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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125031
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】留置針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A61M25/06 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033093
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA21
4C267AA24
4C267BB01
4C267BB12
4C267BB23
4C267BB40
4C267CC08
4C267GG02
4C267HH01
(57)【要約】
【課題】針先プロテクタが係止される係止部を外針ハブの内周面に形成しても、金型の脱型時の応力集中による亀裂を防止できる、新規な構造の留置針組立体を提供する。
【解決手段】外針72から抜去された内針16の針先20を保護するための安全部材30が外針ハブ74に収容された留置針組立体10であって、外針ハブ74の内周面には安全部材30が抜針方向で係止される凹状の係止部90が周方向で部分的に形成されて、係止部90が開口する軸方向位置における外針ハブ74の内周面は係止部90が設けられた径方向において他の径方向よりも大径とされており、樹脂製の型成形品とされた外針ハブ74のウェルドライン108が係止部90を周方向に外れた位置に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に内針ハブが設けられた内針と、
基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、
該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護するための安全部材と
を、備える留置針組立体であって、
前記外針ハブは、内周面において周方向で部分的に開口して前記安全部材が抜針方向で係止される凹状の係止部を備えており、
該係止部が開口する軸方向位置における該外針ハブの内周面は、該係止部が設けられた径方向において他の径方向よりも大径とされた断面形状とされており、
樹脂製の型成形品とされた該外針ハブのウェルドラインが、該外針ハブにおける該係止部を周方向に外れた位置に形成されている留置針組立体。
【請求項2】
前記外針ハブの外周面には樹脂材料の注入痕が形成されており、
該注入痕が該外針ハブにおける前記係止部を周方向に外れた位置に設けられている請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記外針ハブの外周面には前記注入痕が1つ形成されており、
該外針ハブにおける該注入痕と径方向の反対側に前記ウェルドラインが形成されている請求項2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記安全部材が前記外針から抜去された前記内針の前記針先を保護する針先プロテクタで構成されており、
該針先プロテクタには、該内針の側方を延びて該外針から抜去された該内針の該針先を覆う一対の保護片が相互に対向して設けられており、
該一対の保護片には対向方向の外側へ突出する段差状部がそれぞれ設けられており、
該一対の保護片が該段差状部において前記外針ハブに設けられた一対の前記係止部に係止される請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記外針ハブの内周面における前記係止部の基端側の開口縁部には、内周へ突出する係止凸部が形成されている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項6】
前記係止部の内面が前記外針ハブの縦断面において円弧状の湾曲面とされている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項7】
基端側に内針ハブが設けられた内針と、
基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、
該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護するための安全部材と
を、備える留置針組立体であって、
前記外針ハブは、前記外針の基端部に固定された筒状のハブ本体と、該ハブ本体の内周へ基端側から差し入れられて該ハブ本体の内周面に固定された係止部材とを、備えており、
該外針ハブの内周面には、前記安全部材が抜針方向で係止される係止部が、該係止部材によって形成されている留置針組立体。
【請求項8】
前記係止部材が先端側へ向けて厚肉とされて、前記ハブ本体から内周への該係止部材の突出高さが先端側へ向けて大きくなっており、前記係止部が該係止部材の先端面によって構成されている請求項7に記載の留置針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析や輸液、採血等の際に血管に穿刺される留置針組立体に関し、特に穿刺後に抜去される内針の針先を保護するための安全部材を備えた留置針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者に対して人工透析や輸液、採血等を行う際に、血管に穿刺状態で留置された留置針が用いられている。留置針は、例えば特表2022-513285号公報(特許文献1)に示されているように、中空の外針を備えており、外針に挿通されて鋭利な針先を有する内針が血管に穿刺された後、内針が外針から抜去されることによって、外針が血管に穿刺された状態で留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-513285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血管への穿刺後に抜去された内針で医療従事者や廃棄業者等が指等を誤って刺してしまう誤穿刺事故の発生が懸念され、このような誤穿刺事故による感染症の危険性がある。そこで、誤穿刺事故の発生を防ぐために、抜去された内針の針先を保護するための安全部材を備えた留置針組立体も採用されている。
【0005】
安全部材は、特許文献1において針先プロテクタで構成されている。特許文献1の針先プロテクタは、一対の保護片を備えており、一対の保護片が外針ハブの内周面に設けられた係止部に軸方向で係止された状態で内針が引き抜かれていくことにより、内針の先端まで移動して、内針の針先を覆って保護する。そして、内針の針先を保護した状態の針先プロテクタは、内針ハブを基端側へ引く力によって外針ハブとの係止が解除されて、外針ハブから分離し、内針が外針から離脱する。
【0006】
しかし、本発明者が検討したところ、外針ハブの内周面の係止部を外針ハブの成形時に形成しようとすると、外針ハブの内周面を成形するための金型を軸方向に脱型する際に、アンダーカットによる応力(歪)の集中に起因した亀裂が発生するおそれもあることが明らかになった。
【0007】
本発明の解決課題は、針先プロテクタ等の安全部材が軸方向で係止される係止部を外針ハブの内周面に設けても、外針ハブの成形時の脱型に際してアンダーカットに起因する亀裂の発生を防ぐことができる、新規な構造の留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護するための安全部材とを、備える留置針組立体であって、前記外針ハブは、内周面において周方向で部分的に開口して前記安全部材が抜針方向で係止される凹状の係止部を備えており、該係止部が開口する軸方向位置における該外針ハブの内周面は、該係止部が設けられた径方向において他の径方向よりも大径とされた断面形状とされており、樹脂製の型成形品とされた該外針ハブのウェルドラインが、該外針ハブにおける該係止部を周方向に外れた位置に形成されているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、係止部が外針ハブにおいて周方向で部分的に形成されており、樹脂製の型成形品である外針ハブのウェルドラインが、係止部を周方向で外れた位置に設定されている。これにより、外針ハブは、成形後の脱型に際して、金型のアンダーカットによる大きな応力が作用する係止部の形成部分が、脆弱なウェルドラインのない耐強度特性に優れた構造とされており、外針ハブにおけるウェルドラインの形成部分は、係止部を周方向に外れていることで、脱型時の応力(歪)が小さくされている。それゆえ、外針ハブの成形後の脱型に際して、外針ハブに亀裂が入る等の不具合が回避されて、外針ハブを安定した品質で製造することができる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に記載された留置針組立体において、前記外針ハブの外周面には樹脂材料の注入痕が形成されており、該注入痕が該外針ハブにおける前記係止部を周方向に外れた位置に設けられているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、外針ハブの成形時に樹脂材料が注入痕の形成部分から金型のキャビティに注入されることから、注入痕が外針ハブの外周面に形成されるようにすれば、樹脂材料は注入痕の形成部分から周方向に充填される。それゆえ、外針ハブには略軸方向に延びるウェルドラインが形成されて、周方向で係止部を避ける位置にウェルドラインを設定し易くなる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様に記載された留置針組立体において、前記外針ハブの外周面には前記注入痕が1つ形成されており、該外針ハブにおける該注入痕と径方向の反対側に前記ウェルドラインが形成されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、外針ハブにおいて脆弱なウェルドラインの形成部分が1つだけとされることから、外針ハブの損傷がより回避され易くなる。
【0015】
外針ハブの成形時に樹脂材料を金型のキャビティに一箇所から注入することにより、注入位置と径方向で反対側にウェルドラインを設定することができる。従って、係止部を周方向で外れた位置に注入痕が形成されるように樹脂材料の注入ゲートを設定すれば、ウェルドラインを係止部を周方向で外れて位置させることができる。
【0016】
第4の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記安全部材が前記外針から抜去された前記内針の前記針先を保護する針先プロテクタで構成されており、該針先プロテクタには、該内針の側方を延びて該外針から抜去された該内針の該針先を覆う一対の保護片が相互に対向して設けられており、該一対の保護片には対向方向の外側へ突出する段差状部がそれぞれ設けられており、該一対の保護片が該段差状部において前記外針ハブに設けられた一対の前記係止部に係止されるものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、一対の保護片が段差状部において係止部に係止されていることから、内針の抜去に際して、針先プロテクタが外針ハブによって保持されて内針の針先側へ移動することで、内針の針先が針先プロテクタによって保護される。また、一対の保護片が相互に接近して内針の針先を覆う針先保護状態では、段差状部も内周側に移動して、段差状部と係止部の係止が解除される。これにより、内針の針先保護が完了した後、小さな入力によって針先プロテクタを外針ハブから基端側へ離脱させて、内針及び内針ハブを外針及び外針ハブから分離させることができる。
【0018】
第5の態様は、第1~第4の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記外針ハブの内周面における前記係止部の基端側の開口縁部には、内周へ突出する係止凸部が形成されているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、係止部の基端側の開口縁部に係止凸部が形成されていることによって、針先プロテクタの外針ハブに対する抜針方向での係止代がより大きくされる。それゆえ、内針の針先保護前において、針先プロテクタの外針ハブに対する基端側への意図しない移動がより有効に制限されて、針先プロテクタで覆われていない内針の針先が外部に誤って露出する不具合が回避される。
【0020】
係止凸部の形成によって外針ハブの内周面を成形する金型のアンダーカットがより大きくなることから、脱型に際してより大きな応力が外針ハブに作用することも想定されるが、アンダーカットによって脱型時の応力が大きくなる部分にはウェルドラインが位置しておらず、脱型時に外針ハブに亀裂が生じるのを防ぐことができる。
【0021】
第6の態様は、第1~第5の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記係止部の内面が前記外針ハブの縦断面において円弧状の湾曲面とされているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、係止凹部の内面が縦断面において円弧状の湾曲面とされていることにより、外針ハブの内周面を成形する金型を軸方向で基端側へ脱型する際に、係止部の内面のテーパによる案内作用によって、アンダーカット部分の脱型が比較的に容易になる。
【0023】
また、円弧状湾曲面とされた係止凹部の内面の基端側部分は、基端側へ向けて軸方向に対する傾斜角度が大きくなっていることから、針先プロテクタが係止部の内面に対する係止によって内針の抜針方向である基端側への移動を効果的に制限される。
【0024】
第7の態様は、基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護するための安全部材とを、備える留置針組立体であって、前記外針ハブは、前記外針の基端部に固定された筒状のハブ本体と、該ハブ本体の内周へ基端側から差し入れられて該ハブ本体の内周面に固定された係止部材とを、備えており、該外針ハブの内周面には、前記安全部材が抜針方向で係止される係止部が、該係止部材によって形成されているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、外針ハブがハブ本体の内周に係止部材を固定した構造とされていることにより、ハブ本体の成形時に係止部を形成することなく、ハブ本体に係止部材を固定することで係止部を後形成することができる。それゆえ、ハブ本体及び係止部材の成形時に金型の無理抜きを要することなく係止部を設けることができて、脱型時のハブ本体及び係止部材の損傷が回避される。
【0026】
第8の態様は、第7の態様に記載された留置針組立体において、前記係止部材が先端側へ向けて厚肉とされて、前記ハブ本体から内周への該係止部材の突出高さが先端側へ向けて大きくなっており、前記係止部が該係止部材の先端面によって構成されているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、係止部材の先端面で構成された係止部のハブ本体から内周への突出高さを確保しながら、係止部材の基端側の開口を大きな自由度で設定することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、針先プロテクタが軸方向で係止される係止部を外針ハブの内周面に形成しても、金型の脱型時の応力集中による亀裂の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態としての留置針組立体を示す右側面図
図2図1に示す留置針組立体の断面図であって、図3のII-II断面に相当する図
図3図2のIII-III断面図
図4図2のIV-IV断面図
図5図2のV-V断面図
図6図2のVI-VI断面図
図7図1に示す留置針組立体を構成する針先プロテクタの斜視図
図8図7の針先プロテクタを別角度で示す斜視図
図9図1に示す留置針組立体を構成する外針ハブの正面図
図10図8に示す外針ハブの右側面図
図11図7に示す外針ハブの底面図
図12図9のXII-XII断面図
図13図12のXIII-XIII断面図
図14図12のXIV-XIV断面図
図15図12に示す外針ハブの製造工程を説明する図
図16図14に示す外針ハブの脱型時の歪分布を示す図
図17図1に示す留置針組立体を構成する押し子ガイドの斜視図
図18図17の押し子ガイドを別角度で示す斜視図
図19図1に示す留置針組立体を構成する押し子の斜視図
図20図19の押し子を別角度で示す斜視図
図21図1の留置針組立体において内針を外針から抜去した状態を示す断面図
図22図1の留置針組立体を構成する外針ユニットに外部回路が接続された状態を示す断面図であって、図23のXXII-XXII断面に相当する図
図23図22のXXIII-XXIII断面図
図24】本発明の第2実施形態としての留置針組立体を示す断面図であって、図25のXXIV-XXIV断面に相当する図
図25図24のXXV-XXV断面図
図26図24に示す留置針組立体を構成する外針ハブの断面図であって、図27のXXVI-XXVI断面に相当する図
図27図26のXXVII-XXVII断面図
図28図26のXXVIII-XXVIII断面図
図29】本発明の第3実施形態としての留置針組立体を構成する外針ハブの断面図
図30】本発明の別の一実施形態としての留置針組立体を構成する外針ハブの断面図
図31】本発明のまた別の一実施形態としての留置針組立体を構成する外針ハブの断面図
図32】本発明の更にまた別の一実施形態としての留置針組立体を構成する外針ハブの脱型時の歪分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1図6には、本発明の第1実施形態としての留置針組立体10が示されている。留置針組立体10は、内針ユニット12と外針ユニット14とが相互に離脱可能に連結された構造を有している。なお、以下の説明において、前後方向(軸方向)とは、原則として、後述する内針16及び外針72の針軸方向となる図1中の左右方向を言う。また、原則として、先端側とは後述する内針16の針先20側となる図1中の左側を言うと共に、基端側とは使用者が把持して操作する側となる図1中の右側を言う。また、原則として、上下方向とは図1中の上下方向を、左右方向とは図3中の上下方向を、それぞれ言う。
【0032】
内針ユニット12は、内針16と、内針16の基端側に固定された内針ハブ18とを備えている。内針16は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン又はそれらの合金等の公知の材料によって形成されており、本実施形態では中空針とされている。内針16の先端は、先鋭状の針先20とされている。なお、内針16は中実針であってもよい。
【0033】
内針16の基端側に設けられた内針ハブ18は、硬質の合成樹脂で形成された略円筒形状の部材とされている。内針ハブ18の先端部には、外針ハブ74(後述)の基端開口部に挿入可能とされた円筒状の接続部22が設けられている。接続部22は、周方向の一部において、先端側への突出長さが長くされたプロテクタ回転制限部24とされている。内針ハブ18の先端部には、プロテクタ回転制限部24に対して外周側に対向する周方向位置決め部26が設けられている。
【0034】
内針ハブ18の基端開口部には、図1図3に示すように、フィルタキャップ28が取り付けられている。フィルタキャップ28は、筒状とされて、内腔の基端開口部が血液の通過を阻止すると共に空気の通過を許容する通気性のフィルタ29によって覆われている。これにより、内針16の先端から内針ハブ18の内腔への血液の流入が許容されていると共に、内針ハブ18の内腔へ流入した血液が、フィルタキャップ28によって外部への漏出を防止されている。
【0035】
内針16には、安全部材としての針先プロテクタ30が装着されている。針先プロテクタ30は、例えば医療用ステンレス等の金属材によって形成されている。本実施形態では、針先プロテクタ30を構成する後述する各部が一体形成されており、例えば、金属板のプレス加工によって針先プロテクタ30を容易に製造することができる。
【0036】
針先プロテクタ30は、図7図8にも示すように、基端(針先20と反対側)に位置して内針16の針軸と直交する方向に広がる底部32と、底部32の上下両端縁から針先20側へ向けて延び出す第1保護片34と第2保護片36とを、備えている。なお、図7図8では、見易さのために、針先プロテクタ30が作動前(針先保護前)の状態で示されているが、針先プロテクタ30は、単体では作動後(針先保護状態)の形態とされて、内針16への装着によって図7図8に示す作動前の状態とされる。
【0037】
底部32は、略矩形平板形状とされており、板厚方向に貫通する挿通孔37を備えている。底部32には、部分的に厚さ寸法が小さくされた薄肉部38が、挿通孔37の周囲を囲むように形成されており、針先プロテクタ30のプレス加工時に底部32に作用する力が、薄肉部38よりも内周側へ伝達され難くなっている。また、底部32の左右両側面には、上下方向の両端部分にそれぞれ突起39が突設されている。
【0038】
第1保護片34と第2保護片36は、底部32における上下の対向辺部から底部32の板厚方向の一方側(先端側)へ延び出しており、底部32と一体形成されている。本実施形態の第1保護片34と第2保護片36は、内針16に対する上下両側に配されて相互に対向しており、交差状には延びていない。
【0039】
第1保護片34は、全体として略矩形板状とされており、底部32からの延出方向である前後方向において長手とされている。第1保護片34は、底部32につながる平板状の第1本体部40を備えていると共に、第1本体部40の先端側に第1針先保護部42を備えている。
【0040】
第1針先保護部42は、第1本体部40の先端から第2保護片36と反対側へ突出する第1段差状部44と、第1段差状部44と連続して設けられた第1先端覆い片46と、第1先端覆い片46の先端から基端側へ向けて突出する第1返り片48とを備えている。第1先端覆い片46は、第1段差状部44から先端側へ向けて突出した先で第2保護片36側(下側)へ屈曲して延びており、屈曲部分よりも先端側が内針16の中心軸に対する交差方向に広がっている。また、第1先端覆い片46の先端部分における幅方向(左右方向)の両側には、一対の第1側方覆い片50,50が延び出している。第1側方覆い片50,50は、第1先端覆い片46から左右側方へ突出した先で基端側へ屈曲して延びており、幅方向に対して略直交して広がっている。
【0041】
また、第1保護片34は、第1本体部40の幅方向一方の端縁部から第2保護片36へ向けて延び出す第1側方カバー片52と、第1本体部40の幅方向他方の端縁部から第2保護片36へ向けて延び出す第1突出片54とを、備えている。第1側方カバー片52と第1突出片54は、第1本体部40の幅方向両側に設けられており、幅方向で相互に離隔対向して配されている。
【0042】
第2保護片36は、全体として略矩形板状とされており、底部32からの延出方向である前後方向において長手とされている。第2保護片36は、底部32につながる平板状の第2本体部56を備えていると共に、第2本体部56の先端側に第2針先保護部58を備えている。
【0043】
第2針先保護部58は、第2本体部56の先端から第1保護片34と反対側へ突出する第2段差状部60と、第2段差状部60と連続して設けられた第2先端覆い片62と、第2先端覆い片62の先端から基端側へ向けて突出する第2返り片64とを備えている。第2先端覆い片62は、第2段差状部60から先端側へ向けて突出した先で第1保護片34側(上側)へ屈曲して延びており、屈曲部分よりも先端側が内針16の中心軸に対する交差方向に広がっている。また、第2先端覆い片62の先端部分における幅方向(左右方向)の両側には、一対の第2側方覆い片66,66が延び出している。第2側方覆い片66,66は、第2先端覆い片62から左右側方へ突出した先で基端側へ屈曲して延びており、幅方向に対して略直交して広がっている。
【0044】
また、第2保護片36は、第2本体部56の幅方向他方の端縁部から第1保護片34へ向けて延び出す第2側方カバー片68と、第2本体部56の幅方向一方の端縁部から第1保護片34へ向けて延び出す第2突出片70とを、備えている。第2側方カバー片68と第2突出片70は、第2本体部56の幅方向両側に設けられており、幅方向で相互に離隔対向して配されている。
【0045】
第1側方カバー片52と第2突出片70は、第1保護片34と第2保護片36における幅方向の同じ側の端縁部に設けられており、針先保護前の内針16への装着状態において幅方向で相互に重なり合っていると共に、第1側方カバー片52が第2突出片70に対して幅方向の内側に離れて位置している。また、第2側方カバー片68と第1突出片54は、第1保護片34と第2保護片36における幅方向の同じ側の端縁部に設けられており、針先保護前の内針16への装着状態において幅方向で相互に重なり合っていると共に、第2側方カバー片68が第1突出片54に対して幅方向の内側に離れて位置している。第1側方カバー片52と第2側方カバー片68とは、幅方向において互いに反対側に設けられており、幅方向で相互に離隔して対向している。また、第1突出片54と第2突出片70は、幅方向において互いに反対側に設けられて、幅方向で相互に離隔して対向しており、第1,第2側方カバー片52,68に対して幅方向の両外側に位置している。
【0046】
針先プロテクタ30は、図2図3及び図5図6に示すように、内針16に装着される。即ち、内針16は、針先プロテクタ30の底部32に形成された挿通孔37に挿通されると共に、第1針先保護部42と第2針先保護部58との間に挿通されており、針先プロテクタ30が内針16に対して外挿状態で装着されている。針先プロテクタ30の内針16への装着状態において、針先プロテクタ30の第1保護片34と第2保護片36が内針16の上下側方を軸方向に延びていると共に、内針16がそれら第1保護片34と第2保護片36よりも先端側へ突出しており、針先プロテクタ30よりも先端側への突出部分が外針72に挿通されている。内針16は、針先プロテクタ30の第1側方カバー片52と第2側方カバー片68との対向間に位置しており、針軸方向の一部において周囲を第1,第2保護片34,36と第1,第2側方カバー片52,68とによって囲まれている。針先プロテクタ30は、内針16に対して針軸方向に移動可能に取り付けられており、内針ハブ18と隣接する位置から内針16の針先20を覆う位置まで移動可能とされている。
【0047】
針先プロテクタ30は、内針ハブ18の接続部22におけるプロテクタ回転制限部24を外れた部分よりも先端側に位置している。プロテクタ回転制限部24は、図2に示すように、針先プロテクタ30の下方まで延び出しており、針先プロテクタ30の基端部(第2保護片36の基端部)に上下外方から重ね合わされている。これにより、針先プロテクタ30の内針ハブ18に対する相対回転量が、第2保護片36とプロテクタ回転制限部24との当接によって制限される。
【0048】
外針ユニット14は、外針72と、外針72の基端側に固定された外針ハブ74とを備えている。外針72は、軸方向に貫通する内腔を備えた中空針とされており、図2図3に示すように内針16に外挿されている。外針72は、好適には、ある程度の可撓性を有している。外針72の先端部分における外周面は、例えば先端側に向けて次第に小径化するテーパ面とされていてもよく、これにより患者への穿刺時の抵抗を軽減することができて、痛みの軽減等が図られる。また、外針72の先端部分における周壁部には1個又は複数の貫通孔が設けられていてもよく、これにより外針72に対する流体の流入及び流出の効率化が図られ得る。
【0049】
外針ハブ74は、図9図14にも示すように、全体として軸方向に延びる略筒形状とされており、本実施形態では、略円筒形状の周壁76を備えている。周壁76の外周面には、軸方向の中間部分において上方へ向けて突出する押込用突起77が設けられており、後述する内針16の抜針時に押込用突起77を先端側へ押すことで、外針72の抜けを防ぐことができる。外針ハブ74の周壁76の基端部には、外周側へ向けて突出するフランジ状部78が、略全周に亘って設けられている。フランジ状部78の外周面にはねじ山が設けられており、外針ハブ74に対してルアーロック式のシリンジやコネクタ等が接続可能とされている。本実施形態では、フランジ状部78における周上の一部において、軸方向に延びる位置決め溝80が設けられている。
【0050】
外針ハブ74の周壁76の内周面には、段差82が設けられており、段差82よりも先端側が基端側よりも小径とされている。周壁76の内周面には、段差82よりも先端側において略円筒形状のカシメピン84が固着されており、周壁76に挿入された外針72の基端部分が周壁76とカシメピン84との間に挟まれて、必要に応じて接着や溶着されることにより、外針72の基端部分に外針ハブ74が固定されている。
【0051】
外針ハブ74の周壁76の内径寸法は、段差82よりも基端側において、先端部分(先端筒状部86)よりも基端部分(基端筒状部88)が大きくされている。周壁76の先端筒状部86の内周面は、略一定の径寸法で軸方向に直線的に延びている。周壁76の基端筒状部88の内周面は、ルアーテーパーが設定されており、内径寸法が先端へ向けて小さくなっている。基端筒状部88の先端の内径寸法は、先端筒状部86の最大内径寸法よりも大きくされている。
【0052】
外針ハブ74の周壁76における先端筒状部86と基端筒状部88の境界には、内周面に開口して周方向に延びる一対のプロテクタ係止溝90,90が形成されている。係止部としてのプロテクタ係止溝90,90は、図12図14に示すように、外針ハブ74の内周面において上下両側に開口する凹状とされている。プロテクタ係止溝90,90の形成部分において、外針ハブ74の内腔(内周面)は、上下方向の内法寸法R1が左右方向の内法寸法R2よりも大きくされている。換言すれば、外針ハブ74の内腔は、プロテクタ係止溝90,90が設けられた上下方向が長軸、プロテクタ係止溝90,90を周方向に外れた左右方向が短軸とされた、扁平な断面形状を有している。
【0053】
プロテクタ係止溝90は、外針ハブ74の周壁76に対して周方向で部分的に設けられており、周方向の長さ(溝幅寸法)が、プロテクタ係止溝90の形成部分における周壁76の内周面の周長に対して、略3/5とされている。好適には、プロテクタ係止溝90の溝幅寸法は、周壁76の内周面の周長に対して、2/5以上且つ4/5以下の範囲内とされる。
【0054】
本実施形態のプロテクタ係止溝90は、図14に示すように、横断面における溝内面の曲率が周方向で変化している。より具体的には、プロテクタ係止溝90の溝内面は、曲率が部分的に大きくされた逃げ部92が左右両側にそれぞれ設けられており、左右の逃げ部92,92を周方向に外れた部分では逃げ部92,92よりも曲率が小さくされており、円弧形状に比して逃げ部92,92において角張った湾曲形状とされている。
【0055】
プロテクタ係止溝90は、図12に示すように、縦断面における溝内面が円弧状の湾曲凹形状とされている。なお、縦断面におけるプロテクタ係止溝90の溝内面の形状は、特に限定されないが、後述する内型106の脱型や針先プロテクタ30の離脱等を考慮すれば、少なくとも最深部分よりも基端部分が、内周へ向けて基端側へ傾斜するテーパ形状とされていることが望ましい。
【0056】
外針ハブ74の内周面における一対のプロテクタ係止溝90,90の周方向間には、軸方向に延びるガイド溝94がそれぞれ形成されている。ガイド溝94は、プロテクタ係止溝90よりも深さ寸法が小さくされており、略一定の周方向幅で軸方向に直線的に延びている。ガイド溝94の底面は、外針ハブ74の中心軸に対して傾斜せずに略平行に広がっている。
【0057】
ガイド溝94,94の先端部分には、深さ寸法が大きくされた凹部96,96が形成されている。凹部96は、各ガイド溝94の先端部分において周方向に延びる溝状とされており、後述する押し子ガイド116の凸部140を挿入可能な形状とされている。
【0058】
外針ハブ74の内周面における一対のプロテクタ係止溝90,90の基端側の開口縁部には、図12図14に示すように、係止凸部98,98が形成されている。係止凸部98は、外針ハブ74の内周面から内周へ向けて突出しており、係止凸部98,98の形成部分において、外針ハブ74の上下方向の内法寸法が小さくされている。係止凸部98は、外針ハブ74に一体形成されている。係止凸部98は、最も内周側へ突出位置する頂点100よりも先端側の表面が基端側へ向けて内周へ傾斜するテーパ面とされていると共に、基端側の表面が基端側へ向けて外周へ傾斜するテーパ面とされている。本実施形態では、縦断面において、頂点100を含む係止凸部98の表面全体が、滑らかに連続する山形の湾曲面で構成されている。なお、係止凸部98,98は、プロテクタ係止溝90,90を周方向に外れた両側には形成されていない(図13参照)。また、ガイド溝94,94の軸方向基端と、係止凸部98,98の軸方向基端とが、互いに略同じ位置とされており、ガイド溝94,94が係止凸部98,98の周方向間まで延びている。
【0059】
ところで、外針ハブ74は、ポリプロピレン等の樹脂によって形成されており、例えば射出成形などの成形方法で製造された型成形品とされている。図15に示すように、外針ハブ74の成形用金型102は、外針ハブ74の外表面を成形する外型104と、外針ハブ74の内表面(内周面)を成形する内型106とを有している。外針ハブ74の内周面が基端側へ向けて大径となっていることから、外針ハブ74の内周面を成形する内型106は、外針ハブ74の成形後に基端側へ引き抜かれて脱型される。
【0060】
外針ハブ74は、内周面に開口するプロテクタ係止溝90,90を備えていることから、外針ハブ74から内型106を取り外す際には、プロテクタ係止溝90,90の形成部分でアンダーカットが発生する。特に本実施形態では、プロテクタ係止溝90,90の基端側の開口端縁部に係止凸部98,98が形成されていることから、内型106のアンダーカット代(外針ハブ74におけるプロテクタ係止溝90,90の内面及び係止凸部98,98と内型106との軸方向投影での重なり代)がより大きくなる。
【0061】
このようなプロテクタ係止溝90,90の成形部分がアンダーカットとなる内型106を、外針ハブ74から基端側へ無理に脱型しようとすると、内型106におけるプロテクタ係止溝90,90の成形部分が、係止凸部98,98を乗り越える際に、外針ハブ74に対して大きな応力が作用する。本実施形態では、プロテクタ係止溝90,90が周方向で部分的に上下両側に設けられていることから、脱型時にアンダーカットに起因して外針ハブ74に作用する応力(歪)は、上下両側において大きく、左右両側では小さくなる。
【0062】
そこで、外針ハブ74は、応力の作用に対して脆弱な部分が上下両側を周方向に外れた左右方向に配置されており、脱型時の損傷が回避されている。型成形品の外針ハブ74では、図14に示すウェルドライン108が応力の作用時に損傷し易い脆弱部分となることから、ウェルドライン108が上下両側のプロテクタ係止溝90,90の形成部分を周方向に外れた左右方向に配置されている。図中にはウェルドライン108を図示したが、ウェルドライン108は、必ずしも目視で判別可能ではなくてもよい。
【0063】
ウェルドライン108は、注入ゲートから注入された溶融樹脂材料が、注入ゲートからキャビティ内を流れて流動方向の先端において合流することで、キャビティ内に充填される際、特に冷却固化が進行しやすい流動先端部の合流部分に形成される。
【0064】
注入ゲートの位置は、例えば図9図11及び図14に示す外針ハブ74の外周面に形成された注入痕としてのゲート痕110によって目視でも分かる。即ち、外針ハブ74は、ゲート痕110が外針ハブ74の外周面における上下両側を外れた左右方向(本実施形態では左方)に、1つだけが形成されていることから、成形時には樹脂材料が1つの注入ゲートからキャビティへ注入されて成形されたことが分かる。この場合に、注入ゲートからキャビティに注入されて充填される溶融した樹脂材料は、温度低下しながらキャビティ内を周方向に流れて、注入ゲートと径方向の反対側で合流することから、外針ハブ74の周壁76には、ゲート痕110に対する径方向の反対側において軸方向に延びるウェルドライン108が形成される。このウェルドライン108の形成部分は、他の部分よりも応力に対して脆弱になり易く、比較的に小さな応力の作用で損傷することから、大きな応力が作用し難い部分に位置することが望ましい。それゆえ、外針ハブ74は、ゲート痕110が周壁76の左右側方に配置されており、ウェルドライン108の形成位置が、内型106の脱型時の応力が比較的に小さくなる左右方向とされている。
【0065】
図16には、内型106を外針ハブ74から脱型する際に外針ハブ74に作用する歪の分布が示されている。図16では、外針ハブ74におけるプロテクタ係止溝90,90の形成部分の歪分布が色相によって示されており、色相が青色に近いほど歪が小さく、赤色に近いほど歪が大きい。図16に示すように、内型106がアンダーカットを乗り越える際に大きな応力が作用する上下両側部分よりも、アンダーカットが生じない左右両側部分において、外針ハブ74の歪が小さくなることが、シミュレーションによっても確認された。図16のシミュレーション結果では、外針ハブ74の左右両側において、上下中央部分よりも上下中央を外れた両側部分で脱型時の歪が特に小さくなった。そこで、図16に示すように、外針ハブ74の左側において上下中央よりも下側にゲート痕110が形成されるように注入ゲートの位置を設定し、ゲート痕110に対して径方向反対側となる右上部分にウェルドライン108が形成されるようにすれば、ウェルドライン108の歪が効果的に抑えられて、製造時の外針ハブ74の損傷が回避される。なお、図16は、歪分布のシミュレーション結果であることから、ゲート痕110は省略されているが、理解を容易にするために、ゲート痕110が設けられるべき位置に符号110を付した。また、図9図11図14では、見易さのために、ゲート痕110を誇張して図示した。
【0066】
本実施形態の外針ハブ74は、内周面に凹部96,96が形成されており、左右両側に位置する凹部96,96の形成部分においても内型106のアンダーカットが発生する。しかしながら、凹部96,96は、大きな外力が作用し難い押し子ガイド116の係止による位置決めを主たる目的としており、プロテクタ係止溝90,90に比して深さ寸法が小さいことから、無理抜きによる歪(応力)が問題になり難い。
【0067】
外針ハブ74の内部には、止血弁機構112が組み込まれている。止血弁機構112は、弁体114と押し子ガイド116と押し子118とを備えている。なお、後述するように、内針16を引き抜く際に、外針ハブ74における止血弁機構112より先端側の領域に外針72を通じて流入した血液が収容されることから、外針ハブ74の周壁76が少なくとも止血弁機構112の配設位置より先端側において透明とされることで、使用者等が血液の外針ハブ74内への流入(フラッシュバック)を外部から確認可能となる。
【0068】
弁体114は、ゴムやエラストマ等の弾性体によって形成されており、中央に切込み120が形成されている。弁体114は、先端面の外周端が外針ハブ74の内周面に設けられた段差82に重ね合わされており、先端側への移動が規制されている。弁体114には、外周端部において基端側へ向けて突出する筒状の支持片122が一体形成されている。弁体114の基端面には、支持片122の内周に沿って環状に延びる保持溝124が形成されている。弁体114は外針ハブ74への装着によって径方向で圧縮されており、切込み120の内面が相互に密着して、切込み120が遮断されていることから、外針ハブ74の内腔が弁体114によって液密に遮断されている。
【0069】
弁体114の基端側には、筒状の押し子ガイド116が配されている。押し子ガイド116は、図17図18に示すように、先端部分が弁体114の支持片122に挿入される筒状挿入部126とされており、弁体114の支持片122が外針ハブ74と押し子ガイド116との間で径方向に挟持されている。また、筒状挿入部126の先端部は弁体114の保持溝124に挿入されており、弁体114の外周部分が外針ハブ74の段差82と押し子ガイド116との間で軸方向に挟持されている。
【0070】
押し子ガイド116の筒状挿入部126よりも基端側には、一対の切欠き128,128が形成されている。切欠き128,128は、押し子ガイド116の左右両側に形成されており、押し子ガイド116の基端部分をそれぞれ左右方向に貫通して設けられている。このような一対の切欠き128,128が形成されることにより、押し子ガイド116の基端部分は、一対の切欠き128,128を周方向で外れた位置である切欠き128,128の周方向間に位置する一対のガイド片130,130とされている。一対のガイド片130,130は、上下方向で相互に対向して配されており、互いに略対称形状とされている。ガイド片130は、外周面が外針ハブ74の内周面に対応する円弧状断面とされていると共に、内周面が外周面よりも曲率が小さい平面形状のガイド側平坦面132によって構成されている。ガイド片130は、内周面の曲率が外周面の曲率よりも小さくされていることにより、周方向の中央に向けて厚肉となっている。
【0071】
一対のガイド片130,130には、円弧状断面で軸方向に延びる溝状凹部134,134が内周面に開口して形成されており、溝状凹部134の内面が筒状挿入部126の内周面の延長上に位置している。溝状凹部134はガイド片130の基端までは達しておらず、ガイド片130における溝状凹部134よりも基端側には、内周へ向けて突出する抜止突部136が設けられている。抜止突部136は、先端側(針先20側)の面が軸直角方向に広がっていると共に、基端側の面が基端へ向けて外周へ傾斜するテーパー形状の端縁拡開部138とされている。本実施形態の端縁拡開部138は、図18に示すように、左右方向の両側部分が平面によって構成されていると共に、左右方向の中央部分が円弧状断面とされている。また、抜止突部136の突出先端面(上下内側の端面)は、ガイド側平坦面132の一部によって構成されており、上下方向に対して略直交して広がる平面とされている。
【0072】
押し子ガイド116は、図2図3に示すように、筒状挿入部126よりも基端側において外針ハブ74の内周面に嵌合されており、それによって外針ハブ74に固定されている。本実施形態では、図17図18にも示すように、押し子ガイド116における外針ハブ74への嵌合部分の先端に、左右方向で外周へ突出して大径とされた一対の凸部140,140が設けられている。そして、外針ハブ74に対する押し子ガイド116の組付けにおいて、押し子ガイド116の凸部140,140が外針ハブ74の内周面に開口する凹部96,96に差し入れられる際のクリック感によって、押し子ガイド116が外針ハブ74に対して軸方向で適切な位置に配されたことを容易に把握可能とされている。凸部140,140は、周方向において、一対の切欠き128,128の形成部分に位置しており、一対のガイド片130,130の形成部分には位置していない。
【0073】
本実施形態の押し子ガイド116は、外針ハブ74の内周面に嵌合されていると共に、弾性体である弁体114を介して外針ハブ74に間接的に押し当てられて、摩擦係数の大きい弁体114との間に作用する摩擦抵抗力によって、押し子ガイド116の外針ハブ74に対する位置決め作用が発揮されている。これらにより、例えば、後述する押し子118の先端側への押込みに際して、押し子118から押し子ガイド116へ回転力等の外力が及ぼされたとしても、押し子ガイド116の外針ハブ74に対する相対回転等の移動が防止される。
【0074】
押し子ガイド116には、押し子118が差し入れられている。押し子118は、例えば、硬質の合成樹脂によって形成されており、図19図20に示すように、先端部が針軸方向に延びる円筒状の挿入筒部142とされていると共に、挿入筒部142の基端側に一対の押込片144,144を有している。
【0075】
挿入筒部142は、先端部分が先端へ向けて小径となるテーパー状の外周面を備えた先細状先端部分146とされていると共に、基端部分が略一定の断面形状で針軸方向に延びる扁平状基端部分148とされている。挿入筒部142の内周面は、全長に亘って略一定の径寸法で針軸方向に延びる円筒面とされている。従って、挿入筒部142は、先細状先端部分146において先端に向けて薄肉となっている。
【0076】
押し子118の扁平状基端部分148は、外周面に上下一対の押し子側平坦面150,150を備えている。押し子側平坦面150は上下方向に対して略直交して広がる平面で構成されており、扁平状基端部分148の断面形状が、上下方向の外寸が左右方向の外寸よりも小さくされた扁平形状とされている。これにより、先細状先端部分146の基端部は、押し子側平坦面150が形成された上下両側において、扁平状基端部分148よりも上下外側に突出しており、先細状先端部分146の基端には、扁平状基端部分148との境界部分において軸直角方向に広がる段差面152が形成されている。本実施形態では、扁平状基端部分148の長さ寸法が先細状先端部分146の長さ寸法よりも短くされており、好適には、扁平状基端部分148の長さ寸法が先細状先端部分146の長さ寸法の1/2以上且つ7/8以下の範囲とされている。なお、扁平状基端部分148の内周面が円筒面とされていることから、扁平状基端部分148の径方向の厚さ寸法は、押し子側平坦面150の形成部分において周方向の他の部分よりも小さくされている。
【0077】
押し子118における扁平状基端部分148よりも基端側には、一対の押込片144,144が一体的に設けられている。押込片144は、押し子118の基端部分において周方向で部分的に設けられており、左右外面が円弧状断面を有する湾曲面とされていると共に、左右内面が左右方向に対して略直交して広がる平面状とされて、上下方向の中央に向けて厚肉となっている。押込片144は、先端部分が左右方向の内側へ向けて屈曲しており、扁平状基端部分148の基端部に一体的につながっている。換言すれば、一対の押込片144,144は、扁平状基端部分148の基端部から左右方向の外方へ向けて延び出していると共に、左右両外端において屈曲して基端側へ延び出している。また、押込片144の屈曲部分は、基端面が左右外側へ向けて基端側へ傾斜するテーパー形状とされることで、隅部に厚肉の補強部154が設けられており、強度や耐久性の向上が図られている。また、挿入筒部142と押込片144,144との接続部分の隅部には、補強部154と同様のテーパ形状を有する補強部156が設けられている。なお、押込片144の先端部は、押し子ガイド116の切欠き128に対して、基端側から軸方向に差し入れることが可能な形状及び大きさとされている。
【0078】
押し子118は、図2図3に示すように、挿入筒部142が押し子ガイド116に挿入されており、挿入筒部142の先細状先端部分146の基端に形成された段差面152が、押し子ガイド116の抜止突部136と軸方向で係止される。これにより、押し子118の押し子ガイド116に対する基端側への移動量が制限されており、押し子118の押し子ガイド116からの抜けが、抜止突部136と段差面152の係合によって防止されている。押し子118の挿入筒部142が押し子ガイド116に挿入される際に、先細状先端部分146の外周面と抜止突部136の基端側の面である端縁拡開部138とが、それぞれテーパー形状とされていることにより、押し子118の段差面152が押し子ガイド116の抜止突部136を基端側から先端側へ乗り越え易くなっている。
【0079】
押し子ガイド116の抜止突部136の突出先端面を含むガイド側平坦面132,132は、図4に示すように、押し子118の押し子側平坦面150,150に対して、上下方向で重ね合わされている。これにより、押し子118と押し子ガイド116の中心軸(針軸)回りの相対回転量が、押し子側平坦面150とガイド側平坦面132との当接によって制限される。このように、本実施形態では、押し子118と押し子ガイド116の相対回転量を制限する回転制限機構が、ガイド側平坦面132と押し子側平坦面150の当接によって簡単な構造で実現される。
【0080】
押し子118が押し子ガイド116に対する周方向の相対回転を回転制限機構によって制限されていると共に、押し子ガイド116が外針ハブ74に対する周方向の相対回転を制限されていることにより、押し子118の外針ハブ74に対する周方向の相対回転が制限されている。従って、押し子118及び押し子ガイド116は、外針ハブ74に対して周方向で所定の向きに位置決めされた状態で、外針ハブ74の内部に収容されている。
【0081】
押し子ガイド116のガイド側平坦面132と押し子118の押し子側平坦面150は、押し子ガイド116と押し子118の成形時に、何れも、型割の邪魔になる等の不具合なく容易に形成可能であり、回転制限機構を簡単に得ることができる。また、ガイド側平坦面132と押し子側平坦面150が面同士の当接によって回転制限機構を構成することにより、当接圧力に対する強度や耐久性を確保し易い。
【0082】
内針ユニット12と外針ユニット14は、図2図3に示すように、内針16が外針72に挿通された状態で相互に組み合わされて、留置針組立体10を構成する。内針16は、外針ハブ74に対して基端側開口から挿入されて、弁体114の切込み120を貫通して外針72に挿通される。プロテクタ回転制限部24を含む内針ハブ18の接続部22は、外針ハブ74の基端開口部に挿入されており、内針ハブ18と外針ハブ74が相互にある程度位置決めされていると共に、内針ハブ18が外針ハブ74に対して基端側へ移動可能とされている。
【0083】
留置針組立体10において、内針ハブ18の周方向位置決め部26は、外針ハブ74のフランジ状部78に設けられた位置決め溝80に差し入れられている。これにより、内針ハブ18と外針ハブ74の相対回転量が、周方向位置決め部26とフランジ状部78との当接によって制限されている。また、針先プロテクタ30は、内針ハブ18に対する相対回転量がプロテクタ回転制限部24との当接によって制限されることから、外針ハブ74に対する相対回転が制限されて、外針ハブ74に対して周方向で位置決めされている。従って、留置針組立体10において、外針ハブ74に対する相対回転が制限された針先プロテクタ30と押し子ガイド116と押し子118とは、相対的な回転が制限されており、周方向で相互に位置決めされている。
【0084】
留置針組立体10において、内針16に装着された針先プロテクタ30は、図2図3に示すように、外針ハブ74の内腔へ差し入れられて外針ハブ74内に位置しており、押し子118の基端側に配置されている。より詳細には、針先プロテクタ30は、図3に示すように、外針ハブ74の内腔において、押し子118の一対の押込片144,144の対向間に配されている。換言すれば、押し子118の挿入筒部142が針先プロテクタ30の先端側に位置していると共に、押し子118の一対の押込片144,144が、針先プロテクタ30の幅方向の両側方を基端へ向けて延び出ている。
【0085】
このように、押し子118の基端部分が相互に対向配置された一対の押込片144,144で構成された二股形状とされて、針先プロテクタ30が一対の押込片144,144の間に差し入れられている。これにより、針先プロテクタ30と押し子118が軸直角方向の投影において重なり合うことなく直列的に並んで配されている場合に比して、外針ハブ74の長さを短くすることができる。
【0086】
また、針先プロテクタ30における第1,第2保護片34,36の対向方向(上下方向)の両側には、押し子118が配されておらず、第1,第2保護片34,36が一対の押込片144,144の周方向間の開口を通じて外周側へ露出している。これにより、針先プロテクタ30の上下両側に押し子の一部が配されている場合に比して、外針ハブ74の小径化が図られると共に、後述する針先プロテクタ30の作動に際して、第1,第2保護片34,36の接近変位のストロークを適切に確保することができる。
【0087】
針先プロテクタ30は、一対の押込片144,144の対向方向(左右方向)と略直交する軸直角方向(上下方向)において、一対の押込片144,144よりも外側まで突出している(図5図6参照)。そして、針先プロテクタ30の第1針先保護部42と第2針先保護部58は、少なくとも第1,第2段差状部44,60が外針ハブ74の内周面に形成されたプロテクタ係止溝90,90に差し入れられており、第1,第2段差状部44,60がプロテクタ係止溝90,90の内面に対して抜針方向である基端側において係止されている。これにより、針先プロテクタ30の外針ハブ74に対する基端側への移動(抜け)に対する抵抗力が、第1,第2段差状部44,60とプロテクタ係止溝90,90の内面との係止によって発揮される。
【0088】
本実施形態では、プロテクタ係止溝90,90の基端側の開口縁部に係止凸部98,98が形成されていることから、第1,第2針先保護部42,58が基端側へ移動するためには、第1,第2針先保護部42,58が係止凸部98,98を乗り越える必要があり、第1,第2針先保護部42,58の基端側への移動により大きな入力が必要になる。それゆえ、針先プロテクタ30が意図しないタイミングで外針ハブ74に対して基端側へ移動してしまうのを防止できて、針先プロテクタ30の針先保護作動の安定化が図られている。
【0089】
このように、外針ハブ74の内周面には、針先プロテクタ30の第1,第2針先保護部42,58と外針ハブ74との係止部分に一対のプロテクタ係止溝90,90が形成されており、針先プロテクタ30が外針ハブ74の内周面に対して抜針方向で有効に係止されている。従って、本実施形態の外針ハブ74によれば、ウェルドライン108の形成部分において内周面の凹形状によるアンダーカットを回避しながら、針先プロテクタ30を外針ハブ74に対して軸方向で位置決めすることができる。
【0090】
また、針先プロテクタ30の第1,第2突出片54,70は、押し子118の一対の押込片144,144の対向内面に近接して配されている。第1,第2突出片54,70と押込片144,144との対向面は、本実施形態では何れも平面とされており、それら各対向面の当接によって、針先プロテクタ30と押し子118の相対回転量が制限されている。押し子118は、押し子ガイド116を介して外針ハブ74に対する相対回転量を制限されていることから、針先プロテクタ30は、押し子118及び押し子ガイド116を介して、外針ハブ74に対する回転量が制限されている。
【0091】
かくの如き構造とされた留置針組立体10は、内針16と外針72が血管に穿刺される。血管への穿刺に際して、内針16の内腔を通じて内針ハブ18の内腔へ血液が流入することから、例えば内針ハブ18を透明又は半透明として内部を視認可能とすることにより、血液の内針ハブ18への流入によって、内針16の血管への穿刺を確認することができる。
【0092】
内針16と外針72の血管への穿刺後に、外針ユニット14を穿刺位置に保持しながら、内針ユニット12を基端側へ引くことにより、内針16が外針72から基端側へ引き抜かれる。この際に、内針ハブ18と外針ハブ74の連結が解除されて、図21に示すように、内針ユニット12の全体が外針ユニット14から分離される。内針ユニット12から分離した外針ユニット14は、血管への穿刺状態とされるが、内針16が弁体114の切込み120から引き抜かれることによって、弁体114の切込み120が液密に封止されることから、外針ハブ74の内腔が弁体114によって遮断されて、外針72を通じて外針ハブ74内へ流入する血液が外針ハブ74の基端側へ漏れ出し難くなっている。
【0093】
内針16が外針ハブ74に対して基端側へ移動する際に、針先プロテクタ30は、第1,第2針先保護部42,58が外針ハブ74のプロテクタ係止溝90,90への係止によって基端側への移動を制限されることから、針先プロテクタ30が内針16の先端側へ移動する。内針16と針先プロテクタ30の軸方向での相対的な移動によって、内針16と第1,第2針先保護部42,58の当接が解除されると、第1,第2保護片34,36が相互に接近するように対向方向の内側へ移動する。これにより、第1,第2針先保護部42,58が内針16の先端側を覆う位置まで移動することから、内針16の針先20が第1,第2針先保護部42,58によって保護されて、針先20の外部への露出が針先プロテクタ30によって阻止される。
【0094】
また、針先プロテクタ30が内針16の針先20を保護する状態では、第1,第2針先保護部42,58の接近変位によって、第1,第2針先保護部42,58と外針ハブ74のプロテクタ係止溝90,90との係止が解除されて、針先プロテクタ30の外針ハブ74に対する基端側への移動が許容される。そして、内針16の先端付近に設けられた部分的な拡径部分が、針先プロテクタ30の底部32における挿通孔37の周縁部に対して軸方向で係止されることにより、内針16の針先20を保護した針先プロテクタ30が、内針16と一体的に基端側へ移動して、外針ハブ74から分離する。従って、外針ユニット14から分離した内針ユニット12は、内針16の針先20が針先プロテクタ30に収容された針先保護状態とされており、針先20に誤って触れてしまう等の不具合が回避されて、優れた安全性が実現される。このような針先プロテクタ30による針先20の保護状態において、内針16の先端部分の周囲は、針先プロテクタ30の第1,第2本体部40,56と第1,第2側方カバー片52,68と第1,第2突出片54,70とによって囲まれており、例えば、内針16の傾動による針先20の露出等が防止されている。また、第1針先保護部42の側方開口が第1側方覆い片50,50によって覆われていると共に、第2針先保護部58の側方開口が第2側方覆い片66,66によって覆われていることから、針先20の露出がより効果的に防止されている。
【0095】
内針ユニット12から分離した外針ユニット14は、留置針として血管への穿刺状態で留置されて、図22図23に示すように、外針ハブ74の基端側に外部回路158が接続される。外部回路158は、例えばチューブやコネクタ、シリンジ等によって構成されるが、図中では、外部回路158の外針ハブ74への接続端を構成するオスコネクタ160が示されている。オスコネクタ160は、外周面に外針ハブ74の基端筒状部88の内周面と対応するルアーテーパーが設定されており、基端筒状部88に挿入して嵌め合わせることで着脱自在に接続可能とされている。なお、外部回路158の外針ハブ74への接続端は、外針ハブ74のフランジ状部78に螺合するロック部を備えていてもよい。
【0096】
オスコネクタ160が外針ハブ74に基端側から挿入される際に、オスコネクタ160の先端が押し子118の一対の押込片144,144に押し当てられて、押し子118が先端側へ押し込まれる。押し子118は、挿入筒部142が溝状凹部134を含む押し子ガイド116の内周面に摺接することで軸方向に案内されながら、先端側へ移動する。また、押し子118は、押し子118の上下両側に設けられた押し子側平坦面150,150と、押し子ガイド116の上下両側に設けられたガイド側平坦面132,132との摺接によっても軸方向に案内される。
【0097】
本実施形態では、押し子118の一対の押込片144,144が針先プロテクタ30の側方において基端側へ延び出して設けられていることにより、針先プロテクタ30の第1,第2針先保護部42,58に対する係止部位である外針ハブ74のプロテクタ係止溝90を先端側に設けつつ、外部回路158の外針ユニット14への接続時には、押し子118を外部回路158(オスコネクタ160)によって先端側へ十分に押し込むことができる。その結果、例えば、針先プロテクタ30による針先保護の安定した実現と、弁機構の開作動の信頼性の確保が、何れも実現される。
【0098】
押し子118が先端側へ移動することによって、押し子118の挿入筒部142が弁体114の切込み120を押し広げながら切込み120に挿通される。これにより、外針72の先端開口と外部回路158とが挿入筒部142の内腔を通じて相互に連通される。このように、外針ハブ74の内腔は、外部回路158の接続前には弁体114によって遮断されていると共に、外部回路158が接続されて切込み120が押し子118で押し開かれることによって連通状態に切り替えられるようになっている。そして、弁体114による外針ユニット14の内部流路の遮断が解除されることにより、外針ユニット14が血管へのアクセスポートとして機能し、例えば、輸液や薬液の投与口、人工透析の採血口又は返血口等として利用される。押し子118の挿入筒部142は、先細状先端部分146の外周面が先端に向けて小径となるテーパー形状とされていることにより、弁体114の切込み120に差し入れ易くなっている。
【0099】
押し子118の先端側への移動に際して、左右両側に張り出して設けられた押し子118の一対の押込片144,144と押し子ガイド116との干渉が回避されており、押し子118の先端側への移動ストロークが十分に確保されている。即ち、押し子ガイド116に形成された一対の切欠き128,128に対して、押し子118の一対の押込片144,144が差し入れられることにより、一対の押込片144,144が押し子ガイド116に干渉することなく先端側へ移動可能とされている。
【0100】
押し子118と押し子ガイド116は、周方向の相対回転量が回転制限機構によって制限されていることから、押し子118の一対の押込片144,144が押し子ガイド116の一対の切欠き128,128に対して差入可能な位置に位置決めされている。このように、押し子118の一対の押込片144,144が、押し子ガイド116の一対の切欠き128,128と位置決めされていることにより、押し子118の先端側への移動による弁機構の開作動の信頼性が確保されると共に、押し子118の押し子ガイド116に対する先端側への移動が大きな移動ストロークで許容される。
【0101】
しかも、押し子ガイド116の一対のガイド片130,130によっても、押し子118の軸方向への移動が案内されることから、押し子118の先端側への移動ストロークを大きく確保しつつ、押し子ガイド116によって押し子118を軸方向へ案内することができる。
【0102】
図24図25には、本発明の第2実施形態としての留置針組立体170が示されている。留置針組立体170は、内針ユニット12と外針ユニット172とが組み合わされた構造を有している。以下の説明において、第1実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0103】
外針ユニット172は、外針72の基端部分に固定された外針ハブ174を備えている。外針ハブ174は、図26図28に示すように、一対のプロテクタ係止溝90,90が上下両側に形成されている。本実施形態の外針ユニット172は、第1実施形態に示した止血弁機構112を備えていないことから、外針ハブ174には、第1実施形態のようなガイド溝94や凹部96が形成されていない。
【0104】
このような本実施形態に従う構造とされた留置針組立体170においても、外針ハブ174の内周面における針先プロテクタ30の係止部分が、周方向で部分的に設けられた一対のプロテクタ係止溝90,90によって構成されており、ウェルドライン108が一対のプロテクタ係止溝90,90を外れた部分に形成されている。それゆえ、外針ハブ174の成形に際して脱型時にアンダーカット部分の無理抜きによる大きな応力が作用しても、外針ハブ174の損傷が生じ難く、外針ハブ174を安定して製造することができる。
【0105】
このように、本発明構造は、第1実施形態に示したような外針ハブ174の内腔の連通と遮断を切り替える弁体114(止血弁機構112)を備えた留置針組立体10だけでなく、本実施形態に示すような弁体をもたない留置針組立体170にも適用可能であり、弁体114を備えた留置針組立体10と同様の効果を得ることができる。
【0106】
なお、本実施形態の留置針組立体170の外針ハブ174は、止血弁機構を収容する必要がないことから、先端筒状部86の軸方向長さが短くされており、更なるコンパクト化が図られている。外針ハブ174は、先端筒状部86が短くされることによって、プロテクタ係止溝90,90の軸方向での位置が、第1実施形態の外針ハブ74よりも先端側に設定されている。
【0107】
図29には、本発明の第3実施形態としての留置針組立体を構成する外針ハブ180が示されている。本実施形態の外針ハブ180は、図示しない外針の基端部に固定されるハブ本体182と、ハブ本体182の内周面に固定される係止部材184とによって構成された2部品構造とされている。
【0108】
ハブ本体182は、全体として略円筒形状とされており、内周面に設けられた段差状部186よりも基端側が先端側よりも大径とされている。ハブ本体182の基端部分には、フランジ状部78の内周側に位置して内周面及び基端面に開口する切欠き188が形成されている。
【0109】
係止部材184は、全体として略円筒形状とされており、基端部には外周へ突出するフランジ状部190が設けられている。係止部材184は、外周面が軸方向で略一定の径寸法とされていると共に、内周面が先端側へ向けて小径となるテーパ面192とされており、先端へ向けて径方向で厚肉となっている。なお、係止部材184の外周面は、例えば、先端へ向けて内周又は外周へ傾斜するテーパ形状とされていてもよい。
【0110】
係止部材184がハブ本体182の内周へ基端側から挿入されて、ハブ本体182の内周面に係止部材184が固定されることにより、外針ハブ180がハブ本体182と係止部材184とによって構成されている。係止部材184は、ハブ本体182の内周面に対して、例えば、嵌め合わせや螺合によって非接着で固定されていてもよいが、接着剤等で接合してもよく、好適には超音波溶着や接着等の手段で固定される。本実施形態では、係止部材184の外周面の略全体がハブ本体182の内周面に対して接触状態で重ね合わされている。係止部材184のフランジ状部190は、ハブ本体182の切欠き188に差し入れられて重ね合わされており、それによって、ハブ本体182と係止部材184が軸方向で相互に位置決めされている。切欠き188は、ハブ本体182の基端に形成されているため、ハブ本体182の成形時に金型を引き抜き易く、金型を引き抜く際の応力による損傷が防止される。本実施形態において、切欠き188とフランジ状部190とは、超音波溶着により接合されている。なお、ハブ本体182と係止部材184とが超音波溶着によって相互に固着される場合には、ハブ本体182と係止部材184との重ね合わせ面(界面)が超音波の照射によって溶融して一体化することで固着されることから、ハブ本体182と係止部材184とを形成する樹脂材料は、溶融状態で相互に混ざり合う材質が選択される。
【0111】
外針ハブ180の内周面において、係止部材184の先端面は、略軸直角方向に広がる段差状とされており、全周にわたって連続する環状の係止部194とされている。従って、本実施形態では、外針ハブ180の係止部194が、係止部材184によって形成されている。外針ハブ180の内周面は、係止部194よりも基端側が先端側よりも小径とされており、針先プロテクタ等の図示しない安全部材を、係止部194に対して先端側から軸方向で係止させることが可能とされている。
【0112】
本実施形態の係止部材184は、先端へ向けて厚肉となっており、ハブ本体182の内周面から内周への突出高さ寸法が先端へ向けて大きくなっていることから、係止部184の基端開口の大きさを確保しながら、ハブ本体182からの係止部194の突出高さ寸法が大きく設定することが可能とされている。本実施形態の係止部194は、ハブ本体182の内周面から内周への突出高さ寸法hが、ハブ本体182の段差状部186の径方向高さ寸法Hよりも小さくされているが、段差状部186の径方向高さ寸法より大きくてもよい。
【0113】
このように、本実施形態に係る外針ハブ180は、全体が一部品で構成された前記実施形態の外針ハブ74,174とは異なり、独立して成形されたハブ本体182と係止部材184の2部品で構成されている。前記実施形態のプロテクタ係止溝90に相当する係止部194は、ハブ本体182に係止部材184を固定することによって形成されることから、ハブ本体182及び係止部材184の成形時には、係止部を設けるためのアンダーカットを回避することができる。それゆえ、脱型時にアンダーカットによる応力集中が生じることはなく、脱型時の損傷が防止されている。
【0114】
外針ハブ180における係止部194の軸方向での位置は、係止部材184の軸方向長さによって設定することができる。それゆえ、安全部材の係止部194に対する係止位置を簡単に且つ精度よく設定可能である。本実施形態では、ハブ本体182の基端面と係止部材184の基端面とが、軸直角方向に広がる同一平面上に位置しているが、例えば、係止部材184の基端面がハブ本体182の基端面よりも先端側に位置するようにしてもよい。例えば、切欠き188の軸方向寸法が、フランジ状部190の軸方向長さ寸法よりも大きくされることにより、係止部材184の基端面をハブ本体182の基端面よりも先端側に配置することができる。
【0115】
なお、本実施形態では、係止部材184の先端面によって係止部194を構成する場合を例示したが、例えば、図30に示す外針ハブ200のように、係止部材202に径方向の貫通孔204が形成されており、貫通孔204の壁内面によって係止部206を構成することもできる。この場合、ハブ本体182と係止部材202との軸回り方向(周方向)の相対位置を規制する回転位置規制部を設けることが望ましい。回転位置規制部は、例えば、ハブ本体182の内面と係止部材202の外面とに、凹所、切欠き、貫通孔等の少なくとも1つと、当該凹所等に差し入れられる突起との各一方を設けて、凹所等と突起との周方向での係止によって周方向の相対位置を規制する構造等が考えられる。
【0116】
また、例えば、図31に示す外針ハブ210のように、係止部材212の内周面に軸直角方向に広がる段差面214が設けられており、段差面214によって係止部216を構成することもできる。また、係止部材の内面に凹部又は凸部を設けて、当該凹部又は凸部によって係止部を構成することもできる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、外針ハブ74におけるゲート痕110の軸方向での位置は、特に限定されず、成形品である外針ハブ74の形状等を考慮して適宜に設定することができる。また、ウェルドライン108は、厳密に軸方向に延びている場合に限定されず、例えば傾斜しながら軸方向に延びていてもよい。
【0118】
また、ゲート痕110とウェルドライン108の形成数や配置は、ウェルドライン108が一対の係止凹部(プロテクタ係止溝90,90)を外れるように設定されていればよく、適宜に変更することが可能である。具体的には、例えば、図32に応力分布を示す外針ハブ220のように、外周面に2つのゲート痕110,110が形成されており、それらゲート痕110,110の位置から成形用金型のキャビティへ注入された溶融樹脂材料が、周方向に流れて相互に合流する位置で、それぞれウェルドライン108を形成するようにしてもよい。この場合には、ゲート痕110,110が上下両側に配置されて、上側のゲート痕110の位置から注入された溶融樹脂材料が外針ハブ220の上半分を形成し、下側のゲート痕110の位置から注入された溶融樹脂材料が外針ハブ220の下半分を形成するようにすれば、脱型時の応力が小さい左右両側にウェルドライン108,108を形成することができる。なお、ゲート痕110とウェルドライン108は、3つ以上が形成されていてもよい。
【0119】
外針ハブ74の成形時に樹脂材料が注入される注入ゲートの位置は、前記実施形態で示したように、ゲート痕110が外針ハブ74の外周面上に形成されるように設定されることが望ましく、それによって、ウェルドライン108の位置や軸方向に延びる形状等をコントロールし易くなる。しかしながら、注入ゲートの位置である外針ハブ74におけるゲート痕110の形成位置は、ウェルドライン108が一対の係止凹部を外れて位置するように設定されていれば特に限定されず、例えば、外針ハブ74の軸方向端面にも設定され得る。
【0120】
プロテクタ係止溝90は、例えば、外針ハブ74の内周面における左右方向に開口して形成されていてもよく、その場合に、ウェルドライン108は、プロテクタ係止溝90,90を周方向に外れるように、例えば上下両側に形成される。
【0121】
プロテクタ係止溝90の溝内面形状は、前記第1,第2実施形態の具体的な例によって限定的に解釈されるべきではない。即ち、外針ハブ74の縦断面におけるプロテクタ係止溝90の溝内面形状は、円弧状の湾曲形状に限定されず、例えば、平面による構成部分を含むU字状等の形状であってもよい。尤も、内型106の脱型性等を考慮すれば、プロテクタ係止溝90の溝内面の基端部分は、縦断面において基端側へ向けて内周へ傾斜するテーパ面とされていることが望ましい。また、外針ハブ74の横断面におけるプロテクタ係止溝90の溝内面形状は、例えば、平面による構成部分を含むU字状等の形状であってもよいし、全体が略一定の曲率とされた円弧形状とすることもできる。
【0122】
針先プロテクタ30の構造は、前記実施形態の具体的な説明によって限定的に解釈されるものではない。例えば、第1,第2側方カバー片52,68、第1,第2突出片54,70、第1,第2側方覆い片66,66は、何れも必須ではなく、省略することができる。また、例えば、第1,第2先端覆い片46,62の形状を変更することも可能であり、相互に接近する方向へ傾斜して広がる略平板形状等とすることもできる。
【0123】
第1,第2実施形態では、外針ハブ74に一対のプロテクタ係止溝90,90が設けられて、針先プロテクタ30の第1,第2保護片34,36がそれらプロテクタ係止溝90,90にそれぞれ係止される構造を例示した。しかしながら、例えば、針先プロテクタ30の針先保護状態への移行に際して、第1,第2保護片34,36の何れか一方だけが針先保護位置へ変位する場合等には、外針ハブ74にプロテクタ係止溝90が1つだけ設けられて、第1,第2保護片34,36の当該何れか一方だけがプロテクタ係止溝90に係止されるようにしてもよい。要するに、係止部(プロテクタ係止溝90)の数は、特に限定されず、1つだけが設けられていてもよいし、2つ以上の複数が設けられていてもよい。
【0124】
第3実施形態では、全周にわたって連続する係止部194を例示したが、係止部は周方向で部分的に設けられていてもよく、係止部の数は限定されない。周方向で部分的な係止部は、例えば、環状の基端部分から周方向で部分的に先端側へ延び出す先端部分を備えた係止部材を採用して、当該係止部材の先端面で係止部を構成したり、図30のように係止部材を貫通する窓状の貫通孔204によって係止部を構成したりすることで実現され得る。なお、係止部材の形状は筒状でなくともよく、例えば、ハブ本体182の内面において基端から先端側に向かって延びる溝状の凹部を設けて、当該凹部に非筒状(例えば湾曲板状等)の係止部材を差し入れて固定することで、ハブ本体182の内腔で構成された内部流路上に係止部を設けることもできる。
【0125】
前記実施形態では、安全部材の例として針先を保護する針先プロテクタ30を示したが、安全部材は、必ずしも針先プロテクタに限定されない。具体的には、例えば、特開2009-005997号公報に示されているような針先プロテクタを針先保護状態へ移行させるためのリング状の閉鎖部材を、安全部材を構成する一部材とみなすことも可能である。この場合には、当該閉鎖部材を外針ハブに対して軸方向で位置決め保持するための凹部が係止部とされる。
【符号の説明】
【0126】
10 留置針組立体(第1実施形態)
12 内針ユニット
14 外針ユニット
16 内針
18 内針ハブ
20 針先
22 接続部
24 プロテクタ回転制限部
26 周方向位置決め部
28 フィルタキャップ
29 フィルタ
30 針先プロテクタ
32 底部
34 第1保護片
36 第2保護片
37 挿通孔
38 薄肉部
39 突起
40 第1本体部
42 第1針先保護部
44 第1段差状部
46 第1先端覆い片
48 第1返り片
50 第1側方覆い片
52 第1側方カバー片
54 第1突出片
56 第2本体部
58 第2針先保護部
60 第2段差状部
62 第2先端覆い片
64 第2返り片
66 第2側方覆い片
68 第2側方カバー片
70 第2突出片
72 外針
74 外針ハブ
76 周壁
77 押込用突起
78 フランジ状部
80 位置決め溝
82 段差
84 カシメピン
86 先端筒状部
88 基端筒状部
90 プロテクタ係止溝(係止部)
92 逃げ部
94 ガイド溝
96 凹部
98 係止凸部
100 頂点
102 成形用金型
104 外型
106 内型
108 ウェルドライン
110 ゲート痕(注入痕)
112 止血弁機構
114 弁体
116 押し子ガイド
118 押し子
120 切込み
122 支持片
124 保持溝
126 筒状挿入部
128 切欠き
130 ガイド片
132 ガイド側平坦面
134 溝状凹部
136 抜止突部
138 端縁拡開部
140 凸部
142 挿入筒部
144 押込片
146 先細状先端部分
148 扁平状基端部分
150 押し子側平坦面
152 段差面
154 補強部
156 補強部
158 外部回路
160 オスコネクタ
170 留置針組立体(第2実施形態)
172 外針ユニット
174 外針ハブ
180 外針ハブ(第3実施形態)
182 ハブ本体
184 係止部材
186 段差状部
188 切欠き
190 フランジ状部
192 テーパ面
194 係止部
200 外針ハブ(別の一実施形態)
202 係止部材
204 貫通孔
206 係止部
210 外針ハブ(別の一実施形態)
212 係止部材
214 段差面
216 係止部
220 外針ハブ(別の一実施形態)
図1
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