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特開2024-125015光学装置、投影光学系、露光装置、および物品製造方法
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  • 特開-光学装置、投影光学系、露光装置、および物品製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125015
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】光学装置、投影光学系、露光装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240906BHJP
   G02B 17/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033069
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 友弘
(72)【発明者】
【氏名】羽切 正人
(72)【発明者】
【氏名】木村 一貴
(72)【発明者】
【氏名】関 美津留
(72)【発明者】
【氏名】由井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】白畑 恭平
【テーマコード(参考)】
2H087
2H197
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087KA21
2H087LA01
2H087TA01
2H087TA04
2H197AA10
2H197BA03
2H197BA09
2H197BA11
2H197BA16
2H197CB16
2H197CC01
2H197CC16
2H197DB19
2H197HA05
2H197JA07
(57)【要約】
【課題】温調流体が各凹面ミラーの反射面に沿って流れる構成を実現して、結像性能の安定化に有利な技術を提供する。
【解決手段】光学装置は、第1反射面を有する第1凹面ミラーと、前記第1凹面ミラーから離間して配置された、第2反射面を有する第2凹面ミラーと、前記第1凹面ミラーおよび前記第2凹面ミラーを収容し、前記第2凹面ミラーから前記第1凹面ミラーに向かう気流を形成するチャンバと、前記チャンバ内の前記第1凹面ミラーと前記第2凹面ミラーとの間に配置され、前記第2凹面ミラーの前記第2反射面に沿って流動する前記気流を前記第1凹面ミラーの前記第1反射面に導く整流部とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反射面を有する第1凹面ミラーと、
前記第1凹面ミラーから離間して配置された、第2反射面を有する第2凹面ミラーと、
前記第1凹面ミラーおよび前記第2凹面ミラーを収容し、前記第2凹面ミラーから前記第1凹面ミラーに向かう気流を形成するチャンバと、
前記チャンバ内の前記第1凹面ミラーと前記第2凹面ミラーとの間に配置され、前記第2凹面ミラーの前記第2反射面に沿って流動する前記気流を前記第1凹面ミラーの前記第1反射面に導く整流部と、
を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記チャンバは、前記第1反射面よりも前記第2反射面に近い位置に形成された給気口と、前記第2反射面よりも前記第1反射面に近い位置に形成された排気口とを有し、
前記給気口から気体が供給され前記排気口から気体が排出されることにより前記チャンバ内に前記気流が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記チャンバ内に配置された、第3反射面を有する凸面ミラーを更に備え、
前記チャンバ内に入射した光が前記第1反射面、前記第3反射面、および前記第2反射面の順に反射するように、前記第1凹面ミラー、前記第2凹面ミラー、および前記凸面ミラーが配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第2反射面と前記第3反射面との距離が前記第1反射面と前記第3反射面との距離よりも長くなるように、前記第1凹面ミラーおよび前記第2凹面ミラーが配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第1凹面ミラーは、前記第1反射面とは反対側の面である第1裏面を有し、
前記第1凹面ミラーの前記第1裏面より前記第1反射面に近い位置に前記排気口が形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項6】
前記第2凹面ミラーは、前記第2反射面とは反対側の面である第2裏面を有し、
前記第2凹面ミラーの前記第2裏面より前記第2反射面に近い位置に前記給気口が形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記チャンバは、前記第1凹面ミラーの前記第1反射面より前記第1裏面に近い位置に形成された第2排気口を更に有し、
前記整流部は、前記給気口から供給され前記第2凹面ミラーの前記第2反射面に沿って進む気流を、前記第1凹面ミラーの前記第1反射面に沿って前記排気口へ至る気流と、前記第1凹面ミラーと前記第2凹面ミラーとの間を通って前記第2排気口へ至る気流とに分岐させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記整流部は、前記第1凹面ミラーに配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
前記整流部は、前記第2凹面ミラーに配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項10】
前記整流部は、
整流板と、
前記第1反射面に対する前記整流板の角度を調整する調整部と、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項11】
原版に形成されたパターンを基板の上に投影する投影光学系であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の光学装置を含む、ことを特徴とする投影光学系。
【請求項12】
基板を露光する露光装置であって、
請求項11に記載の投影光学系を含む、ことを特徴とする露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、
を含み、前記現像された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、投影光学系、露光装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示装置などのデバイス製造工程に含まれるリソグラフィー工程において、露光装置が使用される。露光装置は、原版(マスクなど)のパターンを、投影光学系を介して感光性の基板(表面にレジスト層が形成されたウエハやガラスプレートなど)に転写する装置である。投影光学系は、特許文献1に示されるように、レンズやミラーなどの光学部材と、それらを収容する収容部材(チャンバ)を含む。投影光学系は、特許文献2に示すように、温調が必要とされる。光学部材やチャンバの熱変形や光路の温度むらに起因する結像性能の低下を防止するためである。
【0003】
近年、液晶表示デバイスの大型化が進み、露光装置の投影光学系の投影倍率が1倍(等倍)では、原版が大型化し製造コストが上昇するという問題が顕在化してきている。そのため、特許文献3では、1倍を超える投影倍率を有する拡大投影光学系が提案されている。特許文献3では、投影光学系の凹面ミラーが2つに分割され、2つの凹面ミラーは段違いに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-201316号公報
【特許文献2】特開2014-007268号公報
【特許文献3】特開2007-335057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つの凹面ミラーが段違いに配置される場合、その段差によって温調流体(気体)を2つの凹面ミラーの反射面に沿って流すことができない。このため、凹面ミラーを効率よく温調することができず、安定した結像性能が得られない。
【0006】
図6(a)に示すように、凹面ミラー52の反射面52aに向けて給気口55から温調流体としての気体50が供給される。気体50は、凹面ミラー52の反射面52aに沿って流れるものの、凹面ミラー51の端部59に当たって、凹面ミラー51の反射面51aに沿わずに流れてしまう。図6(b)に示すように、凹面ミラー51の反射面51aに向けて給気口55から気体50を流した場合、気体50は凹面ミラー51の反射面51aに沿って流れるものの、段差のため、気体50を凹面ミラー52の反射面52aに沿って流すことができない。
【0007】
給気口55を複数設けて凹面ミラー51の反射面51aと凹面ミラー52の反射面52aのそれぞれに向かって気体50を流す構成も考えられる。しかし、この場合、気体50の経路が交差するため、気体50の回収を効率よく行うことができない。
【0008】
このように、従来の温調方式では、段差のある2つの凹面ミラーの反射面に沿うように温調流体を流すことが困難であるため、安定した結像性能を得ることができない。
【0009】
本発明は、温調流体が各凹面ミラーの反射面に沿って流れる構成を実現して、結像性能の安定化に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、第1反射面を有する第1凹面ミラーと、前記第1凹面ミラーから離間して配置された、第2反射面を有する第2凹面ミラーと、前記第1凹面ミラーおよび前記第2凹面ミラーを収容し、前記第2凹面ミラーから前記第1凹面ミラーに向かう気流を形成するチャンバと、前記チャンバ内の前記第1凹面ミラーと前記第2凹面ミラーとの間に配置され、前記第2凹面ミラーの前記第2反射面に沿って流動する前記気流を前記第1凹面ミラーの前記第1反射面に導く整流部と、を備えることを特徴とする光学装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温調流体が各凹面ミラーの反射面に沿って流れる構成が実現され、これにより結像性能の安定化に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光学装置の構成を示す図。
図2】整流部の構成例を示す図。
図3】光学装置の構成を示す図。
図4】整流部の他の配置例を示す図。
図5】露光装置の構成を示す図。
図6】従来の温調方式の課題を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図5は、実施形態に係る露光装置EXPの構成を示す図である。露光装置EXPは、原版Mを保持する原版ステージ30と、不図示の照明光学系によって照明される原版Mのパターンを基板Pの上に投影する投影光学系POと、基板Pを保持する基板ステージ31とを備える。
【0015】
投影光学系POは、オフナー(Offner)光学系である。オフナー光学系の場合、良好な像領域を確保するために原版Mには円弧形状の光が照射される。原版Mを透過し投影光学系PO内に入射した光は、第1平面ミラー32、第1凹面ミラー1、凸面ミラー33、第2凹面ミラー2、第2平面ミラー32の順に反射した後に、基板Pに到達する。これにより、原版M上のパターンが基板P上に転写される。
【0016】
第2凹面ミラー2は第1凹面ミラー1から離間して配置される。第1凹面ミラー1は、凹面形状をなす第1反射面1aと、第1反射面1aとは反対側の面である第1裏面1bを有する。第2凹面ミラー2は、凹面形状をなす第2反射面2aと、第2反射面2aとは反対側の面である第2裏面2bを有する。凸面ミラー33は、凸面形状をなす第3反射面3aを有する。投影光学系POは、凸面ミラー33の収差を補正するメニスカスレンズ34を含んでいてもよい。第1凹面ミラー1の曲率中心、凸面ミラー33の曲率中心及び第2凹面ミラー2の曲率中心を結ぶ線は典型的には水平である。また、投影光学系POは、光学性能の向上のための屈折光学系35を含んでいてもよい。
【0017】
一例において、投影光学系POは、拡大投影光学系である。拡大投影光学系においては、第2凹面ミラー2の第2反射面2aと凸面ミラー33の第3反射面3aとの距離は、第1凹面ミラー1の第1反射面1aと凸面ミラー33の第3反射面3aとの距離よりも長い。
【0018】
図1は、第1実施形態における光学装置の構成を示す図である。本実施形態では、該光学装置によって投影光学系POが構成されている。図1には、投影光学系POが示されていると理解されてもよいが。図1では、図5で示した凸面ミラー33、メニスカスレンズ34、屈折光学系35の表示が省かれている。
【0019】
投影光学系POは、第1凹面ミラー1および第2凹面ミラー2を収容するチャンバ4を有する。チャンバ4の内部には、第1凹面ミラー1と第2凹面ミラー2が配置されている。図1には、光軸方向3が示されている。第1凹面ミラー1の第1反射面1aと第2凹面ミラー2の第2反射面2aが光軸方向3に関して同じ向きになるように(紙面左側を向くように)、第1凹面ミラー1および第2凹面ミラー2が配置されている。また、本例では拡大投影光学系が想定されているため、第2反射面2aが第1反射面1aよりも光軸方向3に関して後方側(紙面右側)に位置するように、第1凹面ミラ-1および第2凹面ミラー2が配置されている。また、図1では、第1凹面ミラー1は第2凹面ミラー2よりも上方側に配置されている。これは、拡大投影光学系において露光光が上方から下方へ向けて照射されることが想定されているからである。原版Mに形成されたパターンを基板Pに縮小して投影する縮小投影光学系においては、第1凹面ミラー1と第2凹面ミラー2の上下の配置が逆転しうる。なお、第1反射面1aと第2反射面2aとが光軸方向3に関して同じ向きになるように第1凹面ミラー1および第2凹面ミラー2が配置されること以外、第1凹面ミラー1および第2凹面ミラー2の配置については本開示に限定されない。
【0020】
チャンバ4は、チャンバ4内に温調流体である気体20を供給するための給気口5を有する。給気口5は、例えば、第1凹面ミラー1の第1反射面1aよりも第2凹面ミラー2の第2反射面2aに近い下方チャンバ壁4aに形成される。また、給気口5は、第2凹面ミラー2の第2裏面2bより第2反射面2aに近い位置に形成される。
【0021】
チャンバ4は、気体20をチャンバ4の外部へ排出するための排気口6を更に有する。排気口6は、複数の排気口を有していてもよい。一例において、図1に示すように、排気口6は第1排気口6aおよび第2排気口6bを有しうる。第1排気口6aは、第2凹面ミラー2の第2反射面2aよりも第1凹面ミラー1の第1反射面1aに近い上方チャンバ壁4bに形成される。また、第1排気口6aは、第1凹面ミラー1の第1裏面1bより第1反射面1aに近い位置に形成される。これに対し、第2排気口6bは、第1凹面ミラー1の第1反射面1aより第1裏面1bに近い後方チャンバ壁4cに形成される。
【0022】
給気口5から供給された気体20は排気口6から排出される。これにより、チャンバ4の内部には、第2凹面ミラー2から第1凹面ミラー1に向かう気流が形成される。なお、給気口5には強制給気機構(ファン等を含む)が設けられてもよく、第1排気口6aおよび第2排気口6bには強制排気機構(ファン等を含む)が設けられてもよい。給気口5から供給された気体20は、第1凹面ミラー1および第2凹面ミラー2から放射される熱を回収する。気体20の流量および温度は、安定した結像性能を実現するために適宜に調整されうる。気体20は、不活性ガス、または、フィルターにより濾過された空気等でありうる。なお、チャンバ4の外部の原版M、基板P、ステージ等を取り囲む空間は、チャンバ4の内部と同様に温調されうる。そのため、排気部6によって回収された流体20は、配管等を通して温調制御を行う機械室等に送られるように構成されてもよい。
【0023】
チャンバ内の第1凹面ミラー1と第2凹面ミラー2との間の位置には、第2凹面ミラー2の第2反射面2aに沿って流動する気流を第1凹面ミラーの第1反射面1aに導く整流部8が配置されている。図1の例においては、整流部8は、給気口5から供給され第2凹面ミラー2の第2反射面2aに沿って進む気体20の気流を気流20aと気流20bとに分岐させる。気流20aは、第1凹面ミラー1の第1反射面1aに沿って第1排気口6aへ至る気流であり、気流20bは、第1凹面ミラー1と第2凹面ミラー2との間を通って第2排気口6bへ至る気流である。この場合、第2排気口6bは、整流部8よりも高い位置に形成されていることが好ましい。また、第1排気部6aは、整流部8によって分岐された気流20aの延長上に配置され、第2排気部6bは、整流部8によって分岐された気流20bの延長上に配置されることが好ましい。図1の例では、第2排気部6bは、光軸方向3に関して第2凹面ミラー2より後方側、例えば、第1凹面ミラー1の第1反射面1aより第1裏面1bに近い後方チャンバ壁4cに形成される。これにより、気流20bの気体が第1凹面ミラー1の第1反射面1a側に流れ込むことが防止され、効果的に気流20bの気体を回収することができる。
【0024】
一例において、整流部8は、図1に示すように第1凹面ミラー1またはその枠体に配置(支持)される。整流部8は、第1凹面ミラー1またはその枠体と一体的に形成されていてもよい。整流部8は、例えば、鋼、ステンレス、アルミニウム合金など、結像性能の外乱となる振動や熱変形に対してロバストな材質により構成されうる。
【0025】
図2には、整流部8の構成例が示されている。整流部8は、例えば板状の整流板を含みうる。図2に示されるように、整流部8(整流板)は、第1凹面ミラー1の第1反射面1aの曲率に倣う形状をしている。これによって、第1凹面ミラー1の第1反射面1aの全反射面領域に沿うように気流20bが形成され、第1凹面ミラー1が効率良く温調されうる。整流部8(整流板)の位置および形状は、露光光との干渉が無い範囲で気体20の流路が最適化されるように設定されうる。
【0026】
以上説明した第1実施形態に従う構成によれば、第1凹面ミラー1の第1反射面1aと第2凹面ミラー2の第2反射面2aの両方に沿うように気体を流すことができる。このような構成は、結像性能の安定化に有利である。
【0027】
<第2実施形態>
図3を参照して、第2実施形態における投影光学系POについて説明する。なお、図3において、第1実施形態における構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、それらの説明は簡略化または省略する。
【0028】
第2実施形態において、整流部8は、整流板8aと、第1凹面ミラー1の第1反射面1aに対する整流板8aの角度を調整する調整部8bとを含みうる。調整部8bによって整流板8aの角度を調整することで、気流の配分を変更することができる。気流の配分を変更することで、温調バランスの制御が可能になる。
【0029】
調整部8bによる整流板8aの角度調整は、モータやリンク機構など制御によって実現されうる。この場合、露光装置の運用中や各製造プロセスに応じて適した温調バランスに設定することができる。整流板の角度は手動調整によっても行われうる。手動調整の場合、装置運用中の変更は難しいが、簡易的な手段としてコスト面では有利である。特開2014-007268号公報(特許文献2)には、露光プロセスに応じて給気と排気の流量バランスを調整する技術が開示されている。この技術と、本実施形態の調整部8bとを併用することにより、気体20の流れのバランスを多様に変化させることが可能になる。
【0030】
本実施形態によれば、第1凹面ミラー1の第1反射面1aと第2凹面ミラー2の第2反射面2aの両方に沿うように気体を流すために、気流をより細かく制御することができる。
【0031】
図1図3では、整流部8が第1凹面ミラー1に配置(支持)された例を示した。しかし、図4に示すように、整流部8は第2凹面ミラー2に配置(支持)されてもよい。図4の例では、整流部8は、整流板8aとスリット8cとを含みうる。この場合、気流20aは、第2凹面ミラー2の第2反射面2aの沿って進み、整流板8aによって第1凹面ミラー1の第1反射面1aへと流れる。一方、気流20bは、第2凹面ミラー2の第2反射面2aに沿って進んだ後、スリット8cを通過して、第1凹面ミラー1と第2凹面ミラー2との間を通って第2排気口6bへ至る。
【0032】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態に係る物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0033】
本明細書の開示は、少なくとも以下の光学装置、投影光学系、露光装置、および物品製造方法を含む。
(項目1)
第1反射面を有する第1凹面ミラーと、
前記第1凹面ミラーから離間して配置された、第2反射面を有する第2凹面ミラーと、
前記第1凹面ミラーおよび前記第2凹面ミラーを収容し、前記第2凹面ミラーから前記第1凹面ミラーに向かう気流を形成するチャンバと、
前記チャンバ内の前記第1凹面ミラーと前記第2凹面ミラーとの間に配置され、前記第2凹面ミラーの前記第2反射面に沿って流動する前記気流を前記第1凹面ミラーの前記第1反射面に導く整流部と、
を備えることを特徴とする光学装置。
(項目2)
前記チャンバは、前記第1反射面よりも前記第2反射面に近い位置に形成された給気口と、前記第2反射面よりも前記第1反射面に近い位置に形成された排気口とを有し、
前記給気口から気体が供給され前記排気口から気体が排出されることにより前記チャンバ内に前記気流が形成される、
ことを特徴とする項目1に記載の光学装置。
(項目3)
前記チャンバ内に配置された、第3反射面を有する凸面ミラーを更に備え、
前記チャンバ内に入射した光が前記第1反射面、前記第3反射面、および前記第2反射面の順に反射するように、前記第1凹面ミラー、前記第2凹面ミラー、および前記凸面ミラーが配置される、
ことを特徴とする項目2に記載の光学装置。
(項目4)
前記第2反射面と前記第3反射面との距離が前記第1反射面と前記第3反射面との距離よりも長くなるように、前記第1凹面ミラーおよび前記第2凹面ミラーが配置される、
ことを特徴とする項目3に記載の光学装置。
(項目5)
前記第1凹面ミラーは、前記第1反射面とは反対側の面である第1裏面を有し、
前記第1凹面ミラーの前記第1裏面より前記第1反射面に近い位置に前記排気口が形成されている、
ことを特徴とする項目2から4のいずれか1項に記載の光学装置。
(項目6)
前記第2凹面ミラーは、前記第2反射面とは反対側の面である第2裏面を有し、
前記第2凹面ミラーの前記第2裏面より前記第2反射面に近い位置に前記給気口が形成されている、
ことを特徴とする項目5に記載の光学装置。
(項目7)
前記チャンバは、前記第1凹面ミラーの前記第1反射面より前記第1裏面に近い位置に形成された第2排気口を更に有し、
前記整流部は、前記給気口から供給され前記第2凹面ミラーの前記第2反射面に沿って進む気流を、前記第1凹面ミラーの前記第1反射面に沿って前記排気口へ至る気流と、前記第1凹面ミラーと前記第2凹面ミラーとの間を通って前記第2排気口へ至る気流とに分岐させる、
ことを特徴とする項目6に記載の光学装置。
(項目8)
前記整流部は、前記第1凹面ミラーに配置されている、ことを特徴とする項目1から7のいずれか1項に記載の光学装置。
(項目9)
前記整流部は、前記第2凹面ミラーに配置されている、ことを特徴とする項目1から7のいずれか1項に記載の光学装置。
(項目10)
前記整流部は、
整流板と、
前記第1反射面に対する前記整流板の角度を調整する調整部と、
を含む、ことを特徴とする項目1から9のいずれか1項に記載の光学装置。
(項目11)
原版に形成されたパターンを基板の上に投影する投影光学系であって、
項目1から10のいずれか1項に記載の光学装置を含む、ことを特徴とする投影光学系。
(項目12)
基板を露光する露光装置であって、
項目11に記載の投影光学系を含む、ことを特徴とする露光装置。
(項目13)
項目12に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、
を含み、前記現像された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【0034】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0035】
1:第1凹面ミラー、1a:第1反射面、2:第2凹面ミラー、2a:第2反射面、4:チャンバ、5:給気口、6:排気口、7:整流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6