(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125041
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】作業支援システム、方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B23P19/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033109
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】中田 朋貴
(72)【発明者】
【氏名】両角 亮
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(57)【要約】
【課題】作業環境の影響を受けることなく、適切にネジ止め作業の評価を行うこと。
【解決手段】作業支援システムは、製品の図面上に座標系を構築する座標系構築部12と、トルクドライバによるネジ止め作業において、トルクドライバの先端の座標系における座標を抽出し、抽出したトルクドライバの先端の座標に基づいてネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する識別部13と、ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとしてトルクドライバから受信する通信処理部15と、トルクドライバから受信したトルクデータ及び所定の評価条件に基づき、識別部で特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う評価部14と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ穴が設けられているベース部品にパーツをネジ止めするネジ止め作業を支援する作業支援システムであって、
製品の図面上に座標系を構築する座標系構築部と、
トルクドライバによるネジ止め作業において、撮像画像から前記トルクドライバの先端の前記座標系における座標を抽出し、抽出した前記トルクドライバの先端の座標に基づいて前記ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する識別部と、
前記ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとして前記トルクドライバから受信する通信処理部と、
前記トルクドライバから受信した前記トルクデータ及び所定の評価条件に基づき、前記識別部で特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う評価部と、
を備えた、
作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
前記トルクドライバは、複数のマーカーを備え、
前記識別部は、それぞれの前記マーカーと前記トルクドライバの先端との距離に基づいて、前記トルクドライバの先端の座標を抽出する、
作業支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の作業支援システムにおいて、
前記トルクドライバは、アームを介してドライバ本体から離間した位置に設置された前記マークを備えている、
作業支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
前記座標系構築部は、前記図面上の複数のネジ穴を基準ネジ穴として選択し、選択した前記基準ネジ穴の位置に基づいて前記座標系を構築する、
作業支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の作業支援システムにおいて、
前記座標系構築部は、前記図面上の四隅のネジ穴を前記基準ネジ穴として選択する、
作業支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
前記評価部は、各ネジ穴に対して所定のトルクでネジ止め作業が行われたかどうかを前記評価条件としてネジ止め作業の評価を行う、
作業支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
ネジ止め作業中のパーツに対する全てのネジ止めが完了する前に次のパーツのネジ止め作業が行われた場合、エラーを通知する、
作業支援システム。
【請求項8】
ネジ穴が設けられているベース部品にパーツをネジ止めするネジ止め作業を支援する方法であって、
コンピュータが、
製品の図面上に座標系を構築する処理と、
トルクドライバによるネジ止め作業において、撮像画像から前記トルクドライバの先端の前記座標系における座標を抽出する処理と、
抽出した前記トルクドライバの先端の座標に基づいて前記ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する処理と、
前記ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとして前記トルクドライバから受信する処理と、
前記トルクドライバから受信した前記トルクデータ及び所定の評価条件に基づき、特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う処理と、
を実行する、
作業支援方法。
【請求項9】
ネジ穴が設けられているベース部品にパーツをネジ止めするネジ止め作業を支援するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに対し、
製品の図面上に座標系を構築する処理と、
トルクドライバによるネジ止め作業において、撮像画像から前記トルクドライバの先端の前記座標系における座標を抽出する処理と、
抽出した前記トルクドライバの先端の座標に基づいて前記ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する処理と、
前記ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとして前記トルクドライバから受信する処理と、
前記トルクドライバから受信した前記トルクデータ及び所定の評価条件に基づき、特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う処理と、
を実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援システム、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
集積型ガスボックスの組立工程では、ベース板金の上にベースブロック等のパーツをネジ止めする工程や、当該パーツの上にさらに上部機器をネジ止めする工程がある。集積型ガスボックスには多くのネジが使用されるが、近年、集積型ガスボックスは小型化しており、ネジの締め忘れなどの締結の不具合が起きやすくなっている。また、集積型ガスボックスは様々なバージョンのものが作製されるが、コストの抑制等のために部品は共通化され、異なる部品であってもベース板金上の同じ場所に取り付けられることがあり、このようなこともネジの締め忘れを招く原因になっている。
【0003】
特許文献1には、集積型ガスボックスの組立工程のうち、ベース部品にパーツをネジ止めする作業において、ネジ止めが必要な全てのネジ穴に適切にネジ止めが行われたか否かを評価する作業支援システム等が開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、「ベース板金には、ネジ穴の深さ方向に対して略直角な方向、例えば上方から照明の光が照射され、この状態で作業が行われる。これにより、ベース板金を撮影した撮影画像からネジ穴を識別する際、ネジ穴が周辺に比して暗くなり、ネジ穴と周辺とのコントラストが強調されてネジ穴を識別しやすくなる」旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法でネジ穴を識別する場合、ベース板金上に下部ブロックを取り付ける際の作業を管理することはできるが、下部ブロック上に流体制御機器を取り付ける場合が想定されておらず、この場合、下部ブロックの影の影響でネジ穴を識別することができない場合があった。このため、下部ブロック上に流体制御機器を取り付ける際に、ネジ締結の判定を行うことができない場合があった。
【0007】
また、作業が必要なネジ穴の座標を、撮像画像を用いて実際のベース板金のネジ穴から算出しているため、ブロック等の機器の配置とネジ穴の配置とが一致していなければならない。しかしながら、実際には、ベース板金上で全てのネジ穴に上部機器を取り付けない場合もあるので、このような場合に対応ができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、作業環境の影響を受けることなく、適切にネジ止め作業の評価を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る作業支援システムは、ネジ穴が設けられているベース部品にパーツをネジ止めするネジ止め作業を支援する作業支援システムである。作業支援システムは、製品の図面上に座標系を構築する座標系構築部と、トルクドライバによるネジ止め作業において、前記トルクドライバの先端の座標系における座標を抽出し、抽出した前記トルクドライバの先端の座標に基づいて前記ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する識別部と、前記ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとして前記トルクドライバから受信する通信処理部と、前記トルクドライバから受信した前記トルクデータ及び所定の評価条件に基づき、前記識別部で特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う評価部と、を備えている。
【0010】
また、前記トルクドライバは、複数のマーカーを備え、前記識別部は、それぞれの前記マーカーと前記トルクドライバの先端との距離に基づいて、前記トルクドライバの先端の座標を抽出するものとしてもよい。
【0011】
また、前記トルクドライバは、アームを介してドライバ本体から離間した位置に設置された前記マークを備えているものとしてもよい。
【0012】
また、前記座標系構築部は、前記図面上の複数のネジを基準ネジとして選択し、選択した前記基準ネジの位置に基づいて前記座標系を構築するものとしてもよい。
【0013】
また、前記座標系構築部は、前記図面の四隅のネジを前記基準ネジとして選択するものとしてもよい。
【0014】
また、前記評価部は、各ネジ穴に対して所定のトルクでネジ止め作業が行われたかどうかを前記評価条件としてネジ止め作業の評価を行うものとしてもよい。
【0015】
また、ネジ止め作業中のパーツに対する全てのネジ止めが完了する前に次のパーツのネジ止め作業が行われた場合、エラーを通知するものとしてもよい。
【0016】
また、本発明の別の観点に係る作業支援方法は、ネジ穴が設けられているベース部品にパーツをネジ止めするネジ止め作業を支援する方法であって、コンピュータが、製品の図面上に座標系を構築する処理と、トルクドライバによるネジ止め作業において撮像画像から前記トルクドライバの先端の前記座標系における座標を抽出する処理と、抽出した前記トルクドライバの先端の座標に基づいて前記ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する処理と、前記ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとして前記トルクドライバから受信する処理と、前記トルクドライバから受信した前記トルクデータ及び所定の評価条件に基づき、特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う処理と、を実行する。
【0017】
また、本発明のさらに別の観点に係るコンピュータプログラムは、ネジ穴が設けられているベース部品にパーツをネジ止めするネジ止め作業を支援するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに対し、製品の図面上に座標系を構築する処理と、トルクドライバによるネジ止め作業において、前記トルクドライバの先端の前記座標系における座標を抽出する処理と、抽出した前記トルクドライバの先端の座標に基づいて前記ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定する処理と、前記ネジ止め作業中にネジに掛かったトルクをトルクデータとして前記トルクドライバから受信する処理と、前記トルクドライバから受信した前記トルクデータ及び所定の評価条件に基づき、特定されたネジ穴に対するネジ止め作業の評価を行う処理と、を実行させる。なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業環境の影響を受けることなく、適切にネジ止め作業の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る作業支援システムの機能を示した機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、作業対象の集積型ガスボックスのベース板金を示した平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、ベース板金にベースブロックをネジ止めする様子を示した斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、ベースブロックがネジ止めされたベース板金を示した平面図である。
【
図5】実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、ベース部品情報記憶部に記憶されるデータの一例を示した図である。
【
図6】実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、作業情報記憶部に記憶されるデータの一例を示した図である。
【
図7】実施の形態1に係るトルクドライバの外観構成を例示する図である。
【
図8】実施の形態1に係る作業支援システムによる処理の流れを示したシーケンス図である。
【
図9】実施の形態1に係るネジ止め作業時にモニタに表示される画面を例示する図である。
【
図10】実施の形態1に係るネジ止め作業時にモニタに表示される他の画面を例示する図である。
【
図11】実施の形態2に係るネジ止め作業時にモニタに表示される画面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態に係る作業支援システムについて説明する。
実施の形態1に係る作業支援システムは、集積型ガスボックスの組立工程において、ベース板金上にベースブロックをネジ止めする作業を支援するシステムである。
図1は、本発明の実施の形態1に係る作業支援システムの機能を示した機能ブロック図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る作業支援システム1は、ネットワークNWを介してトルクドライバ2と通信可能に構成されている。作業支援システム1は、トルクドライバ2からネジ止め時のトルクデータを取得し、このトルクデータに基づいてネジ止め作業を評価する。
【0021】
ここでは、まず、集積型ガスボックスの組立工程を構成するベースブロックのネジ止め作業の概略について、
図2-
図4を参照して説明する。
図2は、実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、作業対象の集積型ガスボックスのベース板金を示した平面図である。
図3は、実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、ベース板金にベースブロックをネジ止めする様子を示した斜視図である。
図4は、実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、ベースブロックがネジ止めされたベース板金を示した平面図である。
【0022】
集積型ガスボックスは、ベース部品であるベース板金3上に、パーツの一つであるベースブロック31を複数ネジ止めし、その上に流体制御機器などのパーツをネジ止めして作製される。なお、ベースブロック31は図示しない流路を持ち、複数の流体制御機器同士の流路をつなぐ役割をする。
【0023】
図2に示されるように、ベース板金3はベースブロック31やその他の所定のパーツがネジ止めされる個所に、複数の円形のネジ穴3aが設けられた板金である。このベース板金3にベースブロック31等のパーツをネジ止めする作業は、ベース板金3を壁に立てかけたり、上方から吊るしたり、あるいは所定の支持台上に支持したりすることにより、ベース板金3を縦にした状態、即ち板面を鉛直方向に略沿わせた状態に固定して行われる。なお、ネジ穴3aとは、貫通孔と不貫通穴の両方を総称するものとする。また、ベース板金3を縦にせずに、ベース板金3を床面と略平行に配置して作業を行うこともできる。
【0024】
ベース板金3をこのような状態に維持しながら、
図3に示されるように、作業者はベース板金3の所定の位置にベースブロック31を押し付け、ベースブロック31に設けられているネジ穴31aを介してベース板金3のネジ穴3aにネジ3bを螺入させる。ベース板金3の所定のネジ穴3aにベースブロック31がネジ止めされると、
図4に示される状態となり、ネジ止め作業が終了となる。なお、
図2-
図4では、2本のネジで取り付けられるブロックが例示されているが、例えば4本や6本等、より多くのネジで取り付けられる場合もある。
【0025】
なお、ベース板金3には、適宜、ベースブロック31以外のパーツもネジ止めされる場合もあるが、以下の説明では、パーツの一つとして、ベースブロック31がベース板金3にネジ止めされる場合について説明する。
【0026】
●作業支援システム1
作業支援システム1は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、といったメモリ、CPUが実行するコンピュータプログラム等によって実現される。これにより、
図1に示されるように、撮影部11、座標系構築部12、識別部13、評価部14、通信処理部15、ベース部品情報記憶部1A、作業情報記憶部1B、製品図面記憶部1C、トルクドライバ情報記憶部1D等からなる機能ブロックが構成される。また、作業支援システム1には、モニタ16が接続されている。
【0027】
作業支援システム1は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、IrDA、あるいはZigbee(登録商標)といった無線によるネットワークNWを介してトルクドライバ2と通信可能に構成されている。なお、本例では、作業支援システム1とトルクドライバ2を通信可能とするネットワークNWを無線によって構成し、トルクドライバ2を取り回しやすくしている。ただし、ネットワークNWは、これに限らず、有線接続によって構成してもよい。
【0028】
撮影部11は、ベース板金3やネジ止め作業中のトルクドライバ2等を被写体として撮影を実行する処理部である。この撮影部11は、被写体像を撮像素子の受光面に結像させるレンズ、レンズにより結像した被写体像を撮像して画像信号を制御部に出力するCMOSイメージセンサ等の撮像素子、撮像素子から取得した画像信号から撮影画像を生成する制御部等によって構成され、撮影対象の撮影画像を生成することができる。また、撮影部11は、被写体を所定のフレームレートで撮影することもできる。なお、撮影部11は複数設けられてもよく、被写体としてのベース板金3を水平方向と鉛直方向から撮影する等して、トルクドライバ2の先端や先端の座標等の抽出精度を高めることができる。
【0029】
座標系構築部12は、作製される製品の図面上に座標系を構築する。座標系構築部12は、例えば、図面上の四隅のネジ穴を基準ネジ穴として選択し、選択した基準ネジ穴の位置に基づき図面上の座標系を構築する。
【0030】
識別部13は、トルクドライバ2によるネジ止め作業時において、撮影画像からトルクドライバ2の先端の図面上の座標系における座標を抽出する。具体的には、識別部13は、トルクドライバ2の複数のマーカー2Bの座標、及び各マーカー2Bとトルクドライバ2の先端との距離に基づき、トルクドライバ2の先端の座標を抽出する。より具体的には、識別部13は、撮影画像に対してハフ変換(Hough transform)や学習済みのニューラルネットワークを用いて、トルクドライバ2の複数のマーカー2Bを抽出し、これらのマーカー2Bの位置、及び各マーカー2Bとトルクドライバ2の先端との距離に基づき、撮像画像におけるトルクドライバ2の位置を抽出する。識別部13は、基準ネジ穴の図面上の座標系における座標と撮像画像における基準ネジ穴の位置との位置合わせを各基準ネジ穴に対して行い、図面上の座標系における各基準ネジ穴の座標と、撮像画像上における各基準ネジの位置とを対応させた位置合わせ情報を生成する。また、識別部13は、ネジ止め作業中、撮像画像上のトルクドライバ2の先端を抽出し、抽出した先端及び位置合わせ情報に基づき、ネジ止め作業が行われたネジ穴31aの図面上の座標を抽出する。なお、トルクドライバ2のマーカー2Bについては、後で詳しく説明する。
【0031】
評価部14は、トルクドライバ2から受信したネジ止め作業時のトルクデータに基づき、ベーブブロック31の各ネジ穴31aに対して行われたネジ止め作業の評価を行う。ネジ止めの評価は、例えば、ネジ穴31aごとに所定のトルクでネジ止めが行われた回数(例えば2回)によって判定されてもよい。
【0032】
この結果、評価部14は、ネジ止めされるべき全てのネジ穴31aに所定の回数のネジ止めが行われたと判定すると、適切なネジ止め作業が行われたと評価する。一方、ネジ止め対象のネジ穴31aであるにも関わらず、所定の回数のネジ止めが行われていない場合、評価部14は、ネジ止め作業が完了していないと評価する。
【0033】
なお、所定のトルクが掛かっているか否かについても、評価項目としてもよい。この場合、評価部14は、掛かったトルクが不十分である場合や、トルクが掛かり過ぎている場合についても、適切にネジ止めされていないと判定してもよい。
【0034】
また、評価部14は、ネジ止め作業の進捗状況を算出し、モニタ16に表示させてもよい。進捗状況は、例えば、ネジ止め対象のネジ穴31aの個数に対するネジ止め作業が完了したネジ穴31aの個数の割合で規定することができる。また、進捗状況と併せて、あるいは進捗状況に代えてネジ止め対象のネジ穴31aの残数がモニタ16に表示されてもよい。
【0035】
通信処理部15は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、IrDA、あるいはZigbee(登録商標)といった無線によるネットワークNWを介したトルクドライバ2との情報を送受信可能に構成されている。
【0036】
ベース部品情報記憶部1Aは、ベース部品であるベース板金3の情報を記憶する記憶部である。
図5は、実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、ベース部品情報記憶部に記憶されるデータの一例を示した図である。ベース部品情報記憶部1Aには、例えば、
図5に示されるように、座標系を構築する際に選択した各基準ネジ穴の図面上の座標が記憶されている。また、ベース部品情報記憶部1Aには、図面上の座標系における各基準ネジ穴の座標と、撮像画像上の各基準ネジの位置とを対応させた位置合わせ情報を記憶してもよい。また、ベース部品情報記憶部1Aには、図面上の座標系におけるベース板金3の各ネジ穴3aの座標、ベースブロック31の各ネジ穴31aの座標が記憶されてもよい。
【0037】
作業情報記憶部1Bは、トルクドライバ2によってベース板金3にベースブロック31や後述する上位ブロック33(例えば流体制御機器等)がネジ止めされる作業に関する情報を記憶する記憶部である。
図6は、実施の形態1に係る作業支援システムにおいて、作業情報記憶部に記憶されるデータの一例を示した図である。作業情報記憶部1Bには、例えば、
図6に示されるように、撮像画像上の座標系におけるトルクドライバ2の先端の座標と、当該座標におけるトルクデータが関連付けて作業情報として記憶されている。
【0038】
製品図面記憶部1Cは、ネジ止め作業により作製する製品の図面データを記憶する。図面データは、例えば、階層化された2D図面のデータ、3D図面のデータである。ここで、階層化された図面とは、ベースブロック取付前の状態(すなわちベース板金のみ)、ベースブロック取付後の状態(すなわち上位ブロック取付前)、上位ブロック取付後の状態のように、組立時にネジ穴位置や各部材の位置がわかりやすいように、階層で分けた図面のことをいう。これらの図面データは、作業開始前に基準ネジ穴を選択して図面上の座標系を構築するために用いられる。なお、図面上の座標系は、階層化された図面間で共通でもよいし、図面ごとに異なっていてもよい。また、図面データは、ネジ止め作業の進捗状況、ネジ止め作業の評価結果の表示等に用いられてもよい。
【0039】
モニタ16は、例えば、ネジ止め作業により作製する製品の2D図面、3D図面、ネジ止め作業の進捗状況、ネジ止め作業の評価結果等、ネジ止め作業に関わる各種画像を表示する。また、モニタ16は、ネジ止め作業時におけるエラー表示等、作業者に対する情報提供を行うための画像を表示する。
【0040】
●トルクドライバ2
トルクドライバ2は、ベース板金3にベースブロック31をネジ止めする際に使用される工具である。トルクドライバ2は、ネジ止めの際に掛かったトルクを検出及び測定し、これを作業支援システム1に供給することができる。トルクドライバ2は、
図1に示すように、計測部21及び通信処理部22を含む機能部を構成する。
【0041】
なお、トルクドライバ2は、ネジ止め作業の評価に必要なトルクを計測する計測部21及び通信処理部22からなる機能部とは別に、ネジ止めに必要な構造あるいは機能として、ネジ3b等の締結部品の規格に応じたビット、所定のトルクに達した際にビットを空転させるためのラチェット機構などを備えている。
【0042】
計測部21は、トルクを検出すると共に、その大きさを計測することのできるトルクセンサによって実現される。計測部21は、ベースブロック31のネジ穴31aにネジ止めを行った際に要したトルクを計測し、トルクの計測値を含むトルクデータを生成する。なお、トルクセンサは、例えば、ビットにモータの出力を伝達する出力軸にトルクが加わった際に、当該出力軸に発生する歪みを検出したり、当該歪みの大きさを計測したりすることで、ネジ止め作業時のトルクの検出や計測を可能としている。
【0043】
通信処理部22は、作業支援システム1とネットワークNWを介した通信を可能とする機能部である。この通信処理部22により、トルクドライバ2から作業支援システム1に対し、計測部21によって生成されたトルクデータを送信することができる。
【0044】
なお、トルクドライバ2はこれらの機能部のほかに、過大なトルクを制限するリミッタや、ネジ止め作業中にかけているトルクを作業者に認識可能とするディスプレイなどを備えていてもよい。
【0045】
図7は、実施の形態1に係るトルクドライバの外観構成を例示する図である。
図7に示すように、トルクドライバ2は、ネジ止めを行うための工具を含むドライバ本体2A、トルクドライバ2の先端の座標を検出するためのマーカー2B、計測部21及び通信処理部22を含む機能部を収容する収容部2D、グリップ部2Eを備えている。
図7に示すように、マーカー2Bは複数設けられ、これらのマーカー2Bは、アーム2Cを介して、ドライバ本体2Aから離間した位置に設置されている。
【0046】
また、これらのマーカー2Bは、トルクドライバ2の先端との距離がそれぞれ異なるように設置されている。これにより、複数のマーカー2Bの位置と、これらのマーカー2Bとトルクドライバ2の先端とのそれぞれの距離に基づいて、トルクドライバ2の先端を抽出することができるようになっている。
【0047】
なお、
図7には、マーカー2Bを6個備えたトルクドライバ2の例が示されているが、マーカー2Bの個数はこれに限定されない。また、マーカー2Bの形状は、
図7のような丸形に限定されないし、マーカー2Bごとに異なってもよい。また、一部のマーカー2Bは、ドライバ本体2Aに接した状態で設けられてもよい。また、アーム2Cの形状は
図7の例に限定されない。
【0048】
●ネジ止め作業の流れ
次に、実施の形態1に係る作業支援システム1による処理の流れについて、
図8を参照して説明する。
図8は、実施の形態1に係る作業支援システムによる処理の流れを示したシーケンス図である。
【0049】
ステップS101は、ネジ止め作業前の事前準備として行われる。ステップS101において、作業者は、アプリケーションを起動し、作製する製品の図面(例えば3D図面)をモニタ16に表示し、図面上の座標系を構築するための基準ネジ穴を複数選択する。基準ネジ穴として、例えば図面上の四隅のネジ穴3aが選択されてもよい。
【0050】
座標系構築部12は、各基準ネジ穴の位置に基づいて図面上の座標系を構築する。そして、座標系構築部12は、基準ネジ穴を含む図面上の各ネジ穴3aに対し、構築した座標系における座標をそれぞれ算出する。座標系構築部12は、基準ネジ穴を含む各ネジと図面上の座標系における座標とを対応させた座標情報を含む座標ファイルを作成する。作成された座標ファイルは、例えば、ベース部品情報記憶部1A等に保存されてもよい。
【0051】
ステップS102では、作業現場において、作業支援システム1にトルクドライバ2を認識させる。まず、撮影部11によりトルクドライバ2が撮像される。撮像画像上における各マーカー2Bとトルクドライバ2の先端との距離が抽出される。ここでは、すべてのマーカー2Bとトルクドライバ2の先端との距離が抽出されるよう、撮像が複数回行われてもよい。そして、撮像画像上における抽出された各マーカー2Bとトルクドライバ2の先端との距離と、実際の距離とを対応させた、先端位置識別情報が生成される。生成された先端位置識別情報は、トルクドライバ情報記憶部1Dに記憶される。
【0052】
ステップS103では、図面上のネジ穴と撮像画像上のネジ穴との位置合わせが行われる。作業者は、ネジ止め位置を検出するアプリケーションを起動し、作製する製品の図面(例えば所定の位置にベースブロックが配置された2D図面)をモニタ16に表示させる。この図面は、図面上の座標系を構築する際に使用された図面と対応する図面であって、ここでは、作製する製品の3D図面に対応する2D図面となっている。
【0053】
図9は、実施の形態1に係るネジ止め作業時にモニタに表示される画面を例示する図である。
図9には、ベース板金3にベースブロック31を取り付ける場合の画面が示されている。画面左側の破線で囲んだ箇所は、図面上のベース板金3の部分拡大図である。この図に示すように、図面には実際の製品に対応するベース板金3、ネジ穴3aがそれぞれ示されている。
【0054】
画面右側の破線で囲んだ箇所は、図面上のベースブロックの部分拡大図である。この図に示すように、図面には実際の製品に対応するベースブロック31、ネジ穴31aがそれぞれ示されている。
【0055】
作業者は、位置合わせを行うベースブロック31のネジ穴31aを位置合わせ用ネジ穴として指定し、ベース板金3上の所定の位置にベースブロック31を配置する。そして、作業者は、位置合わせ用ネジ穴にトルクドライバ2の先端を合わせる。撮影部11は、この状態でトルクドライバ2を撮像する。識別部13は、撮像画像から各マーカー2Bを抽出すると、抽出したマーカーの位置及び先端位置識別情報に基づき、撮像画像上のトルクドライバ2の先端の位置を抽出する。識別部13は、抽出した先端の位置を、位置合わせ用ネジ穴の位置として認識する。そして、識別部13は、位置合わせ用ネジ穴31aの座標と、抽出したトルクドライバ2の先端の位置とを対応付ける。識別部13は、このような処理を複数の位置合わせ用ネジ穴に対し順次行うことで、図面上の座標系における位置合わせ用ネジ穴の座標と、撮像画像上のトルクドライバ2の先端の位置とを対応させた位置合わせ情報を生成する。なお、位置合わせ用ネジ穴は、1個のみでもよい。このように、図面上の座標と、撮像画像の位置とを対応させることができる。
【0056】
ステップS104では、ステップS103において作成された位置合わせ情報が適切かどうか判定される。具体的には、識別部13は、撮像画像から任意のネジ穴31aに配置されたトルクドライバ2の先端を抽出し、撮像画像上のトルクドライバ2の先端の位置、及び位置合わせ情報に基づき、撮像画像から抽出したトルクドライバ2の先端の図面上の座標系の座標を抽出する。そして、評価部14は、識別部13で抽出されたトルクドライバ2の先端の座標と、この任意のネジ穴31aの図面上の座標とを比較し、位置合わせ情報が適切かどうか判定する。
【0057】
判定条件として、例えば、抽出したトルクドライバ2の先端の座標と図面上の座標との差分が所定の閾値以下であれば、位置合わせ情報は適切であると判断され(Yes)、ステップS105に移行する。一方、抽出したトルクドライバ2の先端の座標と図面上の座標との差分が所定の閾値より大きければ、位置合わせ情報は適切でないと判断され(No)、位置合わせ情報が再度生成される(ステップS103)。所定の閾値は、例えばベース板金3のネジ穴3aの間隔やベースブロック31のネジ穴31aの間隔に基づいて規定してもよい。なお、ステップS104は、必須の工程ではなく、必要に応じて適宜省略してもよい。
【0058】
図面上の座標系と撮像画像との位置合わせが完了すると、撮影部11によるネジ止め作業の撮影が開始され(ステップS105)、作業者はベース板金3にベースブロック31をネジ止めする作業を開始する(ステップS106)。
【0059】
作業者によるネジ止め作業が開始されると、作業支援システム1は、撮影部11によってトルクドライバ2によるネジ止め作業を撮影しながら、識別部13によって撮影画像中のトルクドライバ2の先端の座標を抽出する処理を行う(ステップS107)。この処理は、ステップS104と同様である。
【0060】
一方、トルクドライバ2はネジ止めに要したトルクを計測部21によって計測し、計測値をトルクデータとして作業支援システム1へ送信する(ステップS108)。
【0061】
ステップS109では、受信したトルクデータ、及び所定の評価条件に基づき、ネジ止めされたネジ穴31aに対する評価が行われる。評価条件は特に制限されないが、例えば、ネジ穴31aに対して所定のトルクでネジ止めが行われたかどうかを評価条件とする。トルクに関する評価条件は、例えば、計測されたトルクが所定の範囲内であるかどうかである。
【0062】
計測されたトルクが所定の範囲内である場合(Yes)、ステップS110に移行する。ステップS110では、作業支援システム1は、ネジ止め評価をパスしたトルクデータを、このトルクデータを受信したときのトルクドライバ2の先端の座標と関連付けて、これらを作業情報として作業情報記憶部1Bに記憶させる。
【0063】
一方、計測されたトルクが所定の範囲外である場合(No)、トルクデータは作業情報記憶部1Bに記憶されず、ステップS107-S109の処理が再度実行される。また、このとき、モニタ16に表示された図面の対応するネジ穴31aの色の変更や点滅等により、このネジ穴31aに対するネジ止め作業が適切に行われなかったことを作業者に通知する。
【0064】
ステップS111では、ネジ止め作業が適切な順序で行われたかどうかが判定される。一般的に、複数のネジを用いてベースブロック31等のパーツを取り付ける場合、ネジ止め作業を行うネジ穴31aを順次切り替えながら、同一のネジ穴31aに対して複数回(例えば2回)のネジ止め作業が行われる。このため、ステップS111では、識別部13は、例えば、作業情報記憶部1Bに記憶された作業情報を参照し、同一のネジ穴31aに対するネジ止め作業が連続して行われていないかどうかを判定する。
【0065】
同一のネジ穴31aに対するネジ止め作業が連続して行われたと判定された場合(No)、ステップS112に移行し、モニタ16にエラー表示を行い、作業者に対し、同一のネジ穴31aに対するネジ止め作業が連続して行われたことをエラー通知する。
【0066】
これに対し、同一のネジ穴31aに対するネジ止め作業が連続して行われなかったと判定された場合(Yes)、ステップS113へ移行する。また、このとき、同一のネジ穴31aに対して複数回のネジ止め作業が行われた場合、例えば、モニタ16に表示された図面の対応するネジ穴31aの色を変更したり点滅させたりする等、このネジ穴31aに対するネジ止め作業が完了したことを作業者に通知する。例えば、
図9の右側の部分拡大図では、左側のネジ穴31aに対するネジ止め作業が完了し、右側のネジ穴31aに対するネジ止め作業が完了していない状態が示されている。
【0067】
なお、ステップS111では、ネジ止め作業の順序に代えて、同一のネジ穴31aに対して行われたネジ止め作業の回数を判定してもよい。この場合、同一のネジ穴31aに対するネジ止め作業が所定の回数に達していない場合(No)、モニタ16でネジ止め回数が不足していることを作業者に通知してもよい(ステップS112)。一方、同一のネジ穴31aに対するネジ止め作業が所定の回数行われた場合(Yes)、モニタ16に表示された図面の対応するネジ穴31aの色を変更したり点滅させたりする等、このネジ穴31aに対するネジ止め作業が完了したことを作業者に通知してもよい(
図9を参照)。
【0068】
また、トルクデータに基づき、ネジに適切なトルクが掛けられているかどうかについても、評価条件に加えてもよい。これにより、例えばトルクが足りない状態でネジ止めが行われたネジを検出することが可能となる。
【0069】
ステップS113では、作業中のベースブロック31(パーツ)に対する全てのネジ止めが行われた後、次のブロックのネジ止めが行われたかどうかが判定される。評価部14は、ネジ止め作業中のブロックに対する全てのネジ止めが行われる前に、次のブロックのネジ止めが行われたと判定した場合(No)、モニタ16にエラー表示を行い、作業者に対し、作業中のブロックに対するネジ止めが完了していないことをエラー通知する(ステップS112)。このとき、モニタ16に表示された図面では、作業中のベースブロック31の一部のネジ穴31aは、ネジ止めが完了したことを示す表示(色や点滅等)に更新されていない。これにより、作業者は、モニタ16の表示を見ることで、ネジ止めが完了していないネジ穴31aを確認することができる。そして、ステップS107-S111により、ネジ止めが完了していないネジ穴31aに対するネジ止めを行う。
【0070】
一方、評価部14が、作業中のベースブロック31に対する全てのネジ止めが行われた後、次のベースブロック31のネジ止めが行われたと判定した場合(Yes)、ステップS114に移行する。
【0071】
ステップS114では、評価部14は、ネジ止め作業の対象となっているすべてのネジ穴31aに対するネジ止め作業が完了したかどうかを判定する。ネジ止め作業が未実施のネジ穴31aが残っている場合(No)、ステップS107-S113が再度行われる。なお、図面の各ネジ穴31aの色表示等だけでなく、ネジ止め作業が行われていないネジ穴31aの個数(ネジ止めが行われていない箇所の数)や割合等の進捗状況を示す情報がモニタ16に表示されてもよい。
【0072】
一方、ネジ止め作業の対象となっているすべてのネジ穴31aに対するネジ止め作業が完了している場合(Yes)、ネジ止め作業は完了する。
図9の例では、ベース板金3に対するすべてのベースブロック31の取付作業が完了したことになる。なお、この場合、ネジ止め作業が完了したことを示す通知がモニタ16に表示されてもよい(ステップS115)。
【0073】
以上の実施の形態1に係る作業支援システム1によれば、集積型ガスボックスの組立工程のうち、ベース板金3にベースブロック31をネジ止めする作業において、ネジ止めが必要な全てのネジ穴31aに対して適切にネジ止め作業が行われたか否かを評価することができる。
【0074】
なお、使用が予定されていないベース板金3のネジ穴3aについてもネジ止めされているかどうかを判別し、使用が予定されていないベース板金3のネジ穴3aにネジ止めがされた場合には、これを不適切なネジ止め作業であると評価することができる工程が設けられてもよい。この場合、図面との不一致が生じるので、図面との不一致が生じていることをモニタ16にエラー表示するようにしてもよい。
【0075】
図10は、実施の形態1に係るネジ止め作業時にモニタに表示される他の画面を例示する図である。
図10には、ネジ止め対象のネジ穴31aが強調して表示されている。なお、この表示を用いる場合、ネジ止め作業が完了したネジ穴31aについては、強調表示を消去するようにしてもよいし、色が変更されてもよい。これにより、残りのネジ穴31aのみが強調して表示される、あるいは色が変更されていないため、ネジ止め作業の対象となっているネジ穴31aのうち残りのネジ穴31aを容易に認識することができる。
【0076】
また、以上の実施の形態1に係る作業支援システム1は、サーバ等の一つの装置として構成することもできるし、各機能部を適宜に分散して構成することも可能である。例えば、作業支援システム1が備えた撮影部11を定点カメラによって構成すると共に、他の機能部を備えたシステムと所定のネットワークを介して接続するようにすることができる。
【0077】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、ネジ止め作業を行っているトルクドライバ2の先端の座標を撮像画像から抽出し、抽出した座標からネジ止め作業が行われた図面上のネジ穴31aを特定することができる。そして、特定されたネジ穴31aに対するネジ止め作業の評価が行われる。この構成によれば、例えば、撮像画像からベース板金に形成されたネジ穴を抽出できなくても、ネジ止め作業が行われたネジ穴を特定することができるので、作業環境の影響を受けることなく、適切にネジ止め作業の評価を行うことが可能となる。
【0078】
従来は、例えば、光の反射や背景色等の作業環境によっては、画像処理においてマーカーの誤認識やマーカーを認識することができず、作業完了位置を正確に検出することができない場合があった。しかし、本実施の形態によれば、トルクドライバ2は、アーム2Cを介してドライバ本体2Aから離間した位置に設置された複数のマーカー2Bを備え、それぞれのマーカー2Bとトルクドライバ2の先端との距離に基づいて、トルクドライバ2の先端の座標が抽出される。この構成によれば、画像処理によりマーカーを抽出すれば、トルクドライバ2の先端の座標の抽出精度を向上させることができ、ひいてはネジ止め作業が行われたネジ穴31aの抽出精度を向上させることが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、図面上の四隅のネジを基準ネジとして選択する座標系構築部12は、図面上の複数のネジを基準ネジとして選択し、選択した基準ネジの位置に基づいて第1座標系を構築する。この構成によれば、図面の全域を用いて座標系を構築することができるので、局所的な領域で構築した座標系を全域に適用するより、全域において座標系の精度を向上させることができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、ネジ止め作業中のパーツに対する全てのネジ止めが行われる前に次のパーツのネジ止めが行われた場合、エラーを通知する。この構成によれば、作業者によるケアレスミスをエラー通知によりサポートすることができるので、正しい順序でのネジ止め作業が可能となる。
【0081】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、ベースブロック31に上位ブロック33(例えば流体制御機器等)を取り付ける場合について説明する。なお、以下では、実施の形態1と異なる箇所について説明し、実施の形態1と重複する箇所の説明は適宜省略する。
【0082】
図11は、実施の形態2に係るネジ止め作業時にモニタに表示される画面を例示する図である。
図11に示すように、本実施の形態では、階層化された図面のうち、上位ブロック33取付後の状態を示す図面データが用いられる。このとき、
図8のステップS101では、実施の形態1で構築した図面上の座標系をそのまま利用してもよいし、
図9や
図11に示す図面に基づいて、図面上の新たな座標系を構築してもよい。あるいは、ステップS104において位置合わせ情報が適切でないと判定された場合に、新たな座標系を構築してもよい。
【0083】
図11では、上位ブロック33に4箇所のネジ穴33aが設けられている場合が例示されているが、上位ブロック33のサイズや形状に応じて、ネジ穴33aの個数や間隔等が異なる場合もあり得る。
図11の部分拡大図には、上側の2つのネジ穴33aに対するネジ止め作業が完了し、下側の2つのネジ穴33aに対するネジ止め作業が完了していない状態が示されている。
【0084】
本実施の形態によれば、ベースブロック31に上位ブロック33を取り付ける場合においても、実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施の形態によれば、図面ごとに新たな座標系を構築することができるので、作業工程に応じて適切な座標系を用いることができ、トルクドライバ2の先端の座標の抽出精度を向上させることができ、ネジ止め作業が行われたネジ穴33aの抽出精度を向上させることが可能となる。
【0085】
なお、上位ブロック33に対し、さらに上位のブロックを取り付けることも可能である。この場合においても、対応する図面データを用いて同様の処理を行うことで、前述と同様の効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1 作業支援システム
11 撮影部
12 座標系構築部
13 識別部
14 評価部
15 通信処理部
16 モニタ
1A ベース部品情報記憶部
1B 作業情報記憶部
2 トルクドライバ
21 計測部
22 通信処理部
2A ドライバ本体
2B マーカー
2C アーム
3 ベース板金
3a ネジ穴
3b ネジ
31 ベースブロック
31a ネジ穴
33 上位ブロック
33a ネジ穴
NW ネットワーク