(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125271
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】繊維製品類を再生利用するための方法およびプラント
(51)【国際特許分類】
D06B 5/24 20060101AFI20240910BHJP
D06M 11/36 20060101ALI20240910BHJP
D06B 19/00 20060101ALI20240910BHJP
D06B 5/22 20060101ALI20240910BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20240910BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
D06B5/24
D06M11/36 ZAB
D06B19/00 Z
D06B5/22
C08J11/16
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019865
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】23156251.3
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファティー コヌコウルー
(72)【発明者】
【氏名】ケナン ロヤン
(72)【発明者】
【氏名】アガミレズ ハーミトべリィ
(72)【発明者】
【氏名】セレフ アグズィカラ
(72)【発明者】
【氏名】グーカン カプラン
(72)【発明者】
【氏名】ギズデ オクテム
(72)【発明者】
【氏名】フセイン チナル
(72)【発明者】
【氏名】サリフ ドアナイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴシュ デデ
(72)【発明者】
【氏名】ハゼル ウズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】綿(またはセルロース系)繊維をそのまま、すなわち短繊維として糸の製造に使用するのに適した状態で回収することにより、廃棄ポリエステル-綿繊維製品類、布、衣服、糸および繊維を再生利用する、安全で、低コストで、簡単で、環境的にクリーンな方法を提供する再生利用方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維と綿繊維を含む廃棄ブレンド繊維製品類の処理方法は、制御された環境下でポリエステルを解重合して除去し、綿糸として再生利用するのに適した綿短繊維を含む処理繊維製品を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(4)と、好ましくは綿の短繊維(40)であるセルロース系繊維とを含む廃棄ブレンド繊維製品類(1)を再生利用する方法であって、塩基性水溶液中での前記ポリエステルの解重合を含む方法において、以下の工程:
a)一定量の前記繊維製品類を反応槽(10)に供給する工程;
b)一定量の塩基性解重合溶液(3)を、溶液の重量に対する繊維製品の重量の浴比が1/2~1/20の間となるように供給する工程;
c)前記一定量の解重合溶液(3)を前記繊維製品類(1)に通して循環させ、前記ポリエステル(4)を対応するモノマーに解重合させ、前記繊維製品類から前記ポリエステルモノマーを除去する工程;および
d)前記反応槽(10)から前記解重合溶液(3)を除去する工程、
を含み、
前記工程c)での前記解重合溶液の温度は101℃~160℃の範囲であり;
e)以って、前記溶液を前記繊維製品類に通して循環させて、実質的にポリエステル材料を含まないセルロース系短繊維、好ましくは綿短繊維(40)を含む処理繊維製品類(5)を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記解重合溶液はアルカリ性溶液であり、好ましくは、ボーメ度(°Be)が43~50°Beの範囲で、70g/L~500g/Lの水酸化ナトリウム溶液を含む溶液であり、より好ましくは、ボーメ度が48°Beで76g/L~120g/LのNaOH溶液を含む溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解重合溶液の浴比を、1/2~1/20の範囲とし、好ましくは1/5~1/8の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程c)における前記解重合溶液の温度は120~160℃の範囲であり、好ましくは130~140℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程c)における前記槽(10)内の圧力は、1.05bar~7.0barの範囲であり、好ましくは2.7bar~7.0barの範囲であり、より好ましくは2.7bar~5.5barの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程c)は、60分~240分の時間範囲で、好ましくは91分~240分の時間範囲で、より好ましくは100分~150分の時間範囲で、最も好ましくは120分実行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記解重合溶液(3)により、反応染色した前記繊維製品類(1)に存在する反応染料を加水分解し、および/またはインジゴ染色した前記繊維製品類からインジゴ染料の一部を分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NaOHと、好ましくは過酸化水素である酸化剤とを含む漂白液(30)を、前記槽(10)内の前記処理された繊維製品類を通して循環させることにより、前記工程e)の後に得られた湿潤処理された繊維製品類(5)を前記槽(10)内で漂白する工程をさらに含み、好ましくは、前記漂白液(30)は、前記漂白液の重量に対する廃棄繊維製品の重量で、1/2~1/20の範囲、より好ましくは1/7~1/9の範囲、最も好ましくは1/8の浴比を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維製品類は、前記溶液の流れの作用下において前記槽内で変位しないように前記槽を満たすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
好ましくは分散剤を含む洗浄液(80)によって処理された繊維製品類(5)を洗浄して残留TPA塩を除去する工程をさらに含み、前記洗浄液の重量に対する前記繊維製品類の重量の浴比を、1/2~1/20の範囲とし、好ましくは1/7~1/9の範囲ととし、より好ましくは1/8とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
好ましくは分散剤を含む洗浄液(80)によって処理された繊維製品類(5)を洗浄して残留TPA塩を除去する工程をさらに含み、前記洗浄液の重量に対する前記繊維製品類の重量の浴比を、1/2~1/20の範囲とし、好ましくは1/7~1/9の範囲ととし、より好ましくは1/8とすることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記解重合溶液が前記繊維製品類に供給されるサイクル数は、30~480サイクル/時間の範囲、好ましくは50~400サイクル/時間の範囲、より好ましくは60~300サイクル/時間の範囲、最も好ましくは70~300サイクル/時間の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記廃棄繊維製品類(1)は1種以上の蛍光増白剤を含み、前記方法は、前記解重合工程の前に、前記繊維製品類から前記蛍光増白剤を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維製品は、繊維、糸、布および衣服から選択され、好ましくは布および衣服から選択され、前記衣服は、ジッパー、ボタンおよびリベットを含む非繊維要素を任意に含み、前記非繊維要素は、前記方法が実施された後、前記衣服から取り外され、除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記解重合溶液、前記漂白液および前記洗浄液のいずれかが、その初期濃度に調整され、新しいバッチの廃棄ブレンド繊維製品類のその後の解重合、漂白または洗浄サイクルにおいて、1~100回、好ましくは10~100回、より好ましくは10~40回再使用されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の、ポリエステル繊維(4)およびセルロース系短繊維(40)を含む廃棄繊維製品類(1)の再生利用方法を実施するためのプラント(100)であって、
・前記廃棄繊維製品類(1)を収容するように構成された閉鎖可能な反応槽;
・解重合溶液(3)を収容する少なくとも1つのタンク(7)と、任意に、漂白液(30)および洗浄液(80)の少なくとも1つを収容する複数のタンク(7a,7b)の少なくとも1つ;
・前記解重合溶液(3)を前記解重合溶液タンク(7)から前記槽(10)に供給し、循環させるポンプ(8);および
・前記槽(10)内の前記解重合溶液(3)の温度を制御する手段(90;9a;9b)
を含むことを特徴とするプラント。
【請求項17】
前記槽内に前記繊維製品類(1)を収容するための濾過バスケット(6)を備え、前記バスケットは前記槽(10)から取り外し可能であり、好ましくは、前記槽は、前記繊維製品類を静止状態に維持するために前記バスケット(6)内に収容された少なくとも1つの有孔分離要素(60)を備えていることを特徴とする請求項16に記載のプラント。
【請求項18】
ポリエステル繊維と、好ましくは綿繊維であるセルロース系繊維とを含む衣服および布から選択される廃棄繊維製品類を再生利用する方法であって、前記衣服または布は、縫糸により縫い合わされた布地部分を有し、前記布地部分は、綿糸および/またはセルロース系糸を含み、好ましくは100%綿布部分であり、前記縫糸はポリエステル縫糸であり、塩基性水溶液中での前記ポリエステル糸の解重合を含む方法において、
a)一定量の前記繊維製品類を反応槽(10)に供給する工程;
b)一定量の前記塩基性解重合溶液を、溶液の重量に対する繊維製品の重量の浴比が1/2~1/20、好ましくは、1/4~1/8の間となるように供給する工程;
c)前記一定量の解重合溶液を前記繊維製品類に通して循環させ、前記ポリエステルを対応するモノマーに解重合させ、前記繊維製品から前記ポリエステルモノマーを除去する工程;および
d)前記反応槽から前記解重合溶液を除去する工程、
を含み、
前記工程c)での前記解重合溶液の温度は101℃~160℃の範囲であり、
前記繊維製品類は、静止した状態、すなわち静的な状態にあり、
前記溶液を前記衣服または布に通して循環させて、実質的にポリエステル材料を含まないセルロース系短繊維、好ましくは綿短繊維を含む処理衣服を得ることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記衣服は、ジッパー、ボタン、ラベルおよびリベットを含む非繊維要素を含み、前記非繊維要素は、前記方法が実施される間に、少なくとも部分的に前記衣服から取り外されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項2に記載の特徴および請求項4~15のいずれかに記載の特徴をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~15のいずれかの方法に従い、前記布に元々存在する前記ポリエステルを解重合する工程により得られるポリエステルフリー布であって、前記ポリエステルフリー布は、綿糸を含み、前記綿糸の各間に空隙が設けられていることを特徴とするポリエステルフリー布。
【請求項22】
前記綿糸の前記綿繊維は600~3500の重合度を有し、前記綿繊維は糸の製造に用いることができるものであることを特徴とする請求項21に記載の布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品類を再生利用するための方法およびプラントに関する。より詳しくは、本発明は、セルロース系短繊維およびポリエステルを含む繊維製品類を再生利用するための方法に関する。この方法により、ポリエステルブレンド繊維製品類、すなわち、ポリエステル長繊維またはポリエステル繊維とセルロース系短繊維、特に綿短繊維を含む布、衣服、糸、繊維等の繊維製品類から、ポリエステルを除去し、セルロース系短繊維を回収して再生利用することができる。
【0002】
本発明の方法に従って回収された綿繊維およびセルロース系繊維は、溶解して人工セルロース系繊維に再生することなく、糸製造用の短繊維として使用するのに適している。
【背景技術】
【0003】
廃棄繊維製品類、特に布並びに使用済みの衣服および衣料品の再生利用は、繊維産業における主要なターゲットとなっている。廃棄繊維製品類には、布、衣服および糸の製造工程で得られる布および糸又はフィラメントの断片等の消費前の布、欠陥布、使用済みまたは欠陥のある衣服および室内装飾材料から派生した布等の消費後の繊維製品類が含まれる。廃棄繊維製品類を再生利用するための新しく効率的なプロセスが盛んに研究されている。
【0004】
本発明の目的のひとつは、セルロース系繊維、特に糸の綿繊維を回収して再生利用すること、そしてブレンド布や繊維製品類、すなわち一般にポリコットンやポリエステル綿布として知られている布や繊維製品類に含まれるポリエステルを対応するモノマーとして回収することである。ポリコットン布には、セルロース短繊維とポリエステル長繊維または繊維を含む糸が含まれる。本願で定義されるブレンド布は、綿糸とポリエステル糸を含む糸および/またはポリエステルを含まない綿糸と、綿繊維を含まないポリエステル糸との組み合わせを含むことができる。糸は織られるか編まれて布地構造になる。本発明に従って加工された衣服は、ジッパー、リベット、ラベルなどのような、通常は金属またはプラスチック材料で作られた非布要素も含むことができる。
【0005】
ポリエステルを含む布を再生利用する方法は当該技術分野で知られている。出発モノマーであるテレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)を得るために、布中のポリエステル分の脱重合を含む方法がある。この種の既知の再生利用工程では、解重合溶液で処理する前に、布のプレカットまたは細断工程が必要である。最終製品にはセルロースパルプ、TPA、EGが含まれ、TPAとEGはポリエステルの製造やその他の用途に使用することができる。
【0006】
国際公開第2019/140245号(特許文献1)は、ポリコットン布帛を再生利用するための方法およびシステムを開示しており、そこでは、細断された布帛が、pH10~14の水溶液中で、温度105℃~190℃、圧力40~300psiの亜臨界条件下で、時間0~90分間処理される。ポリエステル成分はTPAとEGに解重合され、綿繊維はセルロースパルプに分解され、その後追加加工によって人工セルロース系繊維、すなわちレーヨン、ビスコース、リヨセル、酢酸セルロースなどの再生セルロース素材にリサイクルされる。
【0007】
公知のプロセスは、パルプの溶解およびいくつかの処理工程の後に、使用可能な再生セルロース繊維を得るために、解重合工程の前に布帛を破砕し、解重合工程の最後に得られたセルロースパルプを処理する等、コストと時間のかかる工程を含むという欠点がある。特に、本出願の実験セクションで論じるように、特許文献1の方法は、綿繊維の重合度の著しい損失(DP損失)をもたらし、このような損失は、既知の機械的プロセスによる綿糸中の綿繊維の再生利用の可能性に悪影響を及ぼす。さらに、特許文献1は、実施例7~8を参照して、ポリコットン布の小部分におけるポリエステルの完全な解重合が、触媒の使用を必要とし、このプロセスが、廃棄またはリサイクルが非常に困難な触媒含有溶液をもたらすか、または共溶媒としてMeOHの使用を必要とし、このプロセスが、ポリエステルの解重合後に布の綿繊維におけるDPの劇的な損失をもたらすことを教示している。
【0008】
さらなる問題は、例えば特許文献1によって教示されているように、衣服の既知の再生利用工程では、ジッパー、リベット、ラベル、ボタン、および同様の要素を有する衣服部分が、処理前に衣服から切り離されるため、衣服の一部のみしか再生利用することができないことである。一例として、リベットやジッパーを含むジーンズの上部は衣服から取り除かれ、脚の部分だけがリサイクルされる。この工程を踏むと、再生利用される衣服生地の割合が低くなり、さらに処理コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、ポリエステル-綿繊維製品類を再生利用する既知のプロセスの上述の欠点を解決し、綿(またはセルロース系)繊維をそのまま、すなわち短繊維として糸の製造に使用するのに適した状態で回収することにより、廃棄ポリエステル-綿繊維製品類、布、衣服、糸および繊維を再生利用する、安全で、低コストで、簡単で、環境的にクリーンな方法を提供する再生利用方法を提供することである。換言すると、本発明の目的は、綿繊維を機械的に糸に再生利用することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、廃棄ポリエステル-綿布に含まれる綿(またはセルロース系)短繊維から生じるセルロースパルプを処理する工程を省くことである。本発明のさらなる目的は、ジッパーや同様の非繊維要素を事前に取り除くことなく衣服を再生利用することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、独立請求項1および17による方法、ならびに独立請求項15によるプラントにより達成される。本発明の方法により得られる繊維製品類は、請求項20および21の対象である。本発明の好ましい態様は、それぞれ従属請求項に記載されている。
【0013】
この方法は、廃棄「ブレンド繊維製品類」、すなわち、いわゆる「ポリコットン」のようなポリエステルと綿の両方を含む繊維製品類、あるいはポリエステルと綿とは異なる他のセルロース系繊維を含む繊維製品類の再生利用を対象としている。通常、ポリエステルは長繊維の形態である。ポリエステルはまた、糸などのポリエステル短繊維の形態であってもよい。ポリエステルはまた、処理される衣服のパーツを縫い合わせるために使用される縫糸の形態であってもよい。貴重な綿分を再利用可能な形態で回収するという本発明の目的に鑑み、好ましくは、本発明による繊維製品中のポリエステルの量は、繊維製品の重量の1重量%~60重量%であり、より好ましくは、ポリエステルの量は4重量%~50重量%である。
【0014】
本発明の一実施形態では、この方法は「一体型衣服」の形態の衣服の再生利用に向けられている。「一体型」衣服という表現は、ここでは、上述したように、ボタン、リベット、ジッパーなどの非繊維要素を含む衣服を定義するために使用される。衣服の再生利用工程は、ブレンド繊維製品類で作られた、またはブレンド繊維製品類を含む衣服に向けられ、また、布が100%綿またはセルロース系繊維で作られ、ポリエステルが衣服のパーツを縫い合わせるための縫い糸または糸としてのみ存在する衣服にも向けられる。
【0015】
本出願人は、ポリエステル縫糸を有する衣服に本発明の方法を適用することにより、前記縫製線を溶解し、処理された衣類を切り離されたパーツにすることが可能であることを見出した。プロセス後に得られる切り離されたパーツには、例えばジーンズやズボンの場合、ポケットや脚などの部分や、工程終了時に衣服から剥離する非繊維部品(ボタン、ジッパー、リベットなど)が含まれる。従って、本発明の工程の後、非織物部品を処理された衣服から除去して、綿繊維(又はセルロース系繊維)からなる布からなる複数の処理された衣服のパーツを得ることができる。こうして得られた綿布は、当該技術分野でそれ自体知られている方法で、紡績や類似の工程で綿糸に再生するのに適した緩い綿繊維に加工することができる。
【0016】
用語「繊維製品類」は、布、衣服、糸、および繊維を指す。布は織物、編物、および不織布のいずれでもよい。衣服とは、Tシャツ、ズボン、ジーンズ、ジャケット、シャツ、スポーツウェア等、あらゆる衣料品を指す。実施形態において、衣服はそのままの状態でプロセスに使用されてもよい。すなわち、衣服は、ジッパー、リベット、ボタン(これらの要素は典型的には金属またはプラスチック製である)、およびラベルなどの非繊維要素を含んでもよい。例示的なポリコットン糸は、ポリエステルコアと綿短繊維を含む綿鞘を有するコアスパン糸である。ブレンド不織繊維製品類は、綿またはセルロース系基材上にポリエステル長繊維の不織布を含むことができる。
【0017】
用語「セルロース系繊維」は、ここでは綿繊維、綿誘導体繊維、改良綿の繊維、およびリネン繊維、亜麻繊維、ジュート繊維、麻繊維、ラミー繊維、ケナフ繊維、サイザル麻繊維、ヘネケン繊維などの糸に通常使用される他の繊維を定義している。再生利用される繊維製品中の綿およびセルロース系繊維は、一般に糸中の短繊維の形態である。ビスコースおよびその他の人工セルロース系繊維は、本出願におけるセルロース系繊維の定義に該当する。いずれの場合も、綿繊維またはセルロース系繊維は、パルプに還元されるのではなく、そのまま(たとえば糸の短繊維の原形のまま)回収される。一例として、綿の鞘とポリエステルの芯からなるポリコットンのコアスパン糸を本発明の方法に従って処理すると、最終的には、プロセス終了時に鞘のみが存在する糸となり、ポリエステルはプロセス中に解重合溶液によってTPAの二ナトリウム塩とEGに溶解している。
【0018】
用語「浴比」は、再生利用される繊維製品類の乾燥重量と溶液の重量との間の比を定義することを意図しており、ここで、本発明の方法の段階に従って、溶液は、解重合溶液、または漂白溶液、または以下の説明に記載されるように方法のさらなる工程で使用される洗浄溶液のいずれかである。
【0019】
用語「溶解する」または「溶解」は、ポリエステルに言及する場合、ポリエステルのモノマーへの解重合の結果を定義することを意図しており、これにより、ポリエステル長繊維または繊維は、本発明の方法の後、処理された繊維製品中に実質的にもはや存在しない。
【0020】
解重合溶液に関する用語「循環」は、溶液を、繊維製品類および繊維製品類が保持されている反応槽を通して強制的に流すことを定義することを意図している。流れは、好ましくは、溶液を繊維製品類および反応槽を通して反応槽に送り込むポンプによって生成される。溶液は反応槽を出て、その後再び反応槽に供給され、繊維製品類および反応槽を通って再び循環する。漂白液および洗浄液も、解重合液と同様に繊維製品類に数回循環させる。本発明の方法を実施するためのプラントは、通常、反応槽への入口と出口を含む流体回路を含む。
【0021】
繊維製品類は、静止した状態、すなわち静的な状態で反応槽内に保持される。用語「静止した」または「静的な」状態は、解重合溶液(または漂白溶液または洗浄溶液)が繊維製品類を通して供給される間、繊維製品類が反応槽に収容され、そこに保持されることを定義することを意図している。繊維製品類は、溶液と共に移動しないように、すなわち、溶液の流れの作用下で変位しないように、槽内を満たす。好ましい実施形態では、繊維製品類は槽内で圧縮される。繊維製品類が槽内を満たし、場合によっては槽内に押し込まれ圧縮されるという事実は、プロセスの生産性を大幅に向上させるという利点ももたらす。換言すると、例えば回転ドラムによる洗濯機のように、繊維製品類が解重合溶液内で撹拌または移動されるような実施形態は、本発明によるものではない。
【0022】
特に、本発明は、ポリエステル繊維と、好ましくは綿の短繊維であるセルロース系繊維とを含む廃棄ブレンド繊維製品類を再生利用する方法であって、塩基性水溶液中での前記ポリエステルの解重合を含む方法において、以下の工程:
a)一定量の前記繊維製品類を反応槽に供給する工程;
b)一定量の塩基性解重合溶液を、溶液の重量に対する繊維製品の重量の浴比が1/2~1/20の間となるように供給する工程;
c)前記一定量の解重合溶液を前記繊維製品類に通して循環させ、前記ポリエステルを対応するモノマーに解重合させ、前記繊維製品類から前記ポリエステルモノマーを除去する工程;および
d)前記反応槽から前記解重合溶液を除去する工程、
を含み、
前記工程c)での前記解重合溶液の温度は101℃~160℃の範囲であり;
e)以って、前記繊維製品類は静止した、すなわち、静的な状態にあり、前記溶液を前記繊維製品類に通して循環させて、実質的にポリエステル材料を含まないセルロース系短繊維、好ましくは綿短繊維を含む処理繊維製品類を得る方法に関する。
【0023】
有利なことに、この方法では、ポリエステルのエステル結合をそのモノマーであるテレフタル酸二ナトリウム塩(Na2TP)およびエチレングリコール(EG)に開裂させ、かつセルロース系短繊維の変質および解重合を劇的に減少させる反応条件下で、反応槽内に静止状態に維持された廃棄ブレンド繊維製品類のポリエステル繊維を解重合させるために、チャンバーに解重合溶液が供給される。
【0024】
図1、
図2、
図7から明らかなように、また以下に説明するように、解重合溶液の流れは、槽内に供給され、繊維製品類を通って槽から排出され、再び槽内に戻され、繊維製品類中に存在するポリエステルを解重合するために数回繊維製品類に通される。溶液を繊維製品類に通す回数、すなわちサイクル数は、処理される繊維製品中のポリエステルの量に合わせることができる。有利には、解重合溶液を繊維製品類に通して供給する回数(サイクル)は、30~480サイクル/時間、好ましくは50~400サイクル/時間、より好ましくは60~300サイクル/時間、最も好ましくは70~200サイクル/時間の範囲である。
【0025】
有利には、ポリエステル長繊維または繊維は解重合されるが、セルロース系繊維、例えば綿短繊維の劣化または変質(例えば重合度の低下)が最小化され、場合によっては回避されるような値まで、解重合溶液の温度は、密閉槽内で上げられ、それに対応して圧力も上げられる。
【0026】
有利には、工程c)において、特許請求された温度の選択された量の解重合溶液が、例えばポンプによって、槽内および布を通して、プロセスの工程c)の全長にわたって循環される。換言すると、廃棄ブレンド繊維製品類は、実質的に静的な状態に維持され、綿繊維またはセルロース系繊維をできるだけ無傷のまま維持しながら、前記溶液中のテレフタル酸二ナトリウム(Na2TP)またはテレフタル酸イオンまたはEGおよび前記溶液中の分解ポリエステルからの一層一般的な生成物の含有量を増加させるために、溶液を繊維製品類に繰り返し通す、すなわち循環させることによって、解重合溶液と数回接触させる。繊維製品類を静止状態又は静的状態に保つことと、繊維製品類に解重合溶液を循環させること、すなわち流すことを組み合わせることで、ポリエステルの完全な解重合が得られ、同時に綿布の解重合が大幅に減少することがわかった。
【0027】
有利には、静的な、すなわち静止した繊維製品類を通して穏やかな条件下で解重合溶液を循環させる、すなわち流すことの技術的効果は、セルロースポリマー鎖を分解から保護し、当該技術分野で公知の方法、例えば、新しい糸に紡糸する繊維を回収するために糸を機械的に処理する方法で、再生糸に加工するのに適した綿繊維およびセルロース系繊維を回収することにある。
【0028】
有利なことに、工程終了時には、綿または他のセルロース系繊維を含み、ポリエステル分解生成物、特にNa2TP、TPAおよびエチレングリコール(EG)を実質的に含まない処理布から、ポリエステル繊維/長繊維が(解重合によって)除去されている。本発明の方法で得られる処理された繊維製品類は、綿/セルロース系繊維を含み、典型的には糸の形態であり、当該技術分野で公知の方法で綿糸の再生利用工程に供することができる。こうして得られた綿繊維は、セルロース系繊維の重合度に応じて調整された紡績工程に使用することができる。
【0029】
有利なことに、処理された繊維製品類が、非繊維、例えば金属(またはプラスチック)部分(例えばボタン、リベット、ジッパー)を含む衣服である場合、本発明の工程によれば、このような衣服部分を縫い合わせるポリエステルの縫糸が解重合されるため、前記金属またはプラスチック要素は衣服から剥離され、衣服から除去することができ、場合によっては再生利用することができる。
【0030】
有利なことに、本発明の方法による処理後、綿糸(綿100%)からなる布で作られた衣服は、依然として非常に良好な機械的特性を備えた綿繊維の貴重な供給源となる。
【0031】
一態様によれば、解重合溶液はアルカリ溶液であり、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含むアルカリ溶液である。前記溶液は、好ましくは70g/L~500g/Lの範囲の量、より好ましくは76~120g/Lの範囲の量の、ボーメ度が48°Beに等しい水酸化ナトリウム溶液を含む。換言すると、解重合溶液中のNaOHの濃度は、33g/L~237g/LのNaOH、好ましくは36g/L~57g/LのNaOHの範囲である。
【0032】
可能な態様によれば、本方法で使用される解重合溶液の量は、処理される繊維製品類の量に応じて選択される。実施形態において、浴比は、1/2~1/20、好ましくは1/2~1/15、最も好ましくは1/5~1/8の範囲である。浴比は、処理される繊維製品類の重量と解重合溶液の重量との重量比である。
【0033】
可能な態様によれば、工程c)において、解重合溶液の温度は101℃~160℃の範囲、好ましくは120℃~160℃の範囲である。有利には、解重合溶液の温度は130℃から140℃の範囲である。特許請求される範囲は、綿またはセルロース系繊維の化学的および機械的特性、例えば繊維の長さおよび寸法、セルロースの重合度の変化を最小限に抑える。
【0034】
可能な態様によれば、工程c)の間の槽内の圧力は、1.05バール(0.05barg)~7.0バール(6.0barg)、好ましくは2.7バール(1.7barg)~7バール(6barg)、より好ましくは2.7バール(1.7barg)~5.5バール(4.5barg)の範囲である。
【0035】
可能な態様によれば、解重合工程c)は、91分から240分の間、好ましくは100分から150分の間、より好ましくは120分の時間実施される。
【0036】
好ましい実施形態では、工程c)は130℃で120分間、好ましくは2.7バール(39.16psi)から5.5バール(79.77psi)の範囲の圧力で実施される。
【0037】
有利なことに、特許請求された浴温度および圧力における上記の浴比は、溶液が特許請求された時間、槽および静的な繊維製品類を通して循環されるとき、ポリエステル繊維の完全または実質的に完全な解重合をもたらす。好ましくは、溶液が反応槽を通って循環される方向は、好ましくは槽の中心から側面への1つの流れ方向であるか、または流れ方向は、槽の中心から周壁へ向けられる流れと周壁から槽の中心へ向けられる流れとが交互になるように、解重合プロセス中に変更され得る。前記時間の後、解重合溶液は40℃から80℃の間の温度に冷却される。
【0038】
上述したように、繊維製品類は静止状態又は静的状態に保たれ、ポリエステルが完全に解重合されるまで、好ましくは数回、解重合溶液が繊維製品類を含む反応槽に送り込まれ、繊維製品類を通って槽から排出される。衣服は、反応槽、すなわち解重合槽の一部を満たしており、繊維製品類が槽内で動くのを避ける適切な構造要素によって定位置に保たれている。好ましくは、繊維製品類は、槽の該当部分を完全に満たすように圧縮された状態に保たれる。この状態には、解重合溶液がすべての静止衣服の中を流れ、プロセスの高い生産性が得られるという利点がある。
【0039】
ある種の染料が解重合の間に繊維製品類から除去されることは、本発明の利点である。実際、反応性染料は、廃棄繊維製品類から還元的脱色を経て加水分解により除去される。反応性染料の除去は、それ自体、当技術分野で知られている技術によって行うことができる。
【0040】
有利なことに、インジゴおよびインジゴイド染料は、繊維製品類を通して循環される解重合溶液の流れによって、繊維製品類から少なくとも部分的に除去、すなわち剥離される。剥離したインジゴ染料は前記溶液中に蓄積し、その後の工程で回収することができる。
【0041】
可能な態様によれば、本方法は、過酸化水素、過ホウ酸塩、過炭酸塩、好ましくは過酸化水素のような酸化剤を含む漂白/脱色溶液によって、反応槽内で処理布を漂白する工程をさらに含む。漂白工程は、槽から解重合溶液を除去した後に行われる。解重合溶液を除去した後も、通常、繊維製品類中に若干の解重合溶液が残る。解重合溶液と同様に、漂白液も、例えばポンプを用いて、静止した繊維製品類を通して循環される。
【0042】
有利なことに、漂白液は、処理された繊維製品類から残存するインジゴ染料によって付与された色を除去することができる。漂白液は、安定剤および湿潤剤、好ましくは、例えば、Permulsin FF(Bozzettoグループ)のような分散剤、および/またはSanwet NW 2109(Chemko社)のような湿潤剤、および/またはSanstabil A100(Chemko社)のような酸化剤の安定化剤を含んでもよい。
【0043】
可能な態様によれば、漂白液は、繊維製品類(乾燥)および漂白液の重量に対して、1/2~1/20、好ましくは1/7~1/9、より好ましくは1/8の範囲の浴比に応じた量で提供される。漂白液のpHは塩基性である。漂白液は、48°BeのNaOHの溶液を、少なくとも10g/Lの濃度、好ましくは20g/L~30g/Lの範囲、より好ましくは25g/Lのアルカリ濃度で含む。
【0044】
可能な態様によれば、酸化剤は、繊維製品類から藍色を除去するのに有効な量で漂白液中に存在する。好ましい実施形態において、漂白液は、濃度50重量%(w/w)の過酸化水素溶液を1g/L~7g/L、好ましくは4~7g/L、さらに好ましくは5g/L含有する。換言すると、漂白液中のH2O2濃度は、0.5g/L~3.5g/Lの範囲、好ましくは2g/L~3.5g/Lの範囲、より好ましくは2.5g/Lである。漂白液は、100℃から110℃の間、好ましくは105℃の温度に加熱され、100分から150分、好ましくは120分の間の時間、前記温度で保持される。前記時間の後、漂白液は、40℃から80℃の間、好ましくは50℃の温度に冷却され、最終的に反応槽から取り出される。
【0045】
有利には、綿またはセルロース系繊維の変質と劣化を最小限に抑えるために、漂白液は100℃~110℃の間の温度に保たれる。
【0046】
可能な態様によれば、酸化剤は、例えば2~7分の範囲、好ましくは5分で、槽内の漂白溶中に徐々に注がれる。有利には、漂白液と酸化剤との反応から生じる望ましくないガス状物質の槽内における存在を抑制するために、酸化剤を漂白液中に徐々に注入する。槽内の気体量を制御することで、槽内の望ましくない圧力上昇を防ぎ、過酸化水素の効率を高めることができる。
【0047】
可能な態様によれば、本方法は、好ましくは1g/L~5g/Lの濃度の分散剤を含む洗浄液によって処理布を洗浄する工程をさらに含み、洗浄工程において、繊維製品類中に存在する可能性のあるTPA塩およびEGが繊維製品類から除去される。
【0048】
分散剤の例としては、Permulsin FF(Bozzettoグループ)またはDevelope JFR NB(MKS DEVO)が挙げられる。
【0049】
有利には、セルロース系繊維の引き裂きや破断を避けるために、洗浄液中の水酸化ナトリウムの質量濃度は20%より低い。
【0050】
可能な態様によれば、洗浄液は1/2~1/20の範囲、好ましくは1/7~1/9の範囲、より好ましくは1/8の浴比を有する。繊維製品類を解重合し漂白する工程と同様に、洗浄工程も、繊維製品類を通して循環される洗浄液の流れによって、反応槽内の静止した繊維製品類に対して実施される。
【0051】
本発明の可能な態様によれば、解重合およびポリエステルモノマーの除去後の処理布は、600~3500の重合度を有する綿繊維を含み、前記繊維を糸製造におけるさらなる使用に適用させる破断強度および引裂強度のような検出可能な機械的特性を有する。
【0052】
重合度は、キャピラリー粘度計で相対粘度を測定し、ISO5351規格に従って対応する極限粘度を計算し、その後、文献:Sihtola H,Kyrklund B,Laamanen L,Palenius I,“異なる方法で測定された粘度とDP値の比較と換算”,1963,Paperi Ja Puu, 45,pp.225-232に記載されているセルロース-溶媒(標準法)系の修正Mark-Houwink-Sakurada式など、当該技術分野で知られている式に従って計算することにより算出することができる。詳細には、粘度は、WO2019/140245にも記載されている式:[η]=954×log[ηrel]-325から求めることができる。DPは式:DP0.905=0.75×[η]とDP=1.9[η]から、範囲として与えられる。
【0053】
本発明の方法の好ましい実施形態(例えば
図7参照)によれば、解重合サイクルの後に得られた解重合溶液は、処理される繊維製品類の新鮮なバッチの次の解重合サイクルで再使用される。同じことが、漂白液にも、場合によっては洗浄液にも当てはまり、それぞれ次の漂白サイクルや洗浄サイクルで再び使用することができる。本発明のこの側面は、水の消費量を大幅に削減できるという利点をもたらす。本出願人は、解重合溶液は、解重合される新しいバッチの連続的な処理サイクルで再使用する前に、NaOHの含有量を最初に必要な量に戻すことを条件に、その特性を失うことなく、数回、例えば少なくとも20回、さらにはそれ以上使用できることを見出した。また、各サイクルで発生するTPA塩とEGの含有量の増加は、溶液の化学的特性と解重合能力を損なわないことがわかった。
【0054】
別の解重合サイクルで解重合溶液を再利用できる回数は、処理する繊維製品類に含まれるポリエステルの初期量に依存する。換言すると、処理する繊維製品に含まれるポリエステルの量が多いほど、処理する繊維製品類の新しいバッチで解重合溶液を再使用できるサイクル数は少なくなる。このことは、漂白液および/または洗浄液にも当てはまる。
【0055】
解重合溶液、漂白液および洗浄液は、各々に必要な初期条件(例えば、初期NaOH濃度)に設定し、1~100、好ましくは10~100;典型的には10~40の範囲の回数、本発明の方法の追加のサイクルで再使用することができる。
【0056】
本発明の利点は、解重合工程の後、綿またはセルロース系繊維製品類、特に布が、完全な解重合が実施された場合に先行技術で生じるようなセルロース系パルプに還元されないことである。むしろ、本発明のおかげで、セルロース系繊維のDP(重合度)の低下は、十分に許容されるレベルに維持され、いずれにしても、解重合後の、また完全な工程、すなわち漂白および洗浄を含む工程後の繊維製品の綿繊維は、短繊維として回収され、リサイクルされ、糸および布の製造のために(化学的前処理を必要とせずに)使用されるのに適している。実際に、処理されたブレンド布、すなわち本発明の解重合後のブレンド布は、実施例3および表1に示すように、破断強度や引裂強度のような検出可能で有用な機械的特性を維持する。
【0057】
本発明のプロセス後に得られる布の経方向および緯方向の破断強度は、ASTM D5034に従って測定することができる。最終的な試験結果は、加工前と加工後の繊維製品を破断するのに必要な重量をキログラム(Kg)単位で示す。
【0058】
本発明のプロセス後に得られる繊維製品の経方向および緯方向の引裂強度は、ASTM D1424に従って算出することができる。試験の最終結果は、加工前と加工後の繊維製品を引き裂くのに必要なグラム(gr)単位の重量を提供する。
【0059】
可能な態様によれば、繊維製品類、すなわち布および衣服が1種以上の蛍光増白剤を含む場合、本方法は、プロセス中の解重合工程の前に、適切な溶媒を用いて繊維製品類から蛍光増白剤を除去する前処理工程をさらに含む。この工程で、溶液は光沢剤および/または抑制剤および/または失活剤を除去する。光沢剤の除去は、1/2~1/20の範囲、好ましくは1/10の浴比を用い、30℃~40℃の温度で、10分~30分の時間行う。
【0060】
蛍光増白剤は、蛍光増白剤が存在する部分では、蛍光増白剤が存在しない部分と比較して、より白く、より明るい効果を提供するために布に添加することができる化学化合物である。
【0061】
ブレンド繊維製品類中に存在する蛍光増白剤は、工程e)において、均質な色または均質なレベルの明度を有するセルロース系繊維を含む処理繊維製品を得るために、上述の工程a)の前に除去するべきである。
【0062】
有利には、蛍光増白剤を除去する前記前処理工程は、例えばFluorex DEL(CHTグループ)のような蛍光増白剤用の脱色剤と、好ましくはSanwet M30(Chemko社)のような湿潤剤とを含む水溶液を用いて行うことができる。好ましくは、脱色剤の質量濃度は0.2g/L~1.2g/Lである。
【0063】
本発明はさらに、ポリエステル繊維と綿またはセルロース系繊維とを含むブレンド繊維製品類を再生利用するためのプラントであって、廃棄繊維製品類を収容するように構成された反応槽と、解重合溶液、および任意に漂白液または洗浄液のいずれかを収容する少なくとも1つのタンクと、タンクから槽に解重合溶液を供給して循環させるポンプと、槽内の解重合溶液の温度を制御する制御手段であって、典型的には加熱手段と冷却手段とを含む制御手段とを備えるプラントに関する。
【0064】
槽は、再生利用される繊維製品類を収納するように構成されている。典型的には、槽は、解重合溶液、漂白液および洗浄液と接触するのに適した材料で作られる。そのような材料の例としては、鋼鉄金属、好ましくはステンレス鋼、より好ましくはAISI 316およびAISI 316/316Lのようなステンレス鋼が挙げられる。
【0065】
解重合溶液、漂白液および洗浄液を収容する複数のタンクは、槽に流体的に接続され、槽から溶液を供給または除去する。典型的には、前記複数のタンクは、解重合溶液、漂白液および洗浄液と接触するのに適した材料で作られる。
【0066】
有利には、ポンプにより、複数のタンクから槽への解重合溶液、漂白液および洗浄液の流れを制御することができる。典型的には、前記ポンプは、遠心ポンプ、容積式ポンプ、軸流ポンプまたは類似のポンプから選択することができ、好ましいポンプは遠心ポンプである。有利なことに、プラントは、例えばポンプに接続されたオルタネータースイッチ装置によって、それ自体既知の方法で槽内の溶液の流れの方向を反転させることもできる。
【0067】
前述のように、解重合溶液は、繊維製品中のポリエステル材料が解重合され、繊維製品からモノマーとして完全にまたは実質的に完全に除去されるまで、ポンプによって繊維製品類(および槽)を通して循環される。
【0068】
槽には、解重合溶液の温度を上昇させる加熱手段が設けられている。加熱手段は、槽内部、例えば槽の底部に配置することができる。加熱手段は、解重合溶液を加熱するために過熱蒸気が供給されるコイルであってもよい。溶液を冷却する手段も、例えば冷水などの冷却液源に接続された別のコイルの形で提供される。有利なことに、加熱流体源または冷却流体源に選択的に接続することにより、同じコイルを加熱手段および冷却手段として使用することができる。
【0069】
典型的には、加熱手段と冷却手段は制御手段に接続され、その制御手段は槽内の解重合溶液の温度を検出するセンサー手段にも接続されている。
【0070】
可能な態様によれば、槽は、処理される繊維製品を収容するための濾過バスケットを含んでいる。有利には、濾過バスケットは、剛性構造、例えば金属構造からなり、典型的には円筒の形で、その壁に沿って開口部が設けられ、解重合溶液が槽内を流れ、繊維製品類を通って流れることを可能にする。廃棄ブレンド布を濾過バスケットに収容することで、溶液の流動中に繊維製品類をバスケット内に拘束することができる。換言すると、繊維製品類は静止状態、すなわち静的な状態に保たれ、一方、解重合溶液の流れは槽内の繊維製品類に強制的に通される。有利なことに、繊維製品類はバスケットの空間全体を満たしており、好ましくはバスケットの中に圧縮されている。バスケットの上方には、図から明らかなように、槽には空の空間が設けられている。
【0071】
好ましくは、濾過バスケットは、反応槽に沿った形状の有孔剛性容器であり、横方向の有孔壁と、有孔剛性バスケットの中心軸に配置された有孔剛性柱を有する。有利には、解重合溶液は、有孔剛性柱から廃棄ブレンド布に向かい、横方向の有孔壁を通って流れるか、または横方向の有孔壁から再生利用する繊維製品類に向かい、再生利用する繊維製品類を通って流れることができ、解重合溶液と再生利用する繊維製品類との経時的な均質で均等な接触を可能にする。
【0072】
可能な態様によれば、槽は、バスケット内に収容され、前記中心柱に沿って配置され、それに対して横方向に延びる少なくとも1つの、好ましくは複数の有孔分離要素を備えている。分離要素は、繊維製品類を置くことができる有孔プレートを含む。有孔プレートは、溶液が孔を通って流れることを可能にする。分離要素はまた、繊維製品を静的状態に保つ保持手段としても機能する。
【0073】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる繊維製品類に関し、前記繊維製品類は、重合度が600~3500の綿繊維を含む。実施形態において、前記綿繊維は、本発明の方法によって得られる布に含まれ、前記布は、経方向および緯方向において測定可能な破断強度または引裂強度を有する。元のブレンド繊維製品類のポリエステル含有量はもはや存在しないため、処理された糸または処理された布には、もともとポリエステルの長繊維、繊維または糸を収容していた空スペースが提供される。
【0074】
前述したように、本発明の方法は、衣服を裁断したり、衣服の一部を取り除いたりすることなく、衣服の処理工程を実施するために使用することができる。特に衣服は、綿から作られた糸からなる布、すなわち綿100%の布と、当該技術分野で知られている方法で衣服の部分を縫い合わせる、すなわち縫製するために使用される縫製線に由来する少量のポリエステルを含むことができる。これらの衣服またはその一部は、ブレンド繊維製品類の処理について先に開示したような方法およびプラントに従って、処理することができる。布が綿または他のセルロース系繊維からなる衣服の処理工程における反応条件は、例えばポリエステル含有率40%~50%のブレンド繊維製品の処理工程で使用される条件より穏やかである可能性がある。
【0075】
したがって、本発明のさらなる目的は、ポリエステル繊維、および好ましくは綿繊維であるセルロース系繊維を含む衣服およびその一部を再生利用するための方法であって、前記衣服が、縫糸によって縫い合わせられた複数の布地部分を含み、前記布地部分が、綿糸またはセルロース系糸、好ましくは綿100%の布地部分からなり、前記縫糸が、ポリエステル縫糸であり、塩基性水溶液中でのポリエステル糸の解重合を含み、以下の工程:
a)反応槽内に一定量の前記衣類を供給する工程;
b)一定量の前記塩基性解重合溶液を、溶液の重量に対する衣服の重量で、1/2~1/20、好ましくは1/4~1/8の範囲の浴比に従って供給する工程;
c)前記衣服を通して前記一定量の解重合溶液を循環させて、前記ポリエステルを対応するモノマーに解重合させ、前記衣服から前記ポリエステルモノマーを除去する工程;
d)前記反応槽から前記解重合溶液を除去する工程、
を含み、
前記工程c)での前記解重合溶液の温度は101℃~160℃の範囲であり;
e)以って、前記衣服は静止した、すなわち、静的な状態にあり、前記溶液を前記衣服に通して循環させて、実質的にポリエステル材料を含まないセルロース系短繊維、好ましくは綿短繊維を含む処理衣服を得る方法を提供することである。
【0076】
この場合、本発明の方法によれば、衣服を形成する布地部分を縫い合わせるポリエステルの縫糸が解重合されるため、前記布地部分は互いに切り離され、分離することができ、場合によっては再生利用することができる。
【0077】
本明細書によれば、衣服とは、Tシャツ、ズボン、ジーンズ、ジャケット、シャツ、スポーツ衣料等、あらゆる衣料品を包含する。実施形態において、衣服は、ジッパー、リベット、ボタン(これらの要素は、典型的には金属またはプラスチック製である)、およびラベルなどの非繊維要素を含むことができる。有利なことに、衣服が非繊維の要素または部分(例えばボタン、リベット、ジッパー)を含む場合、本発明の方法によれば、これらのような衣服部分を縫い合わせるポリエステルの縫糸は解重合され、これらのような衣服部分は剥離する。
【0078】
驚くべきことに、工程の最後、特に漂白および洗浄工程の後、金属またはプラスチック要素などの非繊維要素は、衣類から剥離するか、または衣類に緩く付着するようになり、処理された衣類の塊から、例えば脱石機中またはタンブル乾燥機中で非常に容易に除去できることが見出された。
【0079】
したがって、綿またはセルロース系繊維からなる布で作られた衣服を再生利用する工程は、工程の少なくとも一部が実施された後、処理された衣服から非繊維要素を除去するさらなる工程を提供することがある。
【0080】
有利なことに、本方法では、槽内に解重合溶液が供給され、反応条件下で、反応槽内で静止状態に維持された廃棄衣服の縫糸のポリエステル繊維を解重合し、ポリエステルのエステル結合をそのモノマーであるテレフタル酸二ナトリウム塩(Na2TP)およびエチレングリコール(EG)に開裂させ、セルロース系短繊維の変質および解重合を劇的に減少させることができる。
【0081】
有利には、解重合溶液の温度は、密閉槽内で上昇され、それにより圧力は、ポリエステル縫糸は解重合されるが、衣服を構成するセルロース系布部分のセルロース系繊維、例えば綿短繊維の劣化または変質(例えば重合度の低下)は最小化され、場合によっては回避されるような値まで、対応して上昇される。
【0082】
有利には、工程c)において、特許請求された温度の選択された量の解重合溶液が、好ましくはポンプによって、槽内およびプロセスの工程c)の全長にわたって衣服を通して循環される。換言すると、廃棄衣服は実質的に静的な状態に維持され、衣服に溶液を繰り返し通過させる、すなわち循環させることによって、解重合溶液と数回接触させ、綿またはセルロース系繊維ができるだけ損なわれないよう維持しながら、前記溶液中のテレフタル酸二ナトリウム(Na2TP)またはテレフタル酸イオンまたはEG、およびより一般的な分解ポリエステルからの生成物の含有量を増加させる。衣服を静止状態または静的な状態に保つことと、脱重合溶液を衣服と槽に通して循環させること、すなわち流すことを組み合わせることにより、ポリエステルの完全な解重合が得られ、同時に、衣服を形成するセルロース系(好ましくは綿)布地部分の解重合が大幅に減少するか、場合によっては回避されることが見出された。
【0083】
一態様によれば、解重合溶液はアルカリ性溶液であり、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含むアルカリ性溶液である。前記溶液は、好ましくは70g/L~500g/Lの範囲、より好ましくは76~120g/Lの範囲の、ボーメ度が48°Beに等しい水酸化ナトリウム溶液を含む。換言すると、解重合溶液中のNaOHの濃度は、33g/L~237g/LのNaOH、好ましくは36g/L~57g/LのNaOHの範囲である。
【0084】
可能な態様によれば、本方法で使用される解重合溶液の量は、処理される衣服の量に応じて選択される。実施形態において、浴比は、1/2~1/20、好ましくは1/2~1/15、最も好ましくは1/5~1/8の範囲である。浴比は、衣服の重量と解重合溶液の重量との重量比である。
【0085】
可能な態様によれば、工程c)において、解重合溶液の温度は101℃~160℃の範囲、好ましくは120℃~160℃の範囲である。有利には、解重合溶液の温度は130℃から140℃の範囲である。特許請求される範囲は、綿またはセルロース系繊維の化学的および機械的特性、例えば繊維の長さおよび寸法、セルロースの重合度の変化を最小限に抑える。
【0086】
可能な態様によれば、工程c)の間の槽内の圧力は、1.05バール(15.23psi)~7.0バール(101.5psi)、好ましくは1.4バール(39.16psi)~3.5バール(101.5psi)、より好ましくは2.7バール(39.16psi)~5.5バール(79.77psi)の範囲である。
【0087】
可能な態様によれば、解重合工程c)は、60分~240分または91~240分の間、好ましくは60分~150分の間、より好ましくは60~120分の間の時間実施される。
【0088】
ブレンド布の処理に関して先に説明した本発明の方法およびプラントのすべての詳細は、衣服処理にも適用され、綿またはセルロース系繊維、布およびポリエステル縫糸からなる衣服またはその部分を処理する上記開示の方法を実施するために使用される。特に、解重合溶液は、ポリエステル縫糸が完全に解重合するまで、開示された反応条件下で衣服を通して循環される。好ましくは、漂白/脱色および洗浄工程は、繊維製品材料の含有量に応じて、繊維製品類の処理について先に開示した条件に従えばよい。非繊維部品と綿100%の布(いわゆる100%綿布)を含む衣服の処理結果は、実施例6に開示されている。
【0089】
好ましい実施形態では、工程c)は130℃で120分間、好ましくは2.7バール(39.16psi)~5.5バール(79.77psi)の範囲の圧力で実施される。
【0090】
有利には、特許請求された浴温度および圧力における前記浴比での解重合溶液の流動、すなわち循環は、ポリエステル縫糸の完全なまたは実質的に完全な解重合をもたらす。有利なことに、本発明の方法から得られる綿繊維は、化学的処理を必要とすることなく、前記繊維をそのまま(機械的手段により)再生利用して糸および布の製造に使用することができるように十分に高い重合度を有する短繊維の形態である。
【0091】
以下の説明では、本発明を、布および衣服、特にブレンド綿布および衣服について述べることにより開示する。同じ工程と説明が、上記で定義された一般的な繊維製品類、すなわち糸および繊維、並びに綿に加えて他のセルロース系繊維にも適用されることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
本発明によるさらなる態様および利点について、非限定的な例として挙げた同封の図面を参照して、より詳細に説明する。
【0093】
【
図1】
図1は、ポリエステル繊維およびセルロース系繊維を含む廃棄布を収容するプラントを示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すプラント、および工程終了時のセルロース系繊維を含む処理布を示す概略図である。
【
図3a】
図3aは、
図1に示す濾過バスケットの断面を示す斜視図である。
【
図3b】
図3bは、
図1に示す閉鎖した反応槽および濾過バスケットを示す断面図である。
【
図5a】
図5aは、ポリエステル繊維およびセルロース系繊維を含む、処理前の布の一例を示す正面図である。
【
図5b】
図5bは、
図5aに示す布を処理した後の、セルロース系繊維を含み、ポリエステル繊維を除去した布を示す正面図である。
【
図6a】
図6aは、ポリエステル繊維、セルロース系繊維および非布部分を含む処理前の衣服の一例を示す正面図である。
【
図6b】
図6bは、
図6aに示す衣服を処理した後の、セルロース系繊維のみを含む衣服を示す正面図である。
【
図7】
図7は、解重合工程、漂白工程および洗浄工程を含むプロセス、ならびに各溶液の可能な再使用について概略的に示す工程図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すプラントの加熱冷却素子を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の方法の前(a)および後(b)の衣服を示す写真(aおよびb)である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
図1および
図2は、廃棄ブレンド布1と、ポリエステル繊維および好ましくは綿繊維であるセルロース系繊維を含む廃棄衣服とに対して、本発明の方法を実施するのに適したプラント100を示す。この衣服は、縫糸により縫い合わされた複数の布地部分を含み、布地部分は100%セルロース系生地部分であり、好ましくは100%綿布部分であり、縫糸はポリエステル縫糸である。簡略化のため、以下の説明ではブレンド布についてのみ言及する。
図1には、プロセスの初期段階にあるプラントが示されている。このプラントは、処理されるブレンド布で満たされた槽10を含み、布はポリエステル繊維4と綿繊維40を含む。
【0095】
あるいは、槽10は、ポリエステル繊維と、好ましくは綿繊維であるセルロース系繊維とを含む廃棄衣服で満たされることもある。この衣服は、縫糸により縫い合わされた複数の布地部分を含み、布地部分は100%セルロース系生地部分であり、好ましくは100%綿布部分であり、縫糸はポリエステル縫糸である。
【0096】
典型的には、槽は円筒形で、側壁、底壁および蓋91を含む。密閉された槽は、本発明の方法で発生する圧力に耐えられるように構成されている。
【0097】
図示の態様では、槽10は、廃棄ブレンド布を収容する濾過バスケット6を有している。
図3aおよび3bに示すように、濾過バスケット6は、通常は金属製の円筒形容器の形をしており、槽10内及び槽10を通る解重合溶液3の流れを可能にする孔が設けられた側壁64を含み、廃棄ブレンド布1はバスケット6に収容されている。
図3bに矢印F1およびF2で示すように、解重合溶液3の流れは、中心軸Aから穿孔された内壁すなわちカラム65を通って外壁64に向かう実質的に第1の方向F2、または穿孔された壁64から第1の流れ方向とは実質的に反対の第2の方向F1とすることができる。
【0098】
換言すると、槽10内の溶液は、第1の方向または第2の方向に循環させることができる。第1の方向では、槽10内の流れは、濾過バスケット6の内側有孔壁65から進み、布1を通って有孔壁64から濾過バスケット6を出るように強制される。第2の循環方向では、供給方向は逆になり、すなわち、溶液は外側有孔壁64に対応する槽に供給され、内側有孔壁65に向かって布を通され、中心軸Aに向かって押し出される。
【0099】
循環を交互に行う場合、すなわち交互に流動させる場合、一実施形態では、第1の再循環は、好ましくは2~6分間、好ましくは4分間、第1の方向に行う。第2の再循環は、4~8分間、好ましくは6分間第2の方向に行う。本プロセスにおける流動は、すべて第1の方向で行うことができ、全プロセスにおいて、流動を第2の方向のみに行うこともできる。
【0100】
有利には、布を通り、槽から出て槽内に戻る、第1の半径方向および/または第2の半径方向への解重合溶液3の流動により、解重合溶液3を、溶液中で攪拌されずに静置されたすべての廃棄布1に到達させ、短時間でのポリエステルの均一な解重合を保証することができる。濾過バスケット64および65の有孔壁からの流動注入を最大にすることは、廃棄布1における解重合溶液3の適切な吸収を提供し、したがって、ポリエステル繊維4の解重合を最大にする。
【0101】
図示の実施形態では、
図3bおよび
図4を参照すると、槽10は、中心支柱65に対して横方向に、バスケット6内に収容された、少なくとも1つの、好ましくは複数の有孔分離要素60を備えている。分離要素60の直径は、バスケット6の直径より小さく、すなわち、側壁64の内面641間の距離より小さく、要素60が、側面に広すぎる隙間を残すことなくバスケット内に挿入されることを可能にする。
図4に見られるように、エレメント60は、分離要素が支柱65に沿ってバスケット6内を機械的干渉なしにスライドできるようにする中央孔62を備えている。分離要素60は、槽10内のバスケット6への廃棄ブレンド布の充填を最大にし、布または繊維製品類がバスケット内で移動するのを防止することを可能にする。複数の分離要素60が濾過バスケット6内に収容される場合には、各分離要素60の頂部に収容される廃棄ブレンド布1の山ができる。有利には、要素60は、槽10内で解重合溶液3の流れを確保するための多孔板601を備えている。
図3bには、上部の保持要素603も示されている。
【0102】
プラント100はさらに、複数のタンク(貯槽)を備えており、タンク7に解重合溶液3、タンク7aに漂白液30、タンク7bに洗浄液80を収容する。タンクは、それぞれの配管で槽10に接続され、導管72と74によって槽10に接続されたポンプ8と流体オルタネータ装置82を含む循環ループを介して槽10に接続されている。
【0103】
解重合溶液3は、流動オルタネータ82によって提供される流れの方向に従って、導管71並びに導管72および74を通ってタンク7から槽10に流れることができる。
図1および
図2から明らかなように、導管72は、バスケット6の内側カラム65に溶液を供給できるように、バスケット6の内側カラム65に接続されている。導管74は、バスケットの壁6に対応して槽の外側部分に接続され、繊維製品と槽を通って循環された、すなわち流された溶液を受け取り、逆流導管74の場合、溶液を槽に供給する。
【0104】
オルタネータ装置82は、槽10内の解重合溶液の有利な交互循環を提供する。解重合溶液を槽10に供給した後、解重合溶液が導管72、74を通って循環することができるように弁V2および弁V1が配置されており、ここで解重合溶液の再循環は反時計回り方向である。あるいは、流路72、74および槽10を通る解重合溶液の再循環が時計回りの方向になるように、流れの方向をオルタネータ装置82によって反転させることができる。
【0105】
漂白液30および洗浄液80は、複数のタンク7a,7bからそれぞれ導管72,74に流れることができる。弁V1、V2およびV3は、導管内の流れを制御するために回路ダクト上に配置される。プラント100はさらに、導管21、22を介してタンク7に、または導管21、23を介してタンク7aに、または導管21、24を介してタンク7bに試薬を供給するための複数の予備化学タンク20を備える。試薬は、アルカリ性溶液またはアルカリ、酸化剤、湿潤剤、分散剤、安定剤、脱色剤および同様の試薬であり得る。
【0106】
プラント100は、反応槽10内の解重合溶液3または漂白液の温度を制御するための加熱冷却素子9a、9bおよび温度センサー90をさらに備えている。図示の態様では、加熱/冷却手段は、槽10内の溶液をそれぞれ加熱または冷却するために、蒸気源9aまたは冷水源9bと選択的に接続可能な、
図8に示すコイルで実現されている。
【0107】
本発明は、ポリエステル4と、好ましくは綿短繊維40であるセルロース系短繊維を含む廃棄ブレンド布1を再生利用する方法であって、塩基性水溶液中でのポリエステルの解重合を含む方法を提供する。この方法は以下の工程を有する:a)反応槽10に一定量の前記布を提供する工程;b)一定量の前記塩基性解重合溶液3を、溶液の重量に対する布の重量の浴比が1/2~1/20の間となるように供給する工程;c)前記一定量の解重合溶液3を前記布1に通して、少なくとも1回、好ましくは数回循環させ、ポリエステル繊維4を解重合し、前記布からポリエステル繊維4を除去する工程;d)温度が101℃~160℃の範囲である前記解重合溶液3を前記反応槽10から除く工程、を含み、e)以って、溶液を循環させて、実質的にポリエステル材料を含まないセルロース系短繊維、好ましくは綿短繊維40を含む糸を含む処理繊維製品類5)を得る。
【0108】
図示した好ましい実施形態では、廃棄布1は、場合によっては1つ以上の分離要素60を使用してバスケット6に入れられる。バスケットは、処理される布で完全に満たされるのが好ましい。
【0109】
図5aに示す廃棄ブレンド布1および
図6aのブレンド布製の衣服1aは、本発明のプロセス前のポリエステル繊維4および綿繊維40を含む。衣服1aは、金属又はプラスチック材料で作られたボタン2又はリベット及びジッパーのような非布物質、すなわち非繊維部品を含む。本発明のプロセス後の同じ布および衣服を
図5bおよび
図6bに示す。ポリエステル繊維および長繊維は、モノマーに解重合され、布5および衣服5aにはもはや存在しないが、綿糸40およびブレンド糸(例えば、コアスパン糸の鞘)の綿部分は、布および衣服の形態で依然として存在している。処理された衣服5aは、以下に説明するように、処理された衣服から生じる遊離固形物を除去するのに適した脱石機または他の機械で追加的に処理されているので、ボタン2(リベットおよびジッパーも)を含まない。
図6bは、ボタンおよび縦糸ポリエステル糸のない衣服を概略的に示す。説明したように、ポリエステル製の縫糸を解重合すると、
図9に示すように、処理された衣服が複数の分離片に分離することが理解される。
図9は、衣服の2枚の写真を示している。すなわち、元の衣服の解重合と漂白(および最終洗浄)の処理の前(左側の写真a)と処理後(右側の写真b)の衣服である。
【0110】
バスケット6に繊維製品類を充填した後、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、好ましくは水酸化ナトリウムを含む解重合溶液3を槽に供給する。この溶液は、ボーメ度が43~50°Be、好ましくは48°BeのNaOH溶液を70g/L~500g/Lの範囲で水に添加することによって調製される。好ましい実施形態では、水に添加されるNaOHの前記48°Beの溶液の量は、76g/L~120g/Lの範囲である。
【0111】
解重合溶液3の量は、1/2~1/20の浴比を有するように選択され、より好ましくは、解重合溶液の浴比は、浴の重量に対する繊維製品類の重量で1/4~1/6である。解重合溶液は、蒸気すなわち過熱蒸気が供給されるコイル9によって加熱される。
【0112】
槽10内の解重合溶液3の温度は、布1中の綿繊維40の重合度や寸法などの元の機械的および化学的特性を可能な限り維持しながらポリエステル繊維4を解重合するために制御される。槽10内の解重合溶液3の温度は、センサー90を介して101℃~160℃、好ましくは130℃~140℃の範囲に維持されるように制御される。
【0113】
可能な態様によれば、ステップc)における槽10内の圧力は、1.05バール(15.23psi)~7.0バール(101.5psi)、好ましくは2.7バール(39.16psi)~7.0バール(101.5psi)、より好ましくは2.7バール(39.16psi)~5.5バール(79.77psi)の範囲である。また、解重合溶液3または漂白液および洗浄液の温度変化により、密閉室10内の圧力を変化させてもよい。
【0114】
好ましい態様によれば、槽3内の解重合溶液3の温度は、91分~240分、好ましくは100分~150分、より好ましくは120分の時間保持される。前記時間の後、解重合溶液を40℃~80℃の範囲の温度に冷却する。
【0115】
次いで、解重合溶液3は、導管71、72、74および制御弁V1、V2を介して槽10から除去される。
【0116】
処理された布5が、プロセスの初めに、ジッパー、リベット、ボタンなどの金属またはプラスチック要素を備えた衣服である場合、プロセスの後、ジッパーおよび他の金属またはプラスチック要素は、特に漂白工程の後、布への最終的な付着が弱くなるポリエステル繊維および糸の欠如のおかげで、処理された衣服から容易に分離することができる。実際、ポリエステル糸製の衣服の縫い目はすべて解重合され、衣服から取り除かれるため、金属またはプラスチック要素は処理された布、つまり処理された衣服から取り除くことができる。
【0117】
反応染料は解重合溶液3により加水分解され、ポリエステルを実質的に含まない非染色布が得られる。解重合工程の間に、インジゴの一部も布から除去される。
【0118】
解重合と槽10からの解重合溶液3の除去の後、布がインジゴ染色された繊維を含む場合、処理布5は槽10内で漂白液30により漂白工程に供される。漂白液30は、ポンプ8に接続された導管73および導管72、74、73を通して槽10に供給される。
【0119】
漂白液30は、1/2~1/20、好ましくは1/7~1/9、より好ましくは1/8の範囲の浴比を与える量で供給される。漂白液は、好ましくはNaOHである塩基を含み、48°Beに等しいボーメ度を有するNaOHの溶液を、少なくとも10g/Lの濃度、好ましくは20g/L~30g/Lの範囲、より好ましくは25g/Lの濃度で含む。換言すると、漂白液中のNaOH濃度は、少なくとも4.73g/L、好ましくは9.47g/L~14.20g/Lの範囲、より好ましくは11.83g/Lである。
【0120】
漂白液中の過酸化水素の濃度は、2g/L~7g/Lの範囲、好ましくは5g/Lであり、溶液は、コイル9を介して100℃~110℃の範囲、好ましくは105℃の温度に加熱され、60分~150分の範囲、好ましくは100分~150分の範囲の範囲、好ましくは120分の時間、前記温度に保持される。前記時間の後、解重合溶液は、40℃から80℃の間の温度に冷却され、タンク7aに排出される。
【0121】
可能な態様によれば、酸化剤が、2分~7分の範囲、好ましくは約5分の時間、槽10内の漂白液30に徐々に添加される。
【0122】
密閉した槽10内の圧力の望ましくない増加を回避し、酸化剤の良好な効率を維持するために、漂白液30に酸化剤を徐々に添加するのが好ましい。
【0123】
この方法はさらに、解重合または漂白後の処理布5を、分散剤を含む洗浄液80により洗浄する工程を含む。洗浄液80はタンク7bに保持され、導管74を通じてポンプ8に接続された導管75を通じて槽10に供給される。洗浄液80の浴比は1/2~1/20の範囲、好ましくは1/7~1/9の範囲、より好ましくは1/8である。
【0124】
セルロース系繊維40を含む処理布5を洗浄する工程は、上述の工程e)の後、または処理した繊維製品類5が漂白液30に供された後のいずれかに実施することができる。換言すると、洗浄工程は、ポリエステル繊維の解重合が終了した後(漂白が実施されない場合)、または染料を除去する漂白工程に処理布5を供した後に実施することができる。
【0125】
有利には、工程e)の後、処理布5は、3,500もの高い重合度を有する綿繊維を含む。本発明の方法による生成物にはセルロースパルプは含まれない。換言すると、本発明の方法で得られる綿糸を含む布は、初期のポリエステル成分が取り除かれたとはいえ、依然として布の形態をしている。
【0126】
綿繊維40を含み、ポリエステル繊維4を取り除いた処理布5を
図5bに示す。ポリエステル繊維4および非布部分(ジッパー等)が除去された綿繊維40を含む衣服5aの形態の処理布5の概略図を
図6bに示し、漂白を含む完全な処理前(写真a)および処理後(写真b)の衣服の写真を
図9に示す。前記衣服又は布(又は糸又は繊維)は、追加の乾燥工程の後、当該技術分野において公知の方法、例えば再紡績機用の綿屑開繊ラインにより、綿繊維に再生利用されるのに適している。前記再生綿繊維は、製織に適した再生綿糸を調製するために使用することができる。
【0127】
繊維製品類は、それ自体既知の方法、例えばタンブル乾燥機で乾燥させてもよいし、例えばベルトコンベヤ乾燥機のような連続乾燥機で乾燥させてもよい。
【0128】
前述したように、蛍光増白剤を含む廃棄布1は、解重合工程を実施する前に、溶媒を用いて廃棄ブレンド布1から蛍光増白剤を除去する前処理工程に供される。前記除去は、1/2~1/20、好ましくは1/10の範囲の浴比、30℃~40℃の温度で、10分~30分間行われる。有利なことに、蛍光増白剤の除去は、処理布5中に異なる光学特性を有する繊維の斑点が存在するのを防止する。
【0129】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、
図7に示すように、解重合サイクルの後に得られた解重合溶液は、繊維製品類の新しいバッチの次の解重合サイクルで再使用される。同様に、漂白液と洗浄液をタンク7aおよび7bに貯蔵し、次の工程で再び使用することもでき、水の消費量を大幅に削減できるという利点がある。
【0130】
本発明を、単に例示的かつ非限定的な目的で提供される以下の実施例を参照してさらに開示する。
【実施例0131】
実施例1
加工前において、廃棄布は10グラムの重さがあった。廃棄布は、経方向に綿繊維、緯方向に綿繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維およびスパンデックス繊維を有していた。さらに、廃棄布はインジゴ染料で染められていた。
【0132】
再生利用する廃棄ブレンド布を、密閉反応器中で、濃度90g/Lの水酸化ナトリウム(48°Be)を含む解重合溶液で処理した。解重合溶液を130℃になるように加熱し、その温度で120分間保持した。浴比は1/6とした。解重合溶液を、生地を通して循環させた。120分後、解重合溶液を40℃の温度まで冷却した。
【0133】
廃棄布を解重合溶液で処理した後、ポリエステル繊維はモノマーに解重合され、処理布から分離した。
【0134】
その後、処理布を漂白液で処理した。漂白液は、質量濃度25g/Lの水酸化ナトリウム(48°Be)、質量濃度5g/Lの過酸化水素、濃度3.0g/Lの安定化剤、濃度1g/Lの分散剤、および濃度0.5g/Lの湿潤剤を含んでいた。
【0135】
過酸化水素を漂白液に徐々に投入し、5分後に処理済みの廃棄布を漂白液に浸した。漂白液の浴比は1/8とした。その後、漂白液を105℃の温度で120分間加熱し、処理布からインジゴ染料を除去した。
【0136】
最終段階では、処理布を洗浄液で処理した。洗浄液は、濃度3g/Lの分散剤(例えば、Develope JFR NB-MKS DEVO)を含んでいた。浴比は1/8とした。
【0137】
洗浄液を95℃の温度で30分間加熱し、処理した織物を洗浄した。洗浄した処理布を、さらに当該技術分野で知られている再生利用工程に付した。
廃棄布を、浴比を1/6として、3000Lの解重合溶液で処理した。解重合溶液は、48°Beで、90g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を含むもの、すなわち約43g/Lの濃度のNaOHのものとした。
解重合溶液を130℃になるように加熱し、120分間その温度に保持し、その間、解重合溶液を、ポンプにより布を通して循環させた。120分後、解重合溶液を50℃の温度まで冷却した。インジゴ染料の一部を、解重合工程で織物繊維から取り除いた。すなわち分離した。
解重合した布を、その後、浴比を1/8として、4000Lの漂白液で処理した。漂白液は、質量濃度25g/Lの水酸化ナトリウム(48°Be)、質量濃度5g/Lの過酸化水素、濃度3.0g/Lの安定化剤、および濃度1g/Lの分散剤および濃度0.5g/Lの湿潤剤を含んでいた。
漂白液に過酸化水素を徐々に注ぎ、5分後に、処理布を漂白液に浸した。漂白溶液を、105℃の温度で120分間加熱し、解重合後に布に残っていたインジゴ染料を、処理布から除去した。
最終工程では、浴比を1/8として、4000Lの洗浄液で処理布を処理した。洗浄液は、濃度3g/Lの分散剤(Permulsin FF)を含んでいた。洗浄液を95℃の温度で30分間加熱し、処理した繊維製品類を洗浄した。