(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125074
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】レーザ式ガス分析計及びパージガス供給方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20240906BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033164
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】海野 裕作
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC07
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
2G059GG08
2G059GG09
2G059HH01
2G059KK01
2G059KK03
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】パージガスの使用量を削減できるレーザ式ガス分析計及びパージガス供給方法を提供する。
【解決手段】レーザ式ガス分析計100は、第1領域22にパージガスを供給するパージガス供給部221と、測定対象成分を含む第2領域23に向けて測定光を射出する発光部11と、第1領域22で測定光を反射する第1反射部18と、第2領域23で測定光を反射する第2反射部28と、第1反射光及び第2反射光を受光する受光部13と、測定光の強度と第2反射光の強度とに基づいて第2領域23における測定対象成分の濃度を算出して測定結果として出力する制御部15とを備える。制御部15は、測定光の強度と第1反射光の強度とに基づいて第1領域22における測定対象成分の濃度を算出し、第1領域22における測定対象成分の濃度に基づいてパージガス供給部221の電磁弁の開閉を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パージガスを供給する第1領域を画定する壁部と、測定対象成分を含む第2領域と前記第1領域との間で光を透過させる窓とを有する筐体と、
前記第1領域に前記パージガスを供給する電磁弁を有するパージガス供給部と、
前記第1領域に配置され、前記第2領域に向けて測定光を射出する発光部と、
前記第1領域に配置され、前記測定光のうち前記第1領域だけを進行してきた光を第1反射光として反射する第1反射部と、
前記第2領域に配置され、前記測定光のうち前記第2領域に進行してきた光を前記第1領域に向けて第2反射光として反射する第2反射部と、
前記第1領域に配置され、前記第1反射光及び前記第2反射光を受光する受光部と、
前記測定光の強度と前記第2反射光の強度とに基づいて前記第2領域における前記測定対象成分の濃度を算出して測定結果として出力する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記測定光の強度と前記第1反射光の強度とに基づいて前記第1領域における前記測定対象成分の濃度を算出し、
前記第1領域における前記測定対象成分の濃度に基づいて前記パージガス供給部の電磁弁の開閉を制御する、
レーザ式ガス分析計。
【請求項2】
前記パージガスに含まれる前記測定対象成分の濃度が第1閾値未満であり、
前記制御部は、
前記第1領域における前記測定対象成分の濃度が前記第1閾値以上である場合に前記パージガス供給部の電磁弁を開き、
前記第1領域における前記測定対象成分の濃度が前記第1閾値未満である場合に前記パージガス供給部の電磁弁を閉じる、
請求項1に記載のレーザ式ガス分析計。
【請求項3】
前記パージガス供給部の電磁弁は、前記パージガスとして計装空気と所定濃度の酸素ガスとを切り替えて前記第1領域に供給する三方電磁弁を含み、
前記制御部は、
前記第1領域における酸素ガスの濃度が前記所定濃度を含む所定範囲内である場合に、前記第1領域に前記計装空気を供給するように前記三方電磁弁を制御し、
前記第1領域における酸素ガスの濃度が前記所定範囲外である場合に、前記第1領域に前記所定濃度の酸素ガスを供給するように前記三方電磁弁を制御する、
請求項1に記載のレーザ式ガス分析計。
【請求項4】
前記発光部は、第1発光部と第2発光部とを有し、
前記受光部は、第1受光部と第2受光部とを有し、
前記第1発光部は、前記第1反射部に向けて第1測定光を射出し、
前記第1受光部は、前記第1反射部で反射された前記第1測定光を前記第1反射光として受光し、
前記第2発光部は、前記第2反射部に向けて第2測定光を射出し、
前記第2受光部は、前記第2反射部で反射された前記第2測定光を前記第2反射光として受光する、
請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザ式ガス分析計。
【請求項5】
前記第1反射部は、前記発光部から前記第2反射部に前記測定光が進行する光路上に位置するビームスプリッタであり、
前記受光部は、第1受光部と第2受光部とを有し、
前記第1受光部は、前記ビームスプリッタで反射された前記測定光を前記第1反射光として受光し、
前記第2受光部は、前記ビームスプリッタを通過して前記第2反射部で反射された前記測定光を前記第2反射光として受光する、
請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザ式ガス分析計。
【請求項6】
前記第1反射部は、前記発光部から前記第2反射部に前記測定光が進行する光路から外れる位置と、前記光路上の位置とのいずれかに移動可能に構成され、
前記受光部は、
前記第1反射部が前記光路上に位置する場合に、前記第1反射部で反射された前記測定光を前記第1反射光として受光し、
前記第1反射部が前記光路から外れている場合に、前記第2反射部で反射された前記測定光を前記第2反射光として受光する、
請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザ式ガス分析計。
【請求項7】
パージガスを供給する第1領域を画定する壁部と、測定対象成分を含む第2領域と前記第1領域との間で光を透過させる窓とを有する筐体と、
前記第1領域に前記パージガスを供給する電磁弁を有するパージガス供給部と、
前記第1領域に配置され、前記第2領域に向けて測定光を射出する発光部と、
前記第1領域に配置され、前記測定光のうち前記第1領域だけを進行してきた光を第1反射光として反射する第1反射部と、
前記第2領域に配置され、前記測定光のうち前記第2領域に進行してきた光を前記第1領域に向けて第2反射光として反射する第2反射部と、
前記第1領域に配置され、前記第1反射光及び前記第2反射光を受光する受光部と、
前記測定光の強度と前記第2反射光の強度とに基づいて前記第2領域における前記測定対象成分の濃度を算出して測定結果として出力する制御部と
を備えるレーザ式ガス分析計が実行するパージガス供給方法であって、
前記制御部が、前記測定光の強度と前記第1反射光の強度とに基づいて前記第1領域における前記測定対象成分の濃度を算出するステップと、
前記制御部が、前記第1領域における前記測定対象成分の濃度に基づいて前記パージガス供給部の電磁弁の開閉を制御するステップと
を含む、パージガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ式ガス分析計及びパージガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パージガス中の測定対象ガス成分濃度を測定するガス測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第101393115号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている装置は、パージガスを流し続けている。パージガスの使用量の削減が求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、パージガスの使用量を削減できるレーザ式ガス分析計及びパージガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)幾つかの実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、筐体と、パージガス供給部と、発光部と、第1反射部と、第2反射部と、受光部と、制御部とを備える。前記筐体は、パージガスを供給する第1領域を画定する壁部と、測定対象成分を含む第2領域と前記第1領域との間で光を透過させる窓とを有する。前記パージガス供給部は、前記第1領域に前記パージガスを供給する電磁弁を有する。前記発光部は、前記第1領域に配置され、前記第2領域に向けて測定光を射出する。前記第1反射部は、前記第1領域に配置され、前記測定光のうち前記第1領域だけを進行してきた光を第1反射光として反射する。前記第2反射部は、前記第2領域に配置され、前記測定光のうち前記第2領域に進行してきた光を前記第1領域に向けて第2反射光として反射する。前記受光部は、前記第1領域に配置され、前記第1反射光及び前記第2反射光を受光する。前記制御部は、前記測定光の強度と前記第1反射光の強度とに基づいて前記第1領域における前記測定対象成分の濃度を算出して測定結果として出力する。前記制御部は、前記測定光の強度と前記第2反射光の強度とに基づいて前記第2領域における前記測定対象成分の濃度を算出する。前記制御部は、前記第1領域における前記測定対象成分の濃度に基づいて前記パージガス供給部の電磁弁の開閉を制御する。
【0007】
本実施形態に係るレーザ式ガス分析計によれば、第1領域における測定対象成分の濃度に基づいてパージガスの供給を制御することによって、パージガスの供給期間が限定される。つまりパージガスが常に供給されなくてもよい。パージガスの供給期間が限定されることによって、パージガスの使用量が削減される。
【0008】
(2)上記(1)に記載のレーザ式ガス分析計において、前記パージガスに含まれる前記測定対象成分の濃度が第1閾値未満であってよい。前記制御部は、前記第1領域における前記測定対象成分の濃度が前記第1閾値以上である場合に前記パージガス供給部の電磁弁を開いてよい。前記制御部は、前記第1領域における前記測定対象成分の濃度が前記第1閾値未満である場合に前記パージガス供給部の電磁弁を閉じてよい。
【0009】
本実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、パージガスの供給期間を限定しつつ、第1領域における測定対象成分の濃度を第1閾値未満に制御できる。その結果、パージガスの使用量の削減と、第2領域における測定対象成分の濃度の測定精度の維持とが両方とも実現される。
【0010】
(3)上記(1)に記載のレーザ式ガス分析計において、前記パージガス供給部の電磁弁は、前記パージガスとして計装空気と所定濃度の酸素ガスとを切り替えて前記第1領域に供給する三方電磁弁を含んでよい。前記制御部は、前記第1領域における酸素ガスの濃度が前記所定濃度を含む所定範囲内である場合に、前記第1領域に前記計装空気を供給するように前記三方電磁弁を制御してよい。前記制御部は、前記第1領域における酸素ガスの濃度が前記所定範囲外である場合に、前記第1領域に前記所定濃度の酸素ガスを供給するように前記三方電磁弁を制御してよい。
【0011】
本実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、原則としてパージガスとして第1領域に計装空気を供給しつつ、第1領域における酸素濃度が所定範囲外になった場合にパージガスとして所定濃度の酸素ガスを供給する。つまり、レーザ式ガス分析計は、第1領域における酸素濃度の測定結果に基づいて、第1領域にパージガスとして所定濃度の酸素ガスを供給するかを決定する。第1領域における酸素濃度が所定範囲内である場合にパージガスとしての酸素ガスの供給が停止されることによって、酸素ガスの使用量が削減される。酸素ガスの使用量が削減されることによって、コスト負担又は環境負荷が低減される。また、パージガスとして窒素ガス等の純度の高いガスの代わりに計装空気が用いられることによっても、コスト負担又は環境負荷が低減される。
【0012】
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つに記載のレーザ式ガス分析計において、前記発光部は、第1発光部と第2発光部とを有してよい。前記受光部は、第1受光部と第2受光部とを有してよい。前記第1発光部は、前記第1反射部に向けて第1測定光を射出してよい。前記第1受光部は、前記第1反射部で反射された前記第1測定光を前記第1反射光として受光してよい。前記第2発光部は、前記第2反射部に向けて第2測定光を射出してよい。前記第2受光部は、前記第2反射部で反射された前記第2測定光を前記第2反射光として受光してよい。
【0013】
本実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、発光部と受光部との組み合わせを2組備えることによって、第2領域における測定対象成分の濃度と、第1領域における測定対象成分の濃度とを並行して測定でき、第2領域における測定対象成分の濃度を測定しつつ、その測定精度を維持できる。
【0014】
(5)上記(1)から(3)までのいずれか1つに記載のレーザ式ガス分析計において、前記第1反射部は、前記発光部から前記第2反射部に前記測定光が進行する光路上に位置するビームスプリッタであってよい。前記受光部は、第1受光部と第2受光部とを有してよい。前記第1受光部は、前記ビームスプリッタで反射された前記測定光を前記第1反射光として受光してよい。前記第2受光部は、前記ビームスプリッタを通過して前記第2反射部で反射された前記測定光を前記第2反射光として受光してよい。
【0015】
本実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、第1反射部としてビームスプリッタを備えることによって、発光部の1つを削減できる。
【0016】
(6)上記(1)から(3)までのいずれか1つに記載のレーザ式ガス分析計において、前記第1反射部は、前記発光部から前記第2反射部に前記測定光が進行する光路から外れる位置と、前記光路上の位置とのいずれかに移動可能に構成されてよい。前記受光部は、前記第1反射部が前記光路上に位置する場合に、前記第1反射部で反射された前記測定光を前記第1反射光として受光してよい。前記受光部は、前記第1反射部が前記光路から外れている場合に、前記第2反射部で反射された前記測定光を前記第2反射光として受光してよい。
【0017】
本実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、第1反射部として測定光の光路上に移動可能な反射部を備えることによって、発光部及び受光部を1つずつ削減できる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態に係るパージガス供給方法は、レーザ式ガス分析計によって実行される。前記レーザ式ガス分析計は、筐体と、パージガス供給部と、発光部と、第1反射部と、第2反射部と、受光部と、制御部とを備える。前記筐体は、パージガスを供給する第1領域を画定する壁部と、測定対象成分を含む第2領域と前記第1領域との間で光を透過させる窓とを有する。前記パージガス供給部は、前記第1領域に前記パージガスを供給する電磁弁を有する。前記発光部は、前記第1領域に配置され、前記第2領域に向けて測定光を射出する。前記第1反射部は、前記第1領域に配置され、前記測定光のうち前記第1領域だけを進行してきた光を第1反射光として反射する。前記第2反射部は、前記第2領域に配置され、前記測定光のうち前記第2領域に進行してきた光を前記第1領域に向けて第2反射光として反射する。前記受光部は、前記第1領域に配置され、前記第1反射光及び前記第2反射光を受光する。前記制御部は、前記測定光の強度と前記第2反射光の強度とに基づいて前記第2領域における前記測定対象成分の濃度を算出して測定結果として出力する。前記パージガス供給方法は、前記制御部が、前記測定光の強度と前記第1反射光の強度とを用いて算出される吸光度に基づいて前記第1領域における前記測定対象成分の濃度を算出するステップを含む。前記パージガス供給方法は、前記制御部が、前記第1領域における前記測定対象成分の濃度に基づいて前記パージガス供給部の電磁弁の開閉を制御するステップを含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係るレーザ式ガス分析計及びパージガス供給方法によれば、パージガスの使用量が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】比較例に係るレーザ式ガス分析計の構成例を示す模式図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るレーザ式ガス分析計の構成例を示す模式図である。
【
図3】レーザ式ガス分析計の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4】測定対象成分が酸素である場合の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【
図5】第1領域における酸素濃度を制御する電磁弁の制御手順例を示すフローチャートである。
【
図6】第1領域における酸素濃度を制御する三方電磁弁の制御手順例を示すフローチャートである。
【
図7】第1反射部がビームスプリッタである場合の構成例を示す模式図である。
【
図8】第1反射部が移動式である場合の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(比較例)
図1に示されるように、比較例に係るレーザ式ガス分析計900は、第1領域922と第2領域923とを備える。第1領域922は、測定対象ガスが流れている配管930の外の領域である。第2領域923は、測定対象ガスが流れている配管930の中の領域である。
【0022】
比較例に係るレーザ式ガス分析計900は、端部914とフランジ929とハウジング921とを備える。レーザ式ガス分析計900は、フランジ929によって配管930に取り付けられる。第1領域922は、端部914とフランジ929との間の領域である。
【0023】
第2領域923は、ハウジング921とフランジ929とに囲まれた領域である。ハウジング921は、第2領域923に測定対象ガスが出入りできるように、測定対象ガスが通過可能な開口を有する。
【0024】
比較例に係るレーザ式ガス分析計900は、第1領域922に位置する発光部911及び受光部913と、第2領域923に位置する反射部928とを備える。また、レーザ式ガス分析計900は、発光部911及び受光部913を制御する制御部915を備える。
【0025】
発光部911は、測定光911aを反射部928に向けて射出する。反射部928は、測定光911aを反射して受光部913に向けて進行させる。受光部913は、反射部928で反射した測定光911aを受光する。測定光911aは、第1領域922及び第2領域923の両方を通過する。
【0026】
制御部915は、発光部911が射出する測定光911aを制御する。また、制御部915は、受光部913における測定光911aの受光強度を取得する。制御部915は、発光部911が射出した測定光911aの強度と、受光部913における測定光911aの受光強度とに基づいて、第2領域923の測定対象成分の濃度を算出する。
【0027】
比較例に係るレーザ式ガス分析計900は、第1領域922にパージガスを供給するように構成され、第1領域922にパージガスを流すことによって、第1領域922をパージガスで満たす。測定対象成分が酸素である場合、パージガスとして窒素が用いられる。パージガスの成分は既知である。第1領域922がパージガスで満たされることによって、第1領域922の雰囲気が安定する。例えば測定対象成分が酸素である場合、純粋な窒素がパージガスとして供給されることによって、第1領域922を通過した測定光911aが酸素で吸収されないので、第2領域923における酸素濃度の測定精度が高められる。したがって、比較例に係るレーザ式ガス分析計900は、第1領域922がパージガスで常に満たされるようにパージガスを常時供給する。
【0028】
しかし、パージガスを常時供給することによってパージガスの使用量が増大する。パージガスの使用量を削減することが求められる。本実施形態に係るレーザ式ガス分析計100は、パージガスの使用量を削減できる。以下、図面を参照し、本開示の一実施形態が説明される。
【0029】
(本開示の一実施形態に係るレーザ式ガス分析計100)
図2に示されるように、本実施形態に係るレーザ式ガス分析計100は、第1領域22と第2領域23とを備える。第1領域22は、測定対象ガスが流れている配管30の外の領域である。第2領域23は、測定対象ガスが流れている配管30の中の領域である。
【0030】
第1領域22は、後述するように測定対象ガスに対して測定光を射出して反射光を受光することによって測定対象成分を分析する部分である。第1領域22は、測定対象ガスに含まれる測定対象成分を原則として含まないように制御され、非測定部とも称される。第2領域23は、測定光及び反射光を測定対象ガスに通過させて測定対象ガスに対応する吸収スペクトルで光吸収を生じさせる部分である。第2領域23は、測定対象ガスで満たされているので、測定部とも称される。
【0031】
本実施形態において測定対象ガスは、酸素(O
2)、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO
2)等の測定対象成分を含むガスであるとする。測定対象ガスは、1又は複数の測定対象成分を含んでよい。配管30は、
図2において上下方向に延在する。測定対象ガスは、配管30が延在する方向に沿って流れる。
【0032】
レーザ式ガス分析計100は、壁部12と端部14とフランジ29とハウジング21とを備える。レーザ式ガス分析計100は、フランジ29によって配管30に取り付けられる。フランジ29は、後述する第2測定光11aが第1領域22から第2領域23に透過し、かつ、第2反射光13aが第2領域23から第1領域22に透過するように構成される窓を有する。第1領域22は、壁部12と端部14とフランジ29とに囲まれた領域である。言い換えれば、第1領域22は、壁部12と端部14とフランジ29とによって画定される。壁部12とフランジ29の窓とを合わせた構成は、筐体とも称される。
【0033】
レーザ式ガス分析計100は、
図3に示されるように、第1領域22にパージガスを供給するパージガス供給部221と第1領域22からパージガスを排出するパージガス排出部222とを備える。第1領域22を画定する壁部12又は端部14(
図2参照)は、パージガス供給部221として、パージガスを供給する図示されていない配管を備える。パージガス供給部221は、第1領域22にパージガスを供給するときに開く電磁弁を備える。また、第1領域22を画定する壁部12又は端部14は、パージガス排出部222として、パージガスを排出する図示されていない配管を備える。パージガス排出部222は、第1領域22から第1領域22の外にガスを排出する方向だけにガスを流す逆止弁を備える。
【0034】
第1領域22は、パージガス供給部221からパージガス排出部222にパージガスを流すことによって、パージガスで満たされる。第1領域22は、パージガスで満たされた状態でパージガス供給部221の電磁弁を閉じることによって、パージガスを第1領域22内に封じることができるように構成される。つまり、第1領域22は、パージガス供給部221の電磁弁を閉じた状態において高い気密性を有するように構成される。
【0035】
パージガスとして、測定対象ガス中の測定対象成分が含まれないガス、又は、測定対象成分の濃度が所定濃度未満のガスが供給されるとする。所定濃度は、第2領域23における測定対象成分の吸収スペクトルに影響を及ぼさない程度に十分に低い濃度であってよい。測定対象成分が酸素(O2)である場合、パージガスとして例えば窒素(N2)が用いられてよい。
【0036】
第2領域23は、ハウジング21とフランジ29とに囲まれた領域である。言い換えれば、第2領域23は、ハウジング21とフランジ29とによって画定される。ハウジング21は、第2領域23に測定対象ガスが出入りできるように、測定対象ガスが通過可能な開口を有する。
【0037】
レーザ式ガス分析計100は、
図2及び
図3に示されるように、第1領域22に位置する第1発光部16と第2発光部11と第1受光部17と第2受光部13とを備える。第1発光部16及び第2発光部11は、発光部とも総称される。第1受光部17及び第2受光部13は、受光部とも総称される。レーザ式ガス分析計100は、第1領域22に位置する第1反射部18と、第2領域23に位置する第2反射部28とを備える。レーザ式ガス分析計100は、発光部及び受光部を制御する制御部15を備える。
【0038】
第1発光部16は、第1測定光16aを第1反射部18に向けて射出するように構成される。第1反射部18は、第1測定光16aを反射し、第1反射光17aとして第1受光部17に向けて進行させるように構成される。第1受光部17は、第1発光部16から射出された第1測定光16aを第1反射部18で反射した第1反射光17aを受光する。第1測定光16a及び第1反射光17aは、第1領域22の中だけを通過する。
【0039】
第2発光部11は、第2測定光11aを第2反射部28に向けて射出するように構成される。第2反射部28は、第2測定光11aを反射し、第2反射光13aとして第2受光部13に向けて進行させるように構成される。第2受光部13は、第2発光部11から射出された第2測定光11aを第2反射部28で反射した第2反射光13aを受光する。第2測定光11a及び第2反射光13aは、第1領域22及び第2領域23の両方を通過する。第2測定光11a及び第2反射光13aが通過する光路は、配管30が延在する方向に略直交する方向(
図2において左右方向)に沿っているとする。
【0040】
第1発光部16は、第1測定光16aとしてレーザ光を射出するレーザと、レーザに電流を供給するレーザ駆動回路とを有している。第2発光部11は、第2測定光11aとしてレーザ光を射出するレーザと、レーザに電流を供給するレーザ駆動回路とを有している。レーザは、例えば測定対象ガスの吸収波長を含む範囲で波長を掃引(スキャン)できる、波長可変型の半導体レーザを含んで構成されてよい。レーザ駆動回路は、制御部15からの制御信号に基づいてレーザに駆動電流を供給可能なトランジスタ又はレーザ駆動IC(Integrated Circuit)等を含んで構成されてよい。
【0041】
第1受光部17は、第1領域22だけを通過し、パージガスで光吸収を受けた第1反射光17aを受光する。第2受光部13は、第1領域22及び第2領域23の両方を通過し、パージガス及び測定対象ガスの両方で光吸収を受けた第2反射光13aを受光する。受光部は、例えば、フォトダイオード又はフォトトランジスタ等の受光素子と、受光素子からの光検出電流を電圧変換する電圧変換回路と、増幅器とを含んで構成されてよい。受光部は、受光した反射光を受光素子で検出し、受光強度を制御部15に出力する。受光素子は、フォトダイオード又はフォトトランジスタに限られず他の種々の素子を含んでもよい。
【0042】
制御部15は、第1発光部16及び第2発光部11を制御して、第1測定光16a及び第2測定光11aの発光強度を制御する。制御部15は、発光部が射出するレーザ光の発光波長若しくは強度、又は、発光部がレーザ光をパルスで射出する場合のパルス幅若しくはデューティ比等を制御してよい。
【0043】
制御部15は、第1受光部17及び第2受光部13から、受光強度に対応する出力信号を取得して出力信号を処理する。制御部15は、出力信号に基づいて、第1領域22又は第2領域23における吸収スペクトルを算出してよい。制御部15は、第1領域22における吸収スペクトルに基づいてパージガスに含まれる成分又はその濃度を算出してよい。制御部15は、第2領域23における吸収スペクトルに基づいて測定対象ガスに含まれる成分又はその濃度を算出してよい。
【0044】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用回路を含んで構成されてよい。制御部15は、レーザ式ガス分析計100の種々の機能を実現するプログラムを実行するように構成されてよい。制御部15は、記憶部を備えてよい。記憶部は、制御部15の動作に用いられる各種情報、又は、制御部15の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、制御部15のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、制御部15と別体で構成されてもよい。
【0045】
レーザ式ガス分析計100は、インタフェースを更に備えてよい。インタフェースは、例えば、有線又は無線によって外部装置と通信する通信インタフェースを含んでよい。インタフェースは、表示デバイスを備えてもよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。インタフェースは、スピーカ等の音声出力デバイスを備えてもよい。インタフェースは、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを含んでもよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでもよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでもよい。
【0046】
(レーザ式ガス分析計100による測定対象成分の濃度測定の動作例)
本実施形態のレーザ式ガス分析計100は、TDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy)法に基づく分析計である。TDLASでは、ガス吸収線幅よりはるかに狭い線幅の半導体レーザ光を測定対象ガスに透過させ、その駆動電流を高速変調することでその波長を掃引(スキャン)し、透過光量を測定して、1本の独立した吸収スペクトルを測定する。具体的に、レーザ式ガス分析計100において、制御部15は、発光部のレーザを駆動する駆動電流の大きさを連続的に変化させることによって、測定光の波長を所定範囲で変化させる。測定光が測定対象ガスを通過することによって、測定対象ガスに対応する波長の成分が吸収される。例えば、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、炭化水素(CnHm)、アンモニア(NH3)又は酸素(O2)等の多くのガス分子は、赤外から近赤外域までの波長範囲で分子の振動及び回転エネルギーの遷移による光吸収スペクトルを持つ。吸収スペクトルは成分分子固有である。Lambert-Beerの法則によれば、吸光度が成分濃度と光路長に比例する。したがって、吸収スペクトル強度を測定することによって対象成分の濃度が算出される。
【0047】
測定対象ガスの吸収スペクトルは、測定対象ガスに含まれる測定対象成分の種類及び濃度に基づいて定まる。例えば測定対象成分が酸素(O
2)である場合の吸収スペクトルが
図4に示される。
図4において横軸は波長を表す。縦軸は光強度を表す。
図4の吸収スペクトルにおいて、波長λ
O2における光強度が、近接する他の波長の光強度と比較して局所的に低下している。測定対象成分で吸収されていない光強度はI
nと表される。測定対象成分で吸収された光強度はI
aで表される。
【0048】
制御部15は、測定対象成分が酸素(O
2)である場合に、波長λ
O2を含む所定の波長範囲で測定光の波長を掃引させる。波長を掃引させる範囲は、
図4に示されるように、波長λ
O2の短波長側及び長波長側において、光強度のグラフが波長に依存しない平坦なグラフとなるように決定されてよい。測定光のスキャン範囲は、測定対象成分がO
2である場合、例えば0.1nm~0.2nmに設定されてよい。また、測定光の線幅は、例えば0.0002nmに設定されてよい。
【0049】
レーザに供給する駆動電流を変化させることで測定光の波長を掃引する場合、受光部で検出される短波長側の光強度と長波長側の光強度とは異なる。制御部15は、短波長側の光強度と長波長側の光強度とが同じになるようにベースラインの平坦化処理を行う。
【0050】
測定対象成分が酸素(O2)である場合の波長λO2における吸光度Abは以下の数式(1)で表される。
【0051】
【0052】
Lambert-Beerの法則によれば、測定対象ガスの吸光度Abは、測定対象ガスの成分濃度と、測定対象ガスに晒される測定光及び反射光の光路長とに比例する。制御部15は、測定対象ガスに入射する前の光強度I
nを発光部の制御情報に基づいて取得し、測定対象ガスを通過した後の光強度I
aを受光部の出力信号に基づいて取得し、光強度I
nと光強度I
aとを上述の式(1)に適用して吸光度Abを算出する。制御部15は、算出した吸光度Abと、測定対象ガスを通過する測定光及び反射光の光路長とに基づいて、測定対象ガスの成分濃度を算出できる。例えば
図2において、第2反射部28で第2測定光11aが略180度の向きに反射される場合、測定対象ガスを通過する第2測定光11a及び第2反射光13aの光路長は、配管30から第2反射部28までの距離の2倍の長さである。吸収スペクトルから測定対象成分の濃度に換算するための手法として、ピーク高さ法、スペクトル面積法又は2f法等の種々の手法が用いられてもよい。
【0053】
本実施形態において、レーザ式ガス分析計100の制御部15は、第2発光部11を制御して第2測定光11aを射出し、第2反射部28で反射した第2反射光13aを第2受光部13で受光したときの受光強度を取得し、測定対象成分に対応する波長の吸光度を算出する。例えば測定対象成分が酸素である場合、測定対象成分に対応する波長はλO2である。制御部15は、測定対象成分に対応する波長の吸光度と光路長とに基づいて、第2領域23における測定対象成分の濃度を算出して測定対象成分の測定結果として出力する。
【0054】
(第1領域22における測定対象成分の濃度を第1閾値未満に制御する動作例)
上述したように、レーザ式ガス分析計100は、測定対象成分が酸素(O2)である場合、第2測定光11aの射出時の強度と、第2反射光13aを第2受光部13で受光した強度とに基づいて波長λO2における吸光度Abを算出する。ここで、第2測定光11a及び第2反射光13aは、第1領域22の中も通過する。第1領域22を満たす雰囲気に酸素が含まれる場合、吸光度Abは第1領域22を満たす雰囲気に含まれる酸素の影響を受けて変化する。
【0055】
レーザ式ガス分析計100は、第1領域22にパージガスを供給することによって第1領域22を満たす雰囲気に含まれる測定対象成分の濃度を制御する。
【0056】
上述したように、第1領域22は、パージガス供給部221及びパージガス排出部222の電磁弁を閉じた状態において高い気密性を有するように構成される。しかし、第1領域22を画定する壁部12、端部14若しくはフランジ29のいずれか、又は、これらの接合部分からのリークによって、第1領域22に外部のガスが侵入することがある。第1領域22に外部のガスとして酸素が侵入した場合、第1領域22における酸素濃度が高くなる。
【0057】
レーザ式ガス分析計100が測定対象成分を酸素として測定対象ガスを分析する場合、第1領域22を満たす雰囲気に含まれる酸素の影響によって、第2領域23の測定対象ガスに含まれる酸素濃度の測定結果に誤差が生じる。第2領域23の測定対象ガスに含まれる酸素濃度の測定結果に誤差を生じさせないために、第1領域22における酸素濃度を低下させることが求められる。具体的に、第1領域22における酸素濃度が高くなった場合、第1領域22にパージガスとして例えば窒素ガスを供給しつつ排出することによって第1領域22から酸素を追い出して酸素濃度を低下させることができる。
【0058】
比較例に係るレーザ式ガス分析計900について述べたように、第1領域22にパージガスを流し続けることによって、第1領域22における酸素濃度がパージガスの酸素濃度で維持される。しかし、比較例について述べたように、パージガスを流し続けることによる損失が生じる。
【0059】
そこで、本実施形態に係るレーザ式ガス分析計100において、パージガスを流すことによって生じる損失を低減させるために、制御部15は、第1領域22における酸素濃度を測定し、第1領域22における酸素濃度が第1閾値以上になったときに、第1領域22における酸素濃度が第1閾値未満になるように、第1領域22にパージガスを供給する。第1閾値は、第2領域23の酸素濃度の測定に要求される精度に応じて定められてよい。第1閾値は、例えば0.5%に設定されてよいが、これに限られない。
【0060】
具体的に、レーザ式ガス分析計100の制御部15は、第1発光部16を制御して第1測定光16aを射出し、第1反射部18で反射した第1反射光17aを第1受光部17で受光したときの受光強度を取得し、測定対象成分に対応する波長の吸光度を算出する。例えば測定対象成分が酸素である場合、測定対象成分に対応する波長はλO2である。制御部15は、測定対象成分に対応する波長の吸光度と光路長とに基づいて、第1領域22における測定対象成分の濃度を算出する。
【0061】
制御部15は、測定対象成分が酸素である場合、第1領域22における測定対象成分の濃度として酸素濃度を測定する。制御部15は、第1領域22における酸素濃度が第1閾値以上である場合、第1領域22における酸素濃度を第1閾値未満に下げるために、パージガス供給部221の電磁弁を開き、パージガスを第1領域22に流す。一方で、第1領域22における酸素濃度が第1閾値未満である場合、酸素濃度を下げる必要がない。つまり、パージガスを第1領域22に流す必要がない。したがって、制御部15は、第1領域22における酸素濃度が第1閾値未満である場合、パージガス供給部221の電磁弁を閉じる。
【0062】
<フローチャートの例>
レーザ式ガス分析計100の制御部15は、
図5に例示されるフローチャートの手順例を含む、パージガス供給方法を実行してよい。パージガス供給方法は、制御部15を構成するプロセッサに実行させるパージガス供給プログラムとして実現されてもよい。パージガス供給プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0063】
制御部15は、非測定部の酸素濃度を測定する(ステップS1)。非測定部は、上述したように第1領域22に対応する。酸素濃度は、測定対象成分に対応する。制御部15は、非測定部の酸素濃度が第1閾値未満であるか判定する(ステップS2)。
【0064】
制御部15は、非測定部の酸素濃度が第1閾値未満でない場合(ステップS2:NO)、つまり非測定部の酸素濃度が第1閾値以上である場合、非測定部にパージガスを供給して非測定部の酸素濃度を下げるためにパージガス供給部221の電磁弁を開く(ステップS3)。制御部15は、パージガス供給部221の電磁弁を開いた後、ステップS1の測定手順に戻る。制御部15は、非測定部の酸素濃度が第1閾値未満になるまで、ステップS1からS3までの手順を繰り返す。
【0065】
制御部15は、非測定部の酸素濃度が第1閾値未満である場合(ステップS2:YES)、非測定部にパージガスを供給する必要がないので、パージガス供給部221の電磁弁を閉じる(ステップS4)。制御部15は、ステップS4の手順の実行後、
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。制御部15は、ステップS4の手順の実行後、ステップS1の測定手順に戻ってもよい。
【0066】
<小括>
以上述べてきたように、本実施形態に係るレーザ式ガス分析計100は、測定部である第2領域23における測定対象成分の濃度の測定精度を維持するために、非測定部である第1領域22における測定対象成分の濃度を第1閾値未満に制御する。レーザ式ガス分析計100は、第1領域22における測定対象成分の濃度を測定し、測定対象成分の濃度が第1閾値以上になった場合に、測定対象成分の濃度を下げるために第1領域22にパージガスを供給する。つまり、レーザ式ガス分析計100は、第1領域22における測定対象成分の濃度の測定結果に基づいて、第1領域22にパージガスを供給するかを決定し、パージガス供給部221の電磁弁の開閉を制御する。第1領域22における測定対象成分の濃度が第1閾値未満である場合にパージガスの供給が停止されることによって、パージガスの使用量が削減される。
【0067】
また、本実施形態に係るレーザ式ガス分析計は、パージガスの供給期間を限定しつつ、第1領域における測定対象成分の濃度を第1閾値未満に制御できる。その結果、パージガスの使用量の削減と、第2領域における測定対象成分の濃度の測定精度の維持とが両方とも実現される。
【0068】
レーザ式ガス分析計100は、第1発光部16と第1受光部17とを用いて第1領域22における測定対象成分の濃度を測定しつつ、第2発光部11と第2受光部13とを用いて第2領域23における測定対象成分の濃度を測定できる。レーザ式ガス分析計100は、発光部と受光部との組み合わせを2組備えることによって、第2領域23における測定対象成分の濃度と、第1領域22における測定対象成分の濃度とを並行して測定でき、第2領域23における測定対象成分の濃度を測定しつつ、その測定精度を維持できる。
【0069】
パージガスは、窒素ガスに限られず、測定対象成分の濃度が第1閾値未満になっているガスであれば他の種々のガスであってよい。
【0070】
(計装空気でパージする場合の動作例)
上述してきたように、パージガスは、非測定部である第1領域22において測定対象成分による吸収の影響を低減して第2領域23における測定対象成分の濃度の測定精度を高めるために用いられる。パージガスは、他の目的として、非測定部である第1領域22の雰囲気を安定させることによって、第1領域22に配置されている発光部又は受光部等の素子を周囲環境から保護するために用いられてもよい。この場合、レーザ式ガス分析計100は、非測定部である第1領域22における測定対象成分の濃度を、所定範囲内に制御してよい。
【0071】
本実施例において、測定対象成分は酸素であるとする。また、本実施例において、パージガスとして、計装空気と、濃度を所定濃度に調整した酸素ガスとのいずれか一方が第1領域22に供給されるとする。濃度を所定濃度に調整した酸素ガスは、所定濃度の酸素ガスとも称される。パージガス供給部221は、計装空気と、所定濃度の酸素ガスとのいずれか一方に切り替えて第1領域22に供給できるように三方電磁弁を含んで構成される。所定濃度は、第1領域22における測定対象成分の濃度を制御する目標である所定範囲に含まれる濃度であるとする。酸素濃度の所定範囲は、20%~22%に設定されるとする。所定濃度は21%に設定されるとする。酸素濃度の所定範囲又は所定濃度は、上述した例に限られず他の値に設定されてもよい。計装空気に含まれる酸素濃度は所定範囲内に制御されていないとする。また、第2領域23に流れる測定対象ガスに含まれる酸素濃度は所定範囲内に制御されていないとする。
【0072】
レーザ式ガス分析計100の制御部15は、第1領域22における測定対象成分の濃度として酸素濃度を測定する。制御部15は、第1領域22における酸素濃度が所定範囲内である場合、第1領域22に計装空気を供給し続けるように、パージガス供給部221の三方電磁弁を制御する。一方で、制御部15は、第1領域22における酸素濃度が所定範囲外である場合、第1領域22における酸素濃度を所定範囲内に制御するために、所定濃度の酸素ガスを第1領域22に供給するように、パージガス供給部221の三方電磁弁を制御する。
【0073】
<フローチャートの例>
レーザ式ガス分析計100の制御部15は、
図6に例示されるフローチャートの手順例を含む、パージガス供給方法を実行してよい。
【0074】
制御部15は、非測定部の酸素濃度を測定する(ステップS11)。非測定部は、上述したように第1領域22に対応する。酸素濃度は、測定対象成分に対応する。制御部15は、非測定部の酸素濃度が所定範囲内であるか判定する(ステップS12)。
【0075】
制御部15は、非測定部の酸素濃度が所定範囲内である場合(ステップS12:YES)、パージガス供給部221の三方電磁弁を制御して非測定部にパージガスとして計装空気を流す(ステップS13)。制御部15は、ステップS13の手順の実行後、ステップS11の測定手順に戻る。
【0076】
制御部15は、非測定部の酸素濃度が所定範囲内でない場合(ステップS12:NO)、つまり非測定部の酸素濃度が所定範囲外である場合、パージガス供給部221の三方電磁弁を制御して非測定部にパージガスとして所定濃度の酸素ガスを流す(ステップS14)。制御部15は、ステップS14の手順の実行後、ステップS11の測定手順に戻る。
【0077】
制御部15は、
図6のフローチャートの手順を繰り返すことによって、非測定部である第1領域22における酸素濃度を所定範囲内に制御できる。
【0078】
<小括>
以上述べてきたように、本実施形態に係るレーザ式ガス分析計100は、通常時にパージガスとして第1領域22に計装空気を供給しつつ、第1領域22における酸素濃度が所定範囲外になった場合にパージガスとして所定濃度の酸素ガスに切り替えて供給する。つまり、レーザ式ガス分析計100は、第1領域22における酸素濃度の測定結果に基づいて、第1領域22にパージガスを所定濃度の酸素ガスに切り替えて供給するかを決定する。第1領域22における酸素濃度が所定範囲内である場合に酸素ガスの供給が停止されることによって、酸素ガスの使用量が削減される。酸素ガスの使用量が削減されることによって、コスト負担又は環境負荷が低減される。また、パージガスとして窒素ガス等の純度の高いガスの代わりに計装空気が用いられることによっても、コスト負担又は環境負荷が低減される。
【0079】
(発光部、受光部及び反射部に関する他の構成例)
上述してきた実施形態において、レーザ式ガス分析計100は、発光部として第1発光部16と第2発光部11とを備え、受光部として第1受光部17と第2受光部13とを備える。また、第1反射部18は、第1測定光16aを反射する。第2反射部28は、第2測定光11aを反射する。以下、発光部、受光部及び反射部に関する他の構成例が説明される。
【0080】
図7に示されるように、レーザ式ガス分析計100は、第1反射部18としてビームスプリッタ185を備えてよい。ビームスプリッタ185は、第2測定光11aの光路上に配置される。ビームスプリッタ185は、第2測定光11aのうち一部の光を反射して第1反射光17aとして第1受光部17に進行させる。ビームスプリッタ185は、第2測定光11aのうち反射しなかった残りの光を一部の光を透過し、第2領域23及び第2反射部28に進行させる。
【0081】
レーザ式ガス分析計100の制御部15は、ビームスプリッタ185による第2測定光11aの透過率と第2測定光11aの強度との積を、第2領域23の測定対象ガスに入射する前の光強度Inとして用い、第2受光部13で受光する第2反射光13aの受光強度を、第2領域23の測定対象ガスを通過した後の光強度Iaとして用いて、第2領域23の測定対象成分における吸光度を算出してよい。制御部15は、ビームスプリッタ185による第2測定光11aの反射率と第2測定光11aの強度との積を、第1領域22の測定対象ガスに入射する前の光強度Inとして用い、第1受光部17で受光する第1反射光17aの受光強度を、第1領域22の測定対象ガスを通過した後の光強度Iaとして用いて第1領域22の測定対象成分における吸光度を算出してよい。
【0082】
図7に例示されるレーザ式ガス分析計100は、第1反射部18としてビームスプリッタ185を備えることによって、第1発光部16を備えなくてもよい。つまり、発光部の1つが削減される。
【0083】
図8に示されるように、レーザ式ガス分析計100は、第1反射部18として移動式の反射部を備えてもよい。移動式の反射部は、第2測定光11aの光路から外れる位置と光路上の位置とのいずれかに移動可能に構成される。移動式の反射部は、第2測定光11aの光路から外れている状態で反射部181として表され、第2測定光11aの光路の上に位置する状態で反射部182として表されている。
【0084】
移動式の反射部が第2測定光11aの光路から外れている状態(反射部181の状態)において、レーザ式ガス分析計100は、第2測定光11aが第2反射部28で反射された第2反射光13aを第2受光部13で受光できる。この場合、レーザ式ガス分析計100の制御部15は、第2測定光11aの強度と第2受光部13における第2反射光13aの受光強度とに基づいて第2領域23の測定対象成分における吸光度を算出できる。
【0085】
一方で、移動式の反射部が第2測定光11aの光路の上に位置する状態(反射部182の状態)において、レーザ式ガス分析計100は、測定光11bが反射部182で反射された反射光13bを第2受光部13で受光できる。測定光11bは第2領域23を通過していないので第1測定光16aに相当する。また、反射光13bは第2領域23を通過していないので第1反射光17aに相当する。したがって、レーザ式ガス分析計100の制御部15は、第1測定光16aに相当する測定光11bの強度と、第1反射光17aに相当する反射光13bの第2受光部13における受光強度とに基づいて、第1領域22の測定対象成分における吸光度を算出できる。
【0086】
図8に例示されるレーザ式ガス分析計100は、第2領域23の測定対象成分における吸光度と第1領域22の測定対象成分における吸光度とを、測定する期間を分割して測定できる。
図8に例示されるレーザ式ガス分析計100は、第1反射部18として移動式の反射部を備えることによって、第1発光部16及び第1受光部17を備えなくてもよい。つまり、発光部及び受光部が1つずつ削減される。
【0087】
以上、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0088】
100 レーザ式ガス分析計
11 第2発光部(11a、11b:測定光)
12 壁部
13 第2受光部(13a、13b:反射光)
14 端部
15 制御部
16 第1発光部(16a:測定光)
17 第1受光部(17a:反射光)
18 第1反射部(181、182:移動式の反射部)
185 ビームスプリッタ
21 ハウジング
22 第1領域(221:パージガス供給部、222:パージガス排出部)
23 第2領域
28 第2反射部
29 フランジ
30 配管