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特開2024-125079酸素還元触媒の活性化用組成物、燃料電池用電極、燃料電池および酸素還元触媒の活性化方法
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  • 特開-酸素還元触媒の活性化用組成物、燃料電池用電極、燃料電池および酸素還元触媒の活性化方法 図1
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  • 特開-酸素還元触媒の活性化用組成物、燃料電池用電極、燃料電池および酸素還元触媒の活性化方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125079
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】酸素還元触媒の活性化用組成物、燃料電池用電極、燃料電池および酸素還元触媒の活性化方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20240906BHJP
   H01M 8/1016 20160101ALI20240906BHJP
【FI】
H01M4/90 Y
H01M8/1016
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033172
(22)【出願日】2023-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.刊行物名 電気化学会第89回大会 講演要旨集 2.発行日 令和4年3月4日 3.公開者 星 永宏、中村 将志、鈴木 琉斐 〔刊行物等〕1.集会名 電気化学会第89回大会 2.開催日 令和4年3月16日 3.公開者 星 永宏、中村 将志、鈴木 琉斐
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/高温低加湿作動を目指した革新的低白金化技術開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】星 永宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 将志
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018EE16
5H126BB06
5H126GG17
(57)【要約】
【課題】安全かつ簡便に酸素還元触媒の活性を向上させる新たな手段を提供すること。
【解決手段】
式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を含んでなる、酸素還元触媒の活性化用組成物を用いる。
【化1】
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を含んでなる、酸素還元触媒の活性化用組成物:
【化1】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
【請求項2】
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子または酸素原子を表し、
、XまたはXが酸素原子を表す場合、X、XまたはXが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
、R、RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
が酸素原子を表す、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)で表される化合物が、カフェイン、キサンチン、パラキサンチン、テオフィリン、テオブロミン、プリン、ヒポキサンチン、サキシトシンおよびエリタデニンから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記酸素還元触媒が、白金(Pt)を含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸素還元触媒が、燃料電池用電極の構成材料ある、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
燃料電池用電解質組成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
固形状または液状である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物の濃度が、1×10-8~1×10-3 mol/Lである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
表面の少なくとも一部が式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物で修飾されている、酸素還元触媒:
【化2】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
【請求項12】
請求項11に記載の酸素還元触媒を含んでなる、燃料電池用電極。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物または請求項12に記載の電極を備えた、燃料電池。
【請求項14】
式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を用いて酸素還元触媒の表面の少なくとも一部を修飾する工程を含む、酸素還元触媒の活性化方法:
【化3】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素還元触媒の活性化用組成物、燃料電池用電極、燃料電池および酸素還元触媒の活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素を化学反応させて水を生成する際に生じるエネルギーを取り出して発電する装置である。燃料電池は、発電時に水しか排出しないため、地球温暖化対策の一環として注目されている。しかしながら、燃料電池の電極には、触媒材料として白金(Pt)等高価で資源量の乏しい材料が使用されているため、触媒使用量を低減することは燃料電池の普及に向けた課題の一つである。
【0003】
燃料電池反応における酸素還元反応(Oxygen reduction reaction、以下「ORR」という場合がある)の活性が向上することにより、触媒の使用量の低減を図ることができるため、ORR活性を向上させる技術について様々な研究が行われていた。
【0004】
例えば、本発明者らは、特許文献1において、燃料電池の電極にアンモニウムイオン及びホスホニウムイオンの少なくともいずれかを、非共有結合相互作用によって存在させることで、より効率的な酸素還元反応を行うことのできる固体燃料電池が開示している。さらに、本発明者らは、非特許文献1において、燃料電池の系内に添加するテトラアルキルアンモニウムのアルキル鎖長が長くなるほどORR活性が増大し、特に、第四級アンモニウムカチオン(tetra-n-hexylammonium、THA)を添加する場合には何も添加しない場合よりORR活性は約8倍向上することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-185913
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature Communication 9,4378(2018)
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載されたアンモニウムイオンおよびホスホニウムイオンはいずれも、炭素数の増加に伴い毒性を示すものであり刺激性が強い。また、ORR活性の高いこれらの化合物は水に難溶性であることから濃度調整が困難であり、燃料電池の電極として用いる酸素還元触媒の活性化用組成物として工業上の利便性が低いことが本発明者らのさらなる検討により明らかとなった。
【0008】
したがって、本発明は、安全かつ簡便に酸素還元触媒のORR活性を向上させる新たな手段を提供することを一つの目的としている。
【0009】
本発明者らは、今般、鋭意研究した結果、特定のプリン塩基化合物を用いて酸素還元触媒を修飾すると、酸素還元触媒の活性を安全かつ簡便に向上させることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0010】
したがって、本発明の一実施態様によれば、式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を含んでなる、酸素還元触媒の活性化用組成物が提供される:
【化1】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
【0011】
また、本発明の一実施態様によれば、式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を含んでなる、燃料電池用電解質組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の一実施態様によれば、上記酸素還元触媒を含んでなる、燃料電池用電極が提供される。
【0013】
また、本発明の一実施態様によれば、表面の少なくとも一部が式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物で修飾されている、酸素還元触媒が提供される。
【0014】
また、本発明の一実施態様によれば、上記組成物または上記電極を備えた、燃料電池が提供される。
【0015】
また、本発明の一実施態様によれば、式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を用いて酸素還元触媒の表面の少なくとも一部を修飾する工程を含む、酸素還元触媒の活性化方法が提供される。
【0016】
本発明によれば、式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を用いることにより、酸素還元触媒の活性を安全かつ簡便に向上させることができる。式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物は、比較的毒性が低く、水への溶解性も高く濃度調整も容易であることから、安全で取り扱いのしやすい酸素還元触媒の活性向上剤として有利に利用することができる。また、式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物は、比較的安価であることから、工業生産上有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】カフェイン溶液に浸漬することによりカフェイン修飾したPt単結晶電極とカフェイン修飾していないPt単結晶電極に関して、基本指数面((111)、(100)、(110))における0.9V(RHE:Reversible Hydrogen Electrode)でのORR活性を比較したグラフである。
図2】カフェインを含有する電解液を用いてカフェイン修飾したPt単結晶電極とカフェイン修飾していないPt単結晶電極に関して、(111)構造を有するPt面における0.9V(RHE)でのORR活性を比較したグラフである。
図3】カフェインを含有する電解液を用いてカフェイン修飾したPt(111)の耐久性試験の結果を示すグラフである。
図4】電解液におけるカフェイン濃度と、Pt(111)電極の酸素還元活性との関係について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<定義>
以下、本明細書で用いられる用語および表現について説明する。以下の定義は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。
【0019】
本明細書において、例えば、「C~C」とは炭素数1~6個を有することを意味する。
【0020】
「アルキル基」は、アルカンから1個の水素原子を除去することにより生成される1価の官能基を意味する。アルキル基は、鎖状、環状およびこれらの組み合わせのいずれであってもよい。なお、環状のアルキル基は「シクロアルキル基」と同義である。鎖状は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキル基は、好ましくは、直鎖状または分岐鎖状である。
【0021】
「アルキル鎖」は、アルカンから2個の水素原子を除去することにより生成される1価の官能基を意味する。アルキル鎖は、鎖状、環状およびこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0022】
ある官能基に関して「置換基を有していてもよい」という表現は、当該官能基の1個以上の水素原子が、それぞれ独立して、他の原子または原子団で置き換えられていてもよいことを意味し、置換基を有していてもまたは無置換であってもよいことと同義である。
【0023】
アルキル基の炭素数が1~4個である場合、アルキル基が有し得る置換基の数は、通常1~3個、好ましくは1または2個、より好ましくは1個である。アルキル基の炭素数が5~9個である場合、アルキル基が有し得る置換基の数は、通常1~6個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より一層好ましくは1または2個である。アルキル基の炭素数が10個以上である場合、アルキル基が有し得る置換基の数は、通常1~9個、好ましくは1~5個、より一層好ましくは1~4個、より一層好ましくは1または2個である。
【0024】
<式(I)で表される化合物>
本発明の一実施態様によれば、酸素還元触媒の活性化用組成物は、下式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を有効成分として含んでなる。式(I)で表される化合物(以下、単に「式(I)化合物」ともいう)を用いて酸素還元触媒の酸素還元活性を顕著に向上させることができることは意外な事実である。式(I)化合物による酸素還元触媒の活性向上作用は、後述する試験例1と同様の手法により、式(I)化合物を用いない場合と比較すること決定することができる。
【0025】
【化2】
【0026】
本発明の一実施態様によれば、式(I)において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
【0027】
式(I)において、点線は結合手(単結合)を表すか存在しない。点線が結合手を表す場合、実線と共に二重結合を表す。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、カルバモイルオキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、Rは存在しない。また、本発明の別の実施態様によれば、R、RおよびRは存在せず、Rは水素原子を表す。本願発明の別の好ましい実施態様によれば、R、R、RおよびRは水素原子を表す。また、本発明の別の実施態様によれば、R、RおよびRは水酸基、カルバモイルオキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基または水素原子を表し、Rは存在しない。また、本発明の別の実施態様によれば、R、RおよびRのうち二つの基は水酸基、カルバモイルオキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し他の一つの基は水素原子を表し、Rは存在しない。
【0029】
また、上記いずれかの実施態様において、R、R、RまたはRが表すアルキル基は、水酸基、カルバモイルオキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいが、無置換であることが好ましい。
【0030】
上記いずれかの実施態様において、R、R、RまたはRが表すアルキル基は、アルキル基は、通常C~C20、好ましくはC~C10、より好ましくはC~C、さらに好ましくはC~C、さらに好ましくはC~Cである。
味する。
【0031】
アルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC~Cアルキル基;ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、オクチル基、1-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、ノニル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、6,6-ジメチルヘプチル基、デシル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、6-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-プロピルヘプチル基等の基を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0032】
また、本発明の一実施態様によれば、Rはプリン骨格の4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在しない。また、上記いずれかの実施態様において、上記アルキル鎖は、無置換であることが好ましい。アルキル鎖の鎖長(4位の炭素原子の含めない場合)は、アルキル鎖は、通常C~C20、好ましくはC~C10、より好ましくはC~C、さらに好ましくはC~C、さらに好ましくはC~Cである。
【0033】
上記いずれかの実施態様において、X、XおよびXは、すべて酸素原子またはNH 基を表すことが好ましい。また、上記いずれかの実施態様において、X、XおよびXのうち、二つの基は酸素原子またはNH 基を表し、一つの基は水素原子またはアミノ基を表すことが好ましい。上記いずれかの実施態様において、X、Xは酸素原子またはNH 基を表し、Xは水素原子またはアミノ基を表すことが好ましい。また、上記いずれかの実施態様において、X、Xは酸素原子またはアミノ基を表し、Xは水素原子を表すことが好ましい。ままた、上記いずれかの実施態様において、X、XおよびXのうち、二つの基は水素原子を表し、一つの基はアミノ基を表すことが好ましい。また、上記いずれかの実施態様において、X、Xは水素原子を表し、Xは酸素原子またはアミノ基を表すことが好ましい。また、上記いずれかの実施態様において、X、XおよびXは、すべて水素原子を表すことが好ましい。
【0034】
また、本発明の一実施態様によれば、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子または酸素原子を表し、
、XまたはXが酸素原子を表す場合、X、XまたはXが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在しない。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、R、RおよびRは、水素原子またはアルキル基を表し、Rは水素原子を表すかまたは存在せず、XおよびXは水素原子または酸素原子を表し、Xは水素原子を表す。
【0036】
式(I)化合物は、酸素還元触媒の活性向上作用を有している限り特に限定されないが、具体的は例としては、カフェイン、キサンチン、パラキサンチン、テオフィリン、テオブロミン、プリン、ヒポキサンチンまたは、アデニン、グアニン、イソグアニン、尿酸、サキシトシンまたはエリタデニン等が挙げられるが、好ましくはカフェイン、キサンチン、パラキサンチン、テオフィリン、テオブロミン、プリン、ヒポキサンチン、サキシトシンまたはエリタデニンであり、より好ましくはカフェインまたはプリンである。
【0037】
カフェインは 式(I)において、R、RおよびRがすべてメチル基であり、Rが存在せず、X、Xは酸素原子を表し、Xは水素原子である化合物であり、以下の式で表される。
【0038】
【化3】
【0039】
また、プリンは、式(I)において、R、R、Rが存在せず、R、X、XおよびXがすべて水素原子である化合物であり、以下の式で表される。
【0040】
【化4】
【0041】
式(I)化合物の塩は、特に限定されず、無機酸塩であってもよく、有機酸塩であってよい。無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸塩としては、例えば、安息香酸塩等が挙げられる。
【0042】
また、式(I)化合物は、無水和物であってもよいが、水和物であってもよい。式(I)化合物の水和物における水和水の量は特に限定されず、例えば、1水和物等であってもよい。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、酸素還元触媒の活性化用組成物において、式(I)化合物の濃度は、例えば、1x10-8~10-3mol/Lとすることができるが、酸素還元活性の向上の観点からは、好ましくは1x10-7~10-4mol/L、より好ましくは1x10-7~10-5mol/L、さらに好ましくは1x10-6mol/Lとされる。
【0044】
酸素還元触媒を使用した電池において、酸素還元活性をより効率的に向上させる観点からは、所定濃度の式(I)化合物を含む電解質組成物を使用する電解質として使用することが好ましい。本発明の一実施態様によれば、式(I)化合物を含んでなる、酸素還元触媒の活性化用組成物は、燃料電池用電解質組成物として提供される。燃料電池用電解質組成物は、固形状(電解質膜、電解質層)または液状(電解液)に調整することができるが、式(I)化合物の濃度調整の観点からは、液状とすることが好ましい。式(I)化合物を添加する電解液としては、燃料電池に通常使用される電解液を使用してよく、例えば、リン酸、硫酸、過塩素酸等を含む水溶液等が挙げられる。
【0045】
また、式(I)化合物で酸素還元触媒表面を修飾することにより、酸素還元触媒を活性化させることができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、表面の少なくとも一部が式(I)化合物またはその塩もしくは水和物で修飾されている酸素還元触媒が提供される。
【0046】
本発明の一実施態様においては、酸素還元触媒の表面の少なくとも一部において、式(I)化合物は結晶面に対し分子面を垂直にして吸着している状態が好ましい。電極表面に式(I)化合物が吸着することで、表面近傍の水分子の水素結合ネットワーク構造を壊し、酸素還元反応(ORR)阻害種の白金酸化物を不安定化し、ORRを活性化させることができると考えられる。
【0047】
また、式(I)化合物は、酸素還元触媒を被覆していてもよい。式(I)化合物による酸素還元触媒の被覆率(式(I)化合物により被覆された酸素還元触媒の表面積/酸素還元触媒の全表面積)は、例えば、0.02~0.5、好ましくは0.18~0.25とされる。被覆率は、吸着水素脱離電気量を使って測定することができる。
【0048】
式(I)化合物により修飾される酸素還元触媒は、導電性を備えるとともに触媒機能を備えた電極(アノードまたはカソード)の構成材料として使用するものが好ましく、白金を含む材料がより好ましい。かかる酸素還元触媒の好適な例としては、白金単結晶、白金粉末、白金担持カーボン、白金-パラジウム合金担持カーボン、白金-コバルト合金担持カーボン、白金-ニッケル合金担持カーボン等が挙げられるが、白金単結晶がより好ましい。
【0049】
酸素還元反応の開始電位では、白金電極において、白金酸化物(PtOH、PtO)が生成し、これらの白金酸化物は酸素還元反応を阻害するといわれている。理論に拘束されるものでないが、本発明においては、式(I)化合物が白金酸化物生成を抑制し、酸素還元触媒の活性を向上させるものと考えられる。
【0050】
白金単結晶は、X-ray背面反射ラウエ法により所望の結晶面方位に合わせて調整することができる。白金単結晶の面方位は、(100)、(110)、(111)、(331)等が挙げられるが、ORR活性の向上の観点からは、好ましくは(111)、(110)または(331)である。
【0051】
また、本開示の一実施態様によれば、白金単結晶におけるORR活性は、面方位を調整することにより制御することができる。ORR活性の測定は、例えば、後述する試験例1に記載の方法に準じて実施することができる。
【0052】
式(I)化合物で修飾された面方位(111)の白金単結晶のORR活性は、例えば、0.8~6.0(mA/cm-2)、好ましくは3.0~5.0(mA/cm-2)とされる。また、式(I)化合物修飾された面方位(100)の白金単結晶のORR活性は、例えば、0.7~1.0(mA/cm-2)とされる。また、式(I)化合物で修飾された面方位(110)の白金単結晶のORR活性は、例えば、2.5~5.0(mA/cm-2)、好ましくは2.8~4.0(mA/cm-2)とされる。また、式(I)化合物で修飾された面方位(331)の白金単結晶のORR活性は、例えば、10.0~15.0(mA/cm-2)、好ましくは11.0~14.0(mA/cm-2)とされる。
【0053】
また、上述の通り、式(I)化合物により修飾される酸素還元触媒は、燃料電池用電極の構成材料として使用することができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、式(I)化合物で表面の一部を修飾された酸素還元触媒を含んでなる、燃料電池用電極が提供される。
【0054】
燃料電池用電極の製造は、式(I)化合物により酸素還元触媒を修飾する以外は公知の燃料電池用電極の製造方法を採用することができる。式(I)化合物による修飾方法としては、例えば、酸素還元触媒から構成される電極を、式(I)化合物を含む水溶液に浸漬し、その後、過剰な式(I)化合物を超純水で除去する方法(浸漬法)や、燃料電池において所定濃度の式(I)化合物を含む電解質組成物(電解液)を使用する方法(添加法)等を用いることができる。
【0055】
また、本発明の一実施態様によれば、式(I)化合物により修飾された電極または式(I)化合物を含んでなる電解質組成物を備えた燃料電池が提供される。
【0056】
燃料電池は通常、一対の電極と、一対の電極の間に配置される電解質組成物とを備えている。一対の電極は、導電性を備えるものであり、それぞれ外部の負荷を介して電気的に接続される。すなわち燃料電池は、一対の電極の間において電力を発生し、負荷に対し電力を供給することができる。また、燃料電池においては、電極に触媒機能を持たせているため一方の電極では水素から水素イオンおよび電子を発生させる一方、他方の電極では水素イオン、酸素および電子を結合させて水を発生させる。好適な態様によれば、燃料電池において、一方の電極を水素イオン及び電子を発生させる燃料極(アノード)、他方の電極を水を発生させる空気極(カソード)とされる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、一対の電極の少なくとも一方または双方の表面の一部を式(I)化合物により修飾することができるが、燃料電池の空気極における酸素還元反応の活性向上の観点から、空気極を式(I)化合物により修飾することが好ましい。
【0058】
また、燃料電池では、一対の電極の外側に、これらを覆うセパレータが配置されていてもよい。これにより、燃料電池内の空間は外部と仕切られた状態とすることができる。なお、燃料電池は、通常、高出力化の目的のため、一対の電極とこの間に配置される電解質組成物の組が複数隣接して配置されることも好ましい一例である。燃料電池の製造および使用方法は、式(I)化合物を使用する以外、公知の手法を用いてよく、例えば、特許文献1を参照してもよい。
【0059】
また、本発明の別の実施態様によれば、式(I)化合物またはその塩もしくは水和物を用いて酸素還元触媒の表面の少なくとも一部を修飾する工程を含む、酸素還元触媒の活性化方法が提供される。酸素還元触媒の表面の少なくとも一部を修飾する工程は、上述のような、浸漬法や添加法により実施することができる。
【0060】
また、本発明の一実施態様によれば、以下が提供される。
[1]式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を含んでなる、酸素還元触媒の活性化用組成物:
【化5】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
[2]R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子または酸素原子を表し、
、XまたはXが酸素原子を表す場合、X、XまたはXが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在しない、[1]に記載の組成物。
[3]R、R、RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]Xが酸素原子を表す、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]式(I)で表される化合物が、カフェイン、キサンチン、パラキサンチン、テオフィリン、テオブロミン、プリン、ヒポキサンチン、サキシトシンおよびエリタデニンから選択される、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]上記酸素還元触媒が、白金(Pt)を含んでなる、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]上記酸素還元触媒が、燃料電池用電極の構成材料ある、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]燃料電池用電解質組成物である、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]固形状または液状である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]上記式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物の濃度が、1×10-8~1×10-3 mol/Lである、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]表面の少なくとも一部が式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物で修飾されている、酸素還元触媒:
【化6】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
[12] [11]に記載の酸素還元触媒を含んでなる、燃料電池用電極。
[13] [1]~[10]のいずれかに記載の組成物または[12]に記載の電極を備えた、燃料電池。
[14]式(I)で表される化合物またはその塩もしくは水和物を用いて酸素還元触媒の表面の少なくとも一部を修飾する工程を含む、酸素還元触媒の活性化方法:
【化7】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または水酸基、カルバモイルオキシ基もしくはカルボキシル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は結合手を表し、
は4位の炭素原子と一緒になって、水酸基で置換されていてもよいアルキル鎖を形成してもよく、ここで、4位の炭素原子と5位の炭素原子の間の点線は存在せず、
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、酸素原子またはNH 基を表し、
ただし、X、XまたはXが酸素原子またはNH 基を表す場合、X、XまたはXとそれが結合する炭素原子と間の点線は結合手を表しかつX、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線は存在せず、
、XまたはXが結合する炭素原子と窒素原子との間の点線が結合手を表す場合、該窒素原子に結合するR、RおよびRは存在しない)。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特段の記載がない限り、単位および測定方法は、JIS(日本工業規格)に規定に従う。
【0062】
試験例1
Pt単結晶電極を飽和カフェイン水溶液に5分間浸漬し、その後、過剰なカフェインを超純水で除去して、Pt単結晶電極のカフェイン修飾を行った(浸漬法)。
カフェイン修飾したPt単結晶電極を用い、回転ディスク電極(RDE:Rotating Disk Electrode)を用いて酸素飽和した0.1M HClO中で電位走査速度0.010Vs-1で0.05V(RHE:Reversible Hydrogen Electrode)から正方向に電位走査してLSV(linear sweep voltammogram)を測定し、カフェイン非修飾の場合と比較した。電極回転速度は1600rpmとした。ORR活性の評価には0.90V(RHE)での面積比活性を用いた。
【0063】
結果は図1に示される通りであった。
図1では、浸漬法によりカフェイン修飾した後のPt基本指数面のORR活性を示している。全てのPt基本指数面でORR活性が向上しており、Pt(111)が1.8倍と最も大きいORR活性向上率を示していた。
【0064】
試験例2
カフェイン修飾の方法を変更する以外、試験例1と同様にLSV測定を行った。
カフェイン修飾の方法としては、所定濃度のカフェイン水溶液を電解液に添加する手法を用いた(添加法)。また、試験例2では、試験例1の結果から、(111)構造がカフェイン修飾に適していると考え、(111)構造からなるPt(111)、Pt(110)、Pt(331)面のORR活性を測定した。
【0065】
結果は、図2に示される通りであった。
図2では、全ての面でORR活性が向上していた。特にPt(111)ではカフェインの被覆率0.2でORR活性が11倍に増大していた。被覆率θはカフェイン非修飾電極の吸着水素脱離電気量をQ、カフェイン修飾電極の吸着水素脱離電気量をQ’とすると、θ=1-Q’/Qで算出する。
【0066】
試験例3
試験例2で用いたPt(111)単結晶電極(カフェイン修飾法-添加法)を用いて耐久性試験を行った。
耐久性試験では、初期電位0.60Vで30秒間保持し、その後1.0V(3秒)→0.60V(3秒)の短形波を1cycleとして、500、1000、2000、5000cycle行った。
【0067】
結果は、図3に示される通りであった。
カフェイン修飾したPt(111)単結晶電極では、5000cycle後にORR活性は半分まで低下したものの、カフェイン非修飾の場合と比較して約3倍のORR活性を保っていた。
【0068】
試験例4
(111)面を有する白金単結晶電極(Pt(111))を用い、ORR活性におけるカフェインの濃度依存性について検討した。具体的には、HClO電解液中のカフェイン濃度を1x10-8~10-5mol/Lに調整して、(111)面を有する白金単結晶電極(Pt(111))を用い、試験例1と同様にORR活性評価を行い、カフェイン非修飾の場合と比較した。
【0069】
結果は、図4に示される通りであった。
カフェイン濃度が1x10-6mol/LでPt(111)電極上のORR活性はカフェイン非修飾の場合の約11倍に達した。
【0070】
試験例5
カフェインに代えて、プリンを用いて試験例4と同様の実験を実施した。その結果、プリン濃度が1x10-6mol/LでPt(111)電極上のORR活性はプリン非修飾の場合の約9.5倍に達した。
図1
図2
図3
図4