(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125146
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20240906BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240906BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240906BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20240906BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20240906BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240906BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
C22B7/00 C
C22B1/00 601
C22B3/06
C22B3/44 101Z
C22B26/12
H01M10/54
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142017
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】112107720
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523333685
【氏名又は名称】優勝新能源再生科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】許景翔
(72)【発明者】
【氏名】胡家豪
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
4K001DB05
5H031RR02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法を提供する。
【解決手段】方法は、i)リン酸鉄リチウム電池廃棄物を含む第1の粉末を提供する工程と、ii)前記第1の粉末から銅及びアルミニウムを除去して、第2の粉末を得る工程と、iii)工程ii)において得られる前記第2の粉末を硝酸に溶解して、溶液を得る工程と、iv)工程iii)において得られる前記溶液に炭酸を添加して、炭酸リチウムの沈殿を分離する工程と、v)工程iv)の残りの溶液を真空蒸留によって除去して、硝酸第二鉄結晶を得る工程と、を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法であって、
i)リン酸鉄リチウム電池廃棄物を含む粉末を提供する工程と、
ii)前記粉末から銅とアルミニウムとを除去する工程と、
iii)工程ii)の前記粉末を硝酸に溶解して、溶液を得る工程と、
iv)工程iii)の前記溶液に炭酸を添加して、炭酸リチウムの沈殿を分離する工程と、
v)工程iv)の残りの前記溶液を真空蒸留によって除去して、硝酸第二鉄結晶を得る工程と、を備えるリサイクル方法。
【請求項2】
前記銅は、工程ii)において、比重選別によって工程ii)の前記粉末から除去される、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項3】
前記アルミニウムは、ソーティンガー磁力選別機によって工程ii)の前記粉末から除去されて、前記アルミニウムは、工程ii)において前記銅が除去された後に除去される、請求項1又は2に記載のリサイクル方法。
【請求項4】
工程iii)において、前記硝酸の濃度は1M~10Mの間であり、前記硝酸の前記第2の粉末に対する液体-固体比(mL:g)は、1:1~5:1の間であり、工程iii)において、溶解温度は、15℃~90℃の間である、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項5】
工程iii)の前記粉末におけるリチウム及び鉄の抽出率は、99重量%より大きい、請求項4に記載のリサイクル方法。
【請求項6】
前記炭酸リチウムの沈殿を金属リチウムに還元する工程である工程iv-1)をさらに備える、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項7】
工程iv)は、50℃~80℃の間の温度において実行される、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項8】
工程iv)のリチウムリサイクル率が94重量%以上である、請求項7に記載のリサイクル方法。
【請求項9】
前記硝酸第二鉄結晶を金属鉄に還元する工程v-1)をさらに備える、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項10】
工程v)の前記真空蒸留は、約-93.33kPa~約-99.99kPa(-700Torr~-750Torr)の真空度、及び50℃~90℃の温度において実行される、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項11】
工程v)の鉄リサイクル率が99重量%以上である、請求項10に記載のリサイクル方法。
【請求項12】
工程v)において得られる蒸留液が硝酸水溶液である、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項13】
工程i)の前記粉末は、前記リン酸鉄リチウム電池廃棄物の放電、破砕、及び粉砕のうちの少なくとも1つにより得られる、請求項1に記載のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法に関し、特に、リン酸鉄リチウム電池廃棄物における銅、アルミニウム、リチウム、及び鉄等の有価金属をリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸鉄リチウム(LiFePO4、リン酸鉄リチウム、リチウム鉄リンとしても知られており、LFPと略される)は、リチウムイオン電池の正極/カソード材料である。リン酸鉄リチウムを正極材料として、炭素を負極材料として使用する電池は、リン酸鉄リチウム電池又はリチウムイオン電池と称されている。そうした電池の特性は、コバルト等の貴金属を含まないことである。さらに、リン及び鉄は、地球に多量に存在し、それらの価格は低く、それらは不足問題を有しない。リン酸鉄リチウム電池は、使用電圧が3.3V、電池容量が170mAh/gであり、放電電力が高く、急速充電特性を有し、サイクル寿命が長く、高温における安定性が高い。
【0003】
リン酸鉄リチウム電池は、コストが低く(コバルトなし)、安全性が高いという利点のために、電気自動車のパワー電池において広範に使用されている。使用量が増加するにつれて、大量の廃棄物が自ずと発生する。SDGs(sustainable development goals)を達成するとともに、原鉱の採掘が環境を損壊することを避けるために、リサイクルされた材料を電池製品に使用することに関する基準が国際的に策定され始めている。現在、リン酸鉄リチウム電池廃棄物をリサイクルする一般的な方法は、燃焼法及び湿式法を含む。燃焼法は、廃棄物を1000℃~2000℃の高温において燃焼させて、溶融して金属合金にして、次いで、様々な金属を分離するとともにリサイクルする。燃焼法は、全体のリサイクル率がわずか32%-50%であり、プロセスが煩雑であり、エネルギーを消費する。これに加えて、プロセス中に大量の二酸化炭素又は有毒ガスが生成され得る。湿式法は、リン酸鉄リチウム電池の正極材料を分解して、リン酸、塩酸、及び過酸化水素等の溶媒を用いて電極からリチウムイオン及び鉄イオンを溶解して、次いで、それらを沈殿法によってリサイクルするものである。湿式法は、リサイクル率が高い(<70%)が、電池廃棄物を分解するために余分な工程を必要とする。余分な工程は、追加の労力を必要とし、非常に時間がかかる。さらに、湿式法においては、リン酸、塩酸及び過酸化水素等の溶媒が大量に使用され得る。溶解プロセス中に、大量の有毒な刺激性のガスが生成され得、これは環境に優しくない。
【0004】
したがって、操作が容易で、安全で、環境に優しく、リサイクル率が高い、リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法を提供する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の一実施形態に従った、リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法が提供される。リサイクル方法は、i)リン酸鉄リチウム電池廃棄物を含む粉末を提供する工程と、ii)前記粉末から銅とアルミニウムとを除去する工程と、iii)工程ii)の前記粉末を硝酸に溶解して、溶液を得る工程と、iv)工程iii)の前記溶液に炭酸を添加して、炭酸リチウムの沈殿を分離する工程と、v)工程iv)の残りの前記溶液を真空蒸留によって除去して、硝酸第二鉄結晶を得る工程と、を備える。
【0007】
一実施形態では、前記銅は、工程ii)において、比重選別によって工程ii)の前記粉末から除去される。
一実施形態では、前記アルミニウムは、ソーティンガー(Sortinger)磁力選別機によって工程ii)の前記粉末から除去されて、前記アルミニウムは、工程ii)において前記銅が除去された後に除去される。
【0008】
一実施形態では、工程iii)において添加される前記硝酸の濃度は、1M~10Mの間であり、前記硝酸の前記第2の粉末に対する液体-固体比(mL:g)は、1:1~5:1の間であり、工程iii)において、溶解温度は、15℃~90℃である。
【0009】
一実施形態では、工程iii)の前記粉末におけるリチウム及び鉄の抽出率は、99重量%より大きい。
一実施形態では、前記リサイクル方法は、前記炭酸リチウムの沈殿を金属リチウムに還元する工程である工程iv-1)をさらに備える。
【0010】
一実施形態では、工程iv)は、50℃~80℃の間の温度において実行される。
一実施形態では、工程iv)のリチウムリサイクル率が94重量%以上である。
一実施形態では、前記リサイクル方法は、前記硝酸第二鉄結晶を金属鉄に還元する工程v-1)をさらに備える。
【0011】
一実施形態では、工程v)の前記真空蒸留は、約-93.33kPa~約-99.99kPa(-700Torr~-750Torr)の真空度及び、50℃~90℃の温度において実行される。
【0012】
一実施形態では、工程v)の鉄リサイクル率が99重量%以上である。
一実施形態では、工程v)において得られる蒸留液が硝酸水溶液である。
一実施形態では、工程i)の前記粉末は、前記リン酸鉄リチウム電池廃棄物の放電、破砕、及び粉砕のうちの少なくとも1つにより得られる。
【0013】
本発明の上記及び他の態様をより明確に及びより理解しやすくするために、以下の特定の実施形態が添付の図面と併せて詳細に説明されている。
本発明の一実施形態に従った、リン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法のフローチャートを示す
図1を参照されたい。本発明のリン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法は、比重選別(S01)と、ソーティンガー磁力選別機(S02)と、酸溶解(S03)と、金属リチウム沈殿(S04)と、金属鉄結晶化(S05)とを含む5つの工程を備えてよい。リン酸鉄リチウム電池廃棄物が本発明のリサイクル方法によって処理された後、そこに含まれている有価金属(銅、アルミニウム、リチウム、鉄等)は、効果的に回収/リサイクルされることが可能である。複数の例が下記に詳細に説明されている。
【0014】
リン酸鉄リチウム電池廃棄物
本実施形態のリン酸鉄リチウム電池廃棄物は、粉末状であり、粉末の供給源は、民間のリサイクル場である。民間のリサイクル場は、リン酸鉄リチウム電池廃棄物を収集して、予備スクリーニング及び放電プロセスの後に、該電池廃棄物は、破砕(crushing)、粉砕(pulverization)、及びミンチ(mincing)等の物理的破壊方法によって粉末に変形され得る(いくつかの実施形態では、スクリーニングプロセスは、破壊プロセスの後である)。スクリーニングプロセスにおいては抜け落ちの可能性があり、リサイクル場は、一般に、電池を入念に分解しないので、収集された廃棄物粉末は、電解質、負極材料、又は他のタイプの電池等の不純物を含み得る。
【0015】
引き続いての各金属のリサイクル率の計算を容易にするために、粉末中の回収/リサイクル対象の金属(有価金属)の組成分析が第一に行われる。分析方法は、既知の王水分解法である。係る方法は、分析対象の試料(すなわち、廃棄物粉末)を王水(塩酸と硝酸との3:1混合物)で処理して、この試料溶液を加熱して、マイクロ波分解炉において分解。誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を使用して、分解された試料溶液中の測定量の元素(有価金属)を測定した。粉末中の回収/リサイクル対象の金属の含有量を定量化することが可能である限り、また他の組成分析法も使用されることが可能である。本実施形態のリン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末の有価金属含有量を下記テーブル1において示す。
【0016】
テーブル1 リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末の有価金属含有量
【0017】
【0018】
テーブル1から理解されるように、有価金属(リチウム、鉄、銅、及びアルミニウム)の含有量は、本実施形態のリン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末中の約32.7%を占めるに過ぎない。廃棄物粉末の残りは、不純物である。
【0019】
脱銅
次に、工程S01において示されるように、リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末中の銅を比重選別によって除去する。
【0020】
リン酸鉄リチウム(LiFePO4)の密度は1.5g/cm3であり、アルミニウムの密度は2.7g/cm3であり、銅の密度は8.9g/cm3である。これら3つの金属の密度が非常に異なるため、最も高い密度を有する銅を比重選別によって効果的に除去することが可能である。残りの固体粉末は、リン酸鉄リチウムとアルミニウムとを含有する。
【0021】
係る例において使用される比重選別法は、振動選別法である。3°~5°の傾斜角度を有する台上に粉末を配置して、18Hz~22Hzの振動周波数において選別を実施して、脱銅後の粉末を得ることが可能である。王水分解法を再度使用して、残りの粉末中の銅含有量を測定して、次いで銅リサイクル率を計算することが可能である。銅リサイクル率の計算式は、[1-((脱銅後の粉末の銅含有量)/(リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末の銅含有量))]×100%である。本実施形態の比重選別の作動パラメータ及び銅リサイクル率を下記テーブル2において示す。
【0022】
テーブル2 比重選別による脱銅の結果
【0023】
【0024】
テーブル2から理解されるように、比重選別法によって、最も高い密度を有する銅が効果的に除去されることが可能であり、リサイクル率は99%よりも高い。しかしながら、本発明は脱銅方法を制限しない。本実施形態において使用される比重選別法に加えて、リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末中の銅が効果的に除去される限り、また他の脱銅方法も使用されることが可能である。
【0025】
脱アルミニウム
次に、工程S02において示されるように、リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末中のアルミニウムをソーティンガー磁力選別機によって除去する。
【0026】
リン酸鉄リチウムの導電率は非常に低い(約10-9S/cm)が、アルミニウムは良導体(導電率が約37.8×104S/cmである)である。導電性物質は、磁場中を移動することが可能であるので、アルミニウムを磁場により効果的に除去することが可能であり、残りの固体粉末がリン酸鉄リチウムである。
【0027】
係る例では、工程S01における脱銅の後の粉末をソーティンガー磁力選別機の中に入れて、搬送速度を20m/分-100m/分、ベルトの回転数を2000rpm未満に制御する。次いで、廃棄物粉末からアルミニウムを除去するために、タービン出力を調整する。残りの粉末中のアルミニウム含有量を再度、王水分解法によって測定して、次いでアルミニウムのリサイクル率を計算する。アルミニウムリサイクル率の計算式は、[1-((脱アルミニウムの後の粉末のアルミニウム含有量)/(リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末のアルミニウム含有量))]×100%である。本実施形態のソーティンガー磁力選別機の作動パラメータ及びアルミニウムリサイクル率を下記テーブル3において示す。
【0028】
テーブル3 ソーティンガー磁力選別機による脱アルミニウムの結果
【0029】
【0030】
テーブル3から理解されるように、ソーティンガー磁力選別機によって高い導電率のアルミニウムが効果的に除去されることが可能であり、リサイクル率は97%よりも高い。しかしながら、本発明はアルミニウムを除去する方法を制限しない。係る実施形態において使用されるソーティンガー磁力選別機法に加えて、リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末中のアルミニウムが効果的に除去されることが可能である限り、また他の脱アルミニウム方法も使用されることが可能である。
【0031】
また銅も高い電気伝導率を有する金属であるので、係る実施形態では、銅は、ソーティンガー磁力選別機による脱アルミニウムの前に除去される必要がある。
酸溶解
次に、工程S03において示されるように、リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末(銅及びアルミニウムが除去された)を硝酸に溶解する。
【0032】
様々な操作条件の含浸法を使用して、リン酸鉄リチウムを硝酸に効果的に溶解して、抽出液を得ることが可能である。酸溶解の操作条件を下記テーブル4に示し、そこでリチウム/鉄の抽出率の計算式は、((硝酸抽出溶液中のリチウム/鉄含有量)/(リン酸鉄リチウム廃棄物粉末のリチウム/鉄含有量))×100%である。
【0033】
テーブル4 リン酸鉄リチウム電池の酸溶解の操作条件および結果
【0034】
【0035】
テーブル4から理解されるように、リン酸鉄リチウムは、15℃~90℃まで及ぶ異なる温度、1M~10Mまで及ぶ異なる濃度、及び1:1~5:1までの様々な液体-固体比(mL:g)において硝酸に容易に溶解し、抽出率が高い(>99%)。例えば、条件Cでは、室温においてさえリチウム及び鉄の高い抽出率が得られることが可能であることが示されるが、その場合、長い時間がかかる。条件Dでは、加熱温度と抽出時間との間のより良いバランスが達成されて、またリチウム及び鉄の高い抽出率も得ることが可能である。
【0036】
リチウムのリサイクル
次に、工程S04において示されるように、酸溶解工程S03の抽出液に対して炭酸を添加する。炭酸は、リチウムイオンと反応して、固体の炭酸リチウムの沈殿を形成し得るので、第二鉄イオンが液相抽出液中に残り得る。炭酸リチウムの沈殿の反応式は、次のとおりである。
【0037】
2Li++Fe3++2NO3
-+H2CO3→Li2CO3↓+Fe3++2HNO3
沈殿反応の結果をテーブル5において示す。リチウムリサイクル率の計算式は、[1-((炭酸リチウム沈殿後の抽出液のリチウム含有量)/(リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末のリチウム含有量))]×100%である。
【0038】
テーブル5 沈殿反応によるリチウムのリサイクルの結果
【0039】
【0040】
テーブル5において示されるように、沈殿反応の温度が高いほど、反応の平衡が右側により向かい、より高いリチウムリサイクル率を得ることが可能である。好ましくは、工程S04における沈殿反応の温度は、50℃~80℃の間であり、リチウムリサイクル率は、94%以上である。
【0041】
工程S04の抽出液を濾過して、炭酸リチウムの沈殿を得ることが可能である。炭酸リチウム中の金属リチウムを還元反応によってリサイクルすることが可能である。
鉄のリサイクル
最後に、工程S05において示されるように、工程S04の残りの液相抽出液を減圧蒸留し、溶媒を除去して、金属鉄をリサイクルするための硝酸第二鉄Fe(NO3)3結晶を得る。抽出液中の溶媒を真空蒸留によって除去することが可能であり、過剰な硝酸イオンを蒸留して硝酸水溶液(蒸留液)を得ることが可能であり、この硝酸水溶液を再利用可能である。残りの固体結晶は、硝酸第二鉄である。真空蒸留による鉄のリサイクルの作動パラメータ及び結果についてのテーブル6を参照されたい。鉄リサイクル率の計算についての式は、[1-((蒸留液の鉄含有量)/(リン酸鉄リチウム電池廃棄物粉末の鉄含有量))]×100%である。
【0042】
テーブル6 真空蒸留による鉄のリサイクルの結果
【0043】
【0044】
真空度は、実際の空気圧と1気圧(約101.3kPa(760Torr))との間の差を表す。テーブル6において示されるように、真空度が低いほど(実際の空気圧がより低い)、必要とされる加熱温度がより低い。一方、真空度が高いほど、空気圧が1気圧により近く、より高い加熱温度が必要とされる。好ましくは、真空蒸留工程の真空度は、約-93.33kPa~約-99.99kPa(-700Torr~-750Torr)の間であり、加熱温度は50℃~90℃の間である。
【0045】
リサイクルの目的を達成するように、工程S05において得られる硝酸第二鉄結晶を、さらに、還元反応に供して、金属鉄を得ることが可能である。
本発明の実施形態に従ったリン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法では、乾式/湿式法の2つのリサイクル方法が組み合わされる。乾式法は、
図1の工程S01(比重選別)とS02(ソーティンガー磁力選別機)とにおいて示されるようなものであり、それによって銅及びアルミニウムを物理的に除去する。湿式法は、
図1の工程S03において示されるようなものであり、リン酸鉄リチウム電池廃棄物を酸性溶液に浸して、次いでリン酸鉄リチウムを溶解する。テーブル7は、本発明の酸溶解工程と従来のリサイクル方法との間の比較を示す。
【0046】
テーブル7 本発明の実施形態に従ったリサイクル方法と従来の湿式法との間の比較
【0047】
【0048】
テーブル7に示されるように、従来の湿式法と比較して、本発明の酸溶解工程S03では、銅及びアルミニウム等の不純物がより早く除去されるため、より低い温度において実施されることが可能である。さらにまた、該工程は、リサイクル時間がより短く、抽出率がより高く、廃水及び刺激性/有毒ガスが生成せず、環境により優しい。
【0049】
本発明の実施形態に従ったリン酸鉄リチウム電池をリサイクルする方法は、リン酸鉄リチウム電池廃棄物を効果的に回収することが可能である。電池の正極を分解する必要がないので、該プロセスは、大量生産により適している。係る方法は、有価金属(銅、アルミニウム、リチウム、及び鉄)について高いリサイクル率を有し、平均リサイクル率は94%超である。このリサイクル率は、従来の湿式法よりもより良い。加えて、係るリサイクル方法では、第一に銅及びアルミニウムを除去するために、物理的方法を使用し、含浸法において使用する酸の量を非常に減少させることが可能である。該方法は、比較的毒性がなく、エネルギー消費量が低く、炭素排出量が低いリサイクル方法であり、現在の環境保護の要求及び炭素削減のトレンドに適うものである。その上さらに、含浸法において使用される硝酸を続く真空蒸留プロセスにおいてリサイクルすることが可能であり、それにより廃水を減少させるとともに、持続可能な生産を達成する。
【0050】
本発明は、実施形態を用いて上記に開示されているが、それらは本発明を限定することを意図していない。当業者は、上記の教示を参照した後に、上記の実施形態の内容に対して適切に修正することが可能であり、それでもなお本出願において特許請求される効果を達成することが可能であるものである。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従って決定されるものである。
【外国語明細書】