(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012529
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】インスリンの経口送達のためのウイルス様ナノカプシド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/28 20060101AFI20240123BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240123BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240123BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240123BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240123BHJP
A61K 49/14 20060101ALI20240123BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240123BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240123BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240123BHJP
A61K 51/12 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K38/28
A61K9/51
A61K31/7088
A61K48/00
A61K49/00
A61K49/14
A61K51/08 200
A61K47/64
A61P3/10
A61K51/12
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189679
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2020548984の分割
【原出願日】2019-03-13
(31)【優先権主張番号】62/642,356
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チェン、アール. ホラント
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チュン チエ
(72)【発明者】
【氏名】バイコグリ、モハンマド アリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インスリンを標的化送達する組成物を提供する。
【解決手段】(a)E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム2(ORF2)タンパク質の少なくとも一部を含み、且つHEVウイルス様粒子(VLP)を形成可能である改変されたカプシドタンパク質、及び(b)前記改変されたカプシドタンパク質により形成された前記HEV VLP内に封入されたインスリンタンパク質又はインスリンタンパク質をコードする核酸を含む、組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム2(ORF2)タンパク質の少なくとも一部を含み、且つHEVウイルス様粒子(VLP)を形成可能である改変されたカプシドタンパク質、及び
(b)前記改変されたカプシドタンパク質により形成された前記HEV VLP内に封入されたインスリンタンパク質又はインスリンタンパク質をコードする核酸
を含む、組成物。
【請求項2】
前記改変されたカプシドタンパク質は、HEV ORF2タンパク質の全長未満であり、配列番号1、2、3、4、5、又は6のHEV ORF2タンパク質の452~606番目のセグメントを含み、且つHEV ORF2タンパク質の前記部分に配列番号1、2、3、4、5、又は6の483~490番目、530~535番目、554~561番目、573~577番目、582~593番目、又は601~603番目のセグメント内で挿入された異種ポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記異種ポリペプチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、又は6の残基Y485の直後に挿入されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記異種ポリペプチドは、RGDペプチド又は環状RGDペプチドである、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記改変されたカプシドタンパク質は、酸及びタンパク質分解に対し安定なHEV VLPを形成可能であり、且つ化学的に誘導体化されていてもよいシステイン又はリシンで置換された配列番号1、2、3、4、5、又は6のY485、T489、S533、N573、又はT586のうちの少なくとも1つの残基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記システイン又はリシンがアルキル化、アシル化、アリール化、サクシニル化、酸化、又は検出可能な標識若しくは肝細胞標的化リガンドと結合されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記検出可能な標識が蛍光色素分子、超常磁性標識、MRI造影剤、陽電子放出同位体、又は原子番号が20より大きい第3~18族の元素のクラスターを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記検出可能な標識が金ナノクラスターを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記肝細胞標的化リガンドがRGDペプチド又は環状RGDペプチドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
医薬的に許容可能な非薬効成分(excipient)をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
経口投与用に処方されている、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
肝細胞を請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む、インスリンの標的化送達方法。
【請求項13】
前記肝細胞は患者の体内にあり、前記接触させる工程が請求項1に記載の組成物を前記患者へ投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は経口投与である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記改変されたカプシドタンパク質が金ナノクラスターに結合したシステイン又はリシンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記患者は糖尿病と診断された患者である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2018年3月13日に出願された米国特許出願第62/642,356号に対する優先権を主張し、その内容の全体があらゆる目的で参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発のもとで行われた発明に対する権利に関する記載
本発明は、国立衛生研究所及び米国農務省認可の国立食品農業研究所により与えられた契約番号AI095382、EB021230、及びCA198880に基づく政府支援により行われた。政府は発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ウイルス様粒子(VLP)は、DNA/RNA及び様々な化学療法などの診断レジメ及び治療レジメの標的化送達のためのナノキャリアとして働くことができる。E型肝炎ウイルス(HEV)は、ヒトにおける急性肝炎を引き起こす、経腸的に伝播されるウイルスである。HEVウイルス様粒子(HEV VLP)は、真核生物発現系において主要カプシドタンパク質であるHEVオープンリーディングフレーム2(ORF2)の発現により生成され得る、二十面体のかごのカプシドタンパク質である。HEV VLPは酸性及びタンパク質分解性の環境において安定であり、HEVの自然感染経路において必要な特徴である。したがって、HEV VLPは、例えば、治療剤、造影剤、又はワクチンの送達に利用され得る有望なナノキャリアである。
【0004】
治療のためにナノキャリアが検討されてきた病気の1つが糖尿病であり、これは、特に先進国において非常に蔓延している疾患である。糖尿病を治療するために非常に多くの他の薬が開発されてきたにも関わらず、インスリンは1型糖尿病(T1D)及び進行した2型糖尿病(T2D)を治療するための第1選択薬のままである。糖尿病患者の罹患率及び死亡率はインスリンによって大幅に減少したが、患者の60%は依然として長期のグルコース制御を獲得できていない[1]。それはおそらく、インスリン投与における典型的な針の使用に関係する不快感及び傷痕によるものであろう。むしろ、インスリンの経口投与は患者の服薬遵守(compliance)の最も高い、便利で、費用対効果が高く、好ましい投与方法であると考えられる。加えて、経口経路は、肝門静脈を通る膵臓から肝臓への内因性のインスリン分泌経路を模倣しており、よりよいグルコース恒常性が達成される[2-4]。経口インスリン送達の進歩は、タンパク質としての胃腸(GI)管における分解によるインスリンの生体利用効率が低いこと、及び腸上皮を通じての透過性が低いことによって損なわれてきた[4、5]。特に、現実的な可能性として、かつて好ましいとされた肺経路の展望がなくなったことから[6]、それでもなお、経口送達は未だに針での注射を上回る魅力的な代替方法である。
【0005】
錠剤、カプセル、腸パッチ、ハイドロゲル、マイクロ粒子、及びナノ粒子などのプラットフォームを介し、回腸及び結腸を通じた傍細胞輸送及び/又は経細胞輸送を用いたいくつかの経口インスリン送達の薬剤学が提案されてきた。それらの経口インスリン開発の状況及び異なる段階の臨床試験の進歩はいくつかの総説において論評されている[4、7-10]。それらの中で、イスラエルのOram Pharmaceuticals社は特許されたProtein Oral Delivery(POD(登録商標))技術を所有しており、カプセル化、プロテアーゼ阻害剤、及びキレート剤からなる3方面からのアプローチを採用している。T1D患者及びT2D患者の両方におけるその臨床試験が進行中である。デンマークのNovo Nordisk社は、腸溶性のゲルカプセル内の油脂及び界面活性剤又は脂肪酸誘導体の混合物の微乳濁液に基づく経口インスリン錠を用いた第一相臨床試験及び第二相臨床試験を行った。臨床試験における予備的な成功にも関わらず、Novo Nordisk社は2016年の終わりに、システムの効率性が低いことから、経口インスリン開発計画の中断という難しい決定を下した。これらの先駆者の開発による技術や経験に基づき、本発明者らは、充分な生体利用効率、並びに食事依存的な吸収率の理解及び経口インスリン送達システムの大量生産に関するインスリンの再現可能な吸収など、いくつかの費用対効果の高い要因に取り組もうとしている。
【0006】
インスリン遺伝子がクローニングされ培養細胞中で発現された1970年代の終わりから、遺伝子治療の開発はまた糖尿病の有望な治療として提案されてきた[11]。米国ウィスコンシン州マディソンを拠点とするスタートアップ企業であるInsulete社は患者の肝細胞にインスリン産生を誘導する遺伝子治療の商業化を目指している。彼らは、その再生能力から、膵臓の代わりに肝臓を標的にしている。事前の動物試験において、裸のインスリンDNAプラスミドの単回投与により、最長6週間にわたって血糖管理が可能となった[12]。しかしながら、そのシステムは効果的な治療のために未だ対処する必要がある特定の組織/細胞標的への送達に欠けている。したがって、糖尿病治療における新規の効果的なインスリン送達手段を開発することについては確かなニーズがある。本発明は、このニーズ及び他の関連するニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インスリンの標的化送達を目的としたHEV VLP及びそのようなHEV
VLPを用いたインスリンの送達方法を提供する。
【0008】
第1の態様では、本発明は、(a)E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム2(ORF2)タンパク質の少なくとも一部を含み、且つHEVウイルス様粒子(VLP)を形成可能である改変されたカプシドタンパク質、及び(b)前記改変されたカプシドタンパク質により形成された前記HEV VLP内に封入されたタンパク質又はポリヌクレオチドをコードする配列の形のインスリンを含む組成物を提供する。通常、改変されたORF2タンパク質は野生型のタンパク質の全長未満である(例えば、配列番号1~6に示されるいずれか1つ)。ORF2タンパク質の特定の改変は、本発明者らにより示された以前の開示物、例えば、米国特許第8,906,862号及び同8,906,863号、国際公開第2015/179321号に記載されるものであってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、改変されたカプシドタンパク質は、HEV ORF2タンパク質の全長未満であり、配列番号1、2、3、4、5、又は6のHEV ORF2タンパク質の452~606番目のセグメントを含み、且つHEV ORF2タンパク質の前記部分に配列番号1、2、3、4、5、又は6の483~490番目、530~535番目、554~561番目、573~577番目、582~593番目、又は601~603番目のセグメント内で挿入された異種ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、又は6の残基Y485の直後に挿入されている。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドは、インスリン送達のための肝細胞標的化に関与していてもよく、例えば、インテグリンvb3及びvb5と強い親和性を示す、最も広く用いられるホーミングペプチドであるRGD(Arg-Gly-Asp)ぺプチド若しくは環状RGDペプチド[1]、又はHCCを特異的に標的化し、TTPRDAY[2]、FQHPSFI(HCBP1)[3]、SFSIIHTPILPL(SP94)[4]、RGWCRPLPKGEG(HC1)[5]、AGKGTPSLETTP(A54)[6]、KSLSRHDHIHHH(HCC79)[7]、及びAWYPLPP[8]を含むホーミングペプチドであってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、改変されたカプシドタンパク質は酸及びタンパク質分解に対して安定なHEV VLPを形成することが可能であり、且つ化学的に誘導体化されていてもよいシステイン又はリシンで置換された配列番号1、2、3、4、5、又は6のY485、T489、S533、N573、又はT586のうちの少なくとも1つの残基を有する。いくつかの実施形態では、システイン又はリシンは、アルキル化、アシル化、アリール化、サクシニル化、酸化、又は検出可能な標識若しくは肝細胞標的化リガンドと結合されている。例えば、検出可能な標識は、蛍光色素分子、超常磁性標識、MRI造影剤、陽電子放出同位体、又は原子番号が20より大きい第3~18族の元素のクラスターを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は金ナノクラスターを含む。他の例において、肝細胞標的化リガンドは異種ポリペプチドであり、異種ポリペプチドは、インスリン送達のための肝細胞標的化に関与していてもよく、例えば、最も広く用いられるホーミングペプチドであるRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチド若しくは環状RGDペプチド[1]、又はHCCを特異的に標的化し、TTPRDAY[2]、FQHPSFI(HCBP1)[3]、SFSIIHTPILPL(SP94)[4]、RGWCRPLPKGEG(HC1)[5]、AGKGTPSLETTP(A54)[6]、KSLSRHDHIHHH(HCC79)[7]、及びAWYPLPP[8]を含むホーミングペプチドであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物は医薬的に許容可能な非薬効成分(excipient)をさらに含んでいてもよく、又は、例えば、糖尿病患者の治療のため、経口投与用に処方されていてもよい。
【0012】
第2の態様では、本発明は、肝細胞へのインスリンの標的化送達方法を提供し、この方法は肝細胞を上記及び本明細書に記載の任意の種類の組成物、特にRGD(環状RGD)ペプチド[1]などの肝細胞標的化リガンドと接触させる工程を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、肝細胞は患者の体内にあり、前記接触させる工程は、上記及び本明細書に記載の有効量のHEV VLPを含む組成物を患者へ投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は経口投与である。いくつかの実施形態では、改変されたカプシドタンパク質は、金ナノクラスターに結合したシステイン又はリシンを含む。いくつかの実施形態では、患者は糖尿病と診断された患者である。いくつかの実施形態では、患者は動物、特にヒトを含む霊長類などの哺乳動物である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】インスリンを封入したHEVNPを示す図である(左パネル)。インスリンを封入したHEVNPの経口送達経路を示し、HEVNPは胃腸管を通り、肝門静脈を経由して肝臓へ向かう(右パネル)。
【
図2】(A)インスリンのTEM顕微鏡写真を示す。(B)インスリンを封入したHEVNPのTEM顕微鏡写真を示す。(C)TEM観察下におけるインスリンを封入したHEVNPのサイズ分布を示し、大部分が52nm程度の大きさを有する。(D)インスリンを封入したHEVNPのTEM画像を示す。バーの長さは100nmである。
【
図3】(A)ペプシン処理なしの対照としてのインスリンを封入したHEVNPのTEM顕微鏡写真、(B)pH3、37℃で5分間のペプシン(38U/ml)処理後のインスリンを封入したHEVNPのTEM顕微鏡写真、(C)pH4、37℃で5分間のペプシン(38U/ml)処理後のインスリンを封入したHEVNPのTEM顕微鏡写真を示す。バーの長さは100nmである。
【
図4】HEVNPのインスリン封入:HEVNP中へのインスリン封入の効率を高めるためのパッケージング条件の最適化を示す。
【
図5】HEVNPのインスリン封入:ブラッドフォード法及びELISAにより試験された、HEVNP中へのインスリン封入の効率を高めるためのパッケージング条件の最適化を示す。超音波による積載量の増大を示す(下パネル)。
【
図6】サイズ排除カラム分析:ELISAに示されるように、(条件#16~#32の+記号により示される)インスリン及びHEVNPの重複した明確なピークを示す。
【
図7】HEVNPのインスリン封入:低温電子顕微鏡の構造に基づくインスリンパッケージングの最適化に続き、インスリンパッケージングの3Dモデリング及びパッケージング機構のコンピュータによる検証、並びにHEVNP-インスリンの3D描写を再構成するための電子顕微鏡の断層撮影の連続傾斜像データ収集を示す。
【
図8】高い安定性及び保存期間:HEVNP-インスリン試料を4℃で1年以上保存し低温電子顕微鏡で観察した結果を示す。顕微鏡写真は、保存条件に対して高い安定性を示す損傷のない粒子を示している。
【
図9】AuNCによるHEVNPの安定性の向上:CryoArm 300kV顕微鏡法、及びカプシド表面調節に基づくクラスター化した金属元素により安定性が向上されたHEVNPの3D画像の再構成を示す。高解像度の構造決定はHEVNPの粘膜送達を最適化するための鍵である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明白な指示がない限り、複数への言及を含む。
【0016】
「E型肝炎ウイルス」又は「HEV」はウイルス、ウイルス型、又はウイルスクラスを言い、i)水媒介感染性肝炎を引き起こし、ii)血清学的特徴からA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、又はD型肝炎ウイルス(HDV)とは区別され、iii)American Type Culture
Collection(ATCC)に受入番号67717として保管されている大腸菌株中に導入されたプラスミドであるpTZKF1(ET1.1)に挿入されている1.33kbのcDNAと相同的な遺伝子領域を含む。
【0017】
HEVに関連して、「カプシドタンパク質」及び「改変されたカプシドタンパク質」という用語は、成熟した、又は改変された(例えば、切断された、組み換え技術により変異された、又は化学的に誘導体化された)HEVオープンリーディングフレーム2(ORF2)ポリペプチドを言う。本明細書で用いられる場合、そのようなORF2ポリペプチド又はORF2タンパク質への言及は、全長のポリペプチド及びその断片を含むこと、及びORF2タンパク質に対する任意の置換、欠失、挿入、又は他の改変も含むことを意味する。カプシドタンパク質はウイルス様粒子(VLP)を形成可能でなければならない。カプシドタンパク質は、VLP形成を抑制することがない限りは、様々な付加的な置換、欠失、又は挿入を許容し得るが、典型的に、カプシドタンパク質は少なくともHEV ORF2の112~608番目の残基を含む。
【0018】
ある実施形態において、「改変されたカプシドタンパク質」という用語は、付加、欠失、置換のうちの1又は複数などの改変は存在するが、結果として得られた改変されたカプシドタンパク質はVLPを形成する能力を維持しているカプシドタンパク質又はその一部(すなわち、カプシドタンパク質の全長未満)を言う。これらの改変には、米国特許第8,906,862号及び同第8,906,863号、国際公開第2015/179321号に記載されたものが含まれる。例えば、異種ポリペプチドが、カプシドタンパク質又はその一部に、483~490番目、530~535番目、554~561番目、573~577番目、582~593番目、又は601~603番目のセグメント内、又は残基Y485の直後などの位置で挿入されていてもよい(米国特許第8,906,862号及び同第8,906,863号参照)。他の例として、国際公開第2015/179321号には、HEV ORF2のPドメインの表面可変ループが、野生型のカプシドタンパク質配列には存在しない1又は複数のシステイン又はリシンを組み込むように改変されている、改変されたカプシドタンパク質の他の例が記載される。あるいは、又はさらに、「改変されたカプシドタンパク質」という用語は、HEV ORF2のC末端(例えば、608番目の位置)が、野生型のカプシドタンパク質配列には存在しない1又は複数のシステイン又はリシンを組み込むように改変されたカプシドタンパク質又はその一部を言う。あるいは、又はさらに、「改変されたカプシドタンパク質」という用語は、システイン又はリシン(例えば、HEV ORF2のPドメインの表面可変ループのシステイン又はリシン、又は608の位置に組み換え技術により導入されたシステイン/リシン)が化学的に誘導体化され、タンパク質が少なくとも1つの異種原子又は分子と共有結合しているカプシドタンパク質又はその一部を言う。システイン又はリシンは、HEV ORF2タンパク質の長さが増大するように挿入されてもよく、Pドメインの表面可変ループ及び/又はC末端の1又は複数の残基を置換していてもよい。
【0019】
一般的に、改変されたカプシドタンパク質はHEV VLPを形成する能力を保持している。いくつかの場合、前記1又は複数のシステイン又はリシンは生物活性剤(例えば、ペプチドLXY30などの細胞標的リガンド)と結合されている。Pドメインの表面可変ループは、例えば、HEV ORF2(配列番号1、2、3、4、5、又は6)の475~493番目の残基、502~535番目の残基、539~569番目の残基、572~579番目の残基、及び581~595番目の残基のうちの1又は複数を含む。Pドメインの表面可変ループは、配列番号1、2、3、4、5、又は6のうちの1又は複数と少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上の同一性があり、且つ配列番号1、2、3、4、5、又は6の475~493番目の残基、502~535番目の残基、539~569番目の残基、572~579番目の残基、及び581~595番目の残基のうちの1又は複数に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド残基をさらに含む。
【0020】
本明細書で用いられる「ウイルス様粒子」(VLP)という用語は、カプシドタンパク質により形成される二十面体の殻(例えば、T1又はT3)を言う。VLPはウイルスゲノムを欠くため感染性はない。「VLP」は、E型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質HEV ORF2又はその一部に由来する、複製しない二十面体のウイルス殻を言う。VLPは適切な発現系におけるタンパク質の組み換え発現により自発的に形成することができる。いくつかの実施形態において、VLPは改変されたカプシドタンパク質、例えば、HEV ORF2又はその一部の表面可変ループに1又は複数のシステイン残基/リシン残基を含むカプシドタンパク質から形成される。HEV VLPは改変されたHEV ORF2タンパク質及び/又は改変されていないHEV ORF2タンパク質の混合物を含むことができる。
【0021】
HEV VLPの文脈中の「酸及びタンパク質分解に対して安定」という用語は、哺乳類の消化系の酸性及びタンパク質分解性の環境に対して耐性があるHEV VLPを言う。酸及びタンパク質分解に対する安定性を評価する方法は2013年のJariyapong et al.に記載されており、該方法としては、HEV VLPを酸環境(例えば、pH6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、又は2、又はpH約6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、又は2)及び/又はタンパク質分解性環境(例えば、トリプシン及び/又はペプシン)におき、接触したHEV VLPを電子顕微鏡法、ゲル濾過クロマトグラフィー、又は他の適切な方法により観察し、HEV VLPの四次構造(例えば、T=1、T=3、二十面体、十二面体など)が保持されるかどうかを判断することが挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、改変された又は改変されていない)HEV VLPの集団を酸性及び/又はタンパク質分解性の条件下で適切な時間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、45、又は60分間、又は少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、30、45、又は60分間)インキュベートした後に試験をして、四次構造保持の程度を判断することができる。この文脈では、酸及びタンパク質分解に対して安定な改変されたHEV VLPとは、VLPの割合として酸性及び/又はタンパク質分解性の条件下でVLPの集団としてインキュベートし電子顕微鏡法で評価した場合に、VLPの集団の少なくとも10%、25%、50%、75%、90%、95%、99%、又は100%が四次構造を保持している改変されたHEV VLPを言う。
【0022】
あるいは、HEV VLPは経口経路にて対象物へ送達され、送達効率は(i)HEV
VLP内の抗原への免疫応答、(ii)HEV VLPに結合された、HEV VLPに組み換え技術により導入された、又はHEV VLPにより封入された検出可能な標識、又は(iii)HEV VLPと結合された(例えば、HEV VLPに組み換え技術により導入された、HEV VLPと結合された、又はHEV VLPにより封入された)生物活性剤の細胞への送達による生物学的反応を検出及び/又は定量することにより評価され得る。この文脈では、酸及びタンパク質分解に対して安定な改変されたHEV VLPとは、非改変のHEV VLPの経口送達効率及び/又は細胞侵入活性の少なくとも10%、25%、50%、75%、90%、95%、99%、又は100%を保持する改変されたHEV VLPを言う。
【0023】
2つの要素の相対的位置を説明する文脈において用いられる「異種の」という用語は、天然では同じ相対的位置において見られない核酸(例えば、プロモーター又はタンパク質をコードする配列)又はタンパク質(例えば、HEV ORF2タンパク質又はその一部、又は改変されたカプシドタンパク質及び他のタンパク質)などの2つの要素を言う。よって、遺伝子の「異種プロモーター」とは、その遺伝子と天然で機能可能には連結されていないプロモーターを言う。同様に、HEV VLP又はHEVカプシドタンパク質の文脈における「異種ポリペプチド」又は「異種核酸」は非HEV起源由来のものを言う。
【0024】
E型肝炎ウイルス(HEV)は深刻な急性肝不全を引き起こすことで知られている。HEVはヘペウイルス科のヘペウイルス属に属する。HEVは約7.2kbの一本鎖プラス鎖RNA分子を含む。RNAは3′ポリアデニル化され、3つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。ORF1はウイルスの非構造タンパク質をコードしており、ゲノムの5′側の半分に位置している。ORF2はウイルスカプシドを形成するタンパク質をコードしており、ゲノムの3′末端に位置している。ORF3は13.5kDaのタンパク質をコードしており、ORF1のC末端及びORF2のN末端と重複している。ORF3は膜及び細胞骨格画分と結合している。
【0025】
本明細書で用いられる「封入」又は「封入された」という用語は、異種核酸又は異種タンパク質、化学療法剤、造影剤、フェライトナノ粒子などの異種物質を、本明細書で定義されるVLP内に包むことを言う。
【0026】
「生物活性剤」という用語は、特定の生物学的位置を標的化する(標的薬剤)、及び/又はインビボ又はインビトロで実証され得るいくつかの局所性又は全身性の生理学的作用又は薬理学的作用を与える、任意の化学物質、薬物、化合物、又はそれらの混合物を言う。非限定的な例としては、薬物、ホルモン、ワクチン、抗体、抗体断片、ビタミン及び補因子、多糖類、炭水化物、ステロイド、脂質、脂肪、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び核酸(例えば、mRNA、tRNA、snRNA、RNAi、DNA、cDNA、アンチセンスコンストラクト、リボザイムなど)を含む。
【0027】
「医薬的に許容可能な」又は「薬理学的に許容可能な」物質とは、生物学的に有害でない又は望ましくないものではない物質であり、すなわち、該物質は、望ましくない生物学的作用を引き起こさずに、カプシドタンパク質、HEV VLP、又は本発明の組成物と共にヒトに投与され得る。その物質は、それが含まれる組成物のいずれの成分とも有害な様式で相互作用しない。
【0028】
「非薬効成分(excipient)」という用語は、本発明の組成物の最終投薬形態に存在し得る、任意の本質的に補助的な物質のことを言う。例えば、「非薬効成分」という用語は、溶媒(vehicle)、結合剤、崩壊剤、賦形剤(希釈剤)、滑沢剤、滑剤(流動促進剤)、圧縮補助剤、色素、甘味料、保存料、懸濁剤/分散剤、フィルム形成剤/コーティング剤、香味料、及び印刷用インクを含む。
【0029】
「アジュバント」という用語は、抗原と共に投与された場合、抗原に対する免疫応答を増強するが、単独で投与された場合には抗原に対する免疫応答を生じない化合物のことを言う。アジュバントは、リンパ球の動員、B細胞及び/又はT細胞の刺激、及びマクロファージの刺激を含む様々なシステムにより、免疫応答を増強することができる。
【0030】
抗原又は組成物に対する「免疫原性応答」は、対象における、目的の組成物中に存在する抗原に対する液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答の発達である。本開示の目的のため、「液性免疫応答」は抗体分子を介する免疫応答を言い、「細胞性免疫応答」はTリンパ球及び/又は他の白血球を介するものを言う。細胞性免疫の1つの重要な態様には、細胞傷害性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答が関与している。CTLは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)にコードされたタンパク質に関連して提示され、細胞表面で発現されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは細胞内微生物の破壊、又はそのような微生物に感染された細胞の溶解の誘導及び促進を助ける。細胞性免疫の他の態様には、ヘルパーT細胞による抗原特異的反応が関与している。ヘルパーT細胞は、細胞表面のMHC分子に関連してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的なエフェクター細胞の機能を刺激すること、及びその活性を集中させることを助ける役割を果たす。「細胞性免疫応答」はまた、CD4+T細胞及びCD8+T細胞に由来する細胞を含む活性化T細胞及び/又は他の白血球により産生されるサイトカイン、ケモカイン、及び他のそのような分子の産生を言う。したがって、免疫応答は、B細胞による抗体産生、及び/又は目的の組成物若しくはワクチンに存在する1種類の抗原又は複数種類の抗原を特異的に指向するサプレッサーT細胞及び/又はγΔT細胞の活性化の効果のうちの1又は複数を含んでいてもよい。これらの反応は、感染力を中和すること、及び/又は免疫された宿主を防御するために抗体・補体又は抗体依存性細胞毒性(ADCC)を介在することに役立ち得る。そのような反応は、当技術分野で周知の標準的な免疫測定法及び中和測定法を用いて判断することができる。
【0031】
「標識」、「検出可能な標識」、又は「検出可能な部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光染料、高電子密度試薬、(例えば、一般にELISAに用いられるような)酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン、及び、例えば、ペプチド中に放射性成分を組み込むことにより検出可能とすることができるか、又はペプチドに特異的に反応する抗体を検出するために用いることができるタンパク質が挙げられる。通常、検出可能な標識は、プローブ又は明確な結合特性を有する分子(例えば、既知の結合特異性を有するポリペプチド、又はポリヌクレオチド)に結合した異種の部分であり、プローブ/分子(したがって、その結合標的)の存在が容易に検出可能となる。検出可能な標識に結合したプローブ/分子が天然に存在する組成物を構成しないように、標識の異種な性質により、それが標識するプローブ又は分子とは異なる起源を有することが確実になる。
【0032】
本出願で用いられる「治療する」又は「治療」という用語は、関連する疾患の任意の症状の除去、低減、軽減、改善、予防、又は開始若しくは再発の遅延をもたらす行為を表す。言い換えると、疾患の「治療」は、疾患に対する治療的介入及び予防的介入の両方を含む。
【0033】
本明細書で用いられる「有効量」という用語は、望ましい効果をもたらすために量的に十分な所定の物質の量を言う。例えば、インスリンを封入しているHEVナノ粒子(HEVNP)の有効量は、治療目的でHEVNPを投与されている患者において、標的となる病気(例えば、糖尿病)の症状、重症度、及び/又は再発の可能性が低減される、元に戻される、除去される、予防される、又はその開始を遅らせるような、検出可能な効果を達成するためのHEVNPの量である。これを達成するのに適当な量を「治療効果のある用量」として定義する。投薬範囲は投与される治療剤の性質、並びに投与経路及び患者の疾患の重症度などの他の要因によって変わる。
【0034】
本明細書で用いられる「患者」という用語は、脊椎動物、例えば、鳥類種又は哺乳類種、特に、チンパンジー、サル、又はヒトなどの霊長類を含む哺乳類(例えば、雄牛/雌牛、豚、羊/山羊、馬、兎、げっ歯類、犬、猫、狐など)のことを言う。
【0035】
A.序論
本開示は、インスリンの経口送達のための、化学的に安定かつ胃腸管内の酵素活性に対して耐性を示すウイルス由来ナノカプシドに関する。患者の服薬遵守が低いことを含む糖尿病の治療における一定の制限は、インスリン投与のための針による注射の一般的な使用に関連する不快感及び弊害によるものであることはよく知られている。経口送達はインスリンの最も好ましい送達経路であるが、分子量が5.8kDaのタンパク質では、タンパク質分解酵素及び厳しい酸性の生理的条件による胃腸管における分解、並びに吸収後の送達効率及び腸上皮を通じての透過性を含む課題に直面する。インスリンの経口送達システムがいくつか開発され、臨床試験が認可されてきたが、低い生体利用効率の改善、再現可能な吸収の達成、及び食事依存的な吸収率の理解の獲得、及び経口投与インスリン送達システムの大量生産の必要性を含む、費用に関連する多数の要因に取り組む必要がある。
【0036】
E型肝炎ウイルスナノ粒子(HEVNP)は自己集合性かつ非感染性のナノカプシドに由来する。HEVNPは酸性環境下で安定であり、かつタンパク質消化に対して耐性があるため、経口送達の媒体として大きな利点を有する。HEVNPは経口で投与され、その後、HEVの自然感染経路に従って、小腸、及び最終的に肝臓へ輸送され得る。インビトロでの分解/再構築(disassembly/reassembly)の能力により、HEVNPは薬物又は核酸を封入して、それらを胃腸管内の消化システムを通過して送達することができる。遺伝子操作又は化学的結合により、特定の標的化リガンド(例えば、肝臓への送達を標的化するリガンド)をHEVNPの突起したドメインに結合することができる。経口送達した薬物(例えば、インスリン)のよりよい生体利用効率のため、HEVNP構造を単分散の金ナノクラスター(AuNC)との結合させることにより安定化することができる[18]。
【0037】
本開示及び本発明者らによる先の公表文献(例えば、米国特許第8,906,862号及び同8,906,863号、国際公開第2015/179321号参照)における特定の態様は、HEVNPの産生、並びに表面改変の方法及び応用、インスリンの肝臓への経口送達のための封入、及び膵臓から肝臓への生理学的な分泌経路の模倣についての概要を説明している。
【0038】
経口インスリン送達カプセルとして安定化されたHEVNPの構造により、以下の利益がもたらされる。(1)針、関連する危険、及び処分の必要性の除去、(2)ポリペプチド又は配列自身をコードするポリヌクレオチドとしてのインスリンをHEVNP構造中にインビトロで容易に封入し、標的リガンドなしでも肝臓へ送達し得る。しかしながら、治療の標的化リガンドはインスリン(例えば、インスリン遺伝子)の特に膵臓への送達を可能にし、増強することになる、(3)カプシドタンパク質からなるHEVNPは、毒性学的な懸念はほとんどなく、タンパク質分解経路を通じて生分解され得る。
【0039】
インスリンを封入したHEVNPの様々な型の組み合わせを、糖尿病患者における血糖値のよりよい制御のための集学的治療として用いることができる。HEVNPの拡大生産及び発現は、治療計画の費用分析のため、動物試験に続いて行われることになる。
【0040】
B.改変されたカプシドタンパク質の生産及び精製並びにVLP形成
本発明のある態様は、カプシドタンパク質及びそれに由来するVLPの生産及び精製方法に関する(Expression and self-assembly of empty virus-like particles of hepatitis E virus.Li TC,Yamakawa Y,Suzuki K,Tatsumi M,Razak MA,Uchida T,Takeda N,Miyamura T.,J Virol.1997 Oct;71(10):7207-13.Essential elements of the capsid protein for self-assembly into empty virus-like particles of hepatitis E virus.Li TC,Takeda N,Miyamura T,Matsuura Y,Wang JC,Engvall H,Hammar L,Xing L,Cheng RH.J Virol.2005 Oct;79(20):12999-3006.Niikura M et al,Chimeric recombinant hepatitis E virus-like particles as an oral vaccine vehicle presenting foreign epitopes.Virology 2002;293:273-280参照)。ある実施形態において、カプシドタンパク質は改変されたカプシドタンパク質であり、それに由来するVLPはシステイン/リシン改変されたHEV VLPである。例えば、改変されたカプシドタンパク質は、HEV ORF2又はその一部の表面可変ループ中に、1又は複数のシステイン残基/リシン残基を含む。
【0041】
本発明のカプシドタンパク質の発現には様々な発現系を用いることができる。本発明のウイルス様粒子の生産に有用な発現系の例としては細菌発現系(例えば、大腸菌)、昆虫細胞、酵母細胞、及び哺乳細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい発現系としては昆虫細胞を用いたバキュロウイルスの発現系が挙げられる。例えば、バキュロウイルスベクター及びバキュロウイルスDNAの操作及び調製の一般的な方法、並びに昆虫細胞の培養手順は、A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture
Proceduresに概要が説明されている。
【0042】
本発明のカプシドタンパク質をバキュロウイルスベクターにクローン化し、適切な宿主細胞に感染させるのに用いることができる(例えば、O’Reillyらの「Baculovirus Expression Vectors:A Lab Manual,」
Freeman&Co.1992.参照)。昆虫細胞株(例えば、Sf9又はTn5)を本発明のカプシドタンパク質をコードするポリ核酸を含む導入ベクターで形質転換することができる。導入ベクターとしては、例えば、線形化したバキュロウイルスDNA及び所望のポリヌクレオチドを含むプラスミドが挙げられる。組み換え型バキュロウイルスを作るために、宿主細胞株を線形化したバキュロウイルスDNAとプラスミドで同時形質移入してもよい。
【0043】
本発明のウイルス様粒子の精製は、当技術分野の標準的な技術に従って行うことができる(Li TC,et al.,J Virol.1997 Oct;71(10):7207-13.Li TC,et al.,J Virol.2005 Oct;79(20):12999-3006.Niikura M et al,Virology 2002;293:273-280参照)。次に精製されたVLPは、適切な緩衝液に再懸濁される。
【0044】
いくつかの実施形態において、改変されたカプシドタンパク質又はそれに由来するVLPは1又は複数の生物活性剤に化学的に結合することができる。例えば、当技術分野で周知の方法を用いて、カプシドタンパク質の1又は複数のシステイン残基/リシン残基をアシル化、アルキル化、アリール化、サクシニル化、又は酸化することができる。いくつかの場合、1又は複数のシステイン残基/リシン残基は、生物活性剤と共有結合しているマレイミド官能基を用いて、システインのチオール部分又はリシンと結合させることができる。いくつかの場合、クリックケミストリーを用いてマレイミド官能基を導入するように生物活性剤を改変することができる。例えば、生物活性剤のアルキン誘導体を硫酸銅及びアスコルビン酸の存在下でマレイミドアジドと接触させてマレイミド生物活性剤を生産することができる。次に、このマレイミドを改変されたカプシドタンパク質の1又は複数のシステイン/リシンと接触させて2つの分子を共有結合させることができる。いくつかの場合、VLPとして集合していないカプシドタンパク質上で結合が行われる(例えば、EDTA、EGTA、及び/又はDTT又はβ-メルカプトエタノールなどの還元剤の存在下)。いくつかの場合、VLPとして集合したカプシドタンパク質上で結合が行われる。
【0045】
C.生物活性剤の封入
本発明の他の態様は、1又は複数の生物活性剤のHEVウイルス様粒子(例えば、システイン/リシン改変されたHEV VLP)への封入に関する(DNA vaccine-encapsulated virus-like particles derived from an orally transmissible virus stimulate mucosal and systemic immune responses by oral administration,Gene Therapy 2004.11,628-635.S Takamura,M Niikura,T-C Li,N Takeda,S Kusagawa,Y Takebe,T Miyamura and Y Yasutomi参照)。当技術分野の標準的な技術を用いて、異種の核酸、タンパク質、ポリペプチド、化学療法剤、造影剤、及びナノ粒子などを本発明のVLPに封入することができる。例示的な生物活性剤は、タンパク質の形態又は核酸の形態のインスリンである。一般的な手順には、(1)本発明のカプシドタンパク質により形成されたVLPを分解すること、及び(2)生物活性剤の存在下でVLPを再構成することが含まれる。当業者には、封入手順の前にVLPを精製することが好ましいと理解されよう。封入手順の前に、任意の望ましくない物質(例えば、核酸)をVLPから除去、又は実質的に除去することが特に好ましい。
【0046】
VLPの分解は当技術分野の標準的な技術を用いて行うことができる。再構成されたウイルス様粒子は生理的条件下で生産することができる(米国特許出願公開第2008/0131928号参照)。ウイルス様粒子の分解にはしばしば、還元剤又はキレート剤など、VLPの集合を崩壊させる試薬が必要となる(米国特許出願公開第2004/0152181号参照)。当業者には、集合及び分解に影響する要因及び条件が、特に、pH、イオン強度、ウイルスカプシドタンパク質の翻訳後修飾、ジスルフィド結合、及び2価陽イオン結合を含むことを理解されよう。例えば、ポリオーマウイルス(Brady et al.,J.Virol,23:717-724,1977)及びロトウイルス(Gajardo et al.,J.Virol,71:2211-2216,1997)について、ビリオンの完全性の維持における陽イオン結合、特にカルシウムの重要性が示されてきた。また、ポリオーマウイルス(Walter et al.,Cold Spring Har Symp.Quant.Biol,39:255-257,1975; Brady et al.,J.Virol,23:717-724,1977)及びSV40ウイルス(Christansen et al.,J.Virol,21:1079-1084,1977)の安定化に、ジスルフィド結合が重要であるようだ。また、pH及びイオン強度などの要因が、おそらく静電相互作用に影響することにより、ポリオーマウイルスのカプシドの安定性に影響を与えることが知られている(Brady et
al.,J.Virol,23:717-724,1977;Salunke et al.,Cell,46:895-904,1986;Salunke et al.,Biophys.J,56:887-900,1980)。また、例えば、糖鎖付加、リン酸化、及びアセチル化など、いくつかのウイルスカプシドタンパク質の翻訳後修飾が、カプシドの安定性及び集合に影響することも知られている(Garcea et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:3613-3617,1983;Xi et al.,J.Gen.Virol,72:2981-2988,1991)。よって、カプシドの安定性、集合、及び分解に影響する多くの相関因子が存在している。
【0047】
好ましくは、本発明のVLPはカルシウムイオンの除去により分解される(Touze
A,Coursaget P.In vitro gene transfer using human papillomavirus-like particles.Nucleic Acids Res 1998;26:1317-1323;Takamura et al.,DNA vaccine-encapsulated virus-like particles derived from an orally
transmissible virus stimulate mucosal and systemic immune responses by oral administration.Gene Therapy 2004;11:628-635参照)。本発明によると、還元剤又はキレート剤、又はその両方を用いてVLPを分解する。様々な還元剤を用いることができる。還元剤の好ましい実施形態としてはジチオスレイトール(DTT)が挙げられるが、これに限定されない。様々なキレート剤、例えばエチレングリコール四酢酸(EGTA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いることができる。VLPの分解の条件の例としては、50mMのTris-HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1mMのEGTA、及び20mMのジチオスレイトールを含む緩衝液での30分間のインキュベートにより精製されたVLPを崩壊させることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
当業者には、好ましくはあるものの、生物活性剤を封入するためにVLPの完全な分解は必要とされないことが理解されよう。また、当業者には、その他の場合には、VLPの部分分解が好ましいことも理解されよう。本発明によると、VLPの部分分解の条件は、生物活性剤が依然として効率的に封入されるよう制御することができる。VLPの部分分解は、還元剤のみ(例えば、20mMのDTT)でのVLPの処理によって達成することができる(Sapp et al,J.Gen.Virol.,76:2407-2412,1995.)。本発明によると、VLPを完全に又は部分的に分解すると、生物活性剤の存在下でVLPを再構築することで、生物活性剤の封入を行うことができる。いくつかの場合、封入を増強するために、正味の負電荷を有する生物活性剤を使用することが有利である。例えば、核酸は正味の負電荷を有し、正電荷を有する、又は電荷が中性の化合物と比較して、優先的に封入され得る。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、VLPの再構築は崩壊したVLPへのカルシウムイオンの再補充により達成される。あるいは、VLPの再構築は還元剤又はキレート剤の除去により達成される。任意に、pH及びイオン強度などの要因、並びに本発明で説明した他の要因を調節してVLPの効率的な再構築及び生物活性剤の効率的な封入を達成することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、封入は以下のように行われる。室温で30分間インキュベートした後、50mMのTris-HCl緩衝液(pH7.5)及び150mMのNaCl中の生物活性剤を崩壊したVLP調製物に添加する。次に崩壊したVLP調製物は、最終濃度5mMまでCaCl2の濃度を上げて1時間インキュベーションすることにより、リフォールドされる。超遠心によりVLPをペレットとし、10mMのカリウムMES緩衝液(pH6.2)に再懸濁させる。封入された剤の量を見積もるため、リフォールドされ精製されたVLPを任意の未封入の生物活性剤から精製し、EGTA(1mM)を用いて崩壊させる。上清の吸光度、又は他の適切な方法を生物活性剤の検出に用いることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、封入される生物活性剤(例えば、インスリンタンパク質又はインスリンをコードする核酸)又は造影剤はカプシド形成シグナルと結合される。例えば、HEVオープンリーディングフレーム1のコドン35~59に相当するRNAエレメントは、本明細書で説明される切断型及び/又はシステイン/リシン改変型のHEV ORF2 VLPを含む、HEVカプシドタンパク質とインビトロでの特異的な相互作用を可能にする、強力なカプシド形成シグナルである。VLPを治療剤又は造影剤の担体として用いるため、カプシドの自己集合の前に、薬剤(例えば、化学療法剤)に前述のRNAエレメントのようなHEVカプシド形成シグナルをタグ付けする化学リンカー(例えば、LC-SPDP又はアプタマー、テロデンドリマー)を用いることができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識(造影剤)が封入される。検出可能な標識は、それが結合した分子を化学的、酵素的、免疫学的、又は放射線学的な手段を含む様々なメカニズムで検出可能な状態にする部分であり得る。検出可能な標識の例としては、蛍光発光又は酵素により触媒される化学反応産物に基づく検出を可能とする、蛍光分子(フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、及びフィコエリスリンなど)及び酵素分子(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びβガラクトシダーゼなど)が挙げられる。オートラジオグラフィーのような放射線を記録する任意の適切な方法により検出できるように、3H、125I、35S、14C、又は32Pなどの様々な同位体を含む放射性標識を適切な分子に結合させることも可能である。例えば、Tijssenの「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,」 Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Burdon and van Knippenberg Eds.,Elsevier(1985),pp.920.を参照のこと。標識の導入、標識の手順、及び標識の検出はまた、Polak and Van Noorden,Introduction to Immunocytochemistry,2d Ed.,Springer Verlag,NY(1997);and in Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,a combined handbook and catalogue published by Molecular Probes,Inc.(1996)にも見ることができる。他の検出可能な標識としては、超常磁性標識(例えば、フェライト)、コントラスト増強試薬(例えば、MRI造影剤)、原子クラスター(例えば、金のクラスター)などが挙げられるが、これに限定されない。改変されたカプシドタンパク質上、例えば、改変されたカプシドタンパク質中の人工的に導入されたシステイン残基/リシン残基を含むシステイン残基/リシン残基上への、単分散の金のクラスターの結合は、当技術分野で周知でありかつ様々な出版物に記載の方法に従って行うことができる[18]。
【0053】
いくつかの実施形態では、生物活性剤は封入される。いくつかの場合、生物活性剤は化学療法剤である。適切な化学療法剤としては、細胞毒性薬があるが、これに限定されない。本発明において用いられ得る細胞毒性薬の例としては、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、ロムスチン、カルムスチン、クロルメチン(ムスチン)、エストラムスチン、トレオサルファン、チオテパ、ミトブロニトールなどのアルキル化剤;ドキソルビシン、エピルビシン、アクラルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン(ミトザントロン)、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、及びマイトマイシンなどの細胞傷害性抗生物質;メトトレキサート、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、ゲムシタビン、フルオロウラシル、ラルチトレキセド(トムデックス)、メルカプトプリン、テガフール、及びチオグアニンのような代謝拮抗剤;ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びエトポシドなどのビンカアルカロイド;アムサクリン、アルテタルミン、クリサンタスパーゼ、ダカルバジン、及びテモゾロミド、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシ尿素)、ペントスタチン、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンを含む白金化合物、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、ラゾキサンなどの他の抗腫瘍薬;ドセタキセル及びパクリタキセルを含むタキサン;イノテカン及びトポテカンを含むトポイソメラーゼI阻害剤、トラスツズマブ、及びトレチノインが挙げられる。いくつかの場合、前述の造影剤及び/又は生物活性剤、又はそれらの組み合わせのうちの1又は複数を、追加で又は代わりに、チオール結合を介して、Pドメインの表面可変ループ又はC末端のシステイン又はリシン(例えば、組み換え技術により導入されたシステイン又はリシン)と結合することができる。いくつかの場合、前述の造影剤及び/又は生物活性剤、又はそれらの組み合わせのうちの1又は複数を、追加で又は代わりに、チオール結合を介して、Pドメインの表面可変ループ又はC末端の第2のシステイン又はリシン(例えば、組み換え技術により導入されたシステイン又はリシン)と結合することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、インスリンは本発明のHEV VLP構成物に封入される生物活性剤である。生物学的に活性のあるポリペプチド(糖鎖付加、PEG化、又はD-アミノ酸を含む1又は複数の人工アミノ酸類似体の置換など、任意に翻訳後修飾を含んでいてもよい)の形態でのインスリンが用いられることがあるが、インスリンはインスリン及び/又はプロインスリンタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、cDNA)の形態であることもあり、例えば、インスリンをコードする核酸は、TA1mベクター中のヒトインスリン遺伝子発現構成物である[12]。インスリンタンパク質は組み換え型であっても、天然源から単離されたものであってもよい。ヒトインスリン、又はウシ、ブタ、ネコ、若しくはイヌ科の動物などの他の動物に由来するものであってもよい。プロインスリンであってもよい。異なる形態のインスリン、すなわち即効型(アスパルト(ノボログ)、グルリジン、アピドラ、リスプロ(ヒューマログ))、短時間作用型(レギュラー(ヒューマリン)、ヒューマリンR、ノボリン)、中間作用型(NPH(ヒューマリンN)、ノボリンN)、中間-長時間作用型(デテミル)、長時間作用型(例えば、グラルギン)を用いることができる。さらに、生物活性剤は、レベミル(Levemir)という商品名で販売されている商用のインスリン類似体などのインスリンの類似体、又は長時間作用型の基礎インスリン類似体でランタスという商品名で販売されているインスリングラルギンであってもよい。また、生物活性剤はインスリンとグルカゴン様ペプチド(GLP-1)受容体又は他の薬物との組み合わせであってもよい。GLP-1受容体アゴニストの例としては、リラグルチド(ビクトーザ、サクセンダ)、リキシセナチド(リキスミア)、アルビグルチド(タンゼウム)、デュラグルチド(トルリシティ)、及びセマグルチド(オゼンピック)が挙げられる。インスリンの適切な形態又は組み合わせとしては、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリンデテミル、インスリン(ヒト)、インスリンアスパルト+インスリンアスパルトプロタミン、インスリングルリジン、インスリン(ヒト)+イソフェンインスリン[国際一般名]、インスリンアスパルト+インスリンデグルデク、インスリンアスパルト+イソフェンインスリン[国際一般名]、インスリンデグルデク+リラグルチド、インスリングラルギン+リキシセナチド、ヒトインスリン+イソフェンインスリン[国際一般名]、イソフェンインスリン[国際一般名]+中性インスリン、ヒトイソフェンインスリン[国際一般名]+ヒトインスリン、インスリン(ウシ)、インスリンデグルデク、ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン[国際一般名]、ヒトイソフェンインスリン[国際一般名]、中性インスリン、ヒトインスリン+ヒトイソフェンインスリン[国際一般名]、中性インスリン+イソフェンインスリン[国際一般名]、インスリン(ブタ)、インスリン 中性、インスリンプロタミン亜鉛、インスリン、インスリントレゴピル[国際一般名]、ヒトインスリン+ヒトプロインスリン、インスリングラルギン+インスリンリスプロ、ヒトインスリン+酢酸プラムリンタイド、デュラグルチド、デュラグルチド+インスリングラルギン、エキセナチド+インスリンリスプロ、インスリングラルギン+リラグルチド、インスリンリスプロ+プラムリンタイド、エフペグレナチド[国際一般名]、ヒトインスリン+プラムリンタイド、エキセナチド+ヒトインスリン、インスリンリスプロ+インスリンリスプロプロタミン、クリオキノール[国際一般名]+ヒトインスリン、インスリングラルギン+インスリングルリジン、及びインスリンI 131が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、Nankarら(Drug Discovery Today,Volume 18,Issues 15-16,August 2013,Pages 748-755)に記載されるような様々なペプチジルインスリン類似物及び非ペプチジルインスリン類似物をHEV VLPに封入する生物活性剤として用いてもよい。
【0055】
異なる構成のカプシドタンパク質を用いると、VLPの大きさが変化し得る。例えば、カプシドタンパク質のN-末端部分を調整してVLPの大きさ及び封入容量を増加又は減少させることができる。本発明のいくつかの実施形態において、HEV VLPを構築する際に、HEV ORF2タンパク質の一部のN-末端に融合したHEV ORF3タンパク質の一部がVLPの大きさを調整するために用いられる。通常、HEV VLPは、HEV ORF2の112~608番目の残基を少なくとも有するHEV ORF2の一部から形成される。
【0056】
D.医薬組成物、処方、及び投与
本発明はまた、タンパク質又は核酸の形態のインスリンなどの生物活性剤を封入する改変されたカプシドタンパク質により形成されるHEV VLPを含む医薬組成物又は生理的組成物を提供する。そのような医薬組成物又は生理的組成物はまた、1又は複数の医薬的に又は生理学的に許容可能な非薬効成分又は担体を含む。本発明の医薬組成物は様々な薬物送達システムでの使用に適している。本発明における使用に適した処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に見られる。薬物送達の方法の簡潔な説明としては、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照のこと。
【0057】
本発明の組成物は非薬効成分と共に宿主へ投与することができる。本発明に有用な非薬効成分としては、溶媒、結合剤、崩壊剤、賦形剤(希釈剤)、滑沢剤、滑剤(流動促進剤)、圧縮補助剤、色素、甘味料、保存料、懸濁剤/分散剤、フィルム形成剤/コーティング剤、香味料、及び印刷用インクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の1つの利点は、本発明の組成物が経口送達に適していることである。本発明のHEV VLPは肝細胞を標的化することができるため、インスリンの部位特異的な送達を効率的に達成することができる。また、カプシドタンパク質の改変の結果として、本発明のHEV VLPは酸性環境下で安定であり、かつ胃腸管における消化に対して耐性があり、インスリンの経口送達に適している。システイン残基又はリシン残基に結合した金ナノクラスター、特に、本発明のいくつかの実施形態における改変されたカプシドタンパク質の表面を改変したものは、HEV VLPの安定性、生体利用効率、及び送達効率をさらに高める。よって、本発明の組成物の経口送達は、I型糖尿病又はII型糖尿病及び関連する症状など、インスリン欠乏疾患又はインスリン調節異常疾患を患う患者に、治療的有用性を効率的に提供することができる。日常生活の中で消費するための身近な食品又は飲料品の栄養補助食品として用いることができるように、本発明のHEV VLPを固体(例えば、粉末)又は液体の形で処方してもよい。
【0059】
また、本発明の組成物は、鼻粘膜を含む、頬粘膜又は口唇粘膜又は気道粘膜への送達などの粘膜送達のために処方してもよい。
【0060】
本発明の医薬組成物は、例えば、経口、皮下、経皮、皮内、筋肉内、静脈内、又は腹腔内など様々な経路により投与することができる。医薬組成物の好ましい投与経路は、約0.01~5000mg、好ましくは5~500mgのHEV VLPの1日投与量での経口送達である。経口投与は好ましい投与の方法であり、適切な量を錠剤、カプセルの形態で、又は食品及び飲料品の栄養補助食品として、1日1回の服用量で、又は適切な間隔をあけての分割用量、例えば1日あたり2、3、4、又はそれ以上に分割用量で投与してもよい。
【0061】
本発明の医薬組成物を調製するために、不活性かつ医薬的に許容可能な担体が用いられる。薬剤の担体は固体若しくは液体のどちらでもよい。固形製剤としては、例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、及び座薬が挙げられる。固形担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、又は錠剤の崩壊剤としても作用し得る1又は複数の物質であり得、封入する物質であってもよい。
【0062】
粉末において、担体は一般的に、微粉化された活性成分、例えば、封入された核酸を有するキメラウイルス様粒子との混合物である、微粉化された固体である。錠剤において、活性成分(封入された核酸を有するキメラウイルス様粒子)は必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形及び大きさに圧縮される。
【0063】
座薬の形態の医薬組成物を調製するため、まず脂肪酸グリセリドとココアバターの混合物などの低融点ワックスが融解され、例えば撹拌により、活性成分をその中に分散させる。次に、溶かされた均一な混合物を適当な大きさの型に注ぎ込み、冷やして固形化させる。
【0064】
粉末及び錠剤は、約5重量%~約70重量%の活性成分を含むことが好ましい。適切な担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖、砂糖、ペクチン、デキストリン、でんぷん、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、及びココアバターなどが挙げられる。
【0065】
医薬組成物は、活性成分(他の担体の有無にかかわらず)が担体に取り囲まれているカプセルを提供する担体として、封入材料を有する活性化合物の処方を含むことができ、それにより担体は化合物と結合する。同様の方法で、カシェ剤を含むこともできる。錠剤、粉末、カシェ剤、及びカプセルは経口投与に適した固体の投薬形態として用いることができる。
【0066】
液体の医薬組成物としては、例えば、経口投与又は非経口投与に適した溶液、懸濁液、及び経口投与に適した乳濁液がある。活性成分(例えば、封入された核酸を有するキメラウイルス様粒子)の滅菌水溶液、又は水、緩衝用水、生理食塩水、PBS、エタノール、若しくはプロピレングリコールを含む溶媒中の活性成分の滅菌溶液が非経口投与に適している液体組成物の例である。組成物は、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、及び洗浄剤などの、生理的条件に近づけるために必要とされるような医薬的に許容可能な補助物質を含んでいてもよい。また、HEV VLPは、市販されているように、予め梱包された粉末における錠剤/カプセルの形態、又は濃縮液の形態であってもよいことが予想される。これは、患者により水を含む食品又は飲料品に追加で加えられた後、その患者に摂取されることになる。また、HEV VLPは液体の形態であり、さらなる希釈なしで直接摂取することもできる。
【0067】
滅菌溶液は、所望の溶媒系に活性成分(例えば、封入された核酸を有するキメラウイルス様粒子)を懸濁した後、滅菌のために得られた溶液をメンブランフィルターに通すことにより、あるいは、滅菌条件下で、予め滅菌した溶媒中に滅菌した化合物を溶解することにより、調製することができる。得られた水溶液はそのまま使用するために梱包してもよく、又は凍結乾燥してもよく、凍結乾燥した調製物は投与前に滅菌済の水性担体と組み合わせられる。調製物のpHは通常、3~9であり、より好ましくは5~8であり、最も好ましくは6~7であろう。
【0068】
本発明の医薬組成物は、予防的療法及び/又は治療的療法のために投与することができる。治療的適用において、疾患の症状及びその合併症を予防する、治療する、回復させる、又は少なくとも部分的に遅らせる又は抑えるのに十分な量の組成物が、既に疾患を患っている患者に投与される。これを達成するのに十分な量を「治療的有効量」と定義する。この使用に有効な量は、病気又は疾患の重症度、及び患者の体重及び全身状態に依存するが、一般的には70kgの患者に対して、1日あたり約0.1mg~約2000mgの組成物の範囲であり、より一般的に用いられるのは、70kgの患者に対して、1日あたり約5mg~約500mgの組成物の投薬量である。
【0069】
予防的適用において、本発明の医薬組成物は、糖尿病などの病気又は疾患になりやすい、又は発生する恐れがある患者に、症状の開始を遅らせる又は予防するのに十分な量が投与される。そのような量を「予防的有効量」と定義する。この使用でも、組成物の正確な量は、患者の健康状態及び体重に依存するが、一般的には、70kgの患者に対して、1日あたり約0.1mg~約2000mgの阻害剤の範囲であり、より一般的には、70kgの患者に対して、1日あたり約5mg~約500mgである。
【0070】
組成物の単回投与又は複数回投与は、治療する医師により選択される用量レベル及びパターンで行うことができる。いずれにしても、製剤処方は、治療的又は予防的に、患者において意図された効果を達成するのに十分な本発明の組成物の量で提供されるべきである。
【実施例0071】
以下の実施例は、例示のためだけに提供されるものであり、限定を目的とするものではない。当業者は、本質的に同一又は同様の結果を生じるように変更又は改変することができる様々な重要でないパラメータを容易に理解するであろう。
【0072】
実施例1:HEVNPによる経口インスリン送達
I.背景
過去80年間、皮下(SC)注射は、糖尿病の治療としてのインスリン投与について、最適以下のインスリン分泌を補充するために用いられる主要な経路であった。この方法は効果的であるが、SC注射は痛みを伴い、不便であり、患者の服薬遵守を低下させる高い感染の恐れを有している。非感染性のE型肝炎ウイルスカプシドからなる、インスリンが封入されたE型肝炎ウイルスナノ粒子(HEVNP)は、摂取後にインスリンを胃腸(GI)管から肝臓へ送達することが期待される。HEVNPは、患者の服薬遵守が最も高く最も好ましい薬物送達の経路である、インスリン経口投与のための効果的及び効率的な手段の長期の調査の答えとなり得る。
【0073】
II.インスリンの経口送達のための構造的に安定化されたHEVNP
生理学的な視点から、経口で投与されるインスリンは、内因性のインスリン分泌経路を模倣する能力により、肝臓のグルコース産生の管理において治療的な利点を有する[4]。HEVの自然感染の経路に従って、HEVNPに封入されたインスリンは胃腸管を通り、門脈を通って肝臓に移行することができる(
図1)。対照的に、非経口のインスリン又は吸入されたインスリンは、肝抽出を回避することによって末梢循環へ直接吸収され、それにより門脈末梢インスリン勾配及び生理的な肝臓のインスリン処置を元の状態に戻すことができない。さらに、これらの経路により末梢の標的は肝臓と比較してより高いインスリン濃度にさらされ、患者が低血糖症となる危険性が高くなり、高インスリン血症の悪影響を受けやすくなる[4]。
【0074】
E型肝炎ウイルス(HEV)カプシドタンパク質の改変された形に由来するE型肝炎ウイルスナノ粒子(HEVNP)は、ウイルスゲノムが欠失しており、且つ細胞への結合及び侵入が可能な非感染性で自己集合性のカプシドである。HEVは経口での粘膜伝達のために進化したため、集合したカプシドタンパク質は、タンパク質分解及び酸性の粘膜条件において、同じように安定である[13]。高収率のHEVNP産生はバキュロウイルスベクターによる昆虫細胞発現系により達成された。そのタンパク質分解への安定性のため、自己集合したHEVNPは細胞上清から直接的に抽出及び精製することができ、これにより、必要な精製工程が実質的に減少される。さらに、HEVNPは、安定な正二十面体の基礎に柔軟なヒンジを介して結合している、表面に露出した突起ドメイン(Pドメイン)を有している。Pドメインは、遺伝子操作[13]又は化学的結合[14]により外来ペプチドを挿入することで、基礎となる二十面体構造を損なうことなく改変することができる。オープンリーディングフレーム2(ORF2)によりコードされる、Pドメイン上の3つの十分に露出された表面可変ループ、及びHEVカプシドタンパク質(CP)のC末端は、少なくとも1又は複数の生物活性剤のための遺伝子操作部位及び/又は化学的結合部位としてデザインされる[14、15]。
【0075】
特定の臓器及び細胞区画への標的化された薬物送達は、非特異的な臓器/細胞への副作用を減少させるために提案されてきた。HEVNPは、その表面に露出したシステイン残基又はリシン残基が、組織標的化のための合成リガンドを用いることができることから、細胞を標的化する送達システムとして提案されてきた[14、15]。経口的に遺伝子を送達できるその能力は、インスリン及び/又はプロインスリンの一過性発現のために、HEVNPがプラスミドcDNAを小腸上皮細胞へ経口的に送達した場合の先行研究において証明されてきた[16、17]。遠赤外(FIR)撮像を用いたマウスモデルにおけるHEVNPのインビボでの生体分布アッセイにより(データ示さず)、経口送達されたHEVNPが、特異的な肝臓標的化リガンドなしでも、肝臓に蓄積することが示された。
【0076】
HEVNPによる封入は、負に帯電した核酸及びナノサイズのタンパク質/小分子を治療的適用のためにパッケージングし得るような、電荷相互作用に基づく。HEVNPは、商用のインスリン類似体、すなわち、約52nmの大きさであるレベミル(ウェブサイト:levemir.com)によるインスリンデテミルを封入することができる(
図3)。HEVNPの薬品毒性学を考慮すれば、それは単一のカプシドタンパク質ORF2の複製物からなり、生分解性である。加えて、HEVNPは、経口遺伝子送達のために、インスリン又はプロインスリンのcDNAを封入することができる。膵臓β細胞及び/又は肝臓を標的化する能力は、一晩の化学的結合又は時間がかかるが費用対効果の高い遺伝子操作によって、特定の細胞を標的化するリガンドをHEVNPの突起したドメインへ挿入することにより、付加することができる。HEVNPの組織を標的化する能力により、インスリン遺伝子を膵臓及び/又は肝臓へ輸送するための好都合な経口送達担体となり、その場でのインスリン発現が可能となる。
【0077】
経口送達担体としてHEVNPを用いる概念は、前述の先行の研究により証明されていないだけでなく、インビトロでの安定性研究によっても支持されていなかった。異なるpH及びペプシン消化試験によるインビトロでの安定性評価(非公表データ)は、インスリンが封入されたHEVNPが、pH3の環境における5分間のペプシン消化において生存し得ることを示している(
図2)。HEVNPは、国際公開第2015/179321号、米国特許第8,906,862号、及び米国特許第8,906,863号に記載された1又は複数の改変を有する、改変されたORF2カプシドタンパク質を含む。封入されたインスリンの生体利用効率は、胃の中の過酷な消化環境を避けるため、食事前に飲むことでさらに保証され得る。その上、生体利用効率は、HEVNPの5回対称領域上に単分散の金ナノクラスター(AuNC)を化学的に結合することにより、安定化することができる[18]。さらに、AuNCは、深部組織を貫通することができる、そのFIR検出可能なシグナルにより、インビボの造影剤として提案されてきた[19]。インスリンの封入、インスリン/プロインスリンのcDNAの封入、及び表面結合能による組織/細胞標的化を含む、HEVNPの機能の組み合わせにより、糖尿病を治療するためのインスリン自身又はインスリン遺伝子の理想的な経口送達システムとなる。送達システムは、針の使用を排除することにより患者の服薬遵守を改善する。
【0078】
本発明は、(1)吸収を高めるために表面に結合した組織/細胞標的リガンド(特に、HEVNPを肝細胞へ特異的に指向させることが可能なリガンド)、及び(2)薬物/遺伝子送達のため内部に封入されたインスリン(インスリンポリペプチド又はインスリンをコードするポリヌクレオチド配列のいずれかの形)を有するHEVNPプラットフォームに属する。HEVNPは、米国特許第8,906,862号、米国特許第8,906,863号、及び国際公開第2015/179321号を含む、本発明者らによる先行する開示物に従って構成されている。
【0079】
III.概要
ウイルス感染性が欠乏しているHEVに由来するナノカプセルであるHEVNPは、胃腸での安定性、標的細胞への結合、及び細胞への侵入を含むHEVの本質的な特徴を保持している。インビトロでの分解/再構築能力と合わせて、HEVNPは飲用での魅力的な経口送達ナノカプセルとして提案されてきた。HEVNPによる封入は、負に帯電した核酸及びナノサイズのタンパク質/小分子を治療的適用のためにパッケージングすることができるような、積載物とカプシドタンパク質との静電相互作用である。胃腸管を経由した肝臓への経口送達のためのインスリンの封入に加え、インスリン遺伝子も封入され得る。必要ならば、膵臓β細胞及び/又は肝臓を標的化する能力は、特定の細胞を標的化するリガンドを一晩の化学的結合又は時間がかかるが費用対効果の高い遺伝子操作によって、HEVNPの突起したドメインへ挿入することにより、付加することができる。よって、HEVNPは、インスリン遺伝子を膵臓へ送達し、その場でインスリンを一過性発現することができる、細胞を標的化する遺伝子送達担体となる能力が備わっている。インスリンを封入したHEVNPは、好ましい薬物投与の経路である経口投与により、胃腸管から肝臓へインスリンを送達することが期待される。
【0080】
集学的治療計画において、糖尿病患者は、血糖値の制御を改善する2つ以上の糖尿病治療法にて治療される。送達されたインスリンの異なるインビボ動態を達成するため、インスリン/プロインスリンポリペプチドの形態のインスリンとインスリン/プロインスリンcDNAの形態のインスリンとの間で積載物を交換することにより、糖尿病治療の複数の療法がHEVNPにより提供され得る。療法の他の段階は、HEVNPの突起したドメイン上の異なる組織/細胞標的リガンドの結合によりもたらされる。HEVNPに封入されたインスリン、及び/又はインスリン/プロインスリンcDNAを含むHEVNPを経口的に送達することによって、これらの多様な治療の組み合わせは糖尿病治療の針での注射の代替法となり得る。
【0081】
IV.材料及び方法
1. インスリンのHEVNP封入
1.1. HEVNPの分解
1.1.1. 20mMのDTT、10mMのEDTA中で、4℃で一晩、HEVNPを分解する。
1.1.2. 50mMのTris(pH7.5)、150mMのNaClにて、室温で1時間以上、分解されたHEVNPを透析する。
1.1.3. TEMによる検査、分光測定法によるタンパク質濃度測定。
【0082】
1.2.インスリンのHEVNPへの封入
1.2.1. 分解されたHEVNPを、50mMのTris(pH7.5)、150mMのCaCl2中でインスリンと混合し、最終濃度が2~5mMとなるようにCaCl2を加える。4℃で一晩。
1.2.2. 遊離のインスリンを除去するため、サイズ排除カラムに通す。
1.2.3. 画分を収集し、分光光度計によりタンパク質濃度を測定する。
1.2.4. TEMによりインスリンが封入されたHEVNPを検査する。
【0083】
2. HEVNPの特性評価
2.1. 分光光度計を用いて、280nmの吸光度の測定値及び260nmの吸光度/280nmの吸光度の比を記録する。HEVNP ORF2のモル吸光係数は60280であり、これは280nmにおけるタンパク質の吸光度の値の1.019倍に相当する。これは1:1に近いので、HEVNPの濃度は、分光光度計による280nmの吸光度のタンパク質濃度測定により表すことができる。HEVNPの構成要素である、ORF2の分子量が53.318kDaであることを考慮すれば、以下のようである。
【数1】
例:280nmでの分光光度計の測定から、1mg/mLのHEVNP濃度は18.8μMのORF2に相当する(各ORF2は化学的結合のための1つのシステイン部位及び1つのリシン部位を含む)。
【0084】
2.2. 取扱説明書14に従い、1.0mm、17ウェルの4~12%のSDS-PAGEビス-Trisタンパク質ゲルを調製する。
2.2.1. 6μLのタンパク質試料に2μLの4×ローディングバッファーを加える。タンパク質を変性させるために、試料混合物をヒートブロックで100℃、10分間インキュベートする。タンパク質試料をNuPAGEゲルのセットアップにロードする。
2.2.2. 直流電源を100Vで10分間、その後、試料がゲルの底部から約1cm上に達するまで、150Vで45分間に設定してSDS-PAGEを泳動する。
2.2.3. SDS-PAGEゲルをクーマシーブルー(0.25%(w/v)クーマシーブリリアントブルーR250、30%(v/v)メタノール、10%(v/v)酢酸)で1時間染色する。
2.2.4. 染色操作後、クーマシーブルー染色を除去し、室温で12時間以上、脱染バッファー(30%(v/v)メタノール、10%(v/v)酢酸)をタンパク質ゲルにアプライする。
2.2.5. 52kDaのバンドにHEVNP ORF2の存在を確認するため、白色光下でゲルを記録する。
【0085】
2.3. TEMを用いたHEVNPの観察
2.3.1. TEMでの画像化のために、10mMのMES(pH6.2)を用いてHEVNP試料を0.5~2mg/mLに調製又は希釈する。
2.3.2. 40mAのグロー放電にて30秒間、炭素被覆グリッドをイオン化して親水性の炭素表面を生成する。グロー放電装置はEMSグロー放電器であってもよい。グリッドの親水性の炭素表面はグロー放電処理の後、30分間しか持続されない。
2.3.3. ピンセットで押さえ、グリッドに2μLのHEVNP試料を添加し、15~30秒間待ち、ろ紙を用いて拭き取る。
2.3.4. 脱イオン蒸留水を用いて直ちにグリッドを洗浄し、ろ紙を用いて拭き取る。
2.3.5. 2μLの2%酢酸ウラニルを直ちにグリッドに添加し、15秒待ち、その後、ろ紙を用いて拭き取る。電子除湿乾燥キャビネット中に置くことにより、試料のグリッドを一晩乾燥する。
2.3.6. 透過型電子顕微鏡(TEM)にグリッドを移し、10Kから80Kの拡大率で撮像する。ウイルスRNAが存在しないため、HEVNPはTEM中で直径が約27nmの空の二十面体のタンパク質のように見える。
【0086】
3. ビオチン、組織/細胞標的化リガンド、及び蛍光色素分子とHEVNPの化学的結合
3.1. HEVNPとマレイミド結合型ビオチンの一段階結合
3.1.1. バッファー交換:HEVNPをミニ透析ユニットに入れ、製造業者の手順に従い、0.01MのPBS(pH7.4)にて室温で1時間透析する(Zeba Spin脱塩カラム、40K MWCO、0.5mL)。HEVNPを1.5mLチューブに移し、分光光度計を用いて280nmでのタンパク質濃度を測定する。
3.1.2. 18.8μMのシステイン反応部位(詳細は工程2.2.4を参照)に相当する1mg/mLのHEVNPを、等容量の0.01M PBS(pH7.4中)中のマレイミド-ビオチン(100μM)とモル比が1:5になるように混合し、4℃で一晩反応させる。製造業者の手順に従い、40K MWCO Spin脱塩カラム操作で、未結合のマレイミド-ビオチンを除去する(Zeba Spin脱塩カラム、40K MWCO、0.5mL)。
3.1.3. 標準的な還元SDS-PAGEを用いて試料を分析する(工程3.1)。
3.1.4. HRP結合型ストレプトアビジンによる化学発光法によるウェスタンブロットを用意する。X線フィルムにより化学発光シグナルを捕捉する(
図2)。
【0087】
3.2. HEVNP表面の露出したシステインへの二段階での組織標的化リガンド(RGDペプチド)の結合
3.2.1. バッファー交換:HEVNPをミニ透析ユニットにアプライし、0.01MのPBS(pH7.4)にて室温で1時間透析する。HEVNPを1.5mLチューブに移し、分光光度計を用いて280nmでのタンパク質濃度を測定する。
3.2.2. 650μMのマレイミドアジド及び650μMのアルキン化リガンドXを200μMのCuSO4及び1mMのアスコルビン酸を含む0.01MのPBS(pH7.4)に添加して、650μMのマレイミド結合型リガンドX(Mal-LigandX)を形成する。混合物を4℃で一晩インキュベートする。
3.2.3. 18.8μMのシステイン反応部位(詳細は工程2.2.4を参照)に相当する1mg/mLのHEVNPを、約10%容量の0.01M PBS(pH7.4)中のMal-LigandX(650μM)とモル比が1:3になるように混合し、4℃で一晩反応させる。比較的高濃度のマレイミド結合型LXY30に起因して、HEVNPへの損傷を避けるため、CuSO4などの反応物質の最終濃度は混合後に約10分の1低減される。他の選択肢としては、銅が含まれていない結合方法がある15。
3.2.4. 製造業者の手順に従い、40K MWCO Spin脱塩カラムを用いて、未結合のマレイミドクリックリガンドXを除去する(材料の表)。LXY30結合型HEVNP(LXY30-HEVNP)を4℃に保つ。
【0088】
3.3. LXY30結合型HEVNP(LigandX-HEVNP)とCy5.5 NHSエステル(NHS-Cy5.5)との一段階結合
3.3.1. 18.8μMのシステイン反応部位(詳細は工程2.2.4を参照)に相当する1mg/mLのリガンドX結合型HEVNP(LigandX-VLP)を、等容量の0.01M PBS(pH7.4)中のCy5.5 NHSエステル(NHS-Cy5.5 100μM)とモル比が1:5になるように混合し、4℃で一晩反応させる。
3.3.2. 製造業者の手順に従い、40K MWCO Spin脱塩カラム操作で、未結合のCy5.5-NHSを除去する(Zeba Spin脱塩カラム、40K MWCO、0.5mL)。RGD、Cy5.5結合型HEVNP(RGD-HEVNP-Cy5.5)を4℃に保つ。
【0089】
実施例2:インビボでの研究
I.HEVNP封入デザイン
処方において、HEVNPは、錠剤、カプセル、スプリンクルパウダー(sprinkle powder)、又は飲料品に含ませる液体として処方することができる。HEVNPのサブコンポーネントはヒト及び動物にとって安全なワクチンであることが証明されてきた。他に提案されている経口インスリン投与の増進剤とは対照的に、HEVNPカプセルは、経口経路を通じたインスリンのようなタンパク質積載物に対する生体利用効率が増強された、粘膜集中的な送達システムとして使用可能である。四次構造に基づく積載物は、使用可能な保持時間を延ばすための巨大分子特性を利用するようにデザインされる。
【0090】
インスリンの封入効率を最適化するために、最適条件を調べるための複数の評価を行った。
図4に示すように、HEVNP中へのインスリンの封入は、封入の間及び封入後はTris緩衝液中で最も高い安定性及び構造均一性を示した。最適な封入条件は、中性のpHの範囲における、10~50mMのTris、0~150mMのNaClに絞り込まれた。PBS緩衝液は高度の沈殿を生成したが、対照的に、MES緩衝液は、積載物の封入に最も好ましくない条件を与えた。Tris緩衝液は溶液中で、安定で単分散のタンパク質の積載物を有するHEVNPを提供したため、封入の最も高い収率は、Tris緩衝液を用いた条件であることがさらに特定された。
【0091】
封入のために、HEVNPサブユニットは、系中に加えられたCaCl2とともに徐々にカプセルを集合させるため、対応するモル比のインスリンのようなタンパク質の積載物とともにインキュベートされる。インスリン封入の効率は以下のように測定し、評価した。
【0092】
1.塩化セシウム密度勾配分離;HEVNP及びインスリンの共存は、(HEV及びインスリンに対する)ELISAによって示される(
図5)
2.サイズ排除カラム分離;HEVNP及びインスリンの共存は、(HEV及びインスリンに対する)ELISAによって示される(
図6)。
【0093】
II.密度評価を用いたHEVNP封入
緩衝液の最適化において、塩化セシウム勾配は、HEVNP中へのインスリン封入の効率を説明するためのELISA測定値の単一のピーク内にインスリン及びHEVNPの共存を明確に示す。「+」はELISAからの陽性の計測値及び画分6~13におけるHEVとインスリンの共存を示している。
【0094】
大きさの評価により、インスリンの積載物を有するHEVNPの新規の構造が特定される。
【0095】
ELISAに示されるように、SECはインスリン及びHEVNPの重複した明確なピークを示す(画分#16~#32の+記号により示される)。
【0096】
第1のピーク(赤のピーク)に示されるように、インスリン及びHEVNPカプセルの共存を特定するためのさらなる根拠が、抗インスリン抗体及び抗HEVNP抗体それぞれの特異性に従うELISA評価により検証された。HEVNPの新たな形態(
図5の下パネル)、すなわち、単一のピーク(35を超える異常値の画分を除く)への超音波を介した積載物の最適化をさらに特定するため、さらなる封入が体系的に測定され、インスリンとHEVの両方を有する一体化したピークとして示された(ELISAにより検証、492nmの吸光度の測定値)。
【0097】
III.長期化したHEVNPの保存期間
効果的な薬物送達システムのために、製品の高い安定性及び保存期間は重要な意味を持つ。HEVNP-インスリン試料を4℃で1年以上保存し、低温電子顕微鏡で観察した。顕微鏡写真は、保存条件に対して高い安定性を示す損傷のない粒子を示している。
図8に示すように、低温電子顕微鏡法は、封入されたインスリンデテミルを有するHEVNP粒子を観察するために用いられた。
【0098】
IV.HEVNP-インスリンの構造特性評価
電子顕微鏡法によりインスリンの封入を示す結果が得られてきた。しかしながら、これらのナノ粒子の2次元の分布及び3次元の構造的な特徴は未だ十分に特性評価がなされていない。自社の手順と市販の画像処理パッケージを併用して、1)粒子分布を統計的に分析、及び2)インスリンが封入されたHEVNPの高解像度3D構造を判断するために、大規模データセットが収集及び分析されてきた。
【0099】
TEM画像の評価は、以前に出願した我々の第1世代のHEVNPの直径(27nm)より約2倍大きい直径約45nmで作成されたHEVNP-インスリンの新規の立体構造を示す。これらのHEVNP内において、新規の形状及び大きさは視覚的に理解しやすい六量体のノードの突出したストランドを有するインスリン積載物を運ぶのに最適であるようだ。構造に基づくインスリンパッケージング効率の最適化を達成するため、低温電子顕微鏡により、さらなる3D体積特性評価を行った。この新世代のHEVNP立体構造は、前負荷によるパッケージングを完全にするためのコンピュータによるモデリングにより実現された。HEVNP-インスリンの3D描写を再構成するために収集された連続傾斜データを用いた電子3D断層撮影をデジタルセグメンテーションと共に行い、-60度から+60度まで1度増分で200kV電子顕微鏡(JEOL 2100F)を用いてパッケージングシステムを分析した。
図7において、同時逐次再構成法を用いて3D再構成を行い、これによりHEVNPから突出したインスリンのセグメント化されたストランドが明確に示された。
【0100】
V.大型動物モデル及び小型動物モデルにより検証されたHEVNP封入
マウスは2つの治療群のうちの1つに無作為に割り当てられ、インスリン耐性試験を以下のように行った。
A.マウスあたり(HEVNPで封入された)インスリン0.1Uを経口投与 B.マウスあたり(HEVNPで封入された)インスリン1Uを経口投与
【0101】
経口インスリン投与後の血糖濃度の減少が平均25%であるのに対して腹腔内インスリン投与後の血糖濃度の減少を50%と仮定し、標準偏差15%、望ましいαエラー5%、及び検出力80%を用い、群間の有意差を検出するため、マウスの10%のサブグループを設けた。
【0102】
軽いイソフルラン麻酔及び柔軟な強制経口針を用いて、強制的に経口送達を行う。腹腔内注射には26ゲージ針を用いる。インスリン及び/又はHEVNPを0.9%生理食塩水に溶解する。経口のインスリン処方が粘膜を介して吸収されると、期待される血糖値の減少が達成される。
【0103】
加えて、8~10匹の糖尿病性疾患モデルのイヌが、「患者」としてグルコースモニタリング測定のための試験を受けた。
【0104】
VI.封入された積載物を追跡するための動物全体の撮像
シアニン5.5(Cy5.5)で標識されたHEVNPを用いたインビボでのマウスの光学的撮像は、Chenらの“Chemically activatable viral capsid functionalized for cancer targeting.” Nanomedicine 11,no.4(2016):377-390で以前に実証されており、ここでは、乳癌標的化分子(LXY30)が、改変されたシステインアーム及び露出したリシン残基に連結されたCy5.5に結合された。動物全体の撮像により、LXY30を有するHEVNPが腫瘍部位に集積することになることが実証された。ここでは、インスリンを封入したHEVNPの表面が、Cy5.5 NHSエステル(ルミプローブ)と300:1(Cy5.5:HEVNP)のモル比で、0.01MのPBS(pH7.2)を含む緩衝液中で室温にて2時間、続いて4℃で一晩のインキュベートにより改変される。次に、遊離のCy5.5 NHSエステルは、7000MWCOの脱塩カラム(Zeba Spin脱塩カラム、Thermo Scientific社)により除去される。Cy5.5は682nmで励起極大を、702nmで発光極大を、及び250,000cm-1M-1のモル吸光係数を有する。
【0105】
次に、HEVNP-インスリンの分布を追跡するため、光学的撮像用のIVISスペクトル(約20μm~5mmの分解能)及び高解像CT用のMicroXCT-200(約1~20μmの分解能)を用いて動物全体の撮像を行う。経口のインスリン送達経路は、胃を通過した後、胃腸管の粘膜内層を通り、肝門静脈を経由して肝臓へ向かう。したがって、ナノ粒子がインスリンを放出する肝臓に集積する。
【0106】
VII.電子顕微鏡法により説明される分子の特徴
細胞レベルでのHEVNP分布を研究するため、高圧凍結法及び凍結固定を用いて包埋した組織の肝臓の生検を行う。抽出組織はホルムアルデヒドで弱く固定された後、試料ホルダーに置かれる。次に凍結された組織は、樹脂ブロック内で固定され、ウルトラミクロトームを用いて薄片化され、透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて検査される。HEVNPは金原子クラスター又は10nmのフェライト酸化物粒子のいずれかによってコントラストを加えることにより確認される。電子密度の高いHEVNP粒子は、TEMによりID付けされるのに十分なコントラストを与える。
【0107】
高圧凍結及びTEM調製により、例えば、Paavolainenらの“Compensation of missing wedge effects with sequential statistical reconstruction in electron tomography.” PloS one 9,no.10(2014):e108978、Soonsawadらの“Permeability changes of integrin-containing multivesicular structures triggered by picornavirus entry.” PloS one 9,no.10(2014):e108948、及びSoonsawadらの“Structural evidence of glycoprotein assembly in cellular membrane compartments prior to Alphavirus budding.”
Journal of virology 84,no.21(2010):11145-11151に記載されるように、JEM2100F電子顕微鏡を用いて、細胞レベルの超微細構造の高解像3D画像を得ることができる。
【0108】
本出願で引用される、GenBankの受入番号を含む、全ての特許、特許出願、及び他の出版物は、その全体があらゆる目的のため参照により取り込まれる。
【0109】
参照
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