(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125279
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】シリコンカーバイドパワー電子デバイス内に局所化イオン注入部を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240910BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024030909
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】102023000003906
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】18/583,752
(32)【優先日】2024-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】312014443
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス インターナショナル エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】カマッレリ,カテノ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】サッジョ,マリオ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ザネッティ,エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】ベロッキ,ガブリエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造プロセスは、前表面を有するシリコンカーバイドの半導体ボディを形成する製造プロセス及び局所化イオン注入を実施して、半導体ボディ内の注入部分内に注入領域を形成する製造プロセスを提供する。
【解決手段】電子デバイスの製造プロセスにおいて、局所化イオン注入を実施する工程は、シリコンカーバイドのウェハ1の前表面1aにおいて、前表面に平行な方向に、注入部分によって互いに分離された損傷領域10を形成すること及び半導体ボディ2内にドーピングイオンを注入して、半導体ボディの注入部分に注入領域12を形成するために、チャネリングイオン注入を実施することを含む。チャネリングイオン注入は、損傷領域に対して自己整合された様式で実施されており、損傷領域は、半導体ボディの深さ方向における前表面に直交する垂直軸に沿ったチャネリングイオン注入の伝搬を妨害するような、シリコンカーバイド結晶学的格子の損傷領域を表す。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有するシリコンカーバイドの半導体ボディを形成することと、
前記半導体ボディの注入部分内に注入領域を形成する局所化イオン注入を実施することと、を含み、
前記局所化イオン注入を実施することが、
前記表面において、前記表面に平行な方向に、前記注入部分によって互いに分離された損傷領域を形成することと、
前記半導体ボディ内にドーピングイオンを注入して、前記半導体ボディの前記注入部分に前記注入領域を形成するために、チャネリングイオン注入を実施することと、を含み、
前記チャネリングイオン注入が、前記損傷領域に対して自己整合された様式で実施され、前記シリコンカーバイド結晶学的格子の前記損傷領域を構築して、前記半導体ボディの深さ方向における前記表面に直交する軸に沿った前記チャネリングイオン注入の伝搬を妨害する、製造プロセス。
【請求項2】
前記損傷領域を形成することが、前記チャネリングイオン注入に対してより低いエネルギーで、マスクされた非チャネリング表面イオン注入を実施することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記損傷領域を形成することが、前表面から出発する、前記半導体ボディの1つ以上の表面エッチング工程を実施することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記注入領域が、前記半導体ボディの深さ方向における前記垂直軸に沿って実質的に平坦なチャネリングされたドーピングプロファイルを有し、前記チャネリングイオン注入が、前記損傷領域において、前記チャネリングされたドーピングプロファイルに対してより浅い深さを有する注入プロファイルと、前記前表面に近接する注入ピークとを決定する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記シリコンカーバイド結晶格子内の前記損傷領域によって引き起こされた損傷の量を調節して、前記垂直軸に沿った前記注入領域のドーピングプロファイルを調節することを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ドーピングプロファイルが、以下によって与えられ、
Ctot(z)=α(d)CRnd(z)+(1-α(d))CChan(z)
式中、Ctot(z)が、前記垂直軸に沿った深さの関数としての前記ドーピングプロファイルであり、CRnd(z)は、チャネリングが前記結晶格子によって阻止される場合に対応する純粋にランダムなプロファイル成分であり、CChan(z)は、前記チャネリングが前記結晶格子によって阻止されない場合に対応する純粋にチャネリングされたプロファイル成分であり、α(d)(ただし、α(d)≦1)が、前記損傷領域における累積損傷の関数である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記損傷領域のうちのいくつかにおいて、前記純粋にランダムな(CRnd(z))プロファイルと純粋にチャネリングされた(CChan(z))プロファイルとの組み合わせとして得られる、混合注入プロファイルを有するドープ領域を形成することを更に含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記半導体ボディの前記前表面の上方に、前記垂直軸に沿った厚さ(th)を有する少なくとも1つのシールド領域を形成することを更に含み、チャネリングイオン注入を実施することが、前記シールド領域の下にある前記半導体ボディの一部分に、前記注入領域の前記ドーピングプロファイルとは異なるドーピングプロファイルを有するそれぞれのドープ領域を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シールド領域が、注入されたイオンビームのチャネリング条件を低減するように、前記注入されたイオンビームに対してデフォーカシング特性を有する材料で作製されており、ひいてはデチャネリング領域として動作する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記シールド領域の存在下で、前述のチャネリングイオン注入による前記ドーピングプロファイルが、以下によって与えられ、
Ctot(z)=γE(th)CRnd(z)+(1-γE(th))CChan(z)
式中、Ctot(z)が、前記垂直軸に沿った深さの関数としての前記ドーピングプロファイルであり、CRnd(z)は、チャネリングが前記結晶格子によって完全に阻止される場合に対応する純粋にランダムなプロファイル成分であり、CChan(z)は、前記チャネリングが前記結晶格子によって阻止されない場合に対応する純粋にチャネリングされたプロファイル成分であり、γE(th)が、シールド領域の厚さ(th)の関数である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ドーピングイオンが、リン原子である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記チャネリングイオン注入が、非ゼロ傾斜角だけ傾斜した注入方向に沿って実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記傾斜角が、3.5°~4.5°で構成されており、前記チャネリングイオン注入が、前記半導体ボディの前記シリコンカーバイド結晶学的格子の主軸に沿って方向付けされており、前記ドーピングイオンが、前記半導体ボディ内に侵入する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記半導体ボディ内にパワー電子デバイスの基本セルを形成することを含み、基本セルを形成することが、前記パワー電子デバイスのセル間領域によって前記方向に互いに分離された、第1の伝導性型を有する第1のドープ領域を前記前表面に形成することを含み、前記損傷領域が、前記第1のドープ領域を含み、前記注入部分が、前記セル間領域を含み、前記チャネリングイオン注入が、前記第1のドープ領域に対して自己整合された様式で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記注入領域が、前記第1の電気伝導性、及び第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値を有する、前記パワー電子デバイスの電流拡散層の部分であり、前記部分が、前記セル間領域で局所化され、前記セル間領域の抵抗性を局所的に調節するように構成されている、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記パワー電子デバイスが、MOSFETトランジスタである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
表面を有するシリコンカーバイドの半導体ボディを形成することと、
前記表面において、前記表面に平行な方向に、注入部分によって互いに分離された損傷領域を形成することと、
前記半導体ボディの前記表面上に、前記損傷領域のそれぞれの損傷領域に重なるシールド領域を形成することと、
前記半導体ボディ内にドーピングイオンを注入して、前記半導体ボディの前記注入部分に前記注入領域を形成するために、チャネリングイオン注入を実施することと、を含み、
前記チャネリングイオン注入が、前記損傷領域に対して自己整合された様式で実施され、前記シリコンカーバイド結晶学的格子の損傷領域を構築して、前記半導体ボディの深さ方向における前記表面に直交する軸に沿った前記チャネリングイオン注入の伝搬を妨害する、製造プロセス。
【請求項18】
前記シールド領域が、注入されたイオンビームのチャネリング条件を低減するように、前記注入されたイオンビームに対してデフォーカシング特性を有する材料で作製されており、ひいてはデチャネリング領域として動作する、請求項17に記載の製造プロセス。
【請求項19】
製造プロセスであって、
損傷領域を、シリコンカーバイド基板の表面にあるシリコンカーバイドの注入部分に隣接して前記シリコンカーバイド基板の前記表面に形成することと、
前記半導体ボディ内にドーピングイオンを注入するためのチャネリングイオン注入を実施して、前記半導体ボディの前記注入部分に注入領域を形成し、前記損傷領域にランダムドーピングプロファイル部分を形成することと、を含み、
前記チャネリングイオン注入が、前記損傷領域に対して自己整合された様式で実施されており、シリコンカーバイド結晶学的格子の前記損傷領域の前記結晶学的格子が、前記半導体ボディの深さ方向における前記表面に横方向の軸に沿った前記チャネリングイオン注入の伝搬を妨害する、製造プロセス。
【請求項20】
前記ランダムドーピングプロファイル部分が、第1の深さを有し、
前記注入領域が、前記第1の深さよりも深い第2の深さを有する、請求項19に記載の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー電子デバイス内に局所化イオン注入部を製造するためのプロセスに関する。具体的には、以下の考察は、シリコンカーバイド(silicon-carbide、SiC)基板から出発して形成された、例えばMOSFETタイプのパワー電子デバイスに特に言及するであろう。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
知られているように、例えば1.1eVより大きい広いバンドギャップ、低いオン状態抵抗、高い熱伝導性、高い動作周波数、及び高い電荷キャリアの飽和速度を有する半導体材料は、具体的には、例えば600V~1300Vで構成された動作電圧及び/又は高温などの特定の動作条件での、電力用途のための、シリコン電子デバイスよりも良好な性能を有し得る電子デバイス、例えばダイオード及びトランジスタを提供する。
【0003】
具体的には、これらのパワー電子デバイスは、そのポリタイプのうちの1つ、例えば3C-SiC、4H-SiC、又は6H-SiCにおいて、上に列挙された特徴を有する材料であるシリコンカーバイドのウェハから出発して有利に製造することができる。
【0004】
既知の様式では、他の半導体材料(例えばシリコンなどの)と比較してシリコンカーバイドの拡散率が低いため、ドーパント拡散は適用可能な技術ではなく、エピタキシャル成長は、特に局所的に閉じ込められた体積に対して有用な代替法ではない場合があるので、シリコンカーバイド基板へのドーパントの導入は、一般に、イオン注入によって行われる。
【0005】
具体的には、シリコンカーバイド基板内に所望のドーピングプロファイル及び所望の深さを有する領域を形成するためには、典型的には、異なる条件(例えば、ドーズ量及びエネルギーに関して)で実施されるいくつかの注入工程が必要である。
【0006】
局所的に閉じ込められた注入(いわゆる、パターン化された注入)を提供するために、基板の上方に形成され、注入工程中にシリコンカーバイド基板を局所的に遮蔽するように構成された、例えば酸化物又はフォトレジストで作製されたハードマスクを使用することが知られている。
【0007】
しかしながら、前述のタイプのマスクの使用は、シリコンカーバイド基板上に発生した格子応力効果によって(また、様々な注入工程を行うために必要とされる時間によって)、同じマスクの除去後に、平坦性の問題を引き起こす場合があることが検証された。
【0008】
したがって、シリコンカーバイド基板内に局所化イオン注入部を製造するための既知の解決策及び選択肢は、かなり複雑であり、かなり多くの時間及びコストがかかり、更に、例えば同じ基板の平坦性に関して考察された問題などの問題を引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、先に強調された問題に対処して、特にシリコンカーバイド基板から出発して形成されたパワー電子デバイスに対して、電子デバイス内に局所化(又は、パターン化)イオン注入部を製造する代替的な方法を提供するために少なくとも部分的に提供され、これは、実装及び製造がより単純かつ安価である。
【0010】
したがって、本開示によれば、製造プロセスの1つ以上の実施形態が提供される。
【0011】
例えば、少なくとも1つの実施形態では、製造プロセスは、表面を有するシリコンカーバイドの半導体ボディを形成することと、局所化イオン注入を実施して、半導体ボディの注入部分内に注入領域を形成することと、を含んで要約され得、局所化イオン注入を実施することが、前表面において、前表面に平行な方向に、注入部分によって互いに分離された損傷領域を形成することと、半導体ボディ内にドーピングイオンを注入して、半導体ボディの注入部分に注入領域を形成するために、チャネリングイオン注入を実施することと、を含み、チャネリングイオン注入が、損傷領域に対して自己整合された様式で実施され、半導体ボディの深さ方向における前表面に直交する垂直軸に沿ったチャネリングイオン注入の伝搬を妨害するような、シリコンカーバイド結晶学的格子の損傷領域を構築する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示のより良い理解のために、その好ましい実施形態が、純粋に非限定的な例として、かつ添付の図面を参照してここで説明される。
【
図1A】本開示の一態様による、製造プロセス中の連続するイオン注入工程における、半導体材料、特にシリコンカーバイドのウェハの断面を示す。
【
図1B】本開示の一態様による、製造プロセス中の連続するイオン注入工程における、半導体材料、特にシリコンカーバイドのウェハの断面を示す。
【
図2】前述のイオン注入で実装可能なドーピングプロファイルのグラフを示す。
【
図3】前述のイオン注入で実装可能なドーピングプロファイルのグラフを示す。
【
図4】製造プロセスの変形例によるウェハの断面を示す。
【
図5】製造プロセスの変形例によるウェハの断面を示す。
【
図6】イオン注入に関連付けられた関数のトレンドを示す。
【
図7A】本開示の更なる態様による、MOSFETトランジスタを製造するためのプロセスの連続する工程におけるウェハの断面図である。
【
図7B】本開示の更なる態様による、MOSFETトランジスタを製造するためのプロセスの連続する工程におけるウェハの断面図である。
【
図7C】本開示の更なる態様による、MOSFETトランジスタを製造するためのプロセスの連続する工程におけるウェハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で詳細に説明されるように、本開示の一態様は、チャネリング型イオン注入プロセス(いわゆる「チャネリング」条件における)によって、すなわち、(基板全体に実施されるブランク注入とは異なる)基板の所望の選択された領域に閉じ込められる、局所化又はパターン化されたイオン注入部を製造するために提供する。
【0014】
説明される本開示は、電子デバイス、特に、シリコンカーバイド基板を有するパワー電子デバイスにおいて有利な用途を見出すことができる。
【0015】
既知の様式では、チャネリング条件は、注入されたイオンビームの方向が半導体材料の結晶軸のうちの1つに沿って、実質的にそれに平行に向きを定められるときに生じる。
【0016】
結晶格子に注入されるとき、イオンは、一般に、結晶格子の原子との衝突により(衝突散乱の現象に従って)分散する傾向がある。
【0017】
具体的には、注入方向が結晶格子の主軸に対して斜めの角度に向きを定められたとき、格子内の原子は、注入方向に対してランダムな分布を有する。したがって、注入されたイオンと結晶格子の原子との間の衝突確率は、深さに沿って実質的に均一である。したがって、この注入条件では、深さに対して実質的にガウシアンであるドーピングプロファイルが得られ、注入によって到達される深さは、エネルギー、使用されるイオン、及びターゲットの原子構造によって決定される。
【0018】
注入方向が、代わりに、結晶格子の主軸に近いチャネリング方向である場合、結晶格子内の原子は、注入されたイオンによって自由に横断され得る「チャネル」を画定する。これは、注入されたイオンと結晶格子の原子との間の衝突確率を、特に注入が行われるウェハの表面付近で減少させ、結果的に同じ注入の深さを著しく増加させることができる。
【0019】
一般に、注入チャネリングは、注入方向がチャネリング方向に対して臨界角内にあるときに生じる。この構成では、電子エネルギーの損失(結晶原子の電子雲との相互作用)は、核損失(結晶核との衝突)に対して優勢である。臨界角の値は、例えば、使用される方向、種、及びエネルギーに依存する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「注入角」という用語は、注入中に使用されるウェハの傾斜角を指す。それは、一般に、ウェハの表面に対する角度として定義され得る。一般に、ウェハの表面は、連続エピタキシャルプロセスに好適なカット角、例えば4°で画定されるため、結晶面ではなく、したがって、例では、注入中に結晶格子の<0001>方向を識別するために、ウェハを4°の傾斜角で傾斜させる必要がある。
【0021】
チャネリングは、典型的には、パワー電子デバイスの製造中の望ましくない効果であり(例えば、注入深さが所望の深さよりも大きい場合があるため、かつ同じ深さの値を制御することが困難であるため)、したがって、チャネリング効果を最小限に抑えるために、注入方向は一般に非チャネリング方向に向きを定められる。
【0022】
しかしながら、先に示されたように、本発明の出願人は、同じ基板内の所望の深さ全体にわたって延在する対応する局所化(すなわち、対応する基板に対して選択的に実施される)イオン注入部を形成するために、シリコンカーバイド電子デバイスを製造するためのプロセス内で、制御された反復可能な様式で、チャネリング注入を提供する可能性を検証した。
【0023】
具体的には、本出願人は、チャネリング効果が、チャネリング注入が行われる基板の表面の領域に対する(意図的な)損傷によって変化し得ることを検証した。
【0024】
この意図的な損傷領域(Intentionally Damaged Region、IDR)は、例えば、すなわち、その伝導性特徴を局所的に変化させることなく、結晶格子に損傷を引き起こすような、非反応性種又は非ドーピング種の(ランダムな非チャネリング型)表面イオン注入によって得ることができる。この目的に好適な化学種としては、例えば、シリコン(Silicon、Si)、アルゴン(Argon、Ar)、又はゲルマニウム(Germanium、Ge)原子が挙げられる。
【0025】
代替的に、損傷は、例えば、電子デバイスを製造するためのプロセスが表面ドープ領域の存在を既に提供している場合であり得るように(以下でより詳細に説明されるように)、ドーピング種(例えば、基板の伝導性と反対の伝導性を有する)のイオン注入によって得ることができる。
【0026】
更なる実施形態によれば、意図的な損傷領域は、半導体基板の前側の1つ以上のエッチング工程によって形成され得る。具体的には、所望の表面部分のみをエッチングすることによって損傷させるために、この所望の表面部分のみを露出させるエッチングマスクを使用することができる。
【0027】
したがって、前述の損傷(イオン注入又はエッチングによって提供される)の結果として、基板は、損傷領域において、異なる格子構造を有する。具体的には、半導体材料は、損傷した場合、非晶質構造若しくは不規則結晶構造、又はそうでなければ基板の残りの部分(意図的に損傷させていない)に存在する空間対称性を欠いた格子構造を有する。
【0028】
図1Aは、シリコンカーバイド、例えばn型伝導性を有するドーピングを有する4H-SiC型の半導体ボディ2を含むウェハ1を示し、水平面xy内に主拡張部を有し、かつ水平面xyに直交する垂直軸zに沿って互いに対向する、前表面1a及び後表面1bによって区切られる。これらの平面は、本開示の
図1A及び
図1Bに示されるように、これらの軸の向きに基づいて、水平及び垂直と称される。
【0029】
可能な実装形態では、この半導体ボディは、例えば、基板から出発するエピタキシャル成長によって形成され得る。具体的には、エピタキシャル成長に続いて、シリコンカーバイド結晶学的格子は、ウェハ1の表面に対してある特定の(非ゼロ)角度で向きを定められ得る。可能な実装形態では、4H-SiC格子構造は、約4°のオフカット角(ウェハ1の表面と、例えば<0001>方向に沿った主結晶面との間の角度として意図される)を有し得る。
【0030】
本開示の一態様によれば、シリコンカーバイド結晶学的格子の構造を局所的に変化させ、連続チャネリング注入中のチャネリングを抑制するために、1つ以上の(意図的な)損傷領域10が形成される(
図1Aは、純粋に例として、水平面xyの第1の水平軸xに沿ってある特定の距離だけ互いに分離されたこれらの領域のうちの2つを示す)。例えば、損傷領域10は、連続チャネリング注入中のチャネリングを抑制するための、半導体ボディ2の残部の第1の結晶格子構造とは異なる第2の結晶格子を有する。
【0031】
損傷領域10は、前表面1aから出発する垂直軸(z)に沿った所望の深さで半導体ボディ2内に表面的に延在し、この深さは、例えば0.1~0.6μmで構成されている。
【0032】
損傷領域10を形成することは、先に考察されたように、代替的に、好適なドーズ量のイオン(例えば、非ドーピングイオン)及び低エネルギー(半導体ボディ2内に浅い深さに侵入するために)で、マスキングによって表面(非チャネリング)イオン注入を実施すること、又は、前表面1aから出発する、同じ半導体ボディ2の1つ以上の表面エッチング工程を実施することを含む。
【0033】
詳細には、損傷領域10を形成することは、1013原子/cm2よりも多い注入ドーズ量と、必要な深さに対して結晶構造から原子の変位を引き起こすのに十分なエネルギー(例えば、30~200keVの範囲のエネルギーを有する)と、を使用することを含み得る。損傷を導入する注入はチャネリング条件では実施されず、生成された損傷を除去しないように、プロセス中のウェハの加熱(アニーリング)は回避される。
【0034】
代替的に、損傷領域10は、ウェハ1の前表面1aの1つ以上のエッチング工程によって、例えば、物理的エッチング特徴(イオン衝撃)を有する反応性イオンエッチング(RIE、Reactive Ion Etching)エッチングによって形成され得る。所望の表面部分のみをエッチングすることによって損傷させるために、そのような所望の表面部分のみを露出させるエッチングマスクを使用することができる。
【0035】
本開示の一態様によれば、
図1Bに示されるように、すなわち、チャネリング条件で実行されるチャネリングイオン注入は、次いで、所望の伝導性(例えば、n型の伝導性も)及びドーピング(例えば、半導体ボディ2のそれぞれのドーピングよりも大きい)を有する注入領域12(CHAN)を形成するために実施される。このチャネリングイオン注入は、活性エリアでマスクを使用せずに実施される。
【0036】
具体的には、チャネリングイオン注入に続いて、注入領域12は、前述の損傷領域10が存在しない半導体ボディ2の部分、例えば前述の損傷領域10の間に挟入された部分に局所化される。
【0037】
同じ注入領域12は、代わりに、損傷領域10が存在する場所、特に同じ損傷領域10の下方には延在していない。
【0038】
これらの損傷領域10は、実際には、結晶格子の観点から大きく損傷した表面領域であり、したがって、深さ方向に沿って貫通することなく表面(前述の前表面1a)にランダムに分布する注入されたイオンに対する障壁を表す。
【0039】
結果として、チャネリング条件下でのイオン注入は、これらの損傷領域10に対して自己整合された様式で実施されるため、注入されたイオンは、同じ損傷領域10が存在しない場所だけチャネリング条件下で深部に進み、前述の注入領域12(チャネリングイオン注入の終了時には、例えば損傷領域10の深さよりも深い深さを有する)を形成する。
【0040】
損傷領域10において、注入は、(
図1Bの破線によって示されるように)非常に浅い深さ、及び前表面1aに近接して位置する注入ピークを有する、ランダムドーピングプロファイル(RND、random doping profile)を生成する。示されるように、このドーピングは、損傷領域10のドーピングを変化させないように(又は、いずれの場合も、制限された制御可能な様式で変更するように)、実質的にごくわずかであり得る。損傷領域10の先のドーピング(ドーピング種による注入の場合)が、チャネリング注入で注入されたドーパントのドーズ量よりも多いドーズ量、及び電気伝導性の型(例えば、nからpまで)の局所的な反転によって反対の伝導性を有する場合、前述の深さは実質的にヌルであり得る。
【0041】
逆に、同じ損傷領域10(したがって、注入マスクの一種である)が存在しない場合、半導体ボディ2の中に深さ方向に延在する平坦な注入プロファイルが生み出される。
【0042】
したがって、イオン注入の深さは、注入マスクの使用に頼る(したがって、同じマスクの使用に関連する欠点を回避する)ことなく、前述の損傷領域10に対して自己整合された様式で調節される。
【0043】
より詳細には、チャネリングイオン注入は、チャネリング条件を提供し、したがって半導体ボディ2の深さに向かう注入されたイオンのチャネリングを可能にするように、ウェハ1の前表面1aに直交する方向に対してある特定の角度(傾斜角)で実施される。
【0044】
(半導体ボディ2が4H-SiC格子を有し、室温で例えば240keVに等しい注入エネルギーを有するリン(phosphorus、P)原子で注入が実施される場合の)先に考察された実装形態では、イオン注入は、注入が結晶格子の<0001>方向に沿って実質的にチャネリングされた様式で行われるように、3.5°~4.5°で構成された、例えば約4°に等しい傾斜角で実施され得る。
【0045】
更なる可能な実施形態では、注入は、アルミニウム(aluminum、Al)原子で、例えば640keVに等しい注入エネルギーで、再び室温で実施される。
【0046】
図2は、2つの異なる条件下での注入プロファイル(すなわち、垂直軸zに沿った深さの関数としての注入ドーズ量)を示す:チャネリング条件下で、例では、4°に等しい傾斜角で実施される注入(CHAN、プロファイルは破線で示されている)で、及びランダム注入で(RND、プロファイルは実線で示されている)。
【0047】
チャネリング注入は、ウェハ1の前表面1aから出発する所望の深さ(この深さは、例えば0.5~5μmで構成され、例えば2μmに等しい)内で、実質的に平坦なドーピングプロファイルを得ることを可能にすることが明らかである。
【0048】
本出願人は、考察されたチャネリングイオン注入が、注入領域12のドーピングの非常に精密な制御を、特に所望の値に対して1%よりも小さい変動で得ることを可能にすることを実験的に実証した。前述のチャネリングイオン注入はまた、注入領域12の深さの非常に精密な制御を、特に所望の値に対して1%よりも小さい変動で可能にする。
【0049】
より詳細には、前述のチャネリングイオン注入によって注入されたプロファイルは、以下のように表され得、
C
tot(z)=α(d)C
Rnd(z)+(1-α(d))C
Chan(z)
式中、C
tot(z)が、全注入プロファイル(垂直軸Zに沿った深さzの関数として注入ドーズ量に関して表現される)であり、C
Rnd(z)が、前述の
図2に実線で示される、純粋にランダムなプロファイル成分(損傷した結晶格子によってチャネリングが完全に阻止される場合に)であり、C
Chan(z)が、前述の
図2に破線で示される、チャネリングプロファイル成分であり、α(d)(ただし、α(d)≦1)が、前述の損傷領域10における累積損傷dの関数であり、損傷は、例えば、注入ドーズ量又は行われるエッチングの強度が増加するにつれて増加する。基本的には、前述の表現における関数α(d)は、チャネリングに利用可能な注入の百分率を表す。
【0050】
図3に示されるように、損傷の蓄積が増加するにつれて(矢印で指示されるように)、すなわち、α(d))が増加するにつれて、注入プロファイルは、純粋にチャネリングされたプロファイル(実質的にα(d)のゼロ値に対応する)から、純粋にランダムなプロファイル(実質的にα(d)の単一の値に対応する)に向かって移動し、濃度ピーク及び注入深さの両方の対応する変動を伴う。
【0051】
α(d)値(例えば、損傷領域10を形成するために実施される表面注入の特性の関数として)の調節は、注入領域12の濃度ピーク及び深さ特性が所望の様式で決定されることを可能にするということになる。
【0052】
具体的には、
図4に示されるように、ドープ領域14は、したがって、(前述の純粋にランダムなプロファイルと純粋にチャネリングされたプロファイルとの組み合わせとして得られる)混合注入プロファイルを有する、損傷領域10に形成され得、場合によっては同じ損傷領域10の下方に部分的に形成され得る。
【0053】
したがって、チャネリングイオン注入の終了時に、実質的にチャネリングされた注入プロファイルを有する注入領域12、及び混合注入プロファイルを有するドープ領域14は、半導体ボディ2内に形成され得る。
【0054】
損傷領域10の少なくともいくつかにおいて、注入は、代わりに、実質的にごくわずかな効果を生成し、ウェハ1の前表面1aに実質的にランダムな注入プロファイルを有する(同じ損傷領域10の下方でのドーピング変動がない)。
【0055】
本開示の更なる態様によれば、
図5に示されるように、1つ以上のシールド領域16は、チャネリング注入とは異なる注入プロファイル、例えば混合注入プロファイルを有するドープ領域14を形成することが望ましい半導体ボディ2の部分上で、ウェハ1の前表面1aの上方に形成され得る。
【0056】
前述のシールド領域16は、チャネリング状態を低減するように、注入されたイオンビームに対してデフォーカシング特性を有し、かつデチャネリング領域として作用する非晶質材料(酸化物又は窒化物などの)で作製される。
【0057】
これらのシールド領域16が存在下では、前述のチャネリングイオン注入によって注入されたプロファイルは、以下の様式で表され得、
Ctot(z)=γE(th)CRnd(z)+(1-γE(th))CChan(z)
式中、γE(th)が、シールド領域16の厚さth及び注入のエネルギーEの関数であり、したがって、注入のエネルギーEは、この場合、チャネリングに利用可能な注入の百分率を表す。
【0058】
シールド領域16の厚さthが変動し、注入エネルギーEの異なる値で変動する場合の、この関数γ
E(th)の可能なトレンドが
図6に示されている。
【0059】
前述の
図5に示されるように、したがって、実質的にチャネリングされた注入プロファイルを有する注入領域12、及び混合注入プロファイルを有するドープ領域14は、チャネリングイオン注入の終了時に半導体ボディ2内に再び形成される。損傷領域10の少なくともいくつかにおいて、注入は、代わりに、実質的にごくわずかな効果を生成し、ウェハ1の前表面1aに実質的にランダムな注入プロファイルを有する。
【0060】
ここでも、同じイオン注入工程は、注入マスクの使用に頼ることなく、半導体ボディ2において「パターン化された」様式でドーピングプロファイルの調節を得ることを可能にすることが強調される。
【0061】
先に示されたように、説明された本開示は、パワー電子デバイス、例えばMOSFETトランジスタの製造において有利な用途を見出すことができる。
【0062】
ここで
図7Aを参照すると、MOSFETトランジスタを製造するためのプロセスは、活性エリアにおける複数の基本セルの形成を想定している。
【0063】
具体的には、このプロセスは、最初に、同じ半導体ボディ2に対して反対のタイプ、例えばp型のドーピングイオンのマスク注入によって、ウェハ1の前表面1aにおける半導体ボディ2内でのボディ領域20の形成を想定することができる(この注入は、旧来の様式で、すなわち、ランダムイオン注入で、実質的にゼロの傾斜角で実施されることが強調される)。
【0064】
ボディ領域20は、ある特定の距離で、水平面xyのx軸に沿って互いに分離されている。具体的には、前表面1aにおける隣接するボディ領域20の間の半導体ボディ2の部分(この場合、MOSFETトランジスタのドリフト層を表す)は、セル間又はJFET領域であり、21で示されている。
【0065】
その後、同じ
図7Aに示されるように、それぞれのソース領域22が、n型の場合には、イオン(例えば、窒素イオン又はリンイオンを有する)のマスク注入によって各ボディ領域20内に(それに対して中央に)再び形成される。これらのソース領域22は、同じボディ領域20の対応する深さよりも浅い垂直軸zに沿った深さを有する。
【0066】
次いで、同じ
図7Aに示されるように、ボディコンタクト領域24は、ソース領域22のうちのいくつか内に(それに対して中央に)及びウェハ1の前表面1aに形成される。
【0067】
それぞれのボディ領域20とのオーミックコンタクトを作り出す目的を有するこれらのボディコンタクト領域24は、高ドーピングドーズ量を有するp+型の場合には、イオンのマスク注入によって再び形成される。
【0068】
製造プロセスのこの時点において(
図7B)、チャネリングイオン注入は、先に考察されたように、ソース領域22(及びボディコンタクト領域24)を前述の損傷領域10として活用して実施されており、そのような表面領域は、結晶格子の観点から実際には大きく損傷されている。
【0069】
結果として、注入されたイオンが、前述の注入領域12が形成されたJFET領域21のみにチャネリング条件下で深さ方向に進行するように、ソース領域22に対して自己整合された様式でチャネリング条件下でのイオン注入が実施される。
【0070】
この場合、これらの注入領域12は、MOSFETトランジスタの電流拡散層(Current Spreading Layer、CSL)の一部分であり、これをJFET領域21内で使用して、オン状態抵抗(Ron)を低減する。
【0071】
有利なことに、注入領域12は、したがって、電流拡散層の別個の部分であり、ソース領域22の下にある半導体ボディ2の部分の特徴を変動させずに、特に、そのドーピングを増加させずに、かつMOSFETトランジスタのボディ/ドレイン接合部の特徴を変動させずに、JFET領域21の抵抗性を所望の様式で低減することを可能にする。
【0072】
チャネリングイオン注入の後、ドーピングイオンを活性化するために、かつ結晶格子中の欠陥を低減するために、ウェハ1はアニール処理に供され得る。
【0073】
次いで、
図7Cに示されるように、ウェハ1の前表面1a上の絶縁ゲート構造26及びソースメタライゼーション領域28が形成される。
【0074】
具体的には、絶縁ゲート領域26は、各々、前述のJFET領域21の上方でウェハ1の前表面1aと接触している、例えば酸化物の、ゲート絶縁領域30と、ゲート絶縁領域30上に直接重なる伝導性材料のゲート導電領域31と、ゲート伝導性領域31を覆い、ゲート絶縁層30と一緒にゲート伝導性領域31を封止するパッシベーション領域32と、によって形成される。
【0075】
絶縁ゲート構造26のゲート伝導性領域31は、ここでは示されていない様式で電気的に並列に接続され、MOSFETパワー電子デバイスのゲート端子を形成する。
【0076】
例えば金属材料及び/又は金属シリサイドのソースメタライゼーション領域28は、MOSFETパワー電子デバイスのソース端子を形成し、ウェハの前表面1a上及び絶縁ゲート構造26上に延在し、ソース領域22及びボディコンタクト領域24と直接電気的に接触している。
【0077】
図示されていない様式で、同じパワー電子デバイスのドレイン端子を形成するために、更なるメタライゼーション領域がウェハ1の後表面1b上に形成されてもよい。
【0078】
したがって、
図7Dに全体として100で示されるMOSFETパワー電子デバイスの各基本セルは、絶縁ゲート構造26によって、並びにボディ領域20及びソース領域22の隣接部分によって、並びに下にあるJFET領域21によって形成される。
【0079】
本開示の利点は、前出の説明から明らかである。
【0080】
いずれの場合でも、本開示は、得られた電子デバイスの電気的特徴を改善しながら(例えば、注入を実施するためのマスクの非存在のため)、注入マスクの非存在下で、単一のチャネリングイオン注入工程によって半導体ボディ内に局所化イオン注入部を形成することを可能にし、歩留まりを改善し、製造プロセスのコストを削減する(実際には、多数の注入工程の繰り返しを回避する)ことが強調される。
【0081】
更に、自己整合された注入を実装するための損傷領域として、電子デバイスの製造プロセス中に先に形成されたドープ領域(例えば、MOSFETトランジスタの場合には、考察されたボディ領域及び/又はソース領域などの)を使用する可能性が有利であり得る。
【0082】
最後に、添付の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明及び図示されるものに対して修正及び変形が行われ得ることが明らかである。
【0083】
具体的には、説明される本開示は、異なるパワー電子デバイス、例えばダイオード又はJFETトランジスタにおいても有利な用途を見出すことができることが強調される。
【0084】
チャネリングイオン注入は、異なるドーピングイオン、例えば、(リン原子の代わりに)窒素原子を用いて実施されてもよい。しかしながら、リンを使用することは、電流拡散層の得られた平坦なドーピングプロファイルのため、特に有利であることが判明している。
【0085】
更に、半導体材料のウェハは、例えばGaNなどのSiC以外の材料で作製されてもよい。
【0086】
製造プロセスは、前表面(1a)を有するシリコンカーバイドの半導体ボディ(2)を形成することと、局所化イオン注入を実施して、半導体ボディ(2)の注入部分内に注入領域(12)を形成することと、を含むように要約され得、局所化イオン注入を実施することが、当該前表面(1a)において、当該前表面(1a)に平行な方向(x)に、当該注入部分によって互いに分離された損傷領域(10)を形成することと、当該半導体ボディ(2)内にドーピングイオンを注入して、半導体ボディ(2)の当該注入部分に当該注入領域(12)を形成するために、チャネリングイオン注入を実施することと、を含み、当該チャネリングイオン注入が、当該損傷領域(10)に対して自己整合された様式で実施され、当該半導体ボディ(2)の深さ方向における当該前表面(1a)に直交する垂直軸(z)に沿った当該チャネリングイオン注入の伝播を妨害するような、シリコンカーバイド結晶学的格子の損傷領域を構築する。
【0087】
損傷領域(10)を形成することは、代替的に、当該チャネリングイオン注入に対してより低いエネルギーで、マスクされた非チャネリング表面イオン注入を実施するか、又は前表面(1a)から出発する、半導体ボディ(2)の1つ以上の表面エッチング工程を実施することを含み得る。
【0088】
当該注入領域(12)は、当該半導体ボディ(2)の深さ方向における当該垂直軸(z)に沿った実質的に平坦なチャネリングドーピングプロファイルを有し得、当該チャネリングイオン注入が、当該損傷領域(10)において、当該チャネリングドーピングプロファイルに対してより浅い深さを有する注入プロファイル、及び当該前表面(1a)に近接する注入ピークを決定し得る。
【0089】
このプロセスは、当該垂直軸(z)に沿って注入領域(12)のドーピングプロファイルを調節するために、シリコンカーバイド結晶格子内の当該損傷領域(10)によって引き起こされた損傷の量(α(d))を調節することを含み得る。
【0090】
当該ドーピングプロファイルは、以下によって与えられ得、
Ctot(z)=α(d)CRnd(z)+(1-α(d))CChan(z)
式中、Ctot(z)が、垂直軸(z)に沿った深さの関数としての当該ドーピングプロファイルであり、CRnd(z)は、チャネリングが結晶格子によって阻止される場合に対応する純粋にランダムなプロファイル成分であり、CChan(z)は、チャネリングが結晶格子によって阻止されない場合に対応する純粋にチャネリングされたプロファイル成分であり、α(d)(ただし、α(d)≦1)が、損傷領域(10)における累積損傷の関数である。
【0091】
このプロセスは、損傷領域(10)のうちのいくつかにおいて、当該純粋にランダムな(CRnd(z))プロファイルと純粋にチャネリングされた(CChan(z))プロファイルとの組み合わせとして得られる、混合注入プロファイルを有するドープ領域(14)を形成することを更に含み得る。
【0092】
このプロセスは、半導体ボディ(2)の前表面(1a)の上方に、当該垂直軸(z)に沿った厚さ(th)を有する少なくとも1つのシールド領域(16)を形成することを更に含み得、チャネリングイオン注入を実施することが、当該シールド領域(16)の下にある半導体ボディ(2)の一部分に、当該注入領域(12)のドーピングプロファイルとは異なるドーピングプロファイルを有するそれぞれのドープ領域(14)を形成することを含む。
【0093】
当該シールド領域(16)は、注入されたイオンビームのチャネリング条件を低減するように、注入されたイオンビームに対してデフォーカシング特性を有する材料で作製されており、ひいてはデチャネリング領域として動作する。
【0094】
当該シールド領域(16)の存在下では、前述のチャネリングイオン注入によるドーピングプロファイルは、以下によって与えられ得、
Ctot(z)=γE(th)CRnd(z)+(1-γE(th))CChan(z)
式中、Ctot(z)が、垂直軸(z)に沿った深さの関数としての当該ドーピングプロファイルであり、CRnd(z)は、チャネリングが結晶格子によって完全に阻止される場合に対応する純粋にランダムなプロファイル成分であり、CChan(z)は、チャネリングが結晶格子によって阻止されない場合に対応する純粋にチャネリングされたプロファイル成分であり、γE(th)が、シールド領域(16)の厚さ(th)の関数である。
【0095】
当該ドーピングイオンは、リン原子であり得る。
【0096】
当該チャネリングイオン注入は、非ゼロ傾斜角だけ傾斜した注入方向に沿って実施され得る。
【0097】
当該傾斜角は、当該チャネリングイオン注入が当該半導体ボディ(2)のシリコンカーバイド結晶学的格子の主軸に沿って方向付けされ、ドーピングイオンが当該半導体ボディ(2)内に侵入するように、3.5°~4.5°で含まれ得る。
【0098】
このプロセスは、当該半導体ボディ(2)内にパワー電子デバイス(100)の基本セルを形成することを含み得、基本セルを形成することが、当該パワー電子デバイス(100)のセル間領域によって当該方向(x)に互いに分離された、第1の伝導性型(n)を有する第1のドープ領域(20)を当該前表面(1a)に形成することを含み得、当該損傷領域(10)が、当該第1のドープ領域(20)を含み得、当該注入部分が、当該セル間領域を含み、当該チャネリングイオン注入が、当該第1のドープ領域(20)に対して自己整合された様式で実施される。
【0099】
当該注入領域(12)は、第1の電気伝導性(n)、及び第1のドーピング値よりも大きい第2のドーピング値を有する、当該パワー電子デバイス(100)の電流拡散層の部分であり得、当該部分が、当該セル間領域で局所化され、当該セル間領域の抵抗性を局所的に調節するように構成されている。
【0100】
当該パワー電子デバイス(100)は、MOSFETトランジスタであり得る。
【0101】
上で説明される様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、及び刊行物の概念を採用するように変更して、更なる実施形態を提供することができる。
【0102】
これらの変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されるものではない。
【外国語明細書】