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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125097
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】シートバック
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/05 20060101AFI20240906BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20240906BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20240906BHJP
   A47C 7/22 20060101ALI20240906BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B68G7/05 B
B60N2/58
B60N2/64
A47C7/22
A47C31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033203
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】組立作業並びに解体作業の簡略化を図ることができるシートバックを得る。
【解決手段】シートバック14は、シートバックパッド16の前面を覆う前側表皮部20Aからシートバックパッド16のシート下方側を経由してシートバックパッド16の後面側に延出されると共に、端部20B側にシート幅方向に延在する長孔部26が設けられた前側延出片部20Bと、シートバックパッド16の後面を覆う後側表皮部22Aからシート下方側に延出されて一部が長孔部26の内側を通ることで長孔部26に係止された後側延出片部22Bと、後側延出片部22Bの端部22B1側に設けられた第1面ファスナ30と、後側延出片部22Bにおける後側表皮部22A側の部分に設けられると共に第1面ファスナ30と接合された第2面ファスナ32とを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の背部を支持可能なシートバックパッドの前面を覆う前側表皮部から当該シートバックパッドのシート下方側を経由して当該シートバックパッドの後面側に延出されると共に、端部側にシート幅方向に延在する長孔部が設けられた第1延出片部と、
前記シートバックパッドの後面を覆う後側表皮部からシート下方側に延出されて一部が前記長孔部の内側を通ることで当該長孔部に係止された第2延出片部と、
前記第2延出片部の端部側に設けられた第1面ファスナと、
前記後側表皮部及び前記第2延出片部における当該後側表皮部側の部分の少なくとも一方に設けられると共に前記第1面ファスナと接合された第2面ファスナと、
を有するシートバック。
【請求項2】
前記後側表皮部には、シート後方側から見て前記第2延出片部及び前記長孔部を覆う隠し片部が設けられている、
請求項1に記載のシートバック。
【請求項3】
前記長孔部のシート上方側の上縁部は、シート下方側に向かって凸となっている、
請求項2に記載のシートバック。
【請求項4】
前記第1延出片部の端部には、シート幅方向に延在する板状の係止板部が設けられており、前記長孔部は、当該係止板部に設けられている、
請求項3に記載のシートバック。
【請求項5】
前記第1延出片部の端部には、シート幅方向を長手方向とされた枠状の係止枠部が設けられており、前記長孔部の縁は、当該係止枠部で構成されている、
請求項3に記載のシートバック。
【請求項6】
前記第2延出片部は、前記後側表皮部と連続して設けられた第1布部と、前記第1面ファスナが設けられた第2布部とが縫合部で繋がれることで構成され、
前記縫合部には、前記長孔部が係止されている、
請求項4又は請求項5に記載のシートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗物用シートに関する発明が開示されている。この乗物用シートでは、サイドパッドのシート幅方向内側の部分を覆うインサイドカバーピースに、吊り面材が繋がれており、この吊り面材の先端に引込み具が設けられている。一方、サイドパッドのシート幅方向外側の部分を覆うアウトサイドカバーピースには、カーペット材で構成された面状体が縫合されると共に、この面状体には、面ファスナのフック面を備えた帯片が設けられている。
【0003】
そして、サイドパッドのシート後方側において、引込み具の縁部に帯片が巻き掛けられると共に、帯片の面ファスナが面状体に係止されることで、インサイドカバーピースとアウトサイドカバーピースとがサイドパッドに対して固定される。このため、インサイドカバーピース及びアウトサイドカバーピースの固定を簡略化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-001988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術では、インサイドカバーピースとアウトサイドカバーピースとの連結箇所が、中見え防止カバー及び背裏側カバーピースで隠れている。このため、シートバックの解体時において、中見え防止カバー及び背裏側カバーピースの少なくとも一方を除去する必要があり、解体作業が煩雑となることが考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、組立作業並びに解体作業の簡略化を図ることができるシートバックを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るシートバックは、乗員の背部を支持可能なシートバックパッドの前面を覆う前側表皮部から当該シートバックパッドのシート下方側を経由して当該シートバックパッドの後面側に延出されると共に、端部側にシート幅方向に延在する長孔部が設けられた第1延出片部と、前記シートバックパッドの後面を覆う後側表皮部からシート下方側に延出されて一部が前記長孔部の内側を通ることで当該長孔部に係止された第2延出片部と、前記第2延出片部の端部側に設けられた第1面ファスナと、前記後側表皮部及び前記第2延出片部における当該後側表皮部側の部分の少なくとも一方に設けられると共に前記第1面ファスナと接合された第2面ファスナと、を有している。
【0008】
請求項1に記載の本発明によれば、乗員の背部を支持可能なシートバックパッドの前面が前側表皮部で覆われており、この前側表皮部からは、第1延出片部がシートバックパッドのシート下方側を経由してシートバックパッドの後面側に延出している。そして、第1延出片部には、その端部側にシート幅方向に延在する長孔部が設けられている。
【0009】
一方、シートバックパッドの後面を覆う後側表皮部からは、第2延出片部がシート下方側に延出されており、この第2延出片部は、長孔部の内側を通ることで、この長孔部に係止されている。
【0010】
また、本発明では、第2延出片部の端部側に第1面ファスナが設けられており、後側表皮部及び第2延出片部における後側表皮部側の部分の少なくとも一方に第2面ファスナが設けられている。
【0011】
このため、本発明では、第2延出片部を長孔部に通してシート上方側に引くことで、第2延出片部の引き量に応じて第1延出片部における長孔部の周辺部がシート上方側に移動する。その結果、前側表皮部のシート下方側の部分及び後側表皮部のシート下方側の部分に張力が発生して、これらがシートバックパッドに密着する。そして、この状態において、第1面ファスナを第2面ファスナに接合することで、前側表皮部及び後側表皮部のシートバックパッドに対する密着状態が維持される。すなわち、本発明では、シートバックの表面側の作業のみによって、前側表皮部のシート下方側の部分及び後側表皮部のシート下方側の部分をシートバックパッドに対して固定することができる。
【0012】
一方、シートバックの解体時には、第1面ファスナと第2面ファスナとの接合状態を解除すると共に、第2延出片部を長孔部から抜くことで、前側表皮部のシート下方側の部分及び後側表皮部のシート下方側の部分と、シートバックパッドとの固定状態を解除することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係るシートバックは、請求項1に記載の発明において、前記後側表皮部には、シート後方側から見て前記第2延出片部及び前記長孔部を覆う隠し片部が設けられている。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、後側表皮部に隠し片部が設けられており、この隠し片部は、シート後方側から見て第2延出片部及び第1延出片部に設けられた長孔部を覆っている。このため、本発明では、隠し片部によって第1延出片部と第2延出片部との連結箇所を隠すことができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係るシートバックは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記長孔部のシート上方側の上縁部は、シート下方側に向かって凸となっている。
【0016】
請求項3に記載の本発明によれば、長孔部のシート上方側の上縁部がシート下方側に向かって凸となっている。このため、第2延出片部を長孔部に通してシート上方側に引くときに、第2延出片部における長孔部の凸となっている箇所と接触する部分に張力が発生し、その結果、第2延出片部に皺が発生することを抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係るシートバックは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記第1延出片部の端部には、シート幅方向に延在する板状の係止板部が設けられており、前記長孔部は、当該係止板部に設けられている。
【0018】
請求項4に記載の本発明によれば、第1延出片部の端部に設けられたシート幅方向に延在する板状の係止板部に長孔部が設けられている。このため、長孔部を直接第1延出片部に設けるような構成に比べ、第2延出片部を長孔部に通してシート上方側に引くときに、長孔部が変形することを抑制し、第2延出片部に皺が発生することをより抑制することができる。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係るシートバックは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記第1延出片部の端部には、シート幅方向を長手方向とされた枠状の係止枠部が設けられており、前記長孔部の縁は、当該係止枠部で構成されている。
【0020】
請求項5に記載の本発明によれば、第1延出片部の端部に設けられたシート幅方向を長手方向とされた枠状の係止枠部で長孔部の縁が構成されている。このため、長孔部を直接第1延出片部に設けるような構成に比べ、請求項4に記載の発明と同様に、シートの組立時において、長孔部が変形することを抑制し、第2延出片部に皺が発生することをより抑制することができる。また、係止枠部を、例えば、針金や棒鋼等の汎用性の高い金属素材で製作することができる。
【0021】
請求項6に記載の本発明に係るシートバックは、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の発明において、前記第2延出片部は、前記後側表皮部と連続して設けられた第1布部と、前記第1面ファスナが設けられた第2布部とが縫合部で繋がれることで構成され、前記縫合部には、前記長孔部が係止されている。
【0022】
請求項6に記載の本発明によれば、第2延出片部が、後側表皮部と連続して設けられた第1布部と、第1面ファスナが設けられた第2布部とが縫合部で繋がれることで構成されている。そして、第2延出片部の縫合部には、第1延出片部に設けられた長孔部が係止されている。このため、本発明では、第1延出片部と第2延出片部との連結箇所の位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係るシートバックでは、組立作業並びに解体作業の簡略化を図ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る車両用シートの構成を模式的に示すシート後方側から見た斜視図である。
図2】本実施形態に係るシートバックの要部の構成を模式的に示す車両幅方向から見た断面図(図1の2-2線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図3】本実施形態に係る車両用シートの組立時における要部の構成を模式的に示すシート後方側から見た背面図である。
図4】本実施形態に係るシートバックの第1変形例の要部の構成を模式的に示す背面図である。
図5】本実施形態に係るシートバックの第2変形例の要部の構成を模式的に示す背面図である。
図6】本実施形態に係るシートバックの第3変形例の要部の構成を模式的に示す背面図である。
図7】本実施形態に係るシートバックの第4変形例の要部の構成を模式的に示すシート幅方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図7を用いて、本発明に係るシート10の実施形態の一例について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LHは、それぞれシート10の前方向、上方向、左方向を示している。なお、シート10は、自動車をはじめとして列車、航空機及び船舶等の乗り物の座席として用いることが可能である。
【0026】
図1に示されるように、シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、乗員の背部を支持する「シートバック14」と、乗員の頭部を支持する図示しないヘッドレストとを備えている。
【0027】
シートクッション12は、そのシート下方側に図示しないクッションパンが取り付けられており、このクッションパンは、図示しないガイドレール等を介して図示しない車体フロアに対して支持されている。
【0028】
一方、シートバック14は、図2に示されるように、その主な部分を構成すると共にウレタン発泡体で構成された「シートバックパッド16」を備えており、このシートバックパッド16は、シートバックフレーム17に支持されている。
【0029】
また、シートバック14は、シートバックパッド16を覆うと共にシートバック14の表面を構成する表皮部18を備えている。そして、表皮部18は、シートバックパッド16の前面側に配置された第1表皮部20と、シートバックパッド16の後面側に配置された第2表皮部22とを含んで構成されている。
【0030】
ここで、本実施形態では、第1表皮部20のシート下方側の部分と第2表皮部22のシート下方側の部分とが連結されており、これらの連結箇所の構成に特徴がある。以下、本実施形態の要部である第1表皮部20及び第2表皮部22の構成について詳細に説明することとする。
【0031】
第1表皮部20は、例えば、布材、皮革や合成皮革で構成されており、その主な部分がシートバックパッド16の前面に沿って配置されて、当該前面を覆っている。なお、以下では、第1表皮部20におけるシートバックパッド16の前面を覆う部分を「前側表皮部20A」と称することとする。
【0032】
一方、第1表皮部20における前側表皮部20Aからシート下方側の部分は、第1延出片部としての「前側延出片部20B」とされており、前側延出片部20Bは、シートバックパッド16のシート下方側を経由してシートバックパッド16の後面側に延出されている。そして、前側延出片部20Bの「端部20B1」には、図3にも示されるように「係止板部24」が設けられている。
【0033】
係止板部24は、樹脂製の板材で構成されており、シート幅方向に延在すると共に、その板厚方向から見て外周が矩形状とされている。また、係止板部24には、シート幅方向に延在する「長孔部26」が設けられており、この長孔部26のシート上方側の「上縁部26A」は、上記板厚方向から見てシート幅方向中央部に頂部を有すると共にシート下方側に向かって凸となったV字状とされている。なお、係止板部24は、縫合部28で前側延出片部20Bに取り付けられている。また、係止板部24における上縁部26A側の部分のシート幅方向から見た断面は、長孔部26に向かって突となる円弧状とされている。
【0034】
一方、第2表皮部22は、第1表皮部20と同様の材料で構成されており、その主な部分がシートバックパッド16の後面に沿って配置されて、当該後面を覆っている。なお、以下では、第2表皮部22におけるシートバックパッド16の後面を覆う部分を「後側表皮部22A」と称することとする。
【0035】
一方、第2表皮部22における後側表皮部22Aからシート下方側の部分は、第2延出片部としての「後側延出片部22B」とされている。そして、後側延出片部22Bには、「第1面ファスナ30」及び「第2面ファスナ32」が設けられている。
【0036】
詳しくは、第1面ファスナ30は、図示しない複数のフック部が設けられると共にシート幅方向に延在する布材で構成されており、後側延出片部22Bの「端部22B1」における後側表皮部22Aの表面と連続している方の面に設けられている。
【0037】
一方、第2面ファスナ32は、図示しない複数のループ部が設けられると共にシート幅方向に延在する布材で構成されており、後側延出片部22Bのシート上方側の部分における後側表皮部22Aの表面と連続している方の面に設けられている。この第2面ファスナ32は、シート幅方向の長さが第1面ファスナ30のシート幅方向の長さと同程度の長さに設定されると共に、後側延出片部22Bの延在方向の長さが第1面ファスナ30の当該延在方向の長さの5~10倍程度の長さに設定されている。なお、第2面ファスナ32は、後側表皮部22Aにおけるシート下方側の部分に設けられていてもよい。
【0038】
そして、本実施形態では、後側延出片部22Bにおける端部22B1側の部分が係止板部24の長孔部26の内側を通ることで長孔部26に係止されると共に、第1面ファスナ30が第2面ファスナ32に接合されることで、前側延出片部20B及び後側延出片部22Bに張力が付与された状態となっている。
【0039】
また、本実施形態では、第2表皮部22に第2表皮部22と同様の材料で構成された「隠し片部34」が設けられている。この隠し片部34は、シート幅方向の長さが後側表皮部22Aのシート幅方向の長さと同程度の長さに設定されると共に、後側表皮部22Aにおける後側延出片部22Bとの境界部からシート下方側に延出されている。そして、隠し片部34は、シート後方側から見て後側延出片部22B及び係止板部24を覆っている。
【0040】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0041】
本実施形態では、図2に示されるように、乗員の背部を支持可能なシートバックパッド16の前面が前側表皮部20Aで覆われており、この前側表皮部20Aからは、前側延出片部20Bがシートバックパッド16のシート下方側を経由してシートバックパッド16の後面側に延出している。そして、前側延出片部20Bには、その端部20B1側にシート幅方向に延在する長孔部26が設けられている。
【0042】
一方、シートバックパッド16の後面を覆う後側表皮部22Aからは、後側延出片部22Bがシート下方側に延出されており、この後側延出片部22Bは、図3にも示されるように、長孔部26の内側を通ることで、この長孔部26に係止されている。
【0043】
また、本実施形態では、後側延出片部22Bの端部22B1側に第1面ファスナ30が設けられており、後側延出片部22Bにおける後側表皮部22A側の部分に第2面ファスナ32が設けられている。
【0044】
このため、本実施形態では、後側延出片部22Bを長孔部26に通してシート上方側に引くことで、後側延出片部22Bの引き量に応じて前側延出片部20Bにおける長孔部26の周辺部がシート上方側に移動する。その結果、前側表皮部20Aのシート下方側の部分及び後側表皮部22Aのシート下方側の部分に張力が発生して、これらがシートバックパッド16に密着する。そして、この状態において、第1面ファスナ30を第2面ファスナ32に接合することで、前側表皮部20A及び後側表皮部22Aのシートバックパッド6に対する密着状態が維持される。すなわち、本実施形態では、シートバック14の表面側の作業のみによって、前側表皮部20Aのシート下方側の部分及び後側表皮部22Aのシート下方側の部分をシートバックパッド16に対して固定することができる。
【0045】
一方、シートバック14の解体時には、第1面ファスナ30と第2面ファスナ32との接合状態を解除すると共に、後側延出片部22Bを長孔部26から抜くことで、前側表皮部20Aのシート下方側の部分及び後側表皮部22Aのシート下方側の部分と、シートバックパッド16との固定状態を解除することができる。
【0046】
また、本実施形態では、後側表皮部22Aに隠し片部34が設けられており、この隠し片部34は、シート後方側から見て後側延出片部22B及び前側延出片部20Bに設けられた長孔部26を覆っている。このため、本実施形態では、隠し片部34によって前側延出片部20Bと後側延出片部22Bとの連結箇所を隠すことができる。
【0047】
また、本実施形態では、長孔部26のシート上方側の上縁部26Aがシート下方側に向かって凸となっている。このため、後側延出片部22Bを長孔部26に通してシート上方側に引くときに、後側延出片部22Bにおける長孔部26の凸となっている箇所と接触する部分に張力が発生し、その結果、後側延出片部22Bに皺が発生することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、図3に示されるように、前側延出片部20Bの端部20B1に設けられたシート幅方向に延在する板状の係止板部24に長孔部26が設けられている。このため、長孔部26を直接前側延出片部20Bに設けるような構成に比べ、後側延出片部22Bを長孔部26に通してシート上方側に引くときに、長孔部26が変形することを抑制し、後側延出片部22Bに皺が発生することをより抑制することができる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態に係るシートバック14は、組立作業並びに解体作業の簡略化を図ることができる。
【0050】
<第2変形例>
次に、図4を用いて、本実施形態の第1変形例について説明する。この第1変形例では、前側延出片部20Bの端部20B1に係止板部24の代わりに一対の「係止枠部40」が設けられている。
【0051】
詳しくは、係止枠部40は、針金や棒鋼等がシート状に曲げられることで大まかにはシート幅方向を長手方向とされた矩形の枠状に構成されており、その内周側が長孔部26とされている。すなわち、係止枠部40は、長孔部26の縁を構成しているとみなすことができる。
【0052】
また、係止枠部40は、シート幅方向に直線的に延在する下枠部40Aに前側延出片部20Bの端部20B1が巻き掛けられると共にその重なった部分が縫合されることで、前側延出片部20Bに取り付けられている。
【0053】
一方、係止枠部40において下枠部40Aと対向する上枠部40Bは、長孔部26の上縁部26Aを構成しており、図4に図示していないが、上枠部40Bには、後側延出片部22Bが巻き掛けられている。
【0054】
このような構成によれば、長孔部26を直接前側延出片部20Bに設けるような構成に比べ、シート10の組立時において、長孔部26が変形することを抑制し、後側延出片部22Bに皺が発生することをより抑制することができる。また、係止枠部40を、上述した針金や棒鋼等の汎用性の高い金属素材で製作することができる。
【0055】
なお、係止枠部40の上枠部40Bは、シート幅方向中央部に頂部を有するV字状に構成されているが、上枠部40Bは、ジグザグ状や波線状に構成されていてもよい。これは、係止板部24における長孔部26の上縁部26Aも同様である。
【0056】
<第2変形例>
次に、図5を用いて、本実施形態の第2変形例について説明する。この第2変形例では、前側延出片部20Bの端部20B1に係止板部24の代わりに一対の「係止枠部50」が設けられている。
【0057】
詳しくは、係止枠部50は、係止枠部40と同様に、針金や棒鋼等が角丸長方形状に曲げられることで構成されると共に、互いに対してシート幅方向に間隔をあけて配置されている。また、本変形例では、前側延出片部20Bの端部20B1が複数、具体的には二股に分岐されており、分岐されたそれぞれの部分が係止枠部40の一部に巻き掛けられると共にその重なった部分が縫合されることで、一対の係止枠部40が前側延出片部20Bに取り付けられている。
【0058】
なお、本変形例では、図5に図示していないものの、後側延出片部22Bも前側延出片部20Bと同様に分岐されており、分岐されたそれぞれの部分の端部には、第1面ファスナ30が設けられている。
【0059】
このような構成によれば、シートバック14がシート幅方向に大型化しても、前側延出片部20Bと後側延出片部22Bとを複数箇所で連結し、これらに皺が発生することを抑制することができる。
【0060】
<第3変形例>
次に、図6を用いて、本実施形態の第3変形例について説明する。この第3変形例では、前側延出片部20Bの端部20B1に長孔部26が直接設けられている。詳しくは、前側延出片部20Bにおける長孔部26の周縁部には、補強糸60がかがり縫いされることで補強部62が設けられている。
【0061】
このような構成によれば、前側延出片部20Bの端部20B1に、係止板部や係止枠部を設けるような構成に比べ、部品点数を低減することができる。
【0062】
<第4変形例>
次に、図7を用いて、本実施形態の第4変形例について説明する。この第4変形例では、後側延出片部22Bに「追加布部70」が取り付けられると共に、後側延出片部22B及び追加布部70のそれぞれに保護板部72が取り付けられている。
【0063】
追加布部70は、第2表皮部22と同様の材料で構成されると共に、シート幅方向の長さが後側延出片部22Bのシート幅方向の長さと同様の長さに設定されている。そして、追加布部70の一方の端部70Aは、「縫合部74」で後側延出片部22Bの端部22B1と繋がれている。なお、以下では、上記のように構成された追加布部70と後側延出片部22Bとの集合体を「複合片部76」と称することとする。
【0064】
また、本変形例では、第1面ファスナ30が、追加布部70の他方の端部70Bに設けられている。すなわち、本変形例では、後側延出片部22Bが第1布部として機能しており、追加布部70が第2布部として機能しており、複合片部76が第2延出片部として機能している。なお、本変形例では、長孔部26が縫合部74に係止されている。
【0065】
一方、保護板部72は、樹脂製とされると共にシート幅方向を長手方向とされた矩形の板状とされている。そして、一方の保護板部72は、後側延出片部22Bにおける縫合部74の近傍に接着剤や縫合等により図示しない接合部で取り付けられており、他方の保護板部72は、追加布部70における縫合部74の近傍に接着剤や縫合等により図示しない接合部で取り付けられている。
【0066】
このような構成によれば、複合片部76が、後側表皮部22Aと連続して設けられた後側延出片部22Bと、第1面ファスナ30が設けられた追加布部70とが縫合部74で繋がれることで構成されている。そして、追加布部70の縫合部74には、前側延出片部20Bに設けられた長孔部26が係止されている。このため、本変形例では、前側延出片部20Bと複合片部76との連結箇所の位置決めを行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
14 シートバック
16 シートバックパッド
20A 前側表皮部
20B 前側延出片部(第1延出片部)
20B1 端部
22A 後側表皮部
22B 後側延出片部(第2延出片部、第1布部)
22B1 端部
24 係止板部
26 長孔部
26A 上縁部
30 第1面ファスナ
32 第2面ファスナ
34 隠し片部
40 係止枠部
50 係止枠部
70 追加布部(第2布部)
74 縫合部
76 複合片部(第2延出片部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7