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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125175
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】研磨パッド及びウェハ研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/00 20060101AFI20240906BHJP
   B24D 3/32 20060101ALI20240906BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240906BHJP
   B24D 3/02 20060101ALI20240906BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20240906BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20240906BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20240906BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B24D7/00 Z
B24D3/32
B24D3/00 320B
B24D3/02 310C
B24B9/00 601H
B24B37/24 C
B24B37/24 E
B24B57/02
B24B55/02 Z
H01L21/304 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015235
(22)【出願日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2023032443
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594002288
【氏名又は名称】株式会社BBS金明
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】後藤 崇将
(72)【発明者】
【氏名】岸本 正俊
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】昌子 沙里
【テーマコード(参考)】
3C047
3C049
3C063
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047FF09
3C047GG00
3C049AA04
3C049AA09
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB04
3C049AC04
3C049BA02
3C049BA04
3C049BA05
3C049CB01
3C049CB03
3C049CB10
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA02
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3C063BC03
3C063BC09
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3C063BD08
3C063BG18
3C063EE10
3C158AA04
3C158AA09
3C158AA14
3C158AA16
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3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158CB01
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3C158CB10
3C158DA17
3C158EA28
3C158EB01
3C158EB09
3C158EB10
3C158EB19
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
3C158EC08
5F057AA02
5F057AA05
5F057AA21
5F057BA11
5F057BB09
5F057CA09
5F057DA02
5F057EB09
5F057EB13
(57)【要約】
【課題】円盤形状のウェハの外周縁部を研磨する場合において、より研磨効率が高いとともに、より研磨不良が生じ難く、かつ研磨後のウェハの洗浄性に優れた研磨パッドを提供する。
【解決手段】本発明の研磨パッド1は、円盤形状のウェハ3の外周縁部を研磨するためのものである。研磨パッド1は、研磨面が研磨体によって構成され、研磨体は母材と研磨粒子とを含んでいる。母材は、バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成されている。研磨粒子は母材内又は気孔内に保持されている。研磨粒子はダイヤモンドである。密度は0.58~0.81g/cm3であり、デュロメータ硬度が16~27であり、弾性率が21.5~37.5N/mm2である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状のウェハの外周縁部を研磨するための研磨パッドであって、
バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成された母材と、前記母材内又は前記気孔内に保持された研磨粒子とを含み、研磨面を構成する研磨体を有し、
前記研磨粒子がダイヤモンドであり、
デュロメータ硬度が16~27であり、
密度が0.58~0.81g/cm3であり、
弾性率が21.5~37.5N/mm2であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記研磨体は、前記母材内又は前記気孔内に保持されたフィラーを含む請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記繊維は繊維ウェブによって構成され、前記バインダ樹脂、前記研磨粒子、前記気孔及び前記フィラーは前記繊維ウェブ内に内包されている請求項2記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記バインダ樹脂は熱可塑性ポリウレタン又はポリフッ化ビニリデンであり、前記繊維はポリピロピレンである請求項3記載の研磨パッド
【請求項5】
前記バインダ樹脂は12~14体積%であり、前記研磨粒子は2.2~14.3体積%であり、前記繊維は5.1~10.2体積%であり、前記フィラーは8~24体積%であり、前記気孔は34.6~68.5体積%である請求項4記載の研磨パッド。
【請求項6】
ウェハと研磨パッドと研磨液とを用意する第1工程と、
前記ウェハと前記研磨パッドとの間に前記研磨液を供給しつつ、前記ウェハを前記研磨パッドにより研磨する第2工程とを備え、
前記ウェハは、中心軸線と、前記中心軸線と略直交する方向に延びる表面と、前記表面と逆に位置し、前記中心軸線と略直交する方向に延びる裏面と、前記表面の外周縁と前記裏面の外周縁とを接続する外周面と、前記表面又は前記裏面と前記外周面とがなす外周縁部とを有し、
前記研磨パッドは、バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成された母材と、前記母材内又は前記気孔内に保持された研磨粒子とを含み、研磨面を構成する研磨体を有し、
前記研磨パッドは、前記研磨粒子がダイヤモンドであり、
デュロメータ硬度が16~27であり、
密度が0.58~0.81g/cm3であり、
弾性率が21.5~37.5N/mm2であり、
前記第2工程では、前記研磨液を水としつつ、前記外周縁部に前記研磨面を所定押圧力で押圧し、かつ前記ウェハ及び前記研磨パッドの少なくとも一方を前記中心軸線周りで相対回転させることを特徴とするウェハ研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッド及びウェハ研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4に従来の研磨パッドが開示されている。特許文献1~3の研磨パッドは、不織布にペーストを含浸し、ペースト中の溶剤を除去したものである。特許文献1のペーストは、ウレタンと、ジメチルホルムアミド等の溶剤と、SiO2等の研磨粒子と、炭酸ナトリウム等のアルカリ微粒子とからなる。特許文献2のペーストは、エーテル系ウレタンと、N,N-ジメチルホルムアミド等の溶剤とからなる。特許文献3のペーストは、ウレタンと、溶剤と、撥水剤とからなる。乾燥等による溶剤の除去により、ウレタンは不織布に結合した状態で固化している。特許文献4の研磨パッドは、バインダ樹脂、研磨粒子及び溶剤を混合したペーストを用いて製造したものである。
【0003】
特許文献1の研磨パッドは、半導体素子を製造するために用いられるシリコン等からなる円盤形状のウェハの外周縁部を研磨するために用いられる。すなわち、回転中心周りに回転可能な回転テーブルにウェハが保持される。この際、ウェハの中心軸線が回転テーブルの回転中心に位置される。一方、研磨パッドの外周端面がウェハの外周縁部と当接するようにスピンドルの上端に研磨パッドを設ける。そして、ウェハの外周縁部と研磨パッドの外周端面との間に研磨液を供給するとともに所定の荷重を付加しつつ、回転テーブル及びスピンドルを回転させる。これにより、ウェハの外周縁部を研磨できる。このため、ウェハの外周縁部による半導体デバイスの欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-46838号公報
【特許文献2】特開2019-118981号公報
【特許文献3】特開2020-49639号公報
【特許文献4】特許第5511266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発明者らの試験によれば、従来の研磨パッドは、円盤形状のウェハの外周縁部を研磨する場合、研磨効率が十分でないとともに、柔軟性と圧縮後の回復率とが低く、ウェハに押し当てる際の追随性が悪い。このため、研磨に長時間を要するとともに、研磨不良が生じるおそれがあった。また、研磨パッドが研磨砥粒を含まないことにより、遊離砥粒研磨として、研磨砥粒を含む研磨液を用いると、研磨後のウェハに付着した残留した研磨粒子であるパーティクルを洗浄する必要性から、洗浄性に問題がある。
【0006】
特に、ウェハがパワー半導体を製造するために用いられ得るSiCからなる場合、より高い研磨能力が求められる。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、円盤形状のウェハの外周縁部を研磨する場合において、より研磨効率が高いとともに、より研磨不良が生じ難く、かつ研磨後のウェハの洗浄性に優れた研磨パッドを提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、円盤形状のウェハの外周縁部をより高い効率で研磨できるとともに、より研磨不良が生じ難く、かつ研磨後のウェハの洗浄性に優れたウェハの研磨方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研磨パッドは、円盤形状のウェハの外周縁部を研磨するための研磨パッドであって、
バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成された母材と、前記母材内又は前記気孔内に保持された研磨粒子とを含み、研磨面を構成する研磨体を有し、
前記研磨粒子がダイヤモンドであり、
密度が0.58~0.81g/cm3であり、
デュロメータ硬度が16~27であり、
弾性率が21.5~37.5N/mm2であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のウェハ研磨方法は、ウェハと研磨パッドと研磨液とを用意する第1工程と、
前記ウェハと前記研磨パッドとの間に前記研磨液を供給しつつ、前記ウェハを前記研磨パッドにより研磨する第2工程とを備え、
前記ウェハは、中心軸線と、前記中心軸線と略直交する方向に延びる表面と、前記表面と逆に位置し、前記中心軸線と略直交する方向に延びる裏面と、前記表面の外周縁と前記裏面の外周縁とを接続する外周面と、前記表面又は前記裏面と前記外周面とがなす外周縁部とを有し、
前記研磨パッドは、バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成された母材と、前記母材内又は前記気孔内に保持された研磨粒子とを含み、研磨面を構成する研磨体を有し、
前記研磨パッドは、前記研磨粒子がダイヤモンドであり、
密度が0.58~0.81g/cm3であり、
デュロメータ硬度が16~27であり、
弾性率が21.5~37.5N/mm2であり、
前記第2工程では、前記研磨液を水としつつ、前記外周縁部に前記研磨面を所定押圧力で押圧し、かつ前記ウェハ及び前記研磨パッドの少なくとも一方を前記中心軸線周りで相対回転させることを特徴とする。
【0010】
本発明の研磨パッドは、研磨粒子がダイヤモンドであるため、優れた研磨効率を実現できる。
【0011】
また、発明者らの試験によれば、本発明の研磨パッドで円盤形状のウェハの外周縁部を研磨すれば、研磨粒子としてのダイヤモンドでウェハを研磨する際の追随性に優れ、研磨不良が生じ難い。さらに、本発明の研磨パッドは、研磨面を構成する研磨体が無数の研磨粒子を含むため、研磨砥粒を含まない研磨液を用いることができ、研磨後のウェハに残留する研磨粒子であるパーティクルが少ないことから、研磨後のウェハの洗浄性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円盤形状のウェハの外周縁部を研磨する場合において、より研磨効率が高いとともに、研磨不良がより生じ難く、かつ研磨後のウェハの洗浄性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試験品1~20の研磨パッドの断面図である。
図2図2は、実施例1~20及び比較例1~4のウェハの研磨方法を示す模式断面図である。
図3図3は、試験品3の研磨パッドの300倍のSEM写真である。
図4図4は、試験品3の研磨パッドの3000倍のSEM写真である。
図5図5は、試験品7の研磨パッドの300倍のSEM写真である。
図6図6は、試験品7の研磨パッドの3000倍のSEM写真である。
図7図7は、試験品11の研磨パッドの300倍のSEM写真である。
図8図8は、試験品11の研磨パッドの3000倍のSEM写真である。
図9図9は、試験品15の研磨パッドの300倍のSEM写真である。
図10図10は、試験品15の研磨パッドの3000倍のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の研磨パッドは、研磨面が研磨体によって構成され、研磨体は母材と研磨粒子とを含んでいる。母材は、バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成されている。研磨粒子は母材内又は気孔内に保持されている。
【0015】
バインダ樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニル・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル等を採用することが可能である。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。
【0016】
研磨粒子はダイヤモンドである。研磨体は、母材内又は気孔内に保持されたフィラーを含むことが好ましい。フィラーとしては、ダイヤモンドより軟質の無機粉末、無機繊維、樹脂粉末、樹脂繊維、金属粉末又は金属繊維を採用することができる。フィラーは、研磨粒子の凝集を防止するとともに、研磨粒子を弾性的に保持し、研磨時に研磨粒子に作用する反力を緩和すると推察している。また、フィラーの材質によっては、耐摩耗性が向上する。
【0017】
フィラーとして用いる無機粉末としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、SiC、炭酸カルシウム、粘土等が挙げられる。フィラーとして用いる無機繊維としては、ガラスファイバー、カーボンファイバー等が挙げられる。フィラーとして用いる樹脂粉末や樹脂繊維としては、既に硬化している熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の粉末又は繊維を採用することができる。フィラーとして用いる金属粉末としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。フィラーとして用いる金属繊維としては、鉄繊維、銅繊維、アルミニウム繊維等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。
【0018】
繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリピロピレン(PP)繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂等を採用することができる。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。また、繊維長や太さなどの形状を選択することも可能である。
【0019】
研磨パッドの繊維は、予め成形された繊維ウェブに基づいてもよく、予め成形されていないものであってもよい。繊維ウェブとは、縦方向に繊維を配列したり、繊維の配列をクロスさせたり、繊維をランダムに配列したりして繊維を重ねたものである。不織布は繊維ウェブの繊維同士を結合させたものである。
【0020】
本発明の研磨パッドは以下の製造方法によって製造可能である。この製造方法は、バインダ樹脂、前記バインダ樹脂を溶解する溶剤及び無数の研磨粒子を含有するペーストと、繊維ウェブとを準備する準備工程と、
前記繊維ウェブに前記ペーストを含浸させ、含浸体を形成する含浸工程と、
前記含浸体から前記溶剤を除去して前記バインダ樹脂を固化する固化工程とを備えている。
【0021】
この製造方法で得られる研磨パッドの研磨体は、繊維を構成する繊維ウェブと、繊維ウェブ内に内包されたバインダ樹脂及び研磨粒子とを含む。この場合、繊維が繊維ウェブとして予め成形されているため、研磨パッドの生産性が高い。
【0022】
ペーストは、バインダ樹脂、無数の研磨粒子の他、溶剤を含む。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等を採用することができる。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。溶剤は、バインダ樹脂に応じて種々選択される。
【0023】
また、ペーストは、炭酸ナトリウム、ピペラジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、炭酸カリウム、酸化マグネシウム等のアルカリ微粒子を含んでいてもよい。また、ペーストは、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤、炭化水素系撥水剤及び金属化合物系撥水剤等の撥水剤を含んでもよい。さらに、ペーストは、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料、アゾ顔料、多環顔料等の有機顔料等の顔料を含んでもよい。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。
【0024】
研磨液を用いる場合、研磨液は純水であってもよく、油性であってもよく、酸性又はアルカリ性の薬品を含むものであってもよい。
【0025】
発明者らの試験結果によれば、バインダ樹脂は熱可塑性ポリウレタン又はポリフッ化ビニリデンであり、繊維はポリピロピレンであることが好ましい。この場合、ウェハに押し当てる際に優れた追随性を発揮する。
【0026】
また、発明者らの試験結果によれば、バインダ樹脂は9.5~34.6体積%であり、研磨粒子は2.2~14.3体積%であり、繊維は5.1~10.2体積%であり、フィラーは0~17.6体積%であり、気孔は34.6~68.5体積%であることが好ましい。この場合、耐摩耗性に優れるとともに、研磨効率に優れる。
【0027】
(試験)
【0028】
表1に示すように、繊維ウェブ、バインダ樹脂及び研磨粒子の粒径の組み合わせを変え、以下の製造方法によって試験品11~20の研磨パッド1を製造した。
【0029】
【表1】
【0030】
まず、準備工程として、以下のバインダ樹脂、溶剤、研磨粒子及び繊維ウェブを準備した。繊維ウェブは、図1に示す製造する研磨パッド1と同じく、第1回転軸心Pを中心とする円盤形状に形成されている。
【0031】
(バインダ樹脂)
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)
TPU(熱可塑性ポリウレタン)
(溶剤)
NMP(N-メチル-2-ピロリドン)
(研磨粒子)
ダイヤモンド(平均粒径:1μm、5μm、10μm、20μm)
(繊維ウェブ)
PP(ポリプロピレン)繊維100%、目付量200g/m2
PP(ポリプロピレン)繊維100%、目付量400g/m2
(フィラー)
シリカ(SiO2)(平均粒径:200nm)
【0032】
そして、表1に示すように、繊維ウェブとバインダ樹脂と研磨粒子の粒径とペーストとの組み合わせを変えるとともに、バインダ樹脂、研磨粒子、フィラー及び溶剤を表1に示す質量部で混合し、ペーストとした。
【0033】
この際、研磨砥粒については、粒径が異なっても、研磨パッド1中の研磨粒子の数が同じになるようにした。また、バインダ樹脂が粉末状のPVDFであれば、研磨粒子とバインダ樹脂とを乾式混合し、混合物を溶剤とフィラーとを混ぜたスラリーに溶かして、研磨粒子をペースト内で分散させた。一方、バインダ樹脂がビーズ状のTPUであれば、先にバインダ樹脂を溶剤及びフィラーとともにスラリーに溶かし、スラリーに研磨粒子を添加し、自転・公転式ミキサーにて研磨粒子をペースト内で分散させた。
【0034】
そして、含浸工程として、各繊維ウェブの表裏面に荷重を掛けながら各ペーストを接触させ、各繊維ウェブに各ペーストを含浸して含浸体とした。次いで、固化工程として、得られた各含浸体を乾燥させることにより、各含浸体から溶剤を除去し、バインダ樹脂を固化した。こうして、各研磨体が得られる。各研磨体の外周部分及び内周部分を第1回転軸心Pを中心として切除し、試験品1~20の研磨パッド1を得た。
【0035】
各研磨パッド1は、図1に示すように、第1回転軸心Pを中心とする円盤形状に形成されている。図3に試験品3の研磨パッドの300倍のSEM写真を示し、図4に試験品3の研磨パッドの3000倍のSEM写真を示す。図5に試験品7の研磨パッドの300倍のSEM写真を示し、図6に試験品7の研磨パッドの3000倍のSEM写真を示す。図7に試験品11の研磨パッドの300倍のSEM写真を示し、図8に試験品11の研磨パッドの3000倍のSEM写真を示す。図9に試験品15の研磨パッドの300倍のSEM写真を示し、図10に試験品15の研磨パッドの3000倍のSEM写真を示す。
【0036】
図3~10に示すように、各研磨パッド1は表裏の研磨面を構成する研磨体からなる。各研磨体は母材と研磨粒子とを含んでいる。各母材は、バインダ樹脂及び繊維からなり、複数の気孔が形成されている。研磨粒子は母材内又は気孔内に保持されている。研磨体は、繊維を構成する繊維ウェブと、繊維ウェブ内に内包されたバインダ樹脂及び研磨粒子とを含む。繊維が繊維ウェブとして予め成形されているため、研磨パッド1の生産性が高い。
【0037】
試験品1~20の研磨パッド1におけるバインダ樹脂、研磨粒子、繊維、フィラー及び気孔の体積%は表2に示すとおりである。より詳細には、試験品1~16の研磨パッド1は母材がフィラーを有し、試験品17~20の研磨パッド1は母材がフィラーを有していない。
【0038】
【表2】
【0039】
また、こうして得られた試験品1~20の研磨パッド1の研磨面の密度(g/cm3)、デュロメータ硬度及び弾性率(N/mm2)を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
図2に示す研磨装置と、SiCからなる研磨前のウェハ3(直径6inch)を用意した。研磨装置は、BBS金明製「FINE SURFACE E-200」であり、ウェハ3を回転中心Q周りに回転可能な図示しないドラムと、チャック5とを備えている。
【0042】
ウェハ3は、中心軸線Qと、中心軸線Qと略直交する方向に延びる表面3aと、表面3aと逆に位置し、中心軸線Qと略直交する方向に延びる裏面3bと、表面3aの外周縁と裏面3bの外周縁とを接続する外周面3cと、表面3aと外周面3cとがなす表面側外周縁部3dと、裏面3bと外周面3cとがなす裏面側外周縁部3eとを有している。
【0043】
研磨装置のチャック5は、試験品1~20の研磨パッド1を保持して所定回転数で回転可能であるとともに、研磨パッド1の研磨面をウェハ3の外周面3c、表面3d及び裏面3eに対して変位可能な角度θ、所定荷重で押圧できるようになっている。
【0044】
θ=90°として外周面3cを研磨するTOP部の条件と、θ=21°として表面側外周縁部3dを研磨するACF部の条件と、θ=111°として裏面側外周縁部3eを研磨するBCF部の条件とは以下のとおりである。
<TOP部>
ドラムの回転数:200rpm(遠心力で押し付け)
上下スピード:1.5mm/秒
チャック5の回転数:10rpm
【0045】
<ACF部及びBCF部>
ドラムの回転数:300rpm(遠心力で押し付け)
荷重:5kgf
チャック5の回転数:10rpm
【0046】
表4に示すように、実施例1~20では、試験品1~20のうちのいずれかを用いて、第1加工又は第1~3加工を行った。この際、研磨液として、純水を用いた。なお、A/BCFの加工時間はACF部及びBCF部双方でそれぞれ加工した時間を示している。
【0047】
【表4】
【0048】
一方、比較例1では、不織布パッド(ポリエステル繊維100%、繊維径14μm、3.0mm厚)を研磨パッド1として第1加工を行った。この際、研磨液として、市販のコロイダルシリカスラリー(平均粒径50nmのSiO2を10000ppm以下で含む。)を用いた。加工時間は180分である。
【0049】
比較例2では、LHAパッド(バインダ樹脂(PVDF):11質量%、研磨粒子:34質量%及び溶剤:56質量%を混合したペーストを用いて特許第5511266号公報記載の製造方法によって製造したもの)を研磨パッド1として第1加工を行った。この際、研磨液として、市販のルブリカント(KMnO4:0.25mol)を用いた。加工時間は115分である。
【0050】
比較例3では、シリカ含有研磨パッド(PP製の目付量が200g/m2の繊維ウェブに平均粒径0.2μmのSiO2を12体積%で含羞しているもの)を研磨パッド1として第1加工を行った。この際、研磨液として、市販のルブリカント(KMnO4:0.25mol)を用いた。加工時間は180分である。
【0051】
比較例4では、シリカ含有研磨パッド(PP製の目付量が400g/m2の繊維ウェブに平均粒径0.2μmのSiO2を11体積%で含羞しているもの)を研磨パッド1として第1加工を行った。この際、研磨液として、市販のルブリカント(KMnO4:0.25mol)を用いた。加工時間は180分である。
【0052】
研磨時間と磨き残しの有無と、研磨後のウェハ3の表面粗さと、パーティクルと、研磨液とを評価した。この際、研磨後のウェハ3の表面粗さは、外周面3c(TOP)、表面側外周縁部3d(ACF)及び裏面側外周縁部3e(BCF)で評価した。
【0053】
研磨時間と磨き残しの有無に関して、研磨時間が50分以内であり、磨き残しが無ければ◎、研磨時間が50分を超え、100分以内であり、かつ磨き残しが無ければ〇、研磨時間が100分を超え、150分以内であり、かつ磨き残しが無ければ△、研磨時間が150分を超え、かつ磨き残しが有れば×とした。
【0054】
研磨後のウェハの表面粗さに関しては、Saが10nm未満であれば◎、Saが10nm以上、20nm未満であれば〇、Saが20nm以上、50nm未満であれば△、Saが50nm以上あれば×とした。
【0055】
パーティクルに関しては、電子顕微鏡の観察判定により、5μm×5μmの面内において、パーティクル数が0個であれば◎、0個を超え、5個未満であれば〇、5個以上、10個未満であれば△、10個以上であれば×とした。
【0056】
研磨液に関しては、研磨粒子の濃度が0ppmで研磨可能であれば◎、研磨粒子の濃度が1ppm以上、1000ppm未満でなければ研磨できなかった場合は〇、研磨粒子の濃度が1000ppm以上、5000ppm未満でなければ研磨できなかった場合は△、研磨粒子の濃度が5000ppm以上、10000ppm以下でなければ研磨できなかった場合は×とした。
【0057】
総合では、研磨時間と磨き残しの有無、研磨後のウェハの表面粗さ、パーティクル及び研磨液の全てが△以上の場合を〇と、これら全てが○以上の場合を◎とした。結果を表5及び表6に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
表5及び表6より、試験品1~20の研磨パッド1は、研磨粒子がダイヤモンドであるため、優れた研磨効率を実現できることがわかる。また、試験品1~20の研磨パッド1は、密度が0.58~0.81g/cm3であり、デュロメータ硬度が16~27であり、弾性率が21.5~37.5N/mm2であるため、研磨粒子としてのダイヤモンドでウェハ3を研磨する際の追随性に優れ、研磨不良が生じ難い。さらに、試験品1~20の研磨パッド1は、研磨面を構成する研磨体が無数の研磨粒子を含むため、研磨砥粒を含まない単なる水を用いることができ、研磨後のウェハ3に残留する研磨粒子であるパーティクルが少ないことから、研磨後のウェハの洗浄性に優れる。
【0061】
したがって、試験品1~20の研磨パッド1を用いた実施例1~20の研磨方法によれば、円盤形状のウェハ3の外周縁部を研磨する場合において、より研磨効率が高いとともに、研磨不良がより生じ難く、かつ研磨後のウェハの洗浄性に優れる。
【0062】
一方、従来の研磨パッド1を用いた比較例1~4の研磨方法では、磨き残しが多く、研磨効率が劣る。特に、比較例1の研磨方法では、研磨後のウェハの洗浄性が劣る。
【0063】
以上において、本発明を実施例1~20に即して説明したが、本発明は上記実施例1~20に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0064】
例えば、実施例1~20ではSiCからなるウェハ3を研磨したが、本発明の研磨パッド及びウェハ研磨方法はSiからなるウェハを研磨する場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は半導体デバイスの製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
3…ウェハ
1…研磨パッド
Q…中心軸線
3a…表面
3b…裏面
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10