(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125184
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ポジ型感光性組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20240906BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20240906BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240906BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G03F7/023
C08L97/00
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026215
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023032464
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 進
(72)【発明者】
【氏名】田邉 脩平
(72)【発明者】
【氏名】弓場 智之
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
【Fターム(参考)】
2H225AF04P
2H225AF05P
2H225AF08P
2H225AF22P
2H225AF82P
2H225AF83P
2H225AF85P
2H225AF98P
2H225AM01P
2H225AM73P
2H225AM74P
2H225AM93P
2H225AM99P
2H225AN42P
2H225AN54P
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
4J002AH001
4J002AH00W
4J002CM02X
4J002CM04X
4J002EQ016
4J002EQ036
4J002ES016
4J002EV296
4J002FD206
4J002GP03
(57)【要約】
【課題】リグニン由来の化合物を含む、良好な感度を有するポジ型感光性組成物を提供する。
【解決手段】本発明は(A)リグニン誘導体、および(B)光酸発生剤を含むポジ型感光性組成物であって、(B)光酸発生剤が、
(B-1)1分子中にフェノール性水酸基を2~10個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤
(B-3)ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つ
のいずれか1種以上である、ポジ型感光性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リグニン誘導体、および(B)光酸発生剤を含むポジ型感光性組成物であって、(B)光酸発生剤が、
(B-1)1分子中にフェノール性水酸基を2~10個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤
(B-3)ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つ
のいずれか1種以上である、ポジ型感光性組成物。
【請求項2】
(B-1)が、1分子中にフェノール性水酸基を2~6個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものである、請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
(B-1)が1分子中に繰り返し単位が連結した構造を有しない化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものである、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
(A)リグニン誘導体の重量平均分子量が200~10,000である、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項5】
(A)リグニン誘導体がその構造中にスルホン酸および/またはスルホン酸塩を含む、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項6】
(A)リグニン誘導体がその構造中にチオール基および/またはチオエーテル基を含む、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項7】
(A)リグニン誘導体の質量を100質量%としたとき、(A)リグニン誘導体中の硫黄原子の含有量が2質量%未満である、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項8】
(A)リグニン誘導体が下記構造から選ばれる少なくとも1つの構造の重合体を含む、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【化1】
【請求項9】
(A)リグニン誘導体に含まれるフェノール性水酸基の少なくとも1モル%以上は炭素数3~20の酸解離性有機基に置換されている、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項10】
前記炭素数3~20の酸解離性有機基は式(1)および/または一般式(2)で表される基である、請求項9に記載のポジ型感光性組成物。
【化2】
(式(1)および式(2)は1価の有機基を示す。式(1)中、R
1は炭素数1~10の脂肪族有機基を示し、R
2は炭素数1~20の脂肪族有機基を示す。式(2)中、R
3は炭素数1~10の脂肪族有機基を示す。pは0~2の整数を示し、qは0~2の整数を示す。)
【請求項11】
さらに、(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素社会を目標とした取り組みが盛んに行われており、素材においても、原料にバイオマス資源を用いることや、生分解性を持たせること等の開発が進んでいる。
【0003】
ポジ型感光性組成物に使用されるフェノール化合物には、ノボラック、ポリヒドロキシスチレンのように樹脂としての使用、多価のフェノール低分子化合物のように溶解促進剤としての使用、さらには、それらにキノンジアジド基を結合させた感光剤としての使用など、多岐にわたった用途がある。
【0004】
植物の植物体細胞壁の主要成分であるリグニンは、針葉樹材に25~35%、広葉樹材に20~25%含まれるバイオマス資源である。近年、リグニン誘導体を石油由来のフェノール化合物に替わって活用しようという試みがなされており(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)、ポジ型感光性組成物においても、ノボラック樹脂の代替品としての活用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ネットワークポリマー」Vol.31 No.5 (2010)
【非特許文献2】「ネットワークポリマー」Vol.23 No.3 (2002)
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現行の石油由来の樹脂と比較してリグニン由来の化合物は、感光性組成物として用いたときに露光感度が低いという課題があった。本発明の目的は、リグニン由来の化合物を含む、良好な感度を有するポジ型感光性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
[1](A)リグニン誘導体、および(B)光酸発生剤を含むポジ型感光性組成物であって、(B)光酸発生剤が、
(B-1)1分子中にフェノール性水酸基を2~10個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤
(B-3)ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つ
のいずれか1種以上である、ポジ型感光性組成物。
[2](B-1)が、1分子中にフェノール性水酸基を2~6個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものである、[1]に記載のポジ型感光性組成物。
[3](B-1)が1分子中に繰り返し単位が連結した構造を有しない化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものである[1]または[2]に記載のポジ型感光性組成物。
[4](A)リグニン誘導体の重量平均分子量が200~10,000である、[1]~[3]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[5](A)リグニン誘導体がその構造中にスルホン酸および/またはスルホン酸塩を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[6](A)リグニン誘導体がその構造中にチオール基および/またはチオエーテル基を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[7](A)リグニン誘導体の質量を100質量%としたとき、(A)リグニン誘導体中の硫黄原子の含有量が2質量%未満である、[1]~[6]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[8](A)リグニン誘導体が下記構造から選ばれる少なくとも1つの構造の重合体を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【0009】
【0010】
[9](A)リグニン誘導体に含まれるフェノール性水酸基の少なくとも1モル%以上は炭素数3~20の酸解離性有機基に置換されている、[1]~[8]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
[10]前記炭素数3~20の酸解離性有機基は式(1)および/または一般式(2)で表されるである、[9]に記載のポジ型感光性組成物。
【0011】
【0012】
(式(1)および式(2)は1価の有機基を示す。式(1)中、R1は炭素数1~10の脂肪族有機基を示し、R2は炭素数1~20の脂肪族有機基を示す。式(2)中、R3は炭素数1~10の脂肪族有機基を示す。pは0~2の整数を示し、qは0~2の整数を示す。)
[11]さらに、(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上を含む、[1]~[10]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リグニン由来の化合物を含む、良好な感度を有するポジ型感光性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0015】
本発明の本発明の実施に係るポジ型感光性組成物は、(A)リグニン誘導体、および(B)光酸発生剤を含むポジ型感光性組成物であって、(B)光酸発生剤が、
(B-1)1分子中にフェノール性水酸基を2~10個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤
(B-3)ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つ
のいずれかである、ポジ型感光性組成物である。
【0016】
<(A)リグニン誘導体>
天然リグニンは複雑な構造を有するポリフェノール化合物であり、代表的な構造としては下記に示したような構造が挙げられる。なお、天然リグニンの構造がこれに限定されるわけではない。
【0017】
【0018】
天然リグニンの単離は非常に困難であるため、現在は種々の方法により化学的変性を加えたリグニン誘導体が提案されている。
【0019】
天然リグニンを化学的変性する具体的な方法としては、水酸化ナトリウムによる高温高圧反応、水酸化ナトリウム/アントラキノンによる高温高圧反応、有機溶媒中(メタノール, エタノール,イソブチルケトン,エチレングリコールなど)酸性もしくは塩基性触媒下での反応、高圧水蒸気処理、硫酸/亜硫酸水素カルシウムなどによる高温高圧反応、水酸化ナトリウム/硫化ナトリウムなどによる高温高圧反応等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
これら化学的変性によって、天然リグニンは部分的に、あるいは単位構造に分解することができ、構造中のフェノール性水酸基の濃度を向上させたり、他の官能基による改質を付与したリグニン誘導体を得ることが可能となる。
【0021】
リグニン誘導体は、その構造中に下記一般式(3)で表される構造を含んでいることが好ましい。
【0022】
【0023】
一般式(3)は1~5価の有機基を示す。一般式(3)中、R4およびR5はそれぞれ独立に炭素数1~6の有機基を表す。良好な感度を有するという観点から、R4およびR5は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基およびプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0024】
一般式(3)中、n1は0~4の整数、n2は1~2の整数、n3は0~2の整数を表す。n4およびn5は構造外との結合部位の数であり、n4は0~2の整数、n5は0~3の整数を表す。n1+n2+n3+n4+n5は1~5の整数、n4+n5は0~4の整数を表す。
【0025】
一般式(3)の好ましい構造としては下記一般式(4)から(11)で表される構造から選ばれる少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
【0027】
一般式(4)、(7)および(8)は1価、一般式(5)、(9)および(10)は2価、一般式(6)および(11)は3価の有機基を示す。一般式(4)~(11)中、R6~R18はそれぞれ独立に炭素数1~6の有機基を表す。良好な感度を有するという観点から、R6~R18は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基およびプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0028】
また、天然リグニンを単位構造に分解したリグニン誘導体の場合、当該リグニン誘導体は下記構造から選ばれる少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0029】
【0030】
また、天然リグニンを部分的に分解したリグニン誘導体の場合、好ましいリグニン誘導体としては、その構造中にスルホン酸および/またはスルホン酸塩を含むリグニン誘導体や、その構造中にチオール基および/またはチオエーテル基を含むリグニン誘導体が挙げられる。前者は例えば天然リグニンを硫酸/亜硫酸水素カルシウムなどによる高温高圧反応によって化学的変性することで得られ、後者は例えば水酸化ナトリウム/硫化ナトリウムなどによる高温高圧反応によって化学的変性することで得られる。
【0031】
良好な感度を有するという観点より、好ましくはその構造中にチオール基および/またはチオエーテル基を含むリグニン誘導体である。
【0032】
また、上記の天然リグニンを部分的に分解したリグニン誘導体とは別の態様で、同様に良好な感度を有するという観点より、(A)リグニン誘導体の質量を100質量%としたとき、(A)リグニン誘導体中の硫黄原子の含有量が、10質量%未満であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましく、含まないことが最も好ましい。
【0033】
さらに、(A)リグニン誘導体には上記した化学的変性によって、天然リグニンを部分的に、あるいは単位構造に分解した化合物にフェノール化合物やノボラック樹脂が結合したものや、単位構造に分解された化合物の重合体も含まれる。
【0034】
良好な感度を有するという観点より、好ましい(A)リグニン誘導体としては、酸性触媒下でフェノール化合物を反応させてリグニン誘導体構造の1部をフェノール基で置き換えたもの、酸性触媒下でフェノール性化合物とアルデヒド化合物を反応させてリグニン誘導体構造の1部をノボラック樹脂置き換えたもの、上記単位構造化合物の重合体などが挙げられる。
【0035】
リグニン誘導体の合成方法については、上記で説明した方法のほか、例えば、特開2022-101150号公報、特開2019-73679号公報、特開2020-111530号公報、特開2011-256381号公報、特開2021-138806号公報、特開2016-60749号公報に例示された方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
良好な感度を有するという観点より、(A)リグニン誘導体に含まれるフェノール性水酸基の少なくとも1モル%以上は炭素数3~20の酸解離性有機基に置換されていることが好ましい。
【0037】
ここで酸解離性基とは、フェノール性水酸基やカルボキシル基の水素原子が酸の作用によって脱離する官能基によって置換されている有機基のことを示し、脱離後はフェノール性水酸基やカルボキシル基が生成して化合物のアルカリ現像液への溶解性が増大する特徴を付与できる有機基を指す。
【0038】
良好な感度を有するという観点から、本発明における酸解離性基は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用によって脱離する官能基によって置換されている有機基であることが好ましい。
【0039】
炭素数3~20の酸解離性基の具体例としては、t-ブトキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、アセタール基などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
良好な感度を有するという観点から、好ましい酸解離性基はアセタール基であり、一般式(1)および/または一般式(2)で表される基であることがより好ましく、一般式(1)で表される基であることがさらに好ましい。
【0041】
【0042】
式(1)および式(2)は1価の有機基を示す。一般式(1)中、R1は炭素数1~10の脂肪族有機基を示す。好ましい炭素数1~10の脂肪族有機基としては、炭素数1~6の鎖状炭化水素基、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基などが挙げられる。
【0043】
炭素数1~6の鎖状炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0044】
鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基の具体例としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基などが挙げられる。
【0045】
一般式(1)中、R2は炭素数1~20の脂肪族有機基を示す。好ましい炭素数1~20の脂肪族有機基としては、炭素数1~6の鎖状炭化水素基、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基、炭素数5~10の環状炭化水素基、鎖状炭化水素基と環状炭化水素基がエーテル基で連結した炭素数6~16の有機基などが挙げられる。
【0046】
炭素数1~6の鎖状炭化水素基、および、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基の具体例としては、R1で挙げたものと同じものを挙げることができる。
【0047】
炭素数5~10の環状炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロへプチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロへプチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロペプチルプロピル基などが挙げられる。
【0048】
鎖状炭化水素基と環状炭化水素基がエーテル基で連結した炭素数6~16の有機基の具体例としては、メトキシシクロペンチル基、エトキシシクロペンチル基、プロポキシシクロペンチル基、ジメトキシシクロペンチル基、ジエトキシシクロペンチル基、ジプロポキシシクロペンチル基、トリメトキシシクロペンチル基、トリエトキシシクロペンチル基、トリプロポキシシクロペンチル基、メトキシシクロヘキシル基、エトキシシクロヘキシル基、プロポキシシクロヘキシル基、ジメトキシシクロヘキシル基、ジエトキシシクロヘキシル基、ジプロポキシシクロヘキシル基、トリメトキシシクロヘキシル基、トリエトキシシクロヘキシル基、トリプロポキシシクロヘキシル基、メトキシシクロへプチル基、エトキシシクロへプチル基、プロポキシシクロへプチル基、ジメトキシシクロへプチル基、ジエトキシシクロへプチル基、ジプロポキシシクロへプチル基、トリメトキシシクロへプチル基、トリエトキシシクロへプチル基、トリプロポキシシクロへプチル基などが挙げられる。
【0049】
一般式(2)中、R3は炭素数1~10の脂肪族有機基を示す。好ましい炭素数1~10の脂肪族有機基としては、炭素数1~6の鎖状炭化水素基、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基、炭素数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。
【0050】
炭素数1~6の鎖状炭化水素基、および、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基の具体例としては、R1で挙げたものと同じものを挙げることができる。
【0051】
炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基などが挙げられる。
【0052】
一般式(2)中、pは0~2の整数を示し、好ましくは1である。一般式(2)中、qは0~2の整数を示し、好ましくは0である。
【0053】
良好な感度を有するという観点から、一般式(2)で表される基は、一般式(12)および/または(13)で表される基であることが最も好ましい。一般式(12)および/または(13)で表される基であることにより、酸の作用による官能基の脱離時の活性化エネルギーをより低くすることができる。
【0054】
【0055】
式(12)および式(13)は1価の有機基を示す。一般式(12)中、R19およびR20は、それぞれ独立に、炭素数1~6の鎖状炭化水素基を示す。一般式(13)中、R21は、炭素数1~6の鎖状炭化水素基、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基、炭素数1~6のアルコキシ基を示す。rは、0~2の整数を示し、sは、0~2の整数を示す。
【0056】
炭素数1~6の鎖状炭化水素基、鎖状炭化水素基同士がエーテル基で連結した炭素数2~8の有機基、炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、式(1)および式(2)の対応する基の具体例と同一である。
【0057】
炭素数3~20の酸解離性基は、(A)リグニン誘導体の構造中のフェノール性水酸基を保護剤と反応させることによって得られる。例えば、無溶剤又はトルエン、ヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン等の溶剤中で、(A)リグニン誘導体と保護剤とを、酸触媒、または、塩基触媒の存在下、反応温度-20~50℃で反応させることにより、炭素数3~20の酸解離性基を形成させることができる。
【0058】
保護剤として、フェノール性水酸基を保護することが可能な公知の保護剤を用いることができる。例えば、酸解離性基が1-エトキシエチル基の場合はエチルビニルエーテル、2-テトラヒドロピラニル基の場合は、3,4-ジヒドロー2H-ピランなどを用いることができる。
【0059】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸、および、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸が挙げられる。また、p-トルエンスルホン酸ピリジニウムなどの有機酸塩も好ましく用いることができる。
【0060】
塩基触媒としては、ピリジン、N,N-ジエチル-4-アミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0061】
(A)リグニン誘導体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算で200~30,000が好ましく、200~20,000がより好ましく、200~10,000がさらに好ましく、200~5,000が一層好ましく、200~2,000がより一層好ましい。(A)リグニン誘導体の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、未露光部と露光部のアルカリ水溶液に対する溶解速度の差をさらに大きくでき、良好な感度を有する利点がある。
【0062】
<(B)光酸発生剤>
本発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物は、(B)光酸発生剤を含む。光酸発生剤とは、光を照射することで組成物中に酸を発生させるものである。発生した酸そのものによるアルカリ溶解性の増大、さらには、酸の作用によって酸解離性基から生成したフェノール性水酸基やカルボキシル基によるアルカリ溶解性の増大の効果で、露光部がアルカリ現像液に易溶となりポジ型のパターンを得ることができる。
【0063】
本発明に用いられる(B)光酸発生剤は、
(B-1)1分子中にフェノール性水酸基を2~10個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの(以下、「(B-1)キノンジアジド化合物」と称する場合がある)
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤
(B-3)ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つ(以下、「(B-3)非イオン性光酸発生剤」と称する場合がある)
のいずれか1種以上である。
【0064】
良好な感度を有するという観点より(B-1)キノンジアジド化合物は、1分子中にフェノール性水酸基を2~6個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものであることが好ましい。
【0065】
また、良好な感度を有するという観点より(B-1)キノンジアジド化合物は、1分子中に繰り返し単位が連結した構造を有しない化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものであることが好ましい。
【0066】
1分子中に繰り返し単位が連結した構造を有しない化合物とは、単量体の重合によって得られる樹脂化合物ではなく、それ自身が分子量分布を持たない単量体の構造を有している化合物である。
【0067】
また、全ての官能基(フェノール性水酸基)がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、平均して官能基全体の40モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このような(B-1)キノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0068】
良好な感度を有するという観点より、1分子中の好ましいフェノール性水酸基の数としては2~4個であり、より好ましくは3~4個である。
【0069】
なお、これらの(B-1)キノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとの公知のエステル化反応により合成することができる。
【0070】
フェノール性水酸基を有する化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。これらは本州化学工業(株)から入手することができる。
【0071】
【0072】
【0073】
これらの中でも(B-1)キノンジアジド化合物が、フェノール性水酸基を有する化合物と4-ナフトキノンジアジドとのスルホン酸エステルを含むことがより好ましい。これによりi線露光で高い感度と、より高い解像度を得ることができる。
【0074】
(B-1)キノンジアジド化合物の含有量は、(A)リグニン誘導体100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましい。(B-1)キノンジアジド化合物の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができる。ポジ型感光性組成物は、さらに増感剤などを必要に応じて含有してもよい。
【0075】
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤のオニウム塩とは、化学結合に関与しない電子対を有する化合物が、当該電子対によって、他の陽イオン形の化合物と配位結合して生ずる化合物を指す。(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤は、オニウム塩のカチオン部位が光化学特性(モル吸光係数・吸収波長・量子収率)、アニオン部位が生成する酸の強さを決定する。
【0076】
(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤としては、特に制限はなく公知のものを利用できるが、トリオルガノスルホニウム塩系化合物が好ましい。トリオルガノスルホニウム塩系化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩、パーフルオロ-1-ブタンスルホン酸塩(「SP-056」、商品名、ADEKA社製);ジメチル-1-ナフチルスルホニウムの前記スルホン酸塩;ジメチル(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)スルホニウムの前記スルホン酸塩;ジメチル(4,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)スルホニウムの前記スルホン酸塩;ジフェニルヨードニウムの前記スルホン酸塩などが挙げられる。
【0077】
(B-3)非イオン性の光酸発生剤としては、ジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物を用いることができる。
【0078】
ジアゾメタン化合物の具体例としては、例えば、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン(「WPAG-199」、商品名、富士フイルム和光純薬製))などが挙げられる。
【0079】
オキシムスルホネート化合物の構造としては、好ましくは下記一般式(14)および/または(15)で表される構造である。
【0080】
【0081】
一般式(14)および(15)中、R22およびR25はそれぞれ独立に炭素数1~12の1価の有機基である。炭素数1~12の1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフルオロメタンスルホン酸基、ノナフルオロブチル基、パーフルオロオクチル基、(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル)メチル基、ベンジル基、フェニル基、トシル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0082】
一般式(14)中、R23およびR24はそれぞれ独立に炭素数1~30の1価の有機基である。炭素数1~30の1価の有機基の具体例としては、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ドデカフルオロヘキシル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基、2-フルオレニル基、4-(3-(4-(2,2,2-トリフルオロ-1-(((プロピルスルホニル)オキシ)イミノ)エチル)フェノキシ)プロポキシ)フェニル基などが挙げられる。
【0083】
一般式(15)中、R26は炭素数3~30の2価の有機基である。炭素数3~30の1価の有機基の具体例としては、以下の構造が挙げられる。
【0084】
【0085】
オキシムスルホネートの具体例としては、“Irgacure”(登録商標) PAG-103(ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン)、PAG-121(ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[[(4-メチルフェニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン)、PAG-108(ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[[(n-オクチル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン)、PAG-203(以上、いずれもBASFジャパン社製)、PAI-101((Z)-4-メトキシ-N-(トシロキシ)ベンズイミドイルシアニド、みどり化学社製)などが挙げられる。
【0086】
イミドスルホネート化合物の構造としては、好ましくは下記一般式(16)および/または(17)で表される構造である。
【0087】
【0088】
一般式(16)および(17)中、R27およびR30はそれぞれ独立に炭素数1~12の1価の有機基である。炭素数1~12の1価の有機基の具体例としては、R22およびR25の具体例として挙げた基などが挙げられる。
【0089】
一般式(16)中、R28およびR29はそれぞれ独立に炭素数1~30の1価の有機基である。炭素数1~30の1価の有機基の具体例としては、R23およびR24の具体例として挙げた基などが挙げられる。
【0090】
一般式(17)中、R31は炭素数3~30の2価の有機基である。炭素数3~30の2価の有機基の具体例としては、以下の構造が挙げられる。
【0091】
【0092】
一般式(19)中、R32は炭素数1~12の1価の有機基である。tは0~2の整数を示す。炭素数1~12の1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ドデカニル基、1-(ヘキシ-1-エン-1-イル)基、1-(4-ブトキシフェネチル)基などが挙げられる。
【0093】
イミドスルホネート化合物の具体例としては、N-ヒドロキシナフタルイミドトリフラート、“アデカアークルズ”(登録商標) SP-606(4-ブチル-N-ヒドロキシ-ナフタルイミドトリフラート、ADEKA社製)、NA-101(N-ヒドロキシナフタルイミド-p-トルエンスルホネート)、NA-106(N-ヒドロキシナフタルイミドカンファースルホネート、以上、いずれもみどり化学社製)などが挙げられる。
【0094】
本発明における(B)光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物および/またはイミドスルホネート化合物を含むことがより好ましい。オキシムスルホネート化合物およびイミドスルホネート化合物は、非イオン性の光酸発生剤であり、光により発生する酸性基がスルホン酸であるため、酸解離定数が高く、より高感度なポジ型感光性樹脂組成物とすることができる。
【0095】
本発明において、(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤や(B-3)非イオン性光酸発生剤の含有量は、(A)リグニン誘導体100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましい。(B-2)オニウム塩型のイオン性光酸発生剤や(B-3)非イオン性光酸発生剤が上記の範囲であることで、高感度なポジ型感光性組成物とすることができる。
【0096】
<(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上>
本発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物は、さらに(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上を含んでいることが好ましい。特に、(B)光酸発生剤が、(B-1)1分子中にフェノール性水酸基を2~6個有する化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したものである場合に、本発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物がこの(C)成分を含むことが好ましい。
【0097】
ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリベンゾオキサゾールは、それぞれ順に、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体を熱処理等によって分子内で閉環反応させたものである。ポリイミド前駆体は例えばジアミンとテトラカルボン酸またはその誘導体を反応させて得られるポリマーである。ポリアミドイミド前駆体は、例えばジアミンとトリカルボン酸またはその誘導体を反応させて得られるポリマーである。ポリベンゾオキサゾール前駆体は、例えばヒドロキル基を有するジアミンとジカルボン酸またはその誘導体を反応させて得られるポリマーである。
【0098】
ジアミンの好ましい具体例としては、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)フルオレンのようなヒドロキル基を有するジアミンや、3,5-ジアミノ安息香酸、3-カルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのカルボキシル基含有ジアミン、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、あるいはこれらの芳香族環の水素原子の一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、シクロヘキシルジアミン、メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族ジアミンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0099】
ポリベンゾオキサゾール前駆体では上に示したヒドロキシル基を有するジアミンが好ましく用いられる。
【0100】
テトラカルボン酸またはその誘導体の好ましい具体例としてはピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1.]ヘプタンテトラカルボン酸、ビシクロ[3.3.1.]テトラカルボン酸、ビシクロ[3.1.1.]ヘプト-2-エンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2.]オクタンテトラカルボン酸、アダマタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸、および、これらテトラカルボン酸の二無水物などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0101】
トリカルボン酸またはその誘導体の好ましい具体例としてはトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、および、これらトリカルボン酸の無水物などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0102】
ジカルボン酸またはその誘導体の好ましい具体例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ビス(カルボキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0103】
これらの中でも、現像時のアルカリ可溶性の観点から、(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上は、一般式(20)で表される構造単位を主成分とすることがより好ましい。
【0104】
【0105】
一般式(20)中、R33は炭素数2~50の2価の有機基を示す。R34は炭素数2~50の3価または4価の有機基を示す。R35は水素原子、または炭素数1~10の有機基を示す。m1は1または2の整数である。
【0106】
一般式(20)の構造は、(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上のうち80質量%以上、好ましくは90質量%以上含まれることが好ましい。
【0107】
一般式(20)中、R33は、ジアミン残基である。現像液であるアルカリ水溶液に対する溶解性、感光性能の点から、R33はヒドロキシル基を有するジアミン残基であることが好ましい。
【0108】
ヒドロキシル基を有するジアミン残基を与えることができる原料としては、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)フルオレンが例示される。またR33としては下記に示す構造のものが挙げられる。
【0109】
【0110】
また、ジアミン残基は、ヒドロキシル基を有しないものを含んでいてもよい。そのようなジアミン残基を与える原料となるジアミン成分としては、3,5-ジアミノ安息香酸、3-カルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのカルボキシル基含有ジアミン、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、あるいはこれらの芳香族環の水素原子の一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、シクロヘキシルジアミン、メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族ジアミンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0111】
これらのジアミン残基を与える原料としては、ジアミンの他に、ジアミン残基の構造にアミノ基の代わりにイソシアネート基が結合したジイソシアネート化合物や、ジアミンのアミノ基の2つの水素原子がトリメチルシリル基に置換されたテトラトリメチルシリル化ジアミンを使用することもできる。
【0112】
一般式(20)中、R34はカルボン酸残基であり、トリ-カルボン酸化合物またはテトラ-カルボン酸化合物から得ることができる官能基である。以下、カルボン酸残基を単に「酸残基」という。硬化パターンの耐熱性の観点から芳香環および/または脂肪族環を含む酸残基が好ましく、下記一般式(21)~(23)に示す構造がより好ましい。
【0113】
【0114】
一般式(21)~(23)中、R36~R40は、それぞれ独立に、ハロゲン原子または炭素数1~3の1価の有機基を示す。X1およびX2は、それぞれ独立に、単結合、O、S、NH、SO--2、CO、炭素数1~3の2価の有機基およびそれらが2個以上結合している2価基からなる群より選ばれる。2個以上結合している有機基は同種であってもよく、異種であってもよい。2個以上結合している有機基としては、以下のものが例示される。-CONH-(アミド結合)、-COO-、-OC(=O)O-(カーボネート結合)、-SS-、-S(=O)2O-、-OC(=O)CH2CH2C(=O)O-が例示される。b1は0~4の整数、b2~b4は各々独立に0~3の整数、b5は0~2の整数である。m2は0または1の整数である。
【0115】
酸残基を与える好ましいトリカルボン酸の例として、トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などを挙げることができる。
【0116】
酸残基を与える好ましいテトラカルボン酸の例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1.]ヘプタンテトラカルボン酸、ビシクロ[3.3.1.]テトラカルボン酸、ビシクロ[3.1.1.]ヘプト-2-エンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2.]オクタンテトラカルボン酸、アダマタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。これらの酸は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0117】
また、上に例示したトリカルボン酸、テトラカルボン酸に起因する酸残基の水素原子が水酸基、アミノ基、スルホン酸基、スルホン酸アミド基またはスルホン酸エステル基で1~4個置換したものを用いてもよい。
【0118】
さらに、必要に応じて、酸残基を与える酸成分としては、1-(p-カルボキシフェニル)3-フタル酸-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビスフタル酸-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン結合を有するトリ-カルボン酸またはテトラ-カルボン酸を用いることもできる。シロキサン結合を有する酸残基を含有することにより、基板に対する接着性を高めることができる。さらに、ドライエッチング耐性を高めることができるため、硬化パターンのエッチングレートを低く保つことができる。
【0119】
本発明に用いられる(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上は、酸系化合物とアミン系化合物とを重合反応して得られうる。酸系化合物としては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、それらの無水物、酸クロリド、活性エステルおよび活性アミドが例示される。アミン系化合物としては、ジアミン、ジアミン化合物のアミノ基をイソシアネート基に置換したジイソシアネート化合物、ジアミンのアミノ基の2つの水素原子がトリメチルシリル基に置換されたテトラトリメチルシリル化ジアミンが例示される。
【0120】
また、本発明に用いられる(C)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾールおよびそれらの前駆体からなる群より選ばれる1種以上は、重合終了後にメタノールや水など、樹脂に対する貧溶媒中にて沈殿させた後、洗浄、乾燥して得られるものであることが好ましい。沈殿することで、重合時に用いたエステル化剤、縮合剤、および、酸クロライドによる副生成物や、樹脂前駆体の低分子量成分などが除去できるため、硬化パターンの耐熱性が向上する利点がある。
【0121】
<(D)溶剤ほか>
本発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物は、さらに、(D)溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むことで、塗布性が良好となり、均質なポジ型感光性樹脂膜とすることができる。(D)溶剤は本発明の効果を損なわない範囲で公知のものを使用することができる。
【0122】
(D)溶剤としては、特に限定されるものではないが、アミド系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、ジメチルスルホキシドなどを好適に用いることができる。
【0123】
本発明において、(D)溶剤の含有量は、(A)リグニン誘導体100質量部に対して、組成物を溶解させるため、100質量部以上含有することが好ましく、膜厚1μm以上の塗布膜を形成させるため、1,500質量部以下含有することが好ましい。
【0124】
本発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物は、上記以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤として、例えば、溶解促進剤、増感剤、シランカップリング剤、熱架橋剤、界面活性剤、接着改良剤などが挙げられる。
【0125】
<組成物の利用方法>
本発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物を用いて、樹脂膜のパターンを形成する方法について以下に示す。
【0126】
まず、ポジ型感光性組成物を基材上に塗布する。基材は特に限定されないが、ガラス、シリコンウェハー、セラミック堆積基板、金属めっき基板、サファイア、ガリウムヒ素からなる群から選ばれることが好ましい。塗布する方法は公知の方法を用いることができる。塗布に用いる装置としては、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング若しくはスリットコーティング等の全面塗布装置又はスクリーン印刷、ロールコーティング、マイクログラビアコーティング若しくはインクジェット等の印刷装置が挙げられる。
【0127】
塗布後、乾燥してポジ型感光性樹脂膜を形成する。乾燥は、真空乾燥装置あるいは、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いる。加熱装置を用いる場合、50℃以上150℃以下の温度範囲で30秒~30分間行うことが好ましい。ポジ型感光性樹脂膜の膜厚は0.1以上100μm以下が好ましい。
【0128】
続いて、ポジ型感光性樹脂膜を露光する。露光する工程において、ポジ型感光性樹脂膜上に、所望のパターンを有するマスクを介して露光する。照射する露光光の波長は特に制限されず、例えば、g線(436nm)、i線(365nm)、及び、h線(405nm)等の300~450nmの波長を有する光が挙げられる。なかでも、365nmの波長を有する光を照射することが好ましい。露光工程において使用する光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、及び、メタルハライドランプが挙げられる。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター及びバンドパスフィルター等の分光フィルターを通して照射光の波長を調整してもよい。
【0129】
露光後、必要に応じて、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、レーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~1時間が好ましく、30秒~30分であることがより好ましい。
【0130】
ポジ型感光性組成物のパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去する。現像に使用される現像液は、アルカリ水溶液可溶性重合体を溶解除去するものであり、典型的にはアルカリ化合物を溶解したアルカリ性水溶液である。アルカリ化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。
【0131】
現像後は、有機溶媒または水にてリンス処理をすることが好ましい。有機溶媒を用いる場合、上記の現像液に加え、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。水を用いる場合、ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0132】
ポジ型感光性樹脂膜は現像後に加熱処理しても良い。例えば、現像後、150℃~320℃の温度を加えて熱架橋反応を進行させ、耐熱性および耐薬品性を向上させる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する。一例としては、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する。
【実施例0133】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0134】
(1)重量平均分子量の測定方法
GPC分析装置を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定して求めた。条件の詳細を下記する。
測定装置:Waters2695(Waters社製)
カラム温度:50℃
流速:0.4mL/min
検出器:2489 UV/Vis Detector(測定波長 260nm)
展開溶剤:NMP(塩化リチウム0.21重量%、リン酸0.48重量%含有)
ガードカラム:TOSOH TSK guard column(東ソー(株)製)
カラム:TOSOH TSK-GEL a-2500、
TOSOH TSK-GEL a-4000 直列(いずれも東ソー(株)製)。
【0135】
(2)フェノール水酸基の保護率の算出
保護率は、400MHz、1H-NMR(核磁気共鳴)装置(日本電子株式会社製 AL-400)を用いて測定した。具体的には、重水素化ジメチルスルホキシド溶液中、積算回数16回で測定した。5-6ppm付近に観測される保護基由来のメテン基(>CH-)のプロトンの積分値および9-11ppm付近に観測されるフェノール性水酸基のプロトンの積分値を算出し、メテン基のプロトンの積分値とフェノール性水酸基のプロトンの積分値の合計を100%としたときの、メテン基のプロトン積分値の割合を保護率(%)とした。
【0136】
(3)レリーフパターンの作製
ポジ型感光性組成物A~Tを、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いて、8インチシリコンウェハー上にスピンコート法により塗布し、100℃で2分間プリベークして膜厚4.0μmの膜を作製した。なお、膜厚は、光干渉式膜厚測定装置ラムダエースSTM-602(SCREENホールディングス社製)を用いて、屈折率1.629の条件で測定した。その後、露光機i線ステッパーNSR-2005i9C(ニコン社製)を用いて、10μmのコンタクトホールのパターンを有するマスクを介して、露光量50~1000mJ/cm2の範囲で50mJ/cm2毎に露光した。露光後、前記ACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のTMAH(多摩化学工業(株)製)を現像液として、80秒間現像した後、蒸留水でリンスを行い、振り切り乾燥し、レリーフパターンを得た。
【0137】
得られたレリーフパターンをFDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)製)を用いて倍率20倍で観察し、コンタクトホールの開口径を測定した。コンタクトホールの開口径が10μmに達した最低露光量を感度と定め、感度が500mJ/cm2以下を合格とした。
【0138】
合成例1 リグニン誘導体(RG-01)の合成
本合成例は、特開2016-60749号公報の実施例1を元に行った。スギのチップ300g(絶乾量)に対し、蒸解液を添加し、オートクレーブにおいて温度170℃、圧力0.8MPaで80分間、蒸解した。なお、蒸解液は、水の含有率が94.3質量%、水酸化ナトリウムの含有率が4.3質量%、硫化ナトリウムの含有率が1.4質量%となるように調製されたアルカリ溶液である。また、この蒸解液の活性アルカリ(対チップ質量)は18%、硫化度25%、液比3L/kgであった。この蒸解により、クラフトパルプを得るとともに、リグニン誘導体を含む黒液を得た。
【0139】
次に、80℃において、得られた黒液(pH13~13.5)を二酸化炭素でpH9に 調整した。調整後の黒液をフィルタープレスで脱水し、固形分約30%のケーキを得た。 得られたケーキに2倍量の水を加えて再懸濁し、硫酸でpH5に調整した。調整後の懸濁 液を80℃に調整し、フィルタープレスで脱水した後、ケーキの2倍量の80℃の水で洗 浄を行い、乾燥後に、チオール基、チオエーテル基を含むリグニン誘導体(RG-01)を得た。RG-01の重量平均分子量は1600、硫黄原子含有率は誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定したところ、2質量%であった。
【0140】
合成例2 リグニン誘導体(RG-02)の合成
本合成例は、特開2020-111530号公報の実施例1、3を元に行った。製紙工場の針葉樹クラフトパルプ製造におけるクラフト蒸解から得られた黒液2.00L(固形分17.5%)を70℃に昇温した後、 空気を通気し、空気酸化を行った。次いで、30%過酸化水素(富士フイルム和光純薬(株)製)を14.0g添加し、90℃ で1時間酸化処理を行った。その後、二酸化炭素を通気して黒液のpHを11まで下げる酸性化処理を行い、4倍に濃縮して固形分19.5%の濃縮液を得た。
【0141】
還流冷却器を付属した1Lオートクレーブに、上記4倍濃縮液を500g、亜硫酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)4.00g、37%ホルムアルデヒド溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)3.00gを仕込み、140℃で120分スルホメチル化反応を行った。室温まで冷却した後 、スルホメチル化された(スルホン酸基を含む)リグニン誘導体(RG-02)を得た。RG-02の重量平均分子量は12,000、硫黄原子含有率は誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定したところ、7質量%であった。
【0142】
合成例3 リグニン誘導体(RG-03)の合成
本合成例は、特開2011-256381号公報の実施例1を元に行った。1.00kgの脱脂済みヒノキ、木粉(60mesh pass)に500gのp-クレゾール(富士フイルム和光純薬(株)製)を収着させ、2.50Lの72%硫酸を加え30℃、1時間反応させた。酸を除去した後、沈殿を乾燥させ、アセトン(富士フイルム和光純薬(株)製)5.00Lで抽出し、ジエチルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて精製した。精製後に乾燥して得られた生成物100mgを1.00mLピリジン(富士フイルム和光純薬(株)製)に溶解させ、無水酢酸(富士フイルム和光純薬(株)製)1.00mLを加えて攪拌し、空気中・室温 ・暗所に静置した。48時間後、反応混合液を40.0mLの冷水に投入し、 得られた沈殿を遠心分離で分離してリグニン誘導体(p-クレゾール変性リグニン誘導体)RG-03を得た。RG-03の重量平均分子量は16,000、硫黄原子含有率は誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定したところ、1質量%未満であった。
【0143】
合成例4 リグニン誘導体(RG-04)の合成
本合成例は、特開2021-138806号公報の実施例1を元に行った。撹拌機及び温度計を備えた三口フラスコにフェノール(富士フイルム和光純薬(株)製)90.0g、リグニン30.7g、シュウ酸(富士フイルム和光純薬(株)製)1.20gを仕込み、100℃になるまで加熱して、37%ホルマリン(富士フイルム和光純薬(株)製)45.0gを30分間かけて滴下し、滴下終了後、100℃で1時間撹拌した。次に昇温させながら減圧蒸留にて縮合水及び未反応フェノールを留去し、残留フェノールが2%以下になったところで、数平均分子量(Mn)1520、重量平均分子量(Mw)14500のノボラック型フェノール樹脂49.0gをフラスコ内に添加し混合した。溶融状態で30分間撹拌した後にフラスコから生成物を取り出し、リグニン誘導体(ノボラック変性リグニン誘導体)RG-04を得た。RG-04の重量平均分子量は18,000、硫黄原子含有率は誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定したところ、1質量%未満であった。
【0144】
合成例5 ポリアミド酸エステル(PAA-01)の合成
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製)15.9g、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(東京化成(株)製)0.62gをNMP200gに溶解した。ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(マナック(株)製)15.5gをNMP50.0gとともに加えて、40℃で2時間撹拌した。その後、4-エチニルアニリン(東京化成(株)製)1.17gを加え、40℃で2時間撹拌した。さらに、ジメチルホルアミドジメチルアセタール(三菱レイヨン(株)製、DFA)3.57gをNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下し、滴下後、40℃で2時間、ついで100℃で0.5時間撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリアミド酸エステル(PAA-01)を得た。
【0145】
合成例6 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(DA-01)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製)18.3gをアセトン100mL、プロピレンオキシド(東京化成(株)製)17.4gに溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4gをアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間撹拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0146】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素(富士フイルム和光純薬(株)製)を2.00g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(DA-01)を得た。
【0147】
【0148】
合成例7 ポリアミド酸エステル(PAA-02)の合成
乾燥窒素気流下、合成例2で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(DA-01)25.7g、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(東京化成(株)製)0.62gをN-メチルピロリドン(NMP)200gに溶解した。ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(マナック(株)製)15.5gをNMP50gとともに加えて、40℃で2時間撹拌した。その後、4-エチニルアニリン(東京化成(株)製)1.17gを加え、40℃で2時間撹拌した。さらに、ジメチルホルアミドジメチルアセタール(三菱レイヨン(株)製、DFA)3.57gをNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下し、滴下後、40℃で2時間撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリアミド酸エステル(PAA-02)を得た。
【0149】
合成例8 キノンジアジド化合物(QD-01)の合成
黄色灯のもと、乾燥窒素気流下、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(商品名:TrisP-PA、本州化学工業(株)製)21.2gと5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.6gを1,4-ジオキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50.0gと混合させたトリエチルアミン15.6g(富士フイルム和光純薬(株)製)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のナフトキノンジアジド化合物(QD-01)を得た。
【0150】
【0151】
合成例9 ノボラック樹脂(NV-01)の合成
乾燥窒素気流下、メタクレゾール(富士フイルム和光純薬(株)製)57.0g、パラクレゾール(富士フイルム和光純薬(株)製)38.0g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)75.5g、シュウ酸二水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)0.63g、メチルイソブチルケトン(富士フイルム和光純薬(株)製)264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後に、フラスコ内の圧力を30~50mmHgまで減圧し、揮発分を除去した。樹脂溶液を室温まで冷却して、アルカリ可溶性のノボラック樹脂(NV-01)のポリマー固体85.0gを得た。
【0152】
合成例10 キノンジアジド化合物(QD-02)の合成
黄色灯のもと、乾燥窒素気流下、合成例9で得られたノボラック樹脂(NV-01)6.00gと5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド8.06gを1,4-ジオキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50.0gと混合させたトリエチルアミン(富士フイルム和光純薬(株)製)3.34gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のナフトキノンジアジド化合物(QD-02)を得た。
【0153】
【0154】
合成例11 キノンジアジド化合物(QD-03)の合成
黄色灯のもと、乾燥窒素気流下、4,4’-[(2-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-フェニレン)ビス(メチレン)]ビス(ベンゼン-1,2,3-トリオール)(商品名:BIPG-PC、旭有機材(株)製)19.2gと5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド60.5gを1,4-ジオキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)700gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン70.0gと混合させたトリエチルアミン25.1g(富士フイルム和光純薬(株)製)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のナフトキノンジアジド化合物(QD-03)を得た。
【0155】
【0156】
合成例12~15 リグニン誘導体(RG-11~14)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにベースポリマーとして合成例1~4で合成したRG-01~RG-04を10.0g、溶剤としてシクロペンタノン(富士フイルム和光純薬(株)製)を50.0g秤量して溶解させた。ここに保護剤としてイソブチルビニルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)製)を1.80g加え、0℃で1時間攪拌した。次いで、触媒として、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(富士フイルム和光純薬(株)製)を0.01g加え、0℃で3時間攪拌させた。攪拌終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で酸触媒を中和した後、水槽を除去した。さらに有機層を水で2回洗浄した。その後、未反応のイソブチルビニルエーテルを除去することを目的として、ロータリーエバポレーターを用いて低沸点残存物を除去した。その後、溶液の固形分濃度を測定し、固形分が40%となるようにシクロペンタノンを添加し、水酸基が酸分解性基である1-イソプロポキシエチル基で保護された樹脂(RG-11~RG-14)の固形分40質量%溶液を得た。
【0157】
RG-01~RG-04およびRG-11~RG-14の重量平均分子量、硫黄原子濃度、および、酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合(保護率)は、表1に示した。
【0158】
【0159】
実施例1~16、比較例1~4
表2に示した配合比率で、ポジ型感光性組成物A~Tを調整した。これらのポジ型感光性組成物について上記(3)の評価方法にて感光性評価を実施した。なお現像までの操作は全て黄色灯のもとで行った。結果を表3に示した。
【0160】
【0161】