(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000125
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】細線位置検出器及びレール芯出し装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
B66B7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098701
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】春山 尚輝
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BD01
3F305DA08
(57)【要約】
【課題】ガイドレールの芯出しを安全に効率良く行えるようにする。
【解決手段】細線位置検出器1は、細線の位置を検出するための位置検出センサ11と、位置検出センサを保持する筐体15と、筐体をエレベーターのガイドレールに着脱可能に留め付けるためのレールクリップ16と、を備える。レールクリップは、ガイドレールの軌道面に当接されるY基準面16yと、ガイドレールの刃先面に当接されるX基準面16xと、Y基準面と対向する位置に形成された鉤部34と、を備える。X基準面を基準とする鉤部の高さ寸法は、X基準面を基準とするY基準面の高さ寸法よりも短い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細線の位置を検出するための位置検出センサと、
前記位置検出センサを保持する筐体と、
前記筐体をエレベーターのガイドレールに着脱可能に留め付けるためのレールクリップと、
を備える細線位置検出器において、
前記レールクリップは、
前記ガイドレールの軌道面に当接される第1の基準面と、
前記第1の基準面と直角をなし、前記ガイドレールの刃先面に当接される第2の基準面と、
前記第1の基準面と対向する位置に形成された鉤部と、を備え、
前記第2の基準面を基準とする前記鉤部の高さ寸法は、前記第2の基準面を基準とする前記第1の基準面の高さ寸法よりも短い
細線位置検出器。
【請求項2】
前記第1の基準面と前記鉤部との対向寸法は、前記ガイドレールのブレード部の厚み寸法とすきまばめの関係を満たすように設定されている
請求項1に記載の細線位置検出器。
【請求項3】
前記第1の基準面に形成された第1の凹部に第1の磁石が取り付けられ、
前記第2の基準面に形成された第2の凹部に第2の磁石が取り付けられている
請求項1に記載の細線位置検出器。
【請求項4】
前記第1の基準面及び前記第2の基準面に貼り付けられる非磁性のシートを備える
請求項3に記載の細線位置検出器。
【請求項5】
エレベーターの昇降路に垂下された一対の細線の位置を基準にして一対のガイドレールを芯出しするためのレール芯出し装置であって、
前記細線の位置を検出する細線位置検出器を備え、
前記細線位置検出器は、
細線の位置を検出するための位置検出センサと、
前記位置検出センサを保持する筐体と、
前記筐体を前記ガイドレールに着脱可能に留め付けるレールクリップと、
を備え、
前記レールクリップは、
前記ガイドレールの軌道面に当接される第1の基準面と、
前記第1の基準面と直角をなし、前記ガイドレールの刃先面に当接される第2の基準面と、
前記第1の基準面と対向する位置に形成された鉤部と、を備え、
前記第2の基準面を基準とする鉤部の高さ寸法は、前記第2の基準面を基準とする前記第1の基準面の高さ寸法よりも短い
レール芯出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細線位置検出器及びレール芯出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗り心地を快適にするには、昇降時に乗りかごが揺動しないようガイドレールを真っ直ぐに据え付ける必要がある。このため、建物の昇降路にエレベーターを設置する場合は、建築基準に対してガイドレールを正確に位置決め(芯出し)したうえで、昇降路の壁にガイドレールを固定する作業が、昇降路の全長にわたって実施される。
【0003】
上述した建築基準としては、一般に、錘を取り付けたピアノ線を昇降路の最上部から最下部まで吊り下ろしたものが利用されている。ガイドレールの据え付け作業において、作業者は、ピアノ線を利用してガイドレールの芯出し作業を行う。具体的には、作業者は、ピアノ線とガイドレールとの距離をスケール等により測定し、その測定値が所定の値となるようにガイドレールの位置を調整する。
【0004】
現在、このようなガイドレールの芯出し作業を自動化する装置の開発が進められている。ガイドレールの芯出し作業を自動で行う装置として、例えば、特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1には、「この芯出し精度測定装置は本体を備え、この本体の中央部には把持部が設けられている。この把持部はガイドレールの両軌道面及び刃先面を取り囲むように形成されているを備えている。このアングルの上下端には一対の転動ローラが設けられており、これらの転動ローラはガイドレールの刃先面に転動可能に当接されている」と記載(符号は省略)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレール芯出し装置の細線位置検出器は、直角をなす2つの基準面を備えており、これら2つの基準面を、寸法精度が保証されているガイドレールの軌道面及び刃先面に当接させた状態で、細線位置検出器をガイドレールに取り付ける構造になっている。その際、2つの基準面がガイドレールの軌道面及び刃先面にしっかりと当接するように、2つの基準面に対応する位置に永久磁石を取り付けた構成のものがある。また、細線位置検出器の重量が大きい場合、あるいは作業者が誤って細線位置検出器に接触した場合は、細線位置検出器が落下する恐れがある。このため、ガイドレールの軌道面の裏側に当接するネジをレール芯出し装置の細線位置検出器に設け、ネジの締め付け力によってガイドレールを両側から挟み込むように構成したものがある。
【0007】
しかしながら、上記のネジを備えたレール芯出し装置の細線位置検出器では、ネジの締め付けによってガイドレールの軌道面の裏側に打痕が残ってしまう。ガイドレールの軌道面に残った打痕は、乗りかごの昇降時に振動の原因となるため、乗り心地に悪影響を及ぼす。また、作業者の利き腕によってはネジの締め付け作業がしにくい場合がある。また、2つの基準面とネジとで囲まれたコの字形の空間にガイドレールを挿入する際に、あらかじめネジを引いておく必要がある。さらに、ガイドレールに細線位置検出器を取り付ける際は、ガイドレールの正面方向から真っ直ぐに細線位置検出器を近づける必要がある。このため、ガイドレールに対する細線位置検出器の取り付け作業が面倒なものとなっていた。
【0008】
本発明の目的は、ガイドレールの芯出しを安全に効率良く行うことができる細線位置検出器及びレール芯出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、たとえば、特許請求の範囲に記載された構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一つを挙げるならば、細線の位置を検出するための位置検出センサと、位置検出センサを保持する筐体と、筐体をエレベーターのガイドレールに着脱可能に留め付けるためのレールクリップと、を備える細線位置検出器である。レールクリップは、ガイドレールの軌道面に当接される第1の基準面と、第1の基準面と直角をなし、ガイドレールの刃先面に当接される第2の基準面と、第1の基準面と対向する位置に形成された鉤部と、を備える。第2の基準面を基準とする鉤部の高さ寸法は、第2の基準面を基準とする第1の基準面の高さ寸法よりも短い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガイドレールの芯出しを安全に効率良く行うことができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るレール芯出し装置の取り付け状態を示す上面図である。
【
図2】実施形態に係るレール芯出し装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る細線位置検出器の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す細線位置検出器を別方向から見た斜視図である。
【
図5】ガイドレールに細線位置検出器を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】ガイドレールとレールクリップの寸法関係を説明する図である。
【
図7】細線位置検出器をガイドレールに取り付ける場合の手順を説明する図(その1)である。
【
図8】細線位置検出器をガイドレールに取り付ける場合の手順を説明する図(その2)である。
【
図9】実施形態に係る細線位置検出器に加わる外力を説明する斜視図である。
【
図10】実施形態に係る細線位置検出器に水平方向の外力が加わった場合のレールクリップの機能を説明する平面図である。
【
図11】実施形態に係る細線位置検出器に鉛直方向の外力が加わった場合のレールクリップの機能を説明する側面図である。
【
図12】実施形態に係る細線位置検出器における磁石の取り付け構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係るレール芯出し装置の取り付け状態を示す上面図である。
図2は、実施形態に係るレール芯出し装置のシステム構成を示すブロック図である。
図1においては、エレベーターの乗り場側から昇降路を見た場合を想定して、左側(Left)、右側(Right)、後ろ側(Rear)、前側(Front)を表記している。
【0014】
レール芯出し装置100は、昇降路9に垂下された一対の細線2の位置を基準にして一対のガイドレール3を位置決め(芯出し)するための装置である。レール芯出し装置100は、ガイドレール3及び昇降路9内の作業カゴ5に対して取り付けられる。作業カゴ5は、ロープ6によって昇降路9内に吊り下げられている。
【0015】
<レール芯出し装置の取り付け環境>
まず、レール芯出し装置100の取り付け環境について、
図1を用いて説明する。
図1において、X方向は、エレベーターの乗り場側から見た場合の左右方向(幅方向)であり、Y方向は、エレベーターの乗り場側から見た場合の前後方向(奥行き方向)である。また、Z方向は、エレベーターの乗り場側から見た場合の上下方向(高さ方向)である。また、X方向及びY方向は、水平面に平行な直交二軸方向であり、Z方向は、X方向及びY方向に直交する方向、すなわち鉛直方向である。
【0016】
昇降路9は、エレベーターを据え付けるために建屋に設けられた空間である。昇降路9は、4方向を内周壁21で囲まれた空間になっている。具体的には、内周壁21は、左右に対をなして配置される2つの横壁21sと、横壁21sと垂直をなす状態で配置される前壁21fと、前壁21fと対向する状態で配置される後壁21bとによって構成されている。前壁21fは、乗り場開口21aを有している。建屋が鉄筋コンクリート造は、エレベーターの出入り口を除く全面がコンクリートの壁で覆われる。また、建屋が鉄骨造の場合は、鉄骨で枠が組まれ、枠のない箇所は壁がない空間となる。
【0017】
細線2は、鉄鋼製の細線である。細線2は、細線2の下端部に錘を付けた状態で、昇降路9の最上部から最下部にわたって垂直に吊り下げられている。エレベーターの据え付け現場では、細線2の端部に錘を取り付けて昇降路9の最上部から最下部まで細線2を垂直に吊り下げ、その状態で細線2の上下端を固定することにより、細線2を建築の基準線とする。つまり、細線2は、ガイドレール3の芯出し(位置合わせ)のための建築基準となる。細線2としては、ピアノ線を用いることができる。
【0018】
ガイドレール3は、T字形の鉄鋼製のレール(T型鋼)である。ガイドレール3は、幅広のフランジ部と、このフランジ部の幅方向の中間部から突出するブレード部と、を一体に有する。ガイドレール3は、フランジ部を横壁21sに対向させ、かつ、ブレード部を昇降路9の中央側に向けた状態で、昇降路9に設置される。ガイドレール3は、まず、最下階の所定位置に固定され、そこから上階へ向かって順に継ぎ足しながら、最上階まで設置される。ガイドレール3のブレード部には、軌道面と刃先面が形成されている。ガイドレール3の軌道面及び刃先面は、ガイドレール3の芯出しのために寸法精度が保証された基準平面である。昇降路9にガイドレール3を据え付ける場合は、ガイドレール3の軌道面がY方向を向いて配置され、ガイドレール3の刃先面がX方向を向いて配置される。また、ガイドレール3は、Z方向に沿って真っ直ぐに起立するように配置される。
【0019】
作業かご5は、エレベーターの本設かごの一部である。作業カゴ5は、昇降路9の内部で、一対のガイドレール3に挟まれた位置に配置される。作業カゴ5は、床部分と、手すりと、ガイドレール3との摺動部と、を有する。ガイドレール3の据え付け作業を行う作業者は、作業カゴ5に乗り込み、作業カゴ5と共に所定の高さまで昇降し、ガイドレール3の据え付け作業を行う。この据え付け作業には、ガイドレール3の芯出し作業と、ガイドレール3の固定作業が含まれる。
【0020】
ロープ6は、昇降路9内で作業かご5を吊り下げて支持する綱である。ロープ6は、図示しないワインダーによって巻き取られることにより、作業かご5を昇降させる。ロープ6は、ガイドレール3と干渉しないように、作業かご5の後方寄りの左右2点で作業カゴ5と結合している。この結合点と作業かご5の重心Gとの位置関係により、作業かご5は、前方に倒れ気味となり、ガイドレール3に寄りかかって平衡を保つ。
【0021】
<レール芯出し装置の構成>
続いて、レール芯出し装置100の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
レール芯出し装置100は、2つの細線位置検出器1と、レール芯出し雇4と、2つの前壁アクチュエータ7と、2つの横壁アクチュエータ8と、制御回路10と、操作盤22と、を備えている。
【0022】
細線位置検出器1は、細線2の位置を検出する機器である。細線位置検出器1は、ガイドレール3に対して着脱自在に構成されている。細線位置検出器1は、2つのガイドレール3にそれぞれ取り付けられる。細線位置検出器1は、細線2のX方向の位置を示す検出信号Sxと、細線2のY方向の位置を示す検出信号Syとを、有線又は無線で出力する。細線位置検出器1の詳細な構成については、後段で説明する。
【0023】
レール芯出し雇4は、左右のガイドレール3間の距離を一定に保つ治具である。レール芯出し雇4の両端には、ガイドレール3を把持する把持部が設けられている。把持部には、ガイドレール3の刃先面及び軌道面に当接するL字形の金具が設けられている。レール芯出し雇4は、この金具を介してガイドレール3に精度良く連結できるようになっている。左右のガイドレール3は、レール芯出し雇4に連結されることにより、一体化される。
【0024】
前壁アクチュエータ7は、長軸方向(
図1のY方向)に伸縮するロッド状のリニアアクチュエータである。前壁アクチュエータ7は、作業かご5の前壁21f側の手すりに固定される。前壁アクチュエータ7は、乗り場開口21aを挟んだ左右にそれぞれ設けられる。
【0025】
横壁アクチュエータ8は、長軸方向(
図1のX方向)に伸縮するロッド状のリニアアクチュエータである。横壁アクチュエータ8の本体部分は、左右のガイドレール3にそれぞれ固定される。横壁アクチュエータ8は、例えばバイス等によってガイドレール3の背面(フランジ部)に着脱可能に取り付けられる。横壁アクチュエータ8は、ガイドレール3の芯出し作業後には、作業カゴ5の昇降の邪魔にならないよう、ガイドレール3から取り外される。
【0026】
制御回路10は、細線位置検出器1から出力される検出信号Sx,Syを取り込むとともに、取り込んだ検出信号Sx,Syに基づいて、前壁アクチュエータ7及び横壁アクチュエータ8にそれぞれ駆動信号を出力する。制御回路10は、例えば、信号処理部、無線通信部、モータドライバ、電源などを備える。モータドライバは、前壁アクチュエータ7の駆動源となるモータや、及び、横壁アクチュエータ8の駆動源となるモータを制御するためのドライバICである。信号処理部、無線通信部、電源については、後段で説明する。
【0027】
操作盤22は、前壁アクチュエータ7及び横壁アクチュエータ8の手動操作やレール芯出しの自動制御の実行を操作するスイッチ類を有する。また、操作盤22は、レール芯出し装置100の状態を表示するインジケータを有する。操作盤22は、制御回路10に直接接続され、作業者の操作に基づく指令を制御回路10に与える。
【0028】
<ガイドレールの据え付け作業>
次に、レール芯出し装置100を用いたレール芯出し作業を含む、ガイドレール3の据え付け作業について説明する。
昇降路9にガイドレール3を据え付ける場合は、昇降路9の最下段から最上段までの区間において、数箇所でガイドレール3の芯出し作業及び固定作業を行う。このため、ガイドレール3の据え付け作業では、各段に作業カゴ5を移動させるとともに、各段でガイドレール3の芯出し作業とガイドレール3の固定作業を繰り返すことになる。
【0029】
まず、昇降路9の最下段でレール芯出し装置の一部の設置作業を行う。この設置作業では、まず、2つの前壁アクチュエータ7を作業かご5の手すりに固定する作業と、制御回路10や操作盤22を設置する作業を行う。
【0030】
次に、レール芯出し作業に移る。レール芯出し作業では、まず、左右のガイドレール3をレール芯出し雇4で把持して連結することにより、左右のガイドレール3を一体化させる。次に、左右のガイドレール3のそれぞれの背面に横壁アクチュエータ8をバイス等によって固定する。また、左右のガイドレール3にそれぞれ細線位置検出器1を取り付ける。このとき、作業者は、細線2を指でつまみ、細線位置検出器1に設けられたC型の切り欠きの内側へ細線2を誘導する。次に、作業者は、操作盤22を操作することにより、前壁アクチュエータ7のロッド部分を前壁21fの近傍まで伸ばすとともに、横壁アクチュエータ8のロッド部分を横壁21sの近傍まで伸ばす。この段階で、レール芯出しの準備が完了する。
【0031】
次に、作業者は、操作盤22を操作することにより、レール芯出しの自動制御を実行する。自動制御において、制御回路10は、左右の細線位置検出器1から出力される検出信号Sx,Syがそれぞれ所定の値となるように、前壁アクチュエータ7及び横壁アクチュエータ8を制御する。この制御が完了した後、作業者は、ガイドレール3の背面にブラケットを取り付け、このブラケットを介して横壁21sにボルト締めや溶接によってガイドレール3を固定する。ガイドレール3の固定が完了した後、作業者は、細線位置検出器1、横壁アクチュエータ8及びレール芯出し雇4を順に取り外す。また、作業者は、操作盤22を操作することにより、前壁アクチュエータ7のロッド部分を前壁21fから後退させる。
【0032】
このようなガイドレール3の芯出し作業及び固定作業を、昇降路9の最下段から最上段までの全域にわたって実施することにより、ガイドレール3の据え付けが完了する。なお、前壁アクチュエータ7は、最上段でのガイドレール3の設置作業を終えた後で、作業カゴ5の手すりから取り外される。
【0033】
上述したレール芯出し作業では、作業者の手作業によって行われていた作業、具体的には、細線2とガイドレール3との距離をスケール等により測定する作業や、その測定値を確認しながらガイドレール3の位置をハンマ等で叩いて調整する作業が、レール芯出し装置100によって自動化される。このため、短時間で高精度なレール芯出しを実現することができる。また、作業者の負担を減らすことができる。
【0034】
<細線位置検出器の構成>
続いて、レール芯出し装置100が備える細線位置検出器1の構成について詳しく説明する。
図3は、実施形態に係る細線位置検出器の構成を示す斜視図である。
図4は、
図3に示す細線位置検出器を別方向から見た斜視図である。
図3及び
図4に示すように、細線位置検出器1は、細線2の位置を検出するための位置検出センサ11と、位置検出センサ11を保持する筐体15と、筐体15をガイドレール3(
図1)に着脱可能に留め付けるためのレールクリップ16と、を備えている
【0035】
位置検出センサ11は、細線2のX方向の位置を検出するX方向位置検出センサ11xと、細線2のY方向の位置を検出するY方向位置検出センサ11yとによって構成されている。位置検出センサ11(11x,11y)は、例えばフォトインタラプタを用いて構成される。フォトインタラプタは、コの字型のセンサハウジングに投光器と受光器が対向する状態に配置された光学センサである。位置検出センサ11は、投光器と受光器との間の遮蔽物の有無、並びに遮蔽物の位置を検出することができる。このフォトインタラプタを位置検出センサ11として用いることで、細線2の位置が投光器と受光器の間の検出範囲内にあるか否かを判定することができる。また、複数のフォトインタラプタを用いることで、複数の検出範囲を連続して配置でき、細線2の位置をより広範囲に細かく検出できるようになる。位置検出センサ11は、フォトインタラプタに限らず、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサやPSD(Position Sensitive Detector)センサなどによって構成してもよい。
【0036】
X方向位置検出センサ11xは、検出範囲をX方向に設定したセンサであり、Y方向位置検出センサ11yは、検出範囲をY方向に設定したセンサである。位置検出センサ11は、X方向位置検出センサ11xの検出範囲とY方向位置検出センサ11yの検出範囲が交差するように、X方向位置検出センサ11x及びY方向位置検出センサ11yをZ方向に積み上げて配置することにより、X方向の細線2の位置とY方向の細線2の位置を同時に検出可能な構成になっている。
【0037】
筐体15は、位置検出センサ11と、信号処理部12と、無線通信部13、電源14とを保持する部材である。筐体15は、前面カバー15b(
図9参照)とともに、中空の六面体を構成する。前面カバー15bは、上述した位置検出センサ11、信号処理部12、無線通信部13及び電源14を外部から遮蔽するように、筐体15に取り付けられる。これにより、位置検出センサ11、信号処理部12、無線通信部13及び電源14を、作業者による接触や粉塵の混入から保護することができる。筐体15の長手方向の一端には、C字形の切り欠き部15aが形成され、この切り欠き部15aに対応する位置に位置検出センサ11が取り付けられている。細線2の位置を位置検出センサ11によって検出する際、作業者は、この切り欠き部15aに細線2を通す。
【0038】
信号処理部12は、例えば組込みマイコンである。信号処理部12は、位置検出センサ11から出力される検出信号Sx,Syを含む、各種の信号を処理する。無線通信部13は、所定の通信プロトコルを用いて無線通信を行う通信モジュールである。無線通信部13は、信号処理部12で処理した結果を出力する。電源14は、位置検出センサ11や信号処理部12、無線通信部13などに電力を供給する電源である。電源14は、例えば、乾電池や充電池によって構成される。電源14を構成する電池としては、できるだけ小型の電池を選定することで、細線位置検出器1の小型軽量化を図ることができる。
【0039】
レールクリップ16は、筐体15が固定される固定部31と、ガイドレール3を把持する把持部32とを一体に有している。固定部31には、2つのネジ止め部33によって筐体15が固定されている。把持部32には、X方向の基準面であるX基準面16xと、Y方向の基準面であるY基準面16yと、鉤部34とが形成されている。X基準面16xは、ガイドレール3の刃先面3x(
図5)に当接される第2の基準面に相当する。Y基準面16yは、ガイドレール3の軌道面3y(
図5)に当接される第1の基準面に相当する。Y基準面16yは、X基準面16xと直角をなして配置されている。鉤部34は、Y基準面16yと対向する位置に形成されている。鉤部34の内面34aは、Y方向においてY基準面16yと所定の寸法を隔てて対向している。
【0040】
X基準面16xには磁石17が配置され、Y基準面16yには磁石18が配置されている。磁石18は、第1の磁石に相当し、磁石17は、第2の磁石に相当する。磁石17及び磁石18としては、例えば、永久磁石や電磁石を用いることができる。磁石17は、X基準面16xに形成された凹部16bに取り付けられることにより、X基準面16xに埋設されている。磁石17は、ドーナツ型に形成され、ネジ止めによって把持部32に固定されている。磁石18は、Y基準面16yに形成された凹部16cに取り付けられることにより、Y基準面16yに埋設されている。磁石18は、ドーナツ型に形成され、ネジ止めによって把持部32に固定されている。
【0041】
磁石17は、ガイドレール3に細線位置検出器1を取り付ける場合に、レールクリップ16のX基準面16xをガイドレール3の刃先面3xに隙間なく当接(密着)させ、この当接状態を維持するための吸着力を発生させる。磁石18は、ガイドレール3に細線位置検出器1を取り付ける場合に、レールクリップ16のY基準面16yをガイドレール3の軌道面3yに隙間なく当接させ、この当接状態を維持するための吸着力を発生させる。
【0042】
磁石17,18として永久磁石を用いる場合は、例えば、ネオジム磁石やヨークを備えた磁石を選ぶことにより、小型でも強力な吸着力を得ることができる。また、磁石17,18として電磁石を用いる場合は、ガイドレール3に対して細線位置検出器1を着脱する際に磁石の吸着力を電気的に弱めることにより、着脱作業がしやすくなり作業性が良くなる。
【0043】
ここで、ガイドレール3とレールクリップ16の寸法関係について、
図5及び
図6を用いて詳しく説明する。
図5は、ガイドレールに細線位置検出器を取り付けた状態を示す斜視図である。
図6は、ガイドレールとレールクリップの寸法関係を説明する図である。
ガイドレール3は、フランジ部3a及びブレード部3bを一体に有するT型鋼によって構成されている。ブレード部3bは、フランジ部3aの幅方向(Y方向)の中央部からX方向に突き出している。ブレード部3bには、刃先面3xと軌道面3yとが形成されている。エレベーターの乗りかごは、ガイドレール3の刃先面3xと軌道面3yに案内されて昇降する。ガイドレール3のフランジ部3aは、図示しないブラケットを介して横壁21sに固定される。その際、ガイドレール3が曲がって取り付けられると、乗りかごの昇降時に揺れが発生する。このため、ガイドレール3を据え付ける際は、ガイドレール3が真っ直ぐに取り付けられるよう、ブラケットでガイドレール3を固定する前にガイドレール3を正確に位置決め(芯出し)する必要がある。
【0044】
レールクリップ16の鉤部34は、
図5に示すように、Y基準面16yと鉤部34との間にガイドレール3のブレード部3bが嵌るように、ブレード部3bの厚み寸法よりも大きな寸法を隔てた位置に形成されている。さらに詳述すると、
図6に示すように、Y基準面16yと鉤部34との対向寸法をL(mm)とし、軌道面3yを基準とするブレード部3bの厚み寸法をT(mm)とすると、対向寸法Lは、ブレード部3bの厚み寸法Tに対してすきまばめの関係を満たすように設定されている。「すきまばめ」とは、被嵌合部に嵌合部を嵌合する場合に、被嵌合部と嵌合部との間に隙間が存在する状態のはめあいをいう。本実施形態においては、Y基準面16yと鉤部34との対向部分に形成される凹状部が被嵌合部に相当し、ガイドレール3のブレード部3bが嵌合部に相当する。すきまばめの関係を満たす具体例として、ブレード部3bの厚み寸法Tが16mmである場合、Y基準面16yと鉤部34との対向寸法Lは16.5mmに設定される。
【0045】
ここで、対向寸法Lと厚み寸法Tとの差が小さすぎる場合は、ガイドレール3のブレード部3bにレールクリップ16の把持部32を嵌合させるときに、細線位置検出器1の動きが渋くなったり、嵌合部分にゴミなどが挟まって細線位置検出器1を動かせなくなったりすることがある。また、対向寸法Lと厚み寸法Tとの差が大きすぎる場合は、ガイドレール3のブレード部3bからレールクリップ16の把持部32が外れて、細線位置検出器1が脱落するおそれがある。このため、対向寸法Lと厚み寸法Tとの差は、ガイドレール3に対する細線位置検出器1の着脱の容易性や、細線位置検出器1の脱落防止を考慮して最適な値に設定することが望ましい。
【0046】
また、レールクリップ16の把持部32において、X基準面16xを基準に、Y基準面16yの高さ寸法h1(mm)と鉤部34の高さ寸法h2(mm)とを規定すると、鉤部34の高さ寸法h2は、Y基準面16yの高さ寸法h1よりも短くなっている。つまり、把持部32においては、鉤部34がY基準面16yよりも低く形成されている。具体例を挙げると、Y基準面16yの高さ寸法h1が30mmである場合、鉤部34の高さ寸法h2は、上記h1の半分以下である10mmに設定される。
【0047】
ここで、鉤部34の高さ寸法h2がY基準面16yの高さ寸法h1と同等である場合は、ガイドレール3に対する細線位置検出器1の着脱作業がしづらくなる。また、鉤部34の高さ寸法h2が短すぎる場合は、ガイドレール3から細線位置検出器1が脱落するおそれがある。このため、Y基準面16yの高さ寸法h1と鉤部34の高さ寸法h2との差は、ガイドレール3に対する細線位置検出器1の着脱の容易性や、細線位置検出器1の脱落防止を考慮して最適な値に設定することが望ましい。
【0048】
<細線位置検出器の取り付け手順>
続いて、本実施形態に係る細線位置検出器1をガイドレール3に取り付ける場合の手順について、
図7及び
図8を用いて説明する。
細線位置検出器1をガイドレール3に取り付ける場合は、まず、
図7に示すように、レールクリップ16のY基準面16yをガイドレール3の軌道面3yに当接させる。このとき、Y基準面16yに埋設されている磁石18は、ガイドレール3を引き寄せる。このため、Y基準面16yと軌道面3yは密着した状態となり、この状態が磁石18の吸着力によって維持される。
【0049】
本実施形態においては、レールクリップ16の把持部32における鉤部34の高さ寸法h2がY基準面16yの高さ寸法h1よりも短くなっている。このため、細線位置検出器1をガイドレール3に取り付ける場合に、ガイドレール3に対して細線位置検出器1を近づける方向が正面方向(X方向)に限定されず、例えば
図7に示すようにガイドレール3に対して細線位置検出器1を斜め方向から近づけることができる。また、図示はしないが、ガイドレール3に対して細線位置検出器1を横方向(Y方向)から近づけることもできる。このため、ガイドレール3に対する細線位置検出器1の取り付け作業を容易に行うことができる。また、ガイドレール3から細線位置検出器1を取り外す場合は、磁石17の吸着力に抗して細線位置検出器1をX方向に引き込むことにより、ガイドレール3のブレード部3bからレールクリップ16を離脱させることができる。このため、ガイドレール3から細線位置検出器1を取り外す作業についても容易に行うことができる。
【0050】
次に、
図8に示すように、細線位置検出器1をガイドレール3の軌道面3yに沿ってスライドさせることにより、レールクリップ16のX基準面16xをガイドレール3の刃先面3xに突き当てる。このとき、X基準面16xに埋設されている磁石17は、ガイドレール3を引き寄せる。このため、X基準面16xと刃先面3xは密着した状態となり、この状態が磁石17の吸着力によって維持される。また、磁石17がガイドレール3を引き寄せることで、ガイドレール3に対するレールクリップ16の挿し込み不足が生じにくくなる。このため、細線位置検出器1の取り付け作業の再現性が向上する。
【0051】
以上の取り付け手順により、細線位置検出器1は、ガイドレール3の刃先面3x及び軌道面3yにレールクリップ16が磁気吸着することでしっかりと取り付けられ、その状態が維持される。
【0052】
<細線位置検出器の脱落防止>
続いて、本実施形態に係る細線位置検出器1の脱落防止について、
図9~
図11を用いて説明する。
図9は、実施形態に係る細線位置検出器に加わる外力を説明する斜視図である。
図10は、実施形態に係る細線位置検出器に水平方向の外力が加わった場合のレールクリップの機能を説明する平面図である。
図11は、実施形態に係る細線位置検出器に鉛直方向の外力が加わった場合のレールクリップの機能を説明する側面図である。
【0053】
図9において、外力Fx1,Fx2は、それぞれX方向から細線位置検出器1に加わる外力であり、外力Fz1,Fz2は、それぞれZ方向から細線位置検出器1に加わる外力である。外力Fx1の向きと外力Fx2の向きは、X方向において逆向きであり、外力Fz1の向きと外力Fz2の向きは、Z方向において逆向きである。
【0054】
細線位置検出器1は、ガイドレール3からY方向に突出した状態で取り付けられる。このため、作業者が誤って細線位置検出器1に接触した場合は、ガイドレール3のブレード部3bとレールクリップ16の把持部32との嵌合部分に、てこの原理によって大きなモーメントが働く。したがって、レールクリップ16に鉤部34が形成されていない場合は、磁石17及び磁石18の吸着力によってガイドレール3のブレード部3bに密着しているレールクリップ16が、外力の印加によってブレード部3bから引き剥がされ、細線位置検出器1がガイドレール3から脱落するおそれがある。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る細線位置検出器1では、レールクリップ16に鉤部34が形成されているため、細線位置検出器1に外力が加わった場合でも、細線位置検出器1がガイドレール3から脱落することを防止できる。その理由は次のとおりである。
【0056】
まず、
図10Aに示すように、細線位置検出器1に外力Fx1が加わった場合、細線位置検出器1は、ガイドレール3とレールクリップ16との嵌合部分を中心に図の反時計方向に回転する。このとき、鉤部34の内面34aは、P1の位置でガイドレール3の軌道面3yの裏側に接触し、Y基準面16yは、P2の位置でガイドレール3の軌道面3yに接触した状態になる。これにより、ガイドレール3のブレード部3bは、レールクリップ16の把持部32に咥えられた状態となる。このため、細線位置検出器1の脱落を防止することができる。また、外力Fx1がなくなった場合は、磁石17の吸着力によってレールクリップ16のX基準面16xがガイドレール3の刃先面3xに密着し、かつ、磁石18の吸着力によってレールクリップ16のY基準面16yがガイドレール3の軌道面3yに密着した状態に戻る。このため、外力Fx1が加わる前の状態を復元することができる。
【0057】
また、
図10Bに示すように、細線位置検出器1に外力Fx2が加わった場合、細線位置検出器1は、ガイドレール3とレールクリップ16との嵌合部分を中心に図の時計方向に回転する。このとき、鉤部34の内面34aは、P3の位置でガイドレール3の軌道面3yの裏側に接触し、Y基準面16yは、P4の位置でガイドレール3の軌道面3yに接触した状態になる。これにより、ガイドレール3のブレード部3bは、レールクリップ16の把持部32に咥えられた状態となる。このため、細線位置検出器1の脱落を防止することができる。また、外力Fx2がなくなった場合は、磁石17の吸着力によってレールクリップ16のX基準面16xがガイドレール3の刃先面3xに密着し、かつ、磁石18の吸着力によってレールクリップ16のY基準面16yがガイドレール3の軌道面3yに密着した状態に戻る。このため、外力Fx2が加わる前の状態を復元することができる。
【0058】
一方、
図11Aに示すように、細線位置検出器1に外力Fz1が加わった場合、細線位置検出器1は、ガイドレール3とレールクリップ16との嵌合部分を中心に図の反時計方向に回転する。このとき、鉤部34の内面34aは、P5の位置でガイドレール3の軌道面3yの裏側に接触し、Y基準面16yは、P6の位置でガイドレール3の軌道面3yに接触した状態になる。これにより、ガイドレール3のブレード部3bは、レールクリップ16の把持部32に咥えられた状態となる。このため、細線位置検出器1の脱落を防止することができる。また、外力Fz1がなくなった場合は、磁石18の吸着力によってレールクリップ16のY基準面16yがガイドレール3の軌道面3yに密着した状態に戻る。このため、外力Fz1が加わる前の状態を復元することができる。
【0059】
また、
図11Bに示すように、細線位置検出器1に外力Fz2が加わった場合、細線位置検出器1は、ガイドレール3とレールクリップ16との嵌合部分を中心に図の時計方向に回転する。このとき、鉤部34の内面34aは、P7の位置でガイドレール3の軌道面3yの裏側に接触し、Y基準面16yは、P8の位置でガイドレール3の軌道面3yに接触した状態になる。これにより、ガイドレール3のブレード部3bは、レールクリップ16の把持部32に咥えられた状態となる。このため、細線位置検出器1の脱落を防止することができる。また、外力Fz2がなくなった場合は、磁石18の吸着力によってレールクリップ16のY基準面16yがガイドレール3の軌道面3yに密着した状態に戻る。このため、外力Fz2が加わる前の状態を復元することができる。
【0060】
以上の理由により、レールクリップ16に鉤部34を設けることで、細線位置検出器1がガイドレール3から脱落することを防止できる。
【0061】
<磁石の取り付け構造>
続いて、実施形態に係る細線位置検出器における磁石の取り付け構造について、
図12を用いて説明する。
図12に示すように、磁石17は、レールクリップ16のX基準面16xに配置され、磁石18は、レールクリップ16のY基準面16yに配置されている。また、磁石17は、X基準面16xの表側に取り付けられ、磁石18は、Y基準面16yの表側に取り付けられている。X基準面16xの表側とは、ガイドレール3のブレード部3bにレールクリップ16の把持部32を嵌合させたときに刃先面3xに対向する側をいう。Y基準面16yの表側とは、ガイドレール3のブレード部3bにレールクリップ16の把持部32を嵌合させたときに軌道面3yに対向する側をいう。
【0062】
X基準面16xには凹部16bが形成され、Y基準面16yには凹部16cが形成されている。凹部16cは、第1の凹部に相当し、凹部16bは、第2の凹部に相当する。磁石17は、X基準面16xの凹部16bに収容され、磁石18は、Y基準面16yの凹部16cに収容されている。凹部16bは、磁石17の厚み寸法よりも少し大きな深さ寸法で形成され、凹部16cは、磁石18の厚み寸法よりも少し大きな深さ寸法で形成されている。このため、磁石17は、X基準面16xから突出することなく凹部16bに収容され、磁石18は、Y基準面16yから突出することなく凹部16cに収容されている。また、磁石17は、X基準面16xの表側から凹部16bに取り付けられ、磁石18は、Y基準面16yの表側から凹部16cに取り付けられている。また、磁石17は、皿ネジ20aによって把持部32に固定され、磁石18は、皿ネジ20bによって把持部32に固定されている。
【0063】
前述した鉤部34の高さ寸法h2は、鉤部34の存在が磁石18の取り付けの邪魔にならないよう、X基準面16xから凹部16cまでの高さ寸法h3以下に設定されている。これにより、Y基準面16yの凹部16bに磁石18を取り付ける場合は、磁石18と鉤部34との干渉を避けて、Y基準面16yの表側から磁石18を取り付けることができる。
【0064】
さらに、X基準面16xとY基準面16yには、非磁性のシート19が貼り付けられる構成になっている。非磁性のシート19は、例えば、片面を粘着面とするプラスチック製のシートである。シート19の具体的な構成材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を挙げることができる。ただし、シート19は、プラスチック製に限らず、適度な耐摩耗性を有する薄いシート、例えば、アルミシートであってもよい。シート19の厚み寸法は、例えば、0.1mm程度である。このような非磁性のシート19をX基準面16x及びY基準面16yに貼り付けることにより、凹部16bの開口部分と凹部16cの開口部分がシート19によって閉じられる。つまり、凹部16b及び凹部16cがシート19によって密封された状態になる。
【0065】
<実施形態の効果>
本実施形態に係る細線位置検出器1においては、筐体15をガイドレール3に留め付けるレールクリップ16に鉤部34が形成され、この鉤部34の高さ寸法h2がY基準面16yの高さ寸法h1よりも短い構成になっている。これにより、ガイドレール3に対する細線位置検出器1の着脱作業を容易に行うことができる。また、ガイドレール3に取り付けられた細線位置検出器1に外力が加わった場合でも、鉤部34の存在によって細線位置検出器1の脱落を防止することができる。その結果、ガイドレールの芯出しを安全に効率良く行うことができる。また、本実施形態に係る細線位置検出器1では、ガイドレール3の軌道面3yの裏側にネジを当接させる必要がない。このため、軌道面3yの裏側にネジの締め付けによる打痕が残らない。また、ネジの締め付け作業も不要になる。このため、レール芯出し作業における作業者の負担軽減並びに作業時間の短縮を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態において、Y基準面16yと鉤部34との対向寸法Lは、ガイドレール3のブレード部3bの厚み寸法Tとすきまばめの関係を満たすように設定されている。これにより、ガイドレール3に対する細線位置検出器1の着脱を容易にすることと、ガイドレール3からの細線位置検出器1の脱落を防止することを同時に実現することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、レールクリップ16におけるX基準面16xの凹部16bに磁石17が取り付けられるとともに、Y基準面16yの凹部16cに磁石18が取り付けられている。これにより、レールクリップ16の把持部32をガイドレール3のブレード部3bに嵌合させたときに、磁石17と刃先面3xとの間、及び、磁石18と軌道面3yとの間に、レールクリップ16の構成材料が介在しないため、各々の磁石17,18の吸着力を有効に活用することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、レールクリップ16のX基準面16x及びY基準面16yに非磁性のシート19を貼り付ける構成を採用している。これにより、凹部16bと磁石17との隙間や凹部16cと磁石18との隙間に塵埃(砂鉄を含む)などが入り込むことを抑制できる。また、非磁性のシート19の表面にごみが付着したときに拭き取り易くなる。
【0069】
<変形例等>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。たとえば、上述した実施形態では、本発明の内容を理解しやすいように詳細に説明しているが、本発明は、上述した実施形態で説明したすべての構成を必ずしも備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、これを削除し、または他の構成を追加し、あるいは他の構成に置換することも可能である。
【0070】
たとえば、上記実施形態においては、レールクリップ16のX基準面16x及びY基準面16yに非磁性のシート19を貼り付ける構成を採用しているが、シート19は、必要に応じて設けるようにすればよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、筐体15とレールクリップ16が別体構造になっているが、これらを一体構造としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…細線位置検出器、2…細線、3…ガイドレール、3b…ブレード部、3x…刃先面、3y…軌道面、11…位置検出センサ、15…筐体、16…レールクリップ、16b…凹部(第2の凹部)、16c…凹部(第1の凹部)、16x…X基準面(第2の基準面)、16y…Y基準面(第1の基準面)、17…磁石(第2の磁石)、18…磁石(第1の磁石)、19…シート、34…鉤部、100…レール芯出し装置