前記第4圧力情報、及び、前記第5圧力情報の少なくとも1つの値が小さくなるように前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
コンピュータが
MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得し、
前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する、
処理を実行する制御方法。
【請求項14】
コンピュータに
MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得し、
前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する、
処理を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ろ過膜を備える膜ろ過装置を用いて処理水を浄化する水処理システムが知られている。水処理システムでは、例えば処理水に含まれる有機物を除去するために次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液が用いられる。
【0003】
下水処理水を対象とした水処理システムにおいて、下水処理水に含まれるアンモニアと次亜塩素酸ナトリウムとが反応してクロラミンが生成される。このクロラミンがNDMA前駆物質と反応することでNDMA(N-ニトロソジメチルアミン)が生成される場合がある。
【0004】
このNDMAを除去するため、膜ろ過装置の後段で紫外線(UV:UltraViolet)及び酸化剤を組み合わせた促進酸化手法を用いた処理が行われる。UV促進酸化処理によって、NDMAは、基準値以下まで除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被処理水が下水や雨水などの排水由来の場合、被処理水に含まれるアンモニアの量が安定していない場合がある。そのため、排水を処理する水処理システムでは、より確実に有機物を除去するために、過剰な次亜塩素酸ナトリウムや硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム)が注入される。
【0007】
過剰に次亜塩素酸ナトリウムが注入されると、下水処理水に含まれるアンモニアと次亜塩素酸ナトリウムとの反応がより確実に促進されるが、生成されるクロラミンの量が増えることで、NDMAの生成が増加する場合がある。
【0008】
そのため、UV促進酸化処理でのUV照射量の増加やUV照射時間の増加による処理コストが増加してしまうという問題がある。
【0009】
一つの側面では、水処理システムの処理コストをより低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面にかかる制御装置は、取得部と、決定部と、を備えることを特徴とする。取得部は、MF膜(MicroFiltration Membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得する。決定部は、前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、水処理システムの処理コストをより低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】次亜塩素酸ナトリウムの注入と残留塩素との関係を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る制御処理の一例を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る水処理装置の構成例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る逆浸透膜装置の構成例を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る第1決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態に係る洗浄決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態に係る第2決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】制御装置のハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する制御装置、制御方法及び制御プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、ここで説明する実施形態により本願の発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.はじめに]
[1.1.課題]
下水や雨水などの排水に対する水処理は、一般的に、大きく一次処理、二次処理、及び、三次処理の3つの処理に分類される。
【0015】
一次処理では、排水に含まれる夾雑物のような大きな固形物の除去が行われる。二次処理では、一次処理で除去しきれなかった有機物を微生物(バクテリア)によって除去する。二次処理では、例えば活性汚泥処理、硝化脱窒反応処理等が行われる。三次処理では、二次処理で除去しきれなかった浮遊性固形物の沈殿除去が行われる。三次処理では、砂ろ過や膜ろ過処理によって浮遊性固形物の除去が行われる。
【0016】
二次処理において、排水中に微生物が多く存在し、この微生物が有機物を酸化分解する。その後、微生物は、沈殿され、沈殿物として除去される。沈殿物除去後の排水には、沈殿しきれなかった微生物や、細菌等に付着するウイルスなどが残留している。
【0017】
この下水処理水(二次処理水又は三次処理水)に塩素(次亜塩素酸ナトリウム)が注入されることで、微生物やウイルスなどが除去される。これにより、水処理システム10は、微生物やウイルスの繁殖を防ぎ、後段の膜ろ過処理におけるろ過膜の閉塞を抑制することができる。
【0018】
ここで、排水には、安定値を超えた過剰な次亜塩素酸ナトリウムが注入される。このように過剰に次亜塩素酸ナトリウムが注入されることで、微生物やウイルスがより確実に除去される。
【0019】
排水に次亜塩素酸ナトリウム(塩素)を加えることで、アンモニア(NH4-N)から結合塩素(クロラミン)が生成される。
【0020】
一般的に、以下の反応式(1)~(4)及び化学平衡によって、水中で存在する結合塩素の種類が異なる。
【0021】
【0022】
反応式(1)~(4)に示すように、アンモニア(NH3)が、水質条件によって主に3つの結合塩素(モノクロラミン(NH2Cl)、ジクロラミン(NHCl2)、トリクロラミン(NCl3))に変換される。
【0023】
図1は、次亜塩素酸ナトリウムの注入と残留塩素との関係を示す図である。ここでは、時間当たり一定量の次亜塩素酸ナトリウムをアンモニア水に注入した場合の残留塩素のグラフを示している。
図1のグラフの横軸は時間を、縦軸は残留塩素を示している。
【0024】
具体的に、次亜塩素酸ナトリウムを入れ始めてから第1時刻t1までの間(zone 1)は、次亜塩素酸ナトリウムが微生物によって消費されるので、被処理水から次亜塩素酸ナトリウムは検出されない。第1時刻t1は、被処理水に含まれる微生物の量に応じて変化する。
【0025】
その後(第1時刻t1の後)、第2時刻t2までの間(zone 2)では、上述した式(1)の反応が優位となり、アンモニアと次亜塩素酸ナトリウムとが結合して、モノクロラミンが検出され始める。
【0026】
さらに次亜塩素酸ナトリウムが注入され続けると、第2時刻t2から第3時刻t3までの間(zone 3)において、上述した式(2)の反応が優位となり、ジクロラミンが検出され始める。その後、さらに次亜塩素酸ナトリウムが注入され続けると、第3時刻t3以降(zone 4)次亜塩素酸ナトリウムそのものが検出され始める。第2時刻t2~第3時刻t3は、排水に含まれるアンモニアの量などに応じて変化する。
【0027】
時刻t2は明確に定義できず、ジクロラミンが発生する時刻は、水質変化によって変化する。そのため、ジクロラミン発生を抑制させるため、熟練管理者によって水質が管理されている状況にある。
【0028】
被処理水に含まれる微生物やアンモニアの量は、下水の水質や一次処理、二次処理に応じて変化する。より確実に微生物を除去するために、通常、被処理水に過剰の次亜塩素酸ナトリウム及びアンモニア(例えば硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウム)が注入される。
【0029】
このように、過剰に次亜塩素酸ナトリウムや硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム)が注入されることで、これらの使用量が多くなりコストが増加するという問題がある。
【0030】
また、過剰な次亜塩素酸ナトリウムの注入によって、NDMAが増加するという問題がある。NDMAは、クロラミンとNDMA前駆物質とが反応することによって発生する。特に、ジクロラミンによってNDMAが爆発的に発生することが知られている。
【0031】
例えばアメリカでは、飲用水中に含まれるNDMAが10ng/L以下になるよう基準が定められている。次亜塩素酸ナトリウムの注入によって発生したNDMAは、膜ろ過処理では除去されない。NDMAは、膜ろ過処理の後段のUV促進酸化(Post AOP(光酸化・促進酸化))処理によって分解される。
【0032】
被処理水に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量が多いと、次亜塩素酸ナトリウムの使用量増加によってコストが増えるという問題に加え、NDMA除去のためのUVによる促進酸化の負荷が増えるという問題が発生する。UVによる促進酸化の負荷が増えると、水処理システムによる処理の長時間化やコストが増えるという問題が発生する。
【0033】
一方、排水に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量が少ないと、排水中の微生物を除去しきれないという問題が発生する。除去しきれなかった微生物により、膜ろ過処理で使用するろ過膜の透過性が低下し、処理水(再生水)の品質が劣化する恐れがある。
【0034】
このように、水処理システムにおいて、再生水の品質と、排水を再生するためのコストと、はトレードオフの関係がある。そのため、再生水の品質を保ちつつ、コストがより低くなるよう、各処理を制御することが求められる。
【0035】
なお、過剰注入により、排水中に塩素が多く残ることで、ろ過膜(例えば、後述するMF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane))が破損しやすくなるという問題が発生する。この問題を防止するために、ろ過膜の素材として、耐塩素の強靱素材(例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF))を使用することが主流となりつつある。なお、NF膜やRO膜は架橋芳香族ポリアミドが主流であり、ジクロラミンによる酸化分解などの損傷を受けることが知られている。
【0036】
このPVDFを用いた膜でも、膜表面や細孔が閉塞すれば、ろ過水量が減少する。ろ過水量を確保するためには、より高い圧力でろ過膜に排水を供給する必要がある。すなわち、ろ過膜に排水を供給するポンプがより高圧で運転する必要があり、このポンプのエネルギー消費量が上昇してしまう。
【0037】
このように、PVDFの使用は、水処理システムのコスト低減に寄与するとは言えない場合もあり、より適切な改善策が求められている。
【0038】
ここで、ろ過膜(例えば、MF膜又はUF膜)は、閉塞を解消するために、定期的に洗浄が行われる。例えば、MF膜又はUF膜の洗浄としては、逆洗浄(ろ過水を使用した洗浄)、薬品(例えば、硫酸、クエン酸、次亜塩素酸ナトリウム)を使用した洗浄(Maintenance Cleaning:MC)、高濃度薬品を使用し長時間浸漬を行う薬品洗浄(Recovery Cleaning:RC)などが挙げられる。
【0039】
膜ろ過処理では、ろ過膜(例えば、MF膜又はUF膜)によるろ過、上述した洗浄、および、その他の処理で構成される運転シーケンスが設計段階において設定(初期設定)される。通常、この初期設定(初期条件による設定)がユーザによって変更及び最適化されることはほぼない。
【0040】
MF膜又はUF膜の後段に設けられる、NF膜又はRO膜はより高濃度なクロラミンやジクロラミンによって損傷を受けやすいため、NF膜又はRO膜の損傷を来さない適切な濃度レンジにクロラミン濃度を制御する必要がある。
【0041】
[1.2.制御処理の概要]
そこで、本開示の実施形態では、水処理の制御を行う制御装置が、膜ろ過装置の流入部において、この膜ろ過装置への供給水(上述した排水に相当)の水質に関する水質情報を取得する。制御装置は、水質情報に応じて膜ろ過装置に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する。
【0042】
これにより、制御装置は、次亜塩素酸ナトリウムを注入することで発生するクロラミンを所定濃度(例えば、モノクロラミンが形成されるzone 1)に抑制することができ、NDMAの発生を抑制することができる。
【0043】
また、制御装置は、水質に応じて注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定するため、膜ろ過装置に過剰な次亜塩素酸ナトリウムが注入されることがない。これにより、制御装置は、次亜塩素酸ナトリウムの使用量をより適切に制御することができ、コストをより低下させることができる。
【0044】
図2を用いて、制御装置による制御処理の一例について説明する。
【0045】
図2は、本開示の実施形態に係る制御処理の一例を示す図である。
図2に示す水処理システム10は、水処理装置100及び制御装置200を有する。水処理装置100は、下水や雨水などの排水を処理した下水処理水を生活用水や飲用水に再生する。
【0046】
水処理装置100には、例えば、排水に対して活性汚泥処理、硝化脱窒反応処理等が施された処理水(すなわち、一次処理及び二次処理が施された処理水)が供給される。水処理装置100は、供給される処理水に対して膜処理等を施す。すなわち、水処理装置100は、主に上述した二次処理水や三次処理水の再利用を目的とした水処理を行う。
【0047】
水処理装置100によって処理された処理水は、例えば塩素などによって消毒が行われ、生活用水や飲用水として使用される。
【0048】
活性汚泥処理、硝化脱窒反応処理等は、例えば下水処理施設にて実施される。水処理装置100は、例えば下水処理施設にて処理された排水に対して膜処理等を施す。
【0049】
図2に示す水処理装置100は、UF膜ろ過装置110、RO膜ろ過装置120、UV促進酸化処理装置130、水質センサ140_1、及び、注入装置150を備える。
【0050】
UF膜ろ過装置110は、供給水に対してろ過膜によって微生物や粒子状物質を除去する。UF膜ろ過装置110のろ過膜は、例えば、限外ろ過膜(UF膜)である。なお、以下では説明を簡略化するために水処理装置100が限外ろ過膜(UF膜)を用いて膜ろ過を行うものとするが、水処理装置100がUF膜以外のろ過膜を用いて膜ろ過を行ってもよい。例えば、水処理装置100は、精密ろ過膜(MF膜)などを用いて膜ろ過を行い得る。なお、水処理装置100がMF膜を用いた膜ろ過を行う場合、以下の説明におけるUF膜がMF膜に置き換えられ得る。
【0051】
RO膜ろ過装置120には、UF膜ろ過装置110による処理水が供給される。RO膜ろ過装置120は、供給水に対してイオンや塩類などの不純物を除去する。RO膜ろ過装置120は、逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis membrane)を備える。なお、以下では説明を簡略化するために水処理装置100が逆浸透(RO膜)を用いて膜ろ過を行うものとするが、水処理装置100がRO膜以外のろ過膜を用いて膜ろ過を行ってもよい。例えば、水処理装置100は、NF膜を用いて膜ろ過を行い得る。なお、水処理装置100がNF膜を用いた膜ろ過を行う場合、以下の説明におけるRO膜がNF膜に置き換えられ得る。
【0052】
UV促進酸化処理装置130には、RO膜ろ過装置120による処理水が供給される。UV促進酸化処理装置130は、供給水に対してUVを照射することで促進酸化処理を行い、NDMA等を除去する。
【0053】
UF膜ろ過装置110に供給される供給水を膜ろ過供給水とも記載する。RO膜ろ過装置120に供給される供給水を逆浸透膜供給水と記載する。UV促進酸化処理装置130に供給される供給水をUV供給水とも記載する。
【0054】
水質センサ140_1は、UF膜ろ過装置110の流入部に配置される。水質センサ140_1は、膜ろ過供給水の水質を測定する。
【0055】
水質センサ140_1は、例えば、膜ろ過供給水の水温、pH値、ORP(Oxidation-Reduction Potential)、アンモニア性窒素含有量、窒素化合物含有量、濁度、紫外線吸光度、電気伝導率、及び、TOC(Total Organic Carbon)値の少なくとも1つを測定する。
【0056】
水質センサ140_1は、測定結果を制御装置200に出力する。
【0057】
注入装置150は、制御装置200からの指示に従って、UF膜ろ過装置110の流入部に薬液を注入する。注入装置150は、例えば次亜塩素酸ナトリウムをUF膜ろ過装置110の流入部に注入する。また、注入装置150は、次亜塩素酸ナトリウム以外にも、例えば、硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウムなどの薬液をUF膜ろ過装置110の流入部に注入する。
【0058】
制御装置200は、水処理装置100の各部を制御する。本実施形態に係る制御装置200は、
図2に示す制御処理を実行する。
【0059】
制御装置200は、制御処理として、まず、水質センサ140_1から膜ろ過供給水の水質情報を取得する(ステップS1)。
【0060】
制御装置200は、水質情報に応じて次亜塩素酸ナトリウムの注入量を決定する(ステップS2)。例えば、制御装置200は、膜ろ過供給水に含まれる微生物をより多く除去しつつ、ジクロラミンの形成がより少なくなるよう、次亜塩素酸ナトリウムの注入量を決定する。より具体的には、制御装置200は、次亜塩素酸ナトリウムを注入した膜ろ過供給水の状態が、上述したzone 1の状態となるように、注入量を決定する。
【0061】
制御装置200は、決定した注入量をUF膜ろ過装置110の流入部に注入するよう、注入装置150に指示する(ステップS3)。
【0062】
これにより、水処理装置100は、次亜塩素酸ナトリウムの注入量を抑制しつつ、微生物の除去及びNDMA発生の抑制を実現することができ、処理コストをより低減することができる。
【0063】
[2.システム構成例]
[2.1.水処理装置の構成例]
図3は、本開示の実施形態に係る水処理装置100の構成例を示す図である。
図3に示す水処理装置100は、UF膜ろ過装置110、RO膜ろ過装置120、UV促進酸化処理装置130、水質センサ140_1~140_3、及び、注入装置150を備える。なお、
図3に示す水処理装置100は一例であり、本実施形態に係る水処理装置100が
図3に示す構成要素以外の要素を備えていてもよい。
【0064】
(UF膜ろ過装置110)
UF膜ろ過装置110は、UF膜(図示省略)を備える。UF膜ろ過装置110は、UF膜供給水に対してUF膜を用いて膜ろ過を行い、微生物や粒子状物質を除去する。UF膜ろ過装置110は、膜ろ過後の膜ろ過透過水(UF膜透過水)をRO膜ろ過装置120に供給する。
【0065】
UF膜ろ過装置110は、例えばポンプ111、圧力計112及び洗浄ユニット113を備える。
【0066】
ポンプ111は、UF膜供給水をUF膜に供給するフィーダーポンプである。
【0067】
圧力計112は、UF膜ろ過装置110の流入部の圧力、及び、流出部の圧力を計測する。例えば、圧力計112は、UF膜ろ過装置110へのUF膜供給水の圧力を計測する。圧力計112は、UF膜ろ過装置110を透過したUF膜透過水の圧力を計測する。圧力計112は、計測した各圧力を制御装置200(
図2参照)に出力する。
【0068】
図3に示す洗浄ユニット113は、制御装置200(
図2参照)からの指示に従い、UF膜の洗浄を行う。洗浄ユニット113は、例えば逆洗浄、MC、RCなどを実行する。
【0069】
(RO膜ろ過装置120)
図3に示すRO膜ろ過装置120は、RO膜(図示省略)を備える。RO膜ろ過装置120は、RO膜供給水に対してRO膜を用いて脱塩(イオン状物質の除去)を行う。
【0070】
RO膜ろ過装置120は、例えばポンプ121、圧力計122及び洗浄ユニット113を備える。
【0071】
ポンプ121は、RO供給水をRO膜に供給するフィーダーポンプである。ポンプ121は、複数のフィーダーポンプを備えていてもよい。
【0072】
圧力計122は、RO膜ろ過装置120の流入部の圧力、及び、流出部の圧力を計測する。例えば、圧力計122は、RO膜ろ過装置120へのRO膜供給水の圧力を計測する。圧力計122はRO膜ろ過装置120を透過したRO膜透過水の圧力を計測する。圧力計122は、計測した各圧力を制御装置200(
図2参照)に出力する。
【0073】
図3に示す洗浄ユニット123は、制御装置200(
図2参照)からの指示に従い、RO膜の洗浄を行う。洗浄ユニット123は、例えばMC、RCなどを実行する。
【0074】
図4は、本開示の実施形態に係るRO膜ろ過装置120の構成例を示す図である。
図4に示すRO膜ろ過装置120は、第1~第3RO膜ユニット124_1~124_3を備える。
【0075】
第1RO膜ユニット124_1は、RO膜(図示省略)を備える。第1RO膜ユニット124_1には、例えばフィーダーポンプ121_1(ポンプ121の一例)を用いてRO膜供給水が供給される。第1RO膜ユニット124_1は、RO膜を用いて、RO膜供給水を、RO膜透過水(RO膜ろ過水)とRO膜濃縮水とに分離する。第1RO膜ユニット124_1は、RO膜濃縮水を第2RO膜ユニット124_2に供給する。
【0076】
第2RO膜ユニット124_2は、RO膜(図示省略)を備える。第2RO膜ユニット124_2には、RO膜濃縮水が第1RO膜ユニット124_1から供給される。第2RO膜ユニット124_2は、RO膜膜を用いて、RO膜濃縮水を、RO膜透過水とRO膜濃縮水とに分離する。第2RO膜ユニット124_2は、RO膜濃縮水を第3RO膜ユニット124_3に供給する。
【0077】
第3RO膜ユニット124_3は、RO膜(図示省略)を備える。第3RO膜ユニット124_3には、例えばフィーダーポンプ121_2(ポンプ121の一例)を用いてRO膜濃縮水が第2RO膜ユニット124_2から供給される。第3RO膜ユニット124_3は、RO膜を用いて、RO膜濃縮水を、RO膜透過水と濃縮排水とに分離する。第3ROユニット124_3は、濃縮排水を水処理装置100外に排水する。
【0078】
RO膜ろ過装置120は、RO膜透過水をUV促進酸化処理装置130(
図3参照)に供給する。
【0079】
(UV処理装置130)
図4のUV促進酸化処理装置130は、UV供給水に対してUV-AOP(Advanced Oxidation Process:紫外線を用いた促進酸化処理)を実施する。これにより、UV促進酸化処理装置130は、UV供給水に含まれる微量化学物質(例えばNDMA)を酸化分解する。
【0080】
(水質センサ140)
水質センサ140は、水処理装置100の各部の供給水又はろ過水(透過水)などの水質を測定する。
図3の例では、水処理装置100は、水質センサ140_1~140_3を備える。
【0081】
水質センサ140_1は、UF膜ろ過装置110の流入部の水質を測定する。水質センサ140_1は、UF膜供給水の水質を測定する。水質センサ140_1は、例えば、UF膜供給水の水温、pH、ORP、アンモニア性窒素など、窒素化合物、濁度、紫外線吸光度、電気伝導率、及び、TOCの少なくとも1つを測定する。水質センサ140_1は、これらを測定する複数のセンサ(例えば、温度計、pH計、濁度計、導電率計など)を備えていてもよい。
【0082】
水質センサ140_2は、RO膜ろ過装置120の流入部(あるいは、UF膜ろ過装置110の流出部)の水質を測定する。水質センサ140_2は、RO膜供給水(あるいは、UF膜透過水)の水質を測定する。水質センサ140_2は、RO膜供給水の水温、pH、ORP、TOC及び微生物データ(ウイルス、バクテリア及びATP(アデノシン三リン酸)の少なくとも1つ)の少なくとも1つを測定する。水質センサ140_2は、これらを測定する複数のセンサ(例えば、温度計、pH計など)を備えていてもよい。
【0083】
水質センサ140_3は、RO膜ろ過装置120のRO膜濃縮水(あるいは、濃縮排水)の水質を測定する。水質センサ140_3は、RO膜濃縮水の水温、pH、ORP、TOC及び微生物データ(ウイルス、バクテリア及びATP(アデノシン三リン酸)の少なくとも1つ)の少なくとも1つを測定する。水質センサ140_3は、これらを測定する複数のセンサ(例えば、温度計、pH計など)を備えていてもよい。
【0084】
なお、水処理装置100が備える水質センサ140は、
図3の例に限定されない。例えばUV供給水の水質を測定する水質センサ140など、水処理装置100が
図3に示していない水質センサ140を有していてもよい。
【0085】
(注入装置150)
注入装置150は、UF膜ろ過装置110の流入部において、各種薬液の注入を行う。注入装置150は、制御装置200(
図2参照)の指示に従って、薬液を注入する。例えば、注入装置150は、膜ろ過供給水に次亜塩素酸ナトリウムを注入する。また、注入装置150は、膜ろ過供給水に硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウムを注入する。
【0086】
なお、水処理装置100が備える注入装置150は、
図3の例に限定されない。例えばUV供給水に薬液の注入を行う注入装置150など、水処理装置100が
図3に示していない注入装置150を有していてもよい。
【0087】
このように注入装置150は、UF膜ろ過装置110(換言するとUF膜)の流入部で、クロラミンを形成させるため、硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム)及び次亜塩素酸ナトリウムを注入する。
【0088】
ここで、クロラミンは、塩素(次亜塩素酸ナトリウムは、水中(膜ろ過供給水)では次亜塩素酸HOCl又は次亜塩素酸イオンOCl-として存在する)をアンモニアと反応させた結合塩素である。
【0089】
一般的に、上述したの反応式(1)~(4)及び化学平衡によって、水中で存在する結合塩素の種類が異なる。
【0090】
反応式(1)~(4)に示すように、アンモニア(NH3)が、水質条件によって主に3つの結合塩素(モノクロラミン(NH2Cl)、ジクロラミン(NHCl2)、トリクロラミン(NCl3))に変換される。
【0091】
クロラミンの酸化力及び生物の消毒効果は、モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミンの順に大きくなる。すなわち、酸化力及び生物の消毒効果は、モノクロラミンよりジクロラミンが大きく、ジクロラミンよりトリクロラミンが大きい。また、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンが最も消毒効果が高い。
【0092】
膜ろ過供給水に注入する塩素(次亜塩素酸ナトリウム)の量が増加し、塩素の対アンモニア比が上昇すると、アンモニアがモノクロラミンに変化し、さらにジクロラミン、トリクロラミンを経て、窒素ガスとして水中からなくなり、次亜塩素酸又は次亜塩素酸イオンとして遊離するようになる。
【0093】
本実施形態では、膜ろ過供給水における塩素濃度及びアンモニア濃度の比(Cl2:NH3)が、1:2.5から1:3程度になるように設定される。すなわち、制御装置200は、膜ろ過供給水におけるNH3/Cl2を2.5~3に設定して、モノクロラミンの生成を目的として、硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム)及び次亜塩素酸ナトリウムの注入量を設定する。
【0094】
ジクロラミン、トリクロラミン、及び、遊離塩素の酸化力は、モノクロラミンより強く、参考文献[1]で報告されるように、芳香族ポリアミド系素材を有するRO膜の劣化を招くことが知られている。
【0095】
さらに、参考文献[2]で報告されるように、NDMAへの変換は、ジクロラミン存在下で窒素化合物(N2、NH3、NO2、NO3、N2O他)との反応により促進されることがわかっている。
【0096】
NDMAの発生が促進されると、UV促進酸化処理装置130は、UV-AOPでのUVランプ照射エネルギーを増加させてNDMAの分解を促進する必要があり、この処理コストが上昇する。
【0097】
一方で、水処理装置100の処理対象である排水は、窒素化合物を高濃度に含む。また、排水中の窒素化合物の成分及び窒素濃度は変動する。
【0098】
従来の水処理装置では、この窒素成分の分析や管理がリアルタイムでは行われておらず、排水に対する処理に反映されていなかった。実務的には、従来の水処理装置は、排水(膜ろ過供給水)に過剰な次亜塩素酸ナトリウムを注入している。このように、従来の水処理装置では、排水の水質変動に対して余裕を持たせたクロラミン形成を目指す傾向があった。
【0099】
これは、排水の水質が、窒素過多又は塩素消費が著しい水質に変動した場合、塩素注入量が不十分であると、塩素が窒素よって消費されることで生物活性を抑制するクロラミンが発生しない恐れがあるためである。このように、排水の水質に対して塩素の注入量が少ないと、所望の生物消毒効果が得られにくく、後段のろ過膜(例えばUF膜)の閉塞が進行し、UF膜ろ過装置110の運転継続が困難になる恐れがある。
【0100】
そのため、従来の水処理装置は、排水の水質変動によらず、より確実にクロラミン形成を行うために過剰に次亜塩素酸ナトリウムを注入していた。
【0101】
このように、従来の水処理装置は、塩素過多のクロラミン依存型のシステムとなり、以下の3つの観点から処理コストの増加を招く可能性がある。
1)クロラミン発生に必要な薬品コストの増加
2)ジクロラミン等との反応により生じるNDMA等の酸化分解のためのUV-AOPによる消費電力の増加
3)RO膜の芳香族ポリアミドの分解に伴うRO膜の劣化(すなわち、RO膜交換費用の増加)
【0102】
本実施形態に係る水処理システム10は、排水(膜ろ過供給水)の水質に応じて適切に次亜塩素酸ナトリウムの注入量を制御することで、塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム)の過剰注入によるクロラミン依存型膜ろ過運転からの脱却を図るものである。
【0103】
(参考文献)
[1] The Impact of monochloramines and dichloramines on reverse osmosis membranes in wastewater potable reuse process trains: Pilot-scale study (Environ. Sci. Water Res. Technol., 2020, 6, pp1336-1346)
[2] Updated Rection Pathway for Dichloramine Decomposition: Formation of Reactive Nitrogen Species and N-Nitrosodimethylmine (Environ. Sci. Technol., 2021, 55, pp1740-1749)
【0104】
[2.2.制御装置の構成例]
上述したように、本実施形態に係る制御装置200は、水処理装置100をクロラミン依存型システムからクロラミン低依存型システムへ転換させるため、排水(膜ろ過供給水)で発生させるモノクロラミン濃度を所定の濃度レンジに保つようにする。
【0105】
より具体的には、制御装置200は、膜ろ過供給水の水質を取得し、水質に応じて、発生するモノクロラミン濃度が所定の濃度レンジ(例えば上述したzone 1)になるように、次亜塩素酸ナトリウムの注入量を決定する。また、制御装置200は、同様にして硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウムの注入量を決定する。
【0106】
例えば、制御装置200は、膜ろ過供給水の水質から膜ろ過供給水中の窒素化合物を予測し、所定濃度のモノクロラミンを形成するための薬品(次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム))の注入率を決定する。窒素化合物の予測は、シミュレーションを用いて行ってもよく、機械学習(AIモデル)を用いて行ってもよい。
【0107】
これにより、水処理システム10は、次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム)の過剰注入を抑制し、これら薬品の注入量を適切に制御することができ、薬品の注入量を低減することができる。
【0108】
また、水処理システム10は、モノクロラミン濃度を所定の濃度レンジに保つことで、ジクロラミン濃度を低く保つことができる。これにより、水処理システム10は、NDMA等の発生を抑制することができ、UV-AOPによる消費電力の増加を抑制することができる。さらに、水処理システム10は、RO膜の芳香族ポリアミドの分解によるRO膜の劣化を抑制することができ、RO膜の交換費用を抑えることができる。
【0109】
なお、膜ろ過供給水のモノクロラミン濃度によっては、残留微生物によるUF膜の閉塞が起こりやすくなる可能性がある。
【0110】
そこで、本実施形態に係る制御装置200は、UF膜ろ過装置110のUF膜の閉塞状況(透過性)を予測する。制御装置200は、例えば、予測結果に応じてUF膜ろ過装置110の洗浄頻度や洗浄方法(使用薬品の濃度など)を変更する。制御装置200は、例えば、予測結果に応じて膜ろ過供給水に注入する薬品(次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(塩化アンモニウム))の量を変更する。
【0111】
以下、これらを実行する制御装置200の構成の一例について説明する。
【0112】
図5は、本開示の実施形態に係る制御装置200の構成例を示すブロック図である。
図5に示す制御装置200は、通信部210と、記憶部220と、制御部230と、を備える。
【0113】
(通信部210)
通信部210は、他の装置とデータ通信を行う。例えば、通信部210は、水処理装置100の各装置と通信を行う。
【0114】
(記憶部220)
記憶部220は、制御部230が動作する際に参照する各種情報や、制御部230が動作する際に取得する各種情報を記憶する。記憶部220は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、
図5の例では、記憶部220は、制御装置200の内部に設置されているが、制御装置200の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0115】
(制御部230)
制御部230は、制御装置200全体及び水処理装置100を制御する。制御部230は、取得部231と、決定部232と、洗浄決定部233と、を備える。ここで、制御部230は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0116】
(取得部231)
取得部231は、水処理装置100から各種情報を取得する。取得部231は、例えば、圧力計122(
図3参照)が計測した各圧力に関する圧力情報を取得する。取得部231は、例えば、UF膜供給水の圧力に関する第1UF膜圧力情報及びUF膜透過水の圧力に関する第2UF膜圧力情報を取得する。取得部231は、例えば、RO膜供給水の圧力に関する第1RO膜圧力情報及びRO膜透過水の圧力に関する第2RO膜圧力情報を取得する。
【0117】
取得部231は、取得した圧力情報を決定部232及び洗浄決定部233に出力する。
【0118】
取得部231は、例えば、水質センサ140_1~140_3から水質に関する水質情報を取得する。取得部231は、例えば、水質センサ140_1からUF膜供給水の水質に関するUF膜水質情報を取得する。取得部231は、例えば、水質センサ140_2からRO膜供給水の水質に関するRO膜水質情報を取得する。取得部231は、例えば、水質センサ140_3からRO膜濃縮水の水質に関する濃縮水質情報を取得する。
【0119】
取得部231は、取得したUF膜水質情報、RO膜水質情報、及び、濃縮水質情報を決定部232に出力する。取得部231は、RO膜水質情報及び濃縮水質情報を決定部232に出力する。
【0120】
(決定部232)
図5に示すように、決定部232は、第1決定部232a及び第2決定部232bを備える。
【0121】
(第1決定部232a)
第1決定部232aは、UF膜水質情報に基づき、薬品(次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム))の注入量を決定する。また、第1決定部232aは、RO膜水質情報及び濃縮水質情報の少なくとも一方に基づいて薬品の注入量を決定する。
【0122】
例えば、第1決定部232aは、UF膜供給水の水質に応じて、次亜塩素酸ナトリウムを注入後に所定の濃度のモノクロラミンが形成される薬品の注入量を決定する。
【0123】
第1決定部232aは、例えば、UF膜供給水の水質からモノクロラミンの形成をシミュレーション又はAIモデル(以下、第1AIモデルとも記載する)によって予測する。この第1AIモデルは、機械学習等によって予め生成されているものとする。あるいは、第1AIモデルが、水処理装置100による水処理を実行しながら、機械学習等によって生成(更新)されるようにしてもよい。
【0124】
第1決定部232aは、例えば、第1AIモデルにUF膜水質情報に含まれる水温、pH値、ORP値、アンモニア性窒素の量、窒素化合物の量、濁度、紫外線吸光度、電気伝導率、及び、TOC値の少なくとも1つを入力する。第1決定部232aは、第1AIモデルの出力に応じて薬品の注入量を決定する。
【0125】
また、第1決定部232aが、RO膜水質情報及び濃縮水質情報に含まれる水温やpH値、ORP値を第1AIモデルに入力するようにしてもよい。
【0126】
このように、ここでは、第1決定部232aは、水質に応じて薬品の注入量を決定することで、UF膜供給水に含まれるモノクロラミンの濃度が所定レンジになるように、換言するとUF膜供給水中のモノクロラミン濃度に応じて薬品の注入量を決定する。
【0127】
あるいは、第1決定部232aがUF膜供給水のモノクロラミン濃度を測定、又は、予測して、薬品の注入量を決定するようにしてもよい。このように、第1決定部232aは、UF膜供給水のクロラミン濃度に応じて薬品の注入量を決定しうる。
【0128】
第1決定部232aは、決定した薬品の注入量を注入装置150(
図3参照)に通知する。
【0129】
(第2決定部232b)
第2決定部232bは、RO膜水質情報及び濃縮水質情報の少なくとも1つに基づき、UF膜供給水に注入する次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム)の量を決定する。第2決定部232bは、RO膜供給水及びRO膜濃縮水の少なくとも一方に含まれる微生物の量に応じて、この微生物の量が少なくなるように薬品(次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム))の量を決定する。
【0130】
あるいは、第2決定部232bは、圧力情報に基づき、UF膜供給水に注入する薬品(次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アンモニウム(又は塩化アンモニウム))の量を決定してもよい。UF膜及びRO膜は、例えば、処理水に含まれる微生物によって閉塞する。そのため、処理水に含まれる微生物が増えるとUF膜及びRO膜が閉塞し、処理水の圧力が上昇する。そこで、第2決定部232bは、圧力情報に基づき、UF膜及びRO膜の閉塞状態(透過性)に応じて、UF膜及びRO膜が閉塞しにくくなるように薬品の量を決定する。
【0131】
第2決定部232bは、例えば、AIモデル(以下、第3AIモデルとも記載する)を用いてUF膜供給水への薬品の注入量を決定する。この第3AIモデルは、機械学習等によって予め生成されているものとする。あるいは、第3AIモデルが、水処理装置100による水処理を実行しながら、機械学習等によって生成(更新)されるようにしてもよい。
【0132】
第2決定部232bは、第3AIモデルに、RO膜水質情報及び濃縮水質情報に含まれるTOFや微生物データの少なくとも1つを入力する。第2決定部232bは、第3AIモデルの出力に応じてUF膜供給水に注入する薬品の量を決定する。
【0133】
第2決定部232bは、例えば、第3AIモデルを用いて、RO膜供給水及びRO膜濃縮水の少なくとも一方に含まれる微生物の量が少なくなるように、UF膜供給水に注入する薬品の量を決定する。
【0134】
また、第2決定部232bが、圧力情報から得られる情報を第3AIモデルに入力するようにしてもよい。例えば、第2決定部232bは、圧力情報から得られる以下の圧力を第3AIモデルに入力し、第3AIモデルの出力に応じてUF膜供給水に注入する薬品の量を決定するようにしてもよい。
・UF膜供給水の圧力(UF膜駆動圧力)
・UF膜供給水とUF膜透過水との差圧(UF膜間差圧)
・RO膜供給水の圧力(RO膜駆動圧力)
・RO膜濃縮水とRO膜供給水との差圧(RO膜モジュール間差圧)
・RO膜透過水とRO膜供給水との差圧(RO膜間差圧)
【0135】
この場合、第3AIモデルは、UF膜間差圧、RO膜モジュール間差圧、及び、RO膜間差圧が小さくなるような薬品の注入量を学習するものとする。すなわち、第2決定部232bは、第3AIモデルを用いて、UF膜間差圧、RO膜モジュール間差圧、及び、RO膜間差圧が小さくなるようUF膜供給水への薬品の注入量を決定する。
【0136】
第2決定部232bは、決定した注入量の薬品を注入するよう注入装置150に指示する。第2決定部232bは、例えば、第1決定部232aが決定した注入量(以下、第1注入量とも記載する)に代えて、ここで決定した注入量(以下、第2注入量とも記載する)の薬品を注入するよう注入装置150に指示するようにしてもよい。この場合、第1注入量は、第2注入量によって上書きされ、第2注入量が注入装置150に通知される。
【0137】
あるいは、第2決定部232bが、第1注入量及び第2注入量に基づき、注入装置150に指示する注入量(以下、指示注入量とも記載する)を決定するようにしてもよい。例えば、第2決定部232bは、第1注入量及び第2注入量それぞれに重み付けをして足し合わせることで指示注入量を算出するようにしてもよい。
【0138】
ここで、第1決定部232aは、UF膜供給水の水質の変動に応じて、水処理のコスト(例えば、薬品の注入量)の最適化を図る。UF膜供給水の水質は、時間(例えば、夜間又は昼間)や天候(例えば、雨天又は晴天)等に応じて、比較的短期間(数時間から数日)で変動する。第1決定部232aは、比較的短期間で変動するUF膜供給水の水質に追従して、水処理コストの最適化を図る。
【0139】
一方、第2決定部232bは、UF膜及びRO膜の閉塞状況(透過性)に応じて、水処理のコスト(例えば、洗浄や膜交換によるコスト及び薬品の注入量)の最適化を図る。膜の閉塞状況は、微生物の繁殖等に応じて、比較的長期間(数ヶ月から半年)で変動する。第2決定部232bは、比較的長期間で変動する膜の閉塞状況に追従して、水処理コストの最適化を図る。
【0140】
上述したように、第2決定部232bが、第1注入量及び第2注入量それぞれに重み付けをして足し合わせる場合、第2決定部232bは、例えば水処理コストに与える短期的な影響及び長期的影響に応じて重み付けを変更しうる。
【0141】
なお、ここでは、第2決定部232bが、水質情報及び圧力情報の少なくとも一方に基づき、第2注入量を決定するとしたが、第2注入量の決定はこれに限定されない。
【0142】
例えば、第2決定部232bは、UF膜及びRO膜の少なくとも一方の閉塞状態(透過性)に応じて第2注入量を決定しうる。例えば、第2決定部232bは、膜洗浄のコスト及び薬品注入量のコストに応じて、水処理のコストがより最適化されるように第2注入量を決定する。
【0143】
そこで、第2決定部232bが、UF膜及びRO膜の少なくとも一方の洗浄方法(洗浄タイミング及び洗浄に使用する薬品濃度など)に応じて第2注入量を決定するようにしてもよい。後述するように、洗浄決定部233は、UF膜及びRO膜の閉塞状態に応じて洗浄方法を決定する。そのため、第2決定部232bは、洗浄方法に応じて第2注入量を決定することで、UF膜及びRO膜の少なくとも一方の閉塞状態に応じて第2注入量を決定することができる。この場合、第2決定部232bは、例えば、第3AIモデルに洗浄方法に関する洗浄情報を入力する。
【0144】
なお、ここでは、第1決定部232aが第1AIモデルを用いて第1注入量を決定し、第2決定部232bが第3AIモデルを用いて第2注入量を決定するとした。すなわち、制御部230は、第1、第3AIモデルを用いて指示注入量を決定するとしたが、制御部230による指示注入量の決定は、これに限定されない。
【0145】
例えば決定部232が第1、第3AIモデルの代わりに1つのAIモデル(以下、第4AIモデルとも記載する)を用いて指示注入量を決定するようにしてもよい。この場合、決定部232は、第1、第3AIモデルに入力するとした情報を第4AIモデルに入力し、第4AIモデルから得られる出力に基づいて指示注入量を決定する。このように、決定部232は、1つの大きなAIモデル(第4AIモデル)を用いて、水処理コストの最適化を図りうる。
【0146】
(洗浄決定部233)
洗浄決定部233は、RO膜水質情報及び濃縮水質情報の少なくとも1つに基づき、UF膜ろ過装置110のUF膜及びRO膜ろ過装置120のRO膜の少なくとも一方の洗浄方法を決定する。あるいは、洗浄決定部233は、圧力情報に基づき、UF膜及びRO膜の少なくとも一方の洗浄方法を決定してもよい。
【0147】
洗浄決定部233は、UF膜及びRO膜の洗浄方法として、MC及びRCの実施頻度(実施タイミング)、及び、洗浄に使用する薬品の濃度の少なくとも一方を決定する。
【0148】
洗浄決定部233は、AIモデル(以下、第2AIモデルとも記載する)を用いてUF膜及びRO膜の洗浄方法を決定する。この第2AIモデルは、機械学習等によって予め生成されているものとする。あるいは、第2AIモデルが、水処理装置100による水処理を実行しながら、機械学習等によって生成(更新)されるようにしてもよい。
【0149】
洗浄決定部233は、例えば、第2AIモデルに、RO膜水質情報及び濃縮水質情報に含まれるTOFや微生物データの少なくとも1つを入力する。洗浄決定部233は、第2AIモデルの出力に応じてUF膜及びRO膜の洗浄方法を決定する。
【0150】
また、洗浄決定部233が、圧力情報から得られる情報を第2AIモデルに入力するようにしてもよい。例えば、洗浄決定部233は、圧力情報から得られる以下の圧力を第2AIモデルに入力し、第2AIモデルの出力に応じてUF膜及びRO膜の洗浄方法を決定するようにしてもよい。
・UF膜供給水の圧力(UF膜駆動圧力)
・UF膜供給水とUF膜透過水との差圧(UF膜間差圧)
・RO膜供給水の圧力(RO膜駆動圧力)
・RO膜濃縮水とRO膜供給水との差圧(RO膜モジュール間差圧)
・RO膜透過水とRO膜供給水との差圧(RO膜間差圧)
【0151】
この場合、第2AIモデルは、UF膜間差圧、RO膜モジュール間差圧、及び、RO膜間差圧が小さくなるような洗浄方法を学習するものとする。すなわち、洗浄決定部233は、第2AIモデルを用いて、UF膜間差圧、RO膜モジュール間差圧、及び、RO膜間差圧が小さくなるよう洗浄方法を決定する。
【0152】
なお、ここでは、洗浄決定部233が第2AIモデルを用いて洗浄方法を決定するとしたが、洗浄決定部233が第2AIモデルを使用せずに洗浄方法を決定してもよい。例えば、洗浄決定部233は、水処理装置100のUF膜ろ過装置110及びRO膜ろ過装置120におけるクロラミン濃度に応じて洗浄方法を決定するようにしてもよい。
【0153】
例えば、洗浄決定部233は、UF膜供給水のクロラミン濃度を測定(又は予測)し、この濃度が第1閾値(例えば2mg/L)以上であれば、UF膜の洗浄タイミングを短く(例えば7日)する。洗浄決定部233は、UF膜供給水のクロラミン濃度が第2閾値(例えば0.5mg/L)未満であれば、UF膜の洗浄タイミングを長く(例えば1ヶ月)する。洗浄決定部233は、RO膜の洗浄も同様にRO膜供給水のクロラミン濃度に応じて決定する。なお、制御部230が、例えば、シミュレーションやAIモデルによってクロラミン濃度を予測するようにしてもよい。
【0154】
これにより、洗浄決定部233は、水処理装置100の洗浄シーケンスを最適化することができる。
【0155】
[3.制御処理]
[3.1.第1決定処理]
図6は、本開示の実施形態に係る第1決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。第1決定処理は、例えば、水処理装置100により水処理が実行されている間、制御部230の第1決定部232aによって繰り返し実行される。
【0156】
図6に示すように、第1決定部232aは、取得部231を介して水質センサ140_1からUF膜供給水の水質に関するUF膜水質情報を取得する(ステップS101)。
【0157】
第1決定部232aは、UF膜水質情報に基づき、例えば第1AIモデルを使用してUF膜供給水への薬品の注入量(第1注入量)を決定する(ステップS102)。
【0158】
第1決定部232aは、決定した注入量(第1注入量)を注入装置150に通知する(ステップS103)。なお、第2決定部232bが指示注入量を決定する場合、第1決定部232aは、第1注入量を第2決定部232bに通知するようにしてもよい。
【0159】
また、ここでは、第1決定部232aがUF膜水質情報に基づいて第1注入量を決定するとしたが、第1決定部232aがRO膜供給水の水質に関するRO膜水質情報、及び、RO膜濃縮水の水質に関する濃縮水質情報に基づいて第1注入量を決定してもよい。
【0160】
この場合、ステップS101にて、第1決定部232aは、取得部231を介してRO膜水質情報及び濃縮水質情報を水質センサ140_2、140_3から取得する。ステップS102にて、第1決定部232aは、取得したRO膜水質情報及び濃縮水質情報に基づき、例えば第1AIモデルを用いて第1注入量を決定する。
【0161】
[3.2.洗浄決定処理]
図7は、本開示の実施形態に係る洗浄決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。洗浄処理は、例えば、水処理装置100により水処理が実行されている間、制御部230の洗浄決定部233によって繰り返し実行される。
【0162】
図7に示すように、洗浄決定部233は、取得部231を介して水質センサ140_2、140_3からRO膜供給水の水質に関するRO膜水質情報、及び、RO膜濃縮水の水質に関する濃縮水質情報を取得する(ステップS201)。
【0163】
洗浄決定部233は、RO膜水質情報及び濃縮水質情報に基づき、例えば第2AIモデルを使用して洗浄方法(例えば、洗浄タイミング及び洗浄に使用する薬品濃度など)を決定する(ステップS202)。
【0164】
洗浄決定部233は、決定した洗浄方法をUF膜ろ過装置110の洗浄ユニット113及びRO膜ろ過装置120の洗浄ユニット123に通知する(ステップS203)。洗浄ユニット113、123は、洗浄決定部233が決定した洗浄方法に従って、UF膜及びRO膜の洗浄を実行する。
【0165】
ここでは、洗浄決定部233がRO膜水質情報及び濃縮水質情報に基づいて洗浄方法を決定するとしたが、洗浄決定部233が圧力情報に基づいて洗浄方法を決定してもよい。
【0166】
この場合、ステップS201にて、洗浄決定部233は、取得部231を介して圧力情報をUF膜ろ過装置110の圧力計112及びRO膜ろ過装置120の圧力計122から取得する。ステップS202にて、洗浄決定部233は、取得した圧力情報に基づき、例えば第2AIモデルを用いて洗浄方法を決定する。
【0167】
[3.3.第2決定処理]
図8は、本開示の実施形態に係る第2決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。第2決定処理は、例えば、水処理装置100により水処理が実行されている間、制御部230の第2決定部232bによって繰り返し実行される。
【0168】
図8に示すように、第2決定部232bは、取得部231を介して圧力情報をUF膜ろ過装置110の圧力計112及びRO膜ろ過装置120の圧力計122から取得する(ステップS301)。
【0169】
第2決定部232bは、圧力情報に基づき、例えば第3AIモデルを使用してUF膜供給水への薬品の注入量(第2注入量)を決定する(ステップS302)。
【0170】
第2決定部232bは、決定した注入量(第2注入量)を注入装置150に通知する(ステップS303)。なお、第2決定部232bが指示注入量を決定する場合、第2決定部232bは、第1決定部232aから取得した第1注入量、及び、決定した第2注入量に基づいて指示注入量を決定するようにしてもよい。この場合、第2決定部232bは、決定した指示注入量を注入装置150に通知する。
【0171】
また、ここでは、第2決定部232bが圧力情報に基づいて第2注入量を決定するとしたが、第2決定部232bがRO膜供給水の水質に関するRO膜水質情報、及び、RO膜濃縮水の水質に関する濃縮水質情報に基づいて第2注入量を決定してもよい。
【0172】
この場合、ステップS301にて、第2決定部232bは、取得部231を介してRO膜水質情報及び濃縮水質情報を水質センサ140_2、140_3から取得する。ステップS302にて、第2決定部232bは、取得したRO膜水質情報及び濃縮水質情報に基づき、例えば第3AIモデルを用いて第2注入量を決定する。
【0173】
[4.システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0174】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0175】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0176】
[5.ハードウェア]
次に、情報提供装置である制御装置200のハードウェア構成例を説明する。
図9は、制御装置200のハードウェア構成例を説明する図である。
図9に示すように、制御装置200は、通信装置200a、HDD(Hard Disk Drive)200b、メモリ200c、プロセッサ200dを有する。また、
図9に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0177】
通信装置200aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD200bは、
図5に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0178】
プロセッサ200dは、
図5に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD200b等から読み出してメモリ200cに展開することで、
図5等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、制御装置200が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ200dは、取得部231、決定部232、洗浄決定部233、等と同様の機能を有するプログラムをHDD200b等から読み出す。そして、プロセッサ200dは、取得部231、決定部232、洗浄決定部233等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0179】
このように、制御装置200は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、制御装置200は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、制御装置200によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0180】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0181】
[6.その他]
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
(1)
MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得する取得部と、
前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する決定部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
(2)
前記決定部は、前記次亜塩素酸ナトリウムを注入することで形成されるクロラミン濃度に応じて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(1)に記載の制御装置。
(3)
前記決定部は、前記水質情報を入力とするAIモデルを用いて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(2)に記載の制御装置。
(4)
前記水質情報は、前記供給水の水温、pH値、ORP(Oxidation-Reduction Potential)値、アンモニア性窒素含有量、窒素化合物含有量、濁度、紫外線吸光度、電気伝導率、及び、TOC(Total Organic Carbon)値の少なくとも1つを含む、(1)~(3)のいずれか1つに記載の制御装置。
(5)
前記決定部は、前記MF膜又は前記UF膜、及び、前記MF膜又は前記UF膜を透過した膜ろ過透過水が供給される前記NF膜又は前記RO膜の少なくとも一方の洗浄タイミングに応じて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載の制御装置。
(6)
前記決定部は、前記洗浄タイミングに関する情報を入力とするAIモデルを用いて前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(5)に記載の制御装置。
(7)
前記取得部は、前記MF膜又は前記UF膜を透過した膜ろ過透過水、及び、前記膜ろ過透過水が供給される前記NF膜又は前記RO膜を用いて分離された逆浸透膜濃縮水の少なくとも一方の水質に関する第2水質情報を取得し、
前記決定部は、前記第2水質情報に応じて、前記次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する、
ことを特徴とする(1)~(6)のいずれか1つに記載の制御装置。
(8)
前記第2水質情報は、前記膜ろ過透過水及び前記逆浸透膜濃縮水の少なくとも一方の水温、pH値、ORP値、TOC値、微生物含有量の少なくとも1つを含む、(7)に記載の制御装置。
(9)
前記決定部は、前記膜ろ過透過水及び前記逆浸透膜濃縮水の少なくとも一方に含まれる微生物の量が少なくなるように、前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(7)又は(8)に記載の制御装置。
(10)
前記決定部は、前記MF膜又は前記UF膜、及び、前記MF膜又は前記UF膜を透過した膜ろ過透過水が供給される前記NF膜又は前記RO膜の少なくとも一方の透過性に応じて、前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(1)~(9)のいずれか1つに記載の制御装置。
(11)
前記取得部は、前記透過性として、前記MF膜又は前記UF膜への前記供給水の圧力に関する第1圧力情報、前記MF膜又は前記UF膜の膜間差圧に関する第2圧力情報、前記NF膜又は前記RO膜へ供給される前記膜ろ過透過水の圧力に関する第3圧力情報、前記膜ろ過透過水の圧力と前記NF膜又は前記RO膜を用いて分離された逆浸透膜濃縮水の圧力との差分に関する第4圧力情報、及び、前記NF膜又は前記RO膜の膜間差圧に関する第5圧力情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする(10)に記載の制御装置。
(12)
前記決定部は、前記第2圧力情報、前記第4圧力情報、及び、前記第5圧力情報の少なくとも1つの値が小さくなるように前記次亜塩素酸ナトリウムの前記量を決定することを特徴とする(11)に記載の制御装置。
(13)
コンピュータが
MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得し、
前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する、
処理を実行する制御方法。
(14)
コンピュータに
MF膜(MicroFiltration membrane)、UF膜(UltraFiltration membrane)、NF膜(NanoFiltration Mumbrane)又はRO膜(ReverseOsmosis membrane)を用いた膜ろ過装置の流入部において当該膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜への供給水の水質に関する水質情報を取得し、
前記水質情報に応じて、前記膜ろ過装置の前記MF膜又は前記UF膜に注入する次亜塩素酸ナトリウムの量を決定する、
処理を実行させる制御プログラム。
【符号の説明】
【0182】
10 水処理システム
100 水処理装置
110 UF膜ろ過装置
111,121 ポンプ
112,122 圧力計
113,123 洗浄ユニット
120 RO膜ろ過装置
130 UV促進酸化処理装置
140 水質センサ
150 注入装置
200 制御装置
210 通信部
220 記憶部
230 制御部
231 取得部
232 決定部
233 洗浄決定部