(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012528
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】微小液滴ベースの多置換増幅(MDA)方法及び関連組成物
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240123BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189575
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2021170828の分割
【原出願日】2016-08-16
(31)【優先権主張番号】62/206,202
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】アベート,アダム アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラン,フリーマン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】シドレ,アンガス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】核酸鋳型分子を非特異的に増幅する方法を提供する。前記方法は、例えば、培養不可能な微生物のゲノムをシークエンシングするために、または癌細胞におけるコピー数多型を特定するために、シークエンシングするための核酸鋳型分子(複数可)を増幅するために使用することができる。
【解決手段】生物試料から得られた核酸鋳型分子を微小液滴中に封入すること、多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを微小液滴中に導入すること及びMDA増幅産物の生成に効果的な条件下で微小液滴をインキュベートすることであって、前記インキュベーションは、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を産生するのに有効である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子と、複数の多置換増幅(MDA)試薬と、複数のMDAプライマーとを含む溶液を調製し、
前記溶液を封入して、複数の微小液滴を生成し、このとき各微小液滴の内容積が等容積であり、そして
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記複数の微小液滴をインキュベートするように構成された、このとき前記インキュベートが核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、核酸鋳型分子を非特異的に増幅するためのデバイス。
【請求項2】
前記各微小液滴が0.001ピコリットル~1000ピコリットルの内容積を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記封入が、マイクロ流体制御下で実施される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスが、次世代シークエンシング(NGS)を介して前記MDA増幅産物の配列を決定するようにさらに構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記生物試料が1つまたは複数の細胞を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、検出成分を各微小液滴に導入するようにさらに構成されており、このとき前記検出成分の検出がもう1つのMDA増幅産物の存在を示す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、蛍光の変化に基づいて前記検出成分を検出するようにさらに構成されている、請求項6に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2015年8月17日に出願された米国特許仮出願第62/206,202号の利益を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国国立科学財団によって与えられた助成金番号DBI1253293、米国国立衛生研究所によって与えられた助成金番号HG007233、R01EB019453及びAR068129、国防総省によって与えられた助成金番号HR0011-12-C-0065及びHR0011-12-C-0066、ならびに宇宙・海軍戦闘システムセンター(Space and Naval Warfare Systems Center)によって与えられた助成金番号N66001-12-C-4211のもとで政府の支援により実施された。政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
少量の核酸、例えばDNAを効率的にシークエンスする能力は、培養不可能な微生物のゲノムのアセンブリーから癌関連変異の特定に及び用途にとって重要である。シークエンシングするのに十分な量の核酸を得ることは、限られた出発材料をかなり増幅しなければならない。しかし、既存の方法はエラーまたはカバレッジの不均一性をもたらすことが多く、これによって、シークエンシングデータの質が低下する。
【0004】
単一細胞シークエンシングは微生物生態学において貴重なツールであり、海洋(Yoon et al.(2011)“Single-cell genomics reveals organismal interactions in uncultivated marine protists.”Science,332,714-717)からヒトの口(Marcy et al.(2007)“Dissecting biological‘dark matter’with single-cell genetic analysis of rare and uncultivated TM7 microbes from the human mouth.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,104,11889-11894)に及ぶ群集の解析を増強した。微生物の大部分は培養することができないので(Hutchison III,C.A.H.and Venter,J.C.(2006)“Single-cell genomics.”Nat.Biotechnol.,24,657-658)、シークエンシングするのに十分な量のDNAを得るには、単一細胞ゲノムのかなり増幅が必要になる。しかし、これを達成するための既存の方法は増幅の偏りの傾向があり、これによって、シークエンシングが非効率的になり、且つ費用が高くなる。したがって、少量のDNAを均一に増幅する新しい方法を開発するための努力が続けられている。
【0005】
1つの方法は、非特異的増幅を可能にするようにPCR反応を改変することである。例えば、プライマー伸長前増幅(PEP)及び縮重オリゴヌクレオチドプライムPCR(DOP-PCR)は、大部分のDNA配列の非特異的アニーリング及び増幅を可能にするための改変したプライマー及び熱サイクル条件を使用する(Zhang et al.(1992)“Whole genome amplification from a single cell:implications for genetic analysis.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89,5847-5851、Telenius et al.(1992)“Degenerate oligonucleotide-primed PCR:general amplification of target DNA by a single degenerate primer.”Genomics,13,718-725)。しかし、増幅の偏りは、これらの方法にとって大きな課題のままであり、生成物は、一般的には、元の鋳型を十分にカバーせず、且つカバレッジのかなりの変動を有する(Cheung,V.G.and Nelson,S.F.(1996)“Whole genome amplification using a degenerate oligonucleotide primer allows hundreds of genotypes to be performed on less than one nanogram of genomic DNA.”Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93,14676-14679、Dean et al.(2002)“Comprehensive human genome amplification using multiple displacement amplification.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,99,5261-5266)。多重アニーリング及びループ化による増幅サイクル法(Multiple Annealing and Looping Based Amplification Cycles)(MALBAC)は、ループで自己アニールするアンプリコンを生じさせるプライマーを用いてこの偏りを低減し、これは、優勢生成物の指数関数的増幅を抑制し、鋳型全体にわたって増幅を等しくする(Zong et al.(2012)“Genome-wide detection of single-nucleotide and copy-number variations of a single human cell.”Science,338,1622-6)。それにもかかわらず、この反応に必要とされる特殊化したポリメラーゼは、サイクルを通して伝搬するエラーをコピーする傾向があり、その結果エラー率が増大する(同上)。
【0006】
多置換増幅(MDA)は、非常に正確な酵素であるΦ29DNAポリメラーゼ(Esteban et al.(1993)“Fidelity of phi29 DNA Polymerase.”J.Biol.Chem.,268,2719-2726)を使用して、最低限のエラーで非特異的増幅を可能にする。さらに、Φ29DNAポリメラーゼはワトソン-クリック塩基対鎖をずらし、これによって、熱誘導性変性なしで鋳型分子の指数関数的増幅を可能にする(Dean et al.(2002)“Comprehensive human genome amplification using multiple displacement amplification.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,99,5261-5266)。それにもかかわらず、混入DNAの増幅(Raghunathan et al.(2005)“Genomic DNA Amplification from a Single Bacterium Genomic DNA Amplification from a Single Bacterium.”Appl.Environ.Microbiol.,71,3342-3347)及び単一細胞ゲノムの非常に不均等な増幅(Dean et al.(2001)“Rapid amplification of plasmid and phage DNA using Phi29 DNA polymerase and multiply-primed rolling circle amplification.”Genome Res.,11,1095-1099、Hosono et al.(2003)“Unbiased whole-genome amplification di
rectly from clinical samples.”Genome Res.,13,954-964)という、2つの大きな問題がMDAに存続する。これらの問題は、MDA増幅した材料をシークエンスする場合に多数の課題をもたらし、こうした課題には、不完全なヒトゲノムアセンブリー、ゲノムカバレッジにおけるギャップ及び複製配列の偏った数が含まれ、これらは、癌におけるコピー数多型の評価などの様々な用途において生物学的に関連性がある。その単純性及び正確性の理由から、MDA増幅の偏りを低減するためのいくつかのストラテジーが用いられ、これには、トレハロースで反応を増強すること(Pan et al.(2008)“A procedure for highly specific,sensitive,and unbiased whole-genome amplification.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,105,15499-15504)、反応量を低減すること(Hutchison et al.(2005)“Cell-free cloning using phi29 DNA polymerase.”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,102,17332-17336)、及び分離したプールにおける多様性を低減するためにナノリットルスケールのマイクロ流体チャンバーを使用すること(Marcy et al.(2007)“Nanoliter reactors improve multiple displacement amplification of genomes from single cells.”PLoS Genet.,3,1702-1708,Gole et al.(2013)“Massively parallel polymerase cloning and genome sequencing of single cells using nanoliter microwells.”Nat.Biotechnol.,31,1126-32)が含まれる。これらの方法はMDAに付随する問題を軽減するのに役立つが、低投入量の材料の堅牢で均一な増幅は課題のままである。
【0007】
本開示は、当技術分野における上記の欠点に対処するのに役立つ方法及び関連組成物を提供する。
【発明の概要】
【0008】
核酸鋳型分子を非特異的に増幅する方法が提供される。ある種の態様では、方法は、シークエンシングするために、例えば、培養不可能な微生物のゲノムをシークエンシングするために、または癌細胞におけるコピー数多型を特定するためにシークエンシングするために、核酸鋳型分子(複数可)を増幅するのに使用することができる。
【0009】
本開示の方法は、生物試料からの核酸、例えばゲノムDNAを増幅する方法を含む。マイクロ流体を使用して、生物試料の成分、例えばゲノムDNAを0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの容積の範囲の内容積を有する微小液滴に封入することができる。次いで、本明細書でより十分に記載するように、各微小液滴に封入した成分を増幅及びアッセイすることができる。いくつかの実施形態では、核酸鋳型分子は、各微小液滴が0個または1個のいずれかの核酸鋳型分子を含むように微小液滴に封入される。言い換えれば、いくつかの実施形態では、核酸鋳型分子は微小液滴あたり1の比またはそれ以下で封入される。非常に少ない分子、例えば、10以下、5以下、例えば単一分子を区画化及び増幅することは、均一なカバレッジをともなう正確な配列データを得ることに対していくつかの利点を与える。分子が互いに分離されているので、各反応は、いつ開始するかに関係なく、飽和まで進行し、すなわち、バルクで偏りの主な原因なのが確率過程である(Rodrigue et al.(2009)“Whole genome amplification and de novo assembly of single bacterial cells.”PLoS One,4.)。本明細書でより詳細に述べるように、これらの利点は正確性を大いに高める。
【0010】
開示される方法の態様は、核酸鋳型分子を非特異的に増幅することを含むことができ、これは、生物試料から得られた核酸鋳型分子を微小液滴中に封入すること、多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを微小液滴中に導入すること、ならびにMDA増幅産物の生成に効果的な条件下で微小液滴をインキュベートすることであって、核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、インキュベートすることを含む。ある種の態様では、封入することは、1つまたは複数の生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子を複数の微小液滴中に封入することを含み、導入することは、MDA試薬及び複数のMDAプライマーを複数の微小液滴のそれぞれに導入することを含み、インキュベートすることは、MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で複数の微小液滴をインキュベートすることであって、核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、インキュベートすることを含む。ある種の態様では、MDA増幅産物は、単一のMDA増幅産物または複数の異なるMDA増幅産物を含む。ある種の態様では、生物試料は1つまたは複数の細胞を含む。
【0011】
方法の態様は、生物試料から単離した核酸集団に対するコピー数多型(CNV)解析の実施方法を含むこともでき、これは、核酸集団を断片化すること、断片化した核酸集団を複数の微小液滴に封入すること、多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを複数の微小液滴のそれぞれに導入すること、MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で微小液滴をインキュベートすることであって、核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、インキュベートすること、及びMDA増幅産物をシークエンシングして、核酸集団中の1つまたは複数の核酸配列のコピー数を決定することを含む。いくつかの実施形態では、断片化ステップは封入ステップより前に実施されない。
【0012】
本開示のある種の態様は、単一核酸鋳型分子、ならびに核酸鋳型分子を非特異的に増幅することができるポリメラーゼ酵素及び複数のMDAプライマーを含むMDA混合物を含む微小液滴を含む組成物を含むことができる。
【0013】
本方法の実施において、いくつかの変形形態を用いることができる。例えば、幅広い様々なMDAベースのアッセイを用いることができる。そうしたアッセイで使用されるプライマーの数及び性質は、実施されるアッセイの種類、生物試料の性質及び/または他の因子に少なくとも部分的に基づいて変わり得る。ある種の態様では、微小液滴に添加することができるプライマーの数は1~100個もしくはそれ以上でもよく、及び/または約1~100個もしくはそれ以上の異なる核酸配列に結合するプライマーを含むことができる。
【0014】
微小液滴はそれ自体、サイズ、組成物、内容物などを含めて、変わり得る。微小液滴は、一般に、約0.001~1000ピコリットルまたはそれ以上の内容積を有し得る。さらに、微小液滴は界面活性剤及び/または粒子によって安定化されてもよいし、されなくてもよい。
【0015】
試薬を微小液滴に添加する手段は、大きく変わり得る。1ステップで、または複数のステップ、例えば、2以上のステップ、4以上のステップもしくは10以上のステップで試薬を添加することができる。ある種の態様では、より十分に本明細書に記載するように、液滴合体、ピコインジェクション、複数の液滴合体などを含めた技法を使用して試薬を添加することができる。ある種の実施形態では、注入流体それ自体が電極として働く方法によって試薬を添加する。注入流体は、それをそのようなものとして使用することを可能にする、1または複数の種類の溶解した電解質を含むことができる。注入流体それ自体が電極として働く場合は、液滴に試薬を添加するためにマイクロ流体チップ中に金属電極がある必要性がなくなり得る。ある種の実施形態では、注入流体は電極として働かないが、金属電極の代わりに1つまたは複数の液体電極が利用される。
【0016】
様々な異なった検出成分を使用して、MDA生成物の有無を検出する様々な方法を用いることができる。目的の検出成分としては、限定されないが、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、シアニン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、カスケードブルー及びその誘導体、ルシファーイエロー及びその誘導体、BODIPY及びその誘導体などが挙げられる。例示的フルオロフォアとしては、インドカルボシアニン(C3)、インドジカルボシアニン(C5)、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、テキサスレッド、パシフィックブルー、オレゴングリーン488、アレクサフルオル-355、アレクサフルオル488、アレクサフルオル532、アレクサフルオル546、アレクサフルオル-555、アレクサフルオル568、アレクサフルオル594、アレクサフルオル647、アレクサフルオル660、アレクサフルオル680、JOE、リサミン、ローダミングリーン、BODIPY、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシ-フルオレセイン(FAM)、フィコエリトリン、ローダミン、ジクロロローダミン(dローダミン)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、LIZ、VIC、NED、PET、SYBR、ピコグリーン、リボグリーンなどが挙げられる。検出成分は、ビーズ(例えば、磁気ビーズまたは蛍光ビーズ、例えばルミネックスビーズ)などを含むことができる。ある種の態様では、検出は、繰り返し画像化することができるように、核酸増幅の間、固定された位置に微小液滴を保持することを含むことができる。ある種の態様では、検出は、1つまたは複数の微小液滴中の1つまたは複数の細胞を固定及び/または透過処理することを含むことができる。
【0017】
本明細書に開示される方法に適切な対象、例えば、解析のための生物試料が得られる適切な対象としては、哺乳動物、例えばヒトが挙げられる。対象は、疾患状態の臨床症状を示すもの、または疾患と診断されたものでもよい。ある種の態様では、対象は、癌と診断されたもの、癌の臨床症状を示すもの、または1つもしくは複数の因子、例えば、家族歴、環境曝露、遺伝子変異(複数可)、生活様式(例えば、食事及び/もしくは喫煙)、1つもしくは複数の他の疾患状態の存在などにより癌を発症する危険性があると判定されたものでもよい。
【0018】
本発明は、添付の図面と併せて読めば、以下の詳細な説明から最もよく理解することができる。以下の図が図面に含まれる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】区画化されたMDAがどのようにシークエンシングカバレッジを高めるかを示す図である。パネルA:バルク多置換増幅(バルクMDA)を介する核酸鋳型分子(複数可)の増幅。パネルAに図示するように、非区画化増幅はΦ29DNAポリメラーゼの指数関数的活性を束縛せず、これは、シークエンシングの偏りをもたらす。パネルB:振盪エマルジョンMDAを介する核酸鋳型分子(複数可)の増幅。パネルBに図示するように、振盪エマルジョンにおける反応の区画化はシークエンシングカバレッジを高める。しかし、エマルジョンの多分散性は、いくらかのシークエンシングの偏りをもたらす。パネルC:デジタル液滴MDA(ddMDA)による核酸鋳型分子(複数可)の増幅。パネルCに図示するように、マイクロ流体デバイスを使用して生じた反応の区画は、反応の高い均一性により、さらに大きなシークエンシングカバレッジをもたらす。
【
図2】デジタル液滴MDAの実証及び非特異的DNA定量化に対するその有用性を示す図である。パネルA:3濃度の投入材料についての、デジタル液滴MDA(ddMDA-上部の列)及びデジタル液滴PCR(ddPCR-下部の列)にかけた液滴の蛍光顕微鏡画像。Eva Green(ddMDA)及びTaqmanプローブ(ddPCR)を使用して蛍光を得た。デジタルMDAとPCR定量化の間の相違は、特異的なPCR増幅と比較した際のMDAの非特異的性質に対応する。パネルB:観察された液滴対予測された液滴の割合。蛍光性液滴の割合は全ゲノムのポアソン封入(Poisson encapsulation)を仮定して予測される。ddPCRは、ゲノムあたり1つの陽性液滴を封入するが、ddMDAはDNAセグメントあたり1つの陽性液滴を封入する。これは、核酸の非特異的定量化を可能にし、混入及び試料の断片化の計算を可能にする。
【
図3】カバレッジの均一性に対する区画化増幅の効果を示す図である。パネルA:各塩基に対するリード数を全ゲノムに対する平均リード数で割ったものと定義される(Ross et al.(2013)“Characterizing and measuring bias in sequence data.”Genome Biol.,14,R51)相対カバレッジをゲノム位置に対してプロットした。相対カバレッジは、3つのシナリオ(非増幅E.coli(上部)、標準的なバルクMDA(中央)及びデジタル液滴MDA(下部))について測定し、10kbpのビンに統合した。パネルB:非増幅E.coli、バルクMDA及びデジタル液滴MDAについての相対カバレッジの関数としての確率密度。カバレッジ分布は非増幅E.coliについてごくわずかなカバーが不十分なリードを有するが、バルクMDAは、MDAの既知の特性である非常に低いカバレッジを有するかなりの割合の塩基を示す。デジタル液滴MDAはこれらの分布の混合のように見え、これは、カバレッジが高められたことを示すものである。
【
図4】PicoPLEX WGAとddMDAの比較を示す図である。パネルA:ddMDAを使用して増幅した0.5pg E.coli DNAと比較した、PicoPLEX WGAキットを使用して増幅した0.5pgのE.coli DNAのゲノム位置の関数としての相対カバレッジ。データポイントを10kbのビンに統合した。パネルB:PicoPLEX WGA及びddMDAについての相対カバレッジの関数としての推定密度。示すように、PicoPLEX WGAは、ddMDAと比較して、最小のカバレッジを有する塩基の比率が高いように思われる。
【
図5】5ピコグラム(約1000E.coliゲノム)、0.5ピコグラム(約100E.coliゲノム)及び0.05ピコグラム(約10E.coliゲノム)から増幅したE.coli DNAの標準的なバルクMDA(パネルA)、振盪エマルジョンMDA(パネルB)及びデジタル液滴MDA(パネルC)の相対カバレッジを示す図である。データポイントを10kbのビンに統合した。2試料を解析から除外した(バルクMDA3は、E.coliゲノムに整列したシークエンスしたDNAは5%未満であり、一方で、ddMDA3は正しくインデックスが付けられず、それにより、いかなるシークエンシングデータももたらさなかった)。
【
図6】3つの投入DNA濃度に対する3つの異なるMDA方法についての偏りの比較を示す図である。右のプロットは、3つの投入DNA濃度すべてについて平均した、バルクMDAの測定値に対して正規化した各メトリックを示す。パネルA:投入DNA濃度に対してプロットされる、平均カバレッジの10%未満でカバーされる塩基の割合と定義されるドロップアウト率。パネルB:相対カバレッジの二乗平均平方根として測定したカバレッジスプレッド。パネルC:∫p log(l/p)(式中、pはゲノムの規定されたウインドウ内でリードを観察する確率である)と定義される、情報エントロピー。
【
図7】単一E.coli細胞のddMDAがカバレッジの均一性を有意に高めることを示す図である。パネルA:ゲノム位置に対してプロットした、各塩基に対するリード数を全ゲノムに対する平均リード数で割ったものと定義される相対カバレッジ。相対カバレッジは、10kbpのビンに統合した、バルクMDAを介して増幅した2つの細胞(第1のパネル)及びddMDAを介して増幅した2つの細胞(第2のパネル)について測定される。カバレッジプロット中のギャップは、所与の10kbpのビンの完全なドロップアウトを示す。パネルB:バルクMDAを介して増幅した2つの細胞及びddMDAを介して増幅した2つの細胞についての相対カバレッジの関数としての確率密度。バルクMDAによって増幅した2つの細胞は、非常に低いカバレッジを有するかなりの割合の塩基を示すが、ddMDAによって増幅した細胞ははるかに均一なカバレッジを示す。
【
図8】振盪エマルジョンMDAとddMDAの間の液滴サイズ分布の比較を示す図である。パネルA:代表的な振盪エマルジョン反応及びddMDA反応の明視野顕微鏡画像。パネルB:マイクロメートルで測定される、液滴の正規化した直径分布。パネルC:ピコリットルで測定される、液滴の正規化した容積分布。
【
図9】本明細書に記載の方法で使用することができる例示的マイクロ流体デバイスの図解及び顕微鏡画像を示す図である。
【
図10】
図4に記載されている定義に対する式を示す図である。ドロップアウトメトリックは、平均カバレッジの10%未満でカバーされる塩基の割合を示す。カバレッジスプレッドは、相対カバレッジの二乗平均平方根と定義される。情報エントロピーは、所与の確率とその底2の対数の積の和と定義される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
核酸鋳型分子を非特異的に増幅する方法が提供される。ある種の態様では、その方法は、シークエンシングするために、例えば、培養不可能な微生物のゲノムをシークエンシングするために、または癌細胞におけるコピー数多型を特定するためにシークエンシングするために、核酸鋳型分子(複数可)を増幅するのに使用することができる。
【0021】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、変わり得ることを理解されたい。本明細書で使用される術語は特定の実施形態のみを説明することを目的とし、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるので、制限を意図したものではないことも理解されたい。
【0022】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈において別段明記しない限り下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解されよう。記載された範囲の任意の記載された値または介在値とその記載された範囲の任意の他の記載された値または介在値の間のより小さな範囲は、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立に、範囲内に含まれてもよいし、または除外されてもよく、記載された範囲内の任意の特に除外された限界値を条件として、より小さい範囲にいずれかの限界値が含まれる場合、いずれの限界値も含まれない場合または両方の限界値が含まれる場合の各範囲も本発明内に包含される。記載された範囲がその限界値の一方または両方を含む場合は、そうした含まれる限界値のいずれかまたは両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0023】
別段規定されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または均等ないかなる方法及び材料も本発明の実施または試験において使用することができるが、いくつかの潜在的及び例示的な方法及び材料を次に記載することができる。本明細書で言及するありとあらゆる刊行物は、刊行が引用されるものと関連する方法及び/または材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が存在する限り、本開示は組み込まれる刊行物のいかなる開示にも優先することが理解されよう。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈において別段明記しない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「a microdroplet(1つの微小液滴)」への言及は、複数のそのような微小液滴を含み、「the microdroplet(その微小液滴)」への言及は、1つまたは複数の微小液滴への言及を含むなどである。
【0025】
特許請求の範囲は、随意であり得るいかなる要素も除外するように作成されてもよいことにさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求要素の記述に関連する「solely(単に)」、「only(のみ)」などのような排他的な術語の使用、または「否定的な」制限の使用に対する先行詞として働くことが意図される。
【0026】
本明細書で言及するありとあらゆる刊行物は、刊行物が引用されるものに関連する方法及び/または材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が存在する限り、本開示は組み込まれる刊行物のいかなる開示にも優先することが理解されよう。さらに、提供される任意のそのような刊行日は実際の刊行日と異なる可能性があり、個別に確認する必要がある場合がある。
【0027】
本明細書で論じる刊行物は、単にその開示が本出願の出願日より前であるという理由で提供される。本明細書のいずれの記載も、先行発明によって本発明がこのような刊行物に先行する権利がないことを認めると解釈されるべきでない。さらに、提供される刊行日は実際の刊行日と異なる可能性があり、個別に確認する必要がある場合がある。このような刊行物が本開示の明確なまたは暗黙の定義と矛盾する用語の定義を提示する可能性がある限り、本開示の定義を優先する。
【0028】
本開示を読む際に当業者に明らかなように、本明細書に記載され、例示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特色から容易に分離することができ、またはその特色と組み合わせることができる、別々の構成要素及び特色を有する。任意の記載される方法は、記載される事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で行うことができる。
【0029】
本明細書に記載のものと同様または均等ないかなる方法及び材料も本発明の実施で使用することができるが、いくつかの潜在的及び例示的な方法及び材料を次に記載する。
【0030】
方法
上記で概要を述べたように、本発明の態様は、生物試料からの核酸の増幅方法を含む。そのような方法は、1つまたは複数の核酸配列、例えば1つまたは複数の細胞、例えば1つまたは複数の腫瘍または非腫瘍細胞に由来する1つまたは複数の核酸のシークエンシング及び/または定量化を容易にするために利用することができる。目的の態様は、核酸集団、例えば、単一細胞、例えば腫瘍細胞、例えば循環性腫瘍細胞(CTC)から単離したゲノム核酸の集団に対するコピー数多型解析の実施方法を含む。
【0031】
本明細書で使用する場合、語句「生物試料」は、試料の種類が1つまたは複数の核酸を含む、生物起源の様々な試料の種類を包含する。例えば、「生物試料」の定義は、血液及び生物起源の他の液体試料、固体組織試料、例えば、生検標本または組織培養物またはそれらに由来する細胞及びそれらの後代を包含する。この定義は、試薬による処理、可溶化、またはある種の成分、例えばポリヌクレオチドの富化などによって、入手した後に任意の方法で操作された試料も含む。用語「生物試料」は臨床試料も包含し、培養細胞、細胞上清、細胞可溶化物、細胞、血清、血漿、生体液及び組織試料も含む。
【0032】
本明細書でより十分に記載するように、様々な態様において、本方法は、そのような生物試料から核酸を増幅するのに使用することができる。特に興味深い生物試料としては、細胞(例えば、循環性腫瘍細胞)を挙げることができる。
【0033】
用語「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれか)のポリマー形態を指す。この用語は、例えば、DNA、RNA及びそれらの修飾形態を包含する。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有し得、既知または未知の任意の機能を果たすことができる。ポリヌクレオチドの非限定例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、伝令RNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、制御領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマーを挙げることができる。核酸分子は直鎖状でもよいし、環状でもよい。核酸は様々な構造的形態のうちのいずれかを有してもよく、例えば、一本鎖、二本鎖または両方の組み合わせでもよく、さらに、高次分子内または分子間2次/3次構造、例えば、ヘアピン、ループ、3本鎖領域などを有してもよい。
【0034】
用語「核酸配列」または「オリゴヌクレオチド配列」は、隣接する一続きのヌクレオチド塩基を指し、特定の文脈では、ヌクレオチド塩基がオリゴヌクレオチド中に現れる場合に互いに対するヌクレオチド塩基の特定の配置も指す。
【0035】
用語「相補的」または「相補性」は、塩基対合則によって関連付けられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「5’-AGT-3’」は、配列「5’-ACT-3’」に相補的である。相補性は、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合則に従ってマッチする「部分的」でもよく、または核酸間の「完全な」もしくは「全体的な」相補性でもよい。核酸鎖の間の相補性度は、規定された条件下での核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に著しい影響を与え得る。これは、核酸間の結合に依存する方法にとって特に重要である。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対形成に関連して使用される。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の結合の強度)は、核酸間の相補度、関与する条件のストリンジェンシー及び形成されるハイブリッドのTmのような因子の影響を受ける。「ハイブリダイゼーション」方法は、ある核酸の別の相補的核酸、すなわち相補的ヌクレオチド配列を有する核酸へのアニーリングを含む。
【0037】
ハイブリダイゼーションは、特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件で行われる。相補的配列の長さ及びGC含量は、標的核酸に対する標的部位の特異的ハイブリダイゼーションを得るのに必要である、ハイブリダイゼーション条件の熱融解点Tmに影響を及ぼす。ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件で行うことができる。語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、プローブが、一般的には核酸の複合混合物中で、その標的サブ配列にハイブリダイズし、検出可能なまたは有意なレベルで他の配列にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる環境で違うであろう。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、約6~約8のpHにおいて、約1.0M未満のナトリウムイオン、例えば、約0.01M未満、例えば、約0.001M~約1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が約20℃~約65℃の範囲であるものである。ストリンジェントな条件は、限定されないがホルムアミドなどの不安定化剤の添加で達成することもできる。
【0038】
対応するヌクレオチド間ですべてが水素結合を完全に形成した二本鎖分子の形成は、「マッチした」または「完全にマッチした」と呼ばれ、対応しないヌクレオチドの単一またはいくつかの対を有する二本鎖は、「ミスマッチした」と呼ばれる。一本鎖RNAまたはDNA分子の任意の組み合わせが、適切な実験条件下で二本鎖分子(DNA:DNA、DNA:RNA、RNA:DNAまたはRNA:RNA)を形成することができる。
【0039】
語句「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」は、配列が複合混合物(例えば、全細胞またはライブラリーDNAもしくはRNA)中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、分子が特定のヌクレオチド配列のみに対して結合、二本鎖形成またはハイブリダイズすることを指す。
【0040】
当業者は、同様のストリンジェンシーの条件を提供するために代替のハイブリダイゼーション及び洗浄条件が利用可能であることを容易に認識し、パラメーターの組み合わせが、任意の単一パラメーターの程度よりもはるかに重要であることを認識するであろう。
【0041】
「置換」は、例となるヌクレオチド配列、例えばWTヌクレオチド配列と比べて異なるヌクレオチドによる、1つまたは複数のヌクレオチドの置き換えから生じる。
【0042】
「欠失」は、例となるヌクレオチド配列、例えばWTヌクレオチド配列と比べて1つまたは複数のヌクレオチド残基が欠けているヌクレオチド配列の変化と定義される。ポリヌクレオチド配列に関連して、欠失は、改変されるポリヌクレオチド配列からの2、5、10、20まで、30まで、または50まで、またはそれ以上のヌクレオチドの欠失を含む。
【0043】
「挿入」または「付加」は、例となるヌクレオチド配列と比べて1つまたは複数のヌクレオチド残基の付加をもたらした、ヌクレオチド配列中の変化である。ポリヌクレオチド配列に関連して、挿入または付加は、10まで、20まで、30まで、または50まで、またはそれ以上のヌクレオチドでもよい。
【0044】
用語「ドロップ」、「液滴」及び「微小液滴」は本明細書で互換的に使用されて、第1の流体相と非混和性である第2の流体相(例えば油)で囲まれた第1の流体相、例えば水相(例えば水)を少なくとも含む、小さな、一般に球状の構造体を指す。いくつかの実施形態では、本開示による液滴は、第2の非混和性流体相、例えば水相流体(例えば水)で囲まれた第1の流体相、例えば油を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の流体相は、非混和相担体流体である。したがって、本開示による液滴は、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンとして提供することができる。本開示による液滴は、多重エマルジョン、例えば二重またはより高レベルのエマルジョンとして形成することができる。いくつかの実施形態では、本液滴は、寸法、例えば、1.0μm~1000μm(両端を含む)、例えば、1.0μm~750μm、1.0μm~500μm、1.0μm~100μm、1.0μm~10μmまたは1.0μm~5μm(両端を含む)の、またはおよそこれらの直径を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の別個の実体は、寸法、例えば、1.0μm~5μm、5μm~10μm、10μm~50μm、50μm~100μm、100μm~500μm、500μm~750μmまたは750μm~1000μm(両端を含む)の、またはおよそこれらの直径を有する。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の別個の実体は、約1fL~1nL(両端を含む)、例えば、1fL~100pL、1fL~10pL、1fL~1pL、1fL~100fLまたは1fL~10fL(両端を含む)の範囲の容積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の別個の実体は、1fL~10fL、10fL~100fL、100fL~1pL、1pL~10pL、10pL~100pLまたは100pL~1nL(両端を含む)の容積を有する。本開示による液滴は、一般に、約0.001ピコリットル~約10,000ピコリットルの容積、例えば、約1ピコリットル~約1000ピコリットル、または約1ピコリットル~約100ピコリットルに及ぶ内容積を有する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示による液滴は、約0.001ピコリットル~約0.01ピコリットル、約0.01ピコリットル~約0.1ピコリットル、約0.1ピコリットル~約1ピコリットル、約1ピコリットル~約10ピコリットル、約10ピコリットル~約100ピコリットル、約100ピコリットル~約1000ピコリットルまたは約1000ピコリットル~約10,000ピコリットルに及ぶ容積を有する。本開示による液滴は、細胞、核酸(例えばDNA)、酵素、試薬及び様々な他の成分を封入するのに使用することができる。液滴という用語は、マイクロ流体デバイス中で、マイクロ流体デバイス上で、もしくはマイクロ流体デバイスによって生成された、及び/またはマイクロ流体デバイスから流れた、もしくはマイクロ流体デバイスによって加えられた液滴を指すのに使用することができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「担体流体」は、本明細書に記載の1つまたは複数の液滴を含むように構成または選択された流体を指す。担体流体は、1種または複数の物質を含むことができ、且つ1つまたは複数の特性、例えば粘性を有することができ、これによって、担体流体が、マイクロ流体デバイスまたはその一部、例えば送達オリフィスを通って流れることが可能になる。いくつかの実施形態では、担体流体は、例えば油または水を含み、液相または気相中に存在し得る。適切な担体流体は、本明細書でより詳細に記載される。
【0046】
特許請求の範囲で使用する場合、「including(含む)」、「containing(含む)」及び「を特徴とする」と同義である用語「comprising(含む)」は、包括的または非制限的であり、付加的な列挙されていない要素及び/または方法ステップを除外しない。「comprising(含む)」は、指定された要素及び/またはステップが存在するが、他の要素及び/またはステップを追加してもよく、依然として関連する主題の範囲に入ることを意味する専門用語である。
【0047】
本明細書で使用する場合、語句「consisting of(からなる)」は、具体的に列挙されていないいかなる要素、ステップ及び/または成分も除外する。例えば、語句「consists of(からなる)」は、プリアンブルの直後ではなく請求項のボディの条項中に現れる場合は、これは、その条項に記載される要素のみを限定し、他の要素は全体として請求項から除外されない。
【0048】
本明細書で使用する場合、語句「から本質的になる」は、指定の材料及び/またはステップ、これに加えて開示及び/または請求される主題の基本的及び新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものに、関連した開示または請求の範囲を限定する。
【0049】
用語「comprising(含む)」、「から本質的になる」及び「consisting of(からなる)」に関しては、これらの3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、本開示の主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。
【0050】
本開示が対処する当技術分野における必要性の例は、核酸鋳型分子の均一な増幅に対する必要性である。現在利用可能なMDA方法は、相当な増幅の偏りをもたらし得る。その結果、そこから得られたシークエンシングの結果は、不正確で信頼できないことが多い。例えば、従来の方法に従って用意した増幅したゲノムのデータは、特定の細胞のゲノム中に存在するDNAを正確に表さない可能性がある。本明細書に記載の方法の態様及び組成物によれば、ゲノムDNAをかなりより均一な方法で増幅することができ、その結果、生物試料、例えば細胞中に存在するゲノム核酸のより正確な表現を決定することができる。
【0051】
本開示は、デジタル液滴多置換増幅(digital droplet multiple displacement amplification)(ddMDA)に部分的に関する。「ddMDA」は、一般に、単一の液滴反応区画(例えば微小液滴)中に核酸鋳型分子(複数可)の増幅反応を区画化すること(これは、一般に、核酸鋳型分子のパラレルまたは均一な増幅をもたらす)を指す。いくつかの実施形態では、増幅反応は、単一(または非常に少ない、例えば10個以下、例えば5個以下)の核酸鋳型分子を単一の微小液滴中で増幅することを指す。他の実施形態では、増幅反応は、単一核酸鋳型分子中の複数の核酸鋳型分子を増幅することができる。核酸鋳型分子が互いに物理的に分離されているので、分子を他の分子とリソースのために競合することなしに飽和まで増幅させることができる。これは、全ゲノム配列の概して均一な表現をもたらす。いくつかの実施形態では、各単一核酸鋳型分子は、他の核酸鋳型分子から物理的に分離されており、その結果、微小液滴の外側で起こっていることに関係なく、核酸鋳型分子の増幅が起こる。さらに、単一核酸鋳型分子を単一の微小液滴中に閉じ込めることは、同様のリソース(例えば、プライマー、試薬、ポリメラーゼ酵素)を共有する必要をなくす。
【0052】
いくつかの実施形態では、ddMDA反応は、ピコリットルの内部容積を有する反応チャンバー(例えば微小液滴)中で区画化された核酸鋳型分子を増幅する。いくつかの例では、核酸鋳型分子の反応を区画化することは、激しく振盪して、増幅される核酸鋳型分子を含む溶液を油で乳化することによって、達成され得る。適切な界面活性剤が存在する場合は、油中に懸濁した安定な水性液滴が生成され、それらのそれぞれが単一核酸鋳型分子を増幅する。あるいは、他の例では、微小液滴中で反応を区画化することは、マイクロ流体乳化技法を使用することによって達成され得る。
【0053】
本明細書に記載のように、増幅の「偏り」は、一般に、選択したゲノム配列の不等または不均衡な増幅を指す。そのような増幅の偏りは、ゲノム配列の不正確な表現を与えることによって、次世代シーケンシングデータの質及び量を一般に低減させる。
【0054】
本明細書に記載のように、用語「核酸鋳型分子」は、一般に、本明細書に記載のMDA反応の鋳型として使用される核酸分子を指す。いくつかの例では、核酸は、デオキシリボース核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)または相補DNA(cDNA)を指すことができる。いくつかの実施形態では、cDNA分子はRNA分子から生成することができ、続いて、本明細書に記載のMDA反応の核酸鋳型分子として働くことができる。この技法は、例えば、1つまたは複数のRNAウイルスのゲノムをシークエンスするのに使用することができる。
【0055】
一実施形態によれば、方法は、核酸鋳型分子を非特異的に増幅することができる。これに関連して使用される場合、用語「非特異的に」は、一般に、特定のDNA配列に対して偏りまたは選好性なしに核酸鋳型分子を増幅することを指す。その結果、非特異的増幅は、例えば細胞のゲノムの概して均一な増幅をもたらす。
【0056】
MDA増幅産物が特定の液滴中に存在するかどうかを決定するために、例えば、サイバーグリーンもしくはエチジウムブロマイドのようなインターカレート色素で溶液を染色すること、MDA増幅産物を固体基材、例えばビーズ(例えば、磁気ビーズもしくは蛍光ビーズ、例えばルミネックスビーズ)にハイブリダイズすること、またはFRETなどの分子間反応を介してそれを検出することによる、ドロップ中の液体を探るアッセイを介して、MDA増幅産物を検出することができる。これらの色素、ビーズなどは、MDA増幅産物(複数可)の有無を検出するのに使用される任意の成分を指すために本明細書で広く一般的に使用される用語である「検出成分」のそれぞれの例である。
【0057】
いくつかの例では、本明細書に記載の方法及び組成物は、ゲノムDNAの偏りがない増幅及びシークエンシングを介して培養不可能な微生物を研究するのに使用することができる。他の例では、本明細書に記載の方法及び組成物は、個々の癌細胞のゲノムDNAを増幅及びシークエンシングすることによってCNVを解析するのに使用することができる。他の例では、本明細書に記載の方法及び組成物は、解析用の法医学的DNAを増幅するのに使用することができる。他の例では、本明細書に記載の方法及び組成物は、シークエンシング用の貴重な試料(例えば古代DNA)からDNAを増幅するのに使用することができる。例えば、法医学的調査は通例のDNA解析の感度限界をはるかに下回る試料の増幅及びシークエンシングを必要とする。これらの解析方法にddMDAを組み入れることは、全ゲノム増幅の均一性を高めることができ、したがって、ドラフトゲノム及び次のデータ解析を向上させる。他の例では、本明細書に記載の方法及び組成物は、限られたDNA試料を増幅するのに有用であり得る。さらに、個々の腫瘍細胞に対するddMDAは、疾患の進行及び進展を追跡するために、癌関連変異のより正確な配列またはコピー数多型データを提供することができる。
【0058】
溶解
本明細書に提供する方法による増幅のために、1つまたは複数の細胞からゲノムDNAを得る目的で、細胞(複数可)を破裂させ、それによってそのゲノムを放出させることができる条件下で、1種または複数の溶解剤を利用することができる。適切なプロテアーゼ、例えばプロテイナーゼK、または細胞毒などの、任意の好都合な溶解剤を用いることができる。特定の実施形態では、トリトンXI00などの界面活性剤及び/またはプロテイナーゼKを含む溶解バッファーとともに細胞をインキュベートすることができる。細胞(複数可)を破裂させることができる特定の条件は、使用される特定の溶解剤によって変動する。例えば、プロテアーゼ、例えばプロテイナーゼKが溶解剤として組み込まれる場合、細胞(複数可)を約37~60℃に少なくとも約20分間加熱して、細胞を溶解することができ、プロテイナーゼKが細胞タンパク質を消化できるようにすることができ、その後、これを約95℃に約5~10分間加熱して、プロテアーゼ、例えばプロテイナーゼKを不活性化することができる。
【0059】
ある種の態様では、細胞溶解は、さらにまたは代わりに、溶解剤の添加を含まない技法に依拠することができる。例えば、溶解は、細胞の穿穴、剪断、摩耗などを引き起こすための様々な幾何学的機構を用いることができる機械的な技法によって達成され得る。音波的技法などの他の種類の機械的な破損を使用することもできる。さらに、熱エネルギーを使用して細胞を溶解することもできる。細胞溶解を引き起こす任意の好都合な手段を本明細書に記載の方法で用いることができる。
【0060】
標的成分から核酸を効果的に増幅するために、マイクロ流体システムは、試料を増幅モジュールに供給する前に核酸を遊離させるための細胞溶解モジュールまたはウイルスタンパク質外殻破壊モジュールを含むことができる。細胞溶解モジュールは、細胞溶解を引き起こすための化学的、熱的及び/または機械的手段に依拠し得る。細胞膜が脂質二重層からなるので、界面活性剤を含む溶解バッファーは脂質膜を可溶化することができる。一般的には、溶解バッファーは、細胞がソーティングまたは他の上流プロセスの間に早まって溶解されないように、外部ポートを介して溶解チャンバーに直接導入される。
【0061】
オルガネラの完全な状態が必要である場合は、化学的溶解方法は不適切である場合がある。ある種の用途では、剪断及び摩損による細胞膜の機械的な崩壊が適切である。機械的な技法に依拠する溶解モジュールは、このモジュールに入る細胞の穿穴、剪断、摩耗などを引き起こすための様々な幾何学的機構を用いることができる。音波的技法などの他の種類の機械的な破損も適切な溶解物をもたらすことができる。さらに、熱エネルギーを使用して、細菌、酵母及び胞子などの細胞を溶解することもできる。加熱は細胞膜を破壊し、細胞内物質が放出される。マイクロ流体システム中で細胞下分画を可能にするために、溶解モジュールは、動電学的技法またはエレクトロポレーションを用いることもできる。エレクトロポレーションは、原形質膜の変化をもたらし、膜電位差を破壊する外部電界を用いることによって、細胞膜に一過的または永続的な穴を作出する。マイクロ流体エレクトロポレーションデバイスでは、膜を永続的に破壊することができ、細胞膜の穴が維持されて、放出される所望の細胞内物質を放出することができる。
【0062】
断片化
核酸分子(複数可)を別々の断片に分離または単離するために、断片化を実施することができる。核酸分子の断片化は、熱による加熱、電磁波照射、超音波処理、音波剪断、制限消化、針による剪断、ポイント-シンク剪断(point-sink shearing)またはフレンチプレッシャーの使用によって、達成され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、核酸鋳型分子を単離するために、封入ステップより前に生物試料の細胞を断片化することができる。
【0064】
ある種の態様では、MDAによって増幅してMDA生成物を生成するより前に液滴に供給される核酸鋳型分子の量は、わずか100フェムトグラム、例えば50フェムトグラム以下、10フェムトグラム以下または5フェムトグラム以下でもよい。いくつかの実施形態では、MDAによって増幅してMDA生成物を生成するより前に液滴に供給される核酸鋳型分子の量は、約1フェムトグラム~約5フェムトグラム、約5フェムトグラム~約10フェムトグラム、約10フェムトグラム~約50フェムトグラムまたはそれ以上でもよい。
【0065】
多置換増幅
上記で概要を述べたように、本発明の方法の実施において、例えば次世代シークエンシングによる下流解析のために、一般に偏りがなく非特異的な方法で核酸、例えばゲノムDNAを増幅するために、MDAを使用することができる。
【0066】
本開示による方法の例示的実施形態は、生物試料から得られた核酸鋳型分子を微小液滴中に封入すること、微小液滴にMDA試薬及び複数のMDAプライマーを導入すること、及びMDA増幅産物の生成に効果的な条件下で微小液滴をインキュベートすることであって、核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、インキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、例えば、核酸鋳型分子がMDA試薬及び複数のMDAプライマーと混合され、例えばマイクロ流体デバイスの流動集束要素(flow focusing element)を使用して乳化される場合、封入ステップ及び導入ステップは、単一ステップとして生じる。
【0067】
本明細書に記載のMDAベースのアッセイの条件は、1つまたは複数の様式で変わり得る。例えば、微小液滴に添加する(または封入する)ことができるMDAプライマーの数は変わり得る。用語「プライマー」は1つまたは複数のプライマーを指し、精製された制限消化物のように自然に生じようと、合成的に生成されようと、1つの核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれたときに相補鎖に沿った合成の開始点として働くことができる、オリゴヌクレオチドを指す。そのような条件は、適切な緩衝液(「緩衝液」は、補助因子である、またはpH、イオン強度などに影響を及ぼす置換基を含む)中に、適切な温度で、4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸及び重合誘導剤、例えば適切なDNAポリメラーゼ(例えば、Φ29ポリメラーゼまたはBstポリメラーゼ)が存在することを含む。プライマーは、増幅の最大効率のために、好ましくは一本鎖である。MDAに関連して、ランダムヘキサマープライマーが通常は利用される。
【0068】
本明細書で使用する場合、核酸配列の相補体は、一方の配列の5’末端が他方の3’末端と対をなすように核酸配列を整列させたときに「逆平行の関係」にある、オリゴヌクレオチドを指す。相補性は完全である必要はなく、安定な二本鎖は、ミスマッチ塩基対またはマッチしない塩基を含んでいてもよい。核酸技術分野の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチド中のシトシン及びグアニン塩基の濃度パーセント、イオン強度及びミスマッチ塩基対の発生率を含めた、いくつかの変数を考慮すれば、二本鎖の安定性を経験的に決定することができる。
【0069】
微小液滴に添加する(または封入する)ことができるMDAプライマーの数は、約1~約500個またはそれ以上、例えば、約2~100プライマー、約2~10プライマー、約10~20プライマー、約20~30プライマー、約30~40プライマー、約40~50プライマー、約50~60プライマー、約60~70プライマー、約70~80プライマー、約80~90プライマー、約90~100プライマー、約100~150プライマー、約150~200プライマー、約200~250プライマー、約250~300プライマー、約300~350プライマー、約350~400プライマー、約400~450プライマー、約450~500プライマーまたは約500プライマー以上に及び得る。
【0070】
そのようなプライマー及び/または試薬を1ステップでまたは1ステップより多くで微小液滴に添加することができる。例えば、プライマーを2ステップ以上、3ステップ以上、4ステップ以上または5ステップ以上で添加することができる。溶解剤が利用される場合、プライマーを1ステップで添加するか1ステップ超で添加するかどうかに関係なく、溶解剤の添加後に、溶解剤の添加より前に、溶解剤の添加と同時にプライマーを添加することができる。溶解剤の添加の前または後に添加する場合は、溶解剤の添加とは別のステップでMDAプライマーを添加することができる。
【0071】
いったんプライマーを微小液滴に添加すると、MDAにとって十分な条件下で微小液滴をインキュベートすることができる。微小液滴は、プライマー(複数可)を添加するのに使用されるものと同じマイクロ流体デバイスでインキュベートすることができ、または別のデバイスでインキュベートすることができる。ある種の実施形態では、MDA増幅にとって十分な条件下での微小液滴のインキュベートは、細胞溶解に使用されるものと同じマイクロ流体デバイスで実施される。微小液滴のインキュベートは様々な形態をとることができ、例えば、一定温度、例えば30℃で、例えば約8~約16時間にわたって微小液滴をインキュベートすることができる。
【0072】
MDA増幅産物の生成に関する本明細書に記載の方法は特異的プローブの使用を必要としないが、本発明の方法は、1つまたは複数のプローブを微小液滴に導入することを含むこともできる。核酸に関して本明細書で使用する場合、用語「プローブ」は、標的領域中の配列とのプローブ中の少なくとも1つの配列の相補性により標的核酸中の配列と二本鎖構造を形成する、標識オリゴヌクレオチドを一般に指す。プローブは、好ましくは、MDA反応をプライムするのに使用される配列(複数可)に相補的な配列を含まない。添加されるプローブの数は、約1~500、例えば、約1~10プローブ、約10~20プローブ、約20~30プローブ、約30~40プローブ、約40~50プローブ、約50~60プローブ、約60~70プローブ、約70~80プローブ、約80~90プローブ、約90~100プローブ、約100~150プローブ、約150~200プローブ、約200~250プローブ、約250~300プローブ、約300~350プローブ、約350~400プローブ、約400~450プローブ、約450~500プローブまたは約500プローブ以上であり得る。プローブ(複数可)は、1つまたは複数のプライマー(複数可)の添加より前に、添加に引き続いてまたは添加後に微小液滴に導入することができる。
【0073】
ある種の実施形態では、MDAベースのアッセイは、細胞中に存在するある種のRNA転写産物の存在を検出するために、または1つもしくは複数のRNAウイルスのゲノムをシークエンスするのに使用することができる。そのような実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかを使用してMDA試薬を微小液滴に添加することができる。MDA試薬の添加(または封入)より前にまたは後に、逆転写を可能にする条件、続いて本明細書に記載のMDAを可能にする条件の下で微小液滴をインキュベートすることができる。微小液滴は、MDA試薬を添加するのに使用されるものと同じマイクロ流体デバイスでインキュベートすることができ、または別のデバイスでインキュベートすることができる。ある種の実施形態では、MDAを可能にする条件下での微小液滴のインキュベートは、1つまたは複数の細胞を封入及び/または溶解するのに使用されるものと同じマイクロ流体デバイスで実施される。
【0074】
ある種の実施形態では、MDAのために微小液滴に添加される試薬は、MDA増幅産物を検出することができる蛍光DNAプローブをさらに含む。任意の適切な蛍光DNAプローブを使用することができ、これには、限定されないが、サイバーグリーン、TaqMan(登録商標)、モレキュラービーコン及びスコーピオンプローブが含まれる。ある種の実施形態では、微小液滴に添加される試薬は、1種より多いDNAプローブ、例えば、2種の蛍光DNAプローブ、3種の蛍光DNAプローブまたは4種の蛍光DNAプローブを含む。複数種の蛍光DNAプローブの使用により、単一反応において、MDA増幅産物の同時測定が可能になる。
【0075】
微小液滴の種類
本発明の方法の実施において、微小液滴の組成物及び性質は変わり得る。例えば、ある種の態様では、微小液滴を安定化させるために界面活性剤を使用することができる。したがって、微小液滴は界面活性剤によって安定化したエマルジョンを含むことができる。ドロップ中で実施される所望の反応を可能にする任意の好都合な界面活性剤を使用することができる。他の態様では、微小液滴は界面活性剤または粒子によって安定化されない。
【0076】
使用される界面活性剤は、いくつかの因子、例えばエマルジョンのために使用される油及び水相(または他の適切な非混和相、例えば、任意の適切な疎水性相及び親水性相)に依存する。例えば、フルオロカーボン油中で水性液滴を使用する場合、界面活性剤は親水性ブロック(PEG-PPO)及び疎水性フッ素化ブロック(Krytox FSH)を有し得る。しかし、油が炭化水素油に切り替えられる場合、例えば、界面活性剤ABIL EM90のような疎水性炭化水素ブロックを有するように、界面活性剤が代わりに選択される。界面活性剤の選択において、界面活性剤を選ぶ際に考慮され得る望ましい特性としては、以下の1つまたは複数を挙げることができる:(1)界面活性剤が低粘性を有すること、(2)界面活性剤がデバイスを構築するのに使用されるポリマーと非混和性であるので、デバイスを膨張させないこと、(3)生体適合性、(4)アッセイ試薬が界面活性剤に可溶性でないこと、(5)ガスが出入りすることを可能にするという点において、界面活性剤が好ましいガス溶解度を示すこと、(6)界面活性剤が、MDAに使用される温度または液滴が曝露されることになる任意の他の反応の温度よりも高い沸点を有すること、(7)エマルジョンの安定性、(8)界面活性剤が所望のサイズのドロップを安定化すること、(9)界面活性剤が担体相に可溶性であり、液滴相に可溶性でないこと、(10)界面活性剤が限られた蛍光特性を有すること、及び(11)広範な温度にわたって界面活性剤が担体相に可溶性のままであること。
【0077】
イオン性界面活性剤を含めて、他の界面活性剤も想定することができる。35℃を超える温度での液滴の安定性を高めるポリマーを含めて、ドロップを安定化するために他の添加物も油中に含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、適切な界面活性剤はPEG-PFPE両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤である。そのような界面活性剤は、振盪エマルジョンMDA方法で利用することができる。いくつかの実施形態では、微小液滴、例えば、振盪エマルジョン微小液滴の調製で使用するのに適切な油はフッ素化油HFE-7500である。
【0079】
いくつかの実施形態では、核酸鋳型分子を複数のエマルジョン微小液滴に封入することができ、複数のエマルジョン微小液滴のそれぞれは、非混和性シェルで取り囲まれた第1の混和相流体を含み、複数のエマルジョン微小液滴は第2の混和相担体流体中に位置する。いくつかの実施形態では、例えば、制御された数の細胞、ウイルス及び/または核酸を複数のエマルジョン微小液滴中に封入するために、封入より前に試料を希釈することができる。本明細書に記載の方法の1つまたは複数を使用して、核酸増幅試薬、例えばMDA試薬を封入時に複数のエマルジョン微小液滴に添加することができ、または後で、複数のエマルジョン微小液滴に添加することができる。次いで、複数のエマルジョン微小液滴を核酸増幅条件にかける。いくつかの実施形態では、複数のエマルジョン微小液滴が核酸鋳型分子を含む場合、複数のエマルジョン微小液滴が検出可能な程度に標識される、例えば、増幅DNAのSybr染色などの蛍光発生的アッセイの結果として蛍光標識されるように、標識を添加する。増幅核酸を回収するために、マイクロ流体技法(例えば、誘電泳動、膜バルブなど)または非マイクロ流体技法(例えばFACS)を使用して、検出可能な程度に標識された複数のエマルジョン微小液滴をソートすることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、微小液滴は、微小液滴内に封入または区画化された核酸鋳型分子ならびにDNAポリメラーゼ酵素、複数のMDA試薬及び複数のMDAプライマーを含むMDA混合物を含む。他の態様では、微小液滴は検出成分をさらに含むことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、微小液滴は、単一核酸鋳型分子を含む。他の実施形態では、単一の微小液滴中に区画化された複数の核酸鋳型分子が存在し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、微小液滴は、導入ステップ及びインキュベートステップより前に、1つより多い核酸鋳型分子を含まない。他の実施形態では、微小液滴は、導入ステップ及びインキュベートステップより前に、複数の核酸鋳型分子を含むことができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、増幅される核酸鋳型分子の数は、生成される微小液滴の数を制御することによって変えることができる。他の実施形態では、核酸鋳型分子に由来する所定量のMDA増幅産物を得るために、微小液滴のサイズを変えることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、MDA増幅産物を提供するための微小液滴を生成するために、マイクロ流体方法と非マイクロ流体方法の両方を利用することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、(増幅より前の)核酸鋳型分子の出発量は少なく、例えば、10fg以下(例えば、5fg以下または1fg以下)の核酸鋳型分子が微小液滴に封入される。いくつかの実施形態では、約10fg~約1fg(例えば、約5fg~1fg)が増幅より前に微小液滴に封入される。いくつかの実施形態では、微小液滴は、蛍光レポーターなどの検出成分を含むこともできる。蛍光レポーターは、特定の微小液滴が増幅を受けるときを示すことができる。ddPCRと対照的に、ddMDAは、特定の核酸鋳型分子(複数可)のみを増幅するために、特異的なプライマー及びプローブに依拠しない。いくつかの実施形態では、ddMDAは、MDA反応内で増幅可能なあらゆるゲノム断片に対しておよそ1つの蛍光液滴をもたらす。ddMDAは特異的プローブを必要としないので、ddMDA方法は、既知及び未知の両方のゲノム配列の定量化を可能にする。これらの利点は、クリーンルーム及び地球外環境などの少量設定でDNAを定量化することについて、ddMDAを価値のあるものにする。ddPCRとともに使用する場合、ddMDAはDNA増幅中の断片化及び混入を検出するのにも効果的である。
【0086】
いくつかの実施形態では、微小液滴は、封入された核酸鋳型分子から生成されたアンプリコンを含むことができる。本明細書に記載する場合、「アンプリコン」は、天然または人工の増幅の生成物である、生成物の増幅産物を一般に指す。アンプリコンという用語は、ゲノム配列、例えばRNAまたはDNA配列の1つまたは複数のコピーを一般に指すことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、微小液滴の内容積は、約0.01pL以下、約0.1pL以下、1pL以下、約5pL以下、10pL以下、100pL以下または1000pL以下でもよい。いくつかの実施形態では、微小液滴の内容積は、約1fL以下、約10fL以下または100fL以下でもよい。いくつかの実施形態では、微小液滴の内容積は、ピコリットルからフェムトリットルの間の範囲(例えば、約0.001pL~約1000pL)の液体容量を包含する。いくつかの実施形態では、微小液滴の内容積は、厳密にナノリットルレベル未満(例えば、厳密にピコリットル、厳密にフェムトリットルまたはこれらの組み合わせ)にまで及ぶ。
【0088】
いくつかの実施形態では、微小液滴中の核酸鋳型分子(複数可)の初期濃度は約0.001pg~約10pg、例えば、約0.01pg~約1pgまたは約0.1pg~約1pgである。
【0089】
いくつかの例では、多分散微小液滴または単分散微小液滴として微小液滴を作出することができる。
【0090】
微小液滴への試薬添加
本方法の実施において、1つまたは複数のステップ(例えば、約2、約3、約4または約5またはそれ以上のステップ)において、いくつかの試薬を微小液滴に添加する必要があり得る。微小液滴へ試薬を添加する手段は、いくつかの様式で変わり得る。目的のアプローチとしては、限定されないが、Ahn,et al.,Appl.Phys.Lett.88,264105(2006)、Priest,et al.,Appl.Phys.Lett.89,134101(2006)、Abate,et al.,PNAS,November 9,2010 vol.107 no.45 19163-19166、及びSong,et al.,Anal.Chem.,2006,78(14),pp 4839-4849によって記載されるものが挙げられ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
例えば、試薬(複数可)を含む第2の微小液滴と微小液滴を合わせることを含む方法によって、微小液滴に試薬を添加することができる。特に本明細書に記載の方法を含めた任意の好都合な手段によって、第2の微小液滴に含まれる試薬(複数可)を添加することができる。この液滴を第1の微小液滴と合わせて、第1の微小液滴と第2の微小液滴の両方の内容物を含む微小液滴を作出することができる。
【0092】
液滴合体またはピコインジェクションなどの技法を使用して、1種または複数の試薬を、さらにまたは代わりに添加することができる。液滴合体では、標的ドロップ(すなわち、微小液滴)を試薬(複数可)を含む微小液滴に沿って流動させて、微小液滴に添加することができる。2つの微小液滴を、それらが互いに接触するが、他の微小液滴と触れないように流動させることができる。次いで、これらのドロップを電極または電界を加える他の手段を通過させることができ、ここでは、電界が微小液滴を不安定化することができ、その結果、これらは一緒に合わせられる。
【0093】
試薬は、さらにまたは代わりに、ピコインジェクションを使用して添加することもできる。このアプローチでは、標的ドロップ(すなわち、微小液滴)を、添加される試薬(複数可)を含むチャネルを流して通過させることができ、ここでは、試薬(複数可)は加圧状態にある。しかし、界面活性剤の存在により、電界の非存在下で、微小液滴は注入されることなく流れて通過することになり、これは、微小液滴をコーティングする界面活性剤が、流体(複数可)が侵入するのを防ぐことができるからである。しかし、微小液滴がインジェクターを通過する際に微小液滴に電界が加えられる場合、試薬(複数可)を含む流体が微小液滴に注入されることになる。微小液滴に添加される試薬の量は、いくつかの異なるパラメーターによって制御することができ、例えば、注入圧及び流動ドロップの速度を調整することによる、電界のオン及びオフを切り替えることによるなどである。
【0094】
他の態様では、1種または複数の試薬を、さらにまたは代わりに、2つの液滴を一緒に合わせること、または液体をドロップに注入することに依拠しない方法によって、微小液滴に添加することができる。むしろ、非常に小さなドロップの流れの中に試薬を乳化するステップ、及びこれらの小さなドロップを標的微小液滴と合わせるステップを含む方法によって、1種または複数の試薬を微小液滴に添加することができる。そのような方法は、「複数ドロップの合体を介する試薬添加」と本明細書で言及するものとする。これらの方法は、標的ドロップと比較して添加されるドロップのサイズが小さいので、小さなドロップは標的ドロップよりはやく流動し、それらの後ろに集まるという事実を利用する。次いで、例えば電界を加えることにより、収集物を合わせることができる。このアプローチは、さらにまたは代わりに、異なる流体の小さなドロップのいくつかの共流を使用することによって複数の試薬を微小液滴に添加するのに使用することができる。小さなドロップと標的ドロップを効果的に合わせることを可能にするためには、標的ドロップを含むチャネルよりも小さく小さなドロップを作製することが重要であり、標的ドロップに「追い付く」ための時間を小さなドロップに与えるように、標的ドロップを注入するチャネルと電界を加える電極の間の距離を十分に長くすることも重要である。このチャネルが短すぎると、すべての小さなドロップが標的ドロップと合わさるとは限らず、所望されるよりも少ない試薬が添加される。ある程度まで、電界の大きさを増大させることによりこれを補正することができるが、これは、さらに遠く離れているドロップを合わせる傾向がある。同じマイクロ流体デバイス上に小さなドロップを作製することに加えて、これらは、さらにまたは代わりに、別のマイクロ流体ドロップメーカーを使用して、またはホモジナイゼーションを介してオフラインで作製することができ、次いで標的ドロップを含むデバイスにそれらを注入する。
【0095】
したがって、ある種の態様では、試薬は、液滴流中に試薬を乳化すること(ここでは、液滴は微小液滴のサイズより小さい)、微小液滴とともに液滴を流動させること、及び液滴を微小液滴と合わせることを含む方法によって、微小液滴に添加される。液滴流に含まれる液滴の直径は、微小液滴の直径の約75%もしくはそれ未満の範囲で変化してもよく、例えば、流動液滴の直径は、微小液滴の直径の約75%もしくはそれ未満、微小液滴の直径の約50%もしくはそれ未満、微小液滴の直径の約25%もしくはそれ未満、微小液滴の直径の約15%もしくはそれ未満、微小液滴の直径の約10%もしくはそれ未満、微小液滴の直径の約5%もしくはそれ未満、または微小液滴の直径の約2%またはそれ未満である。ある種の態様では、2個以上の液滴、3個以上、4個以上または5個以上などの複数の流動液滴を微小液滴と合わせることができる。そのような合併は、限定されないが、電界を加えること(電界は流動液滴を微小液滴と合わせるのに有効である)を含めた任意の好都合な手段によって達成され得る
【0096】
上記の方法の変形形態として、流体は噴流していてもよい。すなわち、流動液滴に添加されるように流体を乳化するのではなく、この流体の長い噴流を形成し、標的微小液滴の側面に沿って流動させることができる。次いで、例えば電界を加えることによって、これら2つの流体を合わせることができる。結果は、レイリープラトー不安定性のために、合わせる前におおよその標的微小液滴のサイズの微小液滴に自然に破壊し得る微小液滴が存在するバルジを有する噴流である。いくつかの変形形態が企図される。例えば、噴流を容易にするために、ゲル化剤及び/または界面活性剤などの1種または複数の薬剤を噴流流体に添加することができる。さらに、噴流を可能にするように連続流体の粘性を調整することができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Utada,et al.,Phys.Rev.Lett.99,094502(2007)によって記載されていることなど)。
【0097】
他の態様では、溶液中に溶解した電解質を活用することによって、注入流体それ自体を電極として使用する方法を使用して、1種または複数の試薬を添加することができる。
【0098】
別の態様では、試薬が添加されるドロップ(すなわち、「標的ドロップ」)を添加される試薬(「標的試薬」)を含むドロップの内側に包むことによって、早期に形成されたドロップ(例えば微小液滴)に試薬を添加する。ある種の実施形態では、そうした方法は、最初に、適切な疎水性相、例えば油のシェルに標的ドロップを封入して二重エマルジョンを形成することによって行われる。次いで、標的試薬を含むドロップで二重エマルジョンを封入して、三重エマルジョンを形成する。標的ドロップと標的試薬を含むドロップとを混合するために、次いで、限定されないが、電界を加えること、液滴の界面を不安定化する化学物質を添加すること、圧縮部及び他のマイクロ流体形状を通って三重エマルジョンを流動させること、機械的撹拌もしくは超音波を与えること、温度を上昇もしくは低下させること、または磁場によって引かれた場合に二重エマルジョンの界面を破裂させることができる磁気粒子をドロップ封入することを含めた任意の適切な方法を使用して、二重エマルジョンを押し開ける。これらの方法及び関連した方法は公開PCT出願WO2014/028378に記載されており、その開示は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0099】
MDA生成物の検出
本方法の実施において、MDA増幅産物を検出することができる方法は様々であり得る。当技術分野で既知の蛍光色素の使用を含めた様々な異なる検出成分を本方法の実施において使用することができる。蛍光色素は、一般的にはファミリーに分けることができ、例えば、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、シアニン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、カスケードブルー及びその誘導体、ルシファーイエロー及びその誘導体、BODIPY及びその誘導体などである。例示的フルオロフォアとしては、インドカルボシアニン(C3)、インドジカルボシアニン(C5)、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、テキサスレッド、パシフィックブルー、オレゴングリーン488、アレクサフルオル-355、アレクサフルオル488、アレクサフルオル532、アレクサフルオル546、アレクサフルオル-555、アレクサフルオル568、アレクサフルオル594、アレクサフルオル647、アレクサフルオル660、アレクサフルオル680、JOE、リサミン、ローダミングリーン、BODIPY、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシ-フルオレセイン(FAM)、フィコエリトリン、ローダミン、ジクロロローダミン(dローダミン)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、LIZ、VIC、NED、PET、SYBR、ピコグリーン、リボグリーンなどが挙げられる。フルオロフォア及びその使用の説明は、中でも、R.Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Products,9th ed.(2002),Molecular Probes,Eugene,Oreg.、M.Schena,Microarray Analysis(2003),John Wiley & Sons,Hoboken,N.J.、Synthetic Medicinal Chemistry 2003/2004 Catalog,Berry and Associates,Ann Arbor,Mich.、G.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)、及びGlen Research 2002 Catalog,Sterling,VAに見出すことができる。
【0100】
コピー数多型
コピー数多型(CNV)は、ゲノムにおける構造変動の形態である。本明細書に記載のように、CNVは一般に、1kbpより大きいゲノムのDNAセグメントの変動を指す。いくつかの例では、ゲノムの変化は、DNAの1つまたは複数のセクションのコピー数の異常な変動またはある種の遺伝子については正常な変動であり得る。CNVは、欠失した(すなわち、通常数より少ない)ゲノムの大きな領域及び重複した(すなわち、通常の数より多い)ゲノムの大きな領域に対応する。CNVは様々であり得るが、短いCNVほど一般に長いCNVよりも検出するのが難しい。
【0101】
CNV解析は、CNVを評価する(すなわち、特定のDNA配列のコピー数の変動を検出する)ために増幅MDA生成物を解析することを一般に指す。
【0102】
CNVを解析するために、本明細書に記載のMDA方法と組み合わせて次世代シーケンシング(NGS)を利用することができる。CNVを検出するための特定のNGS技法としては、CNV-seq、FREEC、readDepth、CNVnator、SegSeq、イベントワイズテスト(event-wise testing)(EWT)、rSW-seq、CNAnorm、cND、CNAseg、CNVer、CopySeq、JointSLM及びcn.MOPSを挙げることができる。ゲノム中のCNVを特定するためのNGSの他の例としては、ペアエンドマッピング(PEM)ベースの方法及びカバレッジ深度(DOC)ベースの方法が挙げられる。いくつかの例では、PEMベースの方法が、より小さいサイズのCNVを検出するのに適し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、小さなDNAセグメント、例えば単一遺伝子に対して、CNVを実施することができる。他の実施形態では、複数の遺伝子に対してCNVを実施することができる。
【0104】
いくつかの例では、CNVは癌などの特定の疾患と関係がある。癌患者が1種または複数の薬物で治療される場合、癌性細胞は、癌細胞を薬物療法に対して抵抗性を生じるように進化させることが多い選択圧にかけられる。進化するために、コピー数多型(CNV)によって実証されるように、癌細胞は、薬物療法抵抗性につながり得る遺伝子変異の形成を受け、この場合、癌細胞のゲノムの領域がゲノム中に挿入(すなわち重複)または欠失を組み込むことができる。
【0105】
CNV解析は、ゲノム中に特定の配列が出現する回数を数えることを試みる。最初の遺伝物質を癌患者の細胞から抽出し、CNV解析を実施するのに十分な遺伝物質を生成するために増幅することができる。核酸集団、例えば単一細胞に由来する核酸集団におけるCNVの正確な特徴づけを提供するために、本明細書に記載の方法を使用してゲノム材料を均一に増幅することができる。MDA増幅産物を生成するために本明細書に記載のddMDA方法を使用することによって、単一細胞に由来するDNAを含めて、微量のDNAを正確且つ均一に増幅することができる。
【0106】
CNV解析の一例では、核酸集団は単一の癌細胞に由来する。ソーティング技法、例えば希釈または蛍光活性化セルソーティング(FACS)のいずれかによって、最初に生物試料から癌細胞を単離し、個々の反応容器(例えばチューブ)に入れる。いったん単離したら、細胞を溶解し、そのゲノムをddMDA方法に適したサイズ、例えば104bp~106bpの断片に断片化する。次いで、単離及び断片化した核酸鋳型分子をddMDA方法にかけ、この方法は、微小液滴内に核酸鋳型分子(複数可)を封入することならびにMDA試薬、MDAプライマー及び適切なDNAポリメラーゼを微小液滴中に添加することを含むことができる。いくつかの例では、微小液滴あたり少数の増幅産物が生成されるように、MDA混合物を乳化する。その後、微小液滴をインキュベートして、核酸鋳型分子(複数可)からMDA増幅産物を生成する。例えば、バルクMDAまたはエマルジョンMDAを実施する場合、微小液滴を30℃の温度で16時間インキュベートする。
【0107】
いくつかの実施形態では、微小液滴あたりの所定量の増幅物及び下流解析のための増幅DNAの総量をもたらすために、微小液滴のサイズを変えることができる。他の実施形態では、微小液滴あたりの所定量の増幅物及び下流解析のための増幅DNAの総量をもたらすために、必要に応じて微小液滴の数を変えて、分子あたりの所望量の増幅物を得ることができる。
【0108】
その後、いったんMDA増幅産物が生成されると、生成物を解析して、CNVを決定及び/または定量化することができる。いくつかの実施形態では、増幅産物のDNAセグメントをヒトゲノムと整列させ、異なるリードを比較してヒトゲノム中の挿入または欠失を評価することによって、特定の配列が繰り返される回数を定量化するために、増幅産物のDNAセグメントをシークエンスことができる。核酸集団におけるCNVを解析するためのこの方法が、偏りが最低限の均一に増幅されたゲノム材料を利用するので、増幅産物におけるいかなる違いも単にCNVに起因するはずであり、それによって、正確なCNV解析が可能になる。
【0109】
本明細書に記載の方法は癌細胞に由来するDNA CNV解析に関して記載されているが、CNV解析の方法は、いくつかの他の疾患状態、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症、クローン病、血友病、統合失調症などの解析にも関する。
【0110】
次世代シークエンシング
本明細書に記載のように、用語「次世代シーケンシング」は、一般に、標準的なDNAシークエンシング(例えば、サンガーシークエンシング)よりも進歩したものを指す。標準的なDNAシーケンシングは、実務者がDNA配列中のヌクレオチドの正確な順序を決定することを可能にするが、次世代シーケンシングは、何百万の塩基対のDNA断片を一斉にシークエンスすることができる並列シークエンシングも提供する。標準的なDNAシーケンシングは、DNA鋳型分子を増幅するために、一般に、一本鎖DNA鋳型分子、DNAプライマー及びDNAポリメラーゼを必要とする。次世代シーケンシングはハイスループットシークエンシングを促進し、これによって、標準的なDNAシーケンシングと比べて著しく短い期間で全ゲノムをシークエンスすることが可能になる。次世代シーケンシングは、病態の診断のための病因性変異の特定も促進することができる。次世代シーケンシングは、遺伝子配列の事前知識を必要とせずに、一回の解析で試料の全トランスクリプトームの情報を提供することもできる。
【0111】
いくつかの例では、シークエンシングは、E.coli細胞よりも大きなゲノムを含む哺乳動物細胞を含むことができる。E.coliゲノムは470万塩基対を含む。これに対して、二倍体ヒトゲノムは複雑であり、60億塩基対より多くを有する。その大きなゲノムサイズのため、一定の断片長に対してより多くの断片を生成しなければならず、ひいては、ポアソン封入の制限を確実にするために、より多くの液滴の生成を必要とする。例えば、10kbの断片サイズについては600,000断片が存在し、これは、ddMDA反応に対して低装填率を保証するためには約600万個の液滴を必要とする。しかし、システムには膨大な柔軟性があり、これは、十分にddMDAの能力内である。例えば、約30μmの液滴を使用する場合、600万個の液滴エマルジョンが約140μLのddMDA試薬を必要とし、マイクロ流体流動集束で生成するのに約30分かかり、これらの両方とも合理的である。さらに、液滴容積、断片長及び乳化方法は、実験について最適化するために、すべて変更することができる。例えば、よりハイスループットの液滴生成方法、例えば、並列液滴生成(Romanowsky et al.(2012)“High throughput production of single core double emulsions in a parallelized microfluidic device.”Lab Chip,12,802)、階層的液滴分割(Abate,A.R.and Weitz,D.a(2011)“Faster multiple emulsification with drop splitting.”Lab Chip,11,1911-1915)及びバブル誘発液滴生成(Abate,A.R.and Weitz,D.a(2011)“Air-bubble-triggered drop formation in microfluidics”Lab Chip,11,1713-1716)は、それぞれ、液滴生成において>10×のスループットを提供し、これらを組み合わせて使用することができる。
【0112】
適切な対象
様々な異なる対象から得た生物試料に本方法を適用することができる。多くの実施形態では、対象は「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食動物目(例えば、イヌ及びネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット及びラット)ならびに霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー及びサル)を含めた哺乳綱内の生物を記載するのに広く使用される。多くの実施形態では、対象はヒトである。本方法は、両方の性別の及び任意の発育段階(すなわち、新生児、幼児、若年、青年または成人)のヒト対象に適用することができ、ある種の実施形態では、ヒト対象は、若年、青年または成人である。本発明はヒト対象に適用することができるが、本方法は、限定されないが、鳥、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜及びウマなどの他の動物対象に対して(すなわち、「非ヒト対象」において)行うこともできることを理解されたい。したがって、本開示による評価を必要としている任意の対象が適切であることを理解されたい。
【0113】
さらに、適切な対象としては、癌などの状態と診断されたもの、及び診断されていないものが挙げられる。適切な対象としては、1つまたは複数の癌の臨床症状を示しているもの、及び示していないものが挙げられる。ある種の態様では、対象は、1つまたは複数の因子、例えば、家族歴、化学物質及び/または環境曝露、遺伝子変異(複数可)(例えば、BRCA1及び/またはBRCA2変異)、ホルモン、感染因子、放射線被曝、生活様式(例えば、食事及び/または喫煙)、1つまたは複数の他の疾患状態の存在などが原因で、癌を発症する危険性があり得るものでもよい。
【0114】
上記でより十分に説明したように、様々な異なる種類の生物試料をそうした対象から得ることができる。ある種の実施形態では、全血が対象から採られる。必要に応じて、遠心分離、分画、精製などによって、本方法を実施するより前に全血を処理することができる。対象から採られる全血試料の量は、100mL以下、例えば、約100mL以下、約50mL以下、約30mL以下、約15mL以下、約10mL以下、約5mL以下または約1mL以下でもよい。
【0115】
デバイス
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の方法は、マイクロ流体デバイスを使用して実施することができる。マイクロ流体デバイスは、いくつかのマイクロチャネル、バルブ、ポンプ、リアクター、ミキサー及び微小液滴を生成するための他の成分を含むことができる。適切なデバイスは、例えばPCT出願公開WO2014/028378に記載されており、その開示は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、
図7は、本明細書に記載の方法の1つまたは複数の態様を実施するための例示的マイクロ流体デバイスを図示する。特に、
図7は、開示される方法で使用するための単分散液滴を提供するために利用することができるマイクロ流体液滴メーカーを図示する。
【0116】
前述のように、本発明の実施形態はマイクロ流体デバイスを用いる。本発明のマイクロ流体デバイスは、様々な様式で実施することができる。ある種の実施形態では、例えば、マイクロ流体デバイスは少なくとも1つの「マイクロ」チャネルを有する。そのようなチャネルは、およそ1ミリメートル以下(例えば、約1ミリメートル以下)の少なくとも1つの断面の寸法を有し得る。ある種の用途では、この寸法を調整することができ、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの断面の寸法は約500マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、さらに、適用上可能である限り、断面の寸法は約100マイクロメートル以下(またはさらに約10マイクロメートル以下-さらに約1マイクロメートル以下のこともある)。断面の寸法は、一般に中心線の流動の方向に垂直であるものであるが、流動の方向を変える傾向があるL字形の屈曲または他の機構を通る流動に遭遇する場合は、作動中の断面の寸法は流動に厳密に垂直である必要はないことを理解されたい。いくつかの実施形態では、マイクロ-チャネルは、矩形断面の高さ及び幅または楕円形断面の長軸及び短軸のような2つ以上の断面の寸法を有し得ることも理解されたい。これらの寸法のいずれかをここに提示されるサイズと比較することができる。本開示に関連して用いられるマイクロ-チャネルは、著しく不均衡な2つの寸法を有し得ることに留意されたい(例えば、約100~200マイクロメートルの高さ及びおよそ1センチメートル以上の幅を有する矩形断面)。ある種のデバイスは、2つ以上の軸が、サイズが非常に類似しているまたはさらにサイズが同一であるチャネルを用いることができる(例えば、正方形または円形の断面を有するチャネル)。
【0117】
上記を考慮して、本明細書に記載の原理及び設計の特徴のいくつかは、ミリメートルまたはさらにはセンチメートルスケールのチャネル断面に達するチャネルを用いるデバイス及びシステムを含めて、より大きなデバイス及びシステムにスケール変更することができることを理解されたい。したがって一部のデバイス及びシステムを「マイクロ流体」と記載する場合は、ある種の実施形態では、この記載は、一部のより大きなスケールのデバイスに等しく適用されることが意図される。
【0118】
マイクロ流体「デバイス」に言及する場合は、1つまたは複数のチャネル、リザーバー、ステーションなどが連続的な基材を共有する単一の実体(一体化されていても、されていなくてもよい)を示すことが一般に意図される。マイクロ流体「システム」は、1つまたは複数のマイクロ流体デバイス及び関連する流体コネクション、電気コネクション、制御/ロジック機構などを含むことができる。マイクロ流体デバイスの態様は、本明細書で論じられる寸法を有する1つまたは複数の流体流路、例えばチャネルの存在を含む。
【0119】
ある種の実施形態では、本発明のマイクロ流体デバイスは、流体媒体の連続的な流動を提供する。マイクロ流体デバイス中のチャネルを通って流動する流体は、多くの興味深い特性を示す。一般的には、無次元レイノルズ数が極端に低く、その結果、常に層状のままである流動がもたらされる。さらに、このレジームでは、一緒になる2つの流体は容易に混ざらず、拡散だけが2つの化合物の混合をもたらすことができる。
【0120】
本開示の例示的な非限定的態様
実施形態を含めて、上記の本主題の態様は、単独で、または1つもしくは複数の他の態様もしくは実施形態と組み合わせて、有益であり得る。前述の説明を制限することなく、1~68の番号が付けられた本開示のある種の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読む際に当業者に明らかなように、個々に番号付けされた態様のそれぞれは、先行または後続する個々に番号付けされた態様のいずれかとともに使用することができ、またはいずれかと組み合わせることができる。これは、態様のすべてのそのような組み合わせを支持することが意図され、以下に明確に提供される態様の組み合わせに限定されない。
【0121】
1.生物試料から得られた核酸鋳型分子を微小液滴中に封入すること、
多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを前記微小液滴に導入すること、及び
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、
を含む、核酸鋳型分子の非特異的増幅方法。
【0122】
2.前記微小液滴が、前記導入ステップ及びインキュベートステップより前に、1つより多い核酸鋳型分子を含まない、1に記載の方法。
【0123】
3.前記MDA試薬がΦ29DNAポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼを含む、1または2に記載の方法。
【0124】
4.前記微小液滴が約0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの内容積を有する、1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
5.前記封入することが1つまたは複数の生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子を複数の微小液滴中に封入することを含み、前記導入することがMDA試薬及び複数のMDAプライマーを前記複数の微小液滴のそれぞれに導入することを含み、前記インキュベートすることがMDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記複数の微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、を含む、1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
6.前記複数の微小液滴のそれぞれが0個または1個及び1個より多くない核酸鋳型分子を含む、5に記載の方法。
【0127】
7.前記微小液滴を形成するために、前記核酸鋳型分子、MDA試薬及びMDAプライマーが液滴ディスペンサーに装填される、1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
8.1つまたは複数のステップがマイクロ流体制御下で実施される、1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
9.前記微小液滴が振盪エマルジョンを介して生成される、1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
10.前記微小液滴がマイクロ流体エマルジョンを介して生成される、1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
11.前記核酸鋳型分子を提供するために前記生物試料の1つまたは複数の核酸が断片化される、1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
12.前記断片化が酵素的断片化、加熱及び超音波処理のうちの1つを介する、11に記載の方法。
【0133】
13.前記核酸鋳型分子を提供するために前記生物試料の1つまたは複数の細胞が溶解される、1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
14.次世代シークエンシング(NGS)を介して前記MDA増幅産物の配列を決定することをさらに含む、1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
15.前記MDA増幅産物が単一のMDA増幅産物を含む、1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
16.前記MDA増幅産物が複数の異なるMDA増幅産物を含む、1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
17.前記生物試料が1つまたは複数の細胞を含む、1~12及び14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
18.前記1つまたは複数の細胞が1つまたは複数の循環性腫瘍細胞(CTC)を含む、17に記載の方法。
【0139】
19.検出成分を各微小液滴に導入するステップであって、前記検出成分の検出がもう1つのMDA増幅産物の存在を示す前記ステップをさらに含む、1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
20.前記検出成分が蛍光の変化に基づいて検出される、19に記載の方法。
【0141】
21.各微小液滴の内容積がほぼ等容積である、5に記載の方法。
【0142】
22.各微小液滴の内容積が有意に異なる容積である、5に記載の方法。
【0143】
23.微小液滴の数が核酸鋳型分子の数に対応する、5に記載の方法。
【0144】
24.増幅される核酸鋳型分子の数が生成される微小液滴の数を制御することによって変えられる、5に記載の方法。
【0145】
25.各微小液滴に含まれる前記核酸鋳型分子に由来する所定量のMDA増幅産物を得るために、各微小液滴のサイズが変えられる、5に記載の方法。
【0146】
26.10fg以下の前記核酸鋳型分子が前記微小液滴に封入される、1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
27.5fg以下の前記核酸鋳型分子が前記微小液滴に封入される、26に記載の方法。
【0148】
28.前記封入すること及び導入することが単一ステップで生じる、1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
29.生物試料から単離した核酸集団に対するコピー数多型(CNV)解析の実施方法であって、
前記核酸集団を断片化すること、
前記断片化した核酸集団を複数の微小液滴に封入すること、
多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを前記複数の微小液滴のそれぞれに導入すること、
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、
前記MDA増幅産物をシークエンシングして、前記核酸集団中の1つまたは複数の核酸配列のコピー数を決定すること
含む、前記実施方法。
【0150】
30.前記核酸集団がゲノムDNAを含む、29に記載の方法。
【0151】
31.前記ゲノムDNAが単一細胞から単離される、29に記載の方法。
【0152】
32.前記単一細胞が癌細胞である、31に記載の方法。
【0153】
33.前記癌細胞が循環性腫瘍細胞(CTC)である、32に記載の方法。
【0154】
34.前記微小液滴のそれぞれが、前記導入ステップ及びインキュベートステップより前に、1つより多い核酸鋳型分子を含まない、29~33のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
35.前記MDA試薬がΦ29DNAポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼを含む、29~34のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
36.前記微小液滴が約0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの内容積を有する、29~35のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
37.前記複数の微小液滴のそれぞれが0個または1個及び1個より多くない核酸鋳型分子を含む、29~36のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
38.前記微小液滴を形成するために、前記核酸鋳型分子、MDA試薬及びMDAプライマーが液滴ディスペンサーに装填される、29~37のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
39.1つまたは複数のステップがマイクロ流体制御下で実施される、29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
40.前記微小液滴が振盪エマルジョンを介して生成される、29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
41.前記微小液滴がマイクロ流体エマルジョンを介して生成される、29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
42.前記断片化が酵素的断片化、加熱及び超音波処理のうちの1つを介する、29~41のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
43.前記核酸鋳型分子を提供するために前記生物試料の1つまたは複数の細胞が溶解される、29~41のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
44.各微小液滴に関する前記MDA増幅産物が単一のMDA増幅産物を含む、29~43のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
45.各微小液滴に関する前記MDA増幅産物が複数の異なるMDA増幅産物を含む、29~43のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
46.前記生物試料が1つまたは複数の細胞を含む、29~42及び44~45のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
47.前記1つまたは複数の細胞が1つまたは複数の循環性腫瘍細胞(CTC)を含む、46に記載の方法。
【0168】
48.各微小液滴の内容積がほぼ等容積である、29~47のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
49.各微小液滴の内容積が有意に異なる容積である、29~47のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
50.微小液滴の数が核酸鋳型分子の数に対応する、29~49のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
51.増幅される核酸鋳型分子の数が生成される微小液滴の数を制御することによって変えられる、29~49のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
52.各微小液滴に含まれる前記核酸鋳型分子に由来する所定量のMDA増幅産物を得るために、各微小液滴のサイズが変えられる、29~49のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
53.前記封入すること及び導入することが単一ステップで生じる、29~52のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
54.微小液滴を含む組成物であって、
a.核酸鋳型分子、ならびに
b.i.前記核酸鋳型分子を非特異的に増幅することができるポリメラーゼ酵素を含む複数のMDA試薬、及び
ii.複数のMDAプライマー
を含むMDA混合物
を含む、前記組成物。
【0175】
55.前記微小液滴が単一核酸鋳型分子より多くを含まない、54に記載の組成物。
【0176】
56.前記微小液滴が検出成分をさらに含む、54または55に記載の組成物。
【0177】
57.前記微小液滴が前記核酸鋳型分子から生成された1つまたは複数のMDA増幅産物をさらに含む、54~56のいずれか1つに記載の組成物。
【0178】
58.前記微小液滴が約0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの内容積を有する、54~57のいずれか1つに記載の組成物。
【0179】
59.前記ポリメラーゼ酵素がΦ29DNAポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼである、54~58のいずれか1つに記載の組成物。
【0180】
60.前記MDA試薬がマグネシウム試薬を含む、54~59のいずれか1つに記載の組成物。
【0181】
61.前記微小液滴中の前記核酸鋳型分子の初期量が約0.001pg~約10pgである、54~60のいずれか1つに記載の組成物。
【0182】
62.前記微小液滴中の前記核酸鋳型分子の初期量が約0.01pg~約1pgである、61に記載の組成物。
【0183】
63.前記微小液滴中の前記核酸鋳型分子の初期量が約0.1pg~約1pgである、62に記載の組成物。
【0184】
64.前記組成物が複数の単分散微小液滴を含む、54~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0185】
65.前記組成物が複数の多分散微小液滴を含む、54~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0186】
66.前記微小液滴が複数の核酸鋳型分子を含む、54及び56~65のいずれか1つに記載の組成物。
【0187】
67.前記微小液滴が10fgより多い前記核酸鋳型分子を含まない、54~60及び64~66のいずれか1つに記載の組成物。
【0188】
68.前記微小液滴が5fgより多い前記核酸鋳型分子を含まない、67に記載の組成物。
【実施例0189】
上記で提供する本開示から理解できるように、本開示は多種多様の用途を有する。したがって、以下の実施例は、本発明の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載され、本発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験がすべての、または唯一の実施した実験であることも意図しない。本質的に類似した結果を得るように変更または改変することができる様々な重要でないパラメーターを当業者なら容易に認識するであろう。したがって、以下の実施例は、本発明の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載され、本発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験がすべての、または唯一の実施した実験であることも意図しない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証するために努力したが、いくつかの実験的誤差及び偏差が考慮されるべきである。
【0190】
実施例1:振盪エマルジョン液滴の調製
振盪エマルジョンは、30μLのHFE-7500フッ素化油(3M、カタログ番号98-0212-2928-5)及び2%(w/w)のPEG-PFPE両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤(RAN Technologies、カタログ番号008-FluoroSurfactant-1G)を30μLのMDA反応混合物に添加することによって生成した。あるいは、2%PicoSurfl(Dolomite Microfluidics)を含むHFE-7500フッ素化油を使用することができる。VWRボルテクサーを使用して、組み合わせた混合物を3000rpmで10秒間ボルテックスし、直径が15μm~250μmに及ぶ液滴を作出した(
図8)。インキュベーションの終わりに、10μLのパーフルオロ-1-オクタノール(Sigma Aldrich)を添加し、この混合物をボルテックスして、液滴を合体させ、ピペットで水性層を取り出した。振盪エマルジョン形成についての詳細なプロトコールは、以下の実施例7に見出すことができる。
【0191】
実施例2:単分散マイクロ流体エマルジョン液滴の調製
【0192】
シリコンウエハ上のフォトリソグラフィによりパターニングされたフォトレジスト(SU-8 3025、MicroChem)の層上に未硬化PDMS(10.5:1のポリマー対架橋剤比)に注ぐことによって、単分散エマルジョンを生成するのに使用するポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)マイクロ流体デバイスを製造した(19)。このデバイスを80℃のオーブンで1時間硬化し、小刀で取り出し、0.75mmの生検コア(World Precision Instruments、カタログ番号504529)を使用して入口ポートを加えた。O2プラズマ処理によってこのデバイスをガラススライドに結合させ、チャネルをAquapel(PPG Industries)で処理して疎水性にした。最後に、このデバイスを80℃で10分間ベーキングした。市販のマイクロ流体液滴メーカー及びポンプを使用して、本明細書に記載の方法、例えばddMDAのための単分散エマルジョンを生成することもできる。
【0193】
MDA反応混合物及び2%(w/w)のPEG-PFPE両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤(RAN Biotechnologies)を含むHFE-7500フッ素化油を別々の1mLのシリンジに装填し、カスタムPythonスクリプトで制御されるシリンジポンプ(New Era、カタログ番号NE-501)を使用して、それぞれ300及び500μL/時で流動集束液滴メーカーに注入した。あるいは、2%PicoSurfl(Dolomite Microfluidics)を含むHFE-7500フッ素化油も使用可能であり得、これは購入可能である。液滴メーカーによって直径が約26μmの単分散液滴を生成し(
図8、パネルA~Cを参照されたい)、これをPCRチューブに収集した。このサイズ範囲の液滴はddMDA反応の間安定である。インキュベーションの終わりに、10μLのパーフルオロ-1-オクタノールを添加し、エマルジョンをボルテックスして、液滴を合体させ、ピペットで水性層を取り出した。マイクロ流体デバイスの製造及び乳化に関する詳細なプロトコールは、以下の実施例8に見出すことができる。本明細書に記載の方法を実施するのに使用することができる液滴メーカーの例を
図9に図示する。
【0194】
実施例3:ゲノムDNAの抽出、断片化及び増幅
精製したE.coli K12(DH10B)細胞をNew England BioLabs(カタログ番号C3019H)から得て、PureLinkゲノムDNAミニキット(Life Technologies、カタログ番号K1820-00)を使用して、溶解し、精製した。10キロベースの断片をゲル抽出し、続いて、800ngのDNAをNEBNext dsDNA断片化酵素(NEB、カタログ番号M0348S)で10分間消化し、NanoDrop(Thermo Scientific)を使用して定量化した。REPLI-g単一細胞キット(Qiagen、カタログ番号150343)を使用して、MDA反応を実施した。精製したDNA(0.05pg、0.5pg及び5pg)を3μLの緩衝液D2及び3μLのH2Oとともに10分間65℃でインキュベートした。3μLの停止液を添加して停止した後、反応物を2つに分け、ヌクレアーゼフリーのH2O、REPLI-g反応緩衝液及びREPLI-g DNAポリメラーゼを含むマスターミックスを各分割部分に添加した。MDA反応は、バルクでまたはエマルジョンとして、30℃で16時間インキュベートした。
【0195】
実施例4:単一E.COLI細胞のソーティング及び全ゲノム増幅
【0196】
OneShot TOP10ケミカルコンピテントE.coli細胞(Life Technologies、カタログ番号C4040-10)をLB培地中で12時間培養し、水に希釈し、0.25×サイバーグリーンI(Life Technologies、カタログ番号S-7563)で染色した。細胞染色に続いて、細胞溶液をBD FACS Aria IIに移入した。単一の陽性事象を96ウェルプレートの10個の別々のウェルにソートした。3μLの緩衝液D2及び3μLのH2Oを各ウェルに添加し、その後、このプレートを98℃で4分間加熱した。この熱ステップは、細胞を溶解し、ddMDAにとって十分な長さ(例えば、5~15キロベース)にゲノムDNAを断片化する。加熱後、3μLの停止液を各ウェルに添加して反応を止めた。次に、ヌクレアーゼフリーのH2O、REPLI-g反応緩衝液及びREPLI-g DNAポリメラーゼを含むマスターミックスを各ウェルに添加した。MDA反応は、バルクでまたはエマルジョンとして、30℃で16時間インキュベートした。
【0197】
実施例5:デジタル液滴PCR及びMDA
鋳型としてファージラムダゲノムDNA(NEB、カタログ番号N3011S)を用いて、デジタルPCR及びMDA実験を実施した。デジタルPCRについては、100μLの全体積中に、プライマー(IDT)、TaqManプローブ(IDT)及び2×PlatinumマルチプレックスPCRマスターミックス(Life Technologies、カタログ番号4464268)と鋳型をバルクで混合した。プライマー及びプローブの配列は、ラムダフォワード:5’-GCCCTTCTTCAGGGCTTAAT-3’(配列番号1)、ラムダリバース:5’CTCTGGCGGTGTTGACATAA-3’(配列番号2)、ラムダプローブ:5’/6-FAM/ATACTGAGC/ZEN/ACATCAGCAGGACGC/3IABkFQ/-3’(配列番号3)であった。プライマー及びプローブはそれぞれ1μM及び250nMの濃度で使用し、ラムダファージゲノム中の110塩基対領域を標的にする。反応混合物及び2%(w/w)のPEG-PFPE両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤を含むHFE-7500フッ素化油を別々の1mLのシリンジに装填し、それぞれ300及び600μL/時で流動集束デバイスに注入した。PCRチューブにエマルジョンを収集した後、エマルジョンの下の油をピペットを使用して除去し、5%(w/w)のPEG-PFPE両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤を含むFC-40フッ素化油(Sigma-Aldrich、カタログ番号51142-49-5)と置き換えた。この油/界面活性剤の組み合わせは、加熱ddMDA反応中に、HFE油の組み合わせよりも高い安定性をもたらす。エマルジョンをT100サーモサイクラー(BioRad)に移し、以下のプログラムでサイクルをまわした:95℃2分間、続いて95℃30秒、60℃90秒及び72℃20秒を35サイクル、続いて12℃での最終的な保持。
【0198】
デジタルMDAについては、以前に記載されているようにREPLI-g単一細胞キットの試薬と鋳型を混合し、DNA色素(EvaGreen、Biotium)と混合した。反応混合物及び2%(w/w)のPEG-PFPE両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤を含むHFE-7500フッ素化油を含むシリンジに接続した流動集束デバイスを介して、この反応混合物を乳化した。収集したエマルジョンを30℃で16時間インキュベートした。熱サイクリングを必要としないので、FC-40の置き換えはデジタルMDAに必要でない。
【0199】
実施例6:ライブラリー調製及びシークエンシングパラメーター
Nextera XT試料調製キット(Illumina)を使用して、各試料由来の1ngのゲノムDNAから細菌ライブラリーを調製した。高感度バイオアナライザーチップ(Agilent)、Qubitアッセイキット(Invitrogen)及びqPCR(Kapa Biosystems)を使用して、得られたライブラリーを定量化した。細菌ライブラリーは、断片サイズが800~1000bpで変化していた。すべてのライブラリーを等モルの比率でプールし、150bpのペアエンドリードでIllumina MiSeqを使用し、後に100bpのペアエンドリードでIllumina HiSeqを使用して、シークエンスした。
【0200】
BaseSpace(Illumina)から利用可能なBWA全ゲノムシークエンシングプログラムを使用して、シークエンシングデータをE.coli K12 DH10B参照ゲノムにマッピングした。マッピングしたデータをSAMファイルに変換し、SAMtoolsを使用してpileupファイルを生成した。pileupファイルからの整列したリードの数を構文解析し、各リード数を平均リード数で割り、正規化データを10,000bpのビンに統合することによって、ゲノム位置の関数としてのゲノムカバレッジを決定した。
【0201】
実施例7:振盪エマルジョン液滴におけるMDA
実施例7は、本明細書に記載の方法の実施及び組成物の提供で使用するための振盪エマルジョン液滴を生成する方法の一例を提供する。
【0202】
ステップ1:50μlのREPLI-g単一細胞反応混合物(Qiagen、カタログ番号150343)をPCRチューブ中に調製した直後に、2%(w/w)のPEG-パーフルオロポリエーテル両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤(RAN Biotechnologies、カタログ番号008-FluoroSurfactant-1G)を含むHFE-7500フッ素化油(3M、カタログ番号98-0212-2928-5)を50μl添加する。
【0203】
ステップ2:100μlの組み合わせた混合物を含むPCRチューブをVWRボルテクサー2(VWR、カタログ番号58816-123)上に水平に保つ。3000rpmで10秒間ボルテックスする。
【0204】
ステップ3:ボルテックスした後、PCRチューブを垂直に保つ。白色の半透明エマルジョンが上清に現れるはずである。
【0205】
ステップ4:PCRチューブを30℃で16時間インキュベートする。
【0206】
ステップ5:16時間のインキュベーション後、PCRチューブを70℃で20分間加熱して、Φ29DNAポリメラーゼを失活させる。
【0207】
ステップ6:10μlのパーフルオロ-1-オクタノール(Sigma Aldrich、カタログ番号370533-5G)を上清に添加する。ピペットで激しく上下させ、短く遠心分離する。これは、界面活性剤を不安定化させ、液滴を合体させる働きがある。
【0208】
ステップ7:PCRチューブから上清を取り出す。いかなる油相も取り出さない。
【0209】
ステップ8:DNA Clean and Concentrator-5(Zymo Research、カタログ番号D4004)を使用してDNAを浄化する。10μlのH2Oに溶出する。
【0210】
実施例8:単分散マイクロ流体エマルジョン液滴製造PDMSデバイスにおけるddMDA
実施例8は、本明細書に記載の方法及び組成物に関連してマイクロ流体エマルジョンを実施するのに使用するためのPDMSデバイスを製造する方法の一例を提供する。
【0211】
ステップ1:シリコンウエハ上への20μm厚のフォトレジスト(SU-8 3025、Microchem)層のスピンコーティング、それに続く、パターニングされたUV曝露及びレジスト現像によって、デバイスマスターを作出する(1)。
【0212】
ステップ2:4グラムのSylgard184シリコーンエラストマー硬化剤を42グラムのSylgard184シリコーンエラストマーベース(Dow Corning)とプラスチックカップ中で混合する。
【0213】
ステップ3:電動ミキサーを使用して、混合物が白色になり泡立つまで硬化剤及びベースを混合する。
【0214】
ステップ4:真空チャンバー中に20分間置いて、混合物を脱気する。
【0215】
ステップ5:以前に作製したシリコンウエハ上のフォトリソグラフィによりパターニングされたフォトレジスト層上に30グラムの新しく形成されたPDMSを注ぐ。
【0216】
ステップ6:80℃のオーブン中に3時間置いて、PDMSを硬化させる。
【0217】
ステップ7:小刀を使用して、フォトレジストによってパターニングされた硬化PDM領域を切り取る。
【0218】
ステップ8:0.75mmの生検コア(World Precision Instruments、カタログ番号504529)を使用して、デバイスの入口及び出口ポートに穴を開ける(
図7(左)に示す)。
【0219】
ステップ9:イソプロパノールでデバイスを洗浄し、空気乾燥する。
【0220】
ステップ10:デバイスを、300Wプラズマクリーナー中での1mbarのO2プラズマの30秒の処理に続いて、ガラススライドに結合させる。デバイスをテープに結合させることもできる(Thompson and Abate(2013)“Adhesive-based bonding technique for PDMS microfluidic devices.”Lab Chip,13,632-5)。
【0221】
ステップ11:結合させたデバイスを80℃のオーブン中に30分間置く。
【0222】
ステップ12:Aquapel(PPG Industries)を前もって装填し、ポリエチレンマイクロチュービング(Scientific Commodities、カタログ番号BB31695-PE/2)に接続したシリンジを使用して、デバイスの全チャネルをフラッシュして、それらを疎水性にする。
【0223】
ステップ13:フラッシュしたデバイスを80℃のオーブン中にさらに10分間置く。
【0224】
ステップ14:結合していないまたは閉塞したチャネルの存在について、顕微鏡を使用してデバイスを注意深く検査する。
【0225】
実施例9:単分散液滴の生成
実施例9は、本明細書に記載の方法の実施及び組成物の提供で使用するための単分散液滴を生成するための方法の一例を記載する。
【0226】
ステップ1:以下のものを30分間UV処理する:ポリエチレンマイクロチュービング、2つの1mLシリンジ、以前に調製したマイクロ流体デバイス(実施例8に記載されている)、一本のPCRチューブ。
【0227】
ステップ2:少なくとも200μLの、2%(w/w)PEG-パーフルオロポリエーテル両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤を含むHFE-7500フッ素化油を1つのUV処理したシリンジに前もって装填する。
【0228】
ステップ3:少なくとも200μLのHFE-7500フッ素化油で再充填した第2のUV処理したシリンジに50μLのREPLI-g単一細胞反応混合物を前もって装填して、シリンジのボトムアウトを防止する。
【0229】
ステップ4:8インチのポリエチレンマイクロチュービングをシリンジ針に取り付ける。
【0230】
ステップ5:カスタムポンプ制御プログラムで制御されるコンピューターに接続された2つのシリンジポンプ(New Era、カタログ番号NE-501)にシリンジを設置する。
【0231】
ステップ6:ポンプ制御プログラムのプライム機能を使用して、両方のシリンジをプライムする。
【0232】
ステップ7:油シリンジに接続したポリエチレンマイクロチュービングを
図7(左)に示す「油入口部」に取り付ける。
【0233】
ステップ8:REPLI-g単一細胞反応混合物を有するシリンジに接続したポリエチレンマイクロチュービングを
図7(左)に示す「水入口部」に取り付ける。
【0234】
ステップ9:4インチ片のチュービングを1つ
図7に示すデバイスの出口部に取り付ける。UV処理したPCRチューブに移してチュービングを空にする。
【0235】
ステップ10:REPLI-g単一細胞反応混合物を有するシリンジの流速を300μL/時間に設定し、油シリンジの流速を500μL/時間に設定する。
【0236】
ステップ11:流動プログラムを開始する。顕微鏡を使用して、油チャネルと水性チャネルの間の界面におけるドロップの形成を注視する(
図7の右側の画像を参照されたい)。
【0237】
ステップ12:ポリエチレンマイクロチュービングを介する出口部への及びPCRチューブへの液滴の流動を観察する。いったん50μLの反応混合物の全体が液滴に変換されれば、ポンプ制御プログラムを停止する。
【0238】
ステップ13:PCRチューブを30℃で16時間インキュベートする。
【0239】
ステップ14:16時間のインキュベーション後に、PCRチューブを70℃で20分間加熱して、Φ29DNAポリメラーゼを失活させる。
【0240】
ステップ15:10μLのパーフルオロ-1-オクタノールを上清に加える。ピペットで激しく上下させ、短く遠心分離する。これは、界面活性剤を不安定化させ、液滴を合体させる働きがある。
【0241】
ステップ16:PCRチューブから上清を取り出し、油相の取り出しはない。
【0242】
ステップ17:DNA Clean and Concentrator-5を使用してDNAを浄化する。10μLのH2Oに溶出する。
【0243】
デジタル液滴MDAのワークフロー
図1を参照すると、パネルA~Cは、E.coli核酸鋳型分子(複数可)を増幅し、次いで、次世代シーケンシングを実施して核酸鋳型分子(複数可)の配列を決定する様々な方法を図示する。
【0244】
パネルAは、バルク多置換増幅(バルクMDA)を介する核酸鋳型分子(複数可)の増幅を図示する。バルクMDAは反応の指数関数的性質を束縛しない。代わりに、バルクMDAは配列特異的な(すなわち、偏りのある)増幅を示し、この場合、他の配列と比べて、核酸鋳型分子(複数可)の特異的な配列が不均衡に増幅される。その結果、偏った増幅配列が高カバレッジで増幅されるが、他の配列は低カバレッジで増幅される。不均等なカバレッジはシークエンシングの大きな課題をもたらし、これには、シークエンシングリードの非効率的な使用、低カバー領域を使用してゲノムを確信的にアセンブルすることの困難さ、及びゲノム中の未シークエンスギャップ(
図1A、右)が含まれる。
【0245】
パネルBは、振盪エマルジョンMDAを介する核酸鋳型分子(複数可)の増幅を図示する。分離したリアクターは物理的に互いに接続していないので、反応は、独立且つ並列に起こり、これによって、各区画が飽和まで増幅することが可能になる。したがって、増幅産物中の各鋳型は、はるかに均一に表される。それにもかかわらず、「振盪」エマルジョンは、液滴容積が何千回も変化し得る多分散液滴からなる。飽和の際の生成分子の数はリアクターの容積と釣り合いが採れているので、リアクターの多分散性は偏りをもたらし得る。
【0246】
パネルCは、等容積の液滴におけるddMDAを介する核酸鋳型分子(複数可)の増幅を図示する。パネルCは、MDA増幅産物を生成するために、単一核酸鋳型分子がリソース(例えば、プライマー、試薬)のために他の核酸と競合しないように各核酸鋳型分子が単一の微小液滴内で区画化されていることを図示する。代わりに、各単一核酸鋳型分子が同じリソースが割り当てられるので、各核酸鋳型分子は均一に増幅される。
【0247】
単一分子が増幅されることを確実にするために、鋳型濃度は、ポアソン統計に従ってごくわずかのパーセンテージの液滴(一般的には<10%)が分子を含むように、十分に低くすべきである。これは、生成される生成分子の数を減少させるが、より良い均一性を提供する(
図1、パネルC、右)。さらに、MDAは単位容積あたり大量のDNAをもたらす極端に効率的な反応であるので、少数の生産的な液滴が十分過ぎるほどのシークエンシング用材料を提供する。
【0248】
ddMDAによるDNAの非特異的定量化
デジタル液滴MDAは、分離した液滴リアクターにおいて単一鋳型分子を区画化及び増幅することによって、DNAの均一な増幅を可能にする。所与の液滴が増幅を受け、それにより鋳型分子を含むときを示す蛍光レポーターが含まれる場合、これは、蛍光性液滴及び薄暗い液滴の割合を数えることによって、溶液中で核酸を定量化するのにも使用することができる。この方法は、ddPCRが既知の鋳型を数えるのに対して、ddMDAが、未知配列の鋳型を含めた、この反応によって増幅可能な任意の鋳型を定量化することを除いては、DNA濃度を測定するためのqPCRのより正確な代替法であるデジタル液滴PCR(ddPCR)と類似している。これを例示するために、ddMDAを適用して溶液中でラムダファージゲノム断片の濃度を定量化し、ddPCRと結果を比較した(
図2)。小さなラムダファージゲノムは、増幅及び混入の定量化に好都合なDNA源を提供する。ddPCRは特異的なプライマー及びプローブを使用するので、ddMDAと比較して、同じ濃度について観察される蛍光性液滴が少ない(
図2、パネルA)。さらに、ddPCRに必要とされるTaqManプローブは、ddMDAで使用される非特異的色素よりも高いバックグラウンド蛍光をもたらす(
図2、パネルA)。さらに、単一分子のポアソン封入に基づく予測がddPCRのデータに近いが(
図2、パネルB)、デジタルMDAは体系的に濃度を過大評価する(
図2、パネルB)。これは、PCRの特異的性質対MDAの非特異的性質によって、理論的に説明することができる。ddPCRは試料中の各標的ゲノムに対しておよそ1つの蛍光性液滴をもたらすのに対して、ddMDAは、反応によって増幅可能なあらゆるゲノム断片に対してそうする。DNA濃度が増大するにしたがって、複数の鋳型分子が液滴に封入される確率も増大し、2つ、3つまたはより多くの分子を有する液滴の割合が大きくなる。それにもかかわらず、この現象はポアソン分布で説明されるので、正確さは低減するが、この方法を依然としてこれらの濃度で使用することができる。したがって、断片化されたまたは高度に汚染されたDNAは、ddPCRと比較して、ddMDAを使用した場合により高い濃度をもたらす。これは、ddMDAの非特異的なDNA定量化の有効性に、及び配列に関係なく低投入量DNAを増幅するために重要である。
【0249】
ddMDA増幅DNAの次世代シークエンシング
シークエンス解析のために低投入量DNAを増幅することに対するddMDAの有効性を検討するために、様々な方法で調製した試料をシークエンスし、結果を比較した(非増幅E.coli DNA(増幅の偏りなし)、バルクMDAを使用して増幅したE.coli DNA(現在の標準)及び単分散ddMDAを使用して増幅したE.coli DNA(区画化された反応の最良のシナリオ))。E.coliゲノムのより大きなサイズ及び複雑さにより、ラムダファージゲノムの代わりにE.coliゲノムを使用し、このことは、次世代シークエンシング技法により大きな適用性を与える。MDA反応に対する出発濃度は0.5pgであり、これは、約100個のE.coli細胞のゲノムに相当した。当然のことながら、非増幅試料は、細菌の天然のDNA複製サイクルを表し得る長い範囲の体系的変動を除いては、極端に均一なカバレッジを示した(
図3、パネルA、上部の列)。試料をバルクMDAにかけた場合、領域のオーバーカバレッジ及びアンダーカバレッジを引き起こす相当な増幅の偏りが観察された(
図3、パネルA、中央の列)。これに対して、単分散液滴中にMDA増幅が閉じ込められた場合、鋳型のサブセットは最終産物で優位を占めず、その結果、ゲノムにわたって均一なカバレッジがもたらされた(
図3、パネルA、下部の列)。
【0250】
これらの調製方法に関するシークエンシングの偏りの違いをさらに定量化するために、3つの試料に対するカバレッジレベルの確率密度をプロットした(
図3、パネルB)。非増幅E.coli DNAは、狭い分布を有しており、カバレッジの変動がほとんどなかった。これに対して、バルクMDAによって増幅したDNAのカバレッジは極端に広く、多くの領域が非常に低いまたは非常に高いカバレッジを示した。この変動はいくつかの課題を引き起こす。カバーが不十分な領域に関する限られたデータは、これらの領域にまたがる長い配列をアセンブルすることを困難にし、これは、低カバレッジの接合部を高い信頼度をもって決定することができないからである。さらに、高カバレッジ領域はシークエンシングを無駄にし、これは、これらの領域が既に十分にカバーされているからである。高カバレッジ領域は大きな割合のシークエンシングデータを含むが、さらなる情報をほとんど提供しない。ddMDAで増幅したDNAは非増幅の最良のシナリオと類似したカバレッジ分布を有するが、偏りがより大きい。したがって、ddMDAは非増幅材料の均一性に近づく増幅DNAをもたらす。
【0251】
信頼できる全ゲノム増幅法としてのddMDAの有用性をさらに検証するために、PCRベースのWGAキット(PicoPLEX WGA、NEB)由来のシークエンスしたDNAをddMDAのものと比較した。PicoPLEX WGAキットは比較的均一なカバレッジをもたらしたが、それでも大きな割合のカバーが不十分なリードを有する(
図4)。これは、最低限の増幅の偏りしかもたらさないというddMDAのユニークな能力を示した。
【0252】
様々な調製方法で得た配列の偏りの違いをさらに比較するために、
図1に記載されている3つの増幅方法(バルクMDA、振盪エマルジョンMDA及びddMDA)を使用して、3つの異なる投入濃度(5pg(約1000ゲノム)、0.5pg(約100ゲノム)及び0.05pg(約10ゲノム)で、新たな試料を調製した。これらの試料の次世代シーケンシングは、実際に、バルクMDAはシークエンシングカバレッジの不十分な均一性をもたらすが、ddMDA及び振盪エマルジョンMDAは、有意に向上した均一性を示すことを明らかにする(
図5)。
【0253】
未知のゲノムの次世代シーケンシングは、全領域のほぼ完全なカバレッジを必要とする。しかし、増幅は偏ったゲノム表現をもたらし得、これは、シークエンシングの間に少量の領域が十分にカバーされない可能性がある。様々な調製方法及び濃度に対してこの出現の頻度を定量化するために、有意にカバーが不十分なゲノム領域の数を示すドロップアウトメトリックを利用した(
図6、パネルA)。特に、各試料に対する平均カバレッジの10%未満でカバーされる塩基の割合を解析した(使用される式は
図10に見出すことができる)。バルクMDA試料では、かなりの割合のゲノムが低及び中程度の投入濃度について検出されなかった(
図6、パネルA)。高投入濃度については、アンダーカバレッジの割合は低かったが、それでも有意であった。振盪エマルジョンMDA試料では、区画化は、3つの濃度すべてについてドロップアウトの顕著な減少をもたらした(
図6、パネルA)。しかし、相当なドロップアウトが依然として観察された。ddMDA試料は、ドロップアウト領域の数をさらに減少させ、実にE.coli DNAの10ゲノム当量に至るまでの低ドロップアウトを維持した(
図6、パネルA)。バルクMDAが最も悪いデータをもたらし、ddMDAが最も良いデータをもたらすというこの傾向は、3つの濃度すべてをバルク調製物に対して正規化し、平均する場合に明らかである(
図6、パネルA、下部のパネル)。
【0254】
低投入量DNAのシークエンシングの別の重要な因子は、シークエンシングの効率であり、特に、シークエンスされたさらなるリードのそれぞれが最大限の新しい情報内容を提供することを確実にすることである。有意なカバレッジスプレッドが存在する場合、小さな高度にカバーされた領域は大きな割合のシークエンスしたリードを含み得、したがって、低カバー領域を観察するためにシークエンシング費の増大を要する。このカバレッジの相違を定量化するために、相対カバレッジの二乗平均平方根として計算される、カバレッジスプレッドを評価するメトリックを使用した(
図6、パネルB)。使用される式は
図10に見出すことができる。試料間の傾向は、カバーが不十分な領域もドロップアウトする傾向があるので、ドロップアウトメトリックの傾向と類似しており、また、ポイントをバルクの結果に対して正規化し、平均する場合に明らかである(
図6、パネルB、下部のパネル)。これは、区画化されたMDAはカバレッジの相違を有意に低減し、得られたリードの有用な情報内容を最大にし、その結果、バルクMDAと比較して少ない全体的なシークエンス費で、等しい量の新しい情報が得られるようにすることを示す。
【0255】
カバレッジの均一性及び正確なアセンブリーを生成することができることの尤度を推定する別の有用なメトリックは、シグナル、例えば
図3、パネルAから得られるカバレッジシグナルのランダム性を評価するのに使用される尺度である情報エントロピーである。未知のゲノムをシークエンシングする場合、全配列にわたって最大限にランダム化されたカバレッジ分布を示す高エントロピーが理想的である。情報エントロピーはddMDAと振盪エマルジョンMDAについて同様であり、両方ともバルクMDAよりもよく機能する(
図6、パネルC)。前の場合と同ように、投入濃度に対して正規化及び平均する場合、この傾向が存在する(
図6、パネルC、右パネル)。情報エントロピーについて使用される式は、
図10に見出すことができる。これらのデータは、区画化されたddMDAは、最低限のシークエンシング費でゲノムを最大限にカバーするのに効果的な手段であることを示す。
【0256】
単一細胞からのddMDA増幅DNAの次世代シークエンシング
全ゲノム増幅に対するddMDAの有用性をさらに示すために、単一E.coli細胞にこの方法を適用した。単一細胞の増幅は、単一細胞の解析、特に、培養不可能な単一微生物及び個々の癌細胞の研究に非常に重要である。有用であるが、その手順は、精製したDNAの増幅よりもはるかに複雑である。単一細胞は、一般に、正確に溶解し、MDAに適合する分子に断片化されなければならない。さらに、混入及びDNA喪失(これは少量の出発材料に関して特に問題となる)を最小限にするために、UV曝露及び滅菌手順を含めたいくつかの予防策をとらなければならない。本研究では、単一E.coli細胞を個々のウェルにFACSソーティングし、溶解し、熱により断片化し、前と同一の手順を使用してMDA反応物を乳化した。特に、ddMDAで増幅した2つの異なる細胞を標準的なバルクMDAで増幅した2つの異なる細胞と比較した。試料をシークエンシングし、以前に記載の同一のバイオインフォマティクス解析を実施した後に、バルクMDAによって増幅した細胞にかなりの量の増幅の偏りが見つかった(
図7、パネルA、左上のパネル)。特に、バルクMDA細胞2は莫大な量の不十分な増幅を有しており、これは、いくつかの10,000塩基対領域の完全なドロップアウトをもたらした(カバレッジプロット中のギャップによって示される)。これに対して、ddMDAによって増幅した2つの細胞は有意により均一なカバレッジを有していた(
図7、パネルA、右上パネル)。4試料の確率密度を解析することによって、これらの結果をさらに検証した(
図7、パネルB)。混入及びDNA喪失が懸念されるが、バルクMDAとddMDAの間のカバレッジの著しい違いは、単一細菌細胞へのこの技法の適合性を示す。
【0257】
実施態様
1. 生物試料から得られた核酸鋳型分子を微小液滴中に封入すること、
多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを前記微小液滴に導入すること、及び
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、
を含む、核酸鋳型分子の非特異的増幅方法。
2. 前記微小液滴が、前記導入ステップ及びインキュベートステップより前に、1つより多い核酸鋳型分子を含まない、実施態様1に記載の方法。
3. 前記MDA試薬がΦ29DNAポリメラーゼを含む、実施態様1または2に記載の方法。
4. 前記微小液滴が約0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの内容積を有する、実施態様1~3のいずれか1項に記載の方法。
5. 前記封入することが1つまたは複数の生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子を複数の微小液滴中に封入することを含み、前記導入することがMDA試薬及び複数のMDAプライマーを前記複数の微小液滴のそれぞれに導入することを含み、前記インキュベートすることがMDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記複数の微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、を含む、実施態様1~4のいずれか1項に記載の方法。
6. 前記複数の微小液滴のそれぞれが0個または1個及び1個より多くない核酸鋳型分子を含む、実施態様5に記載の方法。
7. 前記微小液滴を形成するために、前記核酸鋳型分子、MDA試薬及びMDAプライマーが液滴ディスペンサーに装填される、実施態様1~6のいずれか1項に記載の方法。
8. 1つまたは複数のステップがマイクロ流体制御下で実施される、実施態様1~7のいずれか1項に記載の方法。
9. 前記微小液滴が振盪エマルジョンを介して生成される、実施態様1~7のいずれか1項に記載の方法。
10. 前記微小液滴がマイクロ流体エマルジョンを介して生成される、実施態様1~7のいずれか1項に記載の方法。
11. 前記核酸鋳型分子を提供するために前記生物試料の1つまたは複数の核酸が断片化される、実施態様1~10のいずれか1項に記載の方法。
12. 前記断片化が酵素的断片化、加熱及び超音波処理のうちの1つを介する、実施態様11に記載の方法。
13. 前記核酸鋳型分子を提供するために前記生物試料の1つまたは複数の細胞が溶解される、実施態様1~10のいずれか1項に記載の方法。
14. 次世代シークエンシング(NGS)を介して前記MDA増幅産物の配列を決定することをさらに含む、実施態様1~13のいずれか1項に記載の方法。
15. 前記MDA増幅産物が単一のMDA増幅産物を含む、実施態様1~14のいずれか1項に記載の方法。
16. 前記MDA増幅産物が複数の異なるMDA増幅産物を含む、実施態様1~14のいずれか1項に記載の方法。
17. 前記生物試料が1つまたは複数の細胞を含む、実施態様1~12及び14~16のいずれか1項に記載の方法。
18. 前記1つまたは複数の細胞が1つまたは複数の循環性腫瘍細胞(CTC)を含む、実施態様17に記載の方法。
19. 検出成分を各微小液滴に導入するステップであって、前記検出成分の検出がもう1つのMDA増幅産物の存在を示す前記ステップをさらに含む、実施態様1~18のいずれか1項に記載の方法。
20. 前記検出成分が蛍光の変化に基づいて検出される、実施態様19に記載の方法。
21. 各微小液滴の内容積がほぼ等容積である、実施態様5に記載の方法。
22. 各微小液滴の内容積が有意に異なる容積である、実施態様5に記載の方法。
23. 微小液滴の数が核酸鋳型分子の数に対応する、実施態様5に記載の方法。
24. 増幅される核酸鋳型分子の数が生成される微小液滴の数を制御することによって変えられる、実施態様5に記載の方法。
25. 各微小液滴に含まれる前記核酸鋳型分子に由来する所定量のMDA増幅産物を得るために、各微小液滴のサイズが変えられる、実施態様5に記載の方法。
26. 10fg以下の前記核酸鋳型分子が前記微小液滴に封入される、実施態様1~25のいずれか1項に記載の方法。
27. 5fg以下の前記核酸鋳型分子が前記微小液滴に封入される、実施態様26に記載の方法。
28. 前記封入すること及び導入することが単一ステップで生じる、実施態様1~27のいずれか1項に記載の方法。
29. 生物試料から単離した核酸集団に対するコピー数多型(CNV)解析の実施方法であって、
前記核酸集団を断片化すること、
前記断片化した核酸集団を複数の微小液滴に封入すること、
多置換増幅(MDA)試薬及び複数のMDAプライマーを前記複数の微小液滴のそれぞれに導入すること、
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、
前記MDA増幅産物をシークエンシングして、前記核酸集団中の1つまたは複数の核酸配列のコピー数を決定すること
を含む、前記実施方法。
30. 前記核酸集団がゲノムDNAを含む、実施態様29に記載の方法。
31. 前記ゲノムDNAが単一細胞から単離される、実施態様29に記載の方法。
32. 前記単一細胞が癌細胞である、実施態様31に記載の方法。
33. 前記癌細胞が循環性腫瘍細胞(CTC)である、実施態様32に記載の方法。
34. 前記微小液滴のそれぞれが、前記導入ステップ及びインキュベートステップより前に、1つより多い核酸鋳型分子を含まない、実施態様29~33のいずれか1項に記載の方法。
35. 前記MDA試薬がΦ29DNAポリメラーゼを含む、実施態様29~34のいずれか1項に記載の方法。
36. 前記微小液滴が約0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの内容積を有する、実施態様29~35のいずれか1項に記載の方法。
37. 前記複数の微小液滴のそれぞれが0個または1個及び1個より多くない核酸鋳型分子を含む、実施態様29~36のいずれか1項に記載の方法。
38. 前記微小液滴を形成するために、前記核酸鋳型分子、MDA試薬及びMDAプライマーが液滴ディスペンサーに装填される、実施態様29~37のいずれか1項に記載の方法。
39. 1つまたは複数のステップがマイクロ流体制御下で実施される、実施態様29~38のいずれか1項に記載の方法。
40. 前記微小液滴が振盪エマルジョンを介して生成される、実施態様29~38のいずれか1項に記載の方法。
41. 前記微小液滴がマイクロ流体エマルジョンを介して生成される、実施態様29~38のいずれか1項に記載の方法。
42. 前記断片化が酵素的断片化、加熱及び超音波処理のうちの1つを介する、実施態様29~41のいずれか1項に記載の方法。
43. 前記核酸鋳型分子を提供するために前記生物試料の1つまたは複数の細胞が溶解される、実施態様29~41のいずれか1項に記載の方法。
44. 各微小液滴に関する前記MDA増幅産物が単一のMDA増幅産物を含む、実施態様29~43のいずれか1項に記載の方法。
45. 各微小液滴に関する前記MDA増幅産物が複数の異なるMDA増幅産物を含む、実施態様29~43のいずれか1項に記載の方法。
46. 前記生物試料が1つまたは複数の細胞を含む、実施態様29~42及び44~45のいずれか1項に記載の方法。
47. 前記1つまたは複数の細胞が1つまたは複数の循環性腫瘍細胞(CTC)を含む、実施態様46に記載の方法。
48. 各微小液滴の内容積がほぼ等容積である、実施態様29~47のいずれか1項に記載の方法。
49. 各微小液滴の内容積が有意に異なる容積である、実施態様29~47のいずれか1項に記載の方法。
50. 微小液滴の数が核酸鋳型分子の数に対応する、実施態様29~49のいずれか1項に記載の方法。
51. 増幅される核酸鋳型分子の数が生成される微小液滴の数を制御することによって変えられる、実施態様29~49のいずれか1項に記載の方法。
52. 各微小液滴に含まれる前記核酸鋳型分子に由来する所定量のMDA増幅産物を得るために、各微小液滴のサイズが変えられる、実施態様29~49のいずれか1項に記載の方法。
53. 前記封入すること及び導入することが単一ステップで生じる、実施態様29~52のいずれか1項に記載の方法。
54. 微小液滴を含む組成物であって、
a.核酸鋳型分子、ならびに
b.i.前記核酸鋳型分子を非特異的に増幅することができるポリメラーゼ酵素を含む複数のMDA試薬、及び
ii.複数のMDAプライマー
を含むMDA混合物
を含む、前記組成物。
55. 前記微小液滴が単一核酸鋳型分子より多くを含まない、実施態様54に記載の組成物。
56. 前記微小液滴が検出成分をさらに含む、実施態様54または実施態様55に記載の組成物。
57. 前記微小液滴が前記核酸鋳型分子から生成された1つまたは複数のMDA増幅産物をさらに含む、実施態様54~56のいずれか1項に記載の組成物。
58. 前記微小液滴が約0.001ピコリットル~約1000ピコリットルの内容積を有する、実施態様54~57のいずれか1項に記載の組成物。
59. 前記ポリメラーゼ酵素がΦ29DNAポリメラーゼである、実施態様54~58のいずれか1項に記載の組成物。
60. 前記MDA試薬がマグネシウム試薬を含む、実施態様54~59のいずれか1項に記載の組成物。
61. 前記微小液滴中の前記核酸鋳型分子の初期量が約0.001pg~約10pgである、実施態様54~60のいずれか1項に記載の組成物。
62. 前記微小液滴中の前記核酸鋳型分子の初期量が約0.01pg~約1pgである、実施態様61に記載の組成物。
63. 前記微小液滴中の前記核酸鋳型分子の初期量が約0.1pg~約1pgである、実施態様62に記載の組成物。
64. 前記組成物が複数の単分散微小液滴を含む、実施態様54~63のいずれか1項に記載の組成物。
65. 前記組成物が複数の多分散微小液滴を含む、実施態様54~63のいずれか1項に記載の組成物。
66. 前記微小液滴が複数の核酸鋳型分子を含む、実施態様54及び56~65のいずれか1項に記載の組成物。
67. 前記微小液滴が10fgより多い前記核酸鋳型分子を含まない、実施態様54~60及び64~66のいずれか1項に記載の組成物。
68. 前記微小液滴が5fgより多い前記核酸鋳型分子を含まない、実施態様67に記載の組成物。