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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125076
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20240906BHJP
   A61B 3/06 20060101ALI20240906BHJP
   A61B 3/08 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A61B3/028
A61B3/06
A61B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033167
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真一
(72)【発明者】
【氏名】山本 国彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和樹
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA06
4C316AA13
4C316AA14
4C316AA16
4C316AB16
4C316FA01
4C316FA03
4C316FA06
4C316FA18
4C316FC01
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】 被検眼のアライメントを効率よく進めることができる自覚式検眼装置を提供する。
【解決手段】 自覚式検眼装置は、前眼部画像において左右の瞳孔の少なくとも一部が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させる第1粗アライメントステップと、前眼部画像における瞳孔と測定光軸が一致するように左眼用測定ユニットと右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させる第2粗アライメントステップと、前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方にアライメント指標が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させる第1微アライメントステップと、前眼部画像におけるアライメント指標と測定光軸が一致するように左眼用測定ユニットと右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させる第2微アライメントステップと、を実行する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系と、
前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、
前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記被検眼に前記視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材と、
を有し、
前記被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置であって、
前記投光光学系は、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系を含み、
前記被検眼にアライメント指標を投影するアライメント指標投影手段と、
前記被検眼の前眼部を撮影して前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、
前記固定光学部材に対して、前記左眼用投光光学系を含む左眼用測定ユニットを移動させることによって、左眼に前記左眼用投光光学系の第1光軸を位置合わせするための第1移動手段と、
前記固定光学部材に対して、前記右眼用投光光学系を含む右眼用測定ユニットを移動させることによって、右眼に前記右眼用投光光学系の第2光軸を位置合わせするための第2移動手段と、
両眼に対して、前記左眼用測定ユニットと、前記右眼用測定ユニットと、前記固定光学部材と、を含むベース測定ユニットを一体的に移動させることによって、前記左眼と前記右眼のそれぞれに、前記視標光束の像を所定の光学倍率で投影させるための第3移動手段と、
前記第1移動手段と前記第2移動手段の少なくともいずれかの駆動を制御して、前記左眼に対する前記左眼用測定ユニットの移動と、前記右眼に対する前記右眼用測定ユニットの移動と、を実行し、前記第3移動手段の駆動を制御して、前記両眼に対する前記ベース測定ユニットの移動を実行することによって、前記被検眼をアライメントするアライメント制御手段と、
を備え、
前記アライメント制御手段は、
前記前眼部画像取得手段が取得した前記前眼部画像に基づいて前記第3移動手段の駆動を制御し、前記前眼部画像において左右の瞳孔の少なくとも一部が検出されるまで前記ベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、前記被検眼の前後方向の粗アライメントを実施する第1粗アライメントステップと、
前記第1粗アライメントステップを実施した後に、前記前眼部画像における前記瞳孔の位置に基づいて前記第1移動手段の駆動を制御し、前記瞳孔と前記第1光軸が一致するように前記左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、前記前眼部画像における前記瞳孔の位置に基づいて前記第2移動手段の駆動を制御し、前記瞳孔と前記第2光軸とが一致するように前記右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、前記被検眼の左右方向および上下方向の粗アライメントを実施する第2粗アライメントステップと、
前記第2粗アライメントステップを実施した後に前記第3移動手段の駆動を制御し、前記前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方に前記アライメント指標が検出されるまで前記ベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、前記被検眼の前後方向の微アライメントを実施する第1微アライメントステップと、
前記第1微アライメントステップを実施した後に、前記前眼部画像における前記アライメント指標に基づいて前記第1移動手段の駆動を制御し、前記アライメント指標と前記第1光軸とが一致するように前記左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、前記前眼部画像における前記アライメント指標に基づいて前記第2移動手段の駆動を制御し、前記アライメント指標と前記第2光軸とが一致するように前記右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、前記被検眼の左右方向および上下方向の微アライメントを実施する第2微アライメントステップと、
を実行することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1の自覚式検眼装置において、
前記アライメント制御手段は、
前記第1微アライメントステップによって前記左右の瞳孔の一方にのみ前記アライメント指標が検出された場合、
前記第1微アライメントステップを実施した後に、前記第1移動手段または前記第2移動手段の駆動を制御し、前記左右の瞳孔の他方に前記アライメント指標が検出されるまで前記左眼用測定ユニットまたは前記右眼用測定ユニットを前後方向に移動させることによって、前記左右の瞳孔の双方に前記アライメント指標が検出されるように調整する調整ステップを実施し、
前記調整ステップを実施した後に、前記第2微アライメントステップを実施することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の自覚式検眼装置において、
前記アライメント指標投影手段は、前記被検眼に左右方向用および上下方向用のXYアライメント指標を投影する第1アライメント指標投影手段と、前記被検眼に前後方向用のZアライメント指標を投影する第2アライメント指標投影手段と、を有し、
前記アライメント制御手段は、
前記第1微アライメントステップにおいて、前記前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方に前記XYアライメント指標が検出されるまで前記ベース測定ユニットを前後方向に移動させ、
さらに、
前記Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいて、前記左眼用測定ユニットを前後方向に移動させるとともに、前記Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいて、前記右眼用測定ユニットを前後方向に移動させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記矯正光学系は、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系を含み、
前記左眼用測定ユニットは、前記左眼用投光光学系とともに前記左眼用矯正光学系を含み、
前記右眼用測定ユニットは、前記右眼用投光光学系とともに前記右眼用矯正光学系を含み、
前記固定光学部材は、前記左眼に向けて、前記左眼用矯正光学系にて矯正された前記視標光束を導光し、前記右眼に向けて、前記右眼用矯正光学系にて矯正された前記視標光束を導光することを特徴とする自覚式検眼装置。









【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置が知られている。例えば、特許文献1において、被検眼には、測定部からの視標光束が、固定配置された固定光学部材(凹面鏡)を介して導光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-86652公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、被検眼のアライメントにおいて、固定配置された固定光学部材に対して測定部が移動する。このため、被検眼から固定光学部材までの距離と、測定部から固定光学部材までの距離と、の関係が変化することによる光学倍率の変化や、測定光束が固定光学部材を介すことによる光学収差の変化が生じるが、これらの影響を抑えて、アライメントを効率よく進めることが難しかった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼のアライメントを効率よく進めることができる自覚式検眼装置の提供を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
本開示の自覚式検眼装置は、被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系と、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、前記投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、前記被検眼に前記視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材と、を有し、前記被検眼の光学特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置であって、前記投光光学系は、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系を含み、前記被検眼にアライメント指標を投影するアライメント指標投影手段と、前記被検眼の前眼部を撮影して前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、前記固定光学部材に対して、前記左眼用投光光学系を含む左眼用測定ユニットを移動させることによって、左眼に前記左眼用投光光学系の第1光軸を位置合わせするための第1移動手段と、前記固定光学部材に対して、前記右眼用投光光学系を含む右眼用測定ユニットを移動させることによって、右眼に前記右眼用投光光学系の第2光軸を位置合わせするための第2移動手段と、両眼に対して、前記左眼用測定ユニットと、前記右眼用測定ユニットと、前記固定光学部材と、を含むベース測定ユニットを一体的に移動させることによって、前記左眼と前記右眼のそれぞれに、前記視標光束の像を所定の光学倍率で投影させるための第3移動手段と、前記第1移動手段と前記第2移動手段の少なくともいずれかの駆動を制御して、前記左眼に対する前記左眼用測定ユニットの移動と、前記右眼に対する前記右眼用測定ユニットの移動と、を実行し、前記第3移動手段の駆動を制御して、前記両眼に対する前記ベース測定ユニットの移動を実行することによって、前記被検眼をアライメントするアライメント制御手段と、を備え、前記アライメント制御手段は、前記前眼部画像取得手段が取得した前記前眼部画像に基づいて前記第3移動手段の駆動を制御し、前記前眼部画像において左右の瞳孔の少なくとも一部が検出されるまで前記ベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、前記被検眼の前後方向の粗アライメントを実施する第1粗アライメントステップと、前記第1粗アライメントステップを実施した後に、前記前眼部画像における前記瞳孔の位置に基づいて前記第1移動手段の駆動を制御し、前記瞳孔と前記第1光軸が一致するように前記左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、前記前眼部画像における前記瞳孔の位置に基づいて前記第2移動手段の駆動を制御し、前記瞳孔と前記第2光軸とが一致するように前記右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、前記被検眼の左右方向および上下方向の粗アライメントを実施する第2粗アライメントステップと、前記第2粗アライメントステップを実施した後に前記第3移動手段の駆動を制御し、前記前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方に前記アライメント指標が検出されるまで前記ベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、前記被検眼の前後方向の微アライメントを実施する第1微アライメントステップと、前記第1微アライメントステップを実施した後に、前記前眼部画像における前記アライメント指標に基づいて前記第1移動手段の駆動を制御し、前記アライメント指標と前記第1光軸とが一致するように前記左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、前記前眼部画像における前記アライメント指標に基づいて前記第2移動手段の駆動を制御し、前記アライメント指標と前記第2光軸とが一致するように前記右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、前記被検眼の左右方向および上下方向の微アライメントを実施する第2微アライメントステップと、を実行することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】自覚式検眼装置の外観図である。
図2】左眼用測定部を示す図である。
図3】装置内部を正面方向から見た概略図である。
図4】装置内部を側面方向から見た概略図である。
図5】装置内部を上面方向から見た概略図である。
図6】制御系を示す図である。
図7】第1ユニットと第2ユニットとベースユニットの初期位置を説明する図である。
図8】被検眼の前眼部画像と作動距離検出光学系の撮像画像における変化を示す図である。
図9】第1ユニットと第2ユニットとベースユニットの測定位置を説明する図である。
図10】被検眼の前眼部画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本開示の実施形態に係る自覚式検眼装置の概要について説明する。本実施形態では、自覚式検眼装置の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向(作動距離方向)をZ方向とする。符号に付されるLおよびRは、それぞれ左眼用および右眼用を示すものとする。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0009】
本実施形態の自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する。例えば、眼屈折力(球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、コントラスト感度、両眼視機能(斜位量、立体視機能、等)、等の少なくともいずれかを測定してもよい。
【0010】
<アライメント指標投影手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、アライメント指標投影手段(例えば、制御部70)を備える。例えば、アライメント指標投影手段は、被検眼にアライメント指標を投影する。例えば、アライメント指標投影手段は、被検眼に対してアライメント光を投光し、被検眼の角膜周辺にアライメント指標を形成させるアライメント指標投影光学系(例えば、アライメント光学系40)を備えていてもよい。
【0011】
例えば、アライメント指標投影光学系は、被検眼に左右方向用および上下方向用のXYアライメント指標を投影する第1アライメント指標投影手段(例えば、正面投影光学系41)を備えてもよい。この場合には、被検眼の角膜にXY方向を検出するための第1アライメント指標像が形成される。また、例えば、アライメント指標投影光学系は、被検眼に前後方向用のZアライメント指標を投影する第2アライメント指標投影手段(例えば、作動距離検出光学系45)を備えてもよい。この場合には、被検眼の角膜にZ方向を検出するためのアライメント第2指標像が形成される。例えば、このような第1アライメント指標投影手段と、第2アライメント指標投影手段は、各々が独立に設けられてもよいし、少なくとも一部の構成が兼用されてもよい。
【0012】
<前眼部画像取得手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、前眼部画像取得手段(例えば、制御部70)を備える。例えば、前眼部画像取得手段は、被検眼の前眼部を撮影して前眼部画像を取得する。例えば、被検眼の前眼部画像は、被検眼に投影された輝点像を含む画像であってもよいし、輝点像を含まない画像であってもよい。また、被検眼の前眼部画像は、左眼と右眼をともに撮影した1枚の画像であってもよいし、左眼と右眼をそれぞれに撮影した2枚の画像であってもよい。例えば、前眼部画像取得手段は、被検眼の前眼部撮像をするための前眼部撮影光学系(例えば、観察光学系50)を備えてもよい。
【0013】
<自覚式測定手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、自覚式測定手段(例えば、自覚式測定光学系25)を備える。例えば、自覚式測定手段は、被検眼に向けて視標光束を投光する投光光学系(例えば、投光光学系30)を少なくとも有する。さらに、自覚式測定手段は、視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系(例えば、矯正光学系60)を有してもよい。
【0014】
<投光光学系>
投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を投光する。投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を導光する少なくとも1つの光学部材を有してもよい。
【0015】
投光光学系は、視標呈示手段を備えてもよい。視標呈示手段は、被検眼に視標を呈示する。この場合、投光光学系は、被検眼に向けて視標呈示手段から出射された視標光束を投光する。例えば、視標呈示手段としては、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ31)を用いることができる。また、例えば、視標呈示手段としては、光源とDMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。また、例えば、視標呈示手段としては、視標呈示用の可視光源と視標板を用いることができる。
【0016】
投光光学系は、左右一対に設けられた左眼用投光光学系と右眼用投光光学系を有してもよい。例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と右眼用投光光学系を構成する部材とが、同一の部材で構成されていてもよいし、少なくとも一部の部材が異なる部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と右眼用投光光学系を構成する部材とで、少なくとも一部の部材を兼用する構成であってもよい。
【0017】
<矯正光学系>
矯正光学系は、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性(球面度数、円柱度数、乱視軸角度、偏光特性、収差量、等の少なくともいずれか)を変化させる。
【0018】
例えば、矯正光学系は、光学素子を制御することで、視標光束の球面度数、円柱度数、および乱視軸角度、等の少なくともいずれかを変更可能としてもよい。光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、これらの光学素子とは異なる光学素子であってもよい。
【0019】
また、例えば、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示距離を光学的に変更することで、被検眼の球面度数を矯正してもよい。この場合、視標の呈示距離を光学的に変更するために、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成としてもよい。また、この場合、視標の呈示距離を光学的に変更するために、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させる構成としてもよい。
【0020】
なお、矯正光学系は、光学素子を制御する構成と、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成と、光路中に配置された光学素子を光軸方向に移動させる構成と、を組み合わせた構成であってもよい。
【0021】
本実施形態において、矯正光学系は、被検眼の眼前に光学素子を配置する眼屈折力測定ユニット(フォロプタ)であってもよい。例えば、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズを有し、可変焦点レンズの屈折力を変化させる構成であってもよい。また、例えば、眼屈折力測定ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるための駆動手段(例えば、モータ)と、を有し、駆動手段の駆動によって、光学素子を電気的に切り換える構成であってもよい。もちろん、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズと、レンズディスクおよび駆動手段と、を有する構成であってもよい。これらの構成を備える場合、被検眼に向けた視標光束は、眼屈折力測定ユニットを介して投影される。
【0022】
また、本実施形態において、矯正光学系は、視標呈示手段と、被検眼に向けて投光光学系からの視標光束を導光するための光学部材と、の間に光学素子を配置し、光学素子を制御することで、視標光束の光学特性を変更する構成であってもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)の構成であってもよい。この場合、矯正光学系によって矯正された視標光束は、光学部材を介して被検眼に導光される。
【0023】
矯正光学系は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系を有してもよい。例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と右眼用矯正光学系を構成する部材とが、同一の部材で構成されていてもよいし、少なくとも一部の部材が異なる部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と右眼用矯正光学系を構成する部材とで、少なくとも一部の部材を兼用する構成であってもよい。
【0024】
<固定光学部材>
本実施形態の自覚式検眼装置は、固定光学部材を備える。固定光学部材は、投光光学系の光路中に固定配置される固定光学部材であって、被検眼に視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示するための固定光学部材である。例えば、固定光学部材は、投光光学系からの視標光束を、被検眼に導光してもよい。また、例えば、固定光学部材は、投光光学系から投光され、さらに矯正光学系に矯正された視標光束を、被検眼に導光してもよい。なお、固定光学部材は、左眼用測定ユニット(後述)からの視標光束の光路と、右眼用測定ユニット(後述)からの視標光束の光路と、において共用されてもよい。例えば、固定光学部材としては、凹面鏡(例えば、凹面ミラー85)、レンズ、等の少なくともいずれかを用いることができる。
【0025】
本実施形態では、凹面鏡を使用して、被検眼に視標光束の像を光学的に所定の検査距離で呈示する。これによって、所定の光学部材を実距離に配置する必要がないため、装置を省スペース化することができる。
【0026】
<第1移動手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、第1移動手段(例えば、移動ユニット9L)を備える。例えば、第1移動手段は、左眼用投光光学系を含む左眼用測定ユニットを、固定光学部材に対して移動させることによって、左眼に左眼用投光光学系の第1光軸を位置合わせするために用いられる。例えば、第1移動手段は、左眼用測定ユニットを少なくともX方向およびY方向へ移動可能な構成であってもよい。もちろん、例えば、第1移動手段は、左眼用測定ユニットをさらにZ方向へ移動可能な構成であってもよい。つまり、第1移動手段は、左眼用測定ユニットを3次元方向に移動可能な構成であってもよい。
【0027】
なお、左眼用測定ユニットは、少なくとも左眼用投光光学系を含む測定ユニットであればよい。一例としては、左眼用投光光学系のみを含む測定ユニットとして構成されてもよいし、左眼用投光光学系とともに左眼用矯正光学系を含む測定ユニットとして構成されてもよい。
【0028】
<第2移動手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、第2移動手段(例えば、移動ユニット9R)を備える。例えば、第2移動手段は、右眼用投光光学系を含む右眼用測定ユニットを、固定光学部材に対して移動させることによって、右眼に右眼用投光光学系の第2光軸を位置合わせするために用いられる。例えば、第2移動手段は、右眼用測定ユニットを少なくともX方向およびY方向へ移動可能な構成であってもよい。もちろん、例えば、第2移動手段は、右眼用測定ユニットをさらにZ方向へ移動可能な構成であってもよい。つまり、第2移動手段は、右眼用測定ユニットを3次元方向に移動可能な構成であってもよい。
【0029】
なお、右眼用測定ユニットは、少なくとも右眼用投光光学系を含む測定ユニットであればよい。一例としては、右眼用投光光学系のみを含む測定ユニットとして構成されてもよいし、右眼用投光光学系とともに左眼用矯正光学系を含む測定ユニットとして構成されてもよい。
【0030】
<第3移動手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、第3移動手段(例えば、移動ユニット8)を備える。例えば、第3移動手段は、左眼用測定ユニットと、右眼用測定ユニットと、固定光学部材と、を含むベース測定ユニットを、両眼に対して一体的に移動させることによって、左眼と右眼のそれぞれに、視標光束の像を所定の光学倍率で投影させるために用いられる。例えば、第3移動手段は、ベース測定ユニットを少なくともZ方向へ移動可能な構成であってもよい。もちろん、例えば、第3移動手段は、ベース測定ユニットをさらにX方向およびY方向へ移動可能な構成であってもよい。つまり、第3移動手段は、ベース測定ユニットを3次元方向に移動可能な構成であってもよい。
【0031】
<アライメント制御手段>
本実施形態の自覚式検眼装置は、アライメント制御手段(例えば、制御部70)を備える。例えば、アライメント制御手段は、第1移動手段と第2移動手段の少なくともいずれかの駆動を制御して、左眼に対する左眼用測定ユニットの移動と、右眼に対する右眼用測定ユニットの移動と、を実行し、第3移動手段の駆動を制御して、両眼に対する前記ベース測定ユニットの移動を実行することによって、被検眼をアライメントする。
【0032】
本実施例において、アライメント制御手段は、複数のアライメントステップを順に実施する。例えば、XY方向とZ方向のそれぞれに対する大まかなアライメントと細かなアライメントを順に実施する。これによって、被検眼のアライメントを効率よく進めることができる。
【0033】
なお、例えば、被検眼に適切な視標光束の像を投影するためには、被検眼から固定光学部材までの第1距離と、固定光学部材から左眼用測定ユニットおよび右眼用測定ユニットまでの第2距離と、が所定の関係にあり、互いの共役関係を保つことが好ましい。しかし、例えば、第1距離と第2距離が所定の関係にない場合には、第1距離と第2距離における光学倍率が変化することで、互いの共役関係が崩れる。従って、例えば、被検眼に対しては、大まかなアライメントにおいて、先にベース測定ユニットを移動させ、Z方向のアライメントを行ってもよい。同様に、例えば、細かなアライメントにおいて、先にベース測定ユニットを移動させ、Z方向のアライメントを行ってもよい。これによって、第1距離と第2距離の光学倍率の変化を最小限に抑制し、適切な視標光束の像を投影できる。結果として、被検眼の光学特性を精度よく測定することができる。
【0034】
また、例えば、被検眼に適切な視標光束の像を投影するためには、被検眼に投光光学系の光軸を一致(略一致)させることが好ましい。このために、被検眼に対して(固定光学部材に対して)左眼用測定ユニットおよび右眼用測定ユニットを移動させると、視標光束が固定光学部材を介すことによって光学収差が発生し得る。例えば、左眼用測定ユニットと右眼用測定ユニットを固定光学部材に対して大きく移動させるほど、大きな光学収差が発生し得る。しかし、前述の大まかなアライメントと細かなアライメントにいずれにおいても、先にベース測定ユニットを移動させておくことによって、左眼用測定ユニットと右眼用測定ユニットの移動を最小限に抑え、光学収差をより小さくできる。結果として、被検眼の光学特性を精度よく測定することができる。
【0035】
例えば、アライメント制御手段は、第1粗アライメントステップを実施してもよい。例えば、第1粗アライメントステップでは、前眼部画像取得手段が取得した前眼部画像に基づいて第3移動手段の駆動を制御し、前眼部画像において左右の瞳孔の少なくとも一部が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、被検眼の前後方向の粗アライメントを実施してもよい。
【0036】
例えば、アライメント制御手段は、第1粗アライメントステップを実施した後に、第2粗アライメントステップを実施してもよい。
例えば、第1微アライメントステップでは、前眼部画像取得手段が取得した前眼部画像における瞳孔の位置に基づいて第1移動手段の駆動を制御し、瞳孔と第1光軸が一致するように左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、前眼部画像における瞳孔の位置に基づいて第2移動手段の駆動を制御し、瞳孔と第2光軸とが一致するように右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、被検眼の左右方向および上下方向の粗アライメントを実施してもよい。
【0037】
例えば、アライメント制御手段は、第2粗アライメントステップを実施した後に、第1微アライメントステップを実施してもよい。例えば、第1微アライメントステップでは、第3移動手段の駆動を制御し、前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方にアライメント指標が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、被検眼の前後方向の微アライメントを実施してもよい。
【0038】
例えば、アライメント制御手段は、第1微アライメントステップを実施した後に、第2微アライメントステップを実施してもよい。例えば、第2微アライメントステップでは、前眼部画像取得手段が取得した前眼部画像におけるアライメント指標に基づいて第1移動手段の駆動を制御し、アライメント指標と第1光軸とが一致するように左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、前眼部画像におけるアライメント指標に基づいて第2移動手段の駆動を制御し、アライメント指標と第2光軸とが一致するように右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、被検眼の左右方向および上下方向の微アライメントを実施してもよい。
【0039】
例えば、アライメント制御手段は、第1微アライメントステップによって左右の瞳孔の一方にのみアライメント指標が検出された場合、調整ステップを実施し、調整ステップを実施した後に、第2微アライメントステップを実施してもよい。例えば、調整ステップでは、第1移動手段または第2移動手段の駆動を制御し、左右の瞳孔の他方に前記アライメント指標が検出されるまで左眼用測定ユニットまたは右眼用測定ユニットを前後方向に移動させることによって、左右の瞳孔の双方にアライメント指標が検出されるように、調整してもよい。これによって、被検者の顔が斜めを向いている等、左眼と右眼の前後方向の位置に差があるような場合であっても、被検眼のアライメントを効率よく進めることができる。
【0040】
例えば、アライメント制御手段は、第1微アライメントステップにおいて、前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方にXYアライメント指標が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させ、さらに、Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいて、左眼用測定ユニットを前後方向に移動させるとともに、Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいて、右眼用測定ユニットを前後方向に移動させてもよい。例えば、これによって、被検眼のZ方向のアライメント精度を高めることができる。
【0041】
なお、アライメント制御手段は、先のアライメントステップの制御を開始した後のいずれかのタイミングで、次のアライメントステップの制御を開始する構成であればよい。例えば、先のアライメントステップの制御を開始し、その制御が完了するよりも前のタイミングで、次のアライメントステップの制御を開始してもよい。また、例えば、先のアライメントステップの制御を開始し、その制御が終了した後のタイミングで、次のアライメントステップの制御を開始してもよい。
【0042】
<実施例>
本実施形態に係る自覚式検眼装置(以下、検眼装置)の一実施例について説明する。
【0043】
図1は、検眼装置100の外観図である。例えば、検眼装置100は、筐体2、呈示窓3、額当て4、顎台5、コントローラ6、撮像部90、等を備える。筐体2は、その内部に、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等を有する。呈示窓3は、被検眼Eに視標を呈示するために用いる。額当て4および顎台5は、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つために用いる。コントローラ6は、モニタ6a、スイッチ部6b、等を有する。モニタ6aは、各種の情報(例えば、被検眼の測定結果、等)を表示する。モニタ6aは、スイッチ部6bの機能を兼ねたタッチパネルでもよい。スイッチ部6bは、各種の設定(例えば、開始信号の入力、等)を行うために用いる。コントローラ6からの操作指示に応じた信号は、有線通信または無線通信により、制御部70へと出力される。
【0044】
撮像部90は、被検者の顔を撮影し、被検眼のY方向の位置を調整するために用いる。撮像部90は、図示なき撮像光学系を備える。例えば、撮像光学系は、撮像素子とレンズで構成されてもよい。本実施例では、撮像部90が後述のベースユニットU3に設けられ、ベースユニットU3とともにZ方向へ移動する。
【0045】
<測定部>
測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、同一の部材で構成される。もちろん、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、その少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。測定部7は、左右一対の自覚式測定部と、左右一対の他覚式測定部と、を有する(詳細は後述)。被検眼Eには、測定部7からの視標光束および測定光束が、呈示窓3を介して導光される。
【0046】
図2は、左眼用測定部7Lを示す図である。右眼用測定部7Rは、左眼用測定部7Lと同様の構成であるため、省略する。例えば、左眼用測定部7Lは、他覚式測定光学系10、自覚式測定光学系25、観察光学系50、アライメント光学系40、等を備える。
【0047】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系10は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力が測定される。例えば、他覚式測定光学系10は、投影光学系10aと、受光光学系10bと、で構成される。
【0048】
投影光学系10aは、被検眼Eの瞳孔中心部を介して、被検眼Eの眼底にスポット状の測定視標を投影する。例えば、投影光学系10aは、光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、対物レンズ93、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。受光光学系10bは、被検眼Eの眼底で反射された眼底反射光束を、被検眼Eの瞳孔周辺部を介してリング状に取り出す。例えば、受光光学系10bは、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、対物レンズ93、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、等を備える。なお、本実施例では、投影光学系10aと受光光学系10bとの説明を省略する。これらの詳細については、例えば、特開2018-47049号公報を参考されたい。
【0049】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系25は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力が測定される。例えば、自覚式測定光学系25は、投光光学系30と、矯正光学系60と、で構成される。
【0050】
投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、対物レンズ92、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。ディスプレイ31には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。
【0051】
矯正光学系60は、投光光学系30の光路内に配置される。また、矯正光学系60は、ディスプレイ31から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系60は、乱視矯正光学系63、駆動機構39、等を備える。乱視矯正光学系63は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系63は、投光レンズ33と投光レンズ34との間に配置される。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ61aと円柱レンズ61bで構成される。円柱レンズ61aと円柱レンズ61bは、回転機構62aと回転機構62bの駆動によって、光軸L2を中心として、各々が独立に回転する。
【0052】
なお、本実施例では、乱視矯正光学系63として、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。乱視矯正光学系63は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系30の光路に、矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0053】
投影光学系10aが備える光源11およびリレーレンズ12と、受光光学系10bが備える受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、および撮像素子22と、投光光学系30が備えるディスプレイ31と、は駆動機構39によって光軸方向へ一体的に移動可能となっている。つまり、ディスプレイ31、光源11、リレーレンズ12、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、および撮像素子22、が駆動ユニット95として同期し、駆動機構39によって、これらが一体的に移動される。駆動機構39は、モータおよびスライド機構からなる。
【0054】
駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる。これによって、他覚式測定では、被検眼Eに雲霧をかけることができる。自覚式測定では、被検眼Eに対する視標の呈示距離を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる構成が、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系として用いられ、ディスプレイ31の位置を変更することによって、被検眼Eの球面度数が矯正される。なお、球面矯正光学系の構成は、本実施例とは異なっていてもよい。例えば、多数の光学素子を光路内に配置することで、球面度数を矯正してもよい。また、例えば、レンズを光路内に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正してもよい。
【0055】
また、駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、光源11とリレーレンズ12、および、受光絞り18から撮像素子22、を光軸L1方向へ移動させる。これによって、被検眼Eの眼底に対し、光源11、受光絞り18、および撮像素子22が光学的に共役となるように配置される。なお、駆動ユニット95の移動にかかわらず、ホールミラー13とリングレンズ20は、被検眼Eの瞳と一定の倍率で共役になるように配置されている。このため、投影光学系10aの測定光束が反射された眼底反射光束は、常に平行光束として受光光学系10bのリングレンズ20に入射し、被検眼Eの眼屈折力に関わらず、リングレンズ20と同一の大きさのリング状光束が、ピントの合った状態で、撮像素子22に撮像される。
【0056】
<観察光学系>
観察光学系50は、被検眼Eの前眼部を観察および撮像するために用いられる。例えば、観察光学系50は、対物レンズ103、撮像レンズ51、撮像素子52、等を備える。例えば、被検眼Eを照明する前眼部観察光および被検眼Eに投影されるアライメント光束が、ダイクロイックミラー29を通過し、撮像レンズ51を介して、撮像素子52に撮像される。例えば、撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と共役な位置に配置された撮像面をもつ。なお、観察光学系50は、アライメント光学系40の正面投影光学系41(後述)によって、被検眼Eの角膜Ecに形成される第1アライメント指標像を検出する光学系を兼ねている。
【0057】
<アライメント光学系>
アライメント光学系40は、被検眼の角膜にX方向用、Y方向用、およびZ方向用のアライメント指標を投影し、アライメント指標の角膜反射光を検出器で検出する。例えば、アライメント光学系40は、正面投影光学系41と、作動距離検出光学系45と、で構成される。
【0058】
正面投影光学系41は、被検眼Eの角膜Ecに向けてXY方向用のアライメント指標を投影する。例えば、正面投影光学系41は、赤外光源42、レンズ43、等を備える。例えば、赤外光源42から照射された赤外光束(アライメント光束)は、レンズ43を介してハーフミラー44に反射され、被検眼Eに到達する。例えば、これによって、被検眼の角膜EcにXY方向を検出するための第1アライメント指標像が形成される。
【0059】
なお、本実施例では、正面投影光学系41をZ方向用のアライメント指標として用いることが可能である。例えば、この場合には、第1アライメント指標像のフォーカス状態(一例として、第1アライメント指標像にピントがもっとも合う位置)を検出してもよい。
【0060】
作動距離検出光学系45は、被検眼Eの角膜Ecに向けてZ方向用のアライメント指標を投影する。例えば、作動距離検出光学系45によって、被検眼に対する測定部7のZ方向における精密なアライメントが行われる。例えば、作動距離検出光学系45は、投光光学系45aと、検出光学系45bと、を有する。投光光学系45aの光軸と検出光学系45bの光軸は、他覚式測定光学系10と自覚式測定光学系25と観察光学系50の光軸に関して左右対称な位置に配置される。例えば、投光光学系45aは、被検眼Eに対する測定部7のアライメント状態(言い換えると、測定部7が備える各光学系のフォーカス状態)を検出するための検出光を、角膜Ecに向けて斜め方向から投光する。例えば、投光光学系45aは、照明光源46、集光レンズ47、ピンホール板48、および投光レンズ49を有する。角膜Ecとピンホール板48は略共役な位置に配置される。一方、検出光学系45bは、角膜Ecからの検出光の角膜反射光を検出する。例えば、検出光学系45bは、対物レンズ56および検出器57を有する。例えば、検出器57は、複数の画素が配列された検出器(光検出器)であってもよい。一例としては、一次元受光素子(ラインセンサ)が使用されてもよい。角膜Ecと検出器57は略共役な位置に配置される。
【0061】
例えば、照明光源46から出射された検出光は、集光レンズ47を介してピンホール板48を照明する。ピンホール板48の開口を通過した検出光は、投光レンズ49を介して角膜Ecに投光され、角膜Ecにて反射される。その後、角膜反射光は、対物レンズ56を通過して検出器57に検出される。なお、被検眼Eと測定部7とのZ方向の位置関係に応じて、検出器57による検出光の受光位置が変化する。このため、検出光の受光位置とアライメント適正位置とのずれを検出することで、Z方向のアライメントずれ量を検出することができる。
【0062】
<検眼装置の内部構成>
検眼装置100の内部構成について説明する。図3は、検眼装置100の内部を正面方向から見た概略図である。図4は、検眼装置100の内部を側面方向から見た概略図である。図5は、検眼装置100の内部を上面方向から見た概略図である。なお、図4図5では、説明の便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示す。
【0063】
検眼装置100は、他覚式測定部を備える。例えば、他覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等で構成される。また、検眼装置100は、自覚式測定部を備える。例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等で構成される。なお、他覚式測定部および自覚式測定部は、この構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有さない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの光束が、偏向ミラー81を介した後に、凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの光束が、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。
【0064】
例えば、偏向ミラー81は、左右一対にそれぞれ設けられた左眼用偏向ミラー81Lと右眼用偏向ミラー81Rとを有する。例えば、偏向ミラー81は、矯正光学系60と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系60は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用偏向ミラー81Lは左眼用矯正光学系と左眼ELの間に配置され、右眼用偏向ミラー81Rは右眼用矯正光学系と右眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー81は、瞳共役位置に配置されることが好ましい。
【0065】
例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射して、左眼ELに導光する。また、例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼ELからの眼底反射光束を反射して、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射して、右眼ERに導光する。また、例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼ERからの眼底反射光束を反射して、右眼用測定部7Rに導光する。
【0066】
例えば、偏向ミラー81は、駆動部82によって回転移動される。例えば、偏向ミラー81の回転移動によって、被検眼の眼前に視標光束の像を形成するためのみかけの光束を偏向させ、光学的に視標光束の像の形成位置を補正することができる。例えば、駆動部82は、モータ等からなる。例えば、駆動部82は、X方向(水平方向)の回転軸およびY方向(鉛直方向)の回転軸に対して、偏向ミラー81を回転させる。すなわち、駆動部82は、偏向ミラー81をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー81の回転は、X方向又はY方向の一方であってもよい。例えば、駆動部82は、左眼用偏向ミラー81Lを駆動するための駆動部82Lと、右眼用偏向ミラー81Rを駆動するための駆動部82Rと、を有する。
【0067】
なお、本実施例では、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射させて導光する偏向部材として、偏向ミラー81を用いる構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。偏向部材は、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射して導光することができればよく、プリズム、レンズ、等であってもよい。
【0068】
また、例えば、偏向ミラー81は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれに、2つの偏向ミラーを設ける構成(例えば、左眼用光路に2つの偏向ミラーを設ける構成、等)が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。
【0069】
例えば、凹面ミラー85は、被検眼Eに矯正光学系60を通過した視標光束を導光し、被検眼Eの眼前に矯正光学系60を通過した視標光束の像を形成する。例えば、凹面ミラー85は、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、において共有される。例えば、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、において共有される。すなわち、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、が共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー85は、左眼用光路と右眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、のそれぞれに凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。
【0070】
<他覚式測定部と自覚式測定部の光路>
他覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。投影光学系10aの光源11から出射した測定光束は、各光学部材を経由して、左眼ELに到達する。例えば、測定光束は、リレーレンズ12からダイクロイックミラー29までの光学部材を順に経由することによって、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー81Lへと導光される。さらに、視標光束は、左眼用偏向ミラー81Lに反射され、反射ミラー84と凹面ミラー85を介して、左眼ELに導光される。左眼ELの眼底上には、スポット状の点光源像が形成される。このとき、光軸周りに回転するプリズム15によって、ホールミラー13におけるホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は、高速に偏心回転される。
【0071】
被検眼Eの眼底において、測定光束は反射されて射出し、凹面ミラー85、反射ミラー84、および偏向ミラー81を経由して左眼用測定部7Lに導光される。さらに、ダイクロイックミラー29とダイクロイックミラー35に反射され、対物レンズ93によって集光し、高速回転するプリズム15と、ホールミラー13からミラー17までの光学部材と、を介して受光絞り18の開口上で再び集光すると、コリメータレンズ19とリングレンズ20により、リング状の像として撮像素子22に結像する。撮像素子22が撮像したリング状の像を解析することで、被検眼Eの光学特性を他覚的に測定することができる。
【0072】
自覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。自覚式測定光学系25のディスプレイ31から出射した視標光束は、各光学部材を経由して、左眼ELに到達する。例えば、視標光束は、投光レンズ33からダイクロイックミラー29までの光学部材を順に経由することによって、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー81Lへと導光される。さらに、視標光束は、左眼用偏向ミラー81Lに反射され、反射ミラー84と凹面ミラー85を介して、左眼ELに導光される。
【0073】
これにより、左眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左眼ELの眼底上に、矯正光学系60で矯正された視標光束の像が形成される。従って、矯正光学系による球面度数の調整(本実施例では、駆動機構39の駆動)が眼前で行われたことと、乱視矯正光学系63があたかも眼前に配置されたことと、が等価になっている。被検者は、凹面ミラー85を介して光学的に所定の検査距離で眼前に形成された視標光束の像を、自然な状態で視準することができる。
【0074】
<第1ユニットと第2ユニットとベースユニット>
本実施例において、検眼装置100の内部は、第1ユニットU1と、第2ユニットU2と、ベースユニットU3と、により構成される。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2は、左右一対に設けられている。例えば、第1ユニットU1は、左眼用測定部7Lと左眼用偏向ミラー81Lを一体的に移動させるためのユニットである。つまり、左眼用測定部7Lに含まれる投光光学系30および矯正光学系60と、左眼用偏向ミラー81Lと、を一体的に移動させるためのユニットである。同様に、第2ユニットU2は、右眼用測定部7Rと右眼用偏向ミラー81Rを一体的に移動させるためのユニットである。つまり、右眼用測定部7Rに含まれる投光光学系30および矯正光学系60と、右眼用偏向ミラー81Rと、を一体的に移動させるためのユニットである。例えば、ベースユニットU3は、第1ユニットU1、第2ユニットU2、反射ミラー84、および凹面ミラー85を一体的に移動させるためのユニットである。
【0075】
例えば、第1ユニットU1は、ベースユニットU3内に固設された基台86Lに対して、移動ユニット9Lにより、3次元方向に移動される。これによって、例えば、第1ユニットA1は、凹面ミラー85に対して3次元方向に移動可能となる。なお、第1ユニットA1におけるX方向およびY方向の少なくともいずれかの移動によって、被検眼の眼前に視標光束の像を形成するためのみかけの光束の、凹面ミラー85に対する入射位置が変更される。また、第1ユニットA1におけるZ方向の移動によって、凹面ミラー85から第1ユニットA1までの間の距離が変化し、測定部7からの視標光束の像の呈示距離が変更される。
【0076】
例えば、移動ユニット9Lは、X移動部、Y移動部、Z移動部、駆動部、等で構成される。一例として、X移動部は、基台86Lに対して、X方向へY移動部を移動させるスライド機構でもよい。また、Y移動部は、X移動部に対して、Y方向へZ移動部を移動させるスライド機構でもよい。また、Z移動部は、Y移動部に対して、Z方向へ第1ユニットU1を移動させるスライド機構でもよい。つまり、第1ユニットU1は、Z移動部に連結され、Z移動部の移動、Y移動部の移動、およびX移動部の移動を介して、基台86Lに対して3次元方向に移動される。例えば、駆動部は、各移動部をそれぞれに駆動するための複数のモータ等を備えてもよい。
【0077】
例えば、第2ユニットU2は、ベースユニットU3内に固設された基台86Rに対して、移動ユニット9Rにより、3次元方向に移動される。なお、第2ユニットU2の構成と移動ユニット9Rの構成は、それぞれ、第1ユニットU1の構成と移動ユニット9Lの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
例えば、ベースユニットU3は、筐体2内に固設された基台87に対して、移動ユニット8により、Z方向に移動される。これによって、例えば、ベースユニットU3は、被検眼Eに対してZ方向に移動可能となる。例えば、ベースユニットU3におけるZ方向の移動によって、凹面ミラー85から第1ユニットU1および第2ユニットU2までの距離を変化させることなく、第1ユニットU1と第2ユニットU2(左眼用測定部7Lと右眼用測定部7R)をZ方向へ移動させることができる。つまり、凹面ミラー85と、第1ユニットU1および第2ユニットU2と、の位置関係を維持したまま、第1ユニットU1と第2ユニットU2(左眼用測定部7Lと右眼用測定部7R)をZ方向へ移動させることができる。
【0079】
例えば、移動ユニット8は、Z移動部と駆動部で構成される。一例として、Z移動部は、基台87に対してZ方向へベースユニットU3を移動させるスライド機構でもよい。つまり、ベースユニットU3はZ移動部に連結され、Z移動部の移動を介して、基台87に対してZ方向に移動される。駆動部は、Z移動部を駆動するためのモータ等を備えてもよい。
【0080】
<制御部>
図6は、検眼装置100の制御系を示す図である。制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、検眼装置100における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、検眼装置100の動作を制御するための各種プログラム、視標、初期値、等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0081】
例えば、制御部70には、モニタ6a、光源11、赤外光源42、照明光源46、撮像素子22、撮像素子52、検出器57、ディスプレイ31、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部70には、移動ユニット9Lの駆動部、移動ユニット9Rの駆動部、移動ユニット8の駆動部、駆動機構39、等が電気的に接続されている。例えば、メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。
【0082】
<制御動作>
検眼装置100の制御動作について説明する。例えば、第1ユニットU1と、第2ユニットU2と、ベースユニットU3は、それぞれ待機位置に配置されている。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2のX方向の待機位置は、被検眼Eが平均的な瞳孔間距離(一例として、64mm)である場合を想定したX方向の位置であってもよい。一例としては、検眼装置のX中心から左右に32mm離れた位置に測定光軸が配置されるようなX方向の位置であってもよい。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2のY方向の待機位置は、被検者の顔が額当て4および顎台5に固定されることによる被検眼Eの高さ(アイレベル)を想定したY方向の位置であってもよい。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2のZ方向の待機位置は、第1ユニットU1と第2ユニットU2の可動域において、被検眼からもっとも遠いZ方向の位置であってもよい。例えば、ベースユニットU3のZ方向の待機位置は、ベースユニットU3の可動域において、被検眼からもっとも遠いZ方向の位置であってもよい。
【0083】
検者は、被検者に、顔を額当て4と顎台5に当接させて呈示窓3を観察するように指示を出す。このとき、被検者の顔が固定されるため、被検眼EはX方向、Y方向、およびZ方向へずれにくくなる。続いて、検者は、スイッチ部6bを操作し、被検眼Eを固視させるための固視標をディスプレイ31に表示させる。これによって、被検眼Eには固視標が投影される。
【0084】
検者は、スイッチ部6bを操作し、被検眼Eに対するオートアライメントを実行するためのスイッチを選択する。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じて、撮像部90、アライメント光学系40、観察光学系50、移動ユニット9L、移動ユニット9R、移動ユニット8、等を制御し、第1ユニットU1と、第2ユニットU2と、ベースユニットU3と、移動させてオートアライメントを進行させる。以下、詳細に説明する。
【0085】
<顔画像に基づくXY方向の調整(ステップS1)>
まず、制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じて撮像部90を制御し、被検者の両眼を含む顔画像を取得する。また、制御部70は、被検者の顔画像に基づいて、第1ユニットU1と第2ユニットU2を、待機位置から初期位置D1へと移動させる。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2の初期位置D1は、被検眼Eに対するアライメントを開始する際の位置である。
【0086】
図7は、第1ユニットU1および第2ユニットU2の初期位置D1と、ベースユニットU3の初期位置T1と、を説明する図である。図7では、第1ユニットU1を例示して第2ユニットU2は省略し、各光学部材を直線上に配置して簡略化する。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2のX方向の初期位置D1は、ベースユニットU3を移動させることで(詳細は後述)、被検眼Eの前眼部画像において瞳孔の少なくとも一部を検出できるような、X方向の位置であってもよい。また、例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2のY方向の初期位置D1は、ベースユニットU3を移動させることで(詳細は後述)、被検眼Eの前眼部画像において瞳孔の少なくとも一部を検出できるような、Y方向の位置であってもよい。
【0087】
制御部70は、被検者の顔画像を画像処理することによって、左眼の瞳孔位置と右眼の瞳孔位置を検出する。また、制御部70は、左眼の瞳孔と右眼の瞳孔の間の画素数を求め、この画素数を実距離に換算することによって、被検眼のおおよその瞳孔間距離を算出する。
【0088】
例えば、被検者の顔画像に基づくおおよその瞳孔間距離と、平均的な瞳孔間距離と、のずれ量には、予め許容範囲が設けられていてもよい。制御部70は、被検眼のおおよその瞳孔間距離と平均的な瞳孔間距離のずれ量が許容範囲内であれば、第1ユニットU1と第2ユニットU2を移動させず、第1ユニットU1と第2ユニットU2のX方向の待機位置を、X方向の初期位置D1として記憶させる。また、制御部70は、被検眼のおおよその瞳孔間距離と平均的な瞳孔間距離のずれ量が許容範囲外であれば、第1ユニットU1と第2ユニットU2をX方向に移動させて、ずれ量を許容範囲内におさめる。例えば、被検眼のおおよその瞳孔間距離に基づいて、第1ユニットU1と第2ユニットU2のX方向の間隔を調整することによって、ずれ量を許容範囲内におさめる。このときの第1ユニットU1と第2ユニットU2のX方向の位置が、X方向の初期位置D1として記憶される。
【0089】
さらに、制御部70は、被検者の顔画像における左眼の瞳孔位置と右眼の瞳孔位置が、所定の領域におさまるか否かを検出する。制御部70は、左眼の瞳孔位置と右眼の瞳孔位置が所定の領域内であれば、第1ユニットU1と第2ユニットU2を移動させず、第1ユニットU1と第2ユニットU2のY方向の待機位置を、Y方向の初期位置D1として記憶させる。また、制御部70は、左眼の瞳孔位置と右眼の瞳孔位置が所定の領域外であれば、第1ユニットU1と第2ユニットU2をY方向に移動させて、瞳孔を領域内におさめる。このときの第1ユニットU1と第2ユニットU2のY方向の位置が、Y方向の初期位置D1として記憶される。
【0090】
なお、第1ユニットU1と第2ユニットU2のZ方向の待機位置は、Z方向の初期位置D1としてそのまま利用される。また、ベースユニットU3のZ方向の待機位置は、Z方向の初期位置T1としてそのまま利用される。
【0091】
上記のような被検者の顔画像に基づくXY方向の調整が完了した状態では、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(作動距離WD)と、凹面ミラー85から第1ユニットU1および第2ユニットU2までの距離wdと、が異なる距離となっている。
【0092】
<前眼部画像に基づくZ方向の粗アライメント(ステップS2)>
図8は、被検眼Eの前眼部画像210と、作動距離検出光学系45の検出器57の撮像画像220と、におけるステップS2以降の変化を示す図である。図8(a)は前眼部画像210であり、図8(b)は撮像画像220である。図8では、被検眼Eの左眼に対応する前眼部画像210と撮像画像220のみを図示し、右眼に対応する前眼部画像210と撮像画像220の図示は省略する。
【0093】
次に、制御部70は、アライメント光学系40を制御し、被検眼EにXY方向用の第1アライメント指標とZ方向用の第2アライメント指標を投影する。また、制御部70は、観察光学系50を制御し、被検眼Eの前眼部画像210を取得する。
【0094】
制御部70は、被検眼Eの前眼部画像210に基づいて、被検眼Eの瞳孔Pの少なくとも一部が検出されるまで、ベースユニットU3をZ方向へと移動させる(図8(a)の前眼部画像210a参照)。例えば、左眼の前眼部画像210に左眼の瞳孔の少なくとも一部が検出されるようになり、かつ、右眼の前眼部画像210に右眼の瞳孔の少なくとも一部が検出されるようになるまで、ベースユニットU3をZ方向へと移動させる。
【0095】
例えば、このとき、第1ユニットU1と第2ユニットU2は、ベースユニットU3内の初期位置D1に配置されており、第1ユニットU1および第2ユニットU2と、ベースユニットU3と、の位置関係を変化させることなく、ベースユニットU3と一体的にZ方向へ移動される。また、第1ユニットU1と第2ユニットU2のXY方向はステップS1にて調整されているため、ベースユニットU3をZ方向へと移動させるのみで、左右の前眼部画像210に瞳孔の少なくとも一部が写り込むようになる。
【0096】
なお、制御部70は、必ずしも被検眼Eの前眼部に焦点が合った前眼部画像210を得る必要はなく、前眼部画像210から瞳孔Pを検出できる程度に、ベースユニットU3をZ方向へ移動させればよい。一例としては、前眼部画像210において輝度の変化が現れる程度に、ベースユニットU3をZ方向へ移動させればよい。
【0097】
制御部70は、左右の前眼部画像210において、それぞれ、瞳孔の少なくとも一部を検出すると、ベースユニットU3の移動を停止させる。これによって、被検眼の前眼部画像210に基づくZ方向の粗アライメントが完了する。
【0098】
<前眼部画像に基づくXY方向の粗アライメント(ステップS3)>
次に、制御部70は、左右の前眼部画像から検出した瞳孔を円近似することによって瞳孔中心位置Pcを求め、瞳孔中心位置Pcと測定光軸Nとがおおよそ一致するように、第1ユニットU1と第2ユニットU2をX方向およびY方向の少なくともいずれかに移動させる(図8(a)の前眼部画像210b参照)。より詳細には、左眼の前眼部画像210から瞳孔中心位置Pcを検出し、左眼の瞳孔中心位置Pcと左眼用の測定光軸Nとがおおよそ一致するように、第1ユニットU1をX方向およびY方向の少なくともいずれかに移動させる。同様に、右眼の前眼部画像210から瞳孔中心位置Pcを検出し、右眼の瞳孔中心位置Pcと右眼用の測定光軸Nとがおおよそ一致するように、第2ユニットU2をX方向およびY方向の少なくともいずれかに移動させる。制御部70は、左右の前眼部画像210における瞳孔中心位置Pcと測定光軸Nが一致すると、第1ユニットU1と第2ユニットU2の移動を停止させる。これによって、被検眼の前眼部画像210に基づくXY方向の粗アライメントが完了する。
【0099】
<前眼部画像に基づくZ方向の微アライメント(ステップS4)>
次に、制御部70は、左右の前眼部画像210における瞳孔に、XY方向用の第1アライメント指標像M1が検出されるまで、ベースユニットU3をZ方向へと移動させる(図8(a)の前眼部画像210c参照)。ここでは、左眼の前眼部画像210と右眼の前眼部画像210の双方の瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出された場合を例に挙げる。例えば、制御部70は前眼部画像210の輝度の変化を利用して、第1アライメント指標像M1を検出してもよい。これによって、被検眼Eの前眼部に焦点が合った前眼部画像210が得られる。また、制御部70は、第1アライメント指標像M1を検出すると、ベースユニットU3の移動を停止させる。これによって、被検眼の前眼部画像210に基づくZ方向の微アライメントが完了する。
【0100】
なお、制御部70は、左眼の前眼部画像210と右眼の前眼部画像210のいずれかの瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出された時点で、ベースユニットU3の移動を停止させてもよい。例えば、この場合には、後述の調整ステップが続いて実行される。
【0101】
図9は、第1ユニットU1および第2ユニットU2の測定位置D2と、ベースユニットU3の測定位置T2と、を説明する図である。図9でも、第1ユニットU1を例示して第2ユニットU2は省略し、各光学部材を直線上に配置して簡略化する。例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2の測定位置D2、および、ベースユニットU3の測定位置T2は、被検眼Eに対するアライメントが完了した際の位置であり、被検眼Eの自覚式測定を開始することが可能な位置である。
【0102】
制御部70がステップS2およびステップS4を実行することによって、ベースユニットU3は初期位置T1から測定位置T2へと徐々に移動する。ここで、左右の前眼部画像210の瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出される状態では、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(作動距離WD)と、凹面ミラー85から第1ユニットU1および第2ユニットU2までの距離wdと、が同一(略同一)の距離となる。また、被検眼Eから凹面ミラー85までの光学倍率と、凹面ミラー85から第1ユニットU1および第2ユニットU2までの光学倍率と、が等倍になる。これによって、被検眼Eに視標光束の像が良好に投影されるようになる。
【0103】
また、左右の前眼部画像210の瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出される状態では、作動距離検出光学系45の検出器54による撮像画像220に、Z方向用の第2アライメント指標像M2が写り込むようになる(図8(b)の撮像画像220c参照)。制御部70は、撮像画像220から第2アライメント指標像M2を検出し、第2アライメント指標像M2と、Z方向のアライメント適正位置K2と、のずれ量δが所定の許容範囲におさまるように、第1ユニットU1と第2ユニットU2をZ方向に移動させる。より詳細には、左眼の撮像画像220から第2アライメント指標像M2を検出し、第2アライメント指標像M2と左眼用のアライメント適正位置K2とが一致するように、第1ユニットU1をZ方向に移動させる。同様に、右眼の撮像画像220から第2アライメント指標像M2を検出し、第2アライメント指標像M2と右眼用のアライメント適正位置K2とが一致するように、第2ユニットU2をZ方向に移動させる。制御部70は、左右の撮像画像220における第2アライメント指標像M2とアライメント適正位置K2が一致すると、第1ユニットU1と第2ユニットU2の移動を停止させる。これによって、被検眼の撮像画像220に基づくZ方向の微アライメントが完了する。
【0104】
第1アライメント指標像M1に基づいてベースユニットU3を移動させた後、さらに、第2アライメント指標像M2に基づいて第1ユニットU1と第2ユニットU2を移動させたことで、被検眼Eと偏向ミラー81が凹面ミラー85を介して光学的に共役となる。また、被検眼Eの瞳孔位置と、自覚式測定部の瞳共役位置と、が一定の位置関係となる。このとき、被検眼Eから凹面ミラー85までの距離(作動距離WD)と、凹面ミラー85から第1ユニットU1および第2ユニットU2までの距離wdと、における光学倍率の関係性がわずかに崩れ、光学収差が発生する場合がある。しかし、このような光学収差は小さいため無視できる。あるいは、被検眼Eの光学特性と、第1ユニットU1および第2ユニットU2の測定位置D2と、に基づいて、光学収差を補正するような演算処理が実行されてもよい。
【0105】
<前眼部画像に基づくXY方向の微アライメント(ステップS5)>
次に、制御部70は、左右の前眼部画像210における第1アライメント指標像M1と、測定光軸N(言い換えると、XY方向のアライメント適正位置K1)と、のずれ量δ1xとずれ量δ1yが所定の許容範囲におさまるように、第1ユニットU1と第2ユニットU2をX方向およびY方向に移動させる(図8(a)の前眼部画像210d参照)。より詳細には、左眼の前眼部画像210において、第1アライメント指標像M1と左眼用の測定光軸(アライメント適正位置K2)とが一致するように、第1ユニットU1をX方向およびY方向の少なくともいずれかに移動させる。同様に、右眼の前眼部画像210において、第1アライメント指標像M1と右眼用の測定光軸(アライメント適正位置K2)とが一致するように、第1ユニットU1をX方向およびY方向の少なくともいずれかに移動させる。制御部70は、左右の前眼部画像210における第1アライメント指標像M1と測定光軸N(アライメント適正位置K1)が一致すると、第1ユニットU1と第2ユニットU2の移動を停止させる。これによって、被検眼の前眼部画像210に基づくXY方向の微アライメントが完了する。
【0106】
本実施例では、制御部70がステップS2~ステップS5のアライメント制御を順に実行することによって、第1ユニットU1と第2ユニットU2は、初期位置D1から測定位置D2へと徐々に移動し、ベースユニットU3は、初期位置T1から測定位置T2へと徐々に移動する。例えば、第1ユニットU1および第2ユニットU2と、ベースユニットU3と、を同時に移動させ、XY方向用の第1アライメント指標像M1と、Z方向用の第2アライメント指標像M2と、を探しながらアライメントを進めるよりも、効率よく測定位置D2および測定位置T2に配置することができる。特に、本実施例のような、被検眼Eに対して検出器54の撮像面が大きくずれていると、第2アライメント指標像M2が撮像画像220に写り込まない構成においては、より有効である。
【0107】
<自覚式測定>
検者は、被検眼Eのオートアライメントが完了すると、被検眼Eに対する自覚式測定を開始する。検者は、スイッチ部6bを操作して、被検眼Eを矯正する矯正度数を設定する。一例として、被検眼Eの他覚的な眼屈折力(他覚値)に基づき、被検眼Eを矯正する球面度数、円柱度数、および乱視軸角度を選択してもよい。また、検者は、スイッチ部6bを操作して、被検眼Eに呈示する視標の視力値を切り換えながら、被検眼Eを矯正する矯正度数が適切であるかを確認する。例えば、被検者に視標の向きを問い、被検者が正答すれば1段階高い(すなわち、小さな値の)視力値に切り換え、被検者が誤答すれば1段階低い(すなわち、大きな値の)視力値に切り換えてもよい。被検眼Eを矯正する矯正度数が不適切であった場合等には、矯正度数を変更してもよい。検者は、これらの手順を繰り返すことによって、被検眼Eの自覚的な眼屈折力(自覚値)を取得する。
【0108】
なお、被検眼Eの自覚式測定の開始後に、被検眼Eがアライメント適正位置K1およびアライメント適正位置K1の少なくともいずれかの許容範囲から外れてしまった場合には、被検眼Eに第1ユニットU1と第2ユニットU2を追尾(トラッキング)させてもよい。例えば、制御部70は、左右の前眼部画像210における第1アライメント指標像M1と、測定光軸N(XY方向のアライメント適正位置K1)と、のずれ量がゼロとなるように、第1ユニットU1と第2ユニットU2をX方向およびY方向に移動させるとともに、左右の撮像画像220における第2アライメント指標像M2と、Z方向のアライメント適正位置K2と、のずれ量がゼロとなるように、第1ユニットU1と第2ユニットU2をZ方向に移動させてもよい。これによって、被検眼Eの速い動きに対応できる。
【0109】
以上、説明したように、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、被検眼の前眼部画像において左右の瞳孔の少なくとも一部が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、被検眼の前後方向の粗アライメントを実施する第1粗アライメントステップと、第1粗アライメントステップを実施した後に、被検眼の瞳孔と左眼用投光光学系の第1光軸が一致するように左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、被検眼の瞳孔と右眼用投光光学系の第2光軸とが一致するように右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、被検眼の左右方向および上下方向の粗アライメントを実施する第2粗アライメントステップと、第2粗アライメントステップを実施した後に、被検眼の左右の瞳孔の少なくとも一方にアライメント指標が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、被検眼の前後方向の微アライメントを実施する第1微アライメントステップと、第1微アライメントステップを実施した後に、アライメント指標と第1光軸とが一致するように左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、アライメント指標と第2光軸とが一致するように右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、被検眼の左右方向および上下方向の微アライメントを実施する第2微アライメントステップと、を実行する。例えば、これによって、被検眼のアライメントを効率よく進めることができる。また、被検眼Eから固定光学部材までの距離(作動距離WD)と、固定光学部材から左眼用測定ユニットおよび右眼用測定ユニットまでの距離(距離wd)と、における所定の関係を維持しつつ、左眼用測定ユニットと右眼用測定ユニットの位置を調整することができるため、ベース測定ユニットの移動にともなう光学倍率の変化と、左眼用測定ユニットおよび右眼用測定ユニットの移動にともなう光学収差の発生と、を最小限に抑制し、被検眼の光学特性を精度よく測定することができる。
【0110】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第1微アライメントステップにおいて、前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方にXYアライメント指標が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させ、さらに、Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいて、左眼用測定ユニットを前後方向に移動させるとともに、Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいて、右眼用測定ユニットを前後方向に移動させる。例えば、第1アライメント指標投影光学系(正面投影光学系41)による前眼部画像のXYアライメント指標を用いる場合は、XYアライメント指標像のピントの変化を利用して、Z方向のフォーカス状態を検出することができる。一方、例えば、第2アライメント指標投影光学系(作動距離検出光学系45)による撮影画像のZアライメント指標を用いる場合は、Zアライメント指標像の位置の変化を利用して、Z方向のフォーカス状態を検出することができる。従って、例えば、被検眼に投影されたXYアライメント指標のフォーカス状態に基づいてベース測定ユニットを前後方向へ移動させるよりも、Zアライメント指標のフォーカス状態に基づいてベース測定ユニットを前後方向へ移動させる場合は、Z方向の正確なフォーカス状態を把握しやすく、アライメント精度をより高めることができる。
【0111】
<変容例>
本実施例では、被検眼Eに対するアライメント制御において、現在のステップによる制御が完了した後(すなわち、現在のステップにおいて各ユニットの移動が停止された後)に、次のステップによる制御が開始される場合を例に挙げて説明した。しかし、被検眼Eに対するアライメント制御は、現在のステップによる制御が開始された後のタイミングであって、現在のステップにおいて各ユニットの移動が停止されるよりも前のタイミングで、次のステップによる制御が開始されてもよい。言い換えると、現在のステップを実行しながら、一部の時間を重ねて、次のステップを実行してもよい。これによって、被検眼Eのアライメント制御にかかる時間をより短縮することができる。
【0112】
本実施例では、被検眼Eの前眼部画像210に基づいて、Z方向とXY方向の粗アライメント(ステップS2とステップS3)を実行した後に、Z方向とXY方向の微アライメント(ステップS4とステップS5)を実行する場合を例に挙げて説明した。しかし、例えば、XY方向の粗アライメント(ステップS3)において、被検眼Eの角膜形状等によっては、実際の瞳孔中心位置Pcと測定光軸Nが必ずしも一致するとは限らない。例えば、この場合には、続くZ方向の微アライメント(ステップS4)において、前眼部画像210から第1アライメント指標像M1を検出することが難しくなる場合があり、被検眼のアライメントを効率よく進められない可能性がある。
【0113】
そこで、制御部70は、被検眼Eの前眼部画像210に基づき、Z方向とXY方向のそれぞれについて、2段階の粗アライメントを実行してもよい。より詳細には、制御部70は、前眼部画像210から瞳孔Pを検出することによって、Z方向とXY方向の1段階目の粗アライメント(ステップS2とステップS3)を行い、さらに、前眼部画像210からZ方向用の第2アライメント指標像を検出することによって、Z方向とXY方向の2段階目の粗アライメントを実行してもよい。また、制御部70は、このような2段階の粗アライメントを実行した後に、Z方向とXY方向の微アライメント(ステップS4とステップS5)を実行してもよい。
【0114】
以下、1段階目の粗アライメントは同様であるため省略し、2段階目の粗アライメントについて説明する。ここでは、1段階目のZ方向の粗アライメントであるステップS2をステップS2-A、1段階目のXY方向の粗アライメントであるステップS3をステップS3-A、とする。また、2段階目のZ方向の粗アライメントをステップS2-B、2段階目のXY方向の粗アライメントをステップS3-Bとする。
【0115】
図10は、被検眼Eの前眼部画像210の一例である。例えば、被検眼Eには、ステップS2-AでXY方向用の第1アライメント指標とZ方向用の第2アライメント指標が投影されている。制御部70は、ステップS2-AとステップS3-Aの工程で各ユニットを移動させると、続いて、ステップS2-Bを実行する。例えば、制御部70は、ステップS2-Bにおいて、前眼部画像210の瞳孔にZ方向用の第2アライメント指標像が検出されるまで、ベースユニットU3をZ方向へと移動させる。
【0116】
例えば、被検眼Eの実際の瞳孔中心位置Pcと測定光軸Nがこの時点でずれていても、被検眼Eに斜め方向から検出光を投光している作動距離検出光学系45では、第2アライメント指標像M2´がケラれにくく、前眼部画像210に写り込むようになる。一方、被検眼Eの正面方向から赤外光束を投光している正面投影光学系41は、第1アライメント指標像M1がケラれてしまい、前眼部画像210に写り込まない。なお、被検眼Eの実際の瞳孔中心位置Pcと測定光軸Nがおおよそ一致している場合には、さらにベースユニットU3をZ方向へと移動させることで、第1アライメント指標像M1が写り込む。
【0117】
制御部70は、第2アライメント指標像M2´を検出すると、ベースユニットU3の移動を停止させる。これによって、被検眼の前眼部画像210に基づく2段階目のZ方向の粗アライメントが完了する。
【0118】
次に、制御部70は、ステップS3-Bを実行する。例えば、制御部70は、前眼部画像210における第2アライメント指標像M2´と、測定光軸N(XY方向のアライメント適正位置K1)と、のずれ量が所定の許容範囲におさまるように、第1ユニットU1と第2ユニットU2をX方向およびY方向に移動させる。また、例えば、制御部70は、前眼部画像210における第2アライメント指標像M2´と測定光軸N(アライメント適正位置K1)が一致すると、第1ユニットU1と第2ユニットU2の移動を停止させる。これによって、被検眼の前眼部画像210に基づく2段階目のXY方向の粗アライメントが完了する。
【0119】
例えば、被検眼Eの実際の瞳孔中心位置Pcと測定光軸Nがずれていても、ステップS2-BとステップS3-Bの工程を実施し、第2アライメント指標像M2´に測定光軸Nを一致させることで、実際の瞳孔中心位置Pcが測定光軸Nにより近づく。また、前眼部画像210上では、作動距離検出光学系45と正面投影光学系41の設計上、第2アライメント指標像M2´の周辺に第1アライメント指標像M1が現れる。このため、制御部70がステップS4にてベースユニットU3をZ方向へと移動させた際に、XY方向用の第1アライメント指標像M1はケラれることなく容易に検出される。
【0120】
このように、本実施例の自覚式検眼装置は、1段階目の第1粗アライメントステップ(ステップS2-A)と第2粗アライメントステップ(ステップS3-A)を実施した後に、前眼部画像における左右の瞳孔の少なくとも一方にアライメント指標が検出されるまでベース測定ユニットを前後方向に移動させることによって、被検眼の前後方向の粗アライメントを実施する2段階目の第1粗アライメントステップ(ステップS2-B)を実施し、さらに、2段階目の第1粗アライメントステップを実施した後に、前眼部画像におけるアライメント指標に基づいて、アライメント指標と第1光軸とが一致するように左眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させるとともに、アライメント指標と第2光軸とが一致するように右眼用測定ユニットを左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることによって、被検眼の左右方向および上下方向の粗アライメントを実施する2段階目の第2粗アライメントステップ(ステップS3-B)を実施してもよい。これによって、被検眼のアライメントをより効率的に進めることができる。
【0121】
本実施例では、被検眼Eの前眼部画像210に基づくZ方向の微アライメント(ステップS4)において、被検眼Eに対してベースユニットU3をZ方向へ移動させることによって、左眼の前眼部画像210と右眼の前眼部画像210の双方の瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出される場合を例に挙げて説明した。しかし、被検者の顔が斜めに固定されている等、左眼と右眼の前後方向にずれがあると、被検眼Eに対してベースユニットU3をZ方向へ移動させるのみでは、左眼の前眼部画像210と右眼の前眼部画像210のいずれかの瞳孔にしか第1アライメント指標像M1を検出できない場合がある。このため、制御部70は、ステップS4を実行した後に、調整ステップを実行してもよい。例えば、調整ステップは、左眼と右眼において、前眼部画像210の瞳孔に第1アライメント指標像M1を検出できなかった眼に対してのみ実行される。
【0122】
本実施例では、ステップS4において、左眼の前眼部画像210の瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出されるまで、ベースユニットU3がZ方向へ移動されたとする。例えば、制御部70は、右眼の前眼部画像210における瞳孔に、第1アライメント指標像M1が検出されるまで、第2ユニットU2のみをZ方向に移動させる。また、制御部70は、第1アライメント指標像M1を検出すると、第2ユニットU2の移動を停止させる。例えば、これによって、左眼の前眼部画像210と右眼の前眼部画像210の双方の瞳孔に第1アライメント指標像M1が検出されるようになる。例えば、制御部70は、必要に応じてこのような調整ステップを実行した上で、前眼部画像210に基づくXY方向の微アライメント(ステップS5)を実行してもよい。
【0123】
このように、本実施例の自覚式検眼装置は、第1微アライメントステップによって左右の瞳孔の一方にのみアライメント指標が検出された場合、第1微アライメントステップを実施した後に、左右の瞳孔の他方にアライメント指標が検出されるまで左眼用測定ユニットまたは右眼用測定ユニットを前後方向に移動させることによって、左右の瞳孔の双方にアライメント指標が検出されるように調整する調整ステップを実施し、調整ステップを実施した後に、第2微アライメントステップを実施する。例えば、被検者の顔が斜めを向いている等、左眼と右眼の前後方向の位置に差があるような場合、片眼のアライメント指標がベース測定ユニットをZ方向へ移動させても検出されないため、続く第2微アライメントステップにおいて、アライメント指標と第1光軸(または第2光軸)とが一致するように左眼用測定ユニット(または右眼用測定ユニット)を左右方向および上下方向の少なくともいずれかに移動させることが困難になる。しかし、例えば、このような調整ステップを挟むことによって、被検眼のアライメントを効率よく進めることができる。
【符号の説明】
【0124】
7 測定部
10 他覚式測定光学系
25 自覚式測定光学系
70 制御部
75 メモリ
81 偏向ミラー
84 反射ミラー
85 凹面ミラー
100 自覚式検眼装置
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