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特開2024-125244取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125244
(43)【公開日】2024-09-17
(54)【発明の名称】取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20230101AFI20240909BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033268
(22)【出願日】2023-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】523013352
【氏名又は名称】スペースキャンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】藤川 英士
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB54
5L049BB54
(57)【要約】
【課題】 取引に際して当事者間で交わされる意思表示を、ユーザが設定したルールに従ってすることが可能な取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラムを提供する。
【解決手段】 複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引を管理する取引管理装置1であって、取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録部11と、二者のうち一方から、意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付部12と、意思表示受付部12に受け付けられた意思表示を、二者のうち他方に送信する意思表示送信部13とを備え、意思表示ルール登録部11が、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、候補の中からユーザが選択したものを意思表示ルールとして設定し登録する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引を管理する取引管理装置であって、
取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録部と、
前記二者のうち一方から、前記意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付部と、
前記意思表示受付部に受け付けられた前記意思表示を、前記二者のうち他方に送信する意思表示送信部とを備え、
前記意思表示ルール登録部が、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、前記候補の中から当該ユーザが選択したものを前記意思表示ルールとして設定し登録する
ことを特徴とする取引管理装置。
【請求項2】
前記候補が、取引相手に文書を送信することで意思表示をする文書方式と、取引相手に承諾の旨を通知することで意思表示をする通知方式とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の取引管理装置。
【請求項3】
前記意思表示ルールが、前記文書方式における前記文書の書式を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の取引管理装置。
【請求項4】
意思表示の方式として前記文書方式が選択されている取引の段階において、前記意思表示受付部が、前記二者のうち前記一方に前記書式に沿った前記文書を提示し当該文書の送信を受け付け、
意思表示の方式として前記通知方式が選択されている取引の段階において、前記意思表示受付部が、前記二者のうち前記一方が承諾の旨を通知するのを待つ
ことを特徴とする請求項3に記載の取引管理装置。
【請求項5】
前記意思表示ルール登録部が、ユーザが複数の前記意思表示ルールを設定し登録するのを受け付け、
ユーザが、どの取引相手にどの前記意思表示ルールを適用するかを、適用ルールとして設定し登録するのを受け付ける適用ルール登録部を更に備え、
取引の当事者に応じて取引に適用される前記意思表示ルールが自動的に選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の取引管理装置。
【請求項6】
複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引をコンピュータが管理する取引管理方法であって、
取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録ステップと、
前記二者のうち一方から、前記意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付ステップと、
前記意思表示受付ステップで受け付けられた前記意思表示を、前記二者のうち他方に送信する意思表示送信ステップとを備え、
前記意思表示ルール登録ステップにおいて、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、前記候補の中から当該ユーザが選択したものを前記意思表示ルールとして設定し登録する
ことを特徴とする取引管理方法。
【請求項7】
複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引をコンピュータに管理させる取引管理プログラムであって、
取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録ステップと、
前記二者のうち一方から、前記意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付ステップと、
前記意思表示受付ステップで受け付けられた前記意思表示を、前記二者のうち他方に送信する意思表示送信ステップとをコンピュータに実行させ、
前記意思表示ルール登録ステップにおいて、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、前記候補の中から当該ユーザが選択したものを前記意思表示ルールとして設定し登録する
ことを特徴とする取引管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ間で行われる取引を管理する取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
事業者の間での取引は、その取引の各段階(見積段階、受発注段階、請求段階等)において、当事者同士が意思表示を交わしていき、両者の意思表示が合致すると次の段階に移行していくことで進行する。従来から、取引に際しての意思表示の手法として、書面の交付、電話、FAX、電子メール等が使用されてきた。しかし意思表示の媒体が混在すると業務効率が上がらないという問題があった。
【0003】
一方、事業者間取引を効率化するためのツールとして、取引データをオンラインで交換するEDI(Electromic Data Interchange)という仕組みが知られている。EDIでは、参加する事業者が統一のルールの下で情報を交換するため、取引における業務効率が高いというメリットが生まれる。しかし、事業者はそれぞれ独自のルールを保有しているため、EDIを導入するには自社のルールを変更する必要がある。そのため、EDIの導入には一般的に困難を伴う。
【0004】
その一方で、取引データを取引の両当事者が共有できる情報処理装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置によれば、取引データごとに取引が管理されることで取引の両当事者が容易にアクセスでき、取引データを共同利用することができる。しかしこの装置を使用する場合も、取引の両当事者はこの装置が規定する取引のルールに従う必要があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-22345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を鑑みて、本発明は、取引に際して当事者間で交わされる意思表示を、ユーザが設定したルールに従ってすることが可能な取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る取引管理装置は、複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引を管理する取引管理装置であって、取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録部と、前記二者のうち一方から、前記意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付部と、前記意思表示受付部に受け付けられた前記意思表示を、前記二者のうち他方に送信する意思表示送信部とを備え、前記意思表示ルール登録部が、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、前記候補の中から当該ユーザが選択したものを前記意思表示ルールとして設定し登録することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、取引に際して当事者間で交わされる意思表示を、ユーザが設定したルールに従ってすることが可能な取引管理装置を提供することができる。
【0009】
本発明に係る他の取引管理装置は、前記候補が、取引相手に文書を送信することで意思表示をする文書方式と、取引相手に承諾の旨を通知することで意思表示をする通知方式とを含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、意思表示の方式として文書を送信する方式や、承諾の旨を通知する方式を選択することが可能な取引管理装置を提供することができる。
【0011】
本発明に係る他の取引管理装置は、前記意思表示ルールが、前記文書方式における前記文書の書式を含むことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ユーザが設定した書式の文書により意思表示をすることが可能な取引管理装置を提供することができる。
【0013】
本発明に係る他の取引管理装置は、意思表示の方式として前記文書方式が選択されている取引の段階において、前記意思表示受付部が、前記二者のうち前記一方に前記書式に沿った前記文書を提示し当該文書の編集を受け付け、意思表示の方式として前記通知方式が選択されている取引の段階において、前記意思表示受付部が、前記二者のうち前記一方が承諾の旨を通知するのを待つことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、取引の各段階において当事者が意思表示ルールに従って容易に意思表示することが可能な取引管理装置を提供することができる。
【0015】
本発明に係る他の取引管理装置は、前記意思表示ルール登録部が、ユーザが複数の前記意思表示ルールを設定し登録するのを受け付け、ユーザが、どの取引相手にどの前記意思表示ルールを適用するかを、適用ルールとして設定し登録するのを受け付ける適用ルール登録部を更に備え、取引の当事者に応じて取引に適用される前記意思表示ルールが自動的に選択されることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、取引の当事者が誰であるのかに応じて、適用ルールにのっとって意思表示ルールが自動的に取引に適用されるような取引管理装置を提供することができる。
【0017】
本発明に係る取引管理方法は、複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引をコンピュータが管理する取引管理方法であって、取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録ステップと、前記二者のうち一方から、前記意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付ステップと、前記意思表示受付ステップで受け付けられた前記意思表示を、前記二者のうち他方に送信する意思表示送信ステップとを備え、前記意思表示ルール登録ステップにおいて、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、前記候補の中から当該ユーザが選択したものを前記意思表示ルールとして設定し登録することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る取引管理プログラムは、複数のユーザの中の任意の二者の間で意思表示を交わしながら行われる取引をコンピュータに管理させる取引管理プログラムであって、取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し登録する意思表示ルール登録ステップと、前記二者のうち一方から、前記意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける意思表示受付ステップと、前記意思表示受付ステップで受け付けられた前記意思表示を、前記二者のうち他方に送信する意思表示送信ステップとをコンピュータに実行させ、前記意思表示ルール登録ステップにおいて、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、前記候補の中から当該ユーザが選択したものを前記意思表示ルールとして設定し登録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、取引に際して当事者間で交わされる意思表示を、ユーザが設定したルールに従ってすることが可能な取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る取引管理装置の主要構成図である。
図2】本発明に係る取引管理装置において、意思表示ルールを設定するプロセスを示す図である。
図3】本発明に係る取引管理装置において、見積段階での受注側の意思表示の方式を設定する画面を示す図である。
図4】本発明に係る取引管理装置において、受発注段階での発注側の意思表示の方式を設定する画面を示す図である。
図5】本発明に係る取引管理装置において、受発注段階での発注側の意思表示をする画面を示す図であって、(a)は通知方式での意思表示の図であり、(b)は文書方式での意思表示の図である。
図6】本発明に係る取引管理装置の記憶部に記憶されるテーブルの図であって、(a)は意思表示ルールデータ記憶部のテーブルであり、(b)は取引データ記憶部のテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を適用した取引管理装置、取引管理方法及び取引管理プログラムの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0022】
本発明に係る取引管理装置について、図1~6に基づき説明する。図1は、本発明に係る取引管理装置の主要構成図である。図2は、本発明に係る取引管理装置において、意思表示ルールを設定するプロセスを示す図である。図3は、本発明に係る取引管理装置において、見積段階での受注側の意思表示の方式を設定する画面を示す図である。図4は、本発明に係る取引管理装置において、受発注段階での発注側の意思表示の方式を設定する画面を示す図である。図5は、本発明に係る取引管理装置において、受発注段階での発注側の意思表示をする画面を示す図であって、(a)は通知方式での意思表示の図であり、(b)は文書方式での意思表示の図である。図6は、本発明に係る取引管理装置の記憶部に記憶されるテーブルの図であって、(a)は意思表示ルールデータ記憶部のテーブルであり、(b)は取引データ記憶部のテーブルである。
【0023】
まず、図1に基づき、本発明に係る取引管理装置1が構成する取引管理システム100について説明する。取引管理システム100は、取引管理装置1、取引管理装置1と通信可能に接続されている通信網40、通信網40に通信可能に接続されている複数のクライアント装置50,・・・,50から構成されている。取引管理装置1はコンピュータであり、クライアント装置50に対するサーバ装置として機能し、互いに通信可能に構成されている。
【0024】
通信網40はコンピュータが通信を行うための有線、無線を問わないネットワークであり、インターネット、イントラネット等を含む。クライアント装置50は、ユーザが取引管理装置1にアクセスするための端末装置であり、デスクトップPC、ラップトップPC、タブレット端末、スマートフォン等のコンピュータを含む。取引管理システム100において取引管理装置1は、クライアント装置50及び通信網40を介してアクセスする複数のユーザの中の、任意の二者(発注側ユーザ及び受注側ユーザ)の間で意思表示を交わしながら行われる取引を管理する。発注側ユーザ及び受注側ユーザは、いずれもクライアント装置50を使って意思表示をする。
【0025】
次に取引管理装置1について説明する。取引管理装置1は、主たる構成要素として、制御部10、記憶部20及び通信部30を有する。制御部10は、記憶部20に記憶されているプログラムを実行することで取引管理装置1全体の動作を制御するプロセッサである。制御部10が有する機能として、意思表示ルール登録部11、意思表示受付部12、意思表示送信部13及び適用ルール登録部14を有する。
【0026】
記憶部20は、制御部10で実行する機能のために必要なプログラムやデータを記憶する、メモリやストレージ等から構成されている。また記憶部20には、機能の実行により生成されたデータやクライアント装置50との通信ログも記憶される。取引管理装置1により実現される後述の取引管理方法は、取引管理プログラムとして記憶部20に記憶されている。通信部30は、通信網40を介してクライアント装置50と通信を行うためのインターフェイスである。
【0027】
制御部10において、意思表示ルール登録部11は、ユーザの間で行われる取引について、その取引の各段階における意思表示の方式を意思表示ルールとして設定し、記憶部20に登録する。また制御部10において、適用ルール登録部14は、ユーザ毎に、どの取引相手に対してどの意思表示ルールを適用するかを適用ルールデータとして設定し、記憶部20に登録する。意思表示受付部12は、取引をするユーザから意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける。意思表示送信部13は、意思表示受付部12で受け付けられたユーザの意思表示を、取引相手に、通信部30、通信網40及びクライアント装置50を介して送信する。
【0028】
<意思表示ルールの設定登録>
次に、意思表示ルール登録部11によって意思表示ルールが設定、登録されるプロセスについて、図2に基づき説明する。取引管理装置1で管理されるユーザ間の取引は、典型的な例としてP1~P6の六つの段階に分けて捉えられており、各段階を通して意思表示N1~N10が交わされる。まず各段階での意思表示について説明する。段階P1は見積段階であり、発注側ユーザが受注側ユーザに対して見積依頼という意思表示N1をし、これに対して受注側ユーザは見積という意思表示N2をする。
【0029】
見積段階P1の次の段階P2は、受発注段階である。意思表示N2を受けた発注側ユーザは、この見積を承諾した場合は、発注の意思表示N3をする。意思表示N3を受けた受注側ユーザは、注文請の意思表示N4を発注側ユーザに送る。そして次の段階P3に移行する。
【0030】
段階P3は納品段階であり、受注側ユーザが商品・役務を発注者に納品し、これが納品である旨の意思表示N5をする。これに対して発注側ユーザは、必要であれば意思表示N5を確かに受けた旨の意思表示N6に送る。そして次の段階P4に移行する。
【0031】
段階P4は検収段階であり、発注側ユーザが、もしも納品された商品・役務に不備を発見した場合には、不備報告となる意思表示N7を受注側ユーザに送り、是正を求める。納品された商品に不備を発見しなかった場合は、発注側ユーザは検収の意思表示N8を受注側ユーザに送る。そして次の段階P5に移行する。
【0032】
段階P5は請求段階であり、受注側ユーザは納品した商品・役務の対価を請求する旨の意思表示N9を発注側ユーザに送る。そして段階P6に移行する。
【0033】
段階P6は入金段階であり、請求の意思表示N9を受けた発注側ユーザは、受注側ユーザに請求額を支払うとともに、必要に応じて支払いを完了した旨の意思表示N10を受注者側ユーザに送る。支払いを受けた受注側ユーザは、対価を領収した旨の意思表示N11を発注者に送る。以上の六つの段階P1~P6を経て一つの取引が完了する。
【0034】
段階P1~P6を通じて取引の当事者間で交わされる意思表示N1~N11の方式は一種類だけではなく、文書により意思表示をする方式(文書方式)や、取引相手に承諾の旨のみを通知する方式(通知方式)等を採用することができる。また意思表示N1~N11の中には、取引によっては省略可能となる意思表示もあり得る。図2において破線で示した意思表示は、この取引管理装置1の上では省略される意思表示を示している。これらの意思表示は電話やEメール等の適宜な手段で伝達されればよい。
【0035】
図1に示す制御部10の意思表示ルール登録部11は、図2に示す段階P1~P6においてなされる意思表示N1~N11の方式を設定登録する。例えば、図2における意思表示N2は、受注側ユーザが見積書という形で発注側ユーザに意思表示をすることが一般的であり、その場合、意思表示ルール登録部11は意思表示N2を文書方式として設定登録する。さらにその場合は文書の書式についても設定登録する。また、意思表示N4は、発注の意思表示N3に対する応答であるので、文書方式を使用して注文請書として発注側ユーザに送ることもできるが、文書ではなく、注文を請けた旨のみの通知を送ることも可能である。また、意思表示N6は、納品を受けた後これが納品である旨の意思表示N5に対する応答であるが、これを省略するよう設定することも可能である。このように、意思表示ルール登録部11は、各段階における意思表示N1~N11の方式、書式、要否等の意思表示ルールを設定登録する。
【0036】
意思表示ルールは、ユーザが自社のやり方を踏まえて設定するのが好適であり、通常はユーザが自社に都合がよい意思表示ルールを一つ設定すればよい。そして他のユーザと取引をする際には、自社の原則的な意思表示ルールを適用すれば足りる。あるいは特定の他のユーザとの取引において、例外的な意思表示ルールを適用してもよい。
【0037】
意思表示ルールは、実際に他のユーザと取引を始める前に設定登録しておく。意思表示ルールの設定登録は、ユーザがクライアント装置50を介して取引管理装置1にアクセスした状態で、意思表示ルール登録部11によって実行される。すなわち、意思表示ルール登録部11は、クライアント装置50の画面に設定登録のための画面を表示し、ユーザはクライアント装置50に表示された画面に従って、意思表示ルールを決定していく。このプロセスを図3,4に基づき説明する。
【0038】
図3の画面60は、見積段階P1での意思表示N2(図2参照)の方式を設定する画面である。画面60の中の選択部61は、意思表示N2を「文書」(文書方式)にするか、「通知のみ」(通知方式)にするか、意思表示を「不要」とするか、いずれかを選択できるようになっている。ユーザはこの中のいずれかを選択してボタンをチェックする。選択部61でユーザが文書方式を選択した場合、その文書の書式を選ぶ選択部62が選択可能となる。ユーザはこの中のいずれかを選びボタンをチェックすることで、文書の書式が選択される。なお、選択部61で「通知のみ」、「不要」を選択した場合は、選択部62では選択不可能となる。選択部61,62を選択した後、下の「保存する」を押すと、設定した意思表示N2の方式が登録される。
【0039】
図4の画面70は、受発注段階P2での意思表示N3(図2参照)の方式を設定する画面である。画面70の中の選択部71は、意思表示N3の方式を「文書」(文書方式)にするか、「通知のみ」(通知方式)にするか、意思表示を「不要」とするか、いずれかを選択できるようになっている。ユーザはこの中のいずれかを選択してボタンをチェックする。選択部72では、その文書について、取引相手が自由に設定できるようにするか、ユーザが指定したもののみを受け入れるかを選択できる。ユーザが指定したもののみを受け入れることを選択した場合、選択部73でその文書の書式を選択することができる。なお、選択部71で「通知のみ」、「不要」を選択した場合は、選択部72,73では選択不可能となる。また選択部72で取引相手が自由に設定できるとした場合は、選択部73は設定不可能となる。選択部71,72,73を選択した後、下の「保存する」を押すと、設定した意思表示N3の方式が登録される。
【0040】
意思表示ルール登録部11は、上述と同様のプロセスで、図2における意思表示N1~N11について意思表示の方式を設定登録することができる。すなわち、意思表示ルール登録部11は、取引の各段階ごとの意思表示の方式として複数の候補をユーザに提示し、その候補の中からユーザが選択することにより、意思表示ルールが設定登録される。またその候補には、取引相手に文書を送信する文書方式と、取引相手に承諾の旨のみを通知する通知方式が含まれている。また文書方式を選択した場合、文書の書式をさらに選択して、意思表示ルールとして設定登録することができる。そして設定登録された意思表示ルールは、図1における記憶部20の意思表示ルールデータ記憶部21に、テーブルとして記憶される。
【0041】
なおユーザは、なるべく多くの取引相手に対して適用したい、原則的な意思表示ルールだけでなく、少数の例外的な取引相手に対して適用する、例外的な意思表示ルールも設定することができる。これらはいずれも意思表示ルールデータ記憶部21に記憶される。例外的な意思表示ルールは複数設定することも可能である。そしてユーザは、原則的あるいは例外的として複数設定した意思表示ルールについて、どの取引相手にどの意思表示ルールを適用するかを設定することができる。その設定登録は図1に示す制御部10の適用ルール登録部14によりなされる。取引相手と適用する意思表示ルールとの対応関係は、テーブル形式で、適用ルールデータ記憶部24に記憶される。
【0042】
<取引の実行>
次に、意思表示ルールを設定登録した後に、取引管理装置1を用いてユーザ同士で意思表示を交わしながら取引を実行するプロセスについて、図2及び図5を用いて説明する。ユーザ同士の間の取引には意思表示ルールが適用される。取引に適用される意思表示ルールは、取引の当事者が誰か、取引管理装置1を介して取引を開始したのがどちらか等に応じて適用ルールデータ記憶部24のテーブルに従って決定され、その意思表示ルールが自動的に適用されることになる。なお、図2に示す意思表示ルールでは、取引における最初の意思表示N1は発注側ユーザから受注側ユーザへの見積依頼であるが、これは取引管理装置1を介さず、電話やEメール等でなされることを意思表示ルールとして設定登録しており、そのため破線で示されている。
【0043】
受注側ユーザは、意思表示N1に対する応答の意思表示N2として、見積書を発注側ユーザに送る。そしてこの取引に適用されている意思表示ルールでは、この意思表示N2以降は取引管理装置1を使用するように設定されており、見積書は、図3で示した画面60で設定された書式のものが作成され、発注側ユーザに送られる。そして段階P2の受発注段階に移行し、発注側ユーザは意思表示N3を送る番となる。発注側ユーザはクライアント装置50を使用し、意思表示N3を送る。この時、図1に示す取引管理装置1の意思表示受付部12は、発注側ユーザが使用するクライアント装置50の画面に、図5に示す画面を表示させる。
【0044】
ここで、意思表示ルールにおいて意思表示N3が通知方式として設定されていた場合は、発注側ユーザが使用するクライアント装置50の画面には図5(a)に示す画面80が表示される。画面80には、受注側ユーザから送られた意思表示N2である見積書の概要が文字で記載されているとともに、見積書の見本画像であるサムネイルが配置されており、このサムネイルをクリックすると見積書の全文が表示されるようになっている。そして画面80の下部には、ユーザが意思表示N3を送るための選択部81が設けられている。発注側ユーザが見積書等を検討した結果、承諾するのであれば、選択部81の中の「注文を通知する」ボタンをクリックする。そうすると、発注する旨の意思表示N3が、図1に示す意思表示受付部12に受け付けられる。意思表示受付部12に受け付けられた、意思表示N3としての承諾の旨の通知は、意思表示送信部13によって、受注側ユーザに送信される。
【0045】
受注側ユーザが受信した意思表示N3としての承諾の旨の通知は、受注側ユーザが使用するクライアント装置50の、画面に表示される。またそれに加えて、受注側ユーザはクライアント装置50を用いて、承諾した旨が記載された書面を印刷することも可能である。なお、通知方式において通知されるのは承諾の旨という情報であり、この情報をどのような様式で両当事者の画面や書面に表示するかは、取引管理装置1の運営者が適宜に決めることができる。
【0046】
一方、意思表示ルールにおいて意思表示N3が文書方式として設定されていた場合は、発注側ユーザが使用するクライアント装置50の画面には図5(b)に示す画面90が表示される。画面90には、画面80と同様に、見積書の概要及び見積書のサムネイルが配置されている。画面90の下部には、ユーザが意思表示N3を送るための選択部91が設けられている。発注側ユーザが見積書等を検討した結果、承諾するのであれば、選択部91の中の「注文書を送信する」ボタンをクリックする。そうすると、注文書は発注する旨の意思表示N3として、図1に示す意思表示受付部12に受け付けられる。意思表示受付部12に受け付けられた、意思表示N3としての注文書は、意思表示送信部13によって、受注側ユーザに送信される。なお、文書方式においては、ユーザの責任において作成された文書が相手に送信され、その文書はユーザの名義で発行される。また、文書方式において送受信される文書データのフォーマットとして、任意のフォーマットが使用可能であり、例えばPDF(Portable Document Format)、HTML(HyperText Markup Language)、XML(eXtensible Markup Language)等が好適に使用される。
【0047】
図5(a),(b)に示すように、意思表示ルールとして意思表示N3が通知方式又は文書方式のいずれの方式で設定されていたとしても、意思表示受付部12は、意思表示ルールに沿った画面及び選択肢をクライアント装置50に表示し、ユーザから意思表示ルールに適合する意思表示を受け付ける。
【0048】
<記憶部のデータ>
次に図1及び図6に基づき、取引管理装置1の記憶部20に記憶されるデータについて説明する。意思表示ルールデータ記憶部21には、意思表示ルール登録部11で登録された全ての意思表示ルールが記憶されている。先述の通り、ユーザは原則的な意思表示ルールや例外的な意思表示ルール等、複数の意思表示ルールを設定することができ、その全ての意思表示ルールが、意思表示ルールデータ記憶部21に記憶されている。
【0049】
図6(a)に、意思表示ルールデータ記憶部21のテーブルT1が表されている。テーブルT1には、登録された意思表示ルールの数だけレコードが存在し、一つのレコードには、意思表示ルールのID、この意思表示ルールを作成したユーザの欄等がある。そしてその意思表示ルールの具体的な内容が部分Aに記載されており、ここには取引の各段階における意思表示N1~N11(図2参照)をどの方式で行うかが記載されている。また、文書方式が選択されている場合、その文書の書式(図示省略)も部分Aに記載される。
【0050】
次に取引データ記憶部22について説明する。取引データ記憶部22には、取引管理装置1で管理された全ての取引のデータが記憶される。図6(b)に、取引データ記憶部22のテーブルT2が表されている。テーブルT2には、取引管理装置1を使用し完了した取引及び現在進行中の取引の全てのレコードが存在し、一つのレコードには取引のID、発注側ユーザのID、受注側ユーザのID、その取引に適用される意思表示ルールのID、取引の金額等が含まれている。なお、取引管理装置1のユーザのデータはユーザデータ記憶部23に記憶されており、発注側ユーザのID、受注側ユーザのIDはユーザデータ記憶部23のテーブル(図示省略)で各ユーザと紐付けられている。また意思表示ルールのIDは、図6(a)に示した意思表示ルールデータ記憶部21のテーブルT1で、各意思表示ルールに紐付けられている。テーブルT2のレコードにはその他に、各意思表示がなされた日時、意思表示の内容、取引担当者及び責任者の氏名等のデータが適宜に含まれている。
【0051】
全ての取引データがテーブルT2として記憶されていることで、情報の検索や絞り込みを容易に行うことができる。例えば、各ユーザが現在進行中の取引を何件抱えており、それらが現在どの段階にあるか(見積段階に何件あるか、受発注段階に何件あるか)等の情報を得ることができる。また、各ユーザが、自身が関与する取引の情報をクライアント装置50を介して閲覧するように構成することも可能である。
【0052】
また先述の通り、記憶部20の適用ルールデータ記憶部24には、ユーザ毎に、どの取引相手にどの意思表示ルールを適用するかがテーブル形式(図示省略)で記憶されている。取引に適用される意思表示ルールは、適用ルールデータ記憶部24のテーブルに従って自動的に決定される。
【0053】
<変形例>
先述の実施形態は、図2に示すように、取引において意思表示を交わす段階を六段階とし、11回の意思表示をするよう設定していたが、これらの段階の数及び意思表示の回数は任意に設定することができる。また先述の実施形態では、意思表示ルールを設定するために、図3,4に示すような画面においてユーザが項目ごとに選択肢を選ぶよう構成されていたが、これに代えてユーザが直接入力したり、全ての選択肢が予め決められたコースをユーザが選択するよう構成することもできる。また先述の実施形態では、適用ルールデータ記憶部に記憶されたテーブルにのっとって、取引の当事者が誰であるか等により、取引に適用される意思表示ルールが自動的に決まっていたが、取引ごとに当事者が取引に適用される意思表示ルールを手動で決めることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 取引管理装置
10 制御部
11 意思表示ルール登録部
12 意思表示受付部
13 意思表示送信部
14 適用ルール登録部
20 記憶部
21 意思表示ルールデータ記憶部
22 取引データ記憶部
23 ユーザデータ記憶部
24 適用ルールデータ記憶部
30 通信部
40 通信網
50 クライアント装置
60,70,80,90 画面
61,62,71,72,73,81,91 選択部
100 取引管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6