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  • 特開-導電性ペーストおよびその利用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125312
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】導電性ペーストおよびその利用
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240910BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240910BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20240910BHJP
   B22F 1/06 20220101ALI20240910BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20240910BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20240910BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240910BHJP
   C09D 161/04 20060101ALI20240910BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01B1/22 A
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/102
B22F1/06
B22F3/02 M
C09D5/24
C09D7/62
C09D161/04
H05K1/09 D
C08K3/08
C08L61/04
C08K5/09
C08K9/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092328
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2021012250の分割
【原出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】深谷 周平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 高啓
(57)【要約】
【課題】導電性に優れた導電膜を形成することができる導電性ペーストを提供する。
【解決手段】ここに開示される導電性ペーストは、導電性粉末と、バインダ樹脂と、有機溶剤と、酸化抑制剤と、を含む。上記導電性粉末として、表面処理剤が表面に付着した導電性粒子を含んでいる。上記バインダ樹脂として、フェノール樹脂を含んでいる。上記酸化抑制剤は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸を主体として構成されている。上記酸化抑制剤は、全体の少なくとも0.05重量%含まれている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末と、
バインダ樹脂と、
酸化抑制剤と、
有機溶剤と、
を含む導電性ペーストであって、
前記導電性粉末として、表面処理剤が表面に付着した導電性粒子を含んでおり、
前記バインダ樹脂として、フェノール樹脂を含んでおり、
前記酸化抑制剤は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸を主体として構成されており、
前記酸化抑制剤は、全体の少なくとも0.05重量%含まれている、導電性ペースト。
【請求項2】
前記表面処理剤は、カルボン酸、アミン、およびベンゾトリアゾール類からなる群から選択される少なくとも1種の化合物で構成されている、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性粉末は、銀粒子または銅粒子を主体として構成されている、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記導電性粉末は、アスペクト比が1.5以下の導電性粒子を主体として構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
基板に配線パターンを形成するために用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
導電膜を製造する方法であって、
基板と、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性ペーストとを用意すること;
前記基板に前記導電性ペーストを塗布して、該導電性ペーストからなる塗膜を形成すること;および、
前記基板と前記塗膜とを加熱して、前記塗膜に含まれる前記フェノール樹脂を硬化すること、
を包含する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストおよびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器用の電子素子においては、導電性材料からなる粉末を絶縁性基板に印刷し、配線パターンを形成する技術が広く採用されている。配線パターンを形成するための導電性粉末は、一般に、バインダ樹脂とともに分散媒に分散された導電性ペーストの形態で印刷に供される。このような導電性ペーストは、基板の上に所望の形状を形成するように付与されて、該導電性ペーストからなる塗膜が形成される。そして、典型的には、基板と塗膜とに熱処理が施され、基板上に導電膜(即ち、配線パターン等)が形成される。
【0003】
特許文献1~5に記載される技術のように、バインダ樹脂として、熱硬化性樹脂が使用されることがある。この場合、上記塗膜(即ち、導電性ペースト)に含まれる熱硬化性樹脂を硬化することによって、導電膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-264302号公報
【特許文献2】特許第6089175号公報
【特許文献3】特許第5880441号公報
【特許文献4】特開2015-133182号公報
【特許文献5】特許第5439995号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記のように導電膜を形成する場合、導電性粉末を構成する導電性粒子の表面が酸化されると、酸化皮膜が形成し、導電膜の導電性を低下させる虞がある。そのため、特許文献1~5では、導電性粒子の表面酸化を抑制するための方法が種々提案されている。そして、近年では、電子部品を高性能化する要求が高まっており、これにともなって、より高い導電性を有する導電膜を形成することが求められている。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電性がより高い導電膜を形成できる導電性ペーストを提供することにある。
【0007】
ここに開示される導電性ペーストは、導電性粉末と、バインダ樹脂と、有機溶剤と、酸化抑制剤と、を含む。上記導電性粉末として、表面処理剤が表面に付着した導電性粒子を含んでいる。上記バインダ樹脂として、フェノール樹脂を含んでいる。上記酸化抑制剤は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸を主体として構成されている。上記酸化抑制剤は、全体の少なくとも0.05重量%含まれている。かかる構成の導電性ペーストでは、上記酸化抑制剤を含むことによって、導電性粉末を構成する導電性粒子の表面酸化を抑制し、導電膜の導電性を向上させることができる。
【0008】
ここで開示される導電性ペーストの好ましい一態様では、上記表面処理剤は、カルボン酸、アミン、およびベンゾトリアゾール類からなる群から選択される少なくとも1種の化合物で構成されている。かかる構成の表面処理剤が付着した導電性粒子を含む導電性ペーストを使用すると、導電性が向上された導電膜を得ることができる。また、上記効果に加えて、導電性粒子の分散性を向上させることができる。
【0009】
他の好ましい一態様では、上記導電性粉末は、銀粒子または銅粒子を主体として構成されている。かかる構成によると、導電性が向上された銀粒子または銅粒子を含む導電膜を得ることができる。
【0010】
他の好ましい一態様では、上記導電性粉末は、アスペクト比が1.5以下の導電性粒子を主体として構成されている。かかる構成によると、導電膜の導電性をより向上させることができる。
【0011】
他の好ましい一態様では、上記導電性ペーストは、基板に配線パターンを形成するために用いられる。上記導電性ペーストを用いることによって、導電性が向上された配線パターンを得ることができ、電子部品の高性能化を実現し得る。
【0012】
ここで開示される技術によると、導電膜を製造する方法が提供される。当該製造方法では、基板と、上記導電性ペーストとを用意すること、上記基板に上記導電性ペーストを塗布すること、および、上記基板に塗布された状態の上記導電性ペーストを加熱して、上記導電性ペーストに含まれる上記フェノール樹脂を硬化すること、を包含する。ここで開示される導電性ペーストを用いることによって、高い導電性を有する導電膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る配線基板を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、導電性ペーストの構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、導電性ペーストの調製方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
なお、以下の説明では、導電性ペーストを基材上に付与して、導電性ペーストに含まれるバインダ樹脂の熱分解温度以下の温度で(例えば300℃以下で)熱処理(即ち、バインダ樹脂の熱硬化)を行った未焼成の膜状体を、「導電膜」という。また、導電膜は、配線(線状体)、配線パターン、ベタパターン、を包含する。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下を意味し、Aを上回り、かつ、Bを下回る範囲を包含する。また、本明細書において「Aを主体とする」は、少なくとも90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99%重量%以上、あるいは100重量%のAを含むことをいう。
【0016】
<導電性ペースト>
ここで開示される導電性ペーストは、該導電性ペーストに含まれるバインダ樹脂(後述)を硬化させることによって導電膜を形成することができるように構成されている。ここで開示される導電性ペーストは、導電性粉末(A)と、バインダ樹脂(B)と、酸化抑制剤(C)と、有機溶剤(D)と、を含む。なお、本明細書において「ペースト」とは、組成物、インク、スラリー、サスペンション等を包含する用語である。以下、各成分について順に説明する。
【0017】
(A)導電性粉末
導電性粉末は、典型的には、粉末状の導電性材料であり、導電性粒子で構成されている。導電性粉末は、得られる導電膜に電気伝導性を付与する成分である。導電性粒子は、典型的には金属製である。その構成材料は、一般的に使用される各種の金属製導電性粒子の構成材料の中から、用途等に応じて1種または2種以上が適宜選択され得る。上記金属としては、具体的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)等の金属の単体、およびこれら金属を含む合金が例示される。
【0018】
上記合金としては、例えば、銀-パラジウム(Ag-Pd)合金、銀-白金(Ag-Pt)合金、銀-銅(Ag-Cu)合金、銅-ニッケル(Cu-Ni)合金、銅―マンガン(Cu-Mn)合金、銅―スズ(Cu-Sn)合金、銅―亜鉛(Cu-Zn)合金、銅―アルミニウム(Cu-Al)合金等が挙げられる。
【0019】
ハンドリング性、コスト、および電気伝導性の観点から、導電性粉末は、銀粒子または銅粒子を主体として構成されていることが好ましい。ここで、「銀粒子」とは、銀(Ag)を含む粒子全般を意味しており、その例として、銀(Ag)の単体からなる粒子、銀を含む合金からなる粒子、およびコア粒子の表面に銀を含むコート層を備える銀コート粒子が挙げられる。銀コート粒子は、銀の単体または銀を含む合金で構成された粒子を表面に備えるコアシェル粒子を含む。「銅粒子」とは、銅(Cu)を含む粉末全般を意味しており、その例として、銅(Cu)の単体からなる粒子、銅を含む合金からなる粒子、およびコア粒子の表面に銅を含むコート層を備える銅コート粒子が挙げられる。銅コート粒子は、銅の単体または銅を含む合金で構成された粒子を表面に備えるコアシェル粒子を含む。
【0020】
上述したなかでも、銅粒子は、従来から表面が酸化されやすく、導電膜の導電性が低下しやすいことが知られている。本発明の効果は、銅粒子を主体として構成される導電性粉末を使用する際に、特に好ましく実現され得る。
【0021】
導電性粒子の性状、例えばサイズや形状等は、所望の導電膜の断面における最小寸法(典型的には、導電膜の厚みおよび/または幅)に収まる限りにおいて、特に限定されない。導電性粒子の平均粒子径は、概ね数十nm~数十μm程度、例えば1μm~10μmとすることができる。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒径(D50粒径ともいう。)をいう。
【0022】
特に限定するものではないが、導電性粒子の平均アスペクト比は、1~100程度であり得る。平均アスペクト比は、導電性粒子をSEMで観察し、得られた観察画像から複数(例えば10~300個)の粒子を無作為に選択し、各粒子における長径と短径とに基づいてアスペクト比(長径と短径との比)を算出し、その算術平均値を得ることによって得ることができる。
【0023】
導電性粒子は、球状あるいは非球状であってよい。「球状」とは、概ね球体(ボール)とみなせる形状をいい、楕円状、多角体状、円盤球状等をも含む。球状粒子の平均アスペクト比は、1.5以下であり、1.4以下でもよく、1.3以下でもよく、1.2以下でもよい。「非球状」とは、平均アスペクト比が1.5超過(例えば、1.6以上、あるいは1.7以上)であることをいい、板状、鱗片状、フレーク状、不定形状等の形状を含む。なお、アスペクト比の上限値は、特に限定するものではないが、例えば50以下、20以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2.5以下、あるいは2以下とすることができる。
【0024】
導電性粉末には、球形の粒子と非球形の粒子とが混合されていてもよい。導電膜の導電性を向上させる観点から、導電性粉末には、球状粒子が、非球状粒子よりも多く含まれることが好ましい。導電性粉末に含まれる球状粒子の含有量は、該導電性粉末全体を100重量%としたときに、例えば、50重量%超過であり、60重量%以上であってよく、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
導電性粉末は、表面処理剤が表面に付着した導電性粒子(A1)を含む。表面処理剤は、導電性粒子の表面に付着されることによって、導電性粒子の表面酸化を抑制させたり、分散媒中における導電性粒子の分散性を向上させたりすることができる。表面処理剤としては、この種の導電性ペーストで典型的に用いられる表面処理剤を特に制限なく使用することができる。その好適例として、種々のカルボン酸、アミン、ベンゾトリアゾール類が挙げられる。表面処理剤は、カルボン酸、アミン、およびベンゾトリアゾール類からなる群から選択される少なくとも1種の化合物で構成されることが好ましい。
【0026】
カルボン酸は、モノカルボン酸およびジカルボン酸のいずれであってもよい。カルボン酸が炭化水素基を有する場合(例えば脂肪酸である場合)、カルボン酸の炭化水素基に含まれる炭素数は、例えば4以上であり、導電性粒子の表面酸化を抑制する観点、および、分散媒中における導電性粒子の分散性を向上させる観点から、10以上とすることが好ましく、15以上であってよい。導電性ペーストの粘度を過度に上昇させない観点から、上記炭素数は、30以下であってよく、26以下であってよく、あるいは22以下であってよく、例えば20以下であることが好ましく、例えば18以下としてもよい。あるいは、ポリカルボン酸を表面処理剤として用いてもよい。表面処理剤としてのカルボン酸が表面に付着した導電性粒子は、市販品であってもよく、カルボン酸またはカルボン酸塩と、金属粉末(即ち、導電性粒子)とを、液相中で反応させることによって作製してもよい。カルボン酸またはカルボン酸塩は、1種あるいは2種以上であってよい。
【0027】
カルボン酸の具体例としては、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、へプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸(飽和脂肪酸);シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等のジカルボン酸または飽和脂肪族ジカルボン酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、アラキドン酸、ネルボン酸、等の不飽和脂肪族モノカルボン酸(不飽和脂肪酸);フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸、トリマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フェニル酪酸、フェノキシ酢酸、アスコルビン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸や、それらのアルキル置換体、アルケニル置換体;酸無水物;等が挙げられる。表面処理剤としてのカルボン酸塩は、例えば、上記カルボン酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)である。
【0028】
アミンは、脂肪族アミンであることが好ましい。アミンの一分子内に含まれる炭素原子の総数は、導電性粒子の表面酸化を抑制する観点、および、分散媒中における導電性粒子の分散性を向上させる観点から、5以上とすることが好ましく、10以上であってよく、15以上であってよい。導電性ペーストの粘度を過度に上昇させない観点から、上記炭素の総数は、例えば30以下であることが好ましく、26以下であってよく、あるいは24以下であってよく、20以下であってよい。あるいは、ポリアミンを表面処理剤として用いてもよい。表面処理剤としてのアミンが表面に付着した導電性粒子は、市販品であってもよく、アミンと、金属粉末(即ち、導電性粒子)とを、液相中で反応させることによって作製してもよい。アミンは、1種あるいは2種以上であってよい。
【0029】
アミンの具体例としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン(ラウリルアミン)、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン等の第1級アミン;ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン等の第2級アミン;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン等の第3級アミン、等が挙げられる。
【0030】
ベンゾトリアゾール類としては、導電性粒子の表面酸化を抑制する観点、および、分散媒中における導電性粒子の分散性を向上させる観点から、後述の化合物を好ましく用いることができる。表面処理剤としてのベンゾトリアゾール類が表面に付着した導電性粒子は、市販品であってもよく、ベンゾトリアゾール類と、金属粉末(即ち、導電性粒子)とを、液相中で反応させることによって作製してもよい。ベンゾトリアゾール類は、1種あるいは2種以上であってよい。
【0031】
ベンゾトリアゾール類の具体例としては、1H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0032】
特に限定されるものではないが、表面処理剤の付着量は、導電性粉末100重量部に対して、概ね0.01~3重量部、例えば0.01~1重量部程度とすることができる。
【0033】
上記酸化抑制効果や上記分散向上効果をよりよく実現させる観点から、導電性粒子(A1)の含有量は、導電性粉末全体の、例えば60重量%以上とすることができ、70重量%以上であるとよく、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上(例えば98重量%以上、あるいは100重量%)がさらに好ましい。導電性粉末は、本発明の効果を実現し得る限り、表面処理剤が表面に付着していない導電性粒子(A2)を含んでよい。
【0034】
導電性粉末の含有量は、特に限定されないが、例えば、導電性ペースト全体の40重量%以上、典型的には50重量%~95重量%、例えば60重量%~90重量%、75重量%~85重量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、導電性膜の緻密性や導電性を向上させることができる。また、導電性ペーストのハンドリング性や、成膜時の作業性を向上することができる。
【0035】
(B)バインダ樹脂
バインダ樹脂は、導電膜において導電性粒子同士を結着させる機能を有する成分である。また、バインダ樹脂は、導電膜と基材との接着を実現し、導電膜に耐久性を付与することができる。ここで開示される導電性ペーストを用いて作製される導電膜は、バインダ樹脂の熱硬化によって形成されるため、バインダ樹脂の性状は、導電膜においても維持され得る。導電性ペーストを用いた印刷(即ち、配線の形成)を容易とする観点等から、バインダ樹脂は、常温(25℃)において、後述する有機溶剤中に均質に溶解しているとよい。即ち、導電性ペーストを保管する際、バインダ樹脂の溶け残りが目視で確認されず、バインダ樹脂と有機溶剤とが、均質な相の混合物であることが好ましい。常温での有機溶剤への溶解性を向上させる観点から、バインダ樹脂は、常温で液状であることが好ましい。
【0036】
ここで開示される導電性ペーストでは、バインダ樹脂として、フェノール樹脂(B1)を含む。フェノール樹脂を含むことによって、導電膜の導電性を向上させることができる。特に限定するものではないが、フェノール樹脂の含有によって、導電性ペーストや導電膜における導電性粒子の表面酸化を抑制できるためと考えられる。フェノール樹脂(B1)としては、この種の導電性ペーストで使用されるフェノール樹脂を、特に制限なく使用することができる。フェノール樹脂(B1)の重量平均分子量は、導電膜の緻密性の観点から、300以上、500以上、1000以上、または2000以上とするとよく、有機溶剤への溶解性の観点から、30000以下、20000以下、10000以下、または5000以下とするとよい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定した値をスチレン換算して求めることができる。あるいは、メーカー等の公称値を参照してもよい。
【0037】
導電膜の緻密性や基材への接着性を向上させる観点から、また、熱硬化による導電膜の収縮を抑制する観点から、フェノール樹脂(B1)として、レゾールタイプのフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂)を使用することが好ましい。また、フェノール樹脂(B1)は、繰り返し単位の中にフェノール性水酸基を有する化合物を含んでよい。上記フェノール性水酸基を有する化合物を含むフェノール樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。あるいは、フェノール樹脂(B1)として、フェノール変性キシレン樹脂を使用することができる。
【0038】
ここで開示される導電性ペーストは、上記のとおり、フェノール樹脂(B1)の含有を必須としている。ただし、ここで開示される導電性ペーストは、本発明の効果を実現し得る限り、他のバインダ樹脂(B2)を含んでよい。他のバインダ樹脂(B2)としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等の1種または2種以上であり得る。
【0039】
導電膜の導電性を向上させる観点から、当該導電性ペーストに含まれるバインダ樹脂(B)の合計を100重量%とすると、フェノール樹脂(B1)の含有量は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。上記含有量は、上限値100重量%に近いほどよく、95重量%以上、あるいは98重量%以上とすることができる。導電性ペーストが他のバインダ樹脂(B2)を含む場合、他のバインダ樹脂(B2)の含有量は、バインダ樹脂(B)全体の30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下(例えば、5重量%以下、あるいは2重量%以下)であることがさらに好ましい。
【0040】
バインダ樹脂の含有量は、特に限定されないが、導電膜に対する外部からの振動や熱衝撃を緩衝する観点から、導電性ペースト全体の3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましい。一方、導電性粉末間に存在するバインダ樹脂によって抵抗大きくなることを防ぐ観点から、上記含有量は、30重量%以下であるとよく、25重量%以下が好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0041】
この種の導電性ペーストでは、従来から、種々の表面処理剤を用いて、導電性粒子の表面処理を行うことがあった。かかる表面処理を行うと、上記のとおり、導電性粒子の表面の少なくとも一部に、表面処理剤を含む被覆物を形成することができる。これにより、導電性粒子の表面に酸化皮膜が形成されるのを抑制することができる。しかし、上記表面処理のみでは、一旦酸化された部分を還元して、導電膜の導電性を向上させることが不十分な場合があった。本発明者らの鋭意検討の結果、導電性ペーストに特定種類の化合物を酸化抑制として含有させることによって、導電膜の導電性を顕著に向上できることがわかった。
【0042】
(C)酸化抑制剤
上記のとおり、ここで開示される導電性ペーストは、酸化抑制剤を含む。酸化抑制剤は、導電性ペースト中において、導電性粒子の表面酸化を抑制する機能を有する成分であり、好適例としてギ酸、酢酸、およびプロピオン酸が挙げられる。酸化抑制剤は、これらのカルボン酸のうちの1種類で構成されてよく、2種類以上がブレンドされてもよい。酸化抑制剤が2種類以上の混合物で構成される場合、その混合比は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0043】
酸化抑制剤(C)の含有量は、例えば、導電性ペースト全体の3重量%以下、2重量%以下、あるいは1重量%以下とすることができる。また、導電膜の導電性向上効果をよりよく実現する観点から、0.15重量%以上とすることが好ましく、0.2重量%以上であってよく、0.4重量%以上であってよく、0.6重量%以上であってよく、0.8重量%以下とすることができ、0.6重量%以下、あるいは0.4重量%以下とすることができる。
【0044】
(D)有機溶剤
有機溶剤は、上記(A)~(C)の成分を分散または溶解させて、導電性ペーストの粘度やチキソ性を調整することにより、塗工性やハンドリング性を向上する成分である。有機溶剤の種類は特に限定されず、この種の導電性ペーストを作製するために使用される従来公知の有機溶剤を適宜選択することができる。例えば、導電性粒子の分散性を向上させる観点から、バインダ樹脂(B)(特に、フェノール樹脂(B1))を溶解できる有機溶剤を使用するとよい。また、導電膜の作製過程における熱処理(100℃~300℃)によって容易に除去される有機溶剤を使用することが好ましい。
【0045】
特に限定されるものではないが、有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテートプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアセテート系溶剤;イソホロン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルプロピオネート、ベンジルアルコール、1-フェノキシ-2-プロパノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール系溶剤;エステル系溶剤;等が例示される。なかでも、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤を含むことが好ましい。
【0046】
有機溶剤(D)の含有量は特に限定されないが、導電性ペースト全体から導電性粉末(A)、バインダ樹脂(B)、および酸化抑制剤(C)を除いた残部とすることができる。即ち、上記含有量は、例えば、導電性ペースト全体の30重量%以下であり、製造時の加熱処理で容易に除去させる観点から、20重量%以下とするとよく、15重量%以下とすることができる。導電性ペーストに適度な流動性を付与する観点から、上記含有量は、5重量%以上とするとよく、7重量%以上、あるいは9重量%以上とすることができる。
【0047】
(E)任意の添加成分
ここで開示される導電性ペーストは、上記(A)~(D)の成分のみで構成されていてもよく、本発明の効果を実現し得る限り、上記(A)~(D)の成分に加えて、必要に応じて種々の添加成分を含んでいてもよい。任意の添加成分としては、一般的な導電性ペーストに使用し得ることが知られているものの1種または2種以上を適宜用いることができる。任意の添加成分としては、硬化剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、ゲル化防止剤、可塑剤、安定化剤、酸化防止剤(ただし、上記酸化抑制剤(C)を除く。)、防腐剤、着色剤(顔料、染料)、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)等が例示される。なお、上記硬化剤は、バインダ樹脂(B)と反応して架橋構造を形成し得る成分である。上記酸化防止剤としては、従来公知の酸化防止剤の他、下記実施例で使用した各種カルボン酸を使用することができる。
【0048】
ここで開示される導電性ペーストが任意の添加成分(E)を含む場合、特に限定するものではないが、その含有量は、例えば、該導電性ペースト全体の5重量%以下であり、3重量%以下とするとよく、1重量%以下とすることができる。
【0049】
ここで開示される導電性ペーストは、上述した種々の材料を所定の含有割合となるよう秤量し、均質に撹拌混合することで調製し得る。材料の撹拌混合は、従来公知の種々の撹拌混合装置、例えばロールミル、マグネチックスターラー、プラネタリーミキサー、ディスパー等を用いて行うことができる。
【0050】
<導電性ペーストの用途>
ここに開示される導電性ペーストによれば、任意の基材上に導電性に優れた導電膜を形成することができる。そのため、当該導電性ペーストは、例えば基板に配線パターンや導電回路を形成するために好ましく用いられる。また、電子部品を接合したり、電子部品を基板に実装したりするために使用することができる。
【0051】
<導電膜付き基板>
図1は、導電膜付き基板10の模式的な断面図である。導電膜付き基板10は、基板12と、基板12上に形成された導電膜14と、を備えている。導電膜付き基板10は、例えば、配線基板である。基板12は、例えば、種々のセラミック基板、樹脂基板(ポリイミド基板、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル基板、エポキシ樹脂基板等)、ガラス基板等であり得る。基板12の一部または全部の表面には、例えば、導電層、絶縁性保護層、反射防止層、光学調整層、防湿層、等の下地層(コート層)が形成されていてもよい。
【0052】
導電膜14は、フェノール樹脂(B1)の熱硬化によって形成された、未焼成の樹脂硬化物で構成されている。導電膜14は、予め定められたパターンで形成されている。図1においては、基板12の一方の表面に、所定の間隔で独立した複数の導電膜14が形成されている。導電膜14は、図1に示すように基板12の片面のみに備えられていてもよく、基板12の両面に備えられていてもよい。導電膜14は、基板12の一部のみに備えられていてもよいし、あるいは、基板12の全面にわたって備えられていてもよい。導電膜14では、体積抵抗率が低減され良導電性が実現されている。例えば、下記実施例に示されるように、150℃で30分乾燥した後の体積抵抗率が、例えば500μΩ・cm以下、好ましくは200μΩ・cm以下、より好ましくは150μΩ・cm以下、さらに好ましくは100μΩ・cm以下、75μΩ・cm以下であり得る。
【0053】
導電膜付き基板10は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、電子ペーパー、デジタルビデオカメラ等の携帯型電子機器に搭載されるフレキシブルデバイス、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電子部品として好適に用いることができる。なお、「携帯型」とは、個人(典型的には成人)が容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味する。
【0054】
<導電膜の製造方法>
ここで開示される導電性ペーストを用いて導電膜を製造する方法(即ち、導電膜付き基板を製造する方法)は、基板および上記導電性ペーストを用意すること;基板に導電性ペーストを塗布して、該導電性ペーストからなる塗膜を形成すること;および、基板と塗膜とを加熱して、塗膜に含まれるフェノール樹脂を硬化すること、を包含する。
【0055】
導電性ペーストを基板に塗布する方法(即ち、基板上に上記塗膜を形成する方法)は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、バーコーター、ドクターブレード、スリットコーター、グラビアコーター、ディップコーター、スプレーコーター、ディスペンサー等を用いて行うことができる。この際、塗膜の厚みは、(例えば0.01~10mm、0.1~1μmであり得る。
【0056】
次いで、上記塗膜を加熱する。加熱温度は、塗膜に含まれるフェノール樹脂が硬化する温度であって、基板を損傷させず、有機溶剤を除去できる温度に設定することが好ましい。加熱温度は、例えば300℃以下であり、250℃以下に設定することが好ましく、200℃以下がより好ましく、または、175℃以下もしくは150℃以下とすることができる。加熱時間は、特に限定されないが、15分~数時間程度とすることができる。これにより、基板上に導電膜が形成される。なお、導電膜を形成する際の周囲は、空気中であってもよく、酸素が少ない雰囲気、例えば窒素雰囲気等であってもよい。熱処理時の設備を単純化、あるいは安価とする観点から、空気中で導電膜を形成することが好ましい。
【実施例0057】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を下記実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、下記実施例において、特に断りがない場合、「%」は重量基準である。
【0058】
<1.熱硬化性樹脂の検討>
[導電性ペースト]
<例1>
導電性粉末としてのCu粉Aと、バインダ樹脂としてのフェノール樹脂(レヂトップPL-5208(群栄化学工業))と、酸化抑制剤としてのギ酸と、有機溶剤としてのジエチレングリコールモノエチルエーテルとを混合し、例1に係る導電性ペーストを作製した。ここで、導電性ペースト全体を100%とすると、導電性粉末の含有量は80%であり、バインダ樹脂の含有量は9%であり、ギ酸の含有量は0.5%であり、有機溶剤の含有量は10.5%であった。Cu粉Aとして、アトマイズ法で作製したCu粒子をフレーク状に成形したものを用いた。Cu粉Aを構成するフレーク状粒子のアスペクト比は、1.8であり、平均粒子径は3μmであった。また、上記フレーク状銅粒子の表面には、表面処理剤として、ステアリン酸が付着していた。
<例2>
導電性粉末としてCu粉Bを使用したこと以外は例1と同様にして、例2に係る導電性ペーストを作製した。Cu粉Bは、湿式球状粉であり、アスペクト比が1.2、平均粒子径が4μmであった。Cu粉Bを構成する銅粒子の表面には、表面処理剤として、オレイン酸が付着していた。
<例3>
ギ酸を含ませなかったこと以外は例1と同様にして、例3に係る導電性ペーストを作製した。
<例4>
ギ酸を含ませなかったこと以外は例2と同様にして、例4に係る導電性ペーストを作製した。
<例5>
導電性粉末としてCu粉Cを使用したこと以外は例1と同様にして、例5に係る導電性ペーストを作製した。Cu粉Cは、アトマイズ法で作製した球状銅粒子を主体として構成されており、アスペクト比が1.3、平均粒子径が2μmであった。Cu粉Cを構成する銅粒子の表面には、表面処理剤は付着していなかった。
<例6>
バインダ樹脂としてエポキシ樹脂(JER1007(三菱ケミカル))を使用したこと以外は例1と同様にして、例6に係る導電性ペーストを調製した。
【0059】
[導電膜]
例1~6に係る導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷法により、ガラス製の基板の表面に20μm程度の厚みで2cm×2cmの正方形状のパターンに付与(塗工)し、上記導電性ペーストからなる塗膜を得た。そして、上記基板および上記塗膜を150℃で30分間加熱し、樹脂を硬化することによって、基板上にそれぞれの例に係る導電膜を形成した。
【0060】
[比抵抗(体積抵抗率)]
上記のとおり形成した導電膜について、表面抵抗率を、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計(型式:ロレスタGP MCP-T610)を用いて、4探針法で測定した。また、導電膜の膜厚を、表面粗さ計(株式会社東京精密製のサーフコム)で測定した。そして、表面抵抗率に膜厚をかけあわせることで、比抵抗(体積抵抗率)(μΩ・cm)を算出した。結果を表1の「比抵抗」欄に示す。なお、例5,6については、導電膜の比抵抗が上記抵抗率計の測定許容範囲を上回っており、比抵抗を測定できなかった(overflow level)。表1の該当欄には、「OL」と示している。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示されるように、例1および例2と、例3および例4とを比較すると、酸化抑制剤(ギ酸)の含有によって、導電膜の比抵抗が著しく減少することが確認された。また、例1と例6とを比較すると、バインダ樹脂としてフェノール樹脂を含ませることによって、導電膜の比抵抗が著しく減少することが確認された。さらに、例1~4と例5とを比較すると、導電性粉末として、表面処理剤が表面に付着した銅粒子を含ませることによって、導電膜の比抵抗が著しく減少することが確認された。
【0063】
<2.酸化抑制剤の含有量の検討>
[導電性ペースト]
<例7~12>
ギ酸の含有量を表2の該当欄に示す含有量としたこと以外は例2と同様にして、例7~12に係る導電性ペーストを作製した。なお、表中の記載は省略しているが、有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)の含有量は、導電性ペースト全体が100%となるように設定した。
【0064】
[導電膜]
例7~12に係る導電性ペーストを用いて、上記試験例1.と同様の材料および手順を用いて、それぞれの例に係る導電膜を形成した。
【0065】
[比抵抗(体積抵抗率)]
上記のとおり形成した導電膜の比抵抗(体積抵抗率)(μΩ・cm)を、上記試験例1.と同様の材料および手順を用いて算出した。結果を表2の「比抵抗」欄に示す。なお、表2には、測定結果の比較の参考とするため、例2および例4のデータを併記している。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示されるように、導電性ペーストに含まれるギ酸の含有量を0.05%以上とすることによって、導電膜の比抵抗が著しく減少することが確認された。また、導電性ペーストに含まれるギ酸の含有量が0.175%以上0.75%以下であるときに、より効果的な比抵抗低減効果が得られることがわかった。
【0068】
<3.酸化抑制剤の種類の検討>
[導電性ペースト]
<例13~18>
導電性ペーストに含ませる酸化抑制剤として、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、マロン酸、およびクエン酸を用意した。酸化抑制剤の種類を表3の該当欄に示すものとしたこと以外は例2と同様にして、例13~18に係る導電性ペーストを作製した。
【0069】
[導電膜]
例13~18に係る導電性ペーストを用いて、上記試験例1.と同様の材料および手順を用いて、それぞれの例に係る導電膜を形成した。
【0070】
[比抵抗(体積抵抗率)]
上記のとおり形成した導電膜の比抵抗(体積抵抗率)(μΩ・cm)を、上記試験例1.と同様の材料および手順を用いて算出した。結果を表3の「比抵抗」欄に示す。なお、表3には、測定結果の比較の参考とするため、例2および例4のデータを併記している。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示されるように、例13~18によると、導電性ペーストに種々の酸化抑制剤を含ませることによって、導電膜の比抵抗が減少することが確認された。また、導電性ペーストに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸のいずれか少なくとも一つを含ませることによって、より効果的な比抵抗低減効果が得られることがわかった。
【0073】
<4.導電性粉末の種類の検討>
[導電性ペースト]
<例19>
導電性粉末として、Ag粉を用いたこと以外は例1と同様にして、例19に係る導電性ペーストを作製した。なお、上記Ag粉は、アスペクト比が1.1、平均粒子径が2μmであった。上記Ag粉を構成する銀粒子の表面には、表面処理剤として、ステアリン酸が付着していた。
<例20>
導電性粉末として、例19で使用されたAg粉を用いたこと以外は例3と同様にして、例20に係る導電性ペーストを作製した。
【0074】
[導電膜]
例19,20に係る導電性ペーストを用いて、上記試験例1.と同様の材料および手順を用いて、それぞれの例に係る導電膜を形成した。
【0075】
[比抵抗(体積抵抗率)]
上記のとおり形成した導電膜の比抵抗(体積抵抗率)(μΩ・cm)を、上記試験例1.と同様の材料および手順を用いて算出した。結果を表4の「比抵抗」欄に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
表4に示されるように、例19および例20の結果から、導電性粉末としてAg粉を使用した場合であっても、本発明の効果(比抵抗低減効果)が得られることが確認された。
【0078】
以上のことから、導電性粉末と、バインダ樹脂と、有機溶剤と、酸化抑制剤とを含む導電性ペーストにおいて、導電性粉末として、表面処理剤が表面に付着した導電性粒子を含んでおり、バインダ樹脂として、フェノール樹脂を含んでおり、酸化抑制剤は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸を主体として構成されており、該酸化抑制剤は、全体の少なくとも0.05%含まれる導電性ペーストを用いると、導電膜の比抵抗を低減できると分かった。
【0079】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0080】
10 導電膜付き基板
12 基板
14 導電膜
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末と、
バインダ樹脂と、
酸化抑制剤と、
有機溶剤と、
を含む導電性ペーストであって、
前記導電性粉末として、表面処理剤が表面に付着した導電性粒子を含んでおり、
前記バインダ樹脂として、フェノール樹脂を含んでおり、
前記酸化抑制剤は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸を主体として構成されており、
前記酸化抑制剤は、全体の少なくとも0.05重量%含まれている、導電性ペースト。