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特開2024-125203電流拡散層を有するパワー電子デバイスを製造するためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125203
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電流拡散層を有するパワー電子デバイスを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240906BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240906BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024030885
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】102023000003897
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】18/583,758
(32)【優先日】2024-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】312014443
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス インターナショナル エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】グアルネラ,アルフィオ
(72)【発明者】
【氏名】カマッレリ,カテノ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ザネッティ,エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】スカリア,ローラ レティジア
(72)【発明者】
【氏名】ベルトリーニ,マリオ ピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】カンティアーノ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ボスカリア,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】サッジョ,マリオ ジュゼッペ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリコンカーバイド基板から、電流拡散層(current spreading layer、CSL)を有するパワー電子デバイスを製造するためのプロセスを提供する。
【解決手段】パワー電子デバイスを製造するためのプロセスは、第1の導電率と第1のドーピング値とを有し、かつ、ウェハ1の前面1aを画定するシリコンカーバイドの半導体ボディ2を形成することと、前面に面する当該半導体ボディの表面部分に、第1の導電率と第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値とを有するCSL6を形成することと、前面における半導体ボディの活性エリア内にパワー電子デバイスの基本セルを形成することと、含む。電流拡散層を形成するステップは、半導体ボディ内に第1の導電率を有するドーピングイオンを注入するために、チャネリング条件でチャネリングイオン注入を行う。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電率、第1のドーピング値を有し、かつ前面を画定する、シリコンカーバイドの半導体ボディを形成することと、
前記前面に面する前記半導体ボディの表面部分に電流拡散層を形成することであって、前記電流拡散層が、前記第1の導電率と、前記第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値とを有する、電流拡散層を形成することと、
前記前面における前記半導体ボディの活性エリア内に基本セルを形成することと、
を含み、
前記電流拡散層を形成することが、前記半導体ボディ内に前記第1の導電率を有するドーピングイオンを注入するために、チャネリング条件でチャネリングイオン注入を行うことを含む、方法。
【請求項2】
前記ドーピングイオンが、リン原子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャネリングイオン注入が、前記前面に対して非ゼロ傾斜角だけ傾斜した注入方向に沿って行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記傾斜角は、前記チャネリングイオン注入が前記半導体ボディのシリコンカーバイド結晶格子の主軸に沿って方向付けられ、前記ドーピングイオンが前記半導体ボディ内に侵入するように、3.5°~4.5°を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記チャネリングイオン注入が、前記電流拡散層の深さ方向において前記前面に直交する垂直軸に沿って実質的に平坦な注入プロファイルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャネリングイオン注入が、前記基本セルを形成するステップより前に前記活性エリアにおいて行われ、前記電流拡散層が、前記活性エリアにおいて連続的かつシームレスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基本セルを形成することが、
前記電流拡散層内の前記前面に、パワー電子デバイスのセル間領域によって前記前面に平行な方向において互いに分離された、第1の導電型を有する第1のドープ領域を形成することを含み、
前記電流拡散層が、前記セル間領域の抵抗率を局所的に調整するように構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基本セルを形成することが、
前記パワー電子デバイスのセル間領域によって前記前面に平行な方向において互いに分離された、前記第1の導電型を有する第1のドープ領域を前記前面に形成することを含み、
前記チャネリングイオン注入が、前記第1のドープ領域に対して自己整合された様態で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のドープ領域は、前記半導体ボディの深さ方向において前記前面に直交する垂直軸に沿った前記チャネリングイオン注入の伝播を阻止するような、前記シリコンカーバイド結晶格子の損傷領域である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記チャネリングイオン注入が、前記第1のドープ領域において小さい深さと実質的に無視できる注入ピークとを含む注入プロファイルを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電流拡散層が、前記セル間領域に局在しており、前記セル間領域の前記抵抗率を局所的に調整するように構成された複数の別個の部分を備え、前記電流拡散層の前記別個の部分が、前記第1のドープ領域の下の前記半導体ボディ内に延在しない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記チャネリングイオン注入を行うより前に、前記第1の導電率とは反対の第2の導電率を有する第2のドープ領域を、前記第1のドープ領域の少なくとも一部内に形成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
基板を備えるウェハを提供することを含み、
半導体ボディを形成することが、前記半導体ボディを形成するために前記基板の上方でエピタキシャル成長を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記半導体ボディが、4°のオフカット角を有する4H-SiCポリタイプのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記パワー電子デバイスが、MOSFETトランジスタである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面とを含む基板と、
前記基板のチャネル拡散層であって、前記基板の前記第1の表面にあり、前記チャネル拡散領域が、前記第1の表面から前記第2の表面に向かって方向付けられた方向に延在する第1の深さを有する、チャネル拡散層と、
前記基板の前記第1の表面内に延在しており、前記チャネル拡散層内に延在する第1のボディ領域であって、前記第1のボディ領域が、前記チャネル拡散層内の第1の終端部で終端しており、前記第1のボディ領域が、前記方向において延在する第2の深さを有し、前記第2の深さが、前記第1の深さよりも小さい、第1のボディ領域と、
前記基板の前記第1の表面内に延在しており、前記チャネル拡散層内に延在する第2のボディ領域であって、前記第2のボディが、前記第1のボディ領域から離隔されており、前記第2のボディ領域が、前記チャネル拡散層内の第2の終端部で終端しており、前記第2のボディ領域が、前記方向において延在する第3の深さを有し、前記第3の深さが、前記第1の深さよりも小さい、第2のボディ領域と、を備え、
前記チャネル拡散領域が、前記第1の終端部及び前記第2の終端部に沿って延在しており、かつ前記第1の終端部及び前記第2の終端部を覆い、前記チャネル拡散領域が、前記第1の終端部から前記第2の終端部まで延在する、デバイス。
【請求項17】
前記第1のボディ領域内の第1のソース領域であって、前記第1のソース領域が、前記基板の前記第1の表面にある、第1のソース領域と、
前記第2のボディ領域内の第2のソース領域であって、前記第2のソース領域が、前記基板の前記第1の表面にある、第2のソース領域と、
前記第2のソース領域を通って前記第2のボディ領域まで延在するボディコンタクト領域であって、前記ボディコンタクト領域が、前記基板の前記第1の表面にある、ボディコンタクト領域と、を更に備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
第1の導電率、第1のドーピング値を有し、かつ表面を画定する、シリコンカーバイドの半導体ボディを形成することと、
前記表面に面する前記半導体ボディの表面部分に電流拡散層を形成することであって、前記電流拡散層が、前記第1の導電率と前記第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値とを有し、前記電流拡散層が、前記表面に対して横切る方向に延在する第1の深さを有する、電流拡散層を形成することと、
前記半導体ボディ内に第1のボディ領域及び第2のボディ領域を形成することであって、前記第1のボディ領域及び前記第2のボディ領域が、前記方向において前記第1の深さよりも小さい第2の深さを有し、前記第1のボディ領域が、前記第2のボディ領域から離隔されている、第1のボディ領域及び第2のボディ領域を形成することと、
前記第1のボディ領域内に第1のソース領域を形成することと、
前記第2のボディ領域内に第2のソース領域を形成することと、
前記第2のソース領域を通って前記第2のボディ領域まで延在するボディコンタクト領域を形成することと、
前記電流拡散層上並びに前記第1のボディ領域及び前記第2のボディ領域上にゲート絶縁領域を形成することと、
前記ゲート絶縁領域上にゲート導電領域を形成することと、
前記ゲート導電領域を覆うパッシベーション領域を形成することと、
前記パッシベーション領域を覆うメタライゼーション領域を形成することと、
を含み、
前記電流拡散層を形成することが、前記半導体ボディ内に前記第1の導電率を有するドーピングイオンを注入するために、チャネリング条件でチャネリングイオン注入を行うことを含む、方法。
【請求項19】
前記電流拡散層を形成することが、前記第1のボディ領域及び前記第2のボディ領域を形成すること、前記第1のソース領域を形成すること、前記第2のソース領域を形成すること、及び前記ボディコンタクト領域を形成すること、の前に生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電流拡散層を形成することが、前記第1のボディ領域及び前記第2のボディ領域を形成すること、前記第1のソース領域を形成すること、前記第2のソース領域を形成すること、及び前記ボディコンタクト領域を形成すること、の後に生じる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流拡散層(current spreading layer、CSL)を有するパワー電子デバイスを製造するためのプロセスに関し、特に、以下の考察は、シリコンカーバイド(silicon-carbide、SiC)基板から開始して形成されるパワー電子デバイスに特に言及する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
知られているように、例えば1.1eVよりも大きい広いバンドギャップ、低いオン状態抵抗、高い熱伝導率、高い動作周波数、及び電荷キャリアの高い飽和速度を有する半導体材料は、例えば600V~1300Vを含む動作電圧及び/又は高温などの特定の動作条件での、特に電力用途のための、シリコン電子デバイスよりも良好な性能を有し得る電子デバイス、例えばダイオード及びトランジスタの製造を可能にする。
【0003】
特に、これらのパワー電子デバイスは、そのポリタイプのうちの1つ、例えば3C-SiC、4H-SiC及び6H-SiCにおいて、上述の特性を有する材料であるシリコンカーバイドのウェハから開始して有利に形成され得る。
【0004】
知られている様態では、パワー電子デバイスは、シリコンカーバイド基板の抵抗率を局所的に調整するために、適切なドーピングを有する電流拡散層(CSL)を含み得、注入電流を同じ基板のエリアにわたって均一な様態で拡散させる。例えば、MOSFETパワートランジスタデバイスにおいて、CSL層は、オン状態抵抗(Ron)を低減するためにセル間(又はJFET)領域において使用され得る。
【0005】
したがって、そのようなパワー電子デバイスを製造するためのプロセスは、典型的には、初期ステップにおいて、例えばシリコンカーバイドの基板から開始して行われる専用のエピタキシャル成長による電流拡散層の形成を含む。
【0006】
特に、所望の抵抗値を得るためには、厚いエピタキシャル層の形成が必要であり、そのため、典型的には、所望の厚さに達するためには、少なくとも2回のエピタキシャル成長が必要とされる。
【0007】
この製造プロセスは、第1のエピタキシャル成長とは独立して、かつそれに加えて、第2のエピタキシャル成長を実施するためにプロセスレシピ及びパラメータの制御を実施する必要があるため、非常に高い時間及びコストを伴う。
【0008】
エピタキシャル成長の代替として、電流拡散層を形成するために、従来のイオン注入の実装形態が提案されており、この注入は高エネルギー及び高温で行われる。
【0009】
しかしながら、これは、均一なドーピングプロファイル層を形成するために多数の注入ステップが典型的に必要とされることを考えると、特に複雑である(この点に関して、ドーパントの拡散は、シリコンなどの他の半導体材料と比較してシリコンカーバイドにおける低い拡散率に起因して適用可能な技法ではないことが強調される)。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、先に強調された問題を少なくとも部分的に解決し、より単純かつ安価な実装形態を提供する、パワー電子デバイスにおける電流拡散層、特にシリコンカーバイドの電流拡散層を製造するための代替プロセスを提供することを目的とする。
【0011】
したがって、本開示によれば、添付の特許請求の範囲において定義されるような製造プロセスが提供される。例えば、製造プロセスの本開示の少なくとも1つの実施形態は、第1の導電率、第1のドーピング値を有し、かつ前面を画定する、シリコンカーバイドの半導体ボディを形成することと、前面に面する半導体ボディの表面部分に電流拡散層であって、電流拡散層が、第1の導電率と第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値とを有する、電流拡散層を形成することと、前面における半導体ボディの活性エリア内に基本セルを形成することと、を含むものとして要約され得、電流拡散層を形成することは、半導体ボディ内に第1の導電率を有するドーピングイオンを注入するために、チャネリング条件でチャネリングイオン注入を行うことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示のより良い理解のために、その好ましい実施形態が、純粋に非限定的な例として、かつ添付の図面を参照してここで説明される。
図1A】本開示の第1の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
図1B】本開示の第1の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
図1C】本開示の第1の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
図1D】本開示の第1の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
図2】パワー電子デバイス内の電流拡散層内に実施され得るドーピングプロファイルのプロットを示す。
図3A】本開示の第2の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
図3B】本開示の第2の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
図3C】本開示の第2の実施形態による、パワー電子デバイスを製造するためのプロセスの連続するステップにおける半導体材料ウェハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で詳細に説明するように、本開示の一態様は、チャネリングイオン注入プロセス(いわゆる「チャネリング」条件)によって、特にシリコンカーバイドで作られたパワー電子デバイス内の電流拡散層(CSL層)の形成を想定する。
【0014】
知られている様態では、チャネリング条件は、注入されたイオンビームの方向が半導体材料結晶軸のうちの1つに沿って、実質的にそれに平行に配向されるときに生じる。
【0015】
結晶格子内に注入されるとき、イオンは、概して、結晶格子の原子との衝撃により(衝撃散乱の現象に従って)分散する傾向がある。
【0016】
注入方向が結晶格子の主軸に対して斜角に配向されるとき、格子内の原子は、注入方向に対してランダム分布を有し、したがって、注入されたイオンと結晶格子の原子との間の衝突の確率は、深さが変化しても実質的に均一である。したがって、この注入条件では、深さに対して実質的にガウス分布であるドーピングプロファイルが得られ、注入によって到達される深さは、エネルギー、使用されるイオン、及びターゲットの原子構造によって決定される。
【0017】
注入方向が、代わりに、結晶格子の主軸に近いチャネリング方向である場合、結晶格子内の原子は、注入されたイオンによって横断され得る「チャネル」を画定する。これは、特に注入が生じるウェハの表面付近で、注入されたイオンと結晶格子の原子との間の衝突の確率を減少させ、その結果、同じ注入の深さを著しく増加させ得る。
【0018】
概して、注入チャネリングは、注入方向がチャネリング方向に対して臨界角内にあるときに生じる。この構成では、電子エネルギーの損失(結晶原子の電子雲との相互作用)が核損失(結晶核との衝撃)に対して優勢である。臨界角の値は、例えば、使用される方向、種及びエネルギーに依存する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「注入角度」という用語は、注入中のウェハの傾斜角度を指す。これは、概して、ウェハの表面に対する角度として定義され得る。概して、ウェハの表面は、後続のエピタキシャルプロセスに適したカット角、例えば4°によって定義されるので、結晶面ではなく、したがって、この例では、注入中に結晶格子の<0001>方向を識別するために、ウェハを4°の傾斜角で傾斜させる必要がある。
【0020】
チャネリングは、典型的には、パワー電子デバイスの製造中の望ましくない効果であり(例えば、注入深さが所望の深さよりも大きい場合があり、同じ深さの値を制御することが困難であるため)、したがって、チャネリング効果を最小限に抑えるために、注入方向は概して非チャネリング方向に配向される。
【0021】
しかしながら、先に示したように、本出願人は、制御された繰り返し可能な様態で、シリコンカーバイドパワー電子デバイスを製造するための、特に対応する電流拡散層を形成するためのプロセス内でチャネル注入を提供する可能性を実現した。
【0022】
まず図1Aを参照して、本開示の第1の実施形態は、最初に、例えば、n型導電率のドーピング(例えば5e18イオンcm-3程度の投与量で)を有し、水平面xy内に主延在を有し、水平面xyに直交する垂直軸zに沿って互いに対向する前面1a及び裏面1bによって範囲が定められた、4H-SiCタイプのシリコンカーバイドの基板2を備えるウェハ1の提供を想定する。
【0023】
同じ図1Aに概略的に示されるように、次いで、エピタキシャル成長が、基板2上にドリフト層4を形成し、また、n型導電率、例えばn(5e15イオンcm-3程度の投与量で)を有するように行われ、それによって、このドリフト層4は、ウェハ1の前面1aを画定する。
【0024】
特に、エピタキシャル成長に続いて、シリコンカーバイド結晶格子が、ウェハ1の表面に対して特定の角度(非ゼロ)で配向される。可能な実装形態では、4H-SiC格子構造は、約4°のオフカット角(ウェハ1の表面と、例えば<0001>方向に沿った主結晶面との間の角度として意図される)を有する。
【0025】
本開示の一態様によれば、図1Bに示されるように、次いで、ウェハ1の前面1aに近接して連続的かつシームレスであり、n型導電率であり、ドリフト層4のドーピングよりも大きいドーピングを有する(したがって、濃縮層として動作する)電流拡散層(CSL)6を形成するために、チャネリング条件で活性エリア内にブランク注入が行われる。
【0026】
特に、注入は、チャネリング条件を提供し、したがって注入されたイオンのチャネリングがドリフト層4の深さに向かうことを可能にするような方法で、ウェハ1の前面1aに直交する方向に対して特定の角度(傾斜角)で行われる。
【0027】
(4H-SiC格子を有し、例えば240keVに等しい注入エネルギーを有するリン、P、原子を用いて注入が行われることを考慮した)先に考察した実装形態では、イオン注入が、注入が結晶格子の<0001>方向に沿って実質的にチャネル化された様態で生じる方法で、3.5°~4.5°を含む、例えば約4°に等しい傾斜角で行われ得る。
【0028】
注入投与量は、例えば約8・1012イオンcm-2(公称)であってもよく、注入は室温で行われてもよい。
【0029】
図2は、2つの異なる条件:例では4°に等しい傾斜角を用いたチャネリング条件(実線で示されたプロファイル)で行われた注入を用いた、及び、実質的にゼロの傾斜角を用いた表面に直交する方向(破線で示されたプロファイル)での注入を用いた、における注入プロファイル(すなわち、垂直軸zに沿ったドリフト層4の深さの関数としての注入投与量)を示す。
【0030】
チャネル注入は、ウェハ1の前面1aから始まる電流拡散層6の所望の深さ(この深さは、例えば0.5~5μmを含み、例えば2μmに等しい)内で、実質的に平坦なドーピングプロファイルが得られることを可能にすることが明らかである。
【0031】
より詳細には、本出願人は、検討されたチャネリングイオン注入が、電流拡散層6のドーピングの非常に正確な制御を、特に所望の値に対して1%未満の変動で可能にすることを実験的に実証した(この点に関して、同じ電流拡散層のエピタキシャル製造の場合、10%程度の典型的なドーピング変動が得られている)。
【0032】
これにより、結果として得られるパワー電子デバイスの性能が、オン状態抵抗(Ron)、降伏電圧(breakdown voltage、BV)、及びドレイン-ソース漏れ電流IDSSに関して改善される。
【0033】
更に、前述のチャネリングイオン注入は、電流拡散層6の深さの非常に正確な制御を可能にし、特に、所望の値に対して1%未満の変動で可能にする(これに関して、同じ電流拡散層のエピタキシャル製造の場合、10%程度の典型的な深さ変動が得られる)。
【0034】
これはまた、降伏電圧(BV)及びドレイン-ソース漏れ電流IDSSに関して、結果として得られるパワー電子デバイスの性能を改善することを可能にし、キャパシタンス制御における利益ももたらす。
【0035】
図1Cを参照すると、製造プロセスは、次に、活性エリアにおいて、パワー電子デバイスの基本セルの形成に進む。
【0036】
次に、p型ドーピングイオンのマスクされた注入(この注入は、従来の様態で、すなわち、ランダムイオン注入で、実質的にゼロの傾斜角で行われる)によって、ドリフト層4内、特に、ウェハ1の前面1aに先に形成された電流拡散層6内に、ボディ領域10が最初に形成される。図1Cに示されるように、ボディ領域10は、電流拡散層6の深さよりも浅い深さを有する。
【0037】
ボディ領域10は、水平面xyのx軸に沿って互いに一定の距離で分離されており、特に、前面1aにおいて、隣接するボディ領域10の間のドリフト層4の部分は、セル間又はJFET領域として画定され、11によって示されている。
【0038】
続いて、同じ図1Cに示されるように、それぞれのソース領域12が、ここでもマスクされたイオン注入によって、この場合は(例えば窒素又はリンイオンを用いた)n型で、各ボディ領域10内に(それに対して中央に)形成される。これらのソース領域12は、同じボディ領域10の対応する深さよりも小さい垂直軸zに沿った深さを有する。
【0039】
注入の後、ウェハ1は、ドーピングイオンを活性化するため、及び結晶格子内の欠陥を減少させるために、アニーリングが施され得る。
【0040】
こうして、同じ図1Cに示されるように、ボディコンタクト領域14が、ソース領域12の一部内に(それに対して中央に)、及びウェハ1の前面1aに形成される。特に、前述の図1Cに示されるように、ボディコンタクト領域14は、2つのソース領域12ごとに形成され得る。
【0041】
これらのボディコンタクト領域14は、それぞれのボディ領域10とのオーミックコンタクトを作成するためのものであり、ここでもマスクされたイオン注入によって形成され、この場合は、高いドーピング投与量(例えば、1014~5・1015イオンcm-2を含む)及び適切なエネルギー(例えば、10keV~300keVを含む)を有するp型である。
【0042】
可能なアニーリングステップ及び先に使用されたマスクの除去の後、ウェハ1は既知の様態で処理され、ウェハ1の前面1a上の絶縁ゲート構造16、及びソースメタライゼーション領域18を形成する。
【0043】
特に、これらの絶縁ゲート領域16は各々、前述のJFET領域11の上方の、ウェハ1の前面1aと接触している、例えば酸化物のゲート絶縁領域20と、ゲート絶縁領域20上に直接重畳された、導電性材料のゲート導電領域21と、ゲート導電領域21を覆い、ゲート絶縁領域20とともにゲート導電領域21を封止するパッシベーション領域22と、によって形成される。
【0044】
絶縁ゲート構造16のゲート導電領域21は、ここでは示されていない様態で電気的に並列に接続され、MOSFETパワー電子デバイスのゲート端子を形成する。
【0045】
例えば金属材料及び/又は金属シリサイドのソースメタライゼーション領域18は、MOSFETパワー電子デバイスのソース端子を形成し、ウェハの第1の表面1aの上及び絶縁ゲート構造16の上に延在し、ソース領域12及びボディコンタクト領域14と直接電気的に接触している。
【0046】
図示されていない様態で、同じパワー電子デバイスのドレイン端子を形成するために、更なるメタライゼーション領域がウェハ1の裏面1b上に形成され得る。
【0047】
図1Dに全体として100によって示されるMOSFETパワー電子デバイスの各基本セルは、したがって、絶縁ゲート構造16によって、及びボディ領域10及びソース領域12の隣接部分によって、並びに下にあるJFET領域11によって形成される。
【0048】
ここで、本開示の第2の実施形態を説明するが、この第2の実施形態は、先に説明したものとは異なり、ここでも6によって示される電流拡散層の異なる形成に起因しており、電流拡散層は、この場合、(第1の実施形態のように)活性エリアにおいて連続的ではなく、6’によって示される複数の別個の部分を備える。
【0049】
特に、これらの別個の部分6’は、MOSFETパワー電子デバイスの基本セルのJFET領域11においてのみ、かつそれに対して局在する様態で延在し、電流拡散層6の同じ別個の部分6’は、この場合、基本セルのソース領域12(及びボディ領域10)の下のドリフト層4の部分内に延在しない。
【0050】
詳細には、まず図3Aを参照すると、この場合の製造プロセスは、(先に考察したように)ドリフト層4の形成後に、ウェハ1の前面1aにおいて、同じドリフト層4内にボディ領域10を形成することを想定する。
【0051】
次に、再び先に考察したように、ソース領域12がボディ領域10内に形成され、かつ図示の例では、ボディコンタクト領域14がソース領域12の一部内に形成される。
【0052】
この第2の実施形態では、図3Bに示されるように、この時点でのみ、電流拡散層6、特に、JFET領域11に、かつJFET領域11に対して局在する様態で延在する対応する別個の部分6’を形成するために、イオン注入がチャネリング条件で(例えば、先に考察したように、4°の傾斜及び室温で)実行される。図3Bに示されるように、ボディ領域10は、電流拡散層6の深さよりも浅い深さを有する。
【0053】
ソース領域12(及びボディコンタクト領域14)は、実際には、結晶格子の観点からひどく損傷した表面領域であり、イオン注入(従来の様態で、すなわち、実質的にゼロの傾斜角で行われる)によって先のドーピングが施されている。したがって、これらのひどく損傷した領域における結晶格子は、注入されたイオンに対する障壁となり、深さ方向に侵入することなくランダムに分布する。
【0054】
その結果、チャネリング条件でのイオン注入は、これらのソース領域12に対して自己整合された様態で行われ、その結果、注入されたイオンは、チャネリング条件に起因して、JFET領域11においてのみ、深さ方向に沿って進行し、CSL層6の上述した別個の部分6’(注入の終わりに、ボディ領域10よりも深い深さを有する)を形成する。
【0055】
実質的に、損傷領域において、注入は、ソース領域12の(及び、もしあれば、ボディコンタクト領域14の)ドーピングを変更しないように(又は、いかなる場合でも、制限された制御可能な様態で修正するように)、非常に小さい深さ及び実質的に無視できるランダム注入ピークを有するプロファイルを生成する。逆に、同じ損傷領域(注入マスクとして作用する)が存在しない場合、平坦な注入プロファイルが、図2を参照して先に考察したものと完全に類似した様態で、ドリフト層4内の深さ方向に生成される(この場合、このドーピングプロファイルが唯一のJFET領域11に局在するという違いを有する)。
【0056】
したがって、イオン注入の深さは、注入マスクの使用に頼ることなく、前述のソース領域12に対して自己整合された様態で調整される。
【0057】
有利なことに、この第2の実施形態では、CSL層6の別個の部分6’は、ソース領域12の下にあるドリフト層4の部分の特性を変化させずに、特に、そのドーピングを増加させずに、かつボディ/ドレイン接合の特性を変化させずに、JFET領域11の抵抗率が所望の様態で低減されることを可能にする。
【0058】
製造プロセスは、図3Cに示されるように、その後、ウェハ1の前面1a上に絶縁ゲート構造16を形成し、結果として得られるパワー電子デバイス100のソースメタライゼーション領域18を形成することによって、先に考察したものと同様の様態で進行する。
【0059】
提案される開示の利点は、先の説明から明らかである。
【0060】
いずれにしても、単一のチャネリングイオン注入ステップによって電流拡散層を形成することは、歩留まりが改善され、製造プロセスのコストが低減され(エピタキシャル成長ステップの繰り返しを回避して)、一方で、結果として得られるパワー電子デバイスの電気的特性を改善することを可能にすることが強調される。
【0061】
更に、同じ注入より前に形成されたソース領域に自己整合する様態でチャネリングイオン注入を実行することは、ボディ/ドレイン接合の特性を劣化させることなく、JFET領域の抵抗率を低減する所望の効果が得られることを可能にする。
【0062】
最後に、添付の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載及び図示されるものに対して修正及び変形が行われ得ることが明らかである。
【0063】
特に、説明される開示は、異なるパワー電子デバイス、例えばダイオード又はJFETトランジスタにおいても有利な用途を見出し得ることが強調される。
【0064】
チャネリングイオン注入は、異なるドーピングイオン、例えば、(リン原子の代わりに)窒素原子を用いて行われ得る。しかしながら、リンを使用することは、電流拡散層の平坦なドーピングプロファイルが得られるため、特に有利であることが証明されている。
【0065】
更に、半導体材料ウェハは、例えばGaNなどのSiC以外の材料から作られ得る。
【0066】
パワー電子デバイス(100)を製造するためのプロセスは、第1の導電率(n)と第1のドーピング値とを有し、かつ前面(1a)を画定する、シリコンカーバイドの半導体ボディ(4)を形成することと、前面(1a)に面する当該半導体ボディ(4)の表面部分に電流拡散層(CSL)(6)を形成することであって、当該電流拡散層(6)が、第1の導電率(n)と第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値とを有する、CSLを形成することと、当該前面(1a)における当該半導体ボディ(4)の活性エリア内に当該パワー電子デバイス(100)の基本セルを形成することと、を含むものとして要約され得、電流拡散層(6)を形成することは、当該半導体ボディ(4)内に当該第1の導電率(n)を有するドーピングイオンを注入するために、チャネリング条件でチャネリングイオン注入を行うことを含む。
【0067】
当該ドーピングイオンは、リン原子であり得る。
【0068】
当該チャネリングイオン注入は、当該前面(1a)に対して非ゼロ傾斜角だけ傾斜した注入方向に沿って行われ得る。
【0069】
当該傾斜角は、当該チャネリングイオン注入が当該半導体ボディ(4)のシリコンカーバイド結晶格子の主軸に沿って方向付けられ得、ドーピングイオンが当該半導体ボディ(4)内に侵入し得るように、3.5°~4.5°を含み得る。
【0070】
当該チャネリングイオン注入は、当該電流拡散層(6)の深さ方向において当該前面(1a)に直交する垂直軸(z)に沿って実質的に平坦な注入プロファイルを有し得る。
【0071】
当該チャネリングイオン注入は、当該基本セルを形成するステップより前に当該活性エリアにおいて行われ得、当該電流拡散層(6)は、当該活性エリアにおいて連続的かつシームレスであり得る。
【0072】
当該基本セルを形成することは、当該電流拡散層(6)内の当該前面(1a)に、当該パワー電子デバイス(100)のセル間領域(11)によって当該前面(1a)に平行な方向(x)において互いに分離された、当該第1の導電型(n)を有する第1のドープ領域(12)を形成することを含み得、当該電流拡散層(6)は、当該セル間領域(11)の抵抗率を局所的に調整するように構成され得る。
【0073】
当該基本セルを形成することは、当該パワー電子デバイス(100)のセル間領域(11)によって当該前面(1a)に平行な方向(x)において互いに分離された、当該第1の導電型(n)を有する第1のドープ領域(12)を当該前面(1a)に形成することを含み得、当該チャネリングイオン注入は、当該第1のドープ領域(12)に対して自己整合された様態で行われ得る。
【0074】
当該第1のドープ領域(12)は、当該半導体ボディ(4)の深さ方向において当該前面(1a)に直交する垂直軸(z)に沿った当該チャネリングイオン注入の伝播を阻止するような、シリコンカーバイド結晶格子の損傷領域であり得る。
【0075】
当該チャネリングイオン注入は、当該第1のドープ領域(12)において小さい深さと実質的に無視できる注入ピークとを有する注入プロファイルを有し得る。
【0076】
当該電流拡散層(6)は、当該セル間領域(11)に局在しており、当該セル間領域(11)の抵抗率を局所的に調整するように構成された複数の別個の部分(6’)を含み得、電流拡散層(6)の当該別個の部分(6’)は、当該第1のドープ領域(12)の下の当該半導体ボディ(4)内に延在しなくてもよい。
【0077】
本プロセスは、当該チャネリングイオン注入を行うより前に、当該第1の導電率(n)とは反対の第2の導電率(p)を有する第2のドープ領域(14)を、当該第1のドープ領域(12)の少なくとも一部内に形成することを含み得る。
【0078】
本プロセスは、基板(2)を備えるウェハ(1)を提供することを含み得、半導体ボディ(4)を形成するステップは、当該半導体ボディ(4)を形成するために当該基板(2)の上方でエピタキシャル成長を行うことを含み得る。
【0079】
当該半導体ボディ(4)は、4°のオフカット角を有する4H-SiCポリタイプであってもよい。
【0080】
当該パワー電子デバイス(100)は、MOSFETトランジスタであってもよい。
【0081】
上で説明した様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、及び刊行物の概念を採用するように変更して、更なる実施形態を提供することができる。
【0082】
これらの変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。概して、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されるものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
【外国語明細書】