(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125222
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】サイクル毎過電流検出器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024032147
(22)【出願日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】63/488,455
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・パーティク・フォラン
(72)【発明者】
【氏名】ヤショヴァルダン・ラオ・ポトラパリ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD51
5H730FF09
5H730FG05
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX23
5H730XX35
5H730XX47
(57)【要約】
【課題】 過電流保護のためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】
コントローラは、電力段から差動フィードバック電圧信号を受信することができる。差動フィードバック電圧信号は、電力段内のインダクタを流れるインダクタ電流に比例し得る。コントローラは、差動フィードバック電圧信号を増幅して、上限と下限を含む差動閾値を生成することができる。コントローラは、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値とを比較することができる。コントローラは、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果に基づいて、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定することができる。ここで、制御信号は、電力段を駆動するためのものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタに接続され、前記インダクタを介してインダクタ電流を電源出力に送るように構成された電力段と、
前記電力段を駆動するために制御信号を生成するように構成されたコントローラと、
電流制限回路と、
を備えるシステムであって、
前記電流制限回路は、
前記電力段から、前記インダクタ電流に比例する差動フィードバック電圧信号を受信し、
前記差動フィードバック電圧信号を増幅して上限と下限を含む差動閾値を生成し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値とを比較し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果に基づく過電流制限信号を前記コントローラに出力するように構成され、
前記コントローラは、前記過電流制限信号に基づいて、前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定するようにさらに構成される、
システム。
【請求項2】
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果は、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の上限よりも大きいことを示し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の上限よりも大きいことは、過電流状態が発生したことを示し、
前記コントローラは、前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オン時間を低減するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果は、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の下限よりも小さいことを示し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の下限よりも小さいことは、過電流状態が発生したことを示し、
前記コントローラは、前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オフ時間を低減するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電流制限回路は、オフセットを注入して前記差動閾値を生成することで差動フィードバック電圧信号を増幅するように構成され、前記オフセットは、電流制限に対応する電流である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電流制限回路は、
前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との差を決定することで、前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値とを比較し、
前記差がゼロよりも大きいと判定し、
前記差がゼロよりも大きいと判定したことに応答して、過電流状態が発生したことを示す前記過電流制限信号を出力するように構成される、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電流制限回路は、
前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号を増幅するように構成された第1の増幅器と、
前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号を増幅するように構成された第2の増幅器と、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の増幅器は、第1のトランジスタを含み、前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号の電流は、前記第1のトランジスタのゲートを駆動して、前記第1のトランジスタに前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号を増幅させ、
前記第2の増幅器は、第2のトランジスタを含み、前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号の電流は、前記第2のトランジスタのゲートを駆動して、前記第2のトランジスタに前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号を増幅させる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
電力段から差動フィードバック電圧信号を受信するステップであって、前記差動フィードバック電圧信号は、前記電力段内のインダクタを流れるインダクタ電流に比例する、ステップと、
上限と下限を含む差動閾値を生成するように前記差動フィードバック電圧信号を増幅するステップと、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値とを比較するステップと、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果に基づいて、前記インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定するステップであって、前記制御信号は、前記電力段を駆動するためのものである、ステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果が、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の上限よりも大きいことを示すと判定するステップであって、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の上限よりも大きいことは、過電流状態が発生したことを示す、ステップと、
前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オン時間を低減するステップと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果が、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の下限よりも小さいことを示すと判定するステップであって、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の下限よりも小さいことは、過電流状態が発生したことを示す、ステップと、
前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オフ時間を低減するステップと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記差動フィードバック電圧信号を増幅する前記ステップは、オフセットを注入して前記差動閾値を生成するステップを含み、前記オフセットは、電流制限に対応する電流である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値とを比較する前記ステップは、前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との差を決定するステップを含み、
前記差がゼロよりも大きいと判定するステップを含み、
前記差がゼロよりも大きいと判定したことに応答して、前記インダクタ電流が前記電流制限を上回り、過電流状態が発生したと判定するステップを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記差動フィードバック電圧信号を増幅する前記ステップは、
第1のオフセットを前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号に注入するステップと、
第2のオフセットを前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号に注入するステップと、
を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項14】
電力段を駆動するために制御信号を生成するように構成された変調器と、電流制限回路と、を備える半導体装置であって、
前記電流制限回路は、
前記電力段から、前記電力段内のインダクタを流れるインダクタ電流に比例する差動フィードバック電圧信号を受信し、
前記差動フィードバック電圧信号を増幅して上限と下限を含む差動閾値を生成し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値とを比較し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果に基づく過電流制限信号を前記変調器に出力するように構成され、
前記変調器は、前記過電流制限信号に基づいて、前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定するようにさらに構成される、
半導体装置。
【請求項15】
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果は、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の上限よりも大きいことを示し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の上限よりも大きいことは、過電流状態が発生したことを示し、
前記過電流制限信号は、前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧が前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧よりも大きいことを示し、
前記変調器は、前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オン時間を低減するように構成される、
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
増幅された前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との比較結果は、増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の下限よりも小さいことを示し、
増幅された前記差動フィードバック電圧信号が前記差動閾値の下限よりも小さいことは、過電流状態が発生したことを示し、
前記過電流制限信号は、前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧が前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧よりも大きいことを示し、
前記変調器は、前記インダクタ電流を制限するために前記制御信号の変調器オフ時間を低減するように構成される、
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記電流制限回路は、オフセットを注入して前記差動閾値を生成することで前記差動フィードバック電圧信号を増幅するように構成され、前記オフセットは、電流制限に対応する電流である、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記電流制限回路は、
前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値との差を決定することで、前記差動フィードバック電圧信号と前記差動閾値とを比較し、
前記差がゼロよりも大きいと判定し、
前記差がゼロよりも大きいと判定したことに応答して、過電流状態が発生したことを示す前記過電流制限信号を出力するように構成される、
請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記電流制限回路は、
前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号を増幅するように構成された第1の増幅器と、
前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号を増幅するように構成された第2の増幅器と、
を含む、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1の増幅器は、第1のトランジスタを含み、前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号の電流は、前記第1のトランジスタのゲートを駆動して、前記第1のトランジスタに前記差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号を増幅させ、
前記第2の増幅器は、第2のトランジスタを含み、前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号の電流は、前記第2のトランジスタのゲートを駆動して、前記第2のトランジスタに前記差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号を増幅させる、
請求項19に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2023年3月3日に出願された「CYCLE-BY-CYCLE OVERCURRENT DETECTOR」と題する米国特許出願第63/488,455号の優先権を主張する。その全文は、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、半導体装置に関する。より詳細には、本開示は、スイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0003】
スイッチング電源は、通常、出力電圧を調整するためにインダクタを利用する。ここで、サイクル毎電流制限により、インダクタやFET(電界効果トランジスタ)などの他のスイッチング要素を流れる最大電流を正確に制御することができる。電流制限の速度および精度により、マージンを確保するために過大評価されない構成要素を選択することができ、コストを節約し、性能を向上させることができる。
【0004】
マイクロプロセッサ電源がより低いインダクタ値を求めるようになると、より高速な過度応答が達成される場合がある。これは、大きなキャパシタバンクを利用する必要性を最小限に抑え、基板面積と部品コストの両方を節約することができる。
【0005】
高い入力電源電圧は、特にノート型コンピュータなどのバッテリ駆動システムにおいて望ましい。出力に低インダクタンスのインダクタを使用する場合、高入力電圧と低出力電圧の組み合わせによってインダクタ電流が急速にスルーアップ(slew up)し、過電流状態を検出できる時間が減少する。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態において、一般に、システムが提供される。該システムは、インダクタに接続された電力段を含むことができる。電力段は、インダクタを介してインダクタ電流を電源出力に送るように構成され得る。さらに、該システムは、電力段を駆動するために制御信号を生成するように構成されたコントローラを含むことができる。さらに、該システムは、電流制限回路を含むことができる。電流制限回路は、電力段から差動フィードバック電圧信号を受信するように構成され得る。差動フィードバック電圧信号は、インダクタ電流に比例し得る。さらに、電流制限回路は、差動フィードバック電圧信号を増幅して上限と下限を含む差動閾値を生成するように構成され得る。さらに、電流制限回路は、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値とを比較するように構成され得る。さらに、電流制限回路は、過電流制限信号を変調器に出力するように構成され得る。ここで、過電流制限信号は、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果に基づいている。さらに、コントローラは、過電流制限信号に基づいて、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定するように構成され得る。
【0007】
一実施形態において、一般に、過電流保護のための方法が提供される。該方法は、電力段から差動フィードバック電圧信号を受信するステップを含むことができる。差動フィードバック電圧信号は、電力段内のインダクタを流れるインダクタ電流に比例し得る。さらに、該方法は、差動フィードバック電圧信号を増幅して上限と下限を含む差動閾値を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値とを比較するステップを含むことができる。さらに、該方法は、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果に基づいて、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定するステップを含むことができる。ここで、制御信号は、電力段を駆動するためのものである。
【0008】
一実施形態において、一般に、半導体装置が提供される。半導体装置は、電力段を駆動するために制御信号を生成するように構成された変調器を含むことができる。さらに、半導体装置は、電流制限回路を含む。電流制限回路は、電力段から差動フィードバック電圧信号を受信するように構成され得る。差動フィードバック電圧信号は、電力段内のインダクタを流れるインダクタ電流に比例し得る。さらに、電流制限回路は、差動フィードバック電圧信号を増幅して上限と下限を含む差動閾値を生成するように構成され得る。さらに、電流制限回路は、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値とを比較するように構成され得る。さらに、電流制限回路は、過電流制限信号を変調器に出力するように構成され得る。ここで、過電流制限信号は、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果に基づいている。さらに、変調器は、過電流制限信号に基づいて、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定するように構成され得る。
【0009】
上記の要約は例示であり、いかなる意味においても限定することを意図していない。上述した態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が、添付の図を参照して、且つ以下の詳細な説明から明らかになるであろう。図において、同様の参照符号は、同一または機能的に同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるサイクル毎電流制限機能を実現する例示的なシステムを示す図である。
【
図2】一実施形態による例示的なインダクタ電流値を示す信号図である。
【
図3】一実施形態による例示的なインダクタ電流値および過電流保護閾値を示す信号図である。
【
図4】一実施形態による
図1のシステムの例示的なサイクル毎過電流制限回路を示す回路図である。
【
図5】一実施形態によるサイクル毎過電流制限回路を実現するプロセスを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、コントローラ100と、電力段200と、を備えるスイッチング電源システム10を示す図である。
【0012】
コントローラ100は、変調器110と、サイクル毎電流制限回路120と、を備える。コントローラ100は、例えば、プロセッサ、マイクロコントローラ、CPU(中央処理装置)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、または電力段200を介して電力供給を制御するための任意の他の回路を備える。
【0013】
変調器110は、1つまたは複数のPWM(パルス幅変調)信号PWM1、PWM2、...PWMnを対応する電力段200に出力するように構成される。図では、簡潔にするために、PWM1のための電力段200のみが示されている。同様の回路を有する他の数の電力段200が利用されてもよく、代替的に利用されてもよい。
【0014】
電力段200は、パワードライバ210と、インダクタ回路220と、DC抵抗(DCR)フィルタ回路230と、負の温度係数(NTC)ネットワーク回路240と、を含む。パワードライバ210は、例えば、入力電源VINと接地との間に直列に配置されたFET(電界効果トランジスタ)などのスイッチを備える。一部の実施形態において、例えば、VINは、比較的大きな電源電圧、例えば21Vを有してもよい。
【0015】
コントローラ100は、変調器110によって生成されたPWM信号を、電力段200を駆動するための制御信号として使用することができる。電力段200を駆動して、入力電圧VINを出力電圧VOUTに変換することができる。VOUTは、負荷(図示せず)に供給され得る。インダクタLは、電力段200のスイッチノードと出力VOUTとの間に接続される。
【0016】
インダクタ回路220は、スイッチング電源210とVOUTとの間に接続され、インダクタLを備える。一態様において、インダクタLは寄生抵抗を有し、この寄生抵抗は、その材料に関連する有限直流抵抗(DCR)であり得る。DCRフィルタ回路230は、スイッチング電源210とVOUTとの間に、インダクタ回路220と並列に接続され、キャパシタCと直列に接続された抵抗器を備える。DCRフィルタ回路230は、DCRフィルタリングを実行するように構成され得る。DCRフィルタリングとは、インダクタLの寄生抵抗を使用してインダクタに流れる電流を感知することを指す。サイクル毎電流制限回路120によって受信される差動フィードバック信号は、インダクタのDCRに比例することもあれば、インダクタLのインダクタ電流に比例することもある。一部の実施形態において、ターゲットVOUTは、電源電圧と比較して比較的小さな電圧、例えば1Vを有してもよい。
【0017】
サイクル毎電流制限回路120は、接続C
1およびC
2を介して、電力段200から差動フィードバック電圧信号180を受信することができる。差動フィードバック電圧信号180の負極性電圧は、接続C
1を介して受信することができ、差動フィードバック電圧信号180の正極性電圧は、接続C
2を介して受信することができる。差動フィードバック電圧信号180の逆極性(正極性および負極性)の電流は、
図1に示すコントローラ100の正の電流感知(csp)ピンおよび負の電流感知(csn)ピンで感知および受信することができる。サイクル毎電流制限回路120は、対応するPWM信号を調整する際に使用するために、正の過電流制限(pocl)信号および負の過電流制限(nocl)信号を変調器110に出力することができ、例えば、インダクタ電流を制限するために、PWM信号のオン時間およびオフ時間の少なくとも一方を切り捨てまたは低減することができる。
【0018】
NTCネットワーク回路240は、接続C1と接続C2との間に、DCRフィルタ回路230のキャパシタCと並列に接続される。NTCネットワーク回路240は、電力段200の温度変化に基づいて、接続C1およびC2上の差動フィードバック電圧信号を線形補正するように構成される。NTCネットワーク回路240は、例えば、サーミスタと、1つまたは複数の抵抗器と、を備えてもよい。
【0019】
PWM信号を調整するためのpocl信号およびnocl信号の使用は、システム10に過電流保護を提供し、電力段200およびインダクタLのFET(電界効果トランジスタ)を、定格を超える電流から保護することができる。サイクル毎電流制限回路120は、cspピンとcsnピンで受信した差動フィードバック電圧信号180と、過電流制限(OCL)閾値に対応する差動閾値とを比較するように構成されたコンパレータを備える。
図1に示す実施例において、差動閾値は、上限閾値+OCLと、下限閾値-OCLと、を含むことができる。
図1には、cspピンとcsnピンの電圧のためのコンパレータが示されているが、一部の実施形態において、pocl出力とnocl出力の一方のみが利用されてもよい。例えば、一部の実施形態において、変調器110は、対応するPWM信号を調整するために、poclまたはnoclの一方の値に作用するように構成されてもよい。
【0020】
図2を参照して、一実施形態による、インダクタL(
図1参照)の非制限インダクタ電流を示す信号図の例について説明する。
図2に示すように、インダクタ電流は、PWM信号のオン時間およびオフ時間に基づいて、例えば、アップスロープとダウンスロープとを有する。なお、信号図の例では、システムはボディブレーキに無関係であるため、ダウンスロープでのボディブレーキは考慮されていないことに留意されたい。インダクタにかかる電圧は、式(1)のようにインダクタンス×電流変化率に比例する。
式(1)に基づいて、アップスロープの間、インダクタLに流れる電流の変化は式(2)に従って決定される。
例えば、V
INが21V、V
OUTが1V、およびLが100nHである実施形態において、アップスロープで
である。ダウンスロープの間、インダクタLに流れる電流の変化は式(3)に従って決定される。
例えば、V
OUTが3VでLが100nHである場合、一実施形態において、
となっている。
【0021】
図3を参照して、一実施形態における過電流保護(OCP)範囲の例示的な図を説明する。
図3に示すOCP範囲は、
図1の差動フィードバック電圧信号180と比較される差動閾値の例とすることができる。OCP範囲は、
図3において(min)と示されている最悪な場合の過電流保護(OCP)閾値最小値、
図3において(max)と示されている典型的な(typ)OCPターゲット、および最悪の場合のOCP閾値最大値(max)を含むことができる。最悪の場合のOCP閾値最小値は、差動閾値の下限値(
図1の-OCL閾値)、最悪の場合のOCP閾値最大値は、差動閾値の上限値(
図1の+OCL閾値)であり得る。
【0022】
例えば、最速のアップスロープは、例えば12VのVIN、0VのVOUT、120mA/nsの式(2)によるdi/dtを与える100nHのインダクタンスLに対応する。最速のダウンスロープは、例えば3VのVOUT、例えば100mHのインダクタンスLに対応し、式(3)によるdi/dtは30mA/nsとなる。
【0023】
図3に示すように、例えばDCR OCLバッファアンプ遅延、OCLコンパレータ遅延、ゲートドライバ遅延など、様々な遅延がOCLに導入される可能性がある。また、DCR誤差は、例えば、DCR値、CSAおよびコンパレータのオフセット、CSA利得誤差、および閾値公差を含めて積み重なる可能性がある。DCR誤差の積み重ねは、最大OCP閾値と最小OCP閾値の差に相当する。
【0024】
電流制限検出回路の遅延とオフセットは、電力段200で可能な最大電流を増加させ、電力段200のスイッチとインダクタの定格要件も増加させる。例えば、電流制限検出回路が高速であればあるほど、変調器110は、可能な最大電流を低減させ、したがって、電力段200のスイッチおよびインダクタの定格要件を減少させる電力段200への電流露出をより効率的に制御することができる。
【0025】
図4を参照して、一実施形態による例示的なサイクル毎電流制限回路120の回路図を説明する。DAC閾値生成器122は、入力としてデジタルDAC信号を受信し、アナログDAC閾値電圧値ocpThresholdを増幅器124に出力する。この増幅器124は、抵抗器127、例えば、Rが所定の抵抗値であり、ocpThresholdがVdacである6R抵抗を横切って電圧閾値ocpThresholdを強制し、電流ミラー回路128の接続DにVdac/6Rの電流I
Dを発生させる。電流ミラー回路128は、トランジスタ126のドレインに接続され、接続Dから接続Pへの電流I
Dを電流I
Pとして、接続Nを電流I
Nとしてミラーリングする。一部の実施形態において、電流I
D、電流I
P、および電流I
Nは、本明細書において、個々に、または集合的に、初期電流、基準電流、または比較電流と呼ぶこともある。一部の実施形態において、電流ミラー回路128は、PMOS電流ミラー回路128である。一部の実施形態において、電流ミラー回路128は、比較的低速であるが正確な電流ミラーを提供することができる。入力されるDAC信号は、PおよびN接続に渡ってミラーリングされる電流を修正するように調整可能であり、csp信号とcsn信号との間の閾値オフセットの調整を可能にする。一実施形態において、電流I
Pと電流I
Nは、正と負の電流制限値(+OCL閾値と-OCL閾値)を個別に設定できるように、(DAC閾値生成器122とは異なる)別個のDACによって設定され得る。
【0026】
サイクル毎電流制限回路120は、cspおよびcsnピンで差動フィードバック電圧信号180を受信する。cspピンとcsnピンで受信する差動フィードバック電圧信号180の電圧は、所定のコモンモード電圧範囲内の値、例えば、最小電圧Vminと最大電圧Vmaxの間の値を有することができる。一部の実施形態において、例えば、cspピンとcsnピンのそれぞれにおけるコモンモード電圧範囲は、同じであってもよい。他の実施形態において、cspピンとcsnピンの各々におけるコモンモード電圧範囲は、異なるが重なり合っていてもよい。一実施形態において、cspピンとcsnピンの広いコモンモード電圧範囲は、例えば、-100mV~3.1Vであり得る。他の実施形態において、cspピン、csnピン、またはその両方におけるコモンモード電圧範囲の他の範囲を代替的に利用することができる。
【0027】
広いコモンモード電圧範囲に加えて、cspピンとcsnピンは、
図4でV
diffと表示されているように、その間に所定の最大電圧差ももつことができる。一部の実施形態において、例えば、V
diffは、コモンモード電圧範囲よりも大幅に大きくなることがある。一実施形態において、例えば、V
diffは、±100mVであり得る。他の実施形態において、V
diffの他の値が代替的に利用されてもよい。一態様において、Rを横切る電圧降下は、増幅器124が平衡状態にあるとき、およびトリップポイントにあるときを示す閾値である。トリップポイントでは、DAC電流の半分がトランジスタ142、146のうちの各トランジスタを流れる。したがって、トリップポイントで抵抗Rを有する抵抗器148を横切る電圧降下は、IDAC*R/2またはVdac/2である。抵抗6Rを有する抵抗器127の場合、DAC電流Idacは、6R抵抗器127を横切るDAC電圧である。したがって、閾値は、Vdac/12となる。したがって、DACは、閾値の設定に使用され得、抵抗Rと6RはDAC電圧Vdacとシステムのトリップ電圧の関係を決定することができる。
【0028】
電流ミラー回路128から接続P上に出力される電流IP、例えばVdac/6Rは、内蔵オフセット回路を使用した電流IPの増幅を介してcspピンとcsnピンからの電圧を比較するように構成された増幅器・オフセット回路130に供給される。増幅器・オフセット回路130は、ソースが電流ミラー128に接続され、ゲートがcspに接続され、ドレインが比較器134の負端子に接続されたトランジスタ132を備える。また、閾値およびコンパレータ回路130は、抵抗器138を介して電流ミラー128に接続されたソース、csnに接続されたゲート、およびコンパレータ134の正端子に接続されたドレインを有するトランジスタ136を備える。コンパレータ134は、pocl信号を出力する。抵抗器138は、抵抗値Rを有し、増幅器・オフセット回路130の一方の側、例えばcsnに接続されたトランジスタ136を含む側に対して、他方の側、例えばcspに接続されたトランジスタ132を含む側に電流オフセットを生じさせるように構成される。
【0029】
トランジスタ132は、電流ミラー128からのソースにおける電圧をcspにおける電圧に基づいて調整、例えば増幅または別の調整を行い、調整電圧をそのドレインからコンパレータ134の負端子に出力するように構成される。同様に、トランジスタ136は、抵抗器138からのソースにおける電圧をcsnにおける電圧に基づいて調整、例えば、増幅または別の調整を行い、調整電圧をそのドレインからコンパレータ134の正端子に出力するように構成される。トランジスタ132および136のドレインにおける電圧に基づいて、コンパレータ134は、トリップポイント、例えば、コンパレータ134の正端子と負端子が等しいときに、トリップポイントに達したか、または超えたかどうかを判定することができる。一部の実施形態において、コンパレータ134による増幅からの利得は、生の、増幅されていない信号を比較する場合と比較して、コンパレータ134からの誤差寄与を低減し得る、4倍または任意の他の量の利得であり得る。
【0030】
抵抗器138が存在するため、トランジスタ132および136のソースにおける電流はオフセットされ、例えば、トランジスタ132のソースにおける電流はトランジスタ136のソースにおける電流よりも低くなる。これにより、コンパレータ134のトリップポイントが、csnピンおよびcspピンにおける電圧が異なる値を有する場合、例えば、cspにおける電圧がオフセットに対応する特定の量だけcsnにおける電圧よりも大きい場合に対応するようになる。換言すると、閾値およびコンパレータ回路130は、差動フィードバック電圧信号180のcsnで受ける負極性電圧に、抵抗器138からオフセットを注入することができる。一態様において、cspにおける電圧がcsnにおける電圧よりもVDAC/12だけ高いときに、トリップポイントが発生し得る。このトリップポイントでは、トランジスタ132、136の電流は等しくなり、I
Pの半分が抵抗器138を流れることができる。一部の実施形態において、cspとcsnにおける電圧間のオフセット量は、電流ミラー128から出力される電流I
P、例えば、Vdac/6Rに抵抗器138の値Rを掛けたものに相当してもよい。増幅器・オフセット回路130は、所定の正の電流閾値(例えば、+OCL閾値)に対応する抵抗器138の抵抗値Rを有してもよい。ここで、変調器110は、特定のVdacでパワードライバ210を駆動するPWM信号を調整するように構成され、Vdacに対する調整は、電流ミラー回路128によってミラーリングされる電流を調整することによって、線形制御する比較的簡単な方法で、必要に応じて閾値をさらに変更することができる。一例として、cspとcsnにおける電圧間の差が所定の正の電流閾値(例えば、+OCL閾値)のトリップポイントを満たすか上回る場合、例えば、トランジスタ132および136によって出力される増幅された電流が等しいか、またはトランジスタ132からの電流がトランジスタ136からの電流よりも大きい場合、pocl信号は、LOWからHIGHへ遷移することができ、またはデジタルの場合は0から1へ遷移することができる。変調器110は、インダクタL上の電流を低減させ、正の過電流シナリオが継続または悪化するのを抑制するために、PWM
1のオン時間に対応する切り捨て(例えば、低減)を引き起こしてもよい。一例として、抵抗器138の使用は、トランジスタ132と136の間、したがってcsnとcspにおける電圧の間、例えば
図1の+OCL閾値オフセットに高速回路ベースの電流オフセットを生じさせる。例えば、増幅器・オフセット回路130は、cspにおける電圧がcsnにおける電圧よりも所定の正のOCL(+OCL)閾値オフセット量だけ大きいときに、トリップして高pocl信号を出力するように構成され得る。一部の実施形態において、例えば、トリップポイントにおけるコンパレータ134の正端子および負端子上の電流は、Vdac/12Rに対応してもよい。
【0031】
電流ミラー回路128から接続N上に出力される電流IN、例えば、Vdac/6Rは、増幅器・オフセット回路130と同様に、内蔵オフセット回路を使用した電流INの増幅を介してcspピンとcsnピンからの電圧を比較するように構成された増幅器・オフセット回路140に供給される。増幅器・オフセット回路140は、ソースが電流ミラー128に接続され、ゲートがcsnに接続され、ドレインが比較器144の負端子に接続されたトランジスタ142を備える。また、閾値およびコンパレータ回路140は、抵抗器148を介して電流ミラー128に接続されたソース、cspに接続されたゲート、およびコンパレータ144の正端子に接続されたドレインを有するトランジスタ146を備える。コンパレータ144は、nocl信号を出力する。抵抗器148は、抵抗値Rを有し、増幅器・オフセット回路140の一方の側、例えばcspに接続されたトランジスタ146を含む側に対して、他方の側、例えばcsnに接続されたトランジスタ142を含む側に電流オフセットを生じさせるように構成される。例えば、増幅器回路130と比較して、増幅器・オフセット回路140では、cspとcsnへの接続が逆になっている。
【0032】
トランジスタ142は、電流ミラー128からのソースにおける電圧をcsnピンにおける電圧に基づいて調整、例えば増幅または別の調整を行い、調整電圧をそのドレインからコンパレータ144の負端子に出力するように構成される。同様に、トランジスタ146は、抵抗器148からのソースにおける電圧をcspピンにおける電圧に基づいて調整、例えば、増幅または別の調整を行い、調整電圧をそのドレインからコンパレータ144の正端子に出力するように構成される。トランジスタ142および146のドレインにおける電圧に基づいて、コンパレータ144は、トリップポイント、例えば、コンパレータ144の正端子と負端子が等しいときに、トリップポイントに達したか、または超えたかどうかを判定することができる。一部の実施形態において、コンパレータ144による増幅からの利得は、生の、増幅されていない信号を比較する場合と比較して、コンパレータ144からの誤差寄与を低減し得る、4倍または任意の他の量の利得であり得る。
【0033】
抵抗器148が存在するため、トランジスタ142および146のソースにおける電流はオフセットされ、例えば、トランジスタ142のソースにおける電流はトランジスタ146のソースにおける電流よりも低くなる。これにより、コンパレータ144のトリップポイントが、csnおよびcspにおける電圧が異なる値を有する場合、例えば、csnにおける電圧がオフセットに対応する特定の量だけcspにおける電圧よりも大きい場合に対応するようになる。換言すると、閾値およびコンパレータ回路140は、差動フィードバック電圧信号180のcspで受ける正極性電圧に、抵抗器148からオフセットを注入することができる。一態様において、csnにおける電圧がcspにおける電圧よりもVDAC/12だけ高いときに、トリップポイントが発生し得る。このトリップポイントでは、トランジスタ142、146の電流は等しくなり、I
Nの半分が抵抗器148を流れることができる。一部の実施形態において、cspとcsnにおける電圧間のオフセット量は、電流ミラー128から出力される電流I
N、例えば、Vdac/6Rに抵抗器148の値Rを掛けたものに相当してもよい。増幅器・オフセット回路140は、所定の負の電流閾値(例えば、-OCL閾値)に対応する抵抗器148の抵抗値Rを有してもよい。ここで、変調器110は、特定のVdacでパワードライバ210を駆動するPWM信号を調整するように構成され、Vdacに対する調整は、電流ミラー回路128によってミラーリングされる電流を調整することによって、線形制御する比較的簡単な方法で、必要に応じて閾値をさらに変更することができる。一例として、cspとcsnにおける差が所定の負の電流閾値(例えば、-OCL閾値)のトリップポイントを満たすか下回る場合、例えば、トランジスタ142および146によって出力される増幅された電流が等しいか、またはトランジスタ142からの電流がトランジスタ146からの電流よりも大きい場合、nocl信号は、LOWからHIGHへ遷移することができ、またはデジタルの場合は0から1へ遷移することができる。変調器110は、負の過電流シナリオが継続または悪化するのを抑制するために、PWM
1のオフ時間に対応する切り捨てまたは低減を引き起こしてもよい。一例として、抵抗器148の使用は、トランジスタ142と146の間、したがってcsnとcspにおける電圧の間、例えば
図1の-OCL閾値オフセットに高速回路ベースの電流オフセットを生じさせる。例えば、増幅器・オフセット回路140は、csnにおける電圧がcspにおける電圧よりも所定の負のOCL(-OCL)閾値オフセット量だけ大きいときに、トリップして高nocl信号を出力するように構成され得る。
【0034】
サイクル毎電流制限回路120は、
図4の実施形態では正の過電流制限回路(増幅器・オフセット回路130)と負の過電流制限回路(増幅器・オフセット回路140)の両方およびその機能を有するものとして示されているが、他の実施形態において、正の過電流制限回路および負の過電流制限回路の一方のみを代替的に利用または含めることができる。一例として、一部の実施形態において、増幅器・オフセット回路130は、サイクル毎電流制限回路120に含まれていてもよいが、増幅器・オフセット回路140は、含まれていなくてもよく、またはその逆であってもよい。この場合、対応するpocl信号またはnocl信号のみが出力される。
【0035】
上述したサイクル毎電流制限回路120の実施形態は、オフセット誤差変動を最小限に抑え、本質的に高速であり、コンパレータからの誤差寄与を低減する、エレガントな回路ベースの増幅およびオフセット機能を提供する。サイクル毎電流制限回路120は、cspおよびcsnのフィードバック入力の広いコモンモード電圧範囲(例えば、一部の実施形態では-100mV~3.1V)で動作するように構成され、VOUTが0Vである起動時または短絡状態でも機能するように構成される。また、サイクル毎電流制限回路120は、例えば上述したようにDAC入力値を調整することにより、オフセットの閾値を容易に調整できるように構成される。一部の実施形態において、増幅器・オフセット回路130および140のコンパレータ論理の各部分に整合抵抗を使用することにより、正確なオフセット閾値の設定が可能になる一方で、コンパレータ134および144への入力用のcspおよびcsnピンの電圧に基づいてトランジスタ132、136、142、および146を使用して電流信号を増幅することにより生成される利得、例えば4倍の利得または別の値により、コンパレータによる誤差の低減が可能になる場合がある。また、サイクル毎電流制限回路120は、利得とオフセットの両方を提供するオープンループ入力段により高速化を実現し、コンパレータへのオーバードライブと速度の改善に役立つ。
【0036】
図5は、一実施形態におけるサイクル毎過電流制限回路を実現するプロセスを示すフロー図である。該プロセスは、
図5に示す1つまたは複数のブロックによって示される1つまたは複数の操作、動作、または機能を含むことができる。個別のブロックとして図に示されているが、所望の用途に応じて、様々なブロックを追加のブロックに分割したり、より少ない数のブロックに組み合わせたり、省略したり、異なる順序で実行されたり、並行して実行されたりすることができる。
【0037】
プロセス500は、スイッチング電源の過電流を制限するために、本開示に記載のシステム10のコントローラ100などの電源システムのコントローラによって実行され得る。プロセス500は、ブロック502で開始することができる。ブロック502では、コントローラは、電力段から差動フィードバック電圧信号を受信することができる。ここで、差動フィードバック電圧信号は、電力段内のインダクタを流れるインダクタ電流に比例している。
【0038】
プロセス500は、ブロック504からブロック502に進むことができる。ブロック504では、コントローラは、差動フィードバック電圧信号を増幅して上限と下限を含む差動閾値を生成することができる。一実施形態において、コントローラは、オフセットを注入して差動閾値を生成することで差動フィードバック電圧信号を増幅することができる。ここで、オフセットは、電流制限に対応する電流である。一実施形態において、コントローラは、第1のオフセットを差動フィードバック電圧信号の正極性電圧信号に注入し、第2のオフセットを差動フィードバック電圧信号の負極性電圧信号に注入することで、差動フィードバック電圧信号を増幅することができる。
【0039】
プロセス500は、ブロック504からブロック506に進むことができる。ブロック506では、コントローラは、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値とを比較することができる。一実施形態において、コントローラは、差動フィードバック電圧信号と差動閾値との差を決定することで、差動フィードバック電圧信号と差動閾値とを比較することができる。コントローラは、差がゼロよりも大きいと判定することができる。コントローラは、差がゼロよりも大きいと判定したことに応答して、インダクタ電流が電流制限を上回り、過電流状態が発生したと判定することができる。
【0040】
プロセス500は、ブロック506からブロック508に進むことができる。ブロック508では、コントローラは、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果に基づいて、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間および変調器オフ時間の少なくとも一方を調整するかどうかを決定することができる。ここで、制御信号は、電力段を駆動するためのものである。
【0041】
一実施形態において、コントローラは、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果が、増幅された差動フィードバック電圧信号が差動閾値の上限よりも大きいことを示すと判定することができる。増幅された差動フィードバック電圧信号が差動閾値の上限よりも大きいことは、過電流状態が発生したことを示すことができる。コントローラは、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オン時間を低減することができる。
【0042】
一実施形態において、コントローラは、増幅された差動フィードバック電圧信号と差動閾値との比較結果が、増幅された差動フィードバック電圧信号が差動閾値の下限よりも小さいことを示すと判定することができる。増幅された差動フィードバック電圧信号が差動閾値の下限よりも小さいことは、過電流状態が発生したことを示すことができる。コントローラは、インダクタ電流を制限するために制御信号の変調器オフ時間を低減することができる。
【0043】
図におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、指定された論理機能を実現するための1つまたは複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、またはその一部を表すことができる。いくつかの代替的な実装例において、ブロックに示された機能は、図に示す順序からはずれて発生してもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実現されてもよく、関係する機能に応じて、場合によっては逆の順序で実現されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、ならびにそれらのブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムよって実現され得ることに留意されたい。
【0044】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数を表す用語は、特に明示されない限り、その複数を含むことも意図している。また、本明細書で使用される「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を画定するが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことに留意されたい。
【0045】
添付の特許請求の範囲に記載のすべての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、操作、およびそれらの等価物は、具体的に記載されている他の要素と組み合わせて機能を実現するための任意の構造、材料、または操作を包含することを意図している。本発明の開示されている実施形態の説明は、例示および説明のために提供されているが、網羅的であること、あるいは開示された形態に限定されることを意図していない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を適用することができることが明らかであろう。上述した実施形態は、本発明の原理および実用化を最適に説明するために、また、検討される特定の用途に適するように種々の修正を伴う様々な実施形態について本発明を当業者が理解できるように、選択および説明されたものである。
【外国語明細書】