(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012509
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20240123BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240123BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240123BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240123BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240123BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/121
H01G11/78
H01M50/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188676
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2023530098の分割
【原出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021104921
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 建人
(57)【要約】
【課題】耐熱性及び深絞り成型性に優れる外装材を提供すること。
【解決手段】基材層と、第一接着層と、バリア層と、第二接着層と、シーラント層と、をこの順で有する積層構造を備え、第一接着層及び第二接着層のうち少なくとも一方がウレタン系化合物及びウレア系化合物を含み、ウレタン系化合物が、ポリオール樹脂と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、ウレア系化合物が、アミン系化合物及びアミン誘導体のうち少なくとも一方と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、第一接着層及び第二接着層のうちウレタン系化合物及びウレア系化合物を含む層において、赤外分光法により測定される1700~1800cm
-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をA、1600~1650cm
-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をBとしたとき、下記式(1)で定義されるXが0.1≦X≦7.0を満たす蓄電デバイス用外装材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
第一接着層と、
バリア層と、
第二接着層と、
シーラント層と、
をこの順で有する積層構造を備え、
前記第一接着層及び前記第二接着層のうち少なくとも一方がウレタン系化合物及びウレア系化合物を含み、
前記ウレタン系化合物が、ポリオール樹脂と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、
前記ウレア系化合物が、アミン系化合物及びアミン誘導体のうち少なくとも一方と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、
前記第一接着層及び前記第二接着層のうち前記ウレタン系化合物及び前記ウレア系化合物を含む層において、赤外分光法により測定される1700~1800cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をA、1600~1660cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をBとしたとき、下記式(1)で定義されるXが0.1≦X≦7.0を満たす、蓄電デバイス用外装材。
X={B/(A+B)}×100 …(1)
【請求項2】
前記アミン系化合物及び前記アミン誘導体が、潜在性硬化剤を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記ポリオール樹脂中に含まれる水酸基の数をC、
前記多官能イソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基の数をD、
前記アミン系化合物及び前記アミン誘導体に含まれ、イソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子の数をEとしたとき、
下記式(2)で定義されるYが5.0<Y<60を満たし、
下記式(3)で定義されるZが0.1≦Z≦10.0を満たす、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
Y=D/C …(2)
Z=E/(D-C) …(3)
【請求項4】
前記ポリオール樹脂が、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールである、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記多官能イソシアネート化合物が、脂環式多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
全固体電池用である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電デバイスの更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電デバイスの研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を超える温度条件で使用することが可能であると共に、高い温度条件下(例えば100~150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。
【0006】
しかし、外装材として上記のような積層体を使用してラミネート型の全固体電池を製造する場合、外装材の耐熱性が不十分であることに起因して、外装材の層間(特に、基材層又はシーラント層と、バリア層との間)においてデラミネーションが発生し、全固体電池のパッケージの密封性が不十分になるおそれがある。
【0007】
また、ラミネート型の全固体電池を製造するために外装材に対し深い凹部を形成しようとすると、外装材に破断が生じるおそれがある。
【0008】
本開示の一側面は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び深絞り成型性に優れる外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、基材層と、第一接着層と、バリア層と、第二接着層と、シーラント層と、をこの順で有する積層構造を備え、第一接着層及び第二接着層のうち少なくとも一方がウレタン系化合物及びウレア系化合物を含み、ウレタン系化合物が、ポリオール樹脂と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、ウレア系化合物が、アミン系化合物及びアミン誘導体のうち少なくとも一方と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、第一接着層及び第二接着層のうちウレタン系化合物及びウレア系化合物を含む層において、赤外分光法により測定される1700~1800cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をA、1600~1660cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をBとしたとき、下記式(1)で定義されるXが0.1≦X≦7.0を満たす、蓄電デバイス用外装材である。
X={B/(A+B)}×100 …(1)
【0010】
上記外装材は、耐熱性及び成型性に優れる。このような効果が奏される理由について本発明者は以下のように考えている。すなわち、ウレア系化合物に含まれるウレア基は、一般に、凝集エネルギーが高い。そのため、ウレア系化合物を含む接着層は、高温環境下にある場合や成型時に応力が加わった場合でも凝集破壊を起こしにくい。
【0011】
また、ウレア基は活性水素を有する。活性水素により、ウレア系化合物を含む接着層と、接着する対象の面との界面で、水素結合が生成される。そして、生成された水素結合により、該界面の密着力は高いものとなる。そのため、接着層は、高温環境下にある場合や成型時に応力が加わった場合でも剥離しにくいものとなる。
【0012】
加えて、接着層が、ウレア系化合物よりも柔軟性が高く比較的耐熱性が高いウレタン系化合物を更に含むことで、接着層に柔軟性が付与される。柔軟性が付与された接着層は、高温環境下における基材層の熱収縮等で生じる応力及び成型時に生じる応力を緩和することができる。そのため、接着層の凝集破壊は抑制される。
【0013】
そして、更に、ウレタン系化合物のカルボニル基に由来する1700~1800cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度と、ウレア系化合物のウレア基に由来する1600~1660cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度とを用いて求められるXが0.1以上であることで、ウレア系化合物のウレア基がより高い凝集力を発揮する。そのため、接着層は、より凝集破壊を起こしにくく、より剥離しにくいものとなる。また、上記Xが7以下であることで、接着層の過度な硬化が抑制される。それにより高い柔軟性が接着層に付与され、接着層は、より強い応力を緩和することが可能となる。その結果、上記外装材は、耐熱性及び深絞り成型性に優れたものとなる。
【0014】
また、上記外装材は、初期密着性にも優れる。
【0015】
一態様において、アミン系化合物及びアミン誘導体は、潜在性硬化剤を含んでいてもよい。
【0016】
一態様において、ポリオール樹脂中に含まれる水酸基の数をC、多官能イソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基の数をD、アミン系化合物及びアミン誘導体に含まれ、イソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子の数をEとしたとき、下記式(2)で定義されるYは、5.0<Y<60を満たし、下記式(3)で定義されるZは、0.1≦Z≦10.0を満たしていてもよい。
Y=D/C …(2)
Z=E/(D-C) …(3)
【0017】
上記Yが5.0を超えることで、アミン系化合物及びアミン誘導体と反応するイソシアネート基の数が十分な量となる。また、上記Yが60未満であることで、アミン系化合物及びアミン誘導体と、多官能イソシアネート化合物との反応により発生しうるボイドを抑制することができ、硬化不良を抑制できる傾向にある。また、上記Zが0.1以上であることで、アミン系化合物及びアミン誘導体と、多官能イソシアネート化合物との反応率が向上し、また、接着層に存在するウレア系化合物の比率が高いものとなる。また、一定量の未反応のアミン化合物及びアミン誘導体が接着層に残存することで、未反応のアミン化合物及びアミン誘導体中の活性水素等の極性官能基が接着層中の極性官能基と水素結合等の分子間相互作用を形成し、密着性が向上する傾向にある。Zが10.0以下であることで、耐熱性及び成型性低下の原因となる密着阻害が発生する量の未反応のアミン化合物及びアミン誘導体が接着層に残存することを抑制できる。その結果、上記外装材は、初期密着性、耐熱性及び成型信頼性に一層優れたものとなる。
【0018】
一態様において、ポリオール樹脂は、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールであってもよい。それにより、上記外装材は、耐熱性及び深絞り成型性に一層優れたものとなる。
【0019】
一態様において、多官能イソシアネート化合物は、脂環式多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。それにより、上記外装材は、初期密着性、耐熱性及び深絞り成型性に一層優れたものとなる。
【0020】
このような効果が奏される理由としては、多官能イソシアネート化合物として脂環式多官能イソシアネート化合物の多量体を用いた場合には、嵩高い分子構造のため、分子鎖と分子鎖の結びつきが高温環境下においても解けにくくなるためであると考えられる。また、多官能イソシアネート化合物として芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体を用いた場合には、比較的耐熱性が良好であることに加え、芳香環に由来する分子間相互作用が働くためであると考えられる。
【0021】
本開示の他の一側面は、全固体電池用であってよい。本開示の一側面に係る外装材は耐熱性及び深絞り成型性に優れるため、全固体電池用途に適している。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一側面によれば、耐熱性及び深絞り成型性に優れる外装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス用外装材の概略断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス用外装材を用いて得られるエンボスタイプ外装材を示す図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)に示すエンボスタイプ外装材のb-b線に沿った縦断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス用外装材を用いて二次電池を製造する工程を示す斜視図であり、(a)は、蓄電デバイス用外装材を準備した状態を示し、(b)は、エンボスタイプに加工された蓄電デバイス用外装材と電池要素を準備した状態を示し、(c)は、蓄電デバイス用外装材の一部を折り返して端部を溶融した状態を示し、(d)は、折り返された部分の両側を上方に折り返した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
[蓄電デバイス用外装材]
図1は、本開示の蓄電デバイス用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電デバイス用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた第一接着層12と、該第一接着層12の基材層11とは反対側に設けられた、両面に腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の第一接着層12とは反対側に設けられた第二接着層15と、該第二接着層15のバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、腐食防止処理層14aはバリア層13の第一接着層12側の面に、腐食防止処理層14bはバリア層13の第二接着層15側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイスの外部側、シーラント層16を蓄電デバイスの内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。
【0026】
<基材層11>
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電デバイスの外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0027】
基材層11は、シーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することが好ましい。基材層11がシーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することで、ヒートシール時に基材層11(外側の層)が融解することに起因して外観が悪くなることを抑制できる。シーラント層16が多層構造である場合、シーラント層16の融解ピーク温度は最も融解ピーク温度が高い層の融解ピーク温度を意味する。基材層11の融解ピーク温度は好ましくは290℃以上であり、より好ましくは290~350℃である。基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解ピーク温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。融解ピーク温度は、JIS K7121-1987に記載の方法に準拠して求められる値を意味する。
【0028】
基材層11として、市販のフィルムを使用してもよいし、コーティング(塗工液の塗布及び乾燥)によって基材層11を形成してもよい。なお、基材層11は単層構造であっても多層構造であってもよく、熱硬化性樹脂を塗工することによって形成してもよい。また、基材層11は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0029】
基材層11の融解ピーク温度T11とシーラント層16の融解ピーク温度T16の差(T11-T16は、好ましくは20℃以上である。この温度差が20℃以上であることで、ヒートシールに起因する外装材20の外観の悪化をより一層十分に抑制できる。基材層11の厚さは好ましくは5~50μmであり、より好ましくは12~30μmである。
【0030】
<第一接着層12及び第二接着層15>
以下、第一接着層12と、第二接着層15それぞれについて詳述する。
【0031】
(第一接着層12)
第一接着層12は、腐食防止処理層14aが設けられたバリア層13と基材層11とを接着する層である。第一接着層12は、基材層11とバリア層13とを強固に接着するために必要な接着力を有すると共に、成型する際において、基材層11によってバリア層13が破断されることを抑制するための追随性も有する。なお、追随性とは、部材が伸縮等により変形したとしても、第一接着層12が剥離することなく部材上に留まる性質である。
【0032】
第一接着層12を形成する接着成分としては、例えば、ウレタン系化合物、ウレア系化合物、エポキシ系化合物、シリコン系化合物、並びに酸化アルミニウム及びシリカ等の無機系酸化物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ウレア系化合物は、アミン系化合物及びアミン誘導体と、多官能イソシアネート化合物とを反応することで得られる。ウレタン系化合物は、ポリオール樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを反応することで得られる。
【0033】
アミン系化合物は、分子内にアミノ基を有する化合物である。ここで、アミノ基とは、-NH2、-NHR、-NR2を意味する。ただし、Rは、アルキル基及びアリール基を表す。アミン誘導体は、アミン系化合物から誘導され、分子内にアミノ基を有しない化合物である。
【0034】
アミン系化合物及びアミン誘導体は、顕在性硬化剤であってもよく、潜在性硬化剤であってもよい。潜在性硬化剤は、外部刺激により活性化されてイソシアネート基と反応しうる反応性基を生成する硬化剤である。アミン系化合物及びアミン誘導体が潜在性硬化剤である場合、ポットライフが向上する傾向にある。外部刺激としては、例えば、熱及び湿気が挙げられる。潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、イミン系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、芳香族系ポリアミン硬化剤、脂肪族系ポリアミン硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、三級アミン塩系硬化剤及びオキサゾリジン系硬化剤が挙げられる。このうち、加熱により活性化される潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤及びアミンイミド系硬化剤が挙げられる。湿気により活性化される潜在性硬化剤としては、例えば、イミン系硬化剤及びオキサゾリジン系硬化剤が挙げられる。ポットライフが一層向上する傾向にあることから、潜在性硬化剤は、湿気により活性化されるものであることが好ましい。
【0035】
ポリオール樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール及びポリアクリルポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸の一種以上とジオールとを反応させることで得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン及びペンタエリスリトール等に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合させて製造されるものが挙げられる。
【0038】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジフェニルカーボネート等といった炭酸ジエステルとジオールとを反応させることで得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリアクリルポリオールとしては、例えば、少なくとも水酸基含有アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。この場合、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を主成分として含んでいることが好ましい。水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
多官能イソシアネート化合物は、複数のイソシアネート基を含み、上記アミン系樹脂又はポリオールを架橋する働きを担う。多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族多官能イソシアネート化合物、脂環式多官能イソシアネート化合物及び芳香環を有する多官能イソシアネート化合物が挙げられる。
【0041】
脂肪族多官能イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。脂環式多官能イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。芳香環を有する多官能イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、これらの化合物の多量体(例えば、三量体)も用いることができ、具体的には、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等を用いることができる。
【0042】
多官能イソシアネート化合物は、ポットライフが向上する観点より、そのイソシアネート基がブロック剤と結合していてもよい。ブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム(MEKO)等が挙げられる。ブロック剤が多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基から脱離する温度は、50℃以上であってよく、ポットライフが一層向上することから、60℃以上であることが好ましい。ブロック剤が多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基から脱離する温度は、140℃以下であってよく、外装材の成型カール耐性が向上することから、120℃以下であることが好ましい。
【0043】
ブロック剤の解離温度を低下させるため、解離温度を低下させる触媒を用いてもよい。そのような解離温度を低下させる触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン及びN-メチルモルホリン等の三級アミン、並びにジブチル錫ジラウレート等の金属有機酸塩が挙げられる。
【0044】
第一接着層12は、外装材の外部に存在する硫化水素によるバリア層13の腐食を抑制できるため、硫化水素吸着物質を含んでいてもよい。このような硫化水素吸着物質としては、例えば、酸化亜鉛及び過マンガン酸カリウムが挙げられる。第一接着層12が硫化水素吸着物質を含む場合、外装材の外部に存在する硫化水素によるバリア層13の腐食を抑制できることから、その含有量は、第一接着層12の全量に対して1~50質量%であることが好ましい。
【0045】
第一接着層12の厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、2~6μmがより好ましい。
【0046】
第一接着層12は、例えば、上述した成分を含む組成物を塗工することで得られる。塗工方法は、公知の手法を用いることができるが、例えば、グラビアダイレクト、グラビアリバース(ダイレクト、キス)及びマイクログラビアが挙げられる。
【0047】
組成物は、溶剤を含んでいてもよい。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びアルコール類が挙げられる。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(第二接着層15)
第二接着層15は、腐食防止処理層14bが設けられたバリア層13とシーラント層16とを接着する層である。
【0049】
第二接着層15を形成する接着成分としては、例えば、第一接着層12で挙げたものと同様の接着成分が挙げられる。
【0050】
第二接着層15は、外装材内部の電池内容物から発生した硫化水素によるバリア層13の腐食を抑制できるため、硫化水素吸着物質を含むことが好ましい。このような硫化水素吸着物質としては、第一接着層12で挙げたものと同様の硫化水素吸着物質が挙げられる。また、その含有量は、第二接着層15の全量に対して0.1~50質量%であることが好ましい。
【0051】
第二接着層15は、第一接着層12と同様の方法で得られる。
【0052】
第二接着層15の厚さは、1~5μmであることが好ましい。第二接着層15の厚さが1μm以上であることにより、バリア層13とシーラント層16との十分な接着強度が得られ易い。第二接着層15の厚さが5μm以下であることにより、第二接着層15の割れの発生を抑制できる傾向にある。
【0053】
第一接着層12及び第二接着層15が、ウレタン系化合物及びウレア系化合物を含む場合、赤外分光法により測定される1700~1800cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をA、1600~1660cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をBとしたとき、下記式(1)で定義されるXは、0.1≦X≦7.0を満たし、初期密着性、耐熱性、深絞り成型性及び成型信頼性が一層向上することから、1.5≦X≦4.5を満たすことが好ましく、2.5≦X≦3.5を満たすことがより好ましい。
X={B/(A+B)}×100 …(1)
【0054】
赤外線吸収スペクトルピーク強度は、フーリエ変換赤外線(FT-IR)分光分析法の減衰全反射(ATR:Attenuated Total Reflection)により測定することができる。
【0055】
ポリオール樹脂中に含まれる水酸基の数をC、多官能イソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基の数をD、アミン系化合物及びアミン誘導体に含まれ、イソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子の数をEとしたとき、下記式(2)で定義されるYが5.0<Y<60を満たし、下記式(3)で定義されるZが0.1≦Z≦10.0を満たすことが好ましい。
Y=D/C …(2)
Z=E/(D-C) …(3)
【0056】
アミン系化合物及びアミン誘導体に含まれ、イソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子は、例えば、-NH2で表されるアミノ基に含まれる窒素原子、-NHRで表されるアミノ基に含まれる窒素原子、イミダゾール基に含まれる反応に寄与する1つの窒素原子であってよい。アミン系化合物及びアミン誘導体が潜在性硬化剤である場合、イソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子は、外部刺激により活性化されることでイソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子も含む。
【0057】
上記式(2)で定義されるYは、外装材が初期密着性、耐熱性及び成型信頼性に一層優れることから、10を超えることが好ましく、50未満であることが好ましく、40未満であることがより好ましい。
【0058】
上記式(3)で定義されるZは、外装材が初期密着性、耐熱性及び成型信頼性に一層優れることから、0.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.5以上であることが更に好ましい。
【0059】
第一接着層12並びに第二接着層15は、その両方がウレタン系化合物及びウレア系化合物を含んでいてもよく、その一方のみがウレタン系化合物及びウレア系化合物を含んでいてもよい。第一接着層12並びに第二接着層15は、耐熱性の観点から、両方がウレタン系化合物及びウレア系化合物を含むことが好ましい。
【0060】
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有する。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウ蒸着フィルム、及び無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0061】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、更なる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい(例えば、JIS規格でいう8021材、8079材よりなるアルミニウム箔)。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
【0062】
バリア層13に使用する金属箔は、所望の耐電解液性を得るために、例えば、脱脂処理が施されていることが好ましい。また、製造工程を簡便にするためには、上記金属箔としては、表面がエッチングされていないものが好ましい。中でも、バリア層13に使用する金属箔は、耐電解液性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理する場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。上記脱脂処理としては、例えば、ウェットタイプの脱脂処理、又はドライタイプの脱脂処理を用いることができるが、製造工程を簡便にする観点から、ドライタイプの脱脂処理が好ましい。
【0063】
上記ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、金属箔を焼鈍処理する工程において、処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。金属箔を軟質化するために施される焼鈍処理の際に、同時に行われる脱脂処理程度でも充分な耐電解液性が得られる。
【0064】
また、上記ドライタイプの脱脂処理としては、上記焼鈍処理以外の処理であるフレーム処理及びコロナ処理等の処理を用いてもよい。さらに、上記ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、金属箔に特定波長の紫外線を照射した際に発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を用いてもよい。
【0065】
上記ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂処理、アルカリ脱脂処理等の処理を用いることができる。上記酸脱脂処理に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸を用いることができる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、アルカリ脱脂処理に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高い水酸化ナトリウムを用いることができる。また、弱アルカリ系の材料及び界面活性剤等が配合された材料を用いて、アルカリ脱脂処理を行ってもよい。上記説明したウェットタイプの脱脂処理は、例えば、浸漬法、スプレー法により行うことができる。
【0066】
バリア層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び加工性の点から、9~200μmであることが好ましく、15~150μmであることがより好ましく、15~100μmであることが更に好ましい。バリア層13の厚さが9μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。バリア層13の厚さが200μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電デバイスの重量エネルギー密度低下を抑制することができる。
【0067】
<腐食防止処理層14a,14b>
腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属薄層等の腐食を防止するためにその表面に設けられる層である。また、腐食防止処理層14aは、バリア層13と第一接着層12との密着力を高める役割を果たす。また、腐食防止処理層14bは、バリア層13と第二接着層15との密着力を高める役割を果たす。腐食防止処理層14a及び腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。本実施形態においては、バリア層13と第一接着層12との間、及びバリア層13と第二接着層15との間に腐食防止処理層が設けられているが、バリア層13と第二接着層15との間にのみ腐食防止処理層が設けられていてもよい。
【0068】
腐食防止処理層14a,14bは、例えば、腐食防止処理層14a,14bの母材となる層に対して、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、腐食防止能を有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理あるいはこれらの処理を組み合わせた腐食防止処理を実施することで形成することができる。
【0069】
上述した処理のうち脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、特に熱水変性処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔(アルミニウム箔)表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物(アルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト))を形成させる処理である。このため、このような処理は、バリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成している構造を得るために、化成処理の定義に包含されるケースもある。
【0070】
脱脂処理としては、酸脱脂、アルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、上述した硫酸、硝酸、塩酸及びフッ酸等の無機酸を単独、又はこれらを混合して得られた酸脱脂を用いる方法が挙げられる。また酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウム等のフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、バリア層13の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウム等を用いる方法が挙げられる。
【0071】
上記熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にバリア層13を浸漬処理することで得られるベーマイト処理を用いることができる。上記陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理を用いることができる。また、上記化成処理としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、或いはこれらを2種以上組み合わせた処理を用いることができる。これらの熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理は、上述した脱脂処理を事前に施すことが好ましい。
【0072】
なお、上記化成処理としては、湿式法に限らず、例えば、これらの処理に使用する処理剤を樹脂成分と混合し、塗布する方法を用いてもよい。また、上記腐食防止処理としては、その効果を最大限にすると共に、廃液処理の観点から、塗布型クロメート処理が好ましい。
【0073】
コーティングタイプの腐食防止処理に用いられるコーティング剤としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤が挙げられる。特に、希土類元素酸化物ゾルを含有するコーティング剤を用いる方法が好ましい。
【0074】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積あたりの質量は0.005~0.200g/m2の範囲内が好ましく、0.010~0.100g/m2の範囲内がより好ましい。0.005g/m2以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与し易い。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能は飽和しこれ以上の効果が見込めない。なお、上記内容では単位面積あたりの質量で記載しているが、比重がわかればそこから厚さを換算することも可能である。
【0075】
腐食防止処理層14a,14bの厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、例えば10nm~5μmであることが好ましく、20~500nmであることがより好ましい。
【0076】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10に対し、ヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電デバイスの組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。
【0077】
シーラント層16としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂からなるフィルムが挙げられる。シーラント層16は、融点が高く、得られる外装材の耐熱性が一層向上することから、ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく、ポリエステル系樹脂からなるフィルムがより好ましい。
【0078】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。これらアクリル系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0080】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。これらポリエステル系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。シーラント層16が多層構成である場合は、各層同士を共押出により積層してもよく、ドライラミネートにより積層してもよい。
【0082】
シーラント層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加材を含んでいてもよい。
【0083】
シーラント層16の厚さは、10~100μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。シーラント層16の厚さが10μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を得ることができ、100μm以下であることにより、外装材端部からの水蒸気の浸入量を低減することができる。
【0084】
シーラント層16の融解ピーク温度は、耐熱性が向上することから、200~280℃であることが好ましい。
【0085】
[外装材の製造方法]
次に、外装材10の製造方法について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0086】
外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11~S13をこの順に実施する方法が挙げられる。
工程S11:バリア層13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、バリア層13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する工程。
工程S12:腐食防止処理層14aのバリア層13とは反対側の面と、基材層11とを、第一接着層12を介して貼り合わせる工程。
工程S13:腐食防止処理層14bのバリア層13とは反対側の面上に、第二接着層15を介してシーラント層16を形成する工程。
【0087】
<工程S11>
工程S11では、バリア層13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、バリア層13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する。腐食防止処理層14a及び14bは、それぞれ別々に形成されてもよく、両方が一度に形成されてもよい。具体的には、例えば、バリア層13の両方の面に腐食防止処理剤(腐食防止処理層の母材)を塗布し、その後、乾燥、硬化、焼付けを順次行うことで、腐食防止処理層14a及び14bを一度に形成する。また、バリア層13の一方の面に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化、焼き付けを順次行って腐食防止処理層14aを形成した後、バリア層13の他方の面に同様にして腐食防止処理層14bを形成してもよい。腐食防止処理層14a及び14bの形成順序は特に制限されない。また、腐食防止処理剤は、腐食防止処理層14aと腐食防止処理層14bとで異なるものを用いてもよく、同じのものを用いてもよい。腐食防止処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、バーコート法、キスコート法、コンマコート法、小径グラビアコート法等の方法を用いることができる。
【0088】
<工程S12>
工程S12では、腐食防止処理層14aのバリア層13とは反対側の面と、基材層11とが、第一接着層12を形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。工程S12では、第一接着層12の接着性の促進のため、加熱処理を行ってもよい。加熱処理時の温度は、外装材が成型カール耐性に優れることから、140℃以下であることが好ましい。
【0089】
<工程S13>
工程S12後、基材層11、第一接着層12、腐食防止処理層14a、バリア層13及び腐食防止処理層14bがこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14bのバリア層13とは反対側の面と、シーラント層16とが、第二接着層15を形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。工程S13では、第二接着層15の接着性の促進のため、加熱処理を行ってもよい。加熱処理時の温度は、外装材が成型カール耐性に優れることから、140℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
【0090】
以上説明した工程S11~S13により、外装材10が得られる。なお、外装材10の製造方法の工程順序は、上記工程S11~S13を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程S12を行ってから工程S11を行う等、実施する工程の順序を適宜変更してもよい。
【0091】
[蓄電デバイス]
次に、外装材10を容器として備える蓄電デバイスについて説明する。蓄電デバイスは、電極を含む電池要素1と、上記電極から延在するリード2と、電池要素1を収容する容器とを備え、上記容器は蓄電デバイス用外装材10から、シーラント層16が内側となるように形成される。上記容器は、2つの外装材をシーラント層16同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた外装材10の周縁部をヒートシールして得られてもよく、また、1つの外装材を折り返して重ね合わせ、同様に外装材10の周縁部をヒートシールして得られてもよい。リード2は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。リード2は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0092】
本実施形態の外装材は、様々な蓄電デバイスにおいて使用可能である。そのような蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池及び全固体電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。本実施形態の外装材10はヒートシール後の高温環境下での使用に際しても優れたヒートシール性を維持することができるため、そのような環境での使用が想定される全固体電池用途に適している。
【0093】
[蓄電デバイスの製造方法]
次に、上述した外装材10を用いて蓄電デバイスを製造する方法について説明する。なお、ここでは、エンボスタイプ外装材30を用いて二次電池40を製造する場合を例に挙げて説明する。
図2は上記エンボスタイプ外装材30を示す図である。
図3の(a)~(d)は、外装材10を用いた片側成型加工電池の製造工程を示す斜視図である。二次電池40としては、エンボスタイプ外装材30のような外装材を2つ準備し、それらをアライメントの調整をしつつ貼り合わせて製造される、両側成型加工電池であってもよい。
【0094】
片側成型加工電池である二次電池40は、例えば、以下の工程S21~S26により製造することができる。
工程S21:外装材10、電極を含む電池要素1、並びに上記電極から延在するリード2を準備する工程。
工程S22:外装材10の片面に電池要素1を配置するための凹部32を形成し、エンボスタイプ外装材30を得る工程(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
工程S23:エンボスタイプ外装材30の成型加工エリア(凹部32)に電池要素1を配置し、凹部32を蓋部34が覆うようにエンボスタイプ外装材30を折り返し重ねて、電池要素1から延在するリード2を挟持するようにエンボスタイプ外装材30の一辺をヒートシールする工程(
図3(b)及び
図3(c)参照)。
工程S24:リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺をヒートシールし、その後、残った一辺から電解液を注入し、真空状態で残った一辺をヒートシールする工程(
図3(c)参照)。
工程S25:電流値や電圧値、環境温度等を所定の条件にして充放電を行い、化学変化を起こさせる(化成)工程。
工程S26:リード2を挟持する辺以外のヒートシールされた辺の端部をカットし、成型加工エリア(凹部32)側に折り曲げる工程(
図3(d)参照)。
【0095】
<工程S21>
工程S21では、外装材10、電極を含む電池要素1、並びに上記電極から延在するリード2を準備する。外装材10は、上述した実施形態に基づき準備する。電池要素1及びリード2としては特に制限はなく、公知の電池要素1及びリード2を用いることができる。
【0096】
<工程S22>
工程S22では、外装材10のシーラント層16側に電池要素1を配置するための凹部32が形成される。凹部32の平面形状は、電池要素1の形状に合致する形状、例えば平面視矩形状とされる。凹部32は、例えば矩形状の圧力面を有する押圧部材を、外装材10の一部に対してその厚さ方向に押圧することで形成される。また、押圧する位置、すなわち凹部32は、長方形に切り出した外装材10の中央より、外装材10の長手方向の一方の端部に偏った位置に形成する。これにより、成型加工後に凹部32を形成していないもう片方の端部側を折り返し、蓋(蓋部34)とすることができる。
【0097】
凹部32を形成する方法としてより具体的には、金型を用いた成型加工(深絞り成型)が挙げられる。成型方法としては、外装材10の厚さ以上のギャップを有するように配置された雌型と雄型の金型を用い、雄型の金型を外装材10と共に雌型の金型に押し込む方法が挙げられる。雄型の金型の押込み量を調整することで、凹部32の深さ(深絞り量)を所望の量に調整できる。外装材10に凹部32が形成されることにより、エンボスタイプ外装材30が得られる。このエンボスタイプ外装材30は、例えば
図2に示すような形状を有している。ここで、
図2(a)は、エンボスタイプ外装材30の斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すエンボスタイプ外装材30のb-b線に沿った縦断面図である。
【0098】
<工程S23>
工程S23では、エンボスタイプ外装材30の成型加工エリア(凹部32)内に、正極、セパレータ及び負極等から構成される電池要素1が配置され。また、電池要素1から延在し、正極と負極にそれぞれ接合されたリード2が成型加工エリア(凹部32)から外に引き出される。その後、エンボスタイプ外装材30は、長手方向の略中央で折り返され、シーラント層16同士が内側となるように重ねられ、エンボスタイプ外装材30のリード2を挟持する一辺がヒートシールされる。ヒートシールは、温度、圧力及び時間の3条件で制御され、適宜設定される。ヒートシールの温度は、シーラント層16を融解する温度以上であることが好ましく、具体的には180℃以上とすることができる。
【0099】
ヒートシール後、さらにシーラント層16全体を加熱するキュア工程を行う。これにより、ヒートシール部分以外の結晶化を進行させ、外装材10全体の耐熱性を確保する。キュア工程は80~150℃で実施することができる。
【0100】
なお、シーラント層16のヒートシール前の厚さは、リード2の厚さに対し40%以上80%以下であることが好ましい。シーラント層16の厚さが上記下限値以上であることにより、シーラント層16を構成する樹脂がリード2端部を十分充填できる傾向があり、上記上限値以下であることにより、二次電池40の外装材10端部の厚さを適度に抑えることができ、外装材10端部からの水分の浸入量を低減することができる。
【0101】
<工程S24>
工程S24では、リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺のヒートシールが行われる。その後、残った一辺から電解液を注入し、残った一辺が真空状態でヒートシールされる。ヒートシールの条件は工程S23と同様である。
【0102】
<工程S25>
工程S25では、工程S23までに得られた二次電池40に対して充放電を行い、化学変化を起こさせる(化成:40℃環境にて3日間)。そして、化成によって発生したガスの除去や電解液の補充のため、二次電池40を一度開封し、その後最終シールを行う。なお、この工程S25は省略することができる。
【0103】
<工程S26>
リード2を挟持する辺以外のヒートシール辺の端部がカットされ、端部からははみだしたシーラント層16が除去される。その後、ヒートシール部を成型加工エリア32側に折り返し、折り返し部42を形成することで、二次電池40が得られる。
【0104】
以上、本開示の蓄電デバイス用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示は当該形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0105】
以下に、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0106】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
【0107】
<基材層(厚さ25μm)>
一方の面をコロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0108】
<第一接着層(厚さ4μm)>
表1に記載のポリオール樹脂、多官能イソシアネート化合物並びにアミン系化合物及びアミン誘導体と、酢酸エチルとを表1に示す割合で配合した接着剤を用いた。表1に示すポリオール樹脂、多官能イソシアネート化合物、並びにアミン系化合物及びアミン誘導体の詳細は、以下のとおりである。
【0109】
{ポリオール樹脂}
・ポリアクリルポリオール(不揮発分の割合:50質量%、水酸基価:10~20KOHmg/g、官能基当量:5610g/mol、三菱レイヨン株式会社製、グレード名:「LR209」)
・ポリカーボネートジオール(不揮発分の割合:100質量%、水酸基価:113KOHmg/g、官能基当量:496g/mol、旭化成株式会社製、グレード名:「T5652」)
・ポリエステルポリオール(不揮発分の割合:30質量%、水酸基価:4KOHmg/g、官能基当量:14025g/mol、ユニチカ株式会社製、グレード名:「エリーテルUE-3600」)
【0110】
{多官能イソシアネート化合物}
・HDI‐アダクト(ヘキサメチレンジイソシアネート-アダクト体、不揮発分の割合:50質量%、NCO含有量:18.7質量%、官能基当量:225g/mol、旭化成株式会社製、グレード名:「E402-80B」)
・TDI‐アダクト(トリレンジイソシアネート-アダクト体、不揮発分の割合:50質量%、NCO含有量:17.7質量%、官能基当量:237g/mol、日本ポリウレタン工業株式会社製、グレード名:「コロネートL」)
・IPDI‐アダクト(イソホロンジイソシアネート-アダクト体、不揮発分の割合:74.6質量%、NCO含有量:10.3質量%、官能基当量:408g/mol、三井化学株式会社製、グレード名:「D-140N」)
【0111】
{アミン系化合物及びアミン誘導体}
・2級アミン化合物(アミン系化合物、不揮発分の割合:100質量%、官能基当量:626g/mol、広栄化学株式会社製、グレード名:「A3190」)
・イミダゾール系硬化剤(アミン誘導体、熱により活性化する潜在性硬化剤、不揮発分の割合:100質量%、官能基当量:701g/mol、三菱化学株式会社製、アミン価:80KOHmg/g、グレード名:「P200H50」)
・イミン系硬化剤(アミン誘導体、湿気により活性化する潜在性硬化剤、不揮発分の割合:100質量%、官能基当量:6233g/mol、三菱化学株式会社製、アミン価:9KOHmg/g、グレード名:「H3」)
【0112】
<第二接着層(厚さ3μm)>
第二接着層として、酸変性ポリオレフィン樹脂(日本製紙株式会社社製、商品名「アウローレン150S」)を準備した。
【0113】
<バリア層(厚さ35μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を準備した。
【0114】
<シーラント層(厚さ30μm)>
シーラント層として、無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「P1011」)を準備した。
【0115】
[外装材の製造]
<実施例1~18及び比較例1~3>
ドライラミネート手法により接着剤(第一接着層)を用いてバリア層を基材層に貼り付け、80℃で120時間エージングを行った。次いで、バリア層の第一接着層が接着している面とは反対の面にドライラミネート手法により接着剤(第二接着層)を用いてシーラント層を貼り付け、60℃で120時間エージングを行った。
【0116】
このようにして得られた積層体を、加熱処理し、外装材(基材層/第一接着層/バリア層/第二接着層/シーラント層)を製造した。
【0117】
[外装材の評価]
<実施例1~18及び比較例1~3>
{赤外線吸収スペクトルピークの測定}
外装材をカットし、基材層とバリア層との間を剥離した。基材層又はバリア層いずれかの面において露出した接着層の最表面についてフーリエ変換赤外線(FT-IR)分光分析法の減衰全反射(ATR:Attenuated Total Reflection)で赤外線吸収スペクトルピークを測定した。1700~1800cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をA、1600~1660cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をBとし、下記式(1)によりXを算出した。結果を表2に示した。
X={B/(A+B)}×100 …(1)
【0118】
測定装置及び条件の詳細は、下記のとおりである。
(測定装置及び条件)
測定装置:Spectrum Spotlight 400(商品名、PerkinElmer社製)
プリズム:ゲルマニウム
波数分解能:4cm-1
積算回数:4回
ベースライン:波数2500~2700cm-1間の直線部
【0119】
{ラミネート強度の評価}
(測定方法)
外装材を15mm幅にカットし、外装材のバリア層と、基材層との間のラミネート強度を測定した。測定は、25℃(室温)又は160℃で行った。160℃で測定を行う場合、カットした外装材を160℃で5分間加熱した後、160℃環境中でラミネート強度を測定した。剥離は、90°剥離とし、剥離速度は50mm/分とした。ラミネート強度は、測定温度に応じて以下の評価基準に基づき評価し、「C」以上を合格とした。結果を表2に示した。
【0120】
(25℃環境下の評価基準)
A:ラミネート強度が6.0N/15mm以上
B:ラミネート強度が4.5N/15mm以上6.0N/15mm未満
C:ラミネート強度が3.0N/15mm以上4.5N/15mm未満
D:ラミネート強度が3.0N/15mm未満
【0121】
(160℃環境下の評価基準)
A:ラミネート強度が3.0N/15mm以上
B:ラミネート強度が2.0N/15mm以上3.0N/15mm未満
C:ラミネート強度が1.0N/15mm以上2.0N/15mm未満
D:ラミネート強度が1.0N/15mm未満
【0122】
{深絞り成型性の評価}
各例で得られた外装材について、深絞り成型が可能な成型深度を以下の方法で評価した。成型装置の成型深さを0.25mmごとに3.00~7.00mmに設定し、破断及びピンホールのいずれも生じることなく深絞り成型できた成型深度の最大値を求めた。深絞りしたサンプルについて破断及びピンホールの有無は、外装材にライトを照射しながら目視にて確認した。成型深度は、以下の基準に従って評価した。「C」以上を合格とした。結果を表2に示した。
【0123】
(評価基準)
A:成型深度の最大値が5.75mm以上
B:成型深度の最大値が5.00mm以上5.75mm未満
C:成型深度の最大値が4.25mm以上5.00mm未満
D:成型深度の最大値が4.25mm未満
【0124】
{成型信頼性の評価}
上記の{深絞り成型性の評価}で得られた成型深度2.00mmの外装材(各5検体ずつ)について、160℃の環境で1週間保管した。その後、基材層と、バリア層との間のデラミネーション発生具合を調べた。デラミネーション発生具合は、成型凸部近傍にライトを照射しながら目視にて確認した。デラミネーション発生具合は、以下の基準に従って評価した。「C」以上を合格とした。結果を表2に示した。
【0125】
(評価基準)
B:5検体中0~1検体でデラミネーションが発生
C:5検体中2~3検体でデラミネーションが発生
D:5検体中4検体以上でデラミネーションが発生
【0126】
{ポットライフ}
接着剤の塗液の所定時間ごとのゲル分率からポットライフを評価した。ゲル分率は、以下の方法で測定した。ゲル分率は以下の基準に基づき評価した。「C」以上を合格とした。結果を表2に示した。
【0127】
(測定方法)
工程A)接着剤塗液作製後、4時間経過した塗液を一部回収し、その塗液の溶剤を乾燥させた。
工程B)試料を乗せるメッシュの重量を測定し(w1とする)、このメッシュに工程Aの乾燥塗膜を乗せた際の合計重量を測定した(w2とする)。
工程C)工程Aの乾燥塗膜をキシレンに浸漬し、室温で1週間保管した。
工程D)工程Cのキシレン溶液を工程Bで用いたメッシュでろ過し、残渣を多量のキシレンで洗浄した。
工程E)工程Dの残渣を乾燥させ、重量を測定した(w3とする)。
工程F)上記で得られた重量データから、下記式によりゲル分率を計算した。
ゲル分率=(w3-w1)/(w2-w1)
【0128】
(評価基準)
A:ゲル分率が40%未満
B:ゲル分率が40%以上50%未満
C:ゲル分率が50%以上60%未満
D:ゲル分率が60%以上
【0129】
{総合評価}
外装材は、以下の基準に基づき総合評価した。結果を表2に示した。
A:耐熱ラミネート強度、深絞り成型性、成型信頼性及びポットライフの評価が全て「B」以上である
B:耐熱ラミネート強度、深絞り成型性、成型信頼性及びポットライフの評価が全て「C」以上であり、少なくとも1つ「C」があり、少なくとも1つ「B」がある
C:耐熱ラミネート強度、深絞り成型性、成型信頼性及びポットライフの評価が全て「C」である
D:耐熱ラミネート強度、深絞り成型性、成型信頼性及びポットライフの評価で少なくとも1つ「D」がある
【0130】
【0131】
【0132】
本開示の要旨は以下の[1]~[6]に存する。
[1] 基材層と、
第一接着層と、
バリア層と、
第二接着層と、
シーラント層と、
をこの順で有する積層構造を備え、
前記第一接着層及び前記第二接着層のうち少なくとも一方がウレタン系化合物及びウレア系化合物を含み、
前記ウレタン系化合物が、ポリオール樹脂と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、
前記ウレア系化合物が、アミン系化合物及びアミン誘導体のうち少なくとも一方と、多官能イソシアネート化合物との反応物であり、
前記第一接着層及び前記第二接着層のうち前記ウレタン系化合物及び前記ウレア系化合物を含む層において、赤外分光法により測定される1700~1800cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をA、1600~1660cm-1の赤外線吸収スペクトルピーク強度をBとしたとき、下記式(1)で定義されるXが0.1≦X≦7.0を満たす、蓄電デバイス用外装材。
X={B/(A+B)}×100 …(1)
[2]前記アミン系化合物及び前記アミン誘導体が、潜在性硬化剤を含む、[1]に記載の蓄電デバイス用外装材。
[3]前記ポリオール樹脂中に含まれる水酸基の数をC、
前記多官能イソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基の数をD、
前記アミン系化合物及び前記アミン誘導体に含まれ、イソシアネート基と反応しウレア結合を形成する窒素原子の数をEとしたとき、
下記式(2)で定義されるYが5.0<Y<60を満たし、
下記式(3)で定義されるZが0.1≦Z≦10.0を満たす、[1]又は[2]に記載の蓄電デバイス用外装材。
Y=D/C …(2)
Z=E/(D-C) …(3)
[4]前記ポリオール樹脂が、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールである、[1]~[3]のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
[5]前記多官能イソシアネート化合物が、脂環式多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
[6]全固体電池用である、[1]~[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
1…電池要素、2…リード、10…外装材(蓄電デバイス用外装材)、11…基材層、12…第一接着層、13…バリア層、14a,14b…腐食防止処理層、15…第二接着層、16…シーラント層、30…エンボスタイプ外装材、32…成型加工エリア(凹部)、34…蓋部、40…二次電池