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  • 特開-耐熱多孔性延伸フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125091
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】耐熱多孔性延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240906BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20240906BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
G09F3/00 M
B29C67/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033196
(22)【出願日】2023-03-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ピナクル
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮平
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AA20
4F074AA98
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC26
4F074BC14
4F074CA02
4F074CA06
4F074CD11
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA47
4F074DA54
4F074DA59
4F214AA04
4F214AB16A
4F214AG01
4F214AH33
4F214AR12
4F214AR15
4F214UA32
4F214UB02
4F214UF01
4F214UW02
(57)【要約】
【課題】 高温環境で加工、印刷しても形状変化が発生し難い、通気性、クッション性、耐久性を有する耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも一部が架橋しているポリオレフィン、および無機充填剤を含有し、100℃における引張弾性率(E1)と150℃における引張弾性率(E2)が下記式(1)を満たすことを特徴とする耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
E1/E2≦50 ・・・(1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が架橋しているポリオレフィン、および無機充填剤を含有し、
100℃における引張弾性率(E1)と150℃における引張弾性率(E2)が下記式(1)を満たすことを特徴とする耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
E1/E2≦50 ・・・(1)
【請求項2】
透気度が100~50000sec/100mLであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィンと前記無機充填剤の質量配合比率が30:70~70:30であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン中に含まれる高密度ポリエチレンの割合が40~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
【請求項5】
厚みが10μm以上である、請求項1に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム、粘着剤及び剥離紙が順次積層されてなる粘着ラベル。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム、及びICチップとアンテナ回路を搭載したフィルムを積層してなるRFIDカード。
【請求項8】
ポリオレフィン及び無機充填剤を含有する樹脂組成物を調製する工程、前記樹脂組成物を延伸し多孔性樹脂延伸フィルムを形成する工程、及び前記多孔性樹脂延伸フィルムに放射線を照射する工程を含む、請求項1に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が架橋しているポリオレフィンと無機充填剤を含有し、通気性を有するフィルムであって、優れた耐熱性を有しており、ラベル、カード、タグ、紙おむつ、衛生用品、作業服、化学防護服、作業服、マスク、通気性保護シート、フィルター、選択透過分離膜、液体吸収層、及び電池用セパレーター等として広く用いることができる耐熱多孔性樹脂延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物を延伸することにより、熱可塑性樹脂と無機充填材との間で界面剥離を発生させ、多数のボイド(微多孔)を形成した多孔性樹脂延伸フィルムが知られている。特に、ポリオレフィン系樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物からなる多孔性樹脂延伸フィルムは、内部の微多孔が連通孔を形成しているため、インキ、接着剤などを吸収する特性を有し、また加工性に優れ、クッション性が高いためICチップを保護できる機能もあることから、ICチップを搭載したラベル、タグ、カードの素材として幅広い用途で活用されてきた。
【0003】
近年、電子機器の普及、データ量の増加から通信データの精度の向上が求められており、ICチップの保護用シートには通信電波の損失が少ない素材のニーズが高まっている。例えば熱可塑性樹脂のなかでも誘電損失が低いポリオレフィンと無機充填剤の中でも比較的誘電損失の低い炭酸カルシウムからなる多孔性樹脂延伸フィルムが提案されている。(特許文献1)
また、ポリエチレンとパラフィン油を混合して成形したシートを延伸した後に、パラフィン油を溶媒で抽出して得られた多孔性樹脂延伸フィルムに、電子線を照射することにより耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを得る手法が提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-178754号公報
【特許文献2】特開平10-007831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に開示された多孔性樹脂延伸フィルムは、使用するポリオレフィンの融点近くの温度で加工すると、空孔がつぶれてクッション性の喪失や外観の変化が生じたり、またレーザープリンターなど加熱工程のある印刷機や加工機に適用すると、機器内にフィルムが貼り付いてしまい機械を損傷する場合があった。
一方、特許文献2に開示された発明の場合、塩化メチレン等などの浸透性の高い溶媒を使用すると生産性は向上するが、ハロゲン系溶媒である塩化メチレンの使用は環境問題を抱えており、工業化に適しているとはいえない。また、厚みが大きくなると抽出と溶媒乾燥に時間を要する為、クッション性が要求される様な厚みのフィルムの製造は困難である。加えて、抽出工程で樹脂中に含有している安定剤などが除去されてしまい、フィルムの耐久性が低下するという問題もあった。
【0006】
本発明は、高温環境で加工、印刷しても形状変化が発生し難く、通気性、クッション性、耐久性を有する耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、少なくとも一部が架橋しているポリオレフィンおよび無機充填剤を含有し、特定の引張弾性率比を有する耐熱多孔性樹脂延伸フィルムにより、上記目的を達成できることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は下記に存する。
【0008】
〔1〕少なくとも一部が架橋しているポリオレフィン、および無機充填剤を含有し、
100℃における引張弾性率(E1)と150℃における引張弾性率(E2)が下記式(1)を満たすことを特徴とする耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
E1/E2≦50 ・・・(1)
〔2〕透気度が100~50000sec/100mLであることを特徴とする、〔1〕に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
〔3〕ポリオレフィンと無機充填剤の質量配合比率が30:70~70:30であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
〔4〕ポリオレフィン中に含まれる高密度ポリエチレンの割合が40~100質量%であることを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
〔5〕厚みが10μm以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム、粘着剤及び剥離紙が順次積層されてなる粘着ラベル。
〔7〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム、及びICチップとアンテナ回路を搭載したフィルムを積層してなるRFIDカード、RFIDタグ、またはRFIDラベル。
〔8〕ポリオレフィン及び無機充填剤を含有する樹脂組成物を調製する工程、前記樹脂組成物を延伸し多孔性樹脂延伸フィルムを形成する工程、及び前記多孔性樹脂延伸フィルムに放射線を照射する工程を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは、高温環境下でも形状変化が小さいことから、ラベル、カード、タグ、紙おむつ、衛生用品、作業服、化学防護服、作業服、マスク、通気性保護シート、フィルター、選択透過分離膜、液体吸収層、及び電池用セパレーター等の製造に有用であり、特にICチップを搭載したラベル、タグ、カードの製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを使用したラベルの断面構造を模式的に表した図である。
図2】本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを使用したタグの断面構造を模式的に表した図である。
図3】本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを使用したカードの断面構造を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の耐熱多孔性延伸フィルムとその製造方法につき詳述する。
なお以下の詳述は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0012】
[耐熱多孔性樹脂延伸フィルム]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは、少なくとも一部が架橋しているポリオレフィンと無機充填剤とを含み、特定の引張弾性率比を有するものであり、ポリオレフィン系樹脂の融点以上の温度でも形状を維持できるものである。
【0013】
このようなフィルムを得る方法に特に制限はないが、例えばポリオレフィンと無機充填剤を含む樹脂組成物を延伸することにより、樹脂と無機充填剤の間に空孔及び連通空孔を有する多孔性樹脂延伸フィルムを得、これに放射線を照射して架橋を施すことにより耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを作製することができる。
【0014】
空孔及び連通空孔は、多孔性延伸フィルム及びこれを用いて得られる耐熱多孔性樹脂延伸フィルム中に存在する空孔(空隙)であり、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムに後述する所定の透気度を与えるものである。
【0015】
[多孔性樹脂延伸フィルム]
本発明の一態様における多孔性樹脂延伸フィルムは、ポリオレフィン及び無機充填剤を含有し、フィルム中に空孔および連通空孔を有する延伸フィルムである。なお本発明において、フィルム中で各々独立して区画されている微小空孔を空孔とし、隣接する2以上の空孔が例えば線状、矩形状、球状、網目状、不定形状に連通することで形成された、比較的に高容量の空孔を連通空孔とする。空孔及び連通空孔は、少なくとも多孔性樹脂延伸フィルムの内部に存在していればよく、フィルムの表面においてその一部が外部に露出していてもよい。このような多孔性樹脂延伸フィルム及び連通空孔の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン及び無機充填剤を含有する樹脂組成物を延伸して製膜する際に、樹脂組成物中に含有される無機充填剤を核として、フィルム内に空孔を形成することが望ましい。
【0016】
[ポリオレフィン]
多孔性樹脂延伸フィルムに含まれるポリオレフィンとしては、延伸成形がしやすいポリオレフィンであることが好ましい。例えば、密度が0.940~0.970g/cm程度の高密度ポリエチレン、密度が0.920~0.940g/cm程度の中密度ポリエチレン、密度が0.900~0.920g/cm程度の低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、環状ポリオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、放射線による架橋特性が優れている高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び低密度ポリエチレンが好ましく、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの耐熱性、弾性率、電気特性の観点から高密度ポリエチレンが最も好ましい。
【0017】
ポリオレフィンは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。2種類以上のポリオレフィンの使用により押出成形性や延伸成形性をより高めることができる。2種類以上のポリオレフィンを使用する場合は、ポリエチレンをポリオレフィン総量の40質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましい。ポリエチレンの含有量を上記下限値以上とすることにより、後の放射線照射による架橋の効果が得られやすくなる。なお、ポリオレフィン中に含まれるポリエチレンの割合に上限はなく、100質量%であってもよい。
【0018】
更に、後に得られる耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの剛度及び耐熱性の観点から、高密度ポリエチレンをポリオレフィン総量の40質量%以上含有することが好ましい。特に高密度ポリエチレン含有量が、ポリオレフィン総量の60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。なお、ポリオレフィン中に含まれる高密度ポリエチレンの割合に上限はなく100質量%であってもよい。特に、ポリオレフィンが高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含有し、ポリオレフィン中に含まれる高密度ポリエチレンの割合が40質量%以上である場合が好ましい。
【0019】
[無機微充填剤]
無機充填剤は多孔性樹脂延伸フィルムに空孔を形成する際の起点となり、空孔を形成し易くすると共に、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムが高温状態で圧縮された際に空孔の柱となり、空孔が押しつぶされてフィルムが変形するのを防ぐ役目も担っている。
【0020】
無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、焼成クレー、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどが挙げられ、これらの中から1種を単独でまたは2種以上を併せて使用することができる。中でも比較的安価であり、空孔形成に適切な形状をしており、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを誘電体として使用した際に、誘電率が低く誘電損失の周波数依存性が少ないという観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
【0021】
無機充填剤の体積平均粒径(レーザー回折による粒度分布計で測定したメディアン径(D50))は連通空孔の成形性、及びフィルムのクッション性が発現し易いことを考慮して選択する。連通空孔の形成性の観点から、無機充填剤の体積平均粒径は0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましい。一方、空孔が大きすぎることによるフィルム強度低下を抑制し、繰り返し圧縮力を作用させても圧縮回復性が維持できる点から、無機微充填剤の体積平均粒径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0022】
[含有量]
ポリオレフィン及び無機充填剤の含有量は、質量配合比率で30:70~70:30であることが好ましく、35:65~65:35であることがより好ましく、35:65~60:40であることがさらに好ましい。ポリオレフィンの質量配合比率を一定以上とすることにより押出成形での流動性が得られて均一なフィルム成形が可能となり、無機充填剤の質量配合比率を一定以上とすることにより連通空孔が生成し易くなる。
【0023】
多孔性樹脂延伸フィルムがポリオレフィンと無機充填剤のみを含有する場合は、多孔性樹脂延伸フィルムの総質量を基準としてこれら2成分の含有量合計が100質量%であるが、これら2成分以外に、後述するその他の材料も含む場合は、ポリオレフィンと無機充填剤の含有量合計が100質量%未満であってよい。
【0024】
[その他の材料]
多孔性樹脂延伸フィルムは必要に応じて、ポリオレフィン以外の樹脂、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、分散剤などを含有していてもよい。
【0025】
ポリオレフィン以外の樹脂として、例えば官能基含有オレフィン系樹脂が挙げられる。官能基含有オレフィン系樹脂の含有により、フィルム表面強度の向上、接着剤やインキなどの接着性向上などが可能となる。
【0026】
官能基含有オレフィン系樹脂の具体的な例としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ペンテンなどのオレフィン類と共重合可能な官能基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0027】
係る官能基含有モノマーとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、などのカルボン酸ビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、などの(メタ)アクリル酸エステル類;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類などが挙げられる。これら官能基含有モノマーの中から必要に応じ1種類もしくは2種類以上を適宜選択し重合したものを用いることができる。
【0028】
更に前述したポリオレフィン系樹脂や官能基含有オレフィン系樹脂をグラフト変性したものを使用することも可能である。
【0029】
ポリオレフィン以外の樹脂の含有量は、樹脂の種類にもよるが、多孔性樹脂延伸フィルムの総質量に対して通常0.1~10質量%程度とすることが好ましい。
【0030】
熱安定剤を添加する場合は、ポリオレフィンに対し通常0.001~1質量%の範囲内とする。熱安定剤の具体例としては、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等があげられる。
【0031】
光安定剤を添加する場合は、ポリオレフィンに対し通常0.001~1質量%の範囲内とする。光安定剤の具体例としては、立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等があげられる。
【0032】
滑剤を添加する場合は、ポリオレフィンに対し通常0.001~1質量%の範囲内とする。滑剤の具体時な例としては、金属石鹸、脂肪酸アミド、高級アルコール、パラフィンワックス、などがあげられる。
【0033】
帯電防止剤を添加する場合は、ポリオレフィンに対し通常0.001~2質量%の範囲内とする。帯電防止剤の具体的な例としては、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルアミン誘導体、ポリエーテル誘導体などがあげられる。
【0034】
分散剤を添加する場合は、無機充填剤に対し通常0.001~5質量%の範囲内とする。分散剤の具体的な例としては、脂肪酸、グリセリン脂肪酸、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、シランカップリング剤、ポリ(メタ)アクリル酸ないしはその塩等が挙げられる。
【0035】
[多孔性樹脂延伸フィルムの形成]
多孔性樹脂延伸フィルムの製造には、従来公知の種々の方法が使用できる。例えば、多孔性樹脂延伸フィルムが単層フィルムの場合は、上記各原料を含む樹脂組成物を溶融混練し単一のダイスから押し出して、少なくとも1軸方向に延伸すればよい。また、多孔性樹脂延伸フィルムが多層の場合は、フィードブロックやマルチマニホールドを使用した多層ダイスを用いる共押出方式や、複数のダイスを使用する押出ラミネーション方式等により積層して製造することができる。更に多層ダイスによる共押出方式と押出ラミネーション方式を組み合わせる方法により多孔性樹脂延伸フィルムを製造することもできる。
【0036】
多孔性樹脂延伸フィルムが多層構造の場合は、各層を積層した後に、少なくとも1軸方向に延伸することが好ましい。積層後に延伸することによって、押出成形の際の流動制御による均一性の確保、延伸成形時の破断の防止などが可能となる。
多孔性樹脂延伸フィルムは延伸によりフィルム内部に空孔が多数形成され、空孔が連通することにより連通空孔が形成され、通気性が得られる。
【0037】
多孔性樹脂延伸フィルムの延伸は、公知の種々の方法によって行うことができる。具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸方法、テンターオーブンを使用した横延伸方法、上記縦延伸と横延伸とを正順又は逆順に行う逐次二軸延伸方法、圧延方法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸方法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸方法などを挙げることができる。また、インフレーションフィルムの延伸方法であるチューブラー法による同時二軸延伸方法を挙げることができる。多孔性樹脂延伸フィルム中に形成される空孔は連通性が重要となり、複数の空孔を同時に形成する観点から歪速度が高いロール群の周速差を利用した縦延伸方法が好ましい。
【0038】
多孔性樹脂延伸フィルムの延伸は、空孔形成性の観点から、多孔性樹脂延伸フィルムに用いる主要なポリオレフィンのガラス転移点温度から、主要なポリオレフィンの結晶部の融点までの温度範囲で行うことが好ましく、当該ポリオレフィンの融点より1~70℃低い温度が好ましい。具体的には、ポリオレフィンが高密度ポリエチレン(融点121~136℃)である場合は70~135℃の範囲内であることが好ましい。
【0039】
延伸倍率は特に限定されず、多孔性樹脂延伸フィルムに用いるポリオレフィンの延伸特性や前述の設定空孔率等を考慮して適宜決定する。
【0040】
ポリオレフィンとして高密度ポリエチレンを使用する場合の延伸倍率は、一軸方向に延伸する場合は1.2倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。一方、10倍以下が好ましく、7倍以下がより好ましい。また、二軸方向に延伸する場合には面積倍率(縦倍率と横倍率の積)で1.5倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましい。一方、20倍以下が好ましく、12倍以下がより好ましい。
【0041】
多孔性樹脂延伸フィルムの連通空孔を増やす手法としては、無機充填剤の含有量の増量、ポリオレフィンの融点の高温化、延伸温度の低温化、延伸時の歪速度の増速、延伸倍率の増加が挙げられ、これらの手法を組み合わせて、所望の連通空孔が得られる条件に設定することが好ましい。
【0042】
[表面処理]
多孔性樹脂延伸フィルムには、印刷や接着などの加工適性を高める為に片面もしくは両面に公知の手法による表面処理を施すことができる。表面処理の具体的な例としては、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理などの手法を挙げることができ、処理環境やプラズマの発生源を所望の気体で置換することにより、より高い密着性が得られる。又、塩酸、硝酸、硫酸などの酸により表面を洗浄することにより密着性を改善することも可能である。
【0043】
[アンカーコート層]
多孔性樹脂延伸フィルムには、加工適性を更に向上するために、片面もしくは両面にアンカーコート層を設けてもよい。
【0044】
アンカーコート層には、他素材との密着性の観点から、高分子バインダーを用いることが好ましい。係る高分子バインダーの具体的な例としては、ポリエチレンイミン、炭素数1~12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)等のポリエチレンイミン系重合体;ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリアミンポリアミド系重合体;アクリルアミド-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、オキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等のアクリル酸エステル系重合体;ポリビニルアルコールとその変性体を含むポリビニルアルコール系重合体;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の水溶性樹脂;塩素化ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレン系重合体、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステル等の熱可塑性樹脂の、有機溶剤希釈樹脂又は水希釈樹脂等が挙げられる。これらの内でもポリエチレンイミン系重合体、ポリアミンポリアミド系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、および変性ポリプロピレン系重合体が、ポリオレフィンを含有する多孔性樹脂延伸フィルムとの密着性に優れ好ましい。
【0045】
多孔性樹脂延伸フィルム上に設けるアンカーコート層の坪量は、多孔性樹脂延伸フィルムとの密着性を発現する観点から、固形分換算で0.001g/m以上が好ましく、0.005g/m以上がより好ましく、0.01g/m以上が特に好ましい。一方、塗工層であるアンカーコート層の膜厚を均一に保つ観点から、5g/m以下が好ましく、3g/m以下がより好ましく、1g/m以下が特に好ましい。
【0046】
多孔性樹脂延伸フィルム上にアンカーコート層を設ける方法としては、上記高分子バインダーを含む塗工液を多孔性樹脂延伸フィルム上に塗工する方法が好ましい。具体的には、多孔性樹脂延伸フィルム上に公知の塗工装置を用いて上記塗工液の塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成することができる。
【0047】
塗工装置の具体的な例としては、例えば、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、スクイズコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等が挙げられる。
【0048】
多孔性樹脂延伸フィルム上にアンカーコート層を設けるタイミングは、詳細後述する放射線照射処理の前でも後でも差し支えない。
【0049】
[放射線照射]
前述のように本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは、ポリオレフィン及び無機充填剤を含有する樹脂組成物を調製する工程、前記樹脂組成物を延伸し多孔性樹脂延伸フィルムを形成する工程、及び前記多孔性樹脂延伸フィルムに放射線を照射する工程を含む製造方法にて作製することができる。多孔性樹脂延伸フィルムに放射線を照射することにより、該フィルムに含まれるポリオレフィンの少なくとも一部が架橋し、フィルムの耐熱性を向上させることができる。
【0050】
放射線の種類としては、紫外線や電子線、ガンマ線に代表される電離放射線などがあげられるが、フィルム厚み方向への照射効果の均一性や安全性の観点から電子線照射による方法が好ましい。
【0051】
電子線照射を行うときの線量は通常10~2000kGy、好ましくは20~1000kGy、さらに好ましくは30~500kGyである。線量が小さすぎるとポリオレフィンの十分な架橋反応を生じさせることが難しく、線量が大きすぎるとポリオレフィンの架橋反応と平衡して分解反応が発生してしまい、十分な耐熱性を得られない場合がある。
【0052】
なお電子線照射による架橋効率は、一般に照射温度やサンプルの冷却状況、さらには酸素濃度等の影響を強く受けるため、これらの条件を最適化することで低線量でも十分な架橋処理を施すことが可能となる。
【0053】
電子線照射時の加速電圧は多孔性樹脂延伸フィルムの厚みや無機充填剤の種類や配合量により適宜決定することが好ましい。通常は50~500kV、好ましくは70~400kV、より好ましくは100~300kV、さらに好ましくは120~250kVである。加速電圧が小さすぎると多孔性樹脂延伸フィルムの厚み方向により架橋密度の差が発生して十分な耐熱性向上効果が得られない場合がある。加速電圧が高すぎると、架橋する前に多孔性樹脂延伸フィルムの温度が上昇してしまうために、得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの厚みムラやシワが発生する場合がある。
【0054】
[耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの厚み]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの厚みは、JIS K7130:1999「プラスチック-フィルムおよびシート-厚さ測定方法」に基づいて、厚み計を用いてフィルム総厚みを測定する。
【0055】
また、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムが多層フィルムである場合、これを構成する各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃を直角に当て切断し断面測定用の試料を作製し、得られた試料を走査型電子顕微鏡を使用して断面観察を行い、空孔形状や組成外観から各層の境界線を判別して、観察像から求められる各層厚みが多孔性樹脂延伸フィルムの総厚みに占める割合を決定する。さらに厚み計を用いて求めたフィルム総厚みに各層厚みの前記割合を乗じて求める。
【0056】
耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの厚みは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることが更に好ましく、60μm以上であることが特に好ましく、100μm以上が最も好ましい。厚みが薄すぎるとフィルムが破断し易く品質が安定しない場合がある。また、本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを使用したPFIDタグやRFIDカードを作製する場合は、内蔵するICチップや回路の位置を特定し難くする意味で厚い方が好ましく、フィルムの厚みは40μm以上であることがより好ましい。一方、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの厚みは、1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが特に好ましい。厚みが大きすぎると均一延伸が難しくなり、空孔が不均一となり易い傾向がある。
【0057】
[引張弾性率]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの引張弾性率は、JIS-K7244-1:1998およびJIS-K7244:1999に準拠して動的粘弾性試験機にて測定した貯蔵弾性率と損失弾性率の二乗和平方根を用いる。なお引張弾性率は、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの流れ方向(MD)と、流れ方向に直交する方向(TD)との2方向につき測定し、両方向の測定値を採用する。すなわち両方向の引張弾性率がいずれも以下に述べる条件を満たす。
【0058】
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは100℃における引張弾性率(E1)と150℃における引張弾性率(E2)が下記式(1)を満たす。
E1/E2≦50 ・・・(1)
【0059】
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムのE1/E2は30以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0060】
E1は耐熱多孔性樹脂延伸フィルムに使用しているポリオレフィンの融点以下での高温状態での弾性率であり、E2は耐熱多孔性樹脂延伸フィルムに使用しているポリオレフィンの融点付近あるいは融点以上での弾性率となる。従ってE1/E2の値は耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの融点付近での引張弾性率の温度依存性を示した値であり、耐熱性を向上することにより値を小さくすることができる。
【0061】
一方、E1/E2は通常1.0以上である。一般にポリオレフィンの引張弾性率は温度の上昇に伴って低下するものであるが、十分に架橋したポリオレフィンは融点を超えても高い弾性率を維持して変化しない状態となる。ただ、融点以上の温度で融点以下の引張弾性率を維持するであることは困難であり、理論的なE1/E2の下限は1.0である。
【0062】
[空孔率]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの空孔率は、下記式(2)から算出することができる。
【0063】
【数1】
【0064】
式中、ρはJIS K7112:1999で測定した樹脂フィルムの真密度、ρはJIS K7222:2005で測定した樹脂フィルムの密度を表す。
【0065】
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの空孔率は3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが特に好ましい。空孔率を上記下限値以上とすることより高いクッション性と通気性を得ることが可能となる。一方、空孔率は70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが特に好ましい。空孔率が高すぎるとフィルムの破断が発生し易くなり、均一な性能が得られにくい傾向がある。
【0066】
[透気度]
本発明の透気度はJIS-P8117:2009準拠して、王研式透気度試験機にて測定される。
【0067】
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの透気度は100sec/100mL以上であることが好ましく、200sec/100mL以上であることがより好ましく、300sec/100mL以上であることが特に好ましい。透気度を上記下限値以上とすることにより十分な強度を有するフィルムとなり、これを用いて加工した製品の凝集破壊などが発生し難くなる。一方、透気度は、50,000sec/100mL以下であることが好ましく、40,000sec/100mL以下であることがより好ましく、30,000sec/100mL以下であることが特に好ましい。透気度を上記上限値以下とすることにより各種接着剤やインキとの接着性が向上し、更には加工工程で接着剤層などに気泡が入り難いものとなる。
【0068】
[耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを用いたラベル]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは、さまざまな用途に適応できる有用な素材である。例えば粘着ラベルに使用する場合は、市販の離型紙に粘着剤を塗工して、乾燥固化し、流動性が低下した粘着剤に本発明の耐熱樹脂延伸フィルムを積層することにより、耐熱多孔性樹脂延伸フィルム、粘着剤及び剥離紙が順次積層されてなる粘着ラベルとして活用することができる。粘着剤の例としてはアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが適宜選択される。
【0069】
また、耐熱樹脂延伸フィルムの粘着剤と接する面に、予めICチップとアンテナ回路を搭載したフィルム等を貼り付けておくことによりRFIDラベルとして活用可能である。
【0070】
[耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを用いたタグ]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムをタグに使用する場合は、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを単体で用いても良いし、2枚以上の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを接着剤を介して貼り合わせても良いし、或いは本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムと他の素材とを接着剤を介して貼り合わせることも可能である。
【0071】
貼り合わせる際に使用する接着剤としては、公知の接着剤を使用することができ、例えばウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体系接着剤、エチレン・アクリル共重合体系接着剤などが適宜選択される。
【0072】
また、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの接着剤と接する面に、予めICチップとアンテナ回路を搭載したフィルム等を貼り付けておくことによりRFIDタグとして活用可能である。
【0073】
[耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを用いたカード]
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムをカードに使用する場合は、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの両面に延伸PETフィルムや延伸ポリプロピレンフィルム等の耐久性の高いフィルムを接着剤を介して貼り合わせることにより、カードを作製する手法があげられる。この際、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを2枚以上、接着剤を介して積層することも可能である。
【0074】
耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは単体で用いても良いし、2枚以上を貼り合わせても良いし、或いは本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムと他の素材とを貼り合わせることも可能である。
【0075】
貼り合わせる際に使用する接着剤としては、公知の接着剤を使用することができ、例えばウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体系接着剤、エチレン・アクリル共重合体系接着剤などが適宜選択される。
【0076】
また、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの接着剤と接する面に、予めICチップとアンテナ回路を搭載したフィルム等を貼り付けておくことによりRFIDカードとして活用可能である。
【実施例0077】
以下に実施例、比較例及び試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0078】
[使用原料]
(無機充填剤)
・炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、商品名:ソフトン1000、メディアン径D50:5.2μm、密度:2.7g/cm
(ポリオレフィン)
・HDPE:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD HY540、MFR(190℃、2.16kg荷重):1.0g/10分、融点:131℃、密度:0.96g/cm
・LDPE:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD UJ370、MFR(190℃、2.16kg荷重):16g/10分、融点:121℃、密度:0.92g/cm
【0079】
[製造例1,2]
[使用原料]に記載の各原料を、表1に記載の配合割合(単位:質量%)で混合し、210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して、樹脂組成物のペレットを作製した。
得られた樹脂組成物のペレットを、200℃に設定した押出機にて溶融混練した後、220℃に設定したダイにてシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して単層構成の無延伸シートを得た。
次いで加熱ロールを用いて、得られた無延伸シートを表1に記載の温度に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD方向)に表1に記載の倍率で延伸し、さらに120℃に設定したロールに接触させて、応力緩和処置を行い、一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムを30℃まで冷却し、耳部をスリットした後、両面にコロナ表面放電処理を施し、表1に記載の物性を有する多孔性樹脂延伸フィルムを得た。
【0080】
【表1】
【0081】
[実施例1~4、比較例1,2]
製造例1及び2にて得られた多孔性樹脂延伸フィルムに対し、電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製 商品名:EC250/15/180L)を用いて、表2に記載の照射条件で放射線照射を実施し、耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを得た。得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルムにつき、[試験例]に記載の各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
[試験例]
(引張弾性率)
実施例および比較例で作製した耐熱多孔性樹脂延伸フィルムから縦70mm、横5mmの試験片を耐熱多孔性樹脂延伸フィルムのMD方向が試験片の縦になるようにして1枚、TD方向が試験片の縦になるようにして1枚採取した。
次に、JIS-K7244-1:1998およびJIS-K7244:1999に従い、動的粘弾性計測装置(TAインスツルメンツ社製:RSA3)に試験片をセットした。この時のクランプ間距離は20mmとした。
続いて、20℃~200℃の範囲において1℃/minの昇温速度で加熱しながら、1Hzの周波数にて引張弾性率を1℃間隔で測定し、100℃の時の引張弾性率をE1として、150℃の時の引張弾性率をE2とした。
【0083】
(透気度)
実施例および比較例にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルムにつき、王研式透気度試験機にてJIS-P8117:2009に準拠して透気度を測定した。
【0084】
(印刷性)
剥離紙(リンテック(株)製 商品名:8LK)にアクリル系強粘着剤[トーヨーケム(株)製 商品名:オリバインBPS5160]を乾燥後の厚さが25μmとなるようにアプリケーターで直接塗工し、実施例および比較例にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを積層して、評価用の粘着ラベルを作製した。
作製した粘着ラベルに、カラーレーザープリンター(カシオ計算器製 商品名:GE5000)を用いてラベル紙設定で印刷し、用紙(ラベル)の排出中にプリンターカバーを開けて、定着ロールで粘着ラベルが挟まった状態になる様に停止させて下記の基準で評価した。
◎:良好(ラベルを除去することにより復旧した。)
〇:やや良好(定着ロールにラベルが貼り付いたが、普通紙の空通しにより復旧した。)
×:不良(定着ロールにラベルの貼り付きが発生し、定着ロールの清掃が必要となった。)
【0085】
[ヒートシール性]
厚み38μmのPETフィルム(東洋紡(株)製 商品名:E5200)に感熱接着剤(トーヨーモートン(株)製 商品名:AD-1750-15)を塗工してヒートシール評価用のフィルムを作製した。
得られたヒートシール評価用フィルムの感熱接着剤塗工面に、実施例および比較例にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを積層し、熱傾斜試験機((株)東洋精機製作所製、商品名:No.884 熱傾斜試験機)を使用して、ヒートシール時間=1秒、圧力=1kg/cm(ゲージ)で、ヒートシール温度を100℃~150℃まで10℃間隔で変化させ、ヒートシール加工を実施した。
ヒートシール加工を実施した部分を手で引き剥がして密着可能な最低温度を求め、その時の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの外観的な変形度合いとシール部分の不透明性の変化度合いを下記の基準で評価した。
◎:変形、不透明性の変化なし
〇:変形は無いが、不透明度の変化が発生
×:変形、不透明性の変化が大きい
【0086】
【表2】
【0087】
[RFIDラベルの作製例]
アンテナ回路が形成され、ICチップが搭載されたインレイフィルム(エイブリィ・デニソン製 製品名:RF600460)(12)の剥離フィルムを剥がして実施例2にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルム(11)に貼り付けた。次いで、剥離紙(リンテック(株)製 商品名:8LK)(13)にアクリル系強粘着剤(トーヨーケム(株)製 商品名:オリバインBPS5160)(14)を乾燥後の厚さが25μmとなるようにアプリケーターで塗工し、先の耐熱多孔性樹脂延伸フィルム(11)のインレイフィルムを貼り付けた面がアクリル系強粘着剤(14)と接する様に積層して粘着シートを作製し、ピナクル刃にてインレイフィルムが中央となる様に打ち抜いて、図1に示すRFIDラベル(10)を作製した。
このRFIDラベル(10)につき、RFIDリーダー/ライター(ユニテック・ジャパン性 商品名:PR902)を使用して書き込み/読み込みの動作確認を実施した結果、良好な動作であった。また、このRFIDラベル(10)のインレイフィルムは、ラベル表面の目視では、その位置が殆ど目立たない仕上がりであった。
【0088】
[タグの作製例]
アンテナ回路が形成され、ICチップが搭載されたインレイフィルム(エイブリィ・デニソン製 製品名:RF600460)(22)の剥離フィルムを剥がして、実施例4にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルム(21)に貼り付けて、インレイ付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを作製した。
別に用意した実施例4にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルム(23)に、感熱接着剤(ジャパンコーティングレジン(株)製 商品名:アクアテックスEC3500 エチレン・酢酸ビニル/変性ポリオレフィン)(24)を乾燥後の塗工量が5g/mとなる様に塗工して、オーブンで乾燥して感熱接着剤付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを作製した。
次いで、インレイ付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルムのインレイフィルム(22)を貼り付けた面と、感熱接着剤付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルムの感熱接着剤(24)を塗工した面が接する様に積層して、プレス成型機(東洋精機(株)製 商品名:ミニテストプレス)を使用して温度120℃、圧力5MPaで30秒間加熱した後、30℃、圧力5MPaで30秒間冷却して熱融着し、ピナクル刃にてインレイフィルムが中央となる様に打ち抜いて、図2に示すRFIDタグ(20)を作製した。
このRFIDタグ(20)につき、RFIDリーダー/ライター(ユニテック・ジャパン性 商品名:PR902)を使用して書き込み/読み込みの動作確認を実施した結果、良好な動作であった。また、このRFIDタグ(20)のインレイフィルムは、タグ表面の目視では、その位置が殆ど目立たない仕上がりであった。
【0089】
[カードの作製例]
アンテナ回路が形成され、ICチップが搭載されたインレイフィルム(エイブリィ・デニソン製 製品名:RF600460)(32)の剥離フィルムを剥がして、実施例4にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルム(31)に貼り付けて、インレイ付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを作製した。
別に用意した実施例4にて得られた耐熱多孔性樹脂延伸フィルム(33)に、感熱接着剤(ジャパンコーティングレジン(株)製 商品名:アクアテックスEC3500 エチレン・酢酸ビニル/変性ポリオレフィン)(38)を乾燥後の塗工量が5g/mとなる様に塗工して、オーブンで乾燥して感熱接着剤付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルムを作製した。
厚さ40μmのOPPフィルム(東洋紡(株)製:商品名:パイレン-OT P2161)(34)(35)を用意し、これに感熱接着剤(ジャパンコーティングレジン(株)製 商品名:アクアテックスEC3500 エチレン・酢酸ビニル/変性ポリオレフィン)(36)(37)を乾燥後の塗工量が3g/mとなる様に塗工して、オーブンで乾燥して感熱接着剤付きOPPフィルムを2枚作製した。
次いで、感熱接着剤付きOPPフィルム/インレイ付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルム/感熱接着剤付き耐熱多孔性樹脂延伸フィルム/感熱接着剤付きOPPフィルムとなる様に積層して、プレス成型機(東洋精機(株)製 商品名:ミニテストプレス)を使用して温度120℃、圧力5MPaで30秒間加熱した後、30℃、圧力5MPaで30秒間冷却して熱融着し、ピナクル刃にてインレイフィルムが中央となる様に打ち抜いて、RFIDカード(30)を作製した。このRFIDカード(30)につき、RFIDリーダー/ライター(ユニテック・ジャパン性 商品名:PR902)を使用して書き込み/読み込みの動作確認を実施した結果、良好な動作であった。また、このRFIDカード(30)のインレイフィルムは、カード表面の目視では、その位置が殆ど目立たない仕上がりであった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の耐熱多孔性樹脂延伸フィルムは、高通気性、クッション性、耐久性を有しており、高温環境適性に優れており、ラベル、カード、タグ、紙おむつ、衛生用品、作業服、化学防護服、作業服、マスク、通気性保護シート、フィルター、選択透過分離膜、液体吸収層、及び電池用セパレーター等の製造に利用可能であり、これらの産業分野に多大な寄与を与える。
【符号の説明】
【0091】
10 RFIDラベル
11,21,23,31,33 耐熱多孔性樹脂延伸フィルム
12,22,32 インレイフィルム
13 剥離紙
14 アクリル系強粘着剤
20 RFIDタグ
24,36,37,38 感熱接着剤
30 RFIDカード
34,35 OPPフィルム
図1
図2
図3