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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125115
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】接合構造体製造方法及び接合構造体
(51)【国際特許分類】
   F16L 13/10 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
F16L13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033238
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】三田 千夏
(72)【発明者】
【氏名】西村 良知
【テーマコード(参考)】
3H013
【Fターム(参考)】
3H013DA06
(57)【要約】
【課題】第1管状体と第2管状体との間における接着剤の充填率を高めることができる接合構造体製造方法及び接合構造体を提供する。
【解決手段】接合構造体製造方法において、圧入工程では、重複部分300における、第1管状体100と第2管状体200との隙間に、流動性を有する接着剤を圧入する。硬化工程では、接着剤を硬化させることにより、接着剤を充填体400と成す。重複部分300における、第1管状体100の外面110bと第2管状体200の内面210cとの少なくとも一方の面に、その面に沿って延在している延在体240Aが形成されている。延在体240Aは、隙間に圧入された接着剤を、圧入口220と流出口230とを結ぶ仮想最短経路よりも遠回りする方向に広がらせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管状体の一端部分を第2管状体の一端部分に挿入することにより、前記第1管状体と前記第2管状体とを嵌合させる嵌合工程と、
前記第1管状体と前記第2管状体とが嵌合している重複部分における、前記第1管状体と前記第2管状体との隙間に、流動性を有する接着剤を圧入する圧入工程と、
前記隙間に圧入された前記接着剤を硬化させることにより、前記接着剤を、前記接着剤の硬化物である充填体と成す硬化工程と、
を含み、
前記重複部分における、前記第1管状体の外面と前記第2管状体の内面との少なくとも一方の面に、該面に沿って延在している延在体であって、前記充填体の、前記重複部分の長さ方向の一端と他端との間に配置されることとなり、かつ前記充填体によって覆われることとなる前記延在体が形成されており、
前記重複部分は、前記接着剤を前記隙間に圧入する圧入口と、前記圧入口を通じて前記隙間に圧入された前記接着剤が流出する流出口とを有し、
前記圧入工程において、前記延在体は、前記圧入口を通じて前記隙間に圧入された前記接着剤を、前記圧入口と前記流出口とを結ぶ仮想最短経路よりも遠回りする方向に広がらせる、
接合構造体製造方法。
【請求項2】
前記第1管状体の外面に、前記延在体としての第1延在体が形成されており、
前記重複部分において、前記第1延在体は、前記第2管状体に向かって突出している、
請求項1に記載の接合構造体製造方法。
【請求項3】
前記第2管状体の内面に、前記延在体としての第2延在体が形成されており、
前記重複部分において、前記第2延在体は、前記第1管状体に向かって突出している、
請求項1に記載の接合構造体製造方法。
【請求項4】
前記第1管状体の外面に、前記延在体としての第1延在体が形成されており、
前記第2管状体の内面にも、前記延在体としての第2延在体が形成されており、
前記重複部分において、前記第1延在体は、前記第2管状体に向かって突出しており、前記第2延在体は、前記第1管状体に向かって突出している、
請求項1に記載の接合構造体製造方法。
【請求項5】
前記延在体は、前記延在体が形成されている前記面とは前記接着剤に対する濡れ性が異なる被覆層によって構成されている、
請求項1に記載の接合構造体製造方法。
【請求項6】
前記圧入工程よりも後に、前記第2管状体の前記一端部分の端面と、前記第1管状体の外面とで画定される開口をシール剤で閉塞するシーリング工程、
をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の接合構造体製造方法。
【請求項7】
前記圧入工程では、前記隙間を減圧するポンプを前記流出口に接続し、前記ポンプによって前記隙間を減圧しつつ、前記隙間に前記接着剤を圧入する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の接合構造体製造方法。
【請求項8】
互いの一端部分どうしが嵌合している第1管状体及び第2管状体と、
前記第1管状体と前記第2管状体とが嵌合している重複部分における、前記第1管状体と前記第2管状体との間に充填されている、接着剤の硬化物である充填体と、
を備え、
前記重複部分においては、前記第1管状体が前記第2管状体に挿入されており、
前記重複部分における、前記第1管状体の外面と前記第2管状体の内面との少なくとも一方の面に、該面に沿って延在している延在体が形成されており、
前記延在体は、前記充填体の、前記重複部分の長さ方向の一端と他端との間に配置されており、かつ前記充填体によって覆われている、
接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合構造体製造方法及び接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、第1管状体と、その第1管状体が挿入された第2管状体とを有する接合構造体が知られている。この接合構造体は、第1管状体と第2管状体とが嵌合している重複部分における、第1管状体と第2管状体との間に、接着剤を圧入する工程を経て得られる。
【0003】
接合構造体の製造を容易にするために、第2管状体には、第1管状体と第2管状体との間に接着剤を圧入するための圧入口が貫通している。また、特許文献1は、圧入口から圧入した接着剤が流出する流出口を第2管状体に形成してもよい旨を述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-143660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合構造体の使用時に、その接合構造体を流れる液体、気体、粉体、その他の流体が上記重複部分においてリークする可能性をいっそう低減するために、第1管状体と第2管状体との間における接着剤の充填率を高める技術が望まれる。
【0006】
本開示の目的は、第1管状体と第2管状体との間における接着剤の充填率を高めることができる接合構造体製造方法及び接合構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る接合構造体製造方法は、嵌合工程、圧入工程、及び硬化工程を含む。
嵌合工程では、第1管状体の一端部分を第2管状体の一端部分に挿入することにより、第1管状体と第2管状体とを嵌合させる。
圧入工程では、第1管状体と第2管状体とが嵌合している重複部分における、第1管状体と第2管状体との隙間に、流動性を有する接着剤を圧入する。
硬化工程では、隙間に圧入された接着剤を硬化させることにより、接着剤を、接着剤の硬化物である充填体と成す。
重複部分における、第1管状体の外面と第2管状体の内面との少なくとも一方の面に、その面に沿って延在している延在体が形成されている。延在体は、充填体の、重複部分の長さ方向の一端と他端との間に配置されることとなり、かつ充填体によって覆われることとなる。
重複部分は、接着剤を隙間に圧入する圧入口と、圧入口を通じて隙間に圧入された接着剤が流出する流出口とを有する。
圧入工程において、延在体は、圧入口を通じて隙間に圧入された接着剤を、圧入口と流出口とを結ぶ仮想最短経路よりも遠回りする方向に広がらせる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、隙間に圧入された接着剤が、圧入口と流出口とを結ぶ仮想最短経路よりも遠回りする方向に広がるので、第1管状体と第2管状体との間における接着剤の充填率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る接合構造体の平面図
図2図1のII-II線の位置における断面図
図3】実施の形態1に係る接合構造体製造方法のフローチャート
図4】実施の形態1に係る重複部分の、接着剤を圧入する前の状態を示す断面図
図5】実施の形態2に係る重複部分の、接着剤を圧入する前の状態を示す断面図
図6】実施の形態3に係る重複部分の、接着剤を圧入する前の状態を示す断面図
図7】実施の形態4に係る接合構造体の平面図
図8図7のVIII-VIII線の位置における断面図
図9】実施の形態5に係る接合構造体の平面図
図10図9のX-X線の位置における断面図
図11】実施の形態6に係る接合構造体の平面図
図12】実施の形態7に係る接合構造体の平面図
図13】実施の形態8に係る接合構造体の平面図
図14図13のXIV-XIV線の位置における断面図
図15】実施の形態9に係る接合構造体製造方法で用いる拡径ビュレットの概念図
図16】実施の形態10に係る接合構造体製造方法で用いるディスペンサの概念図
図17】実施の形態11に係る被覆層を例示する概念図
図18】実施の形態12に係る接合構造体製造方法のフローチャート
図19】実施の形態12に係る重複部分の外観を示す斜視図
図20】実施の形態13に係る接合構造体の断面図
図21】実施の形態13に係る接合構造体製造方法のフローチャート
図22】実施の形態14で接着剤の圧入時に併用するポンプを示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、実施の形態について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0011】
[実施の形態1]
図1に示すように、本実施の形態に係る接合構造体500は、第1管状体100と、第1管状体100に接合された第2管状体200とを備える。第1管状体100と第2管状体200とは、互いの一端部分110、210どうしが嵌合した状態で接合されている。
【0012】
具体的には、第1管状体100の一端部分110は、長さ方向に関して外径が一定に保たれたストレートな形状を有する。第2管状体200の一端部分210は、第1管状体100の一端部分110の外径よりも大きな内径をもつ拡径部によって構成されている。
【0013】
そして、第1管状体100の一端部分110が、第2管状体200の一端部分210に挿入されている。このため、第1管状体100の一端部分110と、第2管状体200の一端部分210とによって、2重管状の重複部分300が構成されている。
【0014】
図2に示すように、接合構造体500は、第1管状体100の一端部分110と、第2管状体200の一端部分210との間に介在する充填体400も備える。充填体400は、第1管状体100の一端部分110と、第2管状体200の一端部分210とが嵌合している重複部分300における、第1管状体100と第2管状体200との間に充填されている。
【0015】
充填体400は、接着剤の硬化物である。このため、充填体400は、第1管状体100と第2管状体200とを接合する役割、具体的には、第1管状体100と第2管状体200との一方の、他方に対する抜け及び回転を阻止する役割を果たす、また、充填体400は、第1管状体100と第2管状体200との間を気密かつ液密に封止することにより、接合構造体500を流れる流体のリークを防ぐ役割を果たす。
【0016】
また、接合構造体500は、充填体400を構成することとなる接着剤を第1管状体100と第2管状体200との間に圧入するための圧入口220と、圧入口220を通じて圧入された接着剤が流出する流出口230とを、重複部分300に有する。
【0017】
具体的には、圧入口220及び流出口230は、第2管状体200の一端部分210に形成されている。圧入口220及び流出口230は、いずれも第2管状体200の一端部分210を貫通しており、第2管状体200の一端部分210の外面210bに開口している。
【0018】
なお、先に例示した充填体400の各役割がいかんなく発揮されるためには、充填体400を構成することとなる接着剤の、第1管状体100と第2管状体200との間への充填率を高めることが望まれる。
【0019】
そこで、本実施の形態に係る接合構造体500は、製造の際に、第1管状体100と第2管状体200との間への接着剤の充填率を高めるために、重複部分300に延在体240Aが予め形成されている点を最大の特徴としている。
【0020】
本実施の形態では、延在体240Aは、第2管状体200の一端部分210の内面210cに形成されている。延在体240Aは、内面210cに沿って延在している。即ち、本実施の形態に係る延在体240Aは、第2管状体200に形成される第2延在体の一例である。
【0021】
延在体240Aは、重複部分300において、第2管状体200の一端部分210の内面210cから、第1管状体100の一端部分110の外面110bに向かって、径方向に突出している。
【0022】
ここで“径方向”とは、重複部分300における第1管状体100及び第2管状体200の長さ方向(以下、重複部分300の長さ方向とも記す。)、及び重複部分300における第1管状体100及び第2管状体200の周方向(以下、重複部分300の周方向とも記す。)に直角な方向を指す。
【0023】
図1に示すように、延在体240Aは、重複部分300の長さ方向と、その長さ方向に直角な周方向との双方に対して傾斜した斜め方向に延在している部分を有する。なお、図1では、重複部分300の長さ方向は上下方向であり、重複部分300の周方向は左右方向である。
【0024】
具体的には、延在体240Aは、らせん状に延在している。延在体240Aは、第2管状体200の一端部分210を複数回にわたって周回している。
【0025】
より具体的には、圧入口220と流出口230とは、重複部分300の長さ方向に離間していて、延在体240Aの一端は、延在体240Aの他端よりも圧入口220に近い位置に配置されている。一方、延在体240Aの他端は、延在体240Aの一端よりも流出口230に近い位置に配置されている。そして、延在体240Aは、一端から他端にわたって、らせん状に途切れなく延在する1本の突条によって構成されている。
【0026】
図2に戻り、説明を続ける。延在体240Aは、充填体400の、重複部分300の長さ方向の一端と他端との間に配置されている。そして、延在体240Aは、充填体400によって覆われている。つまり、延在体240Aは、充填体400に埋没している。なお、延在体240Aが充填体400によって覆われている状態とは、延在体240Aの一部分が充填体400のボイドなどによって充填体400と接触していない箇所があってもよく、充填体400が気密を保つように封止する機能を持つように延在体240Aに密着している状態である。
【0027】
以下、本実施の形態に係る接合構造体製造方法について説明する。
【0028】
図3に示すように、まず、第1管状体100の一端部分110を第2管状体200の一端部分210に挿入することにより、第1管状体100と第2管状体200とを嵌合させる(ステップS11)。なお、本ステップS11は、本開示に係る嵌合工程の一例である。
【0029】
図4に、嵌合させた状態の第1管状体100と第2管状体200とを示す。嵌合によって、既述の重複部分300が構成される。また、重複部分300における、第1管状体100の一端部分110の外面110bと、第2管状体200の一端部分210の内面210cとの間に、円環状の隙間GPが画定される。
【0030】
なお、隙間GPの、重複部分300の径方向の寸法(以下、隙間GPの幅と記す。)、即ち、第2管状体200の一端部分210の内面210cと、第1管状体100の一端部分110の外面110bとの間の間隔は、3mm以下であることが好ましく、10μm以上、1mm以下であることがより好ましい。
【0031】
圧入口220と流出口230との各々は、隙間GPを外部と連通させている。延在体240Aは、隙間GPに突出しており、かつ重複部分300の長さ方向に関して、圧入口220と流出口230との間において延在している。
【0032】
図3に戻り、説明を続ける。次に、上述した重複部分300における、第1管状体100と第2管状体200との隙間GPに、流動性を有する接着剤を圧入する(ステップS12)。なお、本ステップS12は、本開示に係る圧入工程の一例である。
【0033】
接着剤としては、25℃かつ1気圧の標準状態において、0.01Pa・s以上、10000Pa・s以下の粘度を有するものが好ましい。より好ましくは、接着剤の標準状態における粘度は、0.1Pa・s以上、1000Pa・s以下である。なお、ここでいう粘度は、BROOKFIELD社製のE型粘度計による測定値を指す。接着剤には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を含有するものを用いることができる。
【0034】
接着剤は、圧入口220を通じて、隙間GPに圧入される。圧入には、ディスペンサ(dispenser)を用いてもよい。ディスペンサの、接着剤を吐出する吐出口が圧入口220に当てがわれる。
【0035】
接着剤の圧入は、第1管状体100と第2管状体200とを、重複部分300が構成された状態に仮止めしたまま行うことが好ましい。ここで仮止めとは、第1管状体100と第2管状体200との一方の他方に対する変位が阻止される状態に、第1管状体100と第2管状体200とを一時的に固定することを意味する。一時的な固定には、クリップ(clip)その他の固定手段が用いられる。
【0036】
既述のとおり、延在体240Aは、隙間GPに突出して延在している。従って、延在体240Aは、ステップS12において、圧入口220から圧入された接着剤の、隙間GPにおける広がり方、具体的には、広がる方向を定めつつ、接着剤を流出口230へと案内する役割を果たす。
【0037】
図1を参照し、具体的に説明する。ステップS12において、延在体240Aは、圧入口220を通じて圧入された接着剤を、圧入口220と流出口230とを結ぶ仮想最短経路VRよりも遠回りする方向に広がらせる。即ち、延在体240Aは、圧入口220と流出口230との間でらせん状に延在しているので、接着剤を、重複部分300を複数回にわたって周回させつつ、流出口230へと案内する。
【0038】
これにより、延在体240Aが存在しない場合に比べると、図4に示す隙間GPにおける接着剤の充填率が高められる。
【0039】
なお、本明細書において“充填率”とは、隙間GPの体積に対する、その隙間GPに圧入された接着剤の占める体積の割合を指す。“接着剤の充填率を高める”とは、重複部分300における、第1管状体100と第2管状体200との間に、空隙(pore)その他の、接着剤が存在しない領域の残留を抑制することを意味する。
【0040】
接着剤は、延在体240Aによって広がり方を制御されることにより隙間GPに充分に行き渡った後に、流出口230に到達する。このため、流出口230に接着剤が到達した時点をもって、接着剤の圧入が完了する。流出口230に着剤剤が現れたこと、又は流出口230から接着剤が溢れたことを目視で確認できるので、圧入の完了のタイミングを容易に把握することができる。
【0041】
図3に戻り、説明を続ける。次に、ステップS12で隙間GPに圧入した接着剤を硬化させることにより、接着剤を充填体400と成す(ステップS13)。つまり、ステップS13では、接着剤の硬化物である充填体400を形成する。なお、本ステップS13は、本開示に係る硬化工程の一例である。
【0042】
接着剤が熱硬化性を有する場合は、ステップS13では、圧入された接着剤を加熱することで、接着剤を硬化させることができる。また、接着剤が常温で硬化する性質を有する場合は、ステップS13では、圧入された接着剤を常温のまま放置しておくことによっても、接着剤を硬化させることができる。
【0043】
以上により、接合構造体500が完成する。以上説明したように、本実施の形態によれば、らせん状に延びる延在体240Aが、隙間GPに圧入された接着剤を仮想最短経路VRよりも遠回りする方向に広がらせる。
【0044】
このため、隙間GPの幅が狭小な場合でも、また、接着剤の粘度が高い場合でも、隙間GPの隅々まで接着剤を行き渡らせることができ、第1管状体と第2管状体との間における接着剤の充填率を高めることができる。それゆえ、接合構造体500において、輸送対象物のリークが生じにくい。
【0045】
また、延在体240Aは、図2に示したように、充填体400の、長さ方向の一端と他端との間において、充填体400に食い込んだ状態で残される。このため、延在体240Aは、接着剤の硬化後においては、第1管状体100と第2管状体200との接合強度、具体的には、第1管状体100と第2管状体200との一方の他方に対する相対変位を阻止する強度、特に、長さ方向の相対変位を阻止する引き抜き強度を高める役割も果たす。
【0046】
[実施の形態2]
図5に示すように、第1管状体100の一端部分110と、第2管状体200の一端部分210とのうち、第1管状体100の一端部分110だけに、延在体240Bを形成してもよい。延在体240Bは、第1管状体100に形成される第1延在体の一例である。他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0047】
この延在体240Bは、重複部分300において、第1管状体100の一端部分110の外面110bから、第2管状体200の一端部分210の内面210cに向かって径方向に突出している。この延在体240Bも、図1に示した延在体240Aと同様、らせん状に延在している。本実施の形態によっても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
[実施の形態3]
図6に示すように、第1管状体100の一端部分110の外面110bに延在体240Cを形成し、かつ第2管状体200の一端部分210の内面210cにも延在体240Dを形成してもよい。延在体240Cは、第1管状体100に形成される第1延在体の一例であり、延在体240Dは、第2管状体200に形成される第2延在体の一例である。他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0049】
延在体240Cは、重複部分300において、第1管状体100の一端部分110の外面110bから、第2管状体200の一端部分210の内面210cに向かって径方向に突出している。
【0050】
延在体240Cも、図1に示した延在体240Aと同様、らせん状に延在している。延在体240Cの外面110bからの突出高さは、長さ方向に関して、第1管状体100の一端部分110の端面110aに近づくに従って、次第に低くなっている。
【0051】
一方、延在体240Dは、重複部分300において、第2管状体200の一端部分210の内面210cから、第1管状体100の一端部分110の外面110bに向かって径方向に突出している。
【0052】
延在体240Dも、図1に示した延在体240Aと同様、らせん状に延在している。延在体240Dの内面210cからの突出高さは、長さ方向に関して、第1管状体100の一端部分110の端面110aに近づくに従って、次第に高くなっている。
【0053】
本実施の形態では、延在体240CのらせんのピッチP1と、延在体240DのらせんのピッチP2とが等しい。但し、延在体240Cの長さ方向の位置は、延在体240Dの長さ方向の位置とは異なっている。
【0054】
圧入口220から隙間GPに圧入された接着剤は、延在体240C及び延在体240Dによって案内されることにより、重複部分300をらせん状に周回して流出口230に至る。このため、本実施の形態によっても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0055】
なお、ピッチP1とピッチP2とが等しいため、延在体240Cと延在体240Dとの一方を、他方に対して長さ方向に仮想的にずらしたとき、延在体240Cと延在体240Dとが、全長にわたって径方向に対向する。そのときの、延在体240Cの外面110bからの突出高さと、延在体240Dの内面210cからの突出高さとの和(以下、突出高さの和と記す。)は、隙間GPの幅以下である。図6には、突出高さの和が隙間GPの幅に等しい構成を例示した。
【0056】
[実施の形態4]
図8に示すように、圧入口220と流出口230との、重複部分300の仮想中心線CLのまわりの周方向の位置が異なっていてもよい。本実施の形態では、流出口230の周方向の位置は、圧入口220の周方向の位置から、仮想中心線CLのまわりに180°隔てている。なお、圧入口220と流出口230との、重複部分300の長さ方向の位置が異なっている点は、実施の形態1の場合と同様である。
【0057】
また、本実施の形態では、第2管状体200の一端部分210の内面210cに、3本の延在体240E、240F、240Gが形成されている。これらの延在体240E、240F、240Gは、第2管状体200に形成される第2延在体の一例である。他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0058】
延在体240E、240F、240Gの各々は、重複部分300において、第2管状体200の一端部分210の内面210cから、第1管状体100の一端部分110の外面110bに向かって径方向に突出している。
【0059】
図7に示すように、延在体240E、240F、240Gの各々は、重複部分300の周方向に延在している。延在体240E、240F、240Gの周方向の長さは、互いに同じである。
【0060】
具体的には、延在体240E、240F、240Gの各々の周方向の長さは、第2管状体200の一端部分210の周方向の長さ未満、具体的には、第2管状体200の一端部分210の周方向の長さの1/8以下である。
【0061】
但し、延在体240E、240F、240Gの、長さ方向の中央に位置する仮想中点の、重複部分300の周方向の位置は互いに異なっている。
【0062】
圧入口220から圧入された接着剤は、延在体240E、240F、及び240Gによって案内されることにより、重複部分300を複数回にわたって周回する。このようにして、接着剤は、圧入口220と、その圧入口220の反対側に位置する流出口230とを結ぶ仮想最短経路VRよりも遠回りする方向に広がって流出口230に至る。
【0063】
このため、延在体240E、240F、240Gが存在しない場合に比べると、第1管状体100と第2管状体200との間における接着剤の充填率を高めることができる。
【0064】
以上、延在体240E、240F、及び240Gの全部が第2管状体200に形成された構成を例示した。延在体240E、240F、及び240Gの全部が第1管状体100に形成されていてもよい。また、延在体240E、240F、及び240Gの一部が第1管状体100に形成され、残部が第2管状体200に形成されていてもよい。
【0065】
[実施の形態5]
図9に示すように、重複部分300は、逆V字状に延在する一対の延在体240H、240Iを備えてもよい。接着剤の圧入前の状態において、延在体240H、240Iは、重複部分300の周方向に対向している。延在体240H、240Iの各々の一端は、圧入口220の脇に位置する。
【0066】
延在体240Hと、延在体240Iとの、重複部分300の周方向の間隔は、各々の一端から他端に向かうに従って、即ち、第2管状体200の端面210aから第1管状体100の端面110aに向かう方向に進むに従って、次第に広くなっている。他の構成は、実施の形態4と同じである。
【0067】
圧入口220から圧入された接着剤の一部は、延在体240H、240Iによって案内されることにより、圧入口220と、その圧入口220の反対側に位置する流出口230とを結ぶ仮想最短経路VRよりも遠回りする方向に広がって、流出口230に至る。
【0068】
このため、延在体240H、240Iが存在しない場合に比べると、第1管状体100と第2管状体200との間における接着剤の充填率を高めることができる。なお、図9には、接着剤の一部の、仮想最短経路VRよりも遠回りして広がる方向を矢印で示している。
【0069】
図10に示すように、延在体240H及び240Iは、第2管状体200に形成されている。但し、延在体240H及び240Iは、第1管状体100に形成されていてもよい。また、延在体240H及び240Iの一方が第1管状体100に形成され、他方が第2管状体200に形成されていてもよい。
【0070】
[実施の形態6]
図11に示すように、重複部分300は、各々重複部分300の長さ方向に延在する一対の延在体240J、240Kを備えてもよい。接着剤の圧入前の状態において、延在体240J、240Kは、重複部分300の周方向に対向している。延在体240J、240Kの各々の一端は、圧入口220の脇に位置する。他の構成は、実施の形態4と同じである。本実施の形態によっても実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0071】
[実施の形態7]
図7には、重複部分300の周方向に延在する延在体240E、240F、240Gを例示した。また、図11には、重複部分300の長さ方向に延在する延在体240J、240Kを例示した。また、図1及び図9には、重複部分300の、長さ方向と周方向との双方に対して傾斜した斜め方向に延在する延在体240A、240H、240Iを例示した。
【0072】
図12に示すように、重複部分300は、斜め方向に延在する部分、長さ方向に延在する部分、及び周方向延在する部分を有する延在体240L及び240Mを備えてもよい。他の構成は、実施の形態4と同じである。本実施の形態によっても実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0073】
なお、延在体240L及び240Mは、重複部分300の周方向、重複部分300の長さ方向、及びそれら長さ方向と周方向との双方に対して傾斜した斜め方向の少なくともいずれかの方向に延在している部分を有していればよい。
【0074】
即ち、変形例として、延在体240L及び240Mにおいては、斜め方向に延在する部分を省略してもよいし、周方向延在する部分を省略してもよい。また、延在体240L及び240Mにおいては、長さ方向に延在する部分を省略し、斜め方向に延在する部分と周方向延在する部分とをつなげてもよい。
【0075】
[実施の形態8]
図13及び図14に示すように、重複部分300は、面状に広がって延在する延在体240Nを備えてもよい。
【0076】
延在体240Nは、重複部分300の径方向に直角に、具体的には、重複部分300の長さ方向及び周方向の2方向に、面状に広がって延在している。つまり、延在体240Nは、重複部分300の長さ方向に対向する2辺と、重複部分300の周方向に対向する他の2辺とをもつ四角形の領域にわたって延在している。
【0077】
図14に示すように、延在体240Nは、第2管状体200に形成されている。但し、延在体240Nは、第1管状体100に形成されていてもよい。また、延在体240Nの一部が第1管状体100に形成され、残部が第2管状体200に形成されていてもよい。
【0078】
図13に示すように、延在体240Nは、重複部分300の長さ方向に関して圧入口220と流出口230との間の中間位置に配置されている。
【0079】
この延在体240Nも、他の実施の形態に係るものと同様、圧入口220から圧入された接着剤を、仮想最短経路VRよりも遠回りする方向に広がらせて、流出口230へと案内する。このため、延在体240Nが存在しない場合に比べると、第1管状体100と第2管状体200との間における接着剤の充填率が高められる。
【0080】
[実施の形態9]
図2に示した延在部240Aを第2管状体200に形成する手法の一具体例を述べる。本実施の形態では、第2管状体200は金属で形成されているものとする。
【0081】
既述のとおり、第2管状体200の一端部分210は、第2管状体200の残りの部分よりも内径が広げられた拡径部で構成されている。本実施の形態では、第2管状体200の一端部分210を形成するための拡径工程において、一端部分210の形成と一緒に、延在部240Aも形成する。
【0082】
延在部240Aを含む一端部分210bの形成には、管を径方向外方に広げる工具(以下、拡管工具と記す。)を用いる。つまり、第2管状体200の、一端部分210となる部分(以下、被拡径部分と記す。)に、拡管工具を圧入する。
【0083】
図15に、拡径工具の具体例としての拡径ビュレットETを示す。拡径ビュレットETは、らせん状に延在するねじ山ETaを先端部に有する。この拡径ビュレットETを、回転させつつ、第2管状体200の被拡径部分に押し込む。
【0084】
すると、被拡径部分が拡径ビュレットETによって径方向外方に押し広げられる。これにより、延在部240Aを含む一端部分210bが形成される。延在部240Aは、被拡径部分がねじ山ETaの形に塑性変形することで形成される。
【0085】
以上、拡径工具を用いて、第2管状体200に延在部240Aを形成する手法の一具体例を述べた。この他、第2管状体200への延在部240Aの形成には、拡径工具以外の型を用いるプレス加工、延在部240Aを残して内面210cを削り出す切削加工等を用いてもよい。
【0086】
[実施の形態10]
図5に示した延在部240Bを第1管状体100に形成する手法の一具体例を述べる。本実施の形態では、延在部240Bは樹脂で形成されているものとする。第1管状体100は金属で形成されていてもよいし、樹脂で形成されていてもよい。
【0087】
図16に示すように、本実施の形態では、第1管状体100の外面110bに樹脂を肉盛りすることにより、延在部240Bを形成する。つまり、延在部240Bは、樹脂の硬化物で構成される。
【0088】
具体的には、ディスペンサDPから第1管状体100の外面110bに対してペースト状の樹脂を供給しつつ、第1管状体100とディスペンサDPとの一方を他方に対してらせん状に回転運動させることにより、ペースト状の樹脂をらせん状に塗布する。そして、その樹脂を硬化させることで延在部240Bと成す。
【0089】
なお、樹脂には、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等用いることができる。樹脂の硬化は、加熱、紫外線の照射等により、促進させてもよい。
【0090】
以上、樹脂の塗布によって、第1管状体100に延在部240Bを形成する手法の一具体例を述べた。この他、第1管状体100への延在部240Bの形成には、樹脂その他の材料で成形されたものの、外面110bへの貼り付け、延在部240Bを残して外面110bを削り出す切削加工等を用いてもよい。
【0091】
[実施の形態11]
重複部分300に形成する延在体は、接着剤の広がる方向を規制する邪魔板の役割を果たすものに限られない。
【0092】
重複部分300に形成する延在体は、その延在体が形成されている面とは接着剤に対する濡れ性が異なる被覆層によって構成されたものであってもよい。接着剤に対する濡れ性が調整された被覆層によっても、接着剤の広がる方向を制御できる。従って、被覆層の存在によっても接着剤の充填率を高めうる。
【0093】
図17に、被覆層によって構成された延在体240O及び240Pを例示する。これらの延在体240O及び240Pは、図9に示した延在体240H及び240Iと同様、逆V字状に延在している。
【0094】
本実施の形態では、延在体240O及び240Pは、第1管状体100の外面110bに形成されている。即ち、第1管状体100の外面110bは、延在体240O及び240Pが形成される面の一例である。但し、延在体240O及び240Pは、第2管状体200の内面210cに形成してもよいし、第1管状体100の外面110bと、第2管状体200の内面210cとの双方に形成してもよい。
【0095】
本実施の形態では、延在体240O及び240Pは、それら延在体240O及び240Pが形成されている外面110bよりも、接着剤に濡れにくい撥水性をもつ。つまり、延在体240O及び240Pの各々は、撥水加工によって形成されたものである。具体的には、延在体240O及び240Pは、フッ素樹脂で形成されている。
【0096】
以上、撥水加工によって形成された被覆層について説明した。被覆層は、その被覆層が形成されている面よりも、接着剤に濡れやすい親水性をもつものであってもよい。つまり、被覆層は、親水加工によって形成されたものであってもよい。親水加工の手法としては、被覆層が形成されることとなる領域をプラズマに晒すプラズマ処理、被覆層が形成されることとなる領域に紫外線を照射するUV処理が例示される。
【0097】
[実施の形態12]
図18に示すように、接着剤を隙間GPに圧入する圧入工程(ステップS12)と、接着剤の硬化が完了する硬化工程(ステップS13)との間において、第1管状体100と第2管状体200とを相対運動させる充填促進工程(ステップS21)を行ってもよい。
【0098】
充填促進工程(ステップS21)では、ステップS12で圧入された接着剤が硬化する前に、第1管状体100と第2管状体200とを相対運動させることで、その接着剤の隙間GPにおける充填率がいっそう高められる。
【0099】
図19に、第1管状体100と第2管状体200との相対運動の方向を矢印で示す。充填促進工程(ステップS21)では、第1管状体100と第2管状体200とを、重複部分300の周方向に、相対的に往復回転運動させてもよい。この往復回転運動による充填率の向上は、特に、図1図7に示した構成に対して有効である。
【0100】
また、充填促進工程(ステップS21)では、第1管状体100と第2管状体200とを、重複部分300の長さ方向に、相対的に往復直線運動させてもよい。この往復直線運動による充填率の向上は、特に、図9図11図17に示した構成に対して有効である。
【0101】
[実施の形態13]
図20に示すように、接合構造体500は、重複部分300の端部に配置されるシール剤硬化物600をさらに備えてもよい。シール剤硬化物600は、ペースト状のシール剤が硬化した硬化物である。
【0102】
シール剤硬化物600は、第2管状体200の一端部分210の端面210aと、第1管状体100の外面110bとで画定される開口310を閉塞している。また、本実施の形態では、シール剤硬化物600は、圧入口220も閉塞している。なお、流出口230もシール剤硬化物600で閉塞してもよい。
【0103】
シール剤硬化物600は、開口310の位置及び圧入口220の位置において、充填体400に接している。シール剤硬化物600により、接合構造体500の使用時における重複部分300の耐圧性の向上が期待される。以下、本実施の形態に係る接合構造体製造方法について述べる。
【0104】
図21に示すように、本実施の形態では、圧入工程(ステップS12)よりも後、具体的には、充填促進工程(ステップS21)の後に、開口310をシール剤で閉塞するシーリング工程(ステップS31)をさらに含む。
【0105】
シール剤には、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。シール剤の標準状態における粘度は、0.01Pa・s以上、100000Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上、100000Pa・s以下であることがより好ましい。
【0106】
シール剤は、開口310及び圧入口220に露出している接着剤を覆う状態に塗布される。シール剤の塗布には、ディスペンサを用いてもよい。
【0107】
本実施の形態では、シーリング工程(ステップS31)の後に、接着剤の硬化が完了する(ステップS13)。また、本実施の形態では、ステップS13には、シーリング剤の硬化の完了も含まれるものとする。
【0108】
なお、接着剤の硬化は、シーリング工程(ステップS31)の前に開始されてもよい。一例として、充填促進工程(ステップS21)の後、シーリング工程(ステップS31)の前に、開口310、圧入口220、流出口230を介して接着剤に紫外線を照射してもよいし、接着剤の加熱を開始してもよい。また、接着剤が、放置により自然に硬化する性質を有する場合は、圧入工程(ステップS12)を経た時点で、自ずと接着剤の硬化は開始される。
【0109】
シーリング剤には、接着剤とは異なる材質のものを用いることが好ましい。シーリング工程(ステップS31)を経ることで、配管に異種材料を用いた場合、水分が溜まる箇所をシールでき、腐食を抑制することができる。
【0110】
[実施の形態14]
図22に示すように、既述の圧入工程(ステップS12)では、ポンプPUを流出口230に接続してもよい。ポンプPUによって、図4に示す隙間GPを減圧しつつ、圧入口220から隙間GPに接着剤を圧入する。これにより、隙間GPへの接着剤の充填率をいっそう高めることができ、かつ接着剤の圧入に要する時間を短縮できる。
【0111】
流出口230からポンプPUに至る空気の流れの経路中に、トラップTRを配置することが好ましい。仮に、流出口230から接着剤が溢れても、その溢れた接着剤はポンプPUに吸い込まれる前に、トラップTRによって回収される。
【0112】
以上、実施の形態1-14について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0113】
第2管状体200に貫通させる圧入口220、流出口230の形状は、円形に限られず、楕円形、三角形、四角形、多角形等であってもよい。
【0114】
また、圧入工程(ステップS12)においては、図4に示す開口310の一部(以下、開放部と記す。)を開放させたまま、開口310の残部を閉塞しておき、その開放部を圧入口220と流出口230との少なくとも一方として用いてもよい。開放部の一部を圧入口220として使用し、開放部の残部を流出口230として使用する場合は、接着剤を圧入するための貫通孔を第2管状体200に形成する必要がない。
【0115】
また、重複部分300は、圧入口220と流出口230との少なくとも一方を複数個有してもよい。各々隙間GPに通じる複数の箇所に圧入口220を配置することで、隙間GPへの接着剤の充填率をいっそう高めることができる。
【0116】
延在体240Aの、重複部分300の径方向の寸法である突出高さ、及び重複部分300の長さ方向の寸法である幅は、その延在体240Aの全長にわたって必ずしも一様でなくてもよい。また、延在体240Aは、その延在体240Aの全長にわたって離散的に並んだ凸部によって構成されたものであってもよい。
【0117】
第1管状体100及び第2管状体200の素材は、特に限定されない。第1管状体100及び第2管状体200は、金属、例えば、銅、アルミニウム、鉄によって構成することができる。また、第1管状体100と第2管状体200との一方は、管継手であってもよい。また、図1には、真っ直ぐに延びる第1管状体100及び第2管状体200を例示したが、第1管状体100又は第2管状体200は、T字状、L字状、U字型、又はY字状に延在するものであってもよい。
【0118】
第1管状体100、第2管状体200の断面は、必ずしも円形でなくてもよく、楕円形、四角形、多角形等であってもよい。本明細書においては、第1管状体100及び第2管状体200(以下、管状体と総称する。)の断面が円形でない場合であっても、管状体の長さ方向に延びる、その管状体の仮想中心軸線から、その仮想中心軸線に直角な外方へ向かう方向を“径方向”と呼び、その径方向及び仮想中心軸線に直角でかつその管状体の外面に接する方向を“周方向”と呼ぶ。
【0119】
図1図7には、仮想最短経路VRの一例を示したが、仮想最短経路VRは、圧入口220と流出口230との位置に応じて定まる。以下、本明細書における仮想最短経路VRの定義について述べる。
【0120】
重複部分300における、第1管状体100と第2管状体200との間に、それら第1管状体100及び第2管状体200と長さ方向が同じで、かつそれら第1管状体100及び第2管状体200と同じ断面形状をもつ仮想管状体を想定する。圧入口220を仮想管状体の側面に垂直投影した位置を圧入口射影位置と呼ぶことにする。また、流出口230を仮想管状体の側面に垂直投影した位置を流出口射影位置と呼ぶことにする。仮想管状体の側面を平面状に展開したときの、圧入口射影位置と流出口射影位置とを直線で結ぶ経路が仮想最短経路VRである。
【0121】
以下、本開示の諸態様を付記する。
【0122】
(付記1)
第1管状体の一端部分を第2管状体の一端部分に挿入することにより、前記第1管状体と前記第2管状体とを嵌合させる嵌合工程と、
前記第1管状体と前記第2管状体とが嵌合している重複部分における、前記第1管状体と前記第2管状体との隙間に、流動性を有する接着剤を圧入する圧入工程と、
前記隙間に圧入された前記接着剤を硬化させることにより、前記接着剤を、前記接着剤の硬化物である充填体と成す硬化工程と、
を含み、
前記重複部分における、前記第1管状体の外面と前記第2管状体の内面との少なくとも一方の面に、該面に沿って延在している延在体であって、前記充填体の、前記重複部分の長さ方向の一端と他端との間に配置されることとなり、かつ前記充填体によって覆われることとなる前記延在体が形成されており、
前記重複部分は、前記接着剤を前記隙間に圧入する圧入口と、前記圧入口を通じて前記隙間に圧入された前記接着剤が流出する流出口とを有し、
前記圧入工程において、前記延在体は、前記圧入口を通じて前記隙間に圧入された前記接着剤を、前記圧入口と前記流出口とを結ぶ仮想最短経路よりも遠回りする方向に広がらせる、
接合構造体製造方法。
【0123】
(付記2)
前記第1管状体の外面に、前記延在体としての第1延在体が形成されており、
前記重複部分において、前記第1延在体は、前記第2管状体に向かって突出している、
付記1に記載の接合構造体製造方法。
【0124】
(付記3)
前記第2管状体の内面に、前記延在体としての第2延在体が形成されており、
前記重複部分において、前記第2延在体は、前記第1管状体に向かって突出している、
付記1に記載の接合構造体製造方法。
【0125】
(付記4)
前記第1管状体の外面に、前記延在体としての第1延在体が形成されており、
前記第2管状体の内面にも、前記延在体としての第2延在体が形成されており、
前記重複部分において、前記第1延在体は、前記第2管状体に向かって突出しており、前記第2延在体は、前記第1管状体に向かって突出している、
付記1に記載の接合構造体製造方法。
【0126】
(付記5)
前記延在体は、前記延在体が形成されている前記面とは前記接着剤に対する濡れ性が異なる被覆層によって構成されている、
付記1に記載の接合構造体製造方法。
【0127】
(付記6)
前記圧入工程よりも後に、前記第2管状体の前記一端部分の端面と、前記第1管状体の外面とで画定される開口をシール剤で閉塞するシーリング工程、
をさらに含む、付記1から5のいずれか1項に記載の接合構造体製造方法。
【0128】
(付記7)
前記圧入工程では、前記隙間を減圧するポンプを前記流出口に接続し、前記ポンプによって前記隙間を減圧しつつ、前記隙間に前記接着剤を圧入する、
付記1から6のいずれか1項に記載の接合構造体製造方法。
【0129】
(付記8)
互いの一端部分どうしが嵌合している第1管状体及び第2管状体と、
前記第1管状体と前記第2管状体とが嵌合している重複部分における、前記第1管状体と前記第2管状体との間に充填されている、接着剤の硬化物である充填体と、
を備え、
前記重複部分においては、前記第1管状体が前記第2管状体に挿入されており、
前記重複部分における、前記第1管状体の外面と前記第2管状体の内面との少なくとも一方の面に、該面に沿って延在している延在体が形成されており、
前記延在体は、前記充填体の、前記重複部分の長さ方向の一端と他端との間に配置されており、かつ前記充填体によって覆われている、
接合構造体。
【符号の説明】
【0130】
100 第1管状体、110 一端部分、110a 端面、110b 外面(面)、200 第2管状体、210 一端部分、210a 端面、210b 外面、210c 内面(面)、220 圧入口、230 流出口、240A,240D,240E,240F,240G,240H,240I,240J,240K,240L,240M,240N 延在体(第2延在体)、240B,240C 延在体(第1延在体)、240O,240P 延在体(第1延在体、被覆層)、300 重複部分、310 開口、400 充填体、500 接合構造体、600 シール剤硬化物、CL 仮想中心線、DP ディスペンサ、ET 拡径ビュレット、ETa ねじ山、GP 隙間、PU ポンプ、TR トラップ、VR 仮想最短経路。
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