IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012501
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】試料分析のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240123BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240123BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20240123BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240123BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240123BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240123BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/33
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
C12N15/10 100Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188408
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2021567934の分割
【原出願日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】62/847,699
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】アスティエ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゴドウィン,ブライアン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジェファーソン,ケインティシャ
(72)【発明者】
【氏名】フォレット,フランティセク
(72)【発明者】
【氏名】ダティンスカ,ブラディミラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイビ,パンテア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大容量を含むことがある試料を分析するための電気泳動装置および方法を提供する。また、試料のより迅速な分析を実現するエピタコフォレシス法を提供する。
【解決手段】試料から1つ以上の無細胞核酸を単離および/または精製する方法であって、a.エピタコフォレシス(ETP)を実行するための装置を提供することと、b.前記1つ以上の無細胞核酸を含む試料を提供することと、c.前記1つ以上の無細胞核酸(cfNA)を1つ以上の集束ゾーンに、例えば1つ以上のETPバンドとして集束させるために前記装置を使用してETPを行うことによって、1つ以上のエピタコフォレシス実行を実施することと、d.前記1つ以上のcfNAを含む前記1つ以上の集束ゾーンを収集することによって、前記1つ以上のcfNAを収集することと、それによって、1つ以上の単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAを取得することとを含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から1つ以上の無細胞核酸を単離および/または精製する方法であって、
a.エピタコフォレシス(ETP)を実行するための装置を提供することと、
b.前記1つ以上の無細胞核酸を含む試料を提供することと、
c.前記1つ以上の無細胞核酸(「cfNA」)を1つ以上の集束ゾーンに、例えば1つ以上のETPバンドとして集束させるために前記装置を使用してETPを行うことによって、1つ以上のエピタコフォレシス実行を実施することと、
d.前記1つ以上のcfNAを含む前記1つ以上の集束ゾーンを収集することによって、前記1つ以上のcfNAを収集することと、
それによって、1つ以上の単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAを取得することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記1つ以上のcfNAに結合および/または会合する挿入色素および/または光学標識の検出を含む光学的検出をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、電気的検出をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、自動化された方法であり、ステップb.の前記試料が、前記装置に自動的に装填される、および/またはステップdの前または最中に、1つ以上の無細胞NAが前記装置から自動的に収集される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
単離された前記1つ以上のcfNAおよび/または精製された前記1つ以上のcfNAが、前記1つ以上のcfNAをさらに単離および/または精製するために1つ以上のさらなるETP実行に供される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップdに続く少なくとも1つのSPRIビーズベースの浄化ステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、ステップcの最中にETP上部マーカーの使用をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb.の前記試料の試料体積が、0.25mL以下、0.25mL以上、0.5mL以上、0.75mL以上、1.0mL以上、2.5mL以上、5.0mL以上、7.5mL以上、10.0mL以上、12.5mL以上、または15.0mL以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の1つ以上のゲノム領域における胎児源による発生源寄与および胎児のコピー数多型(CNV)の存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記母体試料からcfNA、例えば、cfDNAを単離および/または精製して、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1のゲノム領域における少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー領域を含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの前記第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2のゲノム領域における少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー領域を含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの前記第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;e.ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットをライゲーションして前記第1のゲノム領域に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットをライゲーションして前記第2のゲノム領域に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして前記多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと;f.前記ユニバーサルプライマー領域を使用して前記隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと;g.前記第1のゲノム領域および前記第2のゲノム領域からの各遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して前記増幅生成物を検出するステップと;h.前記第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、前記第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる前記第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、前記第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、前記多型の有益な遺伝子座における母体源に対する前記胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、前記胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップとを含む、アッセイ。
【請求項10】
単一のアッセイを使用して、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の胎児源による発生源寄与および胎児の異数性の存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記母体試料からcfNA、例えば、cfDNAを単離および/または精製して、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1の染色体に対応する少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの前記第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2の染色体に対応する少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの前記第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;e.ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットをライゲーションして前記第1の染色体上の遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットをライゲーションして前記第2の染色体上の遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして前記多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと;f.前記隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと;g.前記第1の染色体上の各遺伝子座、前記第2の染色体上の各遺伝子座、および各有益な遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して前記増幅生成物を検出するステップと;h.前記第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、前記第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる前記第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、前記第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、前記多型の有益な遺伝子座における母体源に対する前記胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、前記胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップとを含む、アッセイ。
【請求項11】
胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の1つ以上のゲノム領域における胎児源による発生源寄与および胎児CNVの存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記母体試料からcfNA、例えば、cfDNAを単離および/または精製して、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1のゲノム領域における24以上の遺伝子座の領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの前記第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2のゲノム領域における24以上の遺伝子座の領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの前記第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;e.(i)架橋性オリゴヌクレオチドを(ii)前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記架橋性オリゴヌクレオチドが、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットに相補的な領域間の遺伝子座の領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;f.前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットと前記架橋性オリゴヌクレオチドをライゲーションして前記第1のゲノム領域における遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットと前記架橋性オリゴヌクレオチドをライゲーションして前記第2のゲノム領域に関連する遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして前記多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと;g.前記隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと;h.前記第1のゲノム領域における各遺伝子座および前記第2のゲノム領域における各遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して前記増幅生成物を検出するステップと;i.前記第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、前記第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる前記第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、前記第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、前記多型の有益な遺伝子座における母体源に対する前記胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、前記胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップとを含む、アッセイ。
【請求項12】
胎児のコピー数多型の統計的尤度を提供するためのアッセイ方法であって、母体の無細胞DNAおよび胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供することと;ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記無細胞DNAを単離および/または精製することと;第1の標的ゲノム領域における遺伝子座に相補的な領域を含む少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、前記第1の標的ゲノム領域から少なくとも48の非多型遺伝子座を調査することであって、各セットの前記固定配列オリゴヌクレオチドのうちの1つが、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと;第2の標的ゲノム領域における遺伝子座に相補的な領域を含む少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、前記第2の標的ゲノム領域から少なくとも48の非多型遺伝子座を調査することであって、各セットの前記固定配列オリゴヌクレオチドのうちの1つが、前記第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと;ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションすることと;ライゲーションした前記固定配列オリゴヌクレオチドを増幅してアンプリコンを形成することと;前記制限部位において前記アンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成することであって、切断された各アンプリコンが、前記第1の捕捉領域および前記第1の標識結合領域または第2の標識結合領域を含む、形成することと;前記第1の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含むアレイに前記切断されたアンプリコンの前記第1の捕捉領域のハイブリダイゼーションを介して、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンを検出することであって、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの前記切断されたアンプリコンが前記第1の捕捉領域に相補的な前記捕捉プローブに対して競合的にハイブリダイズする、検出することと;前記第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの調査された非多型遺伝子座の相対頻度を判定するために、前記切断されたアンプリコンの捕捉領域を定量化することと;前記第1の標識結合領域および第2の標識結合領域の判定された前記相対頻度に基づいて、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の前記相対頻度を推定することと;各多型遺伝子座について少なくとも3つの固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域とは異なる少なくとも1つの標的ゲノム領域から少なくとも48の多型遺伝子座を調査することであって、各セットの前記少なくとも3つの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのうちの2つが、多型遺伝子座の1つの対立遺伝子に相補的な配列、各多型遺伝子座に特異的な捕捉領域、前記多型遺伝子座における各対立遺伝子の異なる標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと;ハイブリダイズした前記固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをライゲーションすることと;ライゲーションした前記固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを増幅して、対立遺伝子特異的アンプリコンを形成することと;前記制限部位において前記対立遺伝子特異的アンプリコンを切断して、切断された対立遺伝子特異的アンプリコンを形成することであって、前記切断された各対立遺伝子特異的アンプリコンが、多型遺伝子座特異的捕捉領域および対立遺伝子特異的標識結合領域を含む、形成することと;前記切断された対立遺伝子特異的アンプリコンの前記多型遺伝子座特異的捕捉領域の競合的ハイブリダイゼーションを介して、前記多型遺伝子座から前記切断された対立遺伝子特異的アンプリコンを検出し、前記アレイ上の領域を捕捉することと;前記試料中の胎児DNAの割合を判定するために、前記切断された対立遺伝子特異的アンプリコン上の各対立遺伝子についての前記対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、前記多型遺伝子座の対立遺伝子を定量化することと;前記胎児DNAの割合を判定することと;前記試料中の前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の推定された相対頻度と前記胎児DNAの割合とを使用して、前記母体試料中の前記胎児のコピー数多型の統計的尤度を計算することとを含む、アッセイ方法。
【請求項13】
胎児異数性の尤度を判定するためのアッセイ方法であって、母体の無細胞DNAおよび胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供するステップと;ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記無細胞DNAを単離および/または精製し、それにより、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の第1の標的ゲノム領域における前記非多型遺伝子座に相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第1のセットを導入するステップであって、各セットの前記固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の第2の標的ゲノム領域における前記非多型遺伝子座に相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第2のセットを導入するステップであって、各セットの前記固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、前記第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の多型遺伝子座のセットに相補的な3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第3のセットを導入するステップであって、各セットの前記3つの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つが、ユニバーサルプライマー部位、多型遺伝子座における1つの対立遺伝子に相補的な配列、前記多型遺伝子座における各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域、2つの制限部位、および多型遺伝子座特異的捕捉領域を含み、各多型遺伝子座についての捕捉領域が他の全ての多型遺伝子座についての捕捉領域とは異なり、前記第1の捕捉領域とは異なる、導入するステップと;前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットを前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域ならびに前記多型遺伝子座にハイブリダイズするステップと;ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットの少なくとも1つを伸長して、隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドを形成するステップと;ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットをライゲーションして、ライゲーション生成物を形成するステップと;前記ユニバーサルプライマー部位を使用してライゲーション生成物を増幅して前記多型遺伝子座に対応するアンプリコンを形成するステップと;前記制限部位において前記アンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成するステップであって、切断された各アンプリコンが、1つの捕捉領域および1つの標識結合領域を含む、形成するステップと;前記切断されたアンプリコンをアレイに適用するステップであって、前記アレイが、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの前記切断されたアンプリコン上の前記第1の捕捉領域に相補的な第1の捕捉プローブを含み、前記アレイが、各多型遺伝子座からの前記切断されたアンプリコン上の前記捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含む、適用するステップと;前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの前記切断されたアンプリコンの前記第1の捕捉領域を、アレイ上の第1の捕捉プローブにハイブリダイズするステップと;前記多型遺伝子座からの前記切断されたアンプリコンの前記捕捉領域をハイブリダイズして前記アレイ上のプローブを捕捉するステップと;ハイブリダイズした前記切断されたアンプリコンを検出するステップと;前記第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、前記第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および前記第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を定量化するステップと;前記切断されたアンプリコン上の各対立遺伝子についての前記対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、前記多型遺伝子座からの各対立遺伝子の相対頻度を定量化し、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと;前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する前記切断されたアンプリコンの相対頻度を使用して胎児異数性の尤度を計算し、胎児異数性の尤度および判定された前記胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップとを含む、アッセイ方法。
【請求項14】
胎児異数性の尤度を判定するためのアッセイ方法であって、母体の無細胞DNAおよび胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供するステップと;ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記無細胞DNAを単離および/または精製し、それにより、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、前記母体試料中の第1の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座のセットに相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第1のセットを導入するステップであって、各セットの前記固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の第2の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座のセットに相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第2のセットを導入するステップであって、各セットの前記固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、前記第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、前記単離された母体試料および/または精製された母体試料中の多型遺伝子座のセットに相補的な3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの2つ以上の第3のセットを導入するステップであって、各セットの3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つが、ユニバーサルプライマー部位、多型遺伝子座における1つの対立遺伝子に相補的な配列、前記多型遺伝子座における各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域、2つの制限部位、および多型遺伝子座特異的捕捉領域を含み、各多型遺伝子座についての捕捉領域が他の全ての多型遺伝子座についての捕捉領域とは異なり、前記第1の捕捉領域とは異なる、導入するステップと;前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットを前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域ならびに前記多型遺伝子座にハイブリダイズするステップと;ハイブリダイズした前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットの少なくとも1つを伸長して、各セットについて隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドを形成するステップと;前記第1のセット、第2のセットおよび第3のセットから前記隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーション生成物を形成するステップと;前記ユニバーサルプライマー部位を使用してライゲーション生成物を増幅してアンプリコンを形成するステップと;前記制限部位において前記アンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成するステップであって、切断された各アンプリコンが、1つの捕捉領域および1つの標識結合領域を含む、形成するステップと;前記切断されたアンプリコンをアレイに適用するステップであって、前記アレイが、前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの前記切断されたアンプリコン上の前記第1の捕捉領域に相補的な第1の捕捉プローブを含み、前記アレイが、各多型遺伝子座からの前記切断されたアンプリコン上の前記捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含む、適用するステップと;前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの前記切断されたアンプリコンの前記第1の捕捉領域を、アレイ上の第1の捕捉プローブにハイブリダイズするステップと;前記多型遺伝子座からの前記切断されたアンプリコンの前記捕捉領域をハイブリダイズして前記アレイ上のプローブを捕捉するステップと;ハイブリダイズした前記切断されたアンプリコンを検出するステップと;前記切断されたアンプリコン上の各対立遺伝子についての前記対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、前記多型遺伝子座からの各対立遺伝子の相対頻度を定量化し、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと;母体遺伝子座がホモ接合であり且つ対応する胎児遺伝子座がヘテロ接合である定量化された対立遺伝子から低頻度対立遺伝子を同定することにより、前記胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと;前記第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、前記第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および前記第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を定量化するステップと;前記第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および前記胎児の無細胞DNAの割合を使用して、前記胎児異数性の尤度を計算するステップとを含む、アッセイ方法。
【請求項15】
腫瘍由来SNVを同定する非侵襲的方法であって、(a)癌に罹患しているかまたは癌に罹患している疑いがある被験体から試料を取得することと;(b)ETPベースの単離および/または精製を実施して、標的核酸、例えばcfNA、例えばcNAを単離および/または精製して単離された試料および/または精製された試料を取得することと;(c)前記単離された試料および/または精製された試料に対してシーケンシング反応を行ってシーケンシング情報を生成することと;(d)ステップ(c)からの前記シーケンシング情報に基づいて候補腫瘍対立遺伝子のリストを形成するために前記シーケンシング情報にアルゴリズムを適用することであって、前記候補腫瘍対立遺伝子が生殖系列SNPではない非優性塩基を含む、適用することと;(e)前記候補腫瘍対立遺伝子のリストに基づいて前記腫瘍由来SNVを同定することとを含む、方法。
【請求項16】
前記候補腫瘍対立遺伝子が、候補SNVを含むゲノム領域を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項17】
疾患または症状に罹患している被験体の検出、診断、予後判定、または治療選択のための方法であって、(a)前記被験体に由来する無細胞DNA(cfDNA)試料の配列情報を取得することであって、前記cfDNA試料が、ETPベースの単離および/または精製を行うことによって単離および/または精製されることと;(b)(a)に由来する前記配列情報を使用して、前記試料中の無細胞非生殖細胞系DNA(cfNG-DNA)を検出することとを含み、前記方法が、総cfDNAの2%未満または総cfDNAの約2%超とし得るcfNG-DNAの割合を検出することが可能となり得る、方法。
【請求項18】
ウイルス由来cfNAを同定する非侵襲的方法であって、(a)ウイルス感染症を有すると疑われるか、またはウイルスに曝露されたと疑われる被験体から試料を取得することと;(b)ETPベースの単離および/または精製を実施して、標的cfNAを単離および/または精製して単離された試料および/または精製された試料を取得することと;(c)前記単離された試料および/または精製された試料に対してシーケンシング反応を行ってシーケンシング情報を生成することと;(d)前記シーケンシング情報に基づいて、前記被験体が1つ以上のウイルスに感染しているかどうかを判定することとを含む、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載のETPベースの単離および収集を行うための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気泳動の分野に関し、より詳細には、例えば、エピタコフォレシスのための装置および方法による、生物学的試料などの試料の選択的分離、検出、抽出、および/または(予備)濃縮による試料分析に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動手法は、特定の物質を同定するため、または溶液中の分子のサイズおよび種類を判定するためなどの様々な目的のために、試料の分離および分析において長い間使用されてきた。例えば、様々な分子生物学用途が、タンパク質または核酸を分離し、分子量を判定し、および/またはさらなる分析のために試料を調製するために電気泳動を使用している。これらのおよび他の用途では、電気泳動は、一般に、電場の影響下での帯電した物質(例えば、分子またはイオン)の移動を伴う。この移動は、他の試料または物質からの試料の分離を容易にすることができる。一旦分離されると、試料は、光学的手法または他の手法を使用して容易に分析されることができる。
【0003】
様々な電気泳動に基づく手法は、典型的には、実行される分析の特定の必要性に応じて異なる用途に関連して使用される。例えば、等速電気泳動(「ITP」)は、異なる電気泳動移動度を有する電解質を活用して集束させ、場合によってはイオン分析物を別個のゾーン(「集束ゾーン」)に分離する濃縮分離技術である。ITPでは、分析物は、高実効移動度先行電解質(「LE」)イオンと低実効移動度後行電解質(「TE」)イオンとの間で同時に集束および分離する。ITPにおけるゾーン境界でのエレクトロマイグレーションと拡散のバランスは、典型的には、鋭い移動境界をもたらす。
【0004】
従来、ITPは、毛細管またはマイクロ流体チャネル設計を特徴とする装置および方法の使用によって達成される。そのような装置および方法は、分析のために少量(μlスケール)の試料しか取り扱うことができず、これは、血液および/または血漿からの核酸の抽出などの生物学的試料の分析を困難にする可能性がある。したがって、大容量を含むことがある試料を分析するための装置および方法のさらなる開発は、おそらく有益であろう。また、試料のより迅速な分析を提供するエピタコフォレシス法も有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、一般に、試料から1つ以上の無細胞核酸を単離および/または精製する方法であって、前記方法が、a.エピタコフォレシス(ETP)を実行するための装置を提供することと;b.前記1つ以上の無細胞核酸を含む試料を提供することと;c.前記1つ以上の無細胞核酸(「cfNA」)を1つ以上の集束ゾーンに、例えば1つ以上のETPバンドとして集束させるために前記装置を使用してETPを行うことによって、1つ以上のエピタコフォレシス実行を実施することと;d.前記1つ以上のcfNAを含む前記1つ以上の集束ゾーンを収集することによって、前記1つ以上のcfNAを収集することと、それによって、単離された1つ以上のcfNAおよび/または精製された1つ以上のcfNAを取得することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、1つ以上のcfNAは、無細胞DNAおよび/または無細胞RNAを含むことができる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の無細胞核酸を含む前記試料は、血液、血漿、尿、リンパ液および/または血清試料を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記試料は、母体の血液、血漿および/または血清を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の無細胞核酸は、1つ以上の循環腫瘍核酸(ctNA)を含むことができ、例えば、前記1つ以上のctNAは、循環腫瘍DNAおよび/または循環腫瘍RNAを含む。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の無細胞核酸は、1つ以上の循環ウイルス核酸(cvNA)を含むことができ、例えば、前記1つ以上のcvNAは、循環ウイルスDNAおよび/または循環ウイルスRNAを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の無細胞核酸の前記ETPベースの単離および/または精製は、単離および収集される元の試料に含まれる1つ以上の無細胞核酸の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、例えば、1つ以上の標的分析物を含むETP単離/精製試料の組成を判定するための分析技術によって測定した場合に、前記1つ以上の標的分析物の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の純度をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の緩衝液濃度、例えばLEおよび/またはTE緩衝液濃度、前記ETP装置に含まれるゲルの割合、および/またはETPベースの単離および収集実行の停止時間は、前記試料に含まれる他の材料からの前記1つ以上のcfNAの分離を促進するために変更および/または最適化されることができる。いくつかの実施形態では、前記試料は、ステップcを行う前にプロテイナーゼKによって消化されることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のcfNAは、長さが約1000bp以上、1000bp以下、900bp以下、800bp以下、700bp以下、600bp以下、500bp以下、400bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、150bp以下とすることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、1つ以上の下流のインビトロ診断用途に使用されることができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記ETPベースの単離および/または精製の間および/または後に前記1つ以上のcfNAを検出することをさらに含むことができ、例えば、前記検出は、いくつかの例では、光学的検出を含み、前記光学的検出は、前記1つ以上のcfNAに結合するおよび/または会合されるインターカレート色素および/または光学的標識の検出を含む。いくつかの実施形態では、前記検出は、電気的検出を含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記方法は、ステップbの試料が前記装置に自動的に装填される、および/またはステップdの前または最中に1つ以上の無細胞NAが前記装置から自動的に収集される自動化された方法とすることができる。いくつかの実施形態では、単離された1つ以上のcfNAおよび/または精製された1つ以上のcfNAは、前記1つ以上のcfNAをさらに単離および/または精製するために、1つ以上のさらなるETP実行に供されることができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、ステップdに続く少なくとも1つのSPRIビーズベースの浄化ステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、ETPベースの単離および/または精製を使用せずに達成される方法と比較して、cfNAの1.25倍以上、1.5倍以上、1.75倍以上、2.0倍以上、2.25倍以上、2.5倍以上、2.75倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、100倍以上、または1000倍以上のcfNA収率をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、約1.00ng以下、1.0ng以上、2.0ng以上、3.0ng以上、4.0ng以上、5.0ng以上、5.5ng以上、6.0ng以上、6.5ng以上、6.8ng以上、10ng以上、50ng以上、または100ng以上の単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAをもたらすことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記方法は、ステップcの間にETP上部マーカーの使用をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、前記ETP上部マーカーは、1つ以上のcfNAよりもサイズが大きく、および/または長さが長くてもよい。いくつかの実
施形態では、前記ETP上部マーカーは、プラスミドの制限消化によって生成されることができる。いくつかの実施形態では、前記制限消化は、約1000bpのETP上部マーカーをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、ディープシーケンシング(CAPP-Seq)によるCAncerパーソナライズプロファイリングをさらに受けることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAが使用されて、胎児異数性のリスクを評価することができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、1つ以上のバイオマーカーについてアッセイされることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、母体cfNAに対する胎児cfNAの比および/または量について分析されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、非多型および多型検出の双方を利用して発生源寄与およびコピー数変異(CNV)を判定するアッセイシステムにさらに供されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、母体試料に対する胎児寄与率を判定するために使用される特定の多型について分析されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、CNVおよび感染因子の双方を同定するための1つ以上のアッセイにおいてさらに評価されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、DNA鎖の完全性、突然変異の頻度、マイクロサテライトの異常、および遺伝子のメチル化などのcfNAの定量的および定性的な腫瘍特異的変化を検出する1つ以上の方法によってさらに評価されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、例えば癌患者由来の試料中の診断、予後、およびモニタリングマーカーを検出するために、1つ以上の方法によってさらに評価されることができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、CNV検出とさらに組み合わせて、悪性腫瘍を有するまたは有する疑いがある患者における臨床診断、治療、転帰予測および進行モニタリングを支援する方法を提供することができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、例えば、cfDNAの検出と1つ以上の単一遺伝子におけるSNPまたは突然変異の検出との組み合わせを使用して、移植患者の臓器の健康をモニタリングするのに適した1つ以上のアッセイ系でさらに評価されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、コピー数変異(CNV)、挿入、欠失、転座、多型および突然変異を含む、試料中の遺伝的特徴を検出するための方法にさらに供されることができる。いくつかの実施形態では、単離された1つ以上のcfNAおよび/または精製された1つ以上のcfNAのいずれか1つ以上の濃度が判定されることができる。いくつかの実施形態では、濃度は、分子バーコード化によって判定されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、ctDNA検出指数の使用を含む分析にさらに供されることができる。いくつかの実施形態では、単離されたcfNAおよび/または精製されたcfNAは、腫瘍由来SNVについてさらに分析されることができる。いくつかの実施形態では、単離された1つ以上のcfNAおよび/または精製された1つ以上のcfNAの濃度が測定されることができる。いくつかの実施形態では、ステップb.の試料の試料体積は、0.25mL以下、0.25mL以上、0.5mL以上、0.75mL以上、1.0mL以上、2.5mL以上、5.0mL以上、7.5mL以上、10.0mL以上、12.5mL以上、15.0mL以上とすることができる。いくつかの実施形態では、cfNAは、1つ以上の癌性細胞に由来するcfNAを含むことができる。
【0009】
さらにまた、本開示は、一般に、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の1つ以上のゲノム領域における胎児源による発生源寄与および胎児のコピー数多型(CNV)の存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、母体試料からcfNA、例えば、cfDNAを単離および/または精製して、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1のゲノム領域における少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー領域を含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2のゲノム領域における少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー領域を含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;e.ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットをライゲーションして第1のゲノム領域に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットをライゲーションして第2のゲノム領域に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと;f.ユニバーサルプライマー領域を使用して隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと;g.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域からの各遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して増幅生成物を検出するステップと;h.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、多型の有益な遺伝子座における母体源に対する胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップとを含む、アッセイに関する。
【0010】
さらに、本開示は、一般に、単一のアッセイを使用して、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の胎児源による発生源寄与および胎児の異数性の存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、母体試料からcfNA、例えば、cfDNAを単離および/または精製して、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1の染色体に対応する少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;c.(i)2つ以
上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2の染色体に対応する少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;e.ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットをライゲーションして第1の染色体上の遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットをライゲーションして第2の染色体上の遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと;f.隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと;g.第1の染色体上の各遺伝子座、第2の染色体上の各遺伝子座、および各有益な遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して増幅生成物を検出するステップと;h.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、多型の有益な遺伝子座における母体源に対する胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップとを含む、アッセイに関する。
【0011】
さらにまた、本開示は、一般に、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の1つ以上のゲノム領域における胎児源による発生源寄与および胎児CNVの存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、母体試料からcfNA、例えば、cfDNAを単離および/または精製して、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1のゲノム領域における24以上の遺伝子座の領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2のゲノム領域における24以上の遺伝子座の領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと;d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;e.(i)架橋性オリゴヌクレオチドを(ii)単離された母体試料および/または精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、架橋性オリゴヌクレオチドが、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットに相補的な領域間の遺伝子座の領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと;f.固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットと架橋性オリゴヌクレオチドをライゲーションして第1のゲノム領域における遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットと架橋性オリゴヌクレオチドをライゲーションして第2のゲノム領域に関連する遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと;g.隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと;h.第1のゲノム領域における各遺伝子座および第2のゲノム領域における各遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して増幅生成物を検出するステップと;i.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、多型の有益な遺伝子座における母体源に対する胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップとを含む、アッセイに関する。
【0012】
さらに、本開示は、一般に、胎児のコピー数多型の統計的尤度を提供するためのアッセイ方法であって、母体および胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供することと;ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記無細胞DNAを単離および/または精製することと;第1の標的ゲノム領域における遺伝子座に相補的な領域を含む少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、第1の標的ゲノム領域から少なくとも48の非多型遺伝子座を調査することであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの1つが、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと;第2の標的ゲノム領域における遺伝子座に相補的な領域を含む少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、第2の標的ゲノム領域から少なくとも48の非多型遺伝子座を調査することであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの1つが、第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと;ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションすることと;ライゲーションした固定配列オリゴヌクレオチドを増幅してアンプリコンを形成することと;制限部位においてアンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成することであって、切断された各アンプリコンが、第1の捕捉領域および第1の標識結合領域または第2の標識結合領域を含む、形成することと;第1の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含むアレイに切断されたアンプリコンの第1の捕捉領域のハイブリダイゼーションを介して、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンを検出することであって、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンが第1の捕捉領域に相補的な捕捉プローブに対して競合的にハイブリダイズする、検出することと;第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの調査された非多型遺伝子座の相対頻度を判定するために、切断されたアンプリコンの捕捉領域を定量化することと;第1の標識結合領域および第2の標識結合領域の判定された相対頻度に基づいて、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の相対頻度を推定することと;各多型遺伝子座について少なくとも3つの固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域とは異なる少なくとも1つの標的ゲノム領域から少なくとも48の多型遺伝子座を調査することであって、各セットの少なくとも3つの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのうちの2つが、多型遺伝子座の1つの対立遺伝子に相補的な配列、各多型遺伝子座に特異的な捕捉領域、多型遺伝子座における各対立遺伝子の異なる標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと;ハイブリダイズした固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをライゲーションすることと;ライゲーションした固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを増幅して、対立遺伝子特異的アンプリコンを形成することと;制限部位において対立遺伝子特異的アンプリコンを切断して、切断された対立遺伝子特異的アンプリコンを形成することであって、切断された各対立遺伝子特異的アンプリコンが、多型遺伝子座特異的捕捉領域および対立遺伝子特異的標識結合領域を含む、形成することと;切断された対立遺伝子特異的アンプリコンの多型遺伝子座特異的捕捉領域の競合的ハイブリダイゼーションを介して、多型遺伝子座から切断された対立遺伝子特異的アンプリコンを検出し、アレイ上の領域を捕捉することと;試料中の胎児DNAの割合を判定するために、切断された対立遺伝子特異的アンプリコン上の各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、多型遺伝子座の対立遺伝子を定量化することと;胎児DNAの割合を判定することと;試料中の第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の推定された相対頻度と胎児DNAの割合とを使用して、母体試料中の胎児のコピー数多型の統計的尤度を計算することとを含む、アッセイ方法に関する。
【0013】
さらにまた、本開示は、一般に、胎児異数性の尤度を判定するためのアッセイ方法であって、母体および胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供するステップと;ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記無細胞DNAを単離および/または精製し、それにより、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離された母体試料および/または精製された母体試料中の第1の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座に相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第1のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離された母体試料および/または精製された母体試料中の第2の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座に相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第2のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離された母体試料および/または精製された母体試料中の多型遺伝子座のセットに相補的な3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第3のセットを導入するステップであって、各セットの3つの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つが、ユニバーサルプライマー部位、多型遺伝子座における1つの対立遺伝子に相補的な配列、多型遺伝子座における各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域、2つの制限部位、および多型遺伝子座特異的捕捉領域を含み、各多型遺伝子座についての捕捉領域が他の全ての多型遺伝子座についての捕捉領域とは異なり、第1の捕捉領域とは異なる、導入するステップと;固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットを第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域ならびに多型遺伝子座にハイブリダイズするステップと;第1のセット、第2のセットおよび第3のセットのハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを伸長して、隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドを形成するステップと;第1のセット、第2のセットおよび第3のセットのハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーション生成物を形成するステップと;ユニバーサルプライマー部位を使用してライゲーション生成物を増幅して多型遺伝子座に対応するアンプリコンを形成するステップと;制限部位においてアンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成するステップであって、切断された各アンプリコンが、1つの捕捉領域および1つの標識結合領域を含む、形成するステップと;切断されたアンプリコンをアレイに適用するステップであって、アレイが、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコン上の第1の捕捉領域に相補的な第1の捕捉プローブを含み、アレイが、各多型遺伝子座からの切断されたアンプリコン上の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含む、適用するステップと;第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンの第1の捕捉領域を、アレイ上の第1の捕捉プローブにハイブリダイズするステップと;多型遺伝子座からの切断されたアンプリコンの捕捉領域をハイブリダイズしてアレイ上のプローブを捕捉するステップと;ハイブリダイズした切断されたアンプリコンを検出するステップと;第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を定量化するステップと;切断されたアンプリコン上の各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、多型遺伝子座からの各対立遺伝子の相対頻度を定量化し、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと;第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を使用して胎児異数性の尤度を計算し、胎児異数性の尤度および判定された胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップとを含む、アッセイ方法に関する。
【0014】
さらに、本開示は、一般に、胎児異数性の尤度を判定するためのアッセイ方法であって、母体および胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供するステップと;ETPベースの単離および/または精製を行うことにより、前記無細胞DNAを単離および/または精製し、それにより、単離された母体試料および/または精製された母体試料を取得するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、母体試料中の第1の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座のセットに相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第1のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離された母体試料および/または精製された母体試料中の第2の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座のセットに相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第2のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと;各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離された母体試料および/または精製された母体試料中の多型遺伝子座のセットに相補的な3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの2つ以上の第3のセットを導入するステップであって、各セットの3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つが、ユニバーサルプライマー部位、多型遺伝子座における1つの対立遺伝子に相補的な配列、多型遺伝子座における各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域、2つの制限部位、および多型遺伝子座特異的捕捉領域を含み、各多型遺伝子座についての捕捉領域が、他の全ての多型遺伝子座についての捕捉領域とは異なり、第1の捕捉領域とは異なる、導入するステップと;固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセット、および第3のセットを、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域ならびに多型遺伝子座にハイブリダイズするステップと;第1のセット、第2のセットおよび第3のセットのハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを伸長して、各セットについて隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドを形成するステップと;第1のセット、第2のセットおよび第3のセットから隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーション生成物を形成するステップと;ユニバーサルプライマー部位を使用してライゲーション生成物を増幅してアンプリコンを形成するステップと;制限部位においてアンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成するステップであって、切断された各アンプリコンが、1つの捕捉領域および1つの標識結合領域を含む、形成するステップと;切断されたアンプリコンをアレイに適用するステップであって、アレイが、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコン上の第1の捕捉領域に相補的な第1の捕捉プローブを含み、アレイが、各多型遺伝子座からの切断されたアンプリコン上の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含む、適用するステップと;第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンの第1の捕捉領域を、アレイ上の第1の捕捉プローブにハイブリダイズするステップと;多型遺伝子座からの切断されたアンプリコンの捕捉領域をハイブリダイズして、アレイ上のプローブを捕捉するステップと;ハイブリダイズした切断されたアンプリコンを検出するステップと;切断されたアンプリコン上の各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、多型遺伝子座からの各対立遺伝子の相対頻度を定量化し、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと;母体遺伝子座がホモ接合であり且つ対応する胎児遺伝子座がヘテロ接合である定量化された対立遺伝子から低頻度対立遺伝子を同定することにより、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと;第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を定量化するステップと;第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および胎児の無細胞DNAの割合を使用して、胎児異数性の尤度を計算するステップとを含む、アッセイ方法に関する。
【0015】
さらにまた、本開示は、一般に、腫瘍由来SNVを同定する非侵襲的方法であって、(a)癌に罹患しているかまたは癌に罹患している疑いがある被験体から試料を取得することと;(b)ETPベースの単離および/または精製を実施して、標的核酸、例えばcfNA、例えばcNAを単離および/または精製して単離および/または精製試料を取得することと;(c)単離された試料および/または精製された試料に対してシーケンシング反応を行ってシーケンシング情報を生成することと;(d)ステップ(c)からのシーケンシング情報に基づいて候補腫瘍対立遺伝子のリストを形成するためにシーケンシング情報にアルゴリズムを適用することであって、候補腫瘍対立遺伝子が生殖系列SNPではない非優性塩基を含む、適用することと;(e)候補腫瘍対立遺伝子のリストに基づいて腫瘍由来SNVを同定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、候補腫瘍対立遺伝子は、候補SNVを含むゲノム領域を含むことができる。
【0016】
さらに、本開示は、一般に、疾患または症状に罹患している被験体の検出、診断、予後判定、または治療選択のための方法であって、(a)被験体に由来する無細胞DNA(cfDNA)試料の配列情報を取得することであって、cfDNA試料が、ETPベースの単離および/または精製を行うことによって単離および/または精製されることと;(b)(a)に由来する配列情報を使用して、試料中の無細胞非生殖細胞系DNA(cfNG-DNA)を検出することとを含み、本方法が、総cfDNAの2%未満または総cfDNAの約2%超とし得るcfNG-DNAの割合を検出することが可能となり得る、方法に関する。さらにまた、本開示は、一般に、ウイルス由来cfNAを同定する非侵襲的方法であって、(a)ウイルス感染症を有すると疑われる、またはウイルスに曝露されたと疑われる被験体から試料を取得することと;(b)ETPベースの単離および/または精製を実施して、標的cfNAを単離および/または精製して単離および/または精製試料を取得することと;(c)単離された試料および/または精製された試料に対してシーケンシング反応を行ってシーケンシング情報を生成することと;(d)シーケンシング情報に基づいて、被験体が1つ以上のウイルスに感染しているかどうかを判定することとを含む、方法に関する。さらに、本開示は、一般に、本明細書に記載の方法のいずれかのETPベースの単離および収集を行うための装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
図2A】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の平面図の概略図を提供している。図2Aにおいて、符号1~8は以下を指す:1.外側円形電極;2.終端電解液リザーバ;3.任意的にゲル内に含まれるか、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質;4.先行電解質電極/収集リザーバ;5.中央電極;6.電源;7.間に集束された試料イオンを有する電解質の先頭と終端との間の境界;および8.底部支持体;記号rおよびdは、それぞれ、LE/TE境界によって移動される先頭の電解質容器半径および距離を表すために使用される。
図2B】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の側面図の概略図を提供している。図2Bにおいて、符号1~8は以下を指す:1.外側円形電極;2.終端電解液リザーバ;3.任意的にゲル内に含まれるか、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質;4.先行電解質電極/収集リザーバ;5.対向電極;6.電源;7.間に集束された試料イオンを有する電解質の先頭と終端との間の境界;および8.底部支持体;記号rおよびdは、それぞれ、LE/TE境界によって移動される先頭の電解質容器半径および距離を表すために使用される。
図3】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
図4】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。図4において、符号1~10は以下を指す:1.外側円形電極;2.終端電解液リザーバ;3.任意的にゲル内に含まれるか、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質;4.先行電解質/収集リザーバへの開口部;5.対向電極;6.電源;7.間に集束された試料イオンを有する電解質の先頭と終端との間の境界;および8.底部支持体;9.先行電解質リザーバへの管接続装置;10.先行電解質リザーバ。
図5】先行電解質の装填と終端電解質の装填との間に試料が装填される、エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
図6A】エピタコフォレシスを行うための装置の概略図を提供しており、実施例2に記載された方程式について言及される。
図6B】定電流を使用してエピタコフォレシスのための例示的な装置(図6A)が動作されるときのcmの移動距離d対距離dにおける相対速度を表すグラフを提供している。図6Bに示す例では、半径値5および開始速度値1が使用された。
図6C】定電圧を使用してエピタコフォレシスのための例示的な装置(図6A)が動作されるときのcmの移動距離d対距離dにおける相対速度を表すグラフを提供している。図6Cに示す例では、半径値5および開始速度値1が使用された。
図6D】定電力を使用してエピタコフォレシスのための例示的な装置(図6A)が動作されるときのcmの移動距離d対距離dにおける相対速度を表すグラフを提供している。図6Dに示す例では、半径値5および開始速度値1が使用された。
図7】実施例3にしたがって試料を濃縮するために使用されたエピタコフォレシス装置の画像を提供している。
図8A】実施例4にしたがって使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図8B】実施例4にしたがって試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図8C】実施例4にしたがって試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図9A】実施例5にしたがって使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図9B】実施例5にしたがって使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の概略図を提供している。図9Bにおいて、符号は、ミリメートル単位の寸法を指す。
図9C】実施例5にしたがって試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図9D】実施例5にしたがって試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図10】実施例5にしたがって試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図11】実施例5にしたがって2つの異なる試料を分離して集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図12】実施例6にかかるエピタコフォレシスのための例示的な装置の画像を提供している。
図13A】実施例7にかかる例示的なエピタコフォレシス装置の画像を提供している。
図13B】実施例7にかかる例示的なエピタコフォレシス装置の概略図を提供している。「a」は中央収集ウェルに対応し、「b」は先頭の電解質リザーバに対応する。
図14A】実施例7にかかるエピタコフォレシス装置において使用するための例示的な導電率測定プローブの画像を提供している。
図14B図14Aに示す導電率測定プローブの拡大図を示す画像を提供している。
図15A】実施例7にかかる導電率プローブを有する例示的なエピタコフォレシス装置の画像を提供している。
図15B】実施例7にかかる例示的なエピタコフォレシス装置の実行のための導電率トレースを提供している。
図16A】実施例7にかかる、半透膜の下方に配置された導電率検出プローブを有する例示的なエピタコフォレシス装置の画像を提供している。
図16B】中心柱内の専用チャネルを介して接続された2つの導電率検出プローブを組み込んだ例示的な底部基材の画像を提供している。
図17A】実施例7にかかるフルオレセイン標識DNAラダー試料の集束を示す、例示的なエピタコフォレシス装置の画像を提供している。
図17B】実施例7にしたがってエピタコフォレシスを実行する前後の元の試料およびDNAラダー試料の収集された画分の吸光度スペクトルを提供している。
図17C】実施例7にしたがってエピタコフォレシスを実行する前後のDNAラダー試料の電気泳動に基づく分析からのデータを提供している。
図18】実施例8にかかるETP装置、および付属物の画像を提供している。a.は、ETP装置を示し、bは、ETP装置の長方形蓋を示し、c.は、ETP装置の円形蓋を示し、d.は、ETP装置の可動中央ピストンの位置を調整するために使用されるテフロン(登録商標)スティックを示している。
図19】実施例8にかかるETP実験設定の画像を提供している。
図20】実施例9にかかる1mLの血漿からのcfDNAの単離/精製の経時画像を提供している。
図21】実施例10にかかる、ETPベースの単離/精製とそれに続くビーズベースの浄化によって単離/精製されたcfDNAの濃度の(QUBITベースの)測定値を提供している。スピンカラムまたはビーズベースの方法によって単離/精製されたcfDNAの濃度の測定からのデータも提示されている。
図22】実施例11にかかるETPベースの単離/精製によるDNAラダーを添加した血漿試料から単離/精製されたcfDNAおよびDNAラダーのサイズベースの分析からのデータを提供している。
図23】実施例12にかかるETPベースの単離/精製による血漿試料から単離/精製されたcfDNAのサイズベースの分析からのデータを提供している。
図24】実施例13にかかるETPベースの単離/精製によって単離/精製されたcfDNAのサイズベースの分析からのデータを提供している。
図25】実施例14にかかるETPベースの単離/精製とそれに続くビーズベースの浄化によって単離/精製されたctDNAの濃度の測定値を提供している。スピンカラムベースの方法によって単離/精製されたctDNAの濃度の測定についてのデータも提示されている。
図26】実施例15にしたがってベクターを3つの制限酵素によって消化することによって生成されたETP上部マーカーの電気泳動に基づく分析からのデータを提供している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「a sell(細胞)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「the protein(タンパク質)」への言及は、当業者に知られている1つ以上のタンパク質およびその均等物などへの言及を含む。本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、特に明記しない限り、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0019】
「電界」という用語は、それを取り囲む空間または媒体の体積中の電子、イオン、またはプロトンなどの電荷の存在によって生じる効果を意味するために使用される。電荷の分布のそれぞれは、重畳に基づいて、ある点において電界全体に寄与する。空間の体積または周囲媒体に配置された電荷は、それに作用する力を有する。電圧の差によって電界が生成されることができ、電圧が高いほど、結果として生じる電界は強くなる。対照的に、電流が流れると磁界が生成されることができ、電流が大きいほど、磁界は強くなる。電流が流れていなくても電界が存在することができる。電界は、メートル当たりのボルト(V/m)で測定されることができる。いくつかの実施形態では、本方法および装置において荷電粒子を移動させるために、好都合な時間枠内で、電界強度は、約1mWから約100Wの範囲の電力で約10Vから約10kVとすることができる。いくつかの実施形態では、最も速い分析に適用される最大電力は、試料および電解質溶液の電気抵抗率、ならびに本明細書に記載の装置の構築に使用されることができる材料の冷却能力に依存することができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「等速電気泳動」という用語は、一般に、電界を使用して材料間(例えば、荷電粒子と溶液中の他の材料との間)の境界または界面を形成することによる荷電粒子の分離を指す。ITPは、一般に、複数の電解質を使用し、試料イオンの電気泳動移動度は、ITPのための装置に配置された先行電解質(LE)の電気泳動移動度よりも小さく、後行電解質(TE)の電気泳動移動度よりも大きい。先行電解質(LE)は、一般に、比較的高い移動度のイオンを含有し、後行電解質(TE)は、一般に、比較的低い移動度のイオンを含有する。TEおよびLEイオンは、目的の標的分析物イオンよりもそれぞれ低いおよび高い有効移動度を有するように選択される。すなわち、分析物イオンの実効移動度は、TEよりも高く、LEよりも低い。これらの標的分析物は、LEおよびTEイオン(すなわち、共イオン)と同じ電荷の符号を有する。印加された電界は、LEイオンをTEイオンから遠ざけ、TEイオンを後方に引き寄せる。移動界面は、隣接および連続するTEゾーンとLEゾーンとの間に形成される。これは、(典型的にはLEの低電界からTEの高電界までの)電界勾配の領域を形成する。TE中の分析物イオンは、TEイオンを追い越すが、LEイオンを追い越すことができず、TEとLEとの間の
界面に蓄積することができる(「集束」または「集束ゾーン」を形成する)。あるいは、LE中の標的イオンは、LEイオンによって追い越され、界面にも蓄積する。LEおよびTE化学の賢明な選択により、ITPは、かなり一般的に適用可能であり、TEおよびLE電解質のいずれかまたは双方に最初に溶解した試料によって達成されることができ、非常に低い電気伝導率のバックグラウンド電解質を必要としなくてもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「エピタコフォレシス」という用語は、一般に、本明細書に記載の円形/同心および/または多角形装置の使用などによって、円形または回転楕円形および/または同心装置および/または円形および/または同心電極構成を使用して実行される電気泳動分離の方法を指す。エピタコフォレシス中に使用される円形/同心または別の多角形の配置に起因して、従来の等速電気泳動装置とは異なり、断面積は、イオンおよびゾーンの移動中に変化し、ゾーン移動の速度は、断面積の変化に起因して時間的に一定ではない。したがって、エピタコフォレシス構成は、ゾーンが一定の速度で移動する従来の等速泳動の原理に厳密にしたがわない。本明細書に示されるこれらの有意差にもかかわらず、エピタコフォレシスは、異なる電気泳動移動度を有することができる材料間(例えば、荷電粒子と溶液中の他の材料との間)の境界または界面を形成するために電界を使用することによって荷電粒子を効率的に分離および集束するために使用されることができる。LEおよびTEは、ITPを用いた使用について記載されているように、エピタコフォレシスにも使用されることができる。円形または回転楕円体装置アーキテクチャ、例えば、1つ以上の円形電極を含む装置が使用されることができる実施形態についての定電流、定電圧、および定電力下でのゾーンの移動の説明は、以下の実施例セクションに提示されている。例示的な実施形態では、エピタコフォレシスは、定電流、定電圧、および/または定電力を使用して行うことができる。例示的な実施形態では、変化する電流、変化する電圧、および/または変化する電力を使用して、エピタコフォレシスを行うことができる。例示的な実施形態では、エピタコフォレシスは、本明細書に記載されるようにエピタコフォレシスの基本原理が達成されることができるように、その形状が一般に円形または球状として説明されることができる装置および/または電極の配置の文脈内で達成されることができる。いくつかの実施形態では、エピタコフォレシスは、本明細書に記載されるようにエピタコフォレシスの基本原理が達成されることができるように、その形状が一般に多角形として説明されることができる装置および/または電極の配置の文脈内で達成されることができる。いくつかの実施形態では、エピタコフォレシスは、円形の形状に配置された電極および/または多角形の形状に配置された電極などの電極の任意の非線形の連続的な配置によって達成されることができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「インビトロ診断用途(IVD用途)」、「インビトロ診断方法(IVD方法)」などの用語は、一般に、ヒト被験体、任意でヒト被験体の疾患の同定などの診断および/または監視目的で試料を評価することができる任意の用途および/または方法および/または装置を指す。例示的な実施形態では、前記試料は、被験体からの血液および/または血漿を含むことができる。例示的な実施形態では、前記試料は、被験体からの核酸および/または標的核酸を含むことができ、必要に応じて、さらに、前記核酸は、被験体からの血液および/または血漿に由来する。例示的な実施形態では、エピタコフォレシス装置は、インビトロ診断装置として使用されることができる。例示的な実施形態では、エピタコフォレシスによって濃縮/濃縮された標的分析物は、下流のインビトロ診断アッセイで使用されることができる。例示的な実施形態では、インビトロ診断アッセイは、核酸シーケンシング、例えばDNAシーケンシングを含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、インビトロ診断方法は、これらに限定されないが、以下のうちのいずれか1つ以上とすることができる:染色、免疫組織化学的染色、フローサイトメトリ、FACS、蛍光活性化液滴ソーティング、画像分析、ハイブリダイゼーション、DASH、分子ビーコン、プライマー伸長、マイクロアレイ、CISH、FISH、ファイバFISH、定量的FISH、フローFISH、比較ゲノムハイブリダイゼーション、
ブロッティング、ウエスタンブロッティング、サザンブロッティング、イースタンブロッティング、ファーウエスタンブロッティング、サウスウエスタンブロッティング、ノースウエスタンブロッティング、およびノーザンブロッティング、酵素アッセイ、ELISA、リガンド結合アッセイ、免疫沈降、ChIP、ChIP-seq、ChIP-ChiP、ラジオイムノアッセイ、蛍光偏光、FRET、表面プラズモン共鳴、フィルタ結合アッセイ、アフィニティクロマトグラフィ、免疫細胞化学、遺伝子発現プロファイリング、DNAプロファイリングPCR、DNAマイクロアレイ、遺伝子発現の連続分析、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、ディファレンシャルディスプレイPCR、RNA-seq、質量分光分析、DNAメチル化検出、音響エネルギー、リピドミックベースの分析、免疫細胞の定量化、癌関連マーカーの検出、特定の細胞型のアフィニティ精製、DNAシーケンシング、次世代シーケンシング、癌関連融合タンパク質の検出、および化学療法抵抗性関連マーカーの検出。
【0023】
本明細書で使用される場合、「先行電解質」および「先行イオン」という用語は、一般に、ITPおよび/またはエピタコフォレシス中に使用される目的の試料イオンおよび/または後行電解質のものと比較して、より高い有効電気泳動移動度を有するイオンを指す。例示的な実施形態では、カチオン性エピタコフォレシスで使用するための先行電解質は、これらに限定されないが、例えば、ヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどの適切な塩基によって所望のpHに緩衝された塩化物、硫酸塩および/またはギ酸塩を含むことができる。例示的な実施形態では、アニオン性エピフォレシスで使用するための先行電解質は、これらに限定されないが、酢酸塩またはギ酸塩とともにカリウム、アンモニウムおよび/またはナトリウムを含むことができる。いくつかの実施形態では、先行電解質の濃度の増加は、試料ゾーンの比例的な増加および所与の印加電圧に対する電流(電力)の対応する増加をもたらすことができる。典型的な濃度は、一般に、10~20mMの範囲とすることができる。しかしながら、より高い濃度が使用されてもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「後行電解質」、「後行イオン」、「終端電解質」、および「終端イオン」という用語は、一般に、ITPおよび/またはエピタコフォレシス中に使用される目的の試料イオンおよび/または先行電解質の電気泳動移動度と比較して、より低い有効電気泳動移動度を有するイオンを指す。例示的な実施形態では、カチオン性エピタフォレシスで使用するための後行電解質は、これらに限定されないが、MES、MOPS、酢酸塩、グルタミン酸塩、および弱酸および低移動度アニオンの他のアニオンを含むことができる。例示的な実施形態では、アニオン性エピトーフォレシスで使用するための後行電解質は、これらに限定されないが、エピトーフォレシス中に任意の弱酸によって形成される移動する境界における反応ヒドロキソニウムイオンを含むことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「集束ゾーン」という用語は、一般に、エピタコフォレシスを実施した結果として濃縮された(「集束された」)成分を含む溶液の体積を指す。集束ゾーンは、装置から収集または除去されてもよく、前記集束ゾーンは、富化および/または濃縮された量の所望の試料、例えば標的分析物、例えば標的核酸を含んでもよい。本明細書に記載のエピタコフォレシス方法では、標的分析物は、一般に、装置の中心、例えば、円形または回転楕円形または他の多角形の装置に集束される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「バンド」および「ETPバンド」という用語は、一般に、電気泳動(例えば、等速電気泳動またはエピタコフォレシス)移動中に他のイオン、分析物、または試料とは別個に移動するイオン、分析物、または試料のゾーン(例えば、集束ゾーン)を指す。エピタコフォレシス装置内の集束ゾーンは、代替的に「ETPバンド」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、ETPバンドは、1つ以上のタイプのイオン、分析物、および/または試料を含むことができる。いくつかの例では、ETPバンドは、試料中に存在する他の材料からの分離、例えば細胞残屑からの標的核酸の分離が望ましい単一の種類の分析物を含むことができる。いくつかの例では、ETPバンドは、2つ以上の所望の分析物、例えば配列が非常に類似したポリペプチドまたは核酸配列、例えば対立遺伝子変異体を含むことができる。いくつかの例では、ETPバンドは、同様のサイズまたは電気泳動移動度の異なる分析物、例えば長さ0~500bpの核酸を含むことができる。そのような場合、2つ以上の所望の分析物は、例えば前記2つ以上の分析物の分離を促進する異なる条件下で、さらなるETP操作によって分離されてもよく、および/または前記2つ以上の分析物は、本明細書に記載されるものなどの分析物の分離のための当該技術分野において公知の他の技術によって分離されてもよい。いくつかの実施形態では、ETPバンドは、収集され、必要に応じて、1つ以上のETPベースの単離および収集後にさらなる分析に供することができる。いくつかの実施形態では、ETPバンドは、例えばETP実行の一部として、ETPベースの単離/精製および必要に応じて収集を受けているまたは受けた1つ以上の標的分析物を含むことができる。
【0027】
用語「核酸」および「核酸分子」は、本開示を通して互換的に使用されることができる。この用語は、一般に、ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体など)のポリマーを指し、直鎖または分岐のいずれかで互いに共有結合したヌクレオチドを含む、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA-RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ペプチド核酸(PNA)、PNA-DNAコンジュゲート、PNA-RNAコンジュゲートなどを含む。核酸は、典型的には一本鎖または二本鎖であり、一般にホスホジエステル結合を含むが、場合によっては、例えば、ホスホラミド(Beaucageら(1993)Tetrahedron 49(10):1925)、ホスホロチオエート(Magら(1991)Nucleic Acids Res.19:1437;および米国特許第5,644,048号明細書)、ホスホロジチオエート(Briuら(1989)J.Am.Chem.Soc.111:2321)、O-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein、OligonucleotidesおよびAnalogues:A Practical Approach,Oxford University Press(1992)を参照のこと)、ならびにペプチド核酸骨格および結合(Egholm(1992)J.Am.Chem.Soc.114:1895)を含む代替の骨格を有することができる核酸類似体が含まれる。他の類似体核酸は、正に荷電した骨格を有するもの(Denpbcyら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6097)、非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号明細書、米国特許第5,637,684号明細書、米国特許第5,602,240号明細書、米国特許第5,216,141号明細書および米国特許第4,469,863号明細書)、ならびに例えば米国特許第5,235,033号明細書および米国特許第5,034,506号明細書に記載されているものを含む非リボース骨格を含む。1つ以上の炭素環糖を含有する核酸も核酸の定義に含まれ(Jenkinsら(1995)Chem.Soc.Rev.pp.169-176)、類似体も、例えば、Rawls、C 8c E News 1997年6月2日 ページ35に記載されている。リボース-リン酸骨格のこれらの修飾は、標識などのさらなる部分の付加を容易にするために、または生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を変化させるために行われることができる。
【0028】
核酸(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)に典型的に見られる天然に存在する複素環塩基に加えて、ヌクレオチド類似体はまた、例えばSeelaら(1999)Helv.Chim.Acta 82:1640に記載されているものなど、天然に存在しない複素環塩基を含むことができる。ヌクレオチド類似体に使用される特定の塩基は、融解温度(Tm)修飾因子として作用する。例えば、これらのいくつかは、7-デアザプリン(例えば、7-デアザグアニン、7-デアザアデニンなど)、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、プロピニル-dN(例えば、プロピニル-dU、プロピニル-dCなど)などを含む。例えば、米国特許第5,990,303号明細書を参照の
こと。他の代表的な複素環塩基は、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシンおよびキサンチンの8-アザ誘導体:アデニン、グアニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシンおよびキサンチンの7-デアザ-8-アザ誘導体;6-アザシチジン;5-フルオロシチジン;5-クロロシチジン;5-ヨードシチジン;5-ブロモシチジン;5-メチルシチジン;5-プロピニルシチジン;5-ブロモビニルウラシル;5-フルオロウラシル;5-クロロウラシル;5-ヨードウラシル;5-ブロモウラシル;5-トリフルオロメチルウラシル;5-メトキシメチルウラシル;5-エチニルウラシル;5-プロピニルウラシルなどを含む。
【0029】
核酸および核酸分子という用語はまた、一般に、オリゴヌクレオチド、オリゴ、ポリヌクレオチド、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、相補的DNA(cDNA)、細菌DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、RNA、メッセージRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、siRNA、触媒RNA、クローン、プラスミド、M13、PI、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、増幅核酸、アンプリコン、PCR生成物および他のタイプの増幅核酸、RNA/DNAハイブリッドおよびPNAを指すことができ、これらは全て、一本鎖または二本鎖の形態とすることができ、特に限定されない限り、天然由来のヌクレオチドと同様の機能を果たすことができる天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびにそれらの組み合わせおよび/または混合物を包含する。したがって、用語「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドトリ、ジ、およびモノホスフェートと、ポリ核酸またはオリゴヌクレオチド内に存在するモノホスフェートモノマーとを含む、天然ヌクレオチドおよび修飾/非天然ヌクレオチドの双方を指す。ヌクレオチドはまた、リボ;2’-デオキシ;2’,3’-デオキシ、ならびに当該技術分野においてよく知られている無数の他のヌクレオチド模倣物であってもよい。模倣物は、3’-O-メチル、ハロゲン化塩基または糖置換などの鎖終結ヌクレオチド;非糖、アルキル環構造を含む代替糖構造;イノシンを含む代替塩基;デアザ修飾;カイ(chi)、およびプシー(psi)、リンカー修飾;質量標識修飾;ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、アミド、エステル、エーテルを含むホスホジエステル修飾または置換;および光開裂性二トロフェニル部分などの開裂結合を含む、塩基のまたは完全なインターヌクレオチド置換を含む。
【0030】
「ヌクレオシド」は、糖部分(リボース糖またはデオキシリボース糖)、糖部分の誘導体、または糖部分の機能的等価物(例えば、炭素環式環)に共有結合した塩基または塩基性基(少なくとも1つの単環式環、少なくとも1つの複素環式環、少なくとも1つのアリール基などを含む、および/または)を指す。例えば、ヌクレオシドが糖部分を含む場合、塩基は、典型的には、その糖部分の1’-位に連結される。上述したように、塩基は、天然に存在する塩基または天然に存在しない塩基とすることができる。例示的なヌクレオシドは、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデオキシリボヌクレオシドおよび炭素環ヌクレオシドを含む。
【0031】
「プリンヌクレオチド」は、プリン塩基を含むヌクレオチドを指すのに対して、「ピリミジンヌクレオチド」は、ピリミジン塩基を含むヌクレオチドを指す。
【0032】
「修飾ヌクレオチド」は、稀なまたは少ない核酸塩基、ヌクレオチドおよび修飾、誘導体、または従来の塩基もしくはヌクレオチドの類似体を指し、修飾された塩基部分および/または修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチドを含む(Protocols for Oligonucleotide Conjugates,Methods in Molecular Biology,Vol.26(Suhier Agrawal,
Ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,(1994));およびOligonucleotides and Analogues,A Practical Approach(Fritz Eckstein,Ed.,IRL Press,Oxford University Press,Oxfordを参照のこと)。
【0033】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは、ホスホジエステル結合またはその類似体によって結合された天然または修飾ヌクレオシドモノマーの線状オリゴマーを指す。オリゴヌクレオチドは、標的核酸に特異的に結合することができる、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらのアノマー形態、PNAなどを含む。通常、モノマーは、ホスホジエステル結合またはそのアナログによって結合され、数個のモノマー単位(例えば3~4個)から数十個のモノマー単位(例えば40~60個)までのサイズのオリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチドが「ATGCCTG」などの文字の配列で表される場合、特に断りのない限り、ヌクレオチドは、左から右へ5’-3’の順序であり、「A」はデオキシアデノシンを、「C」はデオキシシチジンを、「G」はデオキシグアノシンを、「T」はデオキシチミジンを、「U」はリボヌクレオシドであるウリジンを示すことが理解されるであろう。通常、オリゴヌクレオチドは、4種類の天然デオキシヌクレオチドを含むが、リボヌクレオシドまたは非天然ヌクレオチドアナログも含むことができる。酵素が活性のための特定のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質要件(例えば一本鎖DNA、RNA/DNA二本鎖など)を有する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質の適切な組成の選択は、十分当業者の知識の範囲内である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチドプライマー」または単に「プライマー」は、標的核酸テンプレート上の配列にハイブリダイズし、標的核酸の検出または増幅を容易にするポリヌクレオチド配列を指す。本発明の増幅プロセスにおいて、オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸合成の開始点として機能する。非増幅プロセスにおいては、オリゴヌクレオチドプライマーが使用されて、切断剤によって切断されることが可能な構造を形成することができる。プライマーの長さは様々とすることができ、多くの場合、50ヌクレオチド長未満、例えば12~25ヌクレオチド長である。PCRに使用するためのプライマーの長さおよび配列は、当業者にとって既知の原理に基づいて設計されることができる。
【0035】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチドプローブ」とは、目的の標的核酸にハイブリダイズしたりアニーリングしたりすることができ、且つ標的核酸の特異的検出を可能にするポリヌクレオチド配列を指す。
【0036】
核酸は、例えば核酸の3’末端に生体触媒を組み込むヌクレオチドによって、さらなるヌクレオチドが核酸に組み込まれる場合、「伸長される」または「細長にされる」。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」および「アニーリング」などの用語は互換的に使用され、典型的にはハイブリダイゼーション複合体と呼ばれる二重鎖または他の高次構造の形成をもたらす、あるポリヌクレオチドと別のポリヌクレオチド(典型的には逆平行ポリヌクレオチド)との塩基対合相互作用を指す。逆平行ポリヌクレオチド分子間の一次相互作用は、典型的には、ワトソン/クリックおよび/またはフーグスティーン型水素結合による塩基特異的、例えばA/TおよびG/Cである。ハイブリダイゼーションを達成するために、2つのポリヌクレオチドがそれらの全長にわたって100%の相補性を有することは必要条件ではない。いくつかの態様では、ハイブリダイゼーション複合体は、分子間相互作用から形成することができ、あるいは分子内相互作用から形成することができる。
【0038】
「相補的」という用語は、1つの核酸が別の核酸分子と同一であるか、またはそれに選択的にハイブリダイズすることを意味する。ハイブリダイゼーションの選択性は、特異性の完全な欠如よりも選択的なハイブリダイゼーションが起こるときに存在する。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14~25ヌクレオチド、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%のストレッチにわたって少なくとも約55%の同一性がある場合に起こる。好ましくは、一方の核酸は、他方の核酸に特異的にハイブリダイズする。M.Kanehisa,Nucleic Acids Res.12:203(1984)を参照のこと。
【0039】
「完全に相補的」であるプライマーは、プライマーの全長にわたって完全に相補的な配列を有し、ミスマッチを有しない。プライマーは、典型的には、標的配列および/または標的核酸の一部(部分配列)に完全に相補的である。「ミスマッチ」とは、プライマー中のヌクレオチドと、それがアラインメントされる標的核酸中のヌクレオチドとが相補的でない部位を指す。「実質的に相補的」という用語は、プライマーに関して使用される場合、プライマーがその標的配列と完全には相補的でないことを意味する。代わりに、プライマーは、所望のプライマー結合部位においてそのそれぞれの鎖に選択的にハイブリダイズするのに十分に相補的であるにすぎない。
【0040】
本明細書で使用される「標的核酸」という用語は、その存在が検出、測定、増幅され、および/またはさらなるアッセイおよび分析の対象となる任意の核酸を意味することを意図している。標的核酸は、任意の一本鎖および/または二本鎖核酸を含むことができる。標的核酸は、単離された核酸断片として存在することができるか、またはより大きな核酸断片の一部とすることができる。標的核酸は、培養微生物、未培養微生物、複合生物学的混合物、生物学的試料、組織、血清、古いまたは保存された組織または試料、環境単離株などの本質的に任意の供給源から誘導または単離されることができる。さらに、標的核酸は、cDNA、RNA、ゲノムDNA、クローニングされたゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリ、酵素的に断片化されたDNAもしくはRNA、化学的に断片化されたDNAもしくはRNA、物理的に断片化されたDNAもしくはRNAなどを含むか、またはそれらに由来する。例示的な実施形態では、標的核酸は、全ゲノムを含むことができる。例示的な実施形態では、標的核酸は、試料および/または生物学的試料の核酸含有量全体を含むことができる。例示的な実施形態では、標的核酸は、循環または無細胞DNA、例えば、癌を有する個体に存在する循環腫瘍DNA(「ctDNA」)または妊婦の血漿もしくは血清中に存在する循環胎児もしくは循環母体DNA(「cfDNA」)断片を含むことができる。標的は、例えば単純もしくは複雑な混合物または実質的に精製された形態を含む、様々な異なる形態になることができる。例えば、標的は、他の成分を含有する試料の一部であっても、または試料の唯一のもしくは主要な成分であってもよい。また、標的核酸は、既知または未知の配列のいずれかを有することができる。
【0041】
用語「増幅反応」とは、核酸の標的配列のコピーを増幅するための任意のインビトロの手段を意味する。
【0042】
用語「増幅」および「増幅」などは、一般に、分子または関連分子のセットのコピー数の増加をもたらす任意のプロセスを指す。増幅反応の成分は、これらに限定されないが、例えば、プライマー、ポリヌクレオチドテンプレート、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、dNTPなどを含む。用語「増幅」は、典型的には、標的核酸の「指数関数的」増加を指す。しかしながら、本明細書で使用される「増幅」は、核酸の選択された標的配列の数の線形増加を指すこともできる。増幅は、典型的には、増幅された物質が典型的には検出可能である少量の標的核酸(例えば、標的核酸の単一コピー)から始まる。標的核酸の増幅は、様々な化学的および酵素的プロセスを包含する。1コピーまたは数コピーの標的核酸からの複数のDNAコピーの生成は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ホットスタートPCR、鎖置換増幅(SDA)反応、転写増幅(TMA)反応、核酸配列に基づく増幅(NASBA)反応、またはリガーゼ連鎖反応(LCR)によって行われることができる。増幅は、出発標的核酸の厳密な重複に限定されない。例えば、RT-PCRを用いた試料中の限られた量のウイルスRNAからの複数のcDNA分子の生成は、増幅の一形態である。さらにまた、転写プロセス中の単一のDNA分子からの複数のRNA分子の生成も増幅の一形態である。増幅の後に、必要に応じて、さらなるステップ、例えば、限定されないが、標識、シーケンシング、精製、単離、ハイブリダイゼーション、サイズ分割、発現、検出および/またはクローニングを行ってもよい。
【0043】
本明細書で使用される「標的微生物」という用語は、血液、血漿、他の体液、生物学的試料などの試料、および/または組織、例えば感染症状または疾患に関連するものに見られる任意の単細胞または多細胞微生物を意味することを意図している。その例は、細菌、古細菌、真核生物、ウイルス、酵母、真菌、原虫、アメーバおよび/または寄生生物を含み、微生物によって引き起こされる疾患およびそのような疾患を引き起こすことができる微生物のさらなる例は、以下の表1に見出すことができる。したがって、「微生物」という用語は、一般に、疾患が言及されているかまたは疾患を引き起こす微生物が言及されているかにかかわらず、疾患を引き起こすことができる微生物を指す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【0044】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」または「目的のバイオマーカー」という用語は、正常もしくは異常な過程、または状態もしくは疾患(癌など)の徴候である血液、血漿、他の体液および/または組織に見られる生物学的分子を指す。バイオマーカーが使用されて、身体が疾患または症状の治療にどの程度よく応答するかを確認することができる。癌の文脈において、バイオマーカーは、体内の癌の存在を示す生体物質を指す。バイオマーカーは、腫瘍によって分泌される分子、または癌の存在に対する身体の特異的応答とすることができる。遺伝子バイオマーカー、エピジェネティックバイオマーカー、プロテオミクスバイオマーカー、グリコームバイオマーカーおよびイメージングバイオマーカーは、癌の診断、予後診断および疫学のために使用されることができる。そのようなバイオマーカーは、血液または血清などの非侵襲的に収集された生体流体でアッセイされることができる。AFP(肝臓癌)、BCR-ABL(慢性骨髄性白血病)、BRCA1/BRCA2(乳癌/卵巣癌)、BRAF V600E(黒色腫/結腸直腸癌)、CA-125(卵巣癌)、CA19.9(膵臓癌)、CEA(結腸直腸癌)、EGFR(非小細胞肺癌)、HER-2(乳癌)、KIT(消化管間質腫瘍)、PSA(前立腺特異的抗原)(前立腺癌)、S100(黒色腫)などを含むがこれらに限定されないいくつかの遺伝子およびタンパク質ベースのバイオマーカーが既に患者ケアに使用されている。バイオマーカーは、診断薬(初期癌を同定するため)および/または予後診断薬(癌がどの程度侵攻性であるかを予測するため、および/または被験体が特定の治療にどのように応答するかおよび/または癌がどの程度再発する可能性があるかを予測するため)として有用とすることができる。目的のバイオマーカーは、これらに限定されないが、AKAP4、ALK、APC、AR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CD274、CDK4、CDK6、CFB、CFH、CFI、DKK1、DPYD、EDNRB、EGFR、ERBB2、EPSTI1、ESR1、FCRL5、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FN14、HER2、HER4、HERC5、IDH1、IDH2、IDO1、KIF5B、KIT、KRAS、LGR5、LIV1、LY6E、LYPD3、MACC1、MET、MRD、MSI、MSLN、MUC16、MYC、NaPi3b、NRAS、PDGFRA、PDCD1LG2、RAF1、RNF43、NTRK1、NTSR1、OX40、PIK3CA、RET、ROS1、Septin9、TERT、PFRC、TROP2、TP53、TWEAKおよびUGT1A1などの腫瘍バイオマーカーを含む。
【0045】
目的のさらなる例示的なバイオマーカーは、Her2、bRaf、ERBB2増幅、Pl3KCA突然変異、FGFR2増幅、p53突然変異、BRCA突然変異、CCND1増幅、MAP2K4突然変異、ATR突然変異、またはその発現が特定の癌と相関がある任意の他のバイオマーカー;AFP、ALK、BCR-ABL、BRCA1/BRCA2、BRAF、V600E、Ca-125、CA19.9、EGFR、Her-2、KITPSA、S100、KRAS、ER/Pr、UGT1A1、CD30、CD20、F1P1L1-PDGRFα、PDGFR、TMPT、およびTMPRSS2のうちの少なくとも1つ;または、ABCB5、AFP-L3、アルファフェトプロテイン、アルファメチルアシルCoAラセマーゼ、BRCA1、BRCA2、CA15-3、CA242、Ca27-29、CA-125、CA15-3、CA19-9、カルシトニン、癌胎児性抗原、癌胎児性抗原ペプチド-1、デス-癌マカルボキシプロトロンビン、デスミン、初期前立腺癌抗原-2、エストロゲン受容体、フィブリン分解生成物、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、vE6などのHPV抗原、E7、L1、L2またはp16INK4aヒト絨毛性ゴナドトロピン、IL-6、ケラチン19、乳酸塩デヒドロゲナーゼ、ロイシルアミノペプチダーゼ、リポトロピン、メタネフリン、ネプリリジン、NMP22、ノルメタネフリン、PCA3、前立腺特異的抗原、前立腺酸ホスファターゼ、シナプトTNF、ERG、ETV1(ER81)、FLI1、ETS1、ETS2、ELK1、ETV6(TEL1)、ETV7(TEL2)、GABPα、ELF1、ETV4(E1AF;PEA3)、ETV5(ERM)、ERF、PEA3/E1AF、PU.1、ESE1/ESX、SAP1(ELK4)、ETV3(METS)、EWS/FLI1、ESE1、ESE2(ELF5)、ESE3、PDEF、NET(ELK3;SAP2)、NERF(ELF2)、またはFEV.XXX、腫瘍関連糖タンパク質72、c-kit、SCF、pAKT、pc-kitおよびVimentinから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含むことができる。代替的に、または追加的に、目的のバイオマーカーは、これらに限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TIM3、GAL9、GITR、LAG3、VISTA、KIR、2B4、TRPO2、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、TL1AおよびB-7ファミリーリガンドまたはそれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤とすることができ、あるいは、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせである。さらなる例示的なバイオマーカーは、これらに限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(etv6、am11、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig-イディオタイプ)、神経膠腫(E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120 ctn)、膀胱癌(p21ras)、胆管癌(p21ras)、乳癌(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、頸部癌(p53、p21ras)、結腸癌(p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、肝細胞癌(α-フェトタンパク質)、ホジキンリンパ腫(Imp-1、EBNA-1)、肺癌(CEA、MAGE-3、NY-ESO-1)、リンパ系細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、Melan-A/MART-1、cdc27、MAGE-3、p21ras、gp100.sup.Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺癌(HER2/neu、c-erbB-2)、鼻咽頭癌(Imp-1、EBNA-1)、卵巣癌(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、前立腺癌(前立腺特異抗原(PSA)およびその抗原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、腎癌(HER2/neu、c-erbB-2)、頸部および食道の扁平上皮癌(ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス生成物)、精巣癌(NY-ESO-1)、および/またはT細胞白血病(HTLV-1エピトープ)に関連する任意の1つ以上のバイオマーカーを含むことができる。
【0046】
本明細書で使用される用語「試料」は、核酸および/または標的核酸を含む検体または培養物(例えば、微生物培養物)を含む。「試料」という用語はまた、生物学的、環境的、および化学的試料、ならびに分析が所望される任意の試料を含むことを意味する。試料は、合成起源の検体を含むことができる。試料は、1つ以上の微生物が由来することができる任意の供給源からの1つ以上の微生物を含むことができる。生物学的試料は、これらに限定されないが、全血、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、髄液、洗浄液(例えば、気管支肺胞上皮、胃、腹膜、管、耳、関節鏡視下)、生検試料、尿、糞便、痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、涙液、汗、母乳、母体液、胚細胞、および胎児細胞を含むことができる。生物学的試料は、血液であってもよく、血漿であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「血液」は、一般的な定義のとおり、全血または血液の任意の画分(血清および血漿など)を包含する。血漿とは、抗凝固剤で処理した血液の遠心分離から生じる全血の画分をいう。血清とは、血液試料が凝固した後に残った体液の水様性部分をいう。環境試料は、表面物質、土壌、水および工業試料などの環境物質、ならびに食品および乳製品の加工機器、装置、器具、設備、用具、使い捨ておよび非使い捨てアイテムから得られた試料を含む。
【0047】
「代表的な」試料は、試料の異なる亜集団、例えば腫瘍内に含まれる癌細胞を含む試料を含むことができる。あるいは、「代表的な」試料は、正常および/または対照試料、例えば正常または対照細胞内の異なる亜集団を含んでもよく、または試験試料と正常/対照試料、例えば腫瘍細胞と正常細胞の混合試料をそれぞれ含んでもよい。さらに有利には、これらの代表的な試料は、従来の診断アッセイにおいて検体を使用する能力を損なうことなく、複数のアッセイ方法において使用されることができる。例示的な実施形態では、代表的な試料は、本明細書に記載の装置および方法を使用して、試料、例えば腫瘍細胞を含む試料を分析することによって生成されることができる。いくつかの実施形態では、代表的な試料は、本明細書に記載の装置および方法によって分析されることができる。さらに、本明細書に記載の装置および方法を使用して試料を分析することによって生成された代表的な試料は、試料、例えば腫瘍またはリンパ節内の試料のごく僅かな亜集団の存在を検出するために、いくつかの異なるアッセイ形式で同時に使用されることができる。
【0048】
本明細書で使用される「標的分析物」という用語は、その存在が検出、測定、分離、濃縮され、および/またはさらなるアッセイおよび分析の対象となる任意の分析物を意味す
ることを意図している。例示的な実施形態では、前記分析物は、任意のイオン、分子、核酸、バイオマーカー、細胞または細胞の集団、例えば所望の細胞などとすることができるが、これらに限定されず、さらなるアッセイにおけるその検出、測定、分離、濃縮および/または使用が望ましい。例示的な実施形態では、標的分析物は、本明細書に記載の試料のいずれかに由来することができる。
【0049】
「分析」という用語は、一般に、特性評価、試験、測定、最適化、分離、合成、添加、濾過、溶解、または混合を含む物理的、化学的、生化学的、または生物学的分析を含むプロセスまたはステップを指す。
【0050】
「化学物質」という用語は、物質、化合物、混合物、溶液、エマルジョン、分散液、分子、イオン、ダイマー、ポリマーまたはタンパク質などの高分子、生体分子、沈殿物、結晶、化学部分または基、粒子、ナノ粒子、試薬、反応生成物、溶媒、または流体を指し、そのいずれか1つが固体、液体、または気体の状態で存在してもよく、典型的には分析の対象である。
【0051】
「タンパク質」という用語は、一般に、通常は特定の配列で一緒に連結されたアミノ酸のセットを指す。タンパク質は、天然または人工のいずれかとすることができる。本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、糖、ポリマー、有機金属基、蛍光または発光基、分子内または分子間電子移動などのプロセスを増強または関与する部分または基、タンパク質が特定の立体配座または一連の立体配座をとるのを促進または誘導する部分または基、タンパク質の折り畳みを誘導、増強または阻害する特定の立体配座または一連の立体配座、部分または基をとるのを妨げるまたは阻害する部分または基、またはアミノ酸配列に組み込まれ、配列の化学的、生化学的または生物学的特性を改変することを意図した他の部分または基を含むように修飾されたアミノ酸配列を含む。本明細書で使用される場合、タンパク質は、これらに限定されないが、酵素、構造要素、抗体、ホルモン、電子キャリア、および細胞プロセスまたは活性などのプロセスに関与する他の高分子を含む。タンパク質は、典型的には、一次、二次、三次および四次構造を含む最大4つの構造レベルを有する。
【0052】
本開示の目的のために、層、領域、液体または基材などの所与の構成要素が、本明細書では別の構成要素「上に」、「内に」または「において」配置または形成されるものとして言及される場合、その所与の構成要素は、他の構成要素上に直接存在することができ、あるいは介在する構成要素(例えば、1つ以上のバッファ層、中間層、電極または接点)も存在することができることが理解されよう。「に配置される」および「に形成される」という用語は、所与の構成要素が別の構成要素に対してどのように配置または配置されるかを説明するために互換的に使用されることがさらに理解されよう。したがって、「に配置される」および「に形成される」という用語は、材料の移送、堆積、または製造の特定の方法に関するいかなる制限も導入することを意図していない。
【0053】
「連通」という用語は、本明細書では、2つ以上の構成要素または要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、光学的、熱的、または流体的関係、またはそれらの任意の組み合わせを示すために使用される。したがって、1つの構成要素が第2の構成要素と連通すると言われているという事実は、追加の構成要素が第1の構成要素と第2の構成要素との間に存在することができる、および/または第1の構成要素と第2の構成要素と動作可能に関連付けられもしくは係合されることができる可能性を排除することを意図するものではない。
【0054】
本明細書で使用される場合、「被験体」は、治療される哺乳動物被験体(例えば、ヒト、げっ歯類、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど。)および/または生物学的試料が得られる被験体を指す。
【0055】
「腫瘍」という用語は、それ自体が、通常は正常細胞よりも急速に増殖し、治療しなければ増殖し続ける細胞の異常な新たな増殖として定義され、隣接する構造に損傷をもたらすことがある塊または新生物を指す。腫瘍サイズは大きく異なり得る。腫瘍は、固体または流体充填とすることができる。腫瘍は、良性(癌性ではなく、一般に無害である)、前悪性(前癌性)または悪性(癌性)の増殖を指すことができる。癌性成長、前癌性成長、および癌性成長間の分割線は必ずしも明確ではないが(特に腫瘍がスペクトルの中央にある場合、どちらが任意とすることができるかを判定するときがある)、各タイプの成長の一般的な特性がある。良性腫瘍は、非悪性/非癌性腫瘍である。良性腫瘍は通常限局性であり、身体の他の部分には拡がらない(転移しない)。ほとんどの良性腫瘍は治療によく反応する。しかしながら、治療せずに放置すると、いくつかの良性腫瘍は大きく成長し、その大きさのために重篤な疾患につながる可能性がある。このようにして、良性腫瘍は悪性腫瘍を模倣することができ、したがって、時折治療される。前悪性または前癌性腫瘍はまだ悪性ではないが、そうなるように準備される。悪性腫瘍は癌性増殖である。それらは治療に抵抗性であることが多く、身体の他の部分に広がることがあり、除去後に再発することがある。「癌」は、悪性増殖(悪性腫瘍または新生物)の別の用語である。
【0056】
異なる腫瘍の毒性は様々である。特定の癌は、治療および/または治癒が比較的容易とすることができるが、他の癌はより侵攻性である。腫瘍毒性は、少なくとも部分的に、差次的な遺伝子発現によって判定されることができる。癌性細胞(前悪性および/または悪性腫瘍を含む細胞)では、細胞が遺伝子を活性化または無症状化することを可能にする機構が損傷される。結果として、他の組織および/または他の発生段階に特異的な遺伝子の異常な活性化がしばしば存在する。例えば、肺癌では、無症状でなければならない精子の産生に特異的な遺伝子を発現する腫瘍細胞は、極めて毒性である(増殖能力の増加および身体の免疫系から隠れる能力を示す高リスク癌)。また、ほとんど全ての癌において、生殖系列および胎盤の数十の特定の遺伝子が異常に活性化されることも示されている。例えば、Rousseauxら、Ectopic Activation of Germline and Placental Genes Identifies Aggressive Metastasis-Prone Lung Cancers.Science Translational Medicine(2013)5(186):186を参照のこと。したがって、遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションは、特定の癌の毒性形態に関連することができるため、診断段階において、腫瘍が適切に治療された場合であっても、その発症の初期段階において、どの癌が再発のリスクが高く、致命的な予後を有するかを予測することが可能である。
【0057】
「電気抵抗率」、「比抵抗」、または「体積抵抗率」としても知られる「抵抗率」は、当該技術分野において従来理解されているように使用され、一般に、その材料が電流の流れにどれだけ強く対抗するかを定量化する材料の特性を指す。低い抵抗率は、典型的には、電流の流れを容易に可能にすることができる材料を示す。抵抗率は、一般にギリシャ文字ρ(ロー)で表される。電気抵抗率のSI単位は、オームメートル(Ω・m)である。
【0058】
「電気伝導度」または「比コンダクタンス」としても知られる「導電率」は、一般に、電気抵抗率の逆数を指し、典型的には、電流を伝導する材料の能力を測定する。一般的にはギリシャ文字のσ(シグマ)で表されるが、κ(カッパ)(特に電気工学において)やγ(ガンマ)が用いられることもある。そのSI単位は、シーメンス/メートル(S/m)である。
【0059】
エピタコフォレシス装置、システムまたは機械の文脈内で試料を「検出すること」は、装置全体の1つ、いくつか、または多くの点でその位置を検出することを含むことができ
る。検出は、一般に、所望の装置、システム、または機械の機能、および前記装置、システム、または機械を使用して実行される方法に干渉しない任意の1つ以上の手段によって行われることができる。いくつかの実施形態では、検出は、例えば、導電率、抵抗率、電圧、電流などの検出による電気的検出の任意の手段を包含する。さらにまた、いくつかの実施形態では、検出は、電気的検出、熱的検出、光学的検出、分光学的検出、光化学的検出、生化学的検出、免疫化学的検出、および/または化学的検出のうちの任意の1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的分析物、例えばcfNAは、ETPベースの単離/精製および任意に前記1つ以上の標的分析物の収集中に検出されることができる。いくつかの実施形態では、ETPベースの分析中に任意の1つ以上の分析物が検出されることができる。
【0060】
「ロボット液体ハンドラ」または「液体ハンドラ」は、選択された量の試薬、試料または他の液体を指定された容器に分注する化学的または生化学的実験室における自動化のために使用されるロボットシステムである。いくつかのバージョンは、割り当てられた量の液体を電動式ピペッタまたはシリンジから分配することができる。いくつかのシステムはまた、ディスペンサおよび容器(多くの場合デカルト座標ロボット)の位置を操作し、および/またはマイクロプレートリーダ、ヒートシーラ、ヒータ/シェーカー、バーコードリーダ、分光光度または分離装置および機器、貯蔵装置、廃棄物容器およびインキュベータなどの追加の実験装置またはアドオンを統合することができる。電動式ピペットまたはシリンジに加えて、ロボット液体ハンドラはまた、試料ウェル用のトレイまたは試料バイアルを保持するためのトレイ、ピペッタに適合するピペットチップのトレイ、および溶媒の容器を有することができる。いくつかの実施形態では、本発明の装置、システム、および方法によって使用するための生物学的試料は、現在または将来開発されるロボット液体ハンドラにおいて一般に使用される試料ウェル、バイアル、または任意の他の試料容器内にあり得る。本明細書に記載の方法、装置、およびシステムは、デカルト3軸運動におけるピペットチップの位置を操作することができ、典型的にはアームによって実施され、マルチピペット機能を有するロボット液体ハンドラを使用することができる。人間の相互作用をさらに低減するために、ハンドラと一体化された分光光度計または分離機器を有することも望ましい。例示的なロボット液体ハンドラは、Hamilton(登録商標)Company製のMicrolab(登録商標)STARTM、STARlet、STARplus、VANTAGE液体処理システム(登録商標)、またはNIMBUS(登録商標);Agilent(登録商標)製のBravo自動液体処理プラットフォーム;Eppendorf(登録商標)製のepMotion(登録商標);Beckman Coulter(登録商標)製のBiomek(登録商標)4000、i5、i7、NXまたはFX;GilsonTM製のPIPETMAX(登録商標)、PIPETMAN(登録商標)、VERITY(登録商標)システム、またはASPEC(登録商標)システム;Tecan(登録商標)製のFluent(登録商標)、Freedom EVO(登録商標)、またはD300eデジタルディスペンサ;CTC Analytics製のPAL(登録商標)システム;またはGERSTEL(登録商標)製のMPSを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法またはシステムにおいて使用するための自動液体ハンドラは、ピペッティングを実行するように変更されることができるものである。液体ハンドラはまた、例えばシーケンシング、精製、および分離質量分析機器を含む様々な他のインビトロ診断方法および装置と統合されることができる。任意の市販のロボット液体ハンドラが使用および/または変更されて、本明細書に記載の試料分析のための装置、方法、およびシステム、例えばETPを行うために使用されるもの、例えば1つ以上の標的分析物のETPベースの単離/精製のための装置、方法、およびシステムと併せて機能することができる。
【0061】
「ピペットチップ」という用語は、技術用語であり、流体の正確なサンプリングおよび送達のために正確に設計された、本明細書で「ハブ」と呼ばれる大きな端部と、本明細書
で「送達チップ」と呼ばれる狭い端部とを有する円錐管を指す。ハブは、典型的には摩擦嵌合によって、ピペットまたはロボット液体ハンドラのバレルの上に嵌合する。チップハブの内径は、ピペットのバレルよりも僅かに大きくなければならず、チップの内側テーパもピペットバレルのテーパと一致しなければならない。手持ち式ピペッタおよびロボット式液体ハンドラシステムのほとんどの製造業者は、汎用チップを利用するピペッタを製造している。ハブは、ピペットチップの近位端に位置し、送達チップは、遠位端に位置する。ピペットチップは、ピペットのプランジャが押圧および解放されると真空が適用され、流体がピペットチップに引き込まれるように、気密にマイクロピペットのバレルに嵌合する。その流体は、プランジャを再び押し下げることによって、必要に応じて任意の容器に送達されることができる。いくつかのピペットチップは、ピペットチップのテーパではなく、ガスケットを使用してピペットのバレルに密封される。いくつかのロボットピペットチップは、摩擦嵌合されていないが、拡張可能なOリングを使用して、液体ピペッティングに必要な気密シールを形成する。したがって、ピペットチップは、異なるピペットに適合する様々なサイズで利用可能である。好ましくは、ピペットチップは、ハブの近くの外面に1つ以上のリッジを有し、リッジは、チップが孔の配列を有するプラットフォームに格納されることを可能にし、リッジは、円錐形のチップが孔の中に深く入り込みすぎて詰まるリスクを防止する。そのようなリッジは、ピペットチップにおいて一般的である。一般的なリッジ形式は、ピペットチップを完全に周回する環状リッジと、強度を提供し、孔上でチップを支持し、材料および重量も最小限に抑える複数の垂直フィンとを含む。組み合わせも一般的である。いくつかの実施形態では、リッジは、ハウジングのネック部にピペットチップを格納するために使用される。いくつかの実施形態では、当該技術分野において公知の任意の1つ以上の種類のピペットチップが、本明細書に記載の装置、方法、およびシステムとともに使用されて、所望の結果を生成することができる。
【0062】
「ロボットピペットチップ」という用語は、ハブの内側テーパがロボット液体ハンドラに適合するようなピペットチップである。最も頻繁には、ロボットピペットチップと手持ち式ピペット用のピペットチップとの間に差違はないが、場合によってはサイズの差違があり得る。「広口径ピペットチップ」は、その送達チップが、同様の体積サイズの標準的な従来のピペットチップまたはロボットピペットチップよりも広いオリフィスを有するピペットチップである。典型的には、遠位端オリフィスは、標準的なチップよりもはるかに大きい。広口径ピペットチップは、標準的なピペッタまたはロボット液体ハンドラに適合することができるハブを有することができる。「フィルタピペットチップ」という用語は、標準またはロボットのいずれかのピペットチップであって、狭い開口部の近くの遠位(底)端部に位置するフィルタ、スクリーンまたはフリットを有するように変更されたピペットチップを指す。フィルタピペットチップは、任意に、基材、吸着剤、バリア、またはそれらの組み合わせ、および任意にガスケットを含むことができる。「チップオンチップ」という用語は、第2の「下部」ピペットチップの内側に取り付けられた「上部」ピペットチップの構成を指す。上部ピペットチップは、典型的には、標準または広口径ピペットチップであり、下部ピペットチップは、任意の基質、吸着剤、バリア、またはそれらの組み合わせを有するフィルタピペットチップである。上部ピペットチップは、広い孔である必要はないが、広い孔は、固体粒子状物質を含有するおよび/または粘性である試料溶液の混合を可能にする。いくつかの実施形態では、当該技術分野において公知の任意の1つ以上の種類のロボットピペットチップが、本明細書に記載の装置、方法、およびシステムとともに使用されて、所望の結果を生成することができる。
【0063】
本明細書で使用される「自動化」という用語は、例えば試料収集などの処置または方法の任意の1つ以上のステップを「手によって」、すなわち手動で実行する必要はないが、前記所望のステップまたは処置、例えば、試料収集は、対応するステップおよびパターン、特に収集ステップが、プログラムされたものにしたがって自動化された方法で実行されるように、1つ以上のステップを実行する前にプログラムされたロボット、液体処理ロボット、および/または他の(例えば、音響)液体移送装置などの1つ以上の適切な装置またはシステムによって実行されることができる状況を指す。いくつかの実施形態では、収集された試料を保存するか、または収集された試料をさらなる精製、処理、分析、または他のIVD方法のために別のシステムまたは装置に直ちに移送することも自動化されている(例えば、ロボットを使用することによって)。
【0064】
本明細書で使用される「部分」という用語は、本明細書に記載のシステム、装置、または方法における分析のための任意の適切な試料を包含する。そのような試料は、任意の生物学的試料、環境試料、工業試料、物質、液体、固体、ガス、懸濁液、コロイド、化学物質、混合物、緩衝液、溶媒、分析物、電解質、溶液、核酸、ポリペプチド、金属、流体、反応物質、試薬、検出可能な標識、色素、無機イオン、有機イオン、塩、ポリマー、ペプチド、多糖、細胞、細菌および/またはウイルスを含むことができる。
【0065】
試料分析装置またはシステムでは、「試料収集体積」という用語は、分析中または分析後に、例えばロボット液体ハンドラによって収集することを意図した試料の体積を指す。エピタコフォレシスを行うための装置、またはそのような装置を含むシステムでは、試料収集体積は、エピタコフォレシス中またはエピタコフォレシス後の試料を含む収集を意図した体積である。いくつかの実施形態では、試料収集体積は、本明細書に記載の装置またはシステムの中央ウェルに配置されることができる。いくつかの実施形態では、試料収集体積は、所望の試料の収集を可能にする任意の場所に配置されることができる。いくつかの実施形態では、試料収集体積は、試料装填領域と先行電解質電極/収集リザーバとの間のどこであってもよい。試料収集体積は、装置またはシステムの任意の適切な領域、容器、ウェル、または空間によって構成されることができる。いくつかの実施形態では、試料収集体積は、ウェル、膜、区画、バイアル、ピペットなどによって構成される。いくつかの実施形態では、試料収集体積は、装置またはシステムの構成要素内または構成要素間の空間、例えば2つのゲル間の空間またはゲルの孔によって形成されることができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「無細胞核酸」(「cfNA」)という用語は、一般に、生物の血流中に見られ得る非カプセル化核酸を指す。いくつかの例では、cfNAは、血液、血漿および/または血清試料などから単離されることができる。いくつかの例では、無細胞核酸は、無細胞DNA(cfDNA)とすることができる。いくつかの例では、無細胞核酸は、無細胞RNA(cfRNA)とすることができる。いくつかの例では、無細胞核酸は、無細胞DNA(cfDNA)と無細胞RNA(cfRNA)との混合物とすることができる。いくつかの例では、cfNAは、胎児DNAおよび/または母体DNAを含むことができる。いくつかの例では、妊婦由来の血液試料および/または血漿試料は、cfNAを含むことができる。いくつかの例では、cfNAは、循環腫瘍核酸(ctNA)を含むことができる。いくつかの例では、cfNAは、長さが約1000bp以上、1000bp以下、900bp以下、800bp以下、700bp以下、600bp以下、500bp以下、400bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、150bp以下、例えば約180bp以下のDNAおよび/またはRNA断片を含むことができる。いくつかの例では、本明細書に記載のETPベースの装置および方法を使用して、cfNAが単離/精製され、任意に収集されることができる。いくつかの実施形態では、ETPベースの単離/精製に続いて、単離/精製cfNAが収集されることができ、本明細書に記載のさらなる分析技術のいずれか1つ以上、例えばシーケンシング、例えば「本明細書に記載の装置および方法との関連で使用するための追加の方法」と題するセクションに記載のものに供することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「循環腫瘍核酸NA」(ctNA)という用語は、癌性細胞、例えば腫瘍細胞に由来するcfNAを指す。いくつかの例では、ctDNAは、癌性細胞のアポトーシスまたは壊死中に血流に入ることができる。いくつかの例では、腫瘍核
酸は、循環腫瘍RNA(ctRNA)とすることができる。いくつかの例では、循環腫瘍核酸は、循環腫瘍DNA(ctDNA)とすることができる。ctNAは、ctDNAとctRNAとの混合物とすることができる。いくつかの実施形態では、ctNAは、本明細書に記載のETPベースの装置および方法を使用して単離/精製され、任意に収集されることができる。いくつかの実施形態では、ETPベースの単離/精製に続いて、単離/精製ctNAが収集されることができ、本明細書に記載のさらなる分析技術のいずれか1つ以上、例えばシーケンシング、例えば「本明細書に記載の装置および方法との関連で使用するための追加の方法」と題するセクションに記載のものに供することができる。いくつかの例では、ctNAは、長さが約1000bp以上、1000bp以下、900bp以下、800bp以下、700bp以下、600bp以下、500bp以下、400bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、150bp以下、例えば長さが約150bpのDNA断片および/またはRNA断片を含むことができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「ETP上部マーカー」という用語は、一般に、標的核酸と比較してサイズがより大きいおよび/または長さがより長い化合物または分子を指し、それにより、ETPベースの単離/精製およびその後の標的分析物の収集中、ETP上部マーカーは、標的分析物の収集を停止することができるカットオフ点を示す。例えば、蛍光標識された、またはそうでなければ検出可能に標識されたETP上部マーカーは、ETPベースの単離/精製中に単離/精製および収集される標的DNAよりも大きいようなサイズで生成されることができる。ETPの実行全体にわたってマーカーを監視することにより、ユーザまたは自動化された機械は、マーカーが収集管に落下する前に実行を停止することができ、それにより、マーカーよりも小さいDNAを捕捉することができる一方で、より大きな汚染DNAは、上部マーカーの後ろに配置されるため除外される。さらに、ETP上部マーカー自体は収集されず、それ自体は下流アッセイ、例えば「本明細書に記載の装置および方法との関連で使用するための追加の方法」と題するセクションに記載されているものに干渉しないため、大量且つ様々な検出可能な標識とともに使用されることができる。いくつかの例では、ETP上部マーカーは、1つ以上の標的分析物の単離/精製および収集された試料からのゲノムDNAの排除を助けるため、ETPベースの単離/精製方法において使用されることができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「ETP装置」、「ETPを行うための装置」、「ETP用の装置」などの用語は、ETPを実行することができる、またはETPが実行されることができる装置および/またはETPを含む方法を指すために互換的に使用される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ETPベースの単離/精製」という用語は、一般に、ETPを含む装置および方法、例えばETPを行うことができる装置、例えばETPを行うことを含む方法を指し、ETPは、1つ以上の標的分析物を1つ以上の集束ゾーン(例えば、1つ以上のETPバンド)に集束させ、それによって初期試料に含まれる他の材料から1つ以上の標的分析物を単離/精製する、例えばゲノムDNAからcfNAを単離/精製する。「単離する」および「精製する」という用語は、互換的に使用されることに留意されたい。さらにまた、ETPベースの単離/精製は、一般に、前記1つ以上の標的分析物を含む1つ以上の集束ゾーン(1つ以上のETPバンド)のその後の収集を可能にする。1つ以上のETPベースの単離/精製によってもたらされる1つ以上の標的分析物の単離/精製の程度は、他の材料からの1つ以上の標的分析物の任意の程度または量とすることができる。いくつかの実施形態では、試料からの標的分析物のETPベースの単離/精製は、例えば、1つ以上の標的分析物を含むETP単離/精製試料の組成を判定するための分析技術によって測定した場合に、前記標的分析物の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、60%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の純度をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、試料からの標的分析物のETPベースの単離/精製は、標的分析物の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上が元の試料から回収されることをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的分析物を単離/精製するために、1つ以上のETPベースの単離/精製が行われることができる。例えば、いくつかの例では、1つ以上の標的分析物を含む試料に対してETPベースの単離/精製が行われて、1つ以上の標的分析物を1つの集束ゾーン(ETPバンド)に集束させ、1つ以上の標的分析物を元の試料に含まれる他の材料から実質的に分離することができる。試料はETP単離/精製後に収集されることができ、単離/収集された試料は、さらに別のETPベースの単離/精製を受けることができる。任意に、第2のETPベースの単離精製は、2つ以上の標的分析物の場合に、1つ以上の標的分析物のそれぞれを別個の集束ゾーンに単離するような条件とすることができ、そのそれぞれは、任意に個別に収集されることができ、それによって、所望であれば、標的分析物を互いに分離する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「混合試料」という用語は、一般に、2つ以上の供給源からの材料を含む試料、例えば胎児と母体の双方のcfNAを含む血液試料、例えば宿主と感染因子の双方に由来するcfDNAを含む血液試料を指す。
【0072】
装置および方法
本開示は、一般に、試料分析のための装置および方法を記載し、前記装置および方法は、エピタコフォレシスを実行することを含む。例示的な実施形態では、前記装置および方法は、従来の等速電気泳動にしばしば使用されることができる毛細管またはマイクロ流体チャネル設計とは対照的に、エピタコフォレシスを行うための同心または多角形ディスク(例えば、円形)設計の使用を含む。本開示の装置および方法は、本明細書に記載されるように、多数の有利な特性および特徴を付与する。例えば、エピタコフォレシスのための装置のアーキテクチャは、例えば15mL以上の試料および/または生物学的試料などの大きな試料体積の分析を可能にするが、従来の毛細管またはマイクロ流体技術は、一般に、マイクロリットル規模の体積を処理するためにのみ装備されている。さらにまた、本発明の装置および方法は、試料および/または生物学的試料からの全ゲノムおよび/または全核酸含有量の抽出を可能にするが、そのような抽出は、従来の毛細管またはマイクロ流体ベースの装置および方法、特にITPベースの毛細管またはマイクロ流体装置および方法を使用する場合には困難であろう。さらに、本明細書に記載の装置および方法の使用によって達成される標的核酸の非常に効率的な抽出は、標的核酸、例えばDNAおよび/またはRNAの量が下流のインビトロ診断(IVD)アッセイにおいて達成されることができる感度と直接相関する前記下流のIVD方法に有用である。時として、核酸の抽出を行うために、それらの表面上の核酸に結合するスピンカラムまたは磁性ガラス粒子が従来使用されることができる。これらの従来の手法と比較して、本明細書に記載の装置および方法は、以下の利点のいずれか1つ以上を与えることができる:カラムまたはビーズベースの抽出方法と比較して、より高い抽出収率(潜在的に損失が少ない);MagNA Pureまたは他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較してより単純な装置セットアップ;同様の用途に適用される他の装置と比較して、潜在的により高速な試料ターンアラウンドおよび高い並列化可能性;抽出された核酸の下流処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合。さらに、本明細書に記載の装置および方法では、平坦なチャネルが一般に使用されてもよく、前記チャネルアーキテクチャは、一般に毛細管および/またはマイクロ流体装置において使用されることができる狭いチャネルと比較して、一般に好ましい熱伝達能力を有することができる。したがって、前記平坦なチャネルの使用は、試料および/または集束試料の過熱または沸騰を防止することができる。さらにまた、本明細書に記載の装置および方法は、穏やかな試料収集を可能にすることが多く、これは、典型的には、全ゲノム抽出、微生物の抽出、幹細胞などの所望の標的細胞、腫瘍細胞、例えば循環腫瘍細胞、または細胞機能性が望ましく保存されている他の希少細胞、または他の不安定な分析物の抽出を行う場合に重要な特徴とすることができる。一般に、従来の全ゲノム抽出は、ゲノムDNAをせん断することができるピペットの使用を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される装置および方法は、ピペット操作による試料の損傷が懸念されることができるいくつかの例示的な実施形態では潜在的に損傷を受けたピペット操作を必要とせずに試料を得ることを可能にする。さらなる実施形態では、本明細書に記載される装置および方法は、全ゲノムの任意の部分のせん断および/または損傷が、前記装置および方法を使用した結果として生じないかまたは最小限とすることができる全ゲノム抽出を可能にすることができる。
【0073】
さらにまた、本開示は、一般に、試料分析のための装置および方法に関する。本明細書に記載の試料分析のための装置および方法は、一般に、前記装置または方法を使用してエピタコフォレシスを行うことに関する。エピタコフォレシスを行うための装置は、一般に、前記エピタコフォレシスを行うのに十分な1つ以上の電極の配置を含む。例示的な実施形態では、前記装置は、多角形または円形の幾何学的形状を含む。試料のエピタコフォレジスベースの分析のためのそのような例示的な装置の使用中、装置のエピタコフォレシスゾーンは、多角形または円の縁部から多角形または円の中心に向かって移動することができる。前記多角形は、三角形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてもよく、および/または前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50または50~100またはそれ以上の辺を有してもよい。さらにまた、例示的な実施形態では、エピタコフォレシスを行うための装置は、所望の試料体積の分析を容易にする任意の装置寸法、例えば直径、例えば深さを含むことができる。例示的な実施形態では、装置のサイズは、使用される体積に応じて増減することができる。いくつかの実施形態では、装置は、約1mm以上から約20mm以上の範囲の直径を含むことができる。
【0074】
例示的な実施形態では、電流は、システムの中心にある1つ以上の高電圧接続および接地接続を介して前記装置に印加されることができる。さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の試料分析のための装置は、ガラス、セラミック、および/またはプラスチックを含むことができる。いくつかの例では、プラスチックは、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標)として市販)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、および/またはポリジメチルシロキサン(「PDMS」)などのプラスチックを含むことができる。特にガラスおよび/またはセラミックを使用する場合、これらの材料は、装置動作中に有益とすることができる改善された熱伝達特性をもたらすことができる。例えば、円形または同心ITP装置、すなわちETP装置の平坦なチャネルは、狭いチャネルと比較して好ましい熱伝達能力を有するため、集束材料の過熱(または沸騰)を防止することができる。さらに、さらなる実施形態では、電流/電圧プログラミングは、装置のジュール加熱を調整するのにも適することができる。
【0075】
例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、1つ以上の電極の二次元配置を含むことができ、前記配置は、エピタコフォレシスを行うのに十分である。さらなる例示的な実施形態では、前記1つ以上の電極は、1つ以上のリング状(円形)電極を含んでもよく、および/または前記1つ以上の電極は、多角形形状に配置されてもよい。前記多角形は、三角形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてもよく、および/または前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50または50~100またはそれ以上の辺を有してもよい。例示的な実施形態では、前記装置の前記1つ以上の電極は、前記配置が約1mmから約20mmの範囲の直径または幅を含むように配置されてもよい。さらなる例示的な実施形態では、前記装置の1つ以上の電極の配置は、前記装置の中心に電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記装置の前記1つ以上の電極は、白金メッキおよび/または金メッキされたステンレス鋼リング;1つ以上のステンレス鋼電極;および/または1つ以上のグラファイト電極を含むことができる。さらにまた、いくつかの実施形態では、前記1つ以上の電極は、ワイヤ電極を含むことができる。例示的な実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、2つ以上の規則的に離間した電極の配置を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、2つ以上の電極の非線形の連続した配置を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、所望の形状、例えば円形に形成された単一のワイヤ電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、ワイヤ電極のアレイを含むことができる。例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、使い捨て装置とすることができる。前記使い捨て装置は、ステンレス鋼および/またはグラファイト電極を含むことができる。他の例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ベンチトップ型機器として機能してもよく、すなわち、装置は、ワークステーションを備えてもよく、および/または再使用可能であってもよい。
【0076】
さらに、さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の試料分析用の装置は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、または15mL以上の試料体積を収容する寸法を含むことができる。例示的な実施形態では、前記体積は、約15mLとすることができる。例示的な実施形態では、前記試料は、前記装置の上部の開口部を通して装置に注入されてもよい。さらなる実施形態では、前記装置の使用は、装置の中心に収集する集束試料をもたらすことができ、さらにいくつかの実施形態では、前記試料は、前記装置の中心から収集されることができる。いくつかの実施形態では、集束試料を含むことができる装置の中心においてゲルを打ち抜くことによって試料が収集されることができる。いくつかの実施形態では、試料は、装置の中心に配置された管に収集されることができる。いくつかの実施形態では、装置の中心に到達すると、集束された試料をピペットで取り出すことによって試料が収集されることができる。例示的な実施形態では、前記試料は、標的分析物を含むことができる。さらなる実施形態では、前記装置への電気の印加は、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させることができ、さらに、前記標的分析物は、エピタコフォレシス後に前記装置から収集することができる。さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の任意の装置またはエピタコフォレシスの方法を使用する分析用の試料は、血液および/または血漿などの生物学的試料を含むことができる。前記血液および/または血漿は、標的分析物、例えば標的核酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記血液および/または前記血漿の体積は、約4mLとすることができる。前記血液および/または血漿は、被験体に由来することができる。例示的な実施形態では、本明細書に記載の任意の装置またはエピタコフォレシスの方法を使用する分析用の試料は、前記装置から分離および/または集束および/または収集されることができる1つ以上のバイオマーカーを含むことができる。
【0077】
さらにまた、試料分析のための前記装置は、例示的な実施形態では、先行電解質および後行電解質をさらに含むことができる。例示的な実施形態では、先行イオンが目的の試料イオンよりも高い有効電気泳動移動度を有する場合、等速電気泳動に使用される当業者に知られている全ての一般的な電解質が本装置とともに使用されることができる。これに対応して、選択された終端イオンについては、一般に反対であってもよい。例示的な実施形態では、前記装置は、カチオン分離/エピタコフォレシス(正モード)またはアニオン分離/エピタコフォレシス(負モード)に使用されることができる。さらなる例示的な実施形態では、エピタコフォレシスを使用したアニオン分離のための一般的な先行電解質は、例えば、適切な塩基、例えばヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどで所望のpHに緩衝された塩化物、硫酸塩、またはギ酸塩を含むことができる。いくつかの例では、塩化物は、非常に高い電気泳動移動度を有し、ほとんどの生物学的試料に存在するため、アニオン性等速電気泳動における主要イオンとして使用されることができる。アニオン分離のた
めのエピタコフォレシスのための前記先行電解質の濃度は、先行イオンに対して5mM~1Mの範囲とすることができる。これに対応して、前記終端イオンは、MES、TAPS、MOPS、HEPES、酢酸塩、グルタミン酸塩、および弱酸および低移動度アニオンの他のアニオンを含むことが多い。正モードにおけるエピタコフォレシスのための前記終端電解質の濃度は、以下の範囲である:終端イオンに対して5mM~10M。いくつかの実施形態では、装置は、正モード(カチオン種の分離/濃縮)または負モード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで操作されることができるため、試料分析のための前記装置は、例えば、小さな無機および有機イオンから、ペプチド、タンパク質、多糖類およびDNAを含む大きなバイオポリマー、または細菌およびウイルスを含む粒子にまで及ぶ広範囲の分析物に有用とすることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、カチオン分離のために、エピタコフォレシスのための一般的な先行イオンは、一般に、例えば、カリウム、アンモニウムまたはナトリウムを含むことができ、酢酸塩またはギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界は、任意の弱酸によって形成される万能終端電解質として機能する。
【0079】
いくつかの実施形態では、正モードと負モードの双方において、先行イオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を犠牲にして、試料ゾーンの比例的な増加をもたらすことができる。典型的な濃度は、一般に、10~20mMの範囲である。しかしながら、より高い濃度が使用されてもよい。
【0080】
さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ゲル、粘性添加剤、および/または終端電解質から流体力学的に分離された他の方法によって安定化された先行電解質を含むことができる。前記ゲルまたは流体力学的分離は、装置の動作中に先行電解質と終端電解質との混合を防止することができる。さらに、前記ゲルは、非荷電材料、またはゲルを形成する任意の他の材料、例えばアガロース、ポリアクリルアミド、プルランなどを含むことができる。特に、これは、全ての種類のヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、ゲルは、例えば、酸または塩基安定性ゲルなど、pHの変化に耐性とすることができる。さらなる実施形態では、前記装置は、先行する電解質、例えばゲル、粘性添加剤によって安定化されたもの、および/または終端電解質から流体力学的に分離されたものを含むことができ、その直径は、約10μmから約20mmの厚さ(高さ)の範囲である。いくつかの実施形態では、最大厚さは、一般に、前記厚さの全体にわたって均一な電界をもたらすことができる厚さとすることができる。厚さが、電界が不均一であるようなものとすることができる実施形態では、電界は、直線的に変化し得ないが、エピタコフォレシスの基本原理は、依然として適用されることができ、標的分析物の分離、濃縮、集束、および/または収集が依然として必要に応じて行われることができる。いくつかの実施形態では、20mmを超える厚さが使用されることができ、湾曲した装置アーキテクチャが使用されて線形挙動を得ることができる。いくつかの実施形態では、先行電解質および/または後行電解質は、所望の緩衝能力を有する電解質を含むことができる。例えば、先行電解質は、その緩衝能力が、全てのエピタコフォレシスゾーンにわたるpHがほぼ同じまたは同じとすることができるように、エピタコフォレシスを行う結果として起こり得るpHの変化を最小化および/または打ち消す電解質を含むことができる。例えば、HCl-ヒスチジンは、望ましい緩衝能を有する先行電解質として使用されることができる。さらにまた、いくつかの実施形態では、pH安定性ゲルが使用されることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記装置は、管によって濃縮器に接続された先行電解質リザーバ内に電極を備えてもよい。前記管は、半透膜によって一方の端部において直接接続されるかまたは閉鎖されてもよい。さらにまた、前記濃縮器は、例えば、毛細管分析器、クロマトグラフィ、PCR装置、酵素反応器などの他の装置にオンラインで接続されてもよい。さらに、前記管は、前記先行電解質を含有するゲルを含まない配置で先行電解質の向流を供給するために使用されてもよい。
【0082】
例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、先行電解質を安定化させるために使用されることができるゲルまたは他の材料を含むことができる。さらなる実施形態では、試料分析のための装置は、ゲルを含むことができ、前記ゲルは、望ましくない試料汚染を回避するのに役立つことができる。例えば、試料分析用の装置が使用されてctDNAを抽出することができ、前記ゲルが使用されてctDNAのゲノムDNAによる汚染を回避するのを助けることができる。前記望ましくない汚染を回避するために、ゲルは、ゲノムDNAではなくctDNAが前記ゲルを通って移動することを可能にするような組成物とすることができる。そのような原理は、目的の試料/標的分析物の汚染を回避することが有益とすることができる他の試料分析に適用されることができる。さらなる実施形態では、メッシュポリマーおよび/または多孔質材料は、例えば濾紙またはヒドロゲルなどの試料分析用の装置のゲルと同様の方法で使用されることができる。前記メッシュポリマーおよび/または多孔質材料の選択は、所望の分離/濃縮を達成し、および/または望ましくない試料汚染を防止するのに役立つものであってもよい。例えば、タンパク質の通過/移動を可能にしないが、標的核酸の通過/移動を可能にすることができる材料が選択されることができる。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ゲルを特徴としなくてもよく、標的分析物および/または所望の試料の集束および/または濃縮および/または収集を特徴とすることができる試料分析のためのエピタコフォレシスを行うことができる。
【0083】
例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、少なくとも1つの電解質リザーバ、少なくとも2つの電解質リザーバ、または少なくとも3つの電解質リザーバを含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料が先行電解質と混合され、次いで前記装置に装填されることができる。いくつかの実施形態では、試料が後行電解質と混合され、次いで前記装置に装填されることができる。さらなる実施形態では、試料が導電性溶液と混合され、前記装置に装填されることができる。さらにまた、いくつかの実施形態では、試料は、エピタコフォレシスのための適切な終端イオンを含有してもよく、前記装置に装填されてもよい。そのような試料の使用は、終端電解質ゾーンを排除することができる。いくつかの実施形態では、試料は、装置の開口部、例えば装置の上部の開口部、例えば装置の側面の開口部を通して装填されることができる。いくつかの実施形態では、試料は、ETP装置のゲルと円形電極との間の空間に装填されることができる。
【0084】
さらなる例示的な実施形態では、前記装置が使用されて、例えば約2倍以上から約1000倍以上の標的分析物を濃縮することができる。いくつかの実施形態では、前記標的分析物は、標的核酸を含むことができる。さらなる実施形態では、前記標的分析物は、小さな無機および有機イオン、ペプチド、タンパク質、多糖類、DNA、または細菌および/もしくはウイルスなどの微生物を含むことができる。
【0085】
さらに、さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の試料分析用の装置は、定電流、定電圧、または定電力を使用して動作されることができる。円形アーキテクチャを使用する装置、例えば、1つ以上の円形電極を備える装置を動作させ、さらに定電流を使用する場合、半径rを有する開始点から距離dにおける速度vを計算するためのエピタコフォレシス境界速度方程式は、以下によって与えられる。
(d)=uI/2π(r-d)hκ=Constant/(r-d)
円形アーキテクチャを使用する装置、例えば、1つ以上の円形電極を備える装置を動作させ、定電圧を使用する場合、半径rを有する開始点から距離dにおける速度vを計算するためのエピタコフォレシス境界速度方程式は、以下によって与えられる。
=uUκ/[(r-d)κ+κ
円形アーキテクチャを使用する装置、例えば、1つ以上の円形電極を備える装置を動作させ、定電力を使用する場合、半径rを有する開始点から距離dにおける速度vを計算するためのエピタコフォレシス境界速度方程式は、以下によって与えられる。
【化1】
さらなる実施形態では、前記装置においてエピタコフォレシスを行うために使用されることができる電圧または電流または電力は、離散的な段階で変化してもよい。例えば、装置内の電解質および/または荷電種の分離およびグループ化を可能にするために、および/または本明細書に記載の方法のいずれかを実行している間に、電流または電圧または電力が第1の値で印加されることができ、前記分離およびグループ化が行われた後、所与の試料の分析に望まれることができるように、電流または電圧または電力が第2の値で印加されて、エピタコフォレシスの速度を増加または減少させることができる。非円形多角形構造が使用される実施形態では、電界は、円形または球形構造の場合のように直線的に変化しなくてもよい。さらにまた、電極の非連続的な配置が使用されることができる実施形態では、電界は、電解質および/または試料の星形の配置を生成するように変化することができる。例えば、円形形状を形成する点ベースの電極のアレイが試料分析のための装置に使用される場合、結果として生じる電解質および/または試料のゾーンなどは、点電極ベースのアレイによって生成される電界の結果として、円形ではなく星形を形成することができる。
【0086】
さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置が使用されて、試料、例えば生物学的試料から核酸を抽出することができる。前記試料は、全血または血漿を含むことができる。前記試料は、全ゲノムなど、標的分析物が収集されることができる細胞培養物を含むことができる。前記核酸は、1つ以上の標的核酸、例えば腫瘍DNAおよび/またはctDNAを含むことができる。例示的な実施形態では、試料分析のための装置が使用されて、腫瘍DNAおよび/または循環腫瘍DNA(ctDNA)、および/または循環cfDNA、例えば、妊婦からの血液または血漿中に存在するもの、および/または特定の条件下で発現されたタンパク質を発現する循環DNAを集束および収集することができ、次いで、核酸シーケンシングおよび/または他のインビトロ診断用途などのさらなる下流分析に任意に供されることができる。そのような下流のインビトロ用途は、例として、無数の他の潜在的な用途の中でも、癌診断および/または癌予後および/または癌病期分類などの疾患検出、感染状態の検出、親子分析、異数性などの胎児染色体異常の検出、胎児遺伝形質の検出、妊娠関連状態の検出、自己免疫または炎症状態の検出を含む。
【0087】
例示的な実施形態では、試料分析のための装置が使用されて標的核酸を集束および収集することができ、前記標的核酸は、任意の所望のサイズとすることができる。例えば、前記標的核酸は、5nt以下、10nt以下、20nt以下、30nt以下、50nt以下、100nt以下、1000nt以下、10,000nt以下、100,000nt以下、1,000,000nt以下または1,000,000nt以上とすることができる。いくつかの実施形態では、前記装置は、無細胞DNAから標的核酸を抽出するために使用されることができる。さらにまた、例示的な実施形態では、前記装置が使用されて、試料から標的分析物を濃縮および収集することができる。前記試料は、生物学的試料を含むことができる。さらなる実施形態では、前記標的分析物は、1つ以上の下流のインビトロ診断用途に使用されることができる。さらにまた、例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、例えば、毛細管分析器、クロマトグラフィ、PCR装置、酵素反応器などの他の装置、および/またはさらなる試料分析を行うために使用されることができる任意の他の装置、例えば、IVD用途に関連する装置にオンラインで接続されることができる。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、核酸シーケンシングライブラリ調製を伴うワークフローにおいて使用されることができる。さらに、さらなる実施形態では、試料分析のための装置は、前記装置から集束および/または収集された可能性がある試料の下流分析を行うために任意に使用されることができる液体処理ロボットとともに使用されることができる。
【0088】
追加の例示的な実施形態では、前記装置の使用は、以下のいずれか1つ以上をもたらすことができる:カラムまたはビーズベースの抽出方法と比較して、より高い抽出収率(潜在的に損失が少ない);MagNA Pureまたは他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較してより単純な装置セットアップ;同様の用途に適用される他の装置と比較して、潜在的により高速な試料ターンアラウンドおよび高い並列化可能性;抽出された核酸の下流処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合。
【0089】
さらにまた、本開示は、一般に、前記試料の分析のためにエピタコフォレシスを行うことを含む試料分析の方法に関する。前記方法は、本明細書に記載の試料分析のための装置のいずれかを使用することによって達成されることができる。例示的な実施形態では、前記方法は、a.本明細書に記載されているような、エピタコフォレシスを行うための装置を提供することと、b.前記装置上に試料を提供することであって、前記試料が1つ以上の標的分析物を含む、提供することと、c.前記装置上に先行電解質および後行電解質を提供することと、d.前記装置を使用してエピタコフォレシスを実行することと、e.前記1つ以上の標的分析物を収集することと、を含む。例示的な実施形態では、試料分析のための前記装置は、多角形または円形の幾何学的形状を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、装置のエピタコフォレシスゾーンは、エピタコフォレシス中に多角形または円の縁部から多角形または円の中心に向かって移動することができる。前記多角形は、三角形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてもよく、および/または前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50または50~100またはそれ以上の辺を有してもよい。さらにまた、例示的な実施形態では、前記装置は、所望の試料体積の分析を容易にする任意の装置寸法、例えば直径、例えば深さを含むことができる。例示的な実施形態では、前記装置のサイズは、使用される体積に応じて増減することができる。例示的な実施形態では、前記装置は、約1mm以上から約20mm以上の範囲の直径を含むことができる。
【0090】
例示的な実施形態では、試料分析の前記方法は、1つ以上の電極の二次元配置を使用することによって達成されることができるエピタコフォレシスの使用を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、1つ以上のリング状(円形)電極を使用することによって、および/または多角形に配置された1つ以上の電極を使用することによって、エピタコフォレシスを実行することを含むことができる。前記多角形は、三角形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてもよく、および/または前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50または50~100またはそれ以上の辺を有してもよい。例示的な実施形態では、電極の前記配置の直径または幅は、約10mmから約20mmの範囲とすることができる。さらにまた、試料分析の前記方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、エピタコフォレシスを行うための装置の中心に電極を使用することをさらに含むことができる。前記方法の例示的な実施形態では、エピタコフォレシスを行うために使用されることができる1つ以上の電極は、1つ以上の白金メッキおよび/または金メッキされたステンレス鋼リング;1つ以上のステンレス鋼電極;および/または1つ以上のグラファイト電極を含むことができる。前記方法のいくつかの実施形態では、1つ以上のワイヤ電極が使用されて、エピタコフォレシスを行うことができる。前記方法の例示的な実施形態では、2つ以上の規則的に離間した電極の配置が使用されて、エピタコフォレシスを行うことができる。さらなる実施形態では、本明細書に記載の試料分析方法中に、システムの中心にある1つ以上の高電圧接続および接地接続を介して電流が印加されることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、2つ以上の電極の非線形の連続した配置を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、所望の形状、例えば円形に形成された単一のワイヤ電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の前記配置は、ワイヤ電極のアレイを含むことができる。前記方法の例示的な実施形態では、前記試料分析方法を実行するための装置は、使い捨て装置とすることができる。前記使い捨て装置は、ステンレス鋼および/またはグラファイト電極を含むことができる。前記方法の他の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法にかかる試料分析のための装置は、ベンチトップ型機器として機能することができ、すなわち、装置は、ワークステーションを備えることができ、および/または再使用可能となり得る。
【0091】
さらに、さらなる例示的な実施形態では、前記方法は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、または15mL以上の試料体積を使用することができる。いくつかの実施形態では、前記体積は、約15mLとすることができる。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法を実施するとき、上部の開口部を通して試料が装置に注入されることができる。前記方法のさらなる例示的な実施形態では、試料が集束されることができ、前記試料が装置の中心に収集されることができる。前記方法のいくつかの実施形態では、集束試料を含むことができる試料分析のための装置の中心においてゲルを打ち抜くことによって試料が収集されることができる。前記方法のいくつかの実施形態では、試料分析のための装置の中心に配置された管に試料が収集されることができる。前記方法のいくつかの実施形態では、試料分析のために装置の中心に到達すると、集束した試料をピペットで取り出すことによって試料が収集されることができる。例示的な実施形態では、集束試料は、標的分析物を含むことができる。前記方法のさらなる例示的な実施形態では、試料は、エピタコフォレシス後に装置の中心から収集されてもよい。さらなる実施形態では、前記方法を行うための電気の印加は、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させる。次いで、前記標的分析物は、エピタコフォレシス後に収集されることができる。本明細書に記載される方法のさらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の任意の装置またはエピタコフォレシスの方法を使用する分析用の試料は、血液および/または血漿などの生物学的試料を含むことができる。前記血液および/または血漿は、標的分析物、例えば標的核酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記血液および/または前記血漿の体積は、約4mLとすることができる。前記血液および/または血漿は、被験体に由来することができる。例示的な実施形態では、本明細書に記載の任意の方法を使用する分析のための試料は、分離および/または集束および/または収集されることができる1つ以上のバイオマーカーを含むことができる。
【0092】
さらなる実施形態では、前記方法は、先行電解質および後行電解質の使用をさらに含んでもよい。さらにまた、いくつかの実施形態では、前記エピタコフォレシスは、カチオン分離/エピタコフォレシス(正モード)および/またはアニオン分離/エピタコフォレシス(負モード)に使用されることができる。さらなる例示的な実施形態では、エピタコフォレシスを使用したアニオン分離のための一般的な先行電解質は、例えば、適切な塩基、例えばヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどで所望のpHに緩衝された塩化物、硫酸塩、またはギ酸塩を含むことができる。さらにまた、アニオン分離のためのエピタコフォレシスのための前記先行電解質の濃度は、先行イオンに対して5mM~1Mの範囲とすることができる。これに対応して、前記終端イオンは、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩、グルタミン酸塩、および弱酸および低移動度アニオンの他のアニオンを含むことが多い。正モードにおけるエピタコフォレシスのための前記終端電解質の濃度は、以下の範囲である:終端イオンに対して5mM~10M。いくつかの実施形態では、装置は、正モード(カチオン種の分離/濃縮)または負モード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで操作されることができるため、試料分析のための前記方法は、例えば、小さな無機および有機イオンから、ペプチド、タンパク質、多糖類およびDNAを含む大きなバイオポリマー、または細菌およびウイルスを含む粒子にまで及ぶ広範囲の分析物に有用とすることができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、カチオン分離のために、エピタコフォレシスのための一般的な先行イオンは、一般に、例えば、カリウム、アンモニウムまたはナトリウムを含むことができ、酢酸塩またはギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界は、任意の弱酸によって形成される万能終端電解質として機能する。
【0094】
いくつかの実施形態では、正モードと負モードの双方において、先行イオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を犠牲にして、試料ゾーンの比例的な増加をもたらすことができる。典型的な濃度は、一般に、10~20mMの範囲である。しかしながら、より高い濃度が使用されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記方法は、ゲル、粘性添加剤、または終端電解質から流体力学的に分離された他の方法によって安定化された先行電解質の使用を含むことができる。前記ゲルまたは流体力学的分離は、装置の動作中に先行電解質と終端電解質との混合を防止することができる。さらに、前記ゲルは、例えば、アガロース、ポリアクリルアミド、プルランなどの非荷電材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、直径が約10μmから約20mmの厚さ(高さ)の範囲である先行電解質の使用を含むことができる。いくつかの実施形態では、最大厚さは、一般に、前記厚さの全体にわたって均一な電界をもたらすことができる厚さとすることができる。厚さが、電界が不均一であるようなものとすることができる実施形態では、電界は、直線的に変化し得ないが、エピタコフォレシスの基本原理は、依然として適用されるべきであり、標的分析物の分離、濃縮、集束、および/または収集が依然として必要に応じて行われることができる。いくつかの実施形態では、20mmを超える厚さが使用されることができ、湾曲したまたは球形の装置アーキテクチャが使用されて線形挙動を得ることができる。
【0096】
本明細書に記載の試料分析のための方法の例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、前記方法にかかる試料分析のための装置内の先行電解質を安定化させるために使用されることができる、エピタコフォレシスと組み合わせたゲルの使用を含むことができる。前記方法のさらなる実施形態では、方法は、ゲルの使用を含むことができ、前記ゲルは、望ましくない試料汚染を回避するのに役立つことができる。例えば、試料分析用の方法が使用されてctDNAを抽出することができ、前記ゲルが使用されてctDNAのゲノムDNAによる汚染を回避するのを助けることができる。前記望ましくない汚染を回避するために、ゲルは、ゲノムDNAではなくctDNAが前記ゲルを通って移動することを可能にするような組成物とすることができる。そのような原理は、目的の試料/標的分析物の汚染を回避することが有益とすることができる他の試料分析に適用されることができる。さらなる実施形態では、メッシュポリマーおよび/または多孔質材料は、例えば濾紙またはヒドロゲルなどの試料分析用の方法のゲルと同様の方法で使用されることができる。前記メッシュポリマーおよび/または多孔質材料の選択は、所望の分離/濃縮を達成し、および/または望ましくない試料汚染を防止するのに役立つものであってもよい。例えば、タンパク質の通過/移動を可能にしないが、標的核酸の通過/移動を可能にする材料が選択されることができる。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、ゲルを特徴としなくてもよく、標的分析物および/または所望の試料の集束および/または濃縮および/または収集を特徴とすることができる試料分析のためのエピタコフォレシスを行うことができる。
【0097】
試料分析の方法のさらなる実施形態では、前記エピタコフォレシスを行った後、毛細管分析器、クロマトグラフィ、PCR装置、酵素反応器などが使用されて、前記方法から得られる濃縮試料をさらに評価することができる。前記方法のいくつかの実施形態では、先
行電解質が最初に円形または同心の等速電気泳動を行うための装置に装填され、続いて終端電解質と混合した試料を装填してもよい。前記方法のさらなる実施形態では、試料が先行電解質と混合され、エピタコフォレシスを行うための装置に装填され、その後、終端電解質を装填してもよい。前記方法のさらなる実施形態では、試料が導電性溶液と混合され、次いで、エピタコフォレシスを行うための装置に装填されることができる。前記方法の例示的な実施形態では、エピタコフォレシスに適した終端イオンを含む試料が、エピタコフォレシスを行うための装置に装填されることができ、前記試料の使用は、終端電解質ゾーンを排除することができる。
【0098】
例示的な実施形態では、前記方法は、標的分析物を、例えば約2倍以上から約1000倍以上濃縮することができる。例示的な実施形態では、前記標的分析物は、標的核酸を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、前記標的分析物は、小さな無機および有機イオン、ペプチド、タンパク質、多糖類、DNA、細菌および/またはウイルスを含むことができる。
【0099】
さらなる実施形態では、試料分析の前記方法は、定電流、定電圧、または定電力を使用することによって達成されることができる。定電流を使用する場合、および円形構造をさらに含む試料分析のための装置、例えば1つ以上の円形電極を含む装置を使用することを含む方法の場合、半径rを有する開始点から距離dにおける速度vを計算するためのエピタコフォレシス境界速度方程式は、以下によって与えられる。
(d)=uI/2π(r-d)hκ=Constant/(r-d)
定電圧を使用する場合、および円形構造をさらに含む試料分析のための装置、例えば1つ以上の円形電極を含む装置を使用することを含む方法の場合、半径rを有する開始点から距離dにおける速度vを計算するためのエピタコフォレシス境界速度方程式は、以下によって与えられる。
=uUκ/[(r-d)κ+κ
定電力を使用する場合、および円形構造をさらに含む試料分析のための装置、例えば1つ以上の円形電極を含む装置を使用することを含む方法の場合、半径rを有する開始点から距離dにおける速度vを計算するためのエピタコフォレシス境界速度方程式は、以下によって与えられる。
【化2】
さらなる実施形態では、エピタコフォレシスを行うために使用されることができる電圧または電流または電力は、離散的な段階で変化してもよい。例えば、装置内の電解質および/または電荷種の分離およびグループ化を可能にするために、および/または本明細書に記載の方法のいずれかを実行している間に、電流または電圧または電力が第1の値で印加されることができ、前記分離およびグループ化が行われた後、所与の試料の分析に望まれることができるように、電流または電圧または電力が第2の値で印加されて、エピタコフォレシスの速度を増加または減少させることができる。非円形多角形構造が使用される実施形態では、電界は、円形構造の場合のように直線的に変化しなくてもよい。さらにまた、電極の非連続的な配置が使用されることができる実施形態では、電界は、電解質および/または試料の星形の配置を生成するように変化することができる。例えば、円形形状を形成する点ベースの電極のアレイが試料分析のための方法に使用される場合、結果として生じる電解質および/または試料のゾーンなどは、点電極ベースのアレイによって生成される電界の結果として、円形ではなく星形を形成することができる。
【0100】
さらなる実施形態では、試料分析の方法は、試料、例えば生物学的試料からの核酸の抽出を含むことができる。前記試料は、全血または血漿を含むことができる。前記試料は、全ゲノムなど、標的分析物が収集されることができる細胞培養物を含むことができる。前
記核酸は、1つ以上の標的核酸、例えば腫瘍DNAおよび/またはctDNAおよび/またはcfDNAを含むことができる。例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、腫瘍DNAおよび/または循環腫瘍DNA(ctDNA)および/または循環無細胞DNA、例えば無細胞胎児DNA(cfDNA)を集束および収集することを含むことができ、次いで、必要に応じて、シーケンシングおよび/または他のインビトロ診断用途などのさらなる下流分析に供されることができる。例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、標的核酸を集束および収集することを含むことができ、前記標的核酸は、任意の所望のサイズとすることができる。例えば、前記標的核酸は、5nt以下、10nt以下、20nt以下、30nt以下、50nt以下、100nt以下、1000nt以下、10,000nt以下、100,000nt以下、1,000,000nt以下または1,000,000nt以上とすることができる。さらなる実施形態では、前記方法が使用されて、無細胞DNAから標的核酸を抽出することができる。さらに、いくつかの実施形態では、前記方法が使用されて、試料から標的分析物を濃縮および収集することができる。いくつかの実施形態では、前記試料は、生物学的試料を含むことができる。さらなる実施形態では、前記標的分析物は、1つ以上の下流のインビトロ診断用途に使用されることができる。さらにまた、例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、本明細書に記載の方法にかかる試料分析のための装置の使用を含むことができ、さらに、前記装置は、例えば毛細管分析器、クロマトグラフィ、PCR装置、酵素反応器などの他の装置、および/またはさらなる試料分析を行うために使用されることができる任意の他の装置、例えばIVD用途に関連する装置にオンラインで接続されることができる。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、核酸シーケンシングライブラリ調製を伴うワークフローにおいて使用されることができる。さらに、さらなる実施形態では、試料分析のための方法は、前記方法にしたがって使用される試料分析のための装置から集束および/または収集された可能性がある試料の下流分析を行うために任意に使用されることができる液体処理ロボットとともに使用されることができる。
【0101】
例示的な実施形態では、前記方法は、以下のいずれか1つ以上をもたらすことができる:カラムまたはビーズベースの抽出方法と比較して、より高い抽出収率(潜在的に損失が少ない);MagNA Pureまたは他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較してより単純な装置セットアップ;同様の用途に適用される他の装置と比較して、潜在的により高速な試料ターンアラウンドおよび高い並列化可能性;抽出された核酸の下流処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合。
【0102】
さらなる実施形態では、エピタコフォレシスのための装置および/または方法は、所望の集束および収集を可能にする任意の所望の時間量で標的分析物の集束および収集を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の集束および収集を行う時間は、約1分から約30分とすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を行う時間は、約15分とすることができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、緩衝液濃度、ゲルの割合、および/またはETP実行の停止時間を変えることによって、元の試料に含まれる他の材料からの1つ以上の標的分析物の単離/精製の向上は、前記1つ以上の標的分析物のETPベースの単離/精製によって達成されることができる。さらにまた、緩衝液濃度、ゲルの割合、および/またはETP実行の停止時間のそのような変動は、2つ以上の標的分析物のそれぞれの互いからの単離/精製の向上をもたらし、例えば、2つ以上の標的分析物のそれぞれを別個の集束ゾーン(ETPバンド)に集束させることができる。
【0104】
さらにまた、本開示は、一般に、試料分析のための装置、方法、およびシステムに関し、前記装置、方法、およびシステムは、エピタコフォレシスおよび試料検出を行うことを含む。本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、ロボット液体ハンドラを使用した自動化に特に適している。本明細書に記載されるシステム、装置、および方法は、上述したようなエピタコフォレシスの定電圧、定電流、および定電力モード、ならびに本明細書に記載される装置、システム、および方法のうちの任意の1つ以上、ならびに本明細書に記載されるような任意の下流の用途、例えばIVD用途に適合する。
【0105】
検出の種類
【0106】
試料検出は、任意の既知の試料検出方法にしたがって行われることができる。検出は、電気的検出、分光光度もしくは光学的追跡、例えば放射性もしくは蛍光性マーカーの分光光度もしくは光学的追跡、またはサイズ、電荷もしくは親和性に基づいて分子を追跡する他の方法を含む様々な既知の方法のいずれかによって進行することができる。好ましい実施形態では、1つ以上の試料が電気的検出によって検出される。電気的検出は、導電率、抵抗率、電流、電圧、および/または他の電気的特性の検出を含むことができる。いくつかの実施形態では、この試料検出は、導電率または抵抗率検出器によって行われることができる。いくつかの実施形態では、検出は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、熱的、または化学的手段による検出を含むことができる。試料収集体積の時間依存移送特性は、任意の適切な技術によって測定されることができる。移送特性は、標的分析物、液体中の溶質(例えば、イオン)、標的分析物自体(例えば、モノマーの化学構造)、または標的分析物上の標識を移送するために使用される媒体の関数とすることができる。例示的な移送特性は、電流、コンダクタンス、抵抗、キャパシタンス、電荷、濃度、光学特性(例えば、UV、蛍光およびラマン散乱)、および化学構造を含む。いくつかの実施形態では、移送特性は導電性である。
【0107】
検出器の種類
【0108】
システム、装置、および方法は、本開示でさらに説明する検出器を含む、光検出器、反射率センサ、赤外線(IR)検出器、電気検出器、熱センサ、流量センサ、および圧力センサなどの1つ以上の検出器またはセンサを含むことができる。光検出器は、これらに限定されないが、3軸点検出器、相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器、電荷結合素子(CCD)検出器、フォトダイオード光センサ、フォトレジスタ、光電子増倍管、およびフォトトランジスタを含むことができる。電気検出器は、電圧、電圧差、電流、電荷、導電率、抵抗率、または他の電気的特性を検出することができる電極または他の検出器を含むことができる。電気検出器が使用されて、例えば、後行電解質と先行電解質との間の界面における導電率の変化を検出することによって、抽出または精製された核酸の集束ゾーンの通過を検出することができる。熱センサは、赤外線(IR)センサ、プローブ温度センサ、サーミスタ、負温度係数(NTC)サーミスタ、測温抵抗体(RTD)、熱電対、半導体ベースのセンサなどを含むことができる。
【0109】
システム、装置、および方法は、電流計(アンペア計)、静電容量計、曲線トレーサ、cos phi計、歪み計、電気計、ESR計、周波数カウンタ、漏れ試験機、LCRメータ、マイクロ波電力計、マルチメータ、ネットワークアナライザ、オームメータ、オシロスコープ、電力計、Qメータ、信号アナライザ、信号発生器、スペクトル分析器、掃引発生器、トランジスタ試験機、管試験機、電力計、ベクトルスコープ、ビデオ信号発生器、電圧計、およびVUメータを含む1つ以上の電気または電子測定装置を備えることができる。
【0110】
1つ以上の検出器またはセンサは、同時にまたは独立して動作および制御されることができる。いくつかの例では、単一の場所は、システムまたは装置上の他の点に専用の他のセンサとは独立して動作する専用センサ、例えば導電率または電圧センサを有することができる。独立したセンサからのフィードバックが使用されて、システムまたは装置上の1
つ以上の電界を独立して制御することができる。例えば、センサは、収集ウェル内の経時的な電圧の変化を検出することができ、そのセンサからのフィードバックが使用されて、システムまたは装置内の電流を制御することができる。第2のセンサは、同様であるが独立した方法で第2の場所に作用することができる。いくつかの例では、センサは、ウェル内の経時的な電気的特性(例えば、導電率または電流)の変化を検出することができ、そのセンサからのフィードバックが使用されて、システムまたは装置内の電圧または電力を制御することができる。いくつかの例では、システム、装置、および方法は、システム、装置、および方法が依然として所望の試料分析を行うことができるという条件で、2つ以上のセンサ、任意に2つ以上のタイプのセンサ、例えば電気センサおよび熱センサを含むことができる。
【0111】
本発明のシステム、装置、および方法内で使用するための導電率検出器は、導電率検出の既知の原理にしたがって設計されることができる。導電率プローブは、電流測定手段、電位差測定手段、誘導手段、またはトロイダル手段によって測定することができる。同様に、システム、装置、および方法に関連する検出器は、抵抗率(導電率の逆数)または全溶解固形分(TDS、溶液に依存する因子による導電率に関連)などの導電率に関連する他の特徴を測定することができる。導電率測定は、純水(典型的には1×10-7S/cm未満)から濃縮溶液の1S/cmを超える値までの広範囲の溶液導電率値をカバーすることができる。導電率および抵抗率は相互的であるため、これらの特性のうちの1つを測定するものとして説明したシステム、装置、および方法は、他の特性も測定するものと理解される。
【0112】
一般に、試料、電解質、および/または分析物を含む溶液は、2つの電極が溶液に挿入され(または溶液を含むゲルの上部に印加され)、電極に電位が印加された場合に電流を伝導する。溶液によって伝導される電流が多いほど、その導電率は高くなる。オームの法則が適用され、したがって、以下のとおりである:
【0113】
V=IR
【0114】
ここで、Vは印加電位(ボルト)、Iは電流(アンペア)、Rは抵抗(オーム)である。溶液の抵抗は、溶液中のイオン種の濃度および種類、ならびに温度を含むいくつかの要因によって判定されることができる。溶液のコンダクタンスG(記号Sによって表されるシーメンスの単位を有する)は、抵抗の逆数によって与えられる。
【化3】
【0115】
コンダクタンスはまた、逆オーム(mhos)の単位で提供されてもよい。抵抗率(ρ)(単位はオーム-cm)は、以下によって与えられる:
【0116】
【化4】
【0117】
ここで、Aは、溶液に挿入された電極の断面積(cm)であり、L(cm)は、それらの間の距離である。抵抗率の逆数は導電率κであり、これは、S/cmの単位を有し、比コンダクタンスとも呼ばれる。
【0118】
【化5】
【0119】
上記の式を通して示されるように、溶液、試料、または分析物の1つの電気的特性の測定は、既知の式および関係による他の電気的特性の測定と同等とすることができる。したがって、本方法、装置、およびシステムは、試料エピタコフォレシスと組み合わせて使用するための任意の形態の電気的検出を包含する。
【0120】
導電率検出器は、当該技術分野において知られているもののいずれかであってもよい。そのような検出器は、一般に以下の原理の下で動作する:電位勾配の影響下で、溶液中のイオン/分析物は電荷を運ぶことができ、したがって、溶液中に位置する2つの電極にわたって電圧が印加された場合、電流は電極間を流れ、溶液は導電性であると言われる。そのような方法は、標的分析物を検出するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、導電率検出器では、一般に、実際に監視されるのは溶液の抵抗であり、検出器からの出力を提供するのは溶質の存在下での移動相の電気抵抗の変化である。このため、検出器の機能は、抵抗測定の観点から考慮されることが多い。いくつかの実施形態では、導電率検出器セルは、AC電位が印加される2つの電極を含む。電極の表面積を小さくすることによって、セルの電気容量が最小にされることができる。一般に、電極および電位の選択は、検出機能を妨害することなく信号対雑音比を増加させるように最適化される。いくつかの実施形態では、電位差は1~2Vである。いくつかの実施形態では、電位差は、1V未満、約1V、1~2V、または2V超である。電極サイズは、一般に、1mm未満である。いくつかの実施形態では、電極表面積は、1μm未満、10μm未満、50μm未満、100μm未満、500μm未満、1mm未満、または1mm超である。電極は、当該技術分野において公知の任意の適切な物質、例えば、白金(Pt)、炭素、グラファイトなどから形成されてもよい。他の実施形態では、検出器は、測定される溶液、試料、または分析物、例えば容量結合非接触伝導度検出器(C4D)に直接接触しなくてもよい。導電率検出器の電極は、エピタコフォレシスを行うために装置全体の任意の適切な位置に配置されることができる。いくつかの実施形態では、検出器の位置は、例えば溶出リザーバ付近の標的分析物の収集を知らせるために特に選択される。
【0121】
いくつかの実施形態では、ETPバンドの位置を測定する方法は、駆動電極と接地電極との間など、システムまたは装置内の任意の2点間の電圧または抵抗を測定することである。3つ以上の電極を有するシステムでは、この測定は、任意の対の電極間で行うことができる。この測定は、電圧駆動電気泳動/エピタコフォレシスが定電力モードにおける測定電圧でもあり得るため、容易に行うことができる。エピタコフォレシスプロセス全体を通して、電圧は、後行イオンがシステムまたは装置を満たすにつれて増加することができる。しかしながら、溶出リザーバは、大きな断面を有することができるため、全体的な抵抗への寄与は小さくなり得る。したがって、この領域のバッファ導電率の変化は、全体的なチャネル抵抗に強く影響しない可能性があり、ETPゾーンが溶出リザーバに入ると電圧の上昇を止めることができる。これは、電流の印加を停止し、実行を終了するための信号として使用されることができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、この電圧変化を評価するために、電圧の導関数が計算されることができる。いくつかの実施形態では、Lanzcos微分法が使用されて高周波ノイズを抑制することができる。導関数に閾値が設定されることができ、導関数が閾値を超えたときにトリガが実行されることができる。場合によっては、追加のトリガを導入することにより、制御の堅牢性を向上させることができる。場合によっては、これらのトリガの一部のみが使用されて駆動電流を変更し、他のトリガが使用されて実行中の時点をマークすることができ、これにより最終トリガのタイミングを改善することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、ETPバンドの位置を検出する方法は、導電率の局所測定を行うことである。これは、容量結合非接触伝導度検出器(C4D)を使用して行うことができる。この方法は、試料収集ウェルの壁を通過して電解質に結合するために高周波交流電流を使用することができる。この局所測定は、溶出リザーバ自体で行うことができる。この技術は、チャネル全体にわたって行われる測定に関連する曖昧さを低減または除去することができる。この技術では、溶出リザーバ導電率検出器の導電率に変化が見られるとすぐに、実行終了トリガが選択されることができる。C4D検出は、溶出体積の下に配置された電極を用いて行うことができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、電極面積を最大化することにより、必要な駆動周波数を低減することができる。例えば、約100kHzから約10MHzの駆動周波数が使用されることができ、電極接触パッドは、約0.2mm2から約50mm2である。C4Dセンサは、抵抗器、コンデンサ、ダイオードブリッジ、および高周波演算増幅器を含む電気部品を用いて、直接デジタル合成器などからの高周波信号源を用いて実装されることができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、ETPバンドの位置を検出する方法は、溶出リザーバ付近の温度の局所測定を行うことである。この測定は、熱電対または赤外線温度センサを含む温度センサを用いて行うことができる。センサは、溶出リザーバの近くのチャネルの下方に配置されることができ、経時的に温度を監視することができる。低移動度の後行イオンが高移動度の先行イオンを変位させると(例えば、ETPゾーンのLE-TE界面)、チャネル内の電界が増加し、温度が上昇する可能性がある。等速電気泳動およびエピタコフォレシスの間、より低い移動度の後行電解質イオンおよびより高い移動度の先行電解質イオンは、ITPまたはETP界面で出会うことができる。ETP界面は、先行電解質イオンと後行電解質イオンとの間に濃縮された試料分析物、例えば核酸を含むことができる。温度上昇は、より高い移動度の先行イオンとより低い移動度の後行イオンとの間のETP界面の存在を検出することができ、したがって、それらの間の試料の存在も示す。この温度上昇は、1~10℃とすることができる。
【0126】
しかしながら、代替的に、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の本発明のシステム、装置、または方法は、エピタコフォレシスの実行中に温度変動がないか、または最小限の温度変動しかないことを特徴とする。
【0127】
検出器位置
【0128】
システム、装置、または方法の試料検出器構成要素は、試料分析領域内の任意の場所、例えば装置の試料装填室から試料収集室までの任意の場所に配置されることができる。いくつかの実施形態では、試料検出は、システムまたは装置の試料収集区画の近くまたはその中で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、試料収集体積内で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、試料収集体積よりも下方で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、試料収集体積の下方のLEリザーバ内で行われる。
【0129】
いくつかの実施形態では、1つ以上の検出器は、エピタコフォレシスを行うための装置と一体化されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の検出器は、エピタコフォレシスを行うために上部プレートまたは上部基材に接続されることができる下部プレートまたは下部基材の一部である。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出器は、エピタコフォレシスを行うための下部プレートまたは基材と一体化された上部プレートまたは基材の一部であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出プローブが下部基材に組み込まれることができ、下部基材の中心柱の近くまたは内部で検出が行わ
れる。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出プローブが上基材に組み込まれることができ、上基材の中心柱の近くまたは内部で検出が行われる。いくつかの実施形態では、この検出は、試料収集体積または試料収集体積を含む容器、例えば半透膜、区画、管、ウェルなどの下方、上方、近く、または接触して行われることができる。
【0130】
検出器およびエピタフォレシスを実行するための装置が相互接続構成要素である実施形態では、これらの構成要素は、任意の適切な手段を介して接続されてもよい。いくつかの実施形態では、構成要素は、物理的または化学的手段を介して接続されてもよい。いくつかの実施形態では、構成要素は、磁石を介して接続される。いくつかの実施形態では、Oリング、スペーサ、絶縁体、または他のそのような構成要素が使用されて、検出構成要素とエピタコフォレシス構成要素との間の漏れを防止することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、本システム、装置、または方法で使用するための1つ以上の試料検出構成要素が存在することができる。いくつかの実施形態では、単一の検出器が存在する。いくつかの実施形態では、アダプタは、1つ以上の検出器が存在する。いくつかの実施形態では、2つ以上の検出器が存在する。いくつかの実施形態では、システムまたは装置全体のいくつかまたは複数の別個の位置における試料検出が存在することができる。いくつかの実施形態では、多数の試料検出位置が存在することができる。いくつかの実施形態では、システムまたは装置全体の任意の2つの位置の間で連続的な試料検出が存在することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出器が装置および/またはシステム自体に組み込まれることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出器が装置および/またはシステムに接触することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出器が装置および/またはシステム自体に組み込まれることができ、1つ以上の検出器も装置および/またはシステムに接触することができる。
【0132】
自動化、ロボット、液体処理
【0133】
本発明はまた、試料検出を伴うエピタコフォレシスを行う多数の個々の構成要素を含むハイスループット試料分析装置に関する。いくつかの実施形態では、エピタコフォレシス中またはエピタコフォレシス後に、本発明のシステム、装置、または方法は、自動化された試料収集を含むことができる。自動化された試料収集は、試料収集体積の近くまたは中の標的分析物の検出によってトリガされることができる。標的分析物の検出は、直接的または間接的であってもよく、例えば、標的分析物は、その物理的、生化学的、光学的、機械的、または他の特性に基づいて検出されてもよく、または標的分析物は間接的に検出されてもよい。間接的な検出は、例えば電気的検出によって先行電解質と後行電解質との間の遷移を検出することを含んでもよい。より一般的には、試料の集束ゾーンの検出またはLE領域とTE領域との間の移行を含む任意の検出方法が使用されて、試料を検出することができる。次いで、そのような検出が使用されて、自動化された液体処理をトリガすることができる。いくつかの実施形態では、システム、装置、または方法は、x-y方向、x-y-z方向、または回転方向のうちの少なくとも1つに移動するように構成され、自動液体ハンドラを含むことができるロボットアセンブリを含むことができる。自動液体ハンドラは、システム内の2つ以上のステーションまたは物理的位置の間で液体を移送するために、システム内の2つ以上の容器の間で一定量の液体を吸引および分配することができる。本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、任意の市販の液体処理ロボット、例えば、Hamilton(登録商標)液体処理ロボットまたはTecan(登録商標)液体処理ロボット、例えばTecan Fluent(登録商標)、Tecan Freedom EVO(登録商標)、またはTecan D300eデジタルディスペンサロボットと互換性があり得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、方法は、自動化された液体ハンドラが使用されるものであり
、自動化された液体ハンドラは、ある場所から別の場所に溶液を移送するためのマイクロタイタープレートと適合する24、48、96、または384個のウェルマニホールド液体ハンドリングヘッドを備える。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法に関連して、自動試料メッキまたはストリーキングが使用されることができる。実験室標準のペトリ皿フォーマットでのストリーキングまたはプレーティングに適した市販の自動プレーティング装置がある。ストリーキングに基づく以下の装置は、本明細書に記載のシステム内に含まれてもよい:PREVI(登録商標)Isola(BioMerieux)、PetriPlater(商標)(Scirobotics)およびInoqulA(商標)(BD Biosciences)。自動的に生成された連続希釈およびメッキ、例えばeasySpiral Dilute(登録商標)(Interscience)に依存する選択肢もある。
【0136】
いくつかの実施形態では、液体処理システムは、1つ以上の液体処理機を含むことができ、1つ以上の処理装置と通信することができる。いくつかの実施形態では、液体処理機は、流体の分配および/または取り出しに適した任意のプログラム可能な機械、ロボット、もしくはシステム、またはプログラム可能な機械、ロボット、もしくはシステムの組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、液体処理機は、複数の分配ノズルと、複数のプレートまたは他の貯蔵装置を支持するためのデッキ空間とを含む。自動液体処理システムは、一般に当該技術分野において周知である。一例は、Tecan(登録商標)Freedom EVO(登録商標)ロボットワークステーションである。この装置は、独立した機器または分析システムとの自動接続における自動液体処理を可能にする。生物学的試料を溶解および/または精製するための携帯型装置は、国際公開第2007/061943号パンフレットから知られている。核酸の処理は、両側に配置された電極を使用してカートリッジチャンバ内で実行され、したがって、電気分解、エレクトロポレーション、電気浸透、電気運動または抵抗加熱によって生体物質を処理する。カートリッジは、ふるい分けマトリックスまたは膜をさらに含む。適切な緩衝液および他の試薬の使用により、電極の適用と組み合わせて、チャンバ内で様々な反応が行われることができ、所望の生成物が例えば収集膜に向けられることができる。カートリッジ自体は、必要な制御要素およびエネルギー源を含む一体型システムに配置されることができる。いくつかの実施形態では、本発明は、液体処理ロボットによるさらなる処理のために、所望の生成物をそのような収集膜に向けるエピタコフォレシスを行うことができる装置を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、液体処理機は、少量の流体、例えば、20mL以上、20mL以下、10mL以下、5mL以下、1mL以下、500μl以下、250μl以下、100μl以下、50μl以下、10μl以下、または1μl以下を正確にピペッティングおよび/または除去するように構成される。いくつかの実施形態では、液体処理機は、流体分配システム、吸引システム、および通信システムを含むことができる。いくつかの実施形態では、流体分配システムは、1つ以上の流体源と連通する1つ以上の流体導管およびノズルをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、吸引システムは、真空システム、および任意に廃棄物処理システムと連通する1つ以上の流体導管を含むことができる。いくつかの実施形態では、通信システムは、機械にデータを入力するための1つ以上のディスプレイおよび入力を含むことができる。いくつかの実施形態では、通信システムはまた、これらに限定されないが、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク、無線ローカルネットワーク、ワイドエリアネットワーク、または別の通信ネットワーク、ならびにネットワークの組み合わせなどの通信ネットワークを介した通信のための1つ以上の構成要素を含むことができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、液体処理システムまたは他のロボットと組み合わせて使用す
るための処理装置は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバ、モバイル装置、携帯電話、プロセッサ、および/または他の処理装置であってもよい。いくつかの実施形態では、装置は、ソフトウェアまたは他の機械可読命令を処理する1つ以上のプロセッサを含むことができ、ソフトウェアまたは他の機械可読命令およびデータを記憶するためのメモリを含むことができる。メモリは、揮発性および/または不揮発性メモリを含むことができる。いくつかの実施形態では、装置は、1つ以上のデータ構造および/またはデータベースをさらに含むか、または少なくとも通信することができる。
【0139】
さらに、いくつかの実施形態では、装置はまた、インターネット、イントラネット、およびイーサネットネットワーク、有線ネットワーク、無線ネットワーク、および/または別の通信ネットワークなどを介して、有線および/または無線通信を介して通信する通信システムを含むことができる。いくつかの実施形態では、処理装置は、コンピュータモニタなどのデータを閲覧するためのディスプレイ(図示せず)と、データを入力し、検査、画像、文書、構造化データ、非構造化データ、HTMLページ、他のウェブページ、および他のデータを含むデータをナビゲートするためのキーボードまたはポインティング装置(例えば、マウス、トラックボール、ペン、タッチパッド、または他の装置)などの入力装置(図示せず)とをさらに含むことができる。
【0140】
試料
【0141】
本発明の装置、方法、およびシステムは、本明細書に記載のものなどの任意の適切な1つ以上の試料を分析および検出するために使用されることができる。本発明の装置、方法、およびシステムは、本明細書に記載のものなどの任意の適切な1つ以上の試料を分析、単離、および/または収集、および検出するため、ならびに/あるいは任意の1つ以上の試料に含まれる任意の1つ以上の標的分析物を分析、分離、および/または単離、および検出するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、試料は、生物学的試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、血漿、尿、血液、唾液、組織抽出物、もしくは生検抽出物、または任意の2つ以上の生物学的試料の組み合わせである。標的分析物、例えば核酸を含む試料は、体液を収集すること、組織を収集すること、または細胞/生物を収集することを含む任意の数の手段によって被験体から取得されることができる。試料は、血液、尿、血清、リンパ、唾液、肛門および膣分泌物、汗、精液、脳脊髄液、精液、痰、糞便および組織を含むか、またはこれらから取得されることができる。本開示にかかる分析のための試料として、任意の組織または体液検体が使用されることができる。核酸分子は、初代細胞培養物または細胞株などの培養細胞から単離されることもできる。核酸が得られる細胞または組織は、ウイルスまたは他の細胞内病原体に感染されることができる。試料はまた、生物学的検体、cDNAライブラリ、ウイルスまたはゲノムDNAから抽出された全RNAとすることができる。試料はまた、非細胞起源から単離されたDNA、例えば冷凍庫からの増幅/単離されたDNAとすることができる。得られた試料は、単一のタイプの細胞/生物から構成されることができるか、または複数のタイプの細胞/生物から構成されることができる。DNAは、被験体の試料から抽出および調製されることができる。例えば、試料は、公知の溶解緩衝液、超音波処理技術、エレクトロポレーションなどを使用して、ポリヌクレオチドを含む細胞を溶解するように処理されることができる。標的DNAは、アルコール抽出、セシウム勾配、および/またはカラムクロマトグラフィを使用することによって、タンパク質などの汚染物質を除去するためにさらに精製されることができる。あるいは、試料は、エピタコフォレシスによる分析の前に最小限に変化しても変化しなくてもよい。
【0142】
例示的な実施形態では、本発明の方法は、試料、例えば生物学的試料からの標的分析物の検出、抽出、濃縮、および/または収集を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、前記方法は、試料からのctDNAの抽出を含むことができ、および/または前
記方法は、試料、例えば妊婦からの血液または血漿からのcfDNAの抽出を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、前記方法は、試料、例えば生物学的試料からの標的分析物の抽出、濃縮、および/または収集を含むことができ、前記標的分析物は、1つ以上の下流のインビトロ診断用途に使用されることができる。
【0143】
エピタコフォレシスおよび検出による自動試料分析の利点
【0144】
エピタコフォレシス導入を行う装置を含むシステムまたは方法における試料検出は、自動化の容易さ、ハイスループット設計の容易さ、標識フリー試料検出、多数倍の試料濃度、最小限の試料操作、他の成分からの試料の便利で迅速な分離、より低い試料損失、より高い試料収率、実質的に純粋な試料を得るためのより少ないステップ、より大量の低濃度試料、下流試料分析のためのより大きな有用性および精度、より少ない試料汚染という利点のうちの1つ以上を有することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、このシステムは、標識フリー、色素フリーの試料分析、濃縮、精製および/または収集を可能にするのに特に有利である。そのようなシステムは、高価で時間のかかる調製ステップを必要とせずに試料の迅速な分析を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、分析された試料の他の成分からの標的分析物のエピタコフォレシス分離は、下流処理、例えば核酸のシーケンシングに特に有利である。
【0146】
本明細書の例示的な実施形態では、試料分析のためのシステムおよび装置は、大量の試料(例えば、最大20mL)の集束に適したETPに基づいて設計および製造されたシステムおよび装置を含む。システムおよび装置は、さらなる使用のための容易な回収のために、高回収率を提供し、マイクロリットル容量の収集カップにDNAを濃縮する。例えば、既存の固相DNA抽出法と比較して、このETPベースの分離は、単純且つ迅速であり、広範な表面相互作用なしに高濃度因子を生成する。いくつかの実施形態では、非ふるい分け分離培地において、小さいDNA断片および短いDNA断片を1つのゾーンに集束させることができる。いくつかの実施形態では、特定の範囲の電気泳動速度のみを集束させるために、ふるい分け培地と緩衝液組成物の組み合わせを使用して、選択されたサイズのみが集束されるか、または他の試料成分から分離されることができる。一般に、試料の電気的検出は、色素を含まない、標識を含まない試料検出を可能にし、本明細書に記載の試料分析のための装置、方法、およびシステムに関して説明した電気的検出などの追加の試料洗浄ステップの必要性を排除する。
【0147】
収集および/または分離
【0148】
本発明はまた、電気泳動移動度に基づいて2つ以上の異なる試料または標的分析物を分離することができるシステムに関する。いくつかの実施形態では、多数の標的分析物が同じ集束ゾーン内で濃縮されることができ、一緒に収集されることができる。いくつかの実施形態では、電気泳動移動度に基づいて異なる分析物が分離され、試料収集体積とは別に収集されることができる。いくつかの実施形態では、様々な標的分析物が1つのゾーン内に集束されることができ、他のものが第1のゾーンとは異なる1つ以上のゾーンに集束されることができる。例えば、例示的な非限定的な実施形態では、1から500bpの間のDNA断片が1つのゾーンに集束されることができ、500から3000bpの間のDNA断片が別のゾーンに集束されることができ、より大きなDNA断片(例えばゲノムDNA)が第3のゾーンに集束されることができることが想定される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、標的分析物を他の材料から分離するための追加の試料精製ステップが続く、エピタコフォレシスを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、集束ゾーンは、非常に狭くてもよく(約100μm)、LE
とTEとの間の遷移を記録して標的分析物の位置を示すことが有利とすることができる。いくつかの実施形態では、検出は、1つ以上の集束ゾーンの位置を別々に示すことができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、試料収集カップ(または試料収集に使用される任意の他の適切な容器、例えばバイアル、トレイ、ウェル、ピペットなど)の容積は、5mL以上、5mL以下、1mL以下、500μl以下、200μl以下、100μl以下、50μl以下、10μl以下、5μl以下、または1μl以下とすることができる。好ましくは、試料収集体積は、標的分析物の濃度の所望の増加を可能にするのに十分に小さくなるように選択される。いくつかの実施形態では、試料濃度は、2倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、100倍以上、150倍以上、200倍以上、500倍以上、1000倍以上、2000倍以上、2500倍以上、5000倍以上、または10,000倍以上増加することができる。
【0151】
試料収集のフィードバック制御
【0152】
本システムおよび装置を使用する方法などの本方法にしたがって、エピタコフォレジスベースの試料収集および/または精製を行うことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試料検出(例えばトリガ)を使用したフィードバック制御およびプロセスタイミングが使用されて、エピタコフォレシスプロセスを制御および/または自動化することができる。いくつかの実施形態では、装置上のセンサ(例えば、電気センサ)が使用されて、例えば導電率(または、例えば、蛍光、UV、光学、熱、電気などの検出)に基づいて試料を検出することができる。いくつかの実施形態では、例えば標的分析物(例えば、核酸)が試料収集体積(または溶出点もしくは他の固定点)に到達したときに、ETP実行を終了するタイミングを示すために使用されることができる導電率変化を検出することができる。いくつかの実施形態では、温度または駆動電圧などの本明細書に記載の他の検出方法が使用されて、実行タイミングの終了または他のトリガを判定することもできる。例えば、ETPプロセスを自動化するために、導電率または光学または温度または電圧センサが使用されて、装置内のチャネルに印加される電界を制御することができる。一例として、電界がチャネルに印加されて、ETP試料の分析および/または精製を開始することができる。いくつかの実施形態では、測定量の検知された変化が使用されて、様々な事象、例えば、ETPの開始、1つ以上の固定位置での他の検知の開始、またはETPの終了をトリガすることができる。いくつかの実施形態では、装置内の測定された特性は、閉じ込められた試料を含む1つ以上のETP集束ゾーンが移動するにつれて変化することができる。特定の特徴を通過するETPゾーンを示す変化は、1つ以上の試料検出装置によって検知されてもよく、フィードバックが使用されて、例えば実行を低減または終了することによって電界を変更してもよい。いくつかの実施形態では、ETPゾーンが溶出リザーバまたはその近くの導電率センサを通過するときに導電率の変化が検出されることができ、センサからのフィードバックが使用されて、例えばそれを除去してETP実行を終了することによって電界を制御することができる。いくつかの例では、装置は、例えばトリガ信号に基づいてETP実行を終了することができる。いくつかの実施形態では、標的分析物または所望の試料(例えば、核酸)は、ETP実行が終了したときに収集体積または溶出リザーバまたは領域内に配置または単離されることができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、ETP実行の終了の検出ベースのトリガはまた、ピペッティングのための溶出体積を維持するのに役立ち得るものなどの他の事象をトリガすることができる。いくつかの実施形態では、装置は、様々なチャネルまたは特徴を閉じるかまたは遮断することができ、これにより溶出体積を固定して溶出のための一定体積を維持することができる(例えば、溶出体積からのピペット操作中にLEリザーバまたは出口リザーバ
への流れに抵抗または防止することによって)。溶出体積を固定することは、使いやすさを助けることができ、溶出された試料材料の濃度を報告するのに役立つことができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、印加電流は、標的ETPバンドが溶出位置(例えば、試料収集体積、中央ウェル、LE電解質リザーバ)にあるときに停止されることができる。本開示は、試料分析実行、例えば試料精製実行の終了を引き起こすために使用されることができる、標的ETPバンド位置を評価するための技術を提供する。これらの技術は、他の種類の測定の中でも、駆動電圧の測定、導電率の測定、および温度の測定を含むことができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、(1)エピタコフォレシスを行うことができる;(2)試料体積付近または試料体積内のLEとTEとの間の遷移を電気的検出によって測定することができる;(3)ステップ(2)からの遷移の検出に基づいて、エピタコフォレシスの実行を終了し、自動化された液体ハンドラを使用して試料体積の自動収集を開始することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、(1)エピタコフォレシスを行うことができる:(2)試料体積付近または試料体積内の2つ以上のETPバンド間の1つ以上の遷移を電気的検出によって測定することができる:(3)ステップ(2)からの1つ以上の遷移の検出に基づいて、自動化された液体ハンドラを使用して、エピタコフォレシスの実行を終了させ、試料体積の自動収集を開始することができる。ステップ(2)における1つ以上の遷移は、LEと標的分析物、標的分析物とTE、LEおよびTEとの間の遷移であってもよい。
【0157】
さらなる用途
【0158】
本明細書に開示される本発明の用途および/または使用は、これらに限定されないが、以下を含むことができる:1.mRNA、rRNAおよびtRNAによって示される相対的または絶対的な遺伝子発現レベルのアッセイ。これは、天然、変異および病原性の核酸およびポリヌクレオチドを含む。2.対立遺伝子発現のアッセイ。3.染色体内の複数のSNPのハプロタイプアッセイおよびフェージング。4.DNAメチル化状態のアッセイ。5.mRNA交互スプライシングおよびスプライスバリアントのレベルのアッセイ。6.RNA移送のアッセイ。7.mRNA、rRNAおよびDNA中のタンパク質-核酸複合体のアッセイ。8.DNA、rRNAまたはmRNAを介した食品および環境試料中の微生物またはウイルス含有量の存在のアッセイ。9.DNA、rRNAまたはmRNAを介した食品および環境試料中の微生物またはウイルス含有量の同定。10.植物、ヒト、微生物および動物におけるDNA、rRNAまたはmRNAを介した病態の同定。11.医学的診断における核酸のアッセイ。12.定量的核ランオフアッセイ。13.限定されないが、免疫応答に見られるものを含む、DNAおよびRNAレベルでの遺伝子再構成のアッセイ。14.微生物、ウイルスおよびミトコンドリアにおける遺伝子導入のアッセイ。15.遺伝的進化のアッセイ。16.法医学的アッセイ。
装置および方法の用途
【0159】
さらなる例示的な実施形態では、本明細書に開示される装置および方法は、本開示にかかる以下の用途のためにおよび/またはそれとともに使用されることができる。
【0160】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の装置および方法は、代表的な試料のIHC分析とともに使用されることができる。例えば、リンパ節組織(例えば、外科的に除去されたリンパ節から調製される)からの代表的な試料のIHC分析は、増殖マーカーと組み合わせた上皮マーカー(例えば、サイトケラチン8/18二重IHCとKi67)について
の染色、原発腫瘍で陽性であったマーカーの使用、転移細胞の他のマーカーの使用、または他の診断マーカーによって、極めて小さい腫瘍微小転移を検出することができる。本明細書に記載される装置および方法は、予め染色された細胞を分析するために使用されることができ、および/または、細胞を選択的に染色するために使用されることができ、および/または、いくつかの実施形態では、IHC分析技術と併せて所望のマーカー/染色剤の存在によって特定されるような所望の細胞を分離するために、集束させるために、および、収集するために使用されることができる。さらにまた、転移性腫瘍細胞は、原発腫瘍に存在する突然変異を含む癌関連突然変異を同定することを目的とした次世代シーケンシングパネルを使用するなどして、核酸において検出されることもできる。本明細書に記載されるように、例示的な実施形態では、本明細書に開示される装置および方法が使用されて、そのような核酸を分離、集束/濃縮、および収集することができる。さらに、例示的な実施形態では、原発リンパ節およびリンパ節からの代表的なサンプリングから精製されたDNA、ならびに任意の遠隔転移細胞からの循環腫瘍DNAからのDNAを分離、集束/濃縮、および/または収集することができる。
【0161】
それに基づいて、本明細書に記載の本発明の方法および装置の例示的な実施形態によって誘導される代表的な試料は、腫瘍組織の種類、位置、サイズまたは体積に関係なく、異なる種類の腫瘍、すなわち異なる固形腫瘍の検出、診断および/または病期分類の精度を促進および実質的に改善することができる。また、本方法および装置は、疾患の徴候がいくつかの実施形態において現れる前であってもそこに存在することができる癌幹細胞株などの稀な細胞型を同定するために、想定される正常組織試料または推定される前癌組織(例えば、遺伝的リスクまたは以前の癌のために癌を発症するリスクがより高い被験体から得られる)から代表的な試料を生成するために潜在的に使用されることができる。
【0162】
一態様では、本明細書に記載の装置および方法は、腫瘍またはリンパ節内の細胞の不均一性を評価し、および/または被験体の特定の癌症状の予後を評価し、および/または癌状態を有する被験体の適切な治療プロトコルを判定するのに適した生物学的試料を生成するための方法および装置であって、(i)組織の空間的に異なる領域を含むか、または腫瘍全体もしくはそのかなりの部分を含む組織(腫瘍試料またはリンパ節など)を取得することと、(ii)分析用の試料を調製することと、(iii)前記装置および方法を使用して、前記試料を含む細胞を分析すること、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、および/または回収することと、を含む、方法および装置を提供することができる。
【0163】
別の態様では、本明細書に記載の装置および方法は、試料(腫瘍試料またはリンパ節など)内の細胞の不均一性を評価する、および/または被験体の特定の癌症状の予後を評価するのに適した生物学的試料を生成するための装置および方法であって、(i)固形腫瘍またはリンパ節から1つ以上の無傷の生検試料を取得することであって、好ましくは各生検試料が少なくとも約100~200、200~1000、1000~5000、10,000~100,000、100,000~1,000,000またはそれ以上の細胞を含む、取得することと、(ii)分析用の試料を調製することと、(iii)前記装置および方法を使用して、前記試料を含む細胞を分析すること、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、および/または収集することと、を含む、装置および方法を提供することができる。
【0164】
別の態様では、本明細書に記載の装置および方法は、被験体が特定の癌の毒性形態を含むかどうか、および/または癌を有する被験体がその特定の癌の毒性形態を含むかどうかを評価するのに適した生物学的試料を生成するための装置および方法であって、(i)固形腫瘍またはリンパ節から1つ以上の無傷の生検試料を取得することであって、好ましくは各生検試料が少なくとも約100~200、200~1000、1000~5000、10,000~100,000、100,000~1,000,000またはそれ以上の
細胞を含み、任意に固定または保存されている(ホルマリン、パラフィンまたはエタノール固定または保存試料など)、取得することと、(ii)分析用の試料を調製することと、(iii)前記装置および方法を使用して、前記試料を含む細胞を分析すること、例えば、所望の細胞を分離し、集束/または濃縮し、任意に少なくとも1つのバイオマーカーの発現を単離または検出することと、を含む、装置および方法を提供することができる。バイオマーカーのアップレギュレーション(発現の増加など)またはダウンレギュレーション(発現の減少など)は、特定の癌の毒性形態に関連する。
【0165】
さらに別の態様では、本明細書に記載の装置および方法は、異種腫瘍内のランドスケープを特徴付けるため、および/または異種腫瘍内の遺伝的に異なるサブクローンを検出するため、および/または腫瘍内の低有病率事象を同定するため、および/または腫瘍内の標的の有病率を判定するための装置および方法であって、(i)腫瘍の空間的に異なる領域を包含する腫瘍の1つ以上の試料を取得することと、(ii)分析用の試料を調製することと、(iii)前記装置および方法を使用して、前記試料を含む細胞を分析すること、例えば、標的分析物、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、および/または収集すること、任意に、異種腫瘍のランドスケープを表し、腫瘍のランドスケープを特徴付けるためおよび/または異種腫瘍内の遺伝的に異なるサブクローンを検出するため、および/または腫瘍内の低有病率事象を同定するため、および/または腫瘍内の標的の有病率を判定するために適した試料を生成することと、を含む、装置および方法を提供することができる。
【0166】
さらに別の態様では、本明細書に記載の装置および方法は、患者の仮定される正常組織または推定される前癌性組織、例えば遺伝子変異または以前の癌のために癌を発症するリスクがあるものの中の前癌性細胞または癌性細胞を検出するための装置および方法であって、(i)患者の仮定される正常組織または推定される前癌性組織の空間的に異なる領域を包含する仮定される正常組織または推定される前癌性組織の1つ以上の試料を取得することと、(ii)分析用の試料を調製することと、(iii)前記装置および方法を使用して、前記試料を含む細胞を分析すること、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、および/または収集することと、を含み、装置および/または方法によって生成された所望の細胞の試料が、例えば、患者に疾患の兆候が現れる前であっても、稀な癌細胞または癌幹細胞を検出するのに適している、装置および方法を提供することができる。
【0167】
別の態様では、本明細書に記載の装置および方法は、異なるアッセイ形式で前述の方法のいずれかによって生成された代表的な試料およびその一部を使用する装置および方法であって、これらのアッセイが、ハイスループットで、同時にまたは異なる時間または異なる場所で、および/または自動化(完全自動化または半自動化)によって行われることができる、装置および方法を提供することができる。
【0168】
別の態様では、前述の装置および方法のいずれかによって生成された代表的な試料またはその一部は、将来の使用のために、例えば凍結されて保存される。
【0169】
別の態様では、本明細書に記載の装置および方法は、代表的な試料を生成するために使用されることができ、前記代表的な試料またはその一部は、抗体または抗原が個別化医療において、すなわち治療的または予防的癌ワクチンの製造において潜在的に使用されることができる患者試料中の特定の癌細胞または細胞型に特異的な抗体または抗原を誘導するために使用されることができる。
【0170】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の装置および方法のいずれかは、試料中の少なくとも1つのバイオマーカー、例えば少なくとも1つの脂質、タンパク質、または核酸バイオマーカーの発現を検出するために使用されることができる。さらに、さらなる実施形
態では、前記装置および方法は、試料中の腫瘍細胞または特定のバイオマーカーもしくはバイオマーカーの組み合わせを発現するその一部もしくは一部の画分を検出することをさらに含むことができる。必要に応じて、腫瘍幹細胞および/または試料もしくはその一部もしくは一部における腫瘍サブクローンの相対的な頻度もしくは割合は、いくつかの実施形態において検出および/または単離されることができる。さらに、さらなる実施形態では、本明細書に記載の装置および方法はまた、遺伝的標的(遺伝子の点突然変異、欠失、付加、転座、遺伝子融合、または増幅など)を検出するために使用されてもよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の上記の装置および方法のいずれかが使用されて、特定の免疫細胞(例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、マクロファージ、NK細胞、単球、またはそれらの組み合わせ)を検出、単離、および/または定量することもできる。
【0172】
対象の装置および方法と併せて使用される試料は、一般に、1つ以上の固形腫瘍に由来する。しかしながら、装置および方法は、潜在的に、非固形腫瘍、例えば血液癌でも実施されることができる。開示される装置および方法において使用されるそのような腫瘍または他の組織試料または試料は、例えば、いくつかの実施形態では、乳房、結腸、肺、膵臓、胆嚢、皮膚、骨、筋肉、肝臓、腎臓、子宮頸部、卵巣、前立腺、食道、胃、または他の器官、例えば、乳癌腫瘍、肺癌腫瘍、肝臓腫瘍、前立腺癌腫瘍、結腸癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、または腎臓癌腫瘍に由来することができる。いくつかの実施形態では、使用される腫瘍試料は、ヒト起源のものとすることができる。
【0173】
さらに、いくつかの実施形態では、上記の装置および方法のいずれかは、試料またはその一部もしくは画分から核酸(DNAまたはmRNAなど)を精製することをさらに含むことができる。精製された核酸は、ノーザンブロット、DNAシーケンシング、PCR、RT-PCR、マイクロアレイプロファイリング、ディファレンシャルディスプレイまたはインサイチュハイブリダイゼーションに供されることができる。また、精製された核酸は、ナノ粒子(例えば、量子ドット、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、および金属ナノ粒子、好ましくは、限定ではなく例として、CdSe、ZnSSe、ZnSeTe、ZnSTe、CdSSe、CdSeTe、ScSTe、HgSSe、HgSeTe、HgSTe、ZnCdS、ZnCdSe、ZnCdTe、ZnHgS、ZnHgSe、ZnHgTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、ZnCdSSe、ZnHgSSe、ZnCdSeTe、ZnHgSeTe、CdHgSSe、CdHgSeTe、InGaAs、GaAlAs、およびInGaNを含む、合金化量子ドット)にコンジュゲートされることができる。
【0174】
上記の装置および方法のいずれも、試料またはその一部もしくは画分から脂質を精製するためにさらに使用されることができることも企図される。精製された脂質は、質量分析または組織化学に供されることができる。
【0175】
さらに、いくつかの実施形態では、上記の装置および方法のいずれかが、試料またはその一部もしくは画分からタンパク質を精製することをさらに含むことができることも企図される。精製されたタンパク質は、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、クロマトグラフィ、質量分析、マイクロアレイプロファイリング、干渉法、電気泳動染色または免疫組織化学染色に供されることができる。代替的に、または追加的に、精製タンパク質が使用されて、腫瘍に特異的な抗血清を産生することができる。
【0176】
さらに、上記の装置および方法のいずれも、試料またはその一部もしくは画分に対してゲノム、トランスクリプトーム、プロテオミクスおよび/またはメタボロミクス分析を実施することをさらに含むことができることが企図される。
【0177】
さらにまた、上記の装置および方法のいずれも、試料またはその一部もしくは画分から特定の細胞型を親和性精製することをさらに含むことができることが企図される。特定の細胞型は、目的のバイオマーカーを含むことができる。目的の例示的なバイオマーカーは、Her2、bRaf、ERBB2増幅、Pl3KCA突然変異、FGFR2増幅、p53突然変異、BRCA突然変異、CCND1増幅、MAP2K4突然変異、ATR突然変異、またはその発現が特定の癌と相関がある任意の他のバイオマーカー;AFP、ALK、BCR-ABL、BRCA1/BRCA2、BRAF、V600E、Ca-125、CA19.9、EGFR、Her-2、KITPSA、S100、KRAS、ER/Pr、UGT1A1、CD30、CD20、F1P1L1-PDGRFα、PDGFR、TMPT、およびTMPRSS2のうちの少なくとも1つ;または、ABCB5、AFP-L3、アルファフェトプロテイン、アルファメチルアシルCoAラセマーゼ、BRCA1、BRCA2、CA15-3、CA242、Ca27-29、CA-125、CA15-3、CA19-9、カルシトニン、癌胎児性抗原、癌胎児性抗原ペプチド-1、デス-癌マカルボキシプロトロンビン、デスミン、初期前立腺癌抗原-2、エストロゲン受容体、フィブリン分解生成物、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、vE6などのHPV抗原、E7、L1、L2またはp16INK4aヒト絨毛性ゴナドトロピン、IL-6、ケラチン19、乳酸塩デヒドロゲナーゼ、ロイシルアミノペプチダーゼ、リポトロピン、メタネフリン、ネプリリジン、NMP22、ノルメタネフリン、PCA3、前立腺特異的抗原、前立腺酸ホスファターゼ、シナプトTNF、ERG、ETV1(ER81)、FLI1、ETS1、ETS2、ELK1、ETV6(TEL1)、ETV7(TEL2)、GABPα、ELF1、ETV4(E1AF;PEA3)、ETV5(ERM)、ERF、PEA3/E1AF、PU.1、ESE1/ESX、SAP1(ELK4)、ETV3(METS)、EWS/FLI1、ESE1、ESE2(ELF5)、ESE3、PDEF、NET(ELK3;SAP2)、NERF(ELF2)、またはFEV.XXX、腫瘍関連糖タンパク質72、c-kit、SCF、pAKT、pc-kitおよびVimentinから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含むことができる。
【0178】
代替的に、または追加的に、目的のバイオマーカーは、これらに限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TIM3、GAL9、GITR、LAG3、VISTA、KIR、2B4、TRPO2、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、TL1AおよびB-7ファミリーリガンドまたはそれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤とすることができ、あるいは、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせである。
【0179】
本明細書に記載の装置および方法は、急性リンパ芽球性白血病(etv6、am11、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig-イディオタイプ)、神経膠腫(E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120 ctn)、膀胱癌(p21ras)、胆管癌(p21ras)、乳癌(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、頸部癌(p53、p21ras)、結腸癌(p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、肝細胞癌(α-フェトタンパク質)、ホジキンリンパ腫(Imp-1、EBNA-1)、肺癌(CEA、MAGE-3、NY-ESO-1)、リンパ系細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、Melan-A/MART-1、cdc27、MAGE-3、p21ras、gp100.sup.Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺癌(HER2/neu、c-erbB-2)、鼻咽頭癌(Imp-1、EBNA-1)、卵巣癌(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、前立腺癌(前立腺特異抗原(PSA)およびその抗原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、腎癌(HER2/neu、c-erbB-2)、頸部および食道の扁平上皮癌(ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス生成物)、精巣癌(NY-ESO-1)、および/またはT細胞白血病(HTLV-1エピトープ)に関連する少なくとも1つのバイオマーカーの検出にさらに使用されることができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置および方法はまた、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジンおよびアクリジンイソチオシアネートなどのアクリジンおよびその誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、ブリリアントイエロー、クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクルアリン(クマラン151)などのクマリンおよび誘導体;シアノシン;4’,6-ジミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5’’-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミン五酢酸;4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオシンおよびエオシンイソチオシアネートなどのエオシンおよび誘導体;エリスロシンBおよびエリスロシンイソチオシアネートなどのエリスロシンおよび誘導体;エチジウム;5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、およびQFITC(XRITC)などのフルオレセインおよび誘導体;2’,7’-ジフルオロフルオレセイン(OREGON GREEN(登録商標));フルオレサミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロサニリン;フェノールレッド;B-フィコエリスリン;o-フタルジアルデヒド;ピレン、酪酸ピレンおよびスクシンイミジル1-酪酸ピレンなどのピレンおよび誘導体;リアクティブレッド4(Cibacron(登録商標)、ブリリアントレッド3B-A);6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、ローダミングリーン、スルホローダミンB、スルホローダミン101およびスルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)などのローダミンおよび誘導体;N、N、N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロソル酸およびテルビウムキレート誘導体、約617nmで発光するチオール反応性ユーロピウムキレート(HeydukおよびHeyduk、Analyt.Biochem.248:216-27、1997;J.Biol.Chem.274:3315-22、1999)、ならびに、GFP、リサミンTM、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7-ジクロロローダミンおよびキサンテン(Leeらによる米国特許第5,800,996号明細書に記載されている)およびそれらの誘導体など、蛍光分子または蛍光色素から選択される少なくとも1つの検出可能な標識の使用を含むことができる(Invitrogenによって販売されているものなど、例えば、ハンドブック-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,Invitrogen Detection Technologies,Molecular Probes,Eugene,Oregを参照のこと、またはNazarenkoらによる米国特許第5,866,366号明細書に開示されている)。例えば、Invitrogen Detection Technologies,Molecular Probes(Eugene,Oreg.)から入手可能であり、ALEXA FLUOR(商標)シリーズの色素(例えば、米国特許第5,696,157号明細書、米国特許第6,130,101号明細書、および米国特許第6、716,979号明細書に記載されている)、BODIPYシリーズの色素(ジピロメテンボロンジフルオリド染料、例えば、米国特許第4,774,339号明細書、米国特許第5,187,288号明細書、米国特許第5,248,782号明細書、米国特許第5,274,113号明細書、米国特許第5,338,854号明細書、米国特許第5,451,663号明細書、および米国特許第5,433,896号明細書に記載されている)、Cascade Blue(米国特許第5,132,432号明細書に記載されているスルホン化ピレンのアミン反応性誘導体)ならびにMarina Blue(米国特許第5,830,912号明細書)、半導体ナノ結晶などの蛍光ナノ粒子、例えばQUANTUM DOTTM(例えば、QuantumDot Corp、Invitrogen Nanocrystal Technologies、Eugene、Oregから入手される;米国特許第6,815,064号明細書、米国特許第6,682,596号明細書および米国特許第6,649,138号明細書も参照されたい)を含む、当業者に公知の他のフルオロフォアも使用されることができる。半導体ナノ結晶は、例えば、放射性同位体(3など)、Gd3+のような放射性または常磁性金属イオンのDOTAおよびDPTAキレートなどの金属キレート、ならびにリポソーム、酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼまたはβラクタマーゼ、検出可能な信号を生成する色素原、発蛍光または発光化合物と組み合わせた酵素、例えばInvitrogen Corporation、Eugene Oregによって販売されているものなど、米国特許第6,602,671号明細書、Bruchezら(1998)Science 281:2013-6、Chanら(1998)Science 281:2016-8、および米国特許第6,274,323号明細書、米国特許第6,927,069号明細書;米国特許第6,914,256号明細書;米国特許第6,855,202号明細書;米国特許第6,709,929号明細書;米国特許第6,689,338号明細書;米国特許第6,500,622号明細書;米国特許第6,306,736号明細書;米国特許第6,225,198号明細書;米国特許第6,207,392号明細書;米国特許第6,114,038号明細書;米国特許第6,048,616号明細書;米国特許第5,990,479号明細書;米国特許第5,690,807号明細書;米国特許第5,571,018号明細書;米国特許第5,505,928号明細書;米国特許第5,262,357号明細書および米国特許出願公開第2003/0165951号明細書、ならびにPCT公開第99/26299号パンフレット(1999年5月27日公開)に記載されている。発色性化合物の特定の例は、とりわけ、ジアミノベンジジン(DAB)、4-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o-ジアニシジン、4-クロロナフトール(4-CN)、ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、o-フェニレンジアミン(OPD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド(X-Gal)、メチルウン
ベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド(MU-Gall)、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルーまたはテトラゾリウムバイオレットを含む。
【0181】
本開示はまた、一般に、本明細書に記載の装置および方法のいずれかによって製造された組成物を包含する。
【0182】
さらに、いくつかの実施形態では、前述の装置および方法(例えば、稀な遺伝的事象および/またはエピジェネティック事象、稀な細胞などの検出)または前述の装置および方法のいずれかによって生成された組成物の使用によって得られた結果が、被験体を治療するための適切な治療レジメンの選択に使用されることができる。治療レジメンは、化学療法、免疫調節薬投与、放射線、サイトカイン投与、手術、またはそれらの組み合わせのいずれかを含むことができる。さらに、開示された装置および方法が使用されて、腫瘍が前記装置および/または方法によって分析された代表的な試料の供給源であった被験体における使用に適した少なくとも1つの治療薬(例えば、少なくとも1つの検出されたバイオマーカーの発現または機能的活性に拮抗する、阻害する、または遮断する抗体、核酸、小分子またはポリペプチドなど)を選択することができる。
【0183】
さらに、前記装置および/または方法によって分析された試料、例えば前記装置および/または方法を使用して得られた標的核酸は、将来の薬理学的および診断的発見および個別化医療にとって重要とすることができる全ゲノムシーケンシングなどの追加の診断試験での使用に適することができる。前記分析された試料は、稀な腫瘍サブクローンを同定するために、そしてひいては臨床診断および個別化された癌治療を改善するために、様々な診断プロトコルに使用されることができる。また、得られた分析試料は、治療的または予防的腫瘍ワクチンの開発に有用な抗体または抗原を誘導するために使用されることができる。
【0184】
本明細書に記載の試料分析のための装置および方法とともに使用するための検出手順は、細胞または細胞区画の発色または蛍光染色をもたらす細胞化学染色手順をさらに含むことができる。そのような染色手順は当業者に公知であり、例えば、細胞標本中の好酸性または好塩基性構造、細胞内領域(例えば、核、ミトコンドリア、ゴルジ、細胞質など)、特定の分子(染色体、脂質、糖タンパク質、多糖類など)の染色を含むことができる。DAPI、キナクリン、クロモマイシンなどの蛍光色素が使用されることができる。さらにまた、アザン、アクリジン-オレンジ、ヘマトキシリン、エオシン、スーダンレッド、チアジン染色(トルイジンブルー、チオニン)などの発色色素が適用されることができる。他の実施形態では、染色手順、例えば、Pap染色、ギムザ染色、ヘマトキシリン-エオシン染色、van-Gieson染色、シッフ染色(シッフ試薬を使用)、金属(例えば、硝酸銀を使用する染色手順における銀など)の沈殿または不溶性染色、例えば、ターンブルスブルー(または他の不溶性金属シアニド)などを使用する染色手順が使用されることができる。指定された染料および染色方法は、適用可能な方法の例であり、当該技術分野において公知の任意の他の方法が、本明細書に記載の試料分析のための装置および方法と併せて適用されることができることを理解されたい。
【0185】
染色手順は、光学顕微鏡検査のための発色性染色剤または蛍光顕微鏡条件下での検査のための蛍光染色剤を生成することができる。別の実施形態では、放射線放出手順では、試料(例えば、(マイクロ)オートラジオグラフィーまたは(マイクロ)放射線写真画像生成などの手段による光学的印象の生成)中の細胞学的状態のイメージングのために放射線または他の造影剤の透過を損なう物質を使用する手順は、本明細書に記載の試料分析のた
めの装置および方法とともに使用されることができる。
【0186】
染色およびイメージング手順のいずれも、顕微鏡手順だけでなく、フローサイトメトリ、自動顕微鏡(コンピュータ化またはコンピュータ支援)分析などの自動分析手順、または染色された細胞検体の分析のための任意の他の方法での分析に使用されることができる。「自動化」または「自動」は、実質的にコンピュータまたは機械によって駆動され、人間の介入が実質的にない活動を意味する。
【0187】
さらにまた、本開示は、一般に、ETPを行うための装置を提供することによって、無細胞核酸(cfNA)、例えばcfDNAを含むことができる1つ以上の標的分析物、例えば1つ以上の標的核酸のETPベースの単離/精製を含む装置および方法であって、前記1つ以上の無細胞核酸を含む試料を提供することと、前記装置を使用してETPを実行することによって1つ以上のETP実行を実施することであって、前記ETP実行が、前記1つ以上のcfNAを1つ以上の集束ゾーンに、例えば1つ以上のETPバンドとして集束させる、実行することと、前記1つ以上のcfNAを収集し、それによって1つ以上の単離/精製cfNAを取得することと、を含む、装置および方法に関する。いくつかの例では、本明細書に記載のETPベースの装置および方法を使用することによって、血漿試料からcfNA、例えばcfDNAが単離/精製されることができる。いくつかの例では、前記血漿試料は、1つ以上の標的分析物、例えば1つ以上のcfNAのETPベースの単離/精製の前に消化されたプロテイナーゼKとすることができる。いくつかの例では、1つ以上のcfNA、例えば1つ以上のcfDNAのETPベースの単離/精製は、100mM HCl-ヒスチジンpH6.25を含むLEおよび/または100 mM TAPS-Tris pH8.30を含むTEの使用を含むことができる。いくつかの例では、ETPベースの装置および方法によって単離/精製されるcfNAは、約1000bp以上、1000bp以下、900bp以下、800bp以下、700bp以下、600bp以下、500bp以下、400bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、150bp以下の長さとすることができる。いくつかの実施形態では、ETPベースの単離/精製に続いて、1つ以上のcfNA、例えばcfDNAおよび/またはcfRNAが、前記1つ以上のcfNAの単離/精製試料として収集されることができ、前記単離/精製された試料は、さらに、本明細書に記載の分析技術のいずれか1つ以上、例えばシーケンシング、例えば「本明細書に記載の装置および方法との関連で使用するための追加の方法」と題するセクションに記載のものに供されることができる。いくつかの例では、ETPベースの単離/精製に続いて、1つ以上の標的分析物、例えば1つ以上のcfDNAなどの1つ以上の標的核酸が収集されることができ、さらに1つ以上のビーズベースの浄化工程、例えば収集後のKAPA純ビーズベースの浄化工程に供されることができる。いくつかの例では、挿入色素、例えばSYBR金色素が使用されて、1つ以上の標的核酸、例えば1つ以上のcfDNAのETPベースの単離/精製中にDNAの可視化を支援することができる。いくつかの例では、インターカレート色素は、前記1つ以上の標的核酸のETPベースの単離/精製中に、1つ以上の標的核酸、例えば1つ以上のcfDNAの可視化を助けるために使用されることができない。いくつかの例では、妊娠中の母親の血漿試料に由来する1つ以上のcfNA、例えば1つ以上のcfDNAのETPベースの単離/精製は、前記元の血漿試料中に存在するゲノムDNAおよびその断片から前記1つ以上のcfNAを単離/精製することができる。いくつかの例では、1つ以上のcfNAのETPベースの単離/精製は、ETPベースの単離/精製を使用せずに達成される方法と比較して、1.25倍以上、1.5倍以上、1.75倍以上、2.0倍以上、2.25倍以上、2.5倍以上、2.75倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、100倍以上、または1000倍以上の1つ以上のcfNAをもたらすことができる。いくつかの例では、試料からの標的分析物、例えばcfNA、例えばcfDNAのETPベースの単離/精製は、元の試料に含まれる標的分析物、例えばcfNAの約1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%を単離/精製し、任意に収集することをもたらすことができる。いくつかの例では、1つ以上の標的分析物、例えば1つ以上のcfNA、例えば1つ以上のcfDNAのETPベースの単離/精製は、約1.0ng以下、1.0ng以上、2.0ng以上、3.0ng以上、4.0ng以上、5.0ng以上、5.5ng以上、6.0ng以上、6.5ng以上、6.8ng以上、10ng以上、50ng以上、または100ng以上の前記1つ以上の標的分析物、例えば1つ以上のcfNA、例えば1つ以上のcfDNAをもたらすことができ、必要に応じて単離/精製された標的分析物が収集される。いくつかの実施形態では、試料からの標的分析物のETPベースの単離/精製は、例えば、1つ以上の標的分析物を含むETP単離/精製試料の組成を判定するための分析技術によって測定した場合に、前記標的分析物の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、60%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の純度をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的分析物を単離/精製するために、1つ以上のETPベースの単離/精製が行われることができる。例えば、いくつかの例では、1つ以上の標的分析物を含む試料に対してETPベースの単離/精製が行われて、1つ以上の標的分析物を1つの集束ゾーン(ETPバンド)に集束させ、1つ以上の標的分析物を元の試料に含まれる他の材料から実質的に分離することができる。試料はETP単離/精製後に収集されることができ、単離/収集された試料は、さらに別のETPベースの単離/精製を受けることができる。任意に、第2のETPベースの単離精製は、2つ以上の標的分析物の場合に、1つ以上の標的分析物のそれぞれを別個の集束ゾーンに単離するような条件とすることができ、そのそれぞれは、任意に個別に収集されることができ、それによって、所望であれば、標的分析物を互いに分離する。
【0188】
いくつかの実施形態では、ETPベースの方法および装置によって単離/精製されたcfNA、例えばcfDNAは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0034685号明細書に記載されているように、非多型および多型検出の双方を利用して混合試料内の単一供給源からの発生源寄与およびコピー数変異(CNV)を判定するアッセイシステムにさらに供されることができる。試料内の主要および/または副次供給発生源寄与の判定は、混合試料中のCNVを判定するためのゲノム領域の適切な同定を可能にするために、双方の供給源からの十分な遺伝物質の存在に関する情報を提供することができる。さらにまた、アッセイシステムは、個体からの混合試料中の選択された遺伝子座の増幅および検出を利用して、発生源寄与を計算し、1つ以上のゲノム領域のコピー数を同定することができ、そのようなアッセイ系は、混合試料中の主要および/または微量供給源由来の核酸の寄与、ならびに混合試料中の単一供給源由来の1つ以上のゲノム領域におけるCNVの有無を判定する能力を有する。そのようなアッセイシステムは、混合試料内の2つ以上の供給源に存在するゲノム領域のコピー数を特異的に検出することができる。寄与を判定するために、1つの供給源から選択された遺伝子座は、混合試料中の少なくとも1つの他の供給源の選択された遺伝子座と区別されることができる。コピー数変異は、混合試料内の2つ以上のゲノム領域のレベルの比較によって検出されることができるため、ゲノム領域のコピー数変異の判定のために、選択された遺伝子座は、発生源寄与に関して区別されることができるが、必ずしもそうする必要はない。いくつかの例では、そのようなアッセイシステムは、ETPベースの装置および方法によって単離/精製されたcfNA(例えば、cfDNAおよび/またはcfRNA)とともに使用される場合、1)2つ以上の有益な遺伝子座に由来する頻度データを使用して、混合試料中の主要な供給源および/または少量の発生源寄与を判定する;2)主要供給源および副次供給源における1つ以上ゲノム領域の頻度を判定する;3)混合試料中の主要供給源および/または微量供給源における染色体異常の有無を同定することを提供することができる。さらにまた、そのようなアッセイシステムは、ETPベースの方法および装置によ
って単離/精製されたcfNAとともに使用されて、母体試料における胎児寄与率および染色体異常を特定することができる。アッセイシステムは、以下のステップを含むことができる:母体試料、例えば、母体血液および/または血漿試料からのcfNAのETPベースの単離/精製を実施して、単離/精製された母体試料を取得すること;固定オリゴヌクレオチドが第1の染色体に対応する2つ以上の遺伝子座上の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離および収集された試料に固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを導入すること;固定オリゴヌクレオチドが第2の染色体に対応する2つ以上の遺伝子座上の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離および収集された試料に固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを導入すること;固定オリゴヌクレオチドが2つ以上の有益な遺伝子座上の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離/精製された試料に固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを導入すること;ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをライゲーションして、核酸に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成すること;隣接ライゲーション生成物を増幅して増幅生成物を形成すること;および増幅生成物を検出すること。増幅生成物の検出は、胎児寄与の計算ならびに母体試料中の胎児核酸における染色体異常の同定に使用されることができる。
【0189】
さらに、本開示は、一般に、ETPベースの装置および方法による1つ以上のcfNA、例えば1つ以上のcfDNAおよび/または1つ以上のcfRNAの単離/精製に関し、前記単離/精製された1つ以上のcfNAは、胎児異数性を検出するためにさらに分析される。例えば、胎児の異数性を検出するためのそのようなアッセイは、米国特許出願公開第2012/0034685号明細書に一般に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、特に実施例7に記載されている。例えば、1つ以上のcfNA、例えば、1つ以上のcfDNAは、本明細書に記載のETPベースの装置および方法を使用することによって単離/精製されることができ、母体試料から単離/精製された1つ以上のcfNAは、各母体試料における21番染色体および18番染色体の双方からの複数の選択された遺伝子座のハイブリダイゼーション、ライゲーションおよび増幅のためのテンプレートとして使用されることができる。ここで、cfDNAを含む例を記載する。3つのオリゴヌクレオチドが各選択された遺伝子座にハイブリダイズされて、増幅および検出のためのライゲーション生成物を生成することができる。左側(または第1の)固定配列オリゴヌクレオチドは、選択された遺伝子座に相補的な領域および第1のユニバーサルプライマー領域を含むことができる。右側(または第2の)固定配列オリゴヌクレオチドは、選択された遺伝子座に相補的な第2の領域および第2のユニバーサルプライマー領域を含むことができる。アッセイなどに使用される架橋性オリゴヌクレオチドは、異数性検出アッセイで使用される2つ以上の選択された遺伝子座の架橋領域にそれぞれハイブリダイズするように設計されることができる。固定配列オリゴヌクレオチドおよび架橋性オリゴヌクレオチドがcfDNA上の相補的領域にハイブリダイズされる場合、それらの末端は、2つのニックを形成することができる。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをcfDNAにライゲーションすると、ライゲーション生成物が、増幅プライマーのセットのテンプレートとして使用されることができるものを含む各選択された遺伝子座について生成されることができる。次いで、第1のユニバーサルプライマー領域および第2のユニバーサルプライマー領域にそれぞれ相補的な領域を含む2つの増幅プライマーが使用されて、ライゲーション生成物を増幅することができる。この増幅生成物は、選択された遺伝子座の配列を含むことができる。右増幅プライマーはまた、多重化アッセイにおいて遺伝子座が得られた特定の試料を同定するための試料インデックスを含むことができる。例えば、96個の異なる右増幅プライマーを用いた増幅は、単一レーン上で96個の異なる増幅生成物のプール化および同時シーケンシングを可能にすることができる。そのような増幅は、96ウェルプレートで起こり得る。例えば、単一の96ウェルプレートからの増幅生成物が等量でプールされることができ、プールされた増幅生成物は、製造者の指示にしたがってSPRIビーズ(Beckman-Coulter、Danvers、Mass.)および/またはKAPA純ビーズによって精製されることができる。次いで、各精製プールライブラリが、製造業者のプロトコルにしたがってNGSプラットフォーム上でのクラスタ増幅のためのテンプレートとして使用されることができる。次いで、各標的染色体に対する割合メトリックが、米国特許出願公開第2012/0034685号明細書に記載されているような公知の方法を使用して計算されることができる。
【0190】
異数性の検出に加えて、特定の多型もまた、母体試料に対する胎児寄与率を判定するために使用されることができ、ここで、cfNA、例えば、本明細書に記載されるETPベースの装置および方法によって単離される/精製されるcfDNAが、そのような判定において使用される。これらの胎児寄与率の判定に使用される一般的な方法論は、2011年7月19日に出願された米国特許出願第61/509,188号に記載されており、その全体が参照により組み込まれる。簡潔には、検出可能な多型を有する特定の遺伝子座のシーケンシングは、これらの遺伝子座を有益であると同定することができる。次いで、母体の多型領域とは異なる胎児の多型領域を有する特定された遺伝子座のカウントが使用されて、母体試料に対するおおよその胎児寄与を計算することができる。母体試料に対する胎児寄与率の計算に使用される遺伝子座のそれぞれは、最小約256カウントを有することができる。この計算のための例示的なSNPデータセットは、実施例7の米国特許出願公開第2012/0034685号の表2および表3において以下に示されている。次いで、これらのセットから特定された情報座位に対応するデータは、寄与率の計算に使用されることができる。有益な遺伝子座は、米国特許出願公開第2012/0034685号明細書の実施例7の表2および表3の太字のテキストで各表に示されている。
【0191】
さらにまた、本明細書に記載されるETPベースの方法および装置によって単離/精製されたcfNA、例えばcfDNAの使用は、混合試料中のCNVおよび感染因子の双方の同定を可能にすることができる上記のものなどのCNV分析にさらに供されることができる。これは、臨床転帰が感染因子の存在によって損なわれ得る患者を監視するのに特に有用とすることができる。例えば、移植を受けた患者は、免疫抑制薬を服用している可能性が高く、一般に感染しやすい。同様に、妊婦は免疫系に変化があり、したがって、母親および/または胎児に悪影響を及ぼすことができる病原体による感染の影響を受けやすい可能性がある。また、特定の種類の癌は、感染因子(例えば、B型およびC型肝炎感染に関連する肝臓癌、ヒトパピローマウイルス感染に関連する子宮頸癌)と関連しており、感染因子の同定は、臨床転帰の予測または患者のための医学的治療の好ましい経過の判定において有益とすることができる。したがって、特定の態様では、発生源寄与の計算、ゲノム領域のCNVの存在または不在の検出、および単一のアッセイを使用する混合試料中の感染性因子の存在または不在のアッセイシステムは、以下のステップを含むことができる:ETPベースの装置および/または方法によって単離/精製された標的核酸を提供し、例えば、ETPベースの装置を使用してETPを実施して標的核酸を集束ゾーンに集束させ、任意にその後、前記集束ゾーンを収集するステップ;固定オリゴヌクレオチドがゲノム領域内またはゲノム領域に関連する1つ以上の遺伝子座上の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、混合試料に固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを導入するステップ;固定オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの有益な遺伝子座上の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、混合試料に固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを導入するステップ;固定配列オリゴヌクレオチドが感染性病原体を示す遺伝子座上の相補的領域に特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、混合試料に固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを導入するステップ;ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをライゲーションして、遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップ;隣接ライゲーション生成物を増幅して増幅生成物を形成するステップ;および増幅生成物を検出するステップ。増幅生成物の検出は、ゲノム領域のコピー数および混合試料中の感染因子の有無と相関がある。
【0192】
さらに、本明細書に記載されるものなどのETPベースの装置および方法によって単離/精製されたcfNA、例えばcfDNAは、癌患者における診断マーカー、予後マーカーおよび監視マーカーとして、cfDNA鎖の完全性、突然変異の頻度、マイクロサテライトの異常、および遺伝子のメチル化などのcfNAの定量的および定性的な腫瘍特異的変化の検出にさらに供されることができ、必要に応じてCNV検出と組み合わせて、悪性腫瘍を有するまたは有する疑いがある患者における臨床診断、治療、転帰予測および進行監視を支援する方法を提供することができる。さらなる考察については、米国特許出願公開第2012/0034685号明細書を参照されたい。
【0193】
さらにまた、本明細書に記載のものなどのETPベースの装置および方法によって単離/精製されたcfNA、例えばcfDNAは、cfDNAの検出と1つ以上の単一遺伝におけるSNPまたは突然変異の検出との組み合わせを使用して移植患者の臓器の健康を監視するために使用されることができるアッセイ系にさらに供されることができる子(さらなる考察については米国特許出願公開第2012/0034685号明細書を参照されたい)。移植された臓器は、レシピエント患者のゲノムとは異なるゲノムを有し、そのようなアッセイ系を使用して臓器の健康が検出されることができる。例えば、急性細胞拒絶は、心臓移植レシピエントにおけるドナーゲノムからの無細胞DNAのレベルの有意な増加に関連することが示されている。
【0194】
いくつかの例では、ETPベースの装置および方法によって単離され回収された標的分析物、例えばcfNAは、米国特許出願公開第2012/0034685号明細書の方法および/またはアッセイ、例えば上記の方法およびアッセイに加えて、「アッセイ方法」;「コピー数のばらつきの検出」;「疾患または素因に関連する多型」;「選択増幅」;「ユニバーサル増幅」;「試料内および試料間のばらつきの最小化」;「癌患者からの混合試料における検出のためのアッセイシステムの使用」;「移植患者からの混合試料の検出のためのアッセイシステムの使用」;「母体試料中の検出のためのアッセイ系の使用」;および「混合試料中の副源DNA含有量の判定」と題するセクションに記載されているそれらの方法およびアッセイのいずれか1つ以上に供されることができる。
【0195】
さらにまた、本開示は、一般に、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の1つ以上のゲノム領域における胎児源による発生源寄与および胎児のコピー数多型(CNV)の存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.例えば、本明細書に記載のものなどの1つ以上のETPベースの装置および/または1つ以上のETPベースの方法を使用して母体試料からcfNA、例えばcfDNAを単離/精製して、単離/精製された母体試料を取得するステップと、b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1のゲノム領域における少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー領域を含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと、c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2のゲノム領域における少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー領域を含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと、d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと、e.ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットをライゲーションして第1のゲノム領域に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットをライゲーションして第2のゲノム領域に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと、f.ユニバーサルプライマー領域を使用して隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと、g.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域からの各遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して増幅生成物を検出するステップと、h.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、多型の有益な遺伝子座における母体源に対する胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップと、を含むアッセイに関する。さらに、本開示は、一般に、単一のアッセイを使用して、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の胎児源による発生源寄与および胎児の異数性の存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.本明細書に記載の1つ以上のETPベースの装置および/または1つ以上のETPベースの方法を使用して母体試料からcfNA、例えばcfDNAを単離/精製して、単離/精製された母体試料を取得するステップと、b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1の染色体に対応する少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと、c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2の染色体に対応する少なくとも48および2000未満の遺伝子座のそれぞれの隣接領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと、d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと、e.ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットをライゲーションして第1の染色体上の遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットをライゲーションして第2の染色体上の遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと、f.隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと、g.第1の染色体上の各遺伝子座、第2の染色体上の各遺伝子座、および各有益な遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して増幅生成物を検出するステップと、h.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、多型の有益な遺伝子座における母体源に対する胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップと、を含むアッセイを包含する。さらにまた、本開示は、一般に、胎児の無細胞DNAおよび母体の無細胞DNAを含む母体試料中の1つ以上のゲノム領域における胎児源による発生源寄与および胎児CNVの存在または非存在を検出するためのアッセイであって、a.本明細書に記載の1つ以上のETPベースの装置および/または1つ以上のETPベースの方法を使用して母体試料からcfNA、例えばcfDNAを単離/精製して、単離/精製された母体試料を取得するステップと、b.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットが、第1のゲノム領域における24以上の遺伝子座の領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドの融解温度(Tms)が2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと、c.(i)2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットが、第2のゲノム領域における24以上の遺伝子座の領域に相補的な第1の固定配列オリゴヌクレオチドおよび第2の固定配列オリゴヌクレオチドを含み、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットの第1の固定配列オリゴヌクレオチドのTmsが2℃の範囲で変化する、ハイブリダイズするステップと、d.(i)少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットが、2つ以上の多型の有益な遺伝子座のうちの隣接する多型領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと、e.(i)架橋性オリゴヌクレオチドを(ii)単離/精製された母体試料中の無細胞DNAとハイブリダイズするステップであって、前記架橋性オリゴヌクレオチドが、前記固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットに相補的な領域間の遺伝子座の領域に相補的である、ハイブリダイズするステップと、f.固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセットと架橋性オリゴヌクレオチドをライゲーションして第1のゲノム領域における遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、固定配列オリゴヌクレオチドの第2のセットと架橋性オリゴヌクレオチドをライゲーションして第2のゲノム領域に関連する遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成し、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの第3のセットをライゲーションして多型の有益な遺伝子座に相補的な隣接ライゲーション生成物を形成するステップと、g.隣接ライゲーション生成物を増幅し、増幅生成物を形成するステップと、h.第1のゲノム領域における各遺伝子座および第2のゲノム領域における各遺伝子座を平均して少なくとも100回測定することにより、ハイスループットシーケンシングを使用して増幅生成物を検出するステップと、i.第1のゲノム領域および第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度を判定するステップであって、第2のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度とは異なる第1のゲノム領域から測定された遺伝子座の相対頻度が、胎児のコピー数多型の存在を示し、前記判定が、第1のゲノム領域および第2のゲノム領域内の多型の検出に依存せず、多型の有益な遺伝子座における母体源に対する胎児源に由来する配列読み取りの割合が発生源寄与を示し、胎児源からの発生源寄与が少なくとも5%および25%未満である、判定するステップと、を含むアッセイを包含する。
【0196】
さらに、1つ以上の標的分析物、例えば(cf)DNAおよび/または(cf)RNAなどの1つ以上の標的核酸は、本明細書に記載されるものなどのETPベースの装置およ
び/または方法によって単離/精製されてもよく、さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,567,639号明細書に記載されているものなど、コピー数変異(CNV)、挿入、欠失、転座、多型および突然変異を含む、試料中の遺伝的特徴を検出する方法にしたがうことによって単離/精製されてもよい。例えば、そのような方法は、調査された各遺伝子座について少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドを使用して2つ以上の標的ゲノム領域から遺伝子座を調査し、固定配列オリゴヌクレオチドを、ライゲーションを介して直接的または間接的に連結する技術を使用することができる。選択されたゲノム領域中の異なる遺伝子座からのライゲーション生成物は、固体支持体上の1つ以上の捕捉プローブに相補的な領域を含むように設計された核酸捕捉領域を含む。捕捉領域は、ライゲーション生成物を特定の標的ゲノム領域に由来するものとして同定する1つ以上の検出可能な標識を含む。異なる標的ゲノム領域からのライゲーション生成物の同定は、ライゲーション生成物の捕捉領域を固体支持体上の相補的捕捉プローブに結合することによって達成される。いくつかの例では、そのような方法が使用されて、胎児の異数性を検出することができ、例えば、胎児の異数性の統計的尤度を提供するためのアッセイ方法は、母体の試料に対してETPベースの単離/精製を行って母体および胎児の無細胞DNAを単離/精製し、それにより、単離/精製された母体試料を取得することと、次いで、捕捉領域を含む配列特異的オリゴヌクレオチドを使用して第1の標的ゲノム領域から1つ以上の遺伝子座を調査することと、捕捉領域を含む配列特異的オリゴヌクレオチドを使用して第2の標的ゲノム領域から1つ以上の遺伝子座を調査することと、アレイへのハイブリダイゼーションを介して第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域から単離された選択された遺伝子座を検出することと、単離された遺伝子座の総数を定量化して第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の相対頻度を判定することと、配列特異的オリゴヌクレオチドを使用して第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域とは異なる少なくとも1つの標的ゲノム領域から選択された多型遺伝子座を調査することと、単離された選択された多型遺伝子座を検出することと、単離された選択された多型遺伝子座の総数を定量化して、単離/精製された母体試料中の胎児無細胞DNAの割合を計算することと、単離/精製された母体試料中の胎児の異数性の統計的尤度を計算することであって、第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座の相対頻度、第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座の相対頻度、および単離された選択された多型遺伝子座からの定量化されたカウントが、胎児の異数性存在の統計的尤度を提供する、計算することと、を含む。いくつかの例では、胎児異数性を検出するためのそのような方法は、母体DNAがホモ接合性であり、非母体DNAがヘテロ接合性である単離された選択された多型遺伝子座から低頻度対立遺伝子を同定することと、単離された選択された多型遺伝子座から低頻度対立遺伝子の和を計算することと、単離された選択された多型遺伝子座からの低頻度対立遺伝子の和を使用して単離されたおよび収集された母体試料における胎児異数性の統計的尤度を計算して、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域に対する標的ゲノム領域頻度の統計的有意差を計算することとを提供することができ、染色体頻度の統計的有意差は、胎児異数性の存在の統計的尤度を提供する。ETPベースの単離/精製を受けた試料を使用して胎児異数性を検出するための方法のいくつかの例では、「閾値」レベルが使用されて、混合試料における第1のユニバーサルプライマー領域および第2の染色体の相対頻度の観察された偏差に基づいて胎児異数性の有無を判定することができる。この閾値は、例えば、そのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0149583号明細書、米国特許出願公開第2013/0324420号明細書、米国特許出願公開第2013/0029852号明細書;および米国特許第8,532,936号明細書に開示されたものなどの技術を使用して判定されることができる。特定の態様では、予想されるカウントからの逸脱は、試料の代表的な集団、好ましくは、以前のリスクプロファイル、母体年齢および/または在胎期間などの同様の特徴の患者からの試料を含む代表的な集団から判定される閾値レベルを使用して判定される。いくつかの例では、ETPベースの装置および方法によって単離/精製された標的分析物は、例えば、上記の方法およびアッセイに加えて、「コピー数変異の検出」;「タンデムラ
イゲーションアッセイ」;「多型の検出」;「さらなる実施形態」;「ユニバーサル増幅」;「母体試料中の胎児DNA比率の推定」;「データ分析」;および「本発明のプロセスのコンピュータ実装」と題するセクションに記載されている方法およびアッセイなど、米国特許第9,567,639号明細書の方法および/またはアッセイのいずれか1つ以上に供されることができる。
【0197】
さらにまた、本開示は、一般に、胎児のコピー数多型の統計的尤度を提供するためのアッセイ方法であって、母体および胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供することと、本明細書に記載の1つ以上のETPベースの装置および/または方法を使用することにより、前記無細胞DNAを単離/精製することと、第1の標的ゲノム領域における遺伝子座に相補的な領域を含む少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、第1の標的ゲノム領域から少なくとも48の非多型遺伝子座を調査することであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの1つが、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと、第2の標的ゲノム領域における遺伝子座に相補的な領域を含む少なくとも2つの固定配列オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、第2の標的ゲノム領域から少なくとも48の非多型遺伝子座を調査することであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの1つが、第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと、ハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションすることと、ライゲーションした固定配列オリゴヌクレオチドを増幅してアンプリコンを形成することと、制限部位においてアンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成することであって、切断された各アンプリコンが、第1の捕捉領域および第1の標識結合領域または第2の標識結合領域を含む、形成することと、第1の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含むアレイに切断されたアンプリコンの第1の捕捉領域のハイブリダイゼーションを介して、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンを検出することであって、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンが第1の捕捉領域に相補的な捕捉プローブに対して競合的にハイブリダイズする、検出することと、第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの調査された非多型遺伝子座の相対頻度を判定するために、切断されたアンプリコンの捕捉領域を定量化することと、第1の標識結合領域および第2の標識結合領域の判定された相対頻度に基づいて、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の相対頻度を推定することと、各多型遺伝子座について少なくとも3つの固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのセットをハイブリダイズすることにより、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域とは異なる少なくとも1つの標的ゲノム領域から少なくとも48の多型遺伝子座を調査することであって、各セットの少なくとも3つの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのうちの2つが、多型遺伝子座の1つの対立遺伝子に相補的な配列、各多型遺伝子座に特異的な捕捉領域、多型遺伝子座における各対立遺伝子の異なる標識結合領域、および2つの制限部位を含む、調査することと、ハイブリダイズした固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをライゲーションすることと、ライゲーションした固定配列対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを増幅して、対立遺伝子特異的アンプリコンを形成することと、制限部位において対立遺伝子特異的アンプリコンを切断して、切断された対立遺伝子特異的アンプリコンを形成することであって、切断された各対立遺伝子特異的アンプリコンが、多型遺伝子座特異的捕捉領域および対立遺伝子特異的標識結合領域を含む、形成することと、切断された対立遺伝子特異的アンプリコンの多型遺伝子座特異的捕捉領域の競合的ハイブリダイゼーションを介して、多型遺伝子座から切断された対立遺伝子特異的アンプリコンを検出し、アレイ上の領域を捕捉することと、試料中の胎児DNAの割合を判定するために、切断された対立遺伝子特異的アンプリコン上の各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、多型遺伝子座の対立遺伝子を定量化することと、胎児DNAの割合を判定することと、試料中の第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域の推定された相対頻度と胎児DNAの割合とを使用して、母体試料中の胎児のコピー数多型の統計的尤度を計算することと、を含む、アッセイ方法に関する。
【0198】
さらに、本開示は、一般に、胎児異数性の尤度を判定するためのアッセイ方法であって、母体および胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供するステップと、本明細書に記載の1つ以上のETPベースの装置および/または方法を使用することにより、前記無細胞DNAを単離/精製し、それにより、単離/精製された母体試料を取得するステップと、各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離/収集された母体試料中の第1の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座に相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第1のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと、各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、母体試料中の第2の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座に相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第2のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと、各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離/精製された母体試料中の多型遺伝子座のセットに相補的な3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第3のセットを導入するステップであって、各セットの3つの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つが、ユニバーサルプライマー部位、多型遺伝子座における1つの対立遺伝子に相補的な配列、多型遺伝子座における各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域、2つの制限部位、および多型遺伝子座特異的捕捉領域を含み、各多型遺伝子座についての捕捉領域が他の全ての多型遺伝子座についての捕捉領域とは異なり、第1の捕捉領域とは異なる、導入するステップと、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセットおよび第3のセットを第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域ならびに多型遺伝子座にハイブリダイズするステップと、第1のセット、第2のセットおよび第3のセットのハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを伸長して、隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドを形成するステップと、第1のセット、第2のセットおよび第3のセットのハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーション生成物を形成するステップと、ユニバーサルプライマー部位を使用してライゲーション生成物を増幅して多型遺伝子座に対応するアンプリコンを形成するステップと、制限部位においてアンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成するステップであって、切断された各アンプリコンが、1つの捕捉領域および1つの標識結合領域を含む、形成するステップと、切断されたアンプリコンをアレイに適用するステップであって、アレイが、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコン上の第1の捕捉領域に相補的な第1の捕捉プローブを含み、アレイが、各多型遺伝子座からの切断されたアンプリコン上の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含む、適用するステップと、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンの第1の捕捉領域を、アレイ上の第1の捕捉プローブにハイブリダイズするステップと、多型遺伝子座からの切断されたアンプリコンの捕捉領域をハイブリダイズしてアレイ上のプローブを捕捉するステップと、ハイブリダイズした切断されたアンプリコンを検出するステップと、第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を定量化するステップと、切断されたアンプリコン上の各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、多型遺伝子座からの各対立遺伝子の相対頻度を定量化し、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を使用して胎児異数性の尤度を計算し、胎児異数性の尤度および判定された胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと、を含む、アッセイ方法を包含する。
【0199】
さらにまた、本開示は、一般に、胎児異数性の尤度を判定するためのアッセイ方法であって、母体および胎児の無細胞DNAを含む母体血漿試料または血清試料を提供するステップと、本明細書に記載の1つ以上のETPベースの装置および/または方法を使用することにより、前記無細胞DNAを単離/精製し、それにより、単離/精製された母体試料を取得するステップと、各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、母体試料中の第1の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座のセットに相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第1のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第1の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと、各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が非多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、単離/精製された母体試料中の第2の標的ゲノム領域における非多型遺伝子座のセットに相補的な2つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも50の第2のセットを導入するステップであって、各セットの固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ユニバーサルプライマー部位、第1の捕捉領域、第2の標識結合領域、および2つの制限部位を含む、導入するステップと、各固定配列オリゴヌクレオチドの相補的領域が多型遺伝子座に対して特異的にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、母体試料中の多型遺伝子座のセットに相補的な3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドの2つ以上の第3のセットを導入するステップであって、各セットの3つ以上の固定配列オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つが、ユニバーサルプライマー部位、多型遺伝子座における1つの対立遺伝子に相補的な配列、多型遺伝子座における各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域、2つの制限部位、および多型遺伝子座特異的捕捉領域を含み、各多型遺伝子座についての捕捉領域が、他の全ての多型遺伝子座についての捕捉領域とは異なり、第1の捕捉領域とは異なる、導入するステップと、固定配列オリゴヌクレオチドの第1のセット、第2のセット、および第3のセットを、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域ならびに多型遺伝子座にハイブリダイズするステップと、第1のセット、第2のセットおよび第3のセットのハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを伸長して、各セットについて隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドを形成するステップと、第1のセット、第2のセットおよび第3のセットから隣接してハイブリダイズした固定配列オリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーション生成物を形成するステップと、ユニバーサルプライマー部位を使用してライゲーション生成物を増幅してアンプリコンを形成するステップと、制限部位においてアンプリコンを切断して切断されたアンプリコンを形成するステップであって、切断された各アンプリコンが、1つの捕捉領域および1つの標識結合領域を含む、形成するステップと、切断されたアンプリコンをアレイに適用するステップであって、アレイが、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコン上の第1の捕捉領域に相補的な第1の捕捉プローブを含み、アレイが、各多型遺伝子座からの切断されたアンプリコン上の捕捉領域に相補的な捕捉プローブを含む、適用するステップと、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの切断されたアンプリコンの第1の捕捉領域を、アレイ上の第1の捕捉プローブにハイブリダイズするステップと、多型遺伝子座からの切断されたアンプリコンの捕捉領域をハイブリダイズして、アレイ上のプローブを捕捉するステップと、ハイブリダイズした切断されたアンプリコンを検出するステップと、切断されたアンプリコン上の各対立遺伝子についての対立遺伝子特異的標識結合領域を検出することにより、多型遺伝子座からの各対立遺伝子の相対頻度を定量化し、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと、母体遺伝子座がホモ接合であり且つ対応する胎児遺伝子座がヘテロ接合である定量化された対立遺伝子から低頻度対立遺伝子を同定することにより、胎児の無細胞DNAの割合を判定するステップと、第1の標識結合領域および第2の標識結合領域を検出することにより、第1の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度を定量化するステップと、第1の標的ゲノム領域および第2の標的ゲノム領域からの遺伝子座に対応する切断されたアンプリコンの相対頻度および胎児の無細胞DNAの割合を使用して、胎児異数性の尤度を計算するステップと、を含む、アッセイ方法に関する。
【0200】
本開示は、さらに一般に、1つ以上の標的分析物、例えば1つ以上の標的核酸を単離/精製する方法を包含し、この方法は、ETP上部マーカーの使用をさらに含む前記1つ以上の標的分析物のETPベースの単離/精製を含む。いくつかの実施形態では、前記ETP上部マーカーは、標的分析物のETPベースの単離/精製中に、ETP上部マーカーが標的分析物の収集を停止することができるカットオフ点を示すように、標的分析物と比較してサイズが大きいおよび/または長さが長い化合物または分子を含むことができる。例えば、蛍光標識された、またはそうでなければ検出可能に標識されたETP上部マーカーは、それがETPベースの単離/精製中に収集される標的DNAよりも大きいようなサイズで生成されることができる。ETPの実行全体にわたってマーカーを監視することにより、ユーザまたは自動化された機械は、マーカーが収集管に落下する前に実行を停止することができ、それにより、マーカーよりも小さいDNAを捕捉することができる一方で、より大きな汚染DNAは、ETP上部マーカーの後ろに配置されるため除外される。さらに、マーカー自体は収集されず、それ自体は下流アッセイ、例えば「本明細書に記載の装置および方法との関連で使用するための追加の方法」と題するセクションに記載されているものに干渉しないため、大量且つ様々な検出可能な標識とともに使用されることができる。いくつかの例では、ETP上部マーカーは、望ましくない物質の排除、例えば単離/精製cfDNAからのゲノムDNAの排除を助けるため、ETPベースの単離/精製方法において使用されることができる。いくつかの実施形態では、ETP上部マーカーは、約1000bp以上の長さとすることができる。
【0201】
さらに、本開示は、一般に、ctNA、例えばctDNAのETPベースの単離/精製を包含し、前記ctNAは、さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20160032396号明細書に記載されているような、ディープシーケンシングによるCAncer個別化プロファイリング(CAPP-Seq)を含む方法に供されることができる。そのような方法は、一般に、最適化されたライブラリ調製方法を多相バイオインフォマティクス手法と組み合わせて、目的の癌における反復突然変異領域に対応するDNAオリゴヌクレオチドの「セレクタ」集団を設計する方法を含むことができる。セレクタセットと呼ばれることができるDNAオリゴヌクレオチドのセレクタ集団は、複数のゲノム領域に対するプローブを含み、複数のゲノム領域内の少なくとも1つの突然変異が特定の癌を有する全ての被験体の大部分に存在するように設計される。いくつかの実施形態では、特定の癌を有する全ての被験体の大部分に複数の突然変異が存在する。さらにまた、そのようなCAPP-Seq法は、データ分析のステップを含むことができ、データ分析のステップは、コンピュータによって実行可能な命令のプログラムとして提供され、コンピュータにロードされたソフトウェアコンポーネントによって実行されることができる。そのような方法は、目的の癌のための識別セレクタセットの設計を含む。循環腫瘍DNAがバックグラウンドより上で検出可能であるとき、例えば情報内容および突然変異のクラスを検出指数に統合する手法を使用して、判定および定量するための他のバイオインフォマティクス方法が提供される。さらに、体細胞変異の検出によって個体由来の無細胞核酸(cfNA)試料中の腫瘍核酸(tNA)の存在を判定するための方法は、(a)ETPベースの単離/精製を行うことによって試料からcfNAを単離/精製することと、(b)目的の癌における複数の突然変異領域に対応する配列について前記cfNAを選択することと、(c)選択されたcfNAをシーケンシングすることと、(d)体細胞変異の存在を判定することであって、体細胞変異の存在が個体に存在する腫瘍細胞を示すことができる、判定することと、(e)個人に腫瘍細胞の存在の評価を提供することと、を含むことができる。
【0202】
いくつかの例では、ETPベースの装置および/または方法によって単離/精製されたcfNAの濃度は、cfDNAの分子バーコード化によって判定されることができる。cfDNAの分子バーコード化は、cfDNAの1つ以上の末端にアダプタを付着させることを含むことができる。アダプタは、複数のオリゴヌクレオチドを含むことができる。アダプタは、1つ以上のデオキシリボヌクレオチドを含むことができる。アダプタは、リボヌクレオチドを含むことができる。アダプタは、一本鎖であってもよい。アダプタは、二本鎖であってもよい。アダプタは、二本鎖部分および一本鎖部分を含むことができる。例えば、アダプタは、Y字型アダプタであってもよい。アダプタは、線形アダプタであってもよい。アダプタは、円形アダプタであってもよい。アダプタは、分子バーコード、試料インデックス、プライマー配列、リンカー配列またはそれらの組み合わせを含むことができる。分子バーコードは、試料インデックスに隣接していてもよい。分子バーコードは、プライマー配列に隣接していてもよい。試料インデックスは、プライマー配列に隣接していてもよい。リンカー配列は、分子バーコードを試料インデックスに連結することができる。リンカー配列は、分子バーコードをプライマー配列に連結することができる。リンカー配列は、試料インデックスをプライマー配列に連結することができる。
【0203】
アダプタは、分子バーコードを含むことができる。分子バーコードは、ランダム配列を含むことができる。分子バーコードは、所定の配列を含むことができる。2つ以上のアダプタは、2つ以上の異なる分子バーコードを含むことができる。分子バーコードは、二量体化を最小限に抑えるために最適化されることができる。分子バーコードは、増幅またはシーケンシングエラーがあっても同定を可能にするように最適化されることができる。例えば、第1の分子バーコードの増幅は、単一の塩基エラーを導入することができる。第1の分子バーコードは、他の分子バーコードとの単一塩基差よりも大きい塩基差を含むことができる。したがって、単一の塩基エラーを有する第1の分子バーコードは、依然として第1の分子バーコードとして同定されることができる。分子バーコードは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上ヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、少なくとも3個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、少なくとも4個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、20、19、18、17、16、または15個未満のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、10個未満のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、8個未満のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、6個未満のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、2から15個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、2から12個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、3から10個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、3から8個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、4から8個のヌクレオチドを含むことができる。分子バーコードは、4から6個のヌクレオチドを含むことができる。
【0204】
アダプタは、試料インデックスを含むことができる。試料インデックスは、ランダムシーケンスを含むことができる。試料インデックスは、所定の配列を含むことができる。2組以上のアダプタは、2つ以上の異なる試料インデックスを含むことができる。アダプタのセット内のアダプタは、同一の試料インデックスを含むことができる。試料インデックスは、二量体化を最小限に抑えるために最適化されることができる。試料インデックスは、増幅またはシーケンシングエラーがあっても識別を可能にするように最適化されることができる。例えば、第1の試料インデックスの増幅は、単一の塩基エラーを導入することができる。第1の試料インデックスは、他の試料インデックスとの単一の塩基差よりも大きくすることができる。したがって、単一の塩基エラーを有する第1の試料インデックスは、依然として第1の分子バーコードとして同定されることができる。試料インデックスは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、少なくとも3個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、少なくとも4個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、20、19、18、17、16、または15個未満のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、10個未満のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、8個未満のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、6個未満のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、2から15個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、2から12個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、3から10個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、3から8個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、4から8個のヌクレオチドを含むことができる。試料インデックスは、4から6個のヌクレオチドを含むことができる。
【0205】
いくつかの例では、本明細書に記載されるものなどのETPベースの装置および方法によって単離/精製されたctNA、例えばctDNAは、ctDNA検出指数を含む方法、キットおよびシステムまたはその使用にさらに供されることができる。一般に、ctDNA検出インデックスは、被験体からの試料中に存在する1つ以上のタイプの突然変異のp値に基づく。ctDNA検出インデックスは、複数の突然変異および体細胞突然変異のクラスにわたる情報内容の統合を含むことができる。ctDNA検出インデックスは、偽陽性率に類似することができる。ctDNA検出インデックスは、それらの存在しないバックグラウンドのために融合ブレークポイントが優先する判定木、および/または複数のクラスの突然変異からのp値が統合されることができる判定木に基づいてもよい。変異のクラスは、これらに限定されないが、SNV、インデル、コピー数変異体および再編成を含むことができる。ctDNA検出インデックスは、複数のクラスの突然変異を含むゲノム領域を含むセレクタセットの統計的有意性を評価するために使用されることができる。例えば、ctDNA検出インデックスは、SNVおよびインデルを含むゲノム領域を含むセレクタセットの統計的有意性を評価するために使用されることができる。別の例では、ctDNA検出インデックスが使用されて、SNVおよび再編成を含むゲノム領域を含むセレクタセットの統計的有意性を評価することができる。別の例では、ctDNA検出インデックスは、再編成およびインデルを含むゲノム領域を含むセレクタセットの統計学的有意性を評価するために使用されることができる。別の例では、ctDNA検出インデックスが使用されて、SNV、インデル、コピー数変異体および再編成を含むゲノム領域を含むセレクタセットの統計的有意性を評価することができる。ctDNA検出インデックスの計算は、被験体において検出されるセレクタセットのゲノム領域内の突然変異のタイプ(例えば、クラス)に基づいてもよい。例えば、セレクタセットは、SNV、インデル、コピー数変異体および再編成を含むゲノム領域を含むことができるが、被験体において検出されるセレクタについての変異のタイプは、SNVおよびインデルとすることができる。ctDNA検出インデックスは、SNVのp値とインデルのp値とを組み合わせることによって判定されることができる。独立した部分試験を組み合わせるのに適した任意の方法が使用されて、SNVおよびインデルのp値を組み合わせることができる。SNVおよびインデルのp値を組み合わせることは、フィッシャー法に基づくことができる。
【0206】
さらにまた、ETPベースの装置および方法によって単離/精製された標的核酸、例えばcfDNAは、さらに、再編成を同定する方法の被験体によってもよい。再編成は、ゲノム融合事象および/またはブレークポイントとすることができる。この方法は、本明細書に記載されるようなETPベースの方法および装置によって単離/精製されたcfDNA試料のデノボ分析に使用されることができる。あるいは、この方法は、本明細書に記載
されるようなETPベースの装置および方法によって単離/精製された既知の腫瘍/生殖細胞系DNA試料の分析に使用されることができる。この方法は、ヒューリスティック手法を含むことができる。一般に、この方法は、(a)ペアエンドリード、エクソン座標、参照ゲノムまたはそれらの組み合わせのアラインメントファイルを取得することと、(b)アライメントファイルからの情報にアルゴリズムを適用して、1つ以上の再配置を特定することと、を含むことができる。アルゴリズムは、1つ以上ゲノム領域に関する情報に適用されることができる。アルゴリズムは、1つ以上のゲノム領域と重複する情報に適用されることができる。
【0207】
この方法は、FACTERA(FACile転座列挙および回復アルゴリズム)と呼ばれることがある。入力として、FACTERAは、ペアエンドリード、エクソン座標、および参照ゲノムのアライメントファイルを使用することができる。さらに、分析は、任意に特定のゲノム領域と重複するリードに限定されることができる。FACTERAは、以下の3つの連続した段階で入力を処理することができる:不一致リードの同定、塩基対分解能でのブレークポイントの検出、および候補融合物のインシリコ検証。
【0208】
さらに、ETPベースの装置および方法によって単離/精製された1つ以上の標的核酸、例えばctNAは、腫瘍由来SNVの同定に供されることができる。腫瘍由来のSNVは、対応する腫瘍生検試料で同定された体細胞変異体の事前知識なしに同定されることができる。本発明のいくつかの実施形態では、cfDNAは、患者からの既知の腫瘍DNA試料と比較することなく分析される。そのような実施形態では、ctDNAの存在は、(i)対をなす生殖系列DNAにおけるバックグラウンドノイズ、(ii)セレクタセットにわたるcfDNAにおける塩基対分解能バックグラウンド頻度、および(iii)cfDNAにおけるシーケンシングエラーについての反復モデルを利用する。これらの方法は、腫瘍由来のSNVを自動的に呼び出すためにデータポイントを通して反復されることができる以下のステップを利用することができる:ETPベースの単離/精製を受けた単一のcfDNA試料から対立遺伝子頻度を取得し、高品質のデータを選択すること;所与のインプットcfDNA対立遺伝子が対応する対の生殖系列対立遺伝子と有意に異なるかどうかを試験すること;cfDNAバックグラウンド対立遺伝子頻度のデータベースの構築;所与のインプット対立遺伝子が同じ位置でcfDNAバックグラウンドと有意に異なるかどうかを試験し、平均バックグラウンド頻度が所定の閾値、例えば5%以上、2.5%以上などであるものを選択すること;外れ値分析によって、腫瘍由来のSNVを残りのバックグラウンドノイズから区別すること。
【0209】
したがって、腫瘍由来SNVを同定する非侵襲的方法は、(a)癌に罹患しているかまたは癌に罹患している疑いがある被験体から試料を取得することと、(b)標的核酸、例えばcfNA、例えばcNAを単離/精製するためにETPベースの単離/精製を行うことと、(c)前記試料に対してシーケンシング反応を実施してシーケンシング情報を生成することと、(d)ステップ(c)からのシーケンシング情報に基づいて候補腫瘍対立遺伝子のリストを形成するためにシーケンシング情報にアルゴリズムを適用することであって、候補腫瘍対立遺伝子が生殖系列SNPではない非優性塩基を含む、適用するステップと、(e)候補腫瘍対立遺伝子のリストに基づいて腫瘍由来のSNVを同定することと、を含むことができる。候補腫瘍対立遺伝子は、候補SNVを含むゲノム領域を指すことができる。
【0210】
疾患または症状に罹患している被験体のための検出、診断、予後予測または治療選択のための方法を本明細書にさらに開示する。方法は、以下を含むことができる:(a)被験体に由来する無細胞DNA(cfDNA)試料の配列情報を取得することであって、cfDNA試料が、本明細書に記載されたものなどのETPベースの方法および装置によって単離/精製される、取得することと、(b)(a)に由来する配列情報を使用して、試料
中の無細胞非生殖細胞系DNA(cfNG-DNA)を検出することであって、方法が、総cfDNAの2%未満または総cfDNAの約2%超とし得るcfNG-DNAの割合を検出することが可能となり得る、検出すること。
【0211】
本明細書に記載の装置および方法との関連で使用するための追加の方法
本明細書に記載の装置および方法による分析および/または分析のための試料、ならびにタンパク質のELISAベースの検出、特定の細胞型の親和性精製などを含むがこれらに限定されない分析および/または分析試料を含む組成物に、追加の診断方法が適用されることができる。本開示の多数の診断および治療用途をさらに説明するために、出願人らは、例えば、本明細書に記載の装置および方法を使用して分析されている、または分析された細胞、核酸、タンパク質、脂質など、試料およびサブ試料またはそれらから単離された成分を用いて達成されることができる様々な技術のさらなる概要を以下に提供する。
【0212】
本明細書に記載の装置および/または方法によって分析および/または分析される試料は、さらなる処理ステップに供されることができる。これらは、これらに限定されないが、適用可能な場合にはさらなる診断アッセイを含む、本開示に詳述されているものなどのさらなる分析技術を含む。以下の方法論は、本明細書に記載の装置および方法によって分析および/または分析するための試料と併せて使用されることができ、試料、例えば異種腫瘍細胞集団を含む細胞の同一性および生物学的特性に関する情報をもたらすことができる。本明細書に記載される装置および方法によって提供される分析と、下記に記載される技術とを組み合わせることにより、試料(例えば、腫瘍)内の小さなサブクローン集団でさえも同定、検出または特徴付けすることが可能になることができる。これらの結果は、いくつかの実施形態では、診断、治療方法の選択、および患者管理に有益とすることができる。
【0213】
例示的な実施形態では、分析用の試料および/または本明細書に記載の装置および方法によって分析された試料は、以下の方法またはステップのうちの1つ以上に供されることができる:染色、免疫組織化学的染色、フローサイトメトリ、FACS、蛍光活性化液滴ソーティング、画像分析、ハイブリダイゼーション、DASH、分子ビーコン、プライマー伸長、マイクロアレイ、CISH、FISH、ファイバFISH、定量的FISH、フローFISH、比較ゲノムハイブリダイゼーション、ブロッティング、ウエスタンブロッティング、サザンブロッティング、イースタンブロッティング、ファーウエスタンブロッティング、サウスウエスタンブロッティング、ノースウエスタンブロッティング、およびノーザンブロッティング、酵素アッセイ、ELISA、リガンド結合アッセイ、免疫沈降、ChIP、ChIP-seq、ChIP-ChiP、ラジオイムノアッセイ、蛍光偏光、FRET、表面プラズモン共鳴、フィルタ結合アッセイ、アフィニティクロマトグラフィ、免疫細胞化学、電気泳動アッセイ、核酸電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ネイティブゲル法、フリーフロー電気泳動、iso電気フォーカシング、免疫電気泳動、電気泳動移動度シフトアッセイ、制限酵素断片長多型分析、ザイモグラフィ、遺伝子発現プロファイリング、PCRによるDNAプロファイリング、DNAマイクロアレイ、遺伝子発現の連続分析、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、ディファレンシャルディスプレイPCR、RNA-seq、質量分析、DNAメチル化検出、音響エネルギー、リピドミックベースの分析、免疫細胞の定量化、癌関連マーカーの検出、特定の細胞タイプのアフィニティ精製、DNAシーケンシング、次世代シーケンシング、癌関連融合タンパク質の検出、および化学療法抵抗性関連マーカーの検出。これらの方法の例示的な実施形態を以下に説明するが、これは、これらの技術を例示することを意図している。しかしながら、これらの方法論の変形および代替、ならびに他の方法論が利用されてもよいことを理解されたい。
【0214】
染色技術
【0215】
流体は、前処理(例えば、タンパク質架橋、核酸を露出させるなど)、変性、ハイブリッド形成、洗浄(例えば、厳密洗浄)、検出(例えば、視覚的またはマーカー分子のプローブへの連結)、増幅(例えば、タンパク質、遺伝子などの増幅)、逆染色などのために適用されることができる。様々な実施形態では、物質は、これらに限定されないが、染色剤(例えば、ヘマトキシリン溶液、エオシン溶液など)、湿潤剤、プローブ、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)、抗原回収液(例えば、水性または非水性ベースの抗原回収溶液、抗原回収緩衝液など)、溶媒(例えば、アルコール、リモネンなど)などを含む。染色剤は、これらに限定されないが、色素、ヘマトキシリン染色剤、エオシン染色剤、ハプテン、酵素もしくは蛍光部分などの検出可能な標識を有する抗体もしくは核酸のコンジュゲート、または色を付与するためおよび/もしくはコントラストを増強するための他の種類の物質を含む。それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2015197742号パンフレットおよび国際公開第2015150278号パンフレットを参照されたい。
【0216】
染色技術は、複数のアッセイ情報を1つ以上の関心のある特徴についてのクエリとともに受信し、解剖学的アッセイからの解剖学的情報を染色アッセイ、例えば解剖学的アッセイに一般的に登録される免疫組織化学(IHC)アッセイの画像上に投影して、分析に適切な特徴を配置または判定するためのシステムおよび方法を使用することができる。解剖学的情報が使用されて、1つ以上の一般的に登録された染色またはIHCアッセイに投影されるマスクを生成することができる。IHCアッセイにおける目的の特徴の位置は、マスクによって提供される解剖学的状況と相関させることができ、解剖学的マスクに一致する任意の目的の特徴は、分析に適切であるように選択または指示される。さらにまた、解剖学的マスクは、複数の領域に分割されることができ、複数のIHCアッセイからの複数の関心のある特徴は、これらの領域のそれぞれと個別に相関させることができる。したがって、開示された装置および方法は、包括的なマルチアッセイ分析のための体系的、定量的、および直感的な手法を提供し、それによって最新技術における限定的なアドホックまたは主観的な視覚分析ステップを克服する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015052128号パンフレットを参照されたい。
【0217】
典型的には、癌試料は、細胞を顕微鏡スライド上に固定し、様々な染色方法(例えば、形態学的染色または細胞遺伝学的染色)を用いてそれらを染色することによって病理学的に検査される。次いで、染色された検体は、異常なまたは癌性の細胞および細胞形態の有無について評価される。一般的な情報のみを提供するが、組織学的染色法は、生物学的試料中の癌性細胞の検出のために現在実施されている最も一般的な方法である。癌検出のためにしばしば使用される他の染色方法は、免疫組織化学および活性染色を含む。これらの方法は、癌性細胞における特異的抗原または酵素活性の有無に基づく。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012152747号パンフレットを参照されたい。
【0218】
難読化顔料を含有する試料を処理するための方法、キット、およびシステムが開示される。この方法は、試料内の難読化顔料が脱色されるように清澄化試薬を試料に適用することを含む。難読化顔料を脱色すると、病理学者が試料を検査する能力が向上する。例示的な実施形態では、試料内の顔料に関連する染色難読化を軽減するために、基材に取り付けられた試料を処理する自動化された方法が開示される。この方法は、試料が搭載された基材を自動化された機器に配置することと、清澄化試薬が試料と接触し、試料内の顔料が脱色されるように、清澄化試薬を適用することとを含む。この方法は、清澄化試薬が試料から実質的に除去されるようにすすぎ試薬を適用することと、試料が特異的に染色されるように発色試薬を適用することとをさらに含む。試料内の顔料は、明確に染色された試料が認定されたリーダーによって解釈可能であるように、清澄化試薬によって脱色される。他
の例示的な実施形態では、試料中の難読化顔料を脱色するためのキットが開示される。キットは、試薬ボトルと、試薬ボトルに入れられた清澄化試薬とを含む。清澄化試薬は、過酸化水素の水溶液を含み、試薬ボトルは、清澄化試薬が試料と接触するように自動スライド染色装置が清澄化試薬の適用を制御するように、自動スライド染色装置に動作可能に接続されるように構成される。さらなる例示的な実施形態では、顔料を含有する組織病理学的試料のための特定の信号難読化を緩和するためのシステムが開示される。このシステムは、自動化装置、清澄化試薬、および発色試薬を含む。自動化された機器は、基材に付着した組織病理学的試料を受け取り、清澄化試薬および発色試薬を試料に送達し、加熱および混合を清澄化試薬および試料に送達された発色試薬に提供するように構成される。清澄化試薬は、組織病理学的試料と接触し、難読化顔料を脱色するように構成される。発色試薬は、組織病理学的試料と接触し、特定の信号を沈着させるように構成される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2014056812号パンフレットを参照されたい。
【0219】
免疫染色およびインサイチュDNA分析は、組織学的診断において有用なツールとすることができる。免疫染色は、試料中のエピトープとの抗体の特異的結合親和性、および特定のタイプの疾患細胞にのみ存在することがある固有のエピトープと特異的に結合する抗体の利用可能性の増加に依存することができる。免疫染色は、疾患状態の特定の形態学的指標を選択的に強調するために、スライドガラスに取り付けられた試料に対して行われる一連の処理ステップを含むことができる。いくつかの例では、処理ステップは、非特異的結合を減少させるための試料の前処理、抗体処理およびインキュベーション、酵素標識二次抗体処理およびインキュベーション、酵素との基質反応および対比染色を含むことができる。結果は、抗体と結合するエピトープを有する試料の蛍光または発色の強調された領域を生成することができる。いくつかの例では、インサイチュDNA分析は、細胞または試料中のヌクレオチド配列とプローブとの特異的結合親和性に依存する。免疫組織化学(IHC)または免疫細胞化学(ICC)は、抗体が可視マーカーでタグ付けされている特異的抗体-抗原相互作用を検出することによるインサイチュでの細胞成分の可視化を含むことができる。IHCは、組織中の抗原の検出と呼ばれることもあり、ICCは、培養細胞中または培養細胞上の抗原の検出と呼ばれることもある(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、JAVOIS,Methods in Molecular Medicine,V.115:Immunocytochemical Methods and Protocols,2nd edition,(1999)Humana Press,Totowa,New Jersey)が、IHCまたはICCとして記載される方法も同様に適用可能となり得る。可視マーカーは、蛍光色素、コロイド状金属、ハプテン、放射性マーカーまたは酵素とすることができる。調製方法にかかわらず、最小バックグラウンドまたは非特異的染色を伴う最大信号強度は、最適な抗原可視化を与えるために望ましいことがある。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2013139555号パンフレットを参照されたい。
【0220】
初期の研究に基づいて、miRNAは、哺乳動物における発生調節および細胞分化、ならびに心臓発生およびリンパ球発生において役割を果たす。さらに、miRNAは、低酸素、アポトーシス、幹細胞分化、増殖、炎症、および感染に対する応答などの他の生物学的プロセスに関与する。miRNAは、腫瘍形成の重要な特徴である細胞分化、増殖および生存に関与する経路の複数のエフェクターを同時に標的化するために使用されることができる。いくつかのmiRNAが癌に連結されている。結果として、miRNAは、癌遺伝子または腫瘍抑制因子として作用するようであるため、miRNAのインサイチュ分析は、癌の診断および治療に有用とすることができる。例えば、多くの腫瘍細胞は、正常組織と比較した場合、異なるmiRNA発現パターンを有する。過剰なc-Myc(いくつかの癌に関与する変異型形態を有するタンパク質)を産生するように遺伝子改変されたマウスを用いた研究により、miRNAが癌発生に影響を及ぼすことが確立された。miR
NAを検出するための方法、同様にまた、miRNAによって翻訳されるかまたは調節されるタンパク質を検出するための方法は、特に効率的且つ迅速な検出のための自動化された方法において非常に望ましい。miRNAを検出するための従来の方法は、miRNAおよびそのタンパク質発現標的(miRNAによって調節される可能性がある)の双方を同じ試料において検出しない。例示的な方法は、典型的には、プロテアーゼ系細胞コンディショニングを使用して細胞成分を消化して核酸標的を露出させることを必要とする。さらにまた、例示的な方法は、ノーザンブロットおよびウエスタンブロットを使用して、miRNAレベルおよびタンパク質レベルを相関させる。さらに、試料を「研削・結合」する分子的手法が利用されることができる。組織ベースの手法は、以前に実証されている。これらの方法は、一般に、酵素ステップを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2013079606号パンフレットを参照されたい。
【0221】
開示される実施形態は、miRNAおよびタンパク質の多重検出に特に適した自動化された方法を利用することができる。例示的な実施形態では、1つ以上のタンパク質の発現は、miRNAによって調節されることができる。別の実施形態では、この方法は、miRNAとタンパク質との間の細胞状況を同定することを可能にする。この方法は、例えば、(a)miRNA標的を検出するのに適した試薬、(b)タンパク質標的を検出するのに適した試薬、および(c)miRNA標的およびタンパク質標的を染色するのに適した試薬を試料に適用するために自動化されたシステムを使用することを含むことができる。本実施形態の一態様は、タンパク質標的を保存するための非酵素的細胞コンディショニングの使用、すなわちプロテアーゼに基づく細胞コンディショニングの回避に関する。細胞コンディショニングステップは、周囲温度よりも高い温度、例えば約80℃から約95℃で、約7.7から約9のpHを有するTris系緩衝液を含む僅かに塩基性のpHを有する緩衝液などの細胞コンディショニング溶液で試料を処理することを含むことができる。自動化された方法は、miRNAおよびタンパク質標的を同時にまたは逐次的に検出することができるが、より良好な染色結果は、典型的には、最初にmiRNAを検出および染色し、次いで、タンパク質標的を検出および染色することによって得られる。より具体的に開示される実施形態は、まず、試料に対して非酵素的細胞コンディショニングを実施することを含む。次いで、試料は、特定のmiRNA標的について選択される核酸特異的結合部分と接触され、その後、miRNA特異的結合部分を検出する。次いで、試料は、タンパク質標的について選択されたタンパク質特異的結合部分と接触され、その後、タンパク質特異的結合部分を検出する。特定の実施形態では、核酸特異的結合部分は、酵素、フルオロフォア、ルミノフォア、ハプテン、蛍光ナノ粒子、またはそれらの組み合わせなどの検出可能な部分にコンジュゲートされたロックド核酸(LNA)プローブである。ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル、ビオチン、フルオレセイン、ローダミン、ブロモデオキシウリジン、マウス免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせなどの特定の適切なハプテンが当該技術分野において一般的である。オキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノイド、クマリン、シクロリグナン、ヘテロビアリール、アゾアリール、ベンゾジアゼピン、およびそれらの組み合わせから選択されるハプテンを含む他の適切なハプテンが、Ventana Medical Systems,Inc.によって具体的に開発された。ハプテンは、抗ハプテン抗体を用いて検出されることができる。特定の開示された実施形態では、抗ハプテン抗体は、抗種抗体-酵素コンジュゲートによって検出され、酵素は、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの任意の適切な酵素である。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2013079606号パンフレットを参照されたい。
【0222】
対比染色は、顕微鏡下で標的の構造をより簡単に視覚化できるように、試料を薬剤で染色した後、試料を後処理して1つ以上の標的を検出する方法である。例えば、免疫組織化学的染色をより明確にするために、任意に、封入の前に対比染色を使用する。対比染色は、一次染色とは色が異なる。ヘマトキシリン、エオシン、メチルグリーン、メチレンブルー、ギムザ、アルシアンブルー、DAPI、およびニュークリアファストレッドなど、数多くの対比染色がよく知られている。いくつかの例では、複数の染色剤を一緒に混合して対比染色剤を生成することができる。これにより、柔軟性と染色を選択する機能が提供される。例えば、最初の染色は、特定の属性を持っているが、別の望ましい属性を持っていない混合物に対して選択されることができる。不足している目的の属性を表示する2回目の染色が混合物に追加されることができる。例えば、トルイジンブルー、DAPI、およびポンタミンスカイブルーが混合されて対比染色を形成することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012116949号パンフレットを参照されたい。
【0223】
ヘマトキシリンは、ヘマトキシロン属の木の赤心材に見られる天然に存在する化合物である。ヘマトキシリン自体は水溶液中で無色であり、組織成分を染色する活性成分ではない。むしろ、ヘマトキシリンの酸化生成物であるヘマテインは、特に媒染剤と複合体化すると、ヘマトキシリン色素溶液の活性染色成分になる。ヘマテインは、空気および日光への曝露によって自然に生成される。天然のプロセスは「熟成、」と呼ばれ、細胞を染色するのに適した溶液を提供するのに3ヶ月以上かかることがある。自動化された染色手順およびシステムは、染色溶液を生物学的試料に送達するために機械的システムを使用する。標準的なヘマテイン染色手順は、ヘマトキシリン/ヘマテインおよび媒染剤の双方を含む予備混合ストックを利用した。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012096842号パンフレットを参照されたい。
【0224】
免疫染色は、典型的には、疾患状態の特定の形態学的指標を選択的に染色することによって強調するために、スライドガラス上に載せられた試料に対して行われる一連の処理ステップを利用する。典型的なステップは、非特異的結合を減少させるための試料の前処理、抗体処理およびインキュベーション、酵素標識二次抗体処理およびインキュベーション、抗体と結合するエピトープを有する試料の領域を強調するフルオロフォアまたは発色団を生成するための酵素との基質反応、対比染色などを含む。これらのステップのそれぞれは、前のステップから未反応の残留試薬を除去するために複数のすすぎステップによって分離される。インキュベーションは、通常約40℃の高温で行われ、試料は、典型的には脱水から連続的に保護される。インサイチュDNA分析は、試料中の固有のヌクレオチド配列を有するプローブの特異的結合親和性を使用し、同様に、様々な試薬およびプロセス温度要件を伴う一連のプロセスステップを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2011139976号パンフレットを参照されたい。
【0225】
免疫組織化学(IHC)染色
【0226】
試料(または細胞の染色である免疫細胞化学)の免疫組織化学またはIHC染色は、おそらく最も一般的に適用される免疫染色技術である。IHC染色の最初の場合は蛍光色素を使用したが(免疫蛍光を参照)、ペルオキシダーゼ(免疫ペルオキシダーゼ染色を参照)およびアルカリホスファターゼなどの酵素を使用する他の非蛍光法が現在使用されている。これらの酵素は、光学顕微鏡によって容易に検出可能な着色生成物を与える反応を触媒することができる。あるいは、放射性元素が標識として使用されることができ、免疫反応がオートラジオグラフィーによって可視化されることができる。調製または固定は、細胞形態および構造の保存に寄与することができる。不適切な固定または長時間の固定は、抗体結合能力を著しく低下させる可能性がある。ホルマリン固定試料では、多くの抗原が首尾よく実証されることができる。多くの抗原の検出は、固定によって形成されたタンパク質架橋の一部を切断して隠れた抗原部位を露出させることによって作用する抗原回収法によって改善されることができる。これは、様々な時間の加熱(熱誘導エピトープ回収またはHIER)または酵素消化(タンパク質分解誘導エピトープ回収またはPIER)を使用することによって達成されることができる。
【0227】
「免疫組織化学(IHC)」は、抗原と抗体などの特異的結合剤との相互作用を検出することによって、試料(膵臓癌試料など)中の抗原(タンパク質など)の存在または分布を判定する方法を指す。抗原(例えば標的抗原)を含む試料は、抗体-抗原結合を可能にする条件下にて、抗体と共にインキュベートされる。抗体に抱合体化した検出可能な標識により(直接検出)、または、一次抗体に対して増加した二次に抱合体化した検出可能な標識により(例えば、間接検出)、抗体-抗原結合が検出されることができる。IHCに使用されることができる例示的な検出可能な標識は、これらに限定されないが、放射性同位体、蛍光色素(フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンなど)、ハプテン、酵素(セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなど)、および色素原(例えば、3,3’-ジアミノベンジジンまたはファーストレッド)を含む。いくつかの例では、IHCが利用されて、試料、例えば膵臓癌試料中の1つ以上のタンパク質の存在を検出するか、またはその量を判定する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2013019945号パンフレットを参照されたい。
【0228】
免疫組織化学またはIHCは、試料の細胞中のタンパク質などの抗原を局在化させ、特定の抗原への抗体の特異的結合を促進するために抗原を使用するプロセスを指す。この検出技術は、所与のタンパク質が試料内のどこに位置するかを正確に示すことができるという利点を有する。それはまた、組織自体を調べるのにも効果的な方法である。抗原および核酸を検出するためのハプテンなどの小分子の使用は、IHCにおける顕著な方法となっている。ハプテンは、抗ハプテン抗体と組み合わせて、特定の分子標的を検出するのに有用である。例えば、一次抗体および核酸プローブなどの特異的結合部分は、1つ以上のハプテン分子で標識されることができ、これらの特異的結合部分がそれらの分子標的に結合すると、発色ベースの検出システムまたは蛍光標識などの検出可能な標識の一部としての酵素を含む抗ハプテン抗体コンジュゲートを使用して検出されることができる。検出可能な抗ハプテン抗体コンジュゲートの試料への結合は、試料中の標的の存在を示す。二次代謝生成物としてジギタリス植物にのみ存在するジゴキシゲニンは、様々な分子アッセイで利用されているハプテンの一例である。米国特許第4,469,797号明細書は、試験試料中の薬物に対する抗ジゴキシン抗体の特異的結合に基づいて血液試料中のジゴキシン濃度を判定するためのイムノアッセイの使用を開示している。米国特許第5、198,537号明細書は、イムノアッセイなどの免疫学的試験に使用されているいくつかの追加のジゴキシゲニン誘導体を記載している。試料の免疫組織化学(IHC)アッセイおよびインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)アッセイなどのインサイチュアッセイ、特にそのような試料の多重化アッセイでは、バックグラウンド干渉なしに望ましい結果を提供する方法を同定および開発することが非常に望ましい。そのような方法の1つは、特許された触媒レポーター沈着(CARD)に基づくチラミド信号増幅(TSA)の使用を含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,593,100号明細書は、標識フェノール結合体を酵素と反応させることによって、CARDまたはチラミド信号増幅(TSA)法における酵素の触媒作用を増強することを開示しており、ここで、反応は増強試薬の存在下で行われる。前述の刊行物と同様に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012003476号パンフレットを参照されたい。
【0229】
ハプテン結合体を使用する方法の実施形態が利用されることができる。一般に、この方法は、a)ペルオキシダーゼを試料中の標的に固定化するステップであって、ペルオキシダーゼがペルオキシダーゼ活性化可能なアリール部分、例えばチラミンまたはチラミン誘導体と反応することができる、固定化するステップと、b)試料をハプテンコンジュゲートを含む溶液と接触させるステップであって、ハプテンコンジュゲートが上記のペルオキシダーゼ活性化可能なアリール部分に結合したハプテンを含む、接触させるステップと、c)試料を過酸化物を含む溶液と接触させるステップであって、それによってハプテンコンジュゲートがペルオキシダーゼおよび過酸化物と反応し、固定化ペルオキシダーゼとま
たは固定化ペルオキシダーゼに近位の共有結合を形成する、接触させるステップと、d)ハプテンを検出することによって試料中の標的の位置を特定するステップと、を含むことができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012003476号パンフレットを参照されたい。
【0230】
フローサイトメトリ
フローサイトメトリは、細胞を流体の流れに懸濁し、電子検出装置によってそれらを通過させることによって、細胞計数、細胞選別、バイオマーカー検出およびタンパク質工学に使用されるレーザーベースの生物物理学的技術である。それは、最大毎秒数千の粒子の物理的および化学的特性の同時マルチパラメトリック分析を可能にする。フローサイトメトリは、健康障害、特に血液癌の診断に日常的に使用されているが、基礎研究、臨床診療および臨床試験において多くの他の用途を有する。一般的な変形は、目的の集団を精製するために、それらの特性に基づいて粒子を物理的に選別することである。
【0231】
蛍光活性化細胞選別(FACS)
【0232】
蛍光活性化細胞選別(FACS)は、特殊なタイプのフローサイトメトリである。それは、各細胞の特定の光散乱および蛍光特性に基づいて、細胞の異種混合物を一度に1つの細胞ずつ、2つ以上の容器に選別する方法を提供する。それは、個々の細胞からの蛍光信号の迅速で客観的且つ定量的な記録、ならびに特定の目的の細胞の物理的分離を提供するため、有用な科学機器である。細胞懸濁液は、狭く急速に流れる液体の流れの中心に同伴される。流れは、セルの直径に対してセル間に大きな分離が存在するように配置される。振動機構は、細胞の流れを個々の液滴に分解させる。システムは、液滴あたり複数の細胞が存在する可能性が低くなるように調整される。流れが液滴に変わる直前に、流れは、蛍光測定ステーションを通過し、そこで各細胞の目的の蛍光特性が測定される。帯電リングは、流れが液滴に分解する点にちょうど配置される。直前の蛍光強度測定に基づいてリング上に電荷が配置され、反対の電荷は、流れから破壊されるときに液滴上に捕捉される。次いで、帯電した液滴は、静電偏向システムを通って落下し、静電偏向システムは、その電荷に基づいて液滴を容器に方向転換させる。いくつかのシステムでは、電荷は、流れに直接印加され、液滴の分離は、流れと同じ符号の電荷を保持する。次いで、流れは、液滴が分離した後に中立に戻される。
【0233】
単一細胞の蛍光活性化液滴選別
【0234】
液滴中の単一細胞の区画化は、細胞から放出されたまたは細胞によって分泌されたタンパク質の分析を可能にし、それによって従来のフローサイトメトリおよび蛍光活性化細胞選別の主な制限の1つを克服する。この手法の一例は、単一のマウスハイブリドーマ細胞から分泌された抗体を検出するための結合アッセイである。分泌された抗体は、50plの液滴中で単一マウスハイブリドーマ細胞、蛍光プローブおよび抗マウスIgG抗体でコーティングされた単一ビーズを共区画化することによって、僅か15分後に検出される。ビーズは、分泌された抗体を捕捉し、捕捉された抗体がプローブに結合すると、蛍光は、ビーズ上に局在化し、~200Hzでの液滴選別ならびに細胞濃縮を可能にする明確に区別可能な蛍光信号を生成する。記載されるマイクロ流体システムは、他の細胞内、細胞表面または分泌タンパク質をスクリーニングし、触媒活性または調節活性を定量するために容易に適合される。~100万個の細胞をスクリーニングするために、マイクロ流体操作は、2~6時間で完了されることができる。マイクロ流体装置および哺乳動物細胞の調製を含む全プロセスは、5~7日で完了されることができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Mazutisら(2013)「Single-sell analysis and sorting using droplet-based microfluidics」,Nat.Protoc.8:870-891を参照のこと。
【0235】
画像分析
【0236】
試料は、臨床免疫プロファイル研究において補助となる自動免疫細胞検出のためのシステムおよびコンピュータ実装方法によって分析されることができる。自動免疫細胞検出方法は、RGB画像または生物学的に意味のある非混合画像などのマルチチャネル画像から複数の画像チャネルを取得することを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015177268号パンフレットを参照されたい。
【0237】
多重IHCスライドおよび/または蛍光染色スライドのセット画像から免疫スコアを自動的に計算する画像分析アルゴリズムおよび/またはシステムが利用されることができる。画像分析アルゴリズムは、マルチプレックスアッセイで染色された単一試料中の細胞の数のタイプをカウントするためのコンピュータ実装方法であって、リンパ球マーカーCD3、CD8、CD20、FoxP3、および腫瘍検出マーカーを含むマルチプレックスアッセイによって染色された試料をイメージングすることと、マルチプレックスアッセイで染色された単一試料の画像を、マルチプレックスアッセイのマーカーごとに別々の画像チャネルに混合解除することと、各チャネルの強度情報に基づいて各画像チャネルの関心領域を識別することであって、各チャネルの低強度の領域が除去され、高強度の領域が細胞信号を表す、識別することと、単一の代理画像を生成することであって、代理画像が、全てのリンパ球マーカーの画像チャネル情報の組み合わせである、生成することと、細胞検出アルゴリズムを適用することであって、細胞検出アルゴリズムが、膜発見アルゴリズムまたは核発見アルゴリズムである、適用することと、各画像チャネルまたは結合されたチャネルの画像、またはグレースケールまたは吸光度画像などの変換された画像、または代理画像におけるリンパ球の特徴およびリンパ球の組み合わせを識別することと、既知のリンパ球およびリンパ球の組み合わせの特徴に基づいて分類アルゴリズムを訓練することと、訓練されたアルゴリズムを、偽陽性細胞、CD3のみのT細胞、CD3およびCD8のT細胞、FP3のT細胞、ならびにCD20のB細胞のうちの少なくとも1つとして検出された細胞を分類するために識別された、各画像チャネルまたは組み合わせられたチャネルの各画像、あるいはグレースケールまたは吸収画像などの変換された画像、または代理画像におけるリンパ球の特徴およびリンパ球の組み合わせに適用することと、分類されたそれぞれの異なるタイプの細胞の数をカウントすることと、試料のスコアを生成することであって、スコアがカウントされた各タイプのセルの数に基づく、生成することと、を含む、コンピュータ実装方法を含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015124737号パンフレットを参照されたい。
【0238】
例示的な実施形態は、2段階分類方法を含むシステムおよび方法を利用することを含むことができる。本明細書で開示される動作は、WS画像を複数のパッチに分割することと、SVMなどの「ソフト」分類を使用して各パッチを最初に分類することと、各パッチの信頼スコアおよびラベルを生成することとを含む。分類結果として得られた各パッチの位置、その特徴、およびそのタイプ、ならびにその信頼スコアは、データベースに記憶されることができる。第2の分類ステップは、低信頼度パッチをデータベース内の高信頼度パッチと比較することと、同様のパッチを使用してデータベース内のパッチの空間コヒーレンスを増強することとを含む。換言すれば、各低信頼度パッチについて、隣接する高信頼度パッチは、各パッチのラベルを精緻化するためにより大きな寄与をし、これにより、低信頼度パッチのセグメント化精度が向上する。訓練データベースを成長させるための既存の適応的/能動的学習技術とは対照的に、開示された動作は、単一の訓練データベースを成長させることにそれほど関心がなく、代わりに、各試験画像を独立して処理することに焦点を合わせ、一方で、分析中の画像のラベリング信頼度情報に基づいて分類精度を適応的に改善する。換言すれば、信頼できるラベルパッチデータベースが画像ごとに生成され、類似性検索動作が画像内で実行されて、信頼性の低いパッチの分類結果を改良する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015113895号パンフレットを参照されたい。
【0239】
例示的な実施形態は、MSLNタンパク質発現などのメソテリン(MSLN)発現を検出およびスコアリングする方法を利用することを含むことができる。特定の例では、この方法は、腫瘍細胞を含む試料をMSLNタンパク質特異的結合剤(抗体など)と接触させることを含む。MSLNを発現する例示的な腫瘍は、これらに限定されないが、卵巣癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、NSCLC)、膵臓癌および中皮腫を含む。腫瘍細胞におけるMSLNタンパク質の発現は、例えば顕微鏡法および免疫組織化学(IHC)を使用して検出または測定される。試料は、MSLNタンパク質発現について0から3+の尺度でスコア化される。例えば、試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(例えば、腫瘍細胞の少なくとも約10%)がタンパク質特異的結合剤(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)で染色されているかどうかが判定される。腫瘍細胞の10%未満(例えば、約10%未満)が特異的結合剤で染色された場合、試料にはMSLNタンパク質発現について0のスコアが割り当てられる。試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(例えば、腫瘍細胞の少なくとも約10%)がタンパク質特異的結合剤(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)で染色されるが、腫瘍細胞の10%未満(例えば、約10%未満)が2+以上の強度で特異的結合剤で染色される場合、試料にはMSLNタンパク質発現について1+のスコアが割り当てられる。試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(例えば、腫瘍細胞の少なくとも約10%)が2+以上の強度でタンパク質特異的結合剤(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)で染色され、染色された腫瘍細胞の大部分が2+の強度で染色される場合、試料にはMSLNタンパク質発現について2+のスコアが割り当てられる。試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(例えば、腫瘍細胞の少なくとも約10%)が2+以上の強度でタンパク質特異的結合剤(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)で染色され、染色された腫瘍細胞の大部分が3+の強度で染色され、試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(例えば、腫瘍細胞の少なくとも約10%)が3+の強度でタンパク質特異的結合剤(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)で染色される場合、試料にはMSLNタンパク質発現について3+のスコアが割り当てられる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015032695号パンフレットを参照されたい。
【0240】
ハイブリダイゼーション
【0241】
インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)は、中期または相間染色体調製物との関連で標的核酸(例えば、ゲノム標的核酸)を含有する試料(例えば、スライドに取り付けられた試料)を、標的核酸(例えば、本明細書中に開示されるプローブの1つ以上プローブ)に特異的にハイブリダイズ可能または特異的な標識プローブと接触させることを含む。スライドは、例えば、均一なハイブリダイゼーションを妨害することができる材料を除去するために、任意に前処理される。染色体試料およびプローブは、双方とも、例えば、二本鎖核酸を変性させるための加熱によって処理される。プローブ(適切なハイブリダイゼーション緩衝液に製剤化されたもの)および試料は、ハイブリダイゼーションが起こる(典型的には平衡に達する)ことを可能にする条件下および十分な時間にわたって組み合わせられる。染色体調製物が洗浄されて過剰なプローブを除去し、標準的な技術を用いて標的の特異的標識の検出が行われる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015124702号パンフレットを参照されたい。
【0242】
癌性細胞を検出する他の方法は、癌細胞における染色体異常の存在を利用する。特に、全染色体または染色体セグメントのコピーの欠失または多重化、およびゲノムの特定の領域のより高いレベルの増幅は、癌において一般的に起こる。染色体異常は、ギムザ染色染色体(Gバンディング)または蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)な
どの細胞遺伝学的方法を使用して検出されることが多い。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012152747号パンフレットを参照されたい。
【0243】
本開示の技術は、癌の分子機構を分析する際の特異性を高めるための改良された方法を提供する。したがって、特定の実施形態では、本技術は、細胞を含有する単一細胞または単一試料中の細胞レベルで分子マーカーおよび表現型形態計測マーカーの双方の存在を判定する多変量癌診断方法であって、
a.単一の細胞または複数の細胞を含む被験体からの単一の試料から分子マーカーデータを取得することと、
b.前記単一試料の多変量分析を提供するために、ステップ(a)において使用されるのと同じ1つ以上の単一細胞から定量的細胞形態データを取得することであって、多変量データセットが、ステップ(b)からの定量的細胞形態データおよびステップ(a)からの分子マーカーデータの双方を含む、取得することと、
c.ステップ(b)において得られた多変量分析データセットを、既知の臨床転帰を有する個体から収集された癌および非癌細胞試料から分子マーカーデータおよび定量的細胞形態データの双方を得ることによって形成された参照多変量分析データセットと比較することと
を含む、方法に関する。
【0244】
ステップ(c)の比較結果は、参照多変量分析データセットに見られる臨床転帰の癌の進行、発生、転移または他の特徴と統計的に関連する特徴およびマーカーの特定の組み合わせによって定義される被験体からの臨床転帰の予測を提供する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012152747号パンフレットを参照されたい。
【0245】
例示的な実施形態は、スペクトル分解検出およびデータ前処理を含む特殊なイメージング手法と組み合わせて分子マーカーの蛍光標識を使用することによって癌の病理学的予後状態を判定するための情報を提供する技術を利用することを含むことができる。本技術は、単一のデータ取得サイクル内で試料上の分子特異的プローブを検出するために調製された試料上の核形態を取得および分析することができるイメージング手法を提供する。このイメージング手法は、ラベリング、取得、前処理および分析技術の組み合わせを使用する。多次元画像が収集および分析されて、発光波長によって関心のある異なる分析物チャネルを分離および区別する。その後の分析物チャネルは、細胞の形態および遺伝子再構成、遺伝子発現および/またはタンパク質発現を定量するデータの異なる態様を表す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012152747号パンフレットを参照されたい。
【0246】
例示的な実施形態は、核を視覚化するためのシステム、方法、およびキットを利用することを含むことができる。試料は、プロテアーゼで前処理して核を透過処理され、次いでナノ粒子/DNA結合部分コンジュゲートとともにインキュベートされることができる。DNA結合部分は、少なくとも1つのDNA結合分子を含む。コンジュゲートが核内のDNAに結合し、ナノ粒子が可視化され、それによって核が可視化される。コンピュータおよび画像分析技術は、染色体分布、倍数性、形状、サイズ、テクスチャ特徴、および/または文脈的特徴などの核特徴を評価するために使用される。この方法は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションを含む、試料に対する他の多重化試験と組み合わせて使用されることができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012116949号パンフレットを参照されたい。
【0247】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、染色体上の特定のDNA配列の存在または非存在を検出および局在化するために使用されることができる技術である
。FISHは、高度の配列類似性を示す染色体の部分のみに結合する蛍光プローブを使用する。FISHはまた、試料内の特定のmRNA配列を検出するために使用されることができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012116949号パンフレットを参照されたい。
【0248】
FISH、CISH、およびSISHのための多数の手順が当該技術分野において公知である。例えば、FISHを実施するための手順は、米国特許第5,447,841号明細書、米国特許第5,472,842号明細書;および米国特許第5,427,932号明細書に記載されている。CISHは、米国特許第6,942,970号に記載されており、追加の検出方法は、米国特許第6,280,929号に提供されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。感度、分解能、または他の望ましい特性を改善するために、FISH、CISH、およびSISH手順とともに多数の試薬および検出スキームが使用されることができる。上述したように、フルオロフォア(蛍光色素および量子ドットを含む)で標識されたプローブは、FISHを行うときに直接光学的に検出されることができる。あるいは、プローブは、ハプテン[以下の非限定的な例:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、および様々なオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオウレア、ロテノン、クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物、およびそれらの組み合わせなど]、リガンドまたは他の間接的に検出可能な部分などの非蛍光分子で標識されることができる。次いで、そのような非蛍光分子(およびそれらが結合する標的核酸配列)で標識されたプローブは、試料(例えば、プローブが結合している細胞試料)を、選択されたハプテンまたはリガンドに特異的な抗体(または受容体、または他の特異的結合パートナー)などの標識検出試薬と接触させることによって検出されることができる。検出試薬は、フルオロフォア(例えば、量子ドット)または別の間接的に検出可能な部分で標識されることができ、または1つ以上の追加の特異的結合剤(例えば、二次抗体または特異的抗体)と接触されることができ、次いで、フルオロフォアで標識されることができる。必要に応じて、検出可能な標識は、抗体、受容体(または他の特異的結合剤)に直接結合される。あるいは、検出可能な標識は、ヒドラジドチオールリンカー、ポリエチレングリコールリンカー、または同等の反応性を有する任意の他の柔軟な結合部分などのリンカーを介して結合剤に結合される。例えば、特異的結合剤、例えば抗体、受容体(または他の抗リガンド)、アビジンなどは、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコール(PEG)リンカーなどのヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーを介してフルオロフォア(または他の標識)で共有結合的に修飾されることができる。ヘテロ二官能性リンカーは、例えばカルボニル反応性基、アミン反応性基、チオール反応性基および光反応性基から選択される2つの異なる反応性基を組み合わせ、そのうちの第1の反応性基は、標識に結合され、そのうちの第2の反応性基は、特異的結合剤に結合される。他の例では、プローブまたは特異的結合剤(例えば、抗体、例えば、一次抗体、受容体または他の結合剤)は、蛍光発生または発色組成物を検出可能な蛍光、着色またはそうでなければ検出可能な信号(例えば、SISHにおける検出可能な金属粒子の堆積の場合のように)に変換されることができる酵素で標識される。上記のように、酵素は、関連するプローブまたは検出試薬に直接またはリンカーを介して間接的に結合されることができる。適切な試薬(例えば、結合試薬)および化学反応(例えば、リンカーおよび結合化学)の例は、米国特許出願公開第2006/0246524号明細書、米国特許出願公開第2006/0246523号明細書および米国特許出願公開第2007/0117153号明細書に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015124702号パンフレットを参照されたい。
【0249】
前記方法は、2つ以上(例えば、2、3、4など)の異なる標的の検出を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、それぞれが単一の試料において個別に検出される
ことができるように、異なる検出可能な標識および/または検出システムが標的のそれぞれに使用されることができる。任意の適切な検出可能な標識および/または検出システムが使用されることができる。より具体的には、明視野インサイチュハイブリダイゼーションのためのシステムが企図される。いくつかの実施形態では、システムは、標的RNAに特異的なX個のユニークな2’-O-メチルRNAプローブを含むプローブセットを含み、ここで、X>2(例えば、X=2、X=3、X=4、X=5など)であり、プローブは、標的RNA内のX個の異なる部分を標的とする。各2’-O-メチルRNAプローブは、少なくとも1つの検出可能な部分とコンジュゲートされることができる。検出可能な部分は、信号増幅のために反応性色素原コンジュゲート系(例えば、チラミド色素原コンジュゲート系)に結合するように適合されることができる。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルRNAプローブは、それぞれ、15から30ヌクレオチドの間、20から50ヌクレオチドの間、40から80ヌクレオチドの間、20から100ヌクレオチドの間または20から200ヌクレオチドの間の長さを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015124738号パンフレットを参照されたい。
【0250】
検体は、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)プロトコルにしたがって処理された乳房細胞試料とすることができる。ISHプロトコルは、ヌクレオチド(例えば、プローブ)の相補鎖を目的の配列にハイブリダイズさせることによって、細胞調製物中の特定の核酸配列(例えば、DNA、mRNAなど)の可視化を提供することができる。ISHプロトコルは、限定されないが、デュアルSISHおよびRed ISHプロトコル、シングルRed ISHプロトコル、シングルSISHプロトコルなどを含むことができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2013113707号パンフレットを参照されたい。
【0251】
動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)
【0252】
動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)遺伝子型判定は、ミスマッチ塩基対の不安定性から生じるDNAの融解温度の差違を利用する。このプロセスは、大幅に自動化されることができ、いくつかの単純な原理を包含する。第1のステップでは、ビオチン化プライマーを用いたPCR反応により、ゲノムセグメントが増幅され、ビーズに結合させる。第2のステップでは、増幅生成物がストレプトアビジンカラムに結合され、NaOHによって洗浄されて非ビオチン化鎖を除去する。次いで、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドが、二本鎖DNAに結合したときに蛍光を発する分子の存在下で加えられる。次いで、融解温度(Tm)を判定することができるまで温度を上昇させながら強度が測定される。SNPは、予想されるTmよりも低い結果をもたらす。DASH遺伝子タイピングは、Tmの定量可能な変化を測定しているため、SNPだけでなく全てのタイプの突然変異を測定することができる。DASHの他の利点は、標識不含プローブと協働する能力、ならびにその単純な設計および性能条件を含む。
【0253】
分子ビーコン
【0254】
分子ビーコンは、特異的に操作された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを利用する。オリゴヌクレオチドは、各末端に相補的領域が存在し、その間にプローブ配列が位置するように設計される。この設計は、プローブがその自然な孤立状態でヘアピンまたはステムループ構造をとることを可能にする。プローブの一端にはフルオロフォアが結合され、他端には蛍光消光剤が結合される。プローブのステムループ構造のために、フルオロフォアは、クエンチャに近接しており、したがって分子が蛍光を発するのを妨げる。分子はまた、プローブ配列のみがアッセイで使用されるゲノムDNAに相補的であるように操作される(Abravayaら(2003年4月).「Molecular beacons as diagnostic tools:technology and applications」.Clin.Chem.Lab.Med.41(4):468-74)。分子ビーコンのプローブ配列がアッセイ中にその標的ゲノムDNAに遭遇すると、それはアニールし、ハイブリダイズする。プローブ配列の長さのために、プローブのヘアピンセグメントは、より長く、より安定なプローブ-標的ハイブリッドを形成するために変性される。この立体配座変化は、フルオロフォアおよびクエンチャが、ヘアピン会合に起因してそれらが密接に近接しないことを可能にし、分子が蛍光を発することを可能にする。一方、プローブ配列が、僅か1個の非相補的ヌクレオチドを有する標的配列に遭遇した場合、分子ビーコンは、優先的にその天然のヘアピン状態に留まり、フルオロフォアが消光されたままであるため、蛍光は観察されない。
【0255】
プライマー伸長
【0256】
プライマー伸長は、最初にプローブをSNPヌクレオチドのすぐ上流の塩基にハイブリダイゼーションし、続いてDNAポリメラーゼがSNPヌクレオチドに相補的な塩基を添加することによってハイブリダイズしたプライマーを伸長する「ミニシーケンシング」反応を含む2段階プロセスである。この組み込まれた塩基が検出され、SNP対立遺伝子を判定する(Syvanen,Nat Rev Genet.2001年12月;2(12):930-42)。プライマー伸長は非常に正確なDNAポリメラーゼ酵素に基づくため、この方法は、一般に非常に信頼性が高い。プライマー伸長は、非常に類似した反応条件下で大部分のSNPを遺伝子型化することができ、これも非常に柔軟性がある。プライマー伸長法は、いくつかのアッセイ形式で使用される。これらのフォーマットは、MALDI-TOF質量分析(Sequenomを参照)およびELISA様方法を含む広範囲の検出技術を使用する。一般に、蛍光標識されたジデオキシヌクレオチド(ddNTP)または蛍光標識されたデオキシヌクレオチド(dNTP)のいずれかの取り込みを使用する2つの主要な手法が存在する。ddNTPを用いると、プローブは、SNPヌクレオチドのすぐ上流で標的DNAにハイブリダイズし、SNP対立遺伝子に相補的な単一のddNTPがプローブの3’末端に付加される(ジデオキシヌクレオチド中の3’-ヒドロキシルの欠損はさらなるヌクレオチドの付加を妨げる)。各ddNTPは、異なる蛍光信号で標識され、同じ反応において4つ全ての対立遺伝子の検出を可能にする。dNTPでは、対立遺伝子特異的プローブは、調査される各SNP対立遺伝子に相補的な3’塩基を有する。標的DNAがプローブの3’塩基に相補的な対立遺伝子を含む場合、標的DNAは、プローブに完全にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼがプローブの3’末端から伸長することを可能にする。これは、蛍光標識されたdNTPをプローブの末端に組み込むことによって検出される。標的DNAがプローブの3’塩基に相補的な対立遺伝子を含まない場合、標的DNAは、プローブの3’末端にミスマッチを生じ、DNAポリメラーゼは、プローブの3’末端から伸長することができない。第2の手法の利点は、いくつかの標識されたdNTPが成長鎖に取り込まれ、信号の増加を可能にすることができるということである。
【0257】
マイクロアレイ
【0258】
マイクロアレイの背後にある中心原理は、相補的ヌクレオチド塩基対間に水素結合を形成することによって互いに特異的に対合する相補的核酸配列の特性である、2つのDNA鎖間のハイブリダイゼーションである。ヌクレオチド配列中の多数の相補的塩基対は、2本の鎖間のより緊密な非共有結合をもたらす。非特異的結合配列を洗い流した後、強く対合した鎖のみがハイブリダイズしたままになる。プローブ配列に結合する蛍光標識された標的配列は、ハイブリダイゼーション条件(温度など)およびハイブリダイゼーション後の洗浄に依存する信号を生成する。スポット(特徴)からの信号の総強度は、そのスポット上に存在するプローブに結合する標的試料の量に依存する。マイクロアレイは、特徴の強度が異なる条件下で同じ特徴の強度と比較され、特徴の同一性がその位置によって知ら
れる相対定量化を使用する。
【0259】
核酸アレイ(オリゴヌクレオチドアレイ、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、遺伝子チップ、またはバイオチップとしても知られている)は、強力な分析ツールになっている。核酸アレイは、本質的に、例えば、行および列における表面上のオリゴヌクレオチドの系統的な分布である。オリゴヌクレオチドは、物理的にまたは共有結合的に表面に付着されることができる。オリゴヌクレオチドを表面に物理的に付着させるための1つの手法は、オリゴヌクレオチド溶液が表面に接触するときにオリゴヌクレオチド溶液を乾燥させることを含む。乾燥または他の方法で固定した後、オリゴヌクレオチドは、表面の「スポット」に閉じ込められる。乾燥手法は、「ドットブロット」と呼ばれる非常に低密度のアレイの製造から始まった。ドットブロットは、オリゴヌクレオチドの液滴を固体表面に手動で堆積させ、乾燥させることによって生成されることができる。ほとんどのドットブロットは、行および列に配置された約20個未満の異なるオリゴヌクレオチドスポットを含む。ドットブロットを超えて前進すると、マイクロスポッティング手法は、機械的またはロボットシステムを使用して多数の微細スポットを形成した。スポットのサイズが小さいと、はるかに高いドット密度が可能になった。例えば、マイクロスポッティングが使用されて、顕微鏡スライド上に数万個のスポットを堆積させた。異なる手法によれば、オリゴヌクレオチドは、基材または支持体上で直接合成されている。マスクレスフォトリソグラフィおよびデジタル光学化学技術は、支持体上で核酸を直接合成するための技術である。これらの手法は、非常に高密度のアレイを生成するために使用されてきた。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,785,863号明細書)。同様に、マスクレスフォトリソグラフィは、ペプチドアレイを製造するために使用されてきた(例えば、Singh-Gassonら.Maskless fabrication of light-directed oligonucleotide microarrays using a digital micromirror array.Nat Biotechnol 1999,17:974-978、その全体は本明細書に参考文献として組み込まれる)。それぞれがユニークなオリゴヌクレオチドの集団を含有する数百万の個別の領域を有するアレイを生成するデジタル光学化学が使用されてきた。核酸およびペプチドアレイは、基材表面上の領域「ドット」のアレイを含み、各領域は特定のオリゴヌクレオチドまたはペプチドに指定される。「アレイ密度」は、本質的に、所与の領域に分布するドットの行および列の数である。高密度アレイは、所与の領域内により多くの行および列を有する。核酸およびペプチドアレイ産業が発展するにつれて、高密度アレイの利用可能性も増加している。所与の領域内のドットの数が増加するにつれて、各ドットのサイズは小さくなる。例えば、顕微鏡スライドの領域全体に分布する数百万のユニークなオリゴヌクレオチドまたはペプチドを有するアレイの1ドットは、約100pm2である。このドットのサイズが小さいと、アレイを使用した結果を読み取って理解する際に技術的課題が生じる。例えば、100pm2のドットが単独で視覚的に観察されることができるが、人間は、倍率なしで近接した2つ以上の100pm2のドットを視覚的に分解することができない。したがって、高密度アレイの製造および使用は、ユーザがもはやアレイを視覚的に読み取ることができない段階まで進んでいる。アレイは、狭い領域に膨大な数(数百万)の密接に配列されたドットを含むため、高性能の撮像装置は、アレイから信号を検出し、ソフトウェアを使用してデータを解釈する。さらにまた、高感度の検出方法が利用されることができる。高感度技術である蛍光イメージングは、ハイブリダイゼーション事象を検出するための標準的な手法となっている。これらのアレイの蛍光イメージングは、一般に、フィルタおよびカメラを備えた顕微鏡を使用する。蛍光は、一般に、これらの装置を用いなければ視覚的に分解されることができない。非常に複雑な蛍光画像は、データの量が多く、その提示が認識できないため、ソフトウェアを使用して処理される。例えば、Fiekowskyらによる米国特許第6,090,555号明細書は、核酸アレイから取得された蛍光画像のコンピュータ支援アライメントおよび逆畳み込みを含む複雑なプロセスを記載している。大規模並列ゲノムまたはプロテオーム調査を実施する能力は大きな価値があるが、核酸およびペプチドアレイは、結合事象の検出および解読が困難であるため、適用性が制限されている。さらにまた、蛍光の使用は、経時的に劣化する蛍光信号および付随する蛍光検出ハードウェアの複雑さに起因して、アレイの一般的な適用性に多くの障害をもたらす。本開示は、オリゴヌクレオチドまたはペプチドアレイを含む、標的分子を検出するための装置および装置を使用する方法に関する。装置は、基材表面に結合した複数の結合分子を含む。結合分子は、標的分子に結合するように設計される。標的および結合分子の結合は、装置の検査によって同定されることができる。いくつかの実施形態では、装置は、標的核酸と固定化オリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション事象の検出を可能にする。他の実施形態では、装置は、標的ポリペプチドと固定化ペプチドとの間の結合事象の検出を可能にする。例示的な実施形態では、装置は、少なくとも1つの基材表面を有する基材と、基材表面に結合した複数の固定化オリゴヌクレオチドまたはペプチドとを含み、複数の固定化オリゴヌクレオチドまたはペプチドは、基材表面上にパターン化されて、少なくとも1つの光学的に解読可能なパターンを形成する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2013110574号パンフレットを参照されたい。
【0260】
例示的な実施形態は、1つ以上の標的化合物を検出するための装置を利用することを含むことができる。特定の目的の標的化合物の1つのタイプは、標的核酸または標的オリゴヌクレオチドである。特定の目的の別の種類の標的化合物は、標的ポリペプチドである。固定化オリゴヌクレオチドを含む実施形態の場合、標的核酸は、一般に、標的分子型であると理解されるであろう。しかしながら、当業者は、固定化されたオリゴヌクレオチドが、様々な他の標的化合物を検出することができるオリゴヌクレオチド結合部分コンジュゲートのための結合パートナーを提供することを理解する。例えば、固定化されたオリゴヌクレオチドを使用して、抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが装置に固定化されて、装置を抗体マイクロアレイに変換することができる。抗体マイクロアレイが使用されて、目的のタンパク質標的を検出することができる。同様に、固定化ペプチドを含む実施形態では、標的分子タイプは、抗体、タンパク質、または酵素を含むことができる。しかしながら、基礎となるペプチドは、ペプチド結合部分と分子標的化部分とのコンジュゲートを使用することによって修飾されることもできる。さらにまた、本開示は、固定化されたオリゴヌクレオチドおよびペプチドを具体的に開示しているが、それらは単なる例示的な固定化された検出部分である。本明細書に開示される概念から逸脱することなく、本明細書に記載の装置に組み込まれることができる他の多くの有用な固定化検出部分が存在する。例えば、検出部分は、アプタマー、リガンド、キレート剤、炭水化物、およびそれらの人工同等物を含むことができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2013110574号パンフレットを参照されたい。
【0261】
CTCを単離する方法は、EpCAM、ERG、PSMA、またはそれらの組み合わせに特異的な抗体の使用を含むことができる。単離されたCTCがスライドガラスまたは他の基材に適用され、(例えば、当該技術分野において公知の方法を使用して)固定される。前立腺特異的抗体を使用する拡散法もまた、CTCを単離し、それらを固定前にガラススライドなどの基材に適用するために使用されることができる。次いで、搭載され固定されたCTCは、例えば、核酸プローブがCTC中のそれらの相補的配列にハイブリダイズするのに十分な条件下で、ERG、PTENおよびCEN-10に特異的な1つ以上の核酸プローブと接触される。核酸プローブは、例えば1つ以上の量子ドットで標識される。例えば、ERG、PTENおよびCEN-10に特異的な核酸プローブは、それぞれ異なる量子ドットで標識されることができ、プローブを互いに区別することができる。核酸プローブをERG、PTENおよびCEN-10にハイブリダイズさせた後、1つ以上の核酸プローブ上の1つ以上の量子ドットからの信号は、例えばスペクトルイメージングを用いて検出される。次いで、信号が分析されて、単離されたCTCにおいて1つ以上のERGが再配置されているかどうか、1つ以上のPTEN遺伝子が欠失しているかどうか、およびCEN-10が検出されるかどうかを判定する。1つ以上のERGが再編成されるかどうか、1つ以上のPTEN遺伝子が欠失されるかどうか、およびCEN-10が検出されるかどうかに基づいて、前立腺癌が特徴付けられる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2013101989号パンフレットを参照されたい。
【0262】
発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)
【0263】
発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)は、免疫組織化学(IHC)技術の発色信号検出方法をインサイチュハイブリダイゼーションと組み合わせる細胞遺伝学的技術である。HER-2/neu癌遺伝子増幅の検出のための蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)の代替として2000年頃に開発された。CISHは、双方ともDNAの特定の領域の存在または非存在を検出するために使用されるインサイチュハイブリダイゼーション技術であるという点でFISHと類似している。しかしながら、CISHは、FISHで使用されるより高価で複雑な蛍光顕微鏡よりも明視野顕微鏡を使用するため、診断検査室でははるかに実用的である。
【0264】
CISHのプローブ設計は、標識化および検出が異なるFISHのプローブ設計と非常に類似することができる。FISHプローブは、一般に、様々な異なる蛍光タグで標識されており、蛍光顕微鏡下でのみ検出されることができるが、CISHプローブは、ビオチンまたはジゴキシゲニンで標識されており、他の処理ステップを適用した後に明視野顕微鏡を使用して検出されることができる。CISHプローブは、約20ヌクレオチド長であり、DNA標的用に設計されている。それらは、標的配列に相補的であり、変性およびハイブリダイゼーションステップ後に標的配列に結合する。僅かなCISHプローブしか市販されていないため、ほとんどの用途では、細菌人工染色体(BAC)から抽出、増幅、シーケンシング、標識およびマッピングされなければならない。BACは、シーケンシング目的のためにヒトDNAの短い断片を単離して増幅することが必要であったため、ヒトゲノムプロジェクトの間に開発された。今日、BACは、UCSC Genome Browserなどの公開データベースを使用してヒトゲノム上で選択および配置されることができる。これは、最適な相補性および配列特異性を保証する。DNAがBACクローンから抽出され、縮重オリゴヌクレオチドプライミング(DOP)-PCRなどのポリメラーゼに基づく技術を用いて増幅される。次に、クローンがシーケンシングされ、ゲノム上の位置が確認される。プローブ標識は、ビオチンまたはジゴキシゲニンを組み込むためにランダムプライミングまたはニックトランスレーションのいずれかを使用することによって行うことができる。
【0265】
試料の調製、プローブのハイブリダイゼーション、および検出:試料は、間期または中期の染色体を含むことができる。試料は、スライドガラスなどの表面にしっかりと取り付けられる。試料は、標的がアクセス可能であることを確実にするためにペプシン消化を受けることができる。10~20μLのプローブが加えられ、試料がカバースリップで覆われ、カバースリップをゴムセメントで密封し、スライドを97℃に5~10分間加熱してDNAを変性させる。次いで、スライドを37℃のオーブンに一晩入れ、プローブをハイブリダイズさせることができる。翌日、試料が洗浄され、非特異的タンパク質結合部位に対するブロッカーが適用される。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を使用しようとする場合、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制するために試料を過酸化水素中でインキュベートしなければならない。ジゴキシゲニンをプローブ標識として使用した場合、次いで、抗ジゴキシゲニンフルオレセイン一次抗体、続いてHRPコンジュゲート化抗フルオレセイン二次抗体を適用する。ビオチンをプローブ標識として使用した場合、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して非特異的結合部位を最初にブロックしなければならない。そして、HRP結合ストレプトアビジンを検出に用いる。次いで、HRPは、ジアミノベンジジン(DAB)を不溶性の褐色生成物に変換し、これは、40~60倍の倍率の明視野顕微鏡で検出されることができる。生成物をより可視にするために、ヘマトキシリンおよびエオシンなどの対比染色剤が使用されることができる。
【0266】
発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)などの分子細胞遺伝学技術は、染色体の目視評価(核型分析)と分子技術とを組み合わせたものである。分子細胞遺伝学的方法は、細胞内の核酸プローブとその相補的核酸とのハイブリダイゼーションに基づく。特定の染色体領域に対するプローブは、中期染色体上または間期核内(例えば、試料中)のその相補的配列を認識し、それにハイブリダイズする。プローブは、様々な診断および研究目的のために開発されてきた。配列プローブは、特定の染色体領域または遺伝子内の単一コピーDNA配列にハイブリダイズする。これらは、目的の症候群または状態に関連する染色体重要領域または遺伝子を同定するために使用されるプローブである。中期染色体では、そのようなプローブは各染色分体にハイブリダイズし、通常、染色体あたり2つの小さな個別の信号を与える。反復枯渇プローブまたはユニーク配列プローブなどの配列プローブのハイブリダイゼーションは、微小欠失症候群、染色体転座、遺伝子増幅および異数性症候群、新生物性疾患ならびに病原体感染などの構成的遺伝的異常を含む、多数の疾患および症候群に関連する染色体異常の検出を可能にした。最も一般的には、これらの技術は、顕微鏡スライド上の標準的な細胞遺伝学的調製物に適用される。さらに、これらの手順は、固定細胞または他の核分離株のスライド上で使用されることができる。例えば、これらの技術は、癌の診断および予後の双方のために腫瘍細胞を特徴付けるために頻繁に使用される。多数の染色体異常が癌の発症に関連している(例えば、ある特定の骨髄性障害に関連する異数性(例えば、トリソミー8など);慢性骨髄性白血病におけるBCR/ABL再構成などの転座;および新生物形質転換に関連する特定の核酸配列の増幅)。分子技術は、そのような後天性染色体異常の検出および特徴付けにおける標準的な細胞遺伝学的試験を増強することができる。デュアルカラーCISHのためのシステムが導入されている。これらは、Dako DuoCISH(商標)システムおよびZyto Vision ZytoDot(登録商標)2Cシステムを含む。これらのシステムは、双方とも、2色検出ステップのために別々の酵素(アルカリホスファターゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ)を使用する。
【0267】
いくつかの実施形態では、発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)のためのシステムおよびプロセス、特に、単一のアッセイにおいて2つ以上の色検出システム間の干渉を防止する方法が企図され、さらに、ブレークアパートプローブを利用したアッセイのスコアリングのためのプロセスに関する。その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2011133625号パンフレットを参照されたい。
【0268】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)
【0269】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、高度の配列相補性で染色体のそれらの部分のみに結合する蛍光プローブを使用する細胞遺伝学的手法である。これは1980年初期に生物医学研究者によって開発され、染色体上の特定のDNA配列の存在または非存在を検出および局在化するために使用される。蛍光顕微鏡法が使用されて、蛍光プローブが染色体のどこに結合しているかを見出すことができる。FISHは、しばしば、遺伝カウンセリング、医学、および種同定に使用するためのDNA中の特定の特徴を見出すために使用される。FISHはまた、細胞、循環腫瘍細胞および試料中の特異的RNA標的(mRNA、lncRNAおよびmiRNAなど)を検出および局在化するために使用されることができる。これに関連して、それは細胞内の遺伝子発現の時空間パターンを定義するのに役立つことができる。
【0270】
プローブRNAおよびDNA:RNAプローブは、細胞内のmRNA、lncRNAおよびmiRNAの可視化のために、任意の遺伝子または遺伝子内の任意の配列に対して設
計されることができる。FISHは、任意の染色体異常について細胞再生周期、特に核の中間期を調べることによって使用される。この技術[FISH]は、同様の染色体を引き付ける人工染色体支持体を有するプローブを生成することによって、ピンポイント染色体を同定するのがはるかに容易な一連の保管ケースの分析を可能にする。核酸異常が検出された場合、ハイブリダイゼーションは、各プローブについて知らせる。mRNAおよびlncRNAを検出するための各プローブは、20個のオリゴヌクレオチド対から構成され、各対は40~50bpの空間をカバーする。miRNA検出のために、プローブは、miRNAの特異的検出のための独自の化学を使用し、miRNA配列全体をカバーする。プローブは、ヒトゲノムプロジェクトで使用するために単離され、精製され、増幅されたDNAの断片に由来することが多い。ヒトゲノムのサイズは、直接シーケンシングすることができる長さと比較して非常に大きいため、ゲノムを断片に分割する必要があった。(最終的な分析では、配列特異的エンドヌクレアーゼを使用して各断片のコピーをさらに小さい断片に消化し、サイズ排除クロマトグラフィを使用して各小さい断片のサイズを測定し、その情報を使用して大きい断片が互いに重複する場所を判定することによって、これらの断片を順序付けした。)断片を個々のDNA配列で保存するために、断片を連続的に複製する細菌集団の系に添加した。各集団が単一の人工染色体を維持している細菌のクローン集団は、世界中の様々な実験室に保存されている。人工染色体(BAC)は、任意の研究室で成長され、抽出され、標識されることができる。これらのフラグメントは、10万塩基対程度であり、ほとんどのFISHプローブの基礎である。
【0271】
調製およびハイブリダイゼーションプロセス-RNA:細胞が透過処理されて、標的へのアクセスを可能にすることができる。FISHはまた、固定されていない細胞に対しても首尾よく行われている。20個のオリゴヌクレオチド対からなる標的特異的プローブは、標的RNAにハイブリダイズする。別個であるが適合性のある信号増幅システムは、マルチプレックス検定を可能にする(検定当たり最大2つの標的)。信号増幅は、一連の連続的なハイブリダイゼーションステップによって達成される。アッセイの最後に、試料が蛍光顕微鏡下で可視化される。
【0272】
調製およびハイブリダイゼーションプロセス-DNA:まず、プローブが構築される。プローブは、その標的と特異的にハイブリダイズするのに十分大きくなければならないが、ハイブリダイゼーションプロセスを妨げるほど大きくてはならない。プローブは、フルオロフォア、抗体の標的またはビオチンで直接タグ付けされる。タグ付けは、ニック翻訳またはタグ付けされたヌクレオチドを使用するPCRなどの様々な方法で行うことができる。その後、間期または中期染色体調製物が生成される。染色体は、基材、通常はガラスにしっかりと付着している。反復DNA配列は、DNAの短い断片を試料に添加することによって遮断されなければならない。次いで、プローブが染色体DNAに適用され、ハイブリダイズしながら約12時間インキュベートされる。いくつかの洗浄ステップは、全ての非ハイブリダイズまたは部分的にハイブリダイズしたプローブを除去する。次いで、色素が励起され、画像を記録することができる顕微鏡を使用して、結果が可視化および定量化される。蛍光信号が弱い場合、顕微鏡の検出閾値を超えるために、信号の増幅が必要な場合がある。蛍光信号強度は、プローブ標識効率、プローブの種類、色素の種類などの多くの因子に依存する。蛍光タグ付き抗体またはストレプトアビジンが色素分子に結合される。これらの二次成分は、強い信号を有するように選択される。
【0273】
ファイバFISH
【0274】
間期または中期調製物の代替技術では、繊維FISH、間期染色体は、従来のFISHのようにしっかりと巻かれるのではなく、または間期FISHのように染色体領域立体配座を採用するのではなく、直線状に引き伸ばされるようにスライドに取り付けられる。これは、スライドに固定され、次いで溶解された細胞、または精製DNAの溶液のいずれか
に、スライドの長さに沿って機械的せん断を加えることによって達成される。この目的のために、染色体結合として知られる技術がますます使用されている。染色体の伸長した立体配座は、数キロベースまででさえ、劇的に高い分解能を可能にする。
【0275】
定量的FISH(Q-FISH)
【0276】
定量的蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(Q-FISH)は、伝統的なFISH方法論に基づく細胞遺伝学的手法である。Q-FISHでは、この技術は、ペプチド核酸(PNA)オリゴヌクレオチドと呼ばれる標識(Cy3またはFITC)合成DNA模倣物を使用して、蛍光顕微鏡および分析ソフトウェアを使用して染色体DNA中の標的配列を定量する。
【0277】
フローFISH
【0278】
フローFISHは、フローサイトメトリと細胞遺伝学的蛍光インサイチュハイブリダイゼーション染色プロトコルとの組み合わせを介して全細胞集団のゲノムDNA中の特異的反復エレメントのコピー数を定量するための細胞遺伝学的手法である。フローFISHは、テロメア長を分析するための別の技術、Q-FISHの改変として、Ruferらによって1998年に最初に公開された。これは、フルオレセインフルオロフォアで標識された3’-CCCTAACCCTAACCCTAA-5’配列のペプチド核酸プローブを用いて、コルセミド、低張性ショックおよびメタノール/酢酸処理によるスライドへの固定で処理された細胞の調製された中期スプレッド上のテロメア反復配列を染色する(プロトコルはオンラインで利用可能)。次いで、得られた蛍光スポットの画像が、専用のコンピュータプログラム(Flintbox Networkから入手可能な方法およびソフトウェア)を介して分析されて定量的蛍光値を得ることができ、これを使用して実際のテロメア長を推定することができる。プローブ染色によって得られた蛍光は、PNAが低イオン塩濃度およびホルムアミドの存在下でDNAに優先的に結合するので定量的であると考えられ、したがって、一旦DNA二本鎖が融解されてPNAプローブにアニーリングされると、DNA二本鎖は再形成されず、(相補鎖上のアンチセンスDNAと競合することによって標的DNAから置換されないため)プローブがその標的反復配列を飽和させることを可能にし、したがって、結合していないプローブを洗い流した後の所与の染色体部位におけるPNAプローブ標的の頻度の信頼できる定量可能な読み出しが得られる。
【0279】
比較ゲノムハイブリダイゼーション
【0280】
比較ゲノムハイブリダイゼーションは、細胞を培養する必要なしに、参照試料と比較した試験試料のDNA中の倍数性レベルに対するコピー数変異(CNV)を分析するための分子細胞遺伝学的方法である。この技術の目的は、2つの供給源から生じる2つのゲノムDNA試料を迅速且つ効率的に比較することであり、これは、それらが全染色体または亜染色体領域(全染色体の一部)のいずれかの増加または減少の点で差を含むと疑われるため、最も頻繁には密接に関連している。この技術は、固形腫瘍試料と正常組織試料の染色体相補体間の差異を評価するために最初に開発され、利用される顕微鏡の分解能によって制限されるギムザバンディングおよび蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)のより伝統的な細胞遺伝学的分析技術と比較して、5~10メガベースの改善された分解能を有する。
【0281】
ブロッティング
【0282】
利用されることができる例示的なブロッティング技術は、以下のセクションにさらに記載され、当該技術分野において公知のように、ウエスタン、サザン、イースタン、ファー
ウエスタン、サウスウエスタン、ノースウエスタンおよびノーザンブロッティングを含む。
【0283】
ウエスタンブロッティング
【0284】
ウエスタンブロット(タンパク質免疫ブロットと呼ばれることもある)は、試料または抽出物中の特定のタンパク質を検出するために使用される広く使用される分析技術である。それは、ゲル電気泳動を使用して、3D構造による天然タンパク質またはポリペプチドの長さによる変性タンパク質を分離する。次いで、タンパク質が膜(典型的にはニトロセルロースまたはPVDF)に転写され、そこで標的タンパク質に特異的な抗体で染色される。ゲル電気泳動ステップは、抗体の交差反応性の問題を解決するためにウエスタンブロット分析に含まれる。
【0285】
サザンブロッティング
【0286】
サザンブロッティングは、電気泳動分離されたDNA断片のフィルタ膜への転写と、その後のプローブハイブリダイゼーションによる断片検出とを組み合わせる。フィルタ膜上の特定のDNA断片に対するプローブのハイブリダイゼーションは、この断片がプローブに相補的なDNA配列を含むことを示す。電気泳動ゲルから膜へのDNAの転写ステップは、標識されたハイブリダイゼーションプローブとサイズ分画されたDNAとの容易な結合を可能にする。これはまた、オートラジオグラフィーまたは他の検出方法による分析に利用されることができる標的-プローブハイブリッドの固定を可能にする。制限酵素消化ゲノムDNAを用いて実施されるサザンブロットが使用されて、ゲノム中の配列(例えば、遺伝子コピー)の数を判定することができる。制限酵素によって切断されていない単一のDNAセグメントのみにハイブリダイズするプローブは、サザンブロットで単一のバンドを生成するが、プローブがいくつかの非常に類似した配列(例えば、配列重複の結果とすることができるもの)にハイブリダイズする場合、複数のバンドが観察される可能性が高い。ハイブリダイゼーション条件(例えば、ハイブリダイゼーション温度の上昇または塩濃度の低下)の改変は、特異性を増加させ、100%未満の類似性を有する配列に対するプローブのハイブリダイゼーションを減少させるために使用されることができる。
【0287】
イースタンブロッティング
【0288】
イースタンブロットは、脂質、ホスホ部分、および複合糖質などのタンパク質翻訳後修飾(PTM)を分析するために使用される生化学的技法である。これは、炭水化物エピトープを検出するために最も頻繁に使用される。したがって、イースタンブロッティングは、ウエスタンブロッティングの生化学的技術の拡張と考えることができる。複数の技術が、イースタンブロッティングという用語によって記載されており、ほとんどの場合、SDS-PAGEゲルからPVDFまたはニトロセルロースメンブランにブロットされるタンパク質が使用される。導入されたタンパク質は、脂質、炭水化物、リン酸化または任意の他のタンパク質修飾を検出することができるプローブを使用して翻訳後修飾について分析される。イースタンブロッティングは、PTMとプローブとの特異的相互作用によってそれらの標的を検出し、それらを標準的なファーウエスタンブロットと区別する方法を指すために使用されるべきである。原則として、イースタンブロッティングは、レクチンブロッティング(すなわち、タンパク質または脂質上の炭水化物エピトープの検出)と同様である。
【0289】
ファーウエスタンブロッティング
【0290】
ファーウエスタンブロッティングは、非抗体タンパク質を使用して、ブロット上の目的
のタンパク質をプローブする。このようにして、プローブ(またはブロット)タンパク質の結合パートナーが同定されることができる。プローブタンパク質は、発現クローニングベクターを使用して大腸菌で産生されることが多い。餌タンパク質を含有する細胞溶解物中のタンパク質は、最初にSDSまたは天然PAGEによって分離され、標準WBのように膜に転写される。次いで、膜中のタンパク質が変性され、再生される。次いで、膜がブロッキングされ、通常は精製されたベイトタンパク質でプローブされる。ベイトタンパク質とベイトタンパク質とが一緒に複合体を形成する場合、ベイトタンパク質が存在する膜のスポット上でベイトタンパク質が検出される。次いで、プローブタンパク質を通常の方法で可視化することができる-それは、放射性標識されていてもよい;それは、抗体が存在するHisまたはFLAGのような特異的親和性タグを有することができる;または(プローブタンパク質に対する)タンパク質特異的抗体が存在することができる。
【0291】
サウスウエスタンブロッティング
【0292】
サウスウエスタンブロッティングは、(Edwin Southernによって形成された)サザンブロッティングの系統に基づいており、1980年にB.Bowen、J.Steinbergらによって最初に記載されたものであり、DNA結合タンパク質(DNAに結合するタンパク質)を特定のオリゴヌクレオチドプローブに結合する能力によって同定し、特徴付けることを含む実験室技術である。タンパク質は、ゲル電気泳動によって分離され、その後、他のタイプのブロッティングと同様にニトロセルロースメンブランに転写される。「サウスウエスタンブロットマッピング」は、DNA結合タンパク質およびゲノムDNA上のそれらの特異的部位の双方の迅速な特徴付けのために行われる。タンパク質が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するポリアクリルアミドゲル(PAGE)上で分離され、尿素の存在下でSDSを除去することによって再生され、拡散によってニトロセルロース上にブロットされる。目的のゲノムDNA領域は、適切であるが異なるサイズの断片を産生するように選択された制限酵素によって消化され、その後、末端標識され、分離されたタンパク質に結合することができる。特異的に結合したDNAは、個々のタンパク質-DNA複合体から溶出され、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析される。特異的DNA結合タンパク質がこの技術によって検出されることができるという証拠が提示されている。さらに、それらの配列特異的結合は、対応する選択的に結合したDNA断片の精製を可能にし、DNA調節配列のタンパク質媒介クローニングを改善することができる。
【0293】
ノースウエスタンブロッティング
【0294】
ノースウエスタンブロットを実行することは、ゲル電気泳動によってRNA結合タンパク質を分離することを含み、これはRNA結合タンパク質をそれらのサイズおよび電荷に基づいて分離する。複数の試料を同時に分析するために、個々の試料がアガロースまたはポリアクリルアミドゲル(通常はSDS-PAGE)に装填されることができる。ゲル電気泳動が完了すると、ゲルおよび関連するRNA結合タンパク質がニトロセルロース転写紙に転写される。次いで、新たに転写されたブロットがブロッキング溶液に浸漬される。脱脂乳およびウシ血清アルブミンは、一般的なブロッキング緩衝液である。このブロッキング溶液は、ニトロセルロースメンブランへの一次抗体および/または二次抗体の非特異的結合の防止を助ける。ブロッキング溶液がブロットとの十分な接触時間を有すると、特異的競合剤RNAが適用され、室温でインキュベートする時間が与えられる。この時間の間、競合剤RNAは、ブロット上にある試料中のRNA結合タンパク質に結合する。このプロセス中のインキュベーション時間は、適用された競合剤RNAの濃度に応じて変化することができる。ただし、インキュベーション時間は典型的には1時間である。インキュベーションが完了した後、溶液中のRNAを希釈するために、ブロットが通常、洗浄ごとに少なくとも3回5分間洗浄される。一般的な洗浄緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(P
BS)または10% Tween 20溶液を含む。不適切または不適切な洗浄は、ブロットの発生の透明度に影響を及ぼす。洗浄が完了すると、ブロットは、典型的には、X線または同様のオートラジオグラフィ法によって現像される。
【0295】
ノーザンブロッティング
【0296】
一般的なノーザンブロッティング手順は、試料、例えば細胞からの全RNAの抽出から開始する。次いで、オリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィを使用して真核生物mRNAが単離されて、ポリ(A)尾部を有するRNAのみを単離することができる。次いで、RNA試料がゲル電気泳動によって分離される。ゲルは脆弱であり、プローブはマトリックスに入ることができないため、ここでサイズによって分離されたRNA試料は、毛細管または真空ブロッティングシステムを介してナイロン膜に転写される。負に帯電した核酸はそれらに対して高い親和性を有するため、正電荷を有するナイロン膜は、ノーザンブロッティングでの使用に最も効果的である。ブロッティングに使用される転写緩衝液は、プローブ-RNA相互作用のアニーリング温度を低下させ、したがってRNA分解を引き起こすことができる高温の必要性を排除するため、通常ホルムアミドを含有する。RNAが膜に転写されると、それはUV光または熱によって膜への共有結合によって固定化される。プローブが標識された後、それは膜上のRNAにハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションの効率および特異性に影響を及ぼすことができる実験条件は、イオン強度、粘度、二重鎖長、ミスマッチ塩基対および塩基組成を含む。膜が洗浄されて、プローブが特異的に結合したことを確実にし、バックグラウンド信号が生じるのを防ぐ。次いで、ハイブリッド信号がX線フィルムによって検出され、デンシトメトリによって定量されることができる。目的の遺伝子生成物を示さないノーザンブロット試料における比較のための対照を生成するために、マイクロアレイまたはRT-PCRによる判定後に使用することができる。
【0297】
酵素
【0298】
自動染色プラットフォームを潜在的に使用して試料中の標的を検出するために酵素的ビオチン化を利用する近接検出方法が記載されている。開示される一実施形態は、試料を、ビオチンリガーゼと、第1の標的に近位に結合する第1の特異的結合部分とを含む第1のコンジュゲートと接触させることと、試料を、ビオチンリガーゼ基質および第2の標的に近位に結合する第2の特異的結合部分を含む第2のコンジュゲートと接触させることと、第1の標的および第2の標的が近位配置を有する場合、ビオチンリガーゼによるビオチンリガーゼ基質のビオチン化を可能にする条件に試料を供することと、ビオチンリガーゼ基質のビオチン化を検出することと、を含む。基質のビオチン化を可能にする条件は、ビオチンおよびATPの添加を含む。この方法はまた、試料をストレプトアビジン-酵素コンジュゲートと接触させることを含むことができる。信号増幅が使用されることもできる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2014139980号パンフレットを参照されたい。
【0299】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
【0300】
ELISAの実施は、特定の抗原に対する特異性を有する少なくとも1つの抗体を含む。未知の量の抗原を有する試料は、非特異的に(表面への吸着を介して)または特異的に(「サンドイッチ」ELISAにおいて、同じ抗原に特異的な別の抗体による捕捉を介して)固体支持体(通常はポリスチレンマイクロタイタープレート)上に固定化される。抗原が固定化された後、検出抗体が添加され、抗原との複合体が形成される。検出抗体は、酵素に共有結合されることができ、またはバイオコンジュゲーションによって酵素に結合する二次抗体によってそれ自体が検出されることができる。各ステップの間に、プレートは、典型的には、非特異的に結合したタンパク質または抗体を除去するために、穏やかな洗剤溶液で洗浄される。最終洗浄ステップの後、試料中の抗原の量を示す可視信号を生成するために酵素基質を添加することによってプレートが現像される。
【0301】
リガンド結合アッセイ
【0302】
循環CTCを含むことが知られているまたは疑われる試料を分析する方法は、イメージングステップを含むことができる。一例では、イメージングは、CTC同定試薬の免疫蛍光のイメージング(例えば、使用される各抗体に関連する標識の検出による)を含む。別の例では、撮像は、マルチスペクトルバンドパスフィルタを使用することを含む。免疫蛍光は、蛍光体で直接的または間接的に標識された抗体から発することができ、または免疫蛍光は、蛍光体をスペクトル的に濾過された可視光で励起することから生じることができる。一実施形態では、スペクトル的にフィルタリングされた可視光は、第1のフルオロフォアを励起するための第1の選択範囲と、第2のフルオロフォアを励起するための第2の選択範囲とを含み、第1の選択範囲は、第2のフルオロフォアを有意に励起せず、第2の選択範囲は、第1のフルオロフォアを有意に励起しない。試料をイメージングすることは、第1の選択された範囲によって励起された試料の第1の免疫蛍光画像を取得すること、および第2の選択された範囲によって励起された試料の第2の免疫蛍光画像を取得すること(および3つ以上のCTC識別試薬が使用された場合は各標識について追加の免疫蛍光画像を取得すること)、ならびにCTC識別試薬を配置または可視化することによってCTCを配置または識別することを含むことができ、これは、第1の免疫蛍光画像と第2の免疫蛍光画像(およびそのように取得された場合は追加の画像)とを比較または重ね合わせることを含むことができる。例えば、第1の免疫蛍光画像のイメージングは、CK+細胞を同定することができ、第2の免疫蛍光画像は、CD45+細胞を同定することができ、比較またはオーバーレイは、CK+およびCD45-である細胞の同定を含む。別の実施形態では、CTC特定試薬の位置を特定することによってCTCの位置を特定することは、コンピュータを使用して第1の免疫蛍光画像および第2の免疫蛍光画像(および取得された場合は追加の免疫蛍光画像)をアルゴリズム的に分析することを含む。一実施形態では、アルゴリズム的に分析することは、細胞サイズ、マーカーの細胞区画局在化、および/またはマーカー発現の強度を測定するために画像をデジタル的に調べることを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2013101989号パンフレットを参照されたい。
【0303】
免疫沈降(IP)
【0304】
免疫沈降(IP)の液相リガンド結合アッセイは、複雑な混合物から抗体を使用して、特定のタンパク質またはタンパク質群を精製または濃縮するために使用される方法である。破壊された細胞または試料の抽出物は、抗原-抗体複合体を産生する目的の抗原に対する抗体と混合されることができる。抗原濃度が低い場合、抗原-抗体複合体沈殿は数時間または数日かかる可能性があり、形成された少量の沈殿物を単離するのが困難になる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはウエスタンブロッティングは、精製された抗原(または複数の抗原)を得て分析することができる2つの異なる方法である。この方法は、アガロース樹脂などの固体(ビーズ状)支持体上に付着した抗体の助けを借りて抗原を精製することを含む。固定化タンパク質複合体は、単一ステップまたは連続的に達成されることができる。IPは、生合成放射性同位体標識と併せて使用することもできる。この技術の組み合わせを使用して、特定の抗原が試料または細胞によって合成されるかどうかを判定することができる。
【0305】
クロマチン免疫沈降(ChIP)
【0306】
クロマチン免疫沈降(ChIP)は、細胞内のタンパク質とDNAとの間の相互作用を調べるために使用される免疫沈降実験技術の一種である。それは、特定のタンパク質が、プロモータまたは他のDNA結合部位上の転写因子などの特定のゲノム領域と関連しているかどうか、および場合によってはシストロームを定義しているかどうかを判定することを目的とする。ChIPはまた、様々なヒストン修飾が関連するゲノム内の特定の位置を判定し、ヒストン修飾因子の標的を示すことを目的とする。
【0307】
クロマチン免疫沈降シーケンシング(ChIP-seq)
【0308】
ChIP-seqとしても知られるChIPシーケンシングは、DNAとのタンパク質相互作用を分析するために使用される方法である。ChIP-seqは、クロマチン免疫沈降(ChIP)を大規模並列DNAシーケンシングと組み合わせて、DNA関連タンパク質の結合部位を同定する。これが使用されて、目的のタンパク質の全体的な結合部位を正確にマッピングすることができる。ChIP-seqは、主に、転写因子および他のクロマチン関連タンパク質が表現型影響機構にどのように影響するかを判定するために使用される。タンパク質がDNAと相互作用して遺伝子発現を調節する方法を判定することは、多くの生物学的プロセスおよび疾患状態を完全に理解するために不可欠である。このエピジェネティック情報は、遺伝子型および発現分析に相補的である。ChIP-seq技術は、現在、主に、ハイブリダイゼーションアレイを利用することができるChIPチップの代替として見られている。アレイは、固定数のプローブに制限されるため、これは必然的にいくらかのバイアスを導入する。対照的に、シーケンシングは、より少ないバイアスを有すると考えられるが、異なるシーケンシング技術のシーケンシングバイアスはまだ完全には理解されていない。転写因子および他のタンパク質との直接的な物理的相互作用における特異的DNA部位は、クロマチン免疫沈降によって単離されることができる。ChIPは、インビボで目的のタンパク質に結合した標的DNA部位のライブラリを生成する。超並列配列分析を全ゲノム配列データベースと併せて使用して、任意のタンパク質とDNAとの相互作用パターン、または任意のエピジェネティッククロマチン修飾のパターンを分析する。これは、転写因子、ポリメラーゼおよび転写機構、構造タンパク質、タンパク質修飾、ならびにDNA修飾などのChIP可能タンパク質および修飾のセットに適用されることができる。特異的抗体への依存の代替として、DNAse-seqおよびFAIRE-seqのような、ゲノム内の全てのヌクレオソーム枯渇またはヌクレオソーム破壊された活性調節領域のスーパーセットを見出すための異なる方法が開発されている。
【0309】
ChIP-on-chip(ChIP-ChIP)
【0310】
ChIP-on-chip(ChIP-chipチップとしても知られる)は、クロマチン免疫沈降(「ChIP」)をDNAマイクロアレイ(「チップ」と組み合わせる技術である。通常のChIPと同様に、ChIP-on-chipは、インビボでタンパク質とDNAとの間の相互作用を調べるために使用される。具体的には、全ゲノムベースでDNA結合タンパク質の結合部位の合計であるシストロームの同定を可能にする。全ゲノム分析を行って、ほとんどの目的のタンパク質の結合部位の位置を判定することができる。技術の名称が示唆するように、そのようなタンパク質は、一般に、クロマチンの文脈で作動するタンパク質である。このクラスの最も顕著な代表例は、転写因子、複製関連タンパク質、例えばオリジン認識複合体タンパク質(ORC)、ヒストン、それらの変異体、およびヒストン修飾である。ChIP-on-chipの目的は、ゲノム内の機能的要素を同定するのに役立つことができるタンパク質結合部位を見つけることである。例えば、目的のタンパク質としての転写因子の場合、ゲノム全体にわたってその転写因子結合部位を判定することができる。他のタンパク質は、プロモータ領域、エンハンサ、リプレッサおよびサイレンシング要素、インシュレータ、境界要素、ならびにDNA複製を制御する配列の同定を可能にする。ヒストンが目的の被験体である場合、修飾の分布およびそれらの
局在化は、調節機構に対する新たな洞察を提供することができると考えられる。ChIP-on-chipが設計された長期目標の1つは、様々な生理学的条件下での全てのタンパク質-DNA相互作用を列挙する(選択された)生物のカタログを確立することである。この知識は、最終的に、遺伝子調節、細胞増殖、および疾患進行の背後にある機構の理解に役立つであろう。したがって、ChIP-on-chipは、ヌクレオチドレベルでのゲノムの編成に関する我々の知識を補完するための巨大な可能性を提供するだけでなく、エピジェネティクスに関する研究によって伝播されるため、より高いレベルの情報および調節も提供する。
【0311】
ラジオイムノアッセイ
【0312】
ラジオイムノアッセイ(RIA)は、抗体を使用して抗原(例えば、血液中のホルモンレベル)の濃度を測定するために使用される非常に高感度のインビトロアッセイ技術である。したがって、これは、対応する抗原を使用して抗体を定量する放射性結合アッセイの逆数として見ることができる。古典的には、ラジオイムノアッセイを実施するために、既知量の抗原が、チロシンに結合したヨウ素のガンマ-放射性同位体、例えば125-Iで標識することによって放射性にされることが多い。次いで、この放射性標識された抗原は、その抗原に対する既知量の抗体と混合され、その結果、2つは互いに特異的に結合する。次いで、未知量のその同じ抗原を含有する患者由来の血清試料が添加される。これにより、血清からの非標識(または「低温」)抗原は、抗体結合部位について放射性標識抗原(「高温」)と競合する。「低温」抗原の濃度が増加するにつれて、そのより多くが抗体に結合し、放射性標識変異体を置換し、遊離放射性標識抗原に対する抗体結合放射性標識抗原の比を減少させる。次いで、結合抗原を未結合抗原から分離し、上清中に残存する結合抗原の放射能をガンマカウンタを用いて測定する。
【0313】
この方法は、原則としてあらゆる生体分子に使用されることができ、血清抗原に限定されず、捕捉された抗原を直接測定する代わりに遊離抗原を測定する間接的な方法を使用する必要もない。例えば、目的の抗原または標的分子を放射性標識することが望ましくないかまたは不可能である場合、標的を認識する2つの異なる抗体が利用可能であり、標的が抗体に複数のエピトープを提示するのに十分大きい(例えば、タンパク質)場合、RIAを行うことができる。一方の抗体は上記のように放射性標識され、他方の抗体は未修飾のままである。RIAは、「低温」非標識抗体を溶液中の標的分子と相互作用させて結合させることから始まる。好ましくは、この非標識抗体は、アガロースビーズにカップリングされる、表面にコーティングされるなど、何らかの方法で固定化される。次に、「高温」放射性標識抗体が第1の抗体-標的分子複合体と相互作用することが可能にされる。広範な洗浄後、結合した放射性抗体の直接量が測定され、同時にアッセイした参照量と比較することによって標的分子の量が定量される。この方法は、原理的には非放射性サンドイッチELISA法と同様である。
【0314】
蛍光偏光
【0315】
蛍光偏光は、蛍光異方性と同義である。この方法は、一旦受容体に結合すると、蛍光標識リガンドの回転速度の変化を測定する。リガンドを励起するために偏光が用いられ、発光量を測定する。放射光の偏光解消は、本リガンドのサイズに依存する。小さなリガンドが使用される場合、それは大きな脱分極を有し、それは光を急速に回転させる。利用されるリガンドがより大きなサイズである場合、結果として生じる脱分極は減少する。この方法の利点は、1つの標識化ステップのみを含むことができることである。しかしながら、この方法が低ナノモル濃度で使用される場合、結果は正確とすることができる。
【0316】
フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)
【0317】
フェルスター共鳴エネルギー移動(蛍光共鳴エネルギー移動とも呼ばれる)は、ドナー-およびアクセプター-フルオロフォア、またはフルオロフォアおよびクエンチャーなどの近接したドナー分子とアクセプター分子との間で伝達されるエネルギーを利用する。FRETは、FPのような蛍光標識リガンドを使用する。FRET内でのエネルギー移動は、ドナーを励起することによって始まる。ドナーとアクセプター分子との間の双極子-双極子相互作用は、ドナーからアクセプター分子にエネルギーを伝達する。ドナーとアクセプターとの間の相互作用は、進入移動に関連する蛍光スペクトルまたはその不在を検出することによって監視されることができる。例えば、リガンドが受容体-抗体複合体に結合している場合、受容体は発光する。エネルギー移動は、移動の有無が分子距離を示すように、ドナーとアクセプターとの間の距離に依存する。典型的には、10nmよりも小さい距離は、アクセプターとドナーとの間の効率的なエネルギー移動を可能にするが、関与する特定の分子に応じてより大きいまたはより小さい距離が使用されてもよい。
【0318】
表面プラズモン共鳴
【0319】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、リガンドの標識を必要としない。代わりに、偏光が表面から反射される角度(屈折率)の変化を測定することによって機能する。角度は、反射光を増加させる、共鳴角を変化させるリガンドの固定化などの質量または厚さの層の変化に関連する。SPRが導出される装置は、センサチップと、フローセルと、光源と、プリズムと、固定角位置検出器とを含む。
【0320】
フィルタ結合アッセイ
【0321】
フィルタッセイは、2つの分子間の親和性を測定するためにフィルタを使用する固相リガンド結合アッセイである。フィルタ結合アッセイでは、フィルタが使用されて、細胞膜を通して培地を吸引することによって細胞膜を捕捉する。この迅速な方法は、見出された画分について濾過および回収を達成することができる高速で行われる。緩衝液でフィルタを洗浄することにより、結合部位から洗い流すことができる残留未結合リガンドおよび存在する任意の他のリガンドが除去される。フィルタが洗浄されている間に存在する受容体-リガンド複合体は、フィルタによって完全に捕捉されるため、有意に解離しない。フィルタの特性は、行われている各ジョブにとって重要である。より厚いフィルタは、小さな膜片のより完全な回収を得るために有用であるが、より長い洗浄時間を必要とすることができる。負に帯電した膜片を捕捉するのを助けるためにフィルタを前処理することが推奨される。フィルタに正の表面電荷を与える溶液にフィルタを浸漬すると、負に帯電した膜断片が引き寄せられる。
【0322】
アフィニティクロマトグラフィ
【0323】
アフィニティクロマトグラフィは、抗原と抗体、酵素と基質、または受容体とリガンドなどの非常に特異的な相互作用に基づいて生化学混合物を分離する方法である。固定相は、典型的にはゲルマトリックスであり、多くの場合、アガロース、藻類由来の直鎖状糖分子である。通常、開始点は、細胞溶解物、増殖培地または血清などの溶液中の分子の未定義の不均一な群である。目的の分子は、周知の定義された特性を有し、親和性精製プロセス中に利用されることができる。プロセス自体は、標的分子が固体または固定相または培地上に捕捉されることによる捕捉と考えることができる。移動相中の他の分子は、この特性を持たないため、捕捉されない。次いで、固定相が混合物から除去され、洗浄され、標的分子を溶出として公知のプロセスで捕捉から放出されることができる。おそらく、アフィニティクロマトグラフィの最も一般的な用途は、組み換えタンパク質の精製である。
【0324】
免疫親和性:この手順の別の用途は、血清からの抗体の親和性精製である。血清が特定の抗原に対する抗体を含有することが知られている場合(例えば、血清が関連する抗原に対して免疫化された生物に由来する場合)、その抗原の親和性精製に使用されることができる。これは、イムノアフィニティクロマトグラフィとしても知られている。例えば、生物がGST融合タンパク質に対して免疫化される場合、それは融合タンパク質に対する抗体、およびおそらくGSTタグに対する抗体も産生する。次いで、タンパク質がアガロースなどの固体支持体に共有結合され、免疫血清からの抗体の精製におけるアフィニティリガンドとして使用されることができる。徹底のために、GSTタンパク質およびGST融合タンパク質は、それぞれ別々にカップリングされることができる。血清が最初にGST親和性マトリックスに結合される。これにより、融合タンパク質のGST部分に対する抗体が除去される。次いで、血清が固体支持体から分離され、GST融合タンパク質マトリックスに結合することが可能にされる。これにより、抗原を認識する任意の抗体を固体支持体上に捕捉することができる。目的の抗体の溶出は、ほとんどの場合、グリシンpH2.8などの低pH緩衝液を使用して達成される。溶出液が中性トリス緩衝液またはリン酸緩衝液に回収されて、低pH溶出緩衝液を中和し、抗体の活性のあらゆる分解を停止させる。親和性精製が使用されて初期GST融合タンパク質を精製し、血清から望ましくない抗GST抗体を除去し、標的抗体を精製するため、これは良い例である。ペプチド抗原に対して生成された抗体を精製するために、単純化された戦略がしばしば用いられる。ペプチド抗原が合成的に産生される場合、末端システイン残基がペプチドのN末端またはC末端のいずれかに付加される。このシステイン残基は、ペプチドを担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に容易にコンジュゲートさせることができるスルフヒドリル官能基を含有する。同じシステイン含有ペプチドもシステイン残基を介してアガロース樹脂に固定化され、次いで抗体を精製するために使用される。ほとんどのモノクローナル抗体は、細菌由来の免疫グロブリン特異的プロテインAまたはプロテインGに基づくアフィニティクロマトグラフィを使用して精製されている。
【0325】
免疫細胞化学(ICC)
【0326】
免疫細胞化学(ICC)は、特定のタンパク質または抗原に結合する特定の一次抗体を使用して、細胞内の特定のタンパク質または抗原の局在を解剖学的に視覚化するために使用される一般的な実験技術である。一次抗体は、コンジュゲートフルオロフォアを有する二次抗体によって結合された場合、蛍光顕微鏡下でのタンパク質の可視化を可能にする。ICCは、特定の試料中の細胞が問題の抗原を発現するかどうかを研究者が評価することを可能にする。免疫陽性信号が見出される場合、ICCはまた、研究者がどの細胞内区画が抗原を発現しているかを判定することを可能にする。一次抗体または抗血清に直接結合したものを含む、試料に対する免疫学的検出を得るための多くの方法がある。直接的な方法は、検出可能なタグ(例えば、蛍光分子、金粒子など。)を抗体に直接使用し、次いで、これを細胞内の抗原(例えば、タンパク質)に結合させることを含む。あるいは、多くの間接的な方法がある。1つのそのような方法において、抗原は、一次抗体によって結合され、次いで、一次抗体に結合する二次抗体の使用によって増幅される。次に、酵素部分を含む第三級試薬が適用され、二次抗体に結合する。第四級試薬または基質が適用されると、第三級試薬の酵素末端は、基質を色素反応生成物に変換し、色素反応生成物は、元の一次抗体が目的の抗原を認識したのと同じ位置に色(多くの色が可能である;茶色、黒色、赤色など)を生じる。使用される基質(色素原としても知られる)のいくつかの例は、AEC(3-アミノ-9-エチルカルバゾール)またはDAB(3,3’-ジアミノベンジジン)である。必要な酵素(例えば、抗体試薬にコンジュゲートさせた西洋ワサビペルオキシダーゼ)に曝露した後にこれらの試薬の1つを使用すると、陽性免疫反応生成物が得られる。目的の特異的抗原の免疫細胞化学的可視化は、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)のようなより特異性の低い染色剤を、行われる診断のために、または治療に関する追加の予測情報(いくつかの癌において、例えば、)を提供するために使用することができない場合に使用されることができる。あるいは、二次抗体は、蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡で検出されるフルオロフォア(FITCおよびローダミンが最も一般的である)に共有結合していてもよい。蛍光の位置は、標的分子、膜タンパク質の場合は外部、細胞質タンパク質の場合は内部に応じて変化する。このようにして、免疫蛍光は、タンパク質の位置および動的プロセスを研究するための共焦点顕微鏡法と組み合わせた場合の強力な技術である(エキソサイトーシス、エンドサイトーシスなど)。
【0327】
遺伝子発現プロファイリング
【0328】
利用されることができる例示的な遺伝子発現プロファイリング技術は、PCR、DNAマイクロアレイ、SAGE、リアルタイムPCR、ディファレンシャルディスプレイPCR、およびRNA-seqを用いたDNAプロファイリングを含み、以下のセクションでさらに説明され、当該技術分野において公知である。
【0329】
PCRによるDNAプロファイリング
【0330】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスは、DNA複製の生物学的プロセスを模倣するが、それを目的の特定のDNA配列に限定する。PCR技術の発明により、DNAプロファイリングは、識別力と、非常に小さい(または分解された)出発試料から情報を回収する能力の双方において、大きな進歩を遂げた。PCRは、DNAの特定の領域の量を大幅に増幅する。PCRプロセスでは、DNA試料は、加熱によって個々のポリヌクレオチド鎖に変性される。2つのオリゴヌクレオチドDNAプライマーが使用されて、各プライマーの活性末端の通常の酵素的伸長(すなわち、3’末端)が他方のプライマーに向かうような様式で、対向するDNA鎖上の2つの対応する近くの部位にハイブリダイズする。PCRは、耐熱性Taqポリメラーゼなどの高温耐性の複製酵素を使用する。このようにして、目的の配列の2つの新しいコピーが生成される。この様式での反復的な変性、ハイブリダイゼーションおよび伸長は、目的のDNAのインデックス関数的に増加するコピー数をもたらす。熱サイクルを行う機器は、現在、商業的供給源から容易に入手可能である。このプロセスは、2時間以下で所望の領域の100万倍以上の増幅をもたらすことができる。
【0331】
DNAマイクロアレイ
【0332】
マイクロアレイの背後にある中心原理は、相補的ヌクレオチド塩基対間に水素結合を形成することによって互いに特異的に対合する相補的核酸配列の特性である、2つのDNA鎖間のハイブリダイゼーションである。ヌクレオチド配列中の多数の相補的塩基対は、2本の鎖間のより緊密な非共有結合を意味する。非特異的結合配列を洗い流した後、強く対合した鎖のみがハイブリダイズしたままになる。プローブ配列に結合する蛍光標識された標的配列は、ハイブリダイゼーション条件(温度など)およびハイブリダイゼーション後の洗浄に依存する信号を生成する。スポット(特徴)からの信号の総強度は、そのスポット上に存在するプローブに結合する標的試料の量に依存する。マイクロアレイは、特徴の強度が異なる条件下で同じ特徴の強度と比較され、特徴の同一性がその位置によって知られる相対定量化を使用する。
【0333】
遺伝子発現の連続分析(SAGE)
【0334】
遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、それらの転写物の断片に対応する小さなタグの形態で、目的の被験体の試料中のメッセンジャーRNA集団のスナップショットを形成するために分子生物学者によって使用される技術である。簡潔には、SAGE実験は、以下のように進行する:
【0335】
投入試料(例えば、腫瘍)のmRNAを単離し、逆転写酵素およびビオチン化プライマーを使用してmRNAからcDNAを合成する。
【0336】
cDNAは、プライマーに結合したビオチンとの相互作用を介してストレプトアビジンビーズに結合し、次いでアンカリング酵素(AE)と呼ばれる制限エンドヌクレアーゼを用いて切断される。切断部位の位置、したがってビーズに結合した残りのcDNAの長さは、個々のcDNA(mRNA)ごとに異なる。
【0337】
次いで、切断部位の下流の切断されたcDNAを捨て、切断部位の上流の残りの不動cDNA断片を半分に分割し、結合部位の上流で以下の順序でいくつかの成分を含有する2つのアダプタオリゴヌクレオチド(AまたはB)のうちの1つに曝露する:1)切断されたcDNAへの付着を可能にするAE切断部位を有する粘着性末端;2)認識部位の約15ヌクレオチド下流(元のcDNA/mRNA配列内)を切断する、タグ付け酵素(TE)として知られる制限エンドヌクレアーゼの認識部位;3)アダプタAまたはBのいずれかに固有の短いプライマー配列(後にPCRによるさらなる増幅に使用される)。
【0338】
アダプタライゲーション後、TEを用いてcDNAを切断してビーズからそれらを除去し、約11ヌクレオチドの短い「タグ」元のcDNAを残す(15ヌクレオチドからAE認識部位に対応する4を引いたもの)。
【0339】
次いで、切断されたcDNAタグをDNAポリメラーゼで修復して平滑末端cDNA断片を生成する。
【0340】
これらのcDNAタグ断片(アダプタプライマーおよびAEおよびTE認識部位が結合している)をライゲートし、2つのタグ配列を一緒に挟み、両端にアダプタAおよびBを隣接させる。次いで、ジタグと呼ばれるこれらの新たな構築物を、アンカーAおよびB特異的プライマーを使用してPCR増幅する。
【0341】
次いで、元のAEを使用してジタグを切断し、他のジタグと連結させ、これを連結して、各ジタグがAE認識部位によって分離されたcDNAコンカテマーを生成する。
【0342】
次いで、これらのコンカテマーは、細菌複製による増幅のために細菌に形質転換される。
【0343】
次いで、cDNAコンカテマーを単離し、最新のハイスループットDNAシーケンサーを使用してシーケンシングすることができ、これらの配列を、個々のタグの再発を定量化するコンピュータプログラムで分析することができる。
【0344】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
【0345】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく分子生物学の実験技術である。それは、PCR中、すなわちリアルタイムで標的DNA分子の増幅を監視し、従来のPCRのようにその末端では監視しない。リアルタイムPCRは、定量的(定量的リアルタイムPCR)、半定量的、すなわち一定量を超える/下回るDNA分子(半定量的リアルタイムPCR)または定性的(定性的リアルタイムPCR)に使用されることができる。リアルタイムPCRにおけるPCR生成物の検出のための2つの一般的な方法は、以下のとおりである:(1)任意の二本鎖DNAとインターカレートする非特異的蛍光色素、および(2)プローブとその相補配列とのハイブリダイゼーション後にのみ検出を可能にする蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列
特異的DNAプローブ。リアルタイムPCRは、少なくとも1つの特定の波長の光ビームで各試料を照射し、励起されたフルオロフォアによって放出された蛍光を検出する能力を有するサーマルサイクラーで実行される。サーマルサイクラーはまた、試料を急速に加熱および冷却することができ、それによって核酸およびDNAポリメラーゼの物理化学的特性を利用する。PCRプロセスは、一般に、25~50回繰り返される一連の温度変化からなる。これらのサイクルは通常、3段階からなる:最初に、約95℃で、二本鎖の分離を可能にする;第2に、約50~60℃の温度で、プライマーとDNA鋳型との結合を可能にする;第3に、68~72℃の間で、DNAポリメラーゼによって行われる重合を促進する。断片のサイズが小さいため、酵素はアライメント段階と変性段階との間の変化中にそれらの数を増加させることができるため、この種のPCRでは、通常、最後のステップは省略される。さらに、非特異的色素が使用される場合、プライマー二量体の存在によって引き起こされる信号を減少させるために、4段階PCRにおいて、蛍光は、例えば80℃の温度で、各サイクルにおいて数秒しか持続しない短い温度相の間に測定される。各サイクルに使用される温度およびタイミングは、DNAを合成するために使用される酵素、反応中の二価イオンおよびデオキシリボヌクレオチド(dNTP)の濃度、ならびにプライマーの結合温度などの多種多様なパラメータに依存する。
【0346】
ディファレンシャルディスプレイPCR
【0347】
ディファレンシャルディスプレイ(DDRT-PCRまたはDD-PCRとも呼ばれる)は、研究者が任意の対の真核細胞試料間のmRNAレベルでの遺伝子発現の変化を比較および同定することができる技術である。必要に応じて、アッセイは、2つ以上の対に拡張されてもよい。対になった試料は、実験によって影響を受ける特定の差または特定の遺伝子の根本原因を解明することを望んで、研究者が遺伝子発現パターンを研究することを望む形態学的、遺伝的または他の実験的差異を有する。ディファレンシャルディスプレイの概念は、固定オリゴdTプライマーと組み合わせて限られた数の短い任意のプライマーを使用して、細胞内のmRNAの大部分を体系的に増幅および視覚化することである。1990年初期に発明された後、ディファレンシャルディスプレイは、mRNAレベルで示差的に発現される遺伝子を同定するための一般的な技術となった。蛍光DDプロセスならびに放射性標識を含む様々な合理化されたDD-PCRプロトコルが提案されており、これは高精度および読み出しを提供する。
【0348】
RNAシーケンシング(RNA-seq)
【0349】
RNAシーケンシング(RNA-seq)は、全トランスクリプトームショットガンシーケンシング(WTSS)とも呼ばれ、次世代シーケンシングの能力を使用して、所与の時点におけるゲノムからのRNAの存在および量のスナップショットを明らかにする技術である。
【0350】
RNA「ポリ(A)」ライブラリRNA-seq:配列ライブラリの形成は、ハイスループットシーケンシングにおいてプラットフォームごとに変化する可能性があり、それぞれが異なるタイプのライブラリを構築し、得られた配列をそれらの装置の特定の要件に適合させるように設計されたいくつかのキットを有する。しかしながら、分析されるテンプレートの性質のために、各技術内には共通点がある。しばしば、mRNA分析では、コードRNAが非コードRNAから確実に分離されるようにするために、3’ポリアデニル化(ポリ(A))テールが標的化される。これは、所与の基質に共有結合したポリ(T)オリゴを用いて簡単に達成されることができる。現在、多くの研究が、このステップのために磁気ビーズを利用している。ポリ(A)RNAの外側のトランスクリプトームの部分を含む研究は、ポリ(T)磁気ビーズを使用する場合、フロースルーRNA(非ポリ(A)RNA)が、さもなければ気付かれなかったであろう重要な非コードRNA遺伝子発見をもたらすことができることを示した。また、リボソームRNAは、所与の細胞内のRNAの90%超に相当するため、研究は、プローブハイブリダイゼーションによるその除去がトランスクリプトームの残りの部分からデータを取り出す能力を増加させることを示している。次のステップは逆転写である。ランダムにプライミングされた逆転写の5’バイアスならびにプライマー結合部位に影響を及ぼす二次構造のために、逆転写前のRNAの200~300ヌクレオチドへの加水分解は、双方の問題を同時に低減する。しかしながら、転写物の全体は効率的にDNAに変換されるが、5’および3’末端はそれほどではないというこの方法とのトレードオフがある。研究の目的に応じて、研究者は、このステップを適用または無視することを選択することができる。
【0351】
低分子RNA/非コードRNAシーケンシング:mRNA以外のRNAをシーケンシングする場合、ライブラリ調製物が改変される。細胞RNAは、所望のサイズ範囲に基づいて選択される。miRNAなどの小さなRNA標的の場合、RNAはサイズ選択によって単離される。これは、サイズ排除ゲル、サイズ選択磁気ビーズ、または市販のキットを用いて行うことができる。単離されると、リンカーが3’および5’末端に添加され、次いで精製される。最後のステップは、逆転写によるcDNA生成である。
【0352】
直接RNAシーケンシング:逆転写酵素を使用してRNAをcDNAに変換することは、転写物の適切な特徴付けおよび定量化の双方を妨害することができるバイアスおよびアーチファクトを導入することが示されているため、一分子直接RNAシーケンシング(DRSTM)技術がHelicosによって開発されていた(現在は破綻している)。DRSTM配列は、RNA分子を、cDNAへのRNA変換またはライゲーションおよび増幅などの他のバイアス試料操作なしに、大規模並列方式で直接シーケンシングする。cDNAが合成されると、それは、シーケンシングシステムの所望の断片長に到達するようにさらに断片化されることができる。
【0353】
(タンパク質)質量分析
【0354】
タンパク質質量分析は、タンパク質の研究への質量分析の適用を指す。質量分析は、タンパク質の特性評価のための重要な新興の方法である。全タンパク質のイオン化のための2つの主な方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)である。利用可能な質量分析計の性能および質量範囲に合わせて、タンパク質を特徴付けるために2つの手法が使用される。第1に、インタクトなタンパク質が上記の2つの技術のいずれかによってイオン化され、次いで質量分析装置に導入される。この手法は、タンパク質分析の「トップダウン」戦略と呼ばれる。第2に、タンパク質は、トリプシンなどのプロテアーゼを使用してより小さなペプチドに酵素的に消化される。続いて、これらのペプチドが質量分析計に導入され、ペプチド質量フィンガープリンティングまたはタンデム質量分析によって同定される。したがって、この後者の手法(「ボトムアップ」プロテオミクスとも呼ばれる)は、タンパク質の存在を推測するためにペプチドレベルでの同定を使用する。全タンパク質質量分析は、主に飛行時間型(TOF)MSまたはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)のいずれかを使用して行われる。これら2種類の機器は、質量範囲が広く、FT-ICRの場合には質量精度が高いため、ここでは好ましい。タンパク質分解ペプチドの質量分析は、より安価な機器設計を特性評価に使用することができるため、タンパク質特性評価のはるかに一般的な方法である。さらに、全タンパク質がより小さいペプチド断片に消化されると、試料調製がより容易になる。ペプチド質量分析に最も広く使用されている機器は、MALDI飛行時間型機器であり、これは、ペプチド質量フィンガープリント(PMF)をハイペースで取得することを可能にするためである(1PMFが約10秒で分析されることができる)。多段階四重極-飛行時間型および四重極イオントラップもまた、本出願において有用である。
【0355】
質量分析CMSは、生体分析分析にますます使用されている。質量分離は多くの同時検出チャネルを可能にするため、質量分析は、多重化によく適している。しかしながら、DNAなどの複雑な生体分子は、複雑なマススペクトルを有し、感度が比較的低いためにマトリックス中で検出することが困難な場合がある。MSは、荷電種の質量電荷比を測定する分析技術である。これは、試料または分子の化学組成を判定するために使用されることができる。質量分析によって分析された試料は、イオン化されて荷電分子または原子を生成し、それらの質量電荷比にしたがって分離され、検出される。この技術は、様々な用途に応じて定性的および定量的に使用される。誘導結合プラズマOCP)は、電磁誘導、すなわち時変磁界によって生成される電流によってエネルギーが供給されるプラズマ源の一種である。ICPは、質量分析のためのイオン化源として使用されることができる。誘導結合プラズマと質量分析の組み合わせは、ICP-MSと呼ばれる。質量スペクトルイメージング(MSI)は、化学情報を化学画像またはマップとして視覚化されることができるように、化学情報を空間情報で分析することを含む質量分析の応用である。化学マップを形成することにより、試料表面全体の組成差を解明することができる。レーザーアブレーションは、レーザービームを照射することによって固体表面から材料を除去するプロセスである。レーザーアブレーションは、質量分析、特に質量スペクトルイメージングのための材料をサンプリングする手段として使用されてきた。一実施形態によれば、試料質量スペクトルイメージングのためのシステムは、レーザーアブレーションサンプラ、誘導結合プラズマイオン化装置、質量分析計、およびコンピュータを含む。例示的には、レーザーアブレーションサンプラは、レーザーと、レーザーアブレーションチャンバと、レーザーが試料プラットフォーム上に配置された試料を照射してアブレーションされた試料を形成することができるように構成された試料プラットフォームとを備え、レーザーおよび試料プラットフォームは、コンピュータによって調整される。レーザーアブレーションサンプラおよび誘導結合プラズマイオン化装置は、アブレーションされた試料がレーザーアブレーションサンプラから誘導結合プラズマイオン化装置に移送されることができ、それによってアブレーションされた試料を蒸発、気化、霧化、およびイオン化して、質量電荷比分布を有する原子イオン集団を形成することができるように動作可能に接続される。質量分析計は、誘導結合プラズマイオン化装置に動作可能に接続され、イオン集団を誘導結合プラズマイオン化装置から質量分析計に移送することができ、質量分析計は、質量電荷比分布にしたがってイオン集団を分離し、それによって質量電荷比データを生成する。コンピュータは、位置入力を受け取り、レーザーアブレーションサンプラと通信して、位置入力にしたがって試料をアブレーションするように構成され、質量電荷比データを位置入力にしたがって試料上の位置に関連付けるように構成される。さらなる例示的な実施形態では、システムは、試料の位置を判定するように構成された位置合わせシステムをさらに備え、それにより、レーザーが照射するように構成された試料上の位置に対する位置入力の自動関係を可能にする。例示的な実施形態では、多重化試料LA-ICP-MSアッセイ用の組成物は、質量タグと、質量タグにコンジュゲートされた特異的結合部分とを含む。質量タグは、試料に内在する元素と検出可能に異なる第1の種類の原子の集団を含む。一実施形態では、第1の種類の原子の集団は、元素の非内因性安定同位体である。別の実施形態では、原子の集合体は、コロイド粒子として構成される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2014079802号パンフレットを参照されたい。
【0356】
試料中の標的を検出する方法は、試料を、標的を認識するように選択された酵素特異的結合部分コンジュゲートと接触させることに関する。次いで、試料が、質量タグ前駆体および酵素基質、チラミン部分またはチラミン誘導体、ならびに任意のリンカーを含む質量タグ前駆体コンジュゲートと接触される。質量タグ前駆体コンジュゲートは、酵素または酵素反応の生成物と反応して、沈殿した質量タグ、共有結合した質量タグ、または非共有結合した質量タグを生成する。試料は、十分なエネルギー源に曝露され、これは、質量タグから質量コードを生成するための十分なエネルギーを提供する。イオン化後、質量分析
などの検出方法を用いて質量コードが検出されることができる。いくつかの実施形態では、試料が、酵素特異的結合部分コンジュゲートを含む第1の溶液および質量タグ前駆体コンジュゲートを含む第2の溶液に曝露される。酵素特異的結合部分の酵素部分は、オキシドレダクターゼ酵素(例えばペルオキシダーゼ)、ホスファターゼ(例えばアルカリホスファターゼ)、ラクタマーゼ(例えばβ-ラクタマーゼ)およびガラクトシダーゼ(例えば、β-D-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ)から選択されることができる。特異的結合部分は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、核酸、DNA、RNA、オリゴ糖、多糖およびそれらのモノマーから選択されることができる。特定の開示される実施形態は、アルカリホスファターゼ-抗体コンジュゲートおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ-抗体コンジュゲートを使用することに関する。いくつかの開示される実施形態では、特異的結合部分は、標的を認識する。他の開示された実施形態では、特異的結合部分は、標的に結合した一次抗体を認識する。いくつかの実施形態では、質量タグを堆積させることは、酵素を標的に固定化すること、および試料を酵素基質部分および質量タグ前駆体と接触させることを含む。酵素基質部分は、酵素および質量タグ前駆体と反応して、質量タグを生成し、標的に堆積させる。試料中に2つ以上のターゲットが存在する場合、上記のように各ターゲットに質量タグが順次堆積される。質量タグが堆積された後、対応する酵素は、後続の標的に後続の質量タグを堆積する前に不活性化される。他の開示された実施形態では、酵素は、質量タグ前駆体-チラミンコンジュゲートまたは質量タグ前駆体-チラミン誘導体コンジュゲートと反応して、典型的には共有結合的に、標的の近位に質量タグを堆積させる。いくつかの実施形態では、酵素を標的に固定化することは、特異的結合部分および酵素を含むコンジュゲートと試料を接触させることを含む。特定の実施形態では、特異的結合部分は、抗体である。特異的結合部分は、標的または標的に以前に結合した別の特異的結合部分を認識して直接結合することができる。特定の実施形態では、第1の酵素、第2の酵素、および任意の追加の酵素は同じである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2012003478号パンフレットを参照されたい。
【0357】
DNAメチル化検出
【0358】
近年、DNAメチル化を測定することにより癌を診断する方法が提案されている。DNAメチル化は、特定の遺伝子のプロモータ領域のCpGアイランドのシトシンで主に起こり、転写因子の結合を妨害し、したがって遺伝子の発現を無症状化する。したがって、腫瘍阻害遺伝子のプロモータにおけるCpGアイランドのメチル化を検出することは、癌研究を大いに支援する。近年、癌の診断やスクリーニングのために、メチル化特異的PCR(以下、MSP)や自動DNAシーケンシングなどの手法により、プロモータメチル化の判定が盛んに試みられている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2009069984号パンフレットを参照されたい。
【0359】
音響エネルギー
【0360】
少なくともいくつかの実施形態は、検体を分析するための方法およびシステムに関する。試料は、その特性に基づいて分析されることができる。これらの特性は、処理中に静的または動的とすることができる音響特性、機械的特性、光学特性などを含む。いくつかの実施形態では、試料の状態および状態を評価するために、試料の特性が処理中に連続的または定期的に監視される。得られた情報に基づいて、処理の一貫性を高め、処理時間を短縮し、処理品質を改善するなどのために処理が制御されることができる。音響が使用されて、試料などの柔らかい物体を分析することができる。音響信号が試料と相互作用するとき、送信される信号は、弾性および硬さなどの試料のいくつかの機械的特性に依存する。固定剤(例えば、ホルマリン)に入れられた試料がより強く架橋されるにつれて、透過速度は、試料の特性にしたがって変化する。いくつかの実施形態では、生物学的試料の状態は、音波の飛行時間に基づいて監視されることができる。状態は、密度状態、固定状態、染色状態などとすることができる。監視は、これらに限定されないが、試料密度、架橋、脱灰、着色などの変化の測定を含む。生物学的試料は、骨などの非流体試料、または他の種類の試料とすることができる。いくつかの実施形態では、方法およびシステムは、音響エネルギーを使用して試料を監視することに関する。反射モードおよび/または透過モードにおける音響エネルギー間の相互作用に基づいて、試料に関する情報が取得されることができる。音響測定を行うことができる。測定の例は、音響信号振幅、減衰、散乱、吸収、試料中の飛行時間(TOF)、音響波の位相シフト、またはそれらの組み合わせを含む。試料は、いくつかの実施形態では、処理中に変化する特性を有する。いくつかの実施形態では、固定剤が検体に適用される。試験片がより固定されるにつれて、機械的特性(例えば、弾性、剛性など)が分子架橋によって変化する。これらの変化は、TOFによる音速測定を使用して監視されることができる。測定値に基づいて、検体の固定状態または他の組織学的状態が判定されることができる。固定不足または過剰固定を回避するために、試料の静的特性、試料の動的特性、またはその双方が監視されることができる。試料の特性は、透過特性、反射率特性、吸収特性、減衰特性などを含む。特定の実施形態では、試料を評価する方法は、試料処理の前、最中および/または後に音波速度を分析することを含む。これは、送信機から被検体から収集された試料に音響波を送達することによって、新鮮な固定されていない試料のベースライン測定を最初に確立することによって達成される。ベースラインTOF音響波は、受信機を使用して検出される。試料の処理後または処理中に、第2の音響波が送信機から試料に送達される。第2のTOF音響波は、第2の音響波が試料を通過した後に受信機を使用して検出される。試料内の音速は、速度の変化を判定するために第1のTOFおよび第2のTOFに基づいて比較される。これらの測定値は、分析された各試料に固有とすることができ、したがって、各試料のベースラインを確立するために使用されることができる。追加のTOF測定値が使用されて、媒体、測定チャネルなどに起因するTOF寄与を判定することができる。いくつかの実施形態では、媒体のTOFは、媒体のベースラインTOFを判定するために、検体が存在しないときに測定される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2011109769号パンフレットを参照されたい。
【0361】
リピドミクス
リピドミクス研究は、数千の細胞脂質分子種の同定および定量化、ならびに他の脂質、タンパク質、および他の代謝生成物とのそれらの相互作用を含む。リピドミクスの研究者らは、細胞脂質の構造、機能、相互作用、および動態、ならびに系の摂動中に起こる変化を調べる。リピドミクス分析技術は、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)分光法、蛍光分光法、二重偏光干渉法および計算方法を含むことができる。リピドミクス研究では、異なる脂質分子種の含有量および組成の空間的および時間的変化を定量的に説明するデータは、その生理学的または病理学的状態の変化を介した細胞の摂動後に生じる。これらの研究から得られた情報は、細胞機能の変化に対する機構的洞察を容易にする。
【0362】
免疫細胞の定量
【0363】
試料中の免疫細胞定量は、エピジェネティックに基づく定量的リアルタイムPCR支援細胞計数(qPACC)を使用することによって行うことができる。活発に発現された遺伝子または無症状化された遺伝子のいずれかのクロマチン構造のメチル化状態は、エピジェネティックベースの細胞同定および定量技術の基礎である。ジヌクレオチドシトシンリン酸グアニン中のシトシン塩基の5’-炭素からのメチル基の細胞型特異的除去(脱メチル化)の発見は、少量のヒト血液または組織試料のみからの免疫細胞の正確で頑強な定量化を可能にする。ゲノムDNA上に位置するこれらのエピジェネティックバイオマーカーは、目的の細胞と安定的に関連している。KleenおよびYuan(2015年11月).「Quantitative real-time PCR assisted sell counting(qPACC)for epigenetic-based immune sell quantification in blood and tissue」.J.Immunother.Cancer 46(3)。
【0364】
癌関連マーカーの検出
【0365】
RNA、DNA、またはタンパク質シーケンシングなどであるがこれらに限定されない技術を使用した、癌の存在に関連するタンパク質、抗原、酵素、ホルモン、DNA変異、および炭水化物を含むがこれらに限定されない「腫瘍マーカー」の検出は、癌型の正確な診断および適切な治療方法の選択にとって重要である。そのようなマーカーは、これらに限定されないが、アルファフェトプロテイン(しばしば胚細胞腫瘍および肝細胞癌に関連するがこれらに限定されない)、CA15-3(しばしば乳癌に関連するがこれらに限定されない)、CA27-29(しばしば関連するが乳癌に限定されない)、CA19-9(しばしば膵臓癌、結腸直腸癌および他の種類の胃腸癌に関連するがこれらに限定されない)、CA-125(しばしば卵巣癌、子宮内膜癌、ファロピウス管癌、肺癌、乳癌および胃腸癌に関連するがこれらに限定されない)、カルシトニン(しばしば髄質甲状腺癌に関連するがこれらに限定されない)、カルレチニン(しばしば中皮腫、性索性腺間質腫瘍、副腎皮質癌、滑膜肉腫に関連するがこれらに限定されない)、癌胚性抗原(しばしば胃腸癌、子宮頸癌、肺癌、卵巣癌、乳癌、尿路癌に関連するが、これらに限定されない)、CD34(しばしば血管周囲細胞腫/孤立性線維性腫瘍、多形性脂肪腫、消化管間質腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫に関連するがこれらに限定されない)、CD99MIC 2(しばしばユーイング肉腫、原発性神経外胚葉性腫瘍、血管周囲細胞腫/孤立性線維性腫瘍、滑膜、白血病、性索-性腺性間質腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、CD117(しばしば消化管間質腫瘍、肥満細胞症、セミノーマに関連するがこれらに限定されない)、クロモグラニン(しばしば神経内分泌腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、染色体3、7、17、および9p21(しばしば膀胱癌に関連するがこれらに限定されない)、様々な種類のサイトケラチン(しばしば多くの種類の癌腫およびいくつかの種類の肉腫に関連するがこれらに限定されない)、デスミン(しばしば平滑筋肉腫、骨格、筋肉腫、および子宮内膜間質肉腫に関連するがこれらに限定されない)、上皮膜抗原(しばしば様々な種類の癌腫、男性血管腫、およびいくつかの種類の肉腫に関連するがこれらに限定されない、第VIII/CD31 FL1因子(しばしば血管肉腫に関連するがこれらに限定されない)、グリア線維性酸性タンパク質(しばしば神経膠腫(星状細胞腫、上衣腫)に関連するがこれらに限定されない)、肉眼的嚢胞性疾患液タンパク質(しばしば乳癌、卵巣癌、および唾液腺癌に関連するがこれらに限定されない)、HMB-45(しばしば黒色腫、PEComa(例えば、血管筋脂肪腫)、明細胞癌、副腎皮質癌に関連するがこれらに限定されない)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(しばしば妊娠性栄養芽細胞性疾患、胚細胞腫瘍、および脈絡癌に関連するがこれらに限定されない)、免疫グロブリン(しばしばリンパ腫、白血病に関連するがこれらに限定されない)、インヒビン(しばしば性索性腺間質、腫瘍、副腎皮質癌、血管芽細胞腫に関連するがこれらに限定されない)、様々な種類のケラチン(しばしば癌腫、一部の種類の肉腫に関連するがこれらに限定されない)、様々な種類のリンパ球マーカー(しばしばリンパ腫、白血病に関連するがこれらに限定されない)、MART-1(Melan-A)(しばしば黒色腫、ステロイド産生腫瘍(副腎皮質癌、性腺腫瘍)に関連するがこれらに限定されない、Myo D1(しばしば横紋筋肉腫、小円形、青色細胞腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、筋肉特異的アクチン(MSA)(しばしば筋肉腫(平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)に関連するがこれらに限定されない)、ニューロフィラメント(しばしば神経内分泌腫瘍、肺の小細胞癌に関連するがこれらに限定されない)、ニューロン特異的エノラーゼ(しばしば神経内分泌腫瘍、肺の小細胞癌、乳癌に関連するがこれらに限定されない)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)(しばしばセミノーマ、胚芽細胞腫、胚性癌に関連するがこれらに限定されない)、前立腺特異的抗原(しばしば前立腺癌に関連するがこれらに限定されない)、PTPRC(CD45)(しばしばリンパ腫、白血病、組織球性腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、S100タンパク質(しばしば黒色腫、肉腫(神経肉腫、脂肪腫、軟骨肉腫)、星状細胞腫、胃腸間質腫瘍、唾液腺癌、いくつかの種類の腺癌、組織球性腫瘍(樹状細胞、マクロファージ)に関連するがこれらに限定されない)、平滑筋アクチン(SMA)(しばしば胃腸間質腫瘍、平滑筋肉腫、PEComaに関連するがこれらに限定されない)、シナプトフィジン(しばしば神経内分泌腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、サイログロブリン(しばしば甲状腺癌の術後マーカーに関連するがこれらに限定されない)、甲状腺転写因子-1(しばしば、全ての種類の甲状腺癌、肺癌に関連するがこれらに限定されない)、腫瘍M2-PK(しばしば、結腸直腸癌、乳癌、腎細胞癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌に関連するがこれらに限定されない)、ビメンチン(しばしば肉腫、腎細胞癌、子宮内膜癌、肺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫に関連するがこれらに限定されない)、ALK遺伝子再構成(しばしば非小細胞肺癌および未分化大細胞リンパ腫に関連するがこれらに限定されない)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)(しばしば多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、および一部のリンパ腫に関連するがこれらに限定されない)、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン(ベータ-hCG)(しばしば絨毛癌および胚細胞腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、BRCA1およびBRCA2遺伝子変異(しばしば卵巣癌に関連するがこれらに限定されない)、BCR-ABL融合遺伝子(フィラデルフィア染色体)(しばしば慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、および急性骨髄性白血病に関連するがこれらに限定されない)、BRAF V600変異(しばしば皮膚黒色腫および結腸直腸癌に関連するがこれらに限定されない)、CD20(しばしば非ホジキンリンパ腫に関連するがこれらに限定されない)、クロモグラニンA(CgA)(しばしば神経内分泌腫瘍に関連するがこれらに限定されない)、上皮由来の循環腫瘍細胞(CELLSEARCH(登録商標))(しばしば転移性乳癌、前立腺癌、および結腸直腸癌に関連するがこれらに限定されない)、サイトケラチンフラグメント21-1(しばしば肺癌に関連するがこれらに限定されない)、EGFR遺伝子変異分析(しばしば非小細胞肺がんに関連するがこれらに限定されない)、エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR)(しばしば乳癌に関連するがこれらに限定されない)、HE4(しばしば卵巣癌に関連するがこれらに限定されない)、KRAS遺伝子変異分析(しばしば結腸直腸癌および非小細胞肺癌に関連するがこれらに限定されない)、乳酸デヒドロゲナーゼ(しばしば胚細胞腫瘍、リンパ腫、白血病、黒色腫、および神経芽細胞腫に関連するがこれらに限定されない)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(しばしば小細胞肺癌および神経芽細胞腫に関連するがこれらに限定されない)、核マトリックスタンパク質22(しばしば膀胱癌に関連するがこれらに限定されない)、プログラムされたデスリガンド1(PD-L1)(しばしば非小細胞肺癌に関連するがこれらに限定されない)、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)およびプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤(PAI-1)(しばしば乳癌に関連するがこれらに限定されない)、5-タンパク質シグネチャ(OVA1(登録商標))(しばしば卵巣癌に関連するがこれらに限定されない)、21-遺伝子シグネチャ(OncotypeDX(登録商標))(しばしば乳癌に関連する)、70-遺伝子シグネチャ(Mammaprint(登録商標))(しばしば乳癌に関連するがこれらに限定されない)、およびHER2/neu遺伝子の増幅または過剰発現(しばしば乳癌、卵巣癌、胃食道接合部腺癌、胃癌、非小細胞肺癌、子宮癌に関連するがこれらに限定されない)を含む。腫瘍に関連する追加のバイオマーカーは、これらに限定されないが、Pl3KCA突然変異、FGFR2増幅、p53突然変異、BRCA突然変異、CCND1増幅、MAP2K4突然変異、ATR突然変異、またはその発現が特定の癌と相関がある任意の他のバイオマーカー;AFP、ALK、BCR-ABL、BRCA1/BRCA2、BRAF、V600E、Ca-125、CA19.9、EGFR、Her-2、KITPSA、S100、KRAS、ER/Pr、UGT1A1、CD30、CD20、F1P1L1-PDGRFα、PDGFR、TMPT、およびTMPRSS2のうちの少なくとも1つ;または、ABCB5、AFP-L3、アルファフェトプロテイン、アルファメチルアシルCoAラセマーゼ、BRCA1、BRCA2、CA15-3、CA242、Ca27-29、CA-125、CA15-3、CA19-9、カルシトニン、癌胎児性抗原、癌胎児性抗原ペプチド-1、デス-癌マカルボキシプロトロンビン、デスミン、初期前立腺癌抗原-2、エストロゲン受容体、フィブリン分解生成物、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、vE6などのHPV抗原、E7、L1、L2またはp16INK4aヒト絨毛性ゴナドトロピン、IL-6、ケラチン19、乳酸塩デヒドロゲナーゼ、ロイシルアミノペプチダーゼ、リポトロピン、メタネフリン、ネプリリジン、NMP22、ノルメタネフリン、PCA3、前立腺特異的抗原、前立腺酸ホスファターゼ、シナプトTNF、ERG、ETV1(ER81)、FLI1、ETS1、ETS2、ELK1、ETV6(TEL1)、ETV7(TEL2)、GABPα、ELF1、ETV4(E1AF;PEA3)、ETV5(ERM)、ERF、PEA3/E1AF、PU.1、ESE1/ESX、SAP1(ELK4)、ETV3(METS)、EWS/FLI1、ESE1、ESE2(ELF5)、ESE3、PDEF、NET(ELK3;SAP2)、NERF(ELF2)、またはFEV.XXX、腫瘍関連糖タンパク質72、c-kit、SCF、pAKT、pc-kitおよびVimentinから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含むことができる。代替的に、または追加的に、目的のバイオマーカーは、これらに限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TIM3、GAL9、GITR、LAG3、VISTA、KIR、2B4、TRPO2、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、TL1AおよびB-7ファミリーリガンドまたはそれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤とすることができ、あるいは、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせである。追加のマーカーは、これらに限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(etv6、am11、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig-イディオタイプ)、神経膠腫(E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120 ctn)、膀胱癌(p21ras)、胆管癌(p21ras)、乳癌(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、頸部癌(p53、p21ras)、結腸癌(p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、肝細胞癌(α-フェトタンパク質)、ホジキンリンパ腫(Imp-1、EBNA-1)、肺癌(CEA、MAGE-3、NY-ESO-1)、リンパ系細胞由来白血病(シクロフィリン
b)、メラノーマ(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、Melan-A/MART-1、cdc27、MAGE-3、p21ras、gp100.sup.Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺癌(HER2/neu、c-erbB-2)、鼻咽頭癌(Imp-1、EBNA-1)、卵巣癌(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、前立腺癌(前立腺特異抗原(PSA)およびその抗原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、腎癌(HER2/neu、c-erbB-2)、頸部および食道の扁平上皮癌(ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス生成物)、精巣癌(NY-ESO-1)、および/またはT細胞白血病(HTLV-1エピトープ)に関連する少なくとも1つのバイオマーカーの検出を含むことができる。
【0366】
キナーゼカスケードの特定の態様の正確な標的化は、疾患治療のためのこれまで達成できなかったブレークスルーを提供することが現在知られている。タンパク質キナーゼファミリーの重要性は、キナーゼ活性の調節不全に起因して生じる多数の疾患状態によって強調される。これらのタンパク質および脂質キナーゼの多くによる異常な細胞信号伝達は、
癌などの疾患をもたらすことができる。いくつかのタンパク質セリン/トレオニンおよびチロシンキナーゼは、癌細胞において活性化され、腫瘍の成長および進行を推進することが知られている。本明細書に記載の技術は、1つ以上のキナーゼ捕捉剤を利用して、キナーゼ、例えばATP依存性キナーゼを濃縮する(または単離する)方法を提供する。キナーゼ捕捉剤の例は、これらに限定されないが、比較的非選択的なプロテインキナーゼ阻害剤、基質または偽基質を含む。この方法は、例えば、タンデム質量分析によるキノームのプロファイリングに有用である。多くの高度に選択的で強力な小分子キナーゼ阻害剤が以前に同定されているが、本明細書において上記で記載されるように、多数の比較的非選択的な小分子キナーゼ阻害剤もまた同定されている。本明細書に記載される方法について、比較的非選択的な小分子キナーゼ阻害剤の使用は、個々のキナーゼについて精製手順を調整する必要性を低下させ、細胞、組織および体液中に通常存在する酵素を触媒濃度のみで濃縮することによって得られる分析信号を増幅する。しかしながら、選択的小分子キナーゼ阻害剤もまた、これらのキナーゼ分析方法において有用とすることができることが認識されるであろう。さらに、非選択的および選択的小分子キナーゼ阻害剤の組み合わせは、これらの方法において有用とすることができる。さらにまた、キナーゼ捕捉剤(または2つ以上のキナーゼ捕捉剤)はまた、ホスファターゼ捕捉剤と組み合わせられて、キナーゼおよびホスファターゼを同時に濃縮(または単離)することもできる。本明細書に記載の方法はまた、単一または複数の検体からのタンデム質量分析によるプロテインキナーゼおよび/またはホスファターゼの多重分析に適用されることができる。本明細書に記載される技術は、キノームなどのキナーゼの集団を分析するための方法を提供する。この方法は、1つ以上キナーゼ捕捉剤を使用して試料からキナーゼを分離することと、タンパク質試料を構成ペプチドに(例えば、トリプシンなどのプロテアーゼを用いて)タンパク質分解的に消化することと、得られたペプチドに、切断可能なアスパラギン酸-プロリン(DP)結合を含有する特定のタンパク質キナーゼペプチド配列に関連する合理的に設計されたキャリブレータペプチドを補充することと、タンデム質量分析によってキナーゼ集団に由来する天然ペプチドを定量することと、を含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2007131191号パンフレットを参照されたい。
【0367】
特定の細胞型の親和性精製
【0368】
推定循環腫瘍細胞は、現在、AML、CML、多発性骨髄腫、脳腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫および前立腺癌、結腸癌および胃癌を含む複数のヒト腫瘍において報告されている。原則として、循環腫瘍細胞は、いくつかの実験戦略によって同定されることができる。多くの循環腫瘍細胞は、それらの正常な対応物を同定する細胞表面マーカーを発現するようである。この観察は、細胞のフローサイトメトリベースの細胞選別またはマイクロビーズベースの親和性精製のいずれかを利用する比較的単純な濃縮手順を提供する。Schawb,M.Encyclopedia of Cancer,3rd edition,Springer-Verlag Berlin Heidelberg,2011を参照されたい。
【0369】
DNAシーケンシング
【0370】
さらなる例示的な実施形態では、試料またはその1つ以上の細胞がDNAシーケンシングに供されることができる。DNAシーケンシングは、例えば、癌に関連するまたはその診断に適切な配列を検出するために、例えば、特定の遺伝子、領域、調節配列、イントロン、エクソン、SNP、潜在的融合物などを標的とすることができる。DNAシーケンシングはまた、ゲノム全体またはそのかなりの部分に対して行われることができる。利用されることができる例示的なシーケンシング方法は、これらに限定されないが、サンガーシーケンシングおよび色素ターミネーターシーケンシング、ならびにパイロシーケンシング、ナノポアシーケンシング、マイクロポアベースのシーケンシング、ナノボールシーケンシング、MPSS、SOLID、SoLExa、Ion Torrent、Starlite、SMRT、tSMS、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、質量分析シーケンシング、ポリメラーゼシーケンシング、RNAポリメラーゼ(RNAP)シーケンシング、顕微鏡ベースのシーケンシング、マイクロ流体サンガーシーケンシング、顕微鏡ベースのシーケンシング、RNAPシーケンシング、トンネリング電流DNAシーケンシング、およびインビトロウイルスシーケンシングなどの次世代シーケンシング(NGS)技術を含む。それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2014144478号パンフレット、国際公開第2015058093号パンフレット、国際公開第2014106076号パンフレットおよび国際公開第2013068528号パンフレットを参照されたい。
【0371】
DNAシーケンシング技術は、指数関数的に進歩している。ごく最近では、ハイスループットシーケンシング(または次世代シーケンシング)技術がシーケンシングプロセスを並列化し、一度に数千または数百万の配列を生成する。超高スループットシーケンシングでは、500,000もの合成によるシーケンシング操作が並列的に実行されることができる。次世代シーケンシングは、業界標準の色素ターミネーター法よりもコストを下げ、速度を大幅に向上させる。
【0372】
パイロシーケンシングは、油溶液中の水滴内のDNAを増幅し(エマルジョンPCR)、各液滴は、クローンコロニーを形成する単一のプライマー被覆ビーズに付着した単一のDNAテンプレートを含有する。シーケンシングマシンは、それぞれが単一のビーズおよびシーケンシング酵素を含む多くのピコリットル容量ウェルを含む。パイロシーケンシングは、新生DNAに付加された個々のヌクレオチドの検出のための光を生成するためにルシフェラーゼを使用し、組み合わされたデータを使用して配列読み出しを生成する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Margulies,Mら.2005,Nature,437,376-380を参照されたい。パイロシーケンシングは、パイロシーケンシングも利用する合成によるシーケンシング技術である。DNAのパイロシーケンシングは、2つのステップを含む。第1のステップでは、DNAを約300~800塩基対の断片にせん断し、断片を平滑末端化する。次いで、オリゴヌクレオチドアダプタを断片の末端にライゲーションする。アダプタは、断片の増幅およびシーケンシングのためのプライマーとして機能する。断片は、例えば5’-ビオチンタグを含むアダプタBを使用して、DNA捕捉ビーズ、例えばストレプトアビジン被覆ビーズに結合させることができる。ビーズに付着した断片は、油-水エマルジョンの液滴内でPCR増幅される。結果は、各ビーズ上のクローン増幅DNA断片の複数のコピーである。第2のステップでは、ビーズをウェル(ピコリットルサイズ)に捕捉する。パイロシーケンシングは、各DNA断片に対して並列的に行われる。1つ以上のヌクレオチドの付加は、シーケンシング機器においてCCDカメラによって記録される光信号を生成する。信号強度は、組み込まれるヌクレオチドの数に比例する。パイロシーケンシングは、ヌクレオチド付加時に放出されるピロリン酸(PPi)を利用する。PPiは、アデノシン5’ホスホスルフェートの存在下でATPスルフリラーゼによってATPに変換される。ルシフェラーゼは、ATPを使用してルシフェリンをオキシルシフェリンに変換し、この反応は、検出および分析される光を生成する。別の実施形態では、パイロシーケンシングが使用されて遺伝子発現を測定する。RNAのパイロシーケンシングは、DNAのパイロシーケンシングと同様に適用され、部分的なrRNA遺伝子シーケンシングの適用を顕微鏡ビーズに付着させ、次いで付着物を個々のウェルに配置することによって達成される。次いで、遺伝子発現プロファイルを判定するために、付着した部分rRNA配列が増幅される。Sharon Marsh,Pyrosequencing(登録商標)Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.373,15-23(2007)。
【0373】
使用されることができるシーケンシング技術の別の例は、ナノポアシーケンシングである(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Soni G VおよびMeller,A Clin Chem 53:1996-2001,2007)。ナノポアは小さな孔であり、典型的に直径1ナノメートルオーダーである。ナノポアを導電性流体に浸し、その両端に電位を印加すると、ナノポアを通じたイオンの伝導により、僅かな電流が生じる。流れる電流の量は、ナノポアのサイズに影響される。DNA分子がナノポアを通過するとき、DNA分子上の各ヌクレオチドは、ナノポアを異なる程度まで妨害する。したがって、DNA分子がナノポアを通過するときにナノポアを通過する電流の変化は、DNA配列の読み取りを表す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Bayley,Clin Chem.2015 Jan;61(1):25-31を参照されたい。
【0374】
使用されることができるDNAおよびRNA検出技術の別の例は、SOLiD(商標)技術(Applied Biosystems)である。SOLiD(商標)技術システムは、DNAとRNAの双方の大規模並列次世代シーケンシングを実行するために利用されることができるライゲーションベースのシーケンシング技術である。DNA SOLiD(商標)シーケンシングでは、ゲノムDNAが断片にせん断され、アダプタが断片の5’および3’末端に結合して断片ライブラリを生成する。あるいは、アダプタを断片の5’および3’末端にライゲーションし、断片を環状化し、環状化された断片を消化して内部アダプタを生成し、得られた断片の5’および3’末端にアダプタを付着させて、マット対ライブラリを生成することによって、内部アダプタを導入することができる。次に、クローンビーズ集団が、ビーズ、プライマー、テンプレートおよびPCR成分を含有するマイクロリアクタ中で調製される。PCRの後、テンプレートを変性させ、ビーズを濃縮して、伸長したテンプレートを有するビーズを分離する。選択されたビーズ上のテンプレートは、ガラススライドへの結合を可能にする3’修飾に供される。配列は、部分的にランダムなオリゴヌクレオチドと、特定のフルオロフォアによって同定される中央の判定された塩基(または塩基対)との連続的なハイブリダイゼーションおよびライゲーションによって判定されることができる。色が記録された後、ライゲーションしたオリゴヌクレオチドが切断されて除去され、次いでプロセスが繰り返される。
【0375】
他の実施形態では、遺伝子発現を測定するために、SOLiD(商標)遺伝子発現の連続分析(SAGE)が使用される。遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、各転写生成物に対して個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なしに、多数の遺伝子転写生成物の同時定量分析を可能にする方法である。第1に、タグが各転写物内の固有の位置から得られる限り、転写物を固有に識別するのに十分な情報を含む短い配列タグ(約10~14bp)が生成される。次いで、多くの転写物が一緒に連結されて、シーケンシングされることができる長い連続分子を形成し、複数のタグの同一性を同時に明らかにする。個々のタグの存在量を判定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって、転写物の任意の集団の発現パターンが定量的に評価されることができる。さらなる詳細については、例えば、Velculescuら.,Science 270:484 487(1995);およびVelculescuら.,Cell 88:243 51(1997,これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0376】
使用されることができる別のシーケンシング技術は、例えば、Helicos真単一分子シーケンシング(tSMS)(Harris T.D.ら(2008)Science
320:106-109)を含む。tSMS技術では、DNA試料が約100~200ヌクレオチドの鎖に切断され、各DNA鎖の3’末端にポリA配列が付加される。各鎖は、蛍光標識されたアデノシンヌクレオチドの付加によって標識される。次いで、DNA鎖は、フローセル表面に固定化された数百万のオリゴT捕捉部位を含むフローセルにハイブリダイズされる。テンプレートは、約1億テンプレート/cmの密度とすることができる。次いで、フローセルが装置、例えばHeliScopeシーケンサーに装填され、レーザーがフローセルの表面を照射し、各テンプレートの位置を明らかにする。CCDカメラは、フローセル表面上のテンプレートの位置をマッピングすることができる。次いで、テンプレート蛍光標識が切断され、洗い流される。シーケンシング反応は、DNAポリメラーゼおよび蛍光標識ヌクレオチドを導入することによって開始される。オリゴT核酸はプライマーとして働く。ポリメラーゼは、標識されたヌクレオチドをテンプレート指向的にプライマーに組み込む。ポリメラーゼおよび組み込まれていないヌクレオチドが除去される。蛍光標識されたヌクレオチドの指向性取り込みを有するテンプレートは、フローセル表面をイメージングすることによって検出される。イメージング後、切断ステップが蛍光標識を除去し、所望のリード長が達成されるまで、他の蛍光標識ヌクレオチドを用いてプロセスが繰り返される。各ヌクレオチド付加ステップによって配列情報が収集される。tSMSのさらなる説明は、例えば、Lapidusら(米国特許第7,169,560号明細書)、Lapidusら(米国特許出願公開第2009/0191565号明細書)、Quakeら(米国特許第6,818,395号明細書)、Harris(米国特許第7,282,337号明細書)、Quakeら(米国特許出願公開第2002/0164629号明細書)、およびBraslavskyら、PNAS(USA),100:3960-3964(2003)に示されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0377】
使用されることができるシーケンシング技術の別の例は、DNAとRNAの双方をシーケンシングするPacific Biosciencesの単一分子リアルタイム(SMRT)技術を含む。SMRTでは、4つのDNA塩基のそれぞれが、4つの異なる蛍光色素のうちの1つに結合されている。これらの色素は、ホスホ結合されている。単一のDNAポリメラーゼは、ゼロモード導波路(ZMW)の底部にテンプレート一本鎖DNAの単一分子で固定化される。ZMWは、ZMW外に急速に拡散する蛍光ヌクレオチドのバックグラウンドに対するDNAポリメラーゼによる単一ヌクレオチドの取り込みの観察を可能にする閉じ込め構造である(マイクロ秒)。成長中の鎖にヌクレオチドを組み込むのに数ミリ秒かかる。この間、蛍光標識が励起されて蛍光信号が発生し、蛍光タグが切断される。色素の対応する蛍光の検出は、どの塩基が組み込まれたかを示す。このプロセスが繰り返される。RNAをシーケンシングするために、DNAポリメラーゼをZMW中の逆転写酵素で置換し、それに応じてプロセスを進める。
【0378】
シーケンシング技術の別の例は、(例えば、米国特許出願公開第20090026082号明細書に記載されているように)化学感応性電界効果トランジスタ(chemFET)アレイを使用してDNAをシーケンシングすることを含むことができる。この技術の一例では、DNA分子が反応チャンバ内に配置されることができ、テンプレート分子がポリメラーゼに結合したシーケンシングプライマーにハイブリダイズされることができる。シーケンシングプライマーの3’末端に1つ以上の三リン酸が組み込まれていることは、chemFETによって電流の変化として識別されることができる。アレイは、複数のchemFETセンサを有することができる。別の例では、単一の核酸をビーズに付着させることができ、核酸をビーズ上で増幅させることができ、個々のビーズをchemFETアレイ上の個々の反応チャンバに移送することができ、各チャンバは、chemFETセンサを有し、核酸をシーケンシングすることができる。
【0379】
使用されることができるシーケンシング技術の別の例は、電子顕微鏡を使用することを含む(Moudrianakis E.N.およびBeer M.Proc Natl Acad Sci USA.1965年3月;53:564-71)。この技術の一例では、個々のDNA分子は、電子顕微鏡を用いて識別可能な金属標識を用いて標識される。次いで、これらの分子は平らな表面に伸ばされ、電子顕微鏡を使用してイメージングされて配列を測定する。
【0380】
DNAナノボールシーケンシングは、生物のゲノム配列全体を判定するために使用されるハイスループットシーケンシング技術の一種である。この方法は、ローリングサークル複製を使用して、ゲノムDNAの小さな断片をDNAナノボールに増幅する。次いで、ライゲーションによる非連鎖シーケンシングを使用してヌクレオチド配列を判定する。DNAシーケンシングのこの方法は、実行ごとに多数のDNAナノボールをシーケンシングすることを可能にする。そのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2014122548号パンフレットおよびDrmanacら、Science.2010年1月1日;327(5961):78-81;Porreca,Nat Biotechnol.2010年1月;28(1):43-4を参照されたい。
【0381】
大規模並列シグネチャシーケンシング(MPSS)は、初期の次世代シーケンシング技術の1つであった。MPSSは、アダプタライゲーションとそれに続くアダプタ復号の複雑な手法を使用し、4ヌクレオチドずつ配列を読み取る。
【0382】
ポロニーシーケンシングは、インビトロ対タグライブラリをエマルジョンPCR、自動顕微鏡、およびライゲーションに基づくシーケンシングケミストリーと組み合わせて大腸菌ゲノムをシーケンシングする。この技術はまた、Applied Biosystems SOLiDプラットフォームに組み込まれた。
【0383】
Solexaシーケンシングでは、最初にDNA分子およびプライマーをスライド上に付着させ、ポリメラーゼで増幅させて、最初に作った局所クローンコロニー「DNAコロニー」を形成させる。配列を判定するために、4種類の可逆的ターミネーター塩基(RT塩基)を添加し、組み込まれていないヌクレオチドを洗い流す。パイロシーケンシングとは異なり、DNA鎖は、一度に1ヌクレオチドずつ伸長され、画像取得は、遅延した時点で実行されることができ、単一のカメラから撮影された連続画像によってDNAコロニーの大きなアレイを取り込むことができる。
【0384】
SOLiD技術は、ライゲーションによるシーケンシングを使用する。ここで、固定長の全ての可能なオリゴヌクレオチドのプールが、シーケンシングされた位置にしたがって標識される。
【0385】
オリゴヌクレオチドをアニーリングし、ライゲーションする;マッチング配列に対するDNAリガーゼによる優先的ライゲーションは、その位置のヌクレオチドの情報をもたらす信号をもたらす。シーケンシングの前に、DNAがエマルジョンPCRによって増幅される。それぞれが同じDNA分子の単一コピーを含有する、得られたビーズをスライドガラス上に堆積させる。結果は、Solexaシーケンシングに匹敵する量および長さの配列である。
【0386】
Ion Torrent(商標)シーケンシングでは、DNAを約300~800塩基対の断片にせん断し、断片を平滑末端化する。次いで、オリゴヌクレオチドアダプタを断片の末端にライゲーションする。アダプタは、断片の増幅およびシーケンシングのためのプライマーとして機能する。断片は、表面に付着させることができ、断片が個別に分解可能であるような解像度で付着させる。1つ以上ヌクレオチドの付加はプロトン(H+)を放出し、これは信号を伝達し、シーケンシング機器において検出および記録される。信号強度は、組み込まれるヌクレオチドの数に比例する。Ion Torrentデータは、FASTQファイルとして出力されてもよい。これらのそれぞれがその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0026082号明細書、米国特許出願公開第2009/0127589号明細書、米国特許出願公開第2010/0035252号明細書、米国特許出願公開第2010/0137143号明細書、米国特許出願公開第2010/0188073号明細書、米国特許出願公開第2010/0197507号明細書、米国特許出願公開第2010/0282617号明細書、米国特許出願公開第2010/0300559号明細書、米国特許出願公開第2010/0300895号明細書、米国特許出願公開第2010/0301398号明細書および米国特許出願公開第2010/0304982号明細書を参照されたい。
【0387】
癌関連融合タンパク質の検出
【0388】
融合遺伝子は、融合遺伝子が非融合遺伝子よりもはるかに活性な異常タンパク質を産生することができるため、融合遺伝子は腫瘍形成に寄与することができる。多くの場合、融合遺伝子は癌を引き起こす癌遺伝子である;これらは、BCR-ABL、TEL-AML1(tを有する全て(12;21))、AML1-ETO(tを有するM2 AML(8;21))、および前立腺癌でしばしば生じる21番染色体上の間質欠失を伴うTMPRSS2-ERGを含む。TMPRSS2-ERGの場合、アンドロゲン受容体(AR)信号伝達を破壊し、発癌性ETS転写因子によるAR発現を阻害することによって、融合生成物は前立腺癌を調節する。ほとんどの融合遺伝子は、血液癌、肉腫および前立腺癌から見出される。発癌性融合遺伝子は、2つの融合パートナーから新たなまたは異なる機能を有する遺伝子生成物をもたらすことができる。あるいは、癌原遺伝子が強力なプロモータに融合され、それによって、発癌機能が、上流の融合パートナーの強力なプロモータによって引き起こされるアップレギュレーションによって機能するように設定される。後者は、腫瘍遺伝子が免疫グロブリン遺伝子のプロモータに並置されているリンパ腫において一般的である。発癌性融合転写物はまた、トランススプライシングまたはリードスルー事象によって引き起こされることができる。特定の染色体異常の存在およびそれらの結果として生じる融合遺伝子は、正確な診断を設定するために癌診断において一般的に使用される。染色体バンディング分析、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)は、癌関連融合タンパク質を同定するために診断研究所で用いられる一般的な方法である。
【0389】
化学療法耐性マーカーの検出
【0390】
薬物耐性は、悪性腫瘍の化学療法の失敗の原因であり、耐性は、既存のもの(内因性耐性)または薬物によって誘導されるもの(獲得耐性)のいずれかである。耐性マーカーの検出は、これらに限定されないが、免疫組織化学およびフローサイトメトリによる癌関連線維芽細胞の同定、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1、切断型カスパーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、リン酸化Akt、Ki-67、およびH2AXタンパク質の同定(免疫組織化学染色を使用)、P-糖タンパク質発現、ヒアルロナン、(細胞外マトリックスの主要なグリコサミノグリカン成分)、3q26.2の増加、ならびにホールゲノムアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによって同定される6q11.2-12、9p22.3、9p22.2-22.1、9p22.1-21.3、Xp22.2-22.12、Xp22.11-11.3、およびXp11.23-11.1の喪失、免疫染色によって同定されるLRP過剰発現、RNAシーケンシングを使用するマイクロRNA MiR-193a-5pに関連する遺伝子産物であるHGFおよびc-MET、細胞選別によって同定されるCD44の過剰発現、ならびにホスタチンA、ヒストン脱アセチル化酵素の強力な阻害剤に基づく。化学療法耐性マーカーは、多くの場合、タンパク質の過剰発現、DNAシーケンシング、RNAシーケンシング、およびタンパク質シーケンシングなどであるがこれらに限定されない技術を使用したDNARNA、またはタンパク質レベルのいずれかでのこの過剰発現の同定の形態をとることができる。いくつかの化学療法耐性マーカーは、エピジェネティック変化の形態をとり、DNAパイロシーケンシングによるこれらの変化の同定は、化学療法耐性マーカーの同定に特に有用とすることができる。さらに、遺伝子への突然変異は、遺伝子生成物の発現に直接影響を及ぼし、癌性細胞の形成につながる可能性があり、DNAシーケンシングによる遺伝子突然変異の同定は有用性が高い。現在、耐性は、通常、長期間の薬物投与後の治療中に診断される。薬物耐性の迅速な評価のための方法が現在存在する。3つのクラスの試験手順:新鮮腫瘍細胞培養試験、癌バイオマーカー試験および陽電子放射断層撮影(PET)試験が一般に使用される。薬物耐性は、新鮮な腫瘍細胞培養試験によるインビトロでの処置の前、およびPET試験によるインビボでの短時間の処置の後に診断されることができる。Lippert,T.ら.(2011).「Current status of methods to assess cancer drug resistance」.Int.J.Med.Sci.8(3):245-253を参照されたい。
【0391】
腫瘍特異的抗原または腫瘍特異的抗体および抗腫瘍ワクチンの産生のための代表的な試料の使用
【0392】
上記のように、被験体試料の別の用途は、腫瘍特異的抗体の産生または癌もしくは腫瘍ワクチンの製造に使用されることができる腫瘍細胞およびそれに由来する抗原の単離のためである。
【0393】
癌ワクチン接種への1つの手法は、癌細胞を死滅させることができる免疫反応を刺激することを期待して、癌細胞からタンパク質を分離し、それらのタンパク質に対して癌患者を免疫することである。乳癌、肺癌、結腸癌、皮膚癌、腎臓癌、前立腺癌および他の癌の治療のための治療用癌ワクチンが開発されている。実際、前立腺癌を治療するためにDendreon Corporationによって開発されたそのようなワクチンの1つは、2010年4月29日に、進行前立腺癌患者の治療に使用するための米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた。このワクチンProvenge(登録商標)の承認は、この種の治療に対する新たな関心を刺激した。
【0394】
例えば、同定された腫瘍細胞に由来する腫瘍細胞またはタンパク質分解的に切断された細胞表面抗原は、有効な治療的または予防的腫瘍ワクチンの開発に使用されることができる。これらの抗原は、裸であってもよく、または多量体化されていてもよく、または他の部分、例えば他のタンパク質、アジュバントにコンジュゲートされていてもよく、または細胞、例えば樹状細胞に装填されていてもよい。生きている癌細胞のタンパク質分解処理は、インビトロで未処理の癌細胞のものを超える抗癌免疫応答を誘導するのに十分な抗原標的を放出することができることが示されている。(Lokhovら.,J Cancer 2010 1:230-241)。
【0395】
特に、特定の患者試料から単離された腫瘍細胞に由来する異なる抗原の1つまたはカクテルを含有する腫瘍ワクチン、本質的には、患者がその特定の腫瘍型に特異的な免疫刺激部分で治療されることができるような「個別化癌ワクチン」の産生が企図される。一般に、これらのワクチンは、有効な免疫応答、例えば特定の抗原を発現する腫瘍細胞に対する抗原特異的CTL応答を生成するための有効量のそのような抗原を含む。述べられたように、いくつかの例では、これらの抗原は、他の部分、例えば樹状細胞に装填されることができる。一般に、そのようなワクチンはまた、他の免疫アジュバント、例えばサイトカイン、TLRアゴニスト、TNF/Rアゴニストまたはアンタゴニスト、チェックポイント阻害剤を調節する薬剤などを含む。
【0396】
また、いくつかの実施形態では、本開示は、抗血清およびモノクローナル抗体の産生のためのそのような抗原の使用をさらに企図する。これらの抗体は、診断目的、すなわち試料中の腫瘍細胞または抗原の検出のために使用されることができる。あるいは、そのような抗体、特にそのような腫瘍抗原に特異的なヒトまたはヒト化抗体は、これらの抗原を発現する癌の治療において治療的に使用されることができる。治療に潜在的に使用するため
の抗体を生成する方法は、当該技術分野において周知である。
【実施例0397】
実施例1:エピタコフォレシスのための装置
【0398】
エピタコフォレシスのための装置は、一般に、例えば図1図4に示すように、同心または多角形のディスクアーキテクチャを使用する。これらの材料は、装置動作中に有益な改善された熱伝達特性をもたらすため、ガラスまたはセラミックがシステム(すなわち、同心円または多角形のディスクの材料)の製造に使用される。例えば、エピタコフォレシス装置の平坦なチャネルは、狭いチャネルと比較して良好な熱伝達能力を有するため、集束材料の過熱(または沸騰)は一般に防止される。電流/電圧プログラミングは、装置のジュール加熱を調整するのにも適している。プラスチック材料、例えばポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標)として市販)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、および/またはポリジメチルシロキサン(「PDMS」)なども装置製造に使用される。一般に、装置は、所望の試料体積、例えばミリリットルスケールの試料体積、例えば最大15mLを収容するような寸法で製造される。
【0399】
図1図3を参照すると、2つの同心ディスクがスペーサによって分離され、それにより、エピタコフォレシス試料処理のための平坦なチャネルが形成される。電流は、複数の高電圧接続部(HV接続部)およびシステムの中央の接地接続部(例えば、図1および図3を参照されたい)を介して印加される。いくつかの例では、試料は、装置の開口部、例えば上部または側部(例えば、図3を参照されたい)を通して装置に注入される。電気の印加は、ディスクの中心に移動する同心リングとして試料の標的分析物を集束させ(以下にさらに説明する)、次いで標的分析物は、装置の底部のシリンジを通して収集される(例えば、図3を参照されたい)。図2A(平面図)および図2Bに示すように、好ましい装置構成は、外側円形電極(1)、終端電解質(2)、および先行電解質(3)からなる。一般に、外側円形電極(1)の直径は、約10~200mmであり、先行電解質の直径は、約10μm~約20mmの厚さ(高さ)の範囲である。先行電解質は、ゲル、粘性添加剤によって安定化されるか、または例えば膜などによって終端電解質から流体力学的に分離される。ゲルまたは流体力学的分離は、装置の動作中に先行電解質と終端電解質の混合を防止する。また、いくつかの装置では、実施例2でさらに後述するように、電解質の非常に薄い(<100μm)層を使用することによって混合が防止される。
【0400】
図2A図2Bを参照すると、先行電解質の中心には、電極(5)を有する電極リザーバ(4)がある。電極(1、5)および電解質(2、3)のアセンブリは、平坦な電気絶縁支持体(8)上に配置される。電解質リザーバ(4)は、例えばリザーバから試料をピペットで取り出すなどの分離プロセス後に濃縮試料溶液を除去するために使用される。
【0401】
代替的な構成(図4を参照)では、中心電極(5)は、管(9)によって濃縮器に接続された先行電解質リザーバ(10)に移動される。管(9)は、半透膜(図示せず)によって一端が直接または閉鎖されている。この配置は、使用される膜の特性にしたがって大きな分子の移動を停止することによって収集を容易にする。この配置は、試料の収集を単純化し、例えば、毛細管分析器、クロマトグラフィ、PCR装置、酵素反応器などの他の装置にオンラインで濃縮器を接続する手段を提供する。管(9)が使用されて、先行電解質を含有するゲルを含まない構成で先行電解質の向流を供給することもできる。
【0402】
一般に、先行電解質安定化のためのゲルは、例えばアガロース、ポリアクリルアミド、プルランなどの任意の非荷電材料によって形成される。いくつかの装置では、実行される分離の性質に応じて、上面が開いたままにされるか、またはいくつかの装置では上面が閉じられる。閉じている場合、装置を覆うために使用される材料は、好ましくは、エピタコ
フォレシス装置の動作中の蒸発を防止するために、熱伝導性絶縁材料である。
【0403】
一般に、リング(円形)電極は、最大の耐薬品性および電界均一性を可能にするため、優先的には金メッキまたは白金メッキされたステンレス鋼リングである。あるいは、ステンレス鋼およびグラファイト電極は、いくつかの装置、特に使い捨て装置に使用されてもよい。また、リング(円形)電極は、同様の機能を提供する他の部分、例えばワイヤ電極のアレイによって置換されることができる。さらに、規則的に離間された電極の2次元アレイが、追加的または代替的に、エピタコフォレシス装置に使用されてもよい。円形配向の規則的に離間された電極のアレイもまた、エピタコフォレシス装置に使用されることができる。さらにまた、他の電極構成が使用されて、所望の試料分離(例えば、集束ゾーンを方向付けるために)に基づいて異なる電界形状をもたらすこともできる。そのような構成は、電極の多角形配置として説明される。電気的に分離されたセグメントに分割されると、駆動電界の時間依存形状に対して切り替えられた電界が生成される。そのような配置は、いくつかの装置における試料収集を容易にする。
【0404】
実施例2:エピタコフォレシス装置の動作
【0405】
図1図4に示されている設計のものなどのエピタコフォレシス装置は、図5に示されているように、2つの電解質リザーバ配置、先行電解質とそれに続く終端電解質と混合された試料、または先行電解質とそれに続く終端電解質と混合された試料、または3つの電解質リザーバ配置のいずれかで動作される。そのような構成では、試料は、任意の導電性溶液と混合されることができる。あるいは、試料が適切な終端イオンを含む場合、終端電解質ゾーンは排除されることができる。図2A図2Bを参照すると、終端電解質リザーバ(2)に試料と適切な終端電解質との混合物を充填し、電源(6)をオンにすると、イオンは中心電極(5)に向かって移動し始め、先行電解質と終端電解質(7)との間の境界にゾーンを形成する。泳動中の試料ゾーンの濃度は、一般的な等張性の原理[Foret,F.,Krivankova,L.,Bocek,P.,Capillary Zone Electrophoresis.Electrophoresis Library,(Editor Radola,B.J.)VCH,Verlagsgessellschaft,Weinheim,1993.]にしたがって調整される。これにより、低濃度の試料イオンは濃縮され、高濃度の試料イオンは希釈される。試料ゾーンが電解質リザーバ(4)に入ると、分離プロセスが停止され、集束材料が装置の中心に収集される。実際には、泳動ゾーンの最終濃度は、先行イオンの濃度に匹敵する濃度を有する。典型的には、2から1000またはそれ以上の任意の濃度因子が、エピタコフォレシスを使用して達成される。
【0406】
3電解質リザーバ配置では、試料は、先行電解質と終端電解質との間に適用され(例えば、図5を参照されたい)、そのような配置は、2電解質リザーバ配置と比較して僅かに速い試料濃度および分離をもたらす。
【0407】
混合を避けるために、先行電解質および後行電解質は、中性(非荷電)粘性媒体、例えば、アガロースゲル(例えば、任意にゲル内に含まれるか、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質を表す図2A図2B図3を参照されたい)によって安定化される。
【0408】
等速電気泳動に使用される当業者に知られている全ての一般的な電解質は、先行イオンが目的の試料イオンの有効電気泳動移動度よりも高い有効電気泳動移動度を有する場合、本発明のエピタコフォレシス装置とともに使用されることができる。選択された終端イオンについては反対である。
【0409】
装置は、正モード(カチオン種の分離/濃縮)または負モード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで動作される。エピタコフォレシスを使用したアニオン分離のための最も一般的な先行電解質は、例えば、適切な塩基、例えばヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどで所望のpHに緩衝された塩化物、硫酸塩、またはギ酸塩を含む。アニオン分離のためのエピタコフォレシスのための先行電解質の濃度は、主要なイオンに対して5mM~1Mの範囲である。その場合、終端イオンは、多くの場合、MES、MOPS、HEPES、TAPS、アセテート、グルタメートおよび弱酸および低移動度アニオンの他のアニオンを含む。正モードでのエピタコフォレシスのための終端電解質の濃度は、以下の範囲である:終端イオンに対して5mM~10M。
【0410】
カチオン分離のために、エピタコフォレシスのための一般的な先行イオンとしては、例えば、カリウム、アンモニウムまたはナトリウムを含み、酢酸塩またはギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界は、任意の弱酸によって形成される万能終端電解質として機能する。
【0411】
正モードおよび負モードの双方において、先行イオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を犠牲にして、試料ゾーンの比例的な増加をもたらす。典型的な濃度は、10~100mMの範囲である;しかしながら、より高い濃度も可能である。
【0412】
さらにまた、ゾーン電気泳動分離のみで十分である場合、装置は、ただ1つのバックグラウンド電解質によって動作されることができる。
【0413】
電流および/または電圧プログラミングは、試料の移動速度を調整するのに適している。この同心配置では、移動中に断面積が変化し、ゾーン移動の速度は時間的に一定ではないことに留意されたい。したがって、この配置は、ゾーンが一定の速度で移動する等速電気泳動の原理に厳密にしたがわない。電源(6)の動作モードに応じて、以下の3つの基本的なケースが区別されることができる:1.定電流分離;2.定電圧分離;3.定電力分離。
【0414】
以下に説明する式の変数は以下のとおりである:d=移動距離(d<0;r>);E=電界強度;H=電解質(ゲル)高さ;I=電流;J=電流密度;κ=電解質導電率;r=半径;S=断面積;u=電気泳動移動度;v=速度;X=中心電極からエピタコフォレシス境界までの長さ。
【0415】
高電圧電源(HVPS)によって供給される定電流を使用する共通の動作モードでは、移動領域は、電流密度の増加に起因して中心に近付くにつれて加速される。定電流での例示的な分離では、円形構造を含む装置、例えば1つ以上の円形電極を含む装置を使用すると、距離dにおける相対速度は、以下のように開始半径rから距離dにおけるvでのエピタコフォレシス境界速度の導出によって実証されるように、先行電解質の移動度(導電率)にのみ依存する。
【0416】
一般式:
【0417】
U=IRまたはE=J/κ(オームの法則)
【0418】
E=U/X(電界強度)
【0419】
【化6】
【0420】
v=uE
【0421】
S=2πXH
【0422】
開始から半径rの距離dにおけるエピタコフォレシス境界速度v:
【0423】
(d)=uI/2π(r-d)hκ=Constant/(r-d)
【0424】
定電流での距離dにおける移動距離(d)対相対速度の関係のプロットについては、図6Bを参照されたい。
【0425】
定電圧での分離に関して、円形構造を備える装置、例えば1つ以上の円形電極を備える装置を使用すると、距離dにおける相対速度は、以下のように開始半径rからの距離dにおけるvでのエピタコフォレシス境界速度の導出によって実証されるように、LEとTEの双方の移動度(導電率)に依存する:
【0426】
一般式:
【0427】
U=IRまたはE=J/κ(オームの法則)
【0428】
E=U/X(電界強度)
【0429】
【化7】
【0430】
境界速度の計算:
【0431】
=U-U=U-IR
【0432】
=U-Id/Sκ
【0433】
=U-Uκd/(r-d)κ
【0434】
=U(r-d)κ/[(r-d)κ+κd]
【0435】
=U/(r-d)
【0436】
=Uκ/[(r-d)κ+κd]
【0437】
=u
【0438】
=uUκ/[(r-d)κ+κ
【0439】
定電圧での距離dにおける移動距離(d)対相対速度の関係のプロットについては、図6Cを参照されたい。
【0440】
定電力での分離に関して、円形構造を備える装置、例えば1つ以上の円形電極を備える装置を使用すると、距離dにおける相対速度は、以下のように開始半径rからの距離dにおけるvでのエピタコフォレシス境界速度の導出によって実証されるように、LEとTEの双方の移動度(導電率)に依存する:
【0441】
一般式:
【0442】
P=UI=IR(電力)
【0443】
U=IRまたはE=J/κ(オームの法則)
【0444】
E=U/X(電界強度)
【0445】
J=Eκ⇒I=SUκ/X;R=X/κS
【0446】
境界速度の計算:
【0447】
P=P+P
【0448】
P=I(R+R
【0449】
【化8】
【0450】
【化9】
【0451】
=IR=I(r-d)/κ
【0452】
【化10】
【0453】
【化11】
【0454】
κは小さい数であるため、以下のとおりである:
【0455】
【化12】
【0456】
定電力での距離dにおける相対速度に対する移動距離(d)の関係のプロットについては、図6Dを参照されたい。
【0457】
実施例3:例示的な装置を用いたエピタコフォレシス
【0458】
図7に示すように、エピタコフォレシス装置を使用して、スルファニル酸色素(SPADNS)を同心環に集束させるエピタコフォレシス分離を行った。1Wの定電力を印加して、エピタコフォレシス装置内でエピタコフォレシスを実行した。
【0459】
図7を参照すると、SPADNSは、図7の赤色ゾーンとして見ることができる同心リング状の集束ゾーンに集束された。赤い円の上半分は、ゾーンの高さが約5mmであることを示した。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動すると、最終的にSPADNSの集束ゾーンが装置の中心に進入し、装置の中心に収集され、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の集束および回収が実証された。
【0460】
実施例4:例示的な装置を用いたエピタコフォレシス
【0461】
エピタコフォレシス装置(図8A)を使用して、スルファニル酸色素(SPADNS)を集束させるためにエピタコフォレシスを実施した。図8Aの装置は、円形構造および直径10.2cmの円形金電極を有していた。10mM HCl-ヒスチジン(pH6.25)を先行電解質として使用し、直径5.8cmの0.3%アガロースゲル10mL中に含有させた。15mLの10mM MES Tris(pH8.00)を後行電解質として使用した。装置のシリンジリザーバは、100mMの濃度の先行電解質His(pH6.25)を含んでいた。0.137mMの濃度の300μlのSPADNSを後行電解質中で調製し、ゲルと装置の円形電極との間の空間に充填した。エピタコフォレシスを行うために、1Wの定電力を使用した。
【0462】
図8Bを参照すると、SPADNSは、図8Bの赤色ゾーンとして見ることができる同心リング状の集束ゾーンに集束された。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動すると、最終的にSPADNSの集束ゾーンが装置の中心に進入し、装置の中心に収集され、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の集束および回収が実証された。
【0463】
さらにまた、図8Aのエピタコフォレシス装置を用いてエピタコフォレシスを行い、30ntのオリゴマー(ROX-オリゴ)を集束させた。図8Aの装置は、円形構造および直径10.2cmの円形金電極を有していた。10mM HCl-ヒスチジン(pH6.25)を先行電解質として使用し、直径5.8cmの0.3%アガロースゲル10mL中に含有させた。15mLの10mM MES Tris(pH8.00)を後行電解質として使用した。装置のシリンジリザーバは、100mMの濃度の先行電解質His(pH6.25)を含んでいた。100μmの濃度の75μlのROX-オリゴを後行電解質中で調製し、装置に充填した。エピタコフォレシスを行うために、1Wの定電力を使用した。
【0464】
図8Cを参照すると、ROXオリゴは、図8Cの青色ゾーンとして見ることができる同心リング状の集束ゾーンに集束された。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動するにつれて、最終的にROXオリゴの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の集束および回収が実証された。
【0465】
実施例5:例示的な装置を用いたエピタコフォレシス
【0466】
エピタコフォレシス装置(図9A図9B)を使用してエピタコフォレシスを実施してスルファニル酸色素(SPADNS)を集束させ、その後、これを装置(図9C図9D)から収集した。図9A図9Bの装置は、円形構造と、直径11.0cmの円形ステンレス鋼ワイヤ電極とを有していた。図9Bを参照すると、概略図の数字は、ミリメートル単位の寸法を表している。20mM HCl-ヒスチジン(pH6.20)を先行電解質として使用した。5mLの10mM MES Tris(pH8.00)を、LE中の0.3%アガロースゲルを有する後行電解質として使用し、ゲルは、8.9cmの直径を有し(図9C)、TEの導入前に形成したか、または15mLの10 mM MES Tris(pH8.00)を、LE中の0.3%ゲルを有する後行電解質として使用し、ゲルは、5.8cmの直径を有し(図9D)、TEの導入前に形成した。装置の電極リザーバは、100mMの濃度の先行電解質His(pH6.25)を含んでいた。
【0467】
図9Cを参照すると、0.137mMの濃度の150μlのSPADNSを15mLの後行電解質中で調製し、装置に装填した。エピタコフォレシスを行うために、2Wの定電力を使用した。SPADNSは、図9Cの赤色ゾーンとして見ることができる同心リング状の集束ゾーンに集束された。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動するにつれて、最終的にSPADNSの集束ゾーンは装置の中心に入り、装置の中心に収集され、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の集束および回収が実証された。回収されたSPADNSは、最初の15mLのSPADNS含有試料の吸光度と比較して40倍の吸光度増加を有した。
【0468】
図9Dを参照すると、0.137mMの濃度の150μlのSPADNSを15mLの後行電解質中で調製し、装置に装填した。エピタコフォレシスを行うために、2Wの定電力を使用した。SPADNSを、図9Dの赤色ゾーンとして見ることができる同心リング状の集束ゾーンに集束させた。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動すると、最終的にSPADNSの集束ゾーンが装置の中心に進入し、装置の中心に収集され、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の集束および回収が実証された。回収されたSPADNSは、最初の15mLのSPADNS含有試料の吸光度と比較して40倍の吸光度増加を有した。
【0469】
図9A図9Bのエピタコフォレシス装置を使用して、ゲルを使用しない装置内の生理食塩水からSPADNSを集束させるためにエピタコフォレシスを実施した。20mM HCl-ヒスチジン(pH6.20)を先行電解質として使用した。13mLの10mM
MES Tris(pH8.00)を後行電解質として使用し、これを3mLの0.9% NaClとさらに混合した。装置の電極リザーバは、100mMの濃度の主要電解質HClヒスチジン(pH6.25)を含有していた。
【0470】
図10を参照すると、0.137mMの濃度の150μlのSPADNSを、3mLの0.9% NaClと混合した13mLの後行電解質中で調製し、装置に装填した。エピタコフォレシスを行うために、2Wの定電力を使用した。SPADNSを、図10の赤色ゾーンとして見ることができる同心リング状の集束ゾーンに集束させた。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動すると、最終的にSPADNSの集束ゾーンが装置の中心に進入し、装置の中心に収集され、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の集束および回収が実証された。
【0471】
図9A図9Bのエピタコフォレシス装置を使用して、スペーサとして酢酸を用いてSPADNSおよびPatent Blue色素を分離および集束するためにエピタコフォレシスを実施した。20mM HCl-ヒスチジン(pH6.20)を先行電解質として
使用した。5mLの10mM MES Tris(pH8.00)を後行電解質として使用し、これを150μlの10mm酢酸、150μlの0.1mM Patent Blue色素、および150μlの0.137mM SPADNSとさらに混合した。SPADNS、酢酸およびPatent Blue染料の有効移動度値(10-9/Vs)は、それぞれ55、42、7および32であった。装置の電極リザーバは、100mMの濃度の先行電解質His(pH6.25)を含んでいた。この実験のためにこの装置のチャネルにゲルを使用しなかったが、ゲルは装置プラットフォームの上部に存在した。
【0472】
図11を参照すると、後行電解質、SPADN、酢酸、およびPatent Blue染料の混合物を装置に充填した。エピタコフォレシスを行うために、2Wの定電力を使用した。SPADNSは、図11の赤色ゾーン/内側ゾーンとして見ることができる同心リング状集束ゾーンに集束され、Patent Blue染料は、図11の青色ゾーン/外側ゾーンとして見ることができる同心リング状集束ゾーンにも集束された。エピタコフォレシスゾーンが装置の縁部から中心に向かって移動すると、最終的にSPADNSおよびPatent Blue染料の集束ゾーンが装置の中心に順次進入し、装置の中心で別々に収集されることができ、それにより、エピタコフォレシスを使用した所望の試料の分離、集束および回収が実証された。
【0473】
実施例6:エピタコフォレシスのための装置
【0474】
エピタコフォレシス装置は、エピタコフォレシスを行うために設計された(図12)。図12の装置は、円形構造および直径5.8cmの円形銅テープ電極を有していた。
【0475】
実施例7:導電性ベースの試料検出を用いてエピタコフォレシスを実施するための例示的なシステム
【0476】
装置の構成
【0477】
先の実施例によれば、大きな試料体積容量を有するエピタコフォレシス装置を円形分離チャネルで機械加工した。図13Aおよび図13Bは、装置の構造の2つの図を示している。ワイヤリング電極(直径1mmのステンレス鋼ワイヤ;半径55mm)を円形の分離区画の縁部に取り付けた。試料体積は、リング電極とアガロース安定化先行電解質ディスク(半径35mm)との間の空間によって定義された。したがって、適用可能な試料体積は、その高さのmmごとに5.7mLであった。第2の電極を、装置の側面の先頭の電解質リザーバに配置した。リング電極は、図13Aに示す上部バナナ型コネクタに接続した。下部バナナコネクタを、リード電極リザーバ(図13Bに示す方式における「b」)に配置された長さ3cm、直径0.4mmの白金ワイヤ電極に取り付けた。先行電解質リザーバから中央収集ウェル(図13Bに示す方式における「a」)に向かって移動する電解生成物からの起こり得る干渉を防ぐために、全長20cmの内径9mmの内部チャネルを装置の内部に穿孔した。装置の穿孔後の側面開口部は、ケイ素隔壁によって塞がれた。直径9mmの中央収集ウェルを装置に穿孔し、ゴム製Oリングで密封した可動式Ertacetal(登録商標)ロッドによって底部から閉じた。
【0478】
全ての分析について、半透膜(Slide-A-Lyzer(商標)MINI透析ユニット2000 Da MWCO、Thermo Fisher Scientific、米国)を備えたプラスチックバイアルを、リード電極リザーバまでリード電解質で満たした後に中央収集ウェルに挿入した。体積を最小限に抑えるために、Slide-A-Lyserをカミソリ刃で半分に切断して、200マイクロリットル未満の体積を有する収集カップを生成した。次に、中心8mmの孔を有する0.3%アガロースゲルディスク(直径70mm、厚さ4mm)を先行電解質中に調製し、装置の中心に配置し、気泡の蓄積を避けるために同じく中心8mmの孔を有する75×1mmの円形ガラス板で覆った。様々な電気泳動分離モードを適用することができるが(例えば、ゾーン電気泳動、等電点電気泳動、または変位電気泳動)、本発明者らは、先導(LE)および終端(TE)電解質を含む電解質系を用いたエピタコフォレシスを使用した。ゲルディスクとリング電極との間の空間に、終端電解質中の試料溶液をシリンジによって塗布した。アニオン性試料成分がリング電極から装置中心の収集ウェルに向かって移動するように、電流接続の極性を選択した。集束された試料ゾーンが収集カップに入った後、電流をオフにし、試料をさらなる使用のためにピペットで取り出した。空の回収カップを移動棒で持ち上げて廃棄した。
【0479】
電気駆動分離条件
【0480】
分離は、Clイオンが先行イオン(有効移動度79.1×10-9-1-1)として機能する負モードで行った。先行電解質(LE)は、pH6.2の100mM HCl-ヒスチジン緩衝液を含み、終端電解質(TE)は、TRISによってpH8.30に滴定された10mM TAPSを含んでいた。アガロース安定化先行電解質ディスクを、20mmの先行電解質(HCl-ヒスチジン;pH6.25)中で調製した。全ての緩衝液を脱イオン水中で調製した。電源は、PowerPac 3000(BioRad)によって提供され、これは2Wの定電力モードで実行された(これは分析開始時に約16mAおよび120Vに相当する)。分析には約1時間を要した(分析終了時に約10mAおよび200V)。
【0481】
試料検出
【0482】
試料を検出するために、表面抵抗率検出セルを構築し、市販のITP機器(Villa
Labeco,Sp.N.Ves,スロヴァキア)の導電率検出器に接続した。検出セルを以下のように調製した:2本の白金(Pt)ワイヤ(300μm×長さ2cm)をITP機器に適合するコネクタに取り付けた。Ptワイヤの両端を1mLピペットチップに挿入し、次いで、迅速に硬化するエポキシ樹脂を充填した。最後に、内部にエポキシワイヤが埋め込まれたピペットチップの1mmを、2つの丸いPt電極を有する平坦なエポキシ表面を露出させるカミソリ刃によって切断した。図14Aおよび図14Bを参照されたい。検出セルを、図15Aに例示するように、収集バイアルに近いアガロースゲルディスクの表面に穏やかに接触する実験台に取り付けた。この検出システムを使用して、図15Bの導電率トレースを生成した。
【0483】
別の例示的なシステムもまた、エピタコフォレシス中の試料検出のために構築された。このシステムでは、図16Aおよび図16Bに示すように、直径500μmの2つの白金(Pt)ワイヤからなる表面抵抗率検出プローブを、エピタコフォレシス装置の下部基材(すなわち、下部プレート)内に組み込んだ。ワイヤの先端は、下部基材上の中心柱内の専用チャネルを介して下部から半透膜の近くにあった。ワイヤの両端を市販のITP装置(Villa Labeco,Sp.N.Ves、スロヴァキア)の導電率検出器に接続した。エピタコフォレシス装置として機能する上部プレートは、磁石を使用して下部基材と組み立てられ、一方、Oリング(図16Bを参照)は、漏れを防止するために2つの基材間の完全な封止を可能にした。
【0484】
化学物質
【0485】
緩衝剤成分:L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物(99%)、L-ヒスチジン(99%)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(テープ;99.5%)およびトリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;99.8%)は、Sigma-Aldrich(米国)から購入した。低電気内浸透を有するアガロース
NEEO ultra-kuality Roti(登録商標)garoseをCarl Roth(ドイツ)から購入した。酢酸およびアニオン性染料Patent blue Vナトリウム塩は、Sigma-Aldrichから入手した。赤色アニオン性染料SPADNS(1,8-ジヒドロキシ-2-(4-スルホフェニルアゾ)ナフタレン-3,6-ジスルホン酸三ナトリウム塩は、Lachema,Brno、チェコ共和国から入手した。
【0486】
SPADNSとPatent Blueのフォーカス
【0487】
エピタコフォレシスおよび電気試料検出を含む上記の例示的な装置を試験するために、装置を使用して試験分析物を集束および検出した:SPADNSおよびPatent Blue。先行電解質(LE):HCl-HISをpH6.2に緩衝した。後行電解質(TE):TAPS-TRISをpH8.3に緩衝した。ゲルは、20mmLE中の20mLのポリアクリルアミドゲル6%から形成された。100mMのLEを電極リザーバに添加した。試料溶液:15mLの10mMのTE+150μlの0.1mMのSPADNS+150μlの0.1mMのPatent Blue。ゲルディスクとリング電極との間の空間に、終端電解質中の試料溶液をシリンジによって塗布した。装置は、P=2Wの定電力モードで作動させた。図15Aは、SPADNSおよびPatent Blueの集束の画像を提供し、試料収集ウェル付近の導電率試料検出を示している。図15Bは、この試料集束のための導電率トレースを提供し、試料の集束ゾーン(SPADNSおよびPatent Blue)を包含するLEとTEとの間の遷移による導電率/抵抗率の著しい変化を示している。
【0488】
DNA分析
【0489】
フルオレセインで標識された低分子量dsDNAラダー(75塩基対-bp~1622bpの10断片)は、Bio-Rad,米国製であった。収集した画分中のDNA濃度を、高感度dsDNA Qubit定量アッセイキットを使用することにより、Qubit蛍光光度計(Invitrogen(米国カリフォルニア州カールスバッド))を使用して評価した。試料中の標的分子の濃度は、DNAに結合した場合にのみ発光する蛍光色素によって報告した。回収した画分を、チップCGE-LIF機器Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いてさらに分析した。この分析により、高感度DNA試薬キット(Agilent、米国)を用いて、試料中の回収されたDNA断片のサイズ情報が得られた。
【0490】
DNA集束
【0491】
50bpを超えるDNA断片の電気泳動移動度は、遊離溶液中で約37×10-9/Vsであり、短い断片(約20~50bp)は僅か約10%ずれることができる。これらの移動度に基づいて、本発明者らは、全ての試料DNA断片を単一の濃縮ゾーンに集束させるのに適した不連続電解質系を設計した。実験試験のために、本発明者らは、75から1632bpの範囲の断片サイズを有するフルオレセイン標識低分子範囲DNAラダーを選択した。DNA断片あたり1つのフルオロフォアのみを有する試料の蛍光を、半径2cmのレーザービームによって照射した(図17A)。表面抵抗率検出を使用して、収集ウェルに近いLE/TE境界の遷移を示した。LEからTEへの抵抗率の全体的な変化を試料位置の指標として使用した。この変化に基づいて、電圧をオフにし、分離を停止した。収集した画分を、UV分光法(吸光度測定)(図17B)およびバイオアナライザに基づく分析(図17C)の双方によって分析した。図17Cの前部および後部マーカーのより低い信号強度(製造業者の指示にしたがって初期試料および最終試料に同じ量で添加された)は、収集された画分中のより高いDNA濃度によるものであった。どちらの場合も、収集された画分の約30倍の濃度増加は、この例示的な実施形態では、開始時の15mLから280μlの試料収集体積までの試料体積の減少に対応した。収集カップに入る前の移動DNAゾーンの体積ははるかに小さく(約3μl)、最終画分濃度は、選択された収集バイアルの体積に主に依存する。
【0492】
実施例8:ETPによる無細胞核酸の単離/精製
【0493】
無細胞DNAを含む無細胞核酸の単離(精製)を行うために、エピタコフォレシス装置および実験装置(図18図20を参照)を使用してETPを行った。装置は、円形構造および円形電極(図18および図20を参照)を有していた。
【0494】
cfDNAを単離/精製するためにETPを設定および実施する前に、ETP緩衝液、ETP装置のアガロースゲル、短縮された透析ユニット、およびプロテイナーゼK消化血漿の試料を調製した。HCl-ヒスチジンpH6.25を含む先行電解質(LE)緩衝液を調製し、TAPS-Tris pH8.30を含む後行電解質(TE)緩衝液を調製した。ETP装置とともに使用されるアガロースゲルは、三角フラスコ中で所望のアガロース割合のゲルに適切な量のアガロースをLE緩衝液と混合することによって調製した。
【0495】
最初に血漿試料を室温で解凍することによってプロテイナーゼK消化血漿を調製し、その後、試料を混合し、所望の体積を抜き取り、ヌクレアーゼフリー管に分注した。次に、プロテイナーゼKを添加し、溶液をよく混合し、次いで、試料に応じて37~70℃でインキュベートした。
【0496】
cfDNAのETPベースの単離/精製は、一般に以下のように進行した。ETPシステムは、最初にテフロンスティック(図18を参照)または一対のピンセットを使用して可動中央ピストン(図18を参照)をより低い位置に移動させることによって準備した。中心電極チャネルを、ETPプラットフォームの角開口部を介してLE緩衝液(25mLのLE+1.25μl SYBR金(DNAバンドの可視化に使用される場合))で充填し、中心開口部が完全に充填されたときに充填を停止した。透析ユニットを、Oリングを介して中央開口部に固定した(図18を参照)。次いで、透析ユニットをLE緩衝液(および所望であればSYBR金溶液)で満たした。上記のように調製したアガロースゲルをテンプレートからETP装置に慎重に移し、固定した。次いで、円形カバーをゲル上に置いた。
【0497】
一般に15mLのTE緩衝液+1μlのSYBR金(DNAバンドの可視化に使用する場合)+50bpのDNAラダー(マーカーとして使用する場合)+PK前処理した血漿試料を含む試料混合物を調製し、ゲルとETP装置の円形電極との間のギャップにピペットで入れた。最後に、二次蓋を装置の上に置いた。
【0498】
次に、ETP装置を電源に差し込むことによって電源を準備した。電源を1から8W(使用される血漿試料の量に依存する)の一定電力に設定し、ETPを約1~2時間行った。電源をオンにすることによって、1つ以上の標的分析物を1つ以上の集束ゾーン(1つ以上のETPバンド)に集束させた。
【0499】
いくつかの例では、試料を以下のように監視し、収集した。SYBR金がETP実行に含まれる場合、青色光源および適切なフィルタを使用して、DNA集束ゾーン(ETPバンド)の動きを監視した。DNAが透析ユニットに回収されると、電源をオフにした。DNA/分析物のサイズ選択が所望される場合、以下にさらに記載されるように、目的のDNA集束ゾーンまたは複数の集束ゾーン(ETPバンドまたは複数のバンド)のみを収集した。電源をオフにした後、LE緩衝液をETP装置の角開口部から除去し、次いでTE
緩衝液およびゲルを装置から除去した。次に、透析ユニットに収容された試料を収集した。次いで、可動中央ピストンを上方位置に移動させた。いくつかの例では、収集したDNA溶液を、続いてKAPA純ビーズの混合物を使用して洗浄し、30~50μlのTRIS.HCl溶液に溶出した。
【0500】
いくつかの例では、収集されたcfDNAの分析を、高感度dsDNA Qubit定量アッセイキットを使用することによって、Qubit蛍光光度計(Invitrogen(米国カリフォルニア州カールスバッド))を使用することによって行った。試料中の標的分子の濃度は、DNAに結合した場合にのみ発光する蛍光色素によって報告した。いくつかの例では、収集されたcfDNAの分析を、チップCGE-LIF機器Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent、米国カリフォルニア州サンタクララ)を使用することによって行った。この分析により、高感度DNA試薬キット(Agilent、米国)を用いて、試料中の回収されたDNA断片のサイズ情報が得られた。
【0501】
実施例9:cfDNAのETPベースの単離/精製
【0502】
本実施例では、以下の修正を加えて実施例8に一般的に記載されているように、ETPベースの単離/精製によってcfDNAを単離/精製した。血漿試料にDNAラダーを添加し、SYBR金を用いてDNAゾーンを可視化した。試料は、cfDNAを含む1mLの血漿および200ngのDNAラダーを含んでいた。
【0503】
ここで図20を参照すると、cfDNAおよびDNAラダーを単離/精製した1mLの血漿試料からのDNAのETPベースの単離/精製のタイムラプス写真が撮影された。SYBR金をDNAゾーンの可視化に使用した(図20を参照)。
【0504】
実施例10:cfDNAのETPベースの単離/精製
【0505】
本実施例では、以下の修正を加えて、実施例8に一般的に記載されているように、ETPベースの単離/精製によって1mLの血漿試料からcfDNAを単離し、収集した。SYBR金は使用しなかった。ETPベース/精製およびその後のcfDNAの収集の後、単一のKAPA純ビーズベースの浄化ステップ(1×SPRIビーズ)または2つのKAPA純ベースのビーズ浄化ステップ(2×SPRIビーズ)のいずれかを行った。また、血漿試料(1mL)から、AVENIOキットを使用するスピンカラム法を用いてcfDNAを単離/精製した後、単一のKAPA純ビーズベースの浄化ステップを行った。それぞれが同じ種類のビーズを使用する2つのビーズベースの浄化、すなわち2つの浄化ステップを使用したゲノムDNA汚染の除去を含む「UNA法」を使用し、続いて、AVENIOキットを使用したスピンカラム法を使用した。上記の方法を用いたcfDNAの単離/精製および浄化後、QUBITベースの分析を用いてcfDNAの濃度を測定し、ng単位のcfDNAの濃度を記録した。
【0506】
ここで図21を参照すると、結果は、1つまたは2つのビーズ浄化ステップのいずれかを含むETPベースの単離および収集を使用することによるcfDNAの抽出を実証した。ETPベースの単離および収集によるcfDNAの単離および収集は、本実施例で使用される他の方法と比較して約2.5倍の量のcfDNAをもたらした。ETPベースの単離およびcfDNAの収集とそれに続く1回のビーズベースの浄化ステップを行うことは、2回のビーズベースの浄化ステップを含むETPベースの単離およびcfDNAの収集と比較して、より多量のcfDNAを含むことが注目された。
【0507】
実施例11:cfDNAのETPベースの単離/精製
【0508】
本実施例では、cfDNAおよびDNAラダーを含むDNAを、以下の修飾を用いて、実施例8に一般的に記載されているように、ETPベースの単離/精製によって1mLの血漿から単離/精製した。1mLの血漿に60ngのDNAラダーを添加した。cfDNAおよびDNAラダーの単離/精製およびその後の収集の後、実施例8に一般的に記載されるようなBioanalzyer実行を使用して、単離/精製および収集されたDNA試料のサイズベースの分析を行った。
【0509】
ここで図22を参照すると、結果は、単離/精製および収集された試料中のcfDNAの存在を示し、これは、cfDNAが約150~約200bp長(図22を参照)のバンドとして出現したため、DNAラダーのものに対応しない蛍光信号およびバンドの出現によって証明された。
【0510】
実施例12:cfDNAのETPベースの単離/精製
【0511】
本実施例では、以下の修飾を用いて、実施例8に一般的に記載されているように、ETPベースの単離/精製によって1mLの血漿試料からcfDNAを単離/精製した。本実施例では、SYBR金またはDNAラダーを使用しなかった。cfDNAの単離/精製およびその後の収集の後、実施例8に一般的に記載されるようなBioanalzyer実行を使用して、単離/精製および収集されたDNA試料のサイズベースの分析を行った。
【0512】
ここで図23を参照すると、結果は、約150~約200bp長(図23を参照)の蛍光信号およびバンドの出現によって証明されるように、単離/精製および収集された試料中のcfDNAの存在を実証した。25bpおよび10,300bpのマーカーを標準として使用したことに留意されたい。
【0513】
実施例13:cfDNAのETPベースの単離/精製
【0514】
本実施例では、以下の修飾を用いて、実施例8に一般的に記載されているように、ETPベースの単離/精製によって1mLの血漿試料からcfDNAを単離/精製した。本実施例では、様々な異なるサイズ範囲のDNAが単離/精製され、続いて収集され、断片化ゲノムDNAからのcfDNAの単離/精製の向上を可能にするように、緩衝液濃度、ゲルの割合、およびETP実行の停止時間を変えることによって、1mLの血漿試料からcfDNAを単離/精製し、続いて収集した。
【0515】
ここで図24を参照すると、様々な緩衝液濃度、ゲル割合および停止時間を用いたETPベースの単離/精製およびその後の収集の結果が示されている。ETP実行の結果の電気泳動に基づく分析は、ETPベースの単離/精製およびその後の収集によって様々なDNAサイズのカットオフが達成されたことを実証した(図24を参照)。
【0516】
実施例14:循環腫瘍DNAのETPベースの単離/精製
【0517】
本実施例では、循環腫瘍DNAを単離/精製し、続いて、以下の修正を加えて、実施例8に一般的に記載されているように、ETPベースの単離/精製によって1mLの血漿試料から収集した。ETPベースの単離/精製に加えて、AVENIOキットを使用するスピンカラムに基づく方法を使用して、別のアッセイで4mLの血漿試料からctDNAを単離した。また、ETPベースの単離/精製およびその後のctDNAの収集の後、KAPA純ビーズに基づく浄化ステップを行った。さらに、単離/精製され、続いて回収されたctDNAのQUBITに基づく分析を、実施例8に一般的に記載されているように行った。
【0518】
ここで図25を参照すると、ETPベースの単離/精製およびその後の0.5mLの血漿からのctDNAの収集の結果が示されている。スピンカラムに基づく方法の結果は、4mLの試料から0.5mLに逆算したことに留意されたい。各試料について5回の読み取りを行った。図26に示す結果は、単離/精製され、続いてETPベースの方法によって回収されたctDNAの収率がスピンカラムベースの方法の収率を超えたことを実証している。ETPベースの方法によるctDNAの収率は、平均約5.7ngであり、最高収率は6.8ngであり、約5.1ngから約6.8ngの範囲であった。
【0519】
実施例15:ETP上部マーカーを用いたETPベースの単離/精製
【0520】
本実施例では、ETPベースの単離/精製中に使用されるETP上部マーカーを生成した。
【0521】
ETP中に使用される標識された上部マーカーを生成するための1つの手法は、プラスミドを一方の制限部位で消化し、その後、適切なプライマーを使用して所望のサイズのアンプリコン、例えば1003bpのアンプリコンを生成し、1003bpのサイズのアンプリコンを生成することである。必要に応じて、アンプリコンを蛍光標識することができる。
【0522】
あるいは、標識された上部マーカーを以下のように生成した。ベクターを、3つの異なる制限酵素を使用して3つの異なる制限部位で切断して、744bp、875bpおよび1067bpの断片を生成した。消化後、消化生成物を洗浄し、続いて3つのベクターをそれぞれ蛍光標識した。浄化後、Agilent Bioanalyzerを使用してETP上部マーカー(図26を参照)を分析したところ、744bp、875bpおよび1067bpの3片で上部マーカーの生成が確認された。
【0523】
そのようなETP上部マーカーは、標的分析物、例えばDNAの収集を停止することができるカットオフ点を示すために、ETPベースの方法中におよびETPベースの装置とともに使用することができる。例えば、蛍光標識された、またはそうでなければ検出可能に標識されたETP上部マーカーは、ETPベースの方法の間に収集される標的分析物よりも大きいようなサイズで生成することができる。ETPの実行中にマーカーを監視することにより、ユーザまたは自動化された機械は、マーカーが収集管に落下する前に実行を停止することができ、それにより、マーカーよりも小さい標的分析物を捕捉することができる一方で、より大きな汚染分析物は、上部マーカーの後ろに配置されるため除外される。さらに、ETP上部マーカー自体は収集されず、したがって、下流アッセイに干渉しないため、大量に様々な検出可能な標識とともに使用されることができる。特に、ETP上部マーカーは、ゲノムDNAの排除を助けることができるため、cfDNA単離/精製方法において使用されることができる。例えば、ETP上部マーカーは、場合によっては約1000bpとすることができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【外国語明細書】