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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012517
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】がん治療用ペプチドサポリン複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20240123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240123BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20240123BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
A61K47/42 ZNA
A61K45/00
A61K38/16
A61K47/64
A61K47/60
A61P35/00
A61P11/00
A61P15/00
A61P1/00
A61P1/18
A61P43/00 121
C07K7/06
C07K7/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189168
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2020501231の分割
【原出願日】2018-07-10
(31)【優先権主張番号】62/530,674
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン キャスリン シー
(72)【発明者】
【氏名】オールレッド カーティス
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】副作用が最小限である新規特異的細胞傷害剤治療を提供する。
【解決手段】本明細書中開示されるのは、1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチド及び細胞傷害剤を含む組成物である。同じく本明細書中記載されるのは、本組成物を、がん患者に投与する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチド及び細胞傷害剤を含む、組成物。
【請求項2】
前記1種以上のMGSペプチドは、配列番号1、2、3、34、35、36、37、3
8、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50
、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、6
4、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77
、78、79、80、81、82、83、84、またはそれらの組み合わせを含む、請求
項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1種以上のMGSペプチドは、配列番号1、2、3、34、35、36、37、3
8、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50
、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、6
4、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77
、78、79、80、81、82、83、または84を含む、請求項1または2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記細胞傷害剤は、サポリンまたはその生物学的活性変異体である、請求項1から3の
いずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記1種以上のMGSペプチドは、配列番号3であり、前記細胞傷害剤は、サポリンで
ある、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1種以上は、4つのMGSペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1種以上のMGSペプチドは、四量体足場タンパク質を形成する、請求項6に記載
の組成物。
【請求項8】
前記1種以上のMGSペプチドは、N末端がアセチル化されている、請求項1に記載の
組成物。
【請求項9】
前記1種以上のMGSペプチドは、前記細胞傷害剤と化学結合している、請求項1から
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
化学結合は、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記PEGは、長さが11単位である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記1種以上のMGSタンパク質は、配列番号3を含み、配列番号3は、N末端がアセ
チル化されており、かつPEGと化学結合しており;かつ、前記細胞傷害剤は、サポリン
であり、前記サポリンは、PEGと共有結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
脂質膜を横断する輸送用の膜透過性複合体であり、1種以上の分子誘導システム(MG
S)ペプチド及び細胞傷害剤を含む、前記複合体。
【請求項14】
前記1種以上のMGSペプチドは、配列番号1、2、3、34、35、36、37、3
8、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50
、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、6
4、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77
、78、79、80、81、82、83、84、またはそれらの組み合わせを含む、請求
項13に記載の複合体。
【請求項15】
前記1種以上のMGSペプチドは、配列番号1、2、3、34、35、36、37、3
8、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50
、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、6
4、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77
、78、79、80、81、82、83、または84を含む、請求項13または14に記
載の複合体
【請求項16】
前記細胞傷害剤は、サポリンまたはその生物学的活性変異体である、請求項13から1
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記1種以上のMGSペプチドは、配列番号3であり、前記細胞傷害剤は、サポリンで
ある、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記1種以上のMGSペプチドは、4つのMGSペプチドである、請求項13に記載の
組成物。
【請求項19】
前記1種以上のMGSペプチドは、四量体足場タンパク質を形成する、請求項13に記
載の組成物。
【請求項20】
前記1種以上のMGSペプチドは、N末端がアセチル化されている、請求項13に記載
の組成物。
【請求項21】
前記1種以上のMGSペプチドは、前記細胞傷害剤と化学結合している、請求項13か
ら20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
化学結合は、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記PEGは、長さが11単位である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記1種以上のMGSタンパク質は、配列番号3を含み、配列番号3は、N末端がアセ
チル化されており、かつPEGと化学結合しており;かつ、前記細胞傷害剤は、サポリン
であり、前記サポリンは、PEGと共有結合している、請求項13に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の組成物及び薬学上許容されるキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項27】
がんを治療するための方法であって、(a)治療の必要がある患者を同定すること;(
b)前記患者に、治療上有効量の請求項1から27のいずれか1項に記載の組成物を投与
すること;及び(c)薬学上許容されるキャリア、を含む、前記方法。
【請求項28】
前記患者は、ヒト患者である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記がんは、原発性、続発性、難治性、または再発腫瘍である、請求項27に記載の方
法。
【請求項30】
前記がんは、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、または膵癌である、請求項27に記載
の方法。
【請求項31】
さらに、前記患者に、治療上有効量の放射線療法、免疫療法、または化学療法、あるい
はそれらの組み合わせを行うことを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
細胞内標的を標的とする方法であって、細胞傷害剤と結合した1種以上のMGSペプチ
ドを投与することを含み、前記細胞傷害剤は、細胞内標的を標的とする、前記方法。
【請求項33】
前記細胞内標的は、リソソームである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチド及び細胞傷害剤を含む組成物であって
、前記1種以上のMGSペプチドは、表1に列挙される群から選択される、前記組成物。
【請求項35】
本明細書中開示されるとおりのMGSペプチド。
【請求項36】
本明細書中開示されるMGSペプチドをコードすることができる、核酸配列。
【請求項37】
請求項36に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項38】
請求項34に記載のMGSペプチド、請求項36に記載の核酸配列、または請求項37
に記載のベクターを含む、細胞株。
【請求項39】
配列番号1、2、3、34、35、36、37、38、39、40、41、41、42
、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、5、54、55、5
6、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69
、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、
83、または84の配列を含む、MGSペプチド。
【請求項40】
請求項39に記載のMGSペプチドをコードすることができる核酸配列。
【請求項41】
請求項40に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項42】
請求項39に記載のMGSペプチド、請求項40に記載の核酸配列、または請求項41
に記載のベクターを含む、細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金に関する記載
本発明は、米国保険福祉省の国立がん研究所により授与された助成金番号第7R01C
A164447-04号の下、国からの支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権
利を有する。
【背景技術】
【0002】
アメリカがん協会は、今年、米国において新たに160万を超える症例ががんと診断さ
れ、600,000人近くががんを理由に亡くなると推定している。社会にかかる負担は
膨大である。NIHは、がんにより年間$2166億の負担が生じると推定しており、そ
のうちの$890億は、直接医療費である。大部分のがんの第一選択処置は、依然として
、細胞傷害剤治療に依存している。これらの治療は、活発な分裂細胞を必要とし、有害副
作用をもたらす。治療は、典型的には、最大有効量ではなく最大耐量で与えられる。また
、これらの治療は、無活動がん細胞、幹細胞、または不十分に分化したがん細胞では無効
である。なぜなら、それらは活発に分裂していないからである。その結果、再発を招く。
腫瘍バイオマーカーに対してより特異性の高い標的指向性治療のほとんどは、細胞傷害剤
ではなく細胞分裂阻害剤である。したがって、それらは、腫瘍の成長を遅くする可能性が
あるが、腫瘍を治癒させはしない。最後に、標的指向性及び非標的指向性治療両方に対す
る抵抗性は、臨床的に実在する。したがって、最小限の副作用しかない新規特異的細胞傷
害剤治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
サポリンは、細胞進入ドメインを持たないリボソーム不活性化タンパク質(RIP、3
4KD)である。細胞への進入機構を考慮すると、サポリンは、リボソームの巨大サブユ
ニットのリボソームRNAから単一アデニンを触媒作用により除去し、リボソームを完全
に不活性化する。そのため、もしサポリンを細胞内側に送達することができれば、それは
、細胞を迅速に殺傷する強力な毒素となる。本明細書中記載されるのは、1種以上のMG
Sペプチド及び植物毒素サポリンを含むがん標的治療である。本明細書中記載される組成
物は、態様よっては、がん細胞に結合し、組成物ががん細胞に内部移行するのを仲介し、
その結果迅速な細胞死をもたらすことを可能にする。MGSペプチドのがん特異性により
、本治療は、正常組織に対して最小限の効果しか有さない。
【0004】
本明細書中記載される組成物は、融合タンパク質として、すなわち化学結合により、作
製することができる。複合体は送達可能であり、MGSは、サポリンを腫瘍に向かわせて
、サポリンが腫瘍細胞に取り込まれるのを仲介し、そこでサポリンはその標的と結合する
ことができる。この化合物は、現行の治療に勝る複数の利点を有する。例えば、態様によ
っては、開示される組成物は、(1)非常に強力な細胞傷害剤が、細胞内に送達されて、
そこで機能を発揮することを可能にする;(2)MGSは、がん特異的であることが可能
であり、他の組織における毒素の取り込みを最小限に抑える;(3)全ての細胞は、分裂
細胞でなかったとしても、タンパク質合成に依存しているため、MGSペプチドサポリン
複合体は、一般的な細胞傷害剤に対して抵抗性である細胞に対して有効である可能性があ
る;(4)抵抗性は、タンパク質としての作用機序による可能性が低く、多剤耐性ポンプ
は、活性を否定する可能性が低い;ならびに(5)ペプチド標的指向剤(targeting agent
)は、小さく、抗体標的指向剤に比べて比較的安価であり、サポリンと複合体形成するこ
とができる。
【0005】
本明細書中開示されるのは、1種以上の分子誘導システム(molecular guidance system
)(MGS)ペプチド及び細胞傷害剤(cytotoxic agent)を含む組成物である。
【0006】
本明細書中開示されるのは、脂質膜を横断する輸送用の膜透過性複合体であり、これは
以下を含む:1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチド及び細胞傷害剤。
【0007】
本明細書中開示されるのは、細胞内標的を狙う方法であり、本方法は、細胞傷害剤と複
合体形成した1種以上のMGSペプチドを投与することを含み、この細胞傷害剤は、細胞
内標的を狙う。
【0008】
本組成物及び方法の他の特長及び利点は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲にて
説明される。
【0009】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成するものであり、開示される方
法及び組成物の複数の実施形態を例示するとともに、説明と合わせて、開示される方法及
び組成物の原則を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】HCC15.2が、がん細胞に特異的であり、がん細胞内へと内部移行することを示す。
図2】HCC15.2が、NSCLCの全てのサブタイプに結合することを示す。
図3】ペプチド内部移行が受容体介在型であることを示す。
図4】配列番号1の四量体化が、配列番号1の単量体に比べて、内部移行を顕著に改善することはないことを示す。
図5】N末端及びC末端での切断が最小結合配列(FHAVPQSFYTAP、配列番号1;FHAVPQSFYTA、配列番号2;及びFHAVPQSFYT、配列番号3)を明らかにすることを示す。
図6】アセチル化が、切断型ペプチド(配列番号3、FHAVPQSFYTAP、配列番号1)の結合を改善することを示す。
図7】ペプチドが、リソソームと共存することを示す。
図8】HCC15.2が、時間とともに、リソソームに蓄積していくことを示す。
図9】サポリンと複合体形成したHCC15.2のin vitro薬物データを示す。
図10】HCC15.2サポリン複合体が、ヒトNSCLC異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を減少させることを示す。
図11】フローサイトメトリー実験から得られた柱状図及び柱状図の定量化を示す。
図12】HCC15.2が他のがん細胞株に結合することを示す棒グラフである。
図13】KDを測定するためのフローサイトメトリーの結果を示す線グラフである。
図14】四量体化が、最大結合半量を顕著に改善することはないことを示す。
図15】N末端及びC末端での切断が最小結合配列を明らかにすることを示す。上段パネルは、上から下に向かって、以下の配列を示す:配列番号:1、2、3、78、及び79。下段パネルは、上から下に向かって、以下の配列を示す:配列番号:1、2、3、78、79、及び80。
図16】HCC15.2が、時間とともにリソソームに蓄積していくことを示す。
図17】HCC15.2標的指向化NIR色素が、in vivoで腫瘍に蓄積することを示す。
図18】HCC15.2標的指向化色素が、時間が経過しても腫瘍に保持されることを示す。
図19】ex vivoで、腫瘍が、HCC15.2標的指向化色素の明白な蓄積を示すことを実証する。
図20】臓器のex vivo画像化の結果を示す。
図21】HCC15.2がin vitroでがん細胞を標的としてサポリンを向かわせることを示す。
図22】HCC15.2がin vitroでがん細胞を標的としてサポリンを向かわせることを示すがん細胞殺傷アッセイの例である。
図23】サポリンを標的に向かわせるHCC15.2が、腫瘍成長を目立って遅くしたことを示す。
図24】様々なMGS、適応症、標的となる細胞型、細胞内位置、及び送達されるペイロードを列挙した表である。
図25】選択されたMGSペプチドについて、配列(上から下に向かっての順で:配列番号:22、39、40、23、47、25、26、27、28、及び29)、細胞内位置、結合価、がん特異性、及び結合プロファイル情報を示す。
図26】選択されたMGSペプチドのさらなる特性評価を示す表である。開始配列は、上から下に向かって:配列番号:7、5、36、32、及び1。現在の配列は、上から下に向かって:配列番号:81、82、83、84、及び80。
図27】H1299.3の15量体とオートファゴソームの共存(上段パネル)、及びin vivoで投与後の結果を示す。
図28】1299.3Ac-15量体のがん細胞結合を正常細胞結合と比較して示す棒グラフである。
図29】他のペプチド(HCC15.2を除き、最適化されていない親ペプチド)を用いたin vitroでのサポリン送達を示す表である。
図30】多量体MGSペプチドの例及び多量体MGSペプチド(配列番号22)を用いた実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示される方法及び組成物は、特定の実施形態についての以下の詳細な説明及びそこに
含まれる実施例を参照することで、ならびに図面及びその前後の説明を参照することで、
より容易に理解することができる。
【0012】
本組成物及び方法を開示し説明する前に、当然のことながら、それらは、特に記載がな
い限り、具体的な合成法に限定されることもなければ、特に記載がない限り、特定の試薬
に限定されることもなく、そうであるので、もちろん変更可能である。同じく当然のこと
ながら、本明細書中使用される用語は、特定の態様を記載することのみを目的とし、限定
することを意図しない。本明細書中記載されるものと同様または等価な方法及び材料は、
何であっても本発明の実行及び試験に使用可能であるが、例示の方法及び材料を、ここに
記載する。
【0013】
その上、当然のことながら、特に明白に指定されない限り、本明細書中記載されるどの
方法であっても、その方法の工程が特定の順序で行われることを必要とすると見なされる
ことは、いかなるやり方でも意図しない。したがって、方法請求項が、その方法の工程が
従うべき順序を実際に列挙しない、またはその工程が具体的な順序に限定されることが請
求項もしくは明細書中に特に具体的に指定されない場合、あらゆる面において、順序が推
測されることをいかなるやり方でも意図しない。これは、表明されていない解釈上の基礎
について可能なあらゆるものに当てはまり、そのような基礎として、工程または操作の流
れの配置に関する論理事項、文法構成または句読法に由来する明白な意味、及び明細書中
に記載される態様の数または種類が含まれる。
【0014】
本明細書中言及される刊行物は全て、方法及び/または材料を開示または説明するため
に、その刊行物が引用される内容に関して、本明細書中参照として援用される。本明細書
中説明される刊行物は、本出願の出願日前にその開示があったことを提示するにすぎない
。本明細書中には、本発明が、先行発明を理由にそのような刊行物に先行すると認められ
ないとすることの承認と見なされるべきものはない。さらに、本明細書中提示される刊行
物の日付は、実際の公開日と異なる可能性があり、実際の公開日は、それぞれ確認する必
要がある可能性がある。
【0015】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及
び「the」は、文脈から明白に指定されない限り、複数に関する言及も含む。
【0016】
「or」という語は、本明細書中使用される場合、特定の列挙の中の任意の1メンバー
を意味するとともに、その列挙の中の複数のメンバーの任意の組み合わせも含む。すなわ
ち、例えば、「a MGS peptide(MGSペプチド)」という言及は、そのよ
うなMGSペプチドが複数の場合も含み、「the MGS peptide(MGSペ
プチド)」という言及は、1種以上のMGSペプチド及び当業者に既知であるそれらの等
価物についての言及であるといった具合である。
【0017】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通じて、「comprise(含む)」とい
う語及びその語の変形、例えば「comprising(含む)」及び「compris
es(含む)」は、「~を含むが、それに限定されない」ことを意味し、例えば、他の追
加成分、構成要素、整数、または工程を排除することを意図しない。詳細には、1つ以上
の工程または操作を含むと記述された方法において、各工程は、列挙されるものを含む(
その工程が、「consisting of(~からなる)」などの限定用語を含まない
限り)ことが具体的に企図され、このことは、各工程が、例えば、工程に列挙されていな
い他の追加成分、構成要素、整数、または工程を排除することを意図しないことを意味す
る。
【0018】
範囲は、本明細書中、「約」または「およそ」の1つの特定値から、及び/または「約
」または「およそ」の別の特定値までとして表現することができる。そのような範囲が表
現される場合、さらなる態様は、1つの特定値から、及び/または別の特定値までを含む
。同様に、「約」または「およそ」の先行詞の使用により、値が近似値として表現される
場合、当然のことながら、その特定の値は、さらなる態様を形成する。さらに当然のこと
ながら、各範囲の限度値は、他方の限度値と関連して、及び他方の限度値とは独立して、
の両方で意味がある。同じく当然のことながら、本明細書中開示される値は複数存在し、
各値も、本明細書中、その特定の値自身の他に「約」特定値として開示されている。例え
ば、「10」という値が開示されるならば、「約10」も開示されている。同じく当然の
ことながら、2つの特定の単位間の各単位も開示されている。例えば、10及び15が開
示されるならば、11、12、13、及び14も開示されている。
【0019】
本明細書中使用される場合、「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、続い
て記載される事象または状況が、生じる可能性も生じない可能性もあることを意味し、こ
の記載が、事象または状況が生じる場合も、それが生じない場合も含むことを意味する。
【0020】
本明細書中使用される場合、「対象」という用語は、投与の標的、例えば、ヒトを示す
。すなわち、開示される方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類
、または両生類などが可能である。「対象」という用語は、家庭用動物(例えば、ネコ、
イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験動物(例
えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)も含む。1つの態
様において、対象は、哺乳類である。別の態様において、対象は、ヒトである。この用語
は、特定の年齢または性別を意味しない。すなわち、成人、子供、青年、及び新生児対象
、ならびに胎児を、男性女性を問わず、包含することを意図する。
【0021】
本明細書中使用される場合、「患者」という用語は、疾患または障害を罹患している対
象を示す。「患者」という用語は、ヒト及び獣医学対象を含む。開示される方法の態様に
よっては、「患者」は、例えば、投与工程の前に、自己免疫障害の治療が必要であると診
断されている。
【0022】
本明細書中使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸残基を表す略号
、文字、記号、または単語の列挙を示す。本明細書中使用されるアミノ酸略号は、従来の
アミノ酸一文字コードであり、以下のとおり表される:A、アラニン;C、システイン;
D、アスパラギン酸;E、グルタミン酸;F、フェニルアラニン;G、グリシン;H、ヒ
スチジン;Iイソロイシン;K、リシン;L、ロイシン;M、メチオニン;N、アスパラ
ギン;P、プロリン;Q、グルタミン;R、アルギニン;S、セリン;T、トレオニン;
V、バリン;W、トリプトファン;Y、チロシン。
【0023】
「ポリペプチド」は、本明細書中使用される場合、任意のペプチド、オリゴペプチド、
ポリペプチド、遺伝子産物、発現産物、またはタンパク質を示す。ポリペプチドは、連続
したアミノ酸で構成される。「ポリペプチド」という用語は、天然または合成分子を包含
する。
【0024】
また、本明細書中使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合また
は修飾ペプチド結合、例えば、ペプチドイソスターなどにより互いに結合したアミノ酸を
示し、この用語は、遺伝子にコードされたアミノ酸20種以外の修飾アミノ酸を含有する
ことができる。ポリペプチドは、天然のプロセス、例えば、翻訳後プロセシングによるか
、または当該分野で周知である化学修飾技法によるなど、いずれかにより修飾可能である
。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端またはカルボキシル末端をはじ
めとするポリペプチドのどの部分でも生じることが可能である。同種の修飾が、所定のポ
リペプチド中、複数部位において、同一または異なる度合いで存在することが可能である
。同じく、所定のポリペプチドは、多種の修飾を有することが可能である。修飾として、
特に制限なく、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、共有結合による
架橋または環化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチドまた
はヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質または脂質誘導体の共有結合付加、ホスファ
チジルイノシトールの共有結合付加、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システインま
たはピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、G
PIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ
化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレン酸化、硫酸
化、及びアルギニル化などのタンパク質へのt-RNA介在型アミノ酸付加が挙げられる
。(Proteins - Structure and Molecular Pro
perties 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H.
Freeman and Company, New York (1993);Pos
ttranslational Covalent Modification of
Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic P
ress, New York, pp. 1-12 (1983)を参照)。
【0025】
「核酸」という語句は、本明細書中使用される場合、DNAかRNAかDNA-RNA
ハイブリッドか、一本鎖か二本鎖か、センスかアンチセンスかに関わらず、ワトソンクリ
ック塩基対形成により相補的核酸とハイブリダイズすることができる、天然または合成の
オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを示す。本発明の核酸は、ヌクレオチド類似
体(例えば、BrdU)、及び非ホスホジエステルヌクレオシド間結合(例えば、ペプチ
ド核酸(PNA)またはチオジエステル結合)も含むことができる。詳細には、核酸とし
て、特に制限なく、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、ま
たはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0026】
本明細書中使用される場合、「試料」は、動物;動物の組織または臓器;細胞(対象内
部にあるもの、対象から直接採取されたもの、または培養で維持されている細胞もしくは
培養細胞系統由来のものいずれか);細胞溶解液(または溶解液画分)または細胞抽出物
;あるいは本明細書中記載されるとおりにアッセイされる、細胞または細胞材料に由来す
る1種以上の分子(例えば、ポリペプチドまたは核酸)を含有する溶液を意味するものと
する。試料は、細胞または細胞構成要素を含有する任意の体液または排泄物(例えば、血
液、尿、便、唾液、涙、胆汁などであるが、これらに限定されない)も可能である。
【0027】
本明細書中使用される場合、「調節する」は、増加または減少させることにより、変更
することを意味する。
【0028】
本明細書中使用される場合、化合物の「有効量」は、所望の効果を提供するのに十分な
化合物量を意味するものとする。正確な必要量は、種、年齢、及び対象の全般的な状態、
治療されている疾患の重篤度(またはその根底にある遺伝的欠陥)、使用される特定化合
物、その投与様式などに依存して、対象ごとに変化することになる。すなわち、正確な「
有効量」を指定することは不可能である。しかしながら、適切な「有効量」は、定法実験
にすぎないものを用いて、当業者により決定することができる。
【0029】
本明細書中使用される場合、「単離ポリペプチド」または「精製ポリペプチド」は、自
然ではポリペプチドに通常付随する材料を実質的に含まないポリペプチド(またはその断
片)を意味するものとする。本発明のポリペプチド、またはその断片は、例えば、天然源
(例えば、哺乳類細胞)からの抽出により、ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現
(例えば、細胞中または無細胞翻訳系中)により、またはポリペプチドの化学合成により
、得ることができる。また、ポリペプチド断片は、これらの方法のいずれかにより、また
は全長タンパク質及び/またはポリペプチドの切断により得ることができる。
【0030】
本明細書中使用される場合、「単離核酸」または「精製核酸」は、本発明のDNAの由
来元となる生物の天然ゲノム中、その遺伝子に隣接する遺伝子を含まないDNAを意味す
るものとする。したがって、この用語は、例えば、ベクターに組み込まれた組換えDNA
、例えば、自己複製プラスミドもしくはウイルスなど;または原核生物もしくは真核生物
のゲノムDNAに組み込まれたもの(例えば、導入遺伝子);または分離した分子として
存在するもの(例えば、PCR、制限エンドヌクレアーゼ消化、または化学もしくはin
vitro合成により生成されたcDNAまたはゲノムもしくはcDNA断片)を含む
。この用語は、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組
換えDNAも含む。「単離核酸」という用語は、RNA、例えば、単離DNA分子により
コードされるmRNA分子、または化学合成されたmRNA分子、あるいは少なくともあ
る種の細胞成分、例えば、他の種類のRNA分子またはポリペプチド分子から分離された
またはそれらを実質的に含まないmRNA分子も示す。
【0031】
本明細書中使用される場合、「治療する」は、がんを有する対象、例えば、ヒトまたは
他の哺乳類(例えば、動物モデル)に、疾患または症状の影響の悪化を防ぐまたは遅らせ
る、あるいは疾患の影響を部分的または完全に反転させる目的で、本発明の化合物または
分子を投与することを意味するものとする。
【0032】
本明細書中使用される場合、「予防する」は、がんを発症する易罹患性が高い対象にお
いてがんが発症する機会を最小限に抑えることを意味する。
【0033】
本明細書中使用される場合、「特異的に結合する」は、抗体が、その同族抗原または標
的(例えば、開示される合成MGS配列)を認識してそれと物理的に相互作用するが、他
の抗原または標的に対しては特に認識も相互作用もしないことを意味する;そのような抗
体は、ポリクローナル抗体の場合もモノクローナル抗体の場合もあり、それらは、当該分
野で周知である技法により生成される。
【0034】
本明細書中使用される場合、「プローブ」、「プライマー」、または「オリゴヌクレオ
チド」は、相補配列(「標的」)を含有する第二のDNAまたはRNA分子と塩基対形成
することができる、定義された配列の一本鎖DNAまたはRNA分子を意味するものとす
る。得られるハイブリッドの安定性は、生じる塩基対形成の程度に依存する。塩基対形成
の程度は、プローブ分子と標的分子の間の相補性度、及びハイブリダイゼーション条件の
ストリンジェンシーの度合いなどのパラメーターに影響を受ける。ハイブリダイゼーショ
ンストリンジェンシーの度合いは、温度、塩濃度、及びホルムアミドなどの有機分子の濃
度などのパラメーターに影響を受け、当業者に既知の方法により決定される。開示される
MGS配列をコードすることができる核酸(例えば、遺伝子及び/またはmRNA)に特
異的なプローブまたはプライマーは、それらがハイブリダイズする相手である開示された
MGS配列をコードすることができる核酸の領域と、少なくとも80%~90%配列相補
性、好ましくは少なくとも91%~95%配列相補性、より好ましくは少なくとも96%
~99%配列相補性、特に好ましくは100%配列相補性を有する。プローブ、プライマ
ー、及びオリゴヌクレオチドは、当業者に周知の方法により、放射性または非放射性の標
識で検出可能に標識化することができる。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチ
ドは、核酸ハイブリダイゼーションが関与する方法に使用され、そのような方法として、
以下:核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応法による逆転写及び/または核酸増幅、一本
鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限酵素断片多型(RFLP)分析、サザンハイブリ
ダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーシ
ョン、電気泳動移動度シフト解析(EMSA)がある。
【0035】
本明細書中使用される場合、「特異的にハイブリダイズする」は、プローブ、プライマ
ー、またはオリゴヌクレオチドが、高ストリンジェント条件下で、実質的に相補的な核酸
(例えば、開示されるMGS配列をコードすることができる核酸)を認識しこれと物理的
に相互作用する(すなわち、塩基対形成する)が、他の核酸とは実質的に塩基対形成しな
いことを意味するものとする。
【0036】
本明細書中使用される場合、「高ストリンジェント条件」は、0.5MのNaHPO4
(pH7.2)、7%SDS、1mMのEDTA、及び1%BSA(画分V)を含有する
緩衝液中、温度65℃で、または48%ホルムアミド、4.8×SSC、0.2Mのトリ
ス-Cl(pH7.6)、1×デンハート液、10%デキストラン硫酸塩、及び0.1%
SDSを含有する緩衝液中、温度42℃で、長さ少なくとも40ヌクレオチドのDNAプ
ローブを使用して生じるハイブリダイゼーションと互角のハイブリダイゼーションを可能
にする条件を意味する。高ストリンジェントなハイブリダイゼーションの他の条件、例え
ば、PCR用、ノーザン、サザン、もしくはin situハイブリダイゼーション用、
DNA配列決定用などのものは、分子生物学の当業者に周知である。(例えば、F. A
usubel et al., Current Protocols in Mole
cular Biology, John Wiley & Sons、New Yor
k, NY, 1998を参照)。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書中使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示さ
れる方法及び組成物が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を
有する。本明細書中記載されるものと同様または等価な任意の方法及び材料を、本方法及
び組成物の実行または試験に使用することが可能であるものの、特に有用な方法、装置、
及び材料は、記載されるとおりである。本明細書中引用される刊行物及びそれらが引用さ
れる理由である材料は、本明細書により参照として具体的に援用される。本明細書中には
、本発明が、先行発明を理由にそのような刊行物に先行すると認められないとすることの
承認と見なされるべきものはない。どの参照も、先行技術を構成することの承認とはなら
ない。参照文献の説明は、それらの著者が何を主張しているかを記述するものであり、出
願人は、引用される文書の正確性及び適切性に異議を申し立てる権利を有する。明らかに
当然のことながら、複数の刊行物が本明細書中言及されるものの、そのような言及は、そ
れら文書のいずれかが、当該分野に共通する一般認識の一部を形成することの承認を構成
しない。
【0038】
開示されるのは、開示される組成物を調製するのに使用される構成要素、ならびに本明
細書中開示される方法内で使用される組成物自身である。これら及び他の材料が本明細書
中開示されるが、当然のことながら、これら材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、
グループなどが開示される場合、これら化合物の様々な組み合わせ及び配列それぞれの個
別及びまとめての具体的言及は明白に開示されないとしても、それぞれが、具体的に企図
されており、本明細書中記載されている。すなわち、分子A、B、及びCからなるあるク
ラス、ならびに分子D、E、及びFからなるあるクラスが開示され、例として分子A-D
の組み合わせが開示される場合、たとえそれぞれが個別に言及されないとしても、組み合
わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fが開示さ
れているとみなされるという意味が、個別に及び総合的に企図される。同様に、これらの
任意のサブセットまたは組み合わせも開示されている。すなわち、例えば、A-E、B-
F、及びC-Eのサブグループは、開示されているとみなされるだろう。この概念は、本
出願の全ての態様に当てはまり、態様として、開示される組成物の作製法及び使用法にお
ける工程が含まれるが、これに限定されない。すなわち、実行可能な様々な追加工程が存
在する場合、当然ながらそれら追加工程のそれぞれは、開示される方法の任意の特定実施
形態または実施形態の組み合わせにおいて実行可能である。
【0039】
同じく開示されるのは、開示される組成物の調製に使用されることになる構成要素、な
らびに本明細書中開示される方法内で使用されることになる組成物自身である。これら及
び他の材料が本明細書中開示されるが、当然のことながら、これら材料の組み合わせ、サ
ブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これら化合物の様々な組み合わせ
及び配列それぞれの個別及びまとめての具体的言及は明白に開示されないとしても、それ
ぞれが、具体的に企図されており、本明細書中記載されている。
【0040】
本明細書中開示されるのは、がん標的治療であり、本治療は、植物トキシンであるサポ
リンと複合体形成したペプチド配列FHAVPQSFYT(配列番号3)を含むペプチド
複合体を含む。サポリンは、細胞進入ドメインを持たないリボソーム不活性化タンパク質
(RIP、34KD)である。細胞への進入機構を考慮すると、サポリンは、リボソーム
の巨大サブユニットのリボソームRNAから単一アデニンを触媒作用により除去し、リボ
ソームを不活性化する。そのため、もしサポリンを細胞内側に送達することができれば、
それは、細胞を迅速に殺傷する強力な毒素となる。本明細書中記載されるとおり、この課
題は、がん細胞に対して選択的であり、がん細胞に結合して、毒素ががん細胞に内部移行
するのを仲介し、その結果迅速な細胞死をもたらすペプチドとサポリンを複合体形成させ
ることにより解決することができる。本明細書中開示されるMGSペプチド複合体のがん
特異性により、本治療は、正常組織に対して最小限の効果しか有さない。
【0041】
本明細書中開示されるのは、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、及び膵癌に適用される
抗がん療法である。本明細書中開示される化合物、組成物、またはペプチド複合体は、細
胞腫の治療に広い用途を有する可能性がある標的指向化細胞傷害剤治療である。
【0042】
本明細書中開示される組成物または複合体(例えば、MGSペプチドサポリン複合体)
は、融合タンパク質として、すなわち化学結合により、作製可能である。複合体は送達可
能であり、MGSペプチドは、毒素(例えば、サポリン)を腫瘍またはがん細胞に向かわ
せて、サポリンが腫瘍細胞に取り込まれるのを仲介し、そこでサポリンはその標的と結合
することができる。
【0043】
本明細書中開示される組成物の送達は、例えば、1種以上の分子誘導システム(MGS
)ペプチドがサポリンとカップリングまたは複合体形成している場合に、正常細胞へのサ
ポリン取り込みを回避または最小限に抑えながら、がん細胞を標的として、サポリンを、
がん細胞に対して特異的に送達することを可能にする。本明細書中開示されるMGSペプ
チドは、上皮由来癌のサブセットに低ナノモル親和性を有する。これらのMGSペプチド
は小さいため、容易にサポリンと複合体形成させるまたは融合タンパク質として発現させ
ることができる。米国では1年あたり約160万の新規診断及びほぼ600,000人の
死亡がある結果、年間の医療費負担は約$890億になるが、本明細書中開示される複合
体は、現行のがん治療の限界を克服する可能性がある新規細胞腫治療を提供する。
【0044】
ペプチドHCC15.2は、1つ以上のアミノ酸の除去により切断することができる。
さらに、PEGリンカーを単量体ペプチドに付加させることができ、アミノ末端をアセチ
ル化することができる。
【0045】
組成物
MGSペプチド。本明細書中開示されるのは、分子誘導システムペプチド(MGS)ま
たは腫瘍標的指向性ペプチドである。これらのペプチドは、悪性腫瘍を含む腫瘍に選択的
に結合することができる。開示される組成物で使用可能または修飾可能なMGSペプチド
の例として、McGuire et al., Sci Rep. 2014 Mar
27;4:4480に開示されるMGSペプチドの1種以上が挙げられるが、これらに限
定されない。開示される組成物及び方法で同じく使用可能なMGSペプチドの例として、
表1ならびに図24及び図25に示されるMGS配列が挙げられるが、これらに限定され
ない。
表1.ペプチド配列
【表1】




【0046】
ある態様において、組成物は、1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチド及び細
胞傷害剤を含む。ある態様において、脂質膜を横断する輸送用の膜透過性複合体は、1種
以上の分子誘導システム(MGS)ペプチド及び細胞傷害剤を含むことができる。
【0047】
ある態様において、1種以上のMGSペプチドは、本明細書中開示されるMGSペプチ
ドの任意のものが可能である。ある態様において、1種以上のMGSペプチドは、配列番
号1、2、3、34、35、36、37、38、39、40、41、41、42、43、
44、45、46、47、48、49、50、51、52、5、54、55、56、57
、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、
71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、ま
たは84、あるいはそれらの組み合わせを含む。ある態様において、1種以上のMGSペ
プチドは、配列番号:1、2、または3を含む。ある態様において、細胞傷害剤は、サポ
リンまたはその生物学的活性変異体が可能である。ある態様において、1種以上のMGS
ペプチドは、配列番号3が可能であり、細胞傷害剤は、サポリンが可能である。ある態様
において、組成物は、1種以上のMGSペプチドを含むことができ、例えば、態様によっ
ては、組成物は、1、2、3、4、または5種のMGSペプチドを含むことができる。あ
る態様において、1種以上のMGSペプチドは、四量体足場タンパク質を形成することが
できる。ある態様において、本明細書中開示される1種以上のMGSペプチドは、切断す
ることができる。ある態様において、1種以上のMGSペプチドは、修飾することができ
る。ある態様において、1種以上のMGSペプチドは、N末端でアセチル化することがで
きる。図26は、選択されたMGSペプチドの例を提示し、これはさらに特性決定されて
いる。ある態様において、1種以上のMGSペプチドは、細胞傷害剤と化学結合すること
ができる。ある態様において、化学結合は、ポリエチレングリコール(PEG)が可能で
ある。ある態様において、PEG単位の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0、11、またはそれ以上が可能である。態様において、PEG単位の数は、1種以上の
MGSペプチドを細胞傷害剤から離して、1種以上のMGSペプチドと細胞傷害剤の間の
あらゆる静的相互作用を防ぐのに十分なものが可能である。例えば、本明細書中開示され
るのは、化学結合を含む組成物であり、この化学結合はPEGであり、PEGは11のP
EG単位を含む。ある態様において、1種以上のMGSペプチドは、配列番号3を含み、
配列番号3は、N末端でアセチル化することができ、PEGと化学結合することができ;
及び、細胞傷害剤は、サポリンが可能であり、サポリンはPEGと化学結合することがで
きる。
【0048】
細胞傷害剤。多種多様な毒性(例えば、細胞障害性)作用剤を、開示される組成物に含
ませることができる。細胞傷害剤は、本明細書中開示される1種以上のMGSペプチドと
共有結合を形成するまたは融合タンパク質を形成することができる。細胞傷害剤は、タン
パク質が可能である。ある態様において、細胞傷害剤は、細菌または植物毒素が可能であ
る。態様によっては、細胞傷害剤は、植物毒素が可能である。ある態様において、細胞傷
害剤は、サポリンまたはその生物学的変異体が可能である。細胞傷害剤は、修飾可能であ
る。ある態様において、細胞傷害剤は、細菌または植物毒素の断片である。
【0049】
複合体または融合タンパク質の作製法は、当業者に既知であり、既知の技法を用いて実
行することができる。ある態様において、MGSペプチドは、ポリエチレングリコールを
用いて細胞傷害剤(例えば、サポリン)と複合体形成させる。最適なPEG単位を用いて
本明細書中開示されるMGSペプチドを化学結合させることは、当業者の能力の範囲内に
ある。
【0050】
標識。同じく本明細書中記載されるのは、1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプ
チド及び標識を含む組成物である。例えば、本明細書中開示される組成物は、検出可能な
標識を含むことができる。そのような検出可能な標識として、発現したポリペプチドまた
は配列の検出(例えば、精製または局所化)用に設計されたタグ配列を挙げることができ
るが、これらに限定されない。タグ配列として、例えば、緑色蛍光タンパク質、グルタチ
オンS-トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、またはF
lag(商標)タグが挙げられ、これらは、コードされた核酸に融合させることができる
。そのような検出可能な標識として、蛍光作用剤、酵素標識、放射性同位体を挙げること
ができるが、これらに限定されない。
【0051】
医薬組成物
本明細書中開示されるのは、1種以上の本明細書中開示される組成物及び上記の医薬的
に許容されるキャリアを含む医薬組成物である。態様によっては、MSGペプチドは、配
列番号3であることが可能であり、細胞傷害剤は、サポリンまたはその生物学的変異体が
可能であり、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。本開示の組成物は、治療上有
効量の本明細書中記載されるとおりの細胞傷害剤も含有する。組成物は、様々な投与経路
のいずれかによる投与用に配合することができ、1種以上の生理学的に許容される賦形剤
を含むことができ、賦形剤は、投与経路に応じて変更可能である。本明細書中使用される
場合、「賦形剤」という用語は、「キャリア」または「希釈剤」とも称することが可能な
ものを含め任意の化合物または物質を意味する。医薬的及び生理学的に許容される組成物
の調製は、当該分野で日常的に検討されており、したがって、当業者なら、必要であれば
、指針として多数の出典を参考にすることができる。
【0052】
本明細書中開示されるとおりの医薬組成物は、経口または非経口投与用に調製すること
ができる。非経口投与用に調製された医薬組成物として、静脈内(または動脈内)、筋肉
内、皮下、腹腔内、経粘膜(例えば、鼻腔内、膣内、もしくは直腸)、または経皮(例え
ば、外用)投与用に調製されたものが挙げられる。エーロゾル吸入も、融合タンパク質を
送達するのに利用可能である。すなわち、組成物は、許容できるキャリアに溶解または分
散した融合タンパク質を含む非経口投与用に調製することができ、そのようなキャリアと
して、水性キャリア、例えば、水、緩衝化水、生理食塩水、緩衝生理食塩水(例えば、P
BS)などが挙げられるが、これらに限定されない。含まれる賦形剤の1種以上は、生理
学的条件を近似する補助となることができ、例えば、pH調節及び緩衝剤、浸透圧調節剤
、湿潤剤、界面活性剤などである。組成物が固形成分を含む場合(それらが、経口投与用
である場合など)、賦形剤の1種以上は、結合剤または充填剤(例えば、錠剤、カプセル
剤などの配合用)として作用することができる。組成物が、皮膚または粘膜表面への塗布
用に配合される場合、賦形剤の1種以上は、クリーム、軟膏などの配合用の溶媒または乳
化剤であることが可能である。
【0053】
医薬組成物は、滅菌状態である、または従来の滅菌技法により滅菌される、または滅菌
ろ過することが可能である。水溶液は、そのまま使用するためにパッケージ化する、また
は凍結乾燥させることが可能であり、凍結乾燥製剤は、本開示に包含され、これは、投与
前に滅菌水性キャリアと混合することができる。医薬組成物のpHは、典型的には、3~
11(例えば、約5~9)または6~8(例えば、約7~8)になる。得られる固形の組
成物は、複数の単回用量単位でパッケージ化することが可能であり、各単位は、例えば錠
剤またはカプセル剤の密閉されたパッケージ中に、固定量の上記作用剤単数または複数を
含有する。固形の組成物は、柔軟な量のための容器、例えば、外用塗布用クリームまたは
軟膏に設計された絞り出しチューブ中にパッケージ化することもできる。
【0054】
治療方法
本明細書中開示されるのは、がん患者の治療法であり、本方法は以下を含む:(a)治
療の必要がある対象を同定すること;及び(b)対象に、1種以上の分子誘導システム(
MGS)ペプチド及び細胞傷害剤、ならびに薬学上許容されるキャリアを含む治療上有効
量の医薬組成物を投与すること。MGSペプチドは、本明細書中開示されるMGSペプチ
ドのどれでも可能である。細胞傷害剤は、サポリンまたはその生物学的変異体が可能であ
る。
【0055】
本明細書中開示されるのは、細胞内標的を狙う方法である。本方法は、細胞傷害剤と複
合体形成した1種以上のMGSペプチドを投与することを含むことができる。細胞傷害剤
は、細胞内標的を狙うことができる。ある態様において、細胞内標的は、リソソーム、ゴ
ルジ装置、小胞体、細胞質、または核が可能である。
【0056】
ある態様において、当業者なら、細胞内標的が不活性化され得るような細胞内標的への
指向化を誘導するように、開示される組成物または開示される融合タンパク質または開示
される融合タンパク質に有効な用量、有効なスケジュール、または有効な投与経路を決定
することができる。
【0057】
本明細書中開示される方法のいずれかについてのある態様において、本明細書中記載さ
れる組成物、複合体、または融合タンパク質は、1種以上のさらなる治療と併用すること
ができる。ある態様において、組成物、複合体、または融合タンパク質は、単独で、また
は他の生物学的活性作用剤と組み合わせて、対象に投与するのに適した組成物に含ませて
投与することができる。ある態様において、本明細書中開示される、がんを有する対象ま
たはがんを発症するリスクがある対象の治療に関する方法、組成物、複合体、または融合
タンパク質は、例えば、治療上有効量の放射線療法、免疫療法、または化学療法、あるい
はそれらの組み合わせと併用することができる。併用療法は、合剤(co-formul
ation)として、または別々に投与することができる。別々に投与される場合、併用
療法は、同時または順次に投与することができる。配合物は、当該分野の定法を用いて作
製することができる。
【0058】
上記の医薬組成物は、本明細書中開示されるとおりの組成物、複合体、または融合タン
パク質を治療上有効量で含むように配合することができる。治療的投与は、予防的使用を
包含する。遺伝子検査及び他の診断方法に基づき、医師は、担当する患者の診察において
、患者が、1種以上の自己免疫疾患に対して臨床上確定した素因または上昇した易罹患性
(場合によっては、大幅に上昇した易罹患性)を有する場合、あるいは患者が、がんに対
して臨床上確定した素因または上昇した易罹患性(場合によっては、大幅に上昇した易罹
患性)を有する場合に、予防的投与を選択することができる。
【0059】
本明細書中記載される医薬組成物は、臨床疾患の発症を遅らせる、低減する、または好
ましくは防ぐのに十分な量で、対象(例えば、ヒト対象またはヒト患者)に投与すること
ができる。したがって、態様によっては、対象は、ヒト対象である。治療用途において、
組成物は、すでに自己免疫疾患であるまたは自己免疫疾患と診断された対象(例えば、ヒ
ト対象)に、兆候もしくは症候を少なくとも部分的に改善する、または症状、その合併症
、及びその帰結の症候の進行を阻害(及び好ましくは抑止)するのに十分な量で、投与さ
れる。これを達成するのに十分な量が、「治療上有効量」と定義される。医薬組成物の治
療上有効量は、治癒を達成するが、その帰結は達成可能な複数の帰結の中の1つにすぎな
い量であることも可能である。上記のとおり、治療上有効量は、がんの発症または進行を
遅らせる、妨害する、もしくは予防する治療を提供する量、または自己免疫疾患もしくは
自己免疫疾患の症候を寛解させる量を含む。回復は、治療を受けた個体において加速され
る可能性がある。
【0060】
態様によっては、がんは、原発性、続発性、難治性、または再発腫瘍の場合がある。あ
る態様において、がんは、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、または膵癌の場合がある。
【0061】
この使用に有効な量は、がんの重篤度ならびに対象の体重及び全般的な状態及び健康に
依存する可能性がある。初期投与及びブースター投与に適したレジメンは、初期投与及び
それに続く、時間単位、日数単位、週単位、または月単位で間隔を開けた1回または複数
回のその後の投与の繰り返し用量により、代表される。
【0062】
本明細書中開示される医薬組成物中の複合体または融合タンパク質の合計有効量は、哺
乳類に、単回用量として、ボーラスまたは点滴により比較的短期間の時間をかけてのいず
れかで投与することができ、あるいは複数用量をより長い時間をかけて投与する分割治療
プロトコルを用いて投与することができる(例えば、4~6、8~12、14~16、も
しくは18~24時間ごと、または2~4日ごと、1~2週間ごと、または月に1回の用
量)。あるいは、治療上有効な血中濃度を維持するのに十分な連続静脈点滴も、本開示の
範囲内にある。
【0063】
本明細書中記載される組成物内に存在する、及び哺乳類(例えば、ヒト)に対して適用
される本明細書中開示されるとおりの方法で使用される、毒素(または細胞傷害剤)の治
療上有効量は、年齢、体重、及び他の全般的条件(上記したとおり)の個体差を考慮して
、当業者が決定することができる。本開示の組成物、複合体、及び融合タンパク質は、血
清及び血流中で安定である可能性があるため、より具体的な場合によっては、任意の個別
の構成要素を含む組成物、複合体、及び融合タンパク質の投薬量は、個別の構成要素のい
ずれかが非結合の場合の有効量よりも低い(または高い)ことが可能である。したがって
、態様によっては、投与される毒素は、複合体または融合タンパク質の一部として投与さ
れる場合、毒素が単独で投与されるまたは複合体もしくは融合タンパク質の一部としては
投与されない場合に比べて、上昇した有効性または低下した副作用を有する可能性がある
【0064】
ベクター
開示されるのは、開示される組成物の1種または複数用にコードする核酸配列を含むベ
クターである。態様によっては、ベクターは、開示される1種以上のMGSペプチドをコ
ードすることができる核酸配列のみを含む。
【0065】
キット
上記の材料ならびに他の材料は、開示される方法を実行するのに、または実行を助ける
のに有用なキットとして、任意の適切な組み合わせでまとめてパッケージ化することがで
きる。所定のキット中のキット構成要素が、開示される方法で一緒に使用されるように設
計されている及びそれに適合していれば、便利である。例えば、開示されるのは、開示さ
れる組成物を1種以上含むキットである。
【0066】
態様によっては、キットは、MGSペプチド及び細胞傷害剤、ならびに複合体形成の説
明書を含む。
【0067】
態様によっては、キットは、1種以上のMGSペプチドをコードする核酸配列を含む細
胞株を含む。
【実施例0068】
実施例1:HCC15.2は、がん細胞に対して特異性を示し、がん細胞へと内部移行
する
ペプチドが臨床上有用な試薬であるためには、正常細胞とがん細胞を識別することが重
要となる可能性がある。図1は、MGSペプチド、HCC15.2が、がん細胞に蓄積し
、対照に比べて特異的であることを示す。HCC15.2結合は、フローサイトメトリー
分析により分析した(図1を参照)。HCC15.2は、正常HBECには結合しないが
、LC細胞株H1299には結合する。結合は、配列依存性であり、単一の組織病理学的
クラスに関して特異的ではなかった(図2を参照)。
【0069】
標準固相FMOC技法を用いて、Prelude合成装置(Protein Tech
nologies Inc.)でMGSペプチドを合成した。MGSペプチドを、逆相H
PLCによりC18分取カラムで純度>95%に精製し、MALDI-TOFにより確認
した。最適化HCC15.2ペプチド配列は、Ac-FHAVPQSFYT-PEG11
-ビオチンで分子量2394Daを有するもの、及びAc-FHAVPQSFYT-PE
G11-Cで分子量1940Daを有するものである。四量体型HCC15.2を、以前
に公表されたプロトコルにより合成した。原液は、PBS(pH7.4)で作成し、濃度
は、Nanodrop 2000(Thermo Fisher Scientific
)で280nMでの吸光度により測定した。
【0070】
フローサイトメトリー。ビオチン化ペプチドを、RTで30分間、ストレプトアビジン
-R-フィコエリトリン(1:1)と複合体形成させた。ストレプトアビジンに残存する
結合部位を、RPMI 1640でクエンチし、溶液を25nMに希釈した。腫瘍細胞を
、12ウェルプレート中、90%集密度に成長させ、次いで、ペプチド色素複合体500
μlとともに、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、ペプチドを除去し、細胞
に、PBSで5分間の洗浄を3回、酸でのリンスを2回、PBSでのリンスを1回行った
。細胞が浮き上がってくるまでトリプシン300μlを加え、次いで700μlのRPM
I+5%のFBSを加えてトリプシンを不活性化した。細胞をフローチューブに移し、暗
中で氷上に置いた。BD FACSCelestaでフローサイトメトリーを行い、デー
タは、Flowingソフトウェアで分析した。陰性対照中細胞の<5%を含有する領域
を確立し、陽性細胞の%に蛍光強度を乗算することにより、各試料のMcGuireスコ
アを計算する。
【0071】
フローサイトメトリー実験のため、細胞を、色素を有するペプチド(例えば、MGSペ
プチド)で1時間処理する。ペプチドが細胞(複数可)に進入すれば、色素も細胞(複数
可)に進入することになる(図11を参照)。次に、細胞を洗浄し、試験管に入れて、フ
ローサイトメトリーを行う。フローサイトメーターは、10,000個以上の個別細胞の
輝度を測定することができる。
【0072】
共焦点顕微鏡観察。GFPで標識された細胞小器官特異的マーカーを有するプラスミド
を、Addgeneから購入し、電気穿孔によりH1299細胞に入れた。G418選別
後、GFP標識化腫瘍細胞を、試験の前日に8ウェルチャンバースライドに播種した。ビ
オチン化ペプチドを、RTで30分間、ストレプトアビジン-AlexaFluor 5
55(1:1)と複合体形成させ、RPMIでクエンチし、次いでウェルに50nMで加
えた。1時間インキュベーション後、細胞に、PBSで5分間の洗浄を3回、酸でのリン
スを2回、PBSでのリンスを1回行った。細胞を、10分間2%ホルムアルデヒドに入
れて固定し、PBSで洗浄し、マウントメディアに加えたDAPIで染色し、カバーガラ
スを乗せた。顕微鏡観察は、Zeiss LSM 700にPln Apo 63×/1
.4 oil DIC III対物レンズを装着して行った。ImageJソフトウェア
の最大強度投影を使用して、圧縮画像を得た。
【0073】
顕微鏡観察実験のため、細胞を、色素を有するペプチド(例えば、MGSペプチド)で
1時間処理する。ペプチドが細胞(複数可)に進入すれば、色素も細胞(複数可)に進入
することになる(図1を参照)。次に、細胞を洗浄し、スライドガラスに固定する。細胞
の他の部分(例えば、細胞膜、細胞小器官、または核)を染色する。蛍光顕微鏡観察を行
い、細胞中の色素を評価する。共焦点顕微鏡観察を用いて、3D画像を組み立てる(MR
Iのように)のに使用可能な一連の層別画像を撮影する。
【0074】
実施例2:HCC15.2内部移行は、受容体が介在する
HCC15.2は、内部移行することができ、この内部移行は、受容体が介在すること
を示す実験が行われた(図3を参照)。より具体的には、HCC15.2は、NSCLC
及び他の腫瘍細胞の特定のサブセットに結合する(図12を参照)。ファージブロッキン
グ(Phage blocking)を対照として用いた。HCC15.2は、細胞株の
特定パネルにより内部移行したが、他ではしなかった。結果は、受容体が介在する内部移
行は配列特異的であったことも示す。HCC15.2を加える前に2分間トリプシンで処
理すると、内部移行は起こらなかった。また、4℃でもHCC15.2は内部移行しない
【0075】
図4は、HCC15.2の四量体化が、受容体介在型内部移行を顕著に改善することは
ないことを示す。この結果は、FOX3分子誘導システムを通じて研究及び同定されたペ
プチドの大部分が結合/内部移行に非相加的上昇を示したことを考えると、驚くべきこと
である。
【0076】
実施例3:HCC15.2の切断
図5及び図15は、HCC15.2ペプチドのN末端及びC末端での切断により、最小
結合配列が明らかになったことを示す。
【0077】
図6は、アセチル化が、切断型ペプチドの結合を改善することを示す。
【0078】
実施例4:ペプチドは、リソソームと共存する。
図7は、MGSペプチドがリソソームと共存し、時間とともにリソソーム中に蓄積する
ことを示す(図8及び図16を参照)。
【0079】
実施例5:サポリンと複合体形成したHCC15.2。
サポリンと複合体形成したHCC15.2を細胞生存アッセイにおいて試験するため、
さらなる実験を行った(図9及び表2を参照)。この目的で、腫瘍細胞株を、黒色壁透明
平底96ウェルプレートに播種した。翌日、濃度勾配をつけたHcc15.2-サポリン
、サポリン単独、または処理なしを用いて、培地を交換した。1時間インキュベーション
後、処理を除去し、培養培地に交換した。72時間後、Cell Titer Glo(
登録商標)を使用して細胞生存度を測定し、LjL Biosystems製のAnal
yst HTで蛍光を測定した。Graphpad PrizmでIC50を計算した。
【0080】
がん細胞殺傷アッセイを行った(図22を参照)。がん細胞を、皿にいれた。24時間
後、細胞に、異なる用量のペプチドサポリンを加えて1時間おいた。ペプチドサポリンを
洗い落とし、細胞をさらに72時間放置した。生細胞を測定するアッセイを行った。図2
1は、HCC15.2が、in vitroで、がん細胞を標的としてサポリンを向かわ
せることを示す。これらの結果は、サポリンが、それ自身では細胞に進入しなかったが、
必要とされるMGSペプチド(例えば、HCC15.2)と複合体形成している場合、サ
ポリンが細胞に進入したことを実証する。これらの結果は、HCC15.2サポリンが、
標的外効果を低下させ、細胞内小胞を回避することも示す。
表2.複数の細胞株における細胞生存度。
【表2】
【0081】
図10は、サポリンと複合体形成したHCC15.2が、ヒトNSCLC異種移植片モ
デルにおいて、遊離サポリンと比較して腫瘍成長を減少させることを示す。
【0082】
実施例6:四量体化は、最大結合半量を顕著に改善することはない。
フローサイトメトリーを行い、KDを測定する。細胞を、ペプチド-色素の濃度を上昇
させながら、1時間処理する。細胞に進入するまたは入っていくMGSペプチド(複数可
)は、色素を共に連れて行く。細胞を洗浄し、試験管に入れて、フローサイトメトリーを
行う。フローサイトメーターは、10,000個以上の個別細胞の輝度を測定することが
できる。各濃度を、定量し、プロットする(図13及び図14を参照)。曲線を数学的に
データにあてはめると、中間点がKDである(例えば、結合がどのくらい良好であるかの
測定)。
【0083】
実施例7:HCC15.2標的指向化NIR色素は、in vivoで腫瘍中に蓄積す
る。
In vivo画像化。H2009腫瘍細胞を、106細胞/100μlで滅菌PBS
に懸濁させ、メス胸腺欠損ヌードマウス(Jackson Labs.)の側腹部に皮下
注射した。システイン標識化ペプチドを、滅菌PBS(pH7.4)中で1時間、マレイ
ミドAlexafluor-750 C5(1:1.1)と複合体形成させた。ペプチド
色素複合体を、滅菌PBSで100μlあたり色素15μgに希釈し、100ulを、4
匹/群のマウスに外側尾静脈から静脈内注射した。12、24、48、及び72時間の時
点で、マウスをIsothesiaで麻酔し、IVISで動物の全体画像を撮影した。次
いで、72時間の時点で、Ex vivoで腫瘍及び臓器を、重量測定し、撮影した。
【0084】
In vivo動物撮影試験を行った。これらの実験のため、ヒトがん細胞を、マウス
の皮下に接種し、腫瘍をある特定寸法まで成長させた。腫瘍が予め定めた寸法になった時
点で、色素を持ったペプチドを、IV注射した。12、24、48、及び72時間の時点
で、動物を麻酔し、撮影した。72時間の時点で、臓器及び腫瘍を撮影した。黄色は、ペ
プチドが大半であり、海老茶/赤色は、ペプチドが少ないということであり、無色は、ペ
プチドが非常に少ない/ないということである。HCC15.2標的指向化NIR色素は
、腫瘍中に蓄積し(図17を参照)、時間が経過しても腫瘍に保持されている(図18
参照)。図19及び図20は、ex vivo画像化の結果を示す。
【0085】
皮下腫瘍成長アッセイ。H2009腫瘍を、胸腺欠損ヌードマウス(Jackson
Labs)の側腹部の皮下で確立させた。ストレプトアビジン(SAZAP)と複合体形
成したサポリンを、Advanced Targeting Systemsから購入し
、最適化されたビオチン化Hcc15.2及び対照ペプチドと、1:1で複合体形成させ
た。腫瘍が寸法約1003mMに到達した時点で、マウスに、非標的指向化サポリン(M
GSペプチドなし)または15.2-サポリン複合体を外側尾静脈からIVで注射した、
あるいは何も注射しなかった。標的指向化及び非標的指向化サポリン毒素は、2.5週間
、約7ug/用量で、週に2回投与された。腫瘍は、盲検で、1日おきにノギスで測定し
、腫瘍体積を、以下の式を用いて計算した
π/6*(長さ*幅)^3/2。
【0086】
次の実験セットのため、ヒトがん細胞を、マウスの皮下に接種し、腫瘍をある特定の予
め定めた寸法まで成長させた。腫瘍が所定の寸法になった時点で、サポリンと複合体形成
または連結したペプチドを、IV注射した。動物には、2.5週間にわたり、7または7
.5μg/用量で5回の用量を投与した。腫瘍は、1日おきに測定した。図23は、サポ
リンのHCC15.2による標的指向化が、腫瘍成長を顕著に遅くしたことを示す。
【0087】
実施例8:H1299.3ペプチドのさらなる特性評価。
元来のMGSペプチドのアミノ酸1~5番及び11~20番を融合させた修飾MGSペ
プチド(配列番号31):LQWRRNFGVWARYRL(配列番号31)を評価した
。このMGSペプチドは、そのがん特性を維持しており、オートファゴソームに送り込む
能力を上昇させている。アセチル化は、in vivoでの分解から保護し、溶解性を改
善する。このMGSペプチドは、動物において、NSCLC腫瘍に対する能力に磨きがか
かる(図27を参照)。データは、非アセチル化型では腫瘍標的指向性は全く観察されな
かったことを示す。このMGSペプチド(例えば、修飾15量体)は、心臓、肺、及び腎
臓腫瘍で>2倍の減少を有する(図27を参照)。1299.3Ac-15量体と細胞の
結合結果を、図28に示す。
【0088】
細胞培養。ヒトNSCLC細胞株が提供された。細胞は、L-グルタミン及び5%FB
Sを含むRPMI 1640中、37℃及び5%CO2で培養された。
【0089】
実施例9:他のペプチドと合わせたサポリンのIn vitro送達。
図29は、選択されたMGSペプチドと複合体形成したまたは連結したサポリンを投与
した様々な細胞株におけるIC50を示す。
【0090】
当業者には明らかながら、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明に様
々な修飾及び改変を行うことができる。本発明の他の態様は、本明細書中開示される本発
明の仕様及び実行を検討することで、当業者に明らかとなるだろう。明細書及び実施例は
、例示としてのみ見なされ、本発明の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲により示
されることが意図される。
【0091】
本明細書中記載される方法及び組成物の具体的な実施形態に対する多くの等価物が、当
業者にはわかるだろう、または定法実験に過ぎないものを用いて確認することができるだ
ろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23
図24-1】
図24-2】
図25-1】
図25-2】
図26
図27
図28
図29
図30-1】
図30-2】
【配列表】
2024012517000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【外国語明細書】