(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125148
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】内視鏡先端部、内視鏡、及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240906BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/018 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147545
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】63/449,648
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 高広
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161BB03
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF35
4C161FF40
4C161HH24
4C161HH51
4C161JJ11
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させること。
【解決手段】内視鏡先端部10は、所定の3次元領域を撮像する撮像装置14と、所定の回動範囲RAで回動可能に設けられ、処置具に当接して処置具の突出方向を調整する処置具起上台13とを備える。撮像装置14の位置は、所定の回動範囲RAのいずれの位置に処置具起上台13が位置している場合でも処置具起上台13の一部が所定の3次元領域に入るように設定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の3次元領域を撮像する撮像装置と、
所定の回動範囲で回動可能に設けられ、処置具に当接して前記処置具の突出方向を調整する処置具起上台とを備え、
前記撮像装置の位置は、
前記所定の回動範囲のいずれの位置に前記処置具起上台が位置している場合でも、前記処置具起上台の一部が前記所定の3次元領域に入るように設定されている内視鏡先端部。
【請求項2】
前記処置具起上台の一部は、
前記処置具起上台の先端である請求項1に記載の内視鏡先端部。
【請求項3】
前記撮像装置の先端は、
前記処置具起上台の先端よりも基端側に配置される請求項2に記載の内視鏡先端部。
【請求項4】
前記処置具起上台は、
前記処置具起上台の先端における前記所定の回動範囲で回動する際の軌道が前記所定の3次元領域を横切るように配置される請求項3に記載の内視鏡先端部。
【請求項5】
前記所定の3次元領域を前記撮像装置の光軸に直交する平面で切断した断面は、
第1の位置、第2の位置、及び第3の位置の順に並ぶ円弧を含み、
前記第2の位置は、
前記第1の位置、前記第2の位置、及び前記第3の位置のうち、前記光軸に最も近い請求項4に記載の内視鏡先端部。
【請求項6】
前記所定の3次元領域を前記撮像装置の光軸に直交する平面で切断した断面は、
前記光軸を挟んで互いに対向する2個の前記円弧を含む請求項5に記載の内視鏡先端部。
【請求項7】
先端に内視鏡先端部が設けられ、被検体内に挿入される挿入部を備え、
前記内視鏡先端部は、
所定の3次元領域を撮像する撮像装置と、
所定の回動範囲で回動可能に設けられ、処置具に当接して前記処置具の突出方向を調整する処置具起上台とを備え、
前記撮像装置の位置は、
前記所定の回動範囲のいずれの位置に前記処置具起上台が位置している場合でも、前記処置具起上台の一部が前記所定の3次元領域に入るように設定されている内視鏡。
【請求項8】
被検体内に挿入され、前記被検体内を撮像して画像信号を出力する挿入部と、
前記画像信号を処理して内視鏡画像を生成する画像処理装置と、
前記内視鏡画像を表示する表示装置とを備え、
前記挿入部の先端には、
内視鏡先端部が設けられ、
前記内視鏡先端部は、
前記被検体内を撮像する撮像装置と、
所定の回動範囲で回動可能に設けられ、処置具に当接して前記処置具の突出方向を調整する処置具起上台とを備え、
前記撮像装置の位置は、
前記所定の回動範囲のいずれの位置に前記処置具起上台が位置している場合でも、前記処置具起上台の一部が前記内視鏡画像に写り込むように設定されている内視鏡システム。
【請求項9】
前記処置具起上台の一部は、
前記処置具起上台の先端である請求項8に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記撮像装置の先端は、
前記処置具起上台の先端よりも前記挿入部の挿入方向の基端側に配置される請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記処置具起上台は、
前記処置具起上台の先端における前記所定の回動範囲で回動する際の軌道が前記内視鏡画像に写り込むように配置される請求項10に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記内視鏡画像は、
上辺、下辺、左辺、及び右辺を有する形状の画像であり、
前記軌道は、
前記内視鏡画像において、前記左辺または前記右辺に沿って写り込む請求項11に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記軌道は、
前記内視鏡画像を前記上辺または前記下辺に沿って第1の領域、第2の領域、第3の領域、及び第4の領域の4つの領域に4等分した場合に、前記左辺に沿う前記第1の領域、または前記右辺に沿う第4の領域に写り込む請求項12に記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記軌道のうち、前記下辺に最も近い位置は、
前記上辺に最も近い位置よりも、前記内視鏡画像の中央に近い位置に写り込む請求項13に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡先端部、内視鏡、及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟で細長い挿入部を人等の被検体内に挿入し、当該被検体内を観察する内視鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の内視鏡では、挿入部の先端には、以下に示す処置具起上台及び撮像装置が設けられている。
処置具起上台は、回動することによって挿入部の長手方向に対して起上した起上状態、または倒置した倒置状態に設定され、当該挿入部に挿通された処置具に当接して当該処置具の当該挿入部からの突出方向を調整する。
撮像装置は、被写体像を撮像し、当該撮像に応じた画像信号を出力する。当該画像信号は、内視鏡外部のビデオプロセッサに入力される。そして、当該ビデオプロセッサは、画像信号を処理することによって、内視鏡画像を生成するとともに、当該内視鏡画像を表示装置に表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡では、処置具起上台の回動位置によっては、当該処置具起上台が内視鏡画像に写り込まなくなる場合がある。このように、処置具起上台が内視鏡画像に写り込んでいない場合には、当該内視鏡画像から処置具の位置や姿勢を把握することが難しく、当該処置具による処置を行うことができない場合もある。すなわち、利便性を向上させることが難しい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利便性を向上させることができる内視鏡先端部、内視鏡、及び内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内視鏡先端部は、所定の3次元領域を撮像する撮像装置と、所定の回動範囲で回動可能に設けられ、処置具に当接して前記処置具の突出方向を調整する処置具起上台とを備え、前記撮像装置の位置は、前記所定の回動範囲のいずれの位置に前記処置具起上台が位置している場合でも、前記処置具起上台の一部が前記所定の3次元領域に入るように設定されている。
【0007】
本発明に係る内視鏡は、先端に内視鏡先端部が設けられ、被検体内に挿入される挿入部を備え、前記内視鏡先端部は、所定の3次元領域を撮像する撮像装置と、所定の回動範囲で回動可能に設けられ、処置具に当接して前記処置具の突出方向を調整する処置具起上台とを備え、前記撮像装置の位置は、前記所定の回動範囲のいずれの位置に前記処置具起上台が位置している場合でも、前記処置具起上台の一部が前記所定の3次元領域に入るように設定されている。
【0008】
本発明に係る内視鏡システムは、被検体内に挿入され、前記被検体内を撮像して画像信号を出力する挿入部と、前記画像信号を処理して内視鏡画像を生成する画像処理装置と、前記内視鏡画像を表示する表示装置とを備え、前記挿入部の先端には、内視鏡先端部が設けられ、前記内視鏡先端部は、前記被検体内を撮像する撮像装置と、所定の回動範囲で回動可能に設けられ、処置具に当接して前記処置具の突出方向を調整する処置具起上台とを備え、前記撮像装置の位置は、前記所定の回動範囲のいずれの位置に前記処置具起上台が位置している場合でも、前記処置具起上台の一部が前記内視鏡画像に写り込むように設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る内視鏡先端部、内視鏡、及び内視鏡システムによれば、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る内視鏡システムを示す図である。
【
図2】
図2は、内視鏡先端部の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、内視鏡先端部の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、撮像装置の観察視野を示す図である。
【
図5】
図5は、観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係の第1の例を示す図である。
【
図6】
図6は、観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係の第1の例を示す図である。
【
図7】
図7は、観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係の第2の例を示す図である。
【
図8】
図8は、観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係の第2の例を示す図である。
【
図9】
図9は、観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係の第3の例を示す図である。
【
図10】
図10は、観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一符号を付している。
【0012】
〔内視鏡システムの概略構成〕
図1は、実施の形態に係る内視鏡システム1を示す図である。
内視鏡システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波診断を行うシステムである。この内視鏡システム1は、
図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、内視鏡観察装置4と、表示装置5とを備える。
【0013】
超音波内視鏡2は、本発明に係る内視鏡に相当する。この超音波内視鏡2は、一部を被検体内に挿入可能とし、当該被検体内の体壁に向けて超音波パルスを送信するとともに当該被検体によって反射された超音波エコーを受信してエコー信号を出力する機能、及び当該被検体内を撮像することで画像信号を出力する機能を有する。
なお、超音波内視鏡2の詳細な構成については、後述する「超音波内視鏡の構成」において説明する。
本実施の形態では、本発明に係る内視鏡として、超音波内視鏡2を採用したが、これに限らず、十二指腸内視鏡等の超音波探触子11を有さない内視鏡を採用しても構わない。
【0014】
超音波観測装置3は、超音波ケーブル31(
図1)を経由して超音波内視鏡2に電気的に接続し、当該超音波ケーブル31を経由して当該超音波内視鏡2にパルス信号を出力するとともに当該超音波内視鏡2からエコー信号を入力する。そして、超音波観測装置3では、当該エコー信号に所定の処理を施すことで超音波画像を生成する。
内視鏡観察装置4には、超音波内視鏡2の後述する内視鏡用コネクタ9(
図1)が着脱自在に接続される。この内視鏡観察装置4は、
図1に示すように、ビデオプロセッサ41と、光源装置42とを備える。
【0015】
ビデオプロセッサ41は、本発明に係る画像処理装置に相当する。このビデオプロセッサ41は、内視鏡用コネクタ9を経由して超音波内視鏡2からの画像信号を入力する。そして、ビデオプロセッサ41は、当該画像信号に所定の処理を施して内視鏡画像を生成する。
光源装置42は、内視鏡用コネクタ9を経由して被検体内を照明する照明光を超音波内視鏡2に供給する。
【0016】
表示装置5は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)を用いたディスプレイであり、超音波観測装置3によって生成された超音波画像や、内視鏡観察装置4によって生成された内視鏡画像等を表示する。
【0017】
〔超音波内視鏡の構成〕
超音波内視鏡2は、
図1に示すように、挿入部6と、操作部7と、ユニバーサルコード8と、内視鏡用コネクタ9とを備える。
なお、以下に記載する「先端側」は、挿入部6の先端側(被検体内への挿入方向の先端側)を意味する。また、以下に記載する「基端側」は、挿入部6の先端から離間する側を意味する。
【0018】
挿入部6は、被検体内に挿入される部分である。この挿入部6は、
図1に示すように、内視鏡先端部10と、湾曲部61と、可撓管62とを備える。
ここで、挿入部6、操作部7、ユニバーサルコード8、及び内視鏡用コネクタ9の内部には、光源装置42から供給された照明光を伝送するライトガイドLG(
図3参照)と、上述したパルス信号及びエコー信号を伝送する振動子ケーブル(図示略)と、画像信号を伝送する信号ケーブル(図示略)とが引き回されているとともに、流体を流通させるための管路(図示略)が設けられている。
【0019】
内視鏡先端部10は、挿入部6の先端に設けられている。
なお、内視鏡先端部10の詳細な構成については、後述する「内視鏡先端部の構成」において説明する。
湾曲部61は、内視鏡先端部10の基端側に連結され、湾曲可能とする。
可撓管62は、湾曲部61の基端側に連結され、可撓性を有する。
【0020】
操作部7は、挿入部6の基端側に連結され、医師等から各種操作を受け付ける部分である。この操作部7は、
図1に示すように、湾曲部61を湾曲操作するための湾曲ノブ71と、各種操作を行うための複数の操作部材72とを備える。
また、操作部7には、湾曲部61及び可撓管62の内部に設けられたチューブ(図示略)に連通し、当該チューブに処置具(図示略)を挿通するための処置具挿入口73が設けられている。
【0021】
ユニバーサルコード8は、操作部7から延在し、ライトガイドLG、上述した振動子ケーブル(図示略)、上述した信号ケーブル(図示略)、及び上述した管路(図示略)が配設されたコードである。
内視鏡用コネクタ9は、ユニバーサルコード8の端部に設けられている。そして、内視鏡用コネクタ9は、超音波ケーブル31が接続されるとともに、内視鏡観察装置4に刺し込まれることでビデオプロセッサ41及び光源装置42に接続する。
【0022】
〔内視鏡先端部の構成〕
図2及び
図3は、内視鏡先端部10の構成を示す図である。具体的に、
図2は、内視鏡先端部10を
図1中、左側から見た図である。
図3は、
図2に示すIII-III線の断面図である。
内視鏡先端部10は、
図2及び
図3に示すように、超音波探触子11と、先端構成部12と、処置具起上台13とを備える。
【0023】
超音波探触子11は、コンベックス型の超音波探触子であり、凸型の円弧を形成する状態で規則的に配列された複数の超音波振動子(図示略)を有する。なお、超音波探触子11としては、コンベックス型の超音波探触子に限らず、ラジアル型の超音波探触子を採用しても構わない。
ここで、超音波振動子は、音響レンズ、圧電素子、及び整合層を有し、被検体内の体壁よりも内部の超音波断層画像に寄与する超音波エコーを取得する。
【0024】
そして、超音波探触子11は、超音波ケーブル31及び上述した振動子ケーブルを経由して超音波観測装置3から入力したパルス信号を超音波パルスに変換して被検体内に送信する。また、超音波探触子11は、被検体内で反射された超音波エコーを電気的なエコー信号に変換し、上述した振動子ケーブル及び超音波ケーブル31を経由して超音波観測装置3に出力する。
【0025】
以上説明した超音波探触子11は、
図2に示すように、処置具起上台13よりも先端側(
図2中、下側)に配置されている。
【0026】
先端構成部12は、樹脂材料等から構成された硬質部材であり、挿入部6の中心軸Axに沿って延在する略円柱形状を有する。
この先端構成部12において、先端側の外周面には、先端に向かうにしたがって当該先端構成部12を先細形状とする傾斜面121(
図2)が設けられている。
そして、先端構成部12には、基端から先端まで貫通した取付用孔(図示略)、基端から傾斜面121までそれぞれ貫通した照明用孔123(
図2,
図3)、撮像用孔124(
図2,
図3)、送気送水用孔125(
図2,
図3)、及び処置具チャンネル126(
図2)等が設けられている。
【0027】
取付用孔(図示略)は、超音波探触子11が取り付けられる孔である。そして、当該取付用孔の内部には、超音波探触子11に電気的に接続する上述した振動子ケーブルが挿通される。
【0028】
照明用孔123の内部には、
図3に示すように、ライトガイドLGの出射端側と、当該ライトガイドLGの出射端から出射された照明光を被検体内に照射する照明レンズ1231とが配設されている。
撮像用孔124の内部には、撮像装置14が設けられている。
この撮像装置14は、被検体内に照射され、当該被検体内で反射された光(被写体像)を集光する対物光学系141(
図3)、及び当該対物光学系141によって集光された被写体像を撮像する撮像素子142(
図3)とを備える。そして、当該撮像素子142によって撮像された画像信号は、上述した信号ケーブル(図示略)を経由して内視鏡観察装置4(ビデオプロセッサ41)に伝送される。
【0029】
送気送水用孔125は、上述した管路(図示略)の一部を構成し、撮像用孔124に向けて送気または送水し、対物光学系141の外面を洗浄するための孔である。
【0030】
処置具チャンネル126は、処置具挿入口73から挿入部6の内部の上述したチューブ(図示略)に挿通された処置具(図示略)を外部に突出させる通路である。この処置具チャンネル126は、
図2に示すように、処置具挿通孔127及び収納溝128を備える。
処置具挿通孔127は、先端構成部12の基端から先端側に延在し、処置具(図示略)が挿通される部分である。
収納溝128は、処置具挿通孔127に連通するとともに、当該処置具挿通孔127から中心軸Axに沿って先端側に延在した溝である。
【0031】
処置具起上台13は、医師等による操作部7へのユーザ操作に応じて回動軸RAx(
図2)を中心として回動可能に収納溝128の内部に収納されている。そして、処置具起上台13は、回動軸RAxを中心として回動することによって中心軸Axに対して起上した起上状態、または倒置した倒置状態に設定され、処置具挿通孔127を通して収納溝128に挿通された処置具(図示略)に当接して当該処置具の突出方向を調整する。
図3では、起上状態に設定された処置具起上台13を一点鎖線によって図示し、倒置状態に設定された処置具起上台13を実線によって図示している。
【0032】
以上説明した撮像装置14の先端は、
図2に示すように、処置具起上台13の先端よりも基端側(
図2中、上側)に配置されている。
【0033】
〔撮像装置の観察視野〕
次に、上述した撮像装置14の観察視野について説明する。
図4は、撮像装置14の観察視野FIを示す図である。具体的に、
図4は、撮像装置14の観察視野FIを対物光学系141の中心から当該対物光学系141の光軸LAxに沿って見た図であって、
図4の紙面の奥側を当該光軸LAxに直交する平面によって切断している。すなわち、観察視野FIは、
図4の紙面の奥側に向かって断面積が広くなる3次元領域である。
【0034】
ここで、ビデオプロセッサ41は、撮像装置14から出力された画像信号に所定の処理を施すことによって、正方形の全領域のうち、四隅をマスクした(黒で塗り潰した)マスク領域MArとし、その他の八角形状の画像領域FArにのみ被写体を写り込ませた内視鏡画像F1(
図6,
図8,
図10参照)を生成する。そして、撮像装置14によって取り込まれ当該八角形状の画像領域FArを構成する観察視野FIは、
図4に示す形状となる。当該観察視野FIは、本発明に係る所定の3次元領域に相当する。
【0035】
観察視野FIは、光軸LAxを含む水平面を中心とする上下対称の形状であるとともに、当該光軸LAxを含む鉛直面を中心とする左右対称の形状である。より具体的に、光軸LAxに直交する平面によって観察視野FIを切断した断面は、光軸LAxを挟んで上下に対向する一対の円弧ARC1と、当該光軸LAxを挟んで左右に対向する一対の円弧ARC2とを含む。
【0036】
円弧ARC1,ARC2は、光軸LAx側に凹となる円弧である。当該円弧ARC2において、
図4中、最も上側の位置は、本発明に係る第1の位置P1に相当する。また、円弧ARC2において、
図4中、最も下側の位置は、本発明に係る第3の位置P3に相当する。さらに、円弧ARC2において、第1,第3の位置P1,P3の中間の位置は、本発明に係る第2の位置P2に相当する。
【0037】
ここで、処置具起上台13において、起上状態及び倒置状態間の回動範囲は、本発明に係る所定の回動範囲RA(
図3)に相当する。また、以下では、回動範囲RAで回動した処置具起上台13の先端の軌道を起上台軌道TR(
図3)と記載する。
そして、処置具起上台13は、起上台軌道TRが観察視野FIを横切るように配置される。言い換えれば、撮像装置14の位置は、回動範囲RAのいずれの位置に処置具起上台13が位置している場合でも、当該処置具起上台13の先端が観察視野FI(所定の3次元領域)に入るように設定されている。これによって、回動範囲RAのいずれの位置に処置具起上台13が位置している場合でも、当該処置具起上台13の先端は、内視鏡画像F1における画像領域FAr内に写り込み、表示装置5に表示される。
【0038】
〔観察視野に対する起上台軌道と、内視鏡画像上での当該起上台軌道との関係〕
次に、観察視野FIに対する起上台軌道TRと、内視鏡画像F1上での当該起上台軌道TRとの関係について説明する。
以下、当該関係について、第1~第3の例を順に説明する。
【0039】
〔第1の例〕
図5及び
図6は、観察視野FIに対する起上台軌道TRと、内視鏡画像F1上での当該起上台軌道TRとの関係の第1の例を示す図である。具体的に、
図5は、
図4に対応した図であって、観察視野FIに対する起上台軌道TRを示す図である。
図6は、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRを示す図である。
以下では、内視鏡画像F1において、上辺を上辺S1、下辺を下辺S2、左辺を左辺S3、及び右辺を右辺S4と記載する。また、
図6において、第1の領域Ar1は、内視鏡画像F1を上辺S1に沿って4つの領域に4等分したうちの、左辺S3に沿う領域である。また、第4の領域Ar4は、当該4つの領域のうち、右辺S4に沿う領域である。また、中央領域ArOは、当該4つの領域のうち、第1,第4の領域Ar1,Ar4の間に位置する領域であり、本発明に係る第2,第3の領域に相当する。以下の
図8及び
図10でも同様である。
【0040】
図5に示すように、起上台軌道TRが第1,第3の位置P1,P3を結ぶ直線状の仮想線に平行となるように、観察視野FIにおける
図5中、右側の領域を上下に横切る場合を想定する。この場合には、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRは、
図6に示すように、第4の領域Ar4の画像領域FAr内に位置し、
図6中、右側に凸となり、上辺S1に平行な仮想線に対して上下対称の円弧となる。すなわち、起上台軌道TRは、右辺S4に沿って内視鏡画像F1に写り込む。
【0041】
なお、起上台軌道TRにおいて、
図5及び
図6中の最も上側の位置は、起上状態の位置である。また、起上台軌道TRにおいて、
図5及び
図6中の最も下側の位置は、倒置状態の位置である。
【0042】
〔第2の例〕
図7及び
図8は、観察視野FIに対する起上台軌道TRと、内視鏡画像F1上での当該起上台軌道TRとの関係の第2の例を示す図である。具体的に、
図7は、
図4に対応した図であって、観察視野FIに対する起上台軌道TRを示す図である。
図8は、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRを示す図である。
図7に示すように、起上台軌道TRが第1,第3の位置P1,P3を結ぶ直線状の仮想線に対して平行ではなく、観察視野FIにおける
図7中、右側の領域を下方に向かうにしたがって左側に傾斜した直線に沿って上下に横切る場合を想定する。この場合には、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRは、
図8に示すように、第4の領域Ar4の画像領域FAr内に位置し、
図8中、右側に凸となり、上辺S1に平行な仮想線に対して上下対称ではない円弧となる。より具体的に、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRは、下辺S2に最も近い位置の方が上辺S1に最も近い位置よりも当該内視鏡画像F1の中央C(
図8)に近い円弧となる。すなわち、起上台軌道TRは、右辺S4に沿って内視鏡画像F1に写り込む。
【0043】
なお、起上台軌道TRにおいて、
図7及び
図8中の最も上側の位置は、起上状態の位置である。また、起上台軌道TRにおいて、
図7及び
図8中の最も下側の位置は、倒置状態の位置である。
【0044】
〔第3の例〕
図9及び
図10は、観察視野FIに対する起上台軌道TRと、内視鏡画像F1上での当該起上台軌道TRとの関係の第3の例を示す図である。具体的に、
図9は、
図4に対応した図であって、観察視野FIに対する起上台軌道TRを示す図である。
図10は、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRを示す図である。
図9に示すように、起上台軌道TRが観察視野FIにおける
図9中、右側の円弧ARC2に沿って当該観察視野FIを円弧状に横切る場合を想定する。この場合には、内視鏡画像F1上での起上台軌道TRは、
図10に示すように、第4の領域Ar4の画像領域FAr内に位置し、右辺S4に平行な直線となる。すなわち、起上台軌道TRは、右辺S4に沿って内視鏡画像F1に写り込む。
【0045】
なお、起上台軌道TRにおいて、
図9及び
図10中の最も上側の位置は、起上状態の位置である。また、起上台軌道TRにおいて、
図9及び
図10中の最も下側の位置は、倒置状態の位置である。
【0046】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る内視鏡先端部10では、処置具起上台13は、起上台軌道TRが観察視野FI(所定の3次元領域)を横切るように配置される。言い換えれば、撮像装置14の位置は、回動範囲RAのいずれの位置に処置具起上台13が位置している場合でも、当該処置具起上台13の先端が観察視野FIに入るように設定されている。これによって、回動範囲RAのいずれの位置に処置具起上台13が位置している場合でも、当該処置具起上台13の先端は、内視鏡画像F1における画像領域FAr内に写り込み、表示装置5に表示される。
したがって、本実施の形態に係る内視鏡先端部10によれば、表示装置5に表示された内視鏡画像F1から処置具の位置や姿勢を把握することができ、当該処置具による処置を円滑に行うことができる。すなわち、利便性を向上させることができる。
【0047】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態では、内視鏡システム1は、超音波画像を生成する機能、及び内視鏡画像を生成する機能の双方を有していたが、これに限らず、いずれかの機能のみを有する構成としても構わない。
上述した実施の形態において、内視鏡システム1は、医療分野に限らず、工業分野において、機械構造物等の被検体の内部を観察する内視鏡システムとしても構わない。
【0048】
上述した実施の形態において、撮像装置14と処置具起上台13との位置関係については、当該撮像装置14の先端が当該処置具起上台13の先端よりも基端側に配置されていれば、その他の位置関係を採用しても構わない。すなわち、上述した実施の形態では、撮像装置14は、
図2に示すように、挿入部6の先端側から見て、処置具起上台13よりも右側に配置されていたが、これに限らず、左側等のその他の位置に配置しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 内視鏡システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 内視鏡観察装置
5 表示装置
6 挿入部
7 操作部
8 ユニバーサルコード
9 内視鏡用コネクタ
10 内視鏡先端部
11 超音波探触子
12 先端構成部
13 処置具起上台
14 撮像装置
31 超音波ケーブル
41 ビデオプロセッサ
42 光源装置
61 湾曲部
62 可撓管
71 湾曲ノブ
72 操作部材
73 処置具挿入口
121 傾斜面
123 照明用孔
124 撮像用孔
125 送気送水用孔
126 処置具チャンネル
127 処置具挿通孔
128 収納溝
141 対物光学系
142 撮像素子
1231 照明レンズ
Ar1 第1の領域
Ar4 第4の領域
ArO 中央領域
ARC1,ARC2 円弧
Ax 中心軸
C 中央
F1 内視鏡画像
FAr 画像領域
FI 観察視野
LAx 光軸
LG ライトガイド
MAr マスク領域
P1 第1の位置
P2 第2の位置
P3 第3の位置
RA 回動範囲
RAx 回動軸
S1 上辺
S2 下辺
S3 左辺
S4 右辺
TR 起上台軌道