(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125345
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】閉塞デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099257
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2022164527の分割
【原出願日】2015-04-29
(31)【優先権主張番号】61/986,369
(32)【優先日】2014-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/083,672
(32)【優先日】2014-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516326368
【氏名又は名称】シーラス エンドバスキュラー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,スティーブン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経血管系動脈瘤の動脈瘤処置及び/又は改善を、最小量の完全に回収可能、留置可能な材料の使用により提供する。
【解決手段】本明細書中に提供されるのは、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた薄型の弾性メッシュ本体と、を含み、本体が、送出形状と、動脈瘤壁に適合できる留置形状と、を有し、本体が、処置されるべき動脈瘤の直径よりも大きな直径を有する、嚢内植え込み及び/又は血管閉塞用の閉塞デバイスである。また、本明細書中に提供されるのは、本明細書中に開示される閉塞デバイスと、その送出用の手段と、を含むキットである。本明細書中に開示される閉塞デバイスの製造及び使用方法もまた開示される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈瘤における嚢内植え込み用の閉塞デバイスであって、
(a)近位端及び遠位端を有する中実のマーカと、
(b)前記中実のマーカの前記遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体と、を含み、
前記弾性メッシュ本体は、遊離ガス中において、前記弾性メッシュ本体の幅の10%~20%である高さを有する薄型形状を有し、
前記弾性メッシュ本体は、それ自体の上に周方向に折られて前記弾性メッシュ本体の外周の周りに周方向の折線を形成するメッシュの単一層を含むメッシュの二重層であり、
前記メッシュの二重層の全ての端は、前記メッシュの二重層の中心部に配置された前記中実のマーカと交差し、
前記動脈瘤に留置されたときに、前記弾性メッシュ本体は、前記動脈瘤の壁に適合し、前記動脈瘤の前記壁に対して平らな状態で面一に配置されるように構成されている、
閉塞デバイス。
【請求項2】
前記中実のマーカは、放射線不透過性マーカである、請求項1に記載の閉塞デバイス。
【請求項3】
前記中実のマーカは、中実のリングである、請求項1又は2に記載の閉塞デバイス。
【請求項4】
前記中実のマーカは、前記閉塞デバイスを送出デバイスに結合させるように構成された離脱接続部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の閉塞デバイス。
【請求項5】
前記中実のマーカは、前記閉塞デバイスを完全に回収することを提供するように構成された取付接続部である、請求項1から4のいずれか一項に記載の閉塞デバイス。
【請求項6】
前記弾性メッシュ本体は、遊離ガス中において、開放式の広がった構成を定義する、請求項1から5のいずれか一項に記載の閉塞デバイス。
【請求項7】
前記弾性メッシュ本体及び前記中実のマーカは、前記動脈瘤の頚部を封止するように構成された、請求項1から6のいずれか一項に記載の閉塞デバイス。
【請求項8】
前記折線は、前記閉塞デバイスの遠位端である、請求項1から7のいずれか一項に記載の閉塞デバイス。
【請求項9】
動脈瘤の処置用のキットであって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の閉塞デバイスと、
前記閉塞デバイスを前記動脈瘤に送出するように構成された送出デバイスと、を含む
キット。
【請求項10】
前記送出デバイスが、カテーテル、マイクロカテーテル、ガイドワイヤ又はプッシャワイヤからなる群から選択された少なくとも1つのデバイスを含む、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年4月30日に出願の米国特許仮出願第61/986,369号明細書及び2014年11月24日に出願の米国特許仮出願第61/083,672号明細書の優先権を主張する。これらの開示は参照によりその全体が本明細書中に援用される。加えて、本明細書中及び上記の参照出願で引用したすべての文書及び参照文献は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、全般的に、閉塞デバイス及び/又は閉塞デバイスシステム及び/又は植え込み型閉塞デバイスの分野、並びに動脈瘤の処置及び/又は改善のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤の処置及び/又は改善のための、改良された閉塞型デバイス及び/又はシステムの開発に対する多大な需要がある。この見解は、現在、動脈瘤処置分野における現在の閉塞デバイス及び/又はシステムの豊富さかつ広範さにより支持されている。しかしながら、特に神経血管系動脈瘤の動脈瘤処置及び/又は改善を、最小量の完全に回収可能、留置可能な材料を含む閉塞デバイスにより提供することに対する未対処の需要が依然として存在する。
【0004】
動脈瘤は動脈の拡張部が血圧により薄く伸ばされると形成することは知られている。動脈の脆弱化した部分は、漏出及び/又は破裂の危険性がある隆起又は球状領域を形成する。神経血管系動脈瘤が破裂すると、脳を取り囲む間隙であるくも膜下腔への出血を引き起こし、くも膜下出血の原因となる。破裂神経血管系動脈瘤によるくも膜下出血は、出血性脳卒中、脳損傷及び死に至る可能性がある。神経血管系動脈瘤を持つ全患者の約25パーセントがくも膜下出血に罹患する。神経血管系動脈瘤は人口の2~5パーセントに発症し、より一般的には、男性よりも女性に発症する。現在米国に在住の1800万人もが一生のうちに神経血管系動脈瘤を発症すると推定されている。毎年、米国内のくも膜下出血の発症数は30,000人を超えている。これら患者の10~15パーセントが病院に到着する前に死亡しており、50パーセント超が破裂後最初の30日以内に死亡している。助かった人のうち、約半数が何らかの永久的な神経障害を患う。
【0005】
喫煙、高血圧、外傷性頭部外傷、アルコール乱用、ホルモン不妊法の使用、脳動脈瘤の家族歴、並びにエーラースダンロス症候群(EDS)、多発性嚢胞腎疾患及びマルファン症候群などの他の遺伝性疾患が、神経血管系動脈瘤の一因となっている可能性がある。
【0006】
大部分の未破裂動脈瘤は無症候性である。未破裂動脈瘤を持つ人の一部は、以下の症状、すなわち、周辺視障害、思考又は処理障害、会話困難、知覚障害、態度の急な変化、平衡及び協調の喪失、集中力低下、短期記憶困難及び疲労、のいくつか又はすべてを経験する。破裂神経血管系動脈瘤の症状としては、悪心及び嘔吐、頚部硬直又は頚部痛、霧視又は複視、眼の上及び奥の痛み、瞳孔散大、光過敏、並びに感覚の喪失が挙げられる。時として「人生最悪の頭痛」と表現する患者は、破裂神経血管系動脈瘤の症状の1つを経験している。
【0007】
ほとんどの動脈瘤は破裂が起こるまで発見されないままである。しかしながら、動脈瘤は、日常的な健康診断又は他の健康問題の診断手順の最中に発見される場合がある。破裂脳動脈瘤の診断は、一般に、くも膜下出血の徴候をCTスキャン(コンピュータ断層撮影
法)で発見することにより行われる。CTスキャンが陰性ではあるものの、破裂動脈瘤がなお疑われる場合、脳及び脊髄を取り囲む脳脊髄液中の血液を検出するために、腰椎穿刺が実施される。
【0008】
動脈瘤の正確な位置、大きさ及び形状を特定するために、神経放射線科医は、脳血管造影法又は断層血管造影法のいずれかを使用する。従来の方法である脳血管造影法には、(通常、下肢の)動脈にカテーテルを導入し、それを体の血管内において、動脈瘤に関与する動脈まで進めることを伴う。造影剤と呼ばれる特殊な色素を患者の動脈内に注入し、その分布をX線投影で示す。この方法では、重なった構造又は攣縮が原因で一部の動脈瘤を検出しない場合がある。
【0009】
コンピュータ断層血管造影法(CTA)は、従来の方法の代替となるものであり、動脈カテーテル法を要することなく実施され得る。この検査では、通常のCTスキャンに、静脈内への造影剤色素の注入を組み合わせる。色素が静脈内に注入されると、色素は脳動脈へと移動し、CTスキャンを用いて像が形成される。これら像は、血液が脳動脈にどのように流れ込むかを正確に示す。新たな診断様式は、伝統的及び従来的両方の診断的研究を低侵襲性の画像化により補完するものと見込まれ、動脈瘤の病理に対するより正確な3次元の解剖学的情報を提供する可能性がある。より良好な画像化は、向上した低侵襲治療の発展との組み合わせにおいて、医師がますます、より多くの無症状の動脈瘤を、問題が生じる前に検出し、処置することが可能になる。
【0010】
動脈瘤を処置するいくつかの方法が試みられてきており、成功の程度は様々であった。例えば、開頭術は、動脈瘤が血管外で特定及び処置される手技である。この種の手技は大きな欠点を有する。例えば、動脈瘤に到達するために外科医が様々な組織を切断しなければならないことによって、患者は動脈瘤の領域に多大な外傷を被る。脳動脈瘤を血管外で処置するには、例えば、外科医は、一般に、患者の頭蓋の一部を取り外さなければならず、また、動脈瘤に到達するために脳組織を損傷しなければならない。このため、手術のせいで患者がてんかんを発症する可能性がある。
【0011】
動脈瘤の処置に使用される他の手法は血管内で実施される。このような手法には、一般に、動脈瘤の嚢内に塊を形成しようとすることを含む。一般に、動脈瘤へのアクセスにはマイクロカテーテルが使用される。マイクロカテーテルの遠位先端部は動脈瘤の嚢内に配置され、マイクロカテーテルを用いて、塞栓材料を動脈瘤の嚢内に注入する。塞栓材料には、例えば、離脱式コイル、又は液体ポリマーなどの塞栓剤を含む。これら種類の塞栓材料の注入には欠点があり、そのほとんどは、動脈瘤から親動脈への塞栓材料の移動に関連する。これは、親動脈の永久的かつ不可逆的な閉塞の原因となり得る。
【0012】
例えば、十分に画定された頚部領域を有しない動脈瘤を、離脱式コイルを用いて閉塞する場合、離脱式コイルは動脈瘤の嚢から親動脈へと逸脱する可能性がある。更に、離脱式コイルが留置されたときに動脈瘤の嚢がどれほど充満しているかを正確に計測することが困難な場合がある。このため、動脈瘤に過剰充填するリスクがあり、この場合もまた、離脱式コイルは親動脈内に流出する。
【0013】
離脱式コイルの別の欠点には、経時的なコイルの圧密化を含む。動脈瘤の充填後、コイルの間に空間が残る。循環による継続的な血行力学的力は、コイルの塊を圧密化するように作用し、動脈瘤頚部に空洞が生じる。このため、動脈瘤が再開通する可能性がある。
【0014】
塞栓剤の移動も問題である。例えば、液体ポリマーが動脈瘤の嚢内に注入される場合、系の血行力学により、液体ポリマーは動脈瘤の嚢から逸脱する可能性がある。これもまた、親血管の不可逆的な閉塞につながる可能性がある。
【0015】
塞栓材料の親血管への逸脱に関連する欠点に対処するための手法が試みられてきた。このような手法は、限定されるものではないが、一時的血流停止及び親血管閉塞であり、一般に、動脈瘤の嚢内に血栓の塊が形成されるまで親血管への血流が生じないように、親血管を動脈瘤の近位側で一時的に閉塞することを含む。理論では、これは、塞栓材料が動脈瘤嚢から逸脱する傾向を低下させる。しかしながら、血栓の塊は血液の通常の溶解により溶解し得ることが判明している。また、ある場合においては、患者のリスク/利益の観点から、親血管を一時的であっても閉塞することは非常に望ましくない。このため、この手法は、治療オプションとして利用できない場合がある。加えて、現在では、親血管を閉塞してもすべての塞栓材料の親血管への逸脱を防ぎ得ないことは知られている。
【0016】
動脈瘤を処置するための別の血管内手法には、マイクロカテーテルを用いて、離脱式バルーンを動脈瘤の嚢内に挿入することを含む。離脱式バルーンは、その後、生理食塩水及び/又は造影剤流体を用いて拡張させる。バルーンは、その後、マイクロカテーテルから切り離され、動脈瘤の嚢を充填する試みにおいて、動脈瘤の嚢内に残される。しかしながら、離脱式バルーンにも欠点があることから、この手法は、コイルの留置という現在の手法又は他の種類の閉塞デバイスにほとんど取って代わられている。例えば、離脱式バルーンは、拡張させたときに、一般に、動脈瘤嚢の内部構成に適合しない。その代わり、離脱式バルーンでは、動脈瘤嚢を離脱式バルーンの外部表面に適合させることが必要である。このため、離脱式バルーンが動脈瘤の嚢を破裂させるリスクが高まる。更に、離脱式バルーンが破裂し、動脈瘤から逸脱するおそれがある。
【0017】
動脈瘤を処置するための別の血管内手法には、2つの拡張可能なローブ及びウエスト、又は拡張可能な本体部分、首部及び基部を有する閉塞デバイスを含む。
【0018】
動脈瘤を処置するための更に別の血管内手法には、動脈瘤の嚢内の空間内を充填する及び/又は径方向に拡張するように設計された本体部分を有する嚢内植え込み用の閉塞デバイスを含む。
【0019】
このような閉塞デバイスは、例えば、米国特許第5,025,060号明細書、米国特許第5,928,260号明細書、米国特許第6,168,622号明細書、米国特許第6,221,086号明細書、米国特許第6,334,048号明細書、米国特許第6,419,686号明細書、米国特許第6,506,204号明細書、米国特許第6,605,102号明細書、米国特許第6,589,256号明細書、米国特許第6,780,196号明細書、米国特許第7,044,134号明細書、米国特許第7,093,527号明細書、米国特許第7,128,736号明細書、米国特許第7,152,605号明細書、米国特許第7,229,461号明細書、米国特許第7,410,482号明細書、米国特許第7,597,704号明細書、米国特許第7,695,488号明細書、米国特許第8,034,061号明細書、米国特許第8,142,456号明細書、米国特許第8,261,648号明細書、米国特許第8,361,138号明細書、米国特許第8,430,012号明細書、米国特許第8,454,633号明細書及び米国特許第8,523,897号明細書、並びに米国特許出願公開第2003/0195553号明細書、米国特許出願公開第2004/0098027号明細書、米国特許出願公開第2006/0167494号明細書、米国特許出願公開第2007/0288083号明細書、米国特許出願公開第2010/0069948号明細書、米国特許出願公開第2011/0046658号明細書、米国特許出願公開第2012/0283768号明細書、米国特許出願公開第2012/0330341号明細書及び米国特許出願公開第2013/0035712号明細書、欧州特許第1651117号明細書、並びに国際公開第13/109309号パンフレットに記載され得るものの、これら参照文献のいずれも、本明細書中に開示される閉塞デバイスの実施形態は開示していない。
【0020】
したがって、本発明は、血管閉塞デバイスの分野における革新的改良及びいくつかの利点を提供する。なぜなら、本明細書中に開示される閉塞デバイスは、特に神経血管系動脈瘤の動脈瘤処置及び/又は改善を、最小量の完全に回収可能、留置可能な材料の使用により提供するからである。このような、サイズを大きくした閉塞デバイスの構成により、動脈瘤頚部を留めるための追加の材料及び/又は動脈瘤に隣接する親血管内のアンカー機構及び/又は動脈瘤の嚢内への、デバイスの本体部分の球状の、径方向の拡張、の必要を排除する。
【0021】
本明細書中及び参照した特許文献に引用されたすべての文書及び参照文献は参照により本明細書中に援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、動脈瘤の直径に対してサイズを大きくした、最小量の、完全に回収可能、留置可能な薄型の弾性メッシュ材料の使用により、動脈瘤処置及び/又は改善を提供するための閉塞デバイスを設計した。このため、現在の標準的なデバイスに比べて少ない材料を有する閉塞デバイスが、抗凝固療法の必要を最小にする及び/又は血管樹内に深く流れ込み卒中を引き起こす可能性のある血餅塞栓形成のリスクを低下させる。このような植え込み型閉塞デバイスは、血管閉塞及び/又は末梢血管塞栓の処置のためにも用いられる。
【0023】
本明細書中に開示されるのは、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた薄型の弾性メッシュ本体と、を含み、本体が、送出形状と、動脈瘤壁に適合できる留置形状と、を有し、本体が、処置されるべき動脈瘤の直径よりも大きな直径を有する、嚢内植え込み用の閉塞デバイスである。
【0024】
別の実施形態においては、閉塞デバイスの弾性メッシュ本体は単一層メッシュである。
【0025】
別の実施形態においては、閉塞デバイスの弾性メッシュ本体は二重層又は二層メッシュである。更なる実施形態においては、メッシュの二重層は、周方向に折られたメッシュの単一層を含む。
【0026】
別の実施形態においては、閉塞デバイスの弾性メッシュ本体の留置形状は、動脈瘤ドームに並置できる。
【0027】
別の実施形態においては、閉塞デバイスのマーカの近位端は、動脈瘤頚部を封止することができる。更なる実施形態においては、マーカは放射線不透過性マーカであり、マーカは、閉塞デバイスを留置するための離脱接続部であり、マーカは、閉塞デバイスを回収するための取付接続部であり、マーカは剛性部材を含む及び/又はマーカは中実のリングである。
【0028】
また、本明細書中に開示されるのは、本明細書中に開示される閉塞デバイスと、閉塞デバイスを留置するための送出手段と、を含むキットである。
【0029】
また、本明細書中に開示されるのは、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた薄型の弾性メッシュ本体と、を含み、本体が、送出形状と、血管壁に適合できる留置形状と、を有し、本体が、処置される血管の直径よりも大きな直径を有する、血管閉塞用の植え込み型デバイスである。
【0030】
別の実施形態においては、閉塞デバイスの本体はメッシュの単一層である。
【0031】
別の実施形態においては、閉塞デバイスの本体はメッシュの二重層又は二層である。更なる実施形態においては、メッシュの二重層は、周方向に折られたメッシュの単一層を含む。
【0032】
本明細書中に更に開示されるのは、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体であって、本体が、送出形状と、血管壁に適合できる留置形状と、を有し、本体が、周方向の折線を含むメッシュの二重層である、弾性メッシュ本体と、を含む血管閉塞用の植え込み型デバイスである。別の実施形態においては、閉塞デバイスの弾性メッシュ本体は、薄型の弾性メッシュ本体である。
【0033】
本明細書中に更に開示されるのは、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体と、を含み、本体が、送出形状と、血管又は動脈瘤壁に適合できる留置形状と、を有し、本体が、処置されるべき動脈瘤又は血管の直径よりも大きな直径を有し、本体が、その幅の約10~20%である高さを有する、閉塞デバイスである。
【0034】
本明細書中に更に開示されるのは、本明細書中に開示される閉塞デバイスを製造及び/又は送出及び/又は留置するための方法である。
【0035】
他の実施形態においては、先の段落の閉塞デバイスは、先の又は後に開示される実施形態のいずれを組み込んでもよい。
【0036】
発明の概要は、特許請求の範囲を定義するものでも、本発明の範囲をいかようにも限定するものでもない。
【0037】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の図面、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】
図1A-
図1Bは、本明細書中に開示される閉塞デバイスの一実施形態の斜視図を示す。
図1Aは、遊離ガス中の閉塞デバイスの直径(x)を示す。
【
図1B】
図1Bは、直径(y)を有する動脈瘤内に留置された閉塞デバイスの断面図を示す。
【
図2A】
図2A-
図2Cは、本明細書中に開示される閉塞デバイスの送出及び/又は留置の一実施形態の斜視図を示す。
図2Aは、その送出形状にあるデバイスを示す。
【
図2B】
図2Bは、メッシュ材料の圧縮された端部が外向きの状態で開くように留置されているデバイスを示す。
【
図3A】
図3A-
図3Bは、本明細書中に開示される閉塞デバイスの一実施形態の斜視図を示す。
図3Aは、周方向の折線及びメッシュ材料の二重層又は二層を有する閉塞デバイスの直径(x)を示す。
【
図3B】
図3Bは、本明細書中に開示される、直径(y)を有する動脈瘤内に留置された二重層閉塞デバイスを示す。
【
図4A】
図4A-
図4Cは、本明細書中に開示される閉塞デバイスの送出及び/又は留置の一実施形態の斜視図を示す。
図4Aは、その送出形状にある二重層閉塞デバイスを示す。
【
図4B】
図4Bは、デバイスの圧縮された端部が外向きの状態で開くように留置されている二重層閉塞デバイスを示す。
【
図4C】
図4Cは、その留置した状態における、デバイスのメッシュ材料の二重層/二層の、平坦化効果/幅の増加/直径の増加を示す。
【
図5A】
図5A-
図5Bは、本明細書中に開示される閉塞デバイスの電解送出及び/又は留置及び/又は離脱の一実施形態の斜視図を示す。
図5Aは、電解手段を有するカテーテル及び/又はガイドワイヤによる二重層閉塞デバイスの送出を示す。
【
図5B】
図5Bは、閉塞デバイスからのコアワイヤ又はガイドワイヤの電解離脱を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、同様の要素に同じ参照番号が割り当てられた図面及び明細書に示される。しかしながら、特定の実施形態が図面に示されるものの、本発明を、開示される特定の実施形態(単数)又は実施形態(複数)に限定する意図はない。むしろ、本発明は、本発明の範囲及び趣旨の範囲内にある、あらゆる修正形態、代替構造及び均等物を包含することを意図する。したがって、図面は、例示であり、限定を意図するものではない。
【0040】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられるすべての技術用語は、本技術が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
【0042】
本発明の目的では、用語「対応する(corresponds to)」は、互いに対応する物体間に機能的及び/又は機械的関係があることを意味する。例えば、閉塞デバイス送出システムは、その留置のための閉塞デバイスに対応する(又は、適合する)。
【0043】
本発明の目的では、用語「閉塞デバイス」は、「デバイス」又は「閉塞デバイスシステム」又は「閉塞システム」又は「システム」又は「閉塞デバイスインプラント」又は「インプラント」又は「嚢内インプラント」等などであるが、これらに限定されない用語を意味する及び/又はと交換可能であってもよい。
【0044】
閉塞デバイス送出システムは当技術分野で周知であり、容易に入手可能である。例えば、このような送出技術は、米国特許第4,991,602号明細書、米国特許第5,067,489号明細書、米国特許第6,833,003号明細書、米国特許出願公開第2006/0167494号明細書及び米国特許出願公開第2007/0288083号明細書に記載され得るが、これらに限定されない。これらの教示のそれぞれは本明細書中に援用される。本発明の目的では、任意の種類の閉塞デバイス送出手段及び/又は送出システム及び/又は送出技術及び/又は送出機構及び/又は離脱(及び/又は取付)手段及び/又は離脱システム及び/又は離脱技術及び/又は離脱機構を、本明細書中に開示される閉塞デバイスに適合するような手法で(対応するように)用いてもよい及び/又は修正してもよい。例示的な閉塞デバイス送出機構及び/又はシステムとしては、ガイドワイヤ、プッシャワイヤ、カテーテル、マイクロカテーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な閉塞デバイス離脱機構としては、流体圧力、電解機構、油圧機構、インタロック機構等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態においては、本明細書中に開示される閉塞デバイスは、電解離脱の方法において用いられる。電解離脱は当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,122,136号明細書、米国特許第5,423,829号明細書、米国特許第5,624,449号明細書、米国特許第5,891,128号明細書、米国特許第6,123,714号明細書、米国特許第6,589,230号明細書及び米国特許第6,620,152号明細書に記載され得る。
【0045】
図1A及び
図3Aは、本明細書中に開示される、処置されるべき動脈瘤10内の嚢内植え込み用の閉塞デバイスの一実施形態を示す。
図1A及び
図3Aは、また、「遊離ガス」
中のこのような閉塞デバイスの弾性メッシュ本体14の直径(x)を示す。当技術分野で受け入れられているように、このような閉塞デバイスの直径は遊離ガス中で測定される。したがって、本発明の目的及び一実施形態においては、閉塞デバイスの弾性メッシュ本体14は動脈瘤10に対して「サイズを大きくされて」おり、したがって、
図1A及び
図1B並びに
図3A及び
図3Bに示すように、処置されるべき動脈瘤10の直径(y)よりも大きな直径(x)を有する(すなわち、Φx>Φy)。すなわち、メッシュ本体14が動脈瘤10の頚部22を十分に封止して血餅形成及び/又は動脈瘤10の治癒を引き起こすような状態でサイズを大きくされている限り、直径(y)は、処置されるべき動脈瘤10の最大直径である、又は動脈瘤10の大きな直径のうちの1つである。本明細書中に開示される閉塞デバイスの直径(x)の例示的な範囲は、約6~30ミリメートル(mm)であり、処置されるべき動脈瘤の例示的な直径(y)は、xの値未満である。例えば、閉塞デバイスの直径(x)は、7mm、11mm及び/又は14mmのいずれかである。一実施形態においては、実質的に中実のマーカ16の遠位端34の位置は、弾性メッシュ本体14の両端部からほぼ等距離に取り付けられている。嚢内弾性メッシュ本体14上におけるマーカ16のこのような配置は、本明細書中に開示される閉塞デバイスの完全な回収可能性を提供する。
【0046】
別の実施形態においては、本明細書中に開示される閉塞デバイスは、血管閉塞が望まれる病的状態、例えば、末梢血管疾患などにおいて、処置されるべき任意の血管に対し「サイズを大きくされる」。この例では、閉塞デバイスの本体14が血管壁に適合し、血餅形成を促進することができる限り、閉塞デバイスの直径(x)は、処置されるべき任意の血管の直径(z)よりも大きい。
【0047】
図1B及び
図3Bは、本明細書中に開示される、処置されるべき動脈瘤10内に留置された閉塞デバイスの一実施形態を示す。
図1B及び
図3Bは、このような処置されるべき動脈瘤10の直径(y)を示し、また、動脈瘤10及びその頚部22に隣接する親血管12(及び脳底動脈)内の血流(矢印)も示す。一実施形態においては、閉塞デバイスの弾性メッシュ本体14は、遊離ガス中にあるとき、及び留置されているとき、「薄型の」構成である。
【0048】
本発明の目的において、用語「薄型の(low profile)」とは、弾性メッシュ本体14が遊離ガス中において、その幅の約10~20%である高さ32を有し、そのため、その留置形状において、弾性メッシュ本体14は平らな状態で面一に配置され、動脈瘤10の壁に対して上昇し、少なくとも、動脈瘤10の下部20の内部表面を覆い、動脈瘤10の頚部22を封止するように配置されることを意味する。このように、本明細書中に開示される閉塞デバイスは、拡張して動脈瘤10のドームの空間を(動脈瘤10内の空間の大部分に対し完全に及び/又は部分的に)塞ぐとともに、径方向に拡張する及び/又は球状の状態に拡張する当技術分野で容易に入手可能な閉塞デバイスに比べてより低い及び/又は薄い。一実施形態においては、弾性メッシュ本体14は、遊離ガス中において、その幅の約12~18%である高さ32を有する。別の実施形態においては、弾性メッシュ本体14は、遊離ガス中において、その幅の約14~16%である高さ32を有する。別の実施形態においては、弾性メッシュ本体14は、遊離ガス中において、その幅の約15%の高さ32を有する。一実施形態においては、薄型の弾性メッシュ本体14の留置形状は、動脈瘤10のドームの内部表面積の約40%~80%を覆う。別の実施形態においては、薄型の弾性メッシュ本体14の留置形状は、動脈瘤10のドームの内部表面積の約50%~70%を覆う。別の実施形態においては、薄型の弾性メッシュ本体14の留置形状は、動脈瘤10のドームの内部表面積の約60%を覆う。
【0049】
別の実施形態においては、本体14の薄型翼状形状及び/又は開放式の、拡張して広がった構成は、単一層の弾性メッシュ材料である。別の実施形態においては、薄型の、拡張
して広がった構成は、二重(又は二)層24の弾性メッシュ材料である。上述のように、このような弾性メッシュ本体14は、処置されるべき動脈瘤10に比べて「サイズを大きくされて」おり、したがって、メッシュ本体14は、処置されるべき動脈瘤10の直径(y)(すなわち、メッシュ本体14が動脈瘤10の頚部22を十分に封止して、血餅形成及び/又は動脈瘤10の治癒を引き起こすような状態でサイズを大きくされている限りは、処置されるべき動脈瘤10の最大直径、又は大きな直径のうちの1つ)よりも大きな直径(x)を有する。弾性メッシュ本体14の薄型かつサイズを大きくされているという特性は、その、(動脈瘤10の壁に対する本体14の対向圧(opposing pressure)により)動脈瘤10の壁の内部表面に適合する性能を付与し、このため、閉塞デバイスは、少なくとも、動脈瘤10の下部20のみが(すなわち、低体積の平らな状態で)動脈瘤10の壁に沿って拡張し、これにより、動脈瘤10の頚部22を留めるための及び/又は親血管12内で固定するための材料の必要を排除する(及びそれによって、抗凝固療法の必要を最小限にする)。このように、本体14の翼状の広がり及び/又は拡張した広がりは動脈瘤10の内部表面に適合し、動脈瘤10のドームに並置される。このような構成により、動脈瘤10の頚部22の封止、ゆえに、血餅形成及び/又は治癒及び/又は動脈瘤10の縮小が促進され、動脈瘤10のサイズ又は大きさが患者内における疼痛又は他の副作用の原因である場合には特に有利である。このような構成は、また、最小量の弾性メッシュ材料しか必要としないため、動脈瘤10のドーム内の空間を球状に径方向に拡張した状態で塞ぐ又は実質的に塞ぐ必要を排除することから有利である。特に、動脈瘤10は形状が完全な球形ではないことは周知であるとともに一般に認められていることから、このような閉塞デバイスは、広範な動脈瘤10の形態への適合に適している。また、「最小限の」材料、又は現在の標準的なデバイスに比べてより少ない材料を有する、本明細書中に開示される閉塞デバイスは、抗凝固療法の必要を最小限にする及び/又は血管樹内に深く流れ込み卒中を引き起こす可能性のある血餅塞栓形成のリスクを低下させることから有利である。
【0050】
本明細書中に開示される閉塞デバイスの別の実施形態においては、薄型デバイスの弾性メッシュ材料の単一層又は二重層24は、72本のニチノール(NiTi)ワイヤメッシュストランドを編み込んだ構成などであるが、これらに限定されないワイヤメッシュストランド又は編組の比較的均一な分配を含む。他の実施形態においては、閉塞デバイスは、36~144本の範囲のNiTiストランドを編み込んだ構成のワイヤメッシュストランド又は編組を含む。
【0051】
別の実施形態においては、
図3A~
図3B及び
図4A~
図4Cに示すように、本明細書中に開示される二重層24の閉塞デバイスは、周方向に折りたたまれ(周方向の折線26)ており、このため、それ自体を折り返したワイヤメッシュの構成である。二重又は折り返された層24の端部は、デバイスの本体14のほぼ中心部に配置されたマーカ16と交差する。この点に関して、デバイスは、メッシュの単一層材料自体を優先的な折線26で周方向に折ることによって組み立てられ、ワイヤメッシュ材料の二重層24を含む閉塞デバイスが効果的に得られる。すなわち、メッシュの二重層24は、周方向に折られた(周方向の折線26)メッシュの単一層を含む。理論に束縛されることを望むものではないが、このワイヤメッシュ材料の二層又は二重層24は、動物研究において、デバイスにおける急性の血栓形成性の強化に寄与すると考えられている作用機序を誘発する。ワイヤストランドによる広い表面積の寄与を有する二重層/二層24の間に少量の血餅を局所化することで、血栓の核生成及び安定化を促進すると考えられる。留置形状において、折り返された二重層24を有する本体14は、留置されていない二重層24の閉塞デバイスと比較するとより深くに位置し、これは、約15%の幅の変化に相当し、マーカ16に圧が印加されたときのデバイスの直径(x)の増加に置き換えられる。この幅の変化/直径(x)の増加は、動脈瘤10の頚部22を横断して分配されたメッシュ本体14に血液が圧を印加する際における、留置されたデバイスの効果的なアンカリング機能である。このような
構成は、また、末梢動脈又は静脈閉塞のために、動脈瘤10の壁又は血管壁に対し、デバイスの本体14の十分な並置を提供する。現在までの動物研究に基づくと、本明細書中に開示されるデバイスが、急性的に血行静止を付与するほどの十分なメッシュ密度を提供することは明白である。更に、留置後のデバイスの分析に基づくと、ワイヤメッシュ/編組の分配は比較的均一なままであることは知られている。
【0052】
図1B及び
図4Bは、また、本発明の閉塞デバイス上における、近位端36及び遠位端34を有するマーカ16の位置を示す。マーカ16の遠位端34は閉塞デバイスの弾性メッシュ本体14に取り付けられている。処置されるべき動脈瘤10の22頚部に、ブリッジ状の機構の手法で横断して載っているマーカ16の近位端36が示される。マーカ16の近位端36は、薄型の弾性メッシュ本体14の特性と組み合わせると、動脈瘤10の頚部22を留めるために及び/又は親血管12内のアンカーとして追加の材料を組み込む必要を排除し、デバイスの完全な回収可能性を有利に提供する。
【0053】
一実施形態においては、本明細書中に開示される閉塞デバイスのマーカ16は、金、白金、ステンレス鋼及び/又はこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない材料からなる中実のリングなどであるが、これらに限定されない実質的に中実のカラー又は剛性部材である。別の実施形態においては、金、白金、白金/イリジウム合金及び/又はこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない放射線不透過性材料を用いることができる。このようなマーカ16は、送出及び配置時にデバイスの可視化を提供する。マーカ16は、マーカ16の近位端36が動脈瘤10の頚部22上方に載ることができるように閉塞デバイス内に配置される。マーカ16の中実性は動脈瘤10内でデバイスの安定性の付与を補助し、動き又は本体14の弾性メッシュを介した力の伝達を防ぎ、それによって、デバイスの誤配置又は偶発的な動きを防止する。マーカ16は、また、連係して、デリバリーカテーテル若しくはガイドワイヤ及び/又はプッシャワイヤ18技術などであるが、これらに限定されない対応する送出手段から放出する/に取り付けるための接続部を備えて構成されている。これもまた、本明細書中に開示されるデバイスの完全な回収可能性を有利に提供する。
【0054】
別の実施形態においては、実質的に中実のマーカ16は、放射線不透過性材料(例えば、白金、金、白金/イリジウム合金及び/又はこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない)を含み、送出、配置及び/又は留置時に蛍光透視下で閉塞デバイスの可視化を容易にする。マーカ16は、近位端36及び遠位端34を含む。弾性メッシュ本体14が遠位端34に取り付けられ、マーカ16の近位端36は、閉塞デバイスの拡張時に、弾性メッシュ本体14の形状、直径及び/又は曲率を左右するように構成してもよい。マーカ16は、閉塞デバイスの全体の外形を左右するような種々の形状に設計し、動脈瘤10嚢内における拡張/留置した閉塞デバイスの適切なフィット性を確保してもよい。
【0055】
図2A~
図2C及び
図4A~
図4Cは、動脈12及び/又は動脈瘤10に隣接する血管を通じて、本明細書中に開示される閉塞デバイスを送出及び/又は留置するための例示的な手段を示す。一実施形態においては、
図2A及び
図4Aに示すように、閉塞デバイスは、薄型の本体14がそれ自体内側に閉じられるか圧縮されるように、プッシャワイヤ18機構を通じて、閉じて圧縮された状態(送出形状)で送出される。デバイスが動脈瘤10嚢内に押し込まれる及び/又は配置されると、薄型の弾性メッシュ本体14の端部が(
図2B及び
図4Bに示すように)花が開くように外側に開き、開いた本体14は、その後、動脈瘤10の壁に適合し、マーカ16が頚部22を横断して載り、薄型の本体14が平らな状態(留置形状)で面一に配置され、少なくとも、動脈瘤10の下部20を覆い、動脈瘤10の頚部22を封止することを可能とする。一実施形態においては、
図2C及び
図4Cに示すように、デバイスは、マーカ16に圧が印加されたときのデバイスの幅の変化及び直径(x)の増加に相当する、単一層(
図2C)又は二重層24(
図4C)デバイスの
いずれかの深化及び/又は平坦化を示す。この幅の変化/直径(x)の増加は、動脈瘤10の頚部22を横断して分配された本体14に血液が圧を印加する際における、留置されたデバイスの効果的なアンカリング機能である。本明細書中に記載される動物研究の結果は、周方向に折り返された/二重層24構成は、末梢動脈又は静脈閉塞のために、動脈瘤10壁又は血管に対する、デバイスのメッシュ本体14の効率的な並置を提供することを支持している。
【0056】
図5A~
図5Bは、本明細書中に開示される閉塞デバイスを、動脈12及び/又は動脈瘤10に隣接する血管を通じて電解送出及び/又は留置及び/又は離脱するための例示的な手段を示す。米国特許第5,122,136号明細書などの電解離脱手段及び方法は当技術分野において周知である。一実施形態においては、カテーテル(又はマイクロカテーテル)のコイルが巻かれたコアワイヤ28(又はガイドワイヤ)は、マーカ16内部で、その遠位端34において、本明細書中に開示される二重層24閉塞デバイスに取り付けられる(
図5Aに示すように)。コイルの巻きは、デリバリーカテーテル又はマイクロカテーテル又はガイドワイヤの可撓性又は剛性に影響しないように一定の直径(Φ)を維持する。特定の実施形態においては、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)熱収縮チューブがコアワイヤのコイルが巻かれた部分28を収容する。医療デバイス技術分野における多くの容易に利用可能かつ周知の取付技術を用いて、コアワイヤの遠位端を、マーカバンド16の内側に、及び閉塞デバイス又はインプラントに取り付けることができる。このような取付技術としては、接着剤、レーザ溶解、レーザタック、スポット及び/又は連続溶接が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態においては、接着剤を用いて、コアワイヤの遠位端をマーカバンド16の内側に取り付ける。更なる実施形態においては、接着剤は、熱又はUV(紫外)放射の適用によりキュア又は硬化されるエポキシ材料である。また更なる実施形態においては、エポキシは、14 Fortune Drive, Billerica, Mass.に所在のEpoxy Technology, Inc.,から入手可能なEPO-TEK(登録商標)353ND-4などの、熱キュアされた2部品エポキシである。このような接着剤又はエポキシ材料は、コアワイヤの接続部をマーカバンドの内部に封入し、その機械的安定度を増加させる。
【0057】
別の実施形態においては、デバイスの留置の最中及び/又は後、コイルが巻かれたコアワイヤ28は、本明細書中に開示される二重層24閉塞デバイスを、コアワイヤ自体の電解離脱位置(又は領域)30において、マーカバンド16の基部における電解作用によりコアワイヤが切断される及び/又は溶解するような手法で切り離す(
図5Bに示すように)。こうした作用により、次いで、処置されるべき動脈瘤又は血管内に二重層24閉塞デバイスを放出する及び/又は配置する。
【0058】
特定の実施形態においては、本明細書中に開示される閉塞デバイスの薄型の弾性メッシュ本体14に塞栓材料を充填し、動脈瘤10の凝固及び閉鎖を促進することができる。
【0059】
他の実施形態においては、本明細書中に開示される、サイズを大きくした閉塞デバイスは、コイリング技法、フレーミングコイル、塞栓剤、追加のマーカ、ポリマー、吸収性ポリマー及び/又はこれらの組み合わせなどの補助的な要素及び/又は部材を更に組み込んでもよい。
【0060】
閉塞デバイスを設計及び/又は製造するための弾性メッシュ材料は容易に入手可能であり、当業者には周知である。したがって、弾性メッシュ材料は、ニッケルチタン(ニチノール又はそうでなければNiTiとして知られている)、ステンレス鋼、ポリマー及び/又はこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない多様な入手可能な材料を範囲に含む。例示的な周知の医用高分子類としては、ポリホスファゼン類、ポリ酸無水物、ポリアセタール類、ポリ(オルトエステル類)、ポリホスホエステル類、ポリカプロラク
トン類、ポリウレタン類、ポリラクチド類、ポリカーボネート類、ポリアミド類及び/又はこれらの組み合わせなどのポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、J Polym Sci B Polym Phys. Author manuscript;PMC 2012 June15において入手可能、を参照のこと。)
【0061】
1つの例示的実施形態においては、弾性メッシュ材料は、ナイロン、ポリプロピレン又はポリエステルなどであるが、これらに限定されないポリマー材料の織られたストランドで形成されている。ポリマーストランドには放射線不透過性材料を充填することができ、これにより、動脈瘤を処置する医師が血管系内のデバイスの位置を透視下で可視化することを可能にする。放射線不透過性充填材材料は、三酸化ビスマス、タングステン、二酸化チタン若しくは硫酸バリウム、又はヨウ素などの放射線不透過性色素を含むことが好ましい。弾性メッシュ材料は、放射線不透過性材料のストランドによって形成することができる。放射線不透過性ストランドにより、充填されたポリマー材料を用いることなく、医師及び/又は放射線専門医が、メッシュの位置を透視下で可視化することを可能にする。このような放射線不透過性ストランドは、金、白金、白金/イリジウム合金及び/又はそれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない材料で形成してもよい。一実施形態においては、弾性メッシュ材料は、10%~20%白金コアNiTiで構成されている。別の実施形態においては、弾性メッシュ材料は、10%白金コアNiTi、15%白金コアNiTi又は20%白金コアNiTiで構成されている。x線下で閉塞デバイスのゴースト像を提供するためには、10%白金コアNiTi構造で十分である。
【0062】
放射線不透過性コア及び非放射線不透過性外層若しくはケーシングを有するこのような構成の組み合わせワイヤ(combination wires)又は複合ワイヤは、容易に入手可能であり、かつ医療デバイス及び金属技術分野において、DFT(登録商標)(延伸充填チューブ)ワイヤ、ケーブル又はリボンとして周知である。DFT(登録商標)ワイヤは、2つ以上の材料の所望の物理的及び機械的特性を1つのワイヤに組み合わせるために作製された金属-金属複合材料である。より放射線不透過性ではあるものの、より延性のある材料をワイヤのコア内に配置することにより、NiTi外層は、得られる複合ワイヤに、100%NiTiワイヤに類似する機械的特性を付与することができる。DFT(登録商標)ワイヤは、Fort Wayne, Ind., U.S.Aに所在のFort Wayne Metals Corp.から入手可能である。例えば、参照により本明細書中に援用する、Biocompatible Wire by Schaffer in Advanced Materials & Processes, Oct 2002,pages 51-54と題される学術誌の記事も参照のこと。
【0063】
弾性メッシュ材料が放射線不透過性金属ストランドで形成される場合、このストランドはポリマーコーティング又は押出品によって被覆されてもよい。放射線不透過性ワイヤストランド上のコーティング又は押出品は、透視下での可視化を提供するだけでなく、曲げ疲労に対するストランドの抵抗も増加するとともに、ストランドの潤滑性も増加してもよい。ポリマーコーティング又は押出品は、一実施形態において、ヘパリンなどの凝固を阻止する傾向にある薬物でコーティングされる又は処理される。このような血餅を阻止するコーティングは一般に知られている。ポリマーコーティング又は押出品は、任意の適切な押出し可能なポリマーとすることも、テフロン(登録商標)又はポリウレタンなどの、薄いコーティングで塗布され得る任意のポリマーとすることもできる。
【0064】
更に別の実施形態では、弾性メッシュ材料のストランドは、金属及びポリマーの両方を編み込んだストランドを用いて形成される。金属ストランドとポリマーストランドを組み合わせて編組にすることで、メッシュの可撓性特性が変化する。このようなメッシュ部分を留置する及び/又は折りたたむのに必要とされる力は、金属メッシュストランドのみを含むメッシュ部分に必要とされる力に比べて大幅に低減される。しかしながら、透視下で
の可視化のためのメッシュの放射線不透過性特性は維持される。このようなデバイスを形成する金属ストランドとしては、ステンレス鋼、金、白金、白金/イリジウム、ニチノール及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このデバイスを形成するポリマーストランドとしては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、テフロン(登録商標)及び/又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。更に、メッシュ材料のポリマーストランドは、ポリマーストランド上への金蒸着を用いることによる、又はポリマーストランド上への適切な金属イオンのイオンビームプラズマ蒸着を用いることによるものなどであるが、これらに限定されない周知の技術によって化学的に改質しそれらを放射線不透過性にすることができる。
【0065】
弾性メッシュ材料は、また、異なる直径及び/又は異なる可撓性を持つフィラメント又はストランドによって形成することができる。ポリマーストランドの大きさ又は可撓性を変えることによって、留置時におけるメッシュの可撓性特性もまた変えることができる。可撓性特性を変えることによって、弾性メッシュ本体14の留置した構成及び折りたたまれた構成の両方を、実質的にあらゆる所望の形状に変える又は変化させることができる。
【0066】
メッシュは、ポリマーストランド又はフィラメント及び金属ストランド又はフィラメントの両方で形成できるのみならず、メッシュは、異なるポリマー材料のフィラメントを用いて形成することができる。例えば、異なる可撓性特性を有する異なるポリマー材料をメッシュの形成に用いることができる。これにより可撓性特性が変化し、留置した状態及び折りたたまれた状態の両方におけるメッシュ本体14の、結果として得られる構成が変化する。このような医用高分子は当技術分野において既知でありかつ入手可能であるとともに、ポリホスファゼン類、ポリ酸無水物、ポリアセタール類、ポリ(オルトエステル類)、ポリホスホエステル類、ポリカプロラクトン類、ポリウレタン類、ポリラクチド類、ポリカーボネート類、ポリアミド類及び/又はそれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない高分子類から得ることができる。
【0067】
メッシュ本体14内での使用に適した弾性メッシュ材料は、織られた平坦なシート、編まれたシート又はレーザ切断されたワイヤメッシュの形態を採ってもよい。概して、この材料は、実質的に平行なストランドの2つ以上のセットを含むべきであり、平行なストランドの1つのセットは、平行なストランドのもう一方のセットに対して45度~135度のピッチである。いくつかの実施形態では、メッシュ材料を形成する平行なストランドの2つのセットは、互いに実質的に垂直である。メッシュ材料のピッチ及び全体的な構造は、閉塞デバイスの性能ニーズを満たすように最適化してもよい。
【0068】
本発明で用いられる金属ファブリックのワイヤストランドは、弾性であるとともに、所望の形状を実質的に設定するために熱処理することができる材料で形成すべきである。この目的に適していると考えられる材料としては、閉塞デバイスの分野において、Elgiloy(登録商標)と呼ばれるコバルト系低熱膨張合金、Haynes Internationalから商品名Hastelloy(登録商標)で市販されているニッケル系高温高強度「超合金」、International Nickelにより名称Incoloy(登録商標)で販売されているニッケル系熱処理型合金、及び多くの様々なグレードのステンレス鋼が挙げられる。ワイヤに適した材料を選択する上で重要な要素は、所定の熱処理が施されたときに、ワイヤが、成形面により引き起こされる適切な量の変形(又は以下に記載するような形状記憶)を保持することである。
【0069】
これらの条件を満たす1つの材料クラスはいわゆる形状記憶合金である。このような合金は、温度誘起による相転移を有する傾向があり、これにより、材料は、材料をある転移温度を超えて加熱し材料の相転移を誘起することによって固定され得る好ましい構成を有する。合金が冷却されると、合金は熱処理中の形状を「記憶」し、そうすることを制約さ
れない限りは、その同じ及び/又は類似の構成を採る傾向がある。
【0070】
本発明において用いるための1つの特定の形状記憶合金は、ニッケルとチタンのほぼ化学量論的合金であるニチノールであり、所望の特性を得るために他の微量の他の金属も含んでもよい。適切な組成及びハンドリング要件を含むニチノールなどのNiTi合金は当技術分野において周知であり、そのような合金についてここで詳述する必要はない。例えば、米国特許第5,067,489号明細書及び米国特許第4,991,602号明細書(これらの教示は参照により本明細書中に援用する)は、ガイドワイヤに基づく技術における形状記憶NiTi合金の使用について論じている。このようなNiTi合金は、少なくとも部分的には、それらが市販されており、更には、そのような合金のハンドリングについて他の周知の形状記憶合金よりも知られているという理由で好ましい。NiTi合金は、また、非常に弾性がある。実際、NiTi合金は、「超弾性」又は「擬弾性」として知られているとされている。この弾性は、本明細書中に開示される閉塞デバイスがその留置のための以前の拡張した構成に戻るのを助ける。
【0071】
ワイヤストランドは、選択した材料の標準的なモノフィラメントを含み得る。すなわち、標準的なワイヤストックを用いてもよい。いくつかの実施形態では、72本のワイヤストランド及び/又は72本のストランド編組の構成を用いてもよい。他の実施形態においては、閉塞デバイスは、36~144本の範囲のNiTiストランドを編み込んだ構成であるワイヤメッシュストランド又は編組を含む。しかしながら、所望すれば、個々のワイヤストランドを、複数の個々のワイヤで構成した「ケーブル」から形成してもよい。例えば、中心ワイヤの周りにいくつかのワイヤが螺旋状に巻かれた金属ワイヤで形成されたケーブルが市販されており、0.003インチ以下の外径を有するNiTiケーブルは購入可能である。あるケーブルの1つの利点は、それらが、同じ直径を有し、同じ材料で形成されたモノフィラメントワイヤに比べて「より軟質である」傾向があることである。加えて、ケーブルの使用により、ワイヤストランドの有効表面積を増すことができ、血栓形成を促進する傾向がある。
【0072】
本明細書中に開示される閉塞デバイスは、血管内又は動脈瘤10の頚部22を横断する内皮細胞の足場のように機能するのに十分なメッシュ密度を持つ薄型の弾性メッシュ材料で構成され、これにより、血流を約60%低下させ、血餅形成及び/又は動脈瘤10の治癒を引き起こす。本発明の目的では、用語「メッシュ密度」は、多孔性のレベル又は金属とメッシュ本体14の開口面積との比率を意味する。メッシュ密度は、メッシュの開口又は孔の数及び大きさ、並びに開口又は孔の開口状態が送出と留置との間で異なる状況においては、孔が開いている又は閉じている程度に関係する。概して、弾性メッシュ材料の高メッシュ密度領域は、ほぼ約40%以上の金属面積、及び約60%以下の開口面積を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、弾性メッシュ本体14は同じ材料で均一に形成してもよい。しかしながら、そのような材料は、異なる編まれた、縫われた、編み込まれた、及び/又は切断された構造を有してもよい。
【0074】
他の実施形態においては、本明細書中に開示される植え込み型閉塞デバイスは、末梢血管塞栓術のプロセス(当技術分野において周知のプロセスであり、特定の血管部位の遠位側における血流の停止を伴うことが知られている)、例えば、末梢動脈若しくは静脈の病変及び/又はその処置に血管閉塞を必要とする任意の関連の病変の処置及び/又は改善に用いることができる。
【0075】
本発明の閉塞デバイスは、閉塞デバイスの分野における当業者には自明の合理的な設計パラメータ、特徴、修正形態、利点及び変形形態を組み込んでもよい。
【実施例0076】
研究実施計画書及び動物使用の正当性は、ISIS ServicesのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって検討及び承認され、手順は獣医の監督下で実施した。
【0077】
ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルは、新規な神経インターベンションデバイスの試験において広く受け入れられているとともに、当技術分野で承認されているモデルであり、有効性及びヒトの反応に類似することに関して多くの臨床出版物の対象となってきた。(例えば、Altes et al. Creation of Saccular Aneurysms in the Rabbit:A Model Suitable for Testing Endovascular Devices. AJR 2000; 174:349-354を参照のこと。)したがって、このモデルは適切な試験モデルとして規制機関により即座に承認される。このモデルの凝固系はヒトの凝固系と酷似している。加えて、このモデルは、ウサギの頭蓋外頚動脈の直径がヒトの頭蓋外頚動脈の直径と酷似しているという点で有利な解剖学的側面を有する。更に、エラスターゼ誘起動脈瘤はヒトの動脈瘤と組織学的に類似するように挙動することが示されている。
【0078】
実施例I
非離脱式閉塞デバイスロット30680、離脱式閉塞デバイスロット30676、動脈瘤の大きさ4.5ミリメートル(mm)(高さ)x幅2.5。
【0079】
5-F(5フレンチ)のシースを大腿動脈内に配置し、このシースを通じて、5FのCordis製カテーテル、ルーメン0.035”、長さ65センチメートル(cm)、及び0.035”テルモ製ガイドワイヤの頚動脈へのアクセスを得た。
【0080】
非離脱式閉塞デバイスを、動脈瘤の頚部にマーカを備えた動脈瘤内に配置し、造影剤を定間隔で流した。デバイスの留置直後に、動脈瘤内の良好な位置にあることが認められ、血流のいくらかの減速があった。留置後5分で、動脈瘤内におけるいくらかの血行静止が認められた。留置後10分で、動脈瘤内における更なる停滞が認められ、デバイスを動脈瘤頚部のより近傍に再配置した。留置後15分で、動脈瘤内の血流の停滞が認められた。デバイスを動脈瘤から取り出し、ヘパリンを投与すると、動脈瘤への血流は留置前の状態に戻った。
【0081】
その後、非離脱式閉塞デバイスを取り出し、直径7mmの閉塞デバイスを、0.014”ガイドワイヤ(Synchro2、Stryker)を用いて、0.027”ルーメンのマイクロカテーテル(ExcelsiorXT27、Stryker)内に前進させた。カテーテル内におけるデバイスの前進は滑らかで低摩擦であったことに留意されたい。閉塞デバイスを動脈瘤の頚部まで前進させ、留置した。定期的な血管造影の実施を行った。留置直後に、動脈瘤内における血流の静止が認められた。留置後5分で、動脈瘤の充填不足が認められた。留置後10分で、動脈瘤内に血栓が認められた。留置後20分で、5Fカテーテルを取り出した。手順の完了時に、動物を標準的な実施要領(SOP)に従い安楽死させた。
【0082】
実施例II
非離脱式閉塞デバイスロット30680、離脱式閉塞デバイスロット30676、動脈瘤の大きさ高さ10mmx幅4mmx頚部3mm。
【0083】
非離脱式デバイスを動脈瘤頚部内に配置し、実施例Iと同様の手順を実施した。この例においては、4Fシステムを用いてデバイスを5Fシース内に導入し、カテーテルの内部
ハブ上の「段」によりデバイスを保持したことに留意されたい。デバイスを配置し、前と同様、定期的な血管造影の実施を行った。留置直後、動脈瘤内にいくらかの血流の減少が認められた。留置後5分で、動脈瘤嚢内の充填不足が認められた。留置後10分で、充填不足の大きさの増加が認められた。
【0084】
このデバイスを取り外して、血管造影で動脈瘤内の血流が留置前の状態に戻ったことを明らかにし、植え込み型(離脱式)デバイスを以前と同じ方法を用いて留置した。インプラントは、当初、ロード用シースからマイクロカテーテルへの移行にいくらかの力を要した(おそらくはシースとハブルーメンのなじみが良くないことによる)ものの、一旦挿入されると、マイクロカテーテルは滑らかに前進した。
【0085】
デバイスは、離脱機構に固定されていないにもかかわらず適度な留置制御を有することに留意されたい。位置決めは動脈瘤の頚部を覆うように実施され、定期的な血管造影の実施を行った。留置直後、動脈瘤の遠位部に血栓が認められた。留置後5分で、動脈瘤嚢の事実上の閉塞が認められた。留置後10分で、動脈瘤嚢の完全な閉塞が認められた。留置後15分で、デバイスマーカの遠位側で動脈瘤の閉塞が認められた。
【0086】
留置後5分の血管造影像において、活性凝固時間(ACT)は標準の2倍であったことに留意されたい。プロセス全体で動物の血圧は正常であった(85/55、平均60~65mm hg)。動物内におけるデバイスの配置は、下の頚動脈に欠陥を生じさせることなく血行静止を可能としたため、この生きた動物は研究30日後に再評価される。
【0087】
実施例III
離脱式デバイスロット30676、動脈瘤の大きさ6.5mmx幅3.1mmx頚部2.4mm。
【0088】
この手順では実施例IIと同じ実施計画書に従った。しかしながら、造影剤注入時に、大動脈が解離していることが判明した。動脈瘤頚部にデバイスを留置することは可能であった。また、以前と同様、定期的な血管造影の実施を行った。
【0089】
観察
この一連の血管造影像では、本明細書中に開示される閉塞デバイスのワイヤメッシュ編組構成が動脈瘤内の血流を低下するほど十分に密であり、血液の血行静止及び動脈瘤嚢内の血栓に至っていることが確認された。動物の形態のばらつきを考慮した本研究により、デバイスの開発及びその留置手法の理解及び考慮が可能となった。
【0090】
すべての大腿穿刺は、静脈ピッカー(vein picker)の使用による大腿静脈切開によって実施した。使用したシースは5-Fであり、特に、非常に狭い先端を持ち、大腿血管を傷つけることなく大腿血管の拡張を可能とするものであった。特にワイヤ上に固定されるデバイスにおいてはカテーテルの長さが問題となった。このため、すべてのケースにおいて、短縮した/手で切断したカテーテルを使用した。これは、遠位側カテーテル先端がむしろ鋭くかつ急であり、実施例IIIのように血管の解離等の問題に至ることを意味する。(マイクロシースの使用により対処することができる)このことにもかかわらず、(大径のガイドカテーテルによる)閉塞デバイスの留置はスムーズであり、離脱機構とのデバイスの使用に対応するものであった。
【0091】
閉塞デバイスの操作及び留置制御は、デバイスの近位側放射線不透過性マーカをカテーテル先端に対して可視化しながら実施した。デバイスの開発には、白金コアNiTiワイヤの放射線不透過性ストラットを組み込み、視認性を補助することを伴う。
【0092】
動物研究における閉塞デバイスは拡張が限定されたものであった(7mm)。デバイスの開発では7mm超の増加した直径を組み入れる。したがって、このようなデバイスは11mm及び14mmの直径で設計されてきた。そうであっても、7mmデバイスの拡張の広がりの制限にもかかわらず、すべての留置において動脈瘤内の血行静止が促進され、すべてのデバイスは、特に、親動脈及び動脈瘤の頚部内における案内並びに動脈瘤の頚部を横断した動脈瘤内の配置に関して極めて正確な精度での操作が容易であった。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を記載してきた。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、請求される装置の合理的な特徴、修正形態、利点及び設計の変形形態が、当業者には、先行する詳細な説明及び実施形態に説明したガイドラインに従うことによって容易に明らかとなろう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。