(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125003
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】防音構造
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20240906BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033046
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA25
5D061BB24
5D061DD06
(57)【要約】
【課題】従来の防音構造に対し、さらなる防音性能の向上が求められている。
【解決手段】本開示の防音構造は、側壁、及び前記側壁に囲まれた底面を有し、音源側に開口する囲い部を含むベース部材と、前記側壁との間に隙間を空けて前記囲い部に収容される吸音材と、を備える防音構造である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁、及び前記側壁に囲まれた底面を有し、音源側に開口する囲い部を含むベース部材と、
前記側壁との間に隙間を空けて前記囲い部に収容される吸音材と、を備える防音構造。
【請求項2】
前記吸音材は、多孔質体と、前記多孔質体に対して前記音源側から積層された低通気性又は非通気性のシートと、を備える請求項1に記載の防音構造。
【請求項3】
前記吸音材を抜け止めする第1の保持機構を備える請求項1に記載の防音構造。
【請求項4】
前記囲い部の底面と前記吸音材との間に、前記隙間に連通する通気路を形成する第2の保持機構を備える請求項1に記載の防音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸音材を備えた防音構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-100440(段落[0013]、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防音構造に対し、さらなる防音性能の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一態様は、側壁、及び前記側壁に囲まれた底面を有し、音源側に開口する囲い部を含むベース部材と、前記側壁との間に隙間を空けて前記囲い部に収容される吸音材と、を備える防音構造である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】(A)比較例1の防音構造の断面図、(B)比較例2の防音構造の断面図
【
図6】(A)実施例及び比較例の音響伝達特性を示すグラフ、(B)比較例3に対する実施例1及び比較例2の減音量を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の防音構造10は、ベース部材20に吸音材50が重なった構成を有する。防音構造10では、音源90(例えば騒音源、
図2参照)側に吸音材50が配置され、音源90からの騒音が防がれる。
【0008】
なお、防音構造10は、例えば、乗り物や建物等に設置され、例えば、自動車のモータやエンジン等の音源90に起因する騒音を防ぐのに用いることができる。例えば、このようなモータとしては、走行用のモータや、エンジンコントロールユニット(ECU)等の冷却用のブロワのモータ等が挙げられる。
【0009】
本実施形態の例では、ベース部材20は、板状になった板状本体部21を有し、板状本体部21に、吸音材50が重なって固定されている。本実施形態の例では、吸音材50は、板状をなし、例えば、平面視四角形状をなしている。なお、以下では、板状本体部21と吸音材50の重なり方向において、吸音材50が配置されている側(即ち、音源側)を表側、吸音材50とは反対側を裏側、と適宜呼ぶこととする。
【0010】
本実施形態の例では、吸音材50は、多孔質体51に、板状本体部21とは反対側(多孔質体51に対して音源90側)からシート52が積層されたものである。多孔質体51は、通気性を有していることが好ましい。多孔質体51は、繊維により構成される、いわゆる繊維系吸音材であり、本実施形態の例では、層状の繊維集合体である。多孔質体51を構成する繊維は、例えば、合成樹脂繊維や、天然繊維や、ガラス繊維であってもよいし、これらのうちの複数種類の繊維であってもよい。上記合成樹脂繊維は、熱可塑性樹脂からなるものであってもよいし、熱硬化性樹脂からなるものであってもよく、上記合成樹脂繊維の例として、ポリエチレンテレフタラート繊維や、ポリプロピレン樹脂系繊維、ポリエステル系樹脂繊維等が挙げられる。多孔質体51の例としては、不織布やガラスウール等が挙げられる。
【0011】
本実施形態の例では、シート52は、低通気性になっている。シート52は、低通気性のものが好ましいが、非通気性のものを使用することもできる。ここで、シート52が低通気性であるとは、JIS L 1096A法に準拠してフラジール形通気性試験機を用いて測定したシート52の通気度が8~11cm3/(cm2/s)未満であることを意味する。例えば、シート52は、繊維シートであり、本実施形態の例では、紙状のもの(紙又は湿式不織布)である。シート52を構成する繊維は、例えば、合成樹脂繊維であってもよいし、天然樹脂繊維(例えば植物繊維等)であってもよいし、これらのうちの複数種類の繊維であってもよい。
【0012】
なお、多孔質体51とシート52は、例えば、接着材によって一体化されていてもよいし、溶着によって一体化されていてもよい。例えば、多孔質体51とシート52を同種の材料で(例えば、共にポリプロピレン系樹脂繊維で)構成すれば、それらの一体化を超音波溶着で容易に行うことが可能となる。
【0013】
本実施形態の例では、ベース部材20に吸音材50を保持する保持機構が設けられている。
図2に示すように、本実施形態の例では、この保持機構として、第1突部41を備える第1の保持機構11が設けられている。第1突部41は、板状本体部21から表側に突出して、多孔質体51を貫通している。第1突部41の先端部には、外側に張り出す張出部44が設けられている。具体的には、張出部44は、第1突部41のうち多孔質体51の貫通孔51Aに挿通される胴体部43の先端部から外側に張り出している。張出部44は、多孔質体51の貫通孔51Aの内径よりも大きくなっていて、張出部44により、多孔質体51が(即ち、吸音材50が)抜け止めされている。本実施形態の例では、第1突部41により、多孔質体51が抜け止めされているものの、多孔質体51とベース部材20との重なり方向での多孔質体51の圧縮変形は許容される。なお、張出部44は、例えば、胴体部43の先端部の雄ねじ部に螺合されたナットによって構成されてもよいし、第1突部41の先端部を融かして形成されてもよい。張出部44の形成は、例えば、第1突部41を多孔質体51の貫通孔51Aに挿通した後で行うことができる。
【0014】
本実施形態の例では、第1突部41は、多孔質体51を貫通しているものの、シート52は貫通しておらず、張出部44は、シート52に表側から覆われている。なお、張出部44は、多孔質体51の貫通孔51Aの開口縁を潰すことで、多孔質体51に埋没させてもよいし、多孔質体51に貫通孔51Aの開口縁が陥没してなる環状凹部を形成しておき、その環状凹部に張出部44を収容させてもよい。このようにすることで、張出部44が多孔質体51の表側の面から出っ張ることを抑制可能となる。なお、本実施形態では、例えば、第1突部41を多孔質体51の貫通孔51Aに挿通して張出部44を形成してから、シート52を多孔質体51に積層すればよい。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の例では、ベース部材20に、第2突部42を備える第2の保持機構12が設けられている。第2突部42は、板状本体部21から表側に突出して吸音材50に突き当てられる。第2突部42は、板状本体部21と吸音材50との間に通気路Rを形成する。第2突部42は、吸音材50(多孔質体51)を貫通していないので、多孔質体51を貫通する第1突部41よりは板状本体部21からの突出量が小さくなっている。
【0016】
本実施形態の例では、第1突部41の張出部44と、第2突部42とにより、多孔質体51が挟まれ、多孔質体51とベース部材20との重なり方向での多孔質体51の移動が規制される。本実施形態の例では、このように多孔質体51が挟まれていても、上述のように、多孔質体51の圧縮変形が許容されるように第1突部41及び第2突部42の突出量が調整されている。多孔質体51は、厚み方向で略変形していない略自然長状態に保持されることが好ましい。
【0017】
図3に示すように、第2突部42は、複数設けられていてもよく、本実施形態の例では、複数の第2突部42が格子状に配置されている。なお、詳細には、本実施形態の例では、第1突部41と第2突部42からなる複数の突部が、正方格子状に配置され、ベース部20の表側面における四角形状の領域(吸音材50と重なる領域)に亘って配置される。そして、本実施形態の例では、第1突部41は、その四角形状の領域の四隅にのみ位置している(即ち、吸音材50は第1突部41に四隅が固定される)。なお、複数の第1突部41、又は、複数の第2突部42は、全て同じ形状であってもよいし、一部に異なる形状のものが含まれていてもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、ベース部材20には、板状本体部21から吸音材50側に突出する側壁22が設けられ、側壁22と、板状本体部21のうち側壁22に囲まれている部分により囲い部23が設けられている。側壁22は、吸音材50を囲むように配置され、囲い部23は、吸音材50を収容する収容部になっている。ここで、本実施形態では、吸音材50が、側壁22との間に隙間Sを空けて配置されている(
図2参照)。隙間Sは、上述の通気路Rと連通する。側壁22と吸音材50との間の隙間Sの幅は、吸音材50の全周に亘って一定であってもよいし、変化していてもよい。なお、本実施形態の例では、囲い部23は、裏側からは板状本体部21により閉じられている。
【0019】
囲い部23は、上述の第1突部41と第2突部42も囲んでいて、第1突部41と第2突部42は、囲い部23の底面23M(板状本体部21のうち側壁22に囲まれている部分)から突出している。側壁22は、吸音材50の外縁に沿って延びていることが好ましく、本実施形態の例では、吸音材50の全周に亘って延びた(即ち、吸音材50を全周に亘って包囲する)枠状のものになっている。なお、本実施形態では、側壁22は、吸音材50の平面形状に合わせて四角形状の枠状になっているが、側壁22の形状は、これに限らず、吸音材50の形状等に応じて設計することができる。また、側壁22は、吸音材50の周方向で一部が途切れた構成となっていてもよい(即ち、複数の突壁が吸音材50を囲むように配置された構成であってもよい)。
【0020】
本実施形態では、側壁22の突出先端面の高さ(囲い部23の底面23Mからの距離)は、吸音材50の表側面の高さに対して、同等(略同じ)であってもよいし、高くなっていてもよいし、低くなっていてもよい。また、囲い部23は、音源90側に開口している。本実施形態では、囲い部23の平面積(吸音材50とベース部材20との重なり方向から見た面積)は、音源90の平面積以上であることが好ましい(即ち、該重なり方向から見ると、音源90が囲い部23内に収まる大きさになっていることが好ましい)。
【0021】
本実施形態の例では、ベース部材20は、一体成形品(例えば樹脂製のもの)であり、ベース部材20は、表裏方向で(板状本体部21の厚み方向で)型抜き可能な形状になっている。具体的には、側壁22、第1突部41及び第2突部42の板状本体部21からの表側への突出方向がそろっている(例えば、互いに平行になっている)。ベース部材20としては、例えば、非通気性のもの等が挙げられる。なお、ベース部材20は、複数の部材で構成されてもよく、例えば、板状本体部21に、側壁22又は第1突部41又は第2突部42が取り付けられた構成であってもよい。
【0022】
本実施形態の防音構造10では、ベース部材20に、側壁22、及び側壁22に囲まれた底面23Mを有し、音源90側に開口する囲い部23が設けられ、吸音材50が、側壁22との間に隙間Sを空けて囲い部23に収容されている。この防音構造10によれば、従来の防音構造に対して、さらなる防音性能の向上を図ることが可能となる。例えば、音源90から隙間Sに進入した音を、音源90側の面(表面)だけでなく、吸音材50の(本実施形態の例では多孔質体51の)側面からも吸音することができ、防音性能を高めることが期待できる。防音性能の観点から、隙間Sの幅は、吸音材50の幅に対して、5~20%の幅であることが好ましい。
【0023】
ここで、近年、自動車の電動化により、エンジン、変速機等の騒音が無くなった一方で、これら騒音に隠れていた様々な音が目立つようになってきた。例えば、衝突軽減のための自動ブレーキ等の運転補助装置等が設置されるのに伴い、それらを制御するためのECUが多く設置されるようになったため、それらのECUの発熱を抑える冷却装置が必要になっている。このような冷却装置として、ブロアが一般に用いられるが、ブロアにおけるファンの騒音等を乗員がうるさく感じるようになってきたため、騒音を低減させることが求められている。具体的には、このような騒音は、800~3000Hz、より具体的には800~2000Hzの周波数帯の音に相当する。これに対し、本実施形態の防音構造10によれば、後述するように、この周波数帯における防音性能を顕著に向上させることが可能となるので、上述のような騒音を効果的に低減することが可能となる。
【0024】
本実施形態では、吸音材50として、多孔質体51と、多孔質体51に対して音源90側から低通気性のシート52が積層されたものが用いられる。このような吸音材50では、シート52の厚み等を調整することで特定周波数の防音性能を向上させることができる反面、特定周波数周辺の周波数帯における防音性能が低下する。そのため、特定周波数を800~3000Hzの周波数帯内に設定したとしても、この周波数帯全体における防音性能を向上させることは難しい。これに対し、本実施形態の防音構造10によれば、吸音材50と側壁22との間に隙間Sを空けることで、特定周波数を800~3000Hzの周波数帯内に設定した場合でも、上記周波数帯全体における防音性能を向上させることが可能となるので、上述のような騒音を吸音材50の特定周波数を用いて効果的に低減することが可能となる。
【0025】
本実施形態では、第1突部41を有して、吸音材50を抜け止めする第1の保持機構11が設けられるので、吸音材50と側壁22との間に隙間Sが空いていても吸音材50の保持を安定させることが可能となる。
【0026】
本実施形態では、第2突部42を有して、吸音材50を板状本体部21との間に隙間(通気路R)を空けた状態に保持する第2の保持機構12が設けられる。これにより、例えば、音源90から隙間Sに進入した音を、吸音材50の音源90側の面(表面)や側面だけでなく、底面23M側の面(裏面)からも吸音することができ、防音性能を高めることが期待できるとともに、吸音材50の配置を厚み方向で安定させることが可能となる。
【0027】
[他の実施形態]
(1)吸音材50が、上記実施形態では、板状をなしていたが、これに限定されるものではなく、例えば、扁平ではない形状であってもよく、例えば、立方体状であってもよい
【0028】
(2)多孔質体51は、上記実施形態では、繊維集合体であってが、発泡体であってもよい。発泡体としては、例えば、ポリウレタン系樹脂の発泡体、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の発泡体、メラミン系樹脂の発泡体、ゴムの発泡体等が挙げられる。
【0029】
(3)吸音材50を、積層構造とする場合、多孔質体51とシート52の2層構造としてもよいし、さらに層が積層された3層以上の積層構造としてもよい。例えば、多孔質体51を厚み方向に積層された2層以上の積層構造としてもよい。この場合、各層は通気性を有し、各層の通気抵抗がそれぞれ異なっていることが好ましい。また、吸音材50を単層構造(例えば多孔質体51の単層構造)としてもよい。
【0030】
(4)上記実施形態において、第1突部41を、吸音材50を貫通する(即ち、上記実施形態ではシート52も貫通する)構成としてもよい。例えば、
図4に示すように、第1突部41を、多孔質体51の貫通孔51Aに挿通させるとともに、シート52の貫通孔52Aに貫通させてから、第1突部41の先端部を融かすことで外側に張り出す張出部44を形成してシート52を固定してもよい。
【0031】
(5)上記実施形態において、複数の第2突部42を、千鳥格子状に配置していてもよいし、ランダムに配置していてもよい。また、第2突部42は、例えば、柱状(円柱状や角柱状)であってもよいし、円錐台形状や角錐台形状であってもよいし、リブのように突壁状であってもよい。複数の第2突部42は、ランダムな形状になっていてもよい。
【0032】
(6)上記実施形態において、第1突部41の数が4個未満であってもよいし、5個以上であってもよい。前者の場合、例えば、上記実施形態において一部の第1突部41の代わりに第2突部42を設けてもよい。後者の場合、例えば、上記実施形態において一部の第2突部42の代わりに第1突部41を設けてもよい。
【0033】
(7)上記実施形態において、第1突部41が多孔質体51を貫通していなくてもよい。例えば、第1突部41が、囲い部23の底面23Mのうち、吸音材50より外側の部分から表側に突出すると共に、第1突部41の先端に内側に(吸音材50側に)張り出す係止爪が設けられ、その係止爪で吸音材50を係止して抜け止めする構成であってもよい。
【0034】
(8)上記実施形態において、吸音材50は、ベース部材20(例えば上記実施形態では板状本体部21)に、接着材で固定されていてもよい。例えば、この場合、第1の保持機構11と第2の保持機構12のうち少なくとも一方が設けられていなくてもよい。
【実施例0035】
以下、実施例及び比較例によって上記実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示の防音構造は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例の防音構造について、防音性能を評価した。
【0036】
(1)実施例及び比較例の防音構造
[実施例1]
実施例1の防音構造10は、
図1~3に示す上記第1実施形態の防音構造10である。吸音材50は、平面視正方形状の板状をなしている(90mm×90mm×厚み20mmのサイズである)。吸音材50は、多孔質体51とシート52とが全体的に重ねられた2層構造である。多孔質体51として、株式会社イノアックコーポレーション製のポリエステル繊維の不織繊維集合体(厚みが25mm、密度が11.2kg/m
3)を用いた。また、シート52として、紙(セルロース繊維からなるもの。目付量が50g/m
2)を用いた。
【0037】
ベース部材20には、第1突部41、第2突部42及び側壁22が備えられている。第1突部41の突出高さ(突出先端までの囲い部23の底面23Mからの距離)は、30mmである。第2突部42の突出高さ、即ち、通気路Rの高さは、5mmである(従って、底面23Mからの吸音材50の表側面の距離は、30mmである)。第1突部41と第2突部42は、外径が2mmとなった同径の円柱状になっている。第1突部41と第2突部42からなる複数の突部は、各中心軸同士の間隔が30mmとなった4個×4個の平方格子状に配列されている。また、側壁22の高さは、30mmであり、側壁22の厚みは、2mmである。囲い部23の開口及び底面23Mは、100mm×100mmのサイズであり、側壁22と吸音材50の間の隙間Sの幅は、吸音材50の全周に亘って5mmである。
【0038】
[比較例1]
図5(A)に示すように、比較例1の防音構造は、実施例1の防音構造10に対して、吸音材50と、第1突部41と、第2突部42と、側壁22とが何れも設けられていない点で異なり、それ以外の構成は同様である。即ち、比較例1の防音構造では、ベース部材20が板状本体部21だけになっている。
【0039】
[比較例2]
図5(B)に示すように、比較例2の防音構造は、実施例1の防音構造10に対して、ベース部材20に側壁22が設けられていない点で異なり、それ以外の構成は同様である。
【0040】
[比較例3]
比較例3では、防音構造が設けられていない。
【0041】
(2)評価方法
実施例及び比較例の防音構造に対して、音源90側(表側)での音圧(入射側音圧)と、音源90とは反対側(裏側)での音圧(出力側音圧)と、を測定し、それらの比(出力側音圧/入射側音圧)である音響伝達特性を評価した(
図5(A)参照)。また、実施例1、比較例1及び比較例2の音響伝達特性から比較例3の音響伝達特性を引いたものを、減音量として評価した(
図5(B)参照)。なお、音響伝達特性と減音量は、低いほど良く、音源90からの音を防音できているということを示す。
【0042】
各測定では、音源90に対して吸音構造を正対させた。音源90としては、φ60のスピーカを使用した。音源90を、ベース部材20の板状本体部21から表側に100mm離して配置し、入射側音圧測定用のマイクを、板状本体部21から音源90側(表側)に100mm離れた位置A(
図2参照)に配置した。また、出力側音圧測定用のマイクを、板状本体部21から裏側に100mm離れた位置B(
図2参照)に配置した。実施例及び比較例で、音源90及びマイクの位置は同じである。なお、音源90は、音源90と防音構造の対向方向から見たときに、実施例1の防音構造10の囲い部23内に収まる大きさになっている。また、位置A及び位置Bは、該対向方向から見たときに、吸音材50と重なる位置である。
【0043】
(3)評価結果
図6(A)及び
図6(B)に示すように、防音構造10が吸音材50を備える実施例1では、防音構造が板状本体部21のみである比較例1、及び、防音構造が設けられていない比較例3に比べて、音響伝達特性と減音量が良好であり、防音性能の向上が可能であることが確認できた。さらに、実施例1は、防音構造が側壁22を備えていない比較例2に対しても、音響伝達特性と減音量を向上させることが可能であり、防音性能の向上が可能であることが確認できた。特に、実施例1では、比較例2に対して、800~3000Hzの周波数帯における防音性能の向上が顕著であることが確認できた。
【0044】
<付記>
以下、上記実施形態及び実施例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0045】
例えば、以下の特徴群は、防音構造に関し、「従来から、吸音材を備えた防音構造が知られている(例えば、特開2022-100440(段落[0013]、
図1等)参照)。」という背景技術について、「従来の防音構造に対し、さらなる防音性能の向上が求められている。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来から、新規な防音構造が求められている。
【0046】
[特徴1]
側壁、及び前記側壁に囲まれた底面を有し、音源側に開口する囲い部を含むベース部材と、
前記側壁との間に隙間を空けて前記囲い部に収容される吸音材と、を備える防音構造。
【0047】
特徴1の防音構造によれば、さらなる防音性能の向上を図ることが可能となる。
【0048】
[特徴2]
前記吸音材は、多孔質体と、前記多孔質体に対して前記音源側から積層された低通気性又は非通気性のシートと、を備える特徴1に記載の防音構造。
【0049】
[特徴3]
前記吸音材を抜け止めする第1の保持機構を備える特徴1又は2に記載の防音構造。
【0050】
[特徴4]
前記囲い部の底面から突出して前記多孔質体を貫通し、前記多孔質体を抜け止めすると共に、前記多孔質体の圧縮変形を許容する保持機構を備える特徴2に記載の防音構造。
【0051】
[特徴5]
前記囲い部の底面と前記吸音材との間に、前記隙間に連通する通気路を形成する第2の保持機構を備える特徴1から3の何れか1の特徴に記載の防音構造。
【0052】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。