(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125055
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】複合地盤検討方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20240906BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033126
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】勝二 理智
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏章
(72)【発明者】
【氏名】萩原 由訓
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040GA02
2D043AC03
(57)【要約】
【課題】検討結果の精度を向上でき且つ検討方法自体の適切性の検証も実現できる複合地盤検討方法を提供する。
【解決手段】未改良の原地盤と改良地盤との複合地盤の複合地盤特性を、想定する実際の施工状況に合わせてモデル化するモデル化ステップと、前記モデル化された複合地盤特性モデルでの、前記想定する実際の施工後の地盤調査方法に合わせた応答を計算する応答計算ステップと、を有する複合地盤検討方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未改良の原地盤と改良地盤との複合地盤の複合地盤特性を、想定する実際の施工状況に合わせてモデル化するモデル化ステップと、前記モデル化された複合地盤特性モデルでの、前記想定する実際の施工後の地盤調査方法に合わせた応答を計算する応答計算ステップと、を有する複合地盤検討方法。
【請求項2】
前記応答計算ステップで得られた前記応答を分析する応答分析ステップ、を有する請求項1に記載の複合地盤検討方法。
【請求項3】
前記応答分析ステップの結果から、前記複合地盤の等価剛性を評価する請求項2に記載の複合地盤検討方法。
【請求項4】
前記複合地盤の前記等価剛性が要求値を満足しない場合、前記改良地盤の仕様を変更する請求項3に記載の複合地盤検討方法。
【請求項5】
前記複合地盤特性は、前記原地盤の原地盤特性と前記改良地盤の改良地盤特性である請求項1に記載の複合地盤検討方法。
【請求項6】
前記原地盤特性は、前記原地盤の深さ方向毎の物性である請求項5に記載の複合地盤検討方法。
【請求項7】
前記改良地盤特性は、前記改良地盤の3次元形状及び物性である請求項5に記載の複合地盤検討方法。
【請求項8】
前記モデル化された複合地盤特性モデルは、前記原地盤と前記改良地盤の3次元形状及び物性を考慮可能な数値解析モデルである請求項1に記載の複合地盤検討方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合地盤検討方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未改良の原地盤とパイル状、ブロック状又は格子状の周期構造をもつ改良地盤との所定構造の複合地盤について予め用意したVsチャートを用いる複合地盤検討方法が知られている(例えば非特許文献1参照)。Vsチャートは、複合地盤に対する改良地盤の面積比である改良率R、複合地盤のVs、改良地盤のVsの関係を示し、これらのうちの2つが分かれば、残りの1つを求めることができる。VsはS波速度、すなわちせん断波速度である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「均質化法を用いた部分改良地盤の等価S波速度の簡易評価法」石川明、浅香美治、社本康広、日本建築学会構造系論文集第613号、67-72、2007年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Vsチャートを用いる方法では、改良地盤の形状の設計自由度が小さく、また、原地盤の深さ方向毎の物性や改良地盤の深さ方向毎の物性などの情報が抜け落ちるため、想定する実際の施工状況に合わせた精度の高い地盤検討ができるとは言い難い。
【0005】
地盤検討後に実際に施工された複合地盤に対しては、想定どおりの施工がされたかを検証するための地盤調査が行われる。しかし、例えば、複合地盤のVs(複合地盤の等価剛性)の要求値と改良率RとからVsチャートを用いて改良地盤のVsを求め、実際の施工後に地盤調査によって複合地盤のVsを測定した場合、実際の施工後の複合地盤のVsが想定どおりかの検証にはなるものの、Vsチャートを用いた複合地盤検討方法自体の適切性の検証にもなるとは必ずしも言えない。
【0006】
そこで本発明の目的は、検討結果の精度を向上でき且つ検討方法自体の適切性の検証も実現できる複合地盤検討方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0008】
[1]
未改良の原地盤と改良地盤との複合地盤の複合地盤特性を、想定する実際の施工状況に合わせてモデル化するモデル化ステップと、前記モデル化された複合地盤特性モデルでの、前記想定する実際の施工後の地盤調査方法に合わせた応答を計算する応答計算ステップと、を有する複合地盤検討方法。
【0009】
[2]
前記応答計算ステップで得られた前記応答を分析する応答分析ステップ、を有する[1]に記載の複合地盤検討方法。
【0010】
[3]
前記応答分析ステップの結果から、前記複合地盤の等価剛性を評価する[2]に記載の複合地盤検討方法。
【0011】
[4]
前記複合地盤の前記等価剛性が要求値を満足しない場合、前記改良地盤の仕様を変更する[3]に記載の複合地盤検討方法。
【0012】
[5]
前記複合地盤特性は、前記原地盤の原地盤特性と前記改良地盤の改良地盤特性である[1]~[4]の何れか1項に記載の複合地盤検討方法。
【0013】
[6]
前記原地盤特性は、前記原地盤の深さ方向毎の物性である[5]に記載の複合地盤検討方法。
【0014】
[7]
前記改良地盤特性は、前記改良地盤の3次元形状及び物性である[5]又は[6]に記載の複合地盤検討方法。
【0015】
[8]
前記モデル化された複合地盤特性モデルは、前記原地盤と前記改良地盤の3次元形状及び物性を考慮可能な数値解析モデルである[1]~[7]の何れか1項に記載の複合地盤検討方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検討結果の精度を向上でき且つ検討方法自体の適切性の検証も実現できる複合地盤検討方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の複合地盤検討方法の効果を説明するための説明図である。
【
図2】モデル化ステップと応答計算ステップを説明するための説明図である。
【
図3】応答分析ステップを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0019】
本発明の一実施形態において、複合地盤検討方法は、未改良の原地盤と改良地盤との複合地盤の複合地盤特性を、想定する実際の施工状況に合わせてモデル化するモデル化ステップと、モデル化された複合地盤特性モデルでの、想定する実際の施工後の地盤調査方法に合わせた応答を計算する応答計算ステップと、を有する。
【0020】
上記構成によれば、(例えば
図2に示すような)想定する実際の施工状況に合わせてモデル化するモデル化ステップにより、検討結果の精度を向上でき、その結果として例えば、必要な改良地盤の仕様を合理化したり、逆に不適格な仕様になる可能性を低減したりすることができる。また、(例えば
図2に「模擬解析モデル」として示すような)複合地盤特性モデルでの、想定する実際の施工後の地盤調査方法に合わせた応答を計算する応答計算ステップを有する複合地盤検討方法は、実際の施工後の地盤調査方法により、検討方法自体の適切性(例えば、
図1に示すように、応答計算ステップでの模擬解析の適切性)の検証も実現できる。したがって上記構成によれば、検討結果の精度を向上でき且つ検討方法自体の適切性の検証も実現できる複合地盤検討方法を実現できる。また上記構成によれば、従来のようにVsチャートを用いる方法に比べて、改良地盤の形状の設計自由度を高めることができる。
【0021】
複合地盤検討方法は例えば、
図1に示すように、複合地盤に要求される等価剛性を実現できる、改良地盤の仕様を決定するために行う。改良地盤の仕様は、例えば剛性(例えばVs)である。応答計算ステップは例えば、
図2に示すように、複合地盤特性モデルで(例えば
図2に示すように複数個所で)加振して振動を発生させて振動応答を計算する。地盤調査方法は例えば、複合地盤の等価剛性を求める調査(微動アレイ探査、表面波探査等の波動を用いた探査等)である。なお
図2は、パイル状改良地盤を有する複合地盤に対する微動アレイ探査を想定した場合の解析モデル例を示す。
【0022】
複合地盤検討方法は、応答計算ステップで得られた応答を分析する応答分析ステップ、を有する。上記構成によれば、応答分析ステップの結果から、複合地盤特性を高い精度で検討できる。複合地盤の物性は、例えば等価剛性(例えばVs)である。
【0023】
複合地盤検討方法は、応答分析ステップの結果から、複合地盤の等価剛性(例えば深さ方向毎の等価剛性)を評価する。上記構成によれば、例えば
図3に示すように、複合地盤の等価剛性を高い精度で検討できる。
【0024】
複合地盤検討方法は、複合地盤の等価剛性(例えば深さ方向毎の等価剛性)が要求値を満足しない場合、改良地盤の仕様を変更する。上記構成によれば、複合地盤に要求される等価剛性を実現できる、改良地盤の仕様を決定できる。要求値は例えば、設計仕様の規定値である。
【0025】
複合地盤特性は、原地盤の原地盤特性と改良地盤の改良地盤特性である。上記構成によれば、複合地盤特性の検討結果の精度を向上できる。
【0026】
原地盤特性は、原地盤の深さ方向毎の物性である。上記構成によれば、原地盤特性の検討結果の精度を向上できる。原地盤の物性は、例えば剛性(例えばVs)である。
【0027】
改良地盤特性は、改良地盤の3次元形状及び物性である。上記構成によれば、改良地盤特性の検討結果の精度を向上できる。改良地盤の物性は、例えば剛性(例えばVs)である。
【0028】
モデル化された複合地盤特性モデルは、原地盤と改良地盤の3次元形状及び物性を考慮可能な数値解析モデルである。上記構成によれば、検討結果の精度を容易に向上できる。モデル化ステップは例えば、薄層要素法、有限要素法、又は、軸対称解析を用いる。
【0029】
図1に示す改良地盤の事前配合試験は、改良地盤の剛性と固化材添加量との関係を事前に求める試験である。
図1に示す例では、決定した改良地盤の剛性から、事前配合試験で求めた関係を用いて固化材添加量を求め、実際の施工を行う。
図1に示す土質試験は、実際の施工後に改良地盤のサンプルを抜き出し、超音波測定によりサンプルの剛性を測定する試験である。
【0030】
図3は、想定する実際の施工後の地盤調査方法としての微動アレイ探査に合わせた応答(
図2参照)を計算する応答計算ステップで得られた応答を分析して得られた結果の一例を示す。
図3の横軸は波動の周波数(周波数は地盤の深さに対応し、周波数が小さいほど深い地盤の特性を反映する。アレイ半径が大きいほど周波数が小さい波動を観測し易い)を示し、縦軸は位相速度を示す。位相速度は複合地盤特性(深さ方向毎の等価剛性)を反映する。複合地盤の深さ方向毎の等価剛性が地盤改良によってどのように増加するかを予測できることが、
図3に示す分析結果から分かる。
【0031】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。