(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125200
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】パワーコンバータにおける相加算
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024030768
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】63/488,340
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・スチュアート・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ヤショヴァルダン・ラオ・ポトラパリ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイソン・ヒューストン
(57)【要約】
【課題】 パワーコンバータシステムおよびそれを用いた電力変換方法が提供される。
【解決手段】
コントローラは、電力を負荷に供給するために、第1のクロック信号を生成し、第1のクロック信号を使用してPWM(パルス幅変調)信号を生成し、パワーコンバータ内の第1の数のアクティブ相を動作させる。コントローラは、電力を供給するために第1の数のアクティブ相よりも大きい第2の数を負荷が要求しているかを判定することができる。コントローラは、パルス信号を生成し、パルス信号と第1のクロック信号とを組み合わせて、第1のクロック信号より高い周波数を有する第2のクロック信号を生成することができる。コントローラは、電力を負荷に供給するために、第2のクロック信号を使用してPWM信号を生成し、パワーコンバータ内の第2の数のアクティブ相を動作させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
第1のクロック信号を生成するように構成されたクロック生成器と、
電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、前記第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成するように構成された変調器と、
回路と、
を備え、
前記回路は、電力を供給するために前記多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定するように構成され、
前記第2の数は、前記第1の数よりも大きく、
前記回路は、
少なくとも1つのパルス信号を生成し、
前記少なくとも1つのパルス信号を前記クロック生成器に送信するように構成され、
前記クロック生成器は、前記少なくとも1つのパルス信号と前記第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成するようにさらに構成され、
前記第2のクロック信号は、前記第1のクロック信号よりも高い周波数を有し、
前記変調器は、前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて前記第2の数のアクティブ相を動作させるように、前記第2のクロック信号に従って前記PWM信号を生成するようにさらに構成される、
半導体装置。
【請求項2】
前記回路は、
前記多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも大きいことを示す信号を受信し、
前記信号の受信に応答して、前記電力を供給するために前記多相パワーコンバータにおける前記第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記回路は、
前記第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定したことに応答して、前記多相パワーコンバータの出力電圧が所定の閾値まで減少したと判定し、
前記出力電圧が前記所定の閾値まで減少したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号を生成するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記回路は、
前記少なくとも1つのパルス信号のうちの生成されたパルスの数をカウントし、
生成された前記パルスの数が所定のカウントに達したと判定し、
生成された前記パルスの数が前記所定のカウントに達したと判定したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するようにさらに構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記回路は、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するように構成され、
前記回路が前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止したことに応答して、前記変調器は、前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて前記第2の数のアクティブ相を動作させるように、前記第1のクロック信号に従って前記PWM信号を生成するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記回路は、
前記多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであることを示す信号を受信し、
前記多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであることを示す前記信号を受信したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記クロック生成器は、
前記回路から前記少なくとも1つのパルス信号を受信し、
前記多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも小さいことを示す信号を受信し、
前記多相パワーコンバータの前記平均インダクタ電流が前記所定の閾値よりも小さいことを示す前記信号を受信したことに応答して、前記少なくとも1つのパルスと前記第1のクロック信号との組み合わせを非アクティブ化するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
電力を負荷に供給するために入力電圧を出力電圧に変換するように構成された多相パワーコンバータと、コントローラと、を備えるシステムであって、
前記コントローラは、
第1のクロック信号を生成し、
前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、前記第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成し、
前記電力を供給するために前記多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定するように構成され、
前記第2の数は、前記第1の数よりも大きく、
前記コントローラは、
少なくとも1つのパルス信号を生成し、
前記少なくとも1つのパルス信号と前記第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成するようにさらに構成され、
前記第2のクロック信号は、前記第1のクロック信号よりも高い周波数を有し、
前記コントローラは、
前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて前記第2の数のアクティブ相を動作させるように、前記第2のクロック信号に従って前記PWM信号を生成するようにさらに構成される、
システム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも大きいと判定し、
前記多相パワーコンバータの前記平均インダクタ電流が前記所定の閾値よりも大きいと判定したことに応答して、前記電力を供給するために前記多相パワーコンバータにおける前記第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定するように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定したことに応答して、前記多相パワーコンバータの出力電圧が所定の閾値まで減少したと判定し、
前記出力電圧が前記所定の閾値まで減少したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号を生成するように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記少なくとも1つのパルス信号のうちの生成されたパルスの数をカウントし、
生成された前記パルスの数が所定のカウントに達したと判定し、
生成された前記パルスの数が前記所定のカウントに達したと判定したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するようにさらに構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止し、
前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止したことに応答して、前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて前記第2の数のアクティブ相を動作させるように、前記第1のクロック信号に従って前記PWM信号を生成するように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであると判定し、
前記多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであることに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、
前記多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも小さいと判定し、
前記多相パワーコンバータの前記平均インダクタ電流が前記所定の閾値よりも小さいことに応答して、前記少なくとも1つのパルスと前記第1のクロック信号との組み合わせを非アクティブ化するように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
第1のクロック信号を生成するステップと、
電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、前記第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成するステップと、
前記電力を供給するために前記多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定するステップであって、前記第2の数は、前記第1の数よりも大きい、ステップと、
少なくとも1つのパルス信号を生成するステップと、
前記少なくとも1つのパルス信号と前記第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成するステップであって、前記第2のクロック信号は、前記第1のクロック信号よりも高い周波数を有する、ステップと、
前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて前記第2の数のアクティブ相を動作させるように、前記第2のクロック信号に従って前記PWM信号を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも大きいと判定するステップと、
前記多相パワーコンバータの前記平均インダクタ電流が前記所定の閾値よりも大きいと判定したことに応答して、前記電力を供給するために前記多相パワーコンバータにおける前記第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の数のアクティブ相を前記負荷が要求していると判定したことに応答して、前記多相パワーコンバータの出力電圧が所定の閾値まで減少したと判定するステップと、
前記出力電圧が前記所定の閾値まで減少したと判定したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号を生成するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのパルス信号のうちの生成されたパルスの数をカウントするステップと、
生成された前記パルスの数が所定のカウントに達したと判定するステップと、
生成された前記パルスの数が前記所定のカウントに達したと判定したことに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するステップと、
前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止したことに応答して、前記電力を前記負荷に供給するために前記多相パワーコンバータにおいて前記第2の数のアクティブ相を動作させるように、前記第1のクロック信号に従って前記PWM信号を生成するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであると判定するステップと、
前記多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであることに応答して、前記少なくとも1つのパルス信号の生成を停止するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2023年3月3日に出願された「FAST CLOCK AND PHASE ADD SYSTEM FOR MULTIPHASE VOLTAGE REGULATORS」と題する米国特許出願第63/488,340号の優先権を主張する。その全文は、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本明細書に明示されない限り、本項に記載される資料は、本願の特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、本項の記載によって先行技術であることを認めるものではない。本開示は、一般に、半導体装置を制御するシステムおよび方法に関し、より詳細には、パワーコンバータを制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バックコンバータやブーストコンバータなどのパワーコンバータまたは電圧コンバータは、入力電圧を、電圧レベルが異なる出力電圧に変換するために使用され得る。バックコンバータや降圧コンバータは、入力電圧をより低い電圧に変換することができる。ブーストコンバータや昇圧コンバータは、入力電圧をより高い電圧に変換することができる。バック/ブーストコンバータは、入力電圧を昇圧または降圧することができる。電圧コンバータは、PWM(パルス幅変調)制御信号によってオンおよびオフされる複数のスイッチを含むことができる。PWM制御信号のデューティサイクルは、電圧コンバータの出力電圧を決定することができる。電圧コンバータが負荷に接続されると、負荷は特定量の電力を要求することができ、電圧コンバータは電圧変換を実行して、負荷が要求する電力を供給できる出力電圧を生成することができる。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、一般に、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができる半導体装置が提供される。半導体装置は、第1のクロック信号を生成するように構成されたクロック生成器を含むことができる。さらに、半導体装置は、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成するように構成された変調器を含むことができる。さらに、半導体装置は、電力を供給するために多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を負荷が要求していると判定するように構成された回路を含むことができる。第2の数は、第1の数よりも大きくすることができる。さらに、回路は、少なくとも1つのパルス信号を生成するように構成され得る。さらに、回路は、少なくとも1つのパルス信号をクロック生成器に送信するように構成され得る。さらに、クロック生成器は、少なくとも1つのパルス信号と第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成するように構成され得る。第2のクロック信号は、第1のクロック信号よりも高い周波数を有することができる。さらに、変調器は、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第2の数のアクティブ相を動作させて、第2のクロック信号に従ってPWM信号を生成するように構成され得る。
【0005】
一実施形態において、一般に、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができるシステムが提供される。該システムは、電力を負荷に供給するために入力電圧を出力電圧に変換するように構成された多相パワーコンバータを含むことができる。さらに、該システムは、第1のクロック信号を生成するように構成されたコントローラを含むことができる。さらに、コントローラは、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成するように構成される。さらに、コントローラは、電力を供給するために多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を負荷が要求していると判定するように構成され得る。第2の数は、第1の数よりも大きくすることができる。さらに、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号を生成するように構成され得る。さらに、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号と第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成するように構成され得る。第2のクロック信号は、第1のクロック信号よりも高い周波数を有する。さらに、コントローラは、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第2の数のアクティブ相を動作させるように、第2のクロック信号に従ってPWM信号を生成するように構成され得る。
【0006】
一実施形態において、一般に、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができる方法が提供される。該方法は、第1のクロック信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、電力を供給するために多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を負荷が要求していると判定するステップを含むことができる。第2の数は、第1の数よりも大きくすることができる。さらに、該方法は、少なくとも1つのパルス信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、少なくとも1つのパルス信号と第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成するステップを含むことができる。第2のクロック信号は、第1のクロック信号よりも高い周波数を有する。さらに、該方法は、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第2の数のアクティブ相を動作させるように、第2のクロック信号に従ってPWM信号を生成するステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上記の要約は例示であり、いかなる意味においても限定することを意図していない。上述した態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が、添付の図を参照して、且つ以下の詳細な説明から明らかになるであろう。図において、同様の参照符号は、同一または機能的に同様の要素を示す。
【
図1】一実施形態における、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができるシステムの一例を示す図である。
【
図2】別の実施形態における、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができるコントローラを示す図である。
【
図3】別の実施形態における、パワーコンバータでの相加算の実装例から得られた一連の波形を示す図である。
【
図4】一実施形態における、
図1に示すシステムの異なる実装例から得られたクロック信号を示す図である。
【
図5】様々な実施形態による、パワーコンバータにおいて相加算の方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本願の様々な実施形態の理解を促すために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技術などを含む多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本願の様々な実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実現され得ることを理解するであろう。場合によっては、本願を不明瞭にしないために、既知の構造または処理ステップの詳細に関する説明を省略する。
【0009】
パワーコンバータは、FET(電界効果トランジスタ)など、電力を負荷に供給するための出力電圧を生成するためにスイッチング可能なパワーデバイスを含むことができる。パワーコンバータのコントローラは、PWM(パルス幅変調)信号を生成するように構成された変調器を含むことができる。また、パワーコンバータは、PWM信号を受信し、PWM信号を使用して電圧信号を生成することができるドライバ回路を含むことができる。ドライバ回路は、電圧信号をパワーデバイスのゲート端子に印加してパワーデバイスをオンやオフにスイッチングすることで、パワーデバイスを駆動することができる。一態様において、パワーコンバータに供給される入力電圧は、負荷が要求する電力の電圧よりも高い電圧を有することができる。バックコンバータであり得るパワーコンバータは、入力電圧を降圧して負荷が要求している電圧レベルを有する出力電圧を生成することができる。
【0010】
一態様において、パワーコンバータは、異なる電力レベルを要求する異なる負荷に接続され得る。重負荷は、比較的大きな電力を要求することができ、軽負荷は、比較的小さな電力を要求することができる。パワーコンバータは、重負荷および軽負荷に対応するために、異なる電力レベルを供給するように設計および構成され得る。パワーデバイスのスイッチングは、パワーコンバータが異なる電力量を異なる負荷に供給するために制御され得る。一態様において、パワーコンバータが軽負荷のために設計および構成されている場合、パワーコンバータは、重負荷を供給できない場合がある。パワーコンバータが重負荷のために設計および構成されている場合、軽負荷のために低電圧を生成する特定の方法でパワーデバイスを制御することができるので、パワーコンバータは、重負荷および軽負荷の両方を供給することができる。
【0011】
例えば、パワーコンバータは、複数の相(例えば、パワーFETに接続されたドライバIC)を含むことができる。複数の相は、異なる電力レベル、および重負荷のための高電力を比較的効率よく供給するように並列に接続され得る。パワーコンバータのコントローラは、電力変換を可能な限り効率よくするために、負荷に基づいてアクティブ相の数を管理することができる。例えば、コントローラは、電力を重負荷に供給するためにより多くの相をアクティブ化することができ、電力を軽負荷に供給するためにより少ない数の相、または1つの相だけをアクティブ化することができる。
【0012】
図1は、一実施形態における、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができるシステムの一例を示す図である。システム100は、パワーコンバータ102と、電源108と、ホストコンピュータ110と、負荷118と、を含むことができる。ホストコンピュータ110は、制御信号を供給し、パワーコンバータ102からステータス情報を受信するように構成され得る。パワーコンバータ102は、入力電圧V
inおよび入力電流I
inを供給するために、例えば、バッテリパックモジュールまたはDC電源などの電源108に接続するように構成されてもよい。さらに、システム100は、システム100内の動作に関する様々なパラメータを監視し、監視されたパラメータに基づいて、負荷118などの1つまたは複数の負荷に異なる電力レベルを供給するかどうかを決定するように構成され得る。
【0013】
ホストコンピュータ110は、ROM(読み出し専用メモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、PLD(プログラマブルロジックデバイス)、フラッシュドライブ、メモリカード/メモリスティック、およびソリッドステート記憶デバイスなどの非一時的なコンピュータ可読媒体114に格納されたコンピュータ命令116(例えば、コンピュータ実装コード)を読み出しおよび実行するように構成されたプロセッサ112を有するマイクロコントローラまたはマイクロコンピュータを含むことができる。これらは、コンピュータ命令116の改訂および/または更新を容易にするために、再書き込み可能、取り外し可能、または交換可能であり得る。ホストコンピュータ110は、双方向バス130を介してパワーコンバータ102と通信することができる。
【0014】
パワーコンバータ102は、相104と、コントローラ106と、を含むことができる。相104は、コントローラ106から供給された制御信号に基づいてオンおよびオフを切り換えるスイッチを含むように構成され得る。コントローラ106は、様々なアナログおよびデジタル回路要素などのハードウェアを含むマイクロコントローラを実現する1つまたは複数の半導体装置を含むことができる。コントローラ106は、例えば、プロセッサ、CPU(中央処理装置)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはパワーコンバータ102の様々な側面を制御および動作するように構成された任意の他の回路を含むことができる。コントローラ106は、パワーコンバータ102の様々な側面を制御するように構成され得る。相104は、コントローラ106と同じダイ上に含まれ得る(例えば、同じ半導体チップに集積されることができる)。
【0015】
相104は、例えば、PH[1]~PH[N]などの複数の相を含むことができる。各相は、例えば、ドライバ[1]~ドライバ[N](以下「ドライバIC120」)などの対応するドライバICを含むことができる。また、各相は、例えば、電力段[1]~電力段[N](以下「電力段122」)などの電力段を含むことができる。電力段112の各々は、インダクタL[1]~L[N](以下「L」)に接続された2つのスイッチHS[1]~HS[n](以下「HS」)およびLS[1]~LS[n](以下「LS」)を含むことができる。各電力段122のHSスイッチおよびLSスイッチの間には、対応するスイッチノードSW[1]~SW[N](以下「SW」)が設けられ得る。各相は、出力電圧Vout[1]~Vout[N](以下「Vout」)を生成することができる。複数の相は、軽負荷にはより低い電力、重負荷にはより高い電力など、異なる電力レベルを比較的効率よく供給するように並列に接続され得る。パワーコンバータ102のコントローラ106は、電力変換を可能な限り効率よくするために、負荷118に基づいてアクティブ相の数を管理することができる。例えば、コントローラ106は、電力を重負荷に供給するために、より多くの相をアクティブ化することができ、電力を軽負荷に供給するために、より少ない数の相、または1つの相だけをアクティブ化することができる。
【0016】
ドライバIC120は、駆動信号を介して電力段122内のスイッチを駆動することができる。駆動信号は、電力段122内の各相の対応するハイサイド(HS)スイッチおよびローサイド(LS)スイッチ、すなわちHSおよびLSをオンまたはオフすることができるゲート電圧をもつ電圧信号であり得る。一実施形態において、HSスイッチおよびLSスイッチは、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などのFET(電界効果トランジスタ)であり得る。他の実施形態において、HSスイッチおよびLSスイッチは、ダイオードまたはIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり得る。ドライバIC120は、HSスイッチを駆動するように構成されたドライバと、電力段122内のLSスイッチを駆動するように構成された別のドライバと、を含むことができる。HSスイッチは、入力電圧Vinと対応するスイッチノードとの間に直列に配置されたN型MOSFETまたはP型MOSFETであり得、LSスイッチは、対応するスイッチノードSW[1]~SW[N](以下「SW」)と接地との間に直列に配置されたN型MOSFETであり得る。一実施形態において、入力電圧Vinは、バッテリパックまたは電源から供給された直流(DC)電圧であり得る。HSスイッチは、LSスイッチがオフにされる間にオンにされるように構成され得、その逆もまた同様である。HSスイッチがオンにされ、LSスイッチがオフにされると、HSスイッチとLSスイッチとの間のスイッチノードSWにおける電圧は、スイッチノードSWにおける電圧がVinと等価になるように、Vinまで引き上げられることができる。HSがオフにされ、LSがオンにされると、スイッチノードにおける電圧は、接地に引き下げられることができる。これにより、SWは、ゼロと等価になる。HSスイッチおよびLSスイッチは、出力電圧Voutを生成するためにオンまたはオフにスイッチングされ得る。出力電圧Voutは、各相内の対応するインダクタLを介して負荷118に出力され得る。
【0017】
コントローラ106は、メモリ内に埋め込まれるか、またはメモリによってアクセス可能であるか、あるいはホストコンピュータ110から少なくとも部分的にダウンロード可能なファームウェア、ソフトウェア、および構成データを含む場合がある命令を実行するように構成され得る。さらに、コントローラ106は、電力段122内のスイッチをオンまたはオフするための、例えばPWM[1]~PWM[N]信号(以下「PWM信号」)などの制御信号を生成するように構成され得る。
【0018】
図1に示すN個の相のうちの1つを例として使用すると、相PH[1]は、ドライバIC120(例えば、ドライバ[1])と、電力段122(例えば、電力段[1])と、を含むことができる。ドライバIC120は、制御信号PWM[1]を使用して駆動信号164を生成し、駆動信号164を使用して電力段[1]内のスイッチHS[1]を駆動し、駆動信号166を生成し、駆動信号166を使用して電力段[1]内のスイッチLS[1]を駆動することができる。ドライバ[1]は、コントローラ106から供給された制御信号PWMに従って、駆動信号164、166をスイッチHS[1]、LS[1]のゲート端子に交互に印加することができる。駆動信号164、166を使用してスイッチHS[1]、LS[1]を駆動した結果、スイッチHS[1]、LS[1]の間のスイッチノードSW[1]から出力電圧V
out[1]を出力することができる。インダクタンスL1をもつインダクタL[1]は、スイッチノードSW1とシステム100の出力140との間に接続され得る。
【0019】
図1に示す相PH[N]に注目すると、相Nは、ドライバIC120(例えば、ドライバ[N])と、電力段122(例えば、電力段[N])と、を含むことができる。ドライバ[N]は、制御信号PWM[N]を使用して駆動信号168を生成し、駆動信号168を使用して電力段[N]内のスイッチHS[N]を駆動し、駆動信号170を生成し、駆動信号170を使用して電力段[N]内のスイッチLS[N]を駆動することができる。ドライバ[N]は、コントローラ106から供給された制御信号PWMに従って、駆動信号168、170をスイッチHS[N]、LS[N]のゲート端子に交互に印加することができる。駆動信号168、170を使用してスイッチHS[N]、LS[N]を駆動した結果、スイッチHS[N]、LS[N]の間のスイッチノードSW[N]から出力電圧V
out[N]を出力することができる。インダクタンスLNをもつインダクタL[N]は、スイッチノードSW[N]とシステム100の出力140との間に接続され得る。一実施形態において、パワーコンバータ102内の相の数は、システム100の意図された電力供給能力に依存することができる。パワーコンバータ102内の相の数は、1~Nの間で変化することができる。ここで、Nは、1、1、4、10、16であってもよく、システム100の電力供給要件に基づく任意の数であってもよい。
【0020】
一態様において、システム100は、様々な用途が要求する高い電力要求のバーストを伴う軽負荷において大部分の時間を過ごす場合がある。軽負荷時には、パワーコンバータ102は、電力を軽負荷に供給するために、1つの相など、比較的少ない数の相で動作することができる。システム100がより高い負荷を必要とする場合、相の数を追加することができる。追加する相の数は、平均インダクタ電流やシステム100の効率などの様々な要因に依存することができる。しかしながら、コントローラループの帯域幅が負荷118の要求と比較して相対的に低く、相が比較的低速で追加される場合、出力電圧のアンダーシュートが発生する場合がある。これは、負荷118の性能に問題を発生させる可能性がある。後述するように、コントローラ106内の回路150は、軽負荷から重負荷への遷移中の相加算をサポートすることができる。回路150は、プログラム可能な数のパルスをPWMクロックに追加して、相加算を高速化することができる。相加算を高速化することで、相加算が完了する前に出力電圧が電圧アンダーシュートレベルまで低下することを防止することができる。したがって、過度負荷時の過度応答を改善し、アンダーシュートの発生を低減または回避することができる。
【0021】
図2は、別の実施形態における、パワーコンバータにおいて相加算を実現することができるコントローラを示す図である。
図2の説明は、
図1に示す構成要素を参照することができる。
図2に示す実施形態において、コントローラ106は、電流感知増幅器205[1]、205[2]~205[N](以下「205」)と、平均化回路207と、コンパレータ209と、出力電圧デジタル・アナログコンバータ(DAC)213と、負荷線制御ブロック215(「負荷線215」)と、誤差増幅器217と、変調器219と、PWMクロック生成器225と、回路150と、を含むことができる。回路150は、コンパレータ221と、パルス生成回路223(「パルス回路223」)と、を含むことができる。電流感知増幅器205の各々は、対応する相の出力に接続され得る。電流感知増幅器205の各々は、対応する相の出力に接続されたインダクタのインダクタ電流を、感知電流Isenseとして感知するように構成され得る。電流感知増幅器205は、それぞれの感知電流Isense[1]~Isense[N]を増幅し、増幅された感知電流230[1]~230[N](以下「増幅された感知電流230」)を供給するように構成され得る。増幅された感知電流230は、平均化回路207に供給され得る。平均化回路207は、増幅された感知電流230を受信および平均化して平均化電流232を生成するように構成され得る。比較的小さな電流の平均化はときとして不正確である場合があるのに対して、電流感知増幅器205による増幅により、平均化回路207は、感知電流Isense[1]~Isense[N]の平均を、改善された精度で決定することができる。
【0022】
平均化回路207は、平均化電流232を、コンパレータ209の非反転入力(+)および負荷線215に供給することができる。コンパレータ209は、電流を比較するように構成された電流コンパレータであり得る。また、コンパレータ209は、コンパレータ209の反転入力(-)において自動相加算閾値211(例えば、直流電流の形態)を受信することができる。自動相加算閾値211は、コントローラ106のレジスタ内に格納された所定のまたは事前にプログラムされた閾値電流値であり得る。自動相加算閾値211は、負荷118による要求の増加を満たすために、相加算をトリガーすることができる、プログラム可能な閾値であり得る。例えば、平均化電流232が自動相加算閾値211を下回ることに応答して、コンパレータ209は、低電圧またはゼロ電圧を出力することができ、パワーコンバータ102内のアクティブ相の数は同じままであり、追加相はアクティブ化されない。平均化電流232が自動相加算閾値211と等しいかそれを上回ることに応答して、コンパレータ209は、高電圧を出力することができ、コントローラ106は、パワーコンバータ102内の追加相をアクティブ化することができる。
【0023】
出力電圧DAC213は、ターゲット電圧のデジタル表現であるデジタル信号を受信し、このデジタル表現を、ターゲット電圧を符号化するアナログ信号235に変換するように構成され得る。ターゲット電圧は、ゼロ負荷動作のために事前にプログラムされたまたは所定の電圧値であり得る。デジタル信号は、コントローラ106のレジスタに格納された基準電圧の所定の値または事前にプログラムされた値であり得る。負荷線215は、パワーコンバータ102の負荷線制御を実行するように構成された回路であり得る。負荷線215は、出力電圧DAC213からのアナログ信号235、平均化電流232、および出力電圧Voutのフィードバックを受信することができる。負荷線215は、異なる電圧値を電流値にマッピングする電圧・電流(V・I)関係(例えば、V・I曲線)を表すデータを格納するように構成され得る。負荷線215は、平均化電流232を、格納されたV・I関係に適用して、平均化電流232にマッピングされる電圧を決定することができる。平均化電流232にマッピングされた電圧は、Voutと組み合わせて、調整電圧信号237を生成することができる。一実施形態において、負荷線215は、アナログ信号235と平均化電流232との差を決定し、その差に負荷線215の抵抗(例えば、負荷線抵抗Rloadline)を乗じて調整電圧信号237を生成するように構成され得る。換言すると、調整電圧信号237=Vdac-Iload_avg*Rloadlineである。ここで、Vdacはアナログ信号235の電圧を表し、Iload_avgは平均化電流232を表す。ターゲット電圧を符号化したアナログ信号235は、負荷線215を通過して誤差増幅器217に供給され得る。負荷線215は、調整電圧信号237を誤差増幅器217に送ることができる。誤差増幅器217は、調整電圧信号237およびアナログ信号235を受信し、調整電圧信号237とアナログ信号235との差を決定することができる。誤差増幅器217は、調整電圧信号237とアナログ信号235との差に基づいて制御電圧Vcを生成することができる。制御電圧Vcは変調器219に供給することができる。変調器219は、対応する各相の制御電圧Vcに基づいて、PWM信号PWM[1]、PWM[2]~PWM[N](以下「PWM信号」)を生成することができる。電流感知増幅器205、平均化回路207、コンパレータ209、負荷線制御ブロック215、および誤差増幅器217は、Voutを調整するためにコントローラ106によって実装可能な電圧制御ループを形成することができる。
【0024】
PWMクロック生成器225は、パワーコンバータ102のマスタークロックであり得る。PWMクロック生成器225は、PWM信号PWM[1]、PWM[2]、...PWM[N]を同期させるためのクロック信号226を生成するように構成され得る。変調器219は、クロック信号226を受信し、PWM信号のパルスとクロック信号226とを整合させるなど、クロック信号226に従ってPWM信号を生成することができる。一実施形態において、PWMクロック生成器225は、変調器219に含まれ得る。一実施形態において、変調器219は、回路150が非アクティブ化されたときにクロック信号226に従ってPWM信号を生成し、回路150がアクティブ化されたときに別の一連のクロック信号に従ってPWM信号を生成する。例示的な実施形態において、負荷118がシステム100からより多くの電力を要求する場合、インダクタLをわたる電流を所望のレベルまで増加させると、負荷118による要求を満たすために多数のスイッチングサイクル(例えば、2回以上)を要する場合がある。これらの多数のスイッチングサイクルの間、出力キャパシタC(
図1参照)が負荷118に供給するために消耗し始めるため、出力電圧V
outは、比較的急速に低下する可能性がある。
【0025】
電圧アンダーシュートを引き起こすレベルまでVoutが低下するのを防止するために、回路150は(例えば、コントローラ106によって)アクティブ化され得る。回路150のコンパレータ221は、調整電圧信号237と負荷線215から出力されたアナログ信号235とをサイクルごとに監視および比較するように構成され得る。コンパレータ221は、調整電圧信号237とアナログ信号235との間の差が所定の差の閾値を下回る場合に、低い信号(例えば、低電圧信号または0V)を生成する。コンパレータ221は、調整電圧信号237とアナログ信号235との間の差が所定の差の閾値を上回る場合に、高い信号(例えば、高電圧信号または1V)を生成する。一実施形態において、アナログ信号235によって符号化されたターゲット電圧は、調整電圧信号237よりも大きくなり得る。したがって、Voutが減少すると、調整電圧信号237も減少し、アナログ信号235と調整電圧信号237との差も同様に減少することができる。調整電圧信号237が所定のNショット閾値まで低下したとき、または差が所定の差の閾値よりも大きい場合、コンパレータ221は、高電圧を生成することができる。閾値の差は、最適化された値に事前にプログラムされるか調整可能であり得る。これにより、電圧信号237が閾値の差を下回るが閾値の差に近い場合、コンパレータ221は、Voutが調節ターゲットを下回ることを防止することができる。また、電圧信号237が閾値の差を上回るが閾値の差に近い場合、閾値の差は、Voutの過剰補正を防止することができる。一実施例において、閾値の差を、調整ターゲット電圧(例えば、調整電圧信号237)より20mVまたは40mV低くすることができる。コンパレータ221が低い信号を生成し、低い信号をパルス生成回路223に出力する場合、パルス生成回路223は非アクティブ化され得る。コンパレータ221が高い信号を生成し、高い信号をパルス生成回路223に出力する場合、パルス生成回路223はアクティブ化され得る。
【0026】
パルス生成回路223がアクティブ化されると、パルス生成回路223は、少なくとも1つのクロックパルス240を生成するように構成され得る。クロックパルス240は、PWMクロック生成器225に送られ得る。PWMクロック生成器225は、クロックパルス240をクロック信号226に加算または挿入してPWMクロック信号242を生成するように構成され得る。PWMクロック信号242は、変調器219に供給され得る。変調器219は、PWMクロック信号242に基づいて、PWM信号PWM[1]、PWM[2]、...PWM[N]を生成することができる。PWMクロック信号242は、クロック信号226よりも高い周波数を有することができる。したがって、クロックパルス240をクロック信号226に加算することで、より高速なクロック(例えば、PWMクロック信号242)を生成することができ、相を比較的速い速度で加算して過度応答を改善し、電圧アンダーシュートが発生する前にVoutを所望のレベルで調節することができる。
【0027】
一実施形態において、パルス生成回路223は、プログラム可能なカウンタを含むことができる。カウンタは、所定の数のクロックパルスをプログラム可能である。パルス生成回路223内のカウンタは、パルス生成回路223が生成したクロックパルス240の数をカウントするように構成され得る。クロックパルス240の数が所定の数に達すると、パルス生成回路223は、クロックパルス240の生成を停止することができる。パルス生成回路223がPWMクロック生成器225へのクロックパルス240の供給を停止した場合、PWMクロック生成器225は、クロック信号226を生成し続けることができ、変調器219は、クロック信号226に基づいてPWM信号を生成することができる。システム100で利用可能な相の数に応じて、生成されるパルスの量を事前にプログラムすることができる。例示的な一実施形態において、追加されるクロックパルス240の数は、1~4の範囲であり得る。しかしながら、より低速なシステム(例えば、より高いインダクタ値およびより大きな出力キャパシタ)では、より多くのクロックパルス240の数が所望される場合がある。別の実施形態において、パワーコンバータ102ですべての相が追加される(例えば、すべてのN個の相がアクティブである)と、パルス生成回路223は、クロックパルス240の生成を停止することができる。例えば、コントローラ106は、すべてのN個の電流感知増幅器205が感知電流を受信した場合に、すべてのN個の相がアクティブであると判定することができる。コントローラ106は、すべてのN個の相がアクティブであること示す信号をパルス生成回路223に送信して、パルス生成回路223を無効にまたは非アクティブ化し、パルス240の生成を停止することができる。
【0028】
また、PWMクロック生成器225は、コンパレータ209の出力に基づいて、クロック信号226に対するクロックパルス240の組み合わせをオンまたはオフするようにトリガーされ得る。例えば、コンパレータ209が低い信号を出力する場合、パルス生成回路223がクロックパルス240を出力しているか否かにかかわらず、クロックパルス240とクロック信号226との組み合せは、PWMクロック生成器225において非アクティブ化され得る。コンパレータ209が高い信号を出力する場合、クロックパルス240とクロック信号226との組み合わせは、PWMクロック生成器225においてアクティブ化され得る。コンパレータ209からの出力がクロックパルス240とクロック信号226との組み合わせをアクティブ化し、パルス生成回路223がクロックパルス240を出力しない場合、PWMクロック生成器225は、クロック信号226にゼロを加算し、クロック信号226をPWMクロック信号242として出力することができる。回路105は、アクティブ相と非アクティブ相の数を決定し、負荷118がより多くの電力を要求するときに、どの非アクティブ相をオンにするかを決定するように構成され得る。例えば、コントローラ106は、感知電流を受信している電流感知増幅器205の数を決定して、アクティブ相および非アクティブ相の数を決定することができる。
【0029】
図3は、別の実施形態における、パワーコンバータでの相加算の実装例から得られた一連の波形を示す図である。
図3の説明は、
図1および
図2に示す構成要素を参照してもよい。
図3には、負荷118によって引き出される負荷電流306の波形、相PH[0]、PH[1]およびPH[2]などのパワーコンバータ102内の1つまたは複数の相のインダクタ電流314の波形、平均化回路207によって生成される平均化電流232の波形、および出力電圧310(例えば、V
out)の波形が示されている。時間t1では、負荷118がより多くの電力を要求するため、負荷電流306は、時間t1でステップアップする。平均化電流232は、負荷電流306と同じ電流まで増加するために多数のスイッチングサイクルを要する場合がある。また、出力キャパシタCが電力を負荷118に供給するために電圧を消耗しているため、出力電圧310は、時間t1で減少し始める可能性がある。時間t1では、パワーコンバータ102は、1つの相PH[0]がアクティブ化されている。コンパレータ221は、低い信号を生成することができ、パルス生成回路223を非アクティブ状態に保つ。時間t2で出力電圧310がNショット閾値322に達すると、コンパレータ221は、高い信号を生成してパルス生成回路223をアクティブ化し、クロック信号226と組み合わせてPWMクロック信号242を生成することができるクロックパルス240を生成することができる。PWMクロック信号242に基づいて変調器219によって生成されたPWM信号は、時間t3で相PH[1]をアクティブ化し、時間t3の直後に別の相PH[2]をアクティブ化することができる。相PH[1]およびPH[2]の加算により、出力電圧310が減少し続ける前に、ピーク324で示されるように出力電圧310が増加する可能性がある。時間t3で相を加算してピーク324で示されるように出力電圧310を増加させた結果、出力電圧310は、電圧アンダーシュート領域323に低下することなく、平均化電流232が負荷電流306と同じレベルに達するまで減少し続けることができる。一実施形態において、回路150が非アクティブ化され、変調器219がクロック信号226に従ってPWM信号を生成する場合、相の加算を開始する時間が時間t3よりも遅くなる可能性があり、出力電圧310のピーク324は発生せず、出力電圧310は電圧アンダーシュート領域323に低下する。
【0030】
図4は、一実施形態における、
図1に示すシステムの異なる実装例から得られたクロック信号を示す図である。
図4の説明は、
図1~
図3に示す構成要素を参照することができる。波形
図401は、回路150が無効である場合の
図1の実装例を示す。波形
図402は、回路150が有効である場合の
図1の実装例を示す。例示的な実施形態において、パワーコンバータ102は、少なくとも3つの相を含むことができる。システム100がより高い負荷電流を必要とするとき、相2および相3、すなわちPH[2]およびPH[3]が、すでにアクティブな相1、すなわちPH[1]に加えて加算され、負荷118により多くの電力を供給するのを助ける。波形
図401では、相PH[k-1]の立ち下がりエッジの後の時間T1で、新しい相PH[k]を加算することができる。例えば、相PH[2]の立ち上がりエッジは、相PH[1]の立ち下がりエッジの後の時間T1で開始する。別の相PH[k+1]は、相PH[k]の立ち下がりエッジからさらに時間T1が経過した後に追加される。波形
図402に示す例示的な実施形態において、システム100の回路150は、回路150が無効な場合よりも速い速度で相加算を実現できるように有効にされている。波形
図402では、相PH[2]は、相PH[1]の立ち下がりエッジ後の時間T2で加算され、相PH[3]は、相PH[2]の立ち下がりエッジ後の別の時間T2が経過した後に加算される。
図4に示すように、回路150が有効になると、時間T2が時間T1よりも短いため、より速い時間で相を加算することができる。回路150のアクティブ化に応答したクロックパルス240とクロック信号226との組み合わせ(例えば、PWMクロック信号242の生成)に起因して、時間T2は時間T1よりも小さくなり得る。
【0031】
図5は、様々な実施例による、多相パワーコンバータのための高速クロックおよび相加算システムを動作させる方法を示すフロー図である。
図5の説明は、
図1~4に示す構成要素を参照してもよい。プロセス500は、1つまたは複数のブロック501、503、505、および507によって示される1つまたは複数の操作、動作、または機能を含むことができる。個別のブロックとして図に示されているが、所望の用途に応じて、様々なブロックを追加のブロックに分割したり、より少ない数のブロックに組み合わせたり、省略したり、異なる順序で実行されたり、並行して実行されたりすることができる。
【0032】
プロセス500は、電圧レギュレータシステム内のコントローラによって実現され得る。例えば、電圧レギュレータシステム100のコントローラ106は、プロセス500を実行することができる。プロセス500は、ブロック501で開始することができる。ブロック501では、コントローラは、第1のクロック信号を生成することができる。
【0033】
プロセス500は、ブロック501からブロック503に続くことができる。ブロック503では、コントローラは、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第1の数のアクティブ相を動作させるように、第1のクロック信号に従ってPWM(パルス幅変調)信号を生成することができる。プロセス500は、ブロック503からブロック505に続くことができる。ブロック505では、コントローラは、電力を供給するために多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を負荷が要求していると判定することができる。第2の数は、第1の数よりも大きい。
【0034】
プロセス500は、ブロック505からブロック507に続くことができる。ブロック507では、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号を生成することができる。プロセス500は、ブロック507からブロック509に続くことができる。ブロック509では、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号と第1のクロック信号とを組み合わせて、第2のクロック信号を生成することができる。第2のクロック信号は、第1のクロック信号よりも高い周波数を有する。
【0035】
プロセス500は、ブロック509からブロック511に続くことができる。ブロック511では、コントローラは、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第2の数のアクティブ相を動作させるように、第2のクロック信号に従ってPWM信号を生成することができる。一実施形態において、コントローラは、多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも大きいと判定することができる。多相パワーコンバータの平均インダクタ電流が所定の閾値よりも大きいと判定したことに応答して、コントローラは、電力を供給するために多相パワーコンバータにおける第2の数のアクティブ相を負荷が要求していると判定することができる。別の実施形態において、第2の数のアクティブ相を負荷が要求していると判定したことに応答して、コントローラは、多相パワーコンバータの出力電圧が所定の閾値まで減少したと判定することができる。出力電圧が所定の閾値まで減少したと判定したことに応答して、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号を生成することができる。
【0036】
別の実施形態において、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号のなかで生成されたパルスの数をカウントすることができる。さらに、コントローラは、生成されたパルスの数が所定のカウントに達したと判定することができる。生成されたパルスの数が所定のカウントに達したと判定したことに応答して、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号の生成を停止することができる。別の実施形態において、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号の生成を停止することができる。少なくとも1つのパルス信号の生成を停止することに応答して、コントローラは、電力を負荷に供給するために多相パワーコンバータにおいて第2の数のアクティブ相を動作させるように、第1のクロック信号に従ってPWM信号を生成する。別の実施形態において、コントローラは、多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであると判定することができる。多相パワーコンバータ内のすべての相がアクティブであることに応答して、コントローラは、少なくとも1つのパルス信号の生成を停止することができる。
【0037】
図におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、指定された論理機能を実現するための1つまたは複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、またはその一部を表すことができる。いくつかの代替的な実装例において、ブロックに示された機能は、図に示す順序からはずれて発生してもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実現されてもよく、関係する機能に応じて、場合によっては逆の順序で実現されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、ならびにそれらのブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムよって実現され得ることに留意されたい。
【0038】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数を表す用語は、特に明示されない限り、その複数を含むことも意図している。また、本明細書で使用される「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を画定するが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことに留意されたい。
【0039】
添付の特許請求の範囲に記載のすべての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、操作、およびそれらの等価物は、具体的に記載されている他の要素と組み合わせて機能を実現するための任意の構造、材料、または操作を包含することを意図している。本発明の開示されている実施形態の説明は、例示および説明のために提供されているが、網羅的であること、あるいは開示された形態に限定されることを意図していない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を適用することができることが明らかであろう。上述した実施形態は、本発明の原理および実用化を最適に説明するために、また、検討される特定の用途に適するように種々の修正を伴う様々な実施形態について本発明を当業者が理解できるように、選択および説明されたものである。
【外国語明細書】