(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125358
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/20 20060101AFI20240910BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240910BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240910BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B32B15/20
B32B15/08 M
B32B27/00 M
H05K1/03 630H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102074
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2020183884の分割
【原出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】二嶋 悟
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂を含む支持層と、粘着層と、パターン形状を有する銅層とをこの順に有する積層体において、銅層のパターンにて良好な断面形状を得ることができ、高精細なパターニングが可能な積層体を提供する。
【解決手段】本開示は、樹脂を含む支持層2と、粘着層3と、パターン形状を有し、銅または銅合金を含む銅層4とをこの順に有する積層体1であって、上記銅層の厚みが2μm以上5μm以下であり、上記銅層の上記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下である、積層体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む支持層と、粘着層と、パターン形状を有し、銅または銅合金を含む銅層とをこの順に有する積層体であって、
前記銅層の厚みが2μm以上5μm以下であり、
前記銅層の前記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持層と粘着層と銅層とをこの順に有する積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔は、例えばプリント配線板、リチウムイオン電池等、種々の分野で使用されている。近年、デバイスの小型化、軽量化、薄型化が要求されており、使用される銅箔にも薄膜化が求められている。
【0003】
しかしながら、薄い銅箔は取り扱いが困難であり、銅箔単体では加工が困難である。そこで、支持体で銅箔を支持することが行われている。例えば特許文献1には、支持銅箔と、支持銅箔上に積層された剥離層と、剥離層上に積層された極薄銅層とを備えた極薄銅箔が開示されている。また、例えば特許文献2には、銅箔とベースフィルム(樹脂フィルム)とで構成されているフレキシブル銅張積層板を用いて得られた電子部品実装用フィルムキャリアテープが開示されている。
【0004】
また、近年、プリント配線板等においてはパターンの微細化が要求されており、高精細なパターニングが求められている。
【0005】
銅箔をパターン状に形成する場合、銅箔のパターニング方法としては、フォトリソグラフィ法が主流である。フォトリソグラフィ法により銅箔をパターニングする場合、レジストパターンをマスクとして銅箔をエッチングする際のサイドエッチングが問題となる。
【0006】
特許文献1のような、キャリア銅箔と、剥離層と、極薄銅箔とをこの順に有するキャリア箔付き銅箔の場合、レジストパターンをマスクとして極薄銅箔をエッチングする際に、支持体であるキャリア銅箔もエッチングされるため、極薄銅箔のサイドエッチングを抑制することができ、極薄銅箔のパターンの断面形状を良好にすることができる。
【0007】
これに対し、特許文献2のような、樹脂フィルムと銅箔とを有するキャリアフィルム付き銅箔の場合、レジストパターンをマスクとして銅箔をエッチングする際、銅箔と樹脂フィルムとではエッチング速度が異なり、樹脂フィルムがエッチングストッパとして機能することから、銅箔のサイドエッチングが起きやすく、銅箔のパターンの断面形状の制御が困難であるという問題がある。
【0008】
一方で、上記のキャリア箔付き銅箔はコストが高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/006781号
【特許文献2】特開2008-66416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、樹脂を含む支持層と、粘着層と、パターン形状を有する銅層とをこの順に有する積層体において、銅層のパターンにて良好な断面形状を得ることができ、高精細なパターニングが可能な積層体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、銅箔の厚みを薄くすることにより、フォトリソグラフィ法により銅箔をパターニングする場合、レジストパターンをマスクとして銅箔をエッチングする際のサイドエッチングを抑制することができることを見出した。しかしながら、銅箔の薄膜化には限界がある。そして、本開示の発明者はさらに検討を重ね、支持層と粘着層と銅層とをこの順に有する積層体において、銅層の全面に対してハーフエッチングを行うことにより、銅層の厚みを薄くすることができ、かつ、銅層の表面粗さを小さくすることができること、さらには、銅層の厚みを薄くし、かつ、銅層の表面粗さを小さくすることにより、パターニング精度を高めることができることを知見した。本開示はこのような知見に基づくものである。
【0012】
本開示の一実施形態は、樹脂を含む支持層と、粘着層と、パターン形状を有し、銅または銅合金を含む銅層とをこの順に有する積層体であって、上記銅層の厚みが2μm以上5μm以下であり、上記銅層の上記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下である、積層体を提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、樹脂を含む支持層の一方の面に、粘着層を介して、銅または銅合金を含む銅層を貼り合わせる貼合工程と、上記銅層の厚みが2μm以上5μm以下になり、かつ、上記銅層の上記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下になるように、上記銅層の全面にハーフエッチングを行うハーフエッチング工程と、上記ハーフエッチング後の上記銅層の上記粘着層とは反対側の面にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、上記レジストパターンをマスクとして上記銅層をエッチングするエッチング工程と、上記レジストパターンを除去するレジストパターン除去工程とを有する、積層体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示においては、支持層と、粘着層と、パターン形状を有する銅層とをこの順に有する積層体において、銅層のパターンにて良好な断面形状を得ることができ、高精細なパターニングが可能な積層体を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の積層体を例示する概略断面図である。
【
図2】本開示の積層体の製造方法を例示する工程図である。
【
図3】実施例1における積層体の断面SEM像である。
【
図4】実施例2における積層体の断面SEM像である。
【
図5】比較例1における積層体の断面SEM像である。
【
図6】比較例2における積層体の断面SEM像である。
【
図7】比較例3における積層体の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0017】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0018】
以下、本開示における積層体および積層体の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
A.積層体
本開示における積層体は、樹脂を含む支持層と、粘着層と、パターン形状を有し、銅または銅合金を含む銅層とをこの順に有する積層体であって、上記銅層の厚みが2μm以上5μm以下であり、上記銅層の上記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下である。
【0020】
本開示における積層体について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示における積層体の一例を示す概略断面図である。
図1に例示するように、積層体1は、樹脂を含む支持層2と、粘着層3と、パターン形状を有し、銅または銅合金を含む銅層4とをこの順に有する。銅層4の厚みは所定の範囲内であり、銅層4の粘着層3とは反対側の面の最大高さ粗さRzは所定の範囲である。
【0021】
図2(a)~(f)は、本開示における積層体の製造方法の一例を示す工程図である。まず、
図2(a)に示すように、支持層2の一方の面に粘着層3を介して銅層4を貼り合わせる。次に、
図2(b)に示すように、銅層4の全面に対してハーフエッチングを行う。これにより、銅層4の厚みを薄くし、かつ、銅層4の表面粗さを小さくすることができる。次に、
図2(c)に示すように、銅層4の粘着層3とは反対側の面にレジスト層11aを形成する。続いて、図示しないが、レジスト層11aを露光および現像し、
図2(d)に示すように、レジストパターン11bを形成する。次いで、
図2(e)に示すように、レジストパターン11bをマスクとして銅層4に対してエッチングを行う。その後、
図2(f)に示すように、レジストパターン11bを除去する。これにより、パターン形状を有する銅層4を有する積層体1を得ることができる。
【0022】
なお、本明細書において、ハーフエッチングとは、銅層をその厚み方向に途中までエッチングすることをいう。
【0023】
本開示における積層体においては、銅層の厚みが上記範囲内であるように薄いことにより、積層体の製造過程において、フォトリソグラフィ法により銅箔をパターニングする場合、レジストパターンをマスクとして銅箔をエッチングする際のサイドエッチングを抑制することができ、銅層のパターンの断面形状を良好にすることができる。さらに、本開示における積層体においては、銅層の粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが上記範囲であるように小さいことにより、平滑性に優れ、厚み分布の少ない銅層とすることができるので、積層体の製造過程において、フォトリソグラフィ法により銅箔をパターニングする場合、銅層上に形成されるレジスト層の表面の平滑性も良くすることができ、パターニング精度を高めることができる。これにより、銅層のパターンの寸法や断面形状を良好に制御することができる。したがって、高精細なパターン形状の銅層を有する積層体とすることが可能である。
【0024】
ここで、銅箔には大きく分けて圧延銅箔と電解銅箔がある。
【0025】
圧延銅箔の場合、銅箔を金属ローラーで延伸して薄膜化するため、表面粗度を小さくすることは可能であるが、銅箔の薄膜化には限界があり、銅箔の厚みは薄くても6μm程度であり、一般的には十数μm以上の厚みの銅箔が使用されている。そのため、一般的な圧延銅箔を用い、支持層の一方の面に粘着層を介して銅箔を貼り合わせただけでは、所望の厚みを有する銅層を備える積層体を得ることはできない。
【0026】
また、電解銅箔の場合、薄膜を形成する場合には単膜での形成ができない。この場合、一般的には、キャリア銅箔と呼ばれる厚膜の支持体を作製し、そのキャリア銅箔上に剥離層を形成し、さらにその剥離層上に薄膜の銅箔を形成する。電解銅箔は電解ドラムから積層していくが、積層する量が多いほど表面が不均一になり表面粗さも悪化する。そのため、電解銅箔では、表面粗度を小さくするのは非常に困難である。そのため、一般的な電解銅箔では、所望の表面粗度を有する銅層を得ることはできない。
【0027】
これに対し、本開示においては、上述したように、積層体の製造過程において、銅層をハーフエッチングすることにより、銅層の厚みを薄くし、かつ、銅層の表面の最大高さ粗さRzを小さくすることができる。したがって、本開示においては、所定の厚みを有し、所定の最大高さ粗さRzを有する銅層を備える積層体を得ることが可能である。
【0028】
以下、本開示における積層体における各構成について説明する。
【0029】
1.銅層
本開示における銅層は、粘着層の支持層とは反対側の面に配置される層であり、パターン形状を有し、銅または銅合金を含み、所定の厚みを有し、所定の最大高さ粗さRzを有する。
【0030】
銅層としては、粘着層を介して支持層に貼付されることから、銅箔を用いることができる。銅箔としては、例えば、電解銅箔および圧延銅箔のいずれも使用することができる。
電解銅箔は、広幅の銅箔が得られるという利点を有する。
【0031】
銅層は、銅または銅合金を含む。
【0032】
銅合金は、銅を主成分とする。銅合金の組成としては、銅の含有量が、例えば、99.80質量%以上であることが好ましく、99.85質量%以上であることがより好ましく、99.90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
銅合金を構成する銅以外の元素としては、例えば、錫、ニッケル、亜鉛、チタン、ケイ素、マグネシウム、ベリリウム、コバルト、鉄、マンガン、鉛、リン等が挙げられる。銅合金としては、具体的には、洋白、リン青銅、黄銅、チタン銅、コルソン合金、ベリリウム銅等を挙げることができる。
【0034】
銅層の厚みは、2μm以上、5μm以下であり、中でも4μm以下であることが好ましく、特に3μm以下であることが好ましい。銅層の厚みが上記範囲内であるように薄いことにより、本開示における積層体の製造過程において、フォトリソグラフィ法により銅層をパターニングする際に、サイドエッチングを抑制することができ、高精細なパターニングが可能である。一方、本開示における積層体の製造過程において、ハーフエッチングにより銅層の厚みを薄くする場合には、銅層の厚みが薄すぎるものは製造が困難である。
【0035】
銅層の粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzは、1.3μm以下であり、中でも1.25μm以下であることが好ましく、特に1.2μm以下であることが好ましい。銅層の粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが上記範囲であるように小さく、銅層が表面の平滑性に優れることにより、本開示における積層体の製造過程において、フォトリソグラフィ法により銅層をパターニングする際に、銅層上に形成されるレジスト層の表面の平滑性も良くすることができるため、銅層のパターンの断面形状を良好にすることができ、高精細なパターニングが可能である。
【0036】
ここで、銅層の表面の最大高さ粗さRzは、JIS B0601:2001に準拠して測定することができる。銅層の表面の最大高さ粗さRzの測定には、触針式表面粗さ測定機を用いることができる。具体的には、株式会社ミツトヨ製の小形表面粗さ測定機 サーフテスト SJ-210(測定力:0.75mN、スタイラス形状:先端半径2μm、先端角度60°)を用いることができる。なお、最大高さ粗さRzの測定方法の詳細については、後述の実施例の項に記載する。
【0037】
また、銅層は、パターン形状を有する。パターン形状としては、本開示における積層体の用途等に応じて適宜設計される。具体的なパターン形状としては、ライン状、ストライプ状、メッシュ状、ドット状のパターン形状、あるいはドット状のホールを有するパターン形状等を挙げることができる。
【0038】
銅層の形成方法については、後述の積層体の製造方法の項に記載する。
【0039】
2.支持層
本開示における支持層は、上記銅層を支持する層であり、樹脂を含む。
【0040】
支持層としては、例えば樹脂基材を用いることができる。樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP、OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。PETは、安価で入手しやすく、耐熱性が比較的高く、熱収縮率が低いという利点がある。また、PI、PENは、物性的に好ましい。また、樹脂基材は、延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよい。
【0041】
支持層は、透明性を有していてもよく有していなくてもよい。後述するように、粘着層がエネルギー線の照射により粘着力が低下または消失するエネルギー線応答型粘着層である場合は、支持層側から粘着層の粘着力を低下させるのに十分なエネルギー線を照射するために、支持層は透明性を有することが好ましい。この場合の支持層の透過率については、エネルギー線が透過可能であればよく、適宜設定することができる。
【0042】
また、支持層は、粘着層との密着性を高めるために、粘着層が形成される面にコロナ処理やプライマー処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0043】
支持層の厚みとしては、特に限定されるものではなく、例えば、12μm以上、350μm以下とすることができ、38μm以上、188μm以下であることが好ましく、50μm以上、100μm以下であることがより好ましい。支持層の厚みが薄すぎると、銅層を十分に支持することができず、取り扱いが困難になる場合や、コストが高くなる場合がある。
【0044】
また、支持層としては、支持層および後述の粘着層を有する粘着層付き支持層を使用することもできる。
【0045】
3.粘着層
本開示における粘着層は、支持層に銅層を貼付するための層である。
【0046】
粘着層は、再剥離性を示すことが好ましい。ここで、再剥離性とは、積層体から支持層および粘着層を剥がすときに、銅層および支持層を破壊せず、粘着剤を銅層の面に残さないで剥がすことができる性質をいう。
【0047】
このような粘着層としては、例えば、微粘着性を示す粘着層(第1態様)や、外部刺激を受けることで粘着力が低下または消失する粘着層(第2態様)が挙げられる。中でも、コストの観点から、微粘着性を示す粘着層が好ましい。以下、粘着層について各態様に分けて説明する。
【0048】
(1)粘着層の第1態様
粘着層の第1態様は、微粘着性を示す粘着層である。本態様の粘着層は、初期粘着力により支持層の一方の面に銅層を固定することができ、また、初期粘着力が小さいことから銅層から容易に剥離することができる。
【0049】
粘着層に用いられる粘着剤としては、上記粘着力を有する粘着層を得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を挙げることができる。中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤であれば、再剥離性および微粘着性を示す粘着層を容易に得ることができる。
【0050】
アクリル系粘着剤としては、公知のアクリル系粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。好ましいアクリル系粘着剤の一つとしては、例えば、共重合成分として2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートモノマーを含む共重合体を含有するアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0051】
粘着層の厚みとしては、上記粘着力を有する粘着層を得ることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、2μm以上、50μm以下であることが好ましく、4μm以上、30μm以下であることがより好ましく、5μm以上、15μm以下であることがさらに好ましい。粘着層の厚みが薄すぎると、所望の粘着力が得られず、支持層の一方の面に銅層を固定することが困難になるおそれや、粘着層の形成が困難になるおそれがある。また、粘着層の厚みが厚すぎると、粘着力が高くなる傾向があり、積層体から支持層および粘着層を剥離した際に銅層がカールしやすくなるおそれや、コストが高くなる場合がある。
【0052】
(2)粘着層の第2態様
粘着層の第2態様は、外部刺激に応答して粘着力が低下または消失する粘着層である。本態様の粘着層は、初期粘着力により支持層の一方の面に銅層を固定することができ、また、外部刺激に応答して粘着力が低下または消失することにより銅層から容易に剥離することができる。
【0053】
本態様において、外部刺激としては、例えば、エネルギー線、熱等が挙げられる。以下、本態様の粘着層のうち、エネルギー線の照射により粘着力が低下または消失する粘着層をエネルギー線応答型粘着層、熱により粘着力が低下または消失する粘着層を熱応答型粘着層と称する。
【0054】
(a)エネルギー線応答型粘着層
エネルギー線応答型粘着層は、エネルギー線の照射により粘着力が低下または消失する粘着層である。エネルギー線応答型接着層は、エネルギー線の照射により硬化することで、粘着力が低下し、易剥離性を発現することができる。
【0055】
エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。中でも、汎用性等の観点から、紫外線が好ましい。
【0056】
エネルギー線応答型粘着層に含まれる粘着剤組成物としては、エネルギー線の照射により硬化可能なものであればよく、例えば、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線重合性モノマー又はオリゴマーを少なくとも含むことができる。このような組成とすることで、エネルギー線の照射によりエネルギー線重合性オリゴマー又はモノマーが硬化して、粘着力を低下させることができる。また、このとき凝集力が高まるため、銅層表面への転着が生じにくくなり、容易に剥離が可能となる。
【0057】
上記樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等、一般に粘着剤の主剤として用いられる樹脂が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂が好ましい。
【0058】
エネルギー線応答型粘着層に用いられる粘着剤組成物については、例えば、特開2016-203536号公報や特開2018-98260号公報に記載のものを参照することができる。
【0059】
(b)熱応答型粘着層
熱応答型粘着層は、熱により粘着力が低下または消失する粘着層である。
【0060】
熱応答型粘着層に含まれる粘着剤組成物としては、熱により粘着力が低下または消失するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂等の粘着主剤となる樹脂と、マイクロカプセルや発泡剤等の熱膨張剤とを含有するものや、粘着主剤として熱溶融アクリル系樹脂や熱溶融エポキシ樹脂等の熱溶融型樹脂を含有するもの等が挙げられる。
【0061】
(c)その他
本態様の粘着層の厚みとしては、十分な初期粘着力が得られ、かつ、外部刺激を十分に受けることが可能な厚みであればよい。すなわち、本態様の粘着層がエネルギー線応答型粘着層である場合には、エネルギー線が内部まで透過することが可能な厚みであればよい。また、本態様の粘着層が熱応答型粘着層である場合には、内部まで伝熱が可能な厚みであればよい。具体的には、エネルギー線応答型粘着層の場合には、粘着層の厚みは、3μm以上、50μm以下とすることができ、中でも5μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0062】
粘着層の形成方法としては、例えば、支持層上に粘着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0063】
また、粘着層の粘着力を低下させる方法としては、外部刺激に応じて適宜選択される。外部刺激の付与条件については、外部刺激により粘着層の粘着力が低下し、剥離性を発現可能な条件であればよく、粘着層の種類や厚み等に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー線応答型粘着層の場合、特開2012-031316号公報に記載の照射条件を適用することができる。
【0064】
4.その他の構成
本開示における積層体は、上記の支持層、粘着層および銅層に加えて、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えば、絶縁層、導電性粘着層等が挙げられる。
【0065】
5.積層体
本開示における積層体は、例えば、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0066】
本開示における積層体を使用する際には、積層体から支持層および粘着層を剥離して用いることができる。
【0067】
本開示における積層体の用途としては、例えば、電極、配線、端子、導電層、バネ、放熱層等を挙げることができる。具体的には、本開示における積層体は、リチウムイオン電池の集電体、プリント配線板の配線や端子、電子部品の導電層、フォルダブルディスプレイのバネ、導電性銅箔粘着テープ、電子部品の放熱シート等に用いることができる。
【0068】
B.積層体の製造方法
本開示における積層体の製造方法は、樹脂を含む支持層の一方の面に、粘着層を介して、銅または銅合金を含む銅層を貼り合わせる貼合工程と、上記銅層の厚みが2μm以上5μm以下になり、かつ、上記銅層の上記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下になるように、上記銅層の全面にハーフエッチングを行うハーフエッチング工程と、上記ハーフエッチング後の上記銅層の上記粘着層とは反対側の面にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、上記レジストパターンをマスクとして上記銅層をエッチングするエッチング工程と、上記レジストパターンを除去するレジストパターン除去工程とを有する。
【0069】
図2(a)~(f)は、本開示における積層体の製造方法を例示する工程図である。なお、
図2(a)~(f)については、上記「A.積層体」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0070】
本開示における積層体の製造方法においては、銅層をハーフエッチングすることにより、銅層の厚みを薄くし、かつ、銅層の表面の最大高さ粗さRzを小さくすることができる。したがって、上記「A.積層体」の項に記載したように、高精細なパターニングが可能である。
【0071】
以下、本開示における積層体の製造方法の各工程について説明する。
【0072】
1.貼合工程
本開示における貼合工程は、樹脂を含む支持層の一方の面に、粘着層を介して、銅または銅合金を含む銅層を貼り合わせる工程である。
【0073】
支持層の一方の面に粘着層を介して銅層を貼り合わせる方法については、支持層および銅層を密着性良く貼り合わせることができる方法であれば特に限定されない。
【0074】
支持層、粘着層および銅層については、上記「A.積層体」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
銅層の厚みとしては、例えば、6μm以上とすることができ、8μm以上12μm以下であることが好ましい。銅層の厚みが比較的薄いことにより、ハーフエッチング量を少なくすることができ、ハーフエッチング後の銅層の厚みムラを抑制することができる。
【0076】
また、銅層の粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzとしては、例えば、1.4μm以上、3.0μm以下とすることができる。ハーフエッチング工程前の上記最大高さ粗さRzが大きすぎると、ハーフエッチングを行っても、上記最大高さ粗さRzを所定の値以下とすることが困難である場合がある。
【0077】
2.ハーフエッチング工程
本開示におけるハーフエッチング工程は、上記銅層の厚みが2μm以上5μm以下になり、かつ、上記銅層の上記粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzが1.3μm以下になるように、上記銅層の全面にハーフエッチングを行う工程である。
【0078】
ハーフエッチング方法としては、ウェットエッチングおよびドライエッチングのいずれも適用することができる。中でも、コストの観点から、ウェットエッチングが好ましい。ウェットエッチングおよびドライエッチングについては、公知の方法を用いることができる。ウェットエッチングの場合、エッチング液としては、例えば、アミンやアンモニア水等のアルカリ性エッチング液や、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、過硫酸塩水溶液、硫酸と過酸化水素を混合した酸性エッチング液等が用いられる。中でも、表面粗さを小さくすることができることから、塩化第二鉄水溶液が好ましい。また、厚みムラの観点から、支持層と粘着層と銅層とをこの順に有する積層体において、銅層側の面(処理面)を下側とし、下面からエッチング液をスプレーすることが好ましい。
【0079】
ハーフエッチング量としては、所望の銅層の厚みに応じて適宜調整されるが、中でも、少ないほうが好ましい。具体的には、ハーフエッチング量としては、ハーフエッチング後の銅層の厚みが、ハーフエッチング前の銅層の厚みの1/3以上5/6以下であることが好ましく、1/2以上4/5以下であることがより好ましく、5/8以上3/4以下であることがさらに好ましい。ハーフエッチング量を少なくすることにより、ハーフエッチング後の銅層の厚みムラを抑制することができる。
【0080】
ハーフエッチング後の銅層の厚みおよび銅層の粘着層とは反対側の面の最大高さ粗さRzについては、上記「A.積層体 1.銅層」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
3.レジストパターン形成工程
本開示におけるレジストパターン形成工程は、上記ハーフエッチング後の上記銅層の上記粘着層とは反対側の面にレジストパターンを形成する工程である。レジストパターン形成工程では、銅層の粘着層とは反対側の面にレジスト層を形成し、レジスト層を露光および現像して、レジストパターンを形成することができる。
【0082】
レジストとしては、一般的なフォトリソグラフィ法に用いられるものと同様とすることができ、ポジ型およびネガ型のいずれも用いることができる。また、レジストは、液状レジストを用いてもよく、ドライフィルムレジストを用いてもよい。
【0083】
レジスト層の形成方法としては、レジストの種類に応じて適宜選択され、塗布やラミネート等、公知の方法を適用することができる。レジスト層の厚みは、特に限定されない。
【0084】
レジスト層の露光および現像についても、公知の方法を適用することができる。
【0085】
4.エッチング工程
本開示におけるエッチング工程は、上記レジストパターンをマスクとして上記銅層をエッチングする工程である。
【0086】
エッチング方法としては、ウェットエッチングおよびドライエッチングのいずれも適用することができる。中でも、コストの観点から、ウェットエッチングが好ましい。ウェットエッチングおよびドライエッチングについては、公知の方法を用いることができる。ウェットエッチングの場合、エッチング液としては、例えば、アミンやアンモニア水等のアルカリ性エッチング液や、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、過硫酸塩水溶液、硫酸と過酸化水素を混合した酸性エッチング液等が用いられる。中でも、高精細なパターニングの観点から、支持層と粘着層と銅層とをこの順に有する積層体において、銅層側の面(処理面)を上側とし、上面からエッチング液をスプレーすることが好ましく、さらには、全面に均一にエッチング液をスプレーするために、スプレーノズルを揺動させることがより好ましい。
【0087】
5.レジストパターン除去工程
本開示におけるレジストパターン除去工程は、上記レジストパターンを除去する工程である。
【0088】
レジストパターンの除去方法としては、レジストの種類に応じて適宜選択され、公知の方法を適用することができる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ液を用いて剥離する方法等が挙げられる。
【0089】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0090】
以下、実施例を示し、本開示をさらに説明する。
【0091】
[実施例1]
銅層として、古河電機工業株式会社製の銅箔(NC-WS 厚み8μm)を用いた。また、粘着層付き支持層として、藤森工業社製のPET基材(GP3500(50) 厚み50μm)と、粘着層(厚み10μm、アクリル系粘着剤)と、剥離フィルムとをこの順に有するキャリアフィルムを用いた。
【0092】
キャリアフィルムから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層の面に銅箔を貼り合わせた。次に、エッチング液として塩化第二鉄溶液を用い、銅層側の面(処理面)を下側とし、下面からエッチング液をスプレーして、銅箔の厚みが3μmになるまでハーフエッチングを行った。次いで、銅箔上にドライフィルムレジストをラミネートし、露光および現像してレジストパターンを形成し、エッチング液として塩化第二鉄溶液を用い、銅層側の面(処理面)を上側とし、上面からエッチング液をスプレーして、レジストパターンをマスクとして銅箔をエッチングし、レジストパターンを除去した。これにより積層体を得た。
【0093】
[実施例2]
実施例1において、粘着層付き支持層として、ソマール社製 ソマタックPS-1080WA PET基材(厚み50μm)と、粘着層(厚み5μm、アクリル系粘着剤)と、剥離フィルムとをこの順に有するキャリアフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。
【0094】
[比較例1]
銅層として、古河電機工業株式会社製の銅箔(NC-WS 厚み8μm)の銅箔を用いた。また、粘着層付き支持層として、ソマール社製 PS-1093WA PET基材(厚み50μm)と、粘着層(厚み5μm、アクリル系粘着剤)と、剥離フィルムとをこの順に有するキャリアフィルムを用いた。
【0095】
キャリアフィルムから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層の面に銅箔を貼り合わせた。次に、実施例1と同様にして、銅箔上にドライフィルムレジストをラミネートし、露光および現像してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして銅箔をエッチングし、レジストパターンを除去した。これにより積層体を得た。
【0096】
[比較例2]
比較例1において、銅層として、古河電機工業株式会社製の銅箔(NC-WS 厚み15μm)の銅箔を用いたこと以外は、比較例1と同様にして積層体を形成した。
【0097】
[比較例3]
18μm厚のキャリア銅箔と、剥離層と、3μm厚の極薄銅箔とをこの順に有するキャリア箔付き銅箔(Iljin社製IUT3)を用いた。実施例1と同様にして、極薄銅箔上にドライフィルムレジストをラミネートし、露光および現像してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして極薄銅箔をエッチングし、レジストパターンを除去した。
【0098】
[評価]
1.最大高さ粗さRz
銅層表面のRzをJIS B0601:2001に準拠して測定した。具体的には、株式会社ミツトヨ製の小形表面粗さ測定機 サーフテスト SJ-210(測定力:0.75mN、スタイラス形状:先端半径2μm、先端角度60°)を用いて、測定長さ:4mmの条件で測定した。そして、5回測定を行い、その平均値を銅層表面のRzとした。
【0099】
2.銅層のパターンの断面形状
実施例および比較例の積層体の断面SEM像を
図3~
図7に示す。なお、
図3(b)は
図3(a)の拡大図、
図7(b)は
図7(a)の拡大図である。銅層のパターンの断面形状について評価した。
A:パターンのエッジ形状がほぼ垂直である。
B:パターンのエッジ形状がテーパー形状であり、テーパーが小さい。
C:パターンのエッジ形状がテーパー形状であり、テーパーが大きい。
【0100】
【0101】
表1より、銅層の厚みが所定の範囲であり、銅層表面のRzが所定の範囲である場合に、銅層のパターンの断面形状が良好になることが確認された。また、実施例1~2から、ハーフエッチングにより、銅層表面のRzが小さくなり、平滑性が良くなることが確認された。