(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125030
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】段ボール穿孔治具および穿孔方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/32 20060101AFI20240906BHJP
B26F 1/24 20060101ALI20240906BHJP
B26F 1/00 20060101ALI20240906BHJP
B31B 50/99 20170101ALI20240906BHJP
【FI】
B26F1/32 P
B26F1/24
B26F1/00 B
B31B50/99
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033092
(22)【出願日】2023-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】512172475
【氏名又は名称】有限会社 田中製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐樹
【テーマコード(参考)】
3C060
3E075
【Fターム(参考)】
3C060AA01
3C060BA06
3C060BB00
3C060BC03
3C060BC22
3C060BD01
3C060BE02
3C060BG11
3C060BH01
3C060BH02
3E075AA05
3E075BA01
3E075CA01
3E075DB07
3E075DB12
3E075DB16
3E075GA02
(57)【要約】
【課題】段ボールの所望の範囲を短時間で見映え良く開けることができる段ボール穿孔治具および穿孔方法を提供する。
【解決手段】段ボール穿孔治具1は、第1のプレート2と第2のプレート3とからなる。第1のプレート2および第2のプレート3は、いずれも段ボールに形成したい手掛穴の形状Hに沿って、段ボールに穿孔するための挿入孔(孔)5,6が所定間隔で形成されている。そして、第2のプレートの挿入孔6は、第1のプレートの挿入孔5よりも大径となるように形成されている。段ボール穿孔治具1により段ボールを穿孔するに際しては、まず、段ボール上の穿孔したい範囲に第1のプレート2を留め、挿入孔5に穿孔を行う。つづいて、第1のプレート2を段ボールから外し、第2のプレート3を、第1のプレート2を位置決めしたのと同じ位置に留め、挿入孔6に穿孔を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールの所望の範囲に穿孔するための治具であって、
所望の範囲の穿孔形状に沿って所定間隔で孔が形成される第1のプレートと、
この第1のプレートの孔より径の大きい孔が前記第1のプレートと同様に形成される
第2のプレートとからなることを特徴とする段ボール穿孔治具。
【請求項2】
前記第1のプレートの孔と前記第2のプレートの孔は、同じ数が形成される請求項1に記載の段ボール穿孔治具。
【請求項3】
前記第1のプレートに形成された孔より前記段ボールに穿孔を行うとともに、
前記第1のプレートにより穿孔した前記段ボールの範囲に合わせて前記第2のプレートに形成された孔より穿孔を行う請求項2に記載の段ボール穿孔治具。
【請求項4】
穿孔は、各孔の径に対応する釘の挿入により行われ、挿入する前記釘は先端を研磨しておくとともに、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートの厚さを、前記釘の研磨した部分の長さより厚く形成する請求項3に記載の段ボール穿孔治具。
【請求項5】
前記第1のプレートおよび前記第2のプレートにより穿孔された前記段ボールの範囲に手掛穴が形成される請求項1から4のいずれかに記載の段ボール穿孔治具。
【請求項6】
段ボールの所望の範囲に穿孔するための方法であって、
所望の範囲の穿孔形状に沿って所定間隔で孔が形成される第1のプレートと、
この第1のプレートの孔より径の大きい孔が前記第1のプレートと同様に形成される第2のプレートとを準備し、
前記第1のプレートに形成された孔より前記段ボールに穿孔を行った後、
前記第1のプレートにより穿孔した前記段ボールの範囲に合わせて前記第2のプレートに形成された孔より穿孔を行うこと特徴とする段ボール穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールの所望の範囲に穿孔するための治具および穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品の出荷目的で段ボールの製造を製造業者に注文する際に、持ち運びの便宜を考慮して段ボールに手掛穴を開けたい場合がある(非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、コスト面から、たとえば100箱等の大量注文の場合でないと手掛穴を開けるのに応じてもらえないことが通常であり、しかも手掛穴の位置も製造業者が決めたところに設定されることが通常であった。
【0004】
そのため、段ボールの注文個数が少ない場合や、手掛穴の位置を所望の範囲に設定したい場合には、カッターやハサミ、コンパスと言った文房具を駆使して自身で手掛穴を開ける必要があった。
【0005】
ここで、段ボールは、表裏のライナと、その間に挟まれた中芯原紙から構成されるため、板紙、ボール紙と言った一般的な厚紙に比べて加工がし難い。その結果、手掛穴を開けるのに時間がかかるのみならず、見映えの良い形状に切り抜くことが難しかった。また、硬く厚いことから、切り抜く際に力を要する必要があり、カッターやハサミを誤って勢いよく滑らせて負傷する危険もあった。
【0006】
一方、段ボールの製造業者も、「ビク刃」と呼ばれるような独自のハンドメイドの専用工具を使用して手掛穴を加工しており、同様に時間がかかる作業となり、そのために加工コストも高くなっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“当日出荷!激速!オーダーメイドの段ボール専門サイト”,[on line],段ボール屋,[令和5年2月21日検索],インターネット<URL:https://www.danbo-ru.com/box/dandic/tekakeana.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、段ボールの所望の範囲を短時間で見映え良く開けることができる段ボール穿孔治具および穿孔方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> 段ボールの所望の範囲に穿孔するための治具であって、所望の範囲の穿孔形状に沿って所定間隔で孔が形成される第1のプレートと、この第1のプレートの孔より径の大きい孔が前記第1のプレートと同様に形成される第2のプレートとからなることを特徴とする段ボール穿孔治具である。
【0010】
<2> 前記第1のプレートの孔と前記第2のプレートの孔は、同じ数が形成される<1>に記載の段ボール穿孔治具である。
【0011】
<3> 前記第1のプレートに形成された孔より前記段ボールに穿孔を行うとともに、前記第1のプレートにより穿孔した前記段ボールの範囲に合わせて前記第2のプレートに形成された孔より穿孔を行う<2>に記載の段ボール穿孔治具である。
【0012】
<4> 穿孔は、各孔の径に対応する釘の挿入により行われ、挿入する前記釘は先端を研磨しておくとともに、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートの厚さを、前記釘の研磨した部分の長さより厚く形成する<3>に記載の段ボール穿孔治具である。
【0013】
<5> 前記第1のプレートおよび前記第2のプレートにより穿孔された前記段ボールの範囲に手掛穴が形成される<1>から<4>のいずれかに記載の段ボール穿孔治具である。
【0014】
<6> 段ボールの所望の範囲に穿孔するための方法であって、所望の範囲の穿孔形状に沿って所定間隔で孔が形成される第1のプレートと、この第1のプレートの孔より径の大きい孔が前記第1のプレートと同様に形成される第2のプレートとを準備し、前記第1のプレートに形成された孔より前記段ボールに穿孔を行った後、前記第1のプレートにより穿孔した前記段ボールの範囲に合わせて前記第2のプレートに形成された孔より穿孔を行うこと特徴とする段ボール穿孔方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の段ボール穿孔治具は、所望の範囲の穿孔形状に沿って孔が形成される第1のプレートと、この第1のプレートの孔より径の大きい孔が同様に形成される第2のプレートとからなるので、段ボールは、これらの孔より穿孔を行うことで所望の形状に開けられる。これにより、段ボールの所望の範囲を短時間で見映え良く開けることができる。
【0016】
本発明の段ボール穿孔方法は、第1のプレートに形成された孔より段ボールに穿孔を行った後、第1のプレートにより穿孔した段ボールの範囲に合わせて第2のプレートに形成された孔より段ボールに穿孔を行う。これにより、段ボールの所望の範囲に短時間で見映え良く開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の段ボール穿孔治具の平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の段ボール穿孔治具の第1のプレートの平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の段ボール穿孔治具の第2のプレートの平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の段ボール切抜装置に釘を挿した状態を撮影した写真である。
【
図6】
図6は、段ボールに穿孔された範囲がくり抜かれた状態を撮影した写真である。
【
図7】
図7は、段ボールに貫通孔が形成された状態を撮影した写真である。
【
図8】
図8は、本発明の段ボール穿孔治具に挿入する釘の説明図である。
【
図9】
図9(a)および(b)は、本発明の段ボール穿孔治具による加工例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0019】
図1は本発明の段ボール穿孔治具の平面図、
図2はその第1のプレートの平面図、
図3はその第2のプレートの平面図、
図4は
図4のIV部分の拡大図である。また、
図5は本発明の段ボール穿孔治具に釘を挿した状態を撮影した写真、
図6は段ボールに穿孔された範囲がくり抜かれた状態を撮影した写真、
図7は段ボールに貫通孔が形成された状態を撮影した写真である。そして、
図8は本発明の段ボール穿孔治具に挿入する釘の説明図、
図9(a)および(b)は本発明の段ボール穿孔治具による加工例を示す写真である。
【0020】
図1に示すように、本発明の段ボール穿孔治具1は、第1のプレート2と、第2のプレート3とから構成される。
【0021】
第1のプレート2および第2のプレート3は、同じ大きさに形成された方形の板状の部材である。これらは、いずれも段ボールに形成したい所望の範囲の穿孔形状、つまり
図1の例ではトラック形状とも称することがある横長の長円形の手掛穴の形状Hに沿って、その内側に位置するように、段ボールに穿孔するための挿入孔(孔)5,6が、同じ数にて、等間隔で形成されている。そして、第2のプレート3側の挿入孔6は、その一端が手掛穴の形状Hの周縁と接するように形成されている。
【0022】
挿入孔5,6は、穿孔形状に沿ってそれぞれ等間隔で形成する。これにより、穿孔後に、その形状に沿って段ボールをスムーズに貫くことができる。
【0023】
また、第1のプレート2および第2のプレート3には、挿入孔5,6とは別に、双方のプレートを重ねて貫通できるような一対の位置決め孔7(8)が、縦方向略中央位置に形成されている。
【0024】
第1のプレート2の挿入孔5は、特に
図2に示すように、その位置決め孔7より小径に形成されている。
【0025】
一方、第2のプレートの挿入孔6は、特に
図3に示すように、その位置決め孔8と同径となるように形成されている。つまり、第2のプレートの挿入孔6は、第1のプレートの挿入孔5よりも大径となるように形成されている。
【0026】
挿入孔5と、これより大径の挿入孔6とは、特に
図4に示すように、第1のプレート2と第2のプレート3とを重ねた際に、両者で重なる部分が生じるようにする。この重複部分を、段ボールの分離したい位置に配置することで、第2プレート3の挿入孔6より段ボールに穿孔を行った際に、段ボールへの穿孔を確実に行うことが可能となる。
【0027】
ここで、挿入孔5,6の数は、図示した手掛穴の形状Hにおいては44個となっているが、挿入孔5と挿入孔6とで確実に重なるように配置すればよく、段ボールを貫きたい形状やサイズにより適宜に変えることができる。
【0028】
また、第1のプレート2および第2のプレート3は、挿入孔5,6や位置決め孔7,8から穿孔する際に、釘の挿入により擦れるため、摩擦が少ない、軽量、腐食や破損をし難い、孔の加工が容易と言った条件を満たす樹脂を用いることが好ましい。そのような樹脂としては、これらの条件を満たす限りは、特に制限はないが、
図5に示した例では、ポリアセタール(POM)樹脂を用いている。
【0029】
なお、第1のプレート2および第2のプレート3は、方形であれば、大きさは異なっていてもよいが、孔の形成の容易さやプレート加工の際の効率を考慮すると、同じ大きさであることが好ましい。
【0030】
本発明の段ボール穿孔治具1により段ボールに穿孔するに際しては、まず、段ボールの分離したい範囲に第1のプレート2を留め、位置決め孔7に対応する径の釘を突き通し段ボール上で位置決めを行う。
【0031】
つづいて、挿入孔5の全てに、対応する径の釘を順次、突き通して段ボールに穿孔を行う。全ての挿入孔5にて穿孔を終えたならば、第1のプレート2を段ボールから外す。
【0032】
そして、第2のプレート3を、第1のプレート2を位置決めしたのと同じ位置に押さえて、位置決め孔8に釘を突き通して留め、第1のプレート2の際と同様に位置決めを行う。
【0033】
つづいて、挿入孔6の全てに、対応する径の釘を順次、突き通して段ボールに穿孔を行う。全ての挿入孔6にて穿孔を終えたならば、第2のプレート3を段ボールから外す。そうすると、
図6に示すように、第2のプレート3とともに、段ボールの挿入孔5,6に穿孔された範囲がトラック形状Hにくり抜かれ、
図7に示すように、段ボールに、その形状Hに対応する貫通孔が形成される。
【0034】
このように、本発明の段ボール穿孔治具1では、第1のプレート2と第2のプレート3の挿入孔5,6に釘を突き通して行けば、段ボールを所望の形状に分離できるので、操作を誤ると危険なカッターやハサミ、コンパス、抜き型等が不要となり、安全性が向上する。
【0035】
ここで、釘を突き通す際には、
図8に示すように、釘9は先端を研磨して対応する各孔に挿入する。
図8に示した釘9の左側の釘のように、釘は製造過程で発生するプレス痕跡の突起が残るため、そのままでは孔に挿入することが困難である。そのため、それらの突起を研いで除去し、各孔にスムーズに挿入可能とするのである。
【0036】
また、その際に、釘9の先端テーパー長(研磨した部分の長さ)Aよりも、(第1および第2の)プレートの厚さBが厚くなるように、つまりA<Bとなるようにプレートを形成する。プレートの厚さBが先端テーパー長Aよりも薄いと、釘9のストレート部分Cを垂直に挿入することが困難になる。
【0037】
また、段ボールに手掛け穴を形成するのであれば、必ずしも手掛け穴を形成した部分を段ボールから分離しなくてもよい。つまり、
図9(a)に示す加工例1のように、上辺部分を穿孔せずに、残りの穿孔した部分を内側に折ってもよいし、
図9(b)に示す加工例2のように、全ての挿入孔にて穿孔は行うが、分離せずに内側に折ってもよい。
【0038】
ここで、加工例1では、上辺部分は、上述した第1のプレートおよび第2のプレートのいずれによっても一辺を穿孔せずに手掛穴を形成している。また、加工例2では、第1のプレートでは全挿入孔にて穿孔するけれども、第2のプレートでは上辺部分は穿孔せずに、部分穿孔により手掛穴を形成しており、この例は特に硬く厚い段ボールに手掛穴を形成する際に好適である。
【0039】
このように、手掛穴を形成した部分を折るだけで段ボールから分離しないことにより、穿孔した部分を廃棄する手間を省くことができる。また、一部を穿孔しないことにより、手掛穴の強度向上を図ることもできる。
【0040】
なお、図示した例では、手掛穴を開けることを想定しているが、これに限らず、本発明は、段ボールを貫いて孔あけ加工をする際に広く適用することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明の段ボール穿孔治具および穿孔方法は、上記各実施の形態に限定されず、その範囲内で想定されるあらゆる技術的思想を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、段ボールの所望の範囲に穿孔する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 段ボール切抜装置
2 第1のプレート
3 第2のプレート
5,6 挿入孔(孔)
7,8 位置決め孔
9 釘
A 釘の先端テーパー長(研磨した部分の長さ)
B (第1および第2の)プレートの厚さ
C 釘のストレート部分
H 手掛け穴の形状