(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125123
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】コンクリート鋼管柱およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240906BHJP
E04C 3/36 20060101ALI20240906BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04B1/58 503M
E04C3/36
E04B1/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033250
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】辰濃 達
(72)【発明者】
【氏名】河本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】脇田 拓弥
【テーマコード(参考)】
2E125
2E163
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB13
2E125AC16
2E125AC29
2E163FA02
2E163FB09
2E163FD43
2E163FD52
2E163FF17
(57)【要約】
【課題】上側の鋼管に内蔵された上側の柱主筋と、下側の鋼管に内蔵された下側の柱主筋と、を容易に接合可能な、コンクリート鋼管柱を提供すること。
【解決手段】コンクリート鋼管柱2は、鋼管10、30と、鋼管10、30の内部に配筋された柱主筋20、40と、鋼管10、30の内部に構築されたコンクリート体50と、を備える。鋼管10、30は、下側の鋼管10と上側の鋼管30とが接合されて構成され、柱主筋20、40は、下側の柱主筋20と上側の柱主筋40とが機械式の継手部72で接合されて構成され、下側の柱主筋20は、下側の鋼管10に取り付けられた位置決め部材60で位置決めされており、上側の柱主筋40は、上側の鋼管30に取り付けられた位置決め部材70で位置決めされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、前記鋼管の内部に配筋された柱主筋と、前記鋼管の内部に構築されたコンクリート体と、を備えるコンクリート鋼管柱であって、
前記鋼管は、下側の鋼管と上側の鋼管とが接合されて構成され、
前記柱主筋は、下側の柱主筋と上側の柱主筋とが機械式の継手部で接合されて構成され、
前記下側の柱主筋は、前記下側の鋼管に取り付けられた位置決め部材で位置決めされており、
前記上側の柱主筋は、前記上側の鋼管に取り付けられた位置決め部材で位置決めされていることを特徴とするコンクリート鋼管柱。
【請求項2】
前記鋼管には、前記継手部の内部と前記鋼管の外部とを連通する注入ホースが設けられ、
前記継手部の上端に前記上側の柱主筋が挿入され、前記継手部の下端に前記下側の柱主筋が挿入された状態で、前記注入ホースを通して前記継手部内に充填材が注入されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート鋼管柱。
【請求項3】
鋼管と、前記鋼管の内部に配筋された柱主筋と、前記鋼管の内部に構築されたコンクリート体と、を備えるコンクリート鋼管柱の構築方法であって、
下側の鋼管の内部に下側の柱主筋を位置決め部材で位置決めしておくとともに、上側の鋼管の内部に上側の柱主筋を位置決め部材で位置決めしておき、
前記下側の柱主筋が内蔵された下側の鋼管を建て込む工程と、
前記下側の鋼管の上に、前記上側の柱主筋が内蔵された前記上側の鋼管を建て込んで、前記下側の柱主筋と前記上側の柱主筋を機械式の継手部で連結する工程と、
前記下側の鋼管と前記上側の鋼管とを溶接接合する工程と、
少なくとも前記下側の鋼管の内部にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とするコンクリート鋼管柱の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管に柱主筋が内蔵されたコンクリート鋼管柱およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼管の内部に柱主筋を配筋して、この鋼管の内部にコンクリートを打設することで構築された、コンクリート鋼管柱が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、鋼管内の中空に軸方向に鉄筋が挿入されて、コンクリートが充填された鉄筋内蔵コンクリート充填鋼管が示されている。鋼管内の開口付近には、開口を閉塞するリング板が固着され、このリング板の通し孔には、鉄筋が挿通されている。鋼管同士を軸方向に連結するにあたり、リング板の通し孔に自己鋼管の鉄筋だけではなく、相手方鋼管の鉄筋も挿通する。
【0003】
特許文献2には、鋼管内に筒状をなす骨組の鉄筋籠が配設され、鋼管同士を長手方向に接続した後に鋼管内部にコンクリートが打設される鋼管コンクリート柱の継手構造が示されている。鉄筋籠は、鋼管同士の接続の際に、鉄筋籠同士の端部を重ね合わせ可能とするように所定長だけ鋼管よりも長く形成されていると共に、鉄筋籠の一端部の外径が他端部の内径よりも小さくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-069570号公報
【特許文献2】特開2001-132103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上側の鋼管に内蔵された上側の柱主筋と下側の鋼管に内蔵された下側の柱主筋とを容易に接合可能な、コンクリート鋼管柱およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明のコンクリート鋼管柱(例えば、後述のコンクリート鋼管柱2)は、鋼管(例えば、後述の下側の鋼管10、上側の鋼管30)と、前記鋼管の内部に配筋された柱主筋(例えば、後述の下側の柱主筋20、上側の柱主筋40)と、前記鋼管の内部に構築されたコンクリート体(例えば、後述のコンクリート体50)と、を備えるコンクリート鋼管柱であって、前記鋼管は、下側の鋼管と上側の鋼管とが接合されて構成され、前記柱主筋は、下側の柱主筋と上側の柱主筋とが機械式の継手部(例えば、後述の継手部72)で接合されて構成され、前記下側の柱主筋は、前記下側の鋼管に取り付けられた位置決め部材(例えば、後述の下側の位置決め部材60)で位置決めされており、前記上側の柱主筋は、前記上側の鋼管に取り付けられた位置決め部材(例えば、後述の上側の位置決め部材70)で位置決めされていることを特徴とする。
【0007】
従来では、鉄筋コンクリート鋼管柱を構築する場合、上下の鋼管同士を溶接接合し、その後、別途接合した上下の柱主筋を鋼管内に挿入する方法があった。あるいは、上下の鋼管のそれぞれに上下の柱主筋を内蔵しておき、上側の鋼管を揚重機で吊り上げて下側の鋼管の直上に配置した後、上側の柱主筋を上側の鋼管から下方に突出させて下側の柱主筋に重ね継手で接合し、その後、上側の鋼管を下側の鋼管の上に吊り下ろして、上側の鋼管と下側の鋼管とを溶接接合する方法があった。
これに対し、この発明によれば、位置決め部材により上下の柱主筋を上下の鋼管に対して位置決めするとともに、上下の柱主筋の一方の端部に機械式の継手部を取り付けておく。そして、上側の鋼管を揚重機で吊り上げて下側の鋼管の上に載置することで、上下の柱主筋の他方の端部を継手部に挿入して接合する。よって、上側の鋼管に内蔵された上側の柱主筋と、下側の鋼管に内蔵された下側の柱主筋とを、継手部で容易に接合できる。
また、上下の柱主筋を上下の鋼管に位置決めする位置決め部材を設けたので、柱主筋を容易に位置決めできる。
また、工場にて、鋼管内部に柱主筋を設置したものをユニット化しておくことで、ユニット化した柱主筋および鋼管を容易に建設現場まで運搬して取り付けることができるから、コンクリート鋼管柱の施工効率を向上できる。
【0008】
第2の発明のコンクリート鋼管柱は、前記鋼管には、前記継手部の内部と前記鋼管の外部とを連通する注入ホース(例えば、後述の注入ホース73)が設けられ、前記継手部の上端に前記上側の柱主筋が挿入され、前記継手部の下端に前記下側の柱主筋が挿入された状態で、前記注入ホースを通して前記継手部内に充填材(例えば、後述のグラウト材75)が注入されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、鋼管に機械式の継手部の内部と鋼管外部とを連通する注入ホースを設けたので、上下の鋼管同士が密着した状態であっても、継手部の内部に充填材を注入して、上下の柱主筋を容易に接合できる。
【0010】
第3の発明のコンクリート鋼管柱の構築方法は、鋼管と、前記鋼管の内部に配筋された柱主筋と、前記鋼管の内部に構築されたコンクリート体と、を備えるコンクリート鋼管柱の構築方法であって、下側の鋼管(例えば、後述の下側の鋼管10)の内部に下側の柱主筋(例えば、後述の下側の柱主筋20)を位置決め部材(例えば、後述の下側の位置決め部材60)で位置決めしておくとともに、上側の鋼管(例えば、後述の上側の鋼管30)の内部に上側の柱主筋(例えば、後述の上側の柱主筋40)を位置決め部材(例えば、後述の上側の位置決め部材70)で位置決めしておき、前記下側の柱主筋が内蔵された下側の鋼管を建て込む工程(例えば、後述のステップS1)と、前記下側の鋼管の上に、前記上側の柱主筋が内蔵された前記上側の鋼管を建て込んで、前記下側の柱主筋と前記上側の柱主筋を機械式の継手部で連結する工程(例えば、後述のステップS2、S3)と、前記下側の鋼管と前記上側の鋼管とを溶接接合する工程(例えば、後述のステップS4)と、少なくとも前記下側の鋼管の内部にコンクリートを打設する工程(例えば、後述のステップS5)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、位置決め部材により上下の柱主筋を上下の鋼管に対して位置決めするとともに、上下の柱主筋の一方の端部に機械式の継手部を取り付けておく。そして、上側の鋼管を揚重機で吊り上げて下側の鋼管の上に載置することで、上下の柱主筋の他方の端部を継手部に挿入して接合する。よって、上側の鋼管に内蔵された上側の柱主筋と、下側の鋼管に内蔵された下側の柱主筋とを、容易に接合できる。
また、上下の柱主筋を上下の鋼管に位置決めする位置決め部材を設けたので、柱主筋を容易に位置決めできる。
また、工場にて、鋼管内部に柱主筋を設置したものをユニット化しておくことで、ユニット化した柱主筋および鋼管を容易に建設現場まで運搬して取り付けることができるから、コンクリート鋼管柱の施工効率を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上側の鋼管に内蔵された上側の柱主筋と下側の鋼管に内蔵された下側の柱主筋とを容易に接合可能な、コンクリート鋼管柱およびその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱が適用された柱梁架構の縦断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱のA-A断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱のB-B断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱のC-C断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱のD-D断面図である。
【
図6】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱の構築手順のフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱の構築手順の説明図(その1、下側鋼管ユニットの上に上側鋼管ユニットを建て込む状況)である。
【
図8】第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱の構築手順の説明図(その2、継手部にグラウト材を充填する状況)である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るコンクリート鋼管柱の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、上下の鋼管内に仮固定された位置決め部材を介して、上下の鋼管内の柱主筋同士が機械式の継手部で接合されるコンクリート鋼管柱、および、このコンクリート鋼管柱の構築方法である。鋼管側面で継手部近傍には、充填材用の注入孔が設けられる。本発明の第1実施形態は、鋼管内の各継手部について一つの注入孔を設けたものであり、第2実施形態は、鋼管内の複数の継手部について一つの注入孔を設け、これら複数の継手部同士を連結ホースで連結したものである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート鋼管柱が適用された柱梁架構1の縦断面図である。
図2は、
図1の柱梁架構1を構成するコンクリート鋼管柱2のA-A断面図である。
図3は、
図1のコンクリート鋼管柱2のB-B断面図である。
図4は、
図1のコンクリート鋼管柱2のC-C断面図である。
図5は、
図1のコンクリート鋼管柱2のD-D断面図である。なお、
図1では、後述の帯筋21、41の表示を省略している。
【0015】
柱梁架構1は、コンクリート鋼管柱2と、コンクリート鋼管柱2に接合された鉄骨梁3と、鉄骨梁3の上に構築されて鉄筋コンクリート造の床スラブ4と、を備える。
コンクリート鋼管柱2は、円筒形状の鋼管10、30に柱主筋20、40が内蔵されてコンクリートが充填されたものである。具体的には、コンクリート鋼管柱2は、円筒形状の下側の鋼管10と、下側の鋼管10に内蔵された下側の柱主筋20と、下側の柱主筋20に所定間隔おきに巻かれた下側の帯筋21(
図5参照)と、下側の鋼管10の上に接合された円筒形状の上側の鋼管30と、上側の鋼管30に内蔵されて下側の柱主筋20に機械式の継手部72で接合された上側の柱主筋40と、上側の柱主筋40に所定間隔おきに巻かれた上側の帯筋41(
図2参照)と、下側の鋼管10および上側の鋼管30の内部にコンクリートが充填されて構築されたコンクリート体50と、を備える。
【0016】
下側の鋼管10の上端側には、円環状の下側の位置決め部材60が仮固定されている。位置決め部材60には、複数の貫通孔61が形成されており、これら貫通孔61に下側の柱主筋20を挿通することで、下側の柱主筋20は、下側の鋼管10に対して位置決めされている。
【0017】
上側の鋼管30の下端側には、円環状の上側の位置決め部材70が取り付けられている。位置決め部材70には、複数の貫通孔71が形成されており、位置決め部材70の上面には、これら貫通孔71の連通する円筒形状の継手部72が溶接固定されている。上側の柱主筋40は、継手部72の上端に挿入されて固定されている。また、下側の柱主筋20は、位置決め部材70の貫通孔71に挿通されて、継手部72の下端に挿入されている。
【0018】
上側の鋼管30には、継手部72の下端側と上側の鋼管30の側面とを連通する注入ホース73と、継手部72の上端側と上側の鋼管30の側面とを連通する排出ホース74と、が取り付けられている。具体的には、上側の鋼管30の側面には、注入孔73aおよび排出孔74aが形成されており、注入ホース73は、注入孔73aに接続され、排出ホース74は、排出孔74aに接続されている。注入ホース73および排出ホース74は、各継手部72につき1本ずつ設けられている。
継手部72の上端に上側の柱主筋40が挿入されるとともに、継手部72の下端に下側の柱主筋20が挿入された状態で、注入ホース73を通して継手部72内に充填材としてのグラウト材75を注入して充填することで、下側の柱主筋20と上側の柱主筋40とが接合されている。
【0019】
下側の鋼管10の中間高さには、鉄骨梁3がボルト接合される梁継手部11が設けられている。梁継手部11は、下側の通しダイヤフラム12と、下側の通しダイヤフラム12の上に配置された上側の通しダイヤフラム13と、下側の鋼管10の側面でかつ下側の通しダイヤフラム12と上側の通しダイヤフラム13との間に設けられたガセットプレート14と、を備える。
通しダイヤフラム12、13には、円形の貫通孔15が形成されており、下側の柱主筋20は、この貫通孔15に挿通されている。また、この貫通孔15の内端縁には、スペーサ16が設けられており、下側の柱主筋20に巻かれた下側の帯筋21は、これらスペーサ16に当接している。これにより、帯筋21の下側の鋼管10に対するかぶり厚さが確保されている。
【0020】
鉄骨梁3は、略水平な下フランジ80と、下フランジ80の上に配置されて略水平な上フランジ81と、下フランジ80と上フランジ81とを連結するウエブ82と、を備える。鉄骨梁3のウエブ82と下側の鋼管10のガセットプレート14とを2枚のスプライスプレート83で挟み込んで、高力ボルト84を締め付けることで、鉄骨梁3と下側の鋼管10とが連結されている。
【0021】
以下、コンクリート鋼管柱2の構築手順について、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
予め、工場にて、下側の鋼管10に下側の柱主筋20を内蔵させて、下側鋼管ユニット5を製作しておく。具体的には、下側の鋼管10に位置決め部材60を取り付けて、この位置決め部材60の貫通孔61に下側の柱主筋20を挿通し、下側の柱主筋20に下側の帯筋21を配筋する。これにより、下側の柱主筋20が下側の鋼管10に対して位置決めされるとともに、下側の柱主筋20が下側の鋼管10の上端面から上方に突出した状態となる。
また、工場にて、上側の鋼管30に上側の柱主筋40を内蔵させて、上側鋼管ユニット6を製作しておく。具体的には、上側の鋼管30に位置決め部材70、継手部72、注入ホース73、および排出ホース74を取り付けて、この継手部72の上端に上側の柱主筋40を挿入し、上側の柱主筋40に上側の帯筋41を配筋する。これにより、上側の柱主筋40が上側の鋼管30に対して位置決めされる。
【0022】
ステップS1では、
図7に示すように、現場にて、下側鋼管ユニット5を建て込む。
ステップS2では、
図7に示すように、揚重機で上側鋼管ユニット6を揚重して、下側鋼管ユニット5の上に載置することで、下側鋼管ユニット5の下側の柱主筋20を上側鋼管ユニット6の継手部72の下端に挿入する。
ステップS3では、
図8中矢印Aで示すように、注入ホース73を通して継手部72内にグラウト材75を注入して充填する。このとき、
図8中矢印Bで示すように、排出ホース74からグラウト材75が排出されるまで、注入ホース73からグラウト材75を注入する。
ステップS4では、下側鋼管ユニット5の下側の鋼管10と上側鋼管ユニット6の上側の鋼管30とを溶接で接合する。
ステップS5では、下側の鋼管10および上側の鋼管30の内部にコンクリートを打設して、コンクリート体50を構築する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)位置決め部材60、70により上下の柱主筋20、40を上下の鋼管10、30に対して位置決めするとともに、上側の柱主筋40の下端部に機械式の継手部72を取り付けておく。そして、上側の鋼管30を揚重機で吊り上げて下側の鋼管10の上に載置することで、下側の柱主筋20の上端部を継手部72に挿入して接合する。よって、上側の鋼管30に内蔵された上側の柱主筋40と、下側の鋼管10に内蔵された下側の柱主筋20とを、継手部72で容易に接合できる。
また、上下の柱主筋20、40を上下の鋼管10、30に位置決めする位置決め部材60、70を設けたので、柱主筋20、40を容易に位置決めできる。
また、工場にて、下側の鋼管10の内部に下側の柱主筋20を設置したものをユニット化して下側鋼管ユニット5とし、上側の鋼管30の内部に上側の柱主筋40を設置したものをユニット化して上側鋼管ユニット6としたので、下側鋼管ユニット5および上側鋼管ユニット6を建設現場まで運搬して容易に取り付けることができるから、コンクリート鋼管柱2の施工効率を向上できる。
【0024】
〔第2実施形態〕
図9は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート鋼管柱2Aの縦断面図である。
本実施形態では、注入ホース73を各継手部72につき1本ではなく、複数の継手部72につき1本設け、これら複数の継手部72同士を連結ホース76で連結している点が、第1実施形態と異なる。
具体的には、互いに連結ホース76で連結された継手部72のうち水平方向両端に位置するものを、継手部72A、継手部72Bとする。継手部72Aの下端部には、注入ホース73が設けられ、継手部72Bの上端部には、排出ホース74が設けられている。
本実施形態では、注入ホース73を通して継手部72A内にグラウト材75を注入することで、グラウト材75が連結ホース76を通って各継手部72内に充填されて、排出ホース74から排出される。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上述の実施形態では、上側の鋼管30の下端側に上側の位置決め部材70を取り付け、この上側の位置決め部材70の上面に継手部72を溶接固定したが、これに限らず、下側の鋼管10の上端側に下側の位置決め部材60を取り付け、この下側の位置決め部材60の下面に継手部72を溶接固定してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…柱梁架構 2、2A…コンクリート鋼管柱 3…鉄骨梁 4…床スラブ
5…下側鋼管ユニット 6…上側鋼管ユニット
10…下側の鋼管 11…梁継手部 12…下側のダイヤフラム
13…上側のダイヤフラム 14…ガセットプレート 15…貫通孔
16…スペーサ
20…下側の柱主筋 21…下側の帯筋 30…上側の鋼管
40…上側の柱主筋 41…上側の帯筋 50…コンクリート体
60…下側の位置決め部材 61…貫通孔
70…上側の位置決め部材 71…貫通孔 72…継手部
73…注入ホース 73a…注入孔 74…排出ホース 74a…排出孔
75…グラウト材(充填材) 76…連結ホース
80…下フランジ 81…上フランジ 82…ウエブ
83…スプライスプレート 84…高力ボルト