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特開2024-125089車両用モータ駆動装置および密封構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125089
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】車両用モータ駆動装置および密封構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033194
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】天野 覚
(72)【発明者】
【氏名】天野 琢也
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC10
5H605DD01
5H605DD09
5H605DD13
5H605EC01
5H605EC03
5H605EC08
5H605EC18
5H605FF08
5H605GG01
5H605GG04
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】モータ室の油密性および絶縁性を確保しつつ、装置の構造の簡素化を実現することが可能な車両用モータ駆動装置を提供する。
【解決手段】この車両用モータ駆動装置100は、モータ10から延びるモータ側配線31が挿入される配線挿入孔61を含み、貫通孔44とモータ側配線31との間をシールするように貫通孔44に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材60と、を備える。筒状弾性部材60は、筒状弾性部材60のうちのモータ室41側で、かつ、貫通孔44に挿入されない部分に配置され、モータ室41側に延びるように形成されたモータ室側延長部67を含む。モータ室側延長部67のモータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向の長さL1は、モータ室側延長部67における配線挿入孔61の直径D以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられるモータと、
前記モータに電力を供給するインバータと、
一端部が前記モータに接続され、前記モータと前記インバータとを接続するためのモータ側配線と、
内部に前記モータを収容するモータ室を含み、前記モータ室に収容された前記モータから延びる前記モータ側配線が貫通する貫通孔が形成されたハウジングと、
前記モータから延びる前記モータ側配線が挿入される配線挿入孔を含み、前記貫通孔と前記モータ側配線との間をシールするように前記貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材と、を備え、
前記筒状弾性部材は、前記筒状弾性部材のうちの前記モータ室側で、かつ、前記貫通孔に挿入されない部分に配置され、前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向に沿って延びるように形成されたモータ室側延長部をさらに含み、
前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向における前記モータ室側延長部の長さは、前記配線挿入孔の直径以上である、車両用モータ駆動装置。
【請求項2】
前記筒状弾性部材を外周側から締め付ける締付部材をさらに備え、
前記モータ室側延長部は、前記締付部材により外周側から締め付けられている、請求項1に記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項3】
前記モータ室側延長部の径方向の厚さは、前記筒状弾性部材のうちの前記貫通孔に挿入される挿入部分の径方向の厚さよりも小さい、請求項2に記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項4】
前記筒状弾性部材は、前記モータ室側延長部よりも前記モータ室側に配置され、前記筒状弾性部材の外周面から外周側に突出する突出部をさらに含む、請求項2に記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項5】
前記筒状弾性部材は、前記筒状弾性部材のうちの前記貫通孔に挿入される挿入部分と前記モータ室側延長部との間に配置され、前記筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出するフランジ部をさらに含む、請求項2に記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項6】
前記筒状弾性部材の前記配線挿入孔に前記モータ側配線が挿入されていない状態において、前記配線挿入孔の直径が、前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向において前記モータ側配線の外径よりも小さい部分を含み、かつ、前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向における前記モータ室側から前記モータ室側とは反対側に向かって徐々に大きくなっている前記筒状弾性部材の前記配線挿入孔に、前記モータ側配線が圧入されることにより挿入されている、請求項1に記載の車両用モータ駆動装置。
【請求項7】
モータから延びるモータ側配線が挿入される配線挿入孔を含み、前記モータを収容するモータ室を含むハウジングに形成され前記モータ側配線が貫通される貫通孔と前記モータ側配線との間をシールするように前記貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材と、を備え、
前記筒状弾性部材は、前記筒状弾性部材のうちの前記モータ室側で、かつ、前記貫通孔に挿入されない部分に配置され、前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向に沿って延びるように形成されたモータ室側延長部をさらに含み、
前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向における前記モータ室側延長部の長さは、前記配線挿入孔の直径以上である、密封構造。
【請求項8】
前記筒状弾性部材を外周側から締め付ける締付部材をさらに備え、
前記モータ室側延長部は、前記締付部材により外周側から締め付けられている、請求項7に記載の密封構造。
【請求項9】
前記モータ室側延長部の径方向の厚さは、前記筒状弾性部材のうちの前記貫通孔に挿入される挿入部分の径方向の厚さよりも小さい、請求項8に記載の密封構造。
【請求項10】
前記筒状弾性部材は、前記モータ室側延長部よりも前記モータ室側に配置され、前記筒状弾性部材の外周面から外周側に突出する突出部をさらに含む、請求項8に記載の密封構造。
【請求項11】
前記筒状弾性部材は、前記筒状弾性部材のうちの前記貫通孔に挿入される挿入部分と前記モータ室側延長部との間に配置され、前記筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出するフランジ部をさらに含む、請求項8に記載の密封構造。
【請求項12】
前記筒状弾性部材の前記配線挿入孔に前記モータ側配線が挿入されていない状態において、前記配線挿入孔の直径が、前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向において前記モータ側配線の外径よりも小さい部分を含み、かつ、前記モータ側配線が前記配線挿入孔に挿入される方向における前記モータ室側から前記モータ室側とは反対側に向かって徐々に大きくなっている前記筒状弾性部材の前記配線挿入孔に、前記モータ側配線が圧入されることにより挿入されている、請求項7に記載の密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モータ駆動装置および密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを備える車両用モータ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、モータを備えるモータ装置(車両用モータ駆動装置)が開示されている。このモータ装置は、インバータと、絶縁端子台と、モータハウジングと、を備える。インバータは、直流電力を交流電力に変換して、モータに交流電力を供給するように構成されている。絶縁端子台は、インバータからの交流電力をモータに供給するために、インバータに接続された通電ケーブルとモータに接続されたモータバスバーとを電気的に接続している。モータハウジングは、モータが収容されるとともに、モータの冷却に用いられるオイルが貯留されるモータ室を含む。モータハウジングは、モータ室の油密性および絶縁性を確保するために、絶縁端子台が収容される端子台室と、端子台室とモータ室とを仕切る仕切壁と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-136770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のモータ装置では、モータ室の油密性および絶縁性を確保するために、仕切壁により仕切られた端子台室に収容された絶縁端子台を用いて、モータとインバータとを電気的に接続している。このため、上記特許文献1のモータ装置では、端子台室および絶縁端子台を設けたことに起因して、モータ装置(装置)の構造が複雑化している。このため、モータ室の油密性および絶縁性を確保しつつ、装置の構造の簡素化を実現することが可能なモータ装置(車両用モータ駆動装置)および密封構造が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、モータ室の油密性および絶縁性を確保しつつ、装置の構造の簡素化を実現することが可能な車両用モータ駆動装置および密封構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における車両用モータ駆動装置は、車両に用いられるモータと、モータに電力を供給するインバータと、一端部がモータに接続され、モータとインバータとを接続するためのモータ側配線と、内部にモータを収容するモータ室を含み、モータ室に収容されたモータから延びるモータ側配線が貫通する貫通孔が形成されたハウジングと、モータから延びるモータ側配線が挿入される配線挿入孔を含み、貫通孔とモータ側配線との間をシールするように貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材と、を備え、筒状弾性部材は、筒状弾性部材のうちのモータ室側で、かつ、貫通孔に挿入されない部分に配置され、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向に沿って延びるように形成されたモータ室側延長部をさらに含み、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側延長部の長さは、配線挿入孔の直径以上である。
【0008】
この発明の第1の局面における車両用モータ駆動装置は、上記のように、モータから延びるモータ側配線が挿入される配線挿入孔を含み、貫通孔とモータ側配線との間をシールするように貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材を備える。これにより、ハウジングに端子台室および絶縁端子台を設けることなく、ハウジングの貫通孔に取り付けられた筒状弾性部材によりモータ室の油密性および絶縁性を確保することができる。その結果、モータ室の油密性および絶縁性を確保しつつ、装置の構造の簡素化を実現することができる。
【0009】
また、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置では、上記のように、筒状弾性部材は、筒状弾性部材のうちのモータ室側で、かつ、貫通孔に挿入されない部分に配置され、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向に沿って延びるように形成されたモータ室側延長部をさらに含む。これにより、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向に沿ってモータ室側延長部が延びている分、モータ側配線が挿入される配線挿入孔の距離が長くなるので、モータ室側のオイルがモータ側配線の外周面と配線挿入孔の内周面との間を通過しにくくなる。また、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置では、上記のように、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側延長部の長さは、配線挿入孔の直径以上である。これにより、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側延長部の長さを、モータ室側のオイルがモータ側配線の外周面と配線挿入孔の内周面との間を通過しにくくなるように、十分に長くすることができる。その結果、筒状弾性部材がモータ室側延長部を含まない場合と比較して、モータ室の油密性を向上させることができる。
【0010】
上記第1の局面における車両用モータ駆動装置において、好ましくは、筒状弾性部材を外周側から締め付ける締付部材をさらに備え、モータ室側延長部は、締付部材により外周側から締め付けられている。
【0011】
このように構成すれば、モータ側配線の外周面が撚り線に沿った凹凸形状になりやすい場合であっても、モータ室側延長部を締付部材により外周側から締め付けることによって、モータ室側延長部のうちの締付部材により外周側から締め付けられた部分において、配線挿入孔の内周面をモータ側配線の外周面に密着させることができる。その結果、モータ側配線を構成する導体が撚り線である場合であっても、モータ室の油密性を確保することができる。
【0012】
上記モータ室側延長部が締付部材により外周側から締め付けられている構成において、好ましくは、モータ室側延長部の径方向の厚さは、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分の径方向の厚さよりも小さい。
【0013】
このように構成すれば、モータ室側延長部の径方向の厚さが比較的小さくなるので、モータ室側延長部の柔軟性を比較的大きくすることができる。すなわち、モータ室側延長部が変形しやすくなる。その結果、モータ室側延長部のうちの締付部材により外周側から締め付けられた部分において、配線挿入孔の内周面をモータ側配線の外周面に密着させやすくすることができる。また、挿入部分の径方向の厚さが比較的大きくなるので、挿入部分の剛性を比較的大きくすることができる。これにより、挿入部分を貫通孔に挿入する際に挿入部分が折れ曲がるのを抑制することができる。その結果、挿入部分を貫通孔に挿入する際の作業性を向上させることができる。
【0014】
上記モータ室側延長部が締付部材により外周側から締め付けられている構成において、好ましくは、筒状弾性部材は、モータ室側延長部よりもモータ室側に配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に突出する突出部をさらに含む。
【0015】
このように構成すれば、モータ室側延長部よりもモータ室側に配置された突出部により、モータ室側延長部を締め付けている締付部材が、モータ室側延長部からモータ室側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0016】
上記モータ室側延長部が締付部材により外周側から締め付けられている構成において、好ましくは、筒状弾性部材は、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分とモータ室側延長部との間に配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出するフランジ部をさらに含む。
【0017】
このように構成すれば、挿入部分とモータ室側延長部との間に配置されたフランジ部により、挿入部分が、貫通孔からモータ室とは反対側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0018】
上記第1の局面における車両用モータ駆動装置において、好ましくは、筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態において、配線挿入孔の直径が、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向においてモータ側配線の外径よりも小さい部分を含み、かつ、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側からモータ室側とは反対側に向かって徐々に大きくなっている筒状弾性部材の配線挿入孔に、モータ側配線が圧入されることにより挿入されている。
【0019】
このように構成すれば、筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入された後、筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態において配線挿入孔の直径が相対的に小さくなっていたモータ室側の部分において、配線挿入孔の内周面をモータ側配線の外周面に容易に密着させることができる。すなわち、モータ室側のオイルがモータ側配線の外周面と配線挿入孔の内周面との間を通過するのを抑制することができる。また、モータ側配線を配線挿入孔に挿入する際に、配線挿入孔の直径が相対的に小さくなっているモータ室側の部分をモータ側配線が通過した後、モータ側配線の配線挿入孔への残りの挿入を容易に行うことができる。その結果、モータ室の油密性の向上と、モータ側配線を配線挿入孔に挿入する際の作業性の向上とを、容易に両立させることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における密封構造は、モータから延びるモータ側配線が挿入される配線挿入孔を含み、モータを収容するモータ室を含むハウジングに形成されモータ側配線が貫通される貫通孔とモータ側配線との間をシールするように貫通孔に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材と、を備え、筒状弾性部材は、筒状弾性部材のうちのモータ室側で、かつ、貫通孔に挿入されない部分に配置され、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向に沿って延びるように形成されたモータ室側延長部をさらに含み、モータ室側延長部部のモータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向の長さは、配線挿入孔の直径以上である。
【0021】
この発明の第2の局面における密封構造は、上記のように、モータから延びるモータ側配線が挿入される配線挿入孔を含み、貫通孔とモータ側配線との間をシールするように貫通孔に取り付けられる弾性変形可能な筒状弾性部材を備える。これにより、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、モータ室の油密性および絶縁性を確保しつつ、装置の構造の簡素化を実現することができる。
【0022】
また、上記第2の局面における密封構造は、上記のように、筒状弾性部材は、筒状弾性部材のうちのモータ室側で、かつ、貫通孔に挿入されない部分に配置され、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向に沿って延びるように形成されたモータ室側延長部をさらに含む。また、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側延長部の長さは、配線挿入孔の直径以上である。これにより、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、筒状弾性部材がモータ室側延長部を含まない場合と比較して、モータ室の油密性を向上させることができる。
【0023】
また、上記第2の局面における密封構造において、好ましくは、筒状弾性部材を外周側から締め付ける締付部材をさらに備え、モータ室側延長部は、締付部材により外周側から締め付けられている。
【0024】
このように構成すれば、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、モータ側配線を構成する導体が撚り線である場合であっても、モータ室の油密性を確保することができる。
【0025】
上記モータ室側延長部が締付部材により外周側から締め付けられている構成において、好ましくは、モータ室側延長部の径方向の厚さは、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分の径方向の厚さよりも小さい。
【0026】
このように構成すれば、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、挿入部分を貫通孔に挿入する際の作業性を向上させることができる。
【0027】
上記モータ室側延長部が締付部材により外周側から締め付けられている構成において、好ましくは、筒状弾性部材は、モータ室側延長部よりもモータ室側に配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に突出する突出部をさらに含む。
【0028】
このように構成すれば、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、モータ室側延長部を締め付けている締付部材が、モータ室側延長部からモータ室側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0029】
上記モータ室側延長部が締付部材により外周側から締め付けられている構成において、好ましくは、筒状弾性部材は、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分とモータ室側延長部との間に配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出するフランジ部をさらに含む。
【0030】
このように構成すれば、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、挿入部分が、貫通孔からモータ室とは反対側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0031】
上記第2の局面における密封構造において、好ましくは、筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態において、配線挿入孔の直径が、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向においてモータ側配線の外径よりも小さい部分を含み、かつ、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側からモータ室側とは反対側に向かって徐々に大きくなっている筒状弾性部材の配線挿入孔に、モータ側配線が圧入されることにより挿入されている。
【0032】
このように構成すれば、上記第1の局面における車両用モータ駆動装置と同様に、モータ室の油密性の向上と、モータ側配線を配線挿入孔に挿入する際の作業性の向上とを、容易に両立させることができる。
【0033】
なお、本出願では、上記第1の局面による車両用モータ駆動装置において、以下のような構成も考えられる。
【0034】
(付記項1)
上記第1の局面による車両用モータ駆動装置において、好ましくは、貫通孔がハウジングを貫通する方向に沿った方向において、モータ室側延長部の長さは、締付部材の幅の2倍よりも大きい。
【0035】
このように構成すれば、貫通孔がハウジングを貫通する方向に沿った方向において、モータ室側延長部の長さが締付部材の幅の2倍以下の場合と比較して、貫通孔がハウジングを貫通する方向に沿った方向におけるモータ室側延長部の長さを大きくすることができる。その結果、モータ室側延長部を締付部材により締め付ける際の作業性を向上させることができる。
【0036】
(付記項2)
上記第1の局面による車両用モータ駆動装置において、好ましくは、貫通孔がハウジングを貫通する方向に沿った方向において、モータ室側延長部の長さは、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分の長さよりも大きい。
【0037】
このように構成すれば、貫通孔がハウジングを貫通する方向に沿った方向において、モータ室側延長部の長さが挿入部分の長さ以下の場合と比較して、貫通孔がハウジングを貫通する方向に沿った方向におけるモータ室側延長部の長さを大きくすることができる。その結果、モータ室側延長部を締付部材により締め付ける際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置を示した模式図である。
図2】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置の筒状弾性部材の結束バンドにより結束バンド取付用部分が外周側から締め付けられている状態を示した断面図である。
図3】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置のモータ側配線の導体を示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置の筒状弾性部材を示した斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置の結束バンドを示した斜視図である。
図6】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置の筒状弾性部材の結束バンドにより結束バンド取付用部分が外周側から締め付けられていない状態を示した断面図である。
図7】本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置の筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0040】
図1図6を参照して、本発明の一実施形態による車両用モータ駆動装置100の構成について説明する。車両用モータ駆動装置100は、電気自動車等の車両に搭載される。
【0041】
(車両用モータ駆動装置の全体構成)
図1に示すように、車両用モータ駆動装置100は、モータ10と、インバータ20と、モータ側配線31と、インバータ側配線32と、ハウジング40と、を備える。
【0042】
モータ10は、車両に用いられる三相交流モータである。モータ10は、インバータ20から供給された三相交流電力によって、電気自動車等の車両の駆動輪を動かすための駆動力を発生させるように構成されている。
【0043】
インバータ20は、リチウムイオンバッテリ等のバッテリ(図示しない)から供給された直流電力を交流電力に変換するように構成されている。インバータ20は、モータ側配線31およびインバータ側配線32を介して、モータ10に三相交流電力を供給するように構成されている。
【0044】
モータ側配線31およびインバータ側配線32の各々は、モータ10とインバータ20とを接続するための電線である。具体的には、モータ側配線31は、一端部がモータ10に接続されている。また、インバータ側配線32は、一端部がインバータ20に接続されている。また、モータ側配線31は、他端部が接続端子33を介してインバータ側配線32の他端部に接続されている。接続端子33は、たとえば、モータ側配線31の他端部に取り付けられた丸形端子と、インバータ側配線32の他端部に取り付けられた丸形端子と、モータ側配線31の丸形端子とインバータ側配線32の丸形端子とを連結する締結部材(ボルトおよびナット)と、により構成されている。
【0045】
モータ側配線31およびインバータ側配線32の各々は、三相の交流電力に対応するように3つずつ設けられている。図2に示すように、モータ側配線31およびインバータ側配線32の各々は、銅等から構成された導体30aを絶縁被膜30bにより被覆した絶縁電線である。なお、図2では、絶縁電線としてのモータ側配線31を示している。
【0046】
図3に示すように、モータ側配線31(図2参照)およびインバータ側配線32(図1参照)の各々を構成する導体30aは、複数の導線30cが撚り合わされた撚り線である。この場合、図2に示すように、モータ側配線31の外周面31aおよびインバータ側配線32の外周面の各々が撚り線に沿った凹凸形状になりやすい。
【0047】
図1に示すように、ハウジング40は、金属製の筐体である。ハウジング40は、モータ室41と、インバータ室42と、を含む。モータ室41の内部には、モータ10が収容されている。モータ室41の内部には、モータ10の発熱部位を冷却するためのオイル50がモータ10の一部のみが浸かる量だけ貯留されている。車両用モータ駆動装置100には、モータ室41の油密性を確保するための密封構造が設けられている。密封構造は、後述する筒状弾性部材60と、後述する結束バンド80(図2参照)と、を備える。インバータ室42の内部には、インバータ20が収容されている。インバータ室42の内部には、オイル50が貯留されていない。インバータ室42には、モータ側配線31とインバータ側配線32とを接続する接続端子33が配置されている。すなわち、モータ側配線31の他端部と、インバータ側配線32の他端部とは、インバータ室42において接続されている。
【0048】
ハウジング40は、モータ室41とインバータ室42とを隔てる隔壁43を含む。すなわち、モータ室41とインバータ室42とは、隔壁43を介して隣接するように設けられている。隔壁43(ハウジング40)には、モータ10から接続端子33に向かって延びるモータ側配線31が貫通する貫通孔44が形成されている。貫通孔44は、隔壁43において、3つのモータ側配線31の各々に対応するように、3つ形成されている。
【0049】
(筒状弾性部材)
図1に示すように、車両用モータ駆動装置100は、筒状に形成され、弾性変形可能な筒状弾性部材60を備える。筒状弾性部材60は、少なくとも隔壁43(金属製)よりも弾性変形しやすい。筒状弾性部材60は、モータ10から延びるモータ側配線31が挿入される配線挿入孔61を含む。筒状弾性部材60は、貫通孔44とモータ側配線31との間をシールするように貫通孔44に取り付けられている。具体的には、モータ側配線31が配線挿入孔61を貫通するように配線挿入孔61に挿入された状態の筒状弾性部材60のうちの一部(後述する挿入部分62)が、貫通孔44に挿入されている(嵌め込まれている)。すなわち、筒状弾性部材60は、グロメットである。筒状弾性部材60は、車両用モータ駆動装置100において、3つのモータ側配線31の各々に対応するように、3つ設けられている。なお、モータ側配線31は、配線挿入孔61に圧入されることにより挿入されている。
【0050】
筒状弾性部材60は、比較的高温になる箇所に配置されるため、耐熱性を有する材料により構成されている。また、筒状弾性部材60は、モータ室41の内部に貯留されたオイル50に対する油密性を確保するため、耐油性を有する材料により構成されている。筒状弾性部材60は、たとえば、アクリルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム等のゴムにより構成されている。
【0051】
図4に示すように、筒状弾性部材60は、挿入部分62と、接触面積抑制用突出部63(図2参照)と、弾性変形用突出部64(図2参照)と、弾性部材抜け防止用突出部65と、フランジ部66と、を含む。
【0052】
図2に示すように、挿入部分62は、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44(図1参照)に挿入される(嵌め込まれる)部分である。言い換えると、貫通孔44がハウジング40(図1参照)を貫通する方向に沿った方向において、筒状弾性部材60のうちの挿入部分62以外の部分は、貫通孔44に挿入されない(嵌め込まれない)部分である。すなわち、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、挿入部分62の長さは、貫通孔44の長さと略同じである。挿入部分62の外径は、挿入部分62が貫通孔44に挿入されている状態では、貫通孔44の内径以下であるものの、挿入部分62が貫通孔44に挿入されていない状態では、貫通孔44の内径よりも若干大きい。なお、図2では、ハウジング40の図示を省略している。
【0053】
接触面積抑制用突出部63は、配線挿入孔61の内周面61aから内周側に周状に突出する部分である。接触面積抑制用突出部63は、貫通孔44(図1参照)がハウジング40(図1参照)を貫通する方向に沿った方向において、配線挿入孔61の内周面61aのうちのインバータ室42(図1参照)側の端部に設けられている。接触面積抑制用突出部63は、オイル50が配線挿入孔61の内周面61aとモータ側配線31の外周面31aとの間をインバータ室42側の端部まで伝わってきた場合に、オイル50がインバータ室42へ侵入しないようにシールするため、および、配線挿入孔61の内周面61aとモータ側配線31との接触面積を抑制して挿入部分62を貫通孔44に挿入する際の作業性を向上させるための少なくともいずれかを目的として設けられている。なお、図2では、接触面積抑制用突出部63が、筒状弾性部材60において、1つだけ設けられている例を示しているが、接触面積抑制用突出部63が、筒状弾性部材60において、複数設けられていてもよい。
【0054】
弾性変形用突出部64は、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出する部分である。弾性変形用突出部64は、筒状弾性部材60のうちの挿入部分62が貫通孔44(図1参照)に挿入された状態において弾性変形するように、貫通孔44が隔壁43(図1参照)(ハウジング40(図1参照))を貫通する方向に沿った方向において、挿入部分62に対応する位置に設けられている。弾性変形用突出部64は、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、弾性部材抜け防止用突出部65とフランジ部66との間に設けられている。弾性変形用突出部64は、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、所定の長さを有する。所定の長さは、挿入部分62が貫通孔44に挿入された状態において、弾性変形用突出部64が弾性変形して押し潰されることにより、弾性変形用突出部64と貫通孔44の内周面との間に生じる圧力(面圧)が比較的大きくなるように設定されている。弾性変形用突出部64は、筒状弾性部材60の周方向(貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向、および、貫通孔44が隔壁43(ハウジング40)を貫通する方向と直交する方向に沿った方向の両方に直交する方向)から見て、外周側に向かって、丸みを帯びた形状でもあってもよいし、尖った形状であってもよい。なお、図2では、弾性変形用突出部64が、筒状弾性部材60において、1つだけ設けられている例を示しているが、弾性変形用突出部64が、筒状弾性部材60において、複数設けられていてもよい。
【0055】
弾性部材抜け防止用突出部65は、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出する部分である。弾性部材抜け防止用突出部65は、筒状弾性部材60の貫通孔44(図1参照)からの抜け防止のために、挿入部分62のインバータ室42(図1参照)側に挿入部分62に隣り合うように配置されている。弾性部材抜け防止用突出部65のインバータ室42側の面は、筒状弾性部材60が貫通孔44に挿入された状態において、隔壁43のモータ室41(図1参照)側の面と接触している。すなわち、弾性部材抜け防止用突出部65は、貫通孔44のインバータ室42側の縁に係合している。弾性部材抜け防止用突出部65は、筒状弾性部材60におけるインバータ室42側の端部に配置されている。弾性部材抜け防止用突出部65の突出高さは、接触面積抑制用突出部63の突出高さよりも大きい。
【0056】
フランジ部66は、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出する部分である。フランジ部66は、筒状弾性部材60の貫通孔44(図1参照)からの抜け防止のために、挿入部分62のモータ室41(図1参照)側に挿入部分62に隣り合うように配置されている。フランジ部66のインバータ室42(図1参照)側の面は、筒状弾性部材60が貫通孔44に挿入された状態において、隔壁43(図1参照)のモータ室41側の面と接触している。すなわち、フランジ部66は、貫通孔44のモータ室41側の縁に係合している。フランジ部66の突出高さは、弾性変形用突出部64の突出高さ、および、弾性部材抜け防止用突出部65の突出高さよりも大きい。
【0057】
車両用モータ駆動装置100(図1参照)は、筒状弾性部材60の内部に設けられた金属製の芯金部材70を備える。芯金部材70は、環状に形成されている。芯金部材70は、インバータ室42(図1参照)側の端部が挿入部分62の内部に配置されるとともに貫通孔44(図1参照)がハウジング40(図1参照)を貫通する方向に沿って延びる第1部分と、第1部分のモータ室41側の端部から貫通孔44がハウジング40を貫通する方向と直交する方向に沿ってフランジ部66側に延びる第2部分と、を含む。第2部分のうちの少なくともフランジ部66側の部分は、フランジ部66の内部に配置されている。芯金部材70は、挿入部分62を貫通孔44に挿入する際に挿入部分62が過度に変形するのを抑制する(弾性変形するものの、ある程度の形状を維持させる)とともに、フランジ部66が変形するのを抑制するために設けられている。すなわち、芯金部材70は、筒状弾性部材60(挿入部分62)の貫通孔44からの抜け防止のために設けられている。
【0058】
(筒状弾性部材の結束バンド取付用部分、および、締付部材)
図2に示すように、車両用モータ駆動装置100は、筒状弾性部材60を外周側から締め付ける結束バンド80を備える。また、筒状弾性部材60は、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向に沿って延びるように形成された結束バンド取付用部分67を含む。結束バンド取付用部分67は、結束バンド80により外周側から締め付けられている。図5に示すように、結束バンド80は、たとえば、タイラップ(登録商標)、インシュロック(登録商標)等である。なお、結束バンド80および結束バンド取付用部分67は、それぞれ、特許請求の範囲の「締付部材」および「モータ室側延長部」の一例である。
【0059】
図2に示すように、結束バンド取付用部分67は、筒状弾性部材60のうちのモータ室41(図1参照)側で、かつ、貫通孔44に挿入されない部分に配置されている。具体的には、結束バンド取付用部分67は、フランジ部66のモータ室41側にフランジ部66に隣り合うように配置されている。すなわち、フランジ部66は、挿入部分62と結束バンド取付用部分67との間に配置されている。
【0060】
図6に示すように、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入された状態、かつ、筒状弾性部材60が貫通孔44に挿入された状態において、結束バンド取付用部分67が結束バンド80により外周側から締め付けられていない場合、モータ側配線31の外周面31aが撚り線に沿った凹凸形状になりやすいことに起因して、モータ側配線31の外周面31aと配線挿入孔61の内周面61aとの間に隙間が形成される場合がある。なお、図6では、ハウジング40の図示を省略している。
【0061】
これに対して、図2に示すように、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入された状態、かつ、筒状弾性部材60が貫通孔44に挿入された状態において、結束バンド取付用部分67が結束バンド80により外周側から締め付けられることにより、結束バンド取付用部分67のうちの結束バンド80により外周側から締め付けられた部分において、配線挿入孔61の内周面61aをモータ側配線31の外周面31aに密着させることができる。
【0062】
結束バンド取付用部分67の径方向の厚さt1は、挿入部分62の径方向の厚さt2と異なっている。具体的には、結束バンド取付用部分67の径方向の厚さt1は、挿入部分62の径方向の厚さt2よりも小さい。なお、結束バンド取付用部分67の径方向の厚さt1は、結束バンド取付用部分67の機械的強度が過度に小さくならない厚さを有することが好ましい。
【0063】
モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向における結束バンド取付用部分67の長さL1は、配線挿入孔61の直径D以上である。また、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1は、結束バンド80の幅Wの2倍よりも大きい。また、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1は、挿入部分62の長さL2よりも大きい。なお、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1は、作業者が結束バンド80を結束バンド取付用部分67へ取り付ける際の作業性が低下しない長さを有することが好ましい。
【0064】
図7に示すように、筒状弾性部材60の配線挿入孔61にモータ側配線31(図2参照)が挿入されていない状態において、配線挿入孔61の直径Daは、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向におけるモータ室41側(図2参照)からモータ室41側とは反対側(インバータ室42(図2参照)側)に向かって徐々に大きくなっている。また、筒状弾性部材60の配線挿入孔61にモータ側配線31が挿入されていない状態において、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向における配線挿入孔61の直径Daの最も小さい部分は、モータ側配線31の外径より小さい。そして、筒状弾性部材60の配線挿入孔61に、モータ側配線31が圧入されることにより挿入されている。
【0065】
図2に示すように、車両用モータ駆動装置100は、結束バンド抜け防止用突出部68を含む。結束バンド抜け防止用突出部68は、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出する部分である。結束バンド抜け防止用突出部68は、結束バンド80の結束バンド取付用部分67からの抜け防止のために、結束バンド取付用部分67よりもモータ室41側(図1参照)に配置されている。具体的には、結束バンド抜け防止用突出部68は、結束バンド取付用部分67のモータ室41側に結束バンド取付用部分67に隣り合うように配置されている。すなわち、結束バンド取付用部分67は、フランジ部66と結束バンド抜け防止用突出部68との間に配置されている。結束バンド抜け防止用突出部68は、筒状弾性部材60におけるモータ室41側の端部に配置されている。なお、結束バンド抜け防止用突出部68は、特許請求の範囲の「突出部」の一例である。
【0066】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、上記のように、車両用モータ駆動装置100および密封構造は、モータ10から延びるモータ側配線31が挿入される配線挿入孔61を含み、貫通孔44とモータ側配線31との間をシールするように貫通孔44に取り付けられた弾性変形可能な筒状弾性部材60を備える。これにより、ハウジング40に端子台室および絶縁端子台を設けることなく、ハウジング40の貫通孔44に取り付けられた筒状弾性部材60によりモータ室41の油密性および絶縁性を確保することができる。その結果、モータ室41の油密性および絶縁性を確保しつつ、装置の構造の簡素化を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材60は、筒状弾性部材60のうちのモータ室41側で、かつ、貫通孔44に挿入されない部分に配置され、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向に沿って延びるように形成された結束バンド取付用部分67を含む。これにより、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向に沿って結束バンド取付用部分67が延びている分、モータ側配線31が挿入される配線挿入孔61の距離が長くなるので、モータ室41側のオイル50がモータ側配線31の外周面31aと配線挿入孔61の内周面61aとの間を通過しにくくなる。また、本実施形態では、上記のように、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向における結束バンド取付用部分67の長さL1は、配線挿入孔61の直径D以上である。これにより、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向における結束バンド取付用部分67の長さを、モータ室41側のオイル50がモータ側配線31の外周面31aと配線挿入孔61の内周面61aとの間を通過しにくくなるように、十分に長くすることができる。その結果、筒状弾性部材60が結束バンド取付用部分67を含まない場合と比較して、モータ室41の油密性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、車両用モータ駆動装置100および密封構造は、筒状弾性部材60を外周側から締め付ける結束バンド80を備える。また、結束バンド取付用部分67は、結束バンド80により外周側から締め付けられている。これにより、モータ側配線31の外周面31aが撚り線に沿った凹凸形状になりやすい場合であっても、結束バンド取付用部分67を結束バンド80により外周側から締め付けることによって、結束バンド取付用部分67のうちの結束バンド80により外周側から締め付けられた部分において、配線挿入孔61の内周面61aをモータ側配線31の外周面31aに密着させることができる。その結果、モータ側配線31を構成する導体30aが撚り線である場合であっても、モータ室41の油密性を確保することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、結束バンド取付用部分67の径方向の厚さt1は、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44に挿入される挿入部分62の径方向の厚さt2よりも小さい。これにより、結束バンド取付用部分67の径方向の厚さt1が比較的小さくなるので、結束バンド取付用部分67の柔軟性を比較的大きくすることができる。すなわち、結束バンド取付用部分67が変形しやすくなる。その結果、結束バンド取付用部分67のうちの結束バンド80により外周側から締め付けられた部分において、配線挿入孔61の内周面61aをモータ側配線31の外周面31aに密着させやすくすることができる。また、挿入部分62の径方向の厚さt2が比較的大きくなるので、挿入部分62の剛性を比較的大きくすることができる。これにより、挿入部分62を貫通孔44に挿入する際に挿入部分62が折れ曲がるのを抑制することができる。その結果、挿入部分62を貫通孔44に挿入する際の作業性を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材60は、結束バンド取付用部分67よりもモータ室41側に配置され、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に突出する結束バンド抜け防止用突出部68を含む。これにより、結束バンド取付用部分67よりもモータ室41側に配置された結束バンド抜け防止用突出部68により、結束バンド取付用部分67を締め付けている結束バンド80が、結束バンド取付用部分67からモータ室41側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材60は、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44に挿入される挿入部分62と結束バンド取付用部分67との間に配置され、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出するフランジ部66を含む。これにより、挿入部分62と結束バンド取付用部分67との間に配置されたフランジ部66により、挿入部分62が、貫通孔44からモータ室41とは反対側(インバータ室42側)に抜けてしまうのを防止することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1は、結束バンド80の幅Wの2倍よりも大きい。これにより、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1が結束バンド80の幅Wの2倍以下の場合と比較して、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向における結束バンド取付用部分67の長さL1を大きくすることができる。その結果、結束バンド取付用部分67を結束バンド80により締め付ける際の作業性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1は、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44に挿入される挿入部分62の長さL2よりも大きい。これにより、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向において、結束バンド取付用部分67の長さL1が挿入部分62の長さL2以下の場合と比較して、貫通孔44がハウジング40を貫通する方向に沿った方向における結束バンド取付用部分67の長さL1を大きくすることができる。その結果、結束バンド取付用部分67を結束バンド80により締め付ける際の作業性を向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、筒状弾性部材60の配線挿入孔61にモータ側配線31が挿入されていない状態において配線挿入孔61の直径Daがモータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向におけるモータ室41側からモータ室41側とは反対側に向かって徐々に大きくなっている筒状弾性部材60の配線挿入孔61に、モータ側配線31が圧入されることにより挿入されている。これにより、筒状弾性部材60の配線挿入孔61にモータ側配線31が挿入された後、筒状弾性部材60の配線挿入孔61にモータ側配線31が挿入されていない状態において配線挿入孔61の直径Daが相対的に小さくなっていた結束バンド取付用部分67のうちのモータ室41側の部分において、配線挿入孔61の内周面61aをモータ側配線31の外周面31aに容易に密着させることができる。すなわち、モータ室41側のオイル50がモータ側配線31の外周面31aと配線挿入孔61の内周面61aとの間を通過するのを抑制することができる。また、モータ側配線31を配線挿入孔61に挿入する際に、配線挿入孔61の直径Daが相対的に小さくなっているモータ室41側の部分をモータ側配線31が通過した後、モータ側配線31の配線挿入孔61への残りの挿入を容易に行うことができる。その結果、モータ室41の油密性の向上と、モータ側配線31を配線挿入孔61に挿入する際の作業性の向上とを、容易に両立させることができる。
【0076】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0077】
たとえば、上記実施形態では、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向において、結束バンド取付用部分67(モータ室側延長部)の長さL1が、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44に挿入される挿入部分62の長さL2よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向において、モータ室側延長部の長さが、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分の長さ以下であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、モータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向において、結束バンド取付用部分67(モータ室側延長部)の長さL1が、結束バンド80(締付部材)の幅Wの2倍よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向において、モータ室側延長部の長さが、締付部材の幅の2倍以下であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60の配線挿入孔61にモータ側配線31が挿入されていない状態において配線挿入孔61の直径Daがモータ側配線31が配線挿入孔61に挿入される方向におけるモータ室41側からモータ室41側とは反対側に向かって徐々に大きくなっている筒状弾性部材60の配線挿入孔61に、モータ側配線31が圧入されることにより挿入されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態において配線挿入孔の直径がモータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側からモータ室側とは反対側に向かって徐々に小さくなっている筒状弾性部材の配線挿入孔に、モータ側配線が圧入されることにより挿入されていてもよい。また、筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態において配線挿入孔の直径がモータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向におけるモータ室側からモータ室側とは反対側に向かって略同じ大きさである筒状弾性部材の配線挿入孔に、モータ側配線が圧入されることにより挿入されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ハウジング40が、インバータ室42を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ハウジングが、インバータ室を含まなくてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60が、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44に挿入される挿入部分62と結束バンド取付用部分67(モータ室側延長部)との間に配置され、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出するフランジ部66を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材が、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分とモータ室側延長部との間に配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出するフランジ部を含まなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60が、結束バンド取付用部分67(モータ室側延長部)よりもモータ室41側に配置され、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に突出する結束バンド抜け防止用突出部68(突出部)を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材が、モータ室側延長部よりもモータ室側に配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に突出する突出部を含まなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、結束バンド取付用部分67(モータ室側延長部)の径方向の厚さt1が、筒状弾性部材60のうちの貫通孔44に挿入される挿入部分62の径方向の厚さt2よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ室側延長部の径方向の厚さが、筒状弾性部材のうちの貫通孔に挿入される挿入部分の径方向の厚さよりも大きくてもよいし、挿入部分の径方向の厚さと等しくてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60が、車両用モータ駆動装置100において、3つのモータ側配線31の各々に対応するように、3つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材が、車両用モータ駆動装置において、3つのモータ側配線の全てに対応するように、1つだけ設けられていてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、モータ室41の内部に、モータ10の発熱部位を冷却するための「冷却液」としてのオイル50が貯留されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ室の内部に、オイル以外の「冷却液」(たとえば、水)が貯留されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、モータ側配線31の他端部と、インバータ側配線32の他端部とが、インバータ室42において接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータ側配線の他端部と、インバータ側配線の他端部とが、モータ室において接続されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、車両用モータ駆動装置100が、筒状弾性部材60の内部に設けられた金属製の芯金部材70を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、車両用モータ駆動装置が、筒状弾性部材の内部に設けられた金属製の芯金部材を備えなくてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60が、配線挿入孔61の内周面61aから内周側に周状に突出する接触面積抑制用突出部63を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材が、配線挿入孔の内周面から内周側に周状に突出する接触面積抑制用突出部を含まなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60が、貫通孔44が隔壁43(ハウジング40)を貫通する方向に沿った方向において、挿入部分62に対応する位置に設けられ、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出する弾性変形用突出部64を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材が、貫通孔が隔壁(ハウジング)を貫通する方向に沿った方向において、挿入部分に対応する位置に設けられ、筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出する弾性変形用突出部を含まなくてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、筒状弾性部材60が、挿入部分62のインバータ室42側に挿入部分62に隣り合うように配置され、筒状弾性部材60の外周面60aから外周側に周状に突出する弾性部材抜け防止用突出部65を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状弾性部材が、挿入部分のインバータ室側に挿入部分に隣り合うように配置され、筒状弾性部材の外周面から外周側に周状に突出する弾性部材抜け防止用突出部を含まなくてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、車両用モータ駆動装置100および密封構造が、筒状弾性部材60を外周側から締め付ける結束バンド80(締付部材)を備え、結束バンド取付用部分67(モータ室側延長部)が、結束バンド80により外周側から締め付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、車両用モータ駆動装置および密封構造が、結束バンド以外の「締付部材」(たとえば、クリップ)を備え、モータ室側延長部が、結束バンド以外の「締付部材」により外周側から締め付けられていてもよい。また、車両用モータ駆動装置および密封構造が、筒状弾性部材を外周側から締め付ける締付部材を備えずに、モータ室側延長部が、締付部材により外周側から締め付けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 モータ
20 インバータ
31 モータ側配線
40 ハウジング
41 モータ室
42 インバータ室
44 貫通孔
60 筒状弾性部材
60a (筒状弾性部材の)外周面
61 配線挿入孔
62 挿入部分
66 フランジ部
67 結束バンド取付用部分(モータ室側延長部)
68 結束バンド抜け防止用突出部(突出部)
80 結束バンド(締付部材)
100 車両用モータ駆動装置
D (配線挿入孔の)直径
Da (筒状弾性部材の配線挿入孔にモータ側配線が挿入されていない状態における配線挿入孔の)直径
L1 (結束バンド取付用部分(モータ室側延長部の))モータ側配線が配線挿入孔に挿入される方向の長さ
t1 (結束バンド取付用部分(モータ室側延長部)の)径方向の厚さ
t2 (挿入部分の)径方向の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7