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特開2024-125236圧粉体の製造方法、ステータコアの製造方法およびアキシャルギャップモータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125236
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】圧粉体の製造方法、ステータコアの製造方法およびアキシャルギャップモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/02 20060101AFI20240906BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240906BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20240906BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20240906BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240906BHJP
   H01F 1/24 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B22F3/02 A
B22F1/00 Y
B22F3/00 B
B22F5/00 Z
H01F41/02 D
H01F1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108508
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2024515596の分割
【原出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022187837
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】栄田 壮亮
(57)【要約】
【課題】圧粉体の欠けを低減できる圧粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】圧粉体の製造方法は、ダイ孔と下パンチとで構成された空間に粉末を充填する工程と、粉末を下パンチ及び上パンチで圧粉体とする工程とを備える。圧粉体は、角柱状のボディと、ボディの第一端に位置する第一板部と、ボディの第二端に位置する第二板部とを有する。ボディは左側面及び右側面を有する。第一板部は、第一前面から第一後面に向かって間隔が広がる傾斜領域を有する第一左側面及び第一右側面を有する。第二板部は、第二左側面及び第二右側面を有する。上パンチは、左側面を成形するメイン下面と、第一左側面を成形する第一サブ下面と、第二左側面を成形する第二サブ下面とを有する。下パンチは、右側面を成形するメイン上面と、第一右側面を成形する第一サブ上面と、第二右側面を成形する第二サブ上面とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイに設けられたダイ孔と下パンチとで構成された空間に粉末を充填する工程と、
前記空間に充填された前記粉末を前記下パンチおよび上パンチで圧縮して圧粉体とする工程と、を備え、
前記圧粉体は、
第一の底面と前記第一の底面とは反対の第二の底面と複数の側面とを有する角柱状のボディと、
前記第一の底面に設けられた第一板部と、
前記第二の底面に設けられた第二板部と、を有し、
前記複数の側面は、
前記ボディの軸に沿って互いに平行に配置された前面および後面と、
前記前面と前記後面とをつなぐ左側面および前記前面と前記後面とをつなぐ右側面と、を有し、
前記第一板部は、
前記ボディから前記軸と直交する方向に突出した第一突部と、
前記軸に沿って互いに平行に配置された第一前面および第一後面と、
前記第一前面と前記第一後面とをつなぐ第一左側面および前記第一前面と前記第一後面とをつなぐ第一右側面と、を有し、
前記第一左側面および前記第一右側面は、前記第一前面から前記第一後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜した領域を有し、
前記第二板部は、
前記ボディから前記軸と直交する方向に突出した第二突部と、
前記軸に沿って互いに平行に配置された第二前面および第二後面と、
前記第二前面と前記第二後面とをつなぐ第二左側面および前記第二前面と前記第二後面とをつなぐ第二右側面と、を有し、
前記上パンチは、
前記ボディの前記左側面を成形するメイン下面と、
前記第一板部の前記第一左側面を成形する第一サブ下面と、
前記第二板部の前記第二左側面を成形する第二サブ下面と、を有し、
前記下パンチは、
前記ボディの前記右側面を成形するメイン上面と、
前記第一板部の前記第一右側面を成形する第一サブ上面と、
前記第二板部の前記第二右側面を成形する第二サブ上面と、を有する、
圧粉体の製造方法。
【請求項2】
前記左側面および前記右側面は、前記前面から前記後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜している請求項1に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項3】
前記第二左側面および前記第二右側面は、前記第二前面から前記第二後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜する領域を有する請求項1または請求項2に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項4】
前記第一突部は、前記軸の周りの全周にわたって前記ボディから突出している請求項1または請求項2に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項5】
前記第二突部は、前記軸の周りの全周にわたって前記ボディから突出している請求項1または請求項2に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項6】
前記粉末は、磁性粉末である請求項1または請求項2に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の圧粉体の製造方法により複数の前記圧粉体を製造する工程と、
隣り合う複数の前記圧粉体の前記第一左側面と前記第一右側面とが平行に向かい合うように複数の前記圧粉体を配置することで、環状のステータコアを構成する工程とを備える、
ステータコアの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のステータコアの製造方法により前記ステータコアを製造する工程と、
前記ステータコアとロータを組合せる工程とを備える、
アキシャルギャップモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧粉体の製造方法、ステータコアの製造方法およびアキシャルギャップモータの製造方法に関する。本出願は、2022年11月24日出願の日本出願2022-187837号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アキシャルギャップ型の回転電機のステータコアを構築するためのコア片を開示する。このコア片は、ステータコアの軸に沿って延びている柱状のボディと、ボディにおける第一端部に設けられている板状の第一板部と、ボディにおける第二端部に設けられている板状の第二板部と、を備える。第一板部および第二板部の各々は、ボディの周面よりも外方に張り出している突部を有する。
【0003】
このようなコア片を構成するボディ、第一板部、および第二板部は、ダイ、下パンチおよび上パンチを有する金型で粉末を圧縮することにより一体に成形される。この成形は、金型で粉末を圧縮する方向および金型から圧粉体であるコア片を抜き出す方向を、ステータコアの直径に沿った方向とすることで実現される。
【0004】
一般に、ボディの両端部に上記突部を有する圧粉体は、ステータコアの軸に沿った方向に粉末を圧縮して成形することができない。ボディの両端部に設けられた突部は、金型から圧粉体を抜き出す方向と交差する方向に突出したアンダーカットとなるからである。上述した圧粉体の成形方法によれば、ボディの両端部に上記突部を有する圧粉体であっても、金型の構成部材を分割したり、ボディ、第一板部、および第二板部の少なくとも一つを別の金型で成形したりしなくても製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/225049号
【発明の概要】
【0006】
本開示の圧粉体の製造方法は、ダイに設けられたダイ孔と下パンチとで構成された空間に粉末を充填する工程と、前記空間に充填された前記粉末を前記下パンチおよび上パンチで圧縮して圧粉体とする工程と、を備える。前記圧粉体は、第一の底面と前記第一の底面とは反対の第二の底面と複数の側面とを有する角柱状のボディと、前記第一の底面に設けられた第一板部と、前記第二の底面に設けられた第二板部と、を有する。前記複数の側面は、前記ボディの軸に沿って互いに平行に配置された前面および後面と、前記前面と前記後面とをつなぐ左側面および前記前面と前記後面とをつなぐ右側面と、を有する。前記第一板部は、前記ボディから前記軸と直交する方向に突出した第一突部と、前記軸に沿って互いに平行に配置された第一前面および第一後面と、前記第一前面と前記第一後面とをつなぐ第一左側面および前記第一前面と前記第一後面とをつなぐ第一右側面と、を有する。前記第一左側面および前記第一右側面は、前記第一前面から前記第一後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜した領域を有する。前記第二板部は、前記ボディから前記軸と直交する方向に突出した第二突部と、前記軸に沿って互いに平行に配置された第二前面および第二後面と、前記第二前面と前記第二後面とをつなぐ第二左側面および前記第二前面と前記第二後面とをつなぐ第二右側面と、を有する。前記上パンチは、前記ボディの前記左側面を成形するメイン下面と、前記第一板部の前記第一左側面を成形する第一サブ下面と、前記第二板部の前記第二左側面を成形する第二サブ下面と、を有する。前記下パンチは、前記ボディの前記右側面を成形するメイン上面と、前記第一板部の前記第一右側面を成形する第一サブ上面と、前記第二板部の前記第二右側面を成形する第二サブ上面と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に係る圧粉体の製造方法により得られた圧粉体を斜め前方から見た斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る圧粉体の製造方法により得られた圧粉体を斜め後方から見た斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る圧粉体の製造方法に用いられるダイの横断面図である。
図4図4は、実施形態1に係る圧粉体の製造方法において、金型で圧縮されるボディを示す、方向Wに沿った縦断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る圧粉体の製造方法において、金型で圧縮される圧粉体の第一板部を示す、方向Wに沿った縦断面図である。
図6図6は、実施形態1に係る圧粉体の製造方法において、成形時の金型内に配置された圧粉体を示す、方向Dに沿った縦断面図である。
図7図7は、図1に示した圧粉体で構成したアキシャルギャップモータ用のステータコアを示す平面図である。
図8図8は、図7のステータコアを用いたアキシャルギャップモータの縦断面図である。
図9図9は、図7のステータコアを用いた別のアキシャルギャップモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
背景技術に記載のような突部を有する圧粉体は、欠けや割れが極力生じないように成形されることが望まれる。上述した圧粉体の成形方法では、圧粉体であるコア片は、環状のステータコアを構成した場合において、内周面となる面が下パンチで押圧され、外周面となる面が上パンチで押圧される。内周面となる面は外周面となる面よりも幅が狭いため、下パンチの幅も上パンチの幅よりも狭い。つまり、圧粉体を金型から抜き出す際、圧粉体は下パンチにより局所的に押圧される。その結果、圧粉体にせん断応力が作用し、圧粉体の形状または寸法によっては、下パンチに押圧される箇所と下パンチに押圧されない箇所との境界付近で成形体が欠けたり割れたりするおそれがある。
【0009】
本開示は、圧粉体の損傷の発生を低減できる圧粉体の製造方法を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記圧粉体の製造方法により得られた圧粉体を用いたステータコアの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の圧粉体の製造方法では、圧粉体の損傷の発生を低減することができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
<1>実施形態に係る圧粉体の製造方法は、ダイに設けられたダイ孔と下パンチとで構成された空間に粉末を充填する工程と、前記空間に充填された前記粉末を前記下パンチおよび上パンチで圧縮して圧粉体とする工程と、を備える。前記圧粉体は、第一の底面と前記第一の底面とは反対の第二の底面と複数の側面とを有する角柱状のボディと、前記第一の底面に設けられた第一板部と、前記第二の底面に設けられた第二板部と、を有する。前記複数の側面は、前記ボディの軸に沿って互いに平行に配置された前面および後面と、前記前面と前記後面とをつなぐ左側面および前記前面と前記後面とをつなぐ右側面と、を有する。前記第一板部は、前記ボディから前記軸と直交する方向に突出した第一突部と、前記軸に沿って互いに平行に配置された第一前面および第一後面と、前記第一前面と前記第一後面とをつなぐ第一左側面および前記第一前面と前記第一後面とをつなぐ第一右側面と、を有する。前記第一左側面および前記第一右側面は、前記第一前面から前記第一後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜した領域を有する。前記第二板部は、前記ボディから前記軸と直交する方向に突出した第二突部と、前記軸に沿って互いに平行に配置された第二前面および第二後面と、前記第二前面と前記第二後面とをつなぐ第二左側面および前記第二前面と前記第二後面とをつなぐ第二右側面と、を有する。前記上パンチは、前記ボディの前記左側面を成形するメイン下面と、前記第一板部の前記第一左側面を成形する第一サブ下面と、前記第二板部の前記第二左側面を成形する第二サブ下面と、を有する。前記下パンチは、前記ボディの前記右側面を成形するメイン上面と、前記第一板部の前記第一右側面を成形する第一サブ上面と、前記第二板部の前記第二右側面を成形する第二サブ上面と、を有する。
【0013】
上記圧粉体の製造方法によれば、圧粉体の欠けまたは割れといった損傷を低減できる。この製造方法で得られる圧粉体は、ボディから突出した第一突部および第二突部を有する形状である。このような形状を備える圧粉体でありながら、圧粉体の左側面、第一左側面、第二左側面、右側面、第一右側面、および第二右側面を上パンチと下パンチとで押圧することにより成形することができる。成形時、突部を有する第一板部および第二板部は、ダイ孔内の上下に左側面、第一左側面、第二左側面、右側面、第一右側面、および第二右側面が配置される。ダイ孔内の前後に前面、第一前面、第二前面、後面、第一後面、および第二後面が配置される。圧粉体の全幅にわたって上パンチと下パンチとで圧粉体を圧縮することができる。圧粉体を金型から抜き出す際、下パンチが圧粉体を局所的に押圧することがないので、特許文献1に開示された圧粉体の成形方法に比べて、圧粉体の欠けまたは割れの発生を抑制することができる。
【0014】
<2>上記<1>に記載の圧粉体の製造方法において、前記左側面および前記右側面は、前記前面から前記後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜していてもよい。
【0015】
上記圧粉体の製造方法によれば、ボディの左側面および右側面が傾斜面である圧粉体を得ることができる。第一板部だけでなく、ボディも傾斜面を有する形状であれば、ボディの外周にコイルを設けた際、コイルの外形と第一板部の外形とを合わせ易い。つまり、圧粉体でモータのステータコアといった磁性部材を構成した場合、モータのデッドスペースを削減することができる。
【0016】
<3>上記<1>または<2>に記載の圧粉体の製造方法において、前記第二左側面および前記第二右側面は、前記第二前面から前記第二後面に向かうに従って互いの間隔が広がるように傾斜する領域を有していてもよい。
【0017】
上記圧粉体の製造方法によれば、第一板部だけでなく、第二板部の第二左側面および第二右側面も傾斜面である圧粉体を得ることができる。第二板部も傾斜面を有する形状であれば、第二板部の形状を第一板部の形状に合わせ易い。ボディの外周にコイルを設けた際、コイルの両端部を第一板部と第二板部とで均一的に保持し易い。
【0018】
<4>上記<1>から<3>のいずれかに記載の圧粉体の製造方法において、前記第一突部は、前記軸の周りの全周にわたって前記ボディから突出していてもよい。
【0019】
上記圧粉体の製造方法によれば、第一突部がボディの全周にわたって突出された形状の圧粉体を得ることができる。ボディの外周にコイルを設けた際、コイルの第一端部の全周を第一突部に当て止めすることができる。
【0020】
<5>上記<1>から<4>のいずれかに記載の圧粉体の製造方法において、前記第二突部は、前記軸の周りの全周にわたって前記ボディから突出していてもよい。
【0021】
上記圧粉体の製造方法によれば、第二突部がボディの全周にわたって突出された形状の圧粉体を得ることができる。ボディの外周にコイルを設けた際、コイルの第二端部の全周を第二突部に当て止めすることができる。
【0022】
<6>上記<1>から<5>のいずれかに記載の圧粉体の製造方法において、前記粉末は、磁性粉末であってもよい。
【0023】
上記圧粉体の製造方法によれば、磁性粉末で圧粉体を構成することで、例えばモータのステータコアまたはリアクタのコアといった圧粉磁心を得ることができる。
【0024】
<7>実施形態に係るステータコアの製造方法は、上記<1>から<6>のいずれかに記載の圧粉体の製造方法により複数の前記圧粉体を製造する工程と、隣り合う複数の前記圧粉体の前記第一左側面と前記第一右側面とが平行に向かい合うように複数の前記圧粉体を配置することで、環状のステータコアを構成する工程とを備える。
【0025】
上記ステータコアの製造方法によれば、得られた複数の圧粉体を環状に組み合わせることで、例えばアキシャルギャップモータ用のステータコアを得ることができる。
【0026】
<8>実施形態に係るアキシャルギャップモータの製造方法は、<7>に記載のステータコアの製造方法によりステータコアを製造する工程と、前記ステータコアとロータを組合せる工程とを備える。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態に係る圧粉体の製造方法を説明する。圧粉体の製造方法の説明に先立って、この製造方法により得られる圧粉体の構成を説明する。次に、圧粉体の製造方法を説明する。最後に、上記圧粉体を用いたステータコアとその製造方法、ならびに上記ステータコアを備えるアキシャルギャップモータを説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。
【0028】
≪圧粉体≫
上記圧粉体は、アキシャルギャップモータ用のステータコアを構築するためのコア片を例として説明する。ステータコアは、複数のコア片により環状に構成される。
図1および図2に示すように、圧粉体1は、ボディ10と第一板部20と第二板部30とを備えている。ボディ10は、角柱状である。第一板部20は、ボディ10の軸に沿った方向の第一端部に設けられている。第二板部30は、ボディ10の軸に沿った方向の第二端部に設けられている。第一板部20は第一突部20Fを有し、第二板部30は第二突部30Fを有する。ボディ10と第一板部20と第二板部30とは、一体成形されている。一体成形されたとは、ねじなどを用いた機械的な接続または接着剤などによる接着がされることなく、成形によってボディ10と第一板部20と第二板部30とが一連につなげられていることをいう。
【0029】
圧粉体1の各方向は次の通りとする。圧粉体1の各方向は、図1図2図4から図6に矢印で示される。ステータコアの説明には、図7が参照される。
圧粉体1におけるステータコア70の直径に沿った方向を方向Xとする。
圧粉体1におけるステータコア70の軸に沿った方向を方向Zとする。方向Zはボディ10の軸に沿った方向である。
圧粉体1の方向Xおよび方向Zの両方に直交する方向を方向Yとする。
以下の説明では、環状のステータコアの内側を前、外側を後とし、前から後に向って見た場合で左右を規定しているが、ステータコアの外側を前、内側を後とし、前から後に向って見た場合で左右を規定してもよい。
以下、圧粉体の構成を詳細に説明する。
【0030】
[ボディ]
ボディ10は、方向Zに延びる柱状の部材である。圧粉体1がアキシャルギャップモータ9のうちダブルステータ・シングルロータ型のステータコア70を構築する場合、またはアキシャルギャップモータ9のうちシングルステータ・ダブルロータ型のステータコア70を構築する場合のいずれの場合においても、ボディ10は、ティースを構成する。図8に示すように、ダブルステータ・シングルロータ型のアキシャルギャップモータ9は、一つのロータ90が二つのステータ7で挟まれるように組み付けられる。図9に示すように、シングルステータ・ダブルロータ型のアキシャルギャップモータ9aは、一つのステータ7aが二つのロータ90aで挟まれるように組み付けられる。以下、説明の便宜上、ダブルステータ・シングルロータをDS/SRと称し、シングルステータ・ダブルロータをSS/DRと称することがある。
【0031】
ボディ10の形状は角柱状である。角柱状は、例えば、方向Zに直交する平面で切断した横断面形状が四角形の四角柱状である。ここでの四角形には、幾何学上の厳密な意味での四角形に限らず、横断面形状が四つの角部をつないで構成された形状を含む。すなわち、横断面形状が四つの角部を面取りにより丸めた形状や、四つの角部を直線状に面取りした形状など、細部に変更が加えられた四角形も含む。四角形には矩形および台形が含まれる。矩形には、長方形および正方形が含まれる。台形には、等脚台形状のように両脚の長さが互いに同じ台形の他、直角台形状も含まれる。上記横断面形状は、方向Zに一様としてもよい。これらの点は、後述する第一板部20および第二板部30でも同様である。
【0032】
図1図2、および図4に示すように、ボディ10の形状の一例は、上記横断面形状が台形状である台形柱状である。ボディ10の上記横断面形状は、方向Zに一様である。ボディ10の形状が台形柱状であれば、環状のステータコアを構成し易い上に、磁路面積を大きく確保し易い。また、圧粉体1のデッドスペースを低減し易く、占積率が高いステータ7を構築し易い。
【0033】
図1図2に示すように、ボディ10は、第一板部20と第二板部30とにつながる周面を有している。周面は、前面11、後面12、右側面13、および左側面14を有する。前面11、後面12、右側面13、および左側面14は、いずれも平面である。前面11および後面12は、ボディ10の軸に沿っている。前面11および後面12は、方向Zに沿っている。前面11および後面12は、方向Yにも沿っている。前面11および後面12は互いに平行に向き合っている。前面11および後面12の形状の一例は矩形状である。前面11から後面12に向かう方向がステータコア70における直径に沿った方向である。前面11は、後面12よりもステータコア70の軸から近い位置にある。前面11の方向Yに沿った寸法は、後面12の方向Yに沿った寸法よりも小さい。前面11の面積は、後面12の面積よりも小さい。
【0034】
右側面13は前面11と後面12の右辺同士をつなぐ。左側面14は前面11と後面12の左辺同士をつなぐ。右側面13および左側面14はいずれも矩形状の形状を有し、かつ同じ面積である。右側面13と左側面14は、方向Xに対して非直交に交差する傾斜面である。右側面13と左側面14の互いの間隔は、前面11から後面12に向かうに従って広がる。右側面13と左側面14の方向Xに対する傾斜角は同じである。つまり、右側面13と左側面14とは、方向Xに沿った線分に対して対称に配置されている。右側面13の延長面と左側面14の延長面との交差角度は、例えば5°から40°である。ボディ10も傾斜面を有する形状であれば、ボディ10の外周にコイルを設けた際、コイルの外形と第一板部20の外形とを合わせ易い。
【0035】
[第一板部]
図1図2図8図9に示すように、第一板部20は、ボディ10の方向Zの第一端部に設けられている。圧粉体1がDS/SR形態のアキシャルギャップモータ9に備わるステータコア70を構築する場合、第一板部20は、ヨークを構成する。圧粉体1がSS/DR形態のアキシャルギャップモータ9aに備わるステータコア70を構築する場合、第一板部20aは、つば部を構成する。
【0036】
第一板部20の形状の一例は、台形板状である。台形板状は、第一板部20を方向Zに直交する平面で切断した断面形状が台形状である。上記断面形状は、方向Zに一様である。なお、圧粉体1がSS/DR形態のアキシャルギャップモータ9aに備わるステータコア70を構築する場合、第一板部20aの形状は、矩形板状であってもよい。
【0037】
第一板部20は、第一前面21、第一後面22、第一右側面23、第一左側面24、および第一端面25を有する。第一前面21、第一後面22、第一右側面23、第一左側面24、および第一端面25は、いずれも平面である。第一前面21および第一後面22は、ボディ10の軸に沿っている。第一前面21および第一後面22は、方向Zに沿っている。第一前面21および第一後面22は、方向Yにも沿っている。第一前面21および第一後面22は互いに平行に向き合っている。第一前面21および第一後面22の形状の一例は扁平な矩形状である。第一前面21から第一後面22に向かう方向がステータコア70における直径に沿った方向である。第一前面21は第一後面22よりも、ステータコア70の軸から近い位置にある。第一前面21の方向Yに沿った寸法は、第一後面22の方向Yに沿った寸法よりも小さい。第一前面21の面積は、第一後面22の面積よりも小さい。
【0038】
第一右側面23は、第一前面21と第一後面22の右辺同士をつなぐ。第一左側面24は、第一前面21と第一後面22の左辺同士をつなぐ。第一右側面23および第一左側面24の一例はいずれも矩形状の形状を有し、かつ同じ面積である。第一右側面23と第一左側面24の一例は、方向Xに対して非直交に交差する傾斜面である。第一右側面23と第一左側面24の互いの間隔は、第一前面21から第一後面22に向かうに従って広がる。第一右側面23と第一左側面24の方向Xに対する傾斜角は同じである。つまり、第一右側面23と第一左側面24とは、方向Xに沿った線分に対して対称に配置されている。このような傾斜面を有する第一板部20は扇形の圧粉体1を製造し易い。第一右側面23と第一左側面24が有する傾斜面における方向Xの両端の少なくとも片端には、方向Xと平行な領域があってもよい。平行な領域を有することで、第一板部20の角部が鋭角になることを抑制できる。第一右側面23の延長面と第一左側面24の延長面との交差角度は、例えば5°から40°である。交差角度は、右側面13の延長面と左側面14の延長面との交差角度と同じであっても異なっていてもよい。圧粉体1の一例では、第一右側面23の延長面と第一左側面24の延長面との交差角度は、右側面13の延長面と左側面14の延長面との交差角度と同じである。第一右側面23と右側面13とは平行である。第一左側面24と左側面14とは平行である。第一端面25は方向Zと直交する面である。第一端面25は、例えば圧粉体1の底面を構成する。
【0039】
第一板部20は、第一突部20Fを有している。第一突部20Fは、ボディ10の周面よりも外方に突出している。第一突部20Fは、ボディ10の周面の一部において、ボディ10の周面よりも外方に突出していてもよい。第一突部20Fは、ボディ10の周面の全周において、ボディ10の周面よりも外方に突出していてもよい。第一突部20Fの一例は、ボディ10の周面の全周において、ボディ10の周面よりも外方に突出している。第一突部20Fは、台形枠状に設けられている。この台形枠状の第一突部20Fの周面は、第一前面21、第一後面22、第一右側面23、および第一左側面24を構成する。この構成によれば、ボディ10の外周にコイルを設けた際、コイルの第一端部の全周を第一突部20Fに当て止めすることができる。この例と異なり、第一突部20Fは、ボディ10の前面11、後面12、右側面13、および左側面14の少なくとも一つの周面から外方に突出する構成であってもよい。ボディ10の周面の一部において、ボディ10の周面よりも外方に突出した第一突部20Fは、第一前面21、第一後面22、第一右側面23、および第一左側面24の一部の面がボディ10の一部の周面と面一になってもよい。
【0040】
第一突部20Fのボディ10からの突出長さは、適宜選択できる。圧粉体1がDS/SR形態のアキシャルギャップモータ9に備わるステータコア70を構築する場合、第一突部20Fのボディ10の周面からの突出長さは、後述する第二突部30Fのボディ10からの突出長さよりも長い。この構成により、複数のコア片を並列して環状のステータコアを構築する場合、ヨークとなる第一突部20F同士を接触させ、つば部となる第二突部30F同士の間にはギャップを設けることができる。圧粉体1がSS/DR形態のアキシャルギャップモータ9aに備わるステータコア70を構築する場合、第一突部20Fの突出長さは、後述する第二突部30Fのボディ10の周面からの突出長さと同じであってもよい。突出長さとは、ボディ10の周面に対して直交する方向に沿った長さをいう。周面が曲面を有する場合には、突出長さとは、曲面の法線方向に沿った長さをいう。
【0041】
[第二板部]
図1図2図8図9に示すように、第二板部30は、ボディ10の方向Zの第二端部に設けられている。圧粉体1がDS/SR形態のアキシャルギャップモータ9に備わるステータコア70およびSS/DR形態のアキシャルギャップモータ9aのいずれを構築する場合であっても、第二板部30、30aは、つば部を構成する。
【0042】
第二板部30の形状の一例は、台形板状である。台形板状は、第二板部30を方向Zに直交する平面で切断した断面形状が台形状である。上記断面形状は、方向Zに一様である。なお、圧粉体1がSS/DR形態のアキシャルギャップモータ9aに備わるステータコア70を構築する場合、第二板部30aの形状は、矩形板状であってもよい。
【0043】
第二板部30は、第二前面31、第二後面32、第二右側面33、第二左側面34、および第二端面35を有する。第二前面31、第二後面32、第二右側面33、第二左側面34、および第二端面35は、いずれも平面である。第二前面31および第二後面32は、ボディ10の軸に沿っている。第二前面31および第二後面32は、方向Zに沿っている。第二前面31および第二後面32は、方向Yにも沿っている。第二前面31および第二後面32は互いに平行に向き合っている。第二前面31は第一前面21と面一である。第二後面32は第一後面22と面一である。第二前面31と第一前面21とが面一でなくてもよい。第二後面32と第一後面22とが面一でなくてもよい。第二前面31は前面11と面一ではない。第二後面32は後面12と面一ではない。第二前面31は前面11と面一であってもよい。第二後面32は後面12と面一であってもよい。第二前面31および第二後面32の形状の一例は扁平な矩形状である。第二板部30の一例において、第二前面31および第二後面32の厚さ(方向Zに沿った長さ)、第一前面21および第一後面22の厚さよりも薄い。但し、第二前面31および第二後面32の厚さと第一前面21および第一後面22の厚さとは同じであってもよい。第二前面31から第二後面32に向かう方向がステータコア70における直径に沿った方向である。第二前面31は第二後面32よりも、ステータコア70の軸から近い位置にある。第二前面31の方向Yに沿った寸法は、第二後面32の方向Yに沿った寸法よりも小さい。第二前面31の面積は、第二後面32の面積よりも小さい。
【0044】
第二右側面33は第二前面31と第二後面32の右辺同士をつなぐ。第二左側面34は第二前面31と第二後面32の左辺同士をつなぐ。第二右側面33および第二左側面34の一例はいずれも矩形状の形状を有し、かつ同じ面積である。第二右側面33と第二左側面34の一例は、方向Xに対して非直交に交差する傾斜面である。第二右側面33と第二左側面34の互いの間隔は、第二前面31から第二後面32に向かうに従って広がる。第二右側面33と第二左側面34の方向Xに対する傾斜角は同じである。第二右側面33と第二左側面34とは、方向Xに沿った線分に対して対称に配置されている。このような傾斜面を有する第二板部30は扇形の圧粉体1を製造し易い。第二右側面33と第二左側面34が有する傾斜面における方向Xの両端の少なくとも片端には、方向Xと平行な領域があってもよい。方向Xと平行な領域を有することで、第二後面32においては第二板部30の角部が鋭角になることを避けられる。方向Xと平行な領域を両端に有することで、第二板部30の第二前面31を含む領域と第二後面32を含む領域での製造時の圧縮比の差を小さくすることができる。第二右側面33の延長面と第二左側面34の延長面との交差角度は、例えば5°から40°である。この交差角度は、右側面13の延長面と左側面14の延長面との交差角度と同じであっても異なっていてもよい。圧粉体1の一例では、第二右側面33の延長面と第二左側面34の延長面との交差角度は、右側面13の延長面と左側面14の延長面との交差角度と同じである。第二右側面33と右側面13とは平行である。第二左側面34と左側面14とは平行である。第二右側面33は第一右側面23と平行でなくてもよい。第二右側面33は第一右側面23と面一でなくてもよい。第二左側面34は第一左側面24と平行でなくてもよい。第二左側面34は第一左側面24と面一でなくてもよい。第二端面35は方向Zと直交する面である。第二端面35は、例えば圧粉体1の頂面を構成する。
【0045】
第二板部30は、第二突部30Fを有している。第二突部30Fは、ボディ10の周面よりも外方に突出している。第二突部30Fは、ボディ10の周面の一部において、ボディ10の周面よりも外方に突出していてもよい。第二突部30Fは、ボディ10の周面の全周において、ボディ10の周面よりも外方に突出していてもよい。第二突部30Fの一例は、ボディ10の周面の全周において、ボディ10の周面よりも外方に突出している。第二突部30Fは、台形枠状に設けられている。台形枠状の第二突部30Fの周面は、第二前面31、第二後面32、第二右側面33、および第二左側面34を構成する。この構成によれば、ボディ10の外周にコイルを設けた際、コイルの第二端部の全周を第二突部30Fに当て止めすることができる。この例と異なり、第二突部30Fは、ボディ10の前面11、後面12、右側面13、および左側面14の少なくとも一つの周面から外方に突出する構成であってもよい。ボディ10の周面の一部において、ボディ10の周面よりも外方に突出した第二突部30Fは、第二前面31、第二後面32、第二右側面33、および第二左側面34の一部の面がボディ10の一部の周面と面一になってもよい。
【0046】
[材質]
圧粉体1は、磁性粉末を含む粉末で構成されている。磁性粉末は複数の磁性粒子で構成される。磁性粒子の一例は、軟磁性粒子である。圧粉体1の一例は、複数の軟磁性粒子を有する軟磁性粉末を圧縮成形したものである。軟磁性粒子は、純鉄または鉄基合金からなる複数の鉄系粒子を有している。純鉄は、Fe(鉄)の純度が99質量%以上のものをいう。鉄基合金は、例えばSi(シリコン)およびAl(アルミニウム)の少なくとも一方の元素を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる。鉄基合金は、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、およびFe-Si-Al系合金からなる群より選択される一種が挙げられる。Fe-Si系合金としては、例えば、ケイ素鋼が挙げられる。Fe-Si-Al系合金としては、例えば、センダストが挙げられる。圧粉体1は材質が異なる複数種の軟磁性粒子を含んでもよい。上記鉄系粒子は比較的軟質であるため、圧粉体1の成形時に軟磁性粒子が変形し易い。そのため、圧粉体1が高密度になり、寸法精度に優れる。圧粉体1は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成されていることで、損失を低減することができる。圧粉体1は、複数の被覆軟磁性粒子を有する被覆軟磁性粉末を圧縮成形したものであってもよい。絶縁被覆が形成されていれば、絶縁被覆により粒子間の電気的絶縁を確保し易い。そのため、渦電流損に起因する圧粉体1の鉄損を低減できる。軟磁性粒子は上述の通りである。絶縁被覆としては、例えば、リン酸塩被覆やシリカ被覆が挙げられる。
【0047】
[相対密度]
圧粉体1の相対密度は85%以上であってもよい。相対密度が85%以上の圧粉体1は、飽和磁束密度等の磁気特性、および強度等の機械的特性に優れる。圧粉体1の相対密度は、90%以上であってもよく、93%以上であってもよい。圧粉体1の相対密度は、100%未満であってもよい。「相対密度」は、圧粉体1を構成する軟磁性粒子の真密度に対する、実際の圧粉体1の密度の比率(%)をいう。
【0048】
「圧粉磁心の相対密度」は、圧粉磁心の真密度に対する実際の圧粉磁心の密度の比率(%)をいう。圧粉磁心の相対密度は、[(実際の圧粉磁心の密度/圧粉磁心の真密度)×100]によって求められる。実際の圧粉磁心の密度は、圧粉磁心を油中に浸漬して圧粉磁心に油を含浸させ、[含油密度×(含油前の圧粉磁心の質量/含油後の圧粉磁心の質量)]によって求めることができる。含油密度は、(含油後の圧粉磁心の質量/含油後の圧粉磁心の体積)である。実際の圧粉磁心の密度は、(含油前の圧粉磁心の質量/含油後の圧粉磁心の体積)で求めることができる。含油後の圧粉磁心の体積は、代表的には液体置換法によって測定することができる。圧粉磁心の真密度とは、内部に空隙が含まれていないとしたときの理論密度のことである。
【0049】
[相対密度の差]
ボディ10と第一板部20と第二板部30のうち、相対密度の最も大きな部材と相対密度の最も小さな部材との相対密度の差が5.0%以下であってもよい。相対密度の差が小さい圧粉体1は、圧粉体1内で磁気特性などの物理的特性が実質的に均一である。相対密度の差が小さいほど、物理的特性の均一性が向上することが予測される。相対密度の差は、4.0%以下であってもよく、3.0%以下であってもよい。
【0050】
≪実施形態1≫
〔圧粉体の製造方法〕
[金型]
上述した圧粉体1は、図3から図6に示す金型4により成形される。まず、図3から図6を参照して、金型4を説明する。その後、製造方法の各工程を説明する。この金型4は、ダイ40と上パンチ50と下パンチ60とを備える。ダイ40は垂直に延びるダイ孔40hを備える。上パンチ50はダイ孔40h内で昇降自在に構成される。下パンチ60はダイ孔40h内で昇降自在に構成される。
【0051】
金型4の各方向は、次の通りとする。金型4の各方向を図3から図6に矢印で示す。
・金型4の垂直方向を方向Hとする。方向Hは、ダイ孔40hの軸に沿った方向である。方向Hは、上パンチ50および下パンチ60の各軸に沿った方向でもある。成形時、圧粉体1の方向Yは金型4の方向Hと同じ方向である。
・ダイ孔40hを上から下に向かって見て、第一板部20を成形する第一サブ孔42hから第二板部30を成形する第二サブ孔43hに向かう方向またはその逆方向を方向Dとする。成形時、圧粉体1の方向Zは金型4の方向Dと同じ方向である。
・ダイ孔40hを上から下に向かって見て、方向Dと直交する方向またはその逆方向を方向Wとする。成形時、圧粉体1の方向Xは金型4の方向Wと同じ方向である。
【0052】
金型4または金型4内の圧粉体1における各方向に沿った寸法は、次の通りとする。
・方向Hに沿った寸法を高さとする。
・方向Wに沿った寸法を幅とする。
・方向Dに沿った寸法を奥行とする。
【0053】
(ダイ)
ダイ40は、ダイ孔40hを有している。ダイ孔40hは、ダイ40の上面と下面に開口する貫通孔である。ダイ孔40hの上部には上パンチ50が嵌められる。ダイ孔40hの下部には下パンチ60が嵌められる。ダイ孔40hの横断面形状は、圧粉体1の形状に対応した形状である。この横断面形状は、ダイ孔40hの軸に直交する切断面におけるダイ孔40hの形状である。
【0054】
図3に示すように、ダイ孔40hは、主孔41hと第一サブ孔42hと第二サブ孔43hを有する。主孔41hは、ダイ孔40hのうちボディ10を成形する領域である。第一サブ孔42hは、ダイ孔40hのうち第一板部20を成形する領域である。第二サブ孔43hは、ダイ孔40hのうち第二板部30を成形する領域である。主孔41hと第一サブ孔42hとの境界は、二点鎖線で示される。主孔41hと第二サブ孔43hとの境界は、二点鎖線で示される。
【0055】
第一サブ孔42hは、主孔41hの方向Dにおける第一端部につながっている。第二サブ孔43hは、主孔41hの方向Dにおける第二端部につながっている。主孔41h、第一サブ孔42h、および第二サブ孔43hは、互いにつながっている。
【0056】
主孔41hの横断面形状は、矩形状である。第一サブ孔42hの横断面形状は、扁平な矩形状である。第二サブ孔43hの横断面形状も、扁平な矩形状である。ここでの矩形状には、上述のように幾何学的な矩形はもちろん、矩形の角部を面取りにより丸められたものも含まれる。矩形は長方形および正方形を含む。
【0057】
前面11は、方向Wと直交する主孔41hの内面41fで成形される。後面12は、方向Wと直交する主孔41hの内面41bで成形される。第一前面21は、方向Wと直交する第一サブ孔42hの内面42fで成形される。第一後面22は、方向Wと直交する第一サブ孔42hの内面42bで成形される。第二前面31は、方向Wと直交する第二サブ孔43hの内面43fで成形される。第二後面32は、方向Wと直交する第二サブ孔43hの内面43bで成形される。第一端面25は、第一サブ孔42hにおける方向Dと直交する端面42eで成形される。第二端面35は、第二サブ孔43hにおける方向Dと直交する端面43eで成形される。
【0058】
図3に示す一例では、主孔41h、第一サブ孔42hおよび第二サブ孔43hそれぞれの奥行は、主孔41hが最も大きく、次いで第一サブ孔42hが大きく、第二サブ孔43hが最も小さい。この一例では、主孔41h、第一サブ孔42hおよび第二サブ孔43hそれぞれの幅は、第一サブ孔42hが最も大きく、次いで第二サブ孔43hが大きく、主孔41hが最も小さい。図3に示す一例では、ダイ孔40hの横断面形状はH状である。通常、主孔41hの奥行は、第一サブ孔42hおよび第二サブ孔43hの奥行に比べて大きい。主孔41h、第一サブ孔42hおよび第二サブ孔43hの奥行および幅は、この寸法関係に制約されることなく任意に選択できる。
【0059】
図3に示す一例では、主孔41hに対して方向Wの両側に第一サブ孔42hが突出している。主孔41hに対して方向Wの両側に第二サブ孔43hが突出している。但し、第一サブ孔42hは主孔41hに対して方向Wにおける片側のみに突出していてもよい。第二サブ孔43hは主孔41hに対して方向Wにおける片側のみに突出していてもよい。
【0060】
(上パンチ)
上パンチ50は、圧粉体1に対して上下方向に駆動可能である。図6に示すように、上パンチ50は、メイン上パンチ51、第一上パンチ52、および第二上パンチ53を備える。メイン上パンチ51は、主孔41hに嵌められる。第一上パンチ52は、第一サブ孔42hに嵌められる。第二上パンチ53は、第二サブ孔43hに嵌められる。メイン上パンチ51の形状および寸法は、主孔41hの形状および寸法に対応している。第一上パンチの形状および寸法は、第一サブ孔42hの形状および寸法に対応している。第二上パンチ53の形状および寸法は、第二サブ孔43hの形状および寸法に対応している。メイン上パンチ51は最も下方に突出し、順次、第二上パンチ53、第一上パンチ52が下方に突出する。メイン上パンチ51,第一上パンチ52,第二上パンチ53の下方への突出量により、第一突部20Fおよび第二突部30Fのボディ10からの突出長さを調整できる。
【0061】
上パンチ50は、メイン下面51b、第一サブ下面52b、および第二サブ下面53bを有する。メイン上パンチ51は、メイン下面51bを有する。図4に示すように、メイン下面51bは、ボディ10の左側面14を成形する。第一上パンチ52は第一サブ下面52bを有する。図5に示すように、第一サブ下面52bは、第一左側面24を成形する。第二上パンチ53は、第二サブ下面53bを有する。図6に示すように、第二サブ下面53bは、第二左側面34を成形する。メイン下面51bは、左側面14に対応した傾斜面で構成されている。第一サブ下面52bは、第一左側面24に対応した傾斜面で構成されている。第二サブ下面53bは、第二左側面34に対応した傾斜面で構成されている。これらの傾斜面は方向Wに対して非直交に交差するように配置される。これらの傾斜面における方向Wの両端部の少なくとも片端部には、方向Wに沿った面を有していてもよい。上パンチ50の傾斜された下面と上パンチ50の軸に沿った面とで構成される角部が鋭角にならず、上パンチ50の損傷を低減できる。
【0062】
本例で用いられるメイン上パンチ51、第一上パンチ52、および第二上パンチ53は、全て一体に構成されている。メイン上パンチ51、第一上パンチ52、および第二上パンチ53から選択される二つのパンチを一体にし、選択されなかった一つのパンチを一体化された二つのパンチとは独立したパンチとしてもよい。特に、左側面14と第一左側面24との段差、および右側面13と第二右側面33との段差が大きい場合には、メイン上パンチ51と第一上パンチ52を別のパンチとしてもよい。あるいは、メイン上パンチ51と第二上パンチ53とを別のパンチにしてもよい。上パンチ50を複数のパンチに分ける場合の複数の境界線は、図6に二点鎖線で示される。
【0063】
(下パンチ)
下パンチ60は、圧粉体1に対して上下方向に駆動可能である。図6に示すように、下パンチ60は、メイン下パンチ61、第一下パンチ62、および第二下パンチ63を備える。メイン下パンチ61は、主孔41hに嵌められる。第一下パンチ62は、第一サブ孔42hに嵌められる。第二下パンチ63は、第二サブ孔43hに嵌められる。メイン下パンチ61の形状および寸法は、主孔41hの形状および寸法に対応している。第一下パンチ62の形状および寸法は、第一サブ孔42hの形状および寸法に対応している。第二下パンチ63の形状および寸法は、第二サブ孔43hの形状および寸法に対応している。メイン下パンチ61は最も上方に突出する。順次、第二下パンチ63、第一下パンチ62が上方に突出する。メイン下パンチ61、第一下パンチ62、および第二下パンチ63の上方への突出量により、第一突部20Fおよび第二突部30Fのボディ10からの突出長さを調整できる。
【0064】
下パンチ60は、メイン上面61t、第一サブ上面62t、および第二サブ上面63tを有する。メイン下パンチ61は、メイン上面61tを有する。図4に示すように、メイン上面61tはボディ10の右側面13を成形する。第一下パンチ62は第一サブ上面62tを有する。図5に示すように、第一サブ上面62tは、第一右側面23を成形する。第二下パンチ63は第二サブ上面63tを有する。図6に示すように、第二サブ上面63tは、第二右側面33を成形する。メイン上面61tは、右側面13に対応した傾斜面で構成されている。第一サブ上面62tは、第一右側面23に対応した傾斜面で構成されている。第二サブ上面63tは、第二右側面33に対応した傾斜面で構成されている。これらの傾斜面は方向Wに対して非直交に交差するように配置される面である。これらの傾斜面における方向Wの両端部の少なくとも片端部には、方向Wに沿った面を有していてもよい。下パンチ60の傾斜された上面と下パンチ60の軸に沿った面とで構成される角部が鋭角にならず、下パンチ60の損傷を低減できる。
【0065】
本例で用いられるメイン下パンチ61、第一下パンチ62、および第二下パンチ63は、全て一体に構成されている。メイン下パンチ61、第一下パンチ62、および第二下パンチ63から選択される二つのパンチを一体にし、選択されなかった一つのパンチを一体化された二つのパンチとは独立したパンチとしてもよい。特に、左側面14と第一左側面24との段差、および右側面13と第二右側面33との段差が大きい場合には、メイン下パンチ61と第一下パンチ62を別のパンチとしてもよい。あるいは、メイン下パンチ61と第二下パンチ63とを別のパンチにしてもよい。下パンチ60を複数のパンチに分ける場合の複数の境界線は、図6に二点鎖線で示される。
【0066】
下パンチ60は上パンチ50と同じ幅および奥行を有する。メイン下パンチ61はメイン上パンチ51と同じ幅および奥行を有する。第一下パンチ62は第一上パンチ52と同じ幅および奥行を有する。第二下パンチ63は第二上パンチ53と同じ幅および奥行を有する。成形時に下パンチ60が圧粉体1を局所的に押圧することがないので、圧粉体1にせん断応力が作用することを抑制できる。
【0067】
(製造方法の各工程)
上述の圧粉体1は、充填工程と成形工程と脱型工程とを備える圧粉体1の製造方法により得られる。
【0068】
[充填工程]
充填工程は、ダイ40に設けられたダイ孔40hと下パンチ60とで構成された空間に粉末を充填する。粉末には、上述した軟磁性粉末や被覆軟磁性粉末が利用できる。粉末は、軟磁性粉末や被覆軟磁性粉末に加えて、バインダや潤滑剤を含んでもよい。ダイ孔40hの内周面には潤滑剤を塗布してもよい。
【0069】
[成形工程]
成形工程は、空間内の粉末を下パンチ60および上パンチ50で圧縮する。空間内の粉末を圧縮する方向は、圧粉体1の方向Yである。圧縮成形時の圧力が高いほど、相対密度の高い圧粉体1が製造される。上記圧力は、例えば、700MPa以上、更には980MPa以上としてもよい。
【0070】
[脱型工程]
脱型工程は、ダイ40と上パンチ50および下パンチ60とを相対的に上下に移動させることで、ダイ孔40hから圧粉体1を抜き出す。この際、下パンチ60が圧粉体1を局所的に押圧することがないので、脱型時に圧粉体1にせん断応力が作用することを抑制できる。その結果、圧粉体1に欠けや割れといった損傷が生じることを低減できる。
【0071】
[その他の工程]
脱型工程後、必要に応じて圧粉体1に熱処理を施してもよい。例えば、熱処理によって、圧粉体1の歪みを除去することで、低損失な圧粉体1を製造できる。または、例えば、熱処理によって、バインダや潤滑剤を除去してもよい。粉末が上述の被覆軟磁性粒子を含む場合、熱処理温度は、例えば絶縁被覆の分解温度以下とすればよい。
【0072】
《実施形態2》
〔ステータコアの製造方法〕
主に図7を参照して、実施形態2に係るステータコア70の製造方法を説明する。本実施形態のステータコア70の製造には、環状に配置される複数の圧粉体1を用いる。複数の圧粉体1の各々は、実施形態1の圧粉体の製造方法により得られた圧粉体1である。ステータコア70を製造するには、複数の圧粉体1のうち、第一の圧粉体1aの第一右側面23と第二の圧粉体1bの第一左側面24とを接触させる。隣り合う複数の圧粉体1について、第一右側面23と第一左側面24との接触を繰り返す。この繰り返しにより、複数の圧粉体1が環状に組み合わされ、ステータコア70が容易に得られる。ステータコア70は、図8に示すDS/SR形態のアキシャルギャップモータ9に用いられる。
【0073】
各圧粉体1の第一端面25と第二端面35との間の長さのばらつきは、0.1mm以下であってもよい。第一端面25と第二端面35との間の長さとは、方向Zに沿った第一端面25と第二端面35との間の長さの最大値である。
【0074】
第一端面25と第二端面35との間の長さのばらつきが、0.1mm以下であれば、上記長さのばらつきが非常に小さい。第一端面25と第二端面35との間の長さのばらつきが0.1mm以下であるステータコア70を用いることにより、騒音や振動の小さいアキシャルギャップモータ9を構築できる。その理由は、次の通りである。図8に示すように、アキシャルギャップモータ9は、ステータ7とロータ90とが向かい合うように配置されている。ステータコア70の上記長さのばらつきが小さいと、ステータ7とロータ90との間隔のばらつきが小さくなる。上記間隔のばらつきが小さいことで、トルクリップルが小さくなる。トルクリップルが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。上記長さのばらつきは、次のようにして求める。各圧粉体1において、第一端面25から第二端面35までの長さを測定する。この長さは、圧粉体1の方向Zに沿った最大長さとする。複数の圧粉体1の各々における上記長さの最大値と最小値との差を算出する。この差を上記長さのばらつきとする。第一端面25と第二端面35との間の長さのばらつきは、0.05mm以下としてもよく、0.01mm以下としてもよい。第一端面25と第二端面35との間の長さは、マイクロゲージを用いて3点以上測定した値の平均である。
【0075】
《圧粉体を用いたアキシャルギャップモータA》
図8を参照して、圧粉体1を用いたアキシャルギャップモータ9を説明する。図8は、アキシャルギャップモータ9の回転軸91に平行な平面であり、かつステータコアの軸を含む平面で切断した断面図である。この点は、後述する図9のアキシャルギャップモータ9aでも同様である。アキシャルギャップモータ9は、一つのロータ90と二つのステータ7とを備えているDS/SR形態である。アキシャルギャップモータ9は、ロータ90とステータ7とが軸に沿った方向にて向かい合って配置されている。一つのロータ90が二つのステータ7で挟まれるように組み付けられている。各ステータ7は、複数の圧粉体1と複数のコイル80を備える。複数の圧粉体1は、環状に配置される。複数のコイル80それぞれは、各圧粉体1のボディ10に巻回される。コイル80は例えば銅等の良導体を導体線とする巻線が巻回されたものである。各ステータ7には、上述のステータコア70が利用できる。アキシャルギャップモータ9は、モータまたは発電機に利用できる。アキシャルギャップモータ9は、ケース92を備えている。
【0076】
ケース92は、ステータ7およびロータ90を収納する円柱状の内部空間を有している。ケース92は、円筒部921と二つの板部922とを備えている。円筒部921は、ステータ7およびロータ90の外周を囲んでいる。円筒部921の両端にそれぞれ板部922が配置されている。二つの板部922は、ステータ7およびロータ90を表裏から挟むように円筒部921の両端面に固定されている。両板部922は、その中心部に貫通孔を備えている。貫通孔には軸受け93が設けられている。軸受け93を介して回転軸91が貫通孔に挿入されている。回転軸91は、ケース92内を貫通している。
【0077】
ロータ90は、磁石95とロータ本体(図示せず)とを備えている。ロータ90は、平板状の部材である。磁石95の数は、複数でもよいし、1枚でもよい。磁石95の数が複数である場合、具体的な磁石95の数は圧粉体1の数と同数としてもよい。複数の磁石95は、ロータ90の軸の回りに等間隔に配置されている。本実施形態では、各磁石95は、各圧粉体1における第二端面35の平面形状に対応した平面形状を有している平板状である。各磁石95は、各ステータ7に向かって凸状面を有する凸レンズ状であってもよい。磁石95の数が1枚である場合、磁石95の形状は円環状である。1枚の磁石95は、S極とN極とが軸の回りに交互に配置されている。ロータ本体は、複数の磁石95を支持している。ロータ本体は、円環状の部材である。ロータ本体は、回転軸91によって回転可能に支持されている。各磁石95は、ロータ本体の軸の周り等間隔に配置されている。各磁石95は、回転軸91の軸に沿った方向に着磁される。ロータ本体の軸の周りに隣り合う磁石95の磁化方向は互いに逆である。ステータ7で発生される回転磁界によって磁石95が各圧粉体1と吸引と反発を繰り返すことでロータ90が回転する。
【0078】
ステータ7は、各圧粉体1における第一板部20が各板部922と向き合うように配置されている。第二板部30の第二端面35はロータ90の磁石95に向かい合うように配置されている。ロータ90が回転すると、各圧粉体1における第二端面35は、回転する磁石95からの磁束を受ける。各圧粉体1における第二端面35が凸状に構成されていれば、アキシャルギャップモータ9の騒音や振動を低減できる。その理由は、次の通りである。各圧粉体1の第二端面35が凸状に構成されていることで、各圧粉体1が受ける磁石95の磁束の急激な変化が抑制され易い。そのため、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。
【0079】
《圧粉体を用いたアキシャルギャップモータB》
図9を参照して、アキシャルギャップモータ9aを説明する。アキシャルギャップモータ9aは、主に、二つのロータ90aと一つのステータ7aとを備えているSS/DR形態である点が、図8のアキシャルギャップモータ9と相違する。アキシャルギャップモータ9aでは、ロータ90aとステータ7aとが軸に沿った方向に向かい合って配置されている。一つのステータ7aが二つのロータ90aで挟まれるように組み付けられている。以下の説明は、図8のアキシャルギャップモータ9との相違点を中心に行う。図8のアキシャルギャップモータ9と同様の構成の説明は省略する。
【0080】
各ロータ90aは、ロータ本体(図示せず)と、複数の磁石95と、バックヨーク98とを備えている。ロータ本体と複数の磁石95とは、上述の通りである。バックヨーク98は、ロータ90aと板部922との間に設けられている。バックヨーク98は、平板状の部材である。バックヨーク98は、上述した圧粉体1と同じ組成である。または、バックヨーク98は、積層鋼板で構成されている。
【0081】
ステータ7aは、環状に配置される複数の圧粉体1cと、各圧粉体1cのボディ10に巻回されるコイル80と、複数の圧粉体1cを保持する支持部材とを備えている。支持部材の図示は省略する。図9では簡略化しているが、各圧粉体1cでは第一板部20aと第二板部30aの構成が同じである。各圧粉体1cは、第一板部20aにおける第一突部20Fの突出量と、第二板部30aにおける第二突部30Fの突出量とが同じである。コイル80は、上述した図8のアキシャルギャップモータ9に示した通りである。支持部材は、隣り合う複数の圧粉体1cの間の間隔が等しくとなるように複数の圧粉体1cを保持している。この支持部材によって、隣り合う複数の圧粉体1cが互いに接触しない。
【0082】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、アキシャルギャップモータは、一つのロータと一つのステータとを備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0083】
1、1c 圧粉体
1a 第一の圧粉体
1b 第二の圧粉体
10 ボディ
11 前面、12 後面、13 右側面、14 左側面
20、20a 第一板部
21 第一前面、22 第一後面、23 第一右側面、24 第一左側面
25 第一端面、20F 第一突部
30、30a 第二板部
31 第二前面、32 第二後面、33 第二右側面、34 第二左側面
35 第二端面、30F 第二突部
4 金型
40 ダイ
40h ダイ孔、41h 主孔、42h 第一サブ孔、43h 第二サブ孔
41f、41b、42f、42b、43f、43b 内面
42e、43e 端面
50 上パンチ
51 メイン上パンチ、52 第一上パンチ、53 第二上パンチ
51b メイン下面、52b 第一サブ下面、53b 第二サブ下面
60 下パンチ
61 メイン下パンチ、62 第一下パンチ、63 第二下パンチ
61t メイン上面、62t 第一サブ上面、63t 第二サブ上面
7、7a ステータ、70 ステータコア、80 コイル
9、9a アキシャルギャップモータ
90a ロータ、91 回転軸、92 ケース
921 円筒部、922 板部 93 軸受け、95 磁石、98 バックヨーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9