(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125118
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】容器詰炭酸飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240906BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20240906BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240906BHJP
【FI】
A23L2/00 T
A23L2/54
A23L2/38 A
A23L2/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033243
(22)【出願日】2023-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売 販売した場所:全国 公開者:株式会社 伊藤園 販売開始日:令和4年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】福島 武
(72)【発明者】
【氏名】正木 智之
(72)【発明者】
【氏名】西谷 栄盛
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC14
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK04
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】無糖・無甘味・無果汁の炭酸飲料であって、ガスボリュームが高くても喉越しの刺激が緩和され、おいしく飲みやすい容器詰炭酸飲料を提供する。
【解決手段】 無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料であって、ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、カリウムの含有量が30~350ppmであり、カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が式:(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0に示す割合で含有する容器詰炭酸飲料。さらに本発明は、容器詰炭酸飲料の製造方法、無糖、無甘味、無果汁かつ無香料の容器詰炭酸飲料における呈味改善方法および喉越し改善方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料であって、
ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、
カリウムの含有量が30~350ppmであり、
カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合で含有する容器詰炭酸飲料。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
【請求項2】
無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、
ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、
カリウムの含有量が30~350ppmであり、
カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合となるように調整する容器詰炭酸飲料の製造方法。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
【請求項3】
無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の呈味改善方法であって、
ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、
カリウムの含有量が30~350ppmであり、
カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合となるように調整する容器詰炭酸飲料における呈味改善方法。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
【請求項4】
無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の喉越し改善方法であって、
ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、
カリウムの含有量が30~350ppmであり、
カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合となるように調整する容器詰炭酸飲料における喉越し改善方法。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰炭酸飲料に関し、より詳細には、無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰炭酸飲料であって、ガスボリュームが高くても口内及び喉越しの刺激が緩和され、おいしく飲みやすい容器詰炭酸飲料に関する。さらに本発明は、容器詰炭酸飲料の製造方法、容器詰炭酸飲料における呈味改善方法、容器詰炭酸飲料における喉越し改善方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりと共に、コロナ禍の巣ごもり需要も相まって、炭酸水に爽快感やリフレッシュを求める消費者が増大し、炭酸水の消費が拡大している。しかし、一方で無糖炭酸水の苦味や酸味、口内の刺激が苦手という消費者が一定数存在する。
水においては、「おいしい水」の研究が古くから行われてきた。残留塩素などの不純物が水をおいしくないと感じさせる1つの要因ではあるが、純水のようにミネラル成分などを全く含まない水は味気がなく、おいしいとは感じられない。旧厚生省のおいしい水研究会によれば、硬度を含む7要件に基づいておいしい水が定義されている(旧厚生省「おいしい水研究会」昭和60年4月)。
炭酸水も水と同様で、純水を炭酸水にしてもおいしく感じられない。しかしながら、「おいしい水」を炭酸水にしても、「おいしい炭酸水」とはならない。特許文献1は炭酸由来のえぐみ、渋味を改善する方法を提案しているが、アルコール飲料の割り材用の炭酸の刺激感に優れたものである。特許文献2も高ガス圧の刺激を強調した際の炭酸由来の苦みを抑制するものであり、口内の刺激を苦手とする消費者の課題を解決できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-002083号公報
【特許文献2】特開2018-191646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
おいしい水に関する研究は行われてきているが、おいしい炭酸水、特に炭酸が口中又は喉に与える刺激に関する研究は充分になされているとは言えない。炭酸は未開栓であっても経時と共に抜けてしまうため、賞味期限までに十分なガスボリュームを維持するために、製造時に高いガスボリュームで容器に封入する必要がある。製造間もない炭酸飲料は炭酸が口中や喉に与える刺激が強過ぎる問題があった。
また、海外では天然の炭酸水の飲用習慣が古くから定着しているが、海外の天然炭酸水は高い硬度に由来する強い味わいを有しており、和食など日本の食生活との相性が良いものではない。そのため、クセがなく、炭酸の刺激感がまろやかで和食など日本の食生活との相性の良いおいしい無糖炭酸が求められていた。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、無糖・無甘味・無果汁の炭酸飲料であり、ガスボリュームが高くても喉越しの刺激が緩和され、おいしく飲みやすい容器詰炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者等が鋭意検討したところ、特定のミネラルの配合量及び浸透圧を所定範囲に調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明が完成されるに至った。具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料であって、ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、カリウムの含有量が30~350ppmであり、カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合で含有する容器詰炭酸飲料。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
〔2〕無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、カリウムの含有量が30~350ppmであり、カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合となるように調整する容器詰炭酸飲料の製造方法。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
〔3〕無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の呈味改善方法であって、ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、カリウムの含有量が30~350ppmであり、カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合となるように調整する容器詰炭酸飲料における呈味改善方法。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
〔4〕無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の喉越し改善方法であって、ナトリウムの含有量が1~30ppmであり、カリウムの含有量が30~350ppmであり、カリウム(K)、シリカ(SiO2)、カルシウム(Ca)ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合となるように調整する容器詰炭酸飲料における喉越し改善方法。
(K+SiO2+Ca)/(Na+Mg)=10.0~30.0
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器詰炭酸飲料は、無糖・無甘味・無果汁で、ガスボリュームが高くても口内や喉越しの刺激が緩和され、おいしく飲みやすく飲用できるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、無糖、無甘味、無果汁であって、特定のミネラルの含有量が特定比率の範囲内にあるものである。
【0010】
(無糖)
本実施形態において「無糖」の飲料とは、糖類を実質的に含有しない飲料を意味する。食品表示法に基づく栄養表示のためのガイドラインにおいては、飲料100mlあたり0.5g未満であれば無糖と表示することができる。本明細書においても当該表示基準と同様に、糖類の含有量が飲料100mlあたり0.5g未満である炭酸飲料を「無糖」の炭酸飲料とする。糖類含有量は、飲料100mlあたり0.1g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、糖類とは、単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものを意味し、ぶどう糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖などが包含される。
【0011】
(無甘味)
本実施形態において「無甘味」の飲料とは、甘味料を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、含有する糖類および甘味料に由来する甘味度が飲料100mlあたりショ糖として0.5g未満である炭酸飲料を「無甘味」の炭酸飲料とする。糖類および甘味料の含有量は、飲料100mlあたりショ糖として0.3g相当未満であることが好ましく、0.0g相当であることが特に好ましい。なお、甘味度とは、甘味料の甘さを示す指標であり、ショ糖の甘さを1とした相対値で示される。甘味料とは、食品に甘みを呈する成分であり、糖質系甘味料と非糖質系甘味料の2種類に分けられる。糖質系甘味料は、砂糖、でん粉由来の糖、その他の糖、糖アルコールがあり、非糖質系甘味料は、天然甘味料(ステビア等)と合成甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等)などが包含される。
【0012】
(無果汁)
本実施形態において「無果汁」の飲料とは、果汁を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、果汁の含有量が飲料100mlあたり1.0g(ストレート換算)未満である炭酸飲料を「無果汁」の炭酸飲料とする。果汁の含有量は、飲料100mlあたり0.5g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、「果汁」とは、果実を粉砕して搾汁、裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものをいい、果実は日本標準商品分類による果実とする。果汁の含有量は、果実飲料の日本農林規格に定める基準により設定できる。
【0013】
(ナトリウム)
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、ナトリウムを所定量含有する。本実施形態においてナトリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはナトリウムを豊富に含む海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるナトリウムの塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてナトリウムは、これらのナトリウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含有する。本実施形態においてナトリウムは、好ましくは炭酸水素ナトリウム由来である。ナトリウムの含有量は1~30ppm、好ましくは2ppm以上であり、さらに好ましくは3ppm以上であり、4ppm以上であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記下限値以上であることで、若干の風味を与え、おいしい容器詰炭酸飲料とすることができるとともに、さらに炭酸による口内や喉越しの刺激が緩和され、嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料とすることができる。また、本実施形態の容器詰炭酸飲料は、ナトリウムの含有量が30ppm以下であることが好ましく、26ppm以下であることがより好ましく、22ppm以下であることがさらに好ましく、18ppm以下であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記上限値以下であることで、塩味や苦みを低減し、喉越しの不快感(スッキリしない味わい)を改善するといった本実施形態の効果がより効果的に発揮されるとともに、さらに炭酸による口内の刺激が適度に感じられ、嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料とすることができる。
【0014】
(カリウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、カリウムを所定量含有する。カリウムの含有量は、30ppm以上350ppm以下であることが好ましい。本実施形態においてカリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いは塩化物を含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるカリウムとしては、例えば、塩化カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてカリウムは、これらの塩化物に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは塩化カリウムを含有する。本実施形態においてカリウムは、好ましくは塩化カリウム由来である。カリウムを所定範囲で含有することにより、適度な酸味による冷涼感を与え、炭酸の刺激が心地よく感じられるようになるとともにスッキリした味わいとなるため、本実施形態の効果が効果的に発揮される。本実施形態の容器詰炭酸飲料中のカリウムの含有量は、好ましくは50ppm以上350ppm以下、更に好ましくは100ppm以上300ppm以下である。
【0015】
(カルシウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、カルシウムの含有量が2ppm以上200ppm以下であることが好ましい。本実施形態においてカルシウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはカルシウムを含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるカルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム,炭酸カルシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてカルシウムは、これらのカルシウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは天然水を含有する。本実施形態においてカルシウムは、好ましくは天然水由来である。カルシウムが多く含有していると、飲用した場合に苦い塩味を感じることがあるが、所定範囲で存在することにより、後味にかすかな甘味を感じさせ、飲み心地の良さに影響を与える。本実施形態の容器詰炭酸飲料中のカルシウムの含有量は、好ましくは3ppm以上150ppm以下、更に好ましくは5ppm以上100ppm以下である。
【0016】
(マグネシウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、マグネシウムの含有量が1ppm以上50ppm以下であることが好ましい。本実施形態においてマグネシウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはマグネシウムを含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるマグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム,炭酸マグネシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてマグネシウムは、これらのマグネシウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは天然水を含有する。本実施形態においてマグネシウムは、好ましくは天然水由来である。マグネシウムが多く含有していると、飲用した場合に苦味を感じることがあるが、所定範囲で存在することにより、後味にかすかな苦味とキレを与え、カリウムの効果で心地よく変化した炭酸の刺激を増感させる。本実施形態の容器詰炭酸飲料中のマグネシウムの含有量は、好ましくは1ppm以上30ppm以下、更に好ましくは1ppm以上20ppm以下である。
【0017】
(シリカ)
本実施形態の容器詰発泡性飲料は、シリカの含有量が1ppm以上200ppm以下である。本発明においてシリカ(SiO2)は、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはシリカを含む天然水、海洋深層水や野菜・海藻・穀物エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本発明で用いることができるシリカとしては、例えば、天然水などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明においてシリカは、好ましくは天然水由来である。シリカが多く含有していると、飲用した場合に、まろやかさが感じられ、不快な炭酸の刺激を緩和させる。本実施形態の容器詰発泡性飲料中のシリカの含有量は、好ましくは5ppm以上120ppm以下、更に好ましくは10ppm以上100ppm以下である。
【0018】
((K+SiO2+Ca)/(Na+Mg))
本実施形態の容器詰炭酸飲料において、ナトリウム(Na)およびマグネシウム(Mg)の含有量(ppm)に対するカリウム(K)とシリカ(SiO2)とカルシウム(Ca)の含有量(ppm)の比((K+SiO2+Ca)/(Na+Mg))は10.0以上であり、好ましくは11.0以上であり、より好ましくは12.0以上である。((K+SiO2+Ca)/(Na+Mg))が上記下限値以上であることで、エグ味や後味の苦みが抑制され、おいしく飲用できる飲料となるとともに、さらに炭酸による口内や喉越しの刺激が適度に感じられ、嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料とすることができる。また、((K+SiO2+Ca)/(Na+Mg))は30.0以下であり、好ましくは29.0以下であり、より好ましくは28.0以下である。((K+SiO2+Ca)/(Na+Mg))が上記上限値以下であることで、炭酸による口内や喉越しの刺激が緩和され、連続して飲み込めるおいしく飲用でき嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料となる。
【0019】
(ガスボリューム)
本実施形態の炭酸飲料は、ガスボリュームが2.0以上であり、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがさらに好ましく、4.2以上であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記下限値以上であることで、開栓後時間をおいても炭酸感を維持できる。また、ミネラル成分を所定範囲に調整することにより炭酸の刺激や苦み、酸味がマイルドになり、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さやスッキリとした味わいを得ることができ、嗜好的に好ましい飲料とすることができる。本実施形態の炭酸飲料は、ガスボリュームが6.0以下であることが好ましく、5.8以下であることがさらに好ましく、5.5以下であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記上限値以下であることで、本実施形態の効果が効果的に発揮される。なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0020】
(浸透圧)
本実施形態の炭酸飲料は、浸透圧が9~33mOsm/Lであるが、喉の刺激の観点から、好ましくは10~30mOsm/L、より好ましくは10.5~25mOsm/Lである。浸透圧が上記下限値以上であることで、喉に流れた際の炭酸の程よい刺激が感じられ、おいしく飲用できる飲料となる。また、浸透圧が上記上限値以下であることで、喉に流れた際に流れた際に、喉の組織での水分移動を緩和し、和らいだ刺激の飲料となる。ここで、本発明において浸透圧は、氷点降下法により測定した値であり、浸透圧の測定には、例えば、浸透圧計OM802-D(朝日ライフサイエンス社製)を用いることができる。浸透圧は、液剤中の分子濃度により調整することができる。すなわち、ミネラル成分等の任意成分の配合量を適宜変更することにより調整することができる。
【0021】
(その他の成分)
本実施形態に係る炭酸飲料には、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、各種エステル類、着色料(色素)、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、乳化剤、保存料、調味料、香料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、ビタミン等の栄養機能成分、pH調整剤、品質安定剤等があげられる。これらを単独、又は併用して配合してもよい。本実施形態は、強い呈味を示す成分を添加しない炭酸飲料にて、より有効である。
【0022】
(水)
本実施形態に適した水としては、例えば、天然水、市水、井水、イオン交換水、脱気水等が挙げられるが、これらのうち天然水を用いるのが好ましい。天然水を用いることで、天然のシリカ等のミネラル成分を含有することができる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部または全てを脱気水とすることができる。
【0023】
(容器)
本実施形態の炭酸飲料は、容器に充填して提供される。ここで、本実施形態における容器詰飲料とは、飲料を容器に詰めて密封するとともに、除菌や殺菌などの微生物制御処理を施すことで長期の保存性を与えた飲料をいう。本実施形態において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
【0024】
(製造方法)
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、ナトリウム、カリウム、シリカ、カルシウムおよびマグネシウムを調整する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、所定量炭酸水素ナトリウムを添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌・溶解し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。また、殺菌など微生物制御の方法は飲料の配合内容や容器により適宜選択可能であり、容器充填前の飲料原液のフィルタによるろ過滅菌や加熱殺菌、容器充填後の加熱殺菌などを、単一で或いは組み合わせて採用できる。
【0025】
<用語の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意味を包含する。
【0026】
以上の容器詰炭酸飲料は無糖、無甘味かつ無果汁でガスボリュームが高い容器詰炭酸飲料であっても喉越しの刺激が緩和され、おいしく飲みやすいものとなる(本発明に係る容器詰炭酸飲料における呈味改善方法および喉越し改善方法に該当)。
【0027】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0028】
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0029】
<容器詰炭酸飲料の調製、製造方法>
[試料1~19]
下記の各原料を表1に示す配合で混合、溶解し、調合液を得た後、0.45μmのセルロースアセテートフィルタ(アドバンテック東洋社製)によるろ過滅菌を行った。得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが表1に示す値になるよう、カーボネーターで二酸化炭素を混合した後、洗浄殺菌済みの500mL容PETボトルに502±1mLとなるように充填し、容器詰炭酸飲料を得た。
【0030】
炭酸水素ナトリウム:重炭酸ナトリウム(トクヤマ社製)
塩化カリウム:塩化カリウム(多木食品社製)
塩化カルシウム:粒状塩化カルシウム(トクヤマ社製、二水和物)
塩化マグネシウム:クリスタリン(赤穂化成社製、六水和物)
天然水1:山口県で採取された天然水(ナトリウム6.7ppm、カリウム1.4ppm、カルシウム8.3ppm、マグネシウム1.2ppm、シリカ16ppm)
天然水2:群馬県で採取された天然水(ナトリウム8.3ppm、カリウム2.4ppm、カルシウム14.4ppm、マグネシウム3.1ppm、シリカ59ppm)
天然水3:フランスで採取された天然水(ナトリウム7.0ppm、カリウム1.0ppm、カルシウム80.0ppm、マグネシウム26.0ppm、シリカ15.4ppm)
【0031】
<試験例1>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1~19の各容器詰炭酸飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、FREE SHAKE V-CARBO(ビクスル社製,型式:DGV-1)を用いてガスボリュームを測定した。結果を表1に示す。
【0032】
<試験例2>ミネラル量の測定
(ナトリウム,カリウム)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰炭酸飲料を脱気して、原子吸光分光光度計「A A240FS」(Agilent Technologies社製)にて、ナトリウム(Na)、カリウム(K)の含有量を測定した。
(カルシウム,マグネシウム)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰炭酸飲料を脱気して、ICP発光分光分析装置(ICP-OES)「Vista-PRO」(Agilent Technologies社製)にて、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)の含有量を測定した。
(シリカ)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰炭酸飲料を脱気して、ICP発光分光分析装置(ICP-OES)「Vista-PRO」(Agilent Technologies社製)にて、ケイ素(Si)の含有量を測定した。シリカ(SiO2)の含有量は、「ケイ素(Si)含有量×28÷60」で算出した。
【0033】
<試験例3>官能評価
試料1~19の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、5℃に冷却したサンプル30mLを試飲することにより行った。(a)味わい、(b)口内の刺激の強さ、(c)喉越しの刺激の強さの3項目に関し、それぞれ示す対照、保管条件および評価基準にて、3段階にて評価した。評価人数の多かった点数を評点として採用し、評価人数が同数の場合はパネラー間の協議により評点を決定した。また、下記基準にて総合評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
=(a)味わい=
陰性対照:試料19
陽性対照:試料3(採点前の事前評価により決定)
評価基準:
3点:エグ味や厚味を感じず、爽快感を有する。陽性対照と同様。
2点:陽性対照と比べると、エグ味や厚味を若干感じるものの、スッキリ感は維持している。
1点:陰性対照と比べると、同程度にエグ味や厚味が強く、スッキリしない。
【0035】
=(b)口内の刺激の強さ=
陰性対照:試料18、試料19
陽性対照:試料3(採点前の事前評価により決定)
評価基準:
3点:適度に炭酸の発泡感(シュワシュワ感)を感じられ、口内がリフレッシュされる。陽性対照と同様。
2点:2a 陽性対照と比べると、刺激が強く、満足できる心地良さとは言えない/
2b 陽性対照と比べると、刺激が弱く物足りない。
1点:1a 陰性対照(試料18)と比べると、同程度に刺激が強過ぎて痛みを感じる/
1b 陰性対照(試料19)と比べると、同程度に刺激が感じられない。
【0036】
=(c)喉越しの刺激の強さ=
陰性対照:試料18、試料19
陽性対照:試料3(採点前の事前評価により決定)
評価基準:
3点:適度な刺激で飲み応えがあり、連続して飲み込める。陽性対照と同様。
2点:2a 陽性対照と比べると、刺激が強く、連続して飲み込めない/
2b 陽性対照と比べると、刺激が弱く物足りない。
1点:1a 陰性対照(試料18)と比べると、同程度に刺激が強過ぎて飲み込むのに抵抗を感じる/
1b 陰性対照(試料19)と比べると、同程度に刺激が感じられず、水のよう。
【0037】
=総合評価=
評価基準:
〇:(a)味わい、(b)口内の刺激の強さ及び(c)喉越しの刺激の強さの評価の和(a+b+c)が7点以上。
△:(a)味わい、(b)口内の刺激の強さ及び(c)喉越しの刺激の強さの評価の和(a+b+c)が4点を上回り7点未満。
×:(a)味わい、(b)口内の刺激の強さ及び(c)喉越しの刺激の強さの評価の和(a+b+c)が4点以下
【0038】
【0039】
表1に示すように、ミネラルの含有量が所定範囲にある容器詰炭酸飲料は、無糖、無甘味かつ無果汁でガスボリュームが高い容器詰炭酸飲料であっても喉越しの刺激が緩和され、おいしく飲みやすい飲料となった。